説明

ポリッシングテープ

【課題】従来品の厚さ均一性等の優れた特徴を維持しつつ、防スリップ性および融通性の向上したポリッシングテープを提供する。
【解決手段】シート状織物を基材にして、この基材上に連続気孔を有する微多孔層が形成されてなるものとする。基材であるシート状織物は、好ましくは、経糸及び緯糸がともに繊度が45デシテックス(dtex)以上のポリエステル系繊維であり、厚さが0.05mm以上であるものとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハードディスクに利用される磁気ディスク用基板表面にあるキズ、付着物等の微細欠点を取り除くのに好適なポリッシングテープに関する。
【背景技術】
【0002】
磁気ディスク用基板表面にあるキズ、付着物等を取り除くためのポリッシングテープとしては、精度を上げるため、平滑性、厚さ均一性、寸法安定性に優れるポリエステルフィルムを基材として、研磨面にウレタン等の連続微多孔層を有するものが使用されている。
【0003】
しかしながら、上記の如く優れた特徴を有することに起因する問題も生じていた。即ち、平滑であるが故に摩擦係数が低くスリップしやすい、研磨剤を供給する際、裏面の基材面に水溶液が回りこみ、ポリエステルフィルムが水不浸透性であるため、水膜を形成してスリップしやすい、寸法安定性が高いため融通性がなく、張力ムラ等が生じたときにブレが吸収できない、等の問題である。
【0004】
なお、上記に関する先行技術文献は、発明者が調査した範囲内では見出されていない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、従来品の優れた特徴を維持しつつ、防スリップ性および融通性の向上したポリッシングテープを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、従来技術の優れた点である平滑性、厚さ均一性、寸法安定性を維持しつつ、上記欠点を改善する方法を鋭意研究した結果、防スリップ性、水浸透性、適度な伸縮性を有する素材として織物に着目し、これを基材とすることで良好な防スリップ性、水浸透性、適度な伸縮性を付与できることを見出し、これらの知見に基づき、本発明に到達した。
【0007】
すなわち、本発明のポリッシングテープは、シート状織物を基材にして、この基材上に連続気孔を有する微多孔層が形成されてなるものとする。
【0008】
基材であるシート状織物は、経糸及び緯糸がともに繊度が45デシテックス(dtex)以上のポリエステル系繊維であり、厚さが0.05mm以上であることが好ましい。
【0009】
また、連続気孔を有する微多孔層は、湿式凝固法により形成されたものであり、基材であるシート状織物上に直接形成されたか、または別途形成された後に接着されたものとすることができる。
【0010】
本発明のポリッシングテープは、裏面の摩擦係数が乾燥及び湿潤状態で0.3以上であり、10%伸長時の引張強度が50kg/3.8cm巾以下であることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明のポリッシングテープによれば、基材に織物を用いることで、厚みバラツキをポリエステルフィルム並みに低く抑えつつ、織物の微細な凹凸により乾燥時および湿潤時での摩擦係数が高いため、防スリップ性に優れ、特に水が介在したときの蛇行を防ぐことが出来る。また織物のフレキシブルな構造から融通性に優れ、張力ムラ等が生じたときブレを吸収して蛇行を防ぐことができ、従来品より安定して高品質の加工が可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明について詳細に説明する。本発明のポリッシングテープにおける基材は、シート状織物であって、乾湿状態での寸法安定性から、経糸、緯糸ともポリエステル系繊維であることが好ましく、かつそれらの繊度が45dtex以上であることが好ましい。繊度はさらに好ましくは56dtex以上である。45dtex未満であると微多孔形成時の収縮によりカーリングが発生するおそれがある。織り組織および織り密度は特に限定されるものではない。
【0013】
基材の厚みは0.05mm以上であることが好ましく、さらに好ましくは0.08mm以上である。0.05mm未満であると、微多孔層形成時の収縮によりカーリングが発生するおそれがある。
【0014】
次に、本発明のポリッシングテープにおける連続気孔を有する微多孔層とは、湿式凝固法により製造された、微細な連続気孔が無数に形成された層であり、必須成分である極性溶媒可溶性ポリマーと、必要に応じ使用される助剤、顔料などの添加物とから構成される。
【0015】
ここで、極性溶剤可溶性ポリマーとは、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフラン、ジオキサン、N−メチルピロリドンなどの極性を有する溶媒に溶解するものであれば特に限定されるものではなく、例えば、ポリウレタン系、アクリル系樹脂、ビニル系樹脂、ポリエステル系などが用いられる。また、使用可能な助剤としては、発泡剤、凝固調整剤、界面活性剤などが例示される。
【0016】
本発明のポリッシングテープは、上記したシート状織物基材と微多孔層とが一体化されたものであり、ダイレクトコーティング法、含浸法、ラミネート法などの方法を用いて基材に微多孔層を付与することにより製造することができる。
【0017】
すなわち、例えば、基材の片面に、極性溶媒に溶解されたポリマー溶液を主成分とし、助剤、顔料などが混合されたスラリーを、ナイフコーターやロールコーターを用い、ダイレクト法、リバース法等のコーティング方法により所定厚さになるようにコーティングした後、これを凝固槽に浸漬し、水中、又は水と上記したような極性溶媒との混合溶媒中で硬化させて(湿式凝固法)、所望の微多孔層を形成させた後、水洗、乾燥を行い、さらに形成された微多孔層は、通常、表皮部分の全部または一部を除去することで表面に微細な孔をあけ、平均ナップ長が200μm〜1200μm、平均孔径が5μm〜200μm以下を有するポリッシングテープが得られる。なお、湿式凝固を行う際の温度、時間等の条件は、使用する樹脂等に応じて適宜選択すればよい。
【0018】
なお、シート状織物基材に微多孔層を形成させるに際して、あらかじめ織物に撥水、プレス、プライマー等の前処理を一種あるいは複数行なってもよい。
【0019】
本発明のポリッシングテープの裏面の摩擦係数は乾燥状態及び湿潤状態のいずれにおいても0.3以上であることが好ましい。0.3未満であると摩擦係数が低く、ローラーとの接触においてスリップし、蛇行するおそれがある。
また、ポリッシングテープの10%伸長時引張強度は50kg/3.8cm巾以下であることが好ましい。50kg/3.8cm巾未満であると寸法安定性が高いため、融通性に乏しく、張力ムラ等が生じたときブレを吸収できず蛇行するおそれがある。
【実施例】
【0020】
以下、本発明を実施例及び比較例により更に詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、以下の実施例・比較例及びその他の本明細書に記載した諸物性は、以下の測定方法によるものである。
【0021】
[10%伸長時引張強度(融通性の評価)]
引張試験機(株式会社オリエンテック製、テンシロン)を用い、試料を長さ方向に巾38mmでカットし、つかみ巾150mmで引張り、10%伸びたときの強度を測定した。10%伸長時引張強度が低いほど融通性に優れることを示す。
【0022】
[摩擦係数(防スリップ性の評価)]
静摩擦係数測定器(新東科学株式会社製、HEIDON−10)を用い、角度調整可能な平面板上に80mm×200mmの大きさのポリエステルフィルム(商品名「ルミラー(登録商標)S10」、東レ(株)製、厚さ188μm)を固定し、その上に、35mm×75mmの大きさの試料をセットし、150gの荷重をかける。そして、平面板を徐々に傾斜させていき、試料が滑り始めた時の傾斜角θを測定し、正接tanθで示した値を摩擦係数とする。湿潤状態は平面板上にセットしたポリエステルフィルム上に0.3ccの水滴を滴下し、その上に試料を置いて同様に測定した。摩擦係数が大きいほど滑りにくいことを示す。
【0023】
[厚みバラツキの測定方法]
ポリッシングテープの断面を走査型電子顕微鏡((株)トプコン製、ABT−32/R)で写真撮影し、その写真より計測した。
【0024】
[実施例1]
基材として、繊度84dtex、厚み0.15mmの予め撥水処理されたポリエステル繊維織物を用い、次の[配合]に従い調製されたスラリーをナイフオーバーロール法によりコーティングした後、20℃の水中に10分間浸漬して湿式凝固を行い、水洗した後、140℃で10分間乾燥して、微多孔層の表層部分をベルトサンダー機により#240ペーパーで研削し、ナップ長500μm、開口径50μmを有するポリッシングテープを得た。得られたポリッシングテープにつき、摩擦係数、10%伸長時引張強度、厚みバラツキを測定した。結果を表1に示す。
【0025】
[配合]
重量部
クリスボン(登録商標)MP829
(ポリウレタン樹脂、大日本インキ化学工業株式会社製) 100
DMF(溶剤) 40
アシスターSD−11(界面活性剤、大日本インキ化学工業株式会社製) 1
ダイラック(登録商標)L−3026
(顔料、大日本インキ化学工業株式会社製) 5
【0026】
[実施例2]
基材として、繊度280dtex、厚み0.25mmの予め撥水処理されたポリエステル繊維織物を用いた以外は、実施例1と同様にしてポリッシングテープを得た。得られたポリッシングテープにつき、実施例1と同様にして摩擦係数等を測定した。結果を表1に示す。
【0027】
[比較例1]
基材としてポリエステルフィルム(商品名「ルミラーS10」、東レ(株)製、厚さ188μm)を用いた以外は、実施例1と同様にしてポリッシングテープを得た。得られたポリッシングテープにつき、実施例1と同様にして摩擦係数等を測定した。結果を表1に示す。
【0028】
【表1】

【0029】
表1に示された結果から、実施例のポリッシングテープは比較例のものと比較して防スリップ性および融通性に優れ、かつ厚さの均一性にも優れていることが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート状織物を基材にして、この基材上に連続気孔を有する微多孔層が形成されてなるポリッシングテープ。
【請求項2】
前記基材であるシート状織物は、経糸及び緯糸がともに繊度が45デシテックス(dtex)以上のポリエステル系繊維であり、厚さが0.05mm以上であることを特徴とする、請求項1に記載のポリッシングテープ。
【請求項3】
前記連続気孔を有する微多孔層が湿式凝固法により形成されたものであり、基材であるシート状織物上に直接形成されたか、または別途形成された後に接着されたものであることを特徴とする、請求項1又は2に記載のポリッシングテープ。
【請求項4】
裏面の摩擦係数が乾燥及び湿潤状態で0.3以上であり、10%伸長時の引張強度が50kg/3.8cm巾以下であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載のポリッシングテープ。

【公開番号】特開2009−74217(P2009−74217A)
【公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−246795(P2007−246795)
【出願日】平成19年9月25日(2007.9.25)
【出願人】(591086407)東レコーテックス株式会社 (29)
【Fターム(参考)】