説明

ポリテトラフルオロエチレン多孔質膜およびその製造方法

【課題】 防塵性、防水性、通気性、通音性に優れ、収縮が少なく取扱い性が良いPTFE多孔質膜を提供する。
【解決手段】 縦方向に融点以上の温度で20倍以上延伸処理されたPTFEシートの一面または両面に、ポリオレフィン製ネットを融着し、この状態で前記PTFEシートを横方向に3〜10倍延伸してPTFE多孔質膜を製造する。このPTFE多孔質膜11は、その一面または両面にポリオレフィン製ネット12を備え、周波数300以上3000Hz以下の音の音圧変化量が1dB以下であり、周波数3000を超え10000Hz以下の音の音圧変化量が5dB以下であり、JIS L 1092 A法(静水圧法)により測定される耐水圧が30cm以上であり、収縮率が10%以下である。また、このPTFE多孔質膜は、黒色に着色されていることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は,携帯電話や通信機器等の音響機器に内臓されているスピーカー、マイク、リンガー等を外部からの塵埃、水滴等から保護するために使用される防塵防水通気性保護材として有効なポリテトラフルオロエチレン(以下「PTFE」という)多孔質膜およびその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】携帯電話若しくは通信機器は、通常、防水防塵対策がとられている。従来の防水型通信機等は、通信機本体を、ほぼ密閉構造にし、マイク部、スピーカー部、リンガー部等の通音部については、音声を透過させる必要があるため、これを開口とし、シート状の防塵防水通気性保護材を、前記マイク部、スピーカー部、リンガー部の表面もしくはハウジング側に貼着して前記開口を塞いでいる。そして、従来から、前記防塵防水通気性保護材として、PTFE多孔質膜が広く使用されている。また、改良されたPTFE多孔質膜としては、着色されたPTFE多孔質膜(特開平7−289865号公報)または撥油性を有するPTFE多孔質膜(特開平5−320255号公報)がある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、従来のPTFE多孔質膜は、防水性(耐水性)には優れているものの、装着時の音の減衰、音圧変化、音の歪みが大きく、人間の可聴域である300から3000Hzの周波数帯で数dBの音圧減衰が生じ、特に周波数2700Hzでは約10dBの音圧減衰が生ずる。また、同様に、前記着色されたPTFE多孔質膜または撥油性のPTFE多孔質膜も、防水性(耐水性)は優れているが、通音性能については音の減衰が大きいといった問題がある。
【0004】ここで、PTFE多孔質膜を薄膜化したり、孔径の拡大化等により、音響透過性が向上することが考えられる。しかし、前記改良品を含む従来のPTFE多孔質膜において、従来の技術で薄膜化および孔径拡大化すると耐水性が損なわれるという問題がある。これは、従来では、未焼成PTFEシートをPTFEの融点以上の温度で延伸および焼成を行って多孔質化処理を行いPTFE多孔質膜が製造されており、薄膜化および孔径の拡大化のために、未焼成PTFEシートを縦方向および横方向に高倍率延伸すると、延伸ムラが生じ、孔径のバラツキが大きくなってしまうからである。
【0005】すなわち、PTFE多孔質膜の耐水性は、膜中の最大孔径に大きく依存するため、PTFE膜中に孔径が極端に大きい孔が存在すると、その孔により水が透過するため、耐水圧(耐水性)が低くなってしまう。したがって、通音性と耐水性の双方に優れたPTFE多孔質膜は、従来の技術では得られにくい。
【0006】さらに、高倍率延伸したPTFE多孔質膜は、収縮しやすく、又、薄膜であるため取扱いが難しいという問題もある。この解決のために、PTFE多孔質膜に、ネット、不織布、織布等のサポート材をラミネートして一体化することが考えられるが、PTFE多孔質膜が薄膜であるため、前記ラミネート工程において逆にダメージを受けることがある。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】したがって、本発明の第1の目的は、防塵性および通気性に優れるとともに、通音性および耐水性にも優れるPTFE多孔質膜およびその製造方法を提供することであり、本発明の第2の目的は、前記特性に加え、高い機械的強度を備えかつ収縮が防止されたPTFE多孔質膜およびその製造方法を提供することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】前記第1の目的を達成するために、本発明のPTFE多孔質膜は、周波数300以上3000Hz以下の音の音圧変化量が1dB以下であり、周波数3000を超え10000Hz以下の音の音圧変化量が5dB以下であり、JIS L1092 A法(静水圧法)により測定される耐水圧が30cm以上である。
【0009】このように、本発明のPTFE多孔質膜は、前記特定範囲の周波数における音圧変化量が前記所定の範囲に設定され、かつ耐水圧が前記所定の範囲に設定されることにより、防塵性および通気性を備え、かつ通音性および耐水性のバランスを図るものである。この結果、本発明のPTFE多孔質膜は、防塵性、通気性および防水性に優れ、かつ音の減衰、音圧変化および音の歪みが抑制され、自然で明瞭な音声が得られるものである。なお、前記音圧変化量と音圧減衰量は、同義の用語である。
【0010】つぎに、前記第2の目的を達成するために、本発明のPTFE多孔質膜は、前記諸物性を有し、かつその一面または両面に熱可塑性樹脂製ネットを備える。すなわち、前記熱可塑性樹脂製ネットが補強材および形状安定材として機能するため、PTFE多孔質膜の機械的強度が向上するとともに、収縮が防止される。
【0011】本発明のPTFE多孔質膜において、収縮率は10%以下であることが好ましい。なお、本発明において、収縮率は、収縮前の寸法に対する収縮後の寸法の割合(%)をいう。
【0012】そして、本発明のPTFE多孔質膜は、着色されていることが好ましい。通常PTFE多孔質膜の色は、鮮やかな白色であるが、このまま携帯電話等に使用すると、視覚的に違和感が生じ、また携帯電話等の意匠の自由度が制限される。このため、本発明のPTFE多孔質膜は、用途に応じ着色されていることが好ましく、特に好ましい着色は黒色である。
【0013】つぎに、本発明のPTFE多孔質膜の製造方法は、縦方向に延伸処理されたPTFEシートの一面または両面に、熱可塑性樹脂製ネットを融着し、この状態で前記PTFEシートを横方向に延伸するという製造方法である。
【0014】この製造方法によれば、融着した前記ネットの作用により、ネットの網目内で孔が均一孔径で拡大され、極端に拡大された孔を生じない。この結果、PTFE多孔質膜の薄膜化および孔径拡大化により通音特性の向上を図っても耐水性の劣化がなく、得られるPTFE多孔質膜の通音性および耐水性がともに優れるようになる。また、前記ネットを、まだ薄膜化が充分でない縦方向延伸済PTFEシートに融着した後、横方向延伸して充分な薄膜化および多孔質化するため、前記ネットによるPTFE多孔質膜へのダメージも防止される。また、このネットが融着していることにより、得られるPTFE多孔質膜において、機械的強度が高くなり、また収縮も防止される。
【0015】本発明のPTFE多孔質膜の製造方法において、縦方向に延伸処理されたPTFEシートが、未焼成のPTFEシートを、その融点以上の温度で縦方向に20倍以上延伸されたものであり、横方向の延伸倍率が3〜10倍であることが好ましい。このような条件によれば、得られるPTFE多孔質膜の防塵性、通気性、防水性、通音性がさらに優れるようになるからである。
【0016】そして、本発明のPTFE多孔質膜の製造方法において、製造効率等の理由から、前記ネットの融着後で横方向延伸前に、着色処理することが好ましい。
【0017】
【発明の実施の形態】つぎに、本発明を詳しく説明する。
【0018】本発明のPTFE多孔質膜は、例えば、未焼成PTFEシートを作製し、このシートを、その融点以上の温度で加熱しながら縦方向に延伸して焼成PTFEシートを作製し、ポリオレフィン製ネットを前記縦方向延伸済焼成PTFEシートの少なくとも一面にラミネートにより融着し、この状態で前記縦方向延伸済焼成PTFEシートを横方向に延伸することにより作製できる。なお、前記横方向延伸の前後において、着色工程を設けてもよい。
【0019】前記未焼成PTFEシートは、PTFEファインパウダーに液状潤滑剤を配合して混合し、この混合物をペースト押出法により予備成形した後、一対の圧延ロールを用いてシート状に成形することにより作製できる。前記液状潤滑剤は、例えば、炭化水素油等が使用される。そして、この液状潤滑剤の配合割合は、PTFEファインパウダー100重量部に対し、通常、20〜30重量部、好ましくは22〜27重量部である。前記予備成形は、省略可能であるが、行うことが好ましい。また、予備成形の形状は、通常、棒状である。
【0020】前記未焼成PTFEシートは、通常、その厚みが、0.05〜0.5μmの範囲であり、気孔率が40〜75%の範囲、好ましくは、厚みが0.1〜0.2μmの範囲、気孔率が50〜65%の範囲である。
【0021】つぎに、前記未焼成PTFEシートを縦方向に延伸する。この延伸条件は、好ましくは、未焼成PTFEの融点以上の温度で20倍以上、特に好ましくは330〜390℃で20〜100倍である。また、この縦方向延伸に用いる延伸機は、特に制限されず、従来公知の延伸機が用いられ、例えば、ロールの速度差を利用して延伸するロール延伸機があげられる。この縦方向の延伸により、未焼成PTFEシートが焼成されると同時に多孔質化されるが、その孔の孔径は充分に拡大されていない。
【0022】そして、前記縦方向延伸済焼成PTFEシートの一面または両面にポリオレフィン製ネットをラミネートにより融着し、両者を一体化する。
【0023】前記ポリオレフィン製ネットとしては、縦横方向に延伸が可能であり、かつ前記縦方向延伸済PTFEシートと融着可能なものであれば、材質および構造について特に制限されないが、100〜180℃の範囲で縦方向に3〜10倍、横方向に3〜10倍延伸可能である物が好ましく、その構造は、格子構造が好ましい。前記ポリオレフィンとしては、ポリプロピレン、ポリエチレン等があるが、ポリプロピレンが好ましい。また、このネットの延伸前の網目の大きさは、格子構造の場合、通常、0.2〜3.0mm、好ましくは0.5〜15mmの範囲である。そして、このネットを構成する繊維の延伸前の繊維径は、好ましくは50〜200μmである。
【0024】また、このポリオレフィン製ネットは、前記融着前に、縦方向に延伸することが好ましい。この延伸倍率は、前記範囲であり、これに用いる延伸機としては、例えば、ロール延伸機がある。
【0025】前記ラミネートの条件は、温度が、通常、縦方向延伸済焼成PTFEシートの融点以上かつポリオレフィン製ネットの融点以上、好ましくは150〜190℃であり、圧力が、好ましくは3〜5kg/cm2 である。また、ラミネートに用いる機械も、従来公知のものが使用できる。
【0026】そして、ポリオレフィン製ネットと一体化した縦方向延伸済焼成PTFEシートを、前記ネットと共に着色処理する。この処理は、例えば、キスコーター等により、撥水剤と染料とを配合した処理剤を用いて行うことができる。前記撥水剤としては、例えば、パーフルオロアルキルアクリレート、パーフルオロアルキルメタクリレート等があげられ、前記染料としては、アゾ系染料があげられる。なお、先に述べたように、この着色処理は、横方向延伸後に行ってもよい。
【0027】つぎに、ポリオレフィン製ネットと一体化されて着色処理された焼成PTFEシートを横方向に延伸する。この延伸条件は、温度100〜150℃で3〜10倍延伸が好ましく、特に好ましくは、温度110〜140℃で5〜7倍延伸である。また、この横方向延伸に用いる延伸機は、特に制限されず、従来公知の延伸機が使用でき、例えば、テンターが使用できる。
【0028】このようにして、本発明のPTFE多孔質膜が作製される。図1の断面図に、本発明のPTFE多孔質膜の一例を示す。図示のように、このPTFE多孔質膜11は、通常、その一面にポリオレフィン製ネット12が融着している。
【0029】本発明のPTFE多孔質膜の諸物性は、前記のとおりであるが、好ましくは、周波数300以上3000Hz以下の音の音圧変化量が0.01〜0.5dBの範囲であり、周波数3000を超え10000Hz以下の音の音圧変化量が0.1〜2.0dBの範囲であり、JIS L 1092 A法(静水圧法)により測定される耐水圧が10〜70cmの範囲である。また、収縮率は、好ましくは、5〜10%の範囲である。そして、本発明のPTFE多孔質膜の厚み(ネットを含んだ厚み)は、通常、50〜200μmの範囲であり、好ましくは50〜100μmの範囲である。また、本発明のPTFE多孔質膜の、孔の平均孔径は、好ましくは5〜20μmであり、孔の最大孔径と最小孔径との差は、通常、10〜50μmであり、通気度は、通常、20〜200cc/cm2 sec.であり、好ましくは50〜200cc/cm2 sec.%であり、塵埃捕集効率(0.3μmDOP面速5.3cm/secの条件下)は、通常、40〜85%であり、好ましくは60〜85%である。なお、前記通気率は、JIS L 1096(フラジールテスターを用いた方法)により測定した値である。また、前記塵埃捕集効率は、捕集効率測定装置により測定した値である。前記孔の平均孔径および最大孔径と最小孔径との差は、孔径分布測定装置により測定できる。
【0030】本発明のPTFE多孔質膜は、必要応じ、不織布、織布、ネット等のサポート材をラミネートしてもよい。これにより、強度および取扱い性がさらに向上する。このサポート材については、音の減衰が少ないものを使用することが望ましく、更には撥水性、黒色を有しているものが望ましい。このサポート材の具体例としては、ポリエチレン系ネット又は不織布があげられる。このサポート材は、ポリオレフィン製ネット側にラミネートしてもよいし、PTFE多孔質膜側にラミネートしてもよい。また、ラミネートの条件は、サポート材の種類等により適宜決定されるが、通常、温度130〜190℃で圧力が3〜6kg/cm2 である。
【0031】本発明のPTFE多孔質膜は、携帯電話や通信機器等のスピーカー、マイク、リンガー部の通音開口を塞ぐのに最適な防塵防水通気性部材として使用でき、その使用方法は、従来の防塵防水通気性部材と同様である。
【0032】
【実施例1】つぎに、実施例について比較例と併せて説明する。
【0033】(実施例1)PTFEファインパウダー(ポリフロンF−104U、ダイキン工業社製)100重量部に炭化水素油(アイソパーM、エッソ石油社製)25重量部を均一に混合した混和物をペースト押し出して棒状に予備成形を行い。この予備成形物を、一対の金属製圧延ロール間に通し、厚み0.2mm、幅370mmの未焼成テープを得た。ついで、この成形物を、ロール延伸機を用い融点以上(375℃)の温度で縦方向に50倍延伸し、縦方向延伸済焼成PTFEシートを得た。
【0034】他方、ポリプロピレン製(PP)ネット(格子構造、編目大きさ:1mm、繊維径85μm)をその融点以下の温度(130℃)で縦方向に5倍延伸した。
【0035】つぎに、このPPネットを前記縦方向延伸済焼成PTFEシートの一面に前記PPネットの融点以上の温度(180℃)でラミネート(圧力5kg/cm2 )した。そして、前記ラミネート後のPTFEシートを、キスコーターにより撥水剤(商品名:スコッチガードFX3576)100重量部と黒色染料(バリファーストブラック)190重量部とが混合された処理剤を用い着色処理を行なった。着色処理後、このPTFEシートをテンターを用いて温度130℃で横方向に6倍延伸し、目的とするPTFE多孔質膜を得た。
【0036】(実施例2)未焼成テープの縦方向延伸の延伸倍率を25倍にした以外は、実施例1と同様にして、PTFE多孔質膜を得た。
【0037】(比較例1)特開平7−289865号公報に記載の実施例に準じ、PTFE多孔質膜を作製した。すなわち、まず、PTFEファインパウダー(三井・デュポン・フロロケミカル社製)にカーボンブラックを3重量%の割合で添加し、この黒色PTFEファインパウダー9.8kgに、液状潤滑剤(ナフサ)3.2リットルを混合してペースト化し、ついでこのペーストを減圧下のシリンダー内でピストン圧縮して予備的に円筒状に成形した。つぎに、この予備成形体を、押出機で後方からラムでいわゆるペースト押出しして厚み0.8mmのテープに成形した。ついで、このテープをロール圧延して厚み0.2mmの薄肉にした後、300℃に加熱して前記液状潤滑剤を蒸発除去した。そして、この薄肉テープを、約300℃の温度で2軸(縦横)方向に各々9倍の長さに延伸して多孔質化し、ついで355℃の温度で焼成して構造を固定し、目的とするPTFE多孔質膜(厚み:10μm、空隙率:90%、色調:グレー)を得た。
【0038】(比較例2)PTFEファインパウダー(ポリフロンF−104U、ダイキン工業社製)100重量部に炭化水素油(アイソパーM、エッソ石油社製)25重量部を均一に混合した混和物をペースト押し出して棒状に予備成形を行い、一対の金属製圧延ロール間に通し、厚み0.2mm、幅370mmの未焼成テープを得た。ついで、この未焼成テープをその融点以上の温度(375℃)で縦方向に50倍延伸し、縦方向延伸済焼成PTFEシートを得た。ついで、この縦方向延伸済PTFEシートをテンターを用いて横方向に温度130℃で4倍(延伸限界倍率)に延伸し、PTFE多孔質膜を得た。
【0039】このようにして得られた実施例1、2、比較例1、2のPTFE多孔質膜について、膜厚、通気度、耐水圧、塵埃捕集効率、引張り強度、収縮率、白色度、音圧減衰量(音圧変化量)を測定した。この結果を、下記の表1に示す。なお、通気度、耐水圧、塵埃捕集効率は、前述の方法により測定し、膜厚、引張強度、収縮率、白色度、音圧減衰量(音圧変化量)は、以下に示す方法により、測定した。
【0040】(膜厚)ダイヤルゲージ(測定子φ10mm、精度0.01mm)を用いて測定した。
【0041】(引張強度)JIS K 6887に準ずる試験方法にて測定した。
【0042】(収縮率)PTFE多孔質膜を、四方10cmの大きさに成形して、これをサンプルとし、25℃×50%の雰囲気に24hr放置後、その大きさを測定し、収縮率を求めた。
【0043】(白色度)JIS L 1015ハンター式に準ずる試験方法にて測定した。
【0044】(音圧減衰量)図2に示す装置を用いて測定した。この装置は、簡易無響箱3の中に、カプラー4が収納され、このカプラーの中にスピーカ5とマイク6がある。そして、簡易無響箱の外に、高速フーリエ変換(FFT)アナライザー2と、アンプ・フィルター7と記録計8がある。そして、FFTアナライザー2とスピーカー5が電気的に接続されており、またFFTアナライザー2とマイク6とがアンプ・フィルター7を介して電気的に接続されている。そして、FFTアナライザー2と記録計8が電気的に接続されている。
【0045】この装置を用い、以下のようにして測定を行う。すなわち、まず、PTFE多孔質膜1を、カプラー4内のスピーカー5とマイク6との間に配置する。この状態で、FFTアナライザー2から標準信号(一定範囲の周波数)をスピーカー5に送信し、スピーカー5から音を発生させる。そして、この音を、PTFE多孔質膜1を介してマイク6で受音して電気信号に変換し、この信号をアンプ・フィルター7により増幅してFFTアナライザー2に返信する。この返信された信号をFFTアナライザー2で分析し、その結果を記録計8により記録する。
【0046】
【表1】


【0047】前記表1から明らかなように、実施例1、2のPTFE多孔質膜は、通気度、耐水圧、塵埃捕集効率及び引張り強度が高く、膜厚が薄いにもかかわらず、収縮率も10%未満であり、白色度が適正な範囲であった。また、実施例1、2のPTFE多孔質膜は、上記のように、耐水圧が高いが、音圧減衰量(音圧変化量)が小さく良好であった。これに対し、比較例1のPTFE多孔質膜は、耐水圧が高いが、音圧減衰量(音圧変化量)が大きく、また膜厚も厚く収縮率も大きかった。比較例2のPTFE多孔質膜は、音圧減衰量(音圧変化量)が小さかったが、耐水圧が低く、収縮率が大きかった。
【0048】
【発明の効果】以上のように、本発明のPTFE多孔質膜は、防塵性および通気性に優れ、かつ耐水性および通音性にも優れるものである。したがって、これを携帯電話や通信機器等のスピーカー部、マイク部、リンガー部等の通音部開口を塞ぐ保護部材として使用すれば、機器内への塵埃および水滴の侵入が有効に防止されて機器の故障や事故が防止されるとともに、明瞭かつ自然な音声が得られるようになる。また、本発明のPTFE多孔質膜が、熱可塑性樹脂製ネットを備える場合、収縮率が10%以下となり、また機械的強度も向上して取扱い性が良くなる。したがって、このPTFE多孔質膜を、携帯電話や通信機器等に組み込む際の作業効率が良くなり、この結果、携帯電話や通信機器等の生産効率の向上も期待できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のPTFE多孔質膜の構成の一例を示す断面図である。
【図2】通音特性を測定する装置の構成を示す構成図である。
【符号の説明】
1 PTFE多孔質膜
2 FFTアナライザー
3 簡易無響箱
4 カプラー
5 スピーカー
6 マイク
7 アンプ・フィルター
8 記録計
11 PTFE多孔質膜
12 ポリオレフィン製ネット

【特許請求の範囲】
【請求項1】 周波数300以上3000Hz以下の音の音圧変化量が1dB以下であり、周波数3000を超え10000Hz以下の音の音圧変化量が5dB以下であり、JIS L 1092 A法(静水圧法)により測定される耐水圧が30cm以上であるポリテトラフルオロエチレン多孔質膜。
【請求項2】 その一面または両面に熱可塑性樹脂製ネットを備える請求項1記載のポリテトラフルオロエチレン多孔質膜。
【請求項3】 収縮率が10%以下である請求項2記載のポリテトラフルオロエチレン多孔質膜。
【請求項4】 着色されている請求項1〜3のいずれか一項に記載のポリテトラフルオロエチレン多孔質膜。
【請求項5】 縦方向に延伸処理されたポリテトラフルオロエチレンシートの一面または両面に、熱可塑性樹脂製ネットを融着し、この状態で前記ポリテトラフルオロエチレンシートを横方向に延伸するポリテトラフルオロエチレン多孔質膜の製造方法。
【請求項6】 縦方向に延伸処理されたポリテトラフルオロエチレンシートが、未焼成のポリテトラフルオロエチレンシートを、その融点以上の温度で縦方向に20倍以上延伸されたものであり、横方向の延伸倍率が3〜10倍である請求項5記載のポリテトラフルオロエチレン多孔質膜の製造方法。
【請求項7】 熱可塑性樹脂製ネットの融着後で横方向延伸前に、着色処理する請求項5または6記載のポリテトラフルオロエチレン多孔質膜の製造方法。

【図1】
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【図2】
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