説明

ポリテトラフルオロエチレン延伸フィルムの製造方法およびポリテトラフルオロエチレン延伸フィルム

【課題】より高い引張破断強度を有するPTFE延伸フィルムの製造方法、および該製造方法により得られるPTFE延伸フィルムの提供を目的とする。
【解決手段】数平均分子量5×10以上のポリテトラフルオロエチレン(A)のエマルションと、数平均分子量1×10〜4×10のポリテトラフルオロエチレン(B)のエマルションとを、ポリテトラフルオロエチレン(A)とポリテトラフルオロエチレン(B)の固形分比(A/B)が99/1〜10/90となるように混合して得られた樹脂組成物を、減圧雰囲気下、溶融状態で圧縮成形してフィルムを得て、該フィルムを溶融延伸する、PTFE延伸フィルムの製造方法。また、該製造方法により製造したPTFE延伸フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリテトラフルオロエチレン延伸フィルムの製造方法およびポリテトラフルオロエチレン延伸フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
ポリテトラフルオロエチレン(以下、「PTFE」という。)は、融点が高く(約330℃)、化学安定性、耐薬品性に優れるため、各種の耐久材料として使用されている。また、耐候性、撥水性にも優れているため、ドーム屋根等の構造膜材料として使用されている。PTFEは、溶融粘度が非常に高いため、押出成形等の溶融成形によってフィルムを成形することは困難である。そこで、従来は、PTFEの粉末を焼結したブロック状の躯体から、桂剥きの要領で膜を削り出すスカイブ法によりPTFEフィルムを製造していた。
【0003】
一方、フィルムの強度を高める方法としては、一旦成形したフィルムを延伸し、該フィルムを形成する高分子の分子鎖を延ばして配向させる方法が知られている。しかし、スカイブ法により製造されたPTFEフィルムは、延伸すると低倍率の延伸でもフィルムに破断が生じてしまうため、延伸によって充分に強度を向上させることは難しい。
【0004】
延伸により高い強度のPTFEフィルムを得る方法としては、例えば、PTFEの融点以下、すなわちPTFEが実質的に溶融していない状態で延伸する固相延伸を利用する方法が開示されている。具体的には、下記方法(i)〜(iii)が挙げられる。
(i)PTFEの粉末を融点より低い温度で圧縮成形して得たフィルムを、該フィルムが実質的に融解しない温度で延伸する方法(特許文献1)。
(ii)PTFEの粉末に潤滑剤を加えて押出成形し、圧延加工して得られるシートから、前記潤滑剤を除去して得られた多孔性フィルムを、PTFEの融点より低い温度で延伸した後に無孔になるまで焼成する方法(特許文献2)。
(iii)PTFEの粉末に潤滑剤を加えて押出成形し、PTFEの融点以下で二軸延伸する方法(特許文献3)。
【0005】
一方、本発明者等は、下記方法(iv)を報告している。
(iv)PTFEフィルムを溶融させた状態で延伸する溶融延伸により延伸フィルムを得る方法(非特許文献1および2)。これは、PTFEが融点以上の温度で著しく高い粘度を有することに着目し、通常の熱可塑性樹脂では実施できない溶融延伸を試みたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−323890号公報
【特許文献2】特開2005−306033号公報
【特許文献3】特開2008−55407号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】第54回高分子学会討論会、第54巻(No.2)、3097頁、2005年
【非特許文献2】Morioka, T.; Kakiage, M; Yamanobe, T.; Komoto, T.; Higuchi, Y.; Kamiya, H.; Arai, K; Murakami, S.; Uehara, H. Macromolecules 2007, 40, 9413-9419.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
方法(i)〜(iv)は、スカイブ法により製造したフィルムよりも高い強度が得られる。しかし、ドーム屋根材等の用途に使用されるPTFEフィルムは、特に高い引張破断強度が求められる場合が多く、そのさらなる向上が求められている。
【0009】
本発明は、より高い引張破断強度を有するPTFE延伸フィルムの製造方法、および該製造方法により得られるPTFE延伸フィルムの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、前記課題を解決するために以下の構成を採用した。
[1]下記工程(I)および(II)を有するPTFE延伸フィルムの製造方法。
(I)数平均分子量5×10以上のPTFE(A)のエマルションと、数平均分子量1×10〜4×10のPTFE(B)のエマルションとを、PTFE(A)とPTFE(B)の固形分比(A/B)が99/1〜10/90となるように混合して得られた樹脂組成物を、減圧雰囲気下、溶融状態で圧縮成形してフィルムを得る工程。
(II)前記フィルムを溶融延伸する工程。
[2]前記工程(I)が、減圧雰囲気下、前記樹脂組成物を融点以下に加熱した状態で押圧する工程(I−1)と、減圧雰囲気下、加熱押圧された樹脂組成物をさらに加熱して溶融状態とし、前記工程(I−1)の押圧より高圧で圧縮成形する工程(I−2)を有する、[1]に記載のPTFE延伸フィルムの製造方法。
[3]前記減圧雰囲気が、10Torr以下の減圧雰囲気である、[1]または[2]に記載のPTFE延伸フィルムの製造方法。
[4]前記工程(I)における樹脂組成物を溶融状態とする温度が330〜420℃である、[1]〜[3]のいずれか一項に記載のPTFE延伸フィルムの製造方法。
[5]前記工程(I)で使用する溶融前の樹脂組成物が粉末状である、[1]〜[4]のいずれか一項に記載のPTFE延伸フィルムの製造方法。
[6]前記PTFE(A)およびPTFE(B)が、乳化重合により得られたPTFEである、[1]〜[5]のいずれか一項に記載のPTFE延伸フィルムの製造方法。
[7]前記工程(II)でフィルムを溶融状態とする温度が330〜420℃である、[1]〜[6]のいずれか一項に記載のPTFE延伸フィルムの製造方法。
[8]前記溶融延伸が二軸延伸である、[1]〜[7]のいずれか一項に記載のPTFE延伸フィルムの製造方法。
[9]前記二軸延伸が、前記フィルムに熱風を吹きつけて溶融状態とし、二軸同時に延伸する同時二軸延伸である、[8]に記載のPTFE延伸フィルムの製造方法。
[10]前記同時二軸延伸において、延伸倍率を2.5倍以上とする、[9]に記載のPTFE延伸フィルムの製造方法。
[11][1]〜[10]のいずれか一項に記載のPTFE延伸フィルムの製造方法により製造され、ヘイズが50%以下で、かつ引張破断強度が30MPa以上であるPTFE延伸フィルム。
【発明の効果】
【0011】
本発明の製造方法によれば、高い引張破断強度を有するPTFE延伸フィルムが得られる。
本発明のPTFE延伸フィルムは、引張破断強度が高い。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明における工程(I)の一例を示した分解斜視図である。
【図2】本発明の工程(II)に使用する延伸機の一例を示した縦断面図である。
【図3】図2の延伸機の下部熱風吹き付け部をチャック部から見た平面図である。
【図4】例6〜8における延伸倍率と引張破断強度の関係を示したグラフである。
【図5】例10〜12で使用した延伸機を示した正面図である。
【図6】例10〜12で使用した延伸機を示した断面図である。
【図7】例10〜12における赤道線方向の擬六方晶100面反射ピークの積分強度を延伸時間に対してプロットしたグラフである。
【図8】例10〜12における延伸時間と非晶散乱の積分強度比の関係を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<PTFE延伸フィルムの製造方法>
本発明のPTFE延伸フィルムの製造方法は、下記工程(I)および(II)を有する方法である。
(I)数平均分子量5×10以上のPTFE(A)のエマルションと、数平均分子量1×10〜4×10のPTFE(B)のエマルションとを、PTFE(A)とPTFE(B)の固形分比(A/B)が99/1〜10/90となるように混合して得られた樹脂組成物を、減圧雰囲気下、溶融状態で圧縮成形してフィルムを得る工程。
(II)前記フィルムを溶融延伸する工程。
【0014】
[樹脂組成物]
樹脂組成物は、数平均分子量5×10以上のPTFE(A)のエマルションと、数平均分子量1×10〜4×10のPTFE(B)のエマルションとを混合した後、凝集、乾燥することで得られる。
PTFE(A)のエマルションとPTFE(B)のエマルションの混合におけるPTFE(A)とPTFE(B)の固形分比(A/B)は、99/1〜10/90であり、95/5〜20/80が好ましく、90/10〜40/60がより好ましい。
【0015】
PTFE(A)およびPTFE(B)には、テトラフルオロエチレン(以下、「TFE」という。)の単独重合体に加え、変性PTFEが含まれる。変性PTFEとは、押出成形、射出成形等の溶融成形性を付与しない範囲で、TFEに含フッ素コモノマーを共重合して得たコポリマーである。
前記含フッ素コモノマーとしては、例えば、フッ化ビニリデン(VdF)、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)、パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)(PFAVE)、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)、ポリフルオロアルキルエチレン、パーフルオロ−2,2−ジメチル−1,3−ジオキソール、パーフルオロ−4−アルキル−1,3−ジオキソールおよびCF=CFO(CFCF=CF(式中、nは1または2である。)から選ばれる1種以上が挙げられる。
PTFE(A)が変性PTFEである場合、全繰り返し単位に対する含フッ素コモノマーに基づく繰り返し単位の割合は、PTFE固有の耐熱性、耐候性および撥水性を維持する点から、0.5質量%以下が好ましく、0.4質量%以下がより好ましい。
PTFE(B)が変性PTFEである場合、全繰り返し単位に対する含フッ素コモノマーに基づく繰り返し単位の割合は、PTFE固有の耐熱性、耐候性および撥水性を維持する点から、0.5質量%以下が好ましく、0.4質量%以下がより好ましい。
【0016】
PTFE(A)の数平均分子量(以下、「Mn」という。)は、5×10以上であり、5×10〜5×10が好ましく、5×10〜2×10がより好ましい。PTFE(A)のMnが5×10以上であれば、高い引張破断強度を有するPTFE延伸フィルムが得られる。また、PTFE(A)のMnが5×10以下であれば、溶融粘度が高くなりすぎず、工程(II)の溶融延伸が容易になる。
なお、本明細書におけるMnは、原料PTFE粉末を溶融後に示差走査型熱量計(DSC)の降温測定を行って見積もった結晶化熱から、下記の文献に記載の方法に従って求めた分子量である。
文献:Suwa, T.; Takehisa, M.; Machi, S., J. Appl. Polym. Sci. vol.17, pp.3253 (1973).
【0017】
PTFE(A)のエマルション中のPTFE(A)の平均粒子径は、0.03〜0.5μmが好ましく、0.04〜0.4μmがより好ましい。PTFE(A)の平均粒子径が0.03μm以上であれば、強度が高いPTFE延伸フィルムが得られやすい。PTFE(A)の平均粒子径が0.5μm以下であれば、延伸時にフィルムが破れにくくなる。
PTFE(A)の平均粒子径は、分光光度計により測定される。
【0018】
PTFE(A)のエマルション中のPTFE(A)の固形分濃度は、3〜50質量%が好ましく、4〜45質量%がより好ましく、5〜40質量%がさらに好ましい。
【0019】
PTFE(B)のMnは、1×10〜4×10であり、1.2×10〜3.5×10が好ましく、1.5×10〜3×10がより好ましい。PTFE(A)のMnが1×10以上であれば、PTFE延伸フィルムの強度を高く維持できる。また、PTFE(B)のMnが4×10以下であれば、伸び易い成形フィルムが得られる。
【0020】
PTFE(B)のエマルション中のPTFE(B)の平均粒子径は、0.03〜0.5μmが好ましく、0.04〜0.4μmがより好ましい。PTFE(B)の平均粒子径が0.03μm以上であれば、強度が高いPTFE延伸フィルムが得られやすい。PTFE(B)の平均粒子径が0.5μm以下であれば、延伸時にフィルムが破れにくくなる。
PTFE(B)の平均粒子径は、分光光度計により測定される。
【0021】
PTFE(B)のエマルション中のPTFE(B)の固形分濃度は、3〜50質量%が好ましく、4〜45質量%がより好ましく、5〜40質量%がさらに好ましい。
【0022】
PTFE(A)およびPTFE(B)は、引張破断強度が高いPTFE延伸フィルムが得られやすい点から、乳化重合により得られたPTFEであることが好ましい。また、PTFE(A)およびPTFE(B)を乳化重合により製造すれば、PTFE(A)およびPTFE(B)のエマルションが得られるので、別途分散処理を行わなくてもそれらのエマルションを混合して樹脂組成物を調製できる。
乳化重合としては、例えば、水、含フッ素界面活性剤、ラジカル重合開始剤およびパラフィンワックス安定剤の存在下に、TFEを必須成分として含み、必要に応じて含フッ素コモノマーを含むモノマー組成物を重合させる方法が挙げられる。
【0023】
含フッ素界面活性剤としては、アニオン性の含フッ素界面活性剤が好ましい。アニオン性の含フッ素界面活性剤としては、例えば、下式(1)で示される化合物(以下、「化合物(1)」という。)が好ましい。
−COOX ・・・(1)
(ただし、式(1)中、Rは炭素数5〜9で、水素原子の90〜100%がフッ素原子で置換されたアルキル基(ただし、該アルキル基は1個または2個のエーテル性の酸素原子を有してもよい。)であり、Xは、−NH、水素原子またはアルカリ金属である。)
【0024】
化合物(1)としては、水への溶解性に優れると共に、金属イオン成分がPTFE(A)やPTFE(B)中に不純物として残留するおそれがない点から、Xが−NHであるアンモニウム塩が好ましい。具体例としては、COCOCCOONH(以下、「EEA」と記す。)、C15COONH(以下、「APFO」と記す。)、HC14COONH、C13COONH、HC12COONH、C17COONH、COCCOONH等が挙げられる。なかでも、重合プロセスの安定性の点から、EEAまたはAPFOが特に好ましい。
含フッ素界面活性剤の使用量は、生成するPTFEの総量に対して、0.05〜1.0質量%が好ましく、0.1〜0.8質量%がより好ましく、0.15〜0.6質量%が特に好ましい。
【0025】
ラジカル重合開始剤としては、例えば、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム等の過硫酸塩;ジコハク酸パーオキシド、ジグルタル酸パーオキシド、tert−ブチルヒドロパーオキシド等の水溶性有機過酸化物;塩素酸塩、臭素酸塩、過マンガン酸塩と、還元剤との組み合わせによる酸化還元系重合開始剤等が挙げられる。
ラジカル重合開始剤の使用量は、重合に使用するモノマーの総量に対して0.01〜0.20質量%が好ましく、0.01〜0.15質量%がより好ましい。
【0026】
パラフィンワックス安定剤としては、融点が30〜99℃の精製ワックスが好ましく、融点が40〜80℃の精製ワックスがより好ましく、融点が45〜70℃の精製ワックスがさらに好ましい。
パラフィンワックス安定剤の使用量は、使用する水の質量に対して、0.1〜12質量%が好ましく、0.1〜8質量%がより好ましい。
【0027】
乳化重合の重合温度は、10〜95℃が好ましく、15〜90℃がより好ましい。
重合圧力は0.5〜4.0MPaが好ましく、0.6〜3.5MPaがより好ましい。
重合時間は90〜520分が好ましく、90〜450分がより好ましい。
【0028】
PTFE(A)のエマルションとPTFE(B)のエマルションを混合した後、その混合エマルションを凝集し、乾燥することで、PTFE(A)とPTFE(B)が二次粒子レベルで混合された樹脂組成物の粉末が得られる。
凝集方法としては、公知の方法が採用できる。例えば、混合エマルション(100質量%)中のPTFE(A)とPTFE(B)を合計した濃度が8〜20質量%になるように、混合エマルションを水で希釈した後、激しく撹拌して樹脂組成物を凝集させる。
凝集の際は、必要に応じて、混合エマルションのpHを調節してもよく、電解質、水溶性の有機溶剤等の凝集助剤を加えてもよい。
pH調節剤としては、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウムが挙げられる。
電解質としては、硝酸カリウム、硝酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム等の無機塩等が挙げられる。
水溶性の有機溶剤としては、アルコール類、アセトン等が挙げられる。
【0029】
樹脂組成物を凝集させた後、適度に撹拌し、凝集した樹脂組成物を水から分離し、造粒、整粒して、湿潤状態の樹脂組成物を得る。なお、樹脂組成物の平均粒子径が100μmまで成長する過程を造粒とし、撹拌を続けることで粒子性状や粒度分布が整えられる過程を整粒とする。
次に、混合エマルションから分離した湿潤状態の樹脂組成物を乾燥する。
湿潤状態の樹脂組成物の乾燥温度は、110〜250℃が好ましく、120〜230℃がより好ましい。
【0030】
樹脂組成物の平均粒子径は、0.001〜1mmが好ましい。樹脂組成物の平均粒子径が0.001mm以上であれば、樹脂組成物の入手が容易になる。また、樹脂組成物の平均粒子径が1mm以下であれば、圧縮成形の際、樹脂組成物を均一に配置しやすい。
樹脂組成物の平均粒子径は、レーザー式粒径測定器により測定される。
【0031】
[工程(I)]
工程(I)としては、特に後述の工程(II)で二軸延伸を行う場合、引張破断強度が高いPTFE延伸フィルムが得られやすい点から、下記工程(I−1)〜工程(I−3)を有する工程が好ましい。
(I−1)減圧雰囲気下、樹脂組成物を融点以下に加熱した状態で押圧する工程。
(I−2)減圧雰囲気下、加熱押圧された樹脂組成物をさらに加熱して溶融状態とし、工程(I−1)の押圧より高圧で圧縮成形する工程。
(I−3)減圧雰囲気下、押圧した状態のまま放冷して成形フィルムを得る工程。
工程(I)は、圧縮成形装置を使用して実施できる。圧縮成形装置としては、例えば、真空チャンバ内にプレス機を設置した真空プレス機が使用できる。以下、一例として真空プレス機を使用した工程(I−1)〜(I−3)を説明する。また、以下、工程(I−1)において樹脂組成物を押圧する圧力を第1圧力V(単位:MPa)、工程(I−2)において樹脂組成物を押圧する圧力を第2圧力V(単位:MPa)とする。
【0032】
工程(I−1):
図1に示すように、ステンレス板11上に、離型用ポリイミド膜12を置き、さらに所望の形状の開口13aが形成されたステンレス板13を置く。次いで、開口13a内に、樹脂組成物を所定量投入した後、ステンレス板13上に離型用ポリイミド膜14を置き、さらにその上にステンレス板15を置いてフィルム成形用の積層体1を得る。次いで、室温下で、真空チャンバ内に設置されたプレス機の上板と下板の間に積層体1を設置し、真空チャンバ内を減圧して減圧雰囲気とし、プレス機の上板と下板を積層体1に圧力がかからないよう触れる程度まで近づけてから、該上板と下板を加熱することで積層体1を樹脂組成物の融点以下の所定の温度に加熱し、その後、プレス機により樹脂組成物を第1圧力Vで押圧する。
樹脂組成物を、融点以下に加熱した状態で押圧することで、原料粉末間の空気を効率的に除去できるので、空隙のない均一な成形フィルムを得やすくなる。なお、樹脂組成物の融点は、示差走査型熱量計(DSC)により測定される。
【0033】
開口13aに投入する樹脂組成物の状態は、例えば、粉末状、塊状等が挙げられる。樹脂組成物は、取り扱い性に優れ、脱気効率が高い点から、粉末状が好ましい。
開口13aへの樹脂組成物の投入量は、投入する樹脂組成物の体積Vと、開口13aの容積Vとの比(V/V)が1〜10となる量が好ましい。前記比(V/V)が1以上であれば、原料間の接着性が良好で、高倍率の溶融延伸に適した強度の高い成形フィルムが得られやすい。また、前記比(V/V)が10以下であれば、圧縮成形による成形フィルムの製造が容易になる。
【0034】
真空チャンバ内の減圧雰囲気の圧力は、樹脂組成物からの脱気効率が優れる点から、10Torr(約1.33kPa)以下が好ましく、1Torr(約1.33×10Pa)以下がより好ましい。また、ロータリーポンプ等の真空ポンプの付設により通常のプレス成形機でもフィルム成形が可能となることから、減圧雰囲気の圧力は、1×10−3Torr(約0.13Pa)以上が好ましく、1×10−2Torr(約1.33Pa)以上がより好ましい。
【0035】
加熱の際の樹脂組成物の周囲の温度(以下、工程(I−1)における樹脂組成物の周囲の温度を「温度T」という。)は、PTFEの融点以下とする。温度TがPTFEの融点以下であれば、原料粉末が固相状態(融点以下)であるため、原料粉末自体が塑性変形するので、原料粉末間の空気を効率的に除去できる。温度Tは、15〜150℃が好ましく、60〜120℃がより好ましい。
樹脂組成物の加熱は、ステンレス板11、13、15の加熱、赤外線等のレーザー照射、熱風の吹き付け等により行える。
【0036】
真空チャンバ内を減圧する操作と、加熱操作の順序は特に限定されず、真空チャンバ内を減圧した後に樹脂組成物を加熱してもよく、樹脂組成物を加熱した後に真空チャンバ内を減圧してもよく、真空チャンバ内を減圧しながら樹脂組成物を加熱してもよい。
【0037】
第1圧力Vは、0.01〜100MPaが好ましく、0.01〜50MPaがより好ましく、0.1〜10MPaがさらに好ましい。第1圧力Vが0.01MPa以上であれば、強度が高く工程(II)において破損し難い成形フィルムが得られ、引張破断強度が高いPTFE延伸フィルムが得られやすい。また、第1圧力Vが0.1MPa以上であれば、高い引張破断強度を有するPTFE延伸フィルムがより安定して得られやすい。また、第1圧力Vが100MPa以下であれば、特別な機構を有していないプレス成形機でも使用できる。
工程(I−1)における第1圧力Vは、工程中に前記範囲内で圧力を高くしたり、低くしたりして変動させてもよい。ただし、品質が一定した成形フィルムが安定して得られやすい点から、第1圧力Vは前記範囲内において一定の圧力で維持することが好ましい。
【0038】
樹脂組成物を温度Tに加熱した状態で第1圧力Vで押圧する時間は、1〜100分が好ましく、5〜60分がより好ましい。前記時間が1分以上であれば、該樹脂組成物からの脱気効率が向上し、原料粉末間の密着性が良好な強度の高い成形フィルムが得られやすくなる。また、前記時間が100分以下であれば、生産性が向上する。
【0039】
工程(I−2):
減圧雰囲気下、加熱押圧された樹脂組成物の周囲の温度(以下、工程(I−2)における樹脂組成物の周囲の温度を「温度T」という。)が、樹脂組成物の融点以上となるようにさらに加熱して、樹脂組成物を溶融させた状態で、プレス機により第2圧力Vで樹脂組成物を押圧して一定時間保持することでフィルム形状に圧縮成形する。
工程(I−2)における減圧雰囲気の圧力の好ましい範囲は、工程(I−1)における減圧雰囲気の圧力の好ましい範囲と同じである。
【0040】
温度Tは、330〜420℃が好ましく、350〜400℃がより好ましい。温度Tが330℃以上であれば、樹脂組成物の原料粉末が押圧によって融着し、溶融延伸可能な成形フィルムが得られやすい。また、温度Tが420℃以下であれば、樹脂組成物が熱分解して劣化することを抑制しやすい。
【0041】
第2圧力Vは、0.1〜100MPaが好ましく、1〜50MPaがより好ましい。第2圧力Vが0.1MPa以上であれば、原料間の接着性が良好になり、強度が高い成形フィルムが得られやすい。また、第2圧力Vが100MPa以下であれば、特別な機構を有していないプレス成形機でも使用できる。
工程(I−2)における第2圧力Vは、工程中に前記範囲内で圧力を高くしたり、低くしたりして変動させてもよい。ただし、品質が一定した成形フィルムが安定して得られやすく、その製造が容易である点から、第2圧力Vは前記範囲内において一定の圧力で維持することが好ましい。
【0042】
工程(I−2)は、圧縮によって樹脂組成物の原料粉末間の密着性を向上させて均一なフィルムを得るための工程であるので、工程(I−2)の第2圧力Vは工程(I−1)の第1圧力Vよりも高いことが好ましい。第2圧力Vと第1圧力Vの差(V−V)は、0.1〜99MPaが好ましく、1〜50MPaがより好ましい。差(V−V)が0.1MPa以上であれば、工程(I−1)で得られた溶融状態の樹脂組成物を容易にフィルム状に成形できる。また、差(V−V)が99MPa以下であれば、特別な機構を有していないプレス成形機を使用できる。
【0043】
温度Tで維持した状態で樹脂組成物を第2圧力Vで押圧して圧縮する時間は、1〜100分が好ましい。圧縮時間が1分以上であれば、原料間の接着性が良好で強度の高い成形フィルムが得られやすい。また、圧縮時間が100分以下であれば、生産性が向上する。
【0044】
工程(I−3):
減圧雰囲気下、プレス機によって第2圧力Vで押圧した状態で放冷することにより、フィルム形状に圧縮されている樹脂組成物を、その融点未満、好ましくは室温まで冷却して固化させる。そして、真空チャンバ内から取り出した積層体1を分解して成形フィルムを得る。これにより、PTFE(A)およびPTFE(B)を含有する成形フィルムが得られる。
【0045】
成形フィルムの厚みは、0.01〜100mmが好ましく、0.1〜10mmがより好ましい。成形フィルムの厚みが0.01mm以上であれば、原料間の密着性が向上する。また、成形フィルムの厚みが100mm以下であれば、成形フィルムの溶融延伸が容易になる。成形フィルムの厚みは、ステンレス板13の厚み、および開口13aへの樹脂組成物の投入量により調節できる。
成形フィルムの形状は、本発明の製造方法により製造するPTFE延伸フィルムの用途に応じた形状であればよく、特に限定されない。成形フィルムの形状は、ステンレス板13の開口13aの形状を調節することにより所望の形状にできる。
【0046】
以上のように、前記工程(I−1)から工程(I−3)までは、減圧雰囲気下で行う。これにより、樹脂組成物が脱気され、成形フィルム中に空気が混入することを防止できる。そのため、成形フィルムにおけるPTFE間の接着性が良好となり、後述する工程(II)の溶融延伸において破損し難い成形フィルムが得られる。
また、前記工程(I−1)〜工程(I−3)では、樹脂組成物を融点以下に加熱した状態で押圧した後、さらに高温で溶融させた状態で、より高圧を印加してフィルム形状に圧縮成形する。これにより、押圧していない状態で樹脂組成物を溶融する場合に比べ、樹脂組成物の原料粉末間の密着性が向上し、より高い強度を有する成形フィルムが得られる。そのため、工程(II)において該成形フィルムが破損させずに高倍率で溶融延伸でき、より引張破断強度が高いPTFE延伸フィルムが得られる。また、樹脂組成物を押圧した状態で溶融させることで、原料間の密着性が向上するため、特に工程(II)で二軸延伸する際に原料間が剥離して多孔化することを抑制しやすく、得られるPTFE延伸フィルムの透明性も向上する。
【0047】
本発明における工程(I)は、前記工程(I−1)〜工程(I−3)には限定されない。例えば、特に工程(II)で一軸延伸を行う場合は、工程(I−1)を行わず、工程(I−2)と工程(I−3)のみを行ってもよい。
また、前記積層体1を使用する方法には限定されない。例えば、本実施形態では、ステンレス板11、離型用ポリイミド膜12、ステンレス板13、離型用ポリイミド膜14、ステンレス板15は全て円盤状であるが、これらの形状は円盤状以外であってもよい。また、開口13aについても本実施形態例では矩形であるが、矩形以外の形状であってもよい。また、開口13aが形成された円盤状のステンレス板13を有さず、2枚の離型用ポリイミド膜で樹脂組成物を挟んだ積層体を使用してもよい。また、フィルム形状の開口部を有する金型を使用してもよい。フィルムがステンレス等の基板や金型に粘着しなければ、離型用ポリイミド膜は使用しなくてもよい。また、離型材は、ポリイミドフィルム以外にも、400℃まで分解しないポリマー、金属等が好適に利用できる。また、工程(I−1)を行った後に樹脂組成物を取り出し、工程(I−2)として溶融状態でロール圧延してもよい。
【0048】
[工程(II)]
例えば、図2に例示したチャック式の延伸機101により、工程(I)で得られた成形フィルムを熱風吹き付けにより溶融させた状態で延伸する。PTFE(A)およびPTFE(B)を含有する成形フィルムは、分子量が数平均分子量1×10以上の超高分子量の樹脂成形体であるため、溶融粘度が高く、溶融状態でもフィルム状態を保持したまま延伸できる。
延伸機101は、図2に示すように、上部熱風吹き付け部110(以下、「吹き付け部110」という。)と、成形フィルム20を把持するチャック部120と、下部熱風吹き付け部130(以下、「吹き付け部130」という。)とを備えている。
【0049】
チャック部120は、成形フィルム20を把持して、溶融状態の成形フィルム20を引っ張って延伸する部分である。チャック部120は、同一水平面(図2と直交する面)上にある4つのチャックで成形フィルム20の4つの角をそれぞれ把持し、それらチャックをそれぞれ成形フィルム20の対角線方向に引き離していくことで成形フィルム20を縦方向および横方向に二軸延伸できるようになっている。
【0050】
吹き付け部110は、成形フィルム20に上部から熱風を吹き付ける部分である。吹き付け部110は、内部110aに熱風を導入する熱風導入口111と、熱風を吹き出す吹出し口112が設けられており、上部には透明な上蓋113が設けられている。吹き付け部110の内部110aの形状は、成形フィルム20側にいくほど窄まった形状になっている。
【0051】
吹き付け部110においては、熱風が熱風導入口111から内部110aへと導かれ、吹出し口112から成形フィルム20に向けて吹き出されるようになっている。延伸機101では、吹き付け部110の内部110aの形状を窄まった形状にすることにより、成形フィルム20においてチャック部120で把持されている部分とその近傍には吹出し口112から出る熱風が吹き付けられず、成形フィルム20の中央部だけに熱風が吹き付けられるようになっている。そのため、成形フィルム20のチャック部120で把持されている部分とその近傍を溶融させずに、成形フィルム20の中央部分を溶融させることができる。
【0052】
また、吹き付け部110の上部は、透明の上蓋113が設けられているため、吹き付け部110の上部から直接目視により成形フィルム20が溶融したことを確認してから延伸操作に移行できる。
【0053】
吹き付け部130は、成形フィルム20に下部から熱風を吹き付ける部分である。吹き付け部130は、内部130aに熱風を導入する熱風導入口131と、熱風を吹き出す吹出し口135aが形成された熱風吹き出し板135と、内部130aで吹出し口135aに熱風を導く導風板132、133、134が設けられている。導風板132、133、134にはそれぞれ開口132a、133a、134aが形成されている。
【0054】
この例では、図3に示すように、熱風吹き出し板135に9つの吹出し口135aが形成されている。また、これら吹出し口135aはそれぞれ、成形フィルム20におけるチャック部120により把持された部分とその近傍を除いた部分だけに熱風が吹き付けられる位置に形成されている。すなわち、全ての吹出し口135aが、未延伸状態の成形フィルム20の中央部分に対応する位置に形成されている。
また、導風板132、133、134にそれぞれ形成されている開口132a、133a、134aの数、大きさ、位置等は、コンピュータによるシミュレーションにより、吹出し口135aから熱風が効率良く垂直に吹き出せるように計算されている。
【0055】
吹き付け部130では、熱風が熱風導入口131から導入され、内部130aで導風板132、133、134に形成された開口132a、133a、134aを順次通過し、熱風吹き出し板135に設けられた吹出し口135aから吹き出される。これにより、熱風が成形フィルム20の中央部分のみに吹き付けられる。このように、延伸機101では、吹き付け部110からの熱風および吹き付け部130からの熱風が、成形フィルム20のチャック部120に把持された部分とその近傍には吹き付けられないようになっている。そのため、それらの部分を樹脂組成物の融点よりも低い温度に維持した状態で成形フィルム20の中央部分のみを溶融させられる。
【0056】
工程(II)では、吹き付け部110と吹き付け部130からの熱風により、成形フィルム20の周囲の温度(以下、「温度T」という。)を、成形フィルム20が溶融する温度、すなわち樹脂組成物の融点以上の温度で一定時間維持し、成形フィルム20におけるチャック部120により把持している部分以外を溶融させた状態で、成形フィルム20をチャック部120により延伸することで溶融延伸する。このような部分熱風吹き付けにより溶融延伸すれば、成形フィルム20に破損を生じさせずに溶融延伸することが容易になり、高い強度で優れた透明性を有するPTFE延伸フィルムを得やすい。
【0057】
温度Tは、330〜420℃が好ましく、350〜400℃がより好ましい。温度Tが330℃以上であれば、成形フィルムを溶融状態で延伸できるので、引張破断強度が高いPTFE延伸フィルムが得られやすい。また、温度Tが420℃以下であれば、得られるPTFE延伸フィルムが熱分解により劣化することを抑制しやすい。
工程(II)において成形フィルム20を温度Tで維持する時間は、0.1〜100分が好ましく、1〜10分がより好ましい。前記時間が1分以上であれば、成形フィルム20を充分に溶融させやすい。また、前記時間が100分以下であれば、生産性が向上する。
【0058】
延伸は一軸延伸であってもよく、二軸延伸であってもよい。二軸延伸の場合、一軸ずつ逐次延伸する方法(逐次二軸延伸)であってもよく、二軸を同時に延伸する方法(同時二軸延伸)であってもよいが、高い引張破断強度で透明性に優れるPTFE延伸フィルムが安定して得られやすい点から、同時二軸延伸が好ましい。また、同時二軸延伸は、前記延伸機101のように、成形フィルムに熱風を吹きつけることで溶融状態として、同時二軸延伸することがより好ましい。
【0059】
成形フィルム20を溶融延伸する際の延伸速度は、1〜1000mm/分が好ましく、10〜100mm/分がより好ましい。延伸速度が1mm/分以上であれば、生産性が向上する。また、延伸速度が1000mm/分以下であれば、破損を生じさせずにPTFE延伸フィルムを製造することが容易になる。
【0060】
工程(II)における延伸倍率は、温度Tによっても異なるが、1.1倍〜10倍が好ましく、2倍〜5倍がより好ましい。延伸倍率が1.1倍以上であれば、高い引張破断強度を有するPTFE延伸フィルムが得られやすい。また、延伸倍率が10倍以下であれば、フィルムに破損を生じさせずに安定してPTFE延伸フィルムを製造することが容易になる。なお、延伸倍率とは、延伸前の成形フィルム20の延伸軸方向の長さに対する、延伸後のPTFE延伸フィルムの延伸軸方向の長さの倍率である。
【0061】
二軸延伸では、縦、横の二軸におけるそれぞれの延伸倍率が共に前記範囲内であることが好ましい。成形フィルム20を同時二軸延伸する場合の二軸の延伸倍率は、より高い引張破断強度のPTFE延伸フィルムが得られる点から、2.5倍以上が特に好ましい。また、フィルムの縦、横それぞれの方向に沿った引張破断強度、および透明性が均一なPTFE延伸フィルムが得られやすい点から、二軸それぞれの延伸倍率が同じで、かつ前記範囲内であることがより好ましい。
【0062】
以上説明した製造方法によれば、溶融延伸時の最大延伸倍率が高く加工性に優れており、従来のPTFE延伸フィルムに比べて引張破断強度の高いPTFE延伸フィルムが得られる。この要因は、以下のように考えられる。
Mnが5.0×10以上の高分子量のPTFE(A)を単独で使用した場合、工程(II)の溶融延伸時において、PTFE(A)の長い分子鎖の絡み合いがほぐれ難く、低い延伸倍率でフィルムが破断するために高い引張破断強度が得られない。一方、Mnが1.0×10〜4.0×10の高分子量のPTFE(B)を単独で使用した場合、工程(II)の溶融延伸では分子鎖がほぐれやすく、延伸方向に沿って分子鎖が配向しやすい。しかし、分子鎖が短いために分子末端が多く存在し、高い引張破断強度が得られない。これに対し、本発明の製造方法における、PTFE(A)とPTFE(B)を含有する樹脂組成物を使用した成形フィルムの溶融延伸では、分子鎖の短いPTFE(B)が存在することで、PTFE(A)の分子鎖の絡み合いがほぐれやすくなり、延伸方向に沿って配向しやすくなるため、これが骨格となって高い引張破断強度が得られると考えられる。
【0063】
なお、本発明の製造方法は、前述の方法には限定されない。例えば、工程(I)により成形フィルムを得た後に、該成形フィルムにロール圧延等によりさらに粉末間の密着性を高め、その後に工程(II)を行う方法であってもよい。
また、工程(II)において使用する延伸機は、前述の延伸機101には限定されず、例えば、成形フィルムの4つの角をそれぞれ把持するチャックを有し、該成形フィルムを縦、横いずれかの方向に一軸延伸できる延伸機であってもよく、成形フィルムの対向する2辺を把持して一軸延伸できる延伸機であってもよい。また、成形フィルム全体を加熱する加熱機構と、該成形フィルムのチャック部で把持される部分を冷却する冷却機構を有する延伸機であってもよい。
【0064】
<PTFE延伸フィルム>
本発明のPTFE延伸フィルムは、前述の製造方法により製造されるフィルムであり、高い引張破断強度を有している。
PTFE延伸フィルムの厚みは、用途に応じて適宜決定すればよく、0.001〜10mmが好ましく、0.01〜1mmがより好ましい。厚みが0.001mm以上であれば、フィルムにピンホールや亀裂等の破損がない均一なPTFE延伸フィルムを得やすい。また、厚みが10mm以下であれば、PTFE延伸フィルムの引張破断強度が向上する。
PTFE延伸フィルムの厚みは、成形フィルムの厚み、溶融延伸の延伸比を調節することにより制御できる。
【0065】
本発明のPTFE延伸フィルムの引張破断強度は、30MPa以上が好ましく、50MPa以上がより好ましい。ただし、PTFE延伸フィルムの引張破断強度とは、PTFE延伸フィルムから切り出した試料片について、引張試験機により室温にて引っ張り試験を行って得られた値を意味する。二軸延伸により得たPTFE延伸フィルムについては、JIS K7127:1999に従い、試料片の大きさはJISダンベル状5号形(直線部分12.5mm、幅4mm)とし、引張速度は20mm/分とする。また、一軸延伸については、JISダンベル状5号形の試験片を長さ方向に一軸延伸して得たPTFE延伸フィルムから、長さ30mmとなるように切り出した試料片を使用し、引張速度は0.6mm/分とする。引張試験機としては、例えば、テンシロン万能試験機RTC−1325A(ORIENTEC社製)が挙げられる。
引張破断強度は、使用するPTFE(A)およびPTFE(B)のMn、工程(I)におけるプレス圧力(V、V)、プレス温度(T、T)、工程(II)における溶融温度、延伸倍率等により調節できる。
【0066】
また、二軸延伸により得たPTFE延伸フィルムのヘイズ(曇度)は、50%以下が好ましく、45%以下がより好ましい。ただし、PTFE延伸フィルムのヘイズは、JIS K7105「プラスチックの光学的特性試験方法」に従って測定した値を意味する。
ヘイズは、使用するPTFE(A)およびPTFE(B)のMn、工程(I)におけるプレス圧力(V、V)、プレス温度(T、T)、工程(II)における溶融温度、延伸倍率等により調節できる。
【実施例】
【0067】
以下、実施例によって本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の記載によっては限定されない。
<PTFE、樹脂組成物の製造>
[例1]
100Lの攪拌機付圧力容器に、水の60L、含フッ素界面活性剤であるアンモニウム・パーフルオロ−3,6−ジオキサオクタノエイトの60g、パラフィンワックスの750gを仕込み、容器の内温を70℃、圧力を1.7MPaとして、ラジカル重合開始剤である2−コハク酸パーオキサイドの5gを添加して重合を開始した。重合は、容器の内圧が維持されるように、ガス状のTFEを導入しながら継続した。TFEの導入量が26kgとなった時点で、圧力容器の内温を室温まで冷却して重合を停止し、未反応ガスを空放して圧力容器を開放し、PTFE(A1)のエマルション(以下、「エマルション1」という。)を得た。エマルション1の固形分濃度は28質量%であった。
エマルション1を、固形分濃度が10質量%となるように水で希釈した後、機械撹拌によってPTFE(A1)を凝集させ、水をろ別し、200℃で7時間乾燥して、PTFE(A1)のファインパウダーを得た。得られたPTFE(A1)のMnは1×10であった。
【0068】
[例2]PTFEの製造
100Lの攪拌機付圧力容器に、水の60L、含フッ素界面活性剤であるアンモニウム・パーフルオロ−3,6−ジオキサオクタノエイトの65g、パラフィンワックスの750g、容器の内温を70℃、圧力を1.7MPaとして、ラジカル重合開始剤である2−コハク酸パーオキサイドの25gを添加して重合を開始した。重合は、容器の内圧が維持されるように、ガス状のTFEを導入しながら継続した。TFEの導入量が26kgとなった時点で、圧力容器の内温を室温まで冷却して重合を停止し、未反応ガスを空放して圧力容器を開放し、PTFE(B1)のエマルション(以下、「エマルション2」という。)を得た。エマルション2の固形分濃度は28質量%であった。
エマルション2を、固形分濃度が10質量%となるように水で希釈した後、機械撹拌によってPTFE(B1)を凝集させ、水をろ別し、200℃で7時間乾燥して、PTFE(B1)のファインパウダーを得た。得られたPTFE(B1)のMnは2×10であった。
【0069】
[例3]樹脂組成物の製造
例1で得たエマルション1と、例2で得たエマルション2とを、PTFE(A1)とPTFE(B1)との固形分比(A1/B1)が75/25となるように混合し、二次粒子レベルでPTFE(A1)とPTFE(B1)が分布した樹脂組成物Iのエマルションを得た。次いで、得られたエマルションを、固形分濃度が10質量%となるように水で希釈した後、機械撹拌によって樹脂組成物Iを凝集させ、水をろ別し、200℃で7時間乾燥して、樹脂組成物Iのファインパウダーを得た。
【0070】
[例4]樹脂組成物の製造
エマルション1とエマルション2とを、PTFE(A1)とPTFE(B1)との固形分比(A1/B1)が50/50となるように混合した以外は、例3と同様にして樹脂組成物IIのファインパウダーを得た。
【0071】
[例5]樹脂組成物の製造
エマルション1とエマルション2とを、PTFE(A1)とPTFE(B1)との固形分比(A1/B1)が25/75となるように混合した以外は、例3と同様にして樹脂組成物IIIのファインパウダーを得た。
【0072】
[数平均分子量(Mn)の測定]
各例で製造したPTFE(A1)、PTFE(B1)のMnは、原料PTFE粉末を溶融後にDSC降温測定を行って見積もった結晶化熱から、下記の文献に記載の方法に従って求めた分子量である。
文献:Suwa, T.; Takehisa, M.; Machi, S., J. Appl. Polym. Sci. vol.17, pp.3253 (1973).
【0073】
<二軸延伸によるPTFE延伸フィルムの製造>
[例6]
工程(I−1):
図1に示すように、直径100mm×厚さ2mmの円盤状のステンレス板11上に、厚さ125μmの離型用ポリイミド膜12(商品名「UPILEX−125S」、宇部興産社製)を置き、さらに縦70mm×横70mmの矩形の開口13aが形成された直径100mm×厚さ4mmの円盤状のステンレス板13を置き、開口13a内に、例4で得た樹脂組成物II(固形分比(A1/B1)=50/50)の4.5gを投入した。次いで、円盤状のステンレス板13上に厚さ125μmの離型用ポリイミド膜14(商品名「UPILEX−125S」、宇部興産社製)を置き、さらにその上に直径100mm×厚さ2mmの円盤状のステンレス板15を置き、フィルム成形用の積層体(積層体1)を得た。
次いで、上板および下板、および該上板と下板間に圧力を生じさせるシリンダを有する真空プレス機(ボールドウィン社製)を用い、室温にて、真空チャンバ内に設置されたプレス機の上板と下板の間に積層体1を置き、ロータリーポンプで真空チャンバ内を1×10−1Torrまで減圧した。その後、プレス機の上板と下板の温度(樹脂組成物IIの周囲の温度T)を10分かけて80℃まで昇温し、そのまま10分間保持した。この状態で、真空プレス機により2.2314MPa(第1圧力V、シリンダ圧力30MPa)で樹脂組成物IIを押圧した。
【0074】
工程(I−2):
減圧雰囲気を維持したまま、真空チャンバ内の温度(樹脂組成物IIの周囲の温度T)を370℃とし、真空プレス機による圧力を2.9752MPa(第2圧力V、シリンダ圧力40MPa)とし、その状態で5分間保持して圧縮成形を行った。
【0075】
工程(I−3):
工程(I−2)における減圧雰囲気と、第2圧力Vで押圧した状態を維持したまま、放冷により真空チャンバ内の温度を室温まで冷却し、真空チャンバから積層体1を取り出し、積層体1を分解して成形フィルムを得た。
なお、第1圧力Vおよび第2圧力Vは、それぞれシリンダ圧力から実効圧力を以下の方法で換算した。
(実効圧力)=(シリンダ圧力)×[(シリンダ面積)/(プレス板面積)]
【0076】
工程(II):
工程(I)で得た成形フィルムを縦45mm×横45mmに切り出し、400℃までの延伸に耐え得るように耐熱性を持たせた図2の延伸機101(アイランド工業社製)を使用して二軸延伸を行った。チャック部120で得られた成形フィルムを把持し、吹き付け部110および吹き付け部130それぞれから380℃の熱風を5分間吹き付けて成形フィルムを溶融させ、上蓋113側から目視により溶融状態となったことを確認してから、延伸速度30mm/分で縦方向および横方向に同時二軸延伸した。成形フィルムに穴が開くまで溶融延伸したところ、最大延伸倍率は2.9倍×2.9倍であった。そこで、延伸倍率を2.9倍×2.9倍に設定して同様の二軸延伸を再度実施してPTFE延伸フィルムを得て、引張破断強度とヘイズを測定した。
【0077】
[例7]
樹脂組成物IIの代わりに、例1で得たPTFE(A1)を使用した以外は、例6と同様にして成形フィルムを得た。その後、該成形フィルムに穴が開くまで、例6と同様にして溶融延伸したところ、最大延伸倍率は2.7倍×2.7倍であった。そこで、延伸倍率を2.7倍×2.7倍に設定して同様の二軸延伸を再度実施してPTFE延伸フィルムを得て、引張破断強度とヘイズを測定した。
【0078】
[例8]
樹脂組成物IIの代わりに、例2で得たPTFE(B1)を使用した以外は、例6と同様にして成形フィルムを得た。その後、該成形フィルムに穴が開くまで、例6と同様にして溶融延伸したところ、最大延伸倍率は2.4倍×2.4倍であった。そこで、延伸倍率を2.4倍×2.4倍に設定して同様の二軸延伸を再度実施してPTFE延伸フィルムを得て、引張破断強度とヘイズを測定した。
【0079】
[測定方法]
(引張破断強度)
JIS K7127:1999に従い、得られたPTFE延伸フィルム(厚さ46μm)から、JISダンベル状5号形状(直線部分12.5mm、幅4mm)で試料片を切り出し、テンシロン万能試験機RTC−1325A(ORIENTEC社製)を使用して、室温で引張破断強度(単位:MPa)を測定した。引張速度は20mm/分とした。
(ヘイズ)
得られたPTFE延伸フィルム(厚さ46μm)について、JIS K7105:1981「プラスチックの光学的特性試験方法」に従ってヘイズ(曇度、単位:%)を測定した。
【0080】
例6〜8で得られたPTFE延伸フィルムの測定結果を表1に示す。また、比較のために、例6の成形フィルムは延伸倍率2.4倍×2.4倍、2.7倍×2.7倍で溶融延伸したもの、例7の成形フィルムは延伸倍率2.4倍×2.4倍で溶融延伸したものの引張破断強度も測定し、延伸倍率と引張破断強度との関係を図4に示した。
【0081】
【表1】

【0082】
表1および図4に示すように、樹脂組成物IIを使用した例6のPTFE延伸フィルムは、PTFE(A1)を使用した例7、PTFE(B)を使用した例8のPTFE延伸フィルムに比べて、最大延伸倍率が大きく、引張破断強度が高かった。また、図4に示すように、樹脂組成物IIを使用した例6のPTFE延伸フィルムは、延伸倍率が2.5倍以上となった時点で引張破断強度が著しく向上した。
【0083】
[例9]
樹脂組成物IIの代わりに、例3で得た樹脂組成物I(固形分比(A/B)=75/25)、例5で得た樹脂組成物III(固形分比(A/B)=25/75)を使用した以外は例6と同様にして得た成形フィルム、および例6と同様にして得た成形フィルム(固形分比(A/B)=50/50)を、縦25mm×横25mmに切り出したそれぞれの試料片について、例6と同様にして、フィルムに穴が開くまで溶融状態で同時二軸延伸し、最大延伸倍率を求めた。その結果を表2に示す。
【0084】
【表2】

【0085】
表2に示すように、固形分比(A/B)が75/25、50/50、25/75である樹脂組成物I〜IIIによる成形フィルムの溶融延伸では、いずれも最大延伸倍率が2.9倍×2.9倍程度と高く、ほぼ同等の溶融延伸が可能であった。
【0086】
<一軸延伸によるPTFE延伸フィルムの製造>
[例10]
工程(I):
例6と同様にして、樹脂組成物II(固形分比(A/B)=50/50)を挟み込んだフィルム成形用の積層体1を得た。
次いで、上板および下板、および該上板と下板間に圧力を生じさせるシリンダを有する真空プレス機(ボールドウィン社製)を使用し、室温にて、真空チャンバ内に設置されたプレス機の上板と下板の間に積層体1を置き、ロータリーポンプで真空チャンバ内を1×10−1Torrまで減圧した。その後、プレス機の上板と下板の温度(樹脂組成物IIの周囲の温度T)を370℃とし、その温度で5分間保持した後、真空プレス機により2.2314MPa(シリンダ圧力30MPa)で樹脂組成物IIを押圧して圧縮成形を行った。次いで、減圧雰囲気と、真空プレス機により押圧した状態を維持したまま、放冷により真空チャンバ内の温度を室温まで冷却し、真空チャンバから積層体1を取り出し、積層体1を分解して成形フィルムを得た。
【0087】
工程(II):
工程(I)で得た成形フィルムからJISダンベル状5号形状(直線部分12.5mm、幅4mm)の試験片を切り出し、400℃までの延伸に耐え得るように耐熱性を持たせた図5および図6に例示した自作の延伸機201を使用して一軸延伸を行った。
延伸機201は、延伸炉210と、延伸炉210内に熱風を吹き込む上部熱風吹き付け部220(以下、「吹き付け部220」という。)および下部熱風吹き付け部230(以下、「吹き付け部230」という。)と、延伸炉210内で試験片30を把持するチャック部240とを備えている。また、延伸炉210の正面221には、外部から試験片30の溶融状態を確認できるように、透明の窓222が形成されている。窓222は、ポリイミド膜(厚さ25μm)で封じられている。
チャック部240で試験片30の持ち手部分を把持し、吹き付け部220および吹き付け部230それぞれから370℃の熱風を5分間吹き付けて試験片30を溶融させ、窓222から目視により溶融状態となったことを確認してから、延伸速度24mm/分で長さ方向に一軸延伸し、PTFE延伸フィルムを得た。延伸倍率は3.0倍とした。得られたPTFE延伸フィルムについて、引張破断強度を測定した。
【0088】
[例11]
樹脂組成物IIの代わりに、例1で得たPTFE(A1)を使用した以外は、例10と同様にしてPTFE延伸フィルムを得て、引張破断強度を測定した。
【0089】
[例12]
樹脂組成物IIの代わりに、例2で得たPTFE(B1)を使用した以外は、例10と同様にしてPTFE延伸フィルムを得て、引張破断強度を測定した。
【0090】
[測定方法]
(引張破断強度)
得られたPTFE延伸フィルムから、長さ30mmの試料片を切り出し、テンシロン万能試験機RTC−1325A(ORIENTEC社製)を使用して、室温で引張破断強度(単位:MPa)を測定した。引張速度は、0.6mm/分とした。
【0091】
(溶融延伸過程における非晶配向)
例10〜12の試験片30の一軸延伸を、高輝度光科学研究センターのSPring−8 BL40B2ビームライン上に前記延伸機201を設置した状態で実施し、シンクロトン放射線を使用して、延伸過程におけるインプロセス計測を行った。延伸過程におけるWAXD像は、CCDカメラC4880(浜松ホトニクス社製)を使用して連続的に記録した。露光時間は0.2秒、記録したWAXD像の記録媒体(ハードティスク)への転送に要する時間は5.5秒であった。
各時間におけるWAXD像から、試験片30の長さ方向(子午線方向)と幅方向(赤道線方向)のプロファイルをそれぞれ切り出し、フォークト(Voigt)関数を使用して、赤道線方向のプロファイルについては、非晶散乱ピークと擬六方晶100面反射ピークに分離し、積分強度を算出した。また、子午線方向のプロファイルについては、非晶散乱ピークの積分強度を求めた。
このうち、赤道線方向の擬六方晶100面反射ピークの積分強度を延伸時間に対してプロットした(図7)。この値は、延伸方向への結晶鎖の配向状態(結晶配向)を定量的に表す指標となる。
また、赤道線方向の非晶散乱ピークの積分強度の子午線方向の非晶散乱ピークの積分強度に対する比を延伸時間に対してプロットした(図8)。この値は、延伸方向への非晶鎖の配向状態(非晶配向)を定量的に表す指標となる。
なお、図8においては、未延伸時の試験片30における赤道線方向と子午線方向の非晶散乱の積分強度比を1.0とした。擬六方晶100面反射ピークの積分強度(図7)および非晶散乱の積分強度比(図8)が大きいほど、成形フィルムの結晶鎖および非晶鎖が延伸方向に配向していることを意味する。
【0092】
例10〜12のPTFE延伸フィルムの引張破断強度を表3に示す。
【0093】
【表3】

【0094】
表3に示すように、樹脂組成物IIを使用した例10のPTFE延伸フィルムは、PTFE(A1)を使用した例11、PTFE(B)を使用した例12のPTFE延伸フィルムに比べて、引張破断強度が高かった。
また、図7に示すように、高分子量のPTFE(A1)を使用した例11、低分子量のPTFE(B1)を使用した例12に比べて、PTFE(A1)とPTFE(B1)を含有する樹脂組成物IIを使用した例10では、延伸時間60秒付近から、擬六方晶100面反射ピークの積分強度が急激に上昇した。また、図8に示すように非晶散乱の積分強度比についても例10では延伸時間40秒付近から急激に上昇した。これは、樹脂組成物IIを使用した例10の成形フィルムの延伸において、延伸時間40〜60秒にかけて、延伸方向への非晶成分の急激な配向化と、それに伴う結晶化が進行していることを示唆している。この要因としては、低分子量のPTFE(B1)が存在することで、高分子量のPTFE(A1)の分子鎖の絡み合いが解きほぐされやすくなり、PTFE(A1)の分子鎖が伸びた状態で高度に配向し、かつ、結晶化しやすくなったためであると考えられる。
【符号の説明】
【0095】
1 積層体 11 円盤状ステンレス板 12 離型用ポリイミド膜 13 円盤状ステンレス板 13a 開口 14 離型用ポリイミド膜 15 円盤状ステンレス板 20 成形フィルム 101 延伸機 110 上部熱風吹き付け部 112 吹出し口 120 チャック部 130 下部熱風吹き付け部 135 熱風吹き出し板 135a 吹出し口 201 延伸機 210 延伸炉 220 上部熱風吹き付け部 230 下部熱風吹き付け部 240 チャック部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記工程(I)および(II)を有するポリテトラフルオロエチレン延伸フィルムの製造方法。
(I)数平均分子量5×10以上のポリテトラフルオロエチレン(A)のエマルションと、数平均分子量1×10〜4×10のポリテトラフルオロエチレン(B)のエマルションとを、ポリテトラフルオロエチレン(A)とポリテトラフルオロエチレン(B)の固形分比(A/B)が99/1〜10/90となるように混合して得られた樹脂組成物を、減圧雰囲気下、溶融状態で圧縮成形してフィルムを得る工程。
(II)前記フィルムを溶融延伸する工程。
【請求項2】
前記工程(I)が、減圧雰囲気下、前記樹脂組成物を融点以下に加熱した状態で押圧する工程(I−1)と、減圧雰囲気下、加熱押圧された樹脂組成物をさらに加熱して溶融状態とし、前記工程(I−1)の押圧より高圧で圧縮成形する工程(I−2)を有する、請求項1に記載のポリテトラフルオロエチレン延伸フィルムの製造方法。
【請求項3】
前記減圧雰囲気が、10Torr以下の減圧雰囲気である、請求項1または2に記載のポリテトラフルオロエチレン延伸フィルムの製造方法。
【請求項4】
前記工程(I)における樹脂組成物を溶融状態とする温度が330〜420℃である、請求項1〜3のいずれか一項に記載のポリテトラフルオロエチレン延伸フィルムの製造方法。
【請求項5】
前記工程(I)で使用する溶融前の樹脂組成物が粉末状である、請求項1〜4のいずれか一項に記載のポリテトラフルオロエチレン延伸フィルムの製造方法。
【請求項6】
前記ポリテトラフルオロエチレン(A)およびポリテトラフルオロエチレン(B)が、乳化重合により得られたポリテトラフルオロエチレンである、請求項1〜5のいずれか一項に記載のポリテトラフルオロエチレン延伸フィルムの製造方法。
【請求項7】
前記工程(II)でフィルムを溶融状態とする温度が330〜420℃である、請求項1〜6のいずれか一項に記載のポリテトラフルオロエチレン延伸フィルムの製造方法。
【請求項8】
前記溶融延伸が二軸延伸である、請求項1〜7のいずれか一項に記載のポリテトラフルオロエチレン延伸フィルムの製造方法。
【請求項9】
前記二軸延伸が、前記フィルムに熱風を吹きつけて溶融状態とし、二軸同時に延伸する同時二軸延伸である、請求項8に記載のポリテトラフルオロエチレン延伸フィルムの製造方法。
【請求項10】
前記同時二軸延伸において、延伸倍率を2.5倍以上とする、請求項9に記載のポリテトラフルオロエチレン延伸フィルムの製造方法。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか一項に記載のポリテトラフルオロエチレン延伸フィルムの製造方法により製造され、ヘイズが50%以下で、かつ引張破断強度が30MPa以上であるポリテトラフルオロエチレン延伸フィルム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−45812(P2012−45812A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−189636(P2010−189636)
【出願日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【出願人】(000000044)旭硝子株式会社 (2,665)
【出願人】(504145364)国立大学法人群馬大学 (352)
【Fターム(参考)】