説明

ポリトリメチレンエーテル系ポリウレタンアイオノマー

本発明は、ポリトリメチレンエーテルグリコール(「PO3G」)に基づくポリウレタンアイオノマー、こうしたポリウレタンの水性分散液およびこうしたポリウレタンの製造および用途に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリトリメチレンエーテルグリコール(「PO3G」)に基づくポリウレタンアイオノマー、こうしたポリウレタンの水性分散液およびこうしたポリウレタンの製造および用途に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリウレタンは、大きな範囲の物理的特性および化学的特性を有する材料であり、塗料、接着剤、繊維、発泡体およびエラストマーなどの様々な用途において広く用いられている。これらの用途の多くのために、ポリウレタンは有機溶媒系溶液として用いられている。しかし、最近、環境問題により、溶媒系ポリウレタンは多くの用途において水性分散液で代替されている。
【0003】
本発明の目的において、ポリウレタンポリマーは、ポリマー主鎖が(例えば、二官能性またはより高い官能性の単量体、低分子量および/または高分子のポリイソシアネートからの)イソシアネート基と(例えば、二官能性またはより高い官能性の単量体、低分子量および/または高分子のポリオールからの)ヒドロキシル基との反応から誘導されたウレタン連結を含有するポリマーである。こうしたポリマーは、ウレタン連結に加えて、ウレアなどの他のイソシアネート誘導連結、ならびにポリイソシアネート成分および/またはポリオール成分中に存在する連結の他の種類(例えば、エステル連結およびエーテル連結)も含有する。
【0004】
ポリウレタンポリマーは様々な周知の方法によって製造され得るが、最初にポリオール、ポリイソシアネートおよび任意の他の化合物からイソシアネート末端「プレポリマー」を製造し、次にこのプレポリマーを連鎖延長および/または連鎖停止して、所望の最終用途のために適切な分子量および他の特性を有するポリマーを得ることにより調製されることが多い。3官能性およびより高い官能性の出発成分を用いて、(単純な連鎖延長とは対照的に)ポリマー構造に分岐および/または架橋の多少のレベルを付与することが可能である。
【0005】
ポリウレタンは、米国特許第6,852,823号明細書、米国特許第6,946,539号明細書、米国特許出願公開第2005/0176921A1号明細書、米国特許出願公開第2007/0129524A1号明細書およびConjeevaramら(J Polym Sci,23,429,(1985年))で開示されたようにPO3G系ホモポリマーおよびコポリマーを用いて調製されてきた。しかし、これらの公報は、PO3G系ポリウレタンアイオノマー組成物およびこうした組成物の水性分散液を開示していない。
【0006】
ポリウレタンの水性分散液は、一般的な意味で当該技術分野において公知である。ポリウレタンは、外部乳化剤/界面活性剤および/またはポリウレタンポリマーの一部として存在する親水性安定化基(イオン性および/または非イオン性)を含むメカニズムの1つまたは組み合わせによって水性媒体に安定的に分散することが可能である。
【0007】
自己分散性のイオン性ポリウレタンの水性分散液は、例えば、米国特許第3,412,054号明細書および米国特許第3,479,310号明細書において開示されている。これらの開示において、イオン性ジオールまたは潜在的イオン性ジオールはポリウレタンポリマーに導入され、そして中和後に、これらのポリウレタンアイオノマーは水に安定的に分散することが可能である。ポリウレタン分散のプロセスおよび化学は、Dietrich,Prog.Org.Coat.9,1981年,281およびIndustrial Polymers Handbook 2001年,1,419−502によって概説された。
【0008】
ポリウレタン分散液は、広範囲の高分子ジオールおよび低分子量ジオール、ジイソシアネートおよび親水性化学種を用いて製造されてきた。分散プロセスは、アセトンなどの揮発性溶媒からの合成および変換、その後の有機溶媒成分を除去するための蒸留を含んでもよい。ポリウレタンは、NMP(N−メチルピロリドン)などの不活性不揮発性溶媒を用いて、あるいは用いずに溶融相においても合成してよい。この場合、溶媒はポリウレタン分散液中に残る。添加された乳化剤/界面活性剤も分散安定性に有益である場合がある。
【0009】
ポリウレタン分散液の特性は、米国特許第6,395,824号明細書で開示されたようにカルボジイミドなどの潜在架橋性部分の使用によるなど、ポリマー構造に多少のレベルの架橋を導入することにより改良してもよい。
【0010】
最近、ポリウレタン分散液は、米国特許第5,173,526号明細書、米国特許第4,644,030号明細書、米国特許第5,488,383号明細書および米国特許第5,569,705号明細書において開示されたようにアクリル/ポリウレタンの混成物およびアロイに広がってきた。このプロセスは、典型的には、溶媒としてビニルモノマー(アクリレートおよび/またはスチレン)の存在下でのポリウレタンの合成を含む。ポリウレタン分散液を形成させる変換後に、アクリルモノマーまたはスチレンモノマーはラジカル開始剤の添加によって重合する。このプロセスに関する変形は当該技術分野で公知である。アクリル/ウレタン混成物分散液は、より低いコスト、低VOCおよび改善された製造に加えて、高まった硬度、接着力および近ニュートンレオロジーを含む潜在的な利点を塗料および他の最終製品に提供する。
【0011】
水性ポリウレタン分散液は、顔料入り塗料および透明塗料、織物処理剤、顔料、印刷インキ、接着剤および表面仕上に限定されないが、それらを含む多くの最終用途において利用されてきた。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0012】
1つの態様において、本発明は、PO3Gとポリイソシアネートの反応生成物から誘導された1個以上の非イオンセグメントを含む高分子主鎖を含むポリウレタンであって、高分子主鎖が、高分子主鎖に導入されている、高分子主鎖の側鎖である、および/または高分子主鎖の末端をなすイオン官能基および/またはイオン化性官能基を有するポリウレタンに関する。
【0013】
好ましくは、(ポリウレタンの重量を基準にして)ポリウレタンの少なくとも約20重量%、より好ましくは少なくとも約25重量%、なおより好ましくは少なくとも40重量%は、一般式(I)の1個以上の非イオンセグメントを含む。
【0014】
【化1】

【0015】
式中、
各Rは、個々に、イソシアネート基の引抜き後のジイソシアネート化合物の残基であり、Qは、ヒドロキシル基の引抜き後の低重合体ジオールまたは高分子ジオールの残基であって、低重合体ジオールまたは高分子ジオールがポリトリメチレンエーテルグリコールである残基である。
【0016】
Qは、基本的に且つそれ自体で、ポリウレタンの重量を基準にしてポリウレタンの好ましくは少なくとも約20重量%、より好ましくは少なくとも約25重量%、なおより好ましくは少なくとも約40重量%を構成する。
【0017】
ポリウレタンは、好ましくは、(a)ポリオール成分の重量を基準にして少なくとも約40重量%のPO3Gを含むポリオール(2個以上のOH基)成分、(b)ジイソシアネートを含むポリイソシアネート成分および(c)(i)イオン基および/またはイオン化性基を含有するモノイソシアネートまたはジイソシアネートおよび(ii)イオン基および/またはイオン化性基を含有するイソシアネート反応性材料からなる群から選択された化合物を含む親水性反応体から調製される。これらの成分を反応させて、イオン官能基および/またはイオン化性官能基を有するイソシアネート官能性プレポリマーを生成させ、その後、このプレポリマーを以下で更に詳しく記載するように連鎖延長および/または連鎖停止させることが可能である。
【0018】
本発明は、水を含む連続相と水分散性ポリウレタンを含む分散相とを含む水性分散液にも関連する。水分散性ポリウレタンは上で一般的に記載された通りであり、ここで、水分散性ポリウレタンは、ポリウレタンを分散液の連続相中で分散性にするのに十分な量のイオン官能基を含有する。
【0019】
水性分散液の連続相は、水に加えて水混和性有機溶媒を更に含んでもよい。有機溶媒の好ましいレベルは、連続相の重量を基準にして約0〜約30重量%である。
【0020】
水性分散液の分散相は、分散液の全重量を基準にして好ましくは約15重量%〜約70重量%である。
【0021】
本発明は、水性媒体中でポリウレタンの分散液を調製する方法であって、
(a)(i)ポリオール成分の重量を基準にして少なくとも40重量%のPO3Gを含むポリオール成分と、(ii)ジイソシアネートを含むポリイソシアネート成分と、(iii)(1)イオン基および/またはイオン化性基を含有するモノイソシアネートまたはジイソシアネート、(2)イオン基および/またはイオン化性基を含有するイソシアネート反応性材料からなる群から選択された化合物を含む親水性反応体と
を含む反応体を提供する工程と、
(b)水混和性有機溶媒の存在下で(i)、(ii)および(iii)を反応させて、イソシアネート官能性ポリウレタンプレポリマーを生成させる工程と、
(c)水を添加して水性分散液を形成させる工程と、
(d)工程(c)の前、工程(c)と同時または工程(c)の後に、イソシアネート官能性プレポリマーを連鎖延長させるおよび/または連鎖停止させて、ポリウレタンを生成させる工程と、
(e)工程(c)の前、工程(c)と同時または工程(c)の後に、ポリウレタンを水性媒体に分散性にするために必要に応じて中和剤を任意に添加する工程と
を含む方法にも関連する。
【0022】
連鎖延長を望む場合、典型的には、工程(c)の水の添加と共に、または水の添加の直後に連鎖延長剤を添加する。連鎖停止を望む場合、典型的には、残りの実質的に一切のイソシアネート官能基と反応する量で水の添加の前に連鎖停止剤を添加する。
【0023】
親水性反応体がイオン化性基を含有する場合、水の添加のとき(工程c)に、ポリウレタンが水性媒体に分散できる、好ましくは安定的に分散できるような量で酸または塩基(イオン化性基の種類に応じて)を添加することによりイオン化性基を十分にイオン化させなければならない。
【0024】
好ましくは、反応中のある時点で(一般に水の添加後および連鎖延長後)、好ましくは真空下で有機溶媒の実質的な部分を除去して、実質的に有機溶媒を含まない分散液を製造する。
【0025】
もう1つの実施形態において、1種以上のビニルモノマーをポリウレタンの存在下でラジカル重合させて混成物分散液を製造する。
【0026】
ポリトリメチレンオキシド連結(ポリトリメチレンエーテルグリコールからの)に基づくポリウレタンアイオノマーおよびこうしたアイオノマーの水性分散液は、潜在的に、疎水性、柔軟性、靱性、反応性および加工性の新規で独特のバランスを提供する。PO3Gの使用は、ポリエチレングリコール(PEG)と比べて、改善された耐水性およびより低い融点を提供する。PO3G系ポリウレタンエラストマーは、(前に引用した米国特許第6,852,823号明細書および米国特許第6,946,539号明細書で開示されたように)ポリテトラメチレングリコール(PO4G)またはポリ(1,2−プロピレングリコール)(PPG)から誘導されたポリウレタンより硬く、強靱で弾性である。ポリウレタン分散液(PUD)に関して、PO3Gの使用は特性の新規バランスも提供するのに対して、PUDの以前の開発はPPG、PEGおよびPO4Gに限られていた。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本明細書において記載されたすべての刊行物、特許出願、特許および他の参考文献は、特に指示がない場合、完全に記載されたかのようにすべての目的のために参照により本明細書に援用する。
【0028】
特に定義がない限り、本明細書において用いられるすべての科学技術用語は本発明が属する当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。矛盾する場合、定義を含む本明細書が優先される。
【0029】
明示的に注記された場合を除き、商標は大文字で示す。
【0030】
特に指定がない限り、すべての百分率、部、比率などは重量による。
【0031】
量、濃度あるいは他の値またはパラメータが、範囲、好ましい範囲または好ましい上方値および好ましい下方値の一覧のいずれかとして与えられるとき、これは、範囲が別個に開示されるか否かに関係なく、あらゆる上方範囲限界または好ましい値とあらゆる下方範囲限界または好ましい値のあらゆる対から形成されたすべての範囲を特定的に開示していると理解されるべきである。数値の範囲を本明細書で挙げる場合、別段に指定がない限り、その範囲は、その終点およびその範囲内のすべての整数および端数を含むことを意図している。範囲を定めるときに挙げられた特定の値に本発明の範囲を限定することを意図していない。
【0032】
「約」という用語が一定範囲の値または終点を記載する際に用いられるとき、その開示は、関連した特定の値または特定の終点を含むと理解されるべきである。
【0033】
本明細書で用いるとき、「含む(comprises)」、「含む(comprising)」、「含む(includes)」、「含む(including)」、「有する(has)」、「有する(having)」という用語またはそれらのあらゆる変形は、非排他的な包含をカバーすることを意図している。例えば、要素の一覧を含むプロセス、方法、物品または装置はそれらの要素のみに必ずしも限定されずに、こうしたプロセス、方法、物品または装置に明示的に記載されていない他の要素も固有でない他の要素も含んでもよい。更に、相反する明示的な記載がない限り、「または」は、非排他的な「または」を意味し、排他的な「または」を意味しない。例えば、条件AまたはBは、以下のいずれか1つによって満足される。Aが真(または存在する)およびBが偽(または存在しない)、Aが偽(または存在しない)およびBが真(または存在する)およびAとBの両方が真(または存在する)。
【0034】
単数形(「a」または「an」)の使用は、本発明の要素および成分を記載するために用いられる。これは、あくまで便宜上、および本発明の一般的意味を示すために用いられるに過ぎない。この記載は、1つまたは少なくとも1つを含むように読むべきであり、単数が別段に意図されていることが明らかでない限り、単数は複数も含む。
【0035】
本明細書の材料、方法および実施例はあくまで例示であり、本明細書に記載された場合を除き、限定である意図はない。本明細書で記載された方法および材料に似ているか、または等価の方法および材料を本発明の実施または試験において用いることが可能であるが、適する方法および材料を本明細書において記載する。
【0036】
ポリウレタン「アイオノマー」
ポリウレタンは、好ましくは、(a)少なくとも約40重量%のPO3Gを含むポリオール成分と、(b)ジイソシアネートを含むポリイソシアネート成分と、(c)イオン官能基および/またはイオン化性官能基−含有成分とを含む材料から調製される。ここで、イオン官能基および/またはイオン化性官能基−含有成分は、イソシアネート官能基および/またはイソシアネート反応性官能基を含む。イオン官能基および/またはイオン化性官能基を有するこうしたポリウレタンは、本発明によるポリウレタン「アイオノマー」の好ましい例である。
【0037】
ポリオール成分
上で示したように、ポリオール成分は、ポリオール成分の重量を基準にして少なくとも約40重量%のPO3G、より好ましくは少なくとも約50重量%のPO3G、なおより好ましくは少なくとも約75重量%のPO3G、なおさらにより好ましくは少なくとも約90重量%のPO3Gを含む。
【0038】
一実施形態において、PO3Gは、例えば、ポリオール、ポリアミン、ポリチオール、ポリチオアミン、ポリヒドロキシチオールおよびポリヒドロキシルアミンなどの他の低分子量および/または高分子の多官能性イソシアネート反応性化合物とブレンドしてもよい。ブレンドするとき、二官能性成分、より好ましくは、例えば、ポリエーテルジオール、ポリエステルジオール、ポリカーボネートジオール、ポリアクリレートジオール、ポリオレフィンジオールおよびシリコーンジオールを含む1種以上のジオールを用いることが好ましい。
【0039】
この実施形態において、PO3Gは、好ましくは約60重量%以下、より好ましくは約50重量%以下、なおより好ましくは約25重量%以下、なおさらにより好ましくは約10重量%以下の他のイソシアネート反応性化合物とブレンドされる。
【0040】
ポリトリメチレンエーテルグリコール(PO3G)
本発明の目的のためのPO3Gは、反復単位の少なくとも約50%がトリメチレンエーテル単位であるオリゴマーおよびポリマーである。反復単位のより好ましくは約75%〜100%、なおより好ましくは約90%〜100%、さらにより好ましくは約99%〜100%はトリメチレンエーテル単位である。
【0041】
PO3Gは、好ましくは、1,3−プロパンジオールを含むモノマーの重縮合によって調製され、よって−(CH2CH2CH2O)−連結(例えば、トリメチレンエーテル反復単位)を含有するポリマーまたはコポリマーをもたらす。上で示したように、反復単位の少なくとも約50%はトリメチレンエーテル単位である。
【0042】
トリメチレンエーテル単位に加えて、他のポリアルキレンエーテル反復単位などの他の単位のより少ない量が存在してもよい。この開示の文脈において、「ポリトリメチレンエーテルグリコール」という用語は、本質的に純粋の1,3−プロパンジオール、ならびに約50重量%以下のコモノマーを含有するオリゴマーおよびポリマー(以下で記載されたオリゴマーおよびポリマーを含む)から製造されたPO3Gを包含する。
【0043】
PO3Gを調製するために用いられる1,3−プロパンジオールは、周知の種々の化学経路のいずれか、または生物化学的変換経路によって得てもよい。好ましい経路は、例えば、米国特許第5,015,789号明細書、米国特許第5,276,201号明細書、米国特許第5,284,979号明細書、米国特許第5,334,778号明細書、米国特許第5,364,984号明細書、米国特許第5,364,987号明細書、米国特許第5,633,362号明細書、米国特許第5,686,276号明細書、米国特許第5,821,092号明細書、米国特許第5,962,745号明細書、米国特許第6,140,543号明細書、米国特許第6,232,511号明細書、米国特許第6,235,948号明細書、米国特許第6,277,289号明細書、米国特許第6,297,408号明細書、米国特許第6,331,264号明細書、米国特許第6,342,646号明細書、米国特許第7,038,092号明細書、米国特許出願公開第2004/0225161A1号明細書、米国特許出願公開第2004/0260125A1号明細書、米国特許出願公開第2004/0225162A1号明細書および米国特許出願公開第2005/0069997A1号明細書に記載されている。
【0044】
好ましくは、1,3−プロパンジオールは、再生可能源から生物化学的に得られる(「生物誘導」)1,3−プロパンジオール)。
【0045】
特に好ましい1,3−プロパンジオール源は、再生可能な生物源を用いる発酵プロセスを経由する。再生可能源からの出発材料の例示的な例として、トウモロコシ原料などの生物的且つ再生可能な資源から製造された原料を用いる1,3−プロパンジオール(POD)への生物化学経路は記載されている。例えば、グリセロールを1,3−プロパンジオールに転化できる菌株は、種:クラブシエラ(Klebsiella)、シトロバクター(Citrobacter)、クロストリジウム(Clostridium)およびラクトバシラス(Lactobacillus)の中で見出されている。前に引用した米国特許第5,633,362号明細書、米国特許第5,686,276号明細書および米国特許第5,821,092号明細書を含む幾つかの公報の中でこの技術は開示されている。米国特許第5,821,092号明細書には、特に、組換え生物を用いるグリセロールからの1,3−プロパンジオールの生物生産のための方法が開示されている。この方法は、1,2−プロパンジオールのための特異性を有する異種pduジオールデヒドラターゼ遺伝子により変換された大腸菌(E.coli)を導入している。変換された大腸菌(E.coli)は炭素源としてのグリセロールの存在下で成長し、1,3−プロパンジオールは成長した媒体から単離される。菌と酵母の両方がグルコース(例えば、トウモロコシ糖)または他の糖質をグリセロールに転化できるので、これらの公報で開示された方法は、迅速で安価且つ環境に責任をもつ1,3−プロパンジオールモノマー源を提供する。
【0046】
上で記載され参照された方法によって製造されたような生物誘導1,3−プロパンジオールは、1,3−プロパンジオールの生産のための原料を構成する植物によって導入された大気二酸化炭素からの炭素を含有する。かくして、本発明と関連して用いるために好ましい生物誘導1,3−プロパンジオールは、再生可能炭素のみを含有し、化石燃料系炭素も石油系炭素も含有しない。従って、生物誘導1,3−プロパンジオールを用いる本発明のPO3G、およびポリウレタンアイオノマーならびに水性ポリウレタン分散液は、組成物中で用いられる1,3−プロパンジオールが減り続ける化石燃料を枯渇させず、分解すると、もう一度植物による使用のために炭素を放出して大気に戻すので環境により小さい影響しか及ぼさない。従って、本発明の組成物は、石油系グリコールを含む類似の組成物より天然で且つ小さい環境影響しか及ぼさないとして特徴付けることが可能である。
【0047】
生物誘導1,3−プロパンジオール、PO3Gおよびそれらに基づくポリウレタンは、石油源または化石燃料炭素から製造された類似化合物から二重炭素同位体特性評価法によって区別してもよい。この方法は、通常、化学的に同一の材料を区別し、生物圏(植物)成分の成長の源(および恐らく年)によってコポリマー中の炭素を割り当てる。同位体14Cおよび13Cは、この問題に補足情報をもたらす。放射性炭素年代測定同位体(14C)は、5730年のその核半減期により、化石(「死」)原料と生物圏(「生」)原料との間に検体炭素を割り当てることを明確に可能にする(Currie,L.A.「Source Apportionment of Atmospheric Particles」,Characterization of Environmental Particles,J.Buffle and H.P.van Leeuwen,Eds.,1 of Vol.1 of the IUPAC Environmental Analytical Chemistry Series(Lewis Publishers,Inc.)(1992年)3−74)。放射性炭素年代測定の基本的な仮定は、大気中の14C濃度の定常性が生物中の14Cの定常性につながることである。単離されたサンプルを取り扱うとき、サンプルの年代を関係t=(−5730/0.693)ln(A/A0)によって概略的に導き出すことが可能である。
式中、t=年代、5730年は放射性炭素の半減期である。AおよびA0は、それぞれサンプルと近代標準の14C比放射能である(Hsien,Y.,Soil Sci.Soc.Am J.,56,460,(1992年))。しかし、1950年以来の大気圏核実験および1850年以来の化石燃料の燃焼のゆえに、14Cは第2の地球化学的時間特性を獲得した。大気CO2ひいては生きた生物圏中の14C濃度は、1960年代半ばにおける核実験のピーク時におよそ倍増した。14C濃度は、それ以来、7〜10年の近似緩和「半減期」により約1.2×10-12の定常状態宇宙線(大気)ベースライン同位体比率(14C/12C)に徐々に戻ってきた(この後者の半減期は文字通り受け取ってはならない。それどころか、核時代の開始以来の大気14Cおよび生物圏14Cの変動を追跡するために詳しい大気核投入/減衰関数を用いなければならない)。最近の生物圏炭素の年次年代測定を裏付けるのは、この後者の生物圏14C時間特性である。加速器質量分析法(AMS)によって14Cを測定することが可能であり、結果は、「現代炭素含有率」(fM)の単位で与えられる。fMは、それぞれシュウ酸標準HOxlおよびHOxllとして知られているNational Institute of Standards and Technology(NIST)標準参照物質(SRMs)4990Bおよび4990Cによって定義される。基本的定義は、14C/12C同位体比のHOxl(AD1950に関連した)の0.95倍に関する。これは、減衰に相関した産業革命前の木材にほぼ等しい。現在の生きた生物圏(植物材料)に関しては、fM≒1.1である。
【0048】
安定炭素同位体比(13C/12C)は源の識別と指定への補足経路を提供する。所定の生物源材料の13C/12C比は、二酸化炭素が固定される時点での大気二酸化炭素の13C/12C比の結果であり、精密な代謝経路も反映する。地域的な変動も起きる。石油、C3植物(広葉樹)、C4植物(草類)および海洋カーボネートのすべては、13C/12C値および対応するδ13C値において著しい相違を示す。更に、C3植物およびC4植物の脂質物質は、代謝経路の結果として同じ植物の炭水化物成分から誘導された材料とは異なって分解する。測定の精度内で、13Cは同位体分別効果のゆえに大きな変動を示す。本発明に関してその最も著しいのは光合成メカニズムである。植物中の炭素同位体比の相違の主原因は、植物中の光合成炭素代謝、特に主たるカルボキシル化中に起きる反応、すなわち、大気CO2の初期固定の経路の相違に密接に関連する。植物化の2つの大きな種類は、「C3」(またはCalvin−Benson)光合成サイクルを導入する種類および「C4」(またはHatch−Slack)光合成サイクルを導入する種類である。硬木および針葉樹などのC3植物は穏和な気候の地域で主流である。C3植物において、主たるCO2固定およびカルボキシル化反応は酵素リブローゼ−1,5−ジホスフェートカルボキシラーゼを含み、最初の安定な製品は3−炭素化合物である。他方、C4植物は、熱帯の草類、トウモロコシおよびサトウキビのような植物を含む。C4植物において、もう1つの酵素、ホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼを含む追加のカルボキシル化反応は主たるカルボキシル化反応である。最初の安定な炭素化合物は4−炭素酸であり、それは後で脱カルボキシル化される。こうして放出されるCO2はC3サイクルによって再び固定される。
【0049】
4植物とC3植物の両方は、13C/12C同位体比の一定範囲を示すが、典型的な値は、約−10〜−14/mil(C4)および−21〜−26/mil(C3)である(Weberら,J.Agric.Food Chem.,45,2942(1997年))。石炭および石油は、一般に、この後者の範囲に入る。13C測定目盛は、ピーディー矢石(PDB)石灰岩によって設定された零によって元来定義されている。ここで、値は、この材料からの千の偏差当たりの部で与えられる。「δ13C」値は、%0で略された千当たりの(mil当たりの)部であり、次の通り計算される。
【0050】
【数1】

【0051】
PDB標準材料(RM)が枯渇してきたので、一連の代替RMは、IAEA、USGS、NISTおよび選択された他の国際同位体試験所と協力して開発されてきた。PDBからのパーミル偏差のための表記法はδ13Cである。測定は、質量44、45および46の分子イオンに関する高精度安定比質量分析法(IRMS)によってCO2に関して行われる。
【0052】
従って、生物誘導1,3−プロパンジオール、および生物誘導1,3−プロパンジオールを含む組成物は、組成物の新しさを示す、14C(fM)および二重炭素同位体特性評価法に基づいて石油誘導同等物から完全に区別することができる。これらの製品を区別する能力は商業目的のためにこれらの材料を追跡する際に有益である。例えば、「新」炭素同位体分布と「旧」炭素同位体分布の両方を含む製品を、「旧」材料のみから製造された製品から区別することができる。従って、本材料は、本材料の独特の分布に基づいて、および競争を決定する目的で、保存寿命を決定するために、ならびに特に環境影響を評価するために商業目的のために追跡される場合がある。
【0053】
反応体としてまたは反応体の成分として用いられる1,3−プロパンジオールは、ガスクロマトグラフ分析によって決定したとき、好ましくは約99重量%を上回る、より好ましくは約99.9重量%を上回る純度を有する。前に引用した米国特許第7,038,092号明細書、米国特許出願公開第2004/0260125A1号明細書、米国特許出願公開第2004/0225161A1号明細書および米国特許出願公開第2005/0069997A1号明細書において開示された精製1,3−プロパンジオールおよび米国特許出願公開第2005/0020805A1号明細書において開示された精製1,3−プロパンジオールから製造されたPO3Gは特に好ましい。
【0054】
精製1,3−プロパンジオールは、好ましくは以下の特性を有する。
(1)約0.200未満の220nmでの紫外線吸収、約0.075未満の250nmでの紫外線吸収および約0.075未満の275nmでの紫外線吸収、および/または
(2)約0.15未満のL***“b*”明度(ASTM D6290)および約0.075未満の270nmでの吸光度を有する組成、および/または
(3)約10ppm未満の過酸化物組成、および/または
(4)ガスクロマトグラフィによって測定されたとき、約400ppm未満、より好ましくは約300ppm未満、なおより好ましくは約150ppm未満の全有機不純物(1,3−プロパンジオール以外の有機化合物)の濃度。
【0055】
PO3Gを製造するための出発材料は、所望のPO3G、出発材料の入手性、触媒、装置などに応じて異なり、そして「1,3−プロパンジオール反応体」を含む。「1,3−プロパンジオール反応体」は、1,3−プロパンジオール、ならびに好ましくは2〜9の重合度を有する1,3−プロパンジオールのオリゴマーおよびプレポリマーならびにそれらの混合物を意味する。場合によって、10%以下またはそれ以上の低分子量オリゴマーをそれらが入手できる場合に用いることが望ましい場合がある。従って、出発材料は、1,3−プロパンジオールならびにその二量体および三量体を含むことが好ましい。出発材料は、1,3−プロパンジオール反応体の重量を基準にして特に好ましくは約90重量%以上の1,3−プロパンジオール、より好ましくは約99重量%以上の1,3−プロパンジオールからなる。
【0056】
PO3Gは、米国特許第6,977,291号明細書および米国特許第6,720,459号明細書で開示されたように当該技術分野で公知の多くのプロセスを経由して製造することが可能である。好ましいプロセスは、前に引用した米国特許出願公開第2005/0020805A1号明細書に記載された通りである。
【0057】
上で示したように、PO3Gは、トリメチレンエーテル単位に加えて、より少量の他のポリアルキレンエーテル反復単位を含有してもよい。従って、ポリトリメチレンエーテルグリコールを調製する際に用いるためのモノマーは、1,3−プロパンジオール反応体に加えて、約50重量%以下(好ましくは約20重量%以下、より好ましくは約10重量%以下、なおより好ましくは約2重量%以下)のコモノマーポリオールを含有することが可能である。本プロセスで用いるために適するコモノマーポリオールには、脂肪族ジオール、例えば、エチレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,12−ドデカンジオール、3,3,4,4,5,5−ヘキサフルオロ−1,5−ペンタンジオール、2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロ−1,6−ヘキサンジオールおよび3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10−ヘキサデカフルオロ−1,12−ドデカンジオール;脂環式ジオール、例えば、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノールおよびイソソルビド;ならびにポリヒドロキシ化合物、例えば、グリセロール、トリメチロールプロパンおよびペンタエリトリトールが挙げられる。コモノマージオールの好ましい群は、エチレングリコール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−2−(ヒドロキシメチル)−1,3−プロパンジオール、C6〜C10ジオール(1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオールおよび1,10−デカンジオールなど)およびイソソルビド、ならびにそれらの混合物からなる群から選択される。1,3−プロパンジオール以外で特に好ましいジオールはエチレングリコールであり、C6〜C10ジオールも特に有用であり得る。
【0058】
コモノマーを含有する好ましい1種のPO3Gは、米国特許出願公開第2004/0030095A1号明細書に記載されたようなポリ(トリメチレン−エチレンエーテル)グリコールである。好ましいポリ(トリメチレン−エチレンエーテル)グリコールは、50〜約99モル%(好ましくは約60〜約98モル%、より好ましくは約70〜約98モル%)の1,3−プロパンジオールと50モル%以下〜約1モル%(好ましくは約40〜約2モノマー、より好ましくは約30〜約2モル%)のエチレングリコールの酸触媒重縮合によって調製される。
【0059】
本発明の実施において有用なPO3Gは、例えば、米国特許第6,608,168号明細書に記載されたような脂肪族または芳香族の二酸またはジエステルからの少量の他の反復単位を含有することが可能である。この種類のPO3Gは「ランダムポリトリメチレンエーテルエステル」と呼ぶことも可能であり、そして1,3−プロパンジオール反応体とテレフタル酸、イソフタル酸、二安息香酸、ナフタル酸、ビス(p−カルボキシフェニル)メタン、1,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、4,4’−スルホニル二安息香酸、p−(ヒドロキシエトキシ)安息香酸およびそれらの組み合わせならびにジメチルテレフタレート、ビベンゾエート、イソフタレート、ナフタレートおよびフタレートならびにそれらの組み合わせなどの約10〜約0.1モル%の脂肪族または芳香族の二酸またはそのエステルとの重縮合によって調製することが可能である。これらの内、テレフタル酸、ジメチルテレフタレートおよびジメチルイソフタレートは好ましい。
【0060】
好ましくは、精製後のPO3Gは酸触媒末端基を本質的にもたないが、約0.003〜約0.03meq/gの範囲内の非常に低いレベルの不飽和末端基、主としてアリル末端基を含有してもよい。好ましいPO3Gは、以下の式(II)および(III)を有する化合物を含む(化合物から本質的になる)と考えることが可能である。
HO−((CH23O)m−H (II)
HO−((CH23−O)mCH2CH=CH2 (III)
式中、mは、数平均分子量Mnが約200〜約5,000の範囲内であるような範囲内である。式(III)の化合物は、アリル末端基(好ましくは、すべての不飽和末端または不飽和末端基)が約0.003〜約0.03meq/gの範囲内で存在するような量で存在する。ポリトリメチレンエーテルグリコール中の小数のアリル末端基は、特定の最終用途のために理想的に適合する組成物を調製できるように分子量を過度に制限しない一方でポリウレタンの分子量を制御するために有用である。
【0061】
本発明において用いるための好ましいPO3Gは、約200〜約5000、より好ましくは約500〜約5000の範囲内の数平均分子量(Mn)を有する。PO3Gのブレンドも用いることが可能である。例えば、PO3Gは、より高い分子量のPO3Gとより低い分子量のPO3Gのブレンドを含むことが可能である。ここで、好ましくは、より高い分子量のPO3Gは、約1000〜約5,000の数平均分子量を有し、より低い分子量のPO3Gは、約200〜約950の数平均分子量を有する。ブレンドされたPO3GのMnは、好ましくは、なお約500〜約5000の範囲内である。本明細書において用いるために好ましいPO3Gは、好ましくは約1.0〜約2.2、より好ましくは約1.2〜約2.2、なおより好ましくは約1.5〜約2.1の多分散性(すなわち、Mw/Mn)を有する典型的に多分散性のポリマーである。多分散性は、PO3Gのブレンドを用いることにより調節することが可能である。
【0062】
本発明において用いるためのPO3Gは、好ましくは約100APHA未満、より好ましくは約50APHA未満の明度を有する。
【0063】
他のイソシアネート反応性成分
上で示したように、PO3Gは、好ましくは約60重量%以下の他の多官能性イソシアネート反応性成分、最も注目に値すべきは低分子量ポリオールおよび/または高分子ポリオールとブレンドしてもよい。
【0064】
適するポリオールは少なくとも2個のヒドロキシル基を含有し、好ましくは約60〜約6000の分子量を有する。これらの内、高分子ポリオールは、数平均分子量によって最善に定義され、約200〜約600、好ましくは約300〜約3000、より好ましくは約500〜約2500の範囲であることが可能である。分子量は、ヒドロキシル基分析(OH価)によって決定することが可能である。
【0065】
高分子ポリオールの例には、ポリエステル、ポリエーテル、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリ(メタ)アクリレート、ポリエステルアミド、ポリチオエーテル;およびエステル連結とカーボネート連結の両方が同じポリマー中で見られるポリエステル−ポリカーボネートなどの混合ポリマーが挙げられる。植物系ポリオールも含まれる。これらのポリマーの組み合わせも用いることが可能である。例えば、ポリエステルポリオールおよびポリ(メタ)アクリレートポリオールを同じポリウレタン合成で用いてもよい。
【0066】
適するポリエステルポリオールは、多価アルコール、好ましくは三価アルコールを任意に添加してもよい二価アルコールと多塩基性(好ましくは二塩基性)カルボン酸の反応生成物を含む。これらのポリカルボン酸の代わりに、対応するカルボン酸無水物またはより低級のアルコールのポリカルボン酸エステルあるいはそれらの混合物をポリエステルの調製のために用いてもよい。
【0067】
ポリカルボン酸は、脂肪族、脂環式、芳香族および/または複素環式あるいはそれらの混合物であってもよい。ポリカルボン酸は、例えば、ハロゲン原子によって置換されていてもよく、および/または不飽和であってもよい。以下を例として記載する。コハク酸、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,12−ドデシル二酸、フタル酸、イソフタル酸、トリメリット酸、無水フタル酸、無水テトラヒドロフタル酸、無水ヘキサヒドロフタル酸、無水テトラクロロフタル酸、無水エンドメチレンテトラヒドロフタル酸、無水グルタル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸;低分子量脂肪酸と混合されていてもよいオレイン酸などの二量体脂肪酸および三量体脂肪酸、ジメチルテレフタレートおよびビスグリコールテレフタレート。
【0068】
適する多価アルコールには、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール−(1,2)および−(1,3)、ブチレングリコール−(1,4)および−(1,3)、ヘキサンジオール−(1,6)、オクタンジオール−(1,8)、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジメタノール(1,4−ビス−ヒドロキシメチル−シクロヘキサン)、2−メチル−1,3−プロパンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ジブチレングリコールおよびポリブチレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、それらのエーテルグリコールおよびそれらの混合物が挙げられる。ポリエステルポリオールは、カルボキシル末端基の一部も含有してもよい。ラクトン、例えば、イプシロンカプロラクトンのポリエステル、またはヒドロキシカルボン酸、例えば、オメガヒドロキシカプロン酸のポリエステルも用いてよい。
【0069】
PO3Gとブレンドするために好ましいポリエステルジオールは、ヒドロキシル末端ポリ(ブチレンアジペート)、ポリ(ブチレンスクシネート)、ポリ(エチレンアジペート)、ポリ(1,2−プロピレンアジペート)、ポリ(トリメチレンアジペート)、ポリ(トリメチレンスクシネート)、ポリ乳酸エステルジオールおよびポリカプロラクトンジオールである。他のヒドロキシル末端ポリエステルジオールは、ジオールおよびスルホン化ジカルボン酸から誘導され、米国特許第6,316,586号明細書に記載されたように調製された反復単位を含むコポリエーテルである。好ましいスルホン化ジカルボン酸は5−スルホ−イソフタル酸であり、好ましいジオールは1,3−プロパンジオールである。
【0070】
適するポリエーテルポリオールは、反応性水素原子を含有する出発化合物と、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシドなどのアルキレンオキシド、テトラヒドロフラン、スチレンオキシド、エピクロロヒドリンまたはこれらの混合物との反応によって既知の方式で得られる。反応性水素原子を含有する、適する出発化合物には、上述した多価アルコールおよび更に水、メタノール、エタノール、1,2,6−ヘキサントリオール、1,2,4−ブタントリオール、トリメチロールエタン、ペンタエリトリトール、マニトール、ソルビトール、メチルグリコシド、スクロース、フェノール、イソノニルフェノール、レゾルシノール、ヒドロキノン、1,1,1−および1,1,2−トリス−(ヒドロキシルフェニル)−エタン、ジメチロールプロピオン酸またはジメチロールブタン酸が挙げられる。
【0071】
アミン化合物を含有する出発化合物の反応によって得られたポリエーテルも用いることが可能である。これらのポリエーテルの例および適する多価ポリアセタール、多価ポリアクリレート、多価ポリエステルアミド、多価ポリアミドおよび多価ポリチオエーテルは、米国特許第4,701,480号明細書において開示されている。
【0072】
PO3Gとブレンドするために好ましいポリエーテルジオールは、ポリエチレングリコール、ポリ(1,2−プロピレングリコール)、ポリテトラメチレングリコール;テトラヒドロフラン/エチレンオキシドコポリマーおよびテトラヒドロフラン/プロピレンオキシドコポリマーなどのコポリエーテルならびにそれらの混合物である。
【0073】
ヒドロキシル基を含有するポリカーボネートには、プロパンジオール−(1,3)、ブタンジオール(1,4)および/またはヘキサンジオール−(1,6)、ジエチレングリコール、トリエチレングリコールまたはテトラエチレングリコール、より高級のポリエーテルジオールなどのジオールとホスゲンとの反応から得られる製品;ジフェニルカーボネートなどのジアリールカーボネート;ジエチルカーボネートなどのジアルキルカーボネートあるいはエチレンカーボネートまたはプロピレンカーボネートなどの環式カーボネートとの反応から得られる製品などのそれ自体知られているポリカーボネートが挙げられる。また、上記のポリエステルまたはポリラクトンと、ホスゲン、ジアリールカーボネート、ジアルキルルカーボネートまたは環式カーボネートとから得られるポリエステルカーボネートも適している。
【0074】
ブレンドするためのポリカーボネートジオールは、好ましくは、ポリエチレンカーボネートジオール、ポリトリメチレンカーボネートジオール、ポリウレタンカーボネートジオールおよびポリヘキシレンカーボネートジオールからなる群から選択される。
【0075】
ヒドロキシル基を含有するポリ(メタ)アクリレートには、カチオン重合、アニオン重合およびラジカル重合などの付加重合の当該技術分野において一般的なポリ(メタ)アクリレートが挙げられる。例はアルファ−オメガジオールである。ジオールのこれらの種類の例は、ポリマーの末端または末端付近で1個のヒドロキシル基の配置を可能にする「リビング」重合プロセス、「コントロール」重合プロセスまたは連鎖移動重合プロセスによって調製されるジオールの種類である。米国特許第6,248,839号明細書および米国特許第5,990,245号明細書は、末端ジオールを製造するプロトコルの例を有する。他のジ−NCO反応性ポリ(メタ)アクリレート末端ポリマーを用いることが可能である。例は、アミノまたはチオールなどのヒドロキシル以外の末端基であり、ヒドロキシルとの混合末端基も含んでよい。
【0076】
ポリオレフィンジオールは、KRATON LIQUID LとしてShellから、およびPOLYTAIL HとしてMitsubishi Chemicalから入手できる。
【0077】
シリコーングリコールは周知であり、代表的な例は、米国特許第4,647,643号明細書に記載されている。
【0078】
場合によって、植物油は、こうした油の生物由来および生分解性のゆえに好ましいブレンド成分である場合がある。植物油の例には、ヒマワリ油、カノラ油、菜種油、トウモロコシ油、オリーブ油、大豆油、ヒマシ油およびそれらの混合物が挙げられるが、それらに限定されない。これらの油は、部分的にまたは完全に水素添加されている。こうした植物油の市販の例には、Soyol R2−052−G(Urethan Soy Systems)およびPripol2033(Uniqema)が挙げられる。
【0079】
NCO官能性プレポリマーを調製するための任意の他の化合物は、約400以下の平均分子量を有するより低い分子量の少なくとも2官能性のNCO反応性化合物を含む。例には、ポリエステルポリオールおよびポリエーテルポリオールの調製について以前に記載された二価アルコールおよびより高い官能性のアルコールが挙げられる。
【0080】
イソシアネート重付加反応において好ましくは二官能性である上述した成分に加えて、トリメチロールプロパンまたは4−イソシアナトメチル−1,8−オクタメチレンジイソシアネートなどのポリウレタン化学において一般に知られている一官能性成分およびさらにはわずかな三官能性成分ならびにより高い官能性の成分は、NCOプレポリマーまたはポリウレタンの分岐が望まれる場合に用いてもよい。
【0081】
しかし、NCO官能性プレポリマーがほぼ線状であることが好ましく、これは、2:1以下のプレポリマー出発成分の平均官能価を維持することにより達成してもよい。
【0082】
類似のNCO反応性材料であるが、他のNCO反応性基を含有するNCO反応性材料をヒドロキシ含有化合物およびポリマーのために記載された通りに用いることが可能である。例は、ジチオール、ジアミン、チオアミンならびにヒドロキシチオールおよびヒドロキシアミンでさえある。これらは、ポリオールのために記載された分子量または数平均分子量を有する化合物またはポリマーのいずれかであることが可能である。
【0083】
任意の他の化合物は自己縮合部分を含有するイソシアネート反応性化合物を含む。これらの化合物の含有率は、望ましい樹脂特性を提供するために必要な自己縮合の所望のレベルに応じて異なる。3−アミノ−1−トリエトキシシリル−プロパンは、アミノ基を通してイソシアネートと反応し、なお更に、水に変換されたときにシリル基を通して自己縮合する化合物の例である。
【0084】
任意の他の化合物は、イソシアネート反応性化合物の代わりに、またはイソシアネート反応性化合物と一緒に使用できる、イソシアネート反応性基を有する非縮合性シランおよび/または非縮合性フルオロカーボンを含有するイソシアネート反応性化合物を含む。米国特許第5,760,123号明細書および米国特許第6,046,295号明細書は、これらの任意のシラン/フルオロ含有化合物の使用のための方法の例を記載している。
【0085】
ポリイソシアネート成分
適するポリイソシアネートは、イソシアネート基に結合された芳香族基、脂環式基および/または脂肪族基を含有する化合物である。これらの化合物の混合物も用いてよい。脂環式部分または脂肪族部分に結合されたイソシアネートを有する化合物は好ましい。芳香族イソシアネートを用いる場合、好ましくは、脂環式イソシアネートまたは脂肪族イソシアネートも存在する。
【0086】
ジイソシアネートは好ましく、そしてポリエーテルグリコール、ジオールおよび/またはアミンからポリウレタンおよび/またはポリウレタン−ウレアを調製する際に有用な任意のジイソシアネートを本発明において用いることが可能である。
【0087】
適するジイソシアネートの例には、2,4−トルエンジイソシアネート(TDI)、2,6−トルエンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(TMDI)4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(H12MDI)、3,3’−ジメチル−4,4’−ビフェニルジイソシアネート(TODI)、ドデカンジイソシアネート(C12DI)、m−テトラメチレンキシリレンジイソシアネート(TMXDI)、1,4−ベンゼンジイソシアネート、トランス−シクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート(NDI)、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、4,6−キシレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート(IPDI)およびそれらの組み合わせが挙げられるが、それらに限定されない。IPDIおよびTMXDIは好ましい。
【0088】
ジイソシアネートの重量を基準にして少量、好ましくは約10重量%未満のモノイソシアネートまたはポリイソシアネートをジイソシアネートと混合して用いることが可能である。有用なモノイソシアネートの例には、オクタデシルイソシアネートなどのアルキルイソシアネートおよびフェニルイソシアネートなどのアリールイソシアネートが挙げられる。ポリイソシアネートの例は、トリイソシアナトトルエンHDトリマー(Desmodur3300)および高分子MDI(Mondur MRおよびMRS)である。
【0089】
イオン反応体
親水性反応体はイオン基および/またはイオン化性基(潜在的にイオン基)を含有する。これらの反応体は、好ましくは1個または2個、より好ましくは2個のイソシアネート反応性基および少なくとも1個のイオン基またはイオン化性基を含有する。
【0090】
イオン分散性基の例には、カルボキシレート基(−COOM)、ホスフェート基(−OPO32)、ホスホネート基(−PO32)、スルホネート基(−SO3M)、第四アンモニウム基(−NR3Y、ここで、Yは塩素またはヒドロキシルなどの一価アニオンである)または有効な他のあらゆるイオン基が挙げられる。Mは、一価金属イオン(例えば、Na+、K+、Li+など)、H、NR4+などのカチオンであり、各Rは、独立して、アルキル、アラルキル、アリールまたは水素であることが可能である。これらのイオン分散性基は、典型的にはポリウレタン主鎖の側鎖として位置する。
【0091】
イオン化性基は、一般に、イオン化性基が酸(カルボキシル−COOHなど)形態または塩基(第一アミン、第二アミンまたは第三アミン−NH2、−NRHまたは−NR2など)形態を取ることを除きイオン基に対応する。イオン化性基は、こうしたイオン分散性基が後述する分散プロセス/ポリマー調製プロセス中にそれらのイオン形態に容易に転化されるような基である。
【0092】
イオン基または潜在的にイオン基は、分散液の水性媒体にポリウレタンを分散可能にするのに十分な(必要に応じて中和により)イオン基含有率を提供する量でポリウレタンに化学的に導入される。典型的なイオン基含有率は、ポリウレタン100g当たり、約5〜約210以下のミリ当量(meq)、好ましくは約10〜約140meq、より好ましくは約20〜120meq、なおより好ましくは約30〜約90meqの範囲である。
【0093】
これらの基を導入するために適する化合物には、(1)イオン基および/またはイオン化性基を含有するモノイソシアネートまたはジイソシアネートおよび(2)イソシアネート反応性基とイオン基および/またはイオン化性基の両方を含有する化合物が挙げられる。この開示の文脈において、「イソシアネート反応性基」という用語は、イソシアネート基と反応することが当業者に周知の基、好ましくは、ヒドロキシル、第一アミノ基および第二アミノ基を含むように解釈される。
【0094】
イオン基または潜在的にイオン基を含有するイソシアネートの例は、スルホン化トルエンジイソシアネートおよびスルホン化ジフェニルメタンジイソシアネートである。
【0095】
イソシアネート反応性基およびイオン基または潜在的にイオン基を含有する化合物に関して、イソシアネート反応性基は、典型的にはアミノ基およびヒドロキシル基である。潜在的にイオン基またはそれらの対応するイオン基は、アニオン基が好ましいが、カチオンまたはアニオンであってもよい。アニオン基の好ましい例には、カルボキシレート基およびスルホネート基が挙げられる。カチオン基の好ましい例には、第四アンモニウム基およびスルホニウム基が挙げられる。
【0096】
イオン化性基をイオン基に転化するための中和剤は、前に引用した公報に記載されており、以下にも記載する。本発明の文脈内で、「中和剤」という用語は、イオン化性基をより親水性のイオン(塩)基に転化するために有用な薬剤のすべての種類を包含するものである。
【0097】
前述したカルボキシレート基、スルホネート基および第四窒素基を導入するために適する化合物は、米国特許第3,479,310号明細書、米国特許第4,303,774号明細書、米国特許第4,108,814号明細書および米国特許第4,408,008号明細書に記載されている。
【0098】
第三スルホニウム基を導入するために適する化合物は米国特許第3,419,533号明細書に記載されている。
【0099】
ポリウレタンに導入するためのスルホネート基は、好ましくは、前に引用した米国特許第4,108,814号明細書で開示されたジオールスルホネートである。適するジオールスルホネート化合物は、ジオールおよびスルホン化ジカルボン酸から誘導され、前に引用した米国特許第6,316,586号明細書に記載されたように調製された反復単位を含むヒドロキシル末端コポリエーテルも含む。好ましいスルホン化ジカルボン酸は5−スルホ−イソフタル酸であり、好ましいジオールは1,3−プロパンジオールである。適するスルホネートは、H2N−CH2−CH2−NH−(CH2r−SO3Na(式中、r=2または3)およびHO−CH2−CH2−C(SO3Na)−CH2−OHも含む。
【0100】
カルボキシル基含有化合物の例は、式(HO)xQ(COOH)y(式中、Qは1〜12個の炭素原子を含有する直鎖または分岐の炭化水素基を表し、xは1または2(好ましくは2)であり、yは1〜3(好ましくは1または2である)に対応するヒドロキシカルボン酸である。
【0101】
これらのヒドロキシカルボン酸の例には、クエン酸、酒石酸およびヒドロキシピバル酸が挙げられる。
【0102】
好ましい酸は、上述した式(式中、x=2およびy=1)の酸である。これらのジヒドロキシアルカン酸は米国特許第3,412,054号明細書に記載されている。ジヒドロキシアルカン酸の好ましい群は、構造式R2−C−(CH2OH)2−COOH(式中、R2は水素または1〜8個の炭素原子を含有するアルキル基である)によって表されるα,α−ジメチロールアルカン酸である。これらのイオン化性ジオールの例には、ジメチロール酢酸、2,2’−ジメチロールブタン酸、2,2’−ジメチロールプロピオン酸および2,2’−ジメチロール酪酸が挙げられるが、それらに限定されない。最も好ましいジヒドロキシアルカン酸は2,2’−ジメチロールプロピオン酸(「DMPA」)である。
【0103】
イオン安定化基が酸であるとき、酸基は、ポリウレタン1.0g当たり少なくとも約5、好ましくは少なくとも約10ミリグラムKOHの酸価(固体ポリマーグラム当たりのmgKOH)として当業者によって知られている酸基含有率を提供するのに十分な量で導入される。酸価の上限は約90、好ましくは約60である。
【0104】
適するカルボキシレートは、H2N−(CH24−CH(CO2H)−NH2およびH2N−CH2−CH2−NH−CH2−CH2−CO2Naも含む。
【0105】
前述したものに加えて、1個のアルキル基および2個のアルキロール基を有する第三アミンなどのカチオン中心も、イオン基またはイオン化性基として用いてもよい。
【0106】
ポリウレタンおよび分散液の調製
本発明の分散液を調製する方法は、混合物方法または段階的方法によって調製することが可能であるポリウレタンの調製で始まる。
【0107】
混合物方法において、イソシアネート末端ポリウレタンプレポリマーは、ポリオール成分、イオン反応体および溶媒を混合し、その後、ポリイソシアネート化合物を混合物に添加することによって調製される。この反応は、約40℃〜約100℃、より好ましくは約50℃〜約90℃で行われる。イソシアネート対イソシアネート反応性基の好ましい比は、約1.3:1〜約1.05:1、より好ましくは約1.25:1〜約1.1:1である。目標%イソシアネート(プレポリマー固体の重量を基準にして典型的には約1〜約20重量%、より好ましくは約1〜約10重量%のイソシアネート含有率)に到達したとき、イオン反応体から導入されたイオン化性基を中和するための塩基または酸のみでなく、任意の連鎖停止剤も添加することが可能である。
【0108】
場合によって、中和剤、好ましくは第三アミンの添加は、ポリウレタン合成の早い段階中に有益である場合がある。あるいは、高い剪断で変換の水に加えて同時に中和剤、好ましくはアルカリ塩基の添加によって利点が得られる。
【0109】
段階的方法において、イソシアネート末端ポリウレタンプレポリマーは、溶媒にイオン反応体を溶解させ、その後、ポリイソシアネート成分を混合物に添加することにより調製される。一旦目標初期%イソシアネートに到達すると、ポリオール成分を添加する。この反応は、約40℃〜約100℃、より好ましくは約50℃〜約90℃で行われる。イソシアネート対イソシアネート反応性基の好ましい比は、約1.3:1〜約1.05:1、より好ましくは約1.25:1〜約1.1:1である。あるいは、ポリオール成分は第1の工程で反応させてもよく、イオン反応体は、目標初期%イソシアネートに到達した後に添加してもよい。最終目標%イソシアネート(プレポリマー固体の重量を基準にして典型的には約1〜約20重量%、好ましくは約1〜約10重量%のイソシアネート含有率)に到達したとき、イオン反応体から導入されたイオン化性基を中和するための塩基または酸のみでなく、任意の連鎖停止剤も添加してよい。
【0110】
その後、得られたポリウレタン溶液は、以下で更に詳述されるように、剪断下での水の添加を経由して水性ポリウレタン分散液に転化される。連鎖停止剤を省くか、または減らして十分なイソシアネート官能基を残す場合、任意の連鎖停止剤はこの時点で添加される。連鎖延長は、水性条件下で典型的には30℃〜60℃で行われる。揮発性溶媒が存在する場合、揮発性溶媒を減圧下で蒸留する。
【0111】
触媒はポリウレタンを調製するためにしばしば必要であり、ポリウレタンの製造に際して利点を提供する場合がある。最も広く用いられる触媒は、第三エチルアミンなどの第三アミン、オクタン酸第一錫、ジブチル錫ジオクトエート、ジブチル錫ジラウレートなどの有機錫化合物、TYZOR TPTまたはTYZOR TBTなどの有機チタネート、有機ジルコネートおよびそれらの混合物である。
【0112】
分散液への後続の転化のためのポリウレタンの調製は、溶媒を用いることにより容易になる。適する溶媒は、水と混和性であるとともにポリウレタンを形成する際に用いられるイソシアネートおよび他の反応体に対して不活性である溶媒である。無溶媒分散液を調製することを望む場合、蒸留による除去を可能にするために十分に高い揮発性を有する溶媒を用いることが好ましい。本発明の実施において有用な典型的な溶媒は、アセトン、メチルエチルケトン、トルエンおよびN−メチルピロリドンである。反応において用いられる溶媒の量は、好ましくは約10重量%〜約50重量%、より好ましくは約20重量%〜約40重量%である。
【0113】
重合性ビニル化合物を溶媒としても用いてよく、その後、変換後にラジカル重合し、よって前に引用した米国特許第5,173,526号明細書、米国特許第4,644,030号明細書、米国特許第5,488,383号明細書および米国特許第5,569,705号明細書で開示されたようにポリウレタン/アクリル混成物分散液を生成させる。
【0114】
任意の連鎖延長剤/連鎖停止剤
ポリウレタンは、典型的には、NCO含有プレポリマーを連鎖延長することにより調製される。連鎖延長剤の機能はポリウレタンの分子量を増加させることである。連鎖延長は、プロセスにおいて水を添加する前に行うことが可能であるが、典型的には、NCO含有プレポリマー、連鎖延長剤、水および任意の他の成分を攪拌下で組み合わせることにより行われる。
【0115】
ポリウレタンを調製するために用いられる反応体は、典型的にはポリオール、ポリアミンまたはアミノアルコールである連鎖延長剤を含有してもよい。ポリオール連鎖延長剤を用いるとき、ポリオールのヒドロキシル基がイソシアネートと反応するにつれてウレタン連結が生成する。ポリアミン連鎖延長剤を用いるとき、アミン基がイソシアネートと反応するにつれてウレア連結が形成される。両方の構造種類は、「ポリウレタン」の意味内に含まれる。
【0116】
好ましくは、任意の連鎖延長剤はポリアミンである。少なくとも部分的にブロックトポリアミンを調製するために適するポリアミンは、2〜6、好ましくは2〜4、より好ましくは2〜3の平均官能価、すなわち、分子当たりのアミン窒素の数を有する。第一アミノ基または第二アミノ基を含有するポリアミンの混合物を用いることにより、所望の官能価を得ることが可能である。ポリアミンは、一般に、芳香族アミン、脂肪族アミンまたは脂環式アミンであり、1〜30個、好ましくは2〜15個、より好ましくは2〜10個の炭素原子を含有する。これらのポリアミンは、追加の置換基を含有してもよい。但し、追加の置換基が第一アミンまたは第二アミンほどにはイソシアネート基と反応性でないことを条件とする。これらの同じポリアミンは、部分的にまたは全面的にブロックトポリアミンであることが可能である。
【0117】
本発明において用いられるポリウレタンを製造する際に有用なジアミン連鎖延長剤には、1,2−エチレンジアミン、1,6−ヘキサンジアミン、1,2−プロパンジアミン、4,4’−メチレン−ビス(3−クロロアニリン)(3,3’−ジクロロ−4,4’−ジアミノジフェニルメタンとしても知られている)(MOCAまたはMboca)、イソホロンジアミン、ジメチルチオトルエンジアミン(DMTDA)、4,4’−ジアミノジフェニルメタン(DDM)、1,3−ジアミノベンゼン、1,4−ジアミノベンゼン、3.3’−ジメトキシ−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジクロロ−4,4’−ジアミノビフェニル、ヒドラジン、およびそれらの組み合わせが挙げられる。ジエチレントリアミン(DETA)、トリエチレンテトラアミン(TETA)、テトラエチレンペンタアミンおよびペンタエチレンヘキサアミンなどのポリアミンも有用である。
【0118】
適するポリアミン連鎖延長剤は、任意に、米国特許第4,269,748号明細書および米国特許第4,829,122号明細書で開示されたように部分的にまたは完全にブロックされていることが可能である。これらの公報は、水の存在しない状態でNCO含有プレポリマーを少なくとも部分的にブロックトジアミン連鎖延長剤またはヒドラジン連鎖延長剤と混合し、その後、混合物に水を添加することによる水性ポリウレタン分散液の調製を開示している。水に接触すると、遮断剤は放出され、得られた非ブロックトポリアミンは、NCO含有プレポリマーと反応して、ポリウレタンを生成させる。
【0119】
適するブロックトアミンおよびブロックトヒドラジンには、ケチミンおよびアルジミンを生成させるためのポリアミンとケトンおよびアルデヒドの反応生成物、およびケタジン、アルダジン、ケトンヒドラゾンおよびアルデヒドヒドラゾンを生成させるためのヒドラジンとケトンおよびアルデヒドの反応生成物が挙げられる。少なくとも部分的にブロックされたポリアミンは、1個以下の第一アミノ基または第二アミノ基と水の存在下で遊離の第一アミノ基または第二アミノ基を放出する少なくとも1個のブロックト第一アミノ基またはブロックト第二アミノ基を含有する。
【0120】
水も連鎖延長剤として用いてよい。この場合、水は遊離イソシアネート基に対して大過剰に存在し、水が分散媒体と連鎖延長剤の両方として機能するので、これらの比は適用できない。
【0121】
本発明の水性分散液のポリウレタンを調製するために用いられる反応体は連鎖停止剤も含有してよい。任意の連鎖停止剤は、ポリウレタンの分子量を制御し、プレポリマーの変換前、プレポリマーの変換中またはプレポリマーの変換後に添加することが可能である。
【0122】
適する連鎖停止剤は、1の分子当たりの平均官能価を有する、すなわち、第一アミンまたは第二アミンの窒素の数あるいはアルコールの酸素の数が分子当たり平均1であるアミンまたはアルコールを含む。第一アミノ基または第二アミノ基を用いることにより所望の官能価を得ることが可能である。アミンまたはアルコールは、一般に芳香族、脂肪族または脂環式であり、1〜30個の間、好ましくは2〜15個、より好ましくは2〜10個の炭素原子を含有する。
【0123】
連鎖停止剤として用いるために好ましいモノアルコールには、n−ブタノール、n−オクタノール、n−デカノール、n−ドデカノールおよびステアリルアルコールなどのC1〜C18アルキルアルコール、ならびにC2〜C12弗素化アルコール、より好ましくはn−プロパノール、エタノールおよびメタノールなどのC1〜C6アルキルアルコールが挙げられる。
【0124】
イソシアネートと反応性の任意の第一モノアミンまたは第二モノアミンを連鎖停止剤として用いてもよい。脂肪族の第一モノアミンまたは第二モノアミンは好ましい。連鎖停止剤として有用なモノアミンの例には、ブチルアミン、ヘキシルアミン、2−エチルヘキシルアミン、ドデシルアミン、ジイソプロパノールアミン、ステアリルアミン、ジブチルアミン、ジノニルアミン、ビス(2−エチルヘキシル)アミン、ジエチルアミン、ビス(メトキシエチルアミン)、N−メチルステアリルアミンおよびN−メチルアニリンが挙げられるが、それらに限定されない。より好ましいイソシアネート反応性連鎖停止剤はビス(メトキシエチル)アミンである。
【0125】
アルコール連鎖停止剤を用いるときにウレタン末端基は形成される。アミン連鎖停止剤を用いるときにウレア末端基は形成される。本明細書において両方の構造種類を「ポリウレタン」と呼ぶ。
【0126】
混合物としてまたはNCO−プレポリマーへの逐次添加として、連鎖停止剤および連鎖延長剤を一緒に用いることが可能である。
【0127】
用いられる連鎖停止剤/連鎖延長剤の量は、プレポリマー中の遊離イソシアネート基におよそ等しくすべきである。連鎖延長剤中の活性水素対プレポリマー中のイソシアネート基の比は、当量に基づいて好ましくは約0.6:1〜約1.3:1、より好ましくは約0.6:1〜約1.1:1、なおより好ましくは約0.7:1〜約1.1:1、更により好ましくは約0.9:1〜約1.1:1である。アミンまたはアルコールで連鎖延長/連鎖停止されないあらゆるイソシアネート基は、上で示したように連鎖延長剤として機能する水と反応する。
【0128】
中和
ポリウレタンの潜在的なカチオン基またはアニオン基が中和されるとき、それらの基はポリマーに親水性を提供し、ポリマーが水に安定的に分散することをより良く可能にする。中和工程は、(1)潜在的イオン基を含有する成分を処理することによりポリウレタン生成の前に、または(2)ポリウレタン生成後であるが、ポリウレタンを分散させる前に、あるいは(3)分散液調製と同時に行ってもよい。中和剤と潜在的イオン基との間の反応は、反応混合物を攪拌しつつ約20℃〜約150℃の間で行ってもよいが、通常は、約100℃未満の温度、好ましくは約30℃〜約80℃の間、より好ましくは約50℃〜約70℃の間の温度で行われる。
【0129】
安定な分散液を有するために、得られたポリウレタンが水性媒体に安定的に分散したままであるように十分な量のイオン基(例えば、中和されたイオン化性基)は存在しなければならない。一般に、酸基の少なくとも約70%、好ましくは少なくとも約80%は対応するカルボキシレート塩の基に中和される。あるいは、ポリウレタン中のカチオン基は第四アンモニウム基(−NR3Y、式中、Yは塩素またはヒドロキシルなどの一価アニオンである)であることが可能である。
【0130】
酸基を塩の基に転化するために適する中和剤には、第三アミン、アルカリ金属カチオンおよびアンモニアが挙げられる。これらの中和剤の例は、米国特許第4,501,852号明細書のみでなく、前に引用した米国特許第4,701,480号明細書でも開示されている。好ましい中和剤は、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、ジメチルシクロヘキシルアミンおよびジメチルエチルアミンなどのトリアルキル−置換第三アミン、ならびにナトリウムまたはカリウムなどのアルカリ金属カチオンである。ジエチルエタノールアミンまたはジエタノールメチルアミンなどの置換アミンも有用な中和基である。
【0131】
中和はプロセス中のいかなる時点で行ってもよい。典型的な手順はプレポリマーの少なくとも多少の中和を含み、その後、プレポリマーを追加の中和剤の存在下で水中で連鎖延長/連鎖停止させる。
【0132】
最終製品は、約60重量%以下、好ましくは約15〜約60重量%、より好ましくは約30〜約40重量%の固体含有率を有するポリウレタン粒子の安定な水性分散液である。しかし、任意の所望の最少固体含有率に分散液を希釈することは常に可能である。
【0133】
分散液の調製
本発明によると、「水性ポリウレタン分散液」という用語は、当該用語が当業者によって理解されるようにウレタン基を含有するポリマーの水性分散液を意味する。これらのポリマーは、水中のポリマーの安定な分散液を維持するための必要な程度に親水性官能基も導入している。本発明の組成物は、水を含む連続相とポリウレタンを含む分散相とを含む水性分散液である。
【0134】
所望のポリウレタンの生成後、上述したように好ましくは溶媒の存在下で、必要に応じて、pHを調節して、イオン化性基のイオン基への転化(中和)を確実なものにしてもよい。例えば、好ましいジメチロールプロピオン酸がポリウレタンを製造する際に用いられるイオン材料またはイオン化性材料である場合、カルボキシル基をカルボキシレートアニオンに転化するために十分な水性塩基を添加する。
【0135】
水性分散液への転化は水の添加によって完了する。必要に応じて、その後、溶媒を減圧下の蒸留によって部分的にまたは実質的に完全に除去することが可能である。水性分散液の全固体レベルは、分散液の全重量を基準にして好ましくは約5重量%〜約70重量%、より好ましくは約20重量%〜約40重量%の範囲内である。d50、すなわち、中央粒径は変動し、材料および調製の方法に応じて異なるが、一般に約10〜約200マイクロメートルまで異なる。
【0136】
必要に応じて、界面活性剤を分散液に添加して安定性を改善してもよい。界面活性剤は、アニオン性、カチオン性または非イオン性であってもよい。界面活性剤を用いる場合、界面活性剤の好ましい量は約0.1重量%〜約2重量%である。好ましい界面活性剤の例はドデシルベンゼンスルホネートまたはTRITON X(Dow Chemical Co.,Midland,MI)である。
【0137】
最終製品は、約70重量%以下、好ましくは約10〜約60重量%、より好ましくは約20〜約45重量%の固体含有率を有する安定な水性ポリウレタン分散液である。しかし、任意の所望の最少固体含有率に分散液を希釈することは常に可能である。得られた分散液の固体含有率は、150℃で2時間にわたりオーブン内でサンプルを乾燥させ、乾燥前後の重量を比較することにより決定してもよい。粒径は、一般に約1.0マイクロメートル未満、好ましくは約0.01〜約0.5マイクロメートルの間である。平均粒径は、0.5マイクロメートル未満、好ましくは約0.01〜約0.3マイクロメートルの間であるのがよい。小粒径は分散粒子の安定性を高める。
【0138】
充填剤、可塑剤、顔料、カーボンブラック、シリカゾル、他のポリマー分散液、既知の均展剤、湿潤剤、消泡剤、安定剤および所望の最終用途のために知られている他の添加剤も分散液に導入してよい。
【0139】
架橋
ポリウレタン中に多少の架橋を有することは本発明の範囲内である。
【0140】
ポリウレタンの架橋を達成する手段は、一般に、3つ以上の官能性反応部位を有するポリウレタン(出発材料および/または中間体)の少なくとも1つの成分に応じて変わる。3つ(以上)の反応部位の各々の反応は架橋ポリウレタン(3次元マトリックス)をもたらす。2つだけの反応部位が各反応成分上で利用可能であるとき、線状のみのポリウレタン(おそらく高分子量であろうとも)を製造することが可能である。架橋技術の例には以下が挙げられるが、それらに限定されない。
イソシアネート反応性部分は少なくとも3個の反応性基、例えば、多官能性アミンまたはポリオールを有する。
イソシアネートは少なくとも3個のイソシアネート基を有する。
プレポリマー鎖は、イソシアネート反応以外の反応を経由して、例えば、アミノトリアルコキシシランと反応できる少なくとも3つの反応部位を有する。
少なくとも3つの反応部位を有する反応性成分、例えば、三官能性エポキシ架橋剤をポリウレタンの使用の前にポリウレタンに添加する。
オキサゾリン官能基を有する水分散性架橋剤の添加。
カルボニル官能基を有するポリウレタンの合成、その後のジヒドラジド化合物の添加。
および、これらの架橋方法と当業者に知られている他の架橋手段の任意の組み合わせ。
【0141】
更に、これらの架橋成分がポリウレタンに付加された全反応性官能基のわずかな割合であってよいことが理解される。例えば、多官能性アミンが添加される時、一官能性アミンおよび二官能性アミンもイソシアネートとの反応のために存在してもよい。多官能性アミンはアミンのわずかな割合であってもよい。
【0142】
架橋ポリウレタンのエマルジョン/分散液安定性は、必要に応じて、分散剤または乳化剤を添加することによって改善することが可能である。
【0143】
架橋が望まれるとき、ポリウレタン中の架橋の下限は、THF不溶物試験によって測定したとき、約1%以上、好ましくは約4%以上、より好ましくは約10%以上である。
【0144】
架橋の量は標準テトラヒドロフラン不溶物試験によって測定することが可能である。本明細書における定義の目的のために、ポリウレタン分散体のテトラヒドロフラン(THF)不溶物は、事前秤量遠心管内で1gのポリウレタン分散体を30gのTHFと混合することにより測定される。溶液を17,000rpmで2時間にわたり遠心分離した後、上液層を注ぎ出し、底の非溶解ゲルを残す。非溶解ゲル入りの遠心管をオーブンに入れ、110℃で2時間にわたり乾燥させた後、非溶解ゲル入りの遠心管を再秤量する。
【0145】
ポリウレタンの%THF不溶物=(遠心管と遠心管の非溶解ゲルの重量)/(サンプル重量*ポリウレタン固体%)
【0146】
ポリウレタン中で架橋の有効量を達成する代替方法は、架橋性部位を有するポリウレタンを選択し、その後、自己架橋および/または添加された架橋剤を経由してこうした部位を架橋することである。自己架橋官能基の例には、例えば、上で示した特定の出発材料から利用できるシリル官能基(自己縮合性)、およびエポキシ/ヒドロキシル、エポキシ/酸およびイソシアネート/ヒドロキシルなどのポリウレタンに導入された反応性官能基の組み合わせが挙げられる。ポリウレタンおよび補足架橋剤の例は、(1)イソシアネート反応性部位(ヒドロキシル基および/またはアミン基など)およびイソシアネート架橋性反応体を有するポリウレタン、および(2)未反応イソシアネート基および(例えば、ヒドロキシル基および/またはアミン基などを含有する)イソシアネート反応性架橋性反応体を有するポリウレタンが挙げられる。配合物に補足反応体を導入する前に架橋を行うことができるように、補足反応体をポリウレタンに添加することが可能である。
【0147】
架橋ポリウレタンに関する更なる詳細は、例えば、米国特許出願公開第2005/0215663A1号明細書において見られる。
【0148】
ポリウレタンおよび分散液の有用性
本発明のポリウレタンアイオノマーおよび分散液は、特に、ゴルフボール、塗料、ワイヤエナメル、織物処理、インキ、接着剤およびパーソナルケア製品に限定されないが、それらを含む多様な分野において有用性を有する。ここで、これらの製品は、環境問題への関心の高まりに調和してそれらの溶媒系同等物を代替してもよい。
【実施例】
【0149】
本発明を例示する目的のために以下の実施例を提示する。以下の実施例は限定することを意図していない。すべての部、百分率などは、特に指示がない限り重量による。
【0150】
その調製を以下の実施例で記載している分散液を粒径および粒径分布に関して特性分析した。
【0151】
Haneywellによって製造されたMicrotrac(登録商標)UPAモデルアナライザを用いて粒径を決定した。Brookfield Instruments製のULアダプタ付きBrookfield粘度計を用いて粘度を決定した。ポリ(メチルメタクリレート)標準を用いるGPC(ゲル透過クロマトグラフィ)によって本明細書で開示されたすべての分子量を決定している。標準ジブチルアミン逆滴定法(ASTMD1738)を用いて決定された%イソシアネートに応じた反応の進行を追跡した。
【0152】
実施例において用いた1,3−プロパンジオールを生物的方法によって調製した。これは99.8%を上回る純度を有していた。
【0153】
実施例1
この実施例は、ジアミンとポリアミンの組み合わせにより変換後に連鎖延長された、ポリトリメチレンエーテルグリコール、イソホロンジイソシアネートおよびジメチロールプロピオン酸イオン反応体からの本質的に有機溶媒を含まないポリウレタン分散液の調製を例示している。
【0154】
2L反応器に201.11gのPO3G(2000のMn)を投入し、内容物が500ppm未満の水を有するまで真空下で100℃に加熱した。反応器を40℃に冷却し、アセトン(99g)および0.13gのジブチル錫ジラウレート触媒を添加した。53.01gのイソホロンジイソシアネートを1時間にわたり添加し、2.6gの乾燥アセトンですすいだ。反応を放置して50℃で2.5時間にわたり続け、その後、重量%NCOを3.5%未満であると決定した。ジメチロールプロピオン酸(12.98g)およびトリエチルアミン(8.82g)を添加し、その後、乾燥アセトン(3.16g)ですすいだ。反応を50℃で2時間にわたり保持し、重量%NCOを0.6%未満であると決定した。575gの水、直後に、エチレンジアミン(7.52g)およびトリエチレンテトラアミン(36.6g)を添加しつつ、得られたポリウレタン溶液を高速混合下で変換した。アセトンを減圧下で70℃で蒸留除去した。
【0155】
得られたPO3G系ポリウレタン分散液は、13.4cPの粘度、30.2重量%固体、17.6mgKOH/g固体の滴定酸価および95%が63nm未満の37nmの平均粒径を有していた。
【0156】
実施例2
この実施例は、PO3G、イソホロンジイソシアネート、ジメチロールプロピオン酸イオン反応体およびビス(メトキシエチル)アミン連鎖停止剤からの有機溶媒含有水性ポリウレタン分散液の調製を例示している。
【0157】
2L反応器に214.0gのPO3G(545のMn)、149.5gのテトラエチレングリコールジメチルエーテルおよび18.0gのジメチロールプロピオン酸を投入した。内容物が500ppm未満の水を有するまで真空下で混合物を101℃に加熱した。反応器を50℃に冷却し、0.24gのジブチル錫ジラウレートを添加した。128.9gのイソホロンジイソシアネートを30分にわたり添加し、その後、21.2gのテトラエチレングリコールジメチルエーテルを添加した。反応を80℃で3時間にわたり保持し、重量%NCOを1.1%未満であると決定した。反応を50℃に冷却し、その後、14.1gのビス(2−メトキシエチル)アミンを5分にわたり添加した。60℃で1時間後に、45%KOH(15.1g)と211.2gの水の混合物、その後、追加の727.8gの水を添加することにより、ポリウレタン溶液を高速混合下で変換した。
【0158】
得られたポリウレタンは20mgKOH/g固体の酸価を有し、ポリウレタン分散液は、7.86cPの粘度、25.5重量%固体ならびにd50=47nmおよびd95=72nmの粒径を有していた。
【0159】
実施例3
この実施例は、ポリトリメチレンエーテルグリコール、トルエンジイソシアネート、ジメチロールプロピオン酸イオン反応体およびビス(メトキシエチル)アミン連鎖停止剤からの有機溶媒含有水性ポリウレタン分散液の調製を例示している。
【0160】
2L反応器に166.4gのPO3G(545のMn)、95.8gのテトラエチレングリコールジメチルエーテルおよび21.2gのジメチロールプロピオン酸を投入した。内容物が400ppm未満の水を有するまで真空下で混合物を110℃に加熱した。これは約3.5時間を要した。その後、反応を70℃に冷却し、30分にわたり89.7gのトルエンジイソシアネート、その後、15.8gのテトラエチレングリコールジメチルエーテルを添加した。得られた反応混合物を80℃で2時間にわたり保持し、その時間の終わりに、重量%NCOを1.5%未満であると決定した。その後、12.4gのビス(2−メトキシエチル)アミンを5分にわたり添加した。60℃で1時間にわたり攪拌後に、50gの水を分析のために除去した。45%水性KOH(15.5g)と218.0gの水の混合物、その後、追加の464gの水を添加することにより、残りのポリウレタン溶液を高速混合下で変換した。
【0161】
得られたポリウレタンは30mgKOH/g固体の酸価を有し、ポリウレタン分散液は、17.6cPの粘度、22.9%の固体および95%が35nm未満の16nmの平均粒径を有していた。分析のために乾燥させたサンプルはMn7565およびMw15,500のGPCによる分子量を有していた。
【0162】
実施例4
この実施例はポリウレタン/アクリル混成物分散液の調製を例示している。ポリウレタン成分をテトラメチレンキシリレンジイソシアネート、ジメチロールプロピオン酸イオン材料、ならびにPO3G、ポリエステル/カーボネートジオール、1,4−ブタンジオールおよびトリメチロールプロパンの混合物から調製した。
【0163】
2L反応器に135.4gのPO3G(1,217のMn)、222.9gのVPLS2391ポリエステル/ポリカーボネートジオール(Bayer)および12.8gのジメチロールプロピオン酸を投入した。得られた混合物を真空下で1時間にわたり110℃に加熱することにより乾燥させた。その後、反応器を85℃に冷却し、10分にわたり53.6gのm−テトラメチレンキシリレンジイソシアネート、その後、6.8gの1−メチル−2−ピロリジノンを添加した。反応混合物を85℃で1時間にわたり攪拌し、その時間に、重量%NCOを0.3%未満であると決定した。その後、10.64gの1,4−ブタンジオール、2.87gのトリメチロールプロパン、8.33gのヒドロキシエチルメタクリレート、0.59gのジブチル錫ジラウレート、0.23gのジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、35.7gのブチルアクリレートおよび35.7gのイソボルニルメタクリレートの混合物を10分にわたり添加した。10分にわたり、追加の82.01gのm−テトラメチレンキシリレンジイソシアネート、その後、6.3gの1−メチル−2−ピロリジノンを添加した。得られた反応混合物を80℃で2時間にわたり保持した。その時間に、重量%NCOを0.5%未満であると決定した。その後、ジエタノールアミン(16.7g)および6.5gの水、その後、6.32gのジメチルエタノールアミンを添加した。10分後、ポリウレタン溶液を1028gの水の添加により高速混合下で変換した。
【0164】
60gの水中の1.29gの過硫酸アンモニウム(ラジカル開始剤)の溶液をアクリレートおよびメタクリレートに対して30分にわたり添加した。得られた反応混合物を80℃で2時間にわたり保持した。分散液を冷却し、濾過した。
【0165】
得られた混成物ポリマーは9mgKOH/g固体の酸価を有し、分散液は、7.2cPの粘度、34.5%の固体、6.4のpHおよび95%が268nm未満の106nmの平均粒径を有していた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリトリメチレンエーテルグリコールとポリイソシアネートの反応生成物から誘導される1個以上の非イオンセグメントを含む高分子主鎖を含むポリウレタンであって、前記高分子主鎖が、前記高分子主鎖に導入されている、前記高分子主鎖の側鎖である、および/または前記高分子主鎖の末端をなすイオン官能基および/またはイオン化性官能基を有するポリウレタン。
【請求項2】
前記ポリウレタンの少なくとも約20重量%が一般式(I)
【化1】

(式中、各Rは、個々に、イソシアネート基の引抜き後のジイソシアネート化合物の残基であり、Qは、ヒドロキシル基の引抜き後の低重合体ジオールまたは高分子ジオールの残基であって、前記低重合体ジオールまたは高分子ジオールがポリトリメチレンエーテルグリコールである残基である)
の1個以上の非イオンセグメントを含む請求項1に記載のポリウレタン。
【請求項3】
(a)ポリオール成分の重量を基準にして少なくとも約40重量%のポリトリメチレンエーテルグリコールを含むポリオール成分、(b)ジイソシアネートを含むポリイソシアネート成分、(c)(i)イオン基および/またはイオン化性基を含有するモノイソシアネートまたはジイソシアネートおよび(ii)イオン基および/またはイオン化性基を含有するイソシアネート反応性材料からなる群から選択された化合物を含む親水性反応体から得られる請求項1または2に記載のポリウレタン。
【請求項4】
前記ポリオール成分が少なくとも約90重量%のポリトリメチレンエーテルグリコールを含む請求項3に記載のポリウレタン。
【請求項5】
前記ポリトリメチレンエーテルグリコールが約90〜100%のトリメチレンエーテル反復単位を含む請求項1〜4のいずれか一項に記載のポリウレタン。
【請求項6】
前記ポリトリメチレンエーテルグリコールが約0.003〜約0.03meq/gの範囲内の不飽和末端基を有する請求項1〜5のいずれか一項に記載のポリウレタン。
【請求項7】
前記ポリトリメチレンエーテルグリコールが約200〜約5000の数平均分子量を有する請求項1〜6のいずれか一項に記載のポリウレタン。
【請求項8】
前記ポリトリメチレンエーテルグリコールが生物誘導1,3−プロパンジオールからのトリメチレンエーテル単位を含む請求項1〜7のいずれか一項に記載のポリウレタン。
【請求項9】
前記ポリトリメチレンエーテルグリコールが
(1)約0.200未満の220nmでの紫外線吸収、約0.075未満の250nmでの紫外線吸収および約0.075未満の275nmでの紫外線吸収、および/または
(2)約0.15未満のL***“b*”明度(ASTM D6290)および約0.075未満の270nmでの吸光度を有する組成、および/または
(3)約10ppm未満の過酸化物組成、および/または
(4)ガスクロマトグラフィによって測定されたとき、約400ppm未満の全有機不純物(1,3−プロパンジオール以外の有機化合物)の濃度
の特徴を有する1,3−プロパンジオールからのトリメチレンエーテル単位を含む請求項1〜8のいずれか一項に記載のポリウレタン。
【請求項10】
ポリウレタン100g当たり約5〜約210meqのイオン基含有率を含む請求項1〜9のいずれか一項に記載のポリウレタン。
【請求項11】
前記イオン基がアニオンである請求項1〜10のいずれか一項に記載のポリウレタン。
【請求項12】
水を含む連続相と水分散性ポリウレタンを含む分散相とを含む水性分散液であって、前記水分散性ポリウレタンが、前記ポリウレタンを前記連続相中で分散性にするのに十分なイオン官能基を有する請求項1〜11のいずれか一項に記載のポリウレタンアイオノマーである水性分散液。
【請求項13】
前記分散相が前記分散液の全重量の約10重量%〜約70重量%である請求項12に記載の水性分散液。
【請求項14】
水分散性ポリウレタンアイオノマーの水性分散液を調製する方法であって、
(a)(i)ポリオール成分の重量を基準にして少なくとも40重量%のポリトリメチレンエーテルグリコールを含むポリオール成分と、(ii)ジイソシアネートを含むポリイソシアネート成分と、(iii)(1)イオン基および/またはイオン化性基を含有するモノイソシアネートまたはジイソシアネート、(2)イオン基および/またはイオン化性基を含有するイソシアネート反応性材料および(3)それらの混合物からなる群から選択された化合物を含む親水性反応体と
を含む反応体を提供する工程と、
(b)水混和性有機溶媒の存在下で(i)、(ii)および(iii)を反応させて、イソシアネート官能性ポリウレタンプレポリマーを生成させる工程と、
(c)水を添加して水性分散液を形成させる工程と、
(d)工程(c)の前、工程(c)と同時または工程(c)の後に、前記イソシアネート官能性プレポリマーを連鎖延長させるおよび/または連鎖停止させる工程と
を含む方法。
【請求項15】
(e)工程(c)の前、工程(c)と同時または工程(c)の後に、前記ポリウレタンを水性媒体に分散性にするために必要に応じて中和剤を添加する更なる工程を含む請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記ポリオール成分が少なくとも約90重量%のポリトリメチレンエーテルグリコールを含む請求項14または15に記載の方法。
【請求項17】
前記ポリトリメチレンエーテルグリコールが約90%〜100%のトリメチレンエーテル反復単位を含む請求項14〜16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記ポリトリメチレンエーテルグリコールが約0.003〜約0.03meq/gの範囲内の不飽和末端基を有する請求項14〜17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記ポリトリメチレンエーテルグリコールが約200〜約5000の数平均分子量を有する請求項14〜18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記ポリトリメチレンエーテルグリコールが生物誘導1,3−プロパンジオールからのトリメチレンエーテル単位を含む請求項14〜19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記ポリトリメチレンエーテルグリコールが
(1)約0.200未満の220nmでの紫外線吸収、約0.075未満の250nmでの紫外線吸収および約0.075未満の275nmでの紫外線吸収、および/または
(2)約0.15未満のL***“b*”明度(ASTM D6290)および約0.075未満の270nmでの吸光度を有する組成、および/または
(3)約10ppm未満の過酸化物組成、および/または
(4)ガスクロマトグラフィによって測定されたとき、約400ppm未満の全有機不純物(1,3−プロパンジオール以外の有機化合物)の濃度
の特徴を有する1,3−プロパンジオールからのトリメチレンエーテル単位を含む請求項14〜20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記ポリウレタンが、ポリウレタン100g当たり約5〜約210meqのイオン基含有率を含む請求項14〜21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記ポリウレタンの前記イオン基がアニオンである請求項14〜22のいずれか一項に記載の方法。

【公表番号】特表2009−544834(P2009−544834A)
【公表日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−522805(P2009−522805)
【出願日】平成19年7月27日(2007.7.27)
【国際出願番号】PCT/US2007/016874
【国際公開番号】WO2008/013924
【国際公開日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】