説明

ポリトリメチレンテレフタレート強化樹脂組成物

ポリトリメチレンテレフタレート樹脂(A1)99.9〜50重量部、熱可塑性樹脂(A2)0〜49.9重量部、エポキシ樹脂(B)0.1〜20重量部の合計100重量部に対し、結晶性無機充填材(C)5〜300重量部を含んでなるポリトリメチレンテレフタレート強化樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外観に優れ、高剛性、高表面硬度のポリトリメチレンテレフタレート強化樹脂組成物、及びそれを含んでなる成形体に関する。詳しくは、得られる成形品が良外観であり、機械的強度、剛性、表面硬度、寸法安定性、耐加水分解性、耐薬品性に優れるポリトリメチレンテレフタレート強化樹脂組成物、及びそれを用いた洗面カウンター、キッチンカウンター、浴槽、洗面ボール、手洗ボール、トイレカウンターなどの浴室、洗面所、トイレ、台所で使用される製品に関する。
【背景技術】
【0002】
浴室、洗面所、トイレ、台所の洗面ボール、手洗ボールやカウンターなどの水周り建築部材には、重くて脆い陶器に代わり、不飽和ポリエステルやアクリル系の熱硬化性樹脂にガラス繊維などを配合した繊維補強熱硬化性樹脂が多く使用されてきた。これらの熱硬化性樹脂製品は、プレス成形、注型成型などの成型方法によって製造されている。
しかし、熱硬化性樹脂製品は、硬化しているため、リサイクルの可能性はほとんどなく、その廃棄処理は現状では埋め立てが主な処理法となっている。しかも、その廃棄の際には成形品のボリュームをコンパクトにするのが困難で、廃棄処理法の点で大きな問題を生じている。
このため、熱硬化性樹脂製品に代わる熱可塑性樹脂製品が注目されつつある。必要な特性としては、成形品が良外観であり、機械的強度、剛性に優れることはもとより、表面硬度、寸法安定性、耐加水分解性、耐薬品性などの厳しい性能が要求される。
【0003】
熱可塑性樹脂の機械的強度、剛性等を改良する手法としては、ガラス繊維を配合する方法が知られており、ポリエステル強化樹脂においても耐熱性、機械的強度、剛性を更に向上させる目的で、様々な検討が行われている。
例えば、ポリブチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートとポリエチレンテレフタレートの混合物などのポリエステル樹脂と、エポキシ化合物、無機充填剤、触媒化合物とからなる組成物によって、ポリエステルの欠点である加水分解安定性、溶融粘度安定性を改良した無機充填剤含有線状ポリエステルの検討が行われている(特許文献1参照)。
また、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル樹脂と、特定の数平均分子量の線状高分子量クレゾールノボラックをクレシジルエーテル化したエポキシ樹脂、繊維強化材とを配合した組成物により、耐熱性、機械的特性、耐加水分解性を改良する検討が行われている(特許文献2参照)。
また、芳香族ポリエステル、特にポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレートとポリカーボネートからなる熱可塑性樹脂と、エポキシ基含有化合物により特定の方法で表面処理された繊維強化材とからなる樹脂組成物が検討されている(特許文献3参照)。
【0004】
しかしながら、ポリブチレンテレフタレート樹脂に無機充填材を配合した樹脂組成物は、成形品外観が不良であるばかりか、射出成形により成形した場合に、成形品のそり変形が大きく、寸法安定性が低いという問題がある。また、ポリエチレンテレフタレート強化樹脂組成物は100℃以下の金型温度での通常の射出成形が困難であり、良い外観の成形品を得ることはできないのが現状である。
強化ポリエステルの中でも、強化ポリトリメチレンテレフタレート樹脂組成物は、機械的特性、耐候性、耐熱老化性、製品外観において特に優れ、また高濃度に充填材を添加できるという特性を持ち、成形品外観を損なうことなく、機械的特性の改良されたポリトリメチレンテレフタレート強化樹脂組成物の検討が行われてきた。(特許文献4及び5参照)。
しかし、非結晶性無機充填材であるガラス繊維による強化樹脂組成物の場合、特に高剛性を目的として高濃度に充填材を配合した場合、ガラス繊維の表面への浮き出しや、繊維に沿った凹凸によって表面硬度や表面外観が損なわれるなどの問題が生じ、上記の陶器代替の浴室、洗面所、トイレ、台所の洗面器、手洗器やカウンターなどの水周り建築部材用途に必要とされるより高いレベルの外観と、表面硬度、寸法安定性、耐加水分解性、耐薬品性を達成するには至らず、更なる改良が必要とされている。
【0005】
【特許文献1】特開平05−209117号公報
【特許文献2】特開平06−212065号公報
【特許文献3】特開2002−129027号公報
【特許文献4】特開昭47−3444号公報
【特許文献5】WO2002/090435号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、洗面カウンター、キッチンカウンター、浴槽、洗面ボール、手洗ボール、トイレカウンターなどの浴室、洗面所、トイレ、台所で使用される製品に使用することができる、外観が極めて良好であり、機械的強度、剛性、表面硬度、寸法安定性、耐加水分解性、耐薬品性に優れるポリトリメチレンテレフタレート強化樹脂組成物、及びそれを用いた成形品を提供することにある。
【0007】
[発明を解決するための手段]
本発明者は、前記課題を解決するため、ポリトリメチレンテレフタレート樹脂(A1)、熱可塑性樹脂(A2)、エポキシ樹脂(B)、及び結晶性無機充填材(C)を含んでポリトリメチレンテレフタレート強化樹脂組成物によって、機械的強度、剛性、表面硬度、寸法安定性、耐加水分解性、耐薬品性等の要求を達成することを見出し、本発明に至った。
すなわち本発明は、
(1)ポリトリメチレンテレフタレート樹脂(A1)99.9〜50重量部、熱可塑性樹脂(A2)0〜49.9重量部、エポキシ樹脂(B)0.1〜20重量部の合計100重量部に対し、結晶性無機充填材(C)5〜300重量部を含んでなるポリトリメチレンテレフタレート強化樹脂組成物。
(2)前記エポキシ樹脂が0.3〜10重量部である上記(1)記載のポリトリメチレンテレフタレート強化樹脂組成物。
(3)前記結晶性無機充填材にグラフトした樹脂が、前記結晶性無機充填材100重量部当り0.01〜5重量部である上記(1)又は(2)記載のポリトリメチレンテレフタレート強化樹脂組成物。
(4)前記結晶性無機充填材にグラフトしていない樹脂中のエポキシ樹脂が、0.1〜20重量%である上記(1)〜(3)のいずれか一項に記載のポリトリメチレンテレフタレート強化樹脂組成物。
(5)前記熱可塑性樹脂(A2)が2.5〜29.7重量部である上記(1)〜(4)のいずれか一項に記載のポリトリメチレンテレフタレート強化樹脂組成物。
(6)前記熱可塑性樹脂(A2)がポリカーボネート樹脂である上記(1)〜(5)のいずれか一項に記載のポリトリメチレンテレフタレート強化樹脂組成物。
(7)前記結晶性無機充填材が、ウォラストナイト、タルク、マイカ、カオリン、チタン酸カリウムウィスカー、炭酸カルシウムウィスカー、硫酸バリウムからなる群から選ばれる一種以上の無機充填材である上記(1)〜(6)のいずれか一項に記載のポリトリメチレンテレフタレート強化樹脂組成物。
(8)前記結晶性無機充填材がウォラストナイトである上記(1)〜(7)のいずれか一項に記載のポリトリメチレンテレフタレート強化樹脂組成物。
(9)ポリトリメチレンテレフタレート強化樹脂組成物がガラス繊維(D)を前記結晶性無機充填材(C)より少ない量で含む上記(1)〜(8)のいずれか一項に記載のポリトリメチレンテレフタレート強化樹脂組成物。
(10)前記結晶性無機充填材と前記ガラス繊維にグラフトした樹脂が、結晶性無機充填材とガラス繊維の合計100重量部当り0.01〜5重量部である、上記(1)〜(9)のいずれか一項に記載のポリトリメチレンテレフタレート強化樹脂組成物。
(11)前記ポリトリメチレンテレフタレート樹脂の極限粘度[η]が、0.60以上である上記(1)〜(10)のいずれか一項に記載のポリトリメチレンテレフタレート強化樹脂組成物。
(12)前記エポキシ樹脂(B)がノボラック型エポキシ樹脂である上記(1)〜(11)のいずれか一項に記載のポリトリメチレンテレフタレート強化樹脂組成物。
(13)前記エポキシ樹脂(B)がエポキシ当量150〜250(/eq.)のノボラック型エポキシ樹脂である上記(1)〜(12)のいずれか一項に記載のポリトリメチレンテレフタレート強化樹脂組成物。
(14)前記エポキシ樹脂(B)がビスフェノールA型エポキシ樹脂である上記(1)〜(11)のいずれか一項に記載のポリトリメチレンテレフタレート強化樹脂組成物。
(15)前記エポキシ樹脂(B)がエポキシ当量600〜3000(/eq.)のビスフェノールA型エポキシ樹脂である上記(1)〜(11)及び(14)のいずれか一項に記載のポリトリメチレンテレフタレート強化樹脂組成物。
(16)前記ポリトリメチレンテレフタレート樹脂、(A1)、熱可塑性樹脂、(A2)、及びエポキシ樹脂(B)を溶融混練した後に結晶性無機充填材(C)を添加することにより製造される上記(1)〜(15)のいずれか一項に記載のポリトリメチレンテレフタレート強化樹脂組成物。
(17)上記(1)〜(16)のいずれか一項に記載のポリトリメチレンテレフタレート強化樹脂組成物を含んでなる成形体。
(18)上記(17)に記載の成形体を構成部材の少なくとも一部に含む、浴室用製品、洗面所用製品、トイレ用製品、又は流し台用製品である成形体。
(19)上記(17)に記載の成形体が、洗面カウンター、キッチンカウンター、浴槽、洗面ボール、手洗ボール、トイレカウンター、又はキャビネット天板である上記(18)に記載の成形体。
(20)成形体の表面硬度がバーコル硬度30以上である、上記(17)〜(19)のいずれか一項に記載の成形体。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明について、以下具体的に説明する。
本発明におけるポリトリメチレンテレフタレート樹脂(A1)(以下、PTTと略称することがある。)とは、酸成分としてテレフタル酸を用い、グリコール成分としてトリメチレングリコールを用いたポリエステルポリマーを示している。
ここで、トリメチレングリコールとしては、1,3−プロパンジオール、1,2−プロパンジオール、1,1−プロパンジオール、2,2−プロパンジオール、又はこれらの混合物の中から選ばれるが、安定性の観点から1,3−プロパンジオールが特に好ましい。
【0009】
このほかに、本発明の目的を損なわない範囲で、酸成分として、テレフタル酸以外の芳香族ジカルボン酸、例えばフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルジカルボン酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸、ジフェニルメタンジカルボン酸、ジフェニルケトンジカルボン酸、ジフェニルスルフォンジカルボン酸等;コハク酸、アジピン酸、セバシン酸等の脂肪族ジカルボン酸;シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環族ジカルボン酸;ε−オキシカプロン酸、ヒドロキシ安息香酸、ヒドロキシエトキシ安息香酸等のオキシジカルボン酸を用い、グリコール成分として、エチレングリコール、テトラメチレングリコール、ペンタメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、オクタメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジメタノール、キシリレングリコール、ジエチレングリコール、ポリオキシアルキレングリコール、ヒドロキノン等を、一部用いて共重合を行うことができる。
共重合する場合の共重合成分の量は、本発明の目的を損なわない範囲であれば特に制限はないが、通常、全酸成分の20モル%以下、あるいは全グリコール成分の20モル%以下であることが好ましい。
【0010】
また、上述のポリエステル成分に分岐成分、例えばトリカルバリル酸、トリメシン酸、トリメリット酸等の、三官能若しくは四官能のエステル形成能を持つ酸、又はグリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリトリット等の三官能若しくは四官能のエステル形成能を持つアルコールを共重合してもよい。その場合、これらの分岐成分の量は全酸成分、又は全グリコール成分の1.0モル%以下、好ましくは、0.5モル%以下、更に好ましくは、0.3モル%以下である。更に、PTTはこれら共重合成分を2種類以上組み合わせて使用しても構わない。
【0011】
本発明に用いられるPTTの製造方法は、特に限定されるものではないが、例えば、特開昭51−140992号公報、特開平5−262862号公報、特開平8−311177号公報等に記載されている方法に従って得ることができる。
例えば、テレフタル酸又はそのエステル形成性誘導体(例えばジメチルエステル、モノメチルエステル等の低級アルキルエステル)とトリメチレングリコール又はそのエステル形成性誘導体とを、触媒の存在下、好適な温度・時間で加熱反応させ、更に得られるテレフタル酸のグリコールエステルを触媒の存在下、好適な温度・時間で所望の重合度まで重縮合反応させる方法が挙げられる。
重合方法についても、特に限定されず、溶融重合、界面重合、溶液重合、塊状重合、固相重合、及びこれらを組み合わせた方法を利用することができる。
【0012】
本発明のポリトリメチレンテレフタレート強化樹脂組成物は、その極限粘度[η]が0.60以上であることが機械特性、特に靭性面から好ましく、[η]が0.68以上であることがより好ましく、更に成形性、特にバリ特性から[η]が0.75以上であることが最も好ましい。
極限粘度[η]については、オストワルド粘度計を用い、35℃において、樹脂組成物をo−クロロフェノール中に溶質(PTT成分)濃度が1.00g/dlになるように溶解させ、不溶分(無機充填材等)が沈殿した後、その上澄み液を用いて比粘度ηspを測定し、下記式により求めることができる。
[η]=0.713×ηsp/C+0.1086
C=1.00g/dl
本発明のポリトリメチレンテレフタレートには、必要に応じて、各種の添化剤、例えば、熱安定剤、消泡剤、整色剤、難燃剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、結晶核剤、蛍光増白剤、艶消し剤等を共重合又は混合してもよい。
【0013】
次に、本発明に用いることのできる熱可塑性樹脂(A2)について説明する。熱可塑性樹脂とは加熱すると流動性を示し、これを利用して成形加工できる合成樹脂のことである。
熱可塑性樹脂の具体例としては、例えば、ポリカーボネート樹脂、ポリトリメチレンテレフタレート以外のポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリオキシメチレン樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、エチレン/プロピレン/非共役ジエン樹脂、エチレン/アクリル酸エチル樹脂、エチレン/メタクリル酸グリシジル樹脂、エチレン/酢酸ビニル/メタクリル酸グリシジル樹脂、エチレン/酢酸ビニル/メタクリル酸グリシジル樹脂、エチレン/プロピレン−無水マレイン酸樹脂、スチレン系樹脂又はこれら熱可塑性樹脂の2種以上の混合物が挙げられる。
【0014】
中でも、ポリカーボネート樹脂、ポリトリメチレンテレフタレート以外のポリエステル樹脂が好ましく、特に機械的特性の観点からポリカーボネート樹脂が最も好ましい。
ポリカーボネート樹脂は、二価フェノールとカーボネート前駆体から溶融法又は溶液法によって製造される。即ち、ポリカーボネート樹脂は塩化メチレン等の溶剤中で公知の酸受容体、分子量調整剤の存在下、二価フェノールとホスゲンのようなカーボネート前駆体との反応、又は二価フェノールとジフェニルカーボネートのようなカーボネート前駆体とのエステル交換反応等によって製造することができる。ここで好ましい二価フェノールとしてはビスフェノール類が挙げられ、特に2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、即ちビスフェノールAが好ましい。また、フェノールAの一部又は全部を二価フェノールで置換したものであってもよい。
ビスフェノールA以外の二価フェノールとしては、例えばヒドロキノン、4,4−ジヒドロキシジフェニル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)アルカン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロアルカン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテルのような化合物を挙げることができる。これらの二価フェノールは、二価フェノールのホモポリマー又は二種以上のコポリマーであってもよい。
【0015】
また、カーボネート前駆体としては、カルボニルハライド、カルボニルエステル等が挙げられるが、ホスゲン、ジフェニルカーボネート、及びこれらの混合物が好ましく用いられる。また、本発明に用いられるポリカーボネート樹脂の重量平均分子量(MW)は、5000から200000の範囲が好ましく、より好ましくは15000〜40000である。
ポリエステル樹脂としては、ポリトリメチレンテレフタレート以外のポリエステル樹脂であれば特に制限はなく、公知のポリエステル樹脂又はそれらの2種以上の混合物を用いることができる。
ポリアミド樹脂としては特に制限はなく公知のポリアミド樹脂又はそれらの2種以上の混合物を用いることができる。特に好適なポリアミド樹脂としては、ポリカプロラクタム(ナイロン6)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ナイロン66)、ポリヘキサメチレンドデカミド(ナイロン612)、ポリヘキサメチレンイソフタルアミド(ナイロン6I)又はこれらのうち少なくとも2種の異なったポリアミドを含むポリアミド共重合体である。
スチレン系樹脂としては、ポリスチレン樹脂、ゴム変性ポリスチレン樹脂、AS樹脂、ABS樹脂又はそれらの混合物などが挙げられる。
【0016】
本発明のエポキシ樹脂(B)とは、分子中にエポキシ基(オキシラン環)を2個以上持つ熱硬化性の化合物を示す。具体的には、ビルフェノールAとエピクロルヒドリンとの縮合反応により製造されるいわゆるビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、レゾルシン型エポキシ樹脂、フェノールノボラックや線状高分子量クレゾールノボラックをグリシジル化した多官能エポキシであるノボラック型エポキシ樹脂、脂肪族エポキシ樹脂、脂環型エポキシ樹脂、ポリグリシジルアミン型エポキシなどが挙げられる。
本発明で用いられるエポキシ樹脂としては、耐薬品と樹脂への分散の観点からエポキシ当量150〜280(/eq.)のノボラック型エポキシ樹脂、又はエポキシ当量600〜3000(/eq.)のビスフェノールA型エポキシ樹脂が好ましく用いられる。より好ましくはエポキシ当量180〜250(/eq.)で分子量1000〜6000のノボラック型エポキシ樹脂、又はエポキシ当量600〜3000(/eq.)で分子量1200〜6000のビスフェノールA型エポキシ樹脂である。
【0017】
ポリトリメチレンテレフタレート(A1)と熱可組性樹脂(A2)の配合量は、外観と表面硬度の観点からポリトリメチレンテレフタレート樹脂(A1)99.9〜50重量部、熱可塑性樹脂(A2)0〜49.9重量部であり、熱可塑性樹脂(A2)の配合量はポリトリメチレンテレフタレート樹脂(A1)の配合量を超えない。より好ましくはポリトリメチレンテレフタレート(A1)97.2〜70重量部、熱可塑性樹脂(A2)2.5〜29.7重量部である。
エポキシ樹脂(B)の配合量は、機械的特性、表面硬度、耐薬品性と流動性低下防止の観点から、0.1〜20重量%であり、より好ましくは0.3〜10重量%である。
【0018】
次に本発明の結晶性無機充填材(C)について説明する。
本発明における結晶性無機充填材とは、非結晶性の充填材、例えばガラス繊維、ガラスフレーク、ガラスビーズを除く、結晶性の無機充填剤であり、X線回折により結晶の回折パターンを確認できる無機充填材をいう。目的に応じて繊維状、粉粒状、及び板状の無機充填材からなる群から選ばれる一種以上の無機充填材を用いることができる。結晶性無機充填材を用いることにより非晶性無機充填材では達成できなかった高度な表面外観と剛性、表面硬度の成形品を得ることができる。
繊維状無機充填材としては、カーボン繊維、シリカ繊維、シリカ・アルミナ繊維、ジルコニア繊維、窒化硼素繊維、窒化硅素繊維、硼素繊維、チタン酸カリウムウィスカー、炭酸カルシウムウィスカー、ウォラストナイト、更にステンレス、アルミニウム、チタン、銅、真鍮等の金属の繊維状物等の無機質繊維状物質が挙げられる。
繊維状無機充填材の平均繊維長(L)、平均繊維径(D)、アスペクト比(L/D)については特に限定されないが、機械的特性の点から、平均繊維長が50μm以上、平均繊維径は5μm以上、アスペクト比は10以上であることが好ましい。また炭素繊維は、平均繊維長が100〜750μm、数平均繊維径が3〜30μm、アスペクト比が10〜100であるものが好ましく用いられる。更に、ウォラストナイトは、平均繊維径が3〜30μm、平均繊維長が10〜500μm、アスペクト比が3〜100のものが好ましく用いられる。
【0019】
粉粒状無機充填材としてはカーボンブラック、シリカ、石英粉末、硅酸カルシウム、硅酸アルミニウム、カオリン、クレー、硅藻土等の硅酸塩、酸化鉄、酸化チタン、酸化亜鉛、アルミナ等の金属の酸化物、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等の金属の炭酸塩、硫酸カルシウム、硫酸バリウム等の金属の硫酸塩、その他、炭化硅素、窒化硅素、窒化硼素、各種金属粉末が挙げられる。
また、板状無機充填材としてはタルク、マイカ、各種の金属箔等が挙げられる。なお、タルク、マイカ、カオリン、炭酸カルシウム、チタン酸カリウムは平均粒径が0.1〜100μmのものが好ましく用いられる。
本発明の無機充填材としては、外観、機械的強度の点から、ウォラストナイト、タルク、マイカ、カオリン、炭酸カルシウム,炭素繊維(CF)、チタン酸カリウムウィスカー、炭酸カルシウムウィスカー、及び硫酸バリウムからなる群から選ばれる一種以上の結晶性無機充填材が好ましい。最も好ましくはウォラストナイトである。
結晶性無機充填材(C)の配合量は機械的強度、剛性、表面硬度の改良効果と、成形品表面の光沢低下など外観への影響の観点から、ポリトリメチレンテレフタレート樹脂(A1)、熱可塑性樹脂(A2)、エポキシ樹脂(B)の合計100重量部に対して、結晶性無機充填材(C)5〜300重量部、より好ましくは25〜250重量部である。
【0020】
また、本発明においては、機械的強度の面から結晶性無機充填材(C)に併用して、ガラス繊維(D)を用いることができる。
ガラス繊維(D)は結晶性無機充填材(C)の配合量を超えない範囲で用いることで、ガラス繊維単独で用いた場合の外観不良を補い、優れた表面外観を得ると共に機械的強度を改良することができる。好ましい配合量は、ポリトリメチレンテレフタレート樹脂(A1)、熱可塑性樹脂(A2)、及びエポキシ樹脂(B)の合計100重量部に対して、結晶性無機充填材(C)3〜200重量部、ガラス繊維(D)2〜100重量部である。
【0021】
本発明においては、ポリトリメチレンテレフタレート樹脂組成物中の無機充填材表面にグラフトした樹脂を特定の割合で存在させることが好ましい。
ここで、無機充填材表面にグラフトした樹脂とは、強化ポリトリメチレンテレフタレート樹脂組成物を、ポリエステル樹脂の溶媒に浸し、ポリトリメチレンテレフタレートを溶出させ無機充填材を析出させた時、溶媒中に溶出せず無機充填材表面に残るポリトリメチレンテレフタレートを主成分とする有機物層のことをいう。
【0022】
具体的には、まず、強化ポリトリメチレンテレフタレート樹脂組成物中の無機充填材と無機充填材にグラフトしていない樹脂とを分離するために、ポリトリメチレンテレフタレート樹脂組成物をHFIP(ヘキサフルオロイソプロパノール)溶媒と混合する。次に、ポリトリメチレンテレフタレートを主体とする樹脂が溶解したHFIP溶液部分を除去し、残った無機充填材部分を、ポリトリメチレンテレフタレートが溶出しなくなるまで数回HFIP溶媒で洗浄した後、HFIPを除去するためにエタノールで数回洗浄し、エタノールを乾燥により除去する。この様にして、樹脂組成物中から有機物層がグラフトした無機充填材を取り出す。この無機充填材にグラフトした有機物層を、「無機充填材にグラフトした樹脂」という。
【0023】
また、無機充填材表面にグラフトした樹脂の量は、上記の様にして得られた樹脂がグラフトした無機充填材を用い、JIS R3420(強熱減量、Ig.Loss)に従って、次式から求めることができる。
グラフトした樹脂の量(重量部)=[(W0−W1)/W1]×100
W0:焼成前の樹脂がグラフトした無機充填材の重量
W1:焼成後の無機充填材の重量
(結晶性充填材と併用してガラス繊維を用いた場合、両者を合わせた無機充填剤の表面にグラフトした樹脂の量として求めることができる。)
この無機充填材表面にグラフトした樹脂の量(結晶性樹脂と併用してガラス繊維を用いた場合、両者を合わせた無機充填剤の表面にグラフトした樹脂の量)は、無機充填材100重量部あたり0.01〜5重量部、好ましくは0.02〜3重量部、最も好ましくは0.05〜2重量部である。0.01重量部未満では得られる組成物の機械的強度が充分とはいえない。また、5重量部を超えると、溶融流動性が低下し射出成形時の圧力が高くなる。
【0024】
本発明において、ポリトリメチレンテレフタレート樹脂組成物中の無機充填材表面にグラフトした樹脂を特定の割合で存在させるために、結晶性無機充填材(C)及び併用することができるガラス繊維(D)は、表面処理を施したものが好ましく用いられる。
無機充填材の表面処理としては特に制限はなく、カップリング剤やフィルム形成剤を用いて行えばよい。
カップリング剤としては、シラン系カップリング剤、チタン系カップリング剤を挙げることができる。特にγ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、β−(1,1−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のアミノシラン及びエポキシシランが経済性に優れ、取り扱い易いため、好ましく用いられる。
またフィルム形成剤としては、ウレタン系ポリマー、アクリル酸系ポリマー、無水マレイン酸と、エチレン、スチレン、α−メチルスチレン、ブタジエン、イソプレン、クロロプレン、2,3ジクロロブタジエン、1,3−ペンタジエン、シクロオクタジエン等の不飽和単量体とのコポリマー、エポキシ系ポリマー、ポリエステル系ポリマー、ポリエーテル系ポリマー等の重合体を挙げることができる。中でも、経済性と機械的強度が優れるという観点から、エポキシ系ポリマー、ウレタン系ポリマー、アクリル酸系ポリマー、ブタジエン無水マレイン酸コポリマー、エチレン無水マレイン酸コポリマー、スチレン無水マレイン酸コポリマー、及びこれらの混合物が特に好ましく用いられる。
【0025】
このようなカップリング剤及びフィルム形成剤を用いて、無機充填材の表面処理を行うには、公知の方法によればよい。例えば、上記カップリング剤及び/又はフィルム形成剤及び有機溶媒からなる溶液又は懸濁液をいわゆるサイジング剤として表面に塗布するサイジング処理、ヘンシェルミキサー、スーパーミキサー、レーディミキサー、V型ブレンダー等を用いてカップリング剤及び/又はフィルム形成剤を塗布する乾式混合、スプレーによりカップリング剤及び/又はフィルム形成剤を塗布するスプレー法、更には、インテグラルブレンド法、ドライコンセントレート法を挙げることができる。また、これらの方法を組み合わせた方法、例えばカップリング剤とフィルム形成剤の一部をサイジング処理により塗布した後、残りのフィルム形成剤をスプレーする方法等も挙げることができる。この中でも、経済性に優れるという観点から、サイジング処理、乾式混合、スプレー法及びこれらを組合せた方法が好ましく用いられる。
【0026】
また、本発明においては、樹脂組成物から無機充填材及び無機充填材にグラフトした樹脂を除いた、無機充填材にグラフトしていない樹脂中のエポキシ樹脂の量が特定の量であることが好ましい。無機充填材にグラフトしていない樹脂は前出の樹脂がグラフトした無機充填材の分離作業において、ポリトリメチレンテレフタレートを主体とする樹脂が溶解したHFIP溶液部分として、分離することができる。
この有機物を、例えば核磁気共鳴(NMR)を用いて定量分析することにより、無機充填材にグラフトしていない樹脂中のエポキシ樹脂の量を求めることができる。
無機充填材にグラフトしていない樹脂中の好ましいエポキシ樹脂の量は0.1〜20重量%、より好ましくは0.3〜10重量%である。無機充填材にグラフトしていない樹脂中に、0.1重量%以上のエポキシ樹脂が存在することで、機械的強度、剛性、表面硬度を高めると共に、耐薬品性、耐加水分解性をめざましく改善させるとともに、無機充填材の配合によって引き起こされる樹脂組成物の分子量低下を防ぐことができる。20重量%を超えると、溶融流動性が低下し射出成形時の圧力が高くなる。
本発明の強化ポリトリメチレンテレフタレート樹脂組成物は、ポリトリメチレンテレフタレート、熱可塑性樹脂、結晶性無機充填材、及び必要に応じて加えられるガラス繊維や、その他の添加剤等を、適切にデザインされたスクリューを有する押出し機を用いて溶融混練して得ることができる。特に、ポリトリメチレンテレフタレート樹脂(A1)、熱可塑性樹(A2)、エポキシ樹脂(B)を溶融混錬した後に結晶性無機充填材(C)を添加する製造方法が、樹脂にエポキシ樹脂を効果的に分散させ、無機充填材表面のグラフトした樹脂量を制御し、無機充填材の添加により起こる樹脂組成物の分子量低下を抑制する点で好ましい。
【0027】
本発明のポリトリメチレンテレフタレート強化樹脂組成物には、上記のポリトリメチレンテレフタレート樹脂、熱可塑性樹脂、エポキシ樹脂、結晶性無機充填材、ガラス繊維に加え、各種用途及び目的に応じて、その他の成分を適宜配合することができる。
例えば、本発明の組成物に、結晶核剤を更に配合することができる。結晶核剤としては有機物、無機物のいずれも使用することができる。
また、本発明の樹脂組成物に、成形性改良剤を更に配合することができる。成形性改良剤としては、リン酸エステル類、亜リン酸エステル類、高級脂肪酸類、高級脂肪酸金属塩類、高級脂肪酸エステル類、高級脂肪酸アミド化合物類、ポリアルキレングリコール又はその末端変性物類、低分子量ポリエチレン又は酸化低分子量ポリエチレン類、置換ベンジリデンソルビトール類、ポリシロキサン類、カプロラクトン類が挙げられるが、特に好ましいのは、高級脂肪酸類、高級脂肪酸金属塩類、高級脂肪酸エステル類である。
また、本発明の樹脂組成物には、本発明の目的を損なわない範囲で、通常使用される難燃剤、紫外線吸収剤、耐熱安定剤、酸化防止剤、可塑剤、着色剤、整色剤、帯電防止剤、蛍光増白剤、つや消し剤、衝撃強度改良剤等の添加剤を配合することもできる。
【0028】
本発明のポリトリメチレンテレフタレート強化樹脂組成物は、外観が極めて良好であり、機械的強度、剛性、表面硬度、寸法安定性、耐加水分解性、耐薬品性に優れるため、洗面カウンター、キッチンカウンター、浴槽、洗面ボール(洗面器)、手洗ボール(手洗器)、各種流し、トイレカウンター、キャビネット天板など浴室、洗面所、トイレ、台所で使用される製品の構成部材の少なくとも一部に使用することができる。特に、成形体の表面硬度が、バーコル硬度30、鉛筆硬度2H以上、より好ましくはバーコル硬度40以上、鉛筆高度3H以上の本発明組成物からなる成形体はこの用途に最適に用いることができる。
【実施例】
【0029】
本発明を実施例に基づいて説明する。実施例及び比較例で用いた樹脂を以下に記す。
(A)樹脂
PTT樹脂:ポリトリメチレンテレフタレート樹脂[η]=1.0
PBT樹脂:ポリブチレンテレフタレート樹脂 ポリプラスチックス(株)製ジュラネックス2002
PC樹脂:ポリカーボネート樹脂:三菱エンジニアリングプラスチック(株)製 ユーピロンS2000
(B)エポキシ樹脂
エポキシ樹脂−1:旭化成エポキシ(株)製、ビスフェノールA型エポキシ樹脂 AER ECN6097、エポキシ当量約2000(/eq.)
エポキシ樹脂−2:旭化成エポキシ(株)製、オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂 AER ECN1299、エポキシ当量約230(/eq.)
(C)結晶性無機充填材
MF−1:ウォラストナイト NICO社製 NYGLOSS8 エポキシシラン処理
MF−2:ウォラストナイト NICO社製 NYGLOSS8 アミノシラン処理
MF−3:マイカ レプコ社製 M−400
MF−4:硫酸バリウム 堺化学工業社製 BMH−60
(D)ガラス繊維
日本電気硝子社製 03T−187/PL
評価方法は以下の通り。
(1)曲げ弾性率(GPa)
ASTM D790に準じて測定した。
(2)外観
堀場製ハンディ光沢計IG320を用いて、JIS−K7150に準じてダンベル試験片のGs20°を測定した。
(3)表面硬度
JIS K7060に準じ成形品表面のバーコル硬度を測定した。
(4)耐薬品性
成形品を排水パイプ洗浄剤原液に室温にて2週間浸漬し、取り出し後水で洗浄し乾燥して形品の重量変化を測定した。
使用洗浄剤:ジョンソン株式会社(製)パイプユニッシュプラス(水酸化ナトリウム3%、次亜塩素酸塩、界面活性剤アルキルアミンオキシド)
【0030】
実施例1
PTT樹脂、エポキシ樹脂を表1に示す配合比で混合し、二軸押出機(東芝機械(株)製:TEM58)を用いて溶融混練し、サイドフィーダーから結晶性無機充填材を表1に示す配合比で添加した。押出条件はスクリュー回転数150rpm、シリンダー温度260℃、押出速度150kg/hr、減圧度0.04MPa、先端ノズル付近の樹脂温度は280℃であった。先端ノズルからストランド状に排出された組成物は、水冷後カッティングしペレットとした。該ペレットを除湿型乾燥機で120℃にて5時間乾燥した後、日精樹脂(株)製PS40E射出成形機を用いて、シリンダー温度260℃、金型温度95℃に設定し、射出成形を行い試験片を作成した。この試験片を用いて評価を行った。結果を表1に示す。
・無機充填材表面にグラフトした樹脂量の測定
樹脂組成物5gをHFIP(ヘキサフルオロイソプロパノール)溶媒100mlに加えて、ポリトリメチレンテレフタレートを溶解させ、遠心分離(25000rpm、30min)により溶液を分離した。遠沈管にHFIP25mlを加え、30min超音波洗浄を行い、遠心分離により溶液を分離した。この操作を5回繰り返した後、80℃、10時間乾燥させ、得られた無機充填材を白金ルツボにとり、秤量後650℃、1時間焼成し、焼成後の無機充填材を秤量した。焼成前の無機充填材の重量をW0、焼成後の無機充填材の重量をW1とし、下記式から無機充填材表面にグラフトした樹脂の量を、無機充填材100重量部あたりのグラフト樹脂量(重量部)として求めた。
無機充填材100重量部あたりのグラフト樹脂量(重量部)
=[(W0−W1)/W1]×100
グラフト脂量は1.85重量%であった。
【0031】
実施例2及び比較例1〜4
実施例1と同様に、試験片を作成し、この試験片を用いて評価を行った。また、比較例3及び4は無機充填材としてガラス繊維を用いたが、実施例1と同じ充填量では充填材の分離が見られたため、充填量を下げ100重量部とした。結果を表1に示す。
【表1】

【0032】
実施例3
実施例1と同様に、PTT樹脂、エポキシ樹脂を表2に示す配合比で混合し、二軸押出機(東芝機械(株)製:TEM58)を用いて溶融混練し、サイドフィーダーから結晶性無機充填材、ガラス繊維を表2に示す配合比で添加した。押出条件はスクリュー回転数150rpm、シリンダー温度260℃、押出速度150kg/hr、減圧度0.04MPa、先端ノズル付近の樹脂温度は282℃であった。先端ノズルからストランド状に排出された組成物は、水冷後カッティングしペレットとした。該ペレットを除湿型乾燥機で120℃にて5時間乾燥した後、日精樹脂(株)製PS40E射出成形機を用いて、シリンダー温度260℃、金型温度95℃に設定し、射出成形を行い試験片を作成した。この試験片を用いて評価を行った。結果を表2に示す。
また、実施例1と同様に無機充填材及びガラス繊維表面にグラフトした樹脂量を測定した。グラフト樹脂量は1.61重量%であった。
【0033】
実施例4〜7及び比較例5〜9
実施例3と同様に、試験片を作成し、この試験片を用いて評価を行った、結果を表2に示す。なお、比較例5は充填剤が樹脂より分離し、組成物を製造することができなかった。
【表2】

【0034】
実施例8
実施例4で作成したペットを除湿型乾燥機で120℃にて5時間乾燥した後、(株)日本製鋼所製J650ELIII−3100H射出成形機を用いて、シリンダー温度270℃、金型温度95℃に設定し、図1に示す手洗器(A=400mm、B=320mm、洗面部深さ125mm、洗面台よりの立ち上がり部高さ60mm、排水口φ=30mm、取付孔φ=10mm)を成形した。得られた成形品の洗面部表面のバーコル硬度は48、鉛筆硬度4H、成形品上部平面部分のGS20°は52%であった。また、この成形品に排水パイプ洗浄剤原液を張り、2週間放置後、成形品に外観変化のないことを確認した。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明のポリトリメチレンテレフタレート強化樹脂組成物は、得られる成形品が良外観であり、機械的強度、剛性、表面硬度、寸法安定性、耐加水分解性、耐薬品性に優れる。かかる樹脂組成物からなる洗面カウンター、キッチンカウンター、浴槽、洗面ボール、手洗ボール、トイレカウンター、キャビネット天板などの製品は優れた性能を持ち、浴室、洗面所、トイレ、台所で使用される、陶器製、熱硬化性樹脂製品を代替することが可能であり、また成形原料の一部にリワークして使用するなどリサイクルして使用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】実施例8で作成した手洗器の概略を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリトリメチレンテレフタレート樹脂(A1)99.9〜50重量部、熱可塑性樹脂(A2)0〜49.9重量部、エポキシ樹脂(B)0.1〜20重量部の合計100重量部に対し、結晶性無機充填材(C)5〜300重量部を含んでなるポリトリメチレンテレフタレート強化樹脂組成物。
【請求項2】
前記エポキシ樹脂が0.3〜10重量部である請求項1記載のポリトリメチレンテレフタレート強化樹脂組成物。
【請求項3】
前記結晶性無機充填材にグラフトした樹脂が、前記結晶性無機充填材100重量部当り0.01〜5重量部である請求項1又は2記載のポリトリメチレンテレフタレート強化樹脂組成物。
【請求項4】
前記結晶性無機充填材にグラフトしていない樹脂中のエポキシ樹脂が、0.1〜20重量%である請求項1〜3のいずれか一項に記載のポリトリメチレンテレフタレート強化樹脂組成物。
【請求項5】
前記熱可塑性樹脂(A2)が2.5〜29.7重量部である請求項1〜4のいずれか一項に記載のポリトリメチレンテレフタレート強化樹脂組成物。
【請求項6】
前記熱可塑性樹脂(A2)がポリカーボネート樹脂である請求項1〜5のいずれか一項に記載のポリトリメチレンテレフタレート強化樹脂組成物。
【請求項7】
前記結晶性無機充填材が、ウォラストナイト、タルク、マイカ、カオリン、チタン酸カリウムウィスカー、炭酸カルシウムウィスカー、硫酸バリウムからなる群から選ばれる一種以上の無機充填材である請求項1〜6のいずれか一項に記載のポリトリメチレンテレフタレート強化樹脂組成物。
【請求項8】
前記結晶性無機充填材がウォラストナイトである請求項1〜7のいずれか一項に記載のポリトリメチレンテレフタレート強化樹脂組成物。
【請求項9】
ポリトリメチレンテレフタレート強化樹脂組成物がガラス繊維(D)を前記結晶性無機充填材(C)より少ない量で含む請求項1〜8のいずれか一項に記載のポリトリメチレンテレフタレート強化樹脂組成物。
【請求項10】
前記結晶性無機充填材と前記ガラス繊維にグラフトした樹脂が、結晶性無機充填材とガラス繊維の合計100重量部当り0.01〜5重量部である、請求項1〜9のいずれか一項に記載のポリトリメチレンテレフタレート強化樹脂組成物。
【請求項11】
前記ポリトリメチレンテレフタレート樹脂の極限粘度[η]が、0.60以上である請求項1〜10のいずれか一項に記載のポリトリメチレンテレフタレート強化樹脂組成物。
【請求項12】
前記エポキシ樹脂(B)がノボラック型エポキシ樹脂である請求項1〜11のいずれか一項に記載のポリトリメチレンテレフタレート強化樹脂組成物。
【請求項13】
前記エポキシ樹脂(B)がエポキシ当量150〜250(/eq.)のノボラック型エポキシ樹脂である請求項1〜12のいずれか一項に記載のポリトリメチレンテレフタレート強化樹脂組成物。
【請求項14】
前記エポキシ樹脂(B)がビスフェノールA型エポキシ樹脂である請求項1〜11のいずれか一項に記載のポリトリメチレンテレフタレート強化樹脂組成物。
【請求項15】
前記エポキシ樹脂(B)がエポキシ当量600〜3000(/eq.)のビスフェノールA型エポキシ樹脂である請求項1〜11及び14のいずれか一項に記載のポリトリメチレンテレフタレート強化樹脂組成物。
【請求項16】
前記ポリトリメチレンテレフタレート樹脂、(A1)、熱可塑性樹脂、(A2)、及びエポキシ樹脂(B)を溶融混練した後に結晶性無機充填材(C)を添加することにより製造される請求項1〜15のいずれか一項に記載のポリトリメチレンテレフタレート強化樹脂組成物。
【請求項17】
請求項1〜16のいずれか一項に記載のポリトリメチレンテレフタレート強化樹脂組成物を含んでなる成形体。
【請求項18】
請求項17に記載の成形体を構成部材の少なくとも一部に含む、浴室用製品、洗面所用製品、トイレ用製品、又は流し台用製品である成形体。
【請求項19】
請求項17に記載の成形体が、洗面カウンター、キッチンカウンター、浴槽、洗面ボール、手洗ボール、トイレカウンター、又はキャビネット天板である請求項18に記載の成形体。
【請求項20】
成形体の表面硬度がバーコル硬度30以上である、請求項17〜19のいずれか一項に記載の成形体。

【図1】
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【国際公開番号】WO2005/040278
【国際公開日】平成17年5月6日(2005.5.6)
【発行日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−515033(P2005−515033)
【国際出願番号】PCT/JP2004/016008
【国際出願日】平成16年10月28日(2004.10.28)
【出願人】(303046314)旭化成ケミカルズ株式会社 (2,513)
【Fターム(参考)】