説明

ポリトリメチレンテレフタレート樹脂及びその製造方法

【課題】 成形性に優れるとともに、塗料、糊剤の塗布性や、接着性に優れるポリトリメチレンテレフタレート樹脂を提供する。
【解決手段】 繰り返し単位の80重量%以上がトリメチレンテレフタレート単位からなる極限粘度が0.5dl/g以上のポリトリメチレンテレフタレート樹脂であって、下記の(a)、(b)の条件を満たすことを特徴とするポリトリメチレンテレフタレート樹脂。
(a)環状ダイマーの含有率が2重量%以下であること
(b)末端カルボキシル基がトリメチレンテレフタレート単位当たり0.3mol%以上、1mol%以下の範囲であること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリトリメチレンテレフタレート樹脂及びその製造方法に関する。
さらに詳しくは、重合工程で生成するオリゴマー、特に環状ダイマーの含有率が少なく、成形性に優れるとともに、その成形体が塗料、糊剤の塗布性や、接着性に優れていることを特徴とするポリトリメチレンテレフタレート樹脂に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエステル、特にポリエチレンテレフタレートは、優れた物理的、化学的特性を有し、繊維、フィルム、その他成形体として広く利用されているが、柔軟性に乏しい。一方、テレフタル酸やテレフタル酸の低級アルコールエステルと1,3−プロパンジオール(トリメチレングリコールともいう)とを重合して得られるポリトリメチレンテレフタレートは、柔軟性に優れた素材であり、またガラス転移温度や融点がナイロン6のそれらに近いうえ吸湿による物性への影響が少ないなど、既存の素材では得られない多くの特徴を兼ね備えている。
【0003】
しかしながらポリトリメチレンテレフタレートは、その重合過程でオリゴマーを生成し、そのオリゴマーが紡糸、成形工程や、加工工程で様々な問題を起こすことがわかってきた。
例えば、紡糸工程においては長時間紡糸を行うとオリゴマーが昇華して紡口周辺に析出し、これが繊維に付着して糸切れや毛羽の原因になる。成形工程においては成形金型に析出し、成形体の外観や寸法精度を損なう原因となる。また、繊維やフィルムなどに成形した後にオリゴマーが成形体の表面にブリードアウトするため塗料や糊剤の塗布性や、接着性が必ずしも満足できるものではなかった。
【0004】
溶融重合で製造されたポリトリメチレンテレフタレート中のオリゴマーは、ポリトリメチレンテレフタレートに対して約2.5〜3.5重量%含まれる。また、そのオリゴマーの約90重量%は環状ダイマーであるが、環状ダイマーは昇華性、ブリードアウト性を有するために上に示したような様々な問題を引き起こす主たる原因物質になる。
類似骨格を有するポリエチレンテレフタレートにもこのようなオリゴマーが存在することが古くから知られている。しかしポリエチレンテレフタレートの場合、その存在量が1重量%程度であること、更にこのオリゴマーは環状三量体が大部分で、ポリトリメチレンテレフタレートの環状ダイマーよりも分子量が大きいため、昇華性やブリードアウト性が小さい。従って問題の程度はポリトリメチレンテレフタレートの方が深刻である。
【0005】
ポリトリメチレンテレフタレート中に含まれるオリゴマーを減らす試みは既に知られており、最も有効な方法は固相重合することである(特開平8−311177号公報)。この特許文献では、200℃近傍で、真空中で数時間固相重合すると、オリゴマーの含有率は1重量%以下になることが記載されている。しかしながら、本発明者らの検討によれば、固相重合によって環状ダイマー含有率を1重量%未満としたポリトリメチレンテレフタレートを再度溶融する時に環状ダイマー含有率が増加し、溶融滞留時間が長くなると、2.5〜3.5重量%程度と、固相重合前の値まで戻ることが明らかになった。このため、固相重合したポリトリメチレンテレフタレートであっても、繊維やフィルム、射出成形品などに溶融成形した後に環状ダイマーが成形体の表面に数μm前後の結晶としてブリードアウトし、後加工時および使用時に発生する問題を回避出来なかった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記問題を解決し、重合工程で生成するオリゴマー、特に環状ダイマーの含有率が少なく、成形性に優れるとともに、成形体の塗料、糊剤の塗布性や接着性に優れたポリトリメチレンテレフタレート樹脂を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この問題を解決するために、本発明者らは環状ダイマーの生成プロセス及び、成形体表面への析出挙動と、成形体の塗料、糊剤の塗布性や、接着性の影響について詳細に解析した結果、環状ダイマーの含有率が2重量%以下であるとともに、末端カルボキシル基がトリメチレンテレフタレート単位当たり0.3mol%以上、1mol%以下の範囲であるポリトリメチレンテレフタレート樹脂が、環状ダイマーの成形体表面への析出が少なく、成形体の塗料、糊剤の塗布性や、接着性が大幅に改良されることを見出した。
【0008】
また、溶融成形時の環状ダイマーの生成プロセスは、分子末端の水酸基酸素の不対電子が分子内部のエステル基のカルボニル炭素を攻撃して生成しており、このとき重合で用いた触媒がエステル基のカルボニル酸素に配位してカルボニル炭素の求電子性を向上するために、分子末端の水酸基酸素の求核攻撃性を高め、環状ダイマーが生成しやすくなっていることを見出した。本発明者らは、上記の知見を元に重縮合反応の終了後に、カルボニル炭素に配位した触媒の活性を特定の割合に低下させることによって溶融後加工時の環状ダイマーの生成を抑制できることを見出した。
【0009】
さらに本発明の特定の末端カルボキシル基量を有するポリトリメチレンテレフタレート樹脂は、固相重合法では製造が困難であることから、これに代わる製造方法として、特定の環状ダイマー除去装置を用いることにより効率よく製造出来ることを見出し、本発明に到達した。
【0010】
すなわち、本発明は、
1.繰り返し単位の80重量%以上がトリメチレンテレフタレート単位からなる極限粘度が0.5dl/g以上であり、かつ下記の(a)、(b)の条件を満たすことを特徴とするポリトリメチレンテレフタレート樹脂、
(a)環状ダイマーの含有率が2重量%以下であること
(b)末端カルボキシル基がトリメチレンテレフタレート単位当たり0.3mol%以上、1mol%以下の範囲であること
【0011】
2.ポリトリメチレンテレフタレートの重縮合反応の終了後に、下記(式1)を満たすように触媒の活性を低下させる操作を実施することを特徴とする上記1記載のポリトリメチレンテレフタレート樹脂の製造方法、
CP(min)≧1.2×CP0(min) (式1)
(CP(触媒の活性パラメータ)は、260℃、0.3Torrの条件で、ポリトリメチレンテレフタレートの極限粘度を0.4dl/gから0.6dl/gまで上げるのに要する時間(min)を示す。CP0は触媒の活性を低下させる前のパラメータであり、CPは触媒の活性を低下させた後のパラメータである。)
【0012】
3.触媒の活性を低下させたポリトリメチレンテレフタレート樹脂を、樹脂が気相と接する表面積を樹脂重量で除した値が0.4cm2/g以上である環状ダイマー除去装置を用いて、樹脂温度が230〜280℃、かつ10Torr以下の真空度で、1分以上処理することを特徴とする上記2記載のポリトリメチレンテレフタレート樹脂の製造方法、および
【0013】
4.リン酸、リン酸エステル、亜リン酸、亜リン酸エステルおよびフェニルホスホン酸から選ばれる少なくとも1種以上の化合物をトリメチレンテレフタレート単位当たり1×10-2〜50×10-2mol%の範囲で添加することにより触媒の活性を低下させることを特徴とする上記2または3記載のポリトリメチレンテレフタレート樹脂の製造方法
に関する。
【発明の効果】
【0014】
本発明により得られたポリトリメチレンテレフタレート樹脂は、重合工程で生成するオリゴマー、特に環状ダイマーの含有率が少なく、成形性に優れるとともに、その成形体は塗料、糊剤の塗布性や、接着性に優れている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明のポリトリメチレンテレフタレート樹脂を構成するポリトリメチレンテレフタレートは、繰り返し単位の80重量%以上がトリメチレンテレフタレート単位からなる極限粘度が0.5dl/g以上のポリトリメチレンテレフタレートである。極限粘度が0.5dl/g未満の場合は、成形加工品の強度が低い。極限粘度の上限については特に制限はないが、2dl/gを越える場合は、溶融粘度が高すぎるために成形加工が困難となるので、好ましくは0.7〜1.5dl/g、特に好ましくは0.8〜1.4dl/gであり、最も好ましくは0.85〜1.3dl/gである。
【0016】
本発明のポリトリメチレンテレフタレートの主骨格を形成する原料モノマーとしては、テレフタル酸と1,3−プロパンジオール以外に、繰り返し単位の20重量%未満で他のモノマーを共重合してもよい。共重合するモノマーは、ジオール、ジカルボン酸、ジカルボン酸エステル、ジカルボン酸アミド、オキシカルボン酸など特に制限はない。具体例としてはエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等のジオール、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、ビフェニルジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、5−カリウムスルホイソフタル酸、5−リチウムスルホイソフタル酸、2−ナトリウムスルホイソフタル酸、2−カリウムスルホイソフタル酸、2−リチウムスルホイソフタル酸、4−ナトリウムスルホ−2,6−ナフタレンジカルボン酸、2−ナトリウムスルホ−4−ヒドロキシ安息香酸、5−スルホイソフタル酸テトラブチルホスホニウム等のジカルボン酸及びそのメタノール等の低級アルコールエステル、オキシ酢酸、オキシ安息香酸等のオキシカルボン酸及びそのメタノール等の低級アルコールエステル、更には分子量が200〜100000のポリエチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等のポリオールであってもよい。また必要に応じて2種類以上のエステル形成性モノマーを共重合させてもよい。
【0017】
また、重合過程で生成する共重合成分、例えば、1,3−プロパンジオールのダイマー(ビス(3−ヒドロキシプロピル)エーテル)が共重合されていてもよい。ビス(3−ヒドロキシプロピル)エーテルは、重合過程で1,3−プロパンジオールやポリマー分子末端の3−ヒドロキシプロピル基が更に1,3−プロパンジオールと反応して生成し、そのままポリトリメチレンテレフタレートに共重合してポリトリメチレンテレフタレートの耐光性や耐熱性を低下させるが、適度に共重合されると繊維の染料吸尽率や紡糸安定性を高める効果もある。従って、適度にビス(3−ヒドロキシプロピル)エーテルは共重合されることが好ましく、その共重合比率としては0.01〜2重量%、好ましくは0.04〜1.2重量%である。
【0018】
本発明のポリトリメチレンテレフタレート樹脂中の環状ダイマー含有量は、環状ダイマーに起因する問題を回避するためにはポリトリメチレンテレフタレート樹脂重量に対して2重量%以下であることが必要である。より好ましくは1.8重量%であり、更に好ましくは1.5重量%以下であり、最も好ましくは1重量%以下である。環状ダイマー含有率を2重量%以下に低減する方法には特に制限はなく固相重合、あるいは極性溶剤等による環状ダイマーの抽出も可能であるが、最も好ましくは後述するように特定の環状ダイマー除去装置を用いて、溶融状態のポリトリメチレンテレフタレート樹脂から減圧下で環状ダイマーを揮発させて除去する方法である。
【0019】
本発明のポリトリメチレンテレフタレート樹脂中の末端カルボキシル基は、トリメチレンテレフタレート単位当たり0.3mol%以上、1mol%以下の範囲であることが必要である。0.3mol%未満の場合、成形体表面に析出する環状ダイマーの析出量及び、その粒径が大きく、成形体の塗料、糊剤の塗布性や、接着性などの加工性は充分に改良されない。末端カルボキシル基の量は成形体表面の極性を改良するのみならず、環状ダイマーの析出挙動も改良することで上記の加工性を改良するものと考えられる。さらに環状ダイマー生成反応の起点となる分子末端の水酸基の一部がカルボキシル基に置き換わることで溶融成形時の環状ダイマーの生成を抑制する効果もあると考えられる。
【0020】
一方、末端カルボキシル基が1mol%を越える場合、成形体の色調や耐候性等に悪影響を及ぼすために好ましくない。より好ましくは末端カルボキシル基がトリメチレンテレフタレート単位当たり0.33mol%以上、0.8mol%以下の範囲であり、更に好ましくは0.35mol%以上、0.7mol%以下の範囲である。末端カルボキシル基を調整する方法には特に制限はなく、ポリマーを製造する任意の段階で末端ヒドロキシ基と反応して末端にカルボキシル基を導入しうる無水フタル酸のような化合物と反応させ調整することも可能であるが、好ましくはポリマーを製造する最終工程を溶融重縮合とすることによって、副反応により生成する末端カルボキシル基を利用して調整する方法である。ポリマーを製造する最終工程を固相重合とすると、重縮合の進行につれて末端カルボキシル基が重縮合反応によって消費され、所定の重合度に到達する以前にトリメチレンテレフタレート単位当たり0.3mol%未満に減少してしまうため、調整は困難である。
【0021】
以下、本発明のポリトリメチレンテレフタレート樹脂の好ましい製造方法について説明する。
本発明のポリトリメチレンテレフタレート樹脂の製造方法は特に限定されないが、ポリトリメチレンテレフタレート中に残存する触媒の活性を特定の割合に低下させて環状ダイマーの生成を抑制することによって得ることができる。さらに、上記触媒の活性を低下させたポリマーを特定の環状ダイマー除去装置を用いて環状ダイマー含有率を低減することによって本発明の効果は一段と改良される。
【0022】
ポリトリメチレンテレフタレートは、テレフタル酸及び/又はその低級アルコールエステルと1,3−プロパンジオールを反応させてテレフタル酸の1,3−プロパンジオールエステル及び/又はそのオリゴマーを生成させ、更に重縮合させることにより得られる。本発明で用いるテレフタル酸、テレフタル酸の低級アルコールエステル、1,3−プロパンジオールは、市販のものあるいはポリトリメチレンテレフタレートやポリトリメチレンテレフタレート製品から回収されたものでもよく、好ましくは純度95%以上、更に好ましくは98%以上である。
【0023】
重合原料であるテレフタル酸やテレフタル酸の低級アルコールエステルに対する1,3−プロパンジオールの仕込み比率はモル比で0.8〜3であることが好ましい。仕込み比率が0.8未満では、エステル交換反応が進行しにくく、また仕込み比率が3より大きくなると融点が低くなるほか、得られたポリマーの白度が低下する傾向がある。好ましくは、1.4〜2.5であり、さらに好ましくは1.5〜2.3である。
【0024】
触媒は重合反応を円滑に進行させるため必要であり、エステル化反応、エステル交換反応では、例えばマグネシウム、カルシウム、バリウム、スカンジウム、イットリウム、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、カドミウム、アルミニウム、ゲルマニウム、スズ、鉛、アンチモン、ランタン、セリウム、サマリウム、イッテルビウム等の金属について、ナトリウムメチラート、マグネシウムメチラート、アルミニウムイソプロポキシド、亜鉛グリコキシド、亜鉛フェノキシド、チタンテトラブトキシド、チタンテトライソプロポキシドに代表されるアルコキサイド:及び上記の金属の、酢酸リチウム、酢酸カルシウム、酢酸マグネシウム、酢酸マンガン、酢酸亜鉛、酪酸亜鉛、酢酸スズ、オクチル酸スズ、2−エチルヘキサン酸スズ、酢酸鉛、酢酸アンチモン、蓚酸チタンに代表されるカルボン酸塩:及び上記の金属の、炭酸カルシウム、炭酸亜鉛に代表される炭酸塩:及び上記の金属の、酸化アンチモン、酸化ゲルマニウム、酸化鉛、酸化スズ、非晶性酸化チタン沈殿物、非晶性酸化チタン/シリカ共沈殿物、非晶性ジルコニア沈殿物に代表される酸化物:及び上記の金属の、塩化亜鉛、ヨウ化亜鉛、塩化スズ、塩化ランタン、塩化サマリウムに代表されるハロゲン化物:及び上記の金属の、硫酸亜鉛、硫酸鉛に代表される硫酸塩:及び、上記の金属の、リン酸亜鉛に代表されるリン酸塩:及び、チタンテトラブトキシドに代表される上記の金属化合物の、リン酸、亜リン酸、リン酸エステル、亜リン酸エステルとの反応物:及びモノブチルスズオキサイド、ジブチルスズオキサイド、モノブチルスズトリオクチルエステル、ジブチルスズジアセテート、ジブチルスズジラウレート、スタノキサンに代表されるオルガノスズ化合物等:以上の触媒から選ばれる1種以上を、全カルボン酸成分モノマーに対して0.01〜0.2重量%、好ましくは0.05〜0.12重量%用いることが反応速度、ポリマーの白度、熱安定性を兼ね備え好ましい。
【0025】
反応温度としては200℃から250℃程度で、副生する水やメタノール等のアルコールを留去しながら反応を行うことができる。反応時間は通常2〜10時間、好ましくは2〜4時間である。こうして得られた反応物は、テレフタル酸の1,3−プロパンジオールエステル及び/又はそのオリゴマーである。以上のエステル化反応、エステル交換反応は、必要に応じて2つ以上の反応釜に分けて順次連続的に行ってもよい。
【0026】
ポリトリメチレンテレフタレート樹脂は、こうして得られたテレフタル酸の1,3−プロパンジオールエステル及び/又はそのオリゴマーを更に重縮合することにより製造することができる。
重縮合反応では、必要に応じて更にマグネシウム、カルシウム、バリウム、スカンジウム、イットリウム、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、カドミウム、アルミニウム、ゲルマニウム、スズ、鉛、アンチモン、ランタン、セリウム、サマリウム、イッテルビウム等の金属の、ナトリウムメチラート、マグネシウムメチラート、アルミニウムイソプロポキシド、亜鉛グリコキシド、亜鉛フェノキシド、チタンテトラブトキシド、チタンテトライソプロポキシドに代表されるアルコキサイド:及び上記の金属の、酢酸リチウム、酢酸カルシウム、酢酸マグネシウム、酢酸マンガン、酢酸亜鉛、酪酸亜鉛、酢酸スズ、オクチル酸スズ、2−エチルヘキサン酸スズ、酢酸鉛、酢酸アンチモン、蓚酸チタンに代表されるカルボン酸塩:及び上記の金属の、炭酸カルシウム、炭酸亜鉛に代表される炭酸塩:及び上記の金属の、酸化アンチモン、酸化ゲルマニウム、酸化鉛、酸化スズ、非晶性酸化チタン沈殿物、非晶性酸化チタン/シリカ共沈殿物、非晶性ジルコニア沈殿物に代表される酸化物:及び上記の金属の、塩化亜鉛、ヨウ化亜鉛、塩化スズ、塩化ランタン、塩化サマリウムに代表されるハロゲン化物:及び上記の金属の、硫酸亜鉛、硫酸鉛に代表される硫酸塩:及び、上記の金属の、リン酸亜鉛に代表されるリン酸塩:及び、チタンテトラブトキシドに代表される上記の金属化合物の、リン酸、亜リン酸、リン酸エステル、亜リン酸エステルとの反応物:及びモノブチルスズオキサイド、ジブチルスズオキサイド、モノブチルスズトリオクチルエステル、ジブチルスズジアセテート、ジブチルスズジラウレート、スタノキサンに代表されるオルガノスズ化合物等:以上の触媒から選ばれる1種以上を、全カルボン酸成分モノマーに対して0.01〜0.2重量%、好ましくは0.03〜0.15重量%添加する。この重縮合触媒は、エステル化反応やエステル交換反応で用いた触媒をそのまま使用することも出来るし、新たに追加してもよい。これらの触媒のうち、チタン系の触媒はエステル化反応、エステル交換反応、重縮合反応のいずれにも有効な触媒でありエステル化反応やエステル交換反応段階で添加しておくと、重縮合反応前に新たに添加することなく、あるいは添加するにしても少量で重縮合反応を行うことが出来る点で最も好ましい触媒である。
【0027】
重縮合反応においては、1,3−プロパンジオールや更にはエステル化反応やエステル交換反応で生成した反応系に残存する水やアルコールを効率的に排出させるために、減圧中で重縮合することが好ましく、適用する真空度としては0.0001〜2torr、好ましくは0.01〜0.7torrである。ポリトリメチレンテレフタレートに共重合を行う場合は重合の任意の段階で、コモノマーを添加することが出来る。
【0028】
上記の方法で得られたポリトリメチレンテレフタレート樹脂を、重縮合反応の終了後にポリトリメチレンテレフタレート樹脂中に含まれる触媒の活性を特定の割合に低下させることによって、本発明のポリトリメチレンテレフタレート樹脂を得ることができる。
【0029】
本発明における触媒の活性は、260℃、0.3Torrの条件で、ポリトリメチレンテレフタレートの極限粘度を0.4dl/gから0.6dl/gまで上げるのに要する時間(CP)で表し、下記(式1)を満たすように触媒の活性を低下させることが好ましい。
CP(min)≧1.2×CP0(min) (式1)
(CP0は触媒の活性を低下させる前のパラメータであり、CPは触媒の活性を低下させた後のパラメータである)
1.2×CP0>CPの場合には改良の程度は不十分である。一方、CPの上限については特に制限は無い。より好ましくはCP≧1.5×CP0であり、更に好ましくはCP≧1.8×CP0であり、最も好ましくはCP≧2.0×CP0である。
【0030】
触媒の活性を低下させる方法は特に制限は無いが、具体的な方法としては例えば極性化合物と接触させる方法がある。接触方法としては特に制限はなく、この処理によって(式1)を満足する、触媒の部分的あるいは完全失活が認められる方法であればよい。例えば極性化合物を重合装置内に注入する方法、ポリトリメチレンテレフタレートを極性化合物雰囲気に入れる方法、ポリトリメチレンテレフタレートを溶融状態、固体状態、溶液状態、分散状態として、この中に極性化合物を注入、投入、含浸する方法等が挙げられる。触媒の活性を効率よく低下させる為には、ポリトリメチレンテレフタレートと極性化合物が反応するときの温度は50℃以上が好ましく、より好ましくは70℃以上、更に好ましくは150℃以上である。このとき極性化合物は固体、液体、気体、臨界点以上の流体であってもよい。処理時間には制限はないが、処理時間が長くなると分子量の低下や分解、着色などの副反応を引き起こす可能性もあるので、出来るだけ短時間に処理することが好ましい。通常は60分以内、より好ましくは30分以内である。
【0031】
極性化合物としては、例えば酸素、窒素、リン、硫黄などのヘテロ原子を有するものであり、より好ましくは水素結合が可能な化合物である。このような化合物の具体例としては、水、メタノール、エタノール、プロパノール、PDO、1,4−ブタンジオール、エチレングリコール、グリセリン、エタノールアミン等のアルコール:リン酸、リン酸トリメチル、リン酸トリエチル、リン酸トリブチル、リン酸トリフェニル、亜リン酸、亜リン酸トリメチル、亜リン酸トリエチル、亜リン酸トリブチル、亜リン酸トリフェニル等のリン化合物:ギ酸、酢酸、プロピオン酸、塩化水素、硫酸等の酸:アンモニア、メチルアミン、ジメチルアミン、エチレンジアミン、トリエチルアミン、エチレンイミン等の含窒素化合物が挙げられるが、取り扱い性や毒性の観点から水またはリン化合物が好ましい。こうした極性化合物とポリトリメチレンテレフタレートを接触させるときの両化合物の比率としては、特に制限はなく、通常は重量比で100000/1から0.01/1の範囲であればよい。
【0032】
上記極性化合物としてリン化合物を用いると、後述する環状ダイマーを除去する過程におけるポリマーの色調等の劣化を抑制することができ、特に好ましい。
リン化合物としては、リン酸、亜リン酸又はそのエステル又はフェニルホスホン酸が好ましい。リン酸エステル及び亜リン酸エステルはアルキル、アリール及びヒドロキシアルキルエステルであり、具体的にはリン酸トリメチル、リン酸トリエチル、リン酸トリブチル、リン酸トリフェニル、リン酸トリス−2−ヒドロキシエチル、亜リン酸トリメチル、亜リン酸トリエチル、亜リン酸トリブチル、亜リン酸トリフェニル等が挙げられる。これらの配合量はトリメチレンテレフタレート単位当たり1×10-2mol%〜50×10-2mol%の範囲が好ましい。
1×10-2mol%より少ないと環状ダイマーの低減が困難である上、環状ダイマー除去操作中にポリマーの色調等が劣化する。一方、50×10-2mol%より多くても、発明の効果に向上は認められず経済的ではない。より好ましくは3×10-2mol%〜30×10-2mol%の範囲であり、更に好ましくは5×10-2mol%〜20×10-2mol%の範囲である。
【0033】
ポリトリメチレンテレフタレートの重縮合反応の終了後に、触媒の活性を低下させる操作を実施して製造したポリトリメチレンテレフタレート樹脂は、一度溶融成形した成形体を更にリサイクル成形しても環状ダイマーの生成が抑制でき発明の効果を維持することができる。
さらに、触媒の活性を低下させる操作を実施した後に、特定の環状ダイマー除去装置を用いることによって溶融状態のポリトリメチレンテレフタレートから環状ダイマーを除去することにより、発明の効果を一層向上させることができる。
【0034】
環状ダイマー除去装置は、樹脂が気相と接する表面積を樹脂重量で除した値が0.4cm2/g以上であれば特に限定されるものではない。除去装置の例としては、薄膜蒸留装置、減圧ベント付きのニーダー装置、樹脂の充満率を下げることによりベント開口部面積以上に樹脂が気相と接する表面積を拡大して使用できる減圧ベント付きの押出機、などが挙げられるが、その他にも樹脂が気相と接する表面積を確保する設備、加熱設備、減圧設備及び、除去した環状ダイマーの回収設備を備えた任意の形状の装置、例えば温度及び真空度が調節可能であって、装置の内壁及び/または装置内部に付属する、ワイヤー状あるいは網状あるいは板状あるいは多孔板状の構造からなる、樹脂が気相と接する表面積を拡大する設備や、へらやスクリューなどの動力設備の表面に沿って溶融したポリトリメチレンテレフタレートを樹脂の自重あるいは装置に付属するへらやスクリューなどの設備によって強制的に流延させる装置を使用することが出来る。
【0035】
樹脂が気相と接する表面積を樹脂重量で除した値が0.4cm2/gより少ないと環状ダイマー含有率の減少速度が小さく、環状ダイマー含有率が2重量%以下に減少するまでに長大な処理時間を要し、ポリトリメチレンテレフタレートの分子量の低下や分解、着色などの副反応を引き起こす。より好ましくは、0.7cm2/g以上であり、さらに好ましくは1.0cm2/g以上であり、最も好ましくは2.0cm2/g以上である。
【0036】
環状ダイマーを除去する際の樹脂温度は230℃〜280℃の範囲が好ましい。230℃未満では、環状ダイマー含有率の減少速度が低下するうえ、ポリトリメチレンテレフタレートが固化する恐れがある。280℃より高温ではポリトリメチレンテレフタレートの分子量の低下や分解、着色などの副反応が進行しやすい。より好ましくは240℃〜275℃の範囲であり、さらに好ましくは245℃〜270℃の範囲であり、最も好ましくは250℃〜265℃の範囲である。
【0037】
環状ダイマーを除去する際の真空度は10Torr以下であることが好ましい。真空度の値が10Torrより大きいと、環状ダイマー含有率の減少速度が小さく、環状ダイマー含有率が2重量%以下に減少するまでに長大な処理時間を要し、ポリトリメチレンテレフタレートの分子量の低下や分解、着色などの副反応を引き起こす。より好ましくは5Torr以下であり、さらに好ましくは2Torr以下であり、最も好ましくは0.5Torr以下であり、特に最も好ましくは0.1Torr以下である。
【0038】
環状ダイマーを除去する際の処理時間は1分以上が好ましい。処理時間が1分未満であると、環状ダイマー含有率を2重量%以下に低減することは困難である。一方で、1分を越える処理時間には制限はないが、あまりに長大な処理時間であるとポリトリメチレンテレフタレートの分子量の低下や分解、着色などの副反応を引き起こす可能性がある。好ましい処理時間は1分以上90分以下の範囲であり、より好ましくは1分以上60分以下の範囲であり、最も好ましくは1分以上30分以下の範囲である。
【0039】
またポリトリメチレンテレフタレートに、予め窒素や二酸化炭素等の気体や、水や1,3−プロパンジオールなどの揮発性物質の1種以上を0.001重量%から10重量%の範囲で含有させた後、環状ダイマー除去装置に導入することにより、同伴効果によって環状ダイマー含有率の減少速度を一段と改良することが可能である。
本発明のポリトリメチレンテレフタレート樹脂は必要に応じて各種の添加剤、例えば熱安定剤、消泡剤、整色剤、難燃剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、結晶核剤、蛍光増白剤、例えば酸化チタン等の艶消し剤などを共重合、または混合してもよい。
【実施例】
【0040】
以下、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明は実施例などにより何ら限定されるものではない。尚,実施例中の主な測定値は以下の方法で測定した。
(1)極限粘度
オストワルド粘度管を用い、35℃、o−クロロフェノールを用いて比粘度ηspと濃度C(g/100ml)の比ηsp/Cを濃度ゼロに外挿し、以下の式に従って求めた。
[η]=lim(ηsp/C) [C→0]
【0041】
(2)環状ダイマーの含有量
試料0.3gをクロロホルム5mlと(CF32CHOH5mlの混合物に溶解させた後、更にクロロホルム5mlを加え、その後アセトニトリルを約80ml加えた。このとき析出した不溶物をろ別し、溶液をすべて集めた。この溶液にアセトニトリルを添加し、200mlの溶液とした。この溶液を高速液体クロマトグラフィーを用いて分析し、環状オリゴマー量を測定した。カラムはμBond asphere 15μ C−18−100A 3.9×190mm(ウオータース社製)を用い、検出器として紫外線242nmの波長を用いた。温度は45℃、流量は1.5ml/minである。
【0042】
(3)末端カルボキシル基
試料100mgを、ベンジルアルコール5mLに加熱溶解し、これにクロロホルム5mLを加えて希釈後、フェノールレッドを指示薬とし、0.1N−水酸化ナトリウム/ベンジルアルコール溶液により滴定し定量した。
【0043】
(4)260℃溶融滞留試験
試料1gをガラスアンプルに入れ、空気を真空除去してから溶封し、その後260℃のオイルバス中で30分間放置した。処理後、冷却し試料を取り出して各種の分析を行った。
【0044】
(5)インキ接着性
試料を縦10cm、横10cm、厚み3mmの金型を用いて、260℃に加熱したホットプレスにより、平板状に成形した(溶融時間5分、成形時間5分、70℃冷却時間30分)。この成形体を100℃の温風乾燥機で48時間加熱処理した後、20℃、50%RHの条件下で24時間保持した。これをテトロン遅乾溶剤で希釈したPET用インキ(十条ケミカル(株)製、PET9107白)で、T−270の刷版を用いて印刷を行い、100℃で80秒乾燥して20℃、50%RHの条件下で24時間保持した。このインキ皮膜部にカミソリの刃で、1mm間隔で10個×10個の碁盤目状の切れ込みを入れた上からセロハンテープを貼り付けて一気に剥がしたときに剥離せずに残った個数(A)を数えた。また、印刷を終えた成形体を100℃の温風乾燥機で48時間加熱処理した後、20℃、50%RHの条件下で24時間保持し、同じセロハンテープ剥離試験を行ったときに剥離せずに残った個数(B)を数えた。
【0045】
(実施例1)
テレフタル酸ジメチル3900g(20.1モル)、1,3−プロパンジオール432g(45モル)、チタンテトラブトキシド2.34gを板状の撹拌羽根を備えた10Lのオートクレーブに仕込み、220℃でメタノールを留去しながらエステル交換反応を行った。エステル交換反応率は95%であった。エステル交換反応終了後、次いで触媒としてチタンテトラブトキシド1.56g、熱安定剤としてトリメチルホスフェート1.95gを添加し、30分撹拌後、1,3−プロパンジオールを留去しながら0.3torrの真空度で260℃、4時間重縮合反応を行った。反応後、得られたポリマーを反応釜底部からロープ状に押出し、切断してペレットを得た。得られたポリマーは極限粘度0.62dl/g、環状ダイマー含有率2.62%、末端カルボキシル基はトリメチレンテレフタレート単位当たり0.33mol%であった。
【0046】
得られたペレットにリン酸トリフェニルを0.35重量%添着混合した。これを、スクリュー径が30mmφ、L/D=50.9の、2つの減圧ゾーンを設けたベント付き二軸押出機を用いて、スクリュー回転数100rpm、樹脂温度260℃、2つの減圧ゾーンの真空度をそれぞれ10Torrとして、2kg/hrのフィード量で溶融押出しすることにより、環状ダイマーの除去を行った。このときの押出機の滞留時間とポリマー充満率とをカラーペレットを用いて評価したところ、減圧ゾーンでの滞留時間は3分間、ポリマー充満率は20%であり、シリンダーとスクリュー溝間の容積から樹脂が気相と接する表面積を樹脂重量で除した値は2.0cm2/gと計算された。
【0047】
環状ダイマー除去処理後のポリマーは極限粘度0.61dl/g、環状ダイマー含有率1.80%、末端カルボキシル基はトリメチレンテレフタレート単位当たり0.35mol%であった。
環状ダイマー除去処理後のポリマーを260℃溶融滞留試験したポリマーは極限粘度0.60dl/g、環状ダイマー含有率1.82%、末端カルボキシル基はトリメチレンテレフタレート単位当たり0.37mol%であった。
環状ダイマー除去処理後のポリマーのインキ接着性を評価したところ、(A)=100/100、(B)=100/100であった。さらに、一度平板にプレス成形した成形体を粉砕し、再度平板にプレス成形した成形体のインキ接着性を評価したところ、(A)=99/100、(B)=100/100であった。
【0048】
(参考例1)
撹拌羽根に取り付けたトルクメーターを反応度の参考にしながら、実施例1と同じ条件でポリトリメチレンテレフタレートの溶融重縮合を行った。極限粘度が0.4dl/gのポリトリメチレンテレフタレートから、極限粘度が0.6dl/gのポリトリメチレンテレフタレートを重合するのに要する時間(CP0)は32分であった。また、再度実施例1と同じ条件でポリトリメチレンテレフタレートの溶融重縮合を行ない、極限粘度が0.4dl/gとなった時点で、オートクレーブ内にリン酸トリフェニルを0.35重量%添加し、その後重縮合反応を継続したときから、極限粘度が0.6dl/gのポリトリメチレンテレフタレートを重合するのに要する時間(CP)は45分であった。
【0049】
(実施例2)
実施例1と同じ条件で、0.3Torrの真空度で260℃、4時間重縮合反応を行った後、オートクレーブ内にリン酸トリメチルを0.2重量%添加し、その後重縮合反応を30分間継続した後、得られたポリマーを反応釜底部からロープ状に押出し、切断してペレットを得た。得られたポリマーは極限粘度0.63dl/g、環状ダイマー含有率2.60%、末端カルボキシル基はトリメチレンテレフタレート単位当たり0.34mol%であった。
【0050】
得られたペレットを粒径300μm以下に粉砕したパウダー2.71gを、窒
素雰囲気下、260℃に温度調節された内径が10cmである円筒状のオートクレーブの底部に均等に敷きつめて溶融した後、直ちに真空度を0.2Torrとして、10分間かけて環状ダイマーの除去を行った。除去処理後、急冷してサンプリングしたポリマーは極限粘度0.66dl/g、環状ダイマー含有率0.42%、末端カルボキシル基はトリメチレンテレフタレート単位当たり0.35mol%であった。
【0051】
環状ダイマー除去処理後のポリマーを260℃溶融滞留試験したポリマーは極限粘度0.64dl/g、環状ダイマー含有率0.44%、末端カルボキシル基はトリメチレンテレフタレート単位当たり0.36mol%であった。
【0052】
(参考例2)
リン酸トリフェニル0.35重量%の代わりに、リン酸トリメチルを0.2重量%添加した以外は参考例1と同じ操作を行ったところ、極限粘度が0.6dl/gのポリトリメチレンテレフタレートを重合するのに要する時間(CP)は52分であった。
【0053】
(実施例3)
チタンテトラブトキシド2.34g及び1.56gの代わりに、2−エチルヘキサン酸スズをそれぞれ2.78g及び1.85g添加した以外は実施例2と同じ操作を行ったところ、得られたポリマーは極限粘度0.73dl/g、環状ダイマー含有率2.50%、末端カルボキシル基はトリメチレンテレフタレート単位当たり0.32mol%であった。
【0054】
実施例2と同様に、得られたペレットを粒径300μm以下に粉砕したパウダー2.71gを、窒素雰囲気下、260℃に温度調節された内径が10cmである
円筒状のオートクレーブの底部に均等に敷きつめて溶融した後、直ちに真空度を0.2Torrとして、10分間かけて環状ダイマーの除去を行った。除去処理後、急冷してサンプリングしたポリマーは極限粘度0.75dl/g、環状ダイマー含有率0.35%、末端カルボキシル基はトリメチレンテレフタレート単位当たり0.35mol%であった。
【0055】
環状ダイマー除去処理後のポリマーを260℃溶融滞留試験したポリマーは極限粘度0.73dl/g、環状ダイマー含有率0.37%、末端カルボキシル基はトリメチレンテレフタレート単位当たり0.37mol%であった。
【0056】
(参考例3)
チタンテトラブトキシド2.34g及び1.56gの代わりに、2−エチルヘキサン酸スズをそれぞれ2.78g及び1.85g添加し、またリン酸トリフェニル0.35重量%の代わりに、リン酸トリメチルを0.2重量%添加した以外は参考例1と同じ操作で(CP0)及び(CP)を評価したところ、(CP0)は25分であり、(CP)は42分であった。
【0057】
(実施例4)
実施例1で、0.3Torrの真空度で260℃、4時間重縮合反応を行って得られたペレットを粒径300μm以下に粉砕して、アセトンによって24時間ソックスレー抽出して、環状ダイマーを除去した。これを乾燥したポリマーは極限粘度0.62dl/g、環状ダイマー含有率1.12%、末端カルボキシル基はトリメチレンテレフタレート単位当たり0.33mol%であった。
【0058】
環状ダイマー除去処理後のポリマーを260℃溶融滞留試験したポリマーは極限粘度0.60dl/g、環状ダイマー含有率2.24%、末端カルボキシル基はトリメチレンテレフタレート単位当たり0.35mol%であった。
環状ダイマー除去処理後のポリマーのインキ接着性を評価したところ、(A)=99/100、(B)=99/100であった。さらに、一度平板にプレス成形した成形体を粉砕し、再度平板にプレス成形した成形体のインキ接着性を評価したところ、(A)=67/100、(B)=47/100であった。
【0059】
(実施例5)
リン酸トリメチル0.2重量%の代わりに、水を0.2重量%添加した以外は実施例2と同じ操作を行って得られた、溶融重縮合後のポリマーは極限粘度0.59dl/g、環状ダイマー含有率2.62%、末端カルボキシル基はトリメチレンテレフタレート単位当たり0.38mol%であった。このペレットを粒径300μm以下に粉砕して、アセトンによって24時間ソックスレー抽出して、環状ダイマーを除去した。これを乾燥したポリマーは極限粘度0.58dl/g、環状ダイマー含有率1.10%、末端カルボキシル基はトリメチレンテレフタレート単位当たり0.41mol%であった。
【0060】
環状ダイマー除去処理後のポリマーを260℃溶融滞留試験したポリマーは極限粘度0.55dl/g、環状ダイマー含有率1.12%、末端カルボキシル基はトリメチレンテレフタレート単位当たり0.43mol%であった。
環状ダイマー除去処理後のポリマーのインキ接着性を評価したところ、(A)=99/100、(B)=100/100であった。さらに、一度平板にプレス成形した成形体を粉砕し、再度平板にプレス成形した成形体のインキ接着性を評価したところ、(A)=100/100、(B)=99/100であった。
【0061】
(参考例4)
リン酸トリメチル0.2重量%の代わりに水を0.2重量%添加した以外は参考例2と同じ操作を行ったところ、極限粘度が0.6dl/gのポリトリメチレンテレフタレートを重合するのに要する時間(CP)は61分であった。
【0062】
(比較例1)
実施例1で、0.3Torrの真空度で260℃、4時間重縮合反応を行って得られたペレットを205℃、窒素気流下で30時間固相重合を行って得たポリマーは極限粘度0.92dl/g、環状ダイマー含有率1.02%、末端カルボキシル基はトリメチレンテレフタレート単位当たり0.24mol%であった。
固相重合後のポリマーを260℃溶融滞留試験したポリマーは極限粘度0.86dl/g、環状ダイマー含有率2.13%、末端カルボキシル基はトリメチレンテレフタレート単位当たり0.27mol%であった。
【0063】
固相重合後のポリマーのインキ接着性を評価したところ、(A)=69/100、(B)=52/100であった。さらに、一度平板にプレス成形した成形体を粉砕し、再度平板にプレス成形した成形体のインキ接着性を評価したところ、(A)=55/100、(B)=34/100であった。このとき(B)の成形体表面に環状ダイマーのブリードアウトが観察された。
【0064】
(比較例2)
実施例2で、環状ダイマーの除去工程で、パウダー量を300gとした以外、
同じ操作を行って得られたポリマーは極限粘度0.65dl/g、環状ダイマー含有率2.38%、末端カルボキシル基はトリメチレンテレフタレート単位当たり0.36mol%であった。
環状ダイマー除去処理後のポリマーのインキ接着性を評価したところ、(A)=67/100、(B)=55/100であった。さらに、一度平板にプレス成形した成形体を粉砕し、再度平板にプレス成形した成形体のインキ接着性を評価したところ、(A)=61/100、(B)=56/100であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(1)、(2)の工程を含む、繰り返し単位の80重量%以上がトリメチレンテレフタレート単位からなる極限粘度が0.5dl/g以上であり、かつ下記の(a)、(b)の条件を満たすポリトリメチレンテレフタレート樹脂の製造方法。
(a)環状ダイマーの含有率が2重量%以下であること
(b)末端カルボキシル基がトリメチレンテレフタレート単位当たり0.3mol%以上、1mol%以下の範囲であること
工程(1)
ポリトリメチレンテレフタレートの溶融重縮合反応の終了後に、下記(式1)を満たすように、リン酸、リン酸エステル、亜リン酸、亜リン酸エステルおよびフェニルホスホン酸から選ばれる少なくとも1種以上の化合物をトリメチレンテレフタレート単位当たり1×10−2〜50×10−2mol%の範囲で添加することにより、触媒の活性を低下させる操作を実施する工程。
CP(min)≧1.2×CP(min) (式1)
(CP(触媒の活性パラメータ)は、260℃、0.3Torrの条件で、ポリトリメチレンテレフタレートの極限粘度を0.4dl/gから0.6dl/gまで上げるのに要する時間(min)を示す。CPは触媒の活性を低下させる前のパラメータであり、CPは触媒の活性を低下させた後のパラメータである。)
工程(2)
溶融状態の上記ポリトリメチレンテレフタレート樹脂から減圧下で環状ダイマーを揮発させて除去する工程。
【請求項2】
工程(2)において、触媒の活性を低下させたポリトリメチレンテレフタレート樹脂を、樹脂が気相と接する表面積を樹脂重量で除した値が0.4cm/g以上である環状ダイマー除去装置を用いて、樹脂温度が230〜280℃、かつ10Torr以下の真空度で、1分以上処理することを特徴とする請求項1記載のポリトリメチレンテレフタレート樹脂の製造方法。

【公開番号】特開2008−266660(P2008−266660A)
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−207316(P2008−207316)
【出願日】平成20年8月11日(2008.8.11)
【分割の表示】特願2002−215135(P2002−215135)の分割
【原出願日】平成14年7月24日(2002.7.24)
【出願人】(303046314)旭化成ケミカルズ株式会社 (2,513)
【Fターム(参考)】