説明

ポリトリメチレンテレフタレート短繊維

【課題】綿または開繊したトウの状態で優れた耐ヘタリ性、嵩高性と嵩高回復性を有し、かつ耐燃焼性が損なわれていない、捲縮を有するポリトリメチレンテレフタレート短繊維を提供する。
【解決手段】紡糸工程において異方冷却を施し、その後、押し込み捲縮および熱処理によるスパイラル捲縮を併せ持つ繊維であって、繊維の固有粘度(オルソクロロフェノールを溶媒として使用し35℃で測定)が0.7〜1.3dL/gであるポリトリメチレンテレフタレート系ポリエステルからなり、繊維の表面処理剤としてその繊維表面に0.05〜0.80重量%のポリエーテルエステル系化合物を有し、かつ、その繊維の繊維間静摩擦係数が0.15〜0.25の範囲内にあるポリトリメチレンテレフタレート短繊維。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、詰め綿、繊維構造体用途などに使用できる嵩高性能を有するポリトリメチレンテレフタレート短繊維に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリトリメチレンテレフタレート系ポリエステル短繊維は、ポリエステル本来の特性である優れた寸法安定性、耐光性、低吸湿性、熱セット性を維持し、かつ低弾性率、弾性回復率および易染性に優れた特性を持っており、詰綿、不織布、紡績糸織物などへの実用化を目指して、様々な角度よりポリトリメチレンテレフタレート系ポリエステル短繊維製造技術が検討されている。
例えば、特許文献1(特開平11−189938号公報)には、伸長弾性回復率、屈曲回復率などを規定した捲縮を有するポリトリメチレンテレフタレート短繊維が提案されており、かかる短繊維はポリエチレンテレフタレートからなる捲縮繊維と比べ、耐ヘタリ性が向上している。特許文献1では、ポリトリメチレンテレフタレート繊維を製造する場合に、ポリマーを溶融紡糸し、得られた原糸を延伸した後、クリンパーで押し込み捲縮を付与する方法が記載されている。しかしながら、ここで繊維に機械的に捲縮を付与しても、次の弛緩熱処理工程や、梱包のために強度の圧縮圧を掛け、ベール状で放置すると捲縮性能が著しく低下する。また、ベールを開俵後に、ポリトリメチレンテレフタレート繊維を、紡績、不織布加工、詰綿加工などのカード機ないしはそれ以降の工程に掛けた場合、極めて加工性が悪く、シリンダーやローラーに巻き上がりやすく、落綿が多く、ウェブ切れなどが発生し、生産性は極めて低いものであり、得られた製品の品位も良くないものとなってしまう。さらには、カードを通過してもヘタリによって嵩が出ないなどの問題がある。
【0003】
一方、特許文献2(特開2001−254239号公報)には、従来の押し込み捲縮ではなく、ポリトリメチレンテレフタレートポリマーを口金面より吐出させた直後の糸条に、冷却気流を糸条の片側から糸条の進行方向に略垂直な方向で吹き当てる、いわゆる異方冷却によって三次元的捲縮を発現させる手法が記載されている。これにより、耐ヘタリ性に優れたポリトリメチレンテレフタレート繊維を製造するに至ったが、ポリトリメチレンテレフタレート繊維はその繊維間摩擦が高いために、嵩性能は良好ではない。
そこで、オルガノポリシロキサンなどシリコーン系の油剤を繊維重量基準で0.05〜1.0重量程度ポリトリメチレンテレフタレート繊維に付着させ、繊維間摩擦係数を低下させると、繊維間拘束力が軽減され、嵩性能は改善される。しかしながら、オルガノポリシロキサンで処理された嵩高性の高いポリトリメチレンテレフタレート捲縮繊維は、無処理のものに比べて著しく燃焼しやすくなる性質が発現するという問題があった。
【特許文献1】特開平11−189938号公報
【特許文献2】特開2001−254239号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記従来技術を背景になされたもので、その目的は、綿または開繊したトウの状態で優れた耐ヘタリ性、嵩高性を有し、かつ耐燃焼性が損なわれていないポリトリメチレンテレフタレート捲縮繊維を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、紡糸工程において異方冷却を施し、その後、押し込み捲縮および熱処理によるスパイラル捲縮を併せ持つ繊維であって、繊維の固有粘度(オルソクロロフェノールを溶媒として使用し35℃で測定)が0.7〜1.3dL/gであるポリトリメチレンテレフタレート系ポリエステルからなり、繊維の表面処理剤としてその繊維表面に0.05〜0.80重量%のポリエーテルエステル系化合物を有し、かつ、その繊維の繊維間静摩擦係数が0.15〜0.25の範囲内にあることを特徴とするポリトリメチレンテレフタレート短繊維に関する。
ここで、上記ポリトリメチレンテレフタレート短繊維における、繊維の捲縮数は9〜30山/25mm、捲縮度は20〜50%、捲縮弾性率は80%以上であることが好ましい。
また、本発明のポリトリメチレンテレフタレート短繊維は、中空率が5〜50%の中空繊維であることが好ましい。
さらに、本発明のポリトリメチレンテレフタレート短繊維は、繊維長が3〜200mm、単糸繊度が1〜150dtexであることが好ましい。
【発明の効果】
【0006】
本発明により得られる捲縮を有するポリトリメチレンテレフタレート短繊維は、不織布・詰綿・紡績糸、繊維構造体などを製造する際のカード加工性が良好であり、嵩高性能に優れたポリトリメチレンテレフタレート繊維構造体となり得るものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明でいうポリトリメチレンテレフタレート系ポリエステルは、トリメチレンテレフタレート単位を主たる繰り返し単位とするポリエステルであって、本発明の目的を阻害しない範囲内、例えば酸成分を基準として15モル%以下、好ましくは5モル%以下で第三成分を共重合したポリエステルであってもよい。
好ましく用いられる第三成分としては、例えば、イソフタル酸、コハク酸、アジピン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、金属スルホイソフタル酸などの酸成分や、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノールなどのグリコール成分など、各種のものを用いることができ、紡糸性などを考慮して適宜用いれば良い。
また、必要に応じて、各種の添加剤、例えば、艶消し剤、熱安定剤、消泡剤、整色剤、難燃剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、蛍光増白剤、着色顔料などを必要に応じて添加することができる。
【0008】
本発明の捲縮が付与されたポリトリメチレンテレフタレート短繊維は、紡糸工程において異方冷却が施され、その後、押し込み捲縮および熱処理によるスパイラル捲縮を発現させた、いわゆる、異方冷却紡糸法による三次元捲縮および押込み法による二次元捲縮を併せ持つことが必要である。その捲縮は、捲縮数9〜30山/25mm、捲縮度20〜50%、および捲縮弾性率80%以上となっていることが好ましい。
【0009】
捲縮数が9山/25mm未満では、本発明の短繊維から得られる繊維製品の嵩高性が不十分となることが多い。一方、捲縮数が30山/25mmを超えると、繊維間の絡合性が高くなりすぎて、カード通過性が悪くなることが多くなる。なお、捲縮数は11〜20山/25mmの範囲がより好ましい。上記捲縮数は、紡糸における異方冷却の風速や押し込み捲縮の背圧、熱処理温度によって適切な範囲に調整することができる。
【0010】
また、捲縮度が20%未満では繊維どうしの絡合性が低く、カード通過性が悪くなったり、嵩高性が不足することが多い。一方、捲縮度が50%を超えると、絡合性が高くなりすぎて、もつれが生じ、カード通過性が低下したり、ウェブや紡績糸となした場合に均一性が劣る場合がある。なお、捲縮度は30〜40%の範囲がより好ましい。
捲縮度は、紡糸における異方冷却の風速や押し込み捲縮の背圧、熱処理温度によって適切な範囲に調整することができる。
【0011】
さらに、捲縮弾性率が80%未満の場合には、捲縮のへたりが大きくなり易く、カード通過性が極めて悪くなったり、シリンダーやローラーに巻き上がりやすく、落綿が多くなったり、ウェブ切れなどが発生することがある。なお、捲縮弾性率は85%以上であることがより好ましい。
捲縮弾性率は、紡糸における異方冷却の風速や押し込み捲縮の背圧、熱処理温度によって適切な範囲に調整することができる。
【0012】
次に、本発明のポリトリメチレンテレフタレート短繊維は、固有粘度(オルソクロロフェノールを溶媒として使用し35℃で測定)が0.7〜1.3dL/g、好ましくは0.8〜1.2dL/gの範囲である。上記固有粘度が0.7dL/g未満の場合、最終的に得られる繊維の機械的強度が不十分となり、一方、固有粘度が1.3dL/gを超える場合、取り扱い性が低下するため好ましくない。
上記固有粘度は、ポリトリメチレンテレフタレートの重合時間や重合雰囲気の真空度の調整により、容易に調整することができる。
【0013】
なお、本発明のポリトリメチレンテレフタレート短繊維は、繊維長が好ましくは3〜200mm、さらに好ましくは5〜150mmである。繊維長が3mm未満では繊維どうしの絡みが発現しなくなり、カーディングなどの操作で連続した繊維の排出が難しくなり、また繊維長が200mmを超えると逆に繊維の絡みが強すぎて均一に開繊できなくなるなどの問題がある。単糸繊度は好ましくは1〜150dtex、さらに好ましくは1.5〜100dtexである。単糸繊度が1dtex未満の繊度では、繊維の曲げモーメントが低く、カーディングなどの機械操作を受けた場合、繊維が折れ曲がり、欠点増加、毛玉様の塊の増加という問題が有り、一方単糸繊度が150dtexを超えると、開繊するときの繊維の応力が高くなり、カーディングなどの生産性を上げられないという問題を生じる。
【0014】
本発明の捲縮が付与されたポリトリメチレンテレフタレート短繊維は、以上のような嵩高性能を有し、かつ、ポリエーテルエステル系化合物を主成分とする処理剤が繊維重量基準で0.05〜0.80重量%付着していなければならない。このようなポリエーテルエステル系化合物を主成分とする処理剤を繊維重量基準で0.05〜0.80重量%、好ましくは0.1〜0.50重量%で繊維へ付着させることによって、繊維間静摩擦係数が低くなり、綿または開繊したトウの圧縮・回復時の繊維間拘束力が軽減され、嵩ヘタリが劇的に低減する(すなわち圧縮弾性回復率が向上する)。処理剤の付着量が0.80重量%を超える場合は、繊維の処理工程でスカム発生などのトラブルが起こるので避けなければならないのはいうまでもない。
【0015】
ここで、上記ポリエーテルエステル系化合物としては、直鎖飽和グリコールに炭素数2〜4のアルキレンオキサイドを1〜20モルの範囲でランダムまたはブロック状に付加させ、脂肪族カルボン酸でエステル化したポリエーテル・ポリエステル化合物が挙げられる。直鎖状飽和グリコールとしては、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,10−デカンジオール、1,12−ドデカンジオールなどが挙げられる。また炭素数2〜4のアルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイドを例示することができる。エステル化するために使用される脂肪族カルボン酸としては炭素数8〜22の脂肪族カルボン酸(具体的にはカプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ウンデカン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ペンタデカン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸など)が挙げられる。
【0016】
また、本発明のポリトリメチレンテレフタレート短繊維の繊維間静摩擦係数は、0.15〜0.25、好ましくは0.17〜0.23の範囲にある。繊維間静摩擦係数が0.15未満では、繊維間摩擦が低いために絡合性に劣り、カードを通過しなくなり、繊維製品を成形できない。一方、繊維間静摩擦係数が0.25を超えると、嵩性能が不十分になる。
上記繊維間静摩擦係数は、上記の表面処理剤の付与量により、容易に調整することができる。
【0017】
本発明のポリトリメチレンテレフタレート短繊維においては、オルガノポリシロキサン処理ポリトリメチレンテレフタレート短繊維に見られる著しく燃焼しやすい性質が解消される。また、本発明のポリトリメチレンテレフタレート短繊維は、その低い繊維間静摩擦係数によって、極めて滑らかな感触を有している。
【0018】
本発明のポリトリメチレンテレフタレート短繊維の断面形状は、特に限定されるものではなく、円形、三角形、扁平、六角形など用途・目的に合わせて適宜選択すればよいが、繊維断面が5〜60%、より好ましくは10〜50%の中空率となるようにするのが、紡糸工程において異方性を付与し易く、三次元捲縮を発現し易い点で好ましい。
【0019】
本発明のポリトリメチレンテレフタレート短繊維は、例えば、以下の方法により製造することができる。すなわち、ポリトリメチレンテレフタレートポリマーを溶融し、紡糸口金面(より好ましくは中空形成性吐出孔を穿設した紡糸口金)より吐出させた直後のポリマー糸条に、冷却気流をポリマー糸条の片側からその進行方向に垂直な方向に角度をもって吹き当て、350〜2,500m/分の速度で引取ることにより、複屈折度に高度の断面異方性を有する未延伸糸を得る。この際、冷却気流の流速を1.0m/秒以上とすることにより、高度な断面異方性を付与することができ、容易に捲縮数が9山/25mm以上の三次元捲縮を好ましく発現させることができる。また、冷却気流の吹き当て方向をポリマー糸条の片面からその進行方向に垂直な方向に対し−20〜+20度とすることにより、紡糸調子を損なうことなく断面異方性付与効果を高めることができる。次いで、該未延伸糸を50〜95℃の温水で、1.2〜3.5倍に2段階で延伸した後、ポリエーテルエステル系化合物を主成分とする処理剤を付与する。この際、非イオン活性剤、アニオン活性剤などを用いて上記ポリエーテルエステル系化合物を表面処理剤の水エマルジョンとなしディップ浴で、走行繊維糸条束に付着させ、ローラーなどで絞り、該処理剤の付着量を、上記のように繊維重量基準で0.05〜0.80重量%、より好ましくは0.1〜0.50重量%となるように調整する。
【0020】
次いで、45〜90℃に予熱したトウをクリンパーにて捲縮付与して短繊維に切断し、カードの通過性に優れた捲縮短繊維を得る。
ここで、本発明の短繊維に捲縮を付与するためには、押し込み型捲縮機(クリンパー)に入るトウ温度を好ましくは45℃〜90℃とするが、より好ましくは50℃〜85℃である。トウ温度が45℃未満では、十分な二次捲縮を付与することができない。一方、トウ温度が90℃を超えると、二次捲縮は付与することは可能であるが、一次捲縮が30山/25mmを超えるため適さない。
なお、本発明においては、延伸糸を延伸後、捲縮前に熱処理することは好ましくない。熱処理により上記延伸糸の捲縮がかかりにくくなる。このため、得られる短繊維の絡合性が低下し、工程通過性が不良となり好ましくないのである。
【0021】
以上のように、本発明のポリトリメチレンテレフタレート短繊維は、クリンパーを通過する際に押し込み捲縮をかけることを必要とする。押し込み捲縮をかけることで、繊維もしくはトウの形態が棒状となり、スパイラル構造と座屈型捲縮を併せ持つ捲縮繊維となることで、耐ヘタリ性が改善されるとともに、嵩性能に優れたものとなる。
また、本発明のポリトリメチレンテレフタレート短繊維においては、オルガノポリシロキサン処理ポリトリメチレンテレフタレート短繊維に見られる著しく燃焼しやすい性質が解消される。さらに、本発明のポリトリメチレンテレフタレート短繊維は、その低い繊維間静摩擦係数によって、極めて滑らかな感触を有している。
【0022】
得られた短繊維は、カード加工が施され、ポリトリメチレンテレフタレート捲縮繊維綿となる。なお、場合によってはポリトリメチレンテレフタレート捲縮繊維を短繊維に切断することなく、トウ状態のままで開繊し、不織布、トウ布団として使用しても良い。
【0023】
なお、本発明の短繊維は、強度が好ましくは2.5〜3.5cN/dtex、さらに好ましくは2.6〜3.4cN/dtexであって、伸度が好ましくは40〜80%、さらに好ましくは50〜70%である。強度が2.5cN/dtex未満では、紡績糸、不織布としての強度が出ないので適さない。一方、強度が3.5cN/dtexを超えると、繊維が硬くなりポリトリメチレンテレフタレート短繊維の良さである風合いが失われる。また、伸度が40%未満では、紡績糸、不織布としての風合いやストレッチ性を発揮することができず、一方、伸度が80%を超えると、本来持つべきポリトリメチレンテレフタレート短繊維の強度が低くなってしまい、実用的なものでなくなる。上記強度、伸度ともに延伸倍率の調節により、容易に調整することができる。
【実施例】
【0024】
以下に、本発明の構成および効果をより具体的にするため、実施例を挙げるが、本発明はこれら実施例になんら限定を受けるものではない。
なお、実施例中の各値は以下の方法に従って求めた。
(1)固有粘度
オルソクロロフェノールを溶媒として使用し35℃で測定した。
(2)繊度、繊維長、捲縮数、捲縮率、捲縮弾性率
JIS−L1015に記載の方法に準拠して測定した。
(3)繊維間静摩擦係数
20℃、相対湿度65%下で、JIS−L1015に記載のレーダー法により測定した。
(4)中空率
紡糸引き取り後の未延伸トウの切断面を写真に撮り、20個の断面について中空部と単繊維断面の面積を測定し、単繊維断面の面積に対する中空部の面積百分率(%)の平均値を中空率とした。
(5)圧縮嵩
得られた短繊維をカードに通してウェブを作り、JIS−L1097に記載の方法に準拠して測定した。
【0025】
[実施例1]
ポリトリメチレンテレフタレート(固有粘度0.92dL/g、融点228℃)を用い253℃で溶融し、公知の中空丸断面紡糸口金(435ホール)より吐出量485g/分で吐出させた糸条に、口金面下1.5〜15cmの位置で25℃の冷却用空気を1.5m/secの流速で糸条の片側から糸条の進行方向に垂直な角度で吹き当て1,150m/分の巻取速度で未延伸糸を得た。次いで、得られた未延伸糸を12万デシテックスのトウにした後、55℃×92℃の二段温水延伸法にて1.98倍に延伸した。油剤濃度を4重量%にて付与し、この延伸糸を押込み型捲縮機で捲縮を付与した後、64mmの繊維長に切断し、150℃で弛緩熱収縮処理を施して、スパイラル状の3次元クリンプを有する立体捲縮綿を得た。得られた繊維をカードに通してウェブを作り嵩性能を測定した。結果を表1に併せて示す。


【0026】
[実施例2]
吐出量660g/分、巻取り速度1,000m/分とし、油剤濃度を5重量%としたこと以外は実施例1と同様の操作を行った。結果を表1に示す。
【0027】
[比較例1]
油剤濃度を0.5重量%とした以外は、実施例1と同様の操作を行った。
結果を表1に示す。
【0028】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明のポリトリメチレンテレフタレート短繊維は、綿または開繊したトウの状態で優れた耐ヘタリ性、嵩高性を有し、かつ耐燃焼性が損なわれていないので、フトン綿、クッション材、枕、繊維構造体などの用途に有用である。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
紡糸工程において異方冷却を施し、その後、押し込み捲縮および熱処理によるスパイラル捲縮を併せ持つ繊維であって、繊維の固有粘度(オルソクロロフェノールを溶媒として使用し35℃で測定)が0.7〜1.3dL/gであるポリトリメチレンテレフタレート系ポリエステルからなり、繊維の表面処理剤としてその繊維表面に0.05〜0.80重量%のポリエーテルエステル系化合物を有し、かつ、その繊維の繊維間静摩擦係数が0.15〜0.25の範囲内にあることを特徴とするポリトリメチレンテレフタレート短繊維。
【請求項2】
繊維の捲縮数9〜30山/25mm、捲縮度20〜50%、および捲縮弾性率80%以上である請求項1記載のポリトリメチレンテレフタレート短繊維。
【請求項3】
中空率が5〜60%の中空繊維である請求項1または2記載のポリトリメチレンテレフタレート短繊維。
【請求項4】
繊維長が3〜200mm、単糸繊度が1〜150dtexである請求項1〜3いずれかに記載のポリトリメチレンテレフタレート短繊維。

【公開番号】特開2008−297648(P2008−297648A)
【公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−143165(P2007−143165)
【出願日】平成19年5月30日(2007.5.30)
【出願人】(302071162)ソロテックス株式会社 (45)
【Fターム(参考)】