説明

ポリトリメチレンテレフタレート系極細仮撚糸およびその製造方法

【課題】従来技術では達成できなかった、ソフト感、精緻感、発色性に優れ、適度なふくらみとストレッチ性を有した織編物得ることができ、かつ生産性に優れ、アルカリ処理後の廃液の環境負荷が小さいポリトリメチレンテレフタレート極細仮撚糸を提供すること。
【解決手段】実質的にポリトリメチレンテレフタレートで構成されている糸条からなり、アルカリ減量後の乾熱収縮率(TWA)、アルカリ減量後の単糸繊度(FDT)が下記の式を全て満たすことを特徴とする極細仮撚糸。
(1)5≦TWA(%)≦20
(2)0.01≦FDT(dtex)≦1

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高収縮特性を有する極細仮撚糸に関し、さらに詳しくは紡糸安定性にも優れ、また従来ない織編物を得ることができ、また優れた精緻感、ソフト感に加え、適度なふくらみとストレッチを付与することができる極細仮撚糸に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、ポリエチレンテレフタレートからなる単繊維繊度が1dtex以下のポリエステル極細糸は、ピーチ調織編物やワイピングクロスに用いられている。また、ポリエステル系極細糸の用途展開の一つである仮撚加工について、特開2003−138438号公報(特許文献1)などに示されている。しかしながら、従来のポリエステル系極細糸では収縮特性が不十分であるために、織編物にした際、風合いの粗悪感が解消することができず、精緻感についても乏しいものであった。
【0003】
また、直接紡糸のポリエステル系極細糸を仮撚する方法では、ストレッチ性やソフト感の改善が可能であるが、紡糸や仮撚工程の生産性が悪いことや毛羽の発生、収縮特性が不十分であることなどの問題がある。
【0004】
そこで、ポリマー自体が高収縮特性を有しているポリトリメチレンテレフタレートを用いた極細糸が、特開平11−100721号公報(特許文献2)や特開2001−348735号公報(特許文献3)などで提案されている。確かに単繊維繊度が細いためソフトな織編物を得ることができるが、これらの糸では加工により収縮特性が低くなるため織編物において、精緻感のあるなめらかな織編物を得ることはできない。すなわち、前者は直接紡糸式であるため、上記の問題が解決できていないことや巻き取りパッケージや生機における遅延収縮の問題があり、延伸工程で糸を低収縮化せざるを得ない。後者については、海島型複合糸から極細糸を得るものであるが、アルカリ溶出成分として用いられているポリマは有機金属塩を共重合したポリエステルであり、アルカリ溶出時間が長いため、アルカリ減量時に島成分のポリトリメチレンテレフタレートが収縮するのを阻害してしまうという問題がある。
【特許文献1】特開2003−138438号公報
【特許文献2】特開平11−100721号公報
【特許文献3】特開2001−348735号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記従来技術では達成できなかった、ソフト感、精緻感、適度なふくらみとストレッチ性を有するに優れた織編物得ることができ、かつ生産性や品質安定性に優れ、アルカリ処理後の廃液の環境負荷が小さいポリトリメチレンテレフタレート極細仮撚糸を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した目的を達成する本発明の極細仮撚糸は、以下の構成からなる。
【0007】
実質的にポリトリメチレンテレフタレートで構成されている糸条からなり、乾熱収縮率(TWA)、単繊維繊度(FDT)が下記の式を全て満たすことを特徴とする極細仮撚糸。
(1)8≦TWA(%)≦25
(2)0.01≦FDT(dtex)≦1
また、本発明の極細仮撚糸においては、伸縮復元率(CR)が3≦CR(%)≦30を満たすことが好ましい。
【0008】
また、本発明の極細仮撚糸において、好ましくは、島成分がポリトリメチレンテレフタレート、海成分ポリ乳酸で構成されている海島型複合糸の仮撚糸であって、海成分/島成分の複合比率が10/90〜50/50であることを特徴とする仮撚糸をアルカリ減量して得られたものである。
【0009】
また、本発明の極細仮撚糸において、好ましくは、沸騰水収縮率(SWA)とアルカリ減量後の乾熱収縮率(TWA)がTWA(%)/SWA(%)≧1を満たすことである。
【0010】
また、本発明の複合混繊糸は、芯部または鞘部に前記の極細仮撚糸を使用することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ソフト感、精緻感、適度なふくらみとストレッチ性を有した優れた織編物得ることができ、かつ生産性に優れ、アルカリ処理後の廃液による環境負荷が小さいポリトリメチレンテレフタレート極細仮撚糸を提供される。また、繊維の製造工程、仮撚工程における品位悪化や生産性の低下などを改善することが可能となる。
【0012】
さらに、本発明において、ポリトリメチレンテレフタレート極細糸を溶出する際に酸処理を必要としないため、綿やセルロース系の繊維と相性が良く、綿との交織などファブリケーションに好適である。
【0013】
本発明の極細仮撚糸からなる布帛は、衣料用として、特にワンピース、シャツ、ブラウス、スカートなどの婦人衣料、また防風性にも優れることからアスレチックウェア、スキーウェアなどのスポーツ衣料などで、また衣料資材用としてはハンカチ、眼鏡拭き、洗顔タオル、遮光カーテンなどに好適である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、更に詳しく本発明について説明する。
【0015】
本発明の極細仮撚糸は、実質的にポリトリメチレンテレフタレートで構成されている糸条からなる極細仮撚糸である。ポリトリメチレンテレフタレートについては後述するが、実質的にとは具体的には90wt%以上が当該ポリマーで構成されていることをいう。
【0016】
本発明の極細仮撚糸は乾熱収縮率(TWA)が下記式(1)を満たすことが重要である。
(1)8≦TWA(%)≦25
アルカリ減量によって極細糸を得る場合、一般的には乾熱収縮率としては、アルカリ減量前の乾熱収縮率で規定していることが通常である。アルカリ減量は繊維表面を溶かすことで、織編物内の交錯点に空隙を生みだし、ソフトでしなやかな風合いを付与するため用いられている。本発明においては、アルカリ減量後においても糸に収縮性と捲縮性を付与することで、ソフトで精緻感と適度なふくらみを有する織編物を得ることができる極細仮撚糸を得ることができることを見出した。すなわち、アルカリ減量後の、織編物を構成する糸の乾熱収縮率(TWA)が、8≦TWA(%)≦25を満たすことで、ソフトで精緻感ある織編物を得ることができる。TWA(%)<8では織編物に精緻感を付与することができず、また、TWA(%)>25では、収縮が強すぎて、織編物としての粗硬感が強くなってしまう。さらに好ましくは10≦TWA(%)≦18である。なお、本発明における乾熱収縮率(TWA)とは、後述する測定方法で測定した値を言う。
【0017】
また、本発明の極細仮撚糸は、沸騰水収縮率(SWA)と乾熱収縮率(TWA)との比が、TWA(%)/SWA(%)≧1を満たすことが好ましい。乾熱収縮率(TWA)が高い値であっても、沸騰水収縮率(SWA)がそれ以上に高い値であれば、ソフトでしなやかな風合いが減少してしまうからである。さらに好ましくは1.0≦TWA(%)/SWA(%)≦2.5である。なお、本発明における沸騰収縮率(SWA)とは、後述する測定方法で測定した値を言う。
【0018】
本発明の極細仮撚糸において、沸騰水収縮率(SWA)の好ましい範囲は、染色工程の工程通過性を考慮すると2≦SWA(%)≦20、さらに好ましくは2≦SWA(%)≦15である。
【0019】
なお、本発明の極細仮撚糸を複合混繊糸の鞘糸とし、芯糸に収縮率の高い素材を使用する場合には、極細仮撚糸のある程度収縮率が小さいものであっても、上記したソフトで精緻感を得ることが可能となる。
【0020】
さらに本発明の極細仮撚糸の単繊維繊度(FDT)は、下記式(2)を満たすことが必要である。
(2)0.01≦FDT(dtex)≦1
0.01≦FDT(dtex)≦1を満たすことで、織編物にした際のソフト感を得ることができる。より好ましい範囲は、0.01≦FDT(dtex)≦0.5である。FDT(dtex)>1であると、織編物にソフト感を付与することはできない。また、FDT(dtex)<0.01であると、細すぎて、発色性が低下してしまう。
【0021】
本発明の極細仮撚糸は、一般的にk=T×√dT(k;仮撚係数、T;仮撚数、dT;デシテックス)として定義される仮撚係数kが15000〜38000であることが好ましい。本発明の極細仮撚糸については、仮撚捲縮によるふくらみ感の効果が小さくなる傾向があるため、高仮撚数とすることが好ましいが、操業性の関係から20000〜35000の範囲をより好ましく使用する。
【0022】
本発明の極細仮撚糸の総繊度については、後工程における通過性やふくらみ感、布帛における表面感の関係から、20〜167dtexの範囲が好ましく使用される。
【0023】
また、本発明のポリトリメチレンテレフタレートで構成された糸条の断面形状は丸断面の他、扁平、三角、中空等の異形断面であっても構わない。
【0024】
また、本発明の極細仮撚糸において、伸縮復元率(CR)の好ましい範囲を、3≦CR(%)≦30とすることで適度にふくらみやソフト感、ストレッチのある織編物を得ることができる。CR(%)<3の繊維を使用した場合には、ふくらみやソフト感、ストレッチの全くない織編物となり、CR(%)>30の繊維を使用した場合には、織編物にフカツキ感が発現してしまう。さらに好ましくは7≦CR(%)≦20である。なお、本発明における伸縮復元率(CR)とは、後述する測定方法で測定した値を言う。
【0025】
本発明の極細仮撚糸を、芯糸または鞘糸に使用した複合混繊糸にすることで、精緻感のあるソフトな織編物に加え、独特の表面感を有する織編物を得ることができる。好ましくは、本発明の極細仮撚糸を鞘糸に使用した複合混繊糸にすることにより、ソフト感の優れた織編物を得ることが可能となる。
【0026】
また、本発明の極細仮撚糸を鞘糸に使用して、すなわち外層側に配置して複合混繊糸とする場合、芯糸は特に限定されないが、芯糸としては収縮率が高い素材を使用することが好ましい。具体的には、芯糸の沸騰水収縮率としては15%以上あることが好ましい。
【0027】
本発明の極細仮撚糸を使用して複合混繊糸とする場合、混繊相手の糸については特に限定されるものではないが、断面形状が丸断面、三角、Y型、八葉型、扁平等不定形なものでもよく、サイドバイサイド型複合糸、偏心型複合糸、同心円型芯鞘複合糸などの複合糸を用いてもよい。また、芯糸を構成するポリマーは、ポリエステルやポリアミド、またポリオレフィンなどの熱可塑性ポリマーであることが成形性の点から好ましく、ポリエチレンテレフタレートやポリプロピレンテレフタレートがより好ましく使用される。
【0028】
また、混繊相手の糸の総繊度については特に限定されるものではないが、本発明の極細仮撚糸の総繊度の30〜200%の範囲が好ましく使用される。本発明の極細仮撚糸の総繊度の30%以下となる場合には、十分な強度や芯糸特性を得ることができず、200%以上となる場合には、ソフト感がなく硬い素材となってしまう。
【0029】
次に、本発明の極細仮撚糸の製造方法について説明する。
【0030】
本発明の極細仮撚糸は、島成分がポリトリメチレンテレフタレート、海成分ポリ乳酸で構成された海島型複合繊維からなる海島型複合糸、特に該海島型複合繊維を仮撚した海島型複合仮撚糸をアルカリ減量して得られたものであることが好ましい。このような海島型複合糸を用いることで、ポリトリメチレンテレフタレート繊維において慢性的に発生していた糸パッケージや生機の状態で遅延収縮するなどの加工の問題がなくなり、さらに、本発明で規定する数値範囲の乾熱収縮率および単繊維繊度の極細仮撚糸を得ることができる。
【0031】
また、仮撚加工や複合混繊加工を行う際には海島型複合糸の状態で加工するが、海成分であるポリ乳酸の加工温度が低い状態にて熱セット可能であるために、島成分のポリトリメチレンテレフタレート、すなわちポリトリメチレンテレフタレート極細糸に収縮特性を残しつつ、適度な捲縮を付与することが可能となる。さらに、ポリトリメチレンテレフタレートの極細糸が、海成分であるポリ乳酸に被覆された状態で、仮撚加工や複合混繊加工を行うために、加工時のポリトリメチレンテレフタレート極細糸へのダメージは少なく、仮撚加工・複合混繊加工における操業性も良好で、付与できる捲縮特性も大きくすることが可能となる。
【0032】
また、海成分であるポリ乳酸はアルカリ減量速度が速いため、アルカリ減量工程で溶解しやすく、島成分のポリトリメチレンテレフタレート極細仮撚糸がより収縮しやすく、減量工程におけるポリトリメチレンテレフタレート極細仮撚糸に対するダメージも少ないものとなる。
【0033】
ポリ乳酸はポリトリメチレンテレフタレートやポリエチレンテレフタレートよりも溶融温度が低いため、溶融温度がポリトリメチレンテレフタレートよりも高い、有機金属塩を共重合したポリエチレンテレフタレートを海成分として用いた場合に比べ、紡糸温度を低く押さえることができ、原糸、高次を含めた操業の安定化やポリトリメチレンテレフタレートの熱劣化による風合い低下の防止が可能となる。これらのポリ乳酸の効果により本発明の目的である原糸強度が高く、製糸性、延伸性、分割性が良く、風合いが優れ、且つ環境負荷の小さい海島型複合糸が得ることができる。
【0034】
尚、本発明でいうポリ乳酸は、特に制限されるものではないが、平均分子量5万〜10万が好ましく、かつ純度95.0%〜99.5%のL−乳酸からなるポリ乳酸であれば、工程での強度が維持できるほか、適度な生分解性が得られることから溶出した後の廃液の環境負荷が小さく好ましい。
【0035】
また、従来技術のように海成分がポリエチレンテレフタレートの場合、アルカリ減量処理のみでは完全に溶解するまでに時間がかかることから、通常はマレイン酸などの酸性処理をアルカリ減量前に施す必要があり、そのため、綿やセルロース系の繊維と複合することはできなかったが、海成分をポリ乳酸にすることで、上記問題は解決し、綿やセルロース系の繊維との交織などのファブリケーションが可能となる。
【0036】
島成分のポリトリメチレンテレフタレートは本発明の極細仮撚糸となるポリトリメチレンテレフタレートであって、テレフタル酸を主たる酸成分とし、1,3プロパンジオールを主たるグリコール成分として得られるポリエステルである。ただし、20モル%以下、好ましくは10モル%以下の割合で他のエステル結合を形成可能な共重合成分を含むものであっても良い。共重合可能な化合物として、たとえばイソフタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、アジピン酸、ダイマ酸、セバシン酸などのジカルボン酸類、一方、グリコール成分として、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジメタノール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどを挙げることができるが、これらに限られるものではない。また、艶消剤として、二酸化チタン、滑剤としてのシリカやアルミナの微粒子、抗酸化剤として、ヒンダードフェノール誘導体、着色顔料などを必要に応じて添加することができる。
【0037】
本発明の極細仮撚糸を用いた織編物にストレッチ性を付与できる要因の一つとして、メチレン基の主鎖が伸び縮みするというポリトリメチレンテレフタレート特有の伸縮弾性特性がある。
【0038】
また、本発明における海島型複合糸は海島型複合繊維の海成分にポリ乳酸を配することにより、原糸操業性、工程通過性を維持するために必須である原糸強度を高めることが可能であり、海島型複合糸の原糸強度は3.0cN/dtex以上のものであることが好ましい。原糸強度が3.0cN/dtex未満では、原糸強度が低すぎるため原糸操業性が悪化するとともに、高次工程においても単糸切れ、毛羽等の発生により工程通過性、製品品位の低下を生じてしまうのである。原糸操業性、工程通過性をより高めるためには原糸強度は3.3cN/dtex以上であることが好ましい。
【0039】
本発明における海島型複合繊維の海成分/島成分の複合比率は複合形態の安定性、製糸性、生産性の点から10/90〜50/50(重量比)とするものである。海成分の複合比率が10%未満の場合は、複合異常が発生し分割性不良を生じたり、複合形態が正常であっても海成分の溶解不良による分割性不良を生じ、十分なソフト感を得ることができない。逆に海成分の複合比率が50%を越えると、生産性が低下するとともに、織編物とした際に「ふかつき」が生じ、反発感のない織編物となってしまう。海島型複合繊維の海成分/島成分の複合比率は15/85〜40/60(重量比)であることがより好ましい。
【0040】
また、本発明における海島型複合繊維は繊維表面は海成分で完全に覆われていても、島成分が一部露出していてもかまわない。さらに海成分を除去した後の島成分の断面形状についても丸断面の他、扁平、三角等の異形断面であってもよい。
【0041】
さらに、本発明における海島型複合繊維は、単繊維断面内の島成分数を3〜100とすることで複合異常等による製糸性の悪化を回避でき、併せて島成分の単繊維繊度を適当とすることができるため、製糸性とソフト感の両立が容易となる。より好ましい島成分数は6〜80である。アルカリ減量後の極細糸の繊度(0.01≦FDT(dtex)≦1)が所望の値になるよう、これら島成分数と海島型複合繊維の繊度を適宜設定すればよい。
【0042】
本発明において、海島型複合糸を構成する海島型複合繊維は、複合糸紡糸用の公知の装置を用いて製造することができ、例えば特開昭57−47938号公報の第3図や特開昭57−82526号公報の第2図に示される装置を好適な一例として使用して製造することができる。
【0043】
本発明における海島型複合繊維を製糸するにあたっては、紡糸および延伸工程を連続して行う方法、未延伸糸として一旦巻き取った後、延伸する方法、延伸後に弛緩熱処理する方法、または高速製糸法など何れのプロセスにも適用できる。
【0044】
得られた海島型複合糸に仮撚加工を施すが、本発明における仮撚加工は、一般に熱可塑性フィラメント糸の仮撚加工に用いられているあらゆるタイプの仮撚加工機によって行うことができる。ここで、好ましい収縮特性と伸長回復率を持った仮撚糸を得るために、海島型複合糸を、加撚部ヒーター出口における糸条温度が80℃〜150℃の温度範囲で仮撚加工することが重要であり、糸条温度が80℃より低い温度の場合には、好ましい捲縮を付与することができず、150℃よりも高い場合には、島成分であるポリトリメチレンテレフタレートも低収縮となり、布帛において精緻感がなくなるため好ましくない。また、糸条温度が120℃よりも高い場合には、ポリ乳酸の融着が発生する場合があり、加工性が悪化し、仮撚糸の捲縮も低下するため、好ましくない。よって、より好ましくは、80℃〜110℃の糸条温度範囲である。
【0045】
また、その他の仮撚条件においては、一般的な仮撚加工で採用される仮撚数であればよく、より捲縮堅牢性を向上させるときには、高めの仮撚数と仮撚温度を採用することが好ましく、仮撚数も一般的にk=T×√dT(k;仮撚係数、T;仮撚数、dT;デシテックス)として定義される仮撚係数kが15000〜38000であることが好ましい。仮撚加工方法としては、一般に用いられるピンタイプ、フリクションディスクタイプ、ニップベルトタイプ、エアー加撚タイプ等、いかなる方法によるものでもよい。また、解撚後の緩和セットは、行ってもよいが、行わない方が収縮特性やストレッチ性は向上するために好ましい。仮撚加工する際には、用いるポリ乳酸/ポリトリメチレンテレフタレートの海島型複合糸を1本としてもよいし、複数本を引き揃えて加工してもよい。
【0046】
また、本発明の極細仮撚糸を用いて複合混繊糸とする場合、上記のポリトリメチレンテレフタレート極細糸が得られる海島型複合糸と他の糸条と混繊して複合混繊してから仮撚加工しもよい。複合混繊の複合方法にあたっては、公知の方法を用いることができる。
【0047】
ここで、本発明の極細仮撚糸を複合混繊糸の鞘糸とし、芯糸に収縮率の高い素材を使用する場合には、鞘糸である本発明の極細仮撚糸の収縮率を小さくするために、2ヒーター仮撚加工方法を行うことも可能である。
【0048】
本発明のポリトリメチレンテレフタレート極細仮撚糸を用いた複合混繊糸の製造方法は、特に限定されるものではないが、例えば、ポリトリメチレンテレフタレートを含む糸条を仮撚加工後に、仮撚をしないもう一方の糸条と、流体噴射ノズルを用いた流体噴射加工方法により、2種類の異なる繊維(鞘糸のポリトリメチレンテレフタレート仮撚糸と上記の芯糸)にフィード差を付けて送り出すことにより一方が他方に巻き付きカバーするような状態となり芯鞘構造をなすことができる。また、他の製造方法としては、流体噴射加工後に仮撚加工を行う、複合仮撚加工により、それぞれの捲縮度合いや伸度の違いによって一方のフィラメントが他方を覆うような構造をとり、その結果層構造を構成する加工も可能である。また、カバーリング機を用いたカバーリング方法等がある。なお、本発明の複合加工糸は、芯鞘構造を構成する芯部と鞘部が完全に分離・独立している必要はなく、各部を構成する糸条の単繊維と部分的に混ざっていても、また多少逆転していても構わないものである。
【0049】
海島型複合糸に仮撚加工を施して海島型複合仮撚糸とした後、織編物とする。海島型複合仮撚糸で織物を製織するにあたっては、公知の製織機、例えばレピア織機、ウォーター織機、エアジェット織機等を使用することができる。海島型複合仮撚糸で、編物を製編する場合においても、公知の製編機、例えば、丸編機、縦編機、横編機等を使用することができる。
【0050】
また、この段階で染色することも好ましい。染色するにあたっては公知の染色方法を使用することができ、リラックス精練工程として、ソフサーリラックスまたは液流リラックス法を用いることが好ましい。
【0051】
織編物とした後に、海島型複合仮撚糸の海成分をアルカリ減量する。アルカリ減量するにあたっては、常法に従い、例えば水酸化ナトリウム水溶液を用いて、減量することができる。80℃以上に加熱した水酸化ナトリウム水溶液を用いて減量すると、アルカリ減量時間を短くできるので好ましい。また、高密度織物とする場合は海島型複合仮撚糸を製織した後に、アルカリ減量を行って極細仮撚糸とすることがより好ましい。また、得られた海島型複合仮撚糸を低い巻取張力でパッケージに巻き直し、巻取パッケージの状態でアルカリ減量を行い、極細仮撚糸とするなどの方法も可能である。
【0052】
以上の工程を経て、本発明の極細仮撚糸を用いた織編物を得ることができる。
【実施例】
【0053】
以下、実施例により本発明をより詳細に説明する。なお、実施例中の各特性値は次の方法で求めた。
【0054】
A.沸騰水収縮率(SWA)
周長0.8mの検尺機に、90mg/dtexの張力下で10回巻回してカセ取りし、12時間放置した後、カセ長(L)を測定する。その後、このカセをガーゼで包み、無荷重下で98℃×20分間熱水処理し、約12時間放置した後、カセ長(L1)測定し、下記式で算出した。
・沸騰水収縮率(SWA)=(L−L1)/L×100
B.乾熱収縮率(TWA)
周長0.8mの検尺機に、90mg/dtexの張力下で10回巻回してカセ取りし、12時間放置した後、カセ長(L)を測定する。その後、このカセをガーゼで包み、無荷重下で98℃×20分間熱水処理し、無荷重下で80℃の3%水酸化ナトリウム水溶液で海成分が完全に溶解するまで処理する。そのまま常温で約12時間放置した後、160℃の乾燥機内で無荷重下で5分処理する。その後、2cm以下の棒につり下げ約12時間放置した後、カセ長(L2)測定し、下記式で算出した。
・乾熱収縮率(TWA)=(L−L2)/L×100
C.単繊維繊度(FDT)
周長0.8mの検尺機に、90mg/dtexの張力下で10回巻回してカセ取りし、12時間放置した後、このカセをガーゼで包み、無荷重下で98℃×20分間熱水処理し、無荷重下で80℃の3%水酸化ナトリウム水溶液で海成分が完全に溶解するまで処理した後、0.1g/dtexの加重で10cm長にカットし、単繊維の重量を測定することで単繊維繊度を測定した。
【0055】
D.伸縮復元率(CR)
周長0.8mの検尺機に、90mg/dtexの張力下で10回巻回してカセ取りし、12時間放置した後、ガーゼに包み、90℃で20分温水処理をし、上記の方法でアルカリ減量処理した後、24時間風乾する。次いで、JIS L1013(1999)に準じて測定した。
【0056】
E.強度
JIS L1013(1999)に準じ、オリエンテック社製テンシロンUCT−100を用いて測定した。
【0057】
F.極限粘度[η]
オルソクロロフェノール10mlに対し試料0.10gを溶解し、温度25℃においてオストワルド粘度計を用いて測定した。
【0058】
なお、実施例における評価は、以下の方法で行なった。
【0059】
(1)製糸性の評価
紡糸時間24時間における糸切れ回数から製糸性を4段階評価した。
○○:糸切れ無し
○ :糸切れ有り(1〜2回)
△ :糸切れ有り(3〜5回)
× :糸切れ多発(5回以上)。
【0060】
(2)精緻感の評価
実施例、比較例に記載の方法で得た織物の精緻感を触感(きめの細かさ)と見た目(表面のきれいさ)により官能評価した。この際、従来品である比較例3の織物を標準として、以下の基準で4段階評価を行ない、10人のパネラーの評価結果を平均して判定した。
○○:極めて精緻感がある、
○ :やや精緻感がある、
△ :標準織物と同等の風合い、
× :精緻感がない(きめが粗く、表面がきたない)。
【0061】
(3)風合いの評価
実施例、比較例に記載の方法で得た織物の風合いを触感により官能評価した。この際、従来品である比較例3の織物を標準として、以下の基準で4段階評価を行ない、10人のパネラーの評価結果を平均して判定した。
○○:極めて良好な風合い、
○ :やや良好な風合い、
△ :標準織物と同等の風合い、
× :粗悪な風合い。
【0062】
[実施例1]
ジメチルテレフタル酸19.4kg、1,3−プロパンジオール15.2kgにテトラブチルチタネートを触媒として用い、140℃〜230℃でメタノールを留出しつつエステル交換反応を行った後、さらに、250℃温度一定の条件下で3.5時間重合を行い極限粘度[η]が1.1のポリトリメチレンテレフタレートを得た。
【0063】
上記製法で得たポリトリメチレンテレフタレートを島成分に用い、海成分として光学純度98.0%のポリ−L−乳酸を用い、海/島=20/80(重量比)の複合比率にて、島数70、ホール数12の海島型複合用口金を用いて複合紡糸機にて紡糸温度250℃、引き取り速度1500m/分で巻き取った。続いて、該未延伸糸を通常のホットロール−ホットロール系延伸機を用いて延伸温度80℃、熱セット温度120℃で延伸糸の伸度が35%となるように延伸倍率を合わせて延伸を行い、56dtex−12filの延伸糸を得た。得られた延伸糸の糸物性を表1に示す。
【0064】
上記の方法で得られた延伸糸を、村田機械製MACH33H仮撚加工機(加撚部ヒーターは接触式、2次セットヒーターは非接触式、加工機構はベルトニップ方式)を用いて、加撚部ヒーター温度100℃、加工速度300m/分、延伸倍率1.05、仮撚数3150T/mで仮撚加工を行い、54dtex−12filの加工糸を得た。加撚部ヒーター出口における糸条温度は98℃〜100℃であった。得られた仮撚糸の糸物性を表1に示す。
【0065】
得られた仮撚糸を、経糸および緯糸に使用してタテ密度145(本/2.54cm)、ヨコ密度95(本/2.54cm)の平織物を製織し、95℃の熱水で精練した後、160℃で乾熱セットを行い、さらに80℃の3%水酸化ナトリウム水溶液で海成分が完全に溶解するまで減量加工し、次いで湿熱130℃で染色、乾熱160℃で仕上げセットを行った。得られた織物特性について評価した結果を表1に示す。実施例1では製糸性・仮撚加工性ともに良好であり、また得られた織物は精緻感に優れ、ソフトであり、適度なふくらみとストレッチのある良好なものであった。
【0066】
[実施例2]
実施例2は、実施例1と同様のポリマーを用いて、海/島=30/70(重量比)の複合比率にて、島数8、ホール数36の海島型複合用口金により複合紡糸機にて紡糸温度250℃として口金から吐出し、油剤付着後、2700m/分でホットローラーに引き取られ、一旦巻き取ることなく、ホットローラー、ゴデローラーを経て、4072m/分の速度でパッケージに巻き取った。得られた64dtex−36filの延伸糸・仮撚糸の糸物性を表1に示す。
【0067】
次に得られた延伸糸を実施例1と同様の方法で仮撚、製織、加工を行い、織物を得た。延伸糸物性と織物について評価した結果を表1に示す。実施例2で得られた織物は精緻感に優れ、ソフト感、ふくらみ、ストレッチともに良好なものであった。
【0068】
[比較例1]
比較例1は、実施例1と同様のポリトリメチレンテレフタレートを用い、ホール数250の口金を用いて、通常紡糸機にて紡糸温度250℃、引き取り速度1500m/分で巻き取った。実施例1と同様の方法で仮撚、製織、加工を行い、織物を得た。延伸糸物性と織物について評価した結果を表1に示す。比較例1では、製糸性・仮撚加工性が非常に悪く、糸切れや毛羽が多発した。また、延伸糸、仮撚糸において、繊維の遅延収縮が起こり、品位の悪いものであった。得られた織物は表面が粗く、精緻感に欠けたものであった。
【0069】
[比較例2]
比較例2では島成分として実施例1と同様のポリトリメチレンテレフタレート、海成分として5−ナトリウムスルホイソフタル酸4.5モル%共重合した極限粘度[η]が0.56のポリエチレンテレフタレートを用い、実施例1と同様の口金、複合紡糸機を用いて紡糸温度280℃、引き取り速度1500m/分で巻き取り、得られた未延伸糸を実施例1と同様の方法で延伸糸を得た。得られた延伸糸を実施例1と同様の方法を用いて、加撚部ヒーター温度180℃、加工速度300m/分、延伸倍率1.05、仮撚数3150T/mで仮撚加工を行い、実施例1と同様の方法で製織、95℃の熱水で精練した後、160℃で乾熱セットを行い、酢酸1(g/l)濃度の130℃熱水条件で30分間酸処理後、中和/水洗し、再度水酸化ナトリウム30(g/l)濃度の80℃温水中で50分間処理して海成分の共重合ポリエステルの溶出し、実施例1の方法にて染色・仕上げを行い、織物を得た。延伸糸と仮撚糸物性と織物について評価した結果を表1に示す。比較例2では、製糸性が悪く、糸切れが多発した。また、得られた織物はきめが粗く、精緻感に欠けたものであった。
【0070】
[比較例3]
比較例3では島成分として極限粘度[η]が0.55のポリエチレンテレフタレートを用い、海成分として比較例2と同様の共重合ポリエチレンテレフタレートを用い、比較例2と同様方法で巻き取り、延伸糸を得た。仮撚糸においても比較例2と同様の方法で作成した。得られた仮撚糸を比較例2と同様の方法で製織、減量加工を行い織物を得た。延伸糸・仮撚糸物性と織物について評価した結果を表1に示す。比較例3では、発色性も乏しく、かさかさした風合いであった。
【0071】
[実施例3、比較例4]
繊度構成、海/島複合比率、島数を表2に示すように変更し、実施例1と同様の方法にて延伸糸および仮撚加工を行い、織物を得た。得られた延伸糸、仮撚糸の物性と織物評価の結果を表2に示す。
【0072】
実施例3では製糸性が良好であり、得られた織物は精緻感、ソフト感、適度なふくらみを有するが良好なものであった。
【0073】
一方、比較例4は、海成分の複合比率60%と高いため、製糸性が若干劣ると共に、海成分除去によって繊維間の空隙が大きく形成されることとなり、目ずれが起きやすく、ふかついたタッチの織物しか得られなかった。
【0074】
[比較例5]
比較例5では、実施例1と同様のポリトリメチレンテレフタレートを用い、比較例1と同様の方法にて、ホール数48の口金を用いて、紡糸・延伸を行い、84dtex−48filの延伸糸を得た。得られた延伸糸の糸物性を表2に示す。得られた延伸糸を実施例1と同様の方法を用いて、加撚部ヒーター温度180℃、加工速度300m/分、延伸倍率1.05、仮撚数3150T/mで仮撚加工を行った。延伸糸物性と織物について評価した結果を表2に示す。比較例5では、製糸性・仮撚加工性は問題がなかったが、得られた織物について、ソフト感が不足する製品となった。
【0075】
[比較例6]
実施例2の延伸糸を用いて、加撚部ヒーター温度を160℃として実施例2と同様の方法で仮撚を行ったが、ヒーター上にて繊維が完全に融着、糸切れが多発し、加工糸サンプルを得ることが出来なかった。
【0076】
[実施例4]
実施例2の延伸糸を用いて、仮撚温度を130℃として実施例2と同様の方法で仮撚、製織、減量加工を行い織物を得た。延伸糸・仮撚糸物性と織物について評価した結果を表1に示す。実施例4では仮撚においては、糸条においてヒーターによる融着箇所が見られたが、溶出により融着を排除することができた。実施例4で得られた織物は精緻感に優れ、良好なソフト感は有していたが、他の実施例の織物に比べ、ふくらみ、ストレッチにおいて劣るものであったであった。
【0077】
[実施例5]
実施例2の延伸糸を用いて、仮撚温度を80℃、仮撚数3150T/mとして実施例2と同様の方法で仮撚、製織、減量加工を行い織物を得た。延伸糸・仮撚糸物性と織物について評価した結果を表1に示す。実施例5で得られた織物は精緻感やソフト感は優れて、良好なふくらみ感・ストレッチ性を有するの布帛であった。
【0078】
[実施例6]
テレフタル酸/エチレングリコールおよびイソフタル酸/エチレングリコールスラリーを用いてエステル化反応を行った後、2,2ビス{4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル}プロパンのエチレングリコール溶液を添加し、通常の方法により重合を行い、イソフタル酸7.1モル%、2,2ビス{4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル}プロパン4.4モル%含有の共重合ポリエチレンテレフタレートのチップを得た。このチップを紡糸温度280℃で押し出し、3,850m/分の速度で引き取った後、1.53倍に延伸して、高収縮糸(56dtex−24fil、強度4.0cN/dtex、伸度41.3%、沸騰水収縮率19.9%)を得た。
【0079】
実施例6においては、実施例1における仮撚糸を引き続き、仮撚糸に3%の糸長差をつけて高収縮糸と空気混繊により混繊させ、110dtexの仮撚混繊糸を得た。
【0080】
実施例6の方法にて得られた仮撚糸を用いた布帛と上記実施例の織物を比較するため、経糸および緯糸に使用してタテ密度103(本/2.54cm)、ヨコ密度68(本/2.54cm)の平織物を製織とした。得られた織物を実施例1の方法で仕上げ加工を行い、評価を行った。実施例6の織物は精緻感に優れ、ソフト感、大きなふくらみ感を有する良好なものであった。
【0081】
[実施例7]
実施例7においては、実施例2における仮撚加工を行った後、非接触式の2次セットヒーターにて、130℃、12%オーバーフィードの2次セットヒーター加工を行い仮撚加工糸を行い、引き続き、この仮撚糸と実施例6における高収縮糸とを実施例6と同様の方法にて、空気混繊により混繊させ、123dtexの仮撚混繊糸を得た。
【0082】
経糸および緯糸に使用してタテ密度98(本/2.54cm)、ヨコ密度64(本/2.54cm)の平織物を製織とした。得られた織物を実施例1の方法で仕上げ加工を行い、評価を行った。実施例7の織物は精緻感に優れ、ソフト感、大きなふくらみ感を有する良好なものであった。
【0083】
[実施例8]
固有粘度(IV)が1.40のホモポリトリメチレンテレフタレートと固有粘度(IV)が0.60のホモポリエチレンテレフタレートをそれぞれ別々に溶融し、紡糸温度275℃で24孔の複合紡糸口金から複合比(重量%)50:50で吐出し、紡糸速度1400m/分で引取り、185dtex、24フィラメントのサイド−バイ−サイド型複合構造未延伸糸を得た。さらにホットロール−熱板系延伸機を用い、ホットロール温度75℃、熱板温度170℃、延伸倍率3.3倍で延伸し次いで一旦引き取ることなく、連続して0.9倍でリラックスして巻き取り、56dtex、24フィラメントのポリトリメチレンテレフタレート糸を得た。ポリトリメチレンテレフタレート糸は強度:3.8cN/dtex、伸度:25%、沸騰水収縮率は17.4%であった。
【0084】
実施例8においては、実施例2において使用した延伸糸とポリトリメチレンテレフタレート糸とを空気交絡により混繊させた後、仮撚温度を110℃、仮撚数を2490T/mとして実施例2と同様の方法で仮撚を行い、仮撚混繊糸を得た。
【0085】
経糸および緯糸に使用してタテ密度115(本/2.54cm)、ヨコ密度75(本/2.54cm)の平織物を製織とした。得られた織物を実施例1の方法で仕上げ加工を行い、評価を行った。実施例8の織物は、精緻感、ソフト感、大きなふくらみ感を有する良好なものであった。
【0086】
【表1】

【0087】
【表2】

【0088】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリトリメチレンテレフタレートで構成された糸条からなり、乾熱収縮率(TWA)、単糸繊度(FDT)が下記の式を同時に満たすことを特徴とする極細仮撚糸。
(1)8≦TWA(%)≦25
(2)0.01≦FDT(dtex)≦1
【請求項2】
伸縮復元率(CR)が下記の式を満たすことを特徴とする請求項1に記載の極細仮撚糸。
3≦CR(%)≦30
【請求項3】
島成分がポリトリメチレンテレフタレート、海成分がポリ乳酸で構成されており、海成分/島成分の複合比率が10/90〜50/50である海島型複合糸をアルカリ減量して得られることを特徴とする請求項1または2に記載の極細仮撚糸。
【請求項4】
熱水収縮率(SWA)と乾熱収縮率(TWA)が、TWA/SWA≧1を満たすことを特徴とする請求項3に記載の極細仮撚糸。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の極細仮撚糸を少なくとも一部に用いてなることを特徴とする複合混繊糸。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の極細仮撚糸が外層側に配置されていることを特徴とする請求項5に記載の複合混繊糸。
【請求項7】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の極細仮撚糸または請求項5もしくは6に記載の混繊糸を用いた織編物。
【請求項8】
海島型複合糸を、加撚部ヒーターの出口直後の糸条温度が80℃以上150℃以下の条件で仮撚することを特徴とする請求項3または4に記載の極細仮撚糸の製造方法。

【公開番号】特開2007−9395(P2007−9395A)
【公開日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−147863(P2006−147863)
【出願日】平成18年5月29日(2006.5.29)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】