説明

ポリトリメチレンテレフタレート組成物及びその製造方法

下記(A)〜(C)の要件を満足することを特徴とする、50モル%以上がトリメチレンテレフタレート繰返単位から構成されるポリトリメチレンテレフタレート組成物:
(A)b*値が−5〜25であり、且つ、空気雰囲気下、180℃にて20時間加熱した後のb*値が−5〜25である;
(B)組成物をヘキサフルオロイソプロパノールに溶解した溶液中のアクロレイン及びアリルアルコールがいずれも20ppm/組成物以下である;及び
(C)結晶化度Xcが0〜40%である、
ここで結晶化度Xcは、
Xc = {ρ×(ρ−ρ)}/{ρ×(ρ−ρ)}
×100(%)
で表され、但し、
ρ : 非晶密度 = 1.300g/cm
ρ : 結晶密度 = 1.431g/cm
ρ : 組成物の密度(g/cm
である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明はポリトリメチレンテレフタレート組成物及びその製造方法に関するものであり、更に詳しくは、溶融紡糸や押出成形等の溶融成形を行う場合でも色調が優れ、且つ、常に同じ色調の成形物を与えることのできるポリトリメチレンテレフタレート組成物及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
ポリトリメチレンテレフタレート(以下「PTT」と略すこともある。)は、繊維化した場合、低弾性率に起因する柔らかい風合、優れた弾性回復性、易染性といったナイロン繊維に類似した性質と、ウォッシュアンドウェアー性、寸法安定性、耐黄変性といったポリエチレンテレフタレート(以下「PET」と略すこともある。)繊維に類似した性質とを併せ持つ画期的な繊維となることから、近年、その特徴を活かして、カーペットや衣料等へ応用のできる素材として注目され始めている。また、PTTは、低吸湿性、耐黄変性といったナイロンにない特徴や、易成形性や良外観といったポリブチレンテレフタレート(以下「PBT」と略すこともある。)にない特徴を利用して、優れた成形材料となることも予想される。
今後、このような特徴を活かしてPTTの用途を更に拡大していくためには、優れた白度を有し、ムラが無く均一な色調の繊維や射出成形体、押出成形体などの成形品を得ることができるポリマーが求められており、また、該ポリマーを工業的に高い生産性にて製造できる方法が求められている。
通常PTTは、テレフタル酸(以下「TPA」と略すこともある。)又はテレフタル酸ジメチル(以下「DMT」と略すこともある。)のようなテレフタル酸の低級アルコールジエステルと、トリメチレングリコール(以下「TMG」と略すこともある。)とを、無触媒又は金属カルボン酸塩、チタンアルコキシド等の触媒存在下で加熱してエステル交換反応又は直接エステル化反応を行わせ、ビス(3−ヒドロキシプロピル)テレフタレート(以下「BHPT」と略すこともある。)を得た後、該BHPTをチタンアルコキシドやアンチモン酸化物等の触媒存在下、溶融状態にて加熱して反応させ、副生するTMGを系外に抜き出しながら重縮合反応させることにより得ることができる。
優れた白度を有し、ムラが無く均一な色調の繊維や成形品を得るためには、ポリマーの白度及び均一性を高め、且つ、乾燥や溶融等の熱履歴による着色を抑制する必要がある。しかしながら、PTTはPETやPBTなどのポリエステルと比較して、乾燥・結晶化等の加熱処理を行った場合や、溶融成形した場合に着色しやすいという問題がある。通常PETは180℃といった高温で乾燥したり、溶融成形したりしてもほとんど着色が見られないのに対して、PTTは黄色に着色し易い。この原因は定かではないが、PTTが熱分解しやすく、且つ、熱分解によって生じる化合物やポリマー中の官能基が着色を引き起こし易いというPTT特有の性質のためだと考えられる。
また、生産性を高め、且つ、白度ムラを抑えるためには、原料を反応器に連続して供給し、溶融状態で重合させ、連続して抜き出す、いわゆる「連続重合」を行うことが望ましい。
PTTを連続して重合する技術としては、重合反応器の壁面温度を制御するために加熱用の熱媒温度が300℃、好ましくは290℃を超えないようにして熱分解を抑える方法が提案されている。例えば、後述の特許文献1参照。
また、複数の反応器を用いる連続重合方法において、各反応器を適正な温度、滞留時間とすることにより副生成物であるアクロレイン等の発生量を少なくし、得られるポリマーの分子量を高くする技術が提案されている。例えば、後述の特許文献2及び3参照。
しかしながら、本発明者らの検討によると、上記技術を用いた場合は熱分解を抑えて分子量を高めたりアクロレイン等の発生量を少なくしたりすることはできても、溶融成形した場合に着色しにくいポリマーを得ることは困難である。
ポリマーの着色を抑制する技術としては、熱安定剤による改善もなされてきた。例えば、後述の特許文献4参照。
しかしながら、熱安定剤等を用いて重合を行うと、確かに色調の良好なポリマーを得ることは可能であるが、溶融成形や高温での熱処理による着色を抑えることはできず、むしろ熱安定剤自身が着色してしまい、かえって得られる成形品の色調は悪化してしまう。
この他に、重縮合触媒として錫触媒を用い、且つ、顔料を加えることによって黄色度の少ないポリマーを得る技術も提案されている。例えば、後述の特許文献5参照。
また、重縮合触媒として、近傍に存在する原子との配置が特定の状態にある特殊なチタン触媒を用いて、熱安定性に優れ色調の良好なポリマーを得る技術も提案されている。例えば、後述の特許文献6及び7参照。
しかしながら、我々の検討によると、錫触媒は活性が高いために重合を促進すると同時に生成したポリマーの分解も促進する。このためポリマーは着色し易く、これを抑えるために顔料を用いて着色が目立たないようにしている。従って、たとえ色調が良好なポリマーが得られたとしても、乾燥や溶融成形などの熱履歴を受けるとポリマーの色調は悪化してしまう。また、特殊なチタン触媒を用いた場合は、黄色みは少なくなるもののポリマーが黒ずんでしまい、得られる成形品はとても色調が良好とは言えないものとなってしまう。
この他に、溶融重合を行った後に固相重合を行う技術も提案されている。例えば、後述の特許文献8参照。
この技術ではペレットを高温で長時間加熱するために、ポリマーが高度に結晶化してしまう。この結果、重合中や重合ペレットを搬送する際などに粉末状ポリマーが多量発生してしまったり、成形時に未溶融部分ができたりする。これらはいずれも繊維やフィルム、ボトルに成形する際に成形品の欠陥となってしまう。また、ペレット状で重合するために、ペレット間の重合度や色調、加熱時の着色性を均一にすることは極めて困難である。更には、溶融重合した後に一度固化・結晶化させて固相にて長時間かけて重合を行う必要があるため、大規模な設備が必要になるとともに生産性も悪化してしまう。
このように従来のPTT製造技術では、優れた色調の成形品を与え、且つ、工業的に生産性の良い連続溶融重合で製造できる、優れたポリマーを得ることはできない。また、熱履歴により着色しやすいというのはPTT特有の現象であるため、従来のPETやPBTなどのポリエステル製造技術を単純に応用しても優れた色調の成形品を得るためのポリマーを得ることはできない。
【特許文献1】:米国特許第6277947号
【特許文献2】:国際公開第2000/158980号
【特許文献3】:国際公開第2000/158981号
【特許文献4】:国際公開第98/23662号
【特許文献5】:特開平5−262862号公報
【特許文献6】:特開2000−159875号公報
【特許文献7】:特開2000−159876号公報
【特許文献8】:米国特許第6403762号
【発明の開示】
本発明の目的は、優れた白度を有し、ムラが無く均一な色調の繊維や成形品を、高温で乾燥したり溶融したりする溶融成形で得るためのポリマー組成物及び該ポリマー組成物を、工業的に高い生産性で製造できる方法を提供することである。
本発明者らは鋭意研究した結果、驚くべきことに、減圧又は不活性ガス気流中で重合度を高めてから、冷却するまでの配管や設備内での平均滞留時間や該設備の内壁面温度を適切な範囲とすることにより、溶融成形を行う場合でも色調が優れ、且つ、常に同じ色調の成形物を与えることのできるPTT組成物を、工業的に高い生産性で製造できることを見出し、本発明を完成した。
即ち本発明は以下のとおりのものである。
(I)下記(A)〜(C)の要件を満足することを特徴とする、50モル%以上がトリメチレンテレフタレート繰返単位から構成されるポリトリメチレンテレフタレート組成物:
(A)b*値が−5〜25であり、且つ、空気雰囲気下、180℃にて20時間加熱した後のb*値が−5〜25である;
(B)組成物をヘキサフルオロイソプロパノールに溶解した溶液中のアクロレイン及びアリルアルコールがいずれも20ppm/組成物以下である;及び
(C)結晶化度Xcが0〜40%である、
ここで結晶化度Xcは、
Xc = {ρ×(ρ−ρ)}/{ρ×(ρ−ρ)}×100(%)
で表され、但し、
ρ : 非晶密度 = 1.300g/cm
ρ : 結晶密度 = 1.431g/cm
ρ : 組成物の密度(g/cm
である。
(II)極限粘度[η]が0.4〜3.0dl/gである上記(I)のPTT組成物。
(III)(I)又は(II)の組成物を含むペレット。
(IV)(I)又は(II)の組成物を含む、b*値が−5〜25である成型品。
(V)1基以上の反応器を用いて溶融状態で連続的にポリトリメチレンテレフタレートを重合することを含んでなるポリトリメチレンテレフタレート組成物の製造方法であって、該製造方法において、溶融状態のポリマーが最終重合反応器を出てから冷却固化されるまでの間の平均滞留時間が0.01〜50分であり、且つ、この間に接する配管及び/又は装置の内壁面温度が290℃以下である上記方法。
(VI)最終重合反応器を出てから冷却固化されるまでの間に増加するポリマーのカルボキシル末端基濃度が、0〜30meq/kgの範囲である上記(V)の方法。
【図面の簡単な説明】
図1は、原料から重合を行う本発明の重合機の概略を示す模式図である。
図2は、低重合度ポリマーから重合を行う本発明の重合機の概略を示す模式図である。
【発明を実施するための最良の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明のPTTは、50モル%以上がトリメチレンテレフタレート繰返し単位から構成されるPTTである。ここでPTTとは、テレフタル酸を酸成分としトリメチレングリコール(1,3−プロパンジオールともいう、以下「TMG」と略すこともある。)をジオール成分としたポリエステルである。PTTには50モル%以下で1種類以上の他の共重合成分を含有してもよい。含有する共重合成分としては、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、5−カリウムスルホイソフタル酸、3,5−ジカルボン酸ベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩、3,5−ジカルボン酸ベンゼンスルホン酸トリブチルメチルホスホニウム塩、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサメチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、アジピン酸、ドデカン二酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸等のエステル形成性モノマーが挙げられる。繊維の弾性回復性やウォッシュアンドウェアー性、寸法安定性、成形体の易成形性や良外観といったPTTの特徴を強く出すためには、トリメチレンテレフタレート繰返し単位は70モル%以上が好ましく、80モル%以上がより好ましく、90モル%以上が特に好ましい。
また、本発明の「PTT組成物」という用語は、上記(B)の要件におけるアクロレイン及びアリルアルコールがいずれも0ppmであるような単独のPTT自体を指し示す場合にも用いられ、更にアクロレイン及びアリルアルコールを含むPTT組成物、並びに、上記PTT単独又はPTT組成物以外に環状や線状のオリゴマーや、DMT、TPA、TMGなどのモノマーや、各種添加剤を含有しているPTT組成物をも包含するものとする。
本発明のPTT組成物は、b*値が−5〜25であり、且つ、空気雰囲気下、180℃にて20時間加熱した後のb*値が−5〜25である必要がある。
本発明者らの検討によると、成形品の白度を高めるためには、成形に用いるPTT組成物の白度が優れているだけではなく、高温での乾燥や溶融成形のようにPTT組成物を加熱した際に着色しにくいことが重要であることが分かった。原因は定かではないが、着色は、加熱時のポリマー自体の分解だけではなく、あらかじめPTT組成物に含まれる、何らかの着色起因物質又は官能基によって引き起こされているためだと考えられる。加熱した際の着色しやすさの指標としては、PTT組成物を空気雰囲気下、180℃にて20時間加熱した後の色調を用いることができる。従って、本発明では組成物及び組成物を加熱した後のb*をそれぞれ上記した範囲とすることで、はじめて白度の優れた成形品を得ることが可能となる。b*値は−4〜21がより好ましく、−3〜18が更に好ましく、−2〜16が特に好ましく、最も好ましいのは0である。
得られる成形品が黒ずむことなく、成形品を染料や顔料を用いて着色する際に希望の色に発色させることを容易にするためには、組成物のL値及び該組成物を上記のように熱処理した後のL値が70以上であることが好ましく、75以上であることがより好ましく、80以上であることが更に好ましい。L値の上限は特に存在しないが、通常100以下である。
また、本発明では組成物をヘキサフルオロイソプロパノールに溶解した溶液中のアクロレイン及びアリルアルコールがいずれも20ppm/組成物以下である必要がある。このようにすることで、得られる成形品の白度を高めることが可能となる。これらの物質量と加熱時の着色には大きな相関がある。その原因は定かではないが、これらの物質が着色起因物質そのものであるか、あるいは着色物質と同様に増減する物質であるためと予想される。また、上記物質は作業環境を悪化させるので、組成物中の含有量を減らして、組成物からの放出を抑えることも成形品を製造する上では非常に望ましいことである。アクロレイン及びアリルアルコールは15ppm/組成物以下が好ましく、10ppm/組成物以下がより好ましく、5ppm/組成物以下が特に好ましく、もちろん0ppm/組成物が最も好ましい。
更に、本発明においてPTT組成物の結晶化度Xcは0〜40%である必要がある。
ここで結晶化度Xcは、
Xc = {ρ×(ρ−ρ)}/{ρ×(ρ−ρ)}×100(%)
で表され、但し、
ρ : 非晶密度 = 1.300g/cm
ρ : 結晶密度 = 1.431g/cm
ρ : 組成物の密度(g/cm
である。
このような結晶化度にすることで、組成物が脆くなることを防ぐことができ、ニューマーやフィーダーで移送する際に粉末状ポリマーが発生するというPTT特有の問題(この問題は他のPETやPBTなどでは発生しない。)を抑えることができる。結晶化度は0〜35%がより好ましく、0〜30%が更に好ましい。
なお、ここで言う結晶化度は一粒のペレット中の平均値であるが、好ましくはペレットを切断して表層と中心部に分けた場合、全ての部分において結晶化度が上記範囲に入ることが好ましい。また、表層と中心部の結晶化度の差は40%以下が好ましく、30%以下がより好ましく、20%以下が特に好ましい。
本発明のPTT組成物は極限粘度[η]が、0.4〜3.0dl/gの範囲であることが好ましい。実用的な強度を有した繊維や成形体を得ることを考慮すると0.4dl/g以上が好ましい。溶融粘度上昇による溶融成形の困難さを考慮すると3.0dl/g以下が好ましい。極限粘度[η]は0.5〜2.5dl/gの範囲が好ましく、0.6〜2.0dl/gの範囲が更に好ましい。
また、乾燥が不十分な状態で成形しても加水分解しにくいようにしたり、成形品の耐候性を良くしたりするために、カルボキシル末端基濃度が50meq/kg組成物以下であることが望ましい。カルボキシル末端基濃度は30meq/kg組成物以下が好ましく、20meq/kg組成物以下が更に好ましく、10meq/kg以下が特に好ましい。カルボキシル末端基濃度は低ければ低いほど良い。
本発明のPTT組成物の形態は通常はペレットであるが、用途によっては粉体であってもよい。また、重合後にPTT組成物を直接成形して繊維やフィルム、成形体及びその中間体としてもよい。ペレットとする場合は平均重量を1〜1000mg/個とすることが好ましい。この平均重量を有する粒径とすることで、成形機にて均一に押出し易くなるとともに、ペレットの輸送、乾燥、紡糸時の取り扱い性が良好となったり、乾燥速度が早くなったりする。平均重量は5〜500mg/個がより好ましく、10〜200mg/個が特に好ましい。ペレットの形状は球形、直方体、円筒、円錐のいずれでもよいが、取り扱い性を考えると、最長部の長さを15mm以下とすることが好ましく、10mm以下とすることがより好ましく、5mm以下とすることが更に好ましい。
次に、本発明のPTT組成物を製造する方法について説明する。
通常PTTは、テレフタル酸又はDMTのようなテレフタル酸の低級アルコールジエステルとTMGとを、無触媒又は金属カルボン酸塩、チタンアルコキシド等の触媒の存在下で加熱し、エステル交換反応又は直接エステル化反応させてBHPTを得た後、該BHPTをチタンアルコキシド等の触媒の存在下、溶融状態で加熱して反応させ、副生するTMGを系外に抜き出しながら重縮合反応させることによりポリマーを得ることができる。
本発明に係る重合の方法は、上記のような原料から重合を行う方法以外に、中間体であるBHPT又は低重合度のポリマーを、チタンアルコキシド等の触媒の存在下、溶融状態で加熱して反応させ、副生するTMGを系外に抜き出しながら重縮合反応させることによりポリマーを得る方法も含む。
本発明の方法は、原料、中間体及び低重合度ポリマーを反応器に連続して投入し、重合させて得たポリマーを連続的に抜き出す、いわゆる連続重合であることが重要である。連続重合とすることで、得られるポリマーの品質ムラを抑制することが可能となる。
本発明に用いる反応器の数は1基以上であるが、原料のTMGとテレフタル酸の低級アルコールジエステル又はTPAとから重合を行う場合は3基以上、BHPTや極低重合度のポリマーから重合を行う場合は2基以上用いることが好ましい。
重合して得たポリマーは最終重合反応器からギアポンプや押出し機を用いて抜き出した後、配管等を通して紡口から空気や窒素などの気体中に吐出させ、そのまま気体中で冷却固化させるか、あるいは水などの液体又は、金属などの固体に接触させて冷却固化させる。ポリマーを成形に用いるためには水などの液体に接触させて冷却固化させることが好ましい。
前記したように、白度に優れた成形品を得るためには、ポリマー組成物の白度が優れているだけではなく、高温での乾燥や溶融成形のようにポリマーを加熱した際に着色しにくくする必要があり、このためにポリマーに含まれる、何らかの着色起因物質又は官能基を少なくする必要があると考えられる。この着色起因物質又は官能基は熱分解に伴って生成すると考えられるが、重合反応器内で多少発生しても、重合反応によって生成するTMGなどとともに系外に抜き出されるため、ポリマー中に残存しにくいようである。しかしながら、重合反応器を出た後の配管や装置などの密閉された空間では、系外に抜き出されることがないため、ポリマー中に蓄積してしまうと考えられ、溶融状態で長時間密閉された空間に置かれたポリマーを加熱すると大きく着色する。
従って、加熱時の着色を抑えるためには、ポリマーが最終重合反応器を出てから冷却固化させるまでの間の平均滞留時間と、この間に接する配管及び/又は装置の内壁面温度を制御して熱分解を抑制し、ポリマー中の着色起因物質又は官能基を少なくすることが非常に重要であると考えられる。
ここで「装置」とは、最終重合反応器の出口から気体中に吐出させるまでにポリマーが通る流路にある装置全てを指し、例えば添加剤を練りこむための混練装置や、ろ過装置、ポリマーを重合器から送液するためのギアポンプ、一軸又は二軸の押出機を指す。「配管」とは最終重合反応器とこれらの装置や紡口などをつないでいる配管を指す。最終重合反応器内に重合度が増加しないゾーンがある場合は、このゾーンも含む。
本発明の製造方法では、ポリマーが最終重合反応器を出てから冷却固化させるまでの間の平均滞留時間は0.01〜50分である必要がある。平均滞留時間は、加熱時のポリマーの着色を考慮すると50分以内が好ましい。平均滞留時間は短い程良いが現実的には0.01分以上である。平均滞留時間は0.02〜40分であることが好ましく、0.03〜30分であることがより好ましく、0.04〜20分であることが特に好ましい。また、ポリマーが通過する配管や装置中の流路には、ポリマーが長時間滞留するような、いわゆるデッドスペースができるだけ少なくなるようにすることが好ましい。
平均滞留時間は、実測できる場合はその値が上記範囲になるようにする必要があり、実測できない場合は前記した配管及び/又は装置の平均滞留量を単位時間当たりの吐出量で除した値が上記範囲になるようにする必要がある。
一方、最終重合反応器を出てから冷却固化させるまでの間にポリマーが接する配管及び/又は装置の内壁面温度は290℃以下である必要がある。熱分解による重合度の低下や、加熱時のポリマーの着色を考慮すると290℃以下が好ましい。一方、温度の低下によるポリマーの粘性の上昇や、固化による抜き出しの困難さを考慮すると220℃以上であることが好ましい。温度は225〜280℃であることが好ましく、230〜275℃であることがより好ましく、235〜270℃であることが特に好ましい。
ポリマーが接する配管及び/又は装置の内壁面の温度はできるだけ均一であることが好ましく、一部分だけでも上記温度範囲より外れたりしないように、上記温度範囲内に制御した液体によって加熱することが好ましい。ヒーターなどを用いる場合もヒーター表面の温度が上記した範囲内になるように制御することが好ましい。
本発明の最終重合反応器とは、縦型攪拌反応器、1軸又は2軸の攪拌翼を有した横型攪拌反応器、支持体に沿わせてポリマーを落下させながら重合させる反応器、棚段を有する自然流下式の薄膜重合反応器、傾斜した平面を自然流下する薄膜重合反応器、二軸押出機型反応器などポリマーの重合度を高めることのできる反応器全てを指す。このうち、優れた強度の成形品を得ることのできる高い重合度のポリマーを得るためには、1軸又は2軸の攪拌翼を有した横型攪拌反応器や支持体に沿わせてポリマーを落下させながら重合させる反応器が好ましい。
このような最終重合反応器では減圧又は不活性ガスを流通させながら重合を行う。ポリマー中の着色起因物質又は官能基を減らすためには減圧にて重合を行うことが望ましい。最終重合反応器内での平均滞留時間は5時間以内であることが好ましく、4時間以内であることがより好ましく、3時間以内であることが特に好ましい。
また、本発明においては、最終重合反応器を出てから冷却固化されるまでの間に増加するポリマーのカルボキシル末端基量が0〜30meq/kgの範囲であることが望ましい。ポリマーのカルボキシル末端基が直接着色を引き起こすことは無いと考えられるが、その量は着色起因物質又は官能基の量の指標となる。増加するポリマーのカルボキシル末端基濃度が多いということは着色起因物質又は官能基が多いことを示し、得られる成形体が着色しやすくなってしまう。増加するポリマーのカルボキシル末端基濃度は0〜20meq/kgであることが好ましく、0〜15meq/kgであることがより好ましく、0〜10meq/kgであることが特に好ましい。もちろん少なければ少ないほど良い。また、同じ理由で、最終重合反応器を出てくるポリマーのカルボキシル末端基濃度も少ない方が良く、好ましくは0〜40meq/kg、より好ましくは0〜20meq/kg、特に好ましくは0〜10meq/kgである。
次に原料から重合によりPTT組成物を製造する本発明の方法の一つを例示するが、本発明はこの方法に限定されるものではない。
PTT製造法としては原料の違いにより大きく分けて、テレフタル酸の低級アルコールジエステルとTMGとをエステル交換反応させ、PTTの中間体であるBHPTを得た後、該BHPTを重縮合反応させてPTTプレポリマーを製造する方法(以下「エステル交換法」と略すこともある。)と、テレフタル酸とTMGとをエステル化反応させ、BHPTを得た後、第一の方法と同様に、該BHPTを重縮合反応させてPTTプレポリマーを製造する方法(以下「直接エステル化法」と略すこともある。)がある。ここでBHPTと言った場合、上記ビス(3−ヒドロキシプロピルテレフタレート)自体以外に、テレフタル酸、テレフタル酸の低級アルコールエステル、TMG及びPTTオリゴマーが含まれるものも包含する。
エステル交換法では、テレフタル酸の低級アルコールジエステルの一種であるDMTとTMGとをエステル交換触媒の存在下150〜240℃の温度でエステル交換させてBHPTを得る。テレフタル酸の低級アルコールジエステルとTMGの仕込み時のモル比は1:1.3〜1:4が好ましく、1:1.5〜1:2.5がより好ましい。反応時間の長さを考慮すると1:1.3よりもTMGが多い方が好ましい。一方、反応に関与しないTMGを揮発させるための重合時間の長さを考慮すると1:4よりもTMGが少ない方が好ましい。
エステル交換法ではエステル交換触媒を用いる必要があり、好ましい例としては例えばチタンテトラブトキシドやチタンテトライソプロポキシドに代表されるチタンアルコキシド、酢酸コバルト、酢酸カルシウム、酢酸亜鉛等が挙げられる。なかでもチタンテトラブトキシドが、続いて行う重縮合反応触媒としても働くので好ましい。エステル交換触媒の量はテレフタル酸ジエステルに対して0.02〜1重量%が好ましく、0.05〜0.5重量%がより好ましく、0.08〜0.2重量%が更に好ましい。
直接エステル化法ではテレフタル酸とTMGを150〜240℃の温度でエステル化反応させてBHPTを得る。テレフタル酸とTMGの仕込み時のモル比は1:1.05〜1:3が好ましく、1:1.1〜1:2がより好ましい。反応時間の長さや着色を考慮すると、1:1.05よりTMGが多くなることが好ましい。また、反応に関与しないTMGを揮発させるための重合時間を考慮すると、1:3よりもTMGが少ない方が好ましい。
直接エステル化法ではテレフタル酸から遊離するプロトンが触媒として働くためにエステル化触媒は必ずしも必要ないが、反応速度を高めるためにはエステル化触媒を用いることが好ましい。好ましい例としては、例えば、チタンテトラブトキシドやチタンテトライソプロポキシドに代表されるチタンアルコキシド等が挙げられる。添加量は用いるテレフタル酸に対して0.02〜1重量%が好ましく、0.05〜0.5重量%がより好ましく、0.08〜0.2重量%が更に好ましい。
上記した方法で得られたBHPTは続いて重縮合させてポリマーとする。
重縮合は、BHPTを減圧下又は不活性気体雰囲気下にて所定温度で反応させ、副生するTMGを除去しながら行う。重縮合を行う温度は230〜280℃が好ましい。反応物の固化や、反応時間の長さを考慮すると230℃以上が好ましい。一方、熱分解やポリマーの色調を考慮すると280℃以下が好ましい。温度は232〜275℃がより好ましく、235〜270℃が更に好ましい。
重縮合反応は、減圧下又は不活性気体雰囲気下で行うことができる。減圧にする場合はBHPTや重縮合反応物の昇華状態や反応速度により適宜減圧度を調節する。不活性気体雰囲気下で重縮合反応を行う場合は、副生するTMGが効率的に除去できるように不活性気体を随時十分置換させることが重要である。本発明では減圧下で重縮合反応を行うことが好ましい。
BHPTを重縮合するには重縮合触媒を用いることが望ましい。重縮合触媒を用いないと重縮合時間が長くなってしまう。重縮合触媒の好ましい例としてはチタンテトラブトキシドやチタンテトライソプロポキシドに代表されるチタンアルコキシド、二酸化チタンや二酸化チタンと二酸化珪素の複塩、三酸化二アンチモン、酢酸アンチモンなどのアンチモン化合物、2−エチルヘキサン酸錫、ブチル錫酸、ブチル錫トリス(2−エチルヘキソエート)等の錫化合物等が挙げられる。反応速度が速く、色調を良好にできる点でチタンテトラブトキシドや2−エチルヘキサン酸錫が好ましい。これらの触媒は1種だけで用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。重縮合触媒の量は得られるポリマーの重量に対して0.001〜1重量%となるように添加することが好ましく、0.005〜0.5重量%となるように添加することがより好ましく、0.01〜0.2重量%となるように添加することが特に好ましい。BHPTを得る過程で用いている化合物が重縮合触媒としても作用する場合は、当該化合物の量を含めて上記した量となるように重縮合触媒を添加すればよい。
BHPTから連続重合法で重合を行う場合は、反応を効率的に進めるために重縮合反応を2つ以上の反応器に分けて行い、温度、減圧度等を変えることが好ましい。
重合により得たPTTは、ペレット(チップとも呼ぶ)状に成形して、結晶化、乾燥の工程を経た後、成形に用いることができる。ペレットは、溶融ポリマーをストランド状又はシート状に押し出して冷却固化させた後、カットすることにより得られる。この場合、本発明の結晶化度Xcの範囲となるように、適宜、冷却温度と冷却させるまでの時間を選択する必要がある。通常は、溶融ポリマーをストランド状又はシート状に押出し、水等の冷媒中に速やかに入れて冷却した後、カットする。冷媒の温度は20℃以下が好ましく、15℃以下がより好ましく、10℃以下が更に好ましい。冷媒としては経済性、取扱性を考えると水が好ましく、このため冷媒温度は0℃以上が好ましい。ペレット状とするためのカットは、ポリマーを押出してから120秒以内に55℃以下に冷却固化した後行うことが好ましい。
また、本発明ではペレット状に成形せずに、溶融ポリマーを直接、紡糸機や押出成形器に導入した後、冷却固化して成形品を得ることもできる。本発明は、このような場合も含み、この場合も最終重合反応器を出てから冷却固化されるまでの間の平均滞留時間が0.01〜50分であり、且つ、この間に接する配管及び/又は装置の内壁面温度が290℃以下である必要がある。
本発明では、必要に応じて各種の添加剤、例えば艶消し剤、熱安定剤、難燃剤、帯電防止剤、消泡剤、整色剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、結晶核剤、増白剤などを共重合させるか、又は混合する場合もある。これらの添加剤は重合の任意の段階で入れることができる。
特に、本発明では熱安定剤を添加することが、得られる成形品の白度を向上させるために好ましい。この場合の熱安定剤としては、5価及び/又は3価のリン化合物やヒンダードフェノール系化合物が好ましい。
5価及び/又は3価のリン化合物としては、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリメチルホスファイト、トリエチルホスファイト、トリブチルホスファイト、トリフェニルホスファイト、リン酸、亜リン酸等が挙げられ、特に、トリメチルホスファイトが好ましい。添加するリン化合物の量としては、PTT組成物中に含まれるリン元素の重量割合として2〜250ppmであることが好ましい。効果を十分に出すためには2ppm以上であることが好ましく、重縮合触媒が失活し、重縮合速度が遅くなって希望とする重合度まで上がらなくなったりすることを考慮すると250ppm以下であることが好ましい。リン化合物の量はリン元素の重量割合として5〜150ppmがより好ましく、10〜100ppmが更に好ましい。
ヒンダードフェノール系化合物とは、フェノール系水酸基の隣接位置に立体障害を有する置換基を持つフェノール系誘導体であり、分子内に1個以上のエステル結合を有する化合物である。具体的には、ペンタエリスリトール−テトラキス(3−(3,5−ジ−tertブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、3,9−ビス(2−(3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ)−1,1−ジメチルエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、1,3,5−トリス(4−tert−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−ジメチルベンゼン)イソフタル酸、トリエチルグリコール−ビス(3−(3−tert−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)、1,6−ヘキサンジオール−ビス(3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)、2,2−チオ−ジエチレン−ビス(3−(3,5−ジ−tertブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートなどがある。添加するヒンダードフェノール系化合物の量としては、得られるポリマーに対する重量割合として0.001〜1重量%であることが好ましく、0.005〜0.5重量%がより好ましく、0.01〜0.1重量%が更に好ましい。
もちろんこれらの熱安定剤を二種以上併用することも好ましい方法の一つである。
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
なお、実施例中の主な測定値は以下の方法で測定した。
(1)色調(L値、b*値)
スガ試験機(株)のカラーコンピューターを用いて測定した。
また、ポリマーを空気雰囲気下、180℃にて20時間加熱した後に、上記と同様にして色調を測定し、加熱時の着色性指標とした。
(2)アクロレイン及びアリルアルコール含有量
試料1gを細かくカットし、ヘキサフルオロイソプロパノール10mlに入れ、超音波を掛けて溶解した。該溶液に水10mlを加えてポリマー成分を再沈殿させ、上澄み液中のアクロレイン及びアリルアルコールをガスクロマトグラフ/質量分析器を用いて下記条件で分析した。
カラム : VOCOL(60m×0.25mmφ×膜厚1.5μm)
温度条件 : 35〜100℃(5℃/分で昇温)、その後100〜220℃
(20℃/分で昇温)
注入口温度: 220℃
注入方 : スプリット法(スプリット比=1:30)、1μリットル注入
測定法 : SIM法
(3)結晶化度
JIS−L−1013に基づいて四塩化炭素及びn−ヘプタンにより作成した密度勾配管を用いて密度勾配管法にて求めた密度より、下記式に従って求めた。
Xc = {ρ×(ρ−ρ)}/{ρ×(ρ−ρ)}×100(%)
但し、
ρ : 非晶密度(g/cm)=1.300g/cm
ρ : 結晶密度(g/cm)=1.431g/cm
ρ : 組成物の密度(g/cm
(4)極限粘度[η]
極限粘度[η]は、オストワルド粘度計を用い、35℃、o−クロロフェノール中での比粘度ηspと濃度C(g/100ミリリットル)の比ηsp/Cを濃度ゼロに外挿し、以下の式に従って求めた。
[η]=lim(ηsp/C)
C→0
(5)カルボキシル末端基濃度
ポリマー1gをベンジルアルコール25mlに溶解し、その後、クロロホルム25mlを加えた後、1/50Nの水酸化カリウムベンジルアルコール溶液で滴定を行い、滴定値VA(ml)とポリマーが無い場合のブランク値VOより、以下の式に従って求めた。
カルボキシル末端基濃度
(meq/kg)=(VA−VO)×20
【実施例1】
原料としてDMTとTMGを用いて、図1の装置により連続重合法により1日に1000kgのPTTポリマーを重合した。第一エステル交換反応器1及び第二エステル交換反応器5はベント口3又は7及びタービン状の攪拌翼2又は6を有した縦型攪拌反応器を、第一重縮合反応器9にはベント口11及びアンカー状攪拌翼10を有した縦型攪拌反応器を用い、第二重縮合反応器(最終重合反応器)13にはベント口15及び1軸のディスク状攪拌翼14を有した横型攪拌反応器を用いた。
重合は、まず1:1.5のモル比のDMT、TMG及びDMTに対して0.1重量%のチタンテトラブトキシドを第一エステル交換反応器に連続投入し、常圧、190℃にて攪拌翼2で攪拌し、副生するメタノールをベント口3より抜き出しながらエステル交換反応を行った。次に移送ポンプ4にて第二エステル交換反応器5に送液し、常圧、230℃にて同様にしてエステル交換反応を完結させた。
この後移送ポンプ8にて第一重縮合反応器9に送液し、減圧下(3000Pa)、250℃にて攪拌翼10で攪拌し、副生するTMG等をベント口11より抜き出しながら重縮合を行って低重合度のポリマーを得た。次いで、移送ポンプ12で第二重縮合反応器13に送液し、減圧下(100Pa)、260℃にて同様にして重縮合を行ってポリマーの重合度を高めた。この際、得られるポリマーに対して20ppmのトリメチルホスフェートを送液ポンプ8と第一重縮合反応器9の間から連続添加した。また触媒はエステル交換反応の時に添加したものをそのまま用いた。
重合度を高めたポリマーは第二重縮合反応器13の排出口16から排出させた後、排出ポンプ17及び抜き出し配管18を通して紡口19からストランド状に吐出させた。吐出させた冷却固化ポリマー20は、空気中及び水冷バス21で冷却固化した後、ペレタイザー(チップカッター)22でカットしてペレットとした。
この時、排出口16を出て紡口19から吐出させるまでの平均滞留時間は15分であった。また、排出ポンプ16、抜き出し配管18、紡口19は全て260℃の熱媒にて加熱し、内壁面の温度は255〜260℃であった。ここで平均滞留時間は排出口16を出てから紡口19を出るまでにある配管及び装置の内容積と吐出ポリマー量から求め、内壁面温度は熱媒が出入りする部分及び配管及び装置の主要部分にセンサーを配して測定した。
結果を表1に示す。得られた組成物ペレットは、b*値が6、L*が85と白度に優れ、180℃、空気雰囲気中で20時間加熱してもb*値は12と着色は少なかった。また、アクロレイン及びアリルアルコールの含有量も少なく、結晶化度も本発明の範囲内であった。更に、カルボキシル末端基濃度も18と低く、排出口16で採取した組成物と比較しても、わずかに8meq/kg増加しただけであった。
得られたペレットを130℃の窒素雰囲気下で5時間乾燥した後、装置として日精樹脂(株)製PS40Eを用いて、シリンダーの設定温度250℃、金型の設定温度95℃、射出17秒、冷却20秒の射出成形条件で箱形の成形品を作成した。得られた成形品は均一な色調でb*が8、L*が85と白度に優れていた。
【実施例2〜6】
表1に示す条件以外は、実施例1と同様にして重合を行いペレットを得た。結果を表1に示す。いずれの場合も色調に優れ、且つ、加熱時の着色が少なく、アクロレイン及びアリルアルコールの含有量が少なく、本発明の範囲内の結晶化度を有したものであった。また、カルボキシル末端基濃度も低く、しかも排出口16で採取した組成物と比較してもわずかにしか増加していなかった。
【実施例7】
極限粘度[η]が0.5dl/g、カルボキシル末端基濃度10meq/kgの低重合度PTTポリマーを用いて、図2に示す支持体27に沿わせてポリマー27を落下させながら重合させる反応器により1日に1000kgのPTTポリマーを重合した。重合は低重合度ポリマーを、移送ポンプ24により原料供給口25から重縮合反応器(最終重合反応器)23に供給し、260℃の溶融状態で支持体1本当たり30g/分の量で支持体に沿わせながら、100Paの減圧度で副生するTMG等をベント口26から抜き出しながら重合反応させた。支持体は直径3mmのステンレススチール製ワイヤが縦方向に30mm、横方向に50mmの間隔で組み合わされたジャングルジム状のものを用いた。重合器底部にはポリマーがほとんど溜まらないように排出ポンプを運転した。低重合度PTTポリマーには、チタンテトラブトキシドが0.1重量%/ポリマー、トリメチルホスフェートがリン元素の重量割合として100ppm/ポリマー添加されたものを用いた。
重合したポリマーは排出口28から排出させた後、排出ポンプ29、抜き出し配管30を通して紡口31から、ストランド状に吐出させた。吐出させた冷却固化ポリマー32は、空気中及び水冷バス33で冷却固化した後、ペレタイザー(チップカッター)34でカットしてペレットとした。この時、排出口28を出て紡口から吐出させるまでの平均滞留時間は10分であった。また、排出ポンプ29、抜き出し配管30、紡口31は全て263℃の熱媒にて加熱し、内壁面の温度は255〜260℃であった。ここで平均滞留時間は排出口28を出てから紡口31を出るまでにある配管及び装置の内容積と吐出ポリマー量から求め、内壁面温度は熱媒が出入りする部分及び配管及び装置の主要部分にセンサーを配して測定した。
結果を表1に示す。得られたペレットは色調に優れ、且つ、加熱時の着色が少なく、アクロレイン及びアリルアルコールの含有量が少なく、本発明の範囲内の結晶化度を有したものであった。また、カルボキシル末端基濃度も低く、しかも排出口16で採取した組成物と比較してもわずかにしか増加していなかった。
【実施例8】
表1に示す条件以外は、実施例7と同様にして重合を行いペレットを得た。結果を表1に示す。得られたペレットは色調に優れ、且つ、加熱時の着色が少なく、アクロレイン及びアリルアルコールの含有量が少なく、本発明の範囲内の結晶化度を有したものであった。また、カルボキシル末端基濃度も低く、しかも排出口16で採取した組成物と比較してもわずかにしか増加していなかった。
比較例1〜2
表1に示す条件以外は実施例1と同様にして重合を行った。結果を表1に示す。
比較例1の場合は、排出口16から紡口19までの抜き出し配管が長く、且つ、太かったために平均滞留時間が長すぎ、得られたペレットは多少着色しているだけでなく、180℃、空気雰囲気中で20時間加熱すると激しく着色するものであった。
比較例2の場合は、排出口16から紡口19まで配管及び装置を加熱する熱媒の温度が高かったために、内壁面温度が高くなりすぎ、得られたペレットは多少着色しているだけでなく、180℃、空気雰囲気中で20時間加熱すると激しく着色するものであった。

【産業上の利用可能性】
本発明のPTT組成物は、溶融成形を行った際に色調が優れ、且つ、常に同じ色調の成形物を得ることができ、しかも、工業的に高い生産性で製造できる。
【図1】

【図2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(A)〜(C)の要件を満足することを特徴とする、50モル%以上がトリメチレンテレフタレート繰返単位から構成されるポリトリメチレンテレフタレート組成物:
(A)b*値が−5〜25であり、且つ、空気雰囲気下、180℃にて20時間加熱した後のb*値が−5〜25である;
(B)組成物をヘキサフルオロイソプロパノールに溶解した溶液中のアクロレイン及びアリルアルコールがいずれも20ppm/組成物以下である;及び
(C)結晶化度Xcが0〜40%である、
ここで結晶化度Xcは、
Xc = {ρ×(ρ−ρ)}/{ρ×(ρ−ρ)}
×100(%)
で表され、但し、
ρ : 非晶密度 = 1.300g/cm
ρ : 結晶密度 = 1.431g/cm
ρ : 組成物の密度(g/cm
である。
【請求項2】
極限粘度[η]が0.4〜3.0dl/gである請求項1記載のポリトリメチレンテレフタレート組成物。
【請求項3】
請求項1又は2記載の組成物を含むペレット。
【請求項4】
請求項1又は2記載の組成物を含む、b*値が−5〜25である成形品。
【請求項5】
1基以上の反応器を用いて溶融状態で連続的にポリトリメチレンテレフタレートを重合することを含んでなるポリトリメチレンテレフタレート組成物の製造方法であって、該製造方法において、溶融状態のポリマーが最終重合反応器を出てから冷却固化されるまでの間の平均滞留時間が0.01〜50分であり、且つ、この間に接する配管及び/又は装置の内壁面温度が290℃以下である上記方法。
【請求項6】
最終重合反応器を出てから冷却固化されるまでの間に増加するポリマーのカルボキシル末端基濃度が、0〜30meq/kgの範囲である請求項5記載の方法。

【国際公開番号】WO2004/078823
【国際公開日】平成16年9月16日(2004.9.16)
【発行日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−503058(P2005−503058)
【国際出願番号】PCT/JP2004/002615
【国際出願日】平成16年3月3日(2004.3.3)
【出願人】(303046314)旭化成ケミカルズ株式会社 (2,513)
【Fターム(参考)】