説明

ポリトリメチレンテレフタレート繊維含有布帛

【課題】本発明は、縫製時や、着用時の地糸切れがなく、また、摩擦溶融防止性に優れ、着用時のスナッギング性や、堅牢度の問題がなく、ヌメリ感やベタツキ感がなく、ソフトで、かつ着用や、洗濯での形態安定性に優れた軽量なポリトリメチレンテレフタレート繊維含有布帛を提供する。
【解決の手段】ポリトリメチレンテレフタレート繊維を10%以上含み、可縫性向上効果のある加工剤が付与された布帛であって、地糸切れの個数が5個以下であり、かつバギング評価直後の歪個数が20個以下であるポリトリメチレンテレフタレート繊維含有布帛。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、縫製時や、着用時の地糸切れがなく、また、摩擦溶融防止性に優れ、着用時のスナッギング性や、堅牢度の問題がなく、ヌメリ感やベタツキ感がなくソフトで、また着用や、洗濯での形態安定性に優れた布帛に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、風合の柔らかさや、軽さを追求し、かつ品位、生地感を出す為に、細い糸を使用して密度を高くした織物または編物の要求が高まってきている。特にスポーツ衣料では、サッカーゲームシャツやパンツ、マラソン、ランニングのシャツ、パンツ等で上記のような編物の要望が高い。また女性用のコート地等では、こういった特徴の織物に対する要望が高い。
【0003】
素材として、合繊が使用される事が多い。中でもポリトリメチレンテレフタレート繊維の使用も増えてきている。
一般のポリエチレンテレフタレート繊維では、布帛を高密度化すると、例え細い糸を使用しても風合が硬化したり、伸縮性や伸縮回復性が大幅に低下する問題があり、風合面や、長期着用後の歪回復性の点で劣るものとなる。
これに対し、ポリトリメチレンテレフタレート繊維を使用すると、風合低下、伸縮性低下や、長期着用後の歪回復性低下を防ぐ事ができるメリットがある。ポリトリメチレンテレフタレート繊維糸条を用いた編物(特許文献1参照)や織物(特許文献2参照)が記載されている。これらによれば、ポリトリメチレンテレフタレート繊維糸条を使用することで、瞬間回復性に優れた編地または織物を提供できる。
【0004】
一方でポリエステル系繊維を使用した布帛では、特にミシン縫製による地糸切れという問題や、高負荷のかかる摩擦で、生地が溶融する摩擦溶融という問題が発生する事が多々ある。縫製による地糸切れは、高速で縫製される場合に、ミシンの針と生地糸の間に摩擦が生じ、この摩擦により発生する熱が原因で生地の糸が溶融切れを起こしたり、または、針が生地糸を切断するなどの原因で発生する。この地糸切れは編物の場合、開いた穴を起点としてランが発生する懸念が高く、編物においては重大欠点である。織物の場合は、穴開きだけに留まるが、ほつれなどの欠点を誘発する懸念もあり、やはり問題となる。一般的に細い糸を使用し、かつ高密度化する方向は、糸自身の強力が低く、かつ摩擦個所を増大させる方向であり、地糸切れは発生し易くなる。
【0005】
縫製工場では、生産性をあげる為に、ミシンの回転速度は早い方が好ましく、例えばスポーツ衣料などでは、ロックミシンでは5000〜6000回転、本縫いでも4000〜5000回転で使用される事が多い。また縫製は、夏、冬季節関係なく行われる。冬場などは、夏場に比較し湿度が低くなる。湿度が低い状態では余計に地糸切れが発生し易くなる。地糸切れや、摩擦溶融を防ぐ為に、縫製現場の湿度調整等環境条件の改善や、使用するミシン針の選択、回転数を下げる等のミシン縫製条件の改善、更に生地自体を地糸切れしにくくする等の様々な、改善手段が用いられている。しかし、湿度調整や、ミシン速度の低下等は実際設備や生産性を考えると限界があり、この方法のみで解決するのは困難である。また、針の形状を変えたり、針の太さを細くするなども、良く行われる手段であるが、生地に使用される糸の太さや、生地厚みの観点、更に縫製強度の観点から、全てに対応できる手段とは言い難い。その為に、生地面での地糸切れ改善がやはり必要となる。
【0006】
生地自体の地糸切れを起こり難くする方法としては、一般的に滑り性の良い加工剤を生地に付与し、生地の平滑性を高める事で針や、床面等との摩擦力を下げ、溶融切れを起こ
し難くする手段がある。しかしながら、平滑性を良くすると、一般的にはスナッギング性は低下する方向にある。ポリトリメチレンテレフタレート繊維は、ポリエチレンテレフタレート繊維に比較し、融点が20℃ほど低く、また糸の強力も20%ほど低い。従って、ポリエチレンテレフタレート繊維よりも耐熱温度が低いので、一般的には地糸切れや摩擦溶融も起こりやすくなると考えられる。更に糸の細デシテックス化、高密度化で、余計に地糸切れは発生し易くなる。また、綿等の短繊維と混用する場合、吸湿性の観点からは、綿混用により地糸切れは発生し難くなるように考えられるが、短繊維との摩擦では、その抵抗値が高くなる懸念があるために、これに伴い、地糸切れが発生し易くなる場合も起こりえる。
従って、地糸切れがなく、かつ地糸切れを防止するための処理により発生するスナッギング低下を極力抑えたポリトリメチレンテレフタレート含有の布帛を得る事は、これまで困難な事であった。
【0007】
【特許文献1】特開2001−64853号公報
【特許文献2】特開2001−64844号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明は、前記問題点を改善し、縫製時や、着用時の地糸切れがなく、また、摩擦溶融防止性に優れ、着用時のスナッギング性や、堅牢度の問題がなく、ヌメリ感やベタツキ感がなく、ソフトで、かつ着用や、洗濯での形態安定性に優れたポリトリメチレンテレフタレート繊維含有布帛を提供する事を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、ポリトリメチレンテレフタレート繊維を含有する織物または編物の布帛に関して、地糸切れ性能とスナッギング性能の両方について、生地加工面での改善について詳細な検討を行った結果、可縫性向上効果を有する加工剤をセレクトする事で、スナッギングの低下を極力抑え、かつ地糸切れを無くす事ができることを見出した。
本発明は、以下の通りである。
(1)ポリトリメチレンテレフタレート繊維を10%以上含み、可縫性向上効果のある加工剤が付与された布帛であって、地糸切れの個数が5個以下であり、かつバギング評価後直後の歪個数が20個以下であるポリトリメチレンテレフタレート繊維含有布帛。
(2)可縫性向上効果のある加工剤付与後のスナッギングの低下割合が1.5級以内である上記(1)に記載のポリトリメチレンテレフタレート繊維含有布帛。
(3)初期及び洗濯10回後の吸水性が10秒以内である上記(1)又は(2)に記載のポリトリメチレンテレフタレート繊維含有布帛。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、縫製時や、着用時の地糸切れがなく、また、摩擦溶融防止性に優れ、着用時のスナッギング性や、堅牢度の問題がなく、ヌメリ感やベタツキ感がなくソフトで軽量で、かつ形態安定に優れたポリトリメチレンテレフタレート繊維含有布帛を提供する事ができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明について、以下に具体的に説明する。
本発明において、ポリトリメチレンテレフタレート系繊維とは、トリメチレンテレフタレート単位を主たる繰り返し単位とするポリエステル繊維をいい、トリメチレンテレフタレート単位を約50モル%以上、好ましくは70モル%以上、さらには80モル%以上、さらに好ましくは90モル%以上のものをいう。従って、第三成分として他の酸成分及び/又はグリコール成分の合計量が、約50モル%以下、好ましくは30モル%以下、さら
には20モル%以下、さらに好ましくは10モル%以下の範囲で含有されたポリトリメチレンテレフタレートを包含する。
【0012】
ポリトリメチレンテレフタレートは、テレフタル酸又はその機能的誘導体と、トリメチレングリコール又はその機能的誘導体とを、触媒の存在下で、適当な反応条件下に結合せしめることにより合成される。この合成過程において、適当な一種又は二種以上の第三成分を添加して共重合ポリエステルとしてもよいし、又、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリトリメチレンテレフタレート以外のポリエステル、ナイロンとポリトリメチレンテレフタレートを別個に合成した後、ブレンドしてもよい。
【0013】
添加する第三成分としては、脂肪族ジカルボン酸(シュウ酸、アジピン酸等)、脂環族ジカルボン酸(シクロヘキサンジカルボン酸等)、芳香族ジカルボン酸(イソフタル酸、ソジウムスルホイソフタル酸等)、脂肪族グリコール(エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、テトラメチレングリコール等)、脂環族グリコール(シクロヘキサンジメタノール等)、芳香族を含む脂肪族グリコール(1,4−ビス(β−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン等)、ポリエーテルグリコール(ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等)、脂肪族オキシカルボン酸(ω−オキシカプロン酸等)、芳香族オキシカルボン酸(P−オキシ安息香酸等)等がある。又、1個又は3個以上のエステル形成性官能基を有する化合物(安息香酸等又はグリセリン等)も重合体が実質的に線状である範囲内で使用出来る。
【0014】
本発明においてポリトリメチレンテレフタレート系繊維の紡糸については、例えば国際公開第99/27168号パンフレットに記載されており、1500m/分程度の巻取り速度で未延伸糸を得た後、2〜3.5倍程度で延撚する方法、紡糸−延伸工程を直結した直接紡糸延伸法(スピンドロー法)、巻取り速度5000m/分以上の高速紡糸法(スピンテイクアップ法)の何れを採用しても良い。
【0015】
ポリトリメチレンテレフタレート繊維の好ましい特性としては、強度は2〜5cN/dtex、好ましくは2.5〜4.5cN/dtex、さらには3〜4.5cN/dtexが好ましい。伸度は30〜60%、好ましくは35〜55%、さらには40〜55%が好ましい。弾性率は30cN/dtex以下、好ましくは10〜30cN/dtex、さらには12〜28cN/dtex、特に15〜25cN/dtexが好ましい。10%伸長時の弾性回復率は70%以上、好ましくは80%以上、さらには90%以上、最も好ましくは95%以上である。
総繊度、及び単繊度は限定されるものではないが、総繊度としては20〜350dtexが好ましく、また単糸繊度は0.2〜20dtexが好ましく用いられる。
【0016】
また本発明のポリトリメチレンテレフタレート繊維として、少なくとも1成分がポリトリメチレンテレフタレートからなる潜在捲縮発現性ポリエステルを用いても良い。これは、少なくとも二種のポリエステル成分で構成(具体的にはサイドバイサイド型又は偏芯芯鞘型に接合されたものが多い)されているものであり、少なくとも一成分がポリトリメチレンテレフタレートであるものであり、熱処理によって捲縮を発現するものである。二種のポリエステル成分の複合比(一般的に質量%で70/30〜30/70の範囲内のものが多い)、接合面形状(直線又は曲線形状のものがある)は特に限定されない。該繊維の総繊度及び単繊度も同じく限定されるものではないが、総繊度としては、20〜350dtex、単繊度としては0.2〜20dtexが好ましく用いられる。
【0017】
即ち、二種のポリエステルポリマーをサイドバイサイド型又は偏芯芯鞘型に接合された複合繊維であり、サイドバイサイド型の場合、二種のポリエステルポリマーの溶融粘度比が、1.00〜2.00が好ましく、偏芯芯鞘型の場合は、鞘ポリマーと芯ポリマーのア
ルカリ減量速度比は、3倍以上鞘ポリマーが速いことが好ましい。具体的なポリマーの組み合わせとしては、ポリトリメチレンテレフタレート(テレフタル酸を主たるジカルボン酸とし、1.3−プロパンジオールを主たるグリコール成分とするポリエステルであり、エチレングリコール、ブタンジオール等のグリコール類やイソフタル酸、2.6−ナフタレンジカルボン酸等のジカルボン酸等を共重合してもよい。又、他ポリマー、艶消剤、難燃剤、帯電防止剤、顔料等の添加剤を含有してもよい。)とポリエチレンテレフタレート(テレフタル酸を主たるジカルボン酸とし、エチレングリコールを主たるグリコール成分とするポリエステルであり、ブタンジオール等のグリコール類やイソフタル酸、2.6−ナフタレンジカルボン酸等のジカルボン酸等を共重合してもよい。又、他ポリマー、艶消剤、難燃剤、帯電防止剤、顔料等の添加剤を含有してもよい。)並びにポリトリメチレンテレフタレートとポリブチレンテレフタレート(テレフタル酸を主たるジカルボン酸とし、1.4−ブタンジオールを主たるグリコール成分とするポリエステルであり、エチレングリコール等のグリコール類やイソフタル酸、2.6−ナフタレンジカルボン酸等のジカルボン酸等を共重合してもよい。又、他ポリマー、艶消剤、難燃剤、帯電防止剤、顔料等の添加剤を含有してもよい。)が好ましく、特に繊維断面形において捲縮の内側にポリトリメチレンテレフタレートが配置されると好ましい。
【0018】
このように、少なくとも一成分がポリトリメチレンテレフタレートからなる潜在捲縮発現性ポリエステル繊維は、特開2001−40537号公報に開示されており、それ以外にも、特公昭43−19108号公報、特開平11−189923号公報、特開2000−239927号公報、特開2000−256918号公報、特開2000−328382号公報、特開2001−81640号公報等には、第一成分がポリトリメチレンテレフタレートであり、第二成分がポリトリメチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステルを並列的あるいは偏芯的に配置したサイドバイサイド型又は偏芯鞘芯型に複合紡糸したものが開示されている。特にポリトリメチレンテレフタレートと共重合ポリトリメチレンテレフタレート又はポリエチレンテレフタレートの組み合わせや、極限粘度の異なる二種類のポリトリメチレンテレフタレートの組み合わせが好ましい。
【0019】
2種類のポリトリメチレンテレフタレートからなる組み合わせの場合は、その固有粘度差は0.05〜0.4(dl/g)であることが好ましく、特に0.1〜0.35(dl/g)、さらに0.15〜0.35(dl/g)がよい。例えば高粘度側の固有粘度を0.7〜1.3(dl/g)から選択した場合には、低粘度側の固有粘度は0.5〜1.1(dl/g)から選択されるのが好ましい。尚、低粘度側の固有粘度は0.8(dl/g)以上が好ましく、特に0.85〜1.0(dl/g)、さらに0.9〜1.0(dl/g)がよい。
また、このポリトリメチレンテレフタレート系複合繊維の平均固有粘度は、0.7〜1.2(dl/g)がよく、0.8〜1.2(dl/g)がより好ましい。特に0.85〜1.15(dl/g)が好ましく、さらに0.9〜1.1(dl/g)がよい。
尚、本発明において潜在捲縮発現性ポリエステル繊維の紡糸は、前記のポリトリメチレンテレフタレート系繊維と同じ方法で紡糸する事ができる。
【0020】
本発明の、少なくとも一成分がポリトリメチレンテレフタレートからなる潜在捲縮発現性ポリエステル繊維は、初期引張抵抗度が10〜30cN/dtexであると好ましく、特に20〜30cN/dtexさらに20〜27cN/dtexがよい。尚、10cN/dtex未満のものは製造困難である。又、顕在捲縮の伸縮伸長率は10〜100%であると好ましく、特に10〜80%より好ましくは10〜60%である。更に、顕在捲縮の伸縮弾性率は80〜100%であることが好ましく、特に85〜100%より好ましくは85〜97%である。
【0021】
さらに、100℃における熱収縮応力が0.1〜0.5cN/dtexであることが好ましく、特に0.1〜0.4cN/dtexさらに0.1〜0.3cN/dtexであることが好ましい。100℃における熱収縮応力は、布帛の精錬、染色工程において捲縮を発現させるための重要な要件である。すなわち、布帛の拘束力に打ち勝って捲縮が発現するためには、10℃における熱収縮応力が0.1cN/dtex以上であることが好ましい。
【0022】
熱水処理後の伸縮伸長率は100〜250%であることが好ましく、より好ましくは150〜250%特に180〜250%である。熱水処理後の伸縮弾性率は90〜100%であることが好ましく、より好ましくは95〜100%である。
なお、本発明でいう固有粘度の値は、使用するポリマーではなく、紡糸されている糸の粘度を指す。この理由は、ポリトリメチレンテレフタレート特有の欠点としてポリエチレンテレフタレート等と比較して熱分解が生じ易く、高い固有粘度のポリマーを使用しても熱分解によって固有粘度が著しく低下し、複合マルチフィラメントにおいては両者の固有粘度差を大きく維持することが困難であるためである。
【0023】
本発明のポリトリメチレンテレフタレート系繊維は、長繊維が好ましい。長さ方向に均一なものや太細のあるものでも良く、断面においても丸型、三角、L型、T型、Y型、W型、八葉型、偏平(扁平度1.2〜5程度のもので、W型、I型、ブ−メラン型、波型、串団子型、まゆ型、直方体型等がある)、ドッグボーン型等の多角形型、多葉型、中空型や不定形なものでもよい。
糸条の形態としては、単糸デシテックスが0.1〜5デニール程度のマルチフィラメント原糸(極細糸を含む)、甘撚糸〜強撚糸、仮撚加工糸(POYの延伸仮撚糸を含む)、空気噴射加工糸、押し込み加工糸、ニットデニット加工糸等であっても良い。
【0024】
本発明の布帛には、羊毛繊維、絹等の天然繊維、またはアセテート繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維、ポリブチレンテレフタレート繊維、ナイロン繊維等を混用しても構わない。またその糸の太さは特に限定されず、布帛としての風合、機能性、製造面で適正な範囲であれば特に限定はない。一般的に地糸切れや摩擦溶融が問題に成りやすいという面では、ポリエチレンテレフタレート繊維やポリブチレンテレフタレート繊維との混用布帛で本発明の効果がより発揮される。
本発明の編地には、ポリトリメチレンテレフタレート系繊維が編地に対して、10〜100重量%未満の混率で混用されていることを特徴とする。混率が10%未満の場合には、風合いや、伸縮及び伸縮回復特性が悪く、特に布帛に面的伸縮を連続して与えた場合の生地歪が大きく、形態安定性に優れないものとなる。
【0025】
本発明のポリトリメチレンテレフタレート繊維と他素材の混用の方法にも特に限定はない。例えば、各々単独素材の糸を使用しても良いし、ポリトリメチレンテレフタレート繊維を芯に、他素材を鞘にしてCSYなどのカバリング糸として使用しても良い。
また、本発明布帛の織物、編物についてその組織や構造は特に限定されない。例えば、編物の場合、丸編地、経編地でも良い。他素材との交編の場合、その方法としては、引き揃えて給糸する方法、それぞれ単独でループを形成する方法、ループを形成せずに挿入する方法等が挙げられる。
織物の場合は、平組織、ツイル組織、厚み等は特に制限されない。一般的に地糸切れが発生し易いという面では、密度が高い程、厚みが大きい方が本発明の効果がより発揮される。
【0026】
布帛を構成する使用糸の繊度、編または織の組織、さらに目標とする風合、性能によって、密度、厚みは変るため、限定はできないが、編物の場合は、編密度(ループ個数/2.54cm)が、コース方向/ウェル方向=20〜90/20〜90の範囲、より好適に
はコース/ウェル=40〜70/40〜70の範囲である。20より粗い密度の編物では、地糸切れ発生懸念事態が低いと想定され、逆に90以上の密な密度の編物は、使用するポリトリメチレンテレフタレート繊維の総繊度から鑑みて、製編自体が困難と想定されるからである。
織物の場合には、その織密度(本/2.54cm)は、タテ90本〜250本、ヨコ40本〜150本の範囲が好適である。
本発明の布帛は、ポリトリメチレンテレフタレート繊維が含有される布帛の一般的工程で加工すれば良いが、最終の仕上げ加工時に、可縫性向上効果のある加工剤を付与させる必要がある。
【0027】
一般的に、ポリエステル系繊維布帛の可縫性を向上させ、地糸切れを防止するには、ポリエチレンワックス系の加工剤や、シリコーン系の加工剤を使用する。しかしながら、前記したようにポリエチレンテレフタレート繊維に比較し、ポリトリメチレンテレフタレート繊維は、約20℃低い融点の為に、摩擦熱の影響を受けやすく、場合によって地糸切れが発生し易い。従って付与する加工剤の水溶液濃度を上げて、剤付着率を上げで、地糸切れを防止する事が考えられるが、この場合、剤付着率が高い程、スナッギング性の低下及び堅牢度の低下が顕著になる。そこで、通常の加工剤使用範囲内で、地糸切れ防止の効果が高く、かつスナッギング低下や堅牢度低下を起こし難い加工剤の選択が必要となる。
【0028】
高融点のポリエチレンワックス系を主成分とする可縫性向上効果のある加工剤には、一般的にアニオン系界面活性剤の乳化剤とノニオン系界面活性剤の乳化剤が成分として混入している。上記の中で、本発明のポリトリメチレンテレフタレート繊維を10%以上含む布帛に対して、地糸切れ防止効果が高く、かつスナッギング及び堅牢度低下を起こしにくい加工剤としては、ノニオン系界面活性剤乳化剤の添加がないもの、あるいはより低比率であるために、そのイオン性が微アニオン〜アニオン性の加工剤が好適である。この加工剤の場合、吸水性の低下を防ぎ、またポリマークや、ボンディングなどの生地接着耐性低下も防止可能であり、スポーツ用途向け衣料で特に有効性が高い。
一方、シリコーン系を主成分とする可縫性向上効果のある加工剤の中では、そのイオン性が、微カチオン性または、微アニオン〜アニオン界面活性剤の乳化剤を使用した加工剤が好適である。
【0029】
これら加工剤の濃度は布帛の形態、組成等によっても変るが、スナッギング性や堅牢度を低下させない事を考慮すると、0.5〜2.0wt%程度が好適である。上記加工剤の付与方法としては限定されないが、一般的には、スプレー法、パッド法が好適である。加工剤付与後、乾熱処理をして、生地に加工剤を付着させる。その際の温度は140℃〜170℃、好ましくは150〜160℃である。
尚、可縫性向上の効果を有する加工剤を付着せしめる仕上工程において、必要に応じて、帯電防止剤や、吸水加工剤、抗菌剤等の機能加工剤を併用してもかまわない。
【0030】
また、スポーツ衣料等では、吸水速乾性が求められる事が多い。染色加工時に吸水加工剤を併用処理しても構わない。その場合、可縫性向上効果のある加工剤としては、前記記載の加工剤のうち、吸水性低下の少ないポリエチレンエマルジョン系加工剤を用いる事が好ましい。
また、同様にスポーツ衣料では、ボンディング縫製、ポリマーク接着が多々行われる。この場合も吸水速乾性機能発現時と同様、ポリエチレンエマルジョン系加工剤を用いる事が好ましい。
【0031】
本発明の布帛は、後述する評価方法による地糸切れの個数が5個以下であることを特徴とする。ここで、地糸切れ個数とはタテヨコ方向にそれぞれ測定した糸切れの個数値である。5個を超えると、縫製時、または着用時に穴明き現象が発生し易くなるため、地糸切
れ防止性能の観点で劣る。好ましくは3個以下である。
また本発明の布帛は、後述する評価方法によるバギング評価(繰り返し面伸長後の形態安定性評価)における、伸長終了直後の歪個数が20個以下である事を特徴とする。ここで歪個数とは、生地表面にマーキングした1cm×1cmのマス目のうち、伸長後に歪んで平坦になっていないマス目の個数のことである。
【0032】
また、本発明の布帛は、加工剤付与後であってもスナッギング性に優れる。加工剤を付与せず、水を浸漬した後、熱セットした場合に比べ、可縫性向上効果のある加工剤付与後のスナッギングの低下割合が1.5級以内であることが好ましい。ここで、スナッギング低下割合とは、可縫性向上効果のある加工剤付与後の布帛におけるスナッギング評価級数と、仕上げ加工剤を付与せずに水浸漬−セットされた布帛におけるスナッギング評価級数との差であり、経緯各々の差を求めた値である。低下割合が1.5級を超えると着用において、引っかかり等で糸が飛び出す、またはピリングが出やすくなる、さらには繰り返しの洗濯でケバ立ちやピリングが発生し易くなるという点が劣ることがある。より好ましくは1.0級以下である。
さらに、本発明の布帛は、例えばスポーツ衣料用途等に使用されるときに、吸水性が付与されていることが好ましい。後述する評価方法による初期及び洗濯10回後の吸水性が10秒以内であることが好ましい。10秒を超えると、吸水速乾性能の点が劣ることがある。より好ましくは2秒以下である。
【実施例】
【0033】
以下、実施例などにより本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例などにより何ら限定されるものではない。尚、実施例における評価は以下の方法により測定した。
(1)固有粘度
固有粘度[η](dl/g)は、次式の定義に基づいて求められる値である。
[η]=lim(ηr−1)/C
C→0
定義中のηrは純度98%以上のo−クロロフェノール溶媒で溶解したポリトリメチレンテレフタレート糸又はポリエチレンテレフタレート糸の稀釈溶液の35℃での粘度を、同一温度で測定した上記溶媒の粘度で除した値であり、相対粘度と定義されているものである。Cはg/100mlで表されるポリマー濃度である。
なお、固有粘度の異なるポリマーを用いた複合マルチフィラメントは、マルチフィラメントを構成するそれぞれの固有粘度を測定することは困難であるので、複合マルチフィラメントの紡糸条件と同じ条件で2種類のポリマーをそれぞれ単独で紡糸し、得られた糸を用いて測定した固有粘度を、複合マルチフィラメントを構成する固有粘度とした。
【0034】
(2)地糸切れ評価
巾25cm、長さ50cmのサイズに生地を2枚カットし、夫々を中表にして折り、輪を重ねて2枚を重ね、全部で4枚重ねの縫製用サンプルを作る。輪の部分から約1.5cmのところを長さ50cm方向に、下記条件で本縫い縫製する。縫製後、縫目部分を開いて生地を引張りながら揉む。これを縫い長さ全長行った後、縫い糸を解く。その後、4枚生地の全て(本縫い時の4枚重ねの生地一番上から、1枚目、2枚目、3枚目、4枚目の順とする)について、穴開きを確認し、その個数を数える。タテ方向、ヨコ方向に縫製された2サンプルについて穴開き個数を測定し、これらを足し合わせた個数を地糸切れ個数とする。
・速度 4000回転
・針 ♯11JN
・縫い糸 上糸/下糸 ♯50ポリエステルフィラメト糸
・環境 気温22−24℃ 湿度 38−43%RH
【0035】
(3)スナッギング性
JIS−l−1058 D3法に準拠する。なお、各サンプルについて仕上げ加工剤を付与しセットしたサンプルと、仕上げ加工剤を付与せずにセットした場合のスナッギング性測定を行い、その差からスナッギングの低下割合(加工剤付与無しサンプルのスナッギング級数−加工剤付与サンプルのスナッギング級数)を求めた。
【0036】
(4)吸水性
JIS−L−1018 A法滴下法に準拠して、未洗濯と、洗濯10回後の生地の吸水性を測定した。尚、洗濯方法は以下とした。
・洗剤 アタック
・2槽式洗濯機使用 増量布を入れ、浴比1:30とした
・5分洗い−2分注水すすぎ−2分ためすすぎ−脱水30秒 工程の10回まとめ洗い実施。
【0037】
(5)バギング評価(繰り返し面伸長後の形態安定性評価)
巾23cm、長さ28cmに生地をカットする。この時生地のタテ方向が長さ方向になるようにカットする。幅両端各1cmは縫い代に利用する。巾中央より右半面に1cm×1cm角のマス目を書く。中表にして、縫い代1cmを本縫いし、これをひっくり返して筒状のサンプルを作成する。中に屈曲骨組みとエステルスムース編地を2cm角に切った生地を詰めた円周21cm、長さ21cmの円筒状の冶具をこの筒状サンプル中に入れ、上下両端を生地の上からゴムバンドで固定する。この冶具をデッマッチャーに取り付け、屈曲角60℃の屈曲を1万回繰り返す。尚、生地を冶具に被せる際、曲げ延ばされる外側に1cm×1cm角のマス目を書いた右側の生地がくるようにする。
1万回屈曲後直ぐに、生地を冶具から外し、縫糸を解く。生地を平面台の上に置いた直後(1分以内)の、歪のために平坦にならないマス目個数を測定する。これをバギング評価直後の歪個数とする。さらに、この生地を平面台に静置してから10時間後の歪マス目個数を測定する。マス目の書いていない左半面は、屈曲時の際曲げ内側になり、これは肘や膝の内側で発生するシワの度合いを表すものである。AATCCのシワ判定版と比較して上記と同様に、屈曲1万回直後、及び10時間静置後のシワの度合いを級判定する。
【0038】
〔実施例1〕
固有粘度の異なる二種類のポリトリメチレンテレフタレートを比率4:6でサイドバイサイド型に押出し、紡糸温度265℃、紡糸速度1500m/分で未延伸糸を得、次いでホットロール温度55℃、ホットプレート温度140℃、延伸速度400m/分、延伸倍率は延伸後の繊度が84dtexとなるように設定して延撚し、40dtex/24fのサイドバイサイド型複合マルチフィラメントの原糸を得た。尚、紡糸したポリトリメチレンテレフタレート繊の固有粘度は高粘度側が[η]=1.30、低粘度側が[η]=0.90であった。
【0039】
得られた糸の強伸度、2.0cN/dtex、30%であった。
このサイドバイサイド型複合ポリトリメチレンテレフタレート糸40dtex/24fの原糸と、W型断面と丸断面のポリエチレンテレフタレート繊維の混繊糸90dtexとを用いてかのこ組織の編地を作成した。ポリトリメチレンテレフタレート繊維とポリエチレンテレフタレート繊維の比率は33%対67%であった。
該編地を連続精練機で精練した後、160℃で中間セットし、ポリエステル系吸水加工剤を併用して分散染料にて130℃で染色、還元洗浄後、脱水後開反して乾燥させた。その後以下のP加工剤分散液に浸漬後、マングルでピックアップ70%に調節して絞液後、150℃×1.5分間のファイナルセットを行い、56コース、54ウェルの編物を得た。
【0040】
<仕上げ加工水溶液>
サンマリナーTS155GT 1.5%(剤のイオン性:アニオン性)
〔日華化学(株)製 可縫性向上効果のポリエチレンエマルジョン加工剤 〕
ナイスポールFE22 1.0% 〔日華化学(株)製 帯電防止剤〕
得られた編物は、地糸切れがなく、仕上げ加工無時に対してのスナッギング低下の度合いが1.5級以内であった。また吸水性も良好なものであった。更に、形態安定性の評価では、歪割合が少なく、シワも少ないものであった。
【0041】
〔実施例2〕
実施例1で、仕上げ加工剤に、更に吸水性を付与する吸水加工剤(ナイスポールPR99)を添加した以外は全て同じとして、実施例2の編物を得た。得られた編物は、実施例同様地糸切れがなく、スナッギングの低下が少なく、かつ吸水性能が洗濯前後で1秒以下と吸水拡散・速乾性能に極めて優れるものであった。また形態安定性も実施例1同様良好なものであった。
【0042】
〔比較例1〕
実施例1で、ポリトリメチレンテレフタレート繊維の変わりにレギュラータイプ40dtex/24fのポリエチレンテレフタレート繊維を使用する以外は全て同じとして比較例1の編物を得た。得られた編物は、地糸切れ、スナッギング性、吸水性は良好なものの、形態安定性が著しく不良であった。
【0043】
〔比較例2〕
実施例1で、仕上げ時の加工剤水溶液を下記にする以外は全て同じとして、比較例2の編物を得た。この編物は、スナッギング性、吸水性及び形態安定性は良好なものの、可縫性向が不良で地糸切れの発生するものであった。
【0044】
<仕上げ加工水溶液>
メイカテックスHP600 2.0% (剤のイオン性:ノニオン性)
〔明成化学(株)製 可縫性向上効果のポリエチレンエマルジョン加工剤 〕
ナイスポールFE22 1.0% 〔日華化学(株)製 帯電防止剤〕
【0045】
〔比較例3〕
比較例2で、仕上げ時の加工剤水溶液を下記にする以外は全て同じとして、比較例3の編物を得た。この編物は、地糸切れ及び形態安定性は良好なものの、スナッギング性の低下が顕著で、レベル的にも非常に悪く、吸水性も悪く、またかなりヌメリ感の強いものであった。
【0046】
<仕上げ加工水溶液>
メイカテックスHP600 4.0% (剤のイオン性:ノニオン性)
〔明成化学(株)製 可縫性向上効果のポリエチレンエマルジョン加工剤 〕
ナイスポールFE22 1.0% 〔日華化学(株)製 帯電防止剤〕
【0047】
〔実施例3〕
実施例1で仕上げ時の加工剤水溶液を下記にする以外は全て同じとして、実施例3の編物を得た。
この編物は、地糸切れがなく、スナッギング性も良好で、また吸水性、形態安定性にも優れるものであった。
ニッカシリコーンDM100E 0.5%(剤のイオン性:アニオン性)
〔日華化学(株)製 可縫性向上効果のシリコーンエマルジョン加工剤 〕
ナイスポールFE22 1.0% 〔日華化学(株)製 帯電防止剤〕
【0048】
〔実施例4〕
実施例1で仕上げ時の加工剤水溶液を下記にする以外は全て同じとして、実施例4の編物を得た。
この編物は、地糸切れがなく、スナッギング性及び形態安定性に優れるものであった。
松本シリコーンソフナーN−800 0.7%(剤のイオン性:微カチオン性)
〔松本油脂製薬(株)製 可縫性向上効果のシリコーンエマルジョン加工剤 〕
ナイスポールFE22 1.0% 〔日華化学(株)製 帯電防止剤〕
【0049】
〔比較例4〕
比較例2で、仕上げ時の加工剤水溶液を下記にする以外は全て同じとして、比較例4の編物を得た。この編物は、形態安定性は良好なものの、可縫性が悪く、地糸切れ個数が多く、スナッギング性の低下も若干大きく、ヌメリ感の強いものであった。
【0050】
<仕上げ加工水溶液>
シリコーラン810MF−50 1.5%(剤のイオン性:ノニオン性)
〔一方社油脂工業(株)製 可縫性向上効果のシリコーンエマルジョン加工剤 〕
ナイスポールFE22 1.0% 〔日華化学(株)製 帯電防止剤〕
【0051】
〔実施例5〕
固有粘度[η]0.92のポリトリメチレンテレフタレートを紡糸温度265℃、紡糸速度1200m/分で未延伸糸を得、次いで、ホットロール温度60℃、ホットプレート温度140℃、延伸倍率3倍、延伸速度800m/分で延撚して、W型断面の84dtex/36fの延伸糸を得た。延伸糸の強伸度、弾性率並びに10%伸長時の弾性回復率は、各々3.3cN/dtex、46%、20cN/dtex並びに98%であった。このポリトリメチレンテレフタレート糸と84dtex36fのレギュラーポリエステル繊維の1ヒーター仮撚糸をグランドに用い、40/1コーマ綿をパイルに用いて、綿パイル編物を得た。ポリトリメチレンテレフタレート繊維とポリエチレンテレフタレート繊維と綿の比率は、10%対10%対80%であった。この編物を液流精練機中で、精練を行ったあと、分散染料にて130℃で染色、還元洗浄後、反応染料を用いて60℃で染色、ソーピング、次いで吸水性低下の少ないフィックス剤を用いて処理し、脱水後開反して乾燥させた。乾燥した編物を実施例1と同様の仕上げ処理を行い、42コース、34ウェルの実施例5の編物を得た。
得られた編物は、地糸切れが3個と良好で、スナッギングの低下が少なく、また吸水性も良好で、形態安定性にも優れるものであった。
【0052】
〔実施例6〕
固有粘度[η]0.92のポリトリメチレンテレフタレートを紡糸温度265℃、紡糸速度1200m/分で未延伸糸を得、次いで、ホットロール温度60℃、ホットプレート温度140℃、延伸倍率3倍、延伸速度800m/分で延撚して、丸断面の84dtex/36fの延伸糸を得た。延伸糸の強伸度、弾性率並びに10%伸長時の弾性回復率は、各々3.3cN/dtex、46%、20cN/dtex並びに98%であった。
経糸に56dtex48fのレギュラーポリエステル糸を用い、緯糸に上記ポリトリメチレンテレフタレート繊維を用いて平組織の織物を得た。該織物を連続精練機で精練した後、160℃で中間セット、次いで液流染色機中で分散染料で130℃染色を行い、還元洗浄後、脱水し150℃で一次乾燥を行った。次いで実施例4と同じ仕上げ加工を行い、経180本/吋、緯120本/吋の実施例6のタフタ織物を得た。
この織物は、風合がソフトで地糸切れがなく、スナッギングも良好で、かつ形態安定にも優れるものであった。
【0053】
〔比較例5〕
実施例6において、緯糸にポリトリメチレンテレフタレート繊維の代わりに84dtex36fのレギュラーポリエステル繊維を使用する以外は全て同じとして経175本/吋、緯118本/吋の比較例5のタフタ織物を得た。
この織物は、地糸切れやスナッギング性は良好だが、風合が硬く、形態安定性に非常に劣るものであった。
【0054】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明により、縫製時や、着用時の地糸切れがなく、また、摩擦溶融防止性に優れ、着用時のスナッギング性や、堅牢度の問題がなく、ヌメリ感やベタツキ感がないソフトで軽量で、かつ着用や、洗濯での形態安定性に優れたポリトリメチレンテレフタレート繊維含有布帛を提供する事ができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリトリメチレンテレフタレート繊維を10%以上含み、可縫性向上効果のある加工剤が付与された布帛であって、地糸切れの個数が5個以下であり、かつバギング評価直後の歪個数が20個以下であるポリトリメチレンテレフタレート繊維含有布帛。
【請求項2】
可縫性向上効果のある加工剤付与後のスナッギングの低下割合が1.5級以内である請求項1に記載のポリトリメチレンテレフタレート繊維含有布帛。
【請求項3】
初期及び洗濯10回後の吸水性が10秒以内である請求項1又は2に記載のポリトリメチレンテレフタレート繊維含有布帛。

【公開番号】特開2009−102765(P2009−102765A)
【公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−274713(P2007−274713)
【出願日】平成19年10月23日(2007.10.23)
【出願人】(302071162)ソロテックス株式会社 (45)
【Fターム(参考)】