説明

ポリヌクレオチド療法

【課題】動物内に存在するまたは非生理的プロセスに関係する一つ又は複数の自己タンパク質、自己ポリペプチド、または自己ペプチドに関連する動物内の疾患を治療または予防するための方法の提供。
【解決手段】疾患に関連する自己タンパク質、自己ポリペプチド、または自己ペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む自己ベクターを動物へ投与するステップを含む方法。自己タンパク質、自己ポリペプチド、または自己ペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む自己ベクターの投与により、自己ベクターの投与から発現する自己タンパク質、自己ポリペプチド、または自己ペプチドへの免疫応答が調節される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象内に存在して非生理的状態に関与する一つ又は複数の自己タンパク質、自己ポリペプチド、または自己ペプチドに関連する対象における疾患を治療するための方法および組成物に関する。本発明はまた、対象内に存在して非生理的状態に関与する一つ又は複数の自己タンパク質、自己ポリペプチド、または自己ペプチドに関連する対象における疾患を予防するための方法および組成物に関する。本発明はさらに、非生理的状態で存在して疾患に関連する自己タンパク質、自己ポリペプチド、または自己ペプチドの同定に関する。本発明はまた、非生理的状態で存在して疾患に関連する自己タンパク質、自己ポリペプチド、または自己ペプチドをコードするポリヌクレオチドの投与に関する。本発明はまた、動物内に存在して非生理的状態に関与し疾患に関連する自己タンパク質、自己ポリペプチド、または自己ペプチドへの免疫応答を調節することに関する。本発明はより詳細には、動物内に非生理的状態で存在する一つ又は複数の自己タンパク質、自己ポリペプチド、または自己ペプチドに関連する、多発性硬化症、慢性関節リウマチ、インスリン依存型糖尿病、自己免疫性ブドウ膜炎、原発性胆汁性肝硬変、重症筋無力症、シェーグレン症候群、尋常性天疱瘡、強皮症、悪性貧血、全身性エリテマトーデス(SLE)およびグレーブス病等の自己免疫疾患を治療または予防するための方法および組成物に関する。本発明はまた特に、動物内に非生理的状態で存在する一つ又は複数の自己タンパク質、自己ポリペプチド、または自己ペプチドに関連する、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、および伝染性海綿状脳症(クロイツフェルト・ヤコブ病と呼ばれる最も一般的な形態を有するプリオン病)等の神経変性疾患を治療または予防するための方法および組成物に関する。本発明はさらに詳細には、動物内に非生理的状態で存在する一つ又は複数の自己タンパク質、自己ポリペプチド、または自己ペプチドに関連する、変形性関節症、脊髄損傷、肥満症、高血圧、消化性潰瘍疾患、うつ病、痛風、偏頭痛、高脂質血症、および冠動脈疾患等の他の疾患に関する。本発明はさらに詳細には、例えば天然痘ワクチンの投与の結果として発生する一つ又は複数の自己タンパク質、自己ポリペプチドに関連する播種性脳脊髄炎等の疾患に関する。本発明はまた、非生理的状態の動物内に存在する自己タンパク質、自己ポリペプチド、または自己ペプチドに関連する疾患を治療または予防するための手段および方法に関する。本発明はさらに、動物内で非生理的に存在するまたは非生理的プロセスに関与する自己タンパク質、自己ポリペプチド、または自己ペプチドをコードするポリヌクレオチドの投与を含む動物の治療に関する。
【背景技術】
【0002】
2.自己免疫疾患および免疫応答の調節
自己免疫疾患とは、身体の健常な細胞および/または組織へ誤って向かう適応免疫によって惹起されるあらゆる疾患である。自己免疫疾患は、米国人口の3%、そしておそらく工業世界人口の同様のパーセンテージに影響を及ぼしている(Jacobsonら、Clin Immunol Immunopathol 84,223-43,1997)。自己免疫疾患は、身体内の器官、組織、もしくは細胞タイプ(例えば、膵臓、脳、甲状腺もしくは消化管)の傷害および/または機能不全を惹起して疾患の臨床発現を誘発する、自己タンパク質、自己ポリペプチド、自己ペプチド、および/または他の自己分子を誤って標的とするTリンパ球およびBリンパ球を特徴とする(Marrackら、Nat Med 7,899-905,2001)。自己免疫疾患には、特定組織に影響を及ぼす疾患ならびに複数の組織に影響を及ぼしうる疾患が含まれる。これは、一部の疾患についてはある程度、自己免疫応答が特定組織に限定される抗原に向かうのか、または身体内に広く分布する抗原に向かうのかに左右されうる。組織特異的自己免疫に特徴的な特性は、単一組織または個別細胞タイプの選択的ターゲティングである。それでも、偏在性自己タンパク質を標的とする一定の自己免疫疾患が特定組織に影響を及ぼす場合もある。例えば、多発性筋炎では、自己免疫応答の標的は偏在性タンパク質のヒスチジル-tRNAシンテターゼであるが、主として関連する臨床発現はやはり筋肉の自己免疫破壊である。
【0003】
免疫系は、哺乳類を様々な外来病原体から保護するための応答を発生しながら同時に自己抗原に対する応答を防止するように設計された、高度に複雑な機序を採用している。応答するかどうかを決定すること(抗原特異性)に加えて、免疫系は各病原体に対応するために適したエフェクター機能(エフェクター特異性)も選択しなければならない。これらのエフェクター機能を媒介および調節することにおいて重要な細胞は、CD4T細胞である。さらに、それはそれによってT細胞がそれらの機能を媒介する主要機序であると思われるCD4T細胞からの特異的サイトカインの同化作用である。そこで、CD4T細胞により産生されるサイトカインのタイプならびにそれらの分泌がどのように制御されるのかを特徴付けることは、免疫応答がどのように調節されるのかを理解するために極めて重要である。
【0004】
長期マウスCD4T細胞クローンからのサイトカイン産生の特徴付けは、10年以上も前に初めて発表された(Mosmannら、J.Immunol.136:2348-2357,1986)。これらの試験では、CD4T細胞がサイトカイン産生の別個の2つのパターンを生じることが証明され、これらはTヘルパー1(Th1)およびTヘルパー2(Th2)と名付けられた。Th1細胞は主としてインターロイキン-2(IL-2)、インターフェロン-γ(IFN-γ)およびリンホトキシン(LT)を産生するが、Th2クローンは主としてIL-4、IL-5、IL-6、およびIL-13を産生することが見いだされた(Cherwinskiら、J.Exp.Med.169:1229-1244,1987)。それからしばらく後に、また別のサイトカインIL-9およびIL-10がTh2クローンから単離された(Van Snickら、J.Exp.Med.169:363-368,1989)(Fiorentinoら、J.Exp.Med.170:2081-2095,1989)。最後に、IL-3、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、および腫瘍壊死因子-α(TNF-α)等のまた別のサイトカインがTh1およびTh2細胞のどちらからも分泌されることが見いだされた。
【0005】
自己免疫疾患には、上記の表に略述するように、身体内の様々な多数の器官および組織に影響を及ぼしうる広範囲の疾患が含まれる。(例えば、Paul W.E.(1999),Fundamental Immunology,Fourth Edition,Lippincott-Raven,New Yorkを参照されたい。)
【0006】
(表1)

【0007】
ヒト自己免疫疾患に対する現在の治療法には、糖質コルチコイド剤、細胞傷害剤、および最近開発された生物療法薬が含まれる。一般に、ヒト全身性自己免疫疾患の管理は経験的なものであり、満足できるものではない。ほとんどの場合、コルチコステロイド剤等の広域免疫抑制剤が広範囲の重症自己免疫障害および炎症性障害に使用されている。全身性自己免疫疾患の管理では、コルチコステロイド剤に加えて他の免疫抑制剤が使用されている。シクロホスファミドは、Tリンパ球およびBリンパ球両方の重度の枯渇ならびに細胞性免疫の障害を引き起こすアルキル化剤である。シクロスポリン、タクロリムス、およびミコフェノール酸モフェチルは、Tリンパ球抑制の特異的特性を備える天然産物であり、SLE、RA、ならびに程度は限定されるが脈管炎および筋炎を治療するために使用されてきた。これらの薬剤には重大な腎毒性が関連している。メトトレキセートは、疾患の進行を遅らせるという目的で、RAにおける「第二選択薬」としても使用されている。メトトレキセートは、多発性筋炎およびその他の結合組織疾患においても使用されている。これまでに試みられてきたその他のアプローチには、サイトカインの作用を遮断する、またはリンパ球を枯渇させることを目的としたモノクローナル抗体が含まれる(Fox D.A.Am.J.Med;99:82-88,1995)。多発性硬化症(MS)の治療法には、インターフェロンβおよびコポリマー1が含まれ、これらは再発率を20〜30%低下させるが、疾患の進行には大して影響を及ぼさない。MSはまた、メチルプレドニゾロン、他のステロイド剤、メトトレキセート、クラドリビン、およびシクロホスファミドを含む免疫抑制剤を用いて治療される。これらの免疫抑制剤は、MSの治療には極めて小さな効力しか持たない。慢性関節リウマチ(RA)に対する現行療法は、メトトレキセート、スルファサラジン、ヒドロキシクロロキン、ロイフロナミド、プレドニゾン、ならびに最近開発されたTNFαアンタゴニストであるエタナーセプトおよびインフリキシマブ等の免疫機能を非特異的に抑制または調節する薬剤を利用する(Morelandら、J Rheumatol 28,1431-52,2001)。エタナーセプトおよびインフリキシマブは、TNFαを全体的に遮断し、患者を敗血症に起因する死亡、慢性ミコバクテリア感染症の悪化、および脱髄事象の発生に対してより高感受性にさせる。
【0008】
器官特異的自己免疫の症例で、様々な多数の治療アプローチが試みられてきた。可溶性タンパク質抗原が、後に続くその抗原への免疫応答を阻害するために、全身性投与されてきた。このような療法には、実験的自己免疫性脳脊髄炎を有する動物および多発性硬化症を有するヒトへのミエリン塩基性タンパク質、その優性ペプチド、またはミエリンタンパク質の混合物の送達(Brockeら、Nature 379,343-6,1996;Critchfieldら、Science 263,1139-43,1994;Weinerら、Annu Rev Immunol 12,809-37,1994)、コラーゲン誘発性関節炎を有する動物および慢性関節リウマチを有するヒトへのII型コラーゲンまたはコラーゲンタンパク質の混合物の投与(Gumanovskayaら、Immunology 97,466-73,1999);(McKownら、Arthritis Rheum 42,1204-8,1999);(Trenthamら、Science 261,1727-30,1993)、自己免疫性糖尿病を有する動物およびヒトへのインスリンの送達(Pozzilli and Gisella Cavallo,Diabetes Metab Res Rev 16,306-7,2000)、および自己免疫性ブドウ膜炎を有する動物およびヒトへのS抗原の送達(Nussenblattら、Am J Ophthalmol 123,583-92,1997)が含まれる。このアプローチに関連する問題は、抗原の全身性注射により惹起されるT細胞不応症である。また別のアプローチは、T細胞受容体とMHC分子へ結合したペプチドとの特異的相互作用に基づくペプチド抗原の全身性投与のための合理的治療戦術を設計する試みである。糖尿病の動物モデルにおいてペプチドアプローチを使用した1つの試験では、結果としてペプチドに対する抗体産生が開発された(Hurtenbach Uら、J Exp.Med 177:1499,1993)。もう1つのアプローチは、T細胞受容体(TCR)ペプチド投与による免疫である。例えば、(Vandenbark AAら、Nature 341:541,1989)を参照されたい。さらにもう1つのアプローチは、ペプチドまたはタンパク質抗原の摂取による経口耐性の誘導である。例えば、(Weiner HL,Immunol Today,18:335 1997)を参照されたい。
【0009】
免疫応答は現在は、タンパク質、ポリペプチド、またはペプチドを単独で、またはアジュバント(免疫刺激剤)と組み合わせて送達することによって変化されている。例えば、B型肝炎ウイルスワクチンは、アジュバントとして機能する水酸化アルミニウム中で調製された非自己抗原である組み換えB型肝炎ウイルス表面抗原を含有している。このワクチンは、感染から保護するためにB型肝炎ウイルス表面抗原に対する免疫応答を誘導する。また別のアプローチには、病原体に対する宿主保護免疫応答を引き出すための、各々が非自己抗原である弱毒化型、複製欠損型、および/または非病原型のウイルスまたは細菌の送達が含まれる。例えば、経口ポリオワクチンは、臨床的疾患を誘発せずに、ポリオウイルス、外来抗原、または非自己抗原に対して効果的な免疫を誘導するために、ワクチン投与された個体において細胞に感染して複製する非自己抗原である弱毒化生ウイルスから構成される。または、不活化ポリオワクチンは、感染または複製することができず、皮下投与されてポリオウイルスに対する保護免疫を誘導する不活化ウイルスまたは「死滅」ウイルスを含有する。
【0010】
3.神経変性疾患
神経変性疾患は、すべてが神経細胞の緩徐進行性の破壊または変性を特徴とする中枢神経系疾患の範囲の広いカテゴリーである(Temlett,Curr Opin Neurol 9,303-7,1996);(Dickson,Curr Opin Neurol 14,423-32,2001);(Kaye,Neurology 51,S45-52;discussion S65-7,1998);(Prusiner,Proc Natl Acad Sci USA 95,13363-83,1998);(Cummingsら、Neurology 51,S2-17;discussion S65-7,1998);(Linら、Neuron 24,499-502,1999);(Chesebro,Neuron 24,503-6,1999);(Ross,Neuron 19,1147-50,1997);(Yankner,Neuron 16,921-32,1996);(Selkoe,Neuron 6,487-98,1991)。脳または脊髄内のニューロンの変性は、場合によっては重度の痴呆、異常な運動、振戦、歩行失調、または癲癇様活動を含む破壊的で永久的な臨床症状をもたらす。ほぼすべての神経変性疾患に共通するのは、全く自分の身の回りのことを自分でできなくなり、そして友人や家族を完全に認識できなくなる状況として発現しうる進行性痴呆である。
【0011】
これらの疾患のもう1つの一般的特徴は、そのいずれについても効果的な治療法がない点である。現在利用できる治療法の大部分は後期症状の支持療法に集中しており、これらの疾患の基礎にある病理生理学的原因に目を向けたものはない。例えば、パーキンソン病に対しては投薬が行われており、この疾患に結び付いた振戦を一時的に制御することにはたいてい有効であるが、進行性痴呆および脳黒質内のニューロン破壊を停止させるために効果的な薬剤はない(Jankovic,Neurology 55,S2-6,2000)。また別の例として、アルツハイマー病では、この疾患を特徴付ける進行性痴呆に対して利用できる治療法は最近までなかった。現在では、アルツハイマー病に使用するために数種のコリンエステラーゼ阻害薬が承認されている(Farlow and Evans,Neurology 51,S36-44;discussion S65-7,1998)(Hake,Cleve Clin J Med 68,608-9,613-4,616,2001)。これらの薬剤は、脳内で利用できる神経伝達物質であるアセチルコリンの量をおそらく増加させ、アセチルコリンを伝達物質として使用する特定ニューロンの機能改善をもたらすと思われる。これらの薬剤はすべて、概して、プライマリーエンドポイントが認知試験での改善である臨床試験ではわずかな有効性しか示していない。これらの薬剤はまた、アルツハイマー病の主要な病理生理学、つまり脳内のコリン作動性ニューロンの破壊には向けられていない。このため、神経変性疾患のいずれについても主要な病理的原因を目標とした現行療法は存在しない。
【0012】
神経変性疾患の大多数は、さらに共通して、変性プロセスによって最も大きな影響を受ける中枢神経系の領域内で凝集または蓄積した物質の所見を有している。細胞外または細胞内のいずれでも見られるこれらの異常な蓄積は、関連ニューロンの死および破壊の一因となる可能性がある。さらに、蓄積の特徴および組成は特定疾患に特異的である。例えば、アルツハイマー病における凝集物はアミロイドβ(Aβ)と呼ばれるタンパク質からなるが、他方パーキンソン病についてはα-シヌクレインと呼ばれるタンパク質から構成される(Dickson,Curr Opin Neurol 14:423-432,2001);(Cummingsら、Neurology 51,S2-17;discussion S65-7,1998)。このような凝集物の発生および蓄積を特徴とする神経変性疾患には、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、およびプリオン病が含まれる(Yankner,Neuron 16:921-32,1996);(Ross,Neuron 19:1147-50,1997)(Chesebro,Neuron 24:503-506,1999);(Dickson,Curr Opin Neurol 14:423-32,2001)。
【0013】
4.ポリヌクレオチド療法
遺伝子療法
「遺伝子療法」のためには、ペプチドおよび/またはポリペプチドをコードする裸のDNA、沈降促進剤およびトランスフェクション促進剤中に調製されたDNA、ならびにウイルスベクターを含むポリヌクレオチド治療薬が使用されている。遺伝子療法とは、タンパク質もしくはペプチドの発現を生じさせるため、宿主内の欠陥のあるもしくは不在のタンパク質もしくはペプチドを置換するため、および/または所望の生理的機能を強化するためのポリヌクレオチドの送達である。遺伝子療法には、治療目的で個体のゲノム内へDNAを組み込む方法が含まれる。遺伝子療法の例には、血友病のための凝固因子、重症複合型免疫不全症のためのアデノシンデアミナーゼ、家族性高コレステロール血症のための低密度リポタンパク質受容体、ゴーシェ病のためのグルコセレブロシダーゼ、α1-抗トリプシン不全症のためのα1-抗トリプシン、異常ヘモグロビン症のためのα-もしくはβ-グロビン遺伝子、および嚢胞性線維症のためのクロライドチャネルをコードするDNAの送達が含まれる(Verma and Somia,Nature 389,239-42,1997)。
【0014】
感染症を治療するためのDNA免疫
DNA免疫では、非複製転写ユニットが、宿主内の特異的免疫応答を誘導もしくは提供するタンパク質もしくはタンパク質セグメントの合成のためのテンプレートを提供することができる。裸のDNAの注射により、様々な微生物および腫瘍に対するワクチン接種が増強される(Robinson and Torres,Semin Immunol 9,271-83,1997)。ウイルス(B型肝炎ウイルス、ヒト免疫不全症ウイルス、ロタウイルスおよびインフルエンザウイルス)、細菌(結核菌)、および寄生虫(マラリア)内に存在する特異的タンパク質、すべての非自己抗原をコードするDNAワクチンが、これらの感染症を予防および治療するために、開発されつつある(Leら、Vaccine 18,1893-901,2000);(Robinson and Pertmer,Adv Virus Res 55,1-74,2000)。
【0015】
腫瘍を治療するためのDNA
腫瘍を治療するために、主要組織適合抗原クラスI、サイトカイン(IL-2、IL-12およびIFN-γ)、および腫瘍抗原をコードするDNAワクチンが開発されつつある(Wlazlo and Ertl,Arch Immunol Ther Exp 49:1-11,2001)。例えば、B細胞リンパ腫を排除してこれから保護するために、B細胞免疫グロブリンイディオタイプ(抗原結合領域)をコードするウイルスDNAが投与されてきた(Timmermanら、Blood 97:1370-1377,2001)。
【0016】
自己免疫疾患を治療するためのDNA免疫
他の研究者らは、自己免疫疾患を治療するための免疫分子をコードするDNA療法について記載してきた。そのようなDNA療法には、自己免疫応答を駆動する自己反応性T細胞のレベルを変化させるためのT細胞受容体の抗原結合領域をコードするDNAが含まれる(Waismanら、Nat Med 2:899-905,1996)(米国特許第5,939,400号)。多発性硬化症およびコラーゲン誘発性関節炎を予防するためには、自己抗原をコードするDNAを粒子に付着させ、遺伝子銃によって皮膚へ送達する。(国際公開公報第97/46253号;Ramshawら、Immunol.and Cell Bio.75:409-413,1997)。自己免疫疾患の動物モデルにおいて、接着分子、サイトカイン(TNFα)、ケモカイン(C-Cケモカイン)、およびその他の免疫分子(Fas-リガンド)をコードするDNAが使用されている(Youssefら、J Clin Invest 106:361-371,2000);(Wildbaumら、J Clin Invest 106:671-679,2000);(Wildbaumら、J Immunol 165:5860-5866,2000);(Wildbaumら、J Immunol 161:6368-7634,1998);(Youssefら、J Autoimmun 13:21-9,1999)。
【0017】
本発明の1つの目的は、動物内に存在して非生理的プロセスに関係している自己タンパク質、自己ポリペプチド、または自己ペプチドに関連する疾患を治療または予防するための方法を提供することである。本発明のもう1つの目的は、免疫系を概して損傷させない自己免疫疾患を治療または予防するための特異的方法を提供することである。本発明のさらにまた別の目的は、神経変性疾患を治療または予防するための特異的方法を提供することである。本発明のさらにまた別の目的は、動物内に非生理的に存在している自己タンパク質、自己ポリペプチド、または自己ペプチドに関連する疾患を治療または予防するための組成物を提供することである。本発明のさらにまた別の目的は、非生理的に存在して疾患に関連する自己タンパク質、自己ポリペプチド、または自己ペプチドを同定することである。本発明のこれらおよびその他の目的は、全体として本明細書から明白になるであろう。
【発明の概要】
【0018】
本発明の目的は、動物内に非生理的に存在する一つ又は複数の自己タンパク質、自己ポリペプチド、または自己ペプチドに関連する動物内の疾患を治療または予防するための新規方法であって、疾患に関連する自己タンパク質、自己ポリペプチド、または自己ペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む自己ベクターを動物へ投与するステップを含む方法によって遂行される。自己タンパク質、自己ポリペプチド、または自己ペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む自己ベクターの投与により、自己ベクターによって発現する自己タンパク質、自己ポリペプチド、または自己ペプチドへの免疫応答が調節される。治療される動物内に非生理的に存在する一つ又は複数の自己タンパク質、自己ポリペプチド、または自己ペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む組成物は、動物内に存在するおよび/または非生理的プロセスの標的である自己タンパク質、自己ポリペプチド、または自己ペプチドに関連する疾患を治療する際に有用である。本発明の発見は、非生理的に存在するまたは非生理的プロセスの標的とされる自己タンパク質、自己ポリペプチド、または自己ペプチドをコードするポリヌクレオチドの投与により、自己タンパク質、自己ポリペプチド、または自己ペプチドへの免疫応答が調節され、動物内に非生理的に含まれている自己タンパク質、自己ポリペプチド、または自己ペプチドに関連する疾患が治療されることであった。
【0019】
本発明の1つの局面では、多発性硬化症、慢性関節リウマチ、インスリン依存型糖尿病、自己免疫性ブドウ膜炎、原発性胆汁性肝硬変、重症筋無力症、シェーグレン症候群、尋常性天疱瘡、強皮症、悪性貧血、全身性エリテマトーデス(SLE)およびグレーブス病等の自己免疫疾患を治療または予防するための方法であって、自己免疫疾患と関連する自己タンパク質、自己ポリペプチド、または自己ペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む自己ベクターを動物へ投与するステップを含む方法が提供される。自己タンパク質、自己ポリペプチド、または自己ペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む自己ベクターの投与により、自己ベクターによって発現する自己タンパク質、自己ポリペプチド、または自己ペプチドへの免疫応答が調節される。本発明の1つの局面では、自己免疫疾患を予防するための自己タンパク質、自己ポリペプチド、または自己ペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む自己ベクターの投与経路は、皮膚への粒子媒介性の遺伝子銃送達法以外のものである。
【0020】
本発明の1つの局面では、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、および伝染性海綿状脳症(クロイツフェルト・ヤコブ病と呼ばれる最も一般的な形態を含むプリオン病)等の神経変性疾患を治療するための方法であって、神経変性疾患に関連する自己タンパク質、自己ポリペプチド、または自己ペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む自己ベクターを動物へ投与するステップを含む方法が提供される。自己タンパク質、自己ポリペプチド、または自己ペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む自己ベクターの投与により、自己ベクターによって発現する自己タンパク質、自己ポリペプチド、または自己ペプチドへの免疫応答が調節される。
【0021】
本発明はまた、疾患に関連する自己タンパク質、自己ポリペプチド、または自己ペプチドを同定するための、および自己タンパク質、自己ポリペプチド、または自己ペプチドへの免疫応答を調節するための手段および方法を提供する。
【0022】
本発明はまた、動物内に非生理的に存在する自己タンパク質、自己ポリペプチド、または自己ペプチドに関連する疾患を診断および監視するための手段および方法を提供する。
【0023】
本発明はまた、動物内に非生理的に存在する自己タンパク質、自己ポリペプチド、または自己ペプチドをコードするポリヌクレオチドを投与するステップを含む治療法を監視するための手段および方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1A】自己タンパク質プロテオリピドタンパク質(PLP)由来ペプチドをコードするDNAはT細胞増殖応答を低下させる。DNAワクチン接種マウスでは、PLP139-151に対するリンパ節細胞(LNC)増殖応答が低下した。疾患の急性期から回復した後、PLP139-151(A)または対照ベクターpTargeT(B)のどちらかをコードするDNAが注射された動物を致死させ、排液性LNCを単離した。これらの細胞は、様々な濃度のペプチドPLP139-151(四角形)または対照ペプチドPLP178-191(三角形)を用いた刺激によりインビトロで試験した。各5匹を含む動物群由来のプールしたLNCからの増殖応答は、3つ組のウエルの平均CPM±SDとして示した。コンカナバリンA(0.001mg/mL)刺激LNCのCPMは、A群については102,401およびB群については76,702であった。
【図1B】ELISA分析に基づくと、DNA免疫動物由来LNC中ではサイトカインレベルが低下する。EAEの急性期後、PLP139-151またはベクター(pTargeT)単独のどちらかをコードするプラスミドDNAによりワクチン接種された各5匹を含む動物群由来LNCを、免疫ペプチドPLP139-151を用いてインビトロで刺激した。ELISAによって上清中でγ-インターフェロン(ストライプ状のバー)またはIL-2(点状のバー)のレベルを試験し、既知の標準対照と比較した。結果はng/mLで表示した。
【図1C】RNase保護アッセイに基づくとDNA免疫動物由来LNC中ではサイトカインレベルが低下する。サイトカイン中mRNA検出のために、実験動物の脳由来RNAサンプルをマルチプローブRNase保護アッセイにより試験し、反応を5%ポリアクリルアミドゲル電気泳動により分析した。このゲルを試験ランの終了時に乾燥させ、X線フィルムに焼付けた。
【図2】自己タンパク質インスリンのペプチドをコードするDNAはNODマウスにおける糖尿病の発症を防止する。4週齢の前糖尿病性NODマウスの群をインスリンB鎖(残基9-23)の免疫優性ペプチド(インスリンB)、インスリンA鎖ペプチド(インスリンA)、ベクター単独(pcDNA)をコードするDNA自己ベクターにより治療した、または治療しなかった。
【図3】NODマウス由来LNC中のサイトカイン発現の定量的PCR測定。10μg/mLのインスリンB(9-23)ペプチドと一緒に培養したワクチン接種NODマウス由来膵LNCによるサイトカインレベルの定量的PCR測定。pcDNAまたはInsB-pcDNAのどちらかを用いて10日間隔で2回ワクチン接種したNODマウス由来膵LNCを2度目の注射の5日後に採取した。インスリンB(9-23)ペプチドの存在下で72時間かけて細胞を培養し、その後サイトカイン中mRNAレベルの定量的PCR分析のためにペレット化した。insB-pcDNAワクチン接種値(白抜きバー)を比較する標準として、pcDNA対照ワクチン接種レベル(黒塗りバー)を使用した。
【図4】アミロイドβをコードするDNAは保護抗アミロイドβ抗体力価を誘導する。アミロイドβ(Aβ)アミノ酸1-42をコードするDNAを用いてマウスを免疫し、2週間後に追加免疫した。治療前および2度目の免疫4週間後に血清を入手し、ELISA分析を実施して抗アミロイドβ力価を決定した。各動物の左のバーは治療前力価を表し、右のバーは治療後力価を表している。B1〜B4は、免疫刺激性CpG配列を含むリン酸緩衝食塩液(0.9mMのCa++を含有する)により治療された動物である。動物B5、A1およびA2は、免疫刺激性CpG配列を含むトリスEDTA(Ca++不含)中のアミロイドβをコードするDNAにより治療された動物である。A3〜A5は、免疫刺激性CpG配列を含むトリスEDTA(Ca++不含)中にDNA(pTARGET)だけを含有する自己ベクターにより治療された動物である。
【図5】自己タンパク質のオステオポンチンをコードするDNAによる治療は、EAEの発生率および重症度を低下させる。C57B6マウスは、完全フロイントアジュバント中のMOGp35〜55を用いたEAEの誘導前にオステオポンチンをコードするDNAにより治療した。EAEの臨床スコアは垂直軸上に表示した。
【図6】阻害性IMAによるポリヌクレオチド療法はPLP139-151媒介性EAEを抑制する。第0日に、7週齢の雌性SJL/Jマウスを、IFAおよび0.5mgの熱不活化結核菌からなる、CFAに乳化させたPBS中に溶解させた100μgのPLP139-151を皮下投与することにより免疫した。第7日に開始して、動物を臨床的に毎日採点した。第12日に、マウスの両大腿四頭筋へPBS中に溶解させた計0.1mLの0.25%塩酸ブピバカインを注射した。2日後、選択したマウスに、総量0.2mLのTE中に全長マウスPLP、MAG、MOG、およびMBPをコードする4種の個別pTARGET(各25μg)+全長マウスIL-4をコードする50μgのpTARGETプラスミドを両方の大腿四頭筋へ筋肉内注射した。DNA注射は6週間にわたり1週間間隔で投与した。初回DNA療法と同時点に、容量200μLのPBS中に溶解させた50μgのIMSを単独で、またはDNAポリヌクレオチド療法と一緒に腹腔内投与した。IMSは6週間にわたり1週間おきに投与した。
【図7】EAE治療群のサイトカインプロフィール。EAE疾患誘導の57日後、マウスを致死させ、各マウスから鼡径リンパ節および腋窩リンパ節を摘出し、各群毎にプールした。細胞を単離し、富裕化RPMI培地および10%FCS中に溶解させた10μg/mLのPLP139-151を用いて刺激した。3日後、ヒト-rIL2を用いて細胞をさらに3日間再刺激した。上清を収集し、BD Pharmingen製の標準マウス(A)IFN-γ、(B)IL-4および(C)IL-10 ELISAキットを使用するサンドイッチELIASAによってサイトカインプロフィールについて試験した。
【図8】DNAポリヌクレオチド療法およびIMSはNODマウスにおける糖尿病を治療する。NOD/Lt雌性マウスを7週齢で入手し、接近を制限した室内に収容した。ワンタッチ式ウルトラ血中グルコース監視システムを使用して、マウスの血中グルコースレベル(BGL)を10週齢から開始して週1回試験した。治療は、BGLが200〜250mg/dLになった時点に開始した。マウスは、15週齢で利用できるようになると各群へ連続的に加えた。マウスの両大腿四頭筋へはPBS中に溶解させた0.2mLの0.25%塩酸ブピバカインを注射した。2日後、マウスに、1)別個のpVAX1ベクター上で各々全長マウスプレプロインスリン-1およびプレプロインスリン-2をコードするDNAポリヌクレオチドを50μg/用量で;または2)個別pVAX1ベクター上で全長マウスプレプロインスリン-1およびプレプロインスリン-2+IL-4をコードするpVAX1プラスミドをコードする各DNAポリヌクレオチドを総量0.2mLのPBS中に溶解させて50μg/用量で両方の大腿四頭筋へ筋肉内注射した。注射は4週間にわたり1週間間隔で実施した。初回DNA療法と同時点に、容量200μLのPBS中に溶解させた50μgのIMSを単独で、またはDNAポリヌクレオチド療法と一緒に腹腔内投与した。IMSは4週間にわたり1週間間隔で投与した。糖尿病のパーセンテージは、250mg/dLを超える持続性BGLを有するマウスと規定した。
【発明を実施するための形態】
【0025】
発明の詳細な説明
本明細書に記載した本発明をより十分に理解できるように、以下の説明を記載する。
【0026】
本発明は、動物内に非生理的に存在する、または非生理的状態に関与する一つ又は複数の自己タンパク質、自己ポリペプチド、または自己ペプチドに関連する前記動物内の疾患を治療または予防するための方法であって、前記疾患に関連する1つ以上の自己タンパク質、自己ポリペプチド、または自己ペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む自己ベクターを前記動物へ投与するステップを含む方法を提供する。1つ以上の自己タンパク質、自己ポリペプチド、または自己ペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む自己ベクターの投与は、前記自己ベクターから発現する1つ以上の自己タンパク質、自己ポリペプチド、または自己ペプチドへの免疫応答を調節する。
【0027】
本発明の治療法または予防方法は、動物内に非生理的に存在する、および/または非生理的プロセスに関係する1つ以上の自己タンパク質、自己ポリペプチド、または自己ペプチドに関連するあらゆる疾患に対して使用できる。
【0028】
自己免疫疾患
動物内に非生理的に存在する1つ以上の自己タンパク質、自己ポリペプチド、または自己ペプチドに関連する自己免疫疾患の数種の例を以下の表に記載し、以下で説明する。
【0029】
(表2)


【0030】
多発性硬化症
多発性硬化症(MS)はCNSの最も一般的な脱髄障害であり、米国内では35万人、そして世界中では100万人が罹患している。症状の発現は、典型的には20〜40歳の間に起こり、片側性視覚障害、筋脱力、麻痺、運動失調、眩暈、尿失禁、構音障害、または精神障害(発生頻度の降順)の急性または亜急性発作として発現する。このような症状は、遅延性軸索伝導に起因する陰性伝導異常、および異所性インパルス発生(例えば、レルミット症候群)に起因する陽性伝導異常のどちらも引き起こす脱髄の限局性病変の結果として発生する。MSの診断は、時間的に離れており、神経学的機能不全の客観的な臨床的証拠を生じさせ、そしてCNS白質の別個の領域に関係する神経学的機能不全の少なくとも2回の明確な発作を含む病歴に基づく。MSの診断を支持する追加の客観的証拠を提供する臨床検査には、CNS白質病変の磁気共鳴イメージング(MRI)、IgGの脳脊髄液(CSF)オリゴクローナルバンド法、および異常な誘発反応が含まれる。ほとんどの患者は徐々に進行する再発性かつ反復性の疾患経過を経験するが、MSの臨床経過は個人間で大きく相違し、限定された数回までの軽度の発作から生涯にわたる劇症の慢性進行性疾患までに及ぶ。IFN-γを分泌する能力を備えるミエリン自己反応性T細胞の量的増加は、MSおよびEAEの病因と関連している。
【0031】
多発性硬化症および実験的自己免疫性脳脊髄炎等の自己免疫性脱髄疾患(EAE)の自己タンパク質、自己ポリペプチド、または自己ペプチド標的には、プロテオリピドタンパク質(PLP);ミエリン塩基性タンパク質(MBP);ミエリン乏突起神経膠細胞糖タンパク質(MOG);環状ヌクレオチドホスホジエステラーゼ(CNPase);ミエリン関連糖タンパク質(MAG)、およびミエリン関連乏突起神経膠細胞糖タンパク質(MBOP);α-B-クリスタリン(熱ショックタンパク質);例えばインフルエンザ菌、ヘルペスウイルス、B型肝炎ウイルス等のウイルスおよび細菌模倣ペプチド;OSP(乏突起神経膠細胞特異的タンパク質);シトルリン修飾MBP(6個のアルギニンがシトルリンへ脱イミン化(de-imminated)されているMBPのC8アイソフォーム)等からのエピトープを含むことができる。内在性膜タンパク質PLPはミエリンの主要な自己抗原である。PLP抗原性の決定因子は数種のマウス系統で同定されており、残基139-151、103-116、215-232、43-64および178-191を含む。少なくとも26個のMBPエピトープが報告されている(Meinlら、J Clin Invest 92,2633-43,1993)。顕著であるのは残基1-11、59-76および87-99である。数種のマウス系統で同定されている免疫優性MOGエピトープには残基1-22、35-55、64-96が含まれる。本明細書で使用する用語「エピトープ」は、動物の免疫系のB細胞またはT細胞のどちらかによって認識される特定の形状または構造を有する自己タンパク質、自己ポリペプチド、または自己ペプチドの一部分を意味すると理解されている。
【0032】
ヒトMS患者では、次のミエリンタンパク質およびエピトープが自己免疫T細胞およびB細胞応答の標的であると同定された。MS脳プラークから溶離された抗体はミエリン塩基性タンパク質(MBP)ペプチド83-97を認識した(Wucherpfennigら、J Clin Invest 100,1114-1122,1997)。別の試験は、MS患者のおよそ50%が末梢血リンパ球(PBL)T細胞のミエリン乏突起神経膠細胞糖タンパク質(MOG)に対する反応性(対照は6〜10%)を有し、20%がMBPに対する反応性(対照は8〜12%)、8%がPLPに対する反応性(対照は0%)、0%がMAGに対する反応性(対照は0%)を有することを見いだした。この試験では、MOG反応性患者10例中7例が、MOG1-22、MOG34-56、MOG64-96を含むペプチドエピトープ3個中1個に集中したT細胞増殖応答を有していた(Kerlero de Rosboら、Eur J Immunol 27,3059-69,1997)。T細胞およびB細胞(脳病変から溶離させたAb)応答はMBP 87-99に集中していた(Oksenbergら、Nature 362,68-70,1993)。MBP87-99では、アミノ酸モチーフHFFKはT細胞およびB細胞両方の応答にとって主要な標的である(Wucherpfennigら、J Clin Invest 100,1114-22,1997)。また別の試験は、残基MOBP21-39およびMOBP37-60を含むミエリン関連乏突起神経膠細胞塩基性タンパク質(MOBP)に対するリンパ球反応性を観察した(Holzら、J Immunol 164,1103-9,2000)。MS脳および対照脳を染色するためのMOGおよびMBPペプチドの免疫金コンジュゲートを使用すると、MBPペプチドおよびMOGペプチドの両方がMSプラーク結合Abによって認識された(Genain and Hauser,Methods 10,420-34,1996)。
【0033】
慢性関節リウマチ
慢性関節リウマチ(RA)は、世界人口の0.8%が罹患している慢性自己免疫性炎症性滑膜炎である。この疾患は、びらん性関節破壊を引き起こす慢性炎症性滑膜炎を特徴とする。RAはT細胞、B細胞およびマクロファージによって媒介される。
【0034】
RAにおいてT細胞が極めて重要な役割を果たすという証拠には、(1)滑膜を浸潤させるCD4+T細胞の優性、(2)シクロスポリン等の薬剤を用いたT細胞機能の抑制に関連する臨床的改善、および(3)RAと一定のHLA-DR対立遺伝子との関連、が含まれる。RAと関連するHLA-DR対立遺伝子は、ペプチド結合およびT細胞への提示に含まれるβ鎖の第3超可変領域内の67-74位でアミノ酸の類似配列を含有している。RAは、滑膜性関節に存在する自己タンパク質、または変性自己タンパク質を認識する自己反応性T細胞によって媒介される。自己抗原とも呼ばれる本発明の1つ以上の自己タンパク質、自己ポリペプチド、または自己ペプチドは、RAにおける標的であり、II型コラーゲン;hnRNP;A2/RA33;Sa;フィラグリン;ケラチン;シトルリン;gp 39を含む軟骨タンパク質;I型、III型、IV型、V型、IX型、XI型コラーゲン;HSP-65/60;IgM(リウマチ因子);RNAポリメラーゼ;hnRNP-B1;hnRNP-D;カルジオリピン;アルドラーゼA;シトルリン変性フィラグリンおよびフィブリンからのエピトープを含む。変性アルギニン残基(シトルリンを形成するために脱イミン化(de-iminated)されている)を含有するフィラグリンペプチドを認識する自己抗体が、高い比率のRA患者の血清中で同定されている。自己反応性T細胞およびB細胞応答は、どちらも一部の患者における同一の免疫優性II型コラーゲン(CII)ペプチド257-270に対して向かう。
【0035】
インスリン依存型糖尿病
ヒトI型もしくはインスリン依存型糖尿病(IDDM)は、膵ランゲルハンス島内のβ細胞の自己免疫性破壊を特徴とする。β細胞の枯渇は、血液中のグルコースレベルを調節する無能力を生じさせる。顕性糖尿病は、血中グルコースレベルが特定レベル、通常は約250mg/dLを超えて上昇すると発生する。ヒトでは、糖尿病が発現する前に長期の前症候性期間が先行する。この期間中には、膵β細胞機能の段階的消失が発生する。疾患の発生は、各々が本発明による自己タンパク質、自己ポリペプチド、または自己ペプチドの例であるインスリン、グルタミン酸デカルボキシラーゼ、およびチロシンホスファターゼIA2(IA2)に対する自己抗体の存在によって複雑になる。
【0036】
前症候性期間中に評価できるマーカーは、膵臓におけるインスリン炎の存在、膵島細胞抗体のレベルおよび頻度、膵島細胞表面抗体、膵β細胞上のクラスIIMHC分子の異常な発現、血中グルコース濃度、およびインスリンの血漿中濃度である。膵臓中のTリンパ球数、膵島細胞抗体数および血中グルコース値の増加は、インスリン濃度の低下と同様に、この疾患の指標である。
【0037】
非肥満糖尿病(NOD)マウスは、ヒトIDDMと共通する多数の臨床的、免疫学的、および組織病理学的特徴を備える動物モデルである。NODマウスは、高血糖症および顕性糖尿病を引き起こす膵島の炎症およびβ細胞の破壊を自然に発生する。CD4T細胞およびCD8T細胞はどちらも糖尿病が発生するために必要とされるが、各々が果たす役割は依然として判明していない。NODマウスが忍容できる条件下で、NODマウスへのタンパク質としてのインスリンまたはGADの投与はこの疾患を防止し、他の自己抗原への応答をダウンレギュレートすることが証明されている。
【0038】
血清中の様々な特異性を備える自己抗体の組み合わせの存在は、ヒトI型糖尿病にとって高度に感受性および特異性である。例えば、GADおよび/またはIA-2に対する自己抗体の存在は、対照血清からI型糖尿病を同定するために約98%感受性および99%特異的である。I型糖尿病患者の非糖尿病第1等親血縁者では、GAD、インスリンおよびIA-2を含む自己抗原3種中2種に対して特異的な自己抗体の存在は、5年間以内にI型DMの発症に対する>90%の陽性予測値を意味する。
【0039】
ヒトインスリン依存型糖尿病において標的とされる自己抗原は、1つ以上の自己タンパク質、自己ポリペプチド、または自己ペプチドチロシンホスファターゼIA2;IA-2β;65kDa形および67kDa形両方のグルタミン酸デカルボキシラーゼ(GAD);カルボキシペプチダーゼH;インスリン;プロインスリン;熱ショックタンパク質(HSP);glima38;膵島抗原69kDa(ICA69);p52;2種のガングリオシド抗原(GT3およびGM2-1);および膵島細胞グルコーストランスポーター(GLUT2)を含むことができる。
【0040】
ヒトIDDMは、現在は組み換えインスリンの注射またはポンプによる送達を誘導するための血中グルコースレベル監視によって治療されている。血中グルコースの適正なコントロールを達成するためには食事療法および運動療法が役立つ。
【0041】
自己免疫性ブドウ膜炎
自己免疫性ブドウ膜炎は、米国内の罹患患者数が40万人、新規症例の年間発生率が4万3千人と推定されている眼の自己免疫性疾患である。自己免疫性ブドウ膜炎は、現在はステロイド剤、メトトレキセートおよびシクロスポリン等の免疫抑制剤、静脈内免疫グロブリン、ならびにTNFα-アンタゴニストを用いて治療されている。
【0042】
実験的自己免疫性ブドウ膜炎(EAU)は、眼における神経網膜、ブドウ膜および関連組織を標的とするT細胞媒介性自己免疫疾患である。EAUは、ヒト自己免疫性ブドウ膜炎と多数の臨床的および免疫学的特徴を共有しており、完全フロイントアジュバント(CFA)中に乳化させたブドウ膜原性ペプチドの末梢投与によって誘導される。
【0043】
ヒト自己免疫性ブドウ膜炎における自己免疫応答の標的とされる自己タンパク質は、S抗原、光受容体間レチノイド結合タンパク質(IRBP)、ロドプシンおよびリカバリンを含むことができる。
【0044】
原発性胆汁性肝硬変
原発性胆汁性肝硬変(PBC)は、主として40〜60歳代の女性が罹患する器官特異的自己免疫疾患である。この年齢群で報告されている罹患率は、千人に1人に近い。PBCは、小さな肝内胆管の管壁に存在する肝内胆管上皮細胞(IBEC)の進行性破壊を特徴とする。これは、胆汁分泌の閉塞および妨害をもたらし、場合によっては肝硬変を惹起する。シェーグレン症候群、CREST症候群、自己免疫性甲状腺疾患および慢性関節リウマチを含む、上皮被覆/分泌系損傷を特徴とする他の自己免疫疾患との関連が報告されている。1つ以上の誘導抗原に関する関心は、50年以上にわたってミトコンドリアに集中しており、抗ミトコンドリア抗体(AMA)の発見をもたらした(Gershwinら、Immunol Rev 174:210-225,2000);(Mackayら、Immunol Rev 174:226-237,2000)。AMAはまもなく、臨床症状が現れる前の長期間にわたり90〜95%の患者血清中に存在するPBCの臨床検査による診断の基礎となった。ミトコンドリアにおける自己抗原反応性はM1およびM2と指定された。M2反応性は、48〜74kDaのコンポーネントのファミリーに向かう。M2は、2-オキソ酸デヒドロゲナーゼ複合体(2-OADC)の酵素の多数の自己抗原サブユニットを表しており、本発明の自己タンパク質、自己ポリペプチド、または自己ペプチドのまた別の例である。PBCの原因病理にピルビン酸デヒドロゲナーゼ複合体(PDC)抗原が果たす役割を同定した試験は、PDCがこの疾患の誘導に中心的役割を果たすという考えを支持している(Gershwinら、Immunol Rev 174:210-225,2000);(Mackayら、Immunol Rev 174:226-237,2000)。PBCの症例の95%において最も頻回な反応性は、PDC-E2に属するE2の74kDaサブユニットである。2-オキソグルタル酸デヒドロゲナーゼ複合体(OGDC)および分岐鎖(BC)2-OADCを含む、関連性があるが別個の複合体が存在する。3種の構成性酵素(E1、2、3)は、NADからNADHへ還元させながら2-オキソ酸基質をアシル補酵素A(CoA)へ形質転換させる触媒機能に寄与している。哺乳類PDCは、タンパク質XもしくはE-3結合タンパク質(E3BP)と呼ばれる追加のコンポーネントを含有する。PBC患者では、主要な抗原反応はPDC-E2およびE3BPに向かう。E2ポリペプチドは2つの縦列反復リポイルドメインを含有するが、E3BPは単一のリポイルドメインを有する。リポイルドメインは、PBCの多数の自己抗原標的内で見いだされており、本明細書では「PBCリポイルドメイン」と呼ぶ。PBCは、グルココルチコイド剤ならびにメトトレキセートおよびシクロスポリンAを含む免疫抑制剤を用いて治療される。
【0045】
実験的自己免疫性胆管炎(EAC)のマウスモデルは、非化膿性破壊性胆管炎(NSDC)およびAMAの産生を誘導する、雌性SJL/Jマウスにおける哺乳類PDCを用いた腹腔内(i.p.)感作を使用する(Jones,J Clin Pathol 53:813-21,2000)。
【0046】
その他の自己免疫疾患および関連する自己タンパク質、自己ポリペプチド、または自己ペプチド。重症筋無力症の標的となる自己抗原には、アセチルコリン受容体内のエピトープが含まれることがある。尋常性天疱瘡の標的とされる自己抗原には、デスモグレイン-3が含まれることがある。シェーグレン症候群抗原は、SSA(Ro);SSB(La);およびホドリンが含むことができる。尋常性天疱瘡の優性自己抗原は、デスモグレイン-3を含むことができる。筋炎のためのパネルには、tRNAシンテターゼ(例、トレオニル、ヒスチジル、アラニル、イソロイシル、およびグリシル);Ku;Scl;SSA;U1 Snリボ核タンパク質;Mi-1;Mi-1;Jo-1;Ku;およびSRPを含むことができる。強皮症についてのパネルは、Scl-70;セントロメア;U1リボ核タンパク質;およびフィブリラリンを含むことができる。悪性貧血についてのパネルは、内因子;および胃H/K ATPaseの糖タンパク質βサブユニットを含むことができる。全身性エリテマトーデス(SLE)についてのエピトープ抗原は、DNA;リン脂質;核抗原;Ro;La;U1リボ核タンパク質;Ro60(SS-A);Ro52(SS-A);La(SS-B);カルレチキュリン;Grp78;Scl-70;ヒストン;Smタンパク質;およびクロマチン等を含むことができる。グレーブス病エピトープについては、Na/I-シンポーター;甲状腺刺激ホルモン受容体;Tg;およびTPOを含むことができる。
【0047】
神経変性疾患
動物内に非生理的に存在する1つ以上の自己タンパク質、自己ポリペプチド、または自己ペプチドに関連する神経変性疾患のいくつかの例を以下の表に記載し、以下で説明する。
【0048】
(表3)

【0049】
アルツハイマー病
アルツハイマー病(AD)は、集団中で最も一般的な神経変性疾患である(Cummingsら、Neurology 51,S2-17;discussion S65-7,1998)。ADには65歳を超える人々のおよそ10%、85歳を超える人々のほぼ50%が罹患する。2025年までには、約2千2百万人がADに罹患すると推定されている。ADは、緩徐進行性の痴呆を特徴とする。ADの明確な診断は、死後に痴呆、神経原繊維錯綜、および老人斑の三主徴が見いだされた場合に下される。老人斑は、アルツハイマー病の患者の脳内で常に見いだされる。老人斑の主要な構成要素は、本発明の1つ以上の自己タンパク質、自己ポリペプチド、または自己ペプチドのまた別の例であるアミロイドβタンパク質(Aβ)(Iwatsuboら、Neuron 13:45-53,1994)(Lippaら、Lancet 352:1117-1118,1998)である。Aβは、細胞増殖、細胞接着、細胞情報伝達、および神経突起外殖を含む様々な生理学的役割を備える膜貫通糖タンパク質であるアミロイド前駆体タンパク質(APP)に由来する42アミノ酸ペプチドである(Sinhaら、Ann N Y Acad Sci 920:206-8,2000)。APPは、通常はAβドメイン内で切断されて分泌フラグメントを生成する。しかし、また別のプロセッシングはAPPの切断をもたらし、老人斑内で蓄積する可能性がある可溶性Aβを生成する。
【0050】
ADのための現行療法は、有効性が限られており、Aβ蓄積を標的とはしていない。現在利用できる薬剤は、脳内のシナプス後アセチルコリン濃度を増加させることを目的とする中心コリンエステラーゼ阻害薬である(Farlow and Evans,Neurology 51,S36-44;discussion S65-7,1998)(Hake,Cleve Clin J Med 68,608-9,613-4,616,2001)。これらの薬剤は、ほんの少数の認識パラメータにおいてのみわずかな臨床的有益性を提供する。ヒトAβに対するトランスジェニックマウスは、ヒトADと共通する多数の特徴を有することが証明されている(Gamesら、Nature 373:523-527,1995);(Hsiaoら、Science 274:99-102,1996)。これらのトランスジェニックマウスでは、Aβペプチドを用いた免疫は認識の改善および低下した組織病理に関する有効性を証明している(Morganら、Nature 408:982-985,2000);(Schenkら、Nature 400:173-177,1999)。これまでの試験は、アルツハイマー病の動物モデルにおけるペプチドワクチンを用いてAβに対する抗体反応を作り出すと、これらのモデルにおいて観察された異常な組織病理ならびに行動変化が回復することも証明している(Bardら、Nat Med 6:916-19,2000);(DeMattosら、Proc Natl Acad Sci USA 98:8850-8855,2001)。
【0051】
パーキンソン病
パーキンソン病は、10万人当たり128〜168人という高い罹患率を有する錐体外路運動系の神経変性疾患である(Schragら、Bmj 321:21-22,2000)。重要な臨床特徴は、安静時振戦、運動緩慢、固縮、および体位不安定性である。さらにまたその遠隔期では大半の症例において痴呆が発生する。病理生理学的特徴は、脳の錐体外路系内および特に黒質内のニューロン消失である。パーキンソン病患者の脳内の多数のニューロンは、レヴィ小体として知られる細胞内封入体を有している(Forno and Norville,Acta Neuropathol(Berl)34:183-197,1976)。レヴィ小体の主要な構成要素は、本発明の自己タンパク質、自己ポリペプチド、または自己ペプチドのまた別の例であるα-シヌクレインとして知られるタンパク質であることが見いだされている(Dickson,Curr Opin Neurol 14:423-432,2001)。α-シヌクレインを含有するレヴィ小体の蓄積は、疾患表現型と関連付けられてきた。
【0052】
パーキンソン病に対する現行療法は、疾患の結果として生じる症状に向けられているが、基礎にある原因には向けられていない(Jankovic,Neurology 55:S2-6,2000)。パーキンソン病に対して利用できる薬剤は、ドーパミン作動薬(例、カルビドパ/レボドパおよびセレギリン)、ドーパミンアゴニスト(例、ペルゴリドおよびロピニロール)、ならびにカテコール-o-メチル-トランスフェラーゼまたはCOMT阻害剤(例、エンテカポンおよびトルカポン)と分類されている。これらの療法はすべて、罹患したニューロンにおいて利用できるドーパミンの量を増加させることに向けられている。概して、これらの薬剤は最初は振戦および固縮等の運動症状の一部を低下させることにはほとんどの患者において有効であるが、黒質のニューロンの破壊を導く神経変性疾患の進行を弱めることには有効ではない。
【0053】
ハンチントン病
ハンチントン病は、常染色体優性方法で受け継がれ、ハンチントンと呼ばれる遺伝子内に含まれるCAGトリヌクレオチド反復配列の長さへの異常な伸長と連結している遺伝障害である(Cell 72,971-983 1993)。最も重要な臨床特徴は、舞踏病および進行性痴呆と呼ばれる異常な制御不能な運動からなる。病理生理学的には、線条体および大脳皮質内で選択的なニューロン死および変性が生じる。これらの領域内のニューロンは、本発明の別の自己タンパク質、自己ポリペプチド、または自己ペプチドである突然変異タンパク質のハンチントンの細胞内凝集体を蓄積させることが証明されており、この蓄積は疾患表現型と相関している(DiFigliaら、Science 277:1990-1993,1997);(Scherzingerら、Cell 90:549-558,1997);(Daviesら、Cell 90:537-548,1997)。
【0054】
現在は、ハンチントン病の症状または病因のいずれに対しても利用できる治療法はない。その結果、この疾患の患者は緩徐に進行し、最初の症状発現から平均17年後に不可避的に死亡する。
【0055】
プリオン病
伝染性海綿状脳症としても知られるプリオン病は、動物およびヒトが罹患する潜在的感染性疾患であり、脳の海綿状変性を特徴とする(Prusiner,Proc Natl Acad Sci USA 95,13363-83,1998)。この障害の最も一般的な形態は、クロイツフェルト・ヤコブ病とも呼ばれている。新種のクロイツフェルト・ヤコブ病と呼ばれるこの疾患の別の形態は、例えばウシからヒトへのような異種間感染によって発生すると考えられるので、公衆衛生にとって大きな影響を及ぼす。この障害群の臨床特徴には、急速に進行する痴呆、ミオクローヌス、衰弱、および運動失調が含まれる。病理生理学的には、文献では本発明の自己タンパク質、自己ポリペプチド、または自己ペプチドである正常プリオンタンパク質における構造変化がβシートタイプの構造内へのプリオンタンパク質の蓄積を誘発し、これが中枢神経系内で見られる変性を引き起こすと報告されている。現在は、プリオン病のために利用できる治療法はない。臨床経過は急速であり、通常は診断後2年以内に不可避的に死に至り、この経過を変化させる介入は不可能であった。
【0056】
その他の疾患
動物内に非生理的に存在する1つ以上の自己タンパク質、自己ポリペプチド、または自己ペプチドに関連するその他の疾患のいくつかの例を以下の表に記載し、以下で説明する。
【0057】
(表4)

【0058】
変形性関節症および変性関節疾患
変形性関節症(OA)には60歳を超えるヒトの30%が罹患し、ヒトの最も一般的な関節疾患である。変形性関節症は滑膜性関節の変性および不全を意味しており、関節軟骨の破壊が含まれる。
【0059】
軟骨は主として、剛性および負荷に抵抗する能力を提供するプロテオグリカン、ならびに張力および剪断強度への耐性を提供するコラーゲンから構成される。軟骨細胞は、その各々の単独または組み合わせが本発明の自己タンパク質、自己ポリペプチド、もしくは自己ペプチドである潜在性コラゲナーゼ、潜在性ストロメリシン、潜在性ゲラチナーゼ、組織プラスミノーゲンアクチベーターおよびその他の関連酵素を産生かつ分泌することにより代謝回転して正常軟骨を作り直す。メタロプロテイナーゼの組織阻害剤(TIMP)およびプラスミノーゲンアクチベーター阻害剤(PAI-1)を含む数種の阻害剤もまた軟骨細胞によって産生され、中性メタロプロテイナーゼ、組織プラスミノーゲンアクチベーター、およびその他の酵素の変性活性を制限する。これらの分解用酵素および阻害剤の単独または組み合わせは、本発明の1つ以上の自己タンパク質、自己ポリペプチド、または自己ペプチドである。これらの変性酵素および阻害剤は、正常軟骨のリモデリングおよび維持を整合させる。OAでは、このプロセスの調節不全は軟骨の悪化および分解を生じさせる。
【0060】
初期OAでは、コラーゲン繊維の配列およびサイズにおいて異常な変化が生じる。メタロプロテイナーゼ、カテプシン、およびプラスミンは、単独または組み合わせて本発明の1つ以上の自己タンパク質、自己ポリペプチド、または自己ペプチドであり、重大な軟骨マトリックスの消失を引き起こす。プロテオグリカンおよび軟骨の最初の軟骨細胞産生増加は関節軟骨が正常より肥厚化することを引き起こす。関節軟骨はその後、単独または組み合わせで本発明の自己タンパク質、自己ポリペプチド、または自己ペプチドであるコラゲナーゼ、ストロメリシン、ゲラチナーゼ、組織プラスミノーゲンアクチベーターおよびその他の関連酵素を含む分解用酵素の作用の結果として薄くかつ柔らかくなる。IL-1、カテプシン、およびプラスミンは、単独または組み合わせて軟骨の変性および破壊を促進する、本発明の1つ以上の自己タンパク質、自己ポリペプチド、または自己ペプチドである。より柔らかくより薄い軟骨は、機械的ストレスによる損傷にはるかに高感受性である。これらの要素は、軟骨表面の破壊および垂直裂の形成(筋線維細動)を引き起こす。軟骨表面で侵食が形成され、末期疾患では骨へ伸長する。軟骨細胞は初期には重複してクラスターを形成し、末期には軟骨は低細胞性となる。骨のリモデリングおよび肥大は、OAの重大な特徴である。
【0061】
OAのための現行療法には、関節を支持する筋肉を強化するための安静、物理療法、関節を安定させるための装具およびその他の支持装置、非ステロイド抗炎症薬、タイレノールならびにその他の鎮痛薬が含まれる。膝関節または股関節等の日常活動のために極めて重要な末期の関節の骨と骨が接触するOAでは、外科的関節置換術が実施される。
【0062】
肥満症
肥満症は、米国やその他の工業国が直面している主要な健康問題である。米国人口の20%が肥満症に罹患していると推定されている。肥満症は、脂肪組織の過剰である。長期間にわたりエネルギー摂取量がエネルギー消費量を超えると、過剰なカロリーが肥満組織として貯蔵され、肥満症が生じる。したがって、肥満症は摂取量増加および/または消費量低下の結果として発生する可能性がある。摂取量は、大脳皮質によって制御される複雑なプロセスである摂食行動に左右される。摂食中枢および満腹中枢を含む視床下部の別個の領域が、大脳皮質へ摂食の調節を促進するようにシグナルを送る。血中グルコース、インスリン、グリセロールおよびその他のレベルは、視床下部内の摂食中枢および満腹中枢が検出して摂食行動を調節するのに役立たせることができる。
【0063】
ヒトは、部分的には数種の機序によってカロリーの過剰摂取に適応することができる。炭水化物およびタンパク質の過剰摂取は、一部にはトリヨードチロニン(T3)の血漿レベルを増加させてリバースT3(rT3)のレベルを低下させる機序を通して安静時代謝率を増加させることによって補償できる。中心または末梢交感性流出の増大もまたカテコールアミン誘発性カロリー使用および熱産生を増加させる。食事性熱発生、もしくは食物に対する身体の発熱反応には、食事の摂取後数時間に渡る安静時代謝率を超える発熱および代謝性消費が含まれ、炭水化物または脂肪をベースとする食事よりタンパク質をベースとする食事の方が大きい。
【0064】
摂食行動および脂質生成は、複雑な機序によって制御される。シンデカン-3を含む分子が摂食を調節し、視床下部における摂食行動を増加させる(Reizesら、Cell 106:105-116,2001)。食物の摂取および代謝に大きな影響を及ぼす他の分子および受容体には、すべてが単独または組み合わせで本発明の1つ以上の自己タンパク質、自己ポリペプチド、または自己ペプチドであるオレキシン、ガラニン、コルチコトロフィン遊離因子、メラニン濃縮ホルモン、レプチン、コレシストキニン、ソマトスタチン、エンテロスタチン、グルカゴン様ペプチド1および2、ならびにボンベシンが含まれる。(Chiesiら、Trends Pharmacological Sciences,22:247-54,2001)。肥満症の動物モデルでは、これらの分子の数種のアンタゴニストまたはアゴニストは減量における有効性を証明した(Chiesiら、Trends Pharmacological Sciences,22:247-54,2001)。ペリリピンは脂肪細胞の脂質滴を被覆し、トリアシルグリセロール加水分解を調節し、さらにペリリピンによる妨害は食事誘発性肥満には耐性であるが正常耐糖能を備えるマウスを生じさせた(Tanseyら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,98:6494-99)。
【0065】
肥満症が二次的代謝状態または他の疾患状態に続発性である場合は、その二次的原因が治療される。原発性肥満は、カロリー摂取を低下させるための食事療法および摂食行動の修正、ならびに消費を増加させるための運動療法によって治療される。肥満症を治療するには、食欲抑制薬(アンフェタミン様薬剤)、甲状腺ホルモン剤、およびヒト絨毛性性腺刺激ホルモンが使用されてきた。病的肥満の重篤症例を治療するためには、外科的小腸パイパス術(空腸回腸短絡)も使用されている。
【0066】
脊髄損傷
米国内では毎年約1万1千例の脊髄損傷の新規症例が発生し、現在の総罹患者数は計18万3千〜23万例と推定されている(Stoverら、Arch Phys Med Rehabil 80,1365-71,1999)。脊髄損傷からの回復は極めて不良であり、壊滅的な不可逆性の神経学的障害を生じさせる。急性脊髄損傷に対する現行治療法は、例えば外科的介入による損傷部位の機械的安定化、および非経口ステロイド剤の投与からなる。これらの介入法は、脊髄損傷後の永久的麻痺の発生率を低下させるためにはほとんど役に立たない。慢性脊髄損傷の治療法は、疼痛、痙縮、および膀胱機能の管理等のクオリティ・オブ・ライフの維持に集中している。神経学的機能を回復させるために現在利用できる治療法はない。
【0067】
このような脊髄損傷後の不良な回復の原因となる要素の1つは、ミエリン鞘における軸索再生阻害剤の存在である。これらの因子は損傷後まもなく放出され、軸索が機能的接続を再確立するために病変を超えて成長するのを妨害する。これらの軸索再生阻害剤の1つは、本発明の自己タンパク質、自己ポリペプチド、または自己ペプチドであるNogo-Aと呼ばれるタンパク質である(Huber and Schwab,Biol Chem 381,407-19,2000;Reilly,J Neurol 247,239-40,2000;Chenら、Nature 403,434-9,2000)。Nogo-Aは、インビトロで神経突起外殖を阻害することが証明されており、Nogo-Aに対する中和抗体はこの成長阻害特性を逆転させることが証明されている。さらに、Nogo-Aに対するモノクローナル抗体は、脊髄損傷の動物モデルにおいてインビボで軸索再生を促進することが証明されている(Raineteauら、Proc Natl Acad Sci USA 98,6929-34,2001;Merklerら、J Neurosci 21,3665-73,2001;Blochlingerら、J Comp Neurol 433,426-36,2001;Brosamleら、J Neurosci 20,8061-8,2000)。Nogo-Aは、主として大脳皮質および脊髄内の乏突起神経膠細胞内で発現する膜貫通タンパク質である。Nogo-A分子の2つの領域、つまり細胞外66アミノ酸ループおよびAS472と呼ばれる細胞質内C-末端領域が、この分子の阻害能力の原因である可能性があると同定されている。
【0068】
移植片対宿主病
ヒトにおける組織および臓器移植にとって最も大きな制限の1つはレシピエントの免疫系による組織移植片の拒絶である。ドナーとレシピエントとの間のMHCクラスIならびにII(HLA-A、HLA-B、およびHLA-DR)対立遺伝子がより高度に適合するほど、移植片の生存率が良好であることは明確に確認されている。移植片対宿主病(GVHD)は、同種造血細胞を含有する移植片を受領した患者において重大な罹病率および死亡率を引き起こす。造血細胞は、骨髄移植片、肝細胞移植片、およびその他の移植片中に存在する。HLAが適合する兄弟姉妹からの移植片を受領した患者のおよそ50%は中等度から重度のGVHDを発生し、その発生率は非HLA適合移植片でははるかに高くなる。中等度から重度のGVHDを発生した患者の3分の1は、その結果として死亡する。ドナー移植片中のTリンパ球およびその他の免疫細胞は、それらのアミノ酸配列においてポリペプチド変化、特にヒトにおける6番染色体上の主要組織適合性複合体(MHC)遺伝子複合体でコードされるタンパク質における変化を発現するレシピエント細胞を攻撃する。同種造血細胞を含有する移植片におけるGVHDに対して最も大きな影響を持つタンパク質は、高度に多形性の(個人間で広範なアミノ酸変化がある)クラスIタンパク質(HLA-A、-B、および-C)およびクラスIIタンパク質(DRB1、DQB1、およびDPB1)である(Appelbaum,Nature 411:385-389,2001)。MHCクラスI対立遺伝子がドナーとレシピエント間で血清学的に「適合」している場合でさえ、DNAシーケンシングにより症例の30%では対立遺伝子レベルのミスマッチが存在することが明らかになっており、これは適合するドナー-レシピエント対の場合でさえクラスI指向性GVHDが発生する根拠を提供している(Appelbaum,Nature 411,385-389,2001)。低組織適合性自己抗原GVHDは、頻回に皮膚、小腸、肝臓、肺、および膵臓への損傷を誘発する。GVHDは、グルココルチコイド、シクロスポリン、メトトレキセート、フルダラビン、およびOKT3を用いて治療される。
【0069】
組織移植拒絶反応
肺、心臓、肝臓、腎臓、膵臓、ならびにその他の器官および組織を含む組織移植に対する免疫拒絶反応は、移植された器官に対して向かう移植片レシピエントにおける免疫応答によって媒介される。同種移植器官は、移植片レシピエントのアミノ酸配列と比較したときに、それらのアミノ酸配列における変化を備えるタンパク質を含有している。移植器官のアミノ酸配列は移植片レシピエントのアミノ酸配列とは相違するために、それらは移植器官に対するレシピエントにおける免疫応答を頻回に誘発する。移植器官の拒絶反応は組織移植の主要な合併症かつ制限であり、レシピエントにおける移植器官の機能不全を引き起こす可能性がある。拒絶反応の結果として発生する慢性炎症は、移植器官において機能不全を頻回に引き起こす。移植片レシピエントは、現在は拒絶反応を防止および抑制するために様々な免疫抑制剤を用いて治療されている。これらの薬剤には、グルココルチコイド、シクロスポリンA、セルセプト、FK-506、およびOKT3が含まれる。
【0070】
ポリヌクレオチド療法-材料および方法
本発明を詳細に説明する前に、調製物または工程パラメーターは当然ながら変動することがあるので、本発明が特定の調製物または工程パラメーターに限定されないと理解されなければならない。さらにまた、本明細書で使用する用語は本発明の特定態様について説明することだけを目的としており、限定することは意図していないと理解されなければならない。
【0071】
本発明を実施する際には本明細書に記載したものと類似または同等の多数の材料および方法を使用できるが、本明細書では好ましい材料および方法を記載する。
【0072】
「自己ベクター」とは、総合すると一つ又は複数の自己タンパク質、自己ポリペプチド、自己ペプチドをコードするDNAまたはRNAのどちらかであるポリヌクレオチドを含む一つ又は複数のベクターを意味する。本明細書で使用するポリヌクレオチドは、本発明の自己タンパク質、自己ポリペプチド、または自己ペプチドをコードする、一連のDNAを含むデオキシリボ核酸またはRNAを含むリボ核酸のいずれか、およびそれらの誘導体である。自己タンパク質、自己ポリペプチド、または自己ペプチドをコードする配列は、適切なプラスミド発現自己カセット内に挿入される。自己タンパク質、自己ポリペプチド、または自己ペプチドをコードするポリヌクレオチドが発現自己カセット内に挿入されると、ベクターはその後は「自己ベクター」と呼ばれる。1つ以上の自己タンパク質、自己ポリペプチド、または自己ペプチドをコードするポリヌクレオチドを投与しなければならない症例では、単一自己ベクターが多数の別個の自己タンパク質、自己ポリペプチド、または自己ペプチドをコードしていてよい。1つの態様では、数種の自己タンパク質、自己ポリペプチド、または自己ペプチドをコードするDNAは、内部リボソームリエントリー配列(IRES)、または単一DNA分子から複数のタンパク質を発現させる他の方法を利用して単一自己プラスミド内で連続的にコードされる。1つ以上の自己タンパク質、自己ポリペプチド、または自己ペプチドをコードするDNA発現自己ベクターは、Qiagen Corporation社から市販で入手できるようなプラスミドDNAを単離するための市販で入手できる技術を使用して調製かつ単離される。DNAは、治療薬としてヒトへ送達するために、細菌内毒素を排除するように精製される。または、各自己タンパク質、自己ポリペプチド、または自己ペプチドは、個別のDNA発現ベクター上でコードされる。
【0073】
本明細書で使用する「自己タンパク質、自己ポリペプチド、または自己ペプチド」は、動物のゲノム内でコードされる;動物内で産生または生成される;動物の寿命内のいずれかの時点に翻訳後修飾できる;および動物内に非生理的に存在する、あらゆるタンパク質、ポリペプチドもしくはペプチド、またはそのフラグメントもしくは誘導体を意味する。本発明の自己タンパク質、自己ポリペプチド、または自己ペプチドを説明するために使用する際の用語「非生理的」または「非生理的に」とは、前記自己タンパク質、自己ポリペプチド、または自己ペプチドについて動物内での正常な役割またはプロセスからの逸脱または偏差を意味する。「疾患に関連して」または「疾患に関係して」自己タンパク質、自己ポリペプチド、または自己ペプチドについて言及する場合は、前記自己タンパク質、自己ポリペプチド、または自己ペプチドが形状または構造において修飾されてその生理的役割もしくはプロセスを実施できない可能性があること;または病理生理を誘発する、病理生理学的プロセスを媒介もしくは促進する、および/または病理生理学的プロセスの標的となるのいずれかによって状態もしくは疾患の病理生理学に関係している可能性があることを意味すると理解されなければならない。例えば、自己免疫疾患では、免疫系は自己タンパク質を異常に攻撃し、前記自己タンパク質が発現および/または存在する細胞および組織の損傷および機能不全を惹起する。または、自己タンパク質、自己ポリペプチド、または自己ペプチド自体が非生理的レベルで発現する、および/または非生理的に機能する可能性がある。例えば、神経変性疾患では、自己タンパク質が異常に発現し、脳内の病変で凝集し、神経機能不全を惹起する。その他の症例では、自己タンパク質は望ましくない状態またはプロセスを悪化させる。例えば、変形性関節症では、コラゲナーゼおよび基質メタロプロテイナーゼを含む自己タンパク質が関節面を被覆している軟骨を異常に退化させる。1つ以上の自己タンパク質、自己ポリペプチド、または自己ペプチドの翻訳後修飾の例は、グリコシル化、脂質基の付加、ホスファターゼによる脱リン酸化、ジメチルアルギニン残基の付加、ペプチジルアルギニンデイミナーゼ(PAD)によるフィラグリンおよびフィブリンのシトルリン化;α-B-クリスタリンリン酸化;MBPのシトルリン化;ならびにカスパーゼおよびグランザイムによるSLE自己抗原タンパク質分解である。免疫学的には、自己タンパク質、自己ポリペプチド、または自己ペプチドはすべてが宿主自己抗原と見なされ、正常な生理条件下では、「免疫寛容」と呼ばれるプロセスを通して自己抗原を認識する能力を有する免疫細胞の活性化の排除、不活化または欠如を通して宿主免疫系から無視される。抗原とは、免疫系によって、すなわちB細胞もしくはT細胞、またはその両方によって認識され得るあらゆる分子を意味する。自己タンパク質、自己ポリペプチド、または自己ペプチドには、免疫機能を調節する目的で免疫系の細胞によって生理的、特異的および排他的に発現する分子である免疫タンパク質、ポリペプチドまたはペプチドは含まれない。免疫系は、動物世界に存在する無数の潜在的病原性微生物に対して迅速に、高度に特異的に、そして保護的に反応する手段を提供する防衛機序である。1つ以上の免疫タンパク質、ポリペプチドまたはペプチドの例は、T細胞受容体、免疫グロブリン、I型インターロイキンを含むサイトカイン、インターフェロンおよびIL-10を含むII型サイトカイン、TNF、リンホトキシン、およびマクロファージ炎症タンパク質-1αおよびβ等のケモカイン、単球化学走性タンパク質およびRANTES、ならびにFas-リガンド等の免疫機能に直接関係するその他の分子を含むタンパク質である。本発明の自己タンパク質、自己ポリペプチド、または自己ペプチドに含まれる一定の免疫タンパク質、ポリペプチドまたはペプチドがあるが、それらはクラスIのMHC膜糖タンパク質、クラスIIのMHC糖タンパク質およびオステオポンチンである。自己タンパク質、自己ポリペプチド、または自己ペプチドには、代謝障害または機能障害を誘発する遺伝的または後天性不全症に起因する、全体的または実質的のいずれかで対象に欠如しており、前記タンパク質、ポリペプチドもしくはペプチドの投与または前記タンパク質、ポリペプチドもしくはペプチドをコードするポリヌクレオチドの投与のどちらか(遺伝子療法)によって置換されるタンパク質、ポリペプチドもしくはペプチドは含まれない。そのような障害の例には、デュシェンヌ型筋ジストロフィー、ベッカー型筋ジストロフィー、膿嚢線維症、フェニルケトン尿症、ガラクトース血症、メープルシロップ尿症、およびホモシスチン尿症が含まれる。自己タンパク質、自己ポリペプチド、または自己ペプチドには、(1)悪性腫瘍細胞のクローンを形成する遺伝的変化を備える単一細胞の増殖を意味するクローン性、(2)増殖が適正に調節されないことを表示する自律性、および(3)無形成、または正常に調整された細胞分化の欠如を含む、それらの正常対応物から区別する特徴を有する細胞が特異的かつ排他的に発現したタンパク質、ポリペプチドまたはペプチドは含まれない。前記の3つの基準中一つ又は複数を有する細胞は、新生細胞、癌細胞、または悪性腫瘍細胞と呼ばれる。
【0074】
本明細書で使用する「免疫応答の調節、免疫応答を調節する、または変化させる」とは、自己タンパク質、自己ポリペプチド、自己ペプチド、核酸もしくはそのフラグメントもしくは誘導体をコードするポリヌクレオチドの投与の結果として発生する、核酸、脂質、リン脂質、炭水化物、自己タンパク質、自己ポリペプチド、自己ペプチド、タンパク質複合体、リボ核タンパク質複合体、もしくはそれらの誘導体を含むがそれらに限定されない自己分子に対する既存または潜在的免疫応答のあらゆる変化に関係する。そのような調節には、免疫応答に関係する、または関係することのできるあらゆる免疫細胞の存在、能力または機能におけるあらゆる変化が含まれる。免疫細胞には、B細胞、T細胞、NK細胞、NK T細胞、プロフェッショナル抗原提示細胞、ノンプロフェッショナル抗原提示細胞、炎症細胞、またはその他の免疫応答に関係できる、もしくは影響を及ぼすことのできる細胞が含まれる。調節には、既存免疫応答、発生中の免疫応答、潜在的免疫応答、または免疫応答を誘導する、調節する、影響を及ぼす、もしくは免疫応答に反応する能力に付与されたあらゆる変化が含まれる。調節には、免疫応答の一部としての免疫細胞内の遺伝子、タンパク質および/または分子の発現および/または機能におけるあらゆる変化が含まれる。
【0075】
免疫応答の調節には、免疫細胞の排除、欠失、もしくは隔離;自己反応性リンパ球、APC、もしくは炎症細胞等の他の細胞の機能的能力を調節することのできる免疫細胞の誘導または生成;アレルギーと呼ばれる、免疫細胞における不応答状態の誘導;これらの細胞によって発現したタンパク質のパターンを変化させることを含むがそれに限定されない、免疫細胞の活性もしくは機能またはそれを行う能力を増加、減少または変化させることが含まれるが、それらに限定されない。例には、サイトカイン、ケモカイン、増殖因子、転写因子、キナーゼ、共刺激分子、もしくはその他の細胞表面受容体等の一定クラスの分子の産生および/または分泌;またはこれらの調節事象のあらゆる組み合わせが含まれる。
【0076】
例えば、1つ以上の自己タンパク質、自己ポリペプチド、または自己ペプチドをコードするポリヌクレオチドは、望ましくない免疫応答を媒介する、もしくは媒介することのできる免疫細胞を排除する、隔離する、または無効にすること;保護的免疫応答を媒介する、もしくは媒介することのできる免疫細胞を誘導する、生成する、または有効にすること;免疫細胞の物理的もしくは機能的特性を変化させること;またはこれらの作用の組み合わせによって免疫応答を調節することができる。免疫応答の調節の測定の例には、免疫細胞集団の存在もしくは不在の検査(フローサイトメトリー、免疫組織化学検査、組織学検査、電子顕微鏡、ポリメラーゼ連鎖反応);シグナルへ反応して増殖もしくは分割する能力もしくは抵抗性を含む免疫細胞の機能的能力の測定(抗-CD3抗体、抗-T細胞受容体抗体、抗-CD28抗体、カルシウムイオンフォレース、PMA、ペプチドもしくはタンパク質抗原を負荷した抗原提示細胞を用いた刺激後の3H-チミジン取り込みに基づくT細胞増殖アッセイおよびペプスキャン分析;B細胞増殖アッセイを使用するなど);他の細胞を死滅させるもしくは溶解する能力の測定(細胞毒性T細胞アッセイ等);サイトカイン、ケモカイン、細胞表面分子、抗体および細胞のその他の産物の測定(フローサイトメトリー、酵素結合免疫吸着検定法、ウェスタンブロット分析、タンパク質マイクロアレイ分析、免疫沈降分析);免疫細胞の活性化または免疫細胞内のシグナル経路の生化学的マーカーの測定(チロシン、セリンもしくはトレオニンリン酸化、ポリペプチド切断、およびタンパク質複合体の形成もしくは解離のウェスタンブロット分析および免疫沈降分析;タンパク質アレイ分析;DNAアレイまたはDNAサブトラクティブ・ハイブリダイゼーションを使用したDNA転写プロファイリング);アポトーシス、壊死もしくはその他の機序による細胞死の測定(アネキシンV染色、TUNELアッセイ、DNAラダリングを測定するためのゲル電気泳動、組織学検査;蛍光原カスパーゼアッセイ、カスパーゼ基質のウェスタンブロット分析);免疫細胞によって産生した遺伝子、タンパク質、およびその他の分子の測定(ノーザンブロット分析、ポリメラーゼ連鎖反応、DNAマイクロアレイ、タンパク質マイクロアレイ、二次元ゲル電気泳動、ウェスタンブロット分析、酵素結合免疫吸着アッセイ、フローサイトメトリー);ならびに非生理的自己タンパク質を含む自己免疫疾患、神経変性疾患およびその他の疾患の改善等の臨床転帰の測定(臨床的スコア、追加の療法使用の要件、機能的状態、イメージング試験)が含まれるが、それらに限定されない。
【0077】
本明細書で使用する「免疫調節配列(IMS)」とは、自己免疫疾患または炎症疾患を調節するデオキシヌクレオチド、リボヌクレオチド、またはそのアナログからなる化合物を意味する。IMSは、ベクター内に組み込まれたオリゴヌクレオチドまたはヌクレオチドの配列であってよい。「オリゴヌクレオチド」とは、複数のヌクレオチドを意味する。ヌクレオチドは、置換プリン(グアニン(G)、アデニン(A)、もしくはイノシン(I))または置換ピリミジン(チミン(T)、シトシン(C)、もしくはウラシル(U))のいずれかであってよいリン酸塩基および交換可能な有機塩基に結合した糖(好ましくはリボースもしくはデキシリボース)を含む分子である。オリゴヌクレオチドは、オリゴヌクレオチドおよびオリゴデオキシリボヌクレオチドの両方を意味しており、本明細書では以後はODNと呼ぶ。ODNにはオリゴヌクレオシドおよびポリマーを含有するその他の有機塩基が含まれる。オリゴヌクレオチドは、2つ以上の連結ヌクレオチドの鎖からのあらゆる長さの複数のヌクレオチドを含んでおり、そして何百万個もの連結ヌクレオチドを含有する染色体物質を含む。
【0078】
1つの局面では、本発明の免疫調節配列は以下の一次構造からなる合成オリゴヌクレオチドである。
5’-プリン-ピリミジン-[X]-[Y]-ピリミジン-ピリミジン-3’
または
5’-プリン-プリン-[X]-[Y]-ピリミジン-ピリミジン-3’;
(式中、XおよびYは、XおよびYがシトシン-グアニンではあり得ないことを除いて、あらゆる天然型または合成ヌクレオチドである)。
【0079】
IMSのコアヘキサマーは、あらゆる組成物または多数のヌクレオチドもしくはヌクレオシドに挟まれた5’および/または3’であってよい。好ましくは、IMSは長さが6〜100塩基対、および最も好ましくは長さが16〜50塩基対の範囲に及ぶ。IMSはさらにまた、100〜100,000塩基対の範囲に及ぶより大きなDNAの断片の一部として送達することもできる。IMSは、DNAプラスミド、ウイルスベクターおよびゲノムDNA内に組み込むことができる、または既にその中に現れることもある。最も好ましくは、IMSはサイズが6(フランキング配列なし)〜10,000塩基対以上の範囲に及ぶことがある。ヘキサマーコアを挟んで存在する配列は、いずれかの知られている免疫阻害配列(IIS)内に存在するフランキング配列に実質的に適合するように構成することができる。例えばフランキング配列

であり、このときTGACTGTGおよびAGAGATGAが配列を挟んでいる。また別の好ましいフランキング配列は、2回以上反復する個別ピリミジン、または長さが相違するピリミジン2つ以上の混合物としてのいずれかとして、一連の好ましいピリミジン(C、T、およびU)を組み込んでいる。阻害調節配列を試験するためには、様々なフランキング配列が使用されてきた。阻害性オリゴヌクレオチドについてのフランキング配列のまた別の例は、次の参考文献に含まれている。米国特許第6,225,292号および第6,339,068号、Zeunerら、Arthritis and Rheumatism,46:2219-24,2002。
【0080】
本発明の特定IMSには、以下のヘキサマー配列を含有するオリゴヌクレオチドが含まれる。
GGジヌクレオチドコアを含有する5’-プリン-ピリミジン-[X]-[Y]-ピリミジン-ピリミジン-3’IMS:

GCジヌクレオチドコアを含有する5’-プリン-ピリミジン-[X]-[Y]-ピリミジン-ピリミジン-3’IMS:

グアニンおよびイノシンとアデニンとの置換および/またはウリジンとシトシンまたはチミンとの置換は、前記のガイドラインに基づいて記載されたとおりに行うことができる。
【0081】
以前に開示された免疫阻害配列もしくはIISは、コアジヌクレオチドのCpGを含有する免疫刺激配列(ISS)活性を阻害することが証明された。米国特許第6,225,292号を参照されたい。このIISは、ISSの不在下では、本発明によって初めて、単独またはDNAポリヌクレオチド療法と組み合わせてのいずれかで自己免疫疾患を予防および治療することが証明された。このIISはコアヘキサマーAAGGTTを含有していた。その配列を本明細書では免疫調節配列もしくはIMSと呼ぶ。本発明のIMS内に含まれる類似モチーフを備える他の関連IISは、
GGジヌクレオチドコアを含有する5’-プリン-プリン-[X]-[Y]-ピリミジン-ピリミジン-3’IMS:

GCジヌクレオチドコアを含有する5’-プリン-プリン-[X]-[Y]-ピリミジン-ピリミジン-3’IMS:

である。
【0082】
3.グアニンおよびイノシンとアデニンとの置換および/またはウリジンとシトシンまたはチミンとの置換は、前記のガイドラインに基づいて記載されたとおりに行うことができる。
【0083】
オリゴヌクレオチドは、ゲノムDNA、プラスミドDNA、ウイルスDNAおよびcDNAを含む既存核酸起源から入手できるが、好ましくはオリゴヌクレオチド合成によって産生した合成オリゴヌクレオチドである。IMSは、一本鎖または二本鎖DNA、RNAおよび/またはオリゴヌクレオシドの一部であってよい。
【0084】
IMSは、優先的には、非メチル化GpGオリゴヌクレオチドを含有するオリゴヌクレオチドである。また別の態様には、一つ又は複数のアデニンまたはシトシン残基がメチル化されているIMSが含まれる。真核細胞では、典型的にはシトシンおよびアデニン残基はメチル化できる。
【0085】
IMSは安定化および/または非安定化オリゴヌクレオチドであってよい。安定化オリゴヌクレオチドとは、エキソヌクレアーゼ、エンドヌクレアーゼおよびその他の変性経路によるインビボ変性に対して比較的に耐性であるオリゴヌクレオチドを意味する。好ましい安定化オリゴヌクレオチドは修飾リン酸バックボーンを有しており、最も好ましい安定化オリゴヌクレオチドはその中で少なくとも1つのリン酸酸素が硫黄と置換されているホスホロチオエート修飾リン酸バックボーンを有する。メチルホスホネート、ホスホロチオエート、ホスホロアミデートおよびホスホロジチオネートのヌクレオチド間結合を含むバックボーンリン酸基修飾は、IMS上に抗菌特性を提供できる。IMSは、好ましくは安定化オリゴヌクレオチドであり、優先的にはホスホロチオエート安定化オリゴヌクレオチドを使用する。
【0086】
また別の安定化オリゴヌクレオチドには、荷電酸素がアルキル化されているアルキルホスホトリエステルおよびホスホジエステル;荷電リン酸酸素がアリール基もしくはアルキル基と置換されている非イオン性DNAアナログであるアリールホスホネートおよびアルキルホスホネート;または/およびヘキサエチレングリコールもしくはテトラエチレングリコール、または別のジオールを一方もしくは両方の末端で含有するオリゴヌクレオチドが含まれる。また別の立体配置を使用するとIMS内のヌクレオシド塩基へ糖成分を付加することができる。
【0087】
調節ジヌクレオチドを挟むIMSのヌクレオチド塩基は、知られている天然型塩基または合成非天然型塩基であってよい。オリゴヌクレオシドは、付着点として、すなわち1つ以上の自己脂質、自己タンパク質、自己ペプチド、自己ポリペプチド、自己糖脂質、自己炭水化物、自己糖タンパク質、および翻訳後修飾自己タンパク質、ペプチド、ポリペプチド、もしくは糖タンパク質を含む他の化合物に対して他の分子を付着もしくは結合させる手段として、または追加の免疫調節治療薬のための付着点として使用するために従来型技術を使用してIMS-ONの内部領域および/または末端内へ組み込むことができる。IMS-ONの塩基、糖成分、リン酸基および末端は、さらにまたIMS-ONの調節活性に追加して所望の特性を有するIMS-ONを構築するために、当業者には知られているあらゆる方法で修飾できる。例えば、あらゆる立体配置にあるIMS-ONのヌクレオチド塩基へ糖成分を付着させることができる。
【0088】
オリゴヌクレオチドへこれらのリン酸基修飾を行う技術は当技術分野において知られており、詳細な説明は必要としない。このような有用な技術を精査するためには、水性ヨウ素もしくは無水アミン等のその他の物質を用いて標的オリゴヌクレオチド産物のための中間リン酸トリエステルを調製して天然型リン酸トリエステルへ酸化させる。結果として生じるオリゴヌクレオチドホスホロアミデートを硫黄により処理すると、ホスホロチオエートを産生することができる。同様の一般的技術(硫黄処理ステップを除く)を適用すると、メチルホスホネートからメチルホスホアミダイトを産生することができる。ホスフェート基修飾技術に関する詳細については、当業者であれば、それらの開示がIMSの組成物および調製法に関する当技術分野における知識水準を例示する目的で本明細書に組み込まれている米国特許第4,425,732号;第4,458,066号;第5,218,103号および第5,453,496号、ならびにTetrahedron Lett.21:4149 25(1995),7:5575(1986),25:1437(1984)およびJournal Am.ChemSoc,93:6657(1987)を参照することができよう。
【0089】
特に有用なリン酸基の修飾は、IMS-ONオリゴヌクレオチドのホスホロチオエート形またはホスホロジチオエート形への転換である。ホスホロチオエートおよびホスホロジチオエートは、それらの未修飾オリゴヌクレオチド対応物よりインビボでの変性により耐性であり、これは本発明のIMS-ONを宿主により利用し易くさせる。
【0090】
IMS-ONは、当技術分野において周知の技術および核酸合成装置を使用して合成することができる。これに関する参考文献については、例えばAusubelら、Current Protocols in Molecular Biology,Chs.2 and 4(Wiley Interscience,1989);Maniatisら、Molecular Cloning:A Laboratory Manual(Cold Spring Harbor Lab,New York,1982);米国特許第4,458,066号および第4,650,675号を参照されたい。これらの参考文献は、合成オリゴヌクレオチドの製造に関する当技術分野における知識水準を例示するために参照として本明細書に組み入れられる。
【0091】
または、IMS-ONは競合ジヌクレオチドを天然型CpGモチーフおよびフランキングヌクレオチドと置換するために単離した微生物ISS-ODNの突然変異によって入手できる。核酸ハイブリダイゼーションに依存するスクリーニング方法は、適切なプローブまたは抗体を利用できることを前提に、あらゆる生体からあらゆるポリヌクレオチド配列を単離することを可能にする。問題のタンパク質をコードする配列の一部に一致するオリゴヌクレオチドプローブは、化学的に合成できる。これは、短いアミノ酸配列のオリゴペプチド伸長が分かっていなければならない。タンパク質をコードするDNA配列は遺伝コードからも推定することができるが、コードの縮重を考慮に入れなければならない。
【0092】
例えば、ISS含有ポリヌクレオチドを含有すると考えられるcDNAライブラリーは、cDNA由来の様々なmRNAを卵母細胞に注入し、十分な時間をかけてcDNA遺伝子産物を発現させ、そして所望のcDNA発現産物の存在について、例えば当該ポリヌクレオチドによってコードされるペプチドに特異的な抗体を使用して、または当該ポリヌクレオチドによってコードされるペプチドに特徴的な反復モチーフのためのプローブおよび組織発現パターンを使用して試験することによってスクリーニングすることができる。または、cDNAライブラリーはペプチドに特異的な抗体を使用して少なくとも1つのエピトープを有する当該ペプチドの発現について間接的にスクリーニングすることができる。このような抗体は、ポリクローナル由来またはモノクローナル由来どちらであってもよく、当該cDNAの存在を表示する発現産物を検出するために使用できる。
【0093】
ISS含有ポリヌクレオチドを入手すると、例えば従来型技術を使用する酵素的消化によって所望の長さへ短縮することができる。ISS-ODNオリゴヌクレオチド産物におけるCpGモチーフはその後、CpGモチーフに対して本発明の方法を使用して同定された「阻害性」ジヌクレオチドを置換するために突然変異させられる。既知の配列を有するDNAにおける特定部位での置換突然変異を作成するための技術は、周知であり、例えばPCRを通してのM13プライマー突然変異誘発である。IMSは非コーディングであるので、置換突然変異を作製する際にオープンリーディングフレームを維持することについての懸念はない。しかしながら、インビボで使用するために、ポリヌクレオチド出発物質であるISS-ODNオリゴヌクレオチド中間物またはIMS突然変異産物を実質的純粋に(すなわち、当業者が利用することができ、当業者が選択した技術を使用して可能な限り自然に発生する汚染物およびLPSを含んでいない)しなければならない。
【0094】
本発明のIMSは、単独で使用できる、またはシスもしくはトランス形で組み換え自己ベクター(プラスミド、コスミド、ウイルスまたはレトロウイルス)内に組み込み、順に組み換え発現ベクターによって送達できるあらゆる自己タンパク質、自己ポリペプチド、または自己ペプチドをコードする。便宜的には、IMSは好ましくは発現ベクター内に組み込まずに投与される。しかしながら、発現ベクター内への組み込みが所望の場合は、当業者に知られている従来型技術を使用してそのような組み込みを遂行できる。精査するためには、当業者であれば前記のAusubel,Current Protocols in Molecular Biologyを調査するであろう。
【0095】
手短かには、組み換え発現ベクターの構築には標準ライゲーション技術を使用する。構築されたベクター内の正確な配列を確認する分析には、ライゲーション混合物を使用して宿主細胞を転換させ、適切な場合は良好な形質転換体を抗生物質耐性によって選択することができる。形質転換体からのベクターは、例えばMessingらの方法(Nucleic Acids Res,9:309,1981)、Maxamらの方法(Methods in Enzymology,65:499,1980)または当業者には知られているであろう他の適切な方法によって調製され、制限によって分析され、および/またはシーケンシングされる。切断フラグメントのサイズ分離は、例えばManiatisら(Molecular Cloning,pp.133-134,1982)によって記載された従来型ゲル電気泳動法を使用して実施される。
【0096】
宿主細胞は、本発明の発現ベクターを用いて形質転換させ、プロモーターを誘導し、形質転換体を選択する、または遺伝子を増幅させるために適切な従来型栄養培地中で培養できる。温度、pH等の培養条件は、発現のために選択された宿主細胞と一緒に前に使用された培養条件であり、当業者には明白であろう。
【0097】
組み換え発現ベクターを本発明のIMS-ONのための担体として利用する場合は、病原性が欠如するためにプラスミドおよびコスミドが特に好ましい。しかし、プラスミドおよびコスミドはインビボではウイルスよりはるかに急速に変性してしまうので、このため炎症疾患または自己免疫疾患を予防または治療するための適正な用量のIMS-ONを送達することができない。
【0098】
ベクターを構築し、そして細胞をトランスフェクトおよび感染させるために使用する大多数の技術は当技術分野において広く実行されており、多くの当業者は特定条件および方法を記載している標準的な資源資料に精通している。
【0099】
「プラスミド」および「ベクター」は、小文字pおよびその後に続く文字および/または数字によって表示される。出発プラスミドは市販で入手できる、無制限で公的に入手できる、または公表された方法にしたがって入手できるプラスミドから構築することができる。さらに、前記に記載したプラスミドに等価のプラスミドは当技術分野において知られており、当業者には明白であろう。「ベクター」または「プラスミド」とは、宿主細胞内に存在する場合は適正な制御要素および調節要素を含むことによって複製できるあらゆる遺伝要素を意味する。本発明のためには、ベクターまたはプラスミドの例にはプラスミド、ファージ、トランスポゾン、コスミド、ウイルス等が含まれるが、それらに限定されない。
【0100】
本発明のベクターの構築は、当技術分野において明確に理解されている標準的ライゲーション技術および制限技術を使用する(例えば、Ausubelら(1987),Current Protocols in Molecular Biology,Wiley--InterscienceまたはManiatisら(1992),in Molecular Cloning:A laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory,ニューヨークを参照)。単離プラスミド、DNA配列、または合成オリゴヌクレオチドは、所望の形態で切断され、調整され、分類される。合成DNAを組み込んでいる全DNA構築物の配列は、DNA配列分析によって確認された(Sangerら(1977),Proc.Natl.Acad.Sci.74,5463-5467)。
【0101】
DNAの「消化」とは、DNA内の一定の配列である制限部位でのみ機能する制限酵素を用いたDNAの触媒的切断を意味する。本明細書で使用する様々な制限酵素は市販で入手でき、それらの反応条件、補因子およびその他の要件は当業者には知られている。分析のためには、典型的には約20μLのバッファー液中に溶解させた約2単位の酵素と一緒に1μgのプラスミドもしくはDNAフラグメントを使用する。または、DNA基質の完全消化を保証するために過剰な制限酵素を使用する。約37℃での約1時間〜約2時間のインキュベーション時間が有効であるが、変動は容認できる。各インキュベーション後、フェノール/クロロホルムを用いての抽出によりタンパク質を除去し、その後エーテル抽出を行い、さらにエタノールを用いた沈降法により水性フラクションから核酸を回収することができる。所望であれば、切断フラグメントのサイズ分離は、標準技術を使用したポリアクリルアミドゲルまたはアガロースゲル電気泳動によって実施できる。サイズ分離についての一般的説明は、Methods of Enzymology 65:499-560(1980)に記載されている。
【0102】
制限切断フラグメントは、50mMのTris(pH7.6)、50mMのNaCl、6mMのMgCl2、6mMのDTTおよび5〜10μMのdNTP中において20℃で約15〜25分間のインキュベーション時間を使用して、4種のデオキシヌクレオチドトリホスフェート(dNTP)の存在下で、大腸菌DNAポリメラーゼI(Klenow)の大きなフラグメントを用いて処理することにより平滑端にすることができる。Klenowフラグメントは5’付着端を埋めるが、4種のdNTPが存在する場合でさえ、一本鎖3’突出末端を噛み戻す。所望であれば、選択的修復は、付着端の性質によって指示される制限内で1種のdNTPだけを提供する、または選択されたdNTPを用いることによって実施できる。Klenowを用いての処理後、この混合物はフェノール/クロロホルムを用いて抽出し、エタノール沈降させる。適切な条件下でS1ヌクレアーゼまたはBal-31を用いての処理は、いずれかの一本鎖部分の加水分解を生じさせる。
【0103】
ライゲーションは次の標準条件および温度下において15〜50μLの容量で実施できる。0℃での20mMのTris-Cl(pH 7.5)、10mMのMgCl2、10mMのDTT、33mg/mlのBSA、10mM〜50mMのNaCl、および40μmのATP、0.01〜0.02(Weiss)単位のT4 DNAリガーゼ(「付着端」ライゲーション用)または14℃での1mMのATP、0.3〜0.6(Weiss)単位のT4 DNAリガーゼ(「平滑端」ライゲーション用)のいずれか。分子間「付着端」ライゲーションは、通常は33〜100μg/mLの総DNA濃度で実施する。分子間平滑端ライゲーションは、過剰モルのlinkersover端を使用して実施する。
【0104】
発現自己カセットは、宿主細胞内で機能的であるプロモーターを使用する。一般に、宿主細胞と適合する種由来のプロモーターおよび制御配列を含有するベクターが特定宿主細胞と一緒に使用される。原核宿主細胞と一緒に使用するために適したプロモーターには、実例としてはβ-ラクタマーゼおよび乳糖プロモーター系、アルカリホスファターゼ、トリプトファン(trp)プロモーター系ならびにtacプロモーター等のハイブリッドプロモーターが含まれる。しかし、その他の機能的細菌プロモーターが適切である。原核生物に加えて、酵母培養等の真核微生物もまた使用できる。サッカロミセス・セレビジエ、または一般的なパン酵母が最も一般的に使用される真核微生物であるが、他の多数の系統も一般に利用できる。哺乳類宿主細胞内のベクターからの転写を制御するプロモーターは、例えばポリオーマ、シミアンウイルス40(SV40)、アデノウイルス、レトロウイルス、B型肝炎ウイルスおよび好ましくはサイトメガロウイルス等のウイルスのゲノム、または例えばβ-アクチンプロモーターのような異種哺乳類プロモーターからのような様々な起源から入手できる。SV40ウイルスの初期および後期プロモーターは、便宜的にもSV40ウイルス複製起源も含有するSV40制限フラグメントとして入手する。ヒトサイトメガロウイルスの前初期プロモーターは、便宜的にもHindIII制限フラグメントとして入手する。当然ながら、本明細書では宿主細胞または関連種由来のプロモーターもまた有用である。
【0105】
本明細書で使用したベクターは、選択マーカーとも呼ばれる選択遺伝子を含有していてよい。選択遺伝子は、ベクターを用いて形質転換された宿主細胞の生存または増殖のために必要なタンパク質をコードする。哺乳類細胞にとって適切な選択マーカーの例には、ジヒドロ葉酸還元酵素遺伝子(DHFR)、オルニチンデカルボキシラーゼ遺伝子、多剤耐性遺伝子(mdr)、アデノシンデアミナーゼ遺伝子、およびグルタミンシンターゼ遺伝子が含まれる。このような選択マーカーが哺乳類宿主細胞内へ良好に運び込まれると、形質転換哺乳類宿主細胞は選択圧下に置かれれば生存できる。選択レジメンには広く使用される2つの別個のカテゴリーがある。第1カテゴリーは、細胞の代謝および補給された培地とは無関係に増殖する能力が欠如する突然変異細胞系の使用に基づいている。第2カテゴリーは、あらゆる細胞タイプで使用された選択スキームに関連する優性選択とも呼ばれ、突然変異細胞系の使用を必要としない。これらのスキームは、典型的には宿主細胞の増殖を停止させるための薬剤を使用する。新規遺伝子を有するそれらの細胞は薬剤耐性を有するタンパク質を発現し、その選択から生残するであろう。そのような優性選択の例は、薬剤のネオマイシン(Southern and Berg(1982),J.Molec.Appl.Genet.1,327)、ミコフェノール酸(Mulligan and Berg(1980),Science 209,1422)、またはヒグロマイシン(Sugdenら(1985),Mol.Cell.Bio.5,410-413)を使用する。前記に記載した3つの例は、各々適切な薬剤ネオマイシン(G418もしくはゲンチシン)、xgpt(ミコフェノール酸)またはヒグロマイシンに対する耐性を伝達するために真核性制御下で細菌遺伝子を使用する。
【0106】
「トランスフェクション」とは、DNAが機能的であってもその他の方法であっても発現し;DNAがさらに染色体外要素としてまたは染色体統合化のいずれかによって複製できるように、DNAを宿主細胞内へ導入することを意味する。他に特別に提供されない限り、宿主細胞を形質転換させるために本明細書で使用した方法は、Graham and van der Eb(1973),Virology 52,456-457のリン酸カルシウム共沈降法である。トランスフェクションのまた別の方法は、エレクトロポレーション、DEAE-デキストラン法、リポフェクションおよびバイオリスティックス法(Kriegler(1990)Gene Transfer and Expression:A Laboratory Manual,Stockton Press)である。
【0107】
本発明の自己ベクターは、医薬品として使用するためのポリヌクレオチド塩として調製できる。ポリヌクレオチド塩は、非毒性無機塩基または有機塩基を用いて調製できる。無機塩基性塩には、ナトリウム、カリウム、亜鉛、カルシウム、アルミニウム、マグネシウム等が含まれる。有機非毒性塩基には、第一級、第二級および第三級アミン等の塩が含まれる。そのような自己DNAポリヌクレオチド塩は、送達前に無菌水または食塩溶液等を用いて復元するために凍結乾燥形で調製できる。または、自己DNAポリヌクレオチド塩は、溶液、懸濁液、または送達用の水性もしくは油性賦形剤を含有する乳濁液中で調製できる。1つの好ましい態様では、DNAは生理的レベルのカルシウム(0.9mM)と一緒にリン酸緩衝食塩液中で凍結乾燥させ、その後で投与前に無菌水を用いて復元する。または、DNAは1mM〜2Mのより大量のCa++を含有する溶液中で調製する。DNAはさらにまた、特定イオン種の不在下でも調製できる。
【0108】
当業者には知られているように、本明細書に規定したように対象にポリヌクレオチドを送達するためには極めて様々な方法が存在する。「対象」とは、例えばヒト、非ヒト霊長類、ウマ、ウシ、イヌ、ネコ、マウス、ラット、モルモットまたはウサギ等のあらゆる動物を意味する。1つ以上の自己タンパク質、自己ポリペプチド、または自己ペプチドをコードするポリヌクレオチドは、カチオン性リポソームを含むカチオン性ポリマーを用いて調製できる。その他のリポソームもまた、自己ポリヌクレオチドを調製かつ送達するための有効な手段を表している。または、自己DNAは薬物学的送達のためにウイルスベクター、ウイルス粒子、または細菌内に組み込むことができる。ウイルスベクターは、感染能力がある、弱毒化されている(疾患を誘導する能力を低下させる突然変異を用いて)、または複製欠損であってよい。病原性自己タンパク質の沈着、蓄積、または活性を防止するために自己DNAを利用する方法は、コードされた自己タンパク質に対する液性応答を増加させるウイルスベクターまたはその他の送達系の使用によって強化できる。他の態様では、DNAは、金粒子、多糖をベースとする支持体、または注入する、吸入する、もしくは粒子照射によって送達することのできる他の粒子もしくはビーズを含む固体支持体へ結合させることができる(衝撃送達法)。
【0109】
核酸調製物を送達する方法は当技術分野において知られている。例えば米国特許第5,399,346号、第5,580,859号、第5,589,466号を参照。哺乳類細胞中へ運ぶために、多数のウイルスに基づく系が開発されてきた。例えば、レトロウイルス系が記載されている(米国特許第5,219,740号;Millerら、Biotechniques 7:980-990,1989;Miller A.D,Human Gene Therapy 1:5-14,1990;Scarpaら、Virology 180:849-852,1991;Burnsら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:8033-8037,1993;およびBoris-Lawrie and Temin,Cur.Opin.Genet.Develop.3:102-109,1993)。多数のアデノウイルスベクターについても記載されており、例えば(Haj-Ahmadら、J.Virol.57:267-274,1986;Bettら、J.Virol.67:5911-5921,1993;Mitterederら、Human Gene Therapy 5:717-729,1994;Sethら、J.Virol.68:933-940,1994;Barrら、Gene Therapy 1:51-58,1994;Berkner,K.L,BioTechniques 6:616-629,1988;およびRichら、Human Gene Therapy 4:461-476,1993)を参照されたい。核酸送達のためにはアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター系も開発されている。AAVベクターは、当技術分野において周知の技術を使用して容易に構築できる。例えば、米国特許第5,173,414号および第5,139,941号;国際公開公報第92/01070号および第93/03769号;Lebkowskiら、Molec.Cell.Biol.8:3988-3996,1988;Vincentら、Vaccines 90(Cold Spring Harbor Laboratory Press)1990;Carter B.J,Current Opinion in Biotechnology 3:533-539,1992;Muzyczka N,Current Topics in Microbiolを参照されたい。そしてImmunol.158:97-129,1992;Kotin R.M,Human Gene Therapy 5:793-801,1994;Shellingら、Gene Therapy 1:165-169,1994;およびZhouら、J.Exp.Med.179:1867-1875,1994)も参照されたい。
【0110】
本発明のポリヌクレオチドは、さらにまたウイルスベクターを使用せずに送達することもできる。例えば、分子を対象へ送達する前にリポソーム内へパッケージングすることができる。脂質カプセル封入は、一般に核酸を安定性で結合または捕捉して保持することのできるリポソームを使用して遂行される。核酸送達のための担体としてのリポソームの使用について精査するためには、(Hugら、Biochim.Biophys.Acta.1097:1-17,1991;Straubingerら、in Methods of Enzymology,Vol.101,pp.512-527,1983)を参照されたい。
【0111】
疾患または障害の「治療すること」、「治療」、または「療法」は、単独でまたは本明細書に記載した他の化合物と組み合わせてのどちらかで、1つ以上の自己タンパク質、自己ポリペプチド、または自己ペプチドをコードするポリヌクレオチドの投与によって、臨床症状または診断症状のいずれかの低下、停止または排除によって証明されるような前記疾患の進行を緩徐化、停止、または逆転させることを意味する。「治療すること」、「治療」、または「療法」とはさらにまた、急性もしくは慢性の疾患もしくは障害における症状の重症度、または例えば再発性もしくは一時的に緩和した疾患経過の症例におけるように再発率の低下を意味する。好ましい態様では、疾患を治療することは、理想的には疾患自体を排除するポイントまで疾患の進行を逆転または停止させることを意味する。本明細書で使用する疾患を改善することと疾患を治療することは等価である。
【0112】
本発明の状況で使用する疾患または障害の「予防すること」、「予防法」または「防止」とは、疾患もしくは障害の発生もしくは開始または疾患もしくは障害の症状の一部もしくはすべてを防止するため、または疾患もしくは障害の開始の可能性を小さくするために、単独で、または本明細書に記載した別の化合物と組み合わせてのどちらかで1つ以上の自己タンパク質、自己ポリペプチド、または自己ペプチドをコードするポリヌクレオチドの投与を意味する。
【0113】
一つ又は複数の自己タンパク質、自己ポリペプチド、または自己ペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む自己ベクターの「治療有効量」は、本発明の教示によって投与し、例えば疾患の症状および/または原因を改善または排除することによって疾患を治療もしくは防止するために十分であろう。例えば、治療有効量は幅広い範囲内に含まれており、臨床試験を通して決定され、さらに特定患者については疾患の重症度、患者の体重、年齢およびその他の要素を含む当業者に周知の要素に基づいて決定する。自己ベクターの治療有効量は、約0.001μg〜約1gの範囲内である。自己ベクターの好ましい治療量は、約10μg〜約5mgの範囲内である。自己ベクターの最も好ましい治療量は、約0.025mg〜5mgの範囲内である。ポリヌクレオチド療法は、6〜12ヵ月間にわたり月1回、そしてその後は3〜12ヵ月毎に維持用量として送達する。また別の治療レジメンを開発することもでき、疾患の重症度、患者の年齢、投与される1つ以上の自己タンパク質、自己ポリペプチド、または自己ペプチドおよび通常の治療担当医師が考慮に入れるであろうその他の要素に依存して、1日1回から週1回、隔月、年1回、単回投与までの範囲に及んでよい。
【0114】
1つの態様では、ポリヌクレオチドは筋内注射によって送達する。また別の態様では、ポリヌクレオチドは鼻腔内、経口、皮下、皮内、静脈内、経粘膜、皮膚を通しての印加により送達する、または皮膚へもしくは皮膚を通して送達する金粒子へ付着させる(例えば、国際公開公報第97/46253号を参照)。または、核酸はリポソームもしくは荷電脂質を用いて、または用いずに局所投与によって皮膚細胞内へ送達することもできる(例えば、米国特許第6,087,341号を参照)。さらにまた別の態様は、核酸を吸入剤として送達することである。ポリヌクレオチドは、生理的レベルのカルシウム(0.9mM)を含むリン酸緩衝食塩液中で調製する。または、ポリヌクレオチドは1mM〜2Mのより大量のCa++を含有する溶液中で調製する。ポリヌクレオチドは、亜鉛、アルミニウム、およびその他等の他のカチオンを用いて調製してもよい。または、あるいは追加して、ポリヌクレオチドはカチオン性ポリマー、カチオン性リポソーム形成化合物のどちらかと一緒にまたは非カチオン性リポソーム中で調製することができる。DNA送達のためのカチオン性リポソームの例には、1,2-ビス(オレオイルオキシ)-3-(トリメチルアンモニウム)プロパン(DOTAP)およびその他の当該分子を使用して生成したリポソームが含まれる。
【0115】
ポリヌクレオチドを送達する前に、送達部位は、引き続いてのポリヌクレオチド療法の送達を強化できるブピバカイン、カルジオトキシンまたはその他の薬剤を用いた治療によってプリコンディショニングすることができる。このようなプリコンディショニングレジメンは、一般に治療用ポリヌクレオチドを送達する12〜96時間前、より頻回には治療的DNA送達の24〜48時間前に送達する。または、DNA療法前にプリコンディショニング療法を与えない。
【0116】
1つ以上の自己タンパク質、自己ポリペプチド、または自己ペプチドをコードする自己ベクターに加えて、免疫応答を強化するためにはCpGオリゴヌクレオチドからなる免疫応答を調節するためのアジュバントを共投与することができる。CpGオリゴヌクレオチドは、DNAワクチン接種の抗体反応を強化することが証明されている(Kriegら、Nature 374:546-9,1995)。CpGオリゴヌクレオチドは、ホスホロチオエート化バックボーン等のインビボ変性に耐性であるバックボーンの精製オリゴヌクレオチドから構成される。前記オリゴヌクレオチド内に含まれる特定配列は、プリン-プリン-C-G-ピリミジン-ピリミジンまたはプリン-ピリミジン-C-G-ピリミジン-ピリミジンであろう。これらの構築物はすべて、コードされた1つ以上の自己タンパク質、自己ポリペプチド、または自己ペプチドに対して免疫応答が発生する方法で投与される。免疫応答、典型的には抗体反応は、自己タンパク質、自己ポリペプチド、または自己ペプチドに関連する非生理的作用またはプロセスに影響を及ぼすであろう。
【0117】
1つ以上の自己タンパク質、自己ポリペプチド、または自己ペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む自己ベクターは、薬剤、アジュバント、サイトカイン等の他の物質と組み合わせて、またはサイトカインをコードするベクターの送達と結び付けて投与することができる。さらに、サイトカイン共送達を使用する場合の望ましくない抗自己サイトカイン反応を引き出す可能性を回避するために、ビタミンD3の活性形等の化学的免疫調節剤も使用できる。これに関して、1,25-ジヒドロキシビタミンD3は筋内DNA免疫を通してアジュバント作用を発揮することが証明されている。
【0118】
サイトカイン等の宿主の免疫応答を刺激する、修飾する、または調節することが知られているタンパク質、ポリペプチドまたはペプチドをコードするポリヌクレオチド配列は、1つ以上の自己タンパク質、自己ポリペプチド、または自己ペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む自己ベクターと共投与することができる。そこで、本発明では、インターロイキン、インターフェロン、およびコロニー形成刺激因子等の一つ又は複数の様々なサイトカイン(またはその機能的フラグメント)をコードする遺伝子を使用できる。これらの多数の物質についての遺伝子配列は知られている。例えば、IL-4およびIL-10をコードする遺伝子は、1つ以上の自己タンパク質、自己ポリペプチド、または自己ペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む自己ベクターと一緒に共投与することができる。そこで、本発明の1つの態様では、1つ以上の自己タンパク質、自己ポリペプチド、または自己ペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む自己ベクターの送達は、次の一つ又は複数の免疫学的応答修飾因子の共投与と結合することができる。IL-4;IL-10;IL-13およびIFN-γ。
【0119】
本発明で使用するために選択されたヌクレオチド配列は、例えば標準技術を使用して所望の遺伝子またはヌクレオチド配列を含有する細胞から核酸を単離することによって、既知の起源から引き出すことができる。同様に、前記ヌクレオチド配列は、当技術分野において周知のポリヌクレオチド合成の標準モードを使用して合成により生成できる。例えば、(Edgeら、Nature 292:756 1981);(Nambairら、Science 223:1299 1984);(Jayら、J.Biol.Chem.259:6311 1984)を参照されたい。一般に、合成オリゴヌクレオチドは、(Edgeら(前記)および(Duckworthら、Nucleic Acids Res.9:1691 1981)によって記載されたホスホトリエステル法、または(Beaucageら、Tet.Letts.22:1859 1981)および(Matteucciら、J.Am.Chem.Soc.103:3185 1981)によって記載されたホスホアミダイト法のどちらかによって調製できる。合成オリゴヌクレオチドは、さらにまた市販で入手できる全自動オリゴヌクレオチド合成装置を使用して調製できる。そこでヌクレオチド配列は、特定アミノ酸配列のために適切なコドンを備えて設計することができる。一般に、予定された宿主内で発現させるために好ましいコドンが選択されるであろう。完全配列は、標準方法によって調製されたオーバーラッピングオリゴヌクレオチドから組み立てられ、完全コード配列に組み立てられる。例えば、Edgeら(前記);Nambairら(前記)およびJayら(前記)を参照されたい。
【0120】
本明細書で使用する核酸配列を入手するための別の方法は、組み換え手段による。そこで、所望のヌクレオチド配列は標準制限酵素および標準方法を使用して核酸を有するプラスミドから切り取ることができる。部位特異的DNA切断は、適切な制限酵素および方法を用いて処理することによって実施する。部位特異的DNA切断は、当技術分野において一般に理解されている条件下で適切な1つ以上の制限酵素を用いて治療することによって実施されるが、その詳細は市販で入手できる制限酵素の製造業者によって規定されている。所望であれば、切断フラグメントのサイズ分離は、標準技術を使用したポリアクリルアミドゲルまたはアガロースゲル電気泳動によって実施できる。
【0121】
特定核酸分子を単離するためのまた別の便宜的方法は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)による。(Mullisら、Methods Enzymol.155:335-350 1987)を参照されたい。
【0122】
以下の実施例は、本発明を実施するための特定実施例である。これらの実施例は、具体的に説明する目的でのみ提供するものであり、決して本発明の範囲を制限することは意図していない。
【実施例】
【0123】
実施例1
動物モデルの多発性硬化症を予防するための自己タンパク質PLPをコードするDNAの投与を含むポリヌクレオチド療法
PLP自己ベクター
PLP自己タンパク質のエピトープをコードするポリヌクレオチドは、16マーのオーバーラッピング相補的配列(下線が引かれている)を用いて2つのオリゴヌクレオチドをアニーリングし、そしてDNAポリメラーゼおよびdNTPを用いて伸長させることによって構築した:PLP(139-151):

PLP(139-151)L144/R147:

これらのオリゴヌクレオチド二本鎖は、XhoIおよびXbaI制限部位を組み込むように設計した。これらの産物をCMVプロモーターによって駆動される哺乳類発現ベクターであるpTARGETベクター(Promega社、ウィスコンシン州マディソン)の多重クローニング領域内へクローニングした。陽性クローンは、カラースクリーニングによって同定し、インサートの正確な方向はDNA全自動シーケンシングによって確認した。プラスミドDNAの精製はWizard plus Maxipreps(Promega社)によって製造業者の取扱説明書にしたがって実施し、0.05mLのプラスミドDNA(PBS中で1mg/mL)を同一筋内に注入した。
【0124】
ポリヌクレオチド療法のプロトコール
PBS中に溶解させた0.1mLの0.25%塩酸ブピバカイン(Sigma社、ミズーリ州セントルイス)を実験動物の左大腿四頭筋内に注射した。2および10日後、マウスに同一筋内に0.05mLのプラスミドDNA(PBS中の1mg/mL)を注射した。
【0125】
EAEの誘導
PLP139-151ペプチドを2mg/mLの濃度でPBS中に溶解させ、4mg/mLの加熱死させた結核菌H37Ra(Difco Laboratories、ミシガン州デトロイト)を補給した等量の不完全フロイントアジュバントを用いて乳化させた。同日に、マウスへ0.1mLのペプチドエマルジョンを皮下注射し、さらに48時間後には、PBS中に溶解させた0.1mLの百日咳菌トキシン(4μg/mL)を静脈内注射した。実験動物を以下のとおりに評価した:0=臨床疾患なし;1=尾の衰弱または麻痺;2=後肢の衰弱;3=後肢の麻痺;4=前肢の衰弱または麻痺;5=瀕死または死亡した動物。
【0126】
PLP配列をコードするDNAの注射がマウスをEAEの誘導から保護することに有効かどうかを決定するために、PLP139-151自己ベクターを1週間間隔で2回、筋内注射した。最終注射の10日後、マウスへCFA中に乳化させたPLP139-151ペプチドを惹起投与した。対照プラスミド群と比較して、PLP139-151自己ベクターにより治療された動物では、急性臨床疾患の改善が観察された。対照プラスミド群と比較して、疾患の発症は遅延し(11.5±0.5日間、p<0.008)、平均ピーク疾患重症度は低下し(p<0.005)、そして平均疾患スコアは低下した(p<0.0005)。さらに、他の群には、a)変化したペプチドリガンドPLP p139-151(W144>L、H147>R)をコードするポリヌクレオチドを含む自己ベクター、b)PLPエピトープp178-191をコードするポリヌクレオチドを含む自己ベクターのどちらかを注射した。変化した自己ペプチドリガンド(W144、H147)をコードする自己ベクターを用いると、疾患の発症は遅延し(11.6±0.5日間、p<0.009)、そして平均疾患スコアは低下した(p<0.02)。同様に、PLP自己ペプチドp178-191をコードするポリヌクレオチドを含む自己ベクターを用いると、疾患の発症は遅延し(11.5±0.4日間、p<0.003)、平均ピーク疾患重症度は低下し(p<0.007)、そして平均疾患スコアは低下した(p<0.0001)。
【0127】
DNAを注射し、さらに脳炎誘発性ペプチドPLP139-151を用いて惹起投与したマウスは、臨床疾患の急性期が緩解した後に致死させた。PLP139-151自己ペプチドを用いて排液性LNCをインビトロで再刺激し、それらの増殖応答およびサイトカイン産生について試験した。図1Aは、PLP139-151自己ペプチドをコードするDNAを注射したマウス由来LNCが、対照動物由来LNCと比較して低い増殖応答を有することを示している(p<0.01)。図1(B)は、PLP139-151を用いて刺激したときに、PLP139-151自己ペプチドをコードするDNAを含有する自己ベクターにより治療したマウス由来LNCが対照群と比較して低レベルのIL-2およびγ-インターフェロンを分泌することを示している。脳組織から単離したmRNAについてのリボヌクレアーゼ保護アッセイを使用して、炎症性脳中のサイトカイン中mRNA転写産物のレベルを評価した。図1(C)は、PLP139-151自己ペプチドをコードするDNAを含む自己ベクターを用いて治療したマウスにおけるγ-インターフェロンおよびIL-15のmRNA中レベルにおける低下を明らかにしている。このため、PLP139-151DNA治療群マウスにおいては臨床疾患の低発生率、低下した細胞応答、ならびに低レベルのIL-2、IL-15およびγ-インターフェロン間の相関が明白である。図1(C)に示したサイトカイン中mRNAバンドの相対発現レベルをデンシトメトリーにより測定した。負荷の差を補正するために、数値は各サンプル内でのハウスキーピング遺伝子GAPDHの発現レベルによって標準化した。デンシトメトリー分析により、pTargeTおよびPLP139-151(L/R)自己ペプチドをコードするDNAを含有する自己ベクターと比較して、PLP139-151自己ペプチドをコードするDNAを含有する自己ベクターにより治療されたマウス脳中での試験したサイトカインの発現レベルの低下が確証された。
【0128】
実施例2
動物モデルの多発性硬化症を治療するための複数の自己タンパク質をコードするDNAの投与を含むポリヌクレオチド療法
実施例1に記載した方法と同一方法を使用して、4種の主要なミエリン自己タンパク質であるMBP、MOG、MAG、およびPLPをコードするDNAを含む自己ベクターが、ヒトMSを極めて良好に表す確定EAE、進行中EAE、再発性EAEを治療することに関して単一自己ペプチドをコードするDNAよりはるかに有効であることを証明した(表5および6)。
【0129】
(表5)複数のミエリン自己タンパク質をコードするDNAを含むポリヌクレオチド療法は確定された進行中EAEを治療する

1複数の自己タンパク質をコードするDNAを含有する自己ベクターは、MBP、MOG、MAG、およびPLPをコードする4種の自己ベクター各々の用量各50μgで週1回のペースでマウスに筋内注射した。治療はEAEの初期急性発症から回復した後(例えば、疾患誘導後の臨床的麻痺の初回エピソードから回復した後)に開始した。悪化率は、第87日までに発生した臨床的麻痺再発回数を示している。p値は、スチューデントの対応のない両側t検定を使用して計算した。
【0130】
実施例3
動物モデルの多発性硬化症を治療するための自己ペプチドをコードするDNAまたはサイトカインをコードする自己タンパク質+DNAの投与を含むポリヌクレオチド療法
自己ベクターがPLP自己ペプチドまたは複数のミエリンタンパク質をコードする修飾を含めて、実施例1に記載した方法に従った。サイトカインIL-4をコードするDNA発現構築物を同時に投与した。サイトカインIL-4をコードするDNAを組み合わせたミエリン自己ペプチドまたはミエリン自己タンパク質の両方をコードする自己ベクターの投与によるDNA療法は、保護作用をさらに強化した(表6)。
【0131】
(表6)自己ペプチドまたは自己タンパク質をコードするDNA+IL-4をコードするDNAの併用療法は確定された進行中EAEを治療する際のDNA療法の治療作用を強化する。

1DNA療法は、MBP、MOG、MAG、およびPLPをコードする4種のDNAをプラスミドの各々の用量各25μgで週1回のペースでマウスに筋内注射した。その他すべてのDNAは週1回のペースで動物1匹につきプラスミド50μgの用量で投与した。治療はEAEの初期急性発症から回復した後(例えば、疾患誘導後の臨床的麻痺の初回エピソードから回復した後)に開始した。臨床的再発は第81日に計数した。p値は、スチューデントの対応のない両側t検定を使用して計算した。
【0132】
実施例4
ヒトの多発性硬化症を治療するための自己タンパク質、自己ポリペプチドおよび自己ペプチドをコードするDNAの投与を含むポリヌクレオチド療法
ヒト多発性硬化症を治療するためのポリヌクレオチド療法は、以下のとおりに実施する。サイトメガロウイルスもしくはまた別の有効な転写プロモーター;SV40ラージT抗原、ウシ成長ホルモン由来のポリアデニル化シグナル、または当業者に知られている別の有効なポリアデニル化シグナル配列;および、カナマイシンもしくはプラスミドの効率的増殖を可能にする他のFDA承認耐性遺伝子を含む自己ベクターを構築する。
【0133】
一つ又は複数のヒトミエリン自己タンパク質をコードするDNA配列をDNA自己ベクター内へクローニングした。ミエリン塩基性タンパク質(MBP)、プロテオリピドタンパク質(PLP)、ミエリン関連乏突起神経膠細胞塩基性タンパク質(MOBP)を含むMS患者における自己免疫反応の標的とされるそれらのミエリン自己タンパク質をコードするDNAを自己ベクター内にクローニングした。ポリヌクレオチド療法に包含するための特定自己抗原の選択は、本発明の教示を使用して多数の要素に基づいており、対象内の病原性自己抗体の存在等の因子を含めた。1つの態様では、各ミエリン自己タンパク質が個別または別個の自己プラスミド内にコードされる。また別の態様では、数個のミエリン自己タンパク質をコードするDNAは、内部リボソームリエントリー配列(IRES)もしくは単一DNA分子から複数のタンパク質を発現させる他の方法を利用して単一自己プラスミド内で連続的にコードされる。ミエリンタンパク質をコードするDNA発現自己プラスミドは、Qiagen Corporation社から市販で入手できるようなプラスミドDNAを単離するための市販で入手できる技術を使用して調製かつ単離した。DNAは、治療薬としてヒトへ送達するために、細菌内毒素を含まないように精製した。1つの態様では、多発性硬化症を有する患者を治療するために、MBPだけをコードする自己ベクターDNAが投与される。また別の態様では、2つ以上のミエリン自己タンパク質、自己ポリペプチド、または自己ペプチドをコードする複数の自己プラスミドが投与される。一つ又は複数の自己タンパク質、自己ポリペプチド、または自己ペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む治療有効量の自己ベクターは、本発明の教示によって投与される。例えば、典型的には自己ベクターの治療有効量は、約0.001μg〜約1gの範囲内である。自己ベクターの好ましい治療量は、約10μg〜約5mgの範囲内である。自己ベクターの最も好ましい治療量は、約0.025mg〜5mgの範囲内である。ポリヌクレオチド療法は、6〜12ヵ月間にわたり月1回、そしてその後は3〜12ヵ月毎に維持用量として送達する。また別の治療レジメンを開発することができ、疾患の重症度、患者の年齢、投与される1つ以上の自己タンパク質、自己ポリペプチド、または自己ペプチドおよび通常の治療担当医師が考慮に入れるであろうその他の要素に依存して、1日1回から週1回、隔月、年1回、単回投与までの範囲に及んでよい。
【0134】
1つの態様では、DNAは筋内注射によって送達する。また別の態様では、DNAは吸入剤として、鼻腔内、経口、皮下、皮内、静脈内、皮膚を通しての印加により送達する、または皮膚へもしくは皮膚を通して送達する粒子もしくはビーズへ付着させる。そのような粒子またはビーズは、金、その他の金属、ポリスチレン、または他の粒子であってよい。1つの態様では、DNAは、生理的レベルのカルシウム(0.9mM)を含むリン酸緩衝食塩液中で調製する。または、DNAは1mM〜2Mのより大量のCa++を含有する溶液中で調製する。また別の態様では、DNAは、亜鉛、アルミニウム、およびその他等の他のカチオンを用いて調製する。DNAは、カチオン性ポリマー、カチオン性リポソーム、またはその他のリポソームを用いても調製できよう。DNAは、ウイルスベクター、ウイルス粒子、または細菌内にコードして送達することもできよう。
【0135】
本明細書に開示したDNA療法を用いて治療されたヒトMS患者は、臨床的再発の回数および新規ガドリニウム増強病変の数および増強中の病変の容積についてのMRI監視に基づいて疾患活動性について監視される。
【0136】
実施例5
インスリン依存型糖尿病を予防するためのインスリンβ鎖の自己ペプチドをコードするDNAの投与を含むポリヌクレオチド療法
NODマウスは特発性自己免疫性糖尿病を発生し、ヒトIDDMと多数の臨床的、免疫学的、および組織病理学的特徴を共有する。インスリンの免疫優性エピトープであるインスリンB鎖のアミノ酸9-23の自己ペプチドをコードするDNAを含む自己ベクターをNODマウスに投与した。対照は、インスリンのA鎖上の対応するペプチドをコードするDNAを含むベクターであった。自己ペプチドをコードするオーバーラッピングオリゴヌクレオチドプライマーを発現自己カセットのpcDNA内へ挿入した。自己ペプチドインスリンB(9-23)をコードする自己ベクター(insB-pcDNA)を用いた治療は、動物を糖尿病の発症から効果的に保護した。疾患の発症は顕著に低下した比率で発生し、疾患を発症した動物数は有意に少なかった。InsB-pcDNAは膵臓におけるインスリンB特異的細胞によるサイトカイン発現における変化を誘導した:IL-10およびIFN-γ発現は、インスリンB(9-23)ペプチドと一緒に培養した膵臓リンパ節細胞中ではダウンレギュレートされた。インスリンA(+)ストランドのヌクレオチド配列は

であり;
インスリンB(+)ストランドの配列は、

である。
これらのポリヌクレオチドは、クローニングのためにEcoRIおよびXbaI制限部位を組み込むように設計された。これらの産物は、発現自己カセットpcDNA3.1+(Invitrogen社、カリフォルニア州カールズバッド)の複数のクローニング領域内へクローニングした。自己プラスミドDNAの精製は、Qiagen Endo-free Mega-prepキット(Qiagen社、カリフォルニア州バレンシア)を使用して実施した。
【0137】
3〜4週齢の雌性NODマウスは、Taconic Farms(ニューヨーク州ジャーマンタウン)から購入した。実験動物には、3〜4週齢でPBS(1大腿四頭筋につき0.05mL)中に溶解させた0.1mLの0.25%塩酸ブピバカイン(Sigma社、ミズーリ州セントルイス)を大腿四頭筋内に注射した。2日後、マウスの各大腿四頭筋内に0.05mLのプラスミドDNA(1.0mg/mL)を注射した。プラスミドDNAは10日間隔でさらに2回注射した。マウスはChemstrip(Boehringer Mannheim社、インディアナ州インディアナポリス)によって糖尿について週1回試験し、糖尿病はOne Touch II meter(Johnson & Johnson社、カリフォルニア州ミリピタス)を使用して血漿中グルコース濃度の測定により確証した。250mg/dLより高い反復血漿中グルコースレベルを有する動物は糖尿病と見なした。脾臓を実験動物および対照動物から切除し、10%ホルムアルデヒド中で固定し、パラフィン中に包埋した。50μm離れた3つのレベルでの薄片をヘマトキシリン・エオシンによる染色のために切片作製した。浸潤の重症度は、光線顕微鏡により評価した。各群から3および5匹の動物を、各々2回の個別実験のために分析した。膵臓1つにつき少なくとも25片の膵島を試験した。
【0138】
自己ペプチドインスリンB(9-23)をコードする自己ベクターの投与を含むポリヌクレオチド療法をNODマウスモデルで実施した。10匹の4週齢NODマウスの群では、50μLの0.25%ブピバカインを大腿四頭筋に注射し、その48時間後に100μgの自己プラスミドDNAを注射した。自己プラスミドDNAは10日間隔でさらに2回注射した(1大腿四頭筋につき50μg)。マウスは、>30週間にわたり週1回糖尿および高血糖を測定することで糖尿病について監視した。結果は、2つの独立した実験を表示している。未治療およびプラスミド対照(pcDNA)注射群では、70%のマウスが34週齢までに糖尿病を発症した(図2)。しかしinsB-pcDNA注射群では、同年齢までに20%しか糖尿病を発症しなかった(X2分析によりp=0.02)。さらに、疾患の発症はこの群においても同様に、未治療群において最初の動物が糖尿病となる<14週間からinsB-pcDNA治療群については>23週間へ顕著に遅延した。pcDNA群および未治療対照群についての糖尿病発症率は、insB-pcDNA群の比率の3倍であった(insB-pcDNA群についての0.012と比較して、pcDNA群および未治療群については0.035および0.036)。
【0139】
自己ペプチド(insB-pcDNA)治療NODマウスの場合には、インスリン炎が観察されたが、動物は糖尿病の臨床的徴候を示さなかった。7週齢の免疫動物および対照動物から膵臓を切除し、その時点にNOD膵臓の組織学的染色によって膵島の初期浸潤を明確に視認できた。各群各5匹の動物について最小25片の膵島をインスリン炎について採点した。より高齢(16週齢)マウス由来の膵臓の染色は類似の結果を産生した。自己ペプチドをコードするDNAを含む自己ベクターを注射した動物は糖尿病の臨床的徴候を示さなかったが、病的対照動物におけるレベルに匹敵するレベルで浸潤巣を視認できた。そこでインスリンDNAによる治療はランゲルハンス島へのリンパ球のトラッフィキングに影響を及ぼさない。
【0140】
インスリンB(9-23)DNAを用いたポリヌクレオチド療法は、膵リンパ節において抗原特異的応答を誘導した。インビトロでの抗原特異的応答を検出するために、本出願人らは定量的PCRを使用してサイトカイン中mRNA産生のレベルを評価した(図3)。3つの独立実験において、動物群にinsB-pcDNA自己ベクターまたはpcDNA対照プラスミドのどちらかを2回注射した。2度目の注射から5日後、膵リンパ節を採取し、単細胞懸濁液を10μg/mLインスリンB(9-23)ペプチドと一緒にプレーティングした。72時間後、細胞をペレット化し、IL-4、TGF-β、IL-10およびIFN-γメッセージレベルについての定量的PCR分析を受けさせた。膵リンパ節細胞中のサイトカインメッセージレベルの定量的PCR比較は、pcDNA治療対照群と比較して、insB-pcDNA治療動物におけるIFN-γおよびIL-10レベルの有意な減少を証明した。insB-pcDNA治療リンパ節からのIFN-γレベルは、インスリンBペプチド刺激に反応してpcDNA治療リンパ節の38%であった(p<0.05)。さらに、insB-pcDNA治療マウスにおけるIL-10レベルはpcDNA対照群のレベルの30%であった(p<0.01)。IL-4およびTGF-βのmRNAレベルにおける変化は、3つの実験にわたり有意ではなかった。
【0141】
実施例6
インスリン依存型糖尿病を治療するための自己ポリペプチドインスリンならびに自己タンパク質であるグルタミン酸デカルボキシラーゼおよびチロシンホスファターゼIA-2をコードするDNAの投与を含むポリヌクレオチド療法
NODマウスは、グルタミン酸デカルボキシラーゼ(GAD)65kDaおよび膵島チロシンホスファターゼIA-2をコードするDNAと一緒に、全プロインスリンポリペプチドをコードするDNAを含むポリヌクレオチド療法を用いて治療する。プロインスリン、GAD65、およびIA-2をコードするcDNAを単離し、発現自己カセットpTARGETベクター内へクローニングする。DNAは、Qiagen Endo-free Mega-prepキット(Qiagen社、カリフォルニア州バレンシア)を使用して精製する。NODマウスには、3〜4週齢でPBS(1大腿四頭筋につき0.05mL)中に溶解させた0.1mLの0.25%塩酸ブピバカイン(Sigma社、ミズーリ州セントルイス)を大腿四頭筋内に注射する。2日後、マウスの各大腿四頭筋内に、0.9mMカルシウムを含むリン酸緩衝食塩液中の0.05mLの各自己プラスミドDNA(1.0mg/mL)を注射する。プラスミドDNAは10日間隔でさらに2回注射する。マウスはChemstrip(Boehringer Mannheim社、インディアナ州インディアナポリス)によって糖尿について週1回試験し、糖尿病はOne Touch II meter(Johnson & Johnson社、カリフォルニア州ミリピタス)を使用して血漿中グルコース濃度の測定により確証する。250mg/dLより高い反復血漿中グルコースレベルを有する動物は糖尿病と見なされる。
【0142】
実施例7
確定インスリン依存型糖尿病における顕性高血糖を治療かつ逆転させるための自己ポリペプチドインスリンならびに自己タンパク質であるグルタミン酸デカルボキシラーゼおよびチロシンホスファターゼIA-2をコードするDNAの投与を含むポリヌクレオチド療法
顕性臨床的糖尿病を有するNODマウスはChemstrip(Boehringer Mannheim社、インディアナ州インディアナポリス)による尿分析を用いて検出した糖尿に基づいて同定し、One Touch II meter(Johnson & Johnson、カリフォルニア州ミリピタス)を使用して血漿中グルコース濃度の測定により確証した。顕性臨床的糖尿病を有するNODマウスを、前記の実施例に記載した自己ペプチドインスリンB(9-23)(insB-pcDNA)をコードするDNAを含むポリヌクレオチド療法を用いて治療した。インスリンB(+)ストランドの配列は

であり、このポリヌクレオチドは、クローニングのためにEcoRIおよびXbaI制限部位を組み込むために設計された。これらの産物は、発現自己カセットpcDNA3.1+(Invitrogen社、カリフォルニア州カールズバッド)の複数のクローニング領域内へクローニングした。自己プラスミドDNAの精製は、Qiagen Endo-free Mega-prepキット(Qiagen社、カリフォルニア州バレンシア)を使用して実施した。自己ペプチドインスリンB(9-23)(insB-pcDNA)をコードするDNAをコードするDNAを用いた糖尿および高血清中グルコース値に基づく顕性臨床的糖尿病を有するマウスの治療は、高血糖および糖尿を逆転させ、それにより確定糖尿病を逆転させた。グルタミン酸デカルボキシラーゼおよびチロシンホスファターゼと組み合わせて自己ポリペプチドインスリンをコードするDNAを用いた動物の治療は、治療のためのDNA療法の有効性および確定自己免疫性糖尿病の逆転を有意に増加させる。
【0143】
実施例8
ヒトインスリン依存型糖尿病を治療するための自己タンパク質をコードするDNAの投与を含むポリヌクレオチド療法
実施例5で構築した自己プラスミドDNAをヒトへ投与するために、チロシンホスファターゼIA-2;65kDa形および67kDa形両方のグルタミン酸デカルボキシラーゼ(GAD);膵島抗原69kDa(ICA69)を含むヒト膵島自己タンパク質をコードするDNAを含むように修飾する。DNAはPCRを使用して単離し、以前に記載されたように発現自己カセット内へクローニングする。一つ又は複数の自己タンパク質、自己ポリペプチド、または自己ペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む治療有効量の自己ベクターは、本発明の教示によって投与する。例えば、自己ベクターの治療有効量は、約0.001μg〜約1gの範囲内である。自己ベクターの好ましい治療量は、約10μg〜約5mgの範囲内である。自己ベクターの最も好ましい治療量は、約0.025mg〜約5mgの範囲内である。DNA療法は、6〜12ヵ月間にわたり月1回、そしてその後は3〜12ヵ月毎に維持用量として送達する。また別の治療レジメンを開発することができ、疾患の重症度、患者の年齢、投与される1つ以上の自己タンパク質、自己ポリペプチド、または自己ペプチドおよび通常の治療担当医師が考慮に入れるであろうその他の要素に依存して、1日1回から週1回、隔月、年1回、単回投与までの範囲に及んでよい。好ましい態様では、DNAは筋内注射によって送達する。または、DNA自己ベクターは吸入剤として、鼻腔内、経口、皮下、皮内、静脈内、皮膚を通しての印加により送達し、そしてIDDMを治療する場合は、遺伝子銃によって、または皮膚を通して送達する金粒子へ付着させる。DNAは、生理的レベルのカルシウム(0.9mM)を含むリン酸緩衝食塩液中で調製される。または、DNAは1mM〜2Mのより大量のCa++を含有する溶液中で調製される。DNAは、亜鉛、アルミニウム、およびその他等の他のカチオンを用いて調製される。
【0144】
本明細書に開示したDNA療法を用いて治療されるヒト糖尿病患者は、外因性インスリンに対する低下した要求、血清中自己抗体プロフィールの変化、糖尿の減少、ならびに白内障、循環不全、関節症、および神経障害等の糖尿病性合併症の低下に基づいて疾患活動性について監視される。
【0145】
実施例9
自己免疫性滑膜炎および慢性関節リウマチを予防するための自己タンパク質II型コラーゲンをコードするDNAの投与を含むポリヌクレオチド療法
RAは、自己免疫寛容を促進する機序を回避する病原性T細胞から発生する。マウスにおけるコラーゲン誘発性関節炎(CIA)は、滑膜炎ならびにRAにおける骨侵食に組織学的に似ている骨侵食を含むRAと多数の特徴を共有するT細胞媒介性自己免疫のモデルである。CIAの再発モデルは、ヒトRA患者において観察されるものと類似する方法で炎症性侵食性滑膜炎の臨床的再発および寛解を有する(Malfaitら、Proc Natl Acad Sci USA,97:9561-6,2000)。CIAは、遺伝的に感受性のマウス系統に完全フロイントアジュバント中のII型コラーゲン(CII)を注射することにより誘導する。
【0146】
マウスII型コラーゲンをコードするcDNAは、ポリメラーゼ連鎖反応を使用して単離した。IV型およびIX型コラーゲン、ならびに熱ショックタンパク質65等の追加の滑液自己タンパク質をポリヌクレオチド療法に含むことができる。本明細書に記載したペプチドをコードするDNAは、マウスCII cDNAからPCRによってDNAの関連フラグメントを増幅するためにオリゴヌクレオチドプライマーを使用して入手した。翻訳部位ならびにXhoIおよびXbaI制限エンドヌクレアーゼ部位のインフレームメチオニン開始部位をオリゴヌクレオチドプライマー内に組み込んだ。PCR生成DNAフラグメントは、CMVプロモーターによって駆動される哺乳類発現ベクターである発現自己カセットpTARGETベクター(Promega社、ウィスコンシン州マディソン)のXhoIおよびXbaI制限エンドヌクレアーゼ部位内へクローニングした。単離したクローンは、所望のDNA配列が産生したことを確認するためにシーケンシングした。
【0147】
実験開始時に6〜9週齢であった雄性DBA/1LacJ(H-2q)マウスを使用した。CIA予防実験のための疾患誘導前に、または再発性CIAの治療実験で臨床的CIAの開始後に、1週間間隔で3回、滑膜性関節自己タンパク質をコードするDNAを含む精製自己プラスミドDNA各100μgを前脛骨筋内へ筋肉内注射した。DNA療法後、急性CIAを誘導するために完全フロイントアジュバント(CFA)中に溶解させた100μgの精製ウシCIIタンパク質を尾の基部で皮内へ惹起投与した。マウスは、視覚的採点システムに基づいてCIAの臨床証拠について12週間にわたり1日1回追跡調査した(Coliganら、John Wiley and Sons,Inc 15.5.1-15.5.24,1994):0、紅斑および腫脹の証拠なし;1、中足(足根部)または踵に限定された紅斑および軽度の腫脹;2、踵から中足へ広がる紅斑および軽度の腫脹;3、踵から中足骨関節へ広がる紅斑および中等度の腫脹;ならびに4、踵、足および指を含む紅斑および重度の腫脹。各動物についての臨床スコアは、その4つの足各々についての視覚的スコアの合計である。組織学的分析は、臨床的関節炎を発生するマウス由来の関節について実施した。最高視覚的スコアを伴う肢からの第1足は脱灰し、切片作製し、さらに以前に記載したようにヘマトキシリン・エオシンを用いて染色した(Williamsら、Proc Natl Acad Sci USA 91:2762-2766,1994)。以前に記載のように染色した切片をリンパ球性浸潤、滑膜過形成およびびらんについて試験した(Williamsら、Proc Natl Acad Sci USA 91:2762-2766,1994)。
【0148】
実施例10
確定自己免疫性滑膜炎を治療するための自己タンパク質II型コラーゲンをコードするDNAの投与を含むポリヌクレオチド療法
確定された進行中CIAを有する動物を、確定された進行中CIAを逆転させるためにCII、BiP、および/またはGP-39をコードする自己ベクターDNAを用いて治療する。マウスは、視覚的採点システムに基づくCIAの臨床証拠について12週間にわたり1日1回追跡調査する(Coliganら、John Wiley and Sons,Inc 15.5.1-15.5.24,1994):CII、BiP、GP-39および/または滑膜性関節に存在する追加のタンパク質をコードする自己DNAを用いた治療は、視覚的採点システムに基づく関節炎の重症度を低下させることができる。
【0149】
実施例11
ヒト慢性関節リウマチおよびその他の関節を標的とする自己免疫性疾患を予防、または治療するための自己滑膜タンパク質をコードするDNAの投与を含むポリヌクレオチド療法
前記の2つの実施例で構築した自己プラスミドDNAをヒトに投与するために修飾するが、これはII型コラーゲン、BiP、gp39、IV型コラーゲン、グルコース-6-ホスフェートイソメラーゼおよび/またはフィブリンを含む滑膜性関節で発現するタンパク質等のヒト自己タンパク質をコードするDNAを含んでいた。DNAはPCRを使用して単離し、以前に記載されたように発現自己カセット内へクローニングする。100μgのプラスミドDNAはカルシウムを含むリン酸緩衝食塩液中に溶解させて月1回のペースで筋肉内注射する。様々な緩衝液中で調製した様々な投与レジメンで、または実施例1において前記で記載した様々な投与経路を介してDNAを投与することも可能である。
【0150】
米国リウマチ学会基準(診断には次の7つの基準中4つが必要とされる。(i)対称性多発性関節炎、(ii)MCP、PIP、または手首の関与、(iii)3ヵ所を超える相違する関節領域の関与、(iv)手または足のX線写真上での関節侵食、(v)陽性関節リウマチ因子試験結果、(iv)1時間を超えて続く朝のこわばり、および(vii)伸筋表面上の結節)に基づいて診断した新規に発症した、または進行中RAを有するヒトを、II型コラーゲン、BiP、gp39、IV型コラーゲン、グルコース-6-ホスフェートイソメラーゼおよび/またはフィブリンをコードする自己ポリヌクレオチドを用いて治療する。RAに対するDNA療法の有効性は、20%(米国リウマチ学会20%応答、ACR20)、50%(ACR50)、および70%(ACR70)を超えるそれらの腱および腫れた関節数の減少を備える患者の割合に基づいて監視する。ヒトRAに対する追加の尺度には、ステロイド剤使用中の炎症マーカー(ESRおよびCRP)の低下、X線上の進行の低下(侵食および関節腔狭小化を含む)および能力障害状態スコア(健康評価調査-HAQ)における改善が含まれる。自己抗体力価およびプロフィールにおける変化についても監視する。乾癬性関節炎、反応性関節炎、ライター症候群、強直性脊椎炎、およびリウマチ性多発筋痛症等の関連関節炎に対しても同一アプローチを使用する。
【0151】
最近の試験は、慢性関節リウマチに対する高い特異性を備える一定の自己抗体(例、BiP、抗-シトルリン抗体、抗-フィラグリン抗体)が臨床診断に数ヵ月間、または数年間さえ先行する可能性があることを示唆している。これにより、患者を疾患開始前に同定でき、そして予防的ポリヌクレオチド治療薬を使用して効果的に治療できる可能性が生じる。健常な無症候性患者は、前記に記載した血清学的検査の1つを含むがそれに限定されない診断的自己抗体の存在についてスクリーニングされる。陽性試験結果を備える患者は、前記に記載したようにポリヌクレオチド治療薬を使用して、そして他の例では、疾患の発症および重症度を予防する試みで治療される。その後の診断および応答は、前記の基準を使用して監視される。
【0152】
実施例12
自己免疫性ブドウ膜炎を予防するためのブドウ膜自己タンパク質をコードするDNAの投与を含むポリヌクレオチド療法
実験的自己免疫性ブドウ膜炎(EAU)は、マウスにおけるブドウ膜および網膜を罹患させるT細胞媒介性自己免疫疾患であり、そしてヒト自己免疫性ブドウ膜炎と多数の臨床的、免疫学的、および組織病理学的特徴を共有する。S抗原および光受容体間レチノイド結合タンパク質(IRBP)をコードするDNAはPCRを使用して単離し、以前に記載されたように発現自己カセットpTARGET内へクローニングする。100μgの各精製自己プラスミドを、EAUの誘導前にB10.IIIRマウスの前脛骨筋内に1週間間隔で3回注射する。DNA療法は、ブピバカイン、カルジオトキシン、またはその他の前コンディショニング剤を用いた投与部位での注射後に、またはそのような薬剤を使用せずに開始する。DNA療法後、B10.RIIIマウスには完全フロイントアジュバント(CFA)中に乳化させた免疫優性IRBP161-80ペプチドをEAUに対して惹起投与する。マウスは、標準的採点システム(Colliganらを使用して眼底鏡検査に基づくEAUの臨床証拠について8週間にわたり追跡調査する。0、疾患なし;0.5(痕跡)、1〜2個の極めて小さな末梢限局性病変、わずかな血管炎/硝子体炎;1、軽度の血管炎、<5個の限局性病変、<1個の線状病変;2、複数(>5個)の脈絡網膜病変および/または浸潤、重症血管炎、<5個の線状病変;3、線状病変のパターン、大きなコンフルエント病変、網膜下血管新生;4、大きな網膜剥離、網膜萎縮。マウス群を定期的に致死させ、組織学的分析を実施し、代表的眼について評価付けを実施する。
【0153】
実施例13
確定自己免疫性ブドウ膜炎を治療するためのブドウ膜自己タンパク質をコードするDNAの投与を含むポリヌクレオチド療法
S抗原および光受容体間レチノイド結合タンパク質(IRBP)をコードするDNAはPCRを使用して単離し、以前に記載されたように発現自己カセットpTARGET内へクローニングする。B10.RIIIマウスに、完全フロイントアジュバント(CFA)中に乳化させた免疫優性IRBP161-80ペプチドを用いてEAUを発生するように誘導する。確定された進行中EAUを有する動物は、100μgの各精製自己プラスミドの定期的投与により効果的に治療できる。自己ポリヌクレオチドは、臨床的EAUの発生後にB10.IIIRマウスの前脛骨筋内へ週1回、または別の間隔で投与することができる。有効性は、標準的採点システム(Colliganら)を使用する眼底鏡検査に基づくEAUの疾患活動性についての12週間の臨床的監視に基づいて証明される。
【0154】
実施例14
ヒト自己免疫性ブドウ膜炎を治療するためのブドウ膜自己タンパク質をコードするDNAの投与を含むポリヌクレオチド療法
PCRを使用して、ヒトS抗原、光受容体間レチノイド結合タンパク質(IRBP)、ロドプシン、およびリカバリンを単離し、実施例1に記載したようにDNA発現自己カセット内へクローニングする。実施例7で構築した自己ベクターは、ヒトS抗原、光受容体間レチノイド結合タンパク質、ロドプシンおよびリカバリンからなる群より選択される一つ又は複数の自己タンパク質、自己ポリペプチド、または自己ペプチドをコードするポリヌクレオチドを含むように修飾する。一つ又は複数の自己タンパク質、自己ポリペプチド、または自己ペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む治療有効量の自己ベクターは、本発明の教示によって投与される。例えば、自己ベクターの治療有効量は、約0.001μg〜約1gの範囲内である。自己ベクターの好ましい治療量は、約10μg〜約5mgの範囲内である。自己ベクターの最も好ましい治療量は、約0.025mg〜約5mgの範囲内である。DNA療法は、6〜12ヵ月間にわたり月1回、そしてその後は3〜12ヵ月毎に維持用量として送達する。また別の治療レジメンを開発することができ、疾患の重症度、患者の年齢、投与される1つ以上の自己タンパク質、自己ポリペプチド、または自己ペプチドおよび通常の治療担当医師が考慮に入れるであろうその他の要素に依存して、1日1回から週1回、隔月、年1回、単回投与までの範囲に及んでよい。
【0155】
好ましい態様では、DNAは筋内注射によって送達する。または、DNA自己ベクターは吸入剤として、鼻腔内、経口、皮下、皮内、静脈内、皮膚を通しての印加により送達し、そして自己免疫性ブドウ膜炎を治療する場合は、皮膚へまたは皮膚を通して送達する金粒子へ付着させる。また別の態様では、DNAは、生理的レベルのカルシウム(0.9mM)を含むリン酸緩衝食塩液中で調製する。または、DNAは1mM〜2Mのより大量のCa++を含有する溶液中で調製できる。DNAは、亜鉛、アルミニウム、およびその他等の他のカチオンを用いて調製する。
【0156】
実施例15
原発性胆汁性肝硬変を予防するためのミトコンドリア酵素自己タンパク質をコードするDNAの投与を含むポリヌクレオチド療法
原発性胆汁性肝硬変(PBC)のマウスモデルは実験的自己免疫性胆管炎(EAC)であり、哺乳類ピルビン酸デヒドロゲナーゼ複合体(PDC)または雌性SJL/Jマウスにおける合成PDCペプチドを用いたi.p.(腹腔内)感作を使用する(Jones,J Clin Pathol 53:813-21,2000)。抗ミトコンドリア抗体は多数の系統で観察されるが、NSDCはマウスの単一系統(SJL/J)で観察され、これはIBEC損傷の誘導には追加の応答因子が必要とされることを示唆している。マウスは、精製ウシPDCを用いて腹腔内感作する(10mg/mLの濃度で完全フロイントアジュバント(IFA)中に1:1(v/v)で混合した100μLの食塩液中の500μg)。全感作は8〜12週齢で実施した。尾静脈法血は抗原惹起投与前ならびに感作4、8、12、16、20および30週間後に実施する。同一の時間間隔で、ビリルビン、アルカリホスファターゼ、アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)、およびアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)を含む肝機能検査を実施する。動物(各群10匹)は感作30週間後に致死させ、ヘマトキシリン&エオシン染色および過ヨウ素酸シッフを使用して肝組織学検査を評価する。胆管異常、門脈路における壊死炎症性変化および肉芽腫性浸潤における変化についても試験する。
【0157】
PDC-E2および-E3をコードするDNAはPCRを使用して単離し、発現自己カセットpTARGET(Promega社、ウィスコンシン州マディソン)内へクローニングし、大腸菌中で増幅させ、以前に記載したとおり内毒素無含有プラスミド精製キット(Qiagen(商標))を使用して製造業者の取扱説明書にしたがって精製する。1つ以上の自己タンパク質PDC-E2および-E3をコードするDNAを含むポリヌクレオチド療法は疾患を誘導する前に動物へ投与する。投与すべき1つ以上の自己タンパク質、自己ポリペプチド、または自己ペプチドの選択は、以前に記載したように一連の実験に基づいて決定されるが、総計して約1〜8個、好ましくは2〜6個、および最も好ましくは3〜5個の抗原自己タンパク質、自己ポリペプチド、または自己ペプチドを含有する。IL-4等のサイトカインをコードするDNAを含むベクターは自己ベクターと一緒に投与できる。
【0158】
実施例16
原発性胆汁性肝硬変を予防するため、および確定原発性胆汁性肝硬変を治療するための、ミトコンドリア酵素自己タンパク質をコードするDNAの投与を含むポリヌクレオチド療法
ヒトPDC-E2および-E3をコードするDNAはPCRを使用して単離し、適切な哺乳類発現ベクターの発現自己カセット内へクローニングし、大腸菌中で増幅させ、内毒素無含有プラスミド精製法を使用して精製する。1つ以上の自己タンパク質PDC-E2および-E3をコードするDNAを含むポリヌクレオチド療法を、確定PBCを有するヒトへ投与する。IL-4等のサイトカインをコードするDNAを含むベクターは自己ベクターと一緒に投与できる。ヒトにおけるPBCに対するDNA療法の有効性は、ビリルビン、アルカリホスファターゼ、アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)、およびアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)を含む連続的肝機能検査、ならびに肝不全が進行する時間における遅延を測定することによって決定する。経皮的肝生検後に、肝組織はヘマトキシリン&エオシン染色および過ヨウ素酸シッフによって評価する。胆管異常、門脈路における壊死炎症性変化および肉芽腫性浸潤における変化を疾患活動性の証拠について試験する。
【0159】
PBC患者、またはPBCを発生する高リスクの患者は、ピルビン酸デヒドロゲナーゼ複合体等のミトコンドリアタンパク質に対して向けられた血清中自己抗体を同定することによって効率的に診断することができる。無症候性ヒト患者は、診断的自己抗体の存在についてELISA、ウェスタンブロット、またはタンパク質アレイ等の利用できる血清学的検査を使用して試験される。陽性血清学検査結果を有する患者は、前記に記載したように疾患の発症を予防するためにポリヌクレオチド療法を用いて予防的に治療する。ヒトにおけるPBCに対するDNA療法の有効性は、ビリルビン、アルカリホスファターゼ、アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)、およびアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)を含む連続的肝機能検査、ならびに肝不全が進行する時間における遅延を測定することによって決定する。経皮的肝生検後に、肝組織はヘマトキシリン&エオシン染色および過ヨウ素酸シッフによって評価する。胆管異常、門脈路における壊死炎症性変化および肉芽腫性浸潤における変化を疾患活動性の証拠について試験する。血清中自己抗体プロフィールもまた分析する。
【0160】
実施例17
アルツハイマー病を治療するためのアミロイドβタンパク質をコードするDNAの投与を含むポリヌクレオチド療法
ヒトアミロイドβ(Aβ)ポリペプチドをコードするDNAを含む自己ベクターを構築する。以前に記載したように、前記カセットはレシピエント細胞内でDNAを発現させるために転写および翻訳調節配列を有する。
【0161】
自己ペプチドAβをコードするDNAを含むこの自己ベクターを筋肉内注射によってマウスに投与した。自己ベクターの投与48時間前に、2つの大腿四頭筋各々に筋肉内注射によって50μLの0.25%ブピバカインを注射した。Aβ自己ペプチドをコードするDNAを含む自己ベクターは、内毒素除去ステップを含む標準技術を使用して精製した。DNAは、内毒素無含有の発熱物質無含有の水に、再懸濁させ、そして貯蔵した。注射前に、Aβ自己ペプチドをコードするDNAを含む自己ベクターをPBS中において1mg/mLの最終濃度で調製した。このDNA調製物50μLをその後、2つの大腿四頭筋各々に筋肉内注射により投与した。さらに、免疫刺激性CpGオリゴヌクレオチドは動物1匹当たり10μgの用量で筋肉内投与した。CpGオリゴを含むブピバカインおよびDNAの第2回追加免疫は初回免疫2週間後に実施した。その後、Aβペプチドに対する抗体の存在について試験するために、DNA初回投与の4〜6週間後にマウスから血清を採取した。抗体レベルは標準ELISA技術によって測定した(図4)。前記のプロトコールによって治療した正常マウスは、Aβペプチドに対する有意な抗体力価を発生する。
【0162】
AβをコードするDNAを含む自己ベクターを用いたこのプロトコールを使用する実験は、ヒトAβトランスジェニックマウスで実施する。トランスジェニックマウスはヒトAβ遺伝子構築物を含む単細胞胚を注射し、その後適切なマウス宿主系統内へこれらの胚を再導入することによって構築する(Gamesら、Nature 373:523-527,1995);(Hsiaoら、Science 274:99-102,1996)。結果として生じた子孫は、ゲノム内のAβ遺伝子構築物の存在についてスクリーニングする。これらのマウスは、ヒトアルツハイマー病を模倣する特徴的な病理生理学的および行動的異常を表示する。若齢前症候性マウスおよび高齢症候性マウスのどちらも、前記構築体をコードするDNAを含む自己ベクターを用いて治療する。測定される有効性のパラメータには、認識行動検査および組織病理学検査での改善が含まれる。若齢前症候性マウスは、認識欠損の発生率および組織学検査場のアミロイド斑を決定するために、DNA療法の12〜18ヵ月後に検査する。高齢症候性マウスは、行動検査上の絶対的臨床スコアにおける改善および組織学検査上のアミロイド斑の大まかな数の減少について、DNA療法の3〜6ヵ月後に検査する。
【0163】
実施例18
ヒトアルツハイマー病を予防および治療するためのアミロイドβタンパク質をコードするDNAの投与を含むポリヌクレオチド療法
ヒトアミロイドβ(Aβ)ポリペプチドをコードするDNAを含む自己ベクターを構築する。以前に記載したように、前記カセットはレシピエント細胞内でDNAを発現させるために転写および翻訳調節配列を有する。治療される対象には、アルツハイマー病を発症する高い臨床的可能性を有する、または早期認識障害の証拠もしくは将来アルツハイマー病を発症するというその他の証拠を有するヒト患者、または臨床的に明確なアルツハイマー病を有する患者が含まれる。自己ペプチドAβをコードするDNAを含むこの自己ベクターを筋肉内注射によって投与する。Aβ自己ペプチドをコードするDNAを含む自己ベクターは、内毒素除去ステップを含む標準技術を使用して精製する。DNAは、内毒素無含有の発熱物質無含有の水に、再懸濁させ、そして貯蔵する。注射前に、Aβ自己ペプチドをコードするDNAを含む自己ベクターをPBS中において1mg/mLの最終濃度で調製する。このDNA調製物1mLをその後、大腿四頭筋に筋肉内注射により投与する。さらに、自己ベクター構築物は、多量体Aβポリペプチドがコードされるように、介在配列によって連結されたDNAをコードするAβの多量体を含有していてよい。この方法で、免疫原として標的となる主要ペプチド構造だけではなく二次構造(複数のAβペプチドによって形成されるβプリーツシート等)もまた免疫原として標的とする。自己ポリヌクレオチドの追加免疫を初回免疫の2〜4週間後に投与し、臨床疾患の減少と相関するレベルである十分な抗アミロイドβ抗体が達成されるまで反復する。3〜4ヵ月毎に、血清をヒトから採取してAβに対する抗体の存在および力価について監視する。これは標準ELISA技術によって測定する。追加のAβ自己ポリヌクレオチド追加免疫は抗AR抗体の治療的力価を維持するために送達する。ヒトにおける有効性は、認識欠損の進行の緩徐化および/または認識機能における改善によって証明される。
【0164】
実施例19
α-シヌクレインをコードするDNA療法を用いてパーキンソン病を治療する方法
適切な制御要素および調節要素を含むヒトα-シヌクレインポリペプチドをコードするDNA自己ベクターを構築する。カセット、使用したベクターおよび投与は、実施例6に記載したものに類似する。α-シヌクレインに対する抗体の産生を測定する。次に、ヒトα-シヌクレイン遺伝子を導入した若齢前症候性マウスおよび高齢症候性マウスの両方にDNA構築物を投与する。現在では、α-シヌクレイン遺伝子についての数種のトランスジェニックマウスモデルを利用できる。これらのトランスジェニック系統の1つは、細胞内封入物を発生し、運動障害を有する(Masliahら、Science 287:1265-1269,2000)。これらの治療された動物を次に疾患の臨床的および病理生理学的両方のパラメータにおける改善について評価する。若齢前症候性マウスは、運動欠損の発生率および組織学検査上の細胞内封入物を決定するために、DNA自己ベクター療法の9〜12ヵ月後に検査する。高齢症候性マウスは、運動検査上の絶対的臨床スコアにおける改善および組織学検査上の細胞内封入物の大まかな数の減少について、DNA自己ベクター療法の3〜6ヵ月後に検査する。
【0165】
実施例20
ハンチントンタンパク質をコードするDNA療法を用いてハンチントン病を治療する方法
様々な長さのCAGトリヌクレオチド反復配列をコードするDNA自己ベクターを構築し、実施例6に記載したとおりの経路およびレジメンにより投与する。ハンチントンタンパク質に対する抗体の産生を測定する。増加した数のCAGトリヌクレオチド反復配列を有する変異体ヒトハンチントン遺伝子が導入された若齢前症候性マウスおよび高齢症候性マウスの両方にDNA構築物を投与する。突然変異ハンチントン遺伝子を導入したマウスは、ヒト疾患とほぼ同一の臨床的および病理生理学的特徴を有する。これらのマウスは、突然変異ハンチントンからなる細胞内封入物を発生し、ヒト疾患におけるような運動異常を有する。最近の試験は、突然変異遺伝子の発現が停止すると、疾患の組織病理学が逆転され、臨床症状が改善することを証明した(Yamamotoら、Cell 101:57-66,2000)。DNAで治療された動物を疾患の臨床的および病理生理学的両方のパラメータにおける改善について評価する。若齢前症候性マウスは、運動欠損の発生率および組織学検査上の細胞内ハンチントン封入物を決定するために、DNA療法の9〜12ヵ月後に検査する。高齢症候性マウスは、運動検査上の絶対的臨床スコアにおける改善および組織学検査上の細胞内封入物の大まかな数の減少について、DNA療法の3〜6ヵ月後に検査する。
【0166】
実施例21
ハンチントンタンパク質をコードするDNA療法を用いてハンチントン病を予防および治療する方法
確定ハンチントン病を有するヒト、または突然変異ヒトハンチントン遺伝子についての陽性検査結果を有するためにハンチントン病を発生しやすいヒトは、確定ハンチントン病の発生を予防するため、または治療するためにハンチントンタンパク質をコードする自己ポリヌクレオチドを用いて治療できる。様々な長さのCAGトリヌクレオチド反復配列をコードするDNA自己ベクターを構築し、筋肉内注射に、そして4〜8週間後の追加免疫により投与する。自己ポリヌクレオチド療法の有効性を増加させるために、これは免疫刺激DNA配列と一緒に投与できる、および/またはC3dへ融合させることができる。ハンチントンタンパク質に対する抗体の産生を測定し、そして治療レベルと相関する抗ハンチントン抗体力価を達成するために追加のDNA自己ベクター追加免疫を送達する。有効性は、ハンチントン病の神経学的特徴における臨床的改善に基づく。
【0167】
実施例22
プリオン自己タンパク質をコードするDNA療法を用いてプリオン病を治療する方法
βシート形成に含まれるプリオンタンパク質ドメインをコードするDNA自己ベクターを構築する。プラスミドベクターは、実施例6に記載したとおりに投与する。プリオンタンパク質に対する抗体の産生を測定する。プリオン病のトランスジェニックモデルにおいて若齢前症候性マウスおよび高齢症候性マウスの両方にDNA構築物を投与する。これらのマウスは、これらのマウスにヒトプリオン病の行動的および病理生理学的異常を模倣する緩徐進行性神経変性障害を付与する突然変異を含有するプリオン遺伝子についてトランスジェニックである(Chiesaら、Neuron 21:1339-1351,1998)。若齢前症候性マウスは、異常な組織学検査結果とともに認識欠損および運動欠損の発生率を決定するために、DNA療法の9〜12ヵ月後に検査する。高齢症候性マウスは、認識および運動検査上の絶対的臨床スコアにおける改善および組織学検査上の異常の重症度における減少について、DNA療法の3〜6ヵ月後に検査する。
【0168】
実施例23
摂食行動、脂質生成、および/または代謝を調節することに関係する自己タンパク質をコードするDNAを用いた肥満の治療方法
摂食行動、脂質生成、および/または代謝を調節することに関係するシンデカン-3、ペリリピン、オレキシン、ガラニン、およびグルコガン様ペプチド受容体ならびに本発明の教示を使用すると当業者には明白になるであろう他のタンパク質からなる群より選択される一つ又は複数の自己タンパク質、自己ポリペプチド、または自己ペプチドをコードするDNAを含むDNA自己ベクターは、以前に記載したようにPCRを使用して自己タンパク質、自己ポリペプチド、または自己ペプチドをコードするDNAを入手した後に構築する。これらの1つ以上のDNA自己ベクターをマウスへ筋肉内注射により投与する。DNAの投与48時間前に、2つの大腿四頭筋各々に筋肉内注射によって50μLの0.25%ブピバカインを注射する。プラスミドDNAは、内毒素無含有除去ステップを含む標準技術を使用して精製する。DNA自己ベクターは、内毒素無含有の発熱物質無含有の水に、再懸濁させ、そして貯蔵する。注射前に、DNA自己ベクターは、0.9mMのカルシウムを含むPBS中において1mg/mLの最終濃度で調製する。このDNA自己ベクター調製物50μLをその後、2つの大腿四頭筋各々に筋肉内注射により投与する。1つの態様ではDNA自己ベクターをアジュバントを使用せずに投与し、また別の態様ではDNAを免疫刺激性CpGオリゴヌクレオチドまたは他の薬剤と一緒に、動物1匹当たり10μgの用量で筋肉内注射により投与する。CpGオリゴを含むブピバカインおよびDNAの第2回追加免疫は初回免疫2週間後に実施する。その後、コードされた自己タンパク質に対する抗体の存在について試験するために、DNA初回投与の4〜6週間後にマウスから血清を採取する。これは標準ELISA技術によって測定する。このDNA自己ベクター療法は、脂肪からのカロリーを9%しか含有していない標準マウス飼料とは対照的に、肥満を促進する高脂肪食(カロリー中に55%脂肪を含む[カタログ番号93075、Harlan Taklad社、ウィスコンシン州マディソン])を摂食させたC57BL/6マウスにおいてそれが体重増加を低下させて体重減少を促進する能力について個別に、および組み合わせて評価する。
【0169】
実施例24
軟骨リモデリング、変性、および成長を調節することに関係する自己タンパク質をコードするDNAを用いた変形性関節症を予防する方法
PCRを使用してカテプシン、プラスミン、コラゲナーゼ、およびメタロプロテイナーゼをコードするDNAを単離し、実施例1に記載したものに類似するプラスミドDNA発現ベクター内にクローニングする。短い欠失突然変異を有するプロα1(II)コラーゲン導入遺伝子の6コピーを有するDel1マウスは、3月齢で発現する変形性関節症に罹患する(Salminenら、Arthritis Rheum 44:947-955,2001);(Rintalaら、J Anat 190:201-208,1997)。4週齢で開始し、これらのマウスはカテプシン、プラスミン、コラゲナーゼおよびメタロプロテイナーゼを個別または組み合わせてコードするDNA自己ベクターの1週間置きの注射を受ける。マウス群を1ヵ月間隔で致死させ、それらの膝軟骨の組織学的分析を実施する。
【0170】
実施例25
自己タンパク質Nogo-AをコードするDNA療法を用いて脊髄損傷を予防する方法
脊髄損傷に対する治療の標的は、Nogo-Aと呼ばれるタンパク質である。Nogo-Aに対する抗体は、脊髄損傷の動物モデルにおいて軸索再成長を促進することが証明されている。Nogo-A分子の阻害能力の原因である可能性があると同定されているNogo-A分子の2つの領域、つまり細胞外66アミノ酸ループおよびAS472と呼ばれる細胞質内C-末端領域のマウス、ラット、およびヒト配列をコードするDNAを含む自己ベクターを構築する。このDNAを、本発明の自己ベクターを形成する適切なDNA発現ベクター内にクローニングし、Nogo-Aのこれらの領域に対する中和抗体応答を産生するために投与する。生成した抗体の中和作用を試験するために、インビトロアッセイを使用して組み換えNogoタンパク質の存在下で、3T3線維芽細胞拡散、後根神経節(ニワトリE12 DRG培養)、神経突起生長、およびマウスP4脳顆粒ニューロン萌芽を評価する。DNA構築物は、脊髄損傷が証明された動物モデル中で試験される。これらのモデルには、ラット脊髄挫傷モデルおよび脊髄離断モデルが含まれる。3種の実験的治療プロトコールに従う。つまり、予防的DNA自己ベクター治療(脊髄病変後のDNA自己ベクターの投与)、急性期治療(病変直後のDNA自己ベクターの投与)および慢性期治療(慢性傷害ニューロンにおける生長修復についての可能性を評価するために長期間DNA自己ベクター投与)。軸索修復を標準的組織学的技術および軸索マーカーについての免疫組織化学検査の使用を通して測定する。運動軸索再生は、皮質脊髄路についてはビオチンデキストランアミン、ならびにセロトニン作動性(縫線脊髄)およびノルアドレナリン作動性(脳脊髄)ニューロンについての免疫組織化学による順行性追跡法を使用して試験される。機能的回復は、臨床評価についての標準化法法を使用して評価する。21ポイントBBB歩行運動スケール、グリッド歩行、ナロービームクロッシングおよび登坂性能試験等の運動回復検査を使用する(Ramon-Cuetoら、Neuron 25:425-435,2000);(Merklerら、J Neurosci 21:3665-3673,2001)。後肢運動回復の評価では、脚筋肉の筋電計記録を使用した。感受性は、軽い接触(接触配置)、関節屈曲(固有受容)および尾のはね(疼痛)検査への反応を使用して試験する。
【0171】
実施例26
主要組織適合性自己タンパク質および追加の自己タンパク質をコードするDNA療法を用いて移植片対宿主病を予防および治療する方法
移植片対宿主病(GVHD)は、同種造血細胞移植片を受け入れた患者において重大な罹病率および死亡率を引き起こす。GVHDは、レシピエントの細胞によって発現される自己タンパク質を攻撃する移植片免疫細胞によって媒介される。Balb/c(H-2d)マウスからBalb/k(H-2k)マウスへの骨髄細胞トランスファーを使用すると、H-2dクラスIおよびクラスIIのMHC自己タンパク質をコードするDNAがGVHDを減少させることが証明される。造血幹細胞移植片のためには、骨髄をBalb/cマウスの大腿から入手し、そしてMiniMACS/MidiMACS分離システム(Miltenyi Biotech社、カリフォルニア州アバーン)を使用してc-Kitの発現のために陽性選択する。c-Kit選択した細胞は、2分画で送達した800cGyの分割線量致死的照射の24時間後にBalb/kレシピエントの尾静脈内へ注射する。レシピエントマウスは、GVHDを減少させるためにH-2dクラスIおよびクラスIIのMHC自己タンパク質をコードするDNAを含む自己ベクターの週1回3回の投与により前治療する。GVHDは、肝酵素(アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ、アラニンアミノトランスフェラーゼ、アルカリホスファターゼ、ビリルビン)の測定ならびに炎症および壊死(急性GVHD)ならびに慢性炎症、線維症および萎縮(慢性GVHD)の証拠についてGVHDに一般に罹患した器官(皮膚、消化管、肝臓等)の組織学的分析に基づいて監視する。混合リンパ球培養は、照射宿主抗原提示細胞への移植片リンパ球の応答の低下に基づいて、免疫寛容誘導の程度を評価するために実施する。
【0172】
ヒトMHCクラスIおよびクラスIIの対立遺伝子をコードするDNA自己ベクターは、以前に記載したとおりに調製する。造血幹細胞移植片レシピエントは、それらが発現する特異的MHCクラスIおよびクラスIIの対立遺伝子を決定するために試験される。レシピエントのクラスIおよびクラスIIの対立遺伝子をコードするDNA療法を使用して、移植すべき移植細胞はGVHDを予防するためにインビトロで前処置する。進行中GVHDを有する移植後レシピエントを治療するために、これらの自己MHC分子をコードするDNAを使用する。DNA療法は、GVHD関連性移植後死亡率、ならびに皮膚発疹、消化管の関与、および肝臓を含むその他の器官の関与を含むGVHDの臨床発現を減少させることができる(アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ、アラニンアミノトランスフェラーゼ、アルカリホスファターゼ、ビリルビンを含む肝障害のマーカーについての血清検査によって監視する)。
【0173】
実施例27
オステオポンチンをコードするDNAを用いて多発性硬化症およびその他の自己免疫疾患を治療する方法
オステオポンチンは、多発性硬化症およびその動物モデルEAEにおいて病原的役割を果たすことが最近同定された多形質発現性分子である。オステオポンチンは、さらにまた炎症性関節炎およびその他のヒト自己免疫疾患において中心的役割を果たす可能性がある。自己タンパク質オステオポンチンをコードするDNAを用いたマウスの治療は、宿主において疾患を不滅化する際のオステオポンチンの有害な影響を阻害する抗オステオポンチン性免疫グロブリン反応を誘導する。オステオポンチンをコードする自己ベクターDNAは、pCDNA3哺乳類発現ベクター内へオステオポンチンをコードするDNAをクローニングすることにより生成した。pCDNA3は、CMVプロモーターおよびSV-40ラージT抗原ポリアデニル化シグナルを含有する。このオステオポンチンをコードする自己ベクターは、Qiagen Endo-free Mega-prepキット(Qiagen社、カリフォルニア州バレンシア)を使用して精製した大腸菌および内毒素無含有DNA内で産生した。マウスには、PBS(1大腿四頭筋につき0.05mL)中に溶解させた0.1mLの0.25%塩酸ブピバカイン(Sigma社、ミズーリ州セントルイス)を大腿四頭筋内に注射する。2日後、マウスの各大腿四頭筋内に、0.9mMカルシウムを含むリン酸緩衝食塩液中の0.05mLの各自己プラスミドDNA(1.0mg/mL)を注射する。プラスミドDNAは2〜4週間間隔でさらに2回注射する。抗オステオポンチン抗体のオステオポンチンをコードする自己ベクター誘導の有効性は、CpG免疫刺激性オリゴヌクレオチドの共送達(以下で記載する)および/または一つ又は複数のC3dコンポーネントに融合させたオステオポンチンをコードするDNAを用いた治療(以下で記載する)によって強化することができる。療法の有効性を表す抗オステオポンチン抗体を誘導して、酵素結合免疫吸着アッセイを使用して抗オステオポンチン抗体のレベルを監視した。引き続き、完全フロイントアジュバント中のミエリンペプチド(典型的にはPLP p139-151)を用いてマウスにEAEを発生させるように惹起投与すると、オステオポンチンをコードする自己ベクターを用いて前治療したマウスは図5に示したように発生率およびEAEの重症度を低下させる。または、慢性再発性EAEに罹患しやすいマウスの系統(例えば、SJLマウス)はEAEを発生するように誘導することができ(例えば、完全フロイントアジュバント中のPLP p139-151を用いて)、そして疾患を治療するためにオステオポンチンに対する抗体を誘導するために確定EAEを用いてマウスにおいて2週間間隔でオステオポンチン自己ベクター療法を開始する。有効性は、標準採点システム(前記に記載した)を使用して総疾患重症度および臨床的麻痺の新規エピソード数の低下に基づいて測定する。
【0174】
多発性硬化症のある人では、オステオポンチン自己ベクター療法を診断後に開始する。有効性は、ELISA分析によって測定するように、多発性硬化症のある患者における抗オステオポンチン抗体の誘導に基づいて監視する。有効性はさらに、脳MRIスキャニング上の病変の数およびサイズの減少、疾患再発回数の低下(臨床的麻痺のエピソード)、および能力障害への進行の緩徐化に基づいて証明される。
【0175】
実施例28
自己組織移植片タンパク質をコードするDNAを用いて組織移植片拒絶反応を予防および治療する方法
組織および器官(腎臓、肝臓、心臓、肺、輸血、膵島細胞、造血細胞等)の移植術にとって現在最も大きな限界の1つは、レシピエントによる組織移植片の免疫拒絶反応である。免疫拒絶反応は、組織移植片タンパク質中での対立遺伝子の変化を認識するレシピエントの免疫系によって媒介される。これらの組織移植片は、組織移植片のゲノム内でコードされる関連自己タンパク質のこれらの対立遺伝子変化に基づいて自己組織となる。レシピエント内への組織およびそのゲノムの移植はこれらのタンパク質を前記レシピエントにとって自己タンパク質にする。組織移植片拒絶反応は、組織移植片内のMHCクラスIおよびクラスIIタンパク質に対する、そしてレシピエントに比較して組織移植片において対立遺伝子変化を備える組織適合性および追加の抗原に対するレシピエント免疫応答によって媒介される。
【0176】
Balb/c(H-2d)マウスとBalb/k(H-2k)マウスとの間の組織移植を使用すると、移植片レシピエントに投与されたようなH-2dクラスIおよびクラスIIのMHC分子をコードするDNA自己ベクターは固形器官組織移植片の拒絶を減少させる。標準プロトコールを用いて、心臓をH-2dマウスからH-2kマウス内の異所性腹部位置内へ移植した(異所性移植は単純な触診によって移植された心臓の厳密な監視を可能にする)。レシピエントマウスはH-2dクラスIおよびクラスIIのMHC分子をコードするDNAを含むpTARGETの3週に渡る週1回の投与により、および/またはH-2dクラスI又はクラスII分子をコードするDNAを使用した移植後週1回または隔週または月1回の治療を用いて前治療する。組織移植片の自己MHCおよびその他の自己タンパク質をコードするDNA自己ベクターを用いた前治療および/または移植後治療は、移植した心臓の触診によって監視されるように、レシピエントマウスにおける移植片の生存期間を延長させる。
【0177】
ヒトMHCクラスIおよびクラスIIの対立遺伝子をコードするDNA自己ベクターは、以前に記載したとおりに生成する。移植片ドナーおよびレシピエントは、それらが発現する特異的MHCクラスIおよびクラスIIの対立遺伝子を決定するために試験される。組織移植片ドナーのクラスIおよびクラスIIのMHC対立遺伝子をコードする自己ベクターの投与を含むDNA自己ベクター療法を使用して、組織移植片拒絶を予防するために移植した器官のレシピエントを前治療した。移植後レシピエントにおける組織移植片拒絶を治療するために、自己MHC分子をコードするDNAを投与した。自己ベクターの投与を含むDNA療法は、免疫器官移植拒絶を低下させ、組織移植片の生存期間を延長させる。
【0178】
実施例29
疱瘡ワクチン接種後の免疫媒介性脳脊髄炎を予防または治療する方法
疱瘡ワクチン接種の主要な限界の1つは、現在利用できる疱瘡ワクチンを受けた約千人に1人の患者において発生するワクチン接種後急性播種性脳脊髄炎の合併症である。このワクチン接種後急性播種性脳脊髄炎は、ミエリンおよびその他の中枢神経系タンパク質に対して向けられたワクチン誘発性自己免疫応答によって媒介される。
【0179】
ヒトの疱瘡ワクチン接種誘発性免疫媒介性脳脊髄炎を治療するための本発明のポリヌクレオチド療法は、以下のとおりに実施する。一つ又は複数のヒトミエリン自己タンパク質をコードするDNA配列をpTARGETまたはその他の適切なDNA自己ベクター内へクローニングする。そのような自己免疫反応が標的とするミエリン自己タンパク質をコードするDNAには、ミエリン塩基性タンパク質、プロテオリピドタンパク質、ミエリン関連糖タンパク質、環状ヌクレオチドホスホジエステラーゼ、ミエリン関連糖タンパク質、ミエリン関連乏突起神経膠細胞塩基性タンパク質およびα-B-クリスタリンが含まれる。DNAは、以前に記載されたように、治療薬としてヒトへ送達するために、細菌内毒素を排除して精製される。DNA自己ベクター療法は、6〜12ヵ月間にわたり月1回または隔月、そしてその後は3〜12ヵ月毎に維持用量として送達する。また別の治療レジメンを開発することができ、1日1回から週1回、1ヵ月置きの範囲にわたってよい。前記のDNA療法を用いて治療したヒト患者を、臨床症状(運動能力、感覚、および認識尺度を含む)の進行および中枢神経系病変の数および程度についてのMRIモニタリングに基づいて疾患活動性について監視する。
【0180】
実施例30
自己ポリペプチドをコードするDNAを用いた療法と併用して抗自己ポリペプチド免疫グロブリン力価を増加させるための免疫刺激性DNA配列の使用方法
自己ポリペプチドをコードするDNAを用いたマウスの治療は、一般に自体への免疫寛容によって付与される障壁のために、コードされた自己ポリペプチドに対する低い抗体力価を備える弱い免疫応答を誘導する。病原性自己タンパク質によって惹起または促進される疾患を治療するための自己ポリペプチドに対する高抗体力価を誘導するために、その免疫原性能力を増強する目的でアジュバントは自己ベクターDNAへ添加した。そのようなアジュバントの1つは、免疫刺激性であることが知られているヌクレオチド配列である。いわゆるCpG配列はDNA内でコードされた抗原に対する免疫応答を増強できると報告されている(Kriegら、Nature 374:546-549,1995;Klinmanら、PNAS(USA)93:2879-2883,1996;Satoら、J Rheumatol.26:294-301,1999)。CpG配列は、内生的にプラスミド内に存在するCpG配列の数を増加させる、またはオリゴヌクレオチドを含有する外因性CpGを添加するのどちらかによってDNA自己ベクター調製物内に組み込まれる。どちらの場合のCpG配列もモチーフ、プリン-プリン-C-G-ピリミジン-ピリミジンのCpG配列である。複数の内因性CpG配列は、部位特異的突然変異誘発を使用してプラスミドの非コード領域内に組み込んだ。外因性CpGオリゴヌクレオチドはいずれかの場所で1〜10のCpG配列を含有しており、長さが10〜100ヌクレオチドである。さらに、これらのオリゴヌクレオチドのバックボーンは、例えばホスホロチオエート化バックボーンを用いて、変性の機会を減少させるために修飾される。免疫刺激性CpGオリゴヌクレオチドは、動物1匹当たり10μg〜100μgの用量で筋肉内投与される。この戦術は、抗体力価の増加が所望である場合は、自己ポリペプチドをコードあらゆるポリヌクレオチドへ適用される。
【0181】
実施例12に記載したように、外因性CpGオリゴヌクレオチドを使用して、DNAによって投与されたような自己タンパク質アミロイドβ(Aβ)に対する抗体応答を増強した。自己ペプチドAβをコードするDNAを含む自己ベクターを筋肉内注射によってマウスに投与した。自己ベクターの投与48時間前に、2つの大腿四頭筋各々に筋肉内注射によって50μLの0.25%ブピバカインを注射した。または、DNA療法はプリコンディショニングなしのレジメンを用いて有効な自己ベクターの投与を含んでいた。AβをコードするDNAを含む自己ベクターは、内毒素除去ステップを含む標準技術を使用して精製した。DNAは、内毒素無含有の発熱物質無含有の水に再懸濁させ、そして貯蔵した。注射前に、AβをコードするDNAを含む自己ベクターをPBS中において1mg/mLの最終濃度で調製した。このDNA調製物50μLをその後、2つの大腿四頭筋各々に筋肉内注射により投与した。さらに、免疫刺激性CpGオリゴヌクレオチドは動物1匹当たり10μgの用量で筋肉内投与した。CpGオリゴを含むブピバカインおよびDNA自己ベクターの第2回追加免疫は初回免疫2週間後に実施した。その後、Aβペプチドに対する抗体の存在について試験するために、DNA初回投与の4〜6週間後にマウスから血清を採取した。これは標準ELISA技術によって測定した。このプロトコールによって治療した正常マウスは、Aβペプチドに対する有意な抗体力価を発生した。力価は、CpGオリゴヌクレオチドをアジュバントとして使用すると有意に増加した。
【0182】
実施例31
自己免疫応答の標的とされる器官または組織中で発現した自己タンパク質のライブラリーをコードするDNAの投与を含むポリヌクレオチド療法
自己免疫を治療するためのまた別の戦術は、免疫攻撃下にある組織または器官内に存在する自己タンパク質の多数または全部をコードするDNAを投与することである。cDNA発現ライブラリーは、特定の組織、器官または細胞タイプ内で発現する自己タンパク質の多数または大半をコードするDNAを含有している。このようなcDNA発現ライブラリーは、宿主へ投与されるとそれらがコードするポリペプチドの発現を可能にするために自己ベクター内で生成される。確定多発性硬化症を有する動物およびヒトは、脳内の乏突起神経膠細胞内で発現するcDNAライブラリーをコードする自己ベクターを用いて治療される。慢性関節リウマチを有する動物およびヒトは、慢性関節リウマチにおける自己免疫応答の標的である滑膜性関節内で発現するcDNAライブラリーをコードする自己ベクターを用いて治療される。自己免疫性糖尿病を有する動物およびヒトは、膵臓のβ細胞内で発現するcDNAライブラリーをコードする自己ベクターを用いて治療される。膵臓のβ細胞内で発現するcDNAをコードする自己ベクターは、さらにまた自己免疫性糖尿病を発生するリスクが高いと同定された個体における臨床的糖尿病の発生を予防するために利用できる。または、全cDNAライブラリーを使用する代わりに、自己免疫を治療するために自己ベクター内でコードされたcDNA発現ライブラリーの大きなサブセットを使用できる。
【0183】
実施例32
様々な疾患のための一つ又は複数の自己タンパク質、自己ポリペプチドおよび自己ペプチドをコードするDNAの投与を含むポリヌクレオチド療法および免疫調節分子
実施例1、2および9〜23に記載した方法は、1つ以上の自己タンパク質、自己ポリペプチド、自己ペプチドの同定、様々な疾患を治療するための自己ベクターの調製および投与について記載している。それらの実施例に記載のこれらの方法は、自己ベクターを例えば免疫刺激配列(ISS)、C3d、IL-4、IL-10、およびIL-13を含む免疫調節分子と一緒に投与するという修飾を含めて実施する。
【0184】
自己免疫疾患を治療または予防するために追加の免疫調節分子と一緒に一つ又は複数の自己タンパク質、自己ポリペプチドおよび自己ペプチドをコードするDNAを含むポリヌクレオチド療法は表7に表示した。
【0185】
自己免疫疾患を治療または予防するための一つ又は複数の自己タンパク質、自己ポリペプチドおよび自己ペプチドをコードするDNAを含むポリヌクレオチド療法は表8に表示した。
【0186】
様々な疾患を治療または予防するための追加の免疫調節分子と一緒に一つ又は複数の自己タンパク質、自己ポリペプチドおよび自己ペプチドをコードするDNAを含むポリヌクレオチド療法は表9に表示した。
【0187】
(表7)



【0188】
(表8)
神経変性疾患
自己タンパク質、自己ポリペプチド、または自己ペプチドをコードするDNA、および免疫調節タンパク質、ペプチド、またはポリペプチドをコードする追加のDNAを含むポリヌクレオチド療法
アルツハイマー病
アミロイドβタンパク質(Aβ)+免疫刺激配列(ISS);Aβ+C3d;Aβ+ISS+C3d;τ+ISS;τ+C3d;τ+ISS+C3d
パーキンソン病
α-シヌクレイン+ISS;α-シヌクレイン+C3d;α-シヌクレイン+ISS+C3d
ハンチントン病
ハンチントンタンパク質+ISS;ハンチントンタンパク質+C3d;ハンチントンタンパク質+ISS+C3d
プリオン病
プリオンタンパク質+ISS;プリオンタンパク質+C3d;プリオンタンパク質+ISS+C3d
【0189】
(表9)


【0190】
実施例33
共刺激分子、共刺激を調節することのできる分子、または免疫調節分子をコードするDNAと組み合わせて自己タンパク質、自己ポリペプチド、または自己ペプチドをコードするDNAの投与を含むポリヌクレオチド療法
CD40/CD40L遮断薬(抗-CD40/CD40L抗体)およびB7-CD28遮断薬(CTLA4-Ig)を含む共刺激分子遮断薬を試験する試験は、動物モデルおよびヒト臨床試験のどちらにおいても、自己免疫性の治療のための有意な有効性を証明しており、自己免疫疾患のDNAポリヌクレオチド療法と一緒に使用できる。B7-1およびB7-2はT細胞の表面上のCD28およびCTLA4へ結合する。CD28を通して送達されるシグナルはT細胞を刺激するが、CTLA4の関与は阻害性である。本出願人らは、CIAを治療するためにCTLA4特異的免疫グロブリン(Ig)の膜貫通形をコードするDNAを生成してDNAポリヌクレオチド療法と併用して使用した。共刺激分子であるCTLA4特異的Igの膜結合形をコードするDNAは、RT-PCRを使用してCTLA4特異的Igの重鎖cDNA(CTLA4特異的Mabを産生するATCCからのハイブリドーマから増幅させた)上にIg膜貫通領域をコードするDNAを移植することによって産生した。共刺激分子または例えばCD153およびFasのようなその他の免疫調節分子をコードするDNAと併用する本発明のDNAポリヌクレオチド療法は、自己免疫疾患の治療に使用することができる。
【0191】
実施例34
複数の自己タンパク質をコードするDNAと組み合わせてIMSを使用する多発性硬化症の動物モデルの治療
ミエリンの4種の主要コンポーネントであるMBP、MAG、MOG、およびPLPをコードする全長cDNAから構成したDNAポリヌクレオチド療法は、最初の疾患開始後に投与するとEAE動物モデルにおける再発性疾患を治療した。さらに、ミエリンDNAポリヌクレオチド療法へIL-4をコードするDNAを添加すると、この療法の有効性は再発率の低下によってさらに強化される。しかし、再発率の低下にもかかわらず、総疾患重症度は対照群とまだ匹敵している。雌性SJL/Jマウスを、IFAおよび0.5mgの熱不活化結核菌からなる、CFAに乳化させたPBS中に溶解させた100μgのPLP139-151の皮下投与により免疫した。疾患発症時である免疫の12日後、マウスの両側の大腿四頭筋にPBS中に溶解させた計0.1mLの0.25%塩酸ブピバカインを注射した。2日後、選択したマウスの両方の大腿四頭筋へ、総容量0.2mL中に全長マウスPLP、MAG、MOG、およびMBPをコードする4種の個別pTARGET(Promega Corp.社、ウィスコンシン)プラスミド各25μgに全長マウスIL-4をコードする50μgのpTARGETプラスミドを加えたものを含有するDNAカクテル混合物を筋肉内注射した。DNA注射は、6週間にわたって週1回間隔で投与した。初回DNAワクチン接種と同時点に、200μLのPBSの容量中の50μgのIMSを単独で、またはDNAワクチン接種と一緒に腹腔内投与した。IMSは、6週間にわたって1週置きで投与した。未治療マウスおよびDNAポリヌクレオチド療法+IL-4をコードするプラスミドにより治療したマウスに比較して、IMS単独により治療したマウスは全疾患経過を通して平均疾患重症度の総合的低下を示した(図6)。総平均疾患重症度の低下は、マウスをIMSと併用してDNAカクテル+IL-4により治療したときには有意により劇的であった(図6)。
【0192】
EAE疾患誘導の57日後、マウスを致死させ、マウスから鼡径部および腋窩リンパ節を摘出し、各群毎にプールした。細胞を単離し、富裕化RPMI培地および10%FCS中のPLP139-151中の10μg/mLを用いて刺激した。3日後、ヒト-rIL2を用いて細胞を再刺激した。再刺激3日後、上清を採取し、サンドイッチELISAによってIFN-γγ、IL-4およびIL-10産生についてスクリーニングした。未治療マウスおよびIMS単独またはDNAポリヌクレオチド療法+IL-4により治療したマウスについてのサイトカインプロフィールは、すべてがIFN-γ産生上昇のTh1-バイアスを有していた(図7)。IMSと併用してDNAポリヌクレオチド療法+IL-4により治療された群は、IL-4およびIL-10産生の増加と伴うTh2-バイアスを有していた。
【0193】
実施例35
自己タンパク質インスリンをコードするDNAと組み合わせてIMSを使用したインスリン依存型糖尿病の治療
非非慢性糖尿病性(NOD)マウスは特発性自己免疫性糖尿病を発生し、ヒトインスリン依存型糖尿病(IDDM)と多数の臨床的、免疫学的、および組織病理学的特徴を共有する。この疾患は、高血糖症および顕性糖尿病を引き起こす膵ランゲルハンス島の炎症および膵島細胞の破壊を特徴とする。疾患発症には、CD4T細胞およびCD8T細胞の両方が必要とされる。インスリン、IA-2、およびグルタミン酸デカルボキシラーゼを含む数種の自己抗原に対する反応性が同定されている。
【0194】
自己タンパク質であるインスリンをコードするDNAと併用したIMS療法の有効性は、侵襲性インスリン炎中であるが、IDDMの完全発症前に開始された。NOD/Lt雌性マウスは7週齢で入手し、接近が制限された室内に収容した。マウスは、ワンタッチ式ウルトラ血中グルコース監視システムを使用して10週齢から開始して血中グルコースレベル(BGL)について週1回試験した。治療は、BGLが200〜250mg/dLであるときに開始した。マウスは、15週齢で開始して、利用できるようになると各群へ連続的に加えた。マウスの両大腿四頭筋にはPBS中に溶解させた0.2mLの0.25%塩酸ブピバカインを注射した。2日後、マウスの両大腿四頭筋へpVAX1ベクターを50μg/用量または総量0.2mLのPBS中に溶解させた全長マウスプレプロインスリン-1、プレプロインスリン-2、およびIL-4をコードする3種の個別pVAX1プラスミド各50μgを含有するDNAカクテル混合物を筋肉内注射した。注射は4週間にわたり1週間間隔で投与した。初回DNAワクチン接種と同時点に、200μLのPBSの容量中の50μgのIMSを単独で、またはDNAワクチン接種と一緒に腹腔内投与した。IMSは4週間にわたり1週間間隔で投与した。
【0195】
糖尿病のパーセンテージは、250mg/dLを超える持続性BGLを有するマウスと規定した。4回の治療注射後、IMS単独を受けたマウスは、第24週までに87.5%の糖尿病発生率を有した(図8)。空pVAX1(Invitrogen社、カリフォルニア州)プラスミドを摂取したマウスは50%の糖尿病発生率を有した。免疫調節因子配列と一緒に自己抗原およびサイトカインIL-4をコードするDNAポリヌクレオチドの組み合わせにより治療したマウスは、未治療群における100%の糖尿病発症率と比較して、第24週までに20%しか糖尿病を発症しなかった(図8)。この実験では、DNAプラスミドは筋肉内注射され、他方IMSは腹腔内注射されたが、これはDNAプラスミドのISSおよびIMSが相違する細胞集団を標的とすることを示唆した。さらに、NODマウスはこの試験ではISSに曝露させられなかった。これらをまとめると、この驚くべき予想外の結果は、IMSが天然型自己免疫疾患を効果的に治療することを証明している。
【0196】
前記のシステムについては、その基本的教示から逸脱することなく多数の修飾を加えることができる。本発明について一つ又は複数の特定態様を参照しながら実質的に詳細に記載してきたが、当業者であれば本特許出願に詳細に開示した態様に対して変更を加えられるが、それでもこれらの変更および改良は特許請求の範囲に記載した本発明の範囲および精神の中に含まれることを認識するであろう。本特許出願に言及した出版物または特許文書は、そのような各出版物または文書が詳細かつ個別に参照として本明細書に組み入れられると指示されたかのように参照として本明細書に組み入れられる。
【0197】
前記の出版物または文書についての言及は、前記のいずれかが適切な先行技術であると是認したものではなく、さらにそれがこれらの出版物または文書の内容または日付に関する何らかの是認を構成するものでもない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象内に非生理的に存在する一つ又は複数の自己タンパク質、自己ポリペプチド、または自己ペプチドに関連する対象における疾患を治療するための方法であって、疾患に関連する1つ以上の自己タンパク質、自己ポリペプチド、または自己ペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む自己ベクターを対象に投与するステップを含む方法。
【請求項2】
ポリヌクレオチドがDNAである、請求項1記載の方法。
【請求項3】
ポリヌクレオチドがRNAである、請求項1記載の方法。
【請求項4】
自己ベクターが1つの自己タンパク質、自己ポリペプチド、または自己ペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む、請求項1記載の方法。
【請求項5】
自己ベクターが2つ以上の自己タンパク質、自己ポリペプチド、もしくは自己ペプチド、またはそれらの組み合わせをコードするポリヌクレオチドを含む、請求項1記載の方法。
【請求項6】
自己ベクターの投与が、免疫調節配列、またはサイトカイン、ケモカイン、免疫調節タンパク質、ポリペプチド、もしくはペプチドをコードするベクターの投与をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項7】
免疫調節配列が、5’-プリン-ピリミジン-[X]-[Y]-ピリミジン-ピリミジン-3’または5’-プリン-プリン-[X]-[Y]-ピリミジン-ピリミジン-3’(式中、XおよびYはシトシン-グアニンではあり得ないことを除いて、XおよびYはいずれかの天然型ヌクレオチドまたは合成ヌクレオチドである)からなる群より選択される、請求項6記載の方法。
【請求項8】
疾患が自己免疫疾患である、請求項1記載の方法。
【請求項9】
自己免疫疾患がインスリン依存型糖尿病である、請求項8記載の方法。
【請求項10】
ポリヌクレオチドによってコードされた1つ以上の自己タンパク質、自己ポリペプチド、または自己ペプチドが、インスリン、インスリンB鎖、プレプロインスリン、プロインスリン、65kDaおよび67kDa形のグルタミン酸デカルボキシラーゼ、チロシンホスファターゼIA2もしくはIA-2b、カルボキシペプチダーゼH、熱ショックタンパク質、glima38、69kDaの膵島細胞抗原、p52、ならびに膵島細胞グルコーストランスポーター(GLUT2)からなる群より選択される、請求項9記載の方法。
【請求項11】
自己ベクターが、1つの自己タンパク質、自己ポリペプチド、または自己ペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む、請求項10記載の方法。
【請求項12】
自己タンパク質がプレプロインスリンである、請求項11記載の方法。
【請求項13】
自己タンパク質がインスリンB鎖9-23である、請求項11記載の方法。
【請求項14】
自己ベクターが、2つ以上の自己タンパク質、自己ポリペプチド、または自己ペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む、請求項10記載の方法。
【請求項15】
自己ベクターがプレプロインスリンおよびインスリンB鎖9-23をコードするポリヌクレオチドを含む、請求項14記載の方法。
【請求項16】
自己ベクターの投与が免疫調節配列の投与をさらに含む、請求項11記載の方法。
【請求項17】
自己ベクターの投与が免疫調節配列の投与をさらに含む、請求項14記載の方法。
【請求項18】
自己ベクターが、インスリン、インスリンB鎖、プレプロインスリン、プロインスリン、グルタミン酸デカルボキシラーゼ、およびチロシンホスファターゼIA2からなる群より選択される1つ以上の自己タンパク質、自己ポリペプチド、または自己ペプチドの少なくとも2つをコードするポリヌクレオチドを含む、請求項9記載の方法。
【請求項19】
自己免疫疾患が慢性関節リウマチである、請求項8記載の方法。
【請求項20】
ポリヌクレオチドによってコードされる1つ以上の自己タンパク質、自己ポリペプチド、または自己ペプチドが、II型コラーゲン;hnRNP A2/RA33;Sa;フィラグリン;ケラチン;gp39を含む軟骨タンパク質;I型、III型、IV型、V型、IX型、XI型コラーゲン;HSP-65/60;RNAポリメラーゼ;hnRNP-B1;hnRNP-D;およびアルドラーゼAからなる群より選択される、請求項19記載の方法。
【請求項21】
自己ベクターが、1つの自己タンパク質、自己ポリペプチド、または自己ペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む、請求項19記載の方法。
【請求項22】
自己ベクターが、2つ以上の自己タンパク質、自己ポリペプチド、または自己ペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む、請求項19記載の方法。
【請求項23】
自己ベクターが、II型コラーゲン;IV型およびIX型コラーゲン;ならびに熱ショックタンパク質65からなる群より選択される1つ以上の自己タンパク質、自己ポリペプチド、または自己ペプチドの少なくとも2つをコードするポリヌクレオチドを含む、請求項19記載の方法。
【請求項24】
自己免疫疾患が原発性胆汁性肝硬変である、請求項8記載の方法。
【請求項25】
ポリヌクレオチドによってコードされる1つ以上の自己タンパク質、自己ポリペプチド、または自己ペプチドが、ピルビン酸デヒドロゲナーゼ複合体(PDC)、PDCのE2 74kDaサブユニット、PDCのタンパク質X(E-3結合タンパク質)、2-オキソ酸デヒドロゲナーゼ複合体(OADC)、2-オキソグルタル酸デヒドロゲナーゼ複合体(OGDC)、分岐鎖2OADC、およびPBCリポイルドメインからなる群より選択される、請求項24記載の方法。
【請求項26】
自己ベクターが、1つの自己タンパク質、自己ポリペプチド、または自己ペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む、請求項24記載の方法。
【請求項27】
自己ベクターが、2つ以上の自己タンパク質、自己ポリペプチド、または自己ペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む、請求項24記載の方法。
【請求項28】
自己ベクターが、ピルビン酸デヒドロゲナーゼ複合体(PDC)、PDCのE2 74kDaサブユニット、PDCのタンパク質X(E-3結合タンパク質)、およびPBCリポイルドメインからなる群より選択される1つ以上の自己タンパク質、自己ポリペプチド、または自己ペプチドの少なくとも2つをコードするポリヌクレオチドを含む、請求項25記載の方法。
【請求項29】
疾患が神経変性疾患である、請求項1記載の方法。
【請求項30】
疾患が肥満症である、請求項1記載の方法。
【請求項31】
疾患が変形性関節症である、請求項1記載の方法。
【請求項32】
疾患が脊髄損傷である、請求項1記載の方法。
【請求項33】
疾患が移植片対宿主疾患である、請求項1記載の方法。
【請求項34】
対象における多発性硬化症を治療する方法であって、ミエリン塩基性タンパク質(MBP)、プロテオリピドタンパク質(PLP)、ミエリン関連糖タンパク質(MAG)、環状ヌクレオチドホスホジエステラーゼ(CNPase)、ミエリン関連乏突起神経膠細胞塩基性タンパク質(MBOP)、ミエリン乏突起神経膠細胞タンパク質(MOG)、およびα-B-クリスタリンからなる群より選択される1つ以上の自己タンパク質、自己ポリヌクレオチド、または自己ペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む自己ベクターを対象へ投与するステップを含む方法。
【請求項35】
自己ベクターが、1つ以上の自己タンパク質、自己ポリヌクレオチド、または自己ペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む、請求項34記載の方法。
【請求項36】
自己タンパク質がMBPである、請求項35記載の方法。
【請求項37】
自己タンパク質がPLPである、請求項35記載の方法。
【請求項38】
自己タンパク質がMAGである、請求項35記載の方法。
【請求項39】
自己ベクターが、2つ以上の自己タンパク質、自己ポリヌクレオチドまたは自己ペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む、請求項34記載の方法。
【請求項40】
自己ベクターがMBPおよびPLPをコードするポリヌクレオチドを含む、請求項39記載の方法。
【請求項41】
自己ベクターがMBPおよびMAGをコードするポリヌクレオチドを含む、請求項39記載の方法。
【請求項42】
自己ベクターがMAGおよびPLPをコードするポリヌクレオチドを含む、請求項39記載の方法。
【請求項43】
自己ベクターが、MBP、PLP、およびMAGをコードするポリヌクレオチドを含む、請求項39記載の方法。
【請求項44】
自己ベクターの投与が免疫調節配列の投与をさらに含む、請求項34記載の方法。
【請求項45】
自己ベクターの投与が免疫調節配列の投与をさらに含む、請求項35記載の方法。
【請求項46】
自己ベクターの投与が免疫調節配列の投与をさらに含む、請求項39記載の方法。
【請求項47】
自己ベクターの投与が免疫調節配列の投与をさらに含む、請求項43記載の方法。
【請求項48】
対象内に非生理的に存在する一つ又は複数の自己タンパク質、自己ポリペプチド、または自己ペプチドに関連する対象における疾患を予防するための方法であって、疾患に関連する1つ以上の自己タンパク質、自己ポリペプチド、または自己ペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む自己ベクターを対象に投与するステップを含み、このとき疾患は多発性硬化症でもインスリン依存型糖尿病でもなく、自己ベクターは皮膚への粒子媒介遺伝子銃送達によって投与されない、方法。
【請求項49】
ポリヌクレオチドがDNAである、請求項48記載の方法。
【請求項50】
ポリヌクレオチドがRNAである、請求項48記載の方法。
【請求項51】
自己ベクターが、1つの自己タンパク質、自己ポリペプチド、または自己ペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む、請求項43記載の方法。
【請求項52】
自己ベクターが、2つ以上の自己タンパク質、自己ポリペプチド、もしくは自己ペプチド、またはそれらの組み合わせをコードするポリヌクレオチドを含む、請求項48記載の方法。
【請求項53】
自己ベクターの投与が、免疫調節配列、またはサイトカイン、ケモカイン、免疫調節タンパク質、ポリペプチド、もしくはペプチドをコードするベクターの投与をさらに含む、請求項48記載の方法。
【請求項54】
疾患が自己免疫疾患である、請求項48記載の方法。
【請求項55】
自己免疫疾患が原発性胆汁性肝硬変である、請求項54記載の方法。
【請求項56】
ポリヌクレオチドによってコードされる1つ以上の自己タンパク質、自己ポリペプチド、または自己ペプチドが、ピルビン酸デヒドロゲナーゼ複合体(PDC)、PDCのE2 74kDaサブユニット、PDCのタンパク質X(E-3結合タンパク質)、2-オキソ酸デヒドロゲナーゼ複合体(OADC)、2-オキソグルタル酸デヒドロゲナーゼ複合体(OGDC)、分岐鎖2OADC、およびPBCリポイルドメインからなる群より選択される、請求項55記載の方法。
【請求項57】
自己ベクターが、1つの自己タンパク質、自己ポリペプチド、または自己ペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む、請求項55記載の方法。
【請求項58】
自己ベクターが、2つ以上の自己タンパク質、自己ポリペプチド、または自己ペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む、請求項55記載の方法。
【請求項59】
自己ベクターが、ピルビン酸デヒドロゲナーゼ複合体(PDC)、PDCのE2 74kDaサブユニット、PDCのタンパク質X(E-3結合タンパク質)、およびPBCリポイルドメインからなる群より選択される1つ以上の自己タンパク質、自己ポリペプチド、または自己ペプチドの少なくとも2つをコードするポリヌクレオチドを含む、請求項55記載の方法。
【請求項60】
疾患が慢性関節リウマチである、請求項48記載の方法。
【請求項61】
ポリヌクレオチドによってコードされる1つ以上の自己タンパク質、自己ポリペプチド、または自己ペプチドが、II型コラーゲン;hnRNP A2/RA33;Sa;フィラグリン;ケラチン;gp39を含む軟骨タンパク質;I型、III型、IV型、V型、IX型、XI型コラーゲン;熱ショックタンパク質-65/60;RNAポリメラーゼ;hnRNP-B1;hnRNP-D;およびアルドラーゼAからなる群より選択される、請求項60記載の方法。
【請求項62】
自己ベクターが、1つの自己タンパク質、自己ポリペプチド、または自己ペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む、請求項60記載の方法。
【請求項63】
自己ベクターが、2つ以上の自己タンパク質、自己ポリペプチド、または自己ペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む、請求項60記載の方法。
【請求項64】
自己ベクターが、II型コラーゲン;IV型およびIX型コラーゲン;ならびに熱ショックタンパク質65からなる群より選択される1つ以上の自己タンパク質、自己ポリペプチド、または自己ペプチドの少なくとも2つをコードするポリヌクレオチドを含む、請求項60記載の方法。
【請求項65】
疾患が神経変性疾患である、請求項48記載の方法。
【請求項66】
神経変性疾患がアルツハイマー病である、請求項65記載の方法。
【請求項67】
神経変性疾患がパーキンソン病である、請求項60記載の方法。
【請求項68】
疾患が肥満症である、請求項48記載の方法。
【請求項69】
疾患が変形性関節症である、請求項48記載の方法。
【請求項70】
疾患が移植片対宿主疾患である、請求項48記載の方法。
【請求項71】
サイトカイン、ケモカイン、または免疫調節タンパク質が、IL-4、IL-10、IL-13からなる群より選択される、請求項6記載の方法。
【請求項72】
自己ベクターの投与が、IL-4、IL-10、IL-13からなる群より選択されるサイトカイン、ケモカイン、または免疫調節タンパク質をコードするベクターの投与を含む、請求項8記載の方法。
【請求項73】
自己ベクターの投与が、IL-4、IL-10、IL-13からなる群より選択されるサイトカイン、ケモカイン、または免疫調節タンパク質をコードするベクターの投与を含む、請求項34記載の方法。
【請求項74】
自己ベクターの投与が、IL-4、IL-10、IL-13からなる群より選択されるサイトカイン、ケモカイン、または免疫調節タンパク質をコードするベクターの投与を含む、請求項48記載の方法。

【図1A】
image rotate

【図1B】
image rotate

【図1C】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2011−219479(P2011−219479A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−105947(P2011−105947)
【出願日】平成23年5月11日(2011.5.11)
【分割の表示】特願2003−546821(P2003−546821)の分割
【原出願日】平成14年11月21日(2002.11.21)
【出願人】(503115205)ボード オブ トラスティーズ オブ ザ レランド スタンフォード ジュニア ユニバーシティ (69)
【Fターム(参考)】