説明

ポリヒドロキシアルカノエートコポリマー及び環境分解性である熱可塑性ポリマーを含む成形又は押出成形物品

ポリヒドロキシアルカノエートコポリマー及び環境分解性である熱可塑性ポリマー又はコポリマーのブレンドを含む、環境分解性である成形又は押出成形物品が開示される。こうした組成物は、環境分解性である熱可塑性ポリマー又はコポリマーを含まない成形又は押出成形物品を形成するためのアニーリング・サイクル時間より短い、成形又は押出成形物品を形成するためのアニーリング・サイクル時間を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリヒドロキシアルカノエートコポリマー及び環境分解性である熱可塑性ポリマー又はコポリマーを含む組成物に関する。この組成物は、成形又は押出成形された使い捨て物品、特に容易に環境分解性であるタンポン・アプリケータ部材を製造するために用いられる。
【背景技術】
【0002】
本発明は、生分解性、堆肥化可能性、又は生体適合性が第一の所望される特徴である適用において使用できる新規なプラスチック材料を開発する要求に関する。分解性物品を製造するために多数の試みがなされてきた。しかし、費用、加工の困難さ、及び最終用途の特性から、商業的な成功はほとんどない。優れた分解性を有する多数の組成物は、限られた加工処理性しか有さない。逆に、より容易に加工できる組成物は分解性が低い。
【0003】
環境に蓄積する成形又は押出成形物品の例は、プラスチック製タンポン・アプリケータである。紙製タンポン・アプリケータは、それらが下水設備の中で容易に分解すること、及び/又は好気、嫌気、若しくは自然分解プロセスにより処分できるという点で環境に優しいと考えられている。しかしながら紙製のタンポン物品は、それらの使用に関連する綿撒糸挿入の困難さのために、女性の間で最も好まれているわけではない。プラスチック製アプリケータの方がより挿入しやすいため、幾人かの女性消費者は、プラスチック製タンポン・アプリケータの方を好むが、しかしながら大部分のプラスチック製タンポン・アプリケータは生分解性でなく並びに下水設備中での分解のために容易に柔らかくなったり及びより小さい片に壊れたりせず、その結果環境への懸念を増す、ポリマー材料から製造される。
【0004】
ポリビニルアルコールのような水溶性ポリマーから製造されたアプリケータには、感湿性、安定性、臭気、又はべたつきという欠点がある。更に、ポリビニルアルコール及びポリエチレンオキシドのような水溶性ポリマーから構築されるプラスチック製タンポン・アプリケータは、挿入の間に十分な使用中の一体性を提供せず、及び水洗後下水管にくっ付きやすく、これはトイレ設備及び/又は排水管の詰まりをもたらす可能性がある。
【0005】
ポリヒドロキシアルカノエート(PHAs)は、特にそれらの生分解性のために、成形又は押出成形物品に用いるのに望ましい熱可塑性ポリマーである。米国特許第5,498,692号(ノダ(Noda)、1996年3月12日発行)、及び米国特許第5,502,116号(ノダ(Noda)、1996年3月26日発行)は、PHAsを含む成形物品に関する。こうしたPHAsからの成形物品は、それらが溶融から冷却された後、実質的に粘着性が残っており、十分な結晶化度になるまでそのようなままであり、特にPHAコポリマーの濃度が10重量%を超える場合にそうである。粘着が残っていると、典型的には材料がそれ自体と、又は加工装置と、又はその両方とくっ付くという結果をもたらす可能性があり、そのためポリマー製品が製造される速度を制限する、又は適した品質形態で製品が収集されるのを妨げる可能性がある。名称バイオポール(BIOPOL)(登録商標)として市販されるポリ(3−ヒドロキシブチラート−コ−3−ヒドロキシバレレート)製品は、硬度、脆性について、及び非常に遅い結晶化速度を有する欠点がある。同様に、米国特許第5,292,860号(シオタニ(Shiotani))は、成形又は押出成形物品の製造方法において短いサイクル時間を有する組成物に関しての教示が欠けている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
結果として、成形又は押出成形物品に用いるための環境分解性であるポリマーの溶融加工可能な組成物への要求が存在し、この場合このポリマーは、経済的に存立できるアニーリング・サイクル時間を有する。その上、この組成物は従来の加工処理装置に用いるのに適しているべきであり、及び結果として得られる成形又は押出成形物品は、平滑度、可撓性、減少したべたつき、安定性などについてのそれらの構造の一体性及び審美的特性について、消費者の受容性に適合するべきである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の成形又は押出成形物品は、PHAコポリマー及び環境分解性である熱可塑性ポリマー又はコポリマーのブレンドを含む。こうしたブレンドは、環境における望ましい分解性と、環境分解性である熱可塑性ポリマー又はコポリマーを含まない成形又は押出成形物品を形成するためのアニーリング・サイクル時間より少なくとも10秒間短いアニーリング・サイクル時間を示す。
【0008】
一つの実施形態では、本発明のブレンドを含む成形又は押出成形物品は、嫌気条件下で28日以内に50%を超えて分解される、水に流すことのできるタンポン・アプリケータである。
【0009】
本発明の別の実施形態は、環境分解性である熱可塑性ポリマー又はコポリマーの少なくとも5重量%部、及び少なくとも2つのランダムに繰り返すモノマー単位を含むポリヒドロキシアルカノエートコポリマーの少なくとも20重量%部を含む、環境分解性である成形又は押出成形物品であり、第1のモノマー単位は構造(I)を有し、この場合、R1はCH3であり、及びnは1であり、及び第2のモノマー単位は構造(II)を有し、この場合、R2はC3アルキルである。この実施形態では、第2のモノマー単位の構造を有するランダムに繰り返すモノマー単位の量は、20%未満である。
【0010】
本発明の更なる実施形態は、前の段落に記載されたような、環境分解性である成形又は押出成形物品であり、その際PHAコポリマーは、第1のPHAコポリマーであり、及び環境分解性である熱可塑性ポリマー又はコポリマーは、上記のような少なくとも2つのランダムに繰り返すモノマー単位(I)及び(II)を含む第2のPHAコポリマーであり、その際構造(II)の単位百分率は、第1のPHAコポリマー中に存在する構造(II)の単位百分率とは異なる。
【0011】
環境分解性である成形又は押出成形物品を形成する方法は、本明細書に記載されるようなPHAコポリマー及び環境分解性である熱可塑性ポリマー又はコポリマーをブレンドを形成するために溶融状態まで加熱すること、溶融されたブレンドをアニールさせること、及び物品を成形又は押出成形することを含み、この方法は、環境分解性である熱可塑性ポリマー又はコポリマーを含まない成形又は押出成形物品を形成するためのアニーリング・サイクル時間より、少なくとも10秒間短いアニーリング・サイクル時間を有する。
【0012】
これと同日付の出願日であるのは、本発明者のUSSN , であり、これは短いアニーリング・サイクル時間を有するPHAコポリマー組成物を含む成形又は押出成形物品に関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
(ポリヒドロキシアルカノエートコポリマー(PHAs))
環境分解性である成形又は押出成形物品は、環境分解性である熱可塑性ポリマー又はコポリマーの少なくとも5重量%部、及び少なくとも2つのランダムに繰り返すモノマー単位(RRMUs)を含むPHAコポリマーの少なくとも20重量%部を含み、第1のモノマー単位は構造(I)を有し
【0014】
【化1】

この場合、R1はH、又はC1若しくはC2アルキルであり、及びnは1又は2であり、及び第2のモノマー単位は
【0015】
【化2】

構造(II)を有し、この場合、R2はC3〜C19アルキル若しくはC3〜C19アルケニルであるか、又は第2のモノマー単位は構造(III)を有し
【0016】
【化3】

この場合、mは2〜9であり、及びこの場合、少なくとも80%のランダムに繰り返すモノマー単位は、第1のモノマー単位の構造を有する。一つの実施形態では、R1はメチル基(CH3)である。第1のRRMUの更なる実施形態では、R1はメチルであり及びnは1であり、それによってポリヒドロキシアルカノエートコポリマーは、3−ヒドロキシブチレート単位を含む。一般に、R2の長さは、ある程度、コポリマーの全体的な結晶化度の低下に影響を及ぼす。一つの実施形態では、R2はC3〜C15アルキル基又はアルケニル基である。更なる実施形態では、R2はC3〜C9アルキル基であり、C5又はC7アルキル基であり、又はC3アルキル基である。アルキル又はアルケニル基は、分岐鎖又は直鎖であってもよい。別の実施形態では、R2はC15〜C19アルキル又はアルケニル基である。更に、(CH2mの長さは、ある程度、コポリマーの全体的な結晶化度の低下に影響を及ぼす。一つの実施形態では、mは2〜9であり、2〜4であり、又はmは3である。
【0017】
ブレンドされた成形又は押出成形物品により示される物理的特性の有利な組み合わせを得るためには、コポリマーの少なくとも約80モル%が、式(I)の第1のRRMUの構造を有するRRMUsを含む。適しては、コポリマー中の第1のRRMUsと第2のRRMUのモル比は、約80:20〜約98:2、約85:15〜約96:4、又は約90:10〜約94:6の範囲である。加えて、PHAコポリマーは適しては、約150,000g/molを超える数平均分子量を有し、及び更にはTm1と表記される融点を有する。
【0018】
成形又は押出成形物品の組成物中で使用される第1のポリヒドロキシアルカノエートコポリマーの更なる実施形態では、1つ以上の追加のRRMUsが包含されてもよい。適しては、追加のRRMUsは構造(IV)を有してもよい。
【0019】
【化4】

式中、R5はH、又はC1〜C19アルキル若しくはアルケニル基であり、及びsは1又は2であり、ただし追加のRRMUsは第1又は第2のRRMUsと同じではないことを条件とする。
【0020】
本明細書に記載されるC4C6ポリヒドロキシアルカノエートコポリマーは、例えば米国特許第5,990,271号(ノダ(Noda))、米国特許第5,942,597号(ノダ(Noda)ら)(両方が本明細書に参考として組み込まれる)、フクイ,T.(Fukui,T.)及びドイ,Y.(Doi,Y.)の応用微生物バイオテクノロジー(Appl.Microbiol.Biotechnol)、49:333〜336(1998年)、並びにキシセ,T.(Kichise,T.)らの生体高分子の国際誌(Int'l.J.of Biological Macromolecules)、25:69〜77(1999年)に開示されるように化学的又は生物学的方法により合成することができる。最終製品中のC6の量は、ドイ,Y.(Doi,Y.)らの高分子(Macromolecules)28、4822(1995年)及びフクイ,T.(Fukui,T.)らの生体高分子(Biomacromolecules)3、618(2002年)に記載されるように、NMR又はGC MS法のような標準方法によって決定される。
【0021】
(PHAコポリマーとブレンドするための環境分解性である熱可塑性ポリマー又はコポリマー)
PHAコポリマーと実質的に相溶性である、環境分解性である熱可塑性ポリマー又はコポリマーは、本発明においてPHAコポリマーとブレンドされる。本明細書で使用する時、用語「実質的に相溶性である」とは、組成物の軟化温度及び/又は溶融温度よりも高い温度まで加熱される時、ポリマーが、PHAコポリマーと成形後に実質的に均質な混合物を形成できることを意味する。用いられる熱可塑性ポリマーは、加熱の際に流動できなければならず、特定の実施形態では、例えば溶融固化などによりPHAコポリマーよりも速く再固化する。
【0022】
PHAコポリマーとブレンドするために本明細書で用いられる分解性ポリマーは、PHAコポリマーの熱安定性を保持するように混合物の低い加工温度のために十分低い溶融温度を有しなければならず、また一方で、成形又は押出成形物品の使用中の成形性又は押出成形性を確実にするために、加工中の混合物の迅速な固化のために十分高い溶融温度を有しなければならない。分解性ポリマーの適した溶融温度は、約50°C〜約200°Cであり、別の実施形態では約60°C〜約180°Cあり、及び更なる実施形態では、約160°C又はそれ以下である。可塑剤又は希釈剤が用いられて観測される溶融温度を低下する場合には、200°Cを超える溶融温度を有する熱可塑性ポリマーを用いてもよい。ポリマーは、成形性又は押出成形性のために適したレオロジー特性を有しなくてはならない。
【0023】
分解性ポリマーの分子量は、ポリマー分子間の絡み合わせを可能にし、所望の物理的特性のために十分な強度を提供するために、十分に高くなければならない。本発明のブレンドのための、環境分解性である熱可塑性ポリマーは、10,000g/molを超える分子量を有し、別の実施形態では、50,000g/molを超える、及び更なる実施形態では、100,000g/molを超える分子量を有する。ポリマーの「分子量」又は「平均分子量」は、指示がない限り、数平均分子量を指す。
【0024】
PHAコポリマーとブレンドするための分解性熱可塑性ポリマーは、第2の環境分解性であるPHAポリマー若しくはコポリマー、又はそれらのブレンドであってもよい。一つの実施形態では、第2のPHAポリマー又はコポリマーは、上記のように少なくとも2つのランダムに繰り返すモノマー単位(I)及び(II)を含み、構造単位(II)百分率は、第1のポリヒドロキシアルカノエートコポリマー中に存在する構造単位(II)百分率とは異なる。一つの実施形態では、第2のPHAの構造単位(II)百分率は、第1のPHA中の構造単位(II)百分率より少ない。別の実施形態では、第1のPHAコポリマーは、10〜18%のモノマー単位構造(II)百分率を有し、及び第2のPHAコポリマーは、2〜8%のモノマー単位構造(II)百分率を有する。
【0025】
更なる実施形態では、第2のPHAポリマー又はコポリマーは、構造(V)を有する少なくとも1つのランダムに繰り返すモノマー単位を含む。
【0026】
【化5】

式中、R3はH、又はC1若しくはC2アルキルであり、及びpは1又は2である。一つの実施形態では、R3はメチル基(CH3)である。更なる実施形態では、R3はメチルであり、及びpは1であり、それによって第2のPHAポリマーは、3−ヒドロキシブチレート単位を含む。更なる実施形態では、第2のPHAポリマーはポリヒドロキシブチレートホモポリマーである。任意に、第2の環境分解性であるポリマーは、構造(VI)及び(VII)から成る群から選択される、2つ以上の追加のランダムに繰り返すモノマー単位を含む。
【0027】
【化6】

式中、R4はC2〜C19アルキル又はC2〜C19アルケニルであり、及び
【0028】
【化7】

式中、qは2〜約16である。構造(VII)のモノマーを含む第2のRRMUに関して、qは2〜約10であり、又は約4〜約8である。更なる実施形態では、qは約5である。追加のランダムに反復するモノマー単位は、存在する場合、全モノマー単位の25%以下に相当し、及び別の実施形態では15%未満に相当し、その際第2のPHAホモポリマー又はコポリマーは、適しては約50,000g/molを超える数平均分子量を有する。融点の値を、一般にDSC(示差走査熱量計)により決定し、例えばASTM D 3418に概説された方法を用いて、DSCの加熱走査において観察し、最高の吸熱ピーク温度として解釈する。
【0029】
本発明に用いるPHAコポリマーとブレンドするために適した、環境分解性である熱可塑性ポリマーの更なる例には、脂肪族ポリエステルアミド、二価酸/二価アルコールの脂肪族ポリエステル、変性されたポリエチレンテレフタル酸、変性されたポリブチレンテレフタル酸を包含する変性された芳香族ポリエステル、脂肪族/芳香族コポリエステル、ポリカプロラクトン、脂肪族多価アルコール(即ちジアルカノイルポリマー)から誘導されるポリエステル及びポリウレタン、ポリエチレン/ビニルアルコールコポリマーを包含するポリアミド、ポリヒドロキシカルボン酸、乳酸ホモポリマー及び乳酸コポリマーを包含する乳酸ポリマー、ラクチドホモポリマー及びラクチドコポリマーを包含するラクチドポリマー、グリコリドホモポリマー及びグリコリドコポリマーを包含するグリコリドポリマー、及びこれらの混合物が挙げられる。
【0030】
環境分解性である熱可塑性ポリマーとして本明細書に用いるのに適した脂肪族ポリエステルアミドの具体例には、これらに限定されないが、ジオール、ジカルボン酸、及びアミノカルボン酸の合成反応の反応生成物である脂肪族ポリエステルアミド、乳酸とジアミン及びジカルボン酸ジクロリドとの反応から形成される脂肪族ポリエステルアミド、カプロラクトン及びカプロラクタムから形成される脂肪族ポリエステルアミド、酸末端脂肪族エステルプレポリマーと芳香族ジイソシアネートを反応させることにより形成される脂肪族ポリエステルアミド、脂肪族エステルと脂肪族アミドを反応させることにより形成される脂肪族ポリエステルアミド、及びこれらの混合物が挙げられる。脂肪族エステルと脂肪族アミドを反応させることにより形成される脂肪族ポリエステルアミドが適している。本発明においてまた適しているのは、ポリビニルアルコール及びそのコポリマーである。
【0031】
脂肪族エステルと脂肪族アミドのコポリマーである脂肪族ポリエステルアミドは、これらのコポリマーが、一般に約30重量%〜約70重量%、又は約40重量%〜約80重量%の脂肪族エステル、及び約30重量%〜約70重量%、又は約20重量%〜約60重量%の脂肪族アミドを含有することを特徴とすることができる。ポリマーの分子量の決定に用いられる既知のゲルクロマトグラフィー技術により測定される時、これらのコポリマーの重量平均分子量は、約10,000g/mol〜約300,000g/mol、又は約20,000g/mol〜約150,000g/molの範囲である。
【0032】
適した脂肪族ポリエステルアミドの脂肪族エステルと脂肪族アミドのコポリマーは、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,3−プロパンジオール、1,6−ヘキサンジオールなどを包含するジアルコール、シュウ酸、コハク酸、アジピン酸、シュウ酸エステル、コハク酸エステル、アジピン酸エステルなどを包含するジカルボン酸、ヒドロキシカルボン酸及びカプロラクトンなどを包含するラクトン、エタノールアミン、プロパノールアミンなどを包含するアミノアルコール、s−カプロラクタム、ラウリル酸ラクタムなどを包含する環状ラクタム、(アミノカプロン酸などを包含するo−アミノカルボン酸、アジピン酸、コハク酸などのようなジカルボン酸とヘキサメチレンジアミン、ジアミノブタンなどのようなジアミンとの1:1塩混合物を包含するジカルボン酸とジアミンとの1:1塩、及びこれらの混合物のようなモノマーから得られる。ヒドロキシ末端又は酸末端ポリエステル、例えば酸末端オリゴエステルもまた、エステル形成化合物として用いることができる。ヒドロキシル末端又は酸末端ポリエステルは、典型的には約200g/mol〜約10,000g/molの重量又は数平均分子量を有する。
【0033】
脂肪族ポリエステルアミドは、アジピン酸、1,4−ブタンジオール、及び6−アミノカプロン酸で45%のエステル部分を有するもの、アジピン酸、1,4−ブタンジオール、及びs−カプロラクタムで50%のエステル部分を有するもの、アジピン酸、1,4−ブタンジオール、及びアジピン酸と1,6−ヘキサメチレンジアミンとの1:1塩、並びにアジピン酸から製造される酸末端オリゴエステル、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサメチレンジアミン、及びs−カプロラクタムのコポリマーの組み合わせを含んでもよい。これらの脂肪族ポリエステルアミドは、約115℃〜約155℃の融点、及び約2.0〜約3.0の相対粘度(1重量%、m−クレゾール中、25℃)を有し、及びバイエル株式会社(Bayer Aktiengesellschaft)(BAK、レバークーゼン、ドイツ)から市販されている。市販のポリエステルアミドの具体例は、BAK404−004である。
【0034】
環境分解性である熱可塑性ポリマーとして本明細書に用いるのに適した二価酸/二価アルコール脂肪族ポリエステルの具体例には、これらに限定されないが、開環反応又は酸とアルコールの縮合重合のいずれかから製造される脂肪族ポリエステルが挙げられ、その際これらの脂肪族ポリエステルの数平均分子量は、典型的には約30,000g/mol〜約50,000g/molの範囲である。適した二価酸/二価アルコール脂肪族ポリエステルは、C2〜C10二価アルコールがシュウ酸、コハク酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、これらのコポリマー、又はこれらの混合物と反応した反応生成物である。二価酸/二価アルコールの非限定例には、ポリアルキレンコハク酸、例えばポリエチレンコハク酸、及びポリブチレンコハク酸、ポリアルキレンコハク酸コポリマー、例えばポリエチレンコハク酸/アジピン酸コポリマー、及びポリブチレンコハク酸/アジピン酸コポリマー、ポリペンタメチルコハク酸、ポリヘキサメチルコハク酸、ポリヘプタメチルコハク酸、ポリオクタメチルコハク酸、ポリアルキレンオキザラート、例えばポリエチレンオキザラート、及びポリブチレンオキザラート、ポリアルキレンオキザラートコポリマー、例えばポリブチレンオキザラート/コハク酸コポリマー、及びポリブチレンオキザラート/アジピン酸コポリマー、ポリブチレンオキザラート/コハク酸/アジピン酸ターポリマー、及びこれらの混合物が挙げられる。適した市販の二価酸/二価アルコール脂肪族ポリエステルの例は、昭和高分子株式会社(Showa Highpolymer Company,Ltd.(日本東京))からビオノーレ(BIONOLLE)(登録商標)1000シリーズ及びビオノーレ(BIONOLLE)(登録商標)3000シリーズとして販売される、ポリブチレンコハク酸/アジピン酸コポリマーである。
【0035】
環境分解性である熱可塑性ポリマーとして本明細書に用いるのに適した脂肪族/芳香族コポリエステルの具体例には、これらに限定されないが、ジカルボン酸又はその誘導体と二価アルコールとの縮合反応から形成されるランダムコポリマーである脂肪族/芳香族コポリエステルが挙げられる。適したジカルボン酸には、これらに限定されないが、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、フマル酸、2,2ジメチルグルタル酸、スベリン酸、1,3−シクロペンタンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、ジグリコール酸、イタコン酸、マレイン酸、2,5−ノルボルナンジカルボン酸、1,4−テレフタル酸、1,3−テレフタル酸、2,6−ナフトエ酸、1,5−ナフトエ酸、これらのエステル形成誘導体、及びこれらの組み合わせが挙げられる。適した二価アルコールには、これらに限定されないが、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2,2,4−トリメチル−1,6−ヘキサンジオール、チオジエタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、2,2,4,4−テトラメチル−1,3−シクロブタンジオール、及びこれらの組み合わせが挙げられる。こうした脂肪族/芳香族コポリエステルの非限定例には、ポリ(テトラメチレングルタレート−コ−テレフタル酸)の50/50ブレンド、ポリ(テトラメチレングルタレート−コ−テレフタル酸)の60/40ブレンド、ポリ(テトラメチレングルタレート−コ−テレフタル酸)の70/30ブレンド、ポリ(テトラメチレングルタレート−コ−テレフタル酸)の85/15ブレンド、ポリ(テトラメチレングルタレート−コ−テレフタル酸−コ−ジグリコレート(diglycolate))の50/45/5ブレンド、ポリ(エチレングルタレート−コ−テレフタル酸)の70/30ブレンド、ポリ(テトラメチレンアジピン酸−コ−テレフタル酸)の85/15ブレンド、ポリ(テトラメチレンコハク酸−コ−テレフタル酸)の85/15ブレンド、ポリ(テトラメチレン−コ−エチレングルタレート−コ−テレフタル酸)の50/50ブレンド、及びポリ(テトラメチレン−コ−エチレングルタレート−コ−テレフタル酸)の70/30ブレンドが挙げられる。これらの脂肪族/芳香族コポリエステルは、その他の適した脂肪族/芳香族ポリエステルに加えて、米国特許第5,292,783号(ブキャナン(Buchanan)ら、1994年3月8日発行)に更に記載されており、この記載は本明細書に参考として組み込まれる。適した市販の脂肪族/芳香族コポリエステルの例は、イーストマン化学(Eastman Chemical)からイースター・バイオ(EASTAR BIO)(登録商標)コポリエステルとして、又はバスフ(BASF)からエコフレックス(ECOFLEX)(登録商標)として販売されている、ポリ(テトラメチレンアジピン酸−コ−テレフタル酸)である。
【0036】
環境分解性である熱可塑性ポリマーとして本明細書に用いるのに適した乳酸ポリマー及びラクチドポリマーの具体例には、これらに限定されないが、業界で一般に「PLA」と呼ばれるポリ乳酸系ポリマー及びポリラクチド系ポリマーが挙げられる。そのため、「ポリ乳酸」、「ポリラクチド」及び「PLA」は、乳酸及びラクチドのホモポリマー及びコポリマーを、具体的なモノマーから形成されるポリマー又は最小の繰り返しモノマー単位から構成されるポリマーの、ポリマー特性に基づいて包含するために互換可能に用いられる。換言すれば、ポリラクチド(polylatide)は、乳酸の二量体エステルであり、乳酸の小さな繰り返しモノマー単位(実際には乳酸の残基)を含有して形成できるか、又はラクチドモノマーの重合によって製造でき、結果としてポリラクチド(polylatide)は、乳酸残基含有ポリマー及びラクチド残基含有ポリマーの両方として呼ばれる。しかしながら、用語「ポリ乳酸」、「ポリラクチド」、及び「PLA」とは、ポリマーが形成される方式に関して限定することを意図するものではないことは理解されるべきである。
【0037】
適した乳酸及びラクチドポリマーには、一般に、約10,000g/mol〜約600,000g/mol、約30,000g/mol〜約400,000g/mol、又は約50,000g/mol〜約200,000g/molの範囲の重量平均分子量を有する、乳酸及び/又はラクチドのホモポリマー及びコポリマーが挙げられる。市販のポリ乳酸ポリマーの例には、クロノポール社(Chronopol Incorporation)(コロラド州ゴールデン所在)から入手可能な多様なポリ乳酸、及びエコPLA(EcoPLA)(登録商標)の商標名で販売されているポリラクチドが挙げられる。適した市販のポリ乳酸の例は、カーギル・ダウ(Cargill Dow)からのネイチャーワークス(NATUREWORKS)(登録商標)及び三井化学(Mitsui Chemical)からのラシエ(LACEA)(登録商標)である。特に適したのは、約160℃〜約175℃の溶融温度を有するポリ乳酸のホモポリマー又はコポリマーである。変性ポリ乳酸及び異なる立体配座、例えばポリL−乳酸、及び75%までのD−異性体濃度を有するポリD,L−乳酸もまた用いてもよい。特に、PLAは半結晶性であり、この場合ポリラクチド中の少なくとも約90又は95モル%の繰り返し単位が、L−又はD−ラクチドのいずれかである。
【0038】
環境分解性である熱可塑性ポリマー又はコポリマーは、非構造化デンプンであってもよい。天然デンプンは、一般的に顆粒状構造を有するため、溶融加工され得る前に、「非構造化」されることが必要である。通常は、デンプンは、水中にデンプンを溶解することによって非構造化される。用語「熱可塑性デンプン」とは、可塑剤を用いて非構造化されたデンプンを意味する。
【0039】
適した天然に生じるデンプンとしては、トウモロコシデンプン、ジャガイモデンプン、サツマイモデンプン、小麦デンプン、サゴパームデンプン、タピオカデンプン、米デンプン、大豆デンプン、クズウコンデンプン、ワラビデンプン、ハスデンプン、キャッサバデンプン、ワクシーメイズデンプン、高アミローストウモロコシデンプン、及び市販のアミロース粉末が挙げられるが、これらに限定されない。デンプンのブレンドもまた用いられてもよい。すべてのデンプンが本明細書で有用であるが、本発明は、豊富に供給され、容易に補充可能であり、及び安価であるという利点を提供する農作物源、例えばトウモロコシデンプン、小麦デンプン、及びワクシーメイズデンプンから得られる天然デンプンを用いて、最も一般的に実施される。
【0040】
加工デンプンは非構造化デンプンであり、また使用されてもよい。加工デンプンは、その元来の分子量特性を変化させた、置換されていないデンプン又は置換されたデンプンとして定義される(即ち、分子量は変化しているが、その他の変化は、必ずしもデンプンに対してなされていない)。加工デンプンが望ましい場合、デンプンの化学修飾は、典型的には、分子量又は分子量分布を減少させる、酸又はアルカリ加水分解又は酸化的鎖開裂を包含する。天然の加工されていないデンプンは、一般に非常に高い平均分子量を有し、広い分子量分布を有する(例えば、天然トウモロコシデンプンは、約60,000,000グラム/モル(g/mol)までの平均分子量を有する)。デンプンの平均分子量は、酸還元、酸化還元、酵素的還元、加水分解(酸又はアルカリで触媒される)、物理的/機械的分解(例えば、加工処理装置の熱機械エネルギーの入力を介して)、又はこれらの組み合わせによって本発明の所望の範囲まで減少させることができる。熱機械法及び酸化法は、原位置で行われる場合、更なる利点を提供する。デンプンの実際の化学的性質及び分子量を減少させる方法は、平均分子量が受容できる範囲にある限りは重要ではない。溶融物に添加されるデンプン又はデンプンのブレンドの分子量の範囲は、約3,000g/mol〜約10,000,000g/mol、約10,000g/mol〜約2,000,000g/mol、又は約20,000g/mol〜約1,000,000g/molである。
【0041】
ゼラチン化に関して、デンプンは、可塑剤として作用する溶媒の存在下で非構造化することができる。溶媒及びデンプン混合物を、典型的には、加圧条件下で加熱し、ゼラチン化プロセスを加速するために剪断する。化学薬剤又は酵素薬剤はまた、例えば、酸化又は誘導体化によってデンプンを非構造化するために使用してもよい。
【0042】
要求はされないが、置換されたデンプン、また非構造化デンプンを使用することができる。置換されたデンプンが望ましい場合、デンプンの化学修飾は、典型的には、エーテル化又はエステル化を包含する。置換されたデンプンは、PHAコポリマーとのよりよい相溶性又は混和性のために望ましいことがある。しかし、その分解速度における減少と均衡がとれていなければならない。化学的に置換されたデンプンの置換度は、約0.01〜3.0、又は更なる実施形態では、約0.01〜0.06である。
【0043】
組成物中のデンプンの重量は、デンプン及びその天然に生じる結合水含量を包含する。用語「結合水」とは、本発明の組成物を製造するためにデンプンと他の構成成分とを混合する前に、デンプン中に自然に生じることが見出された水を意味する。用語「遊離水」とは、本発明の組成物の製造において添加される水を意味する。成分が一旦組成物中に混合されると、水はもはやその発生源によって区別することができないことを、本開示の観点から当業者は理解するであろう。デンプンは、典型的には、デンプンの約5重量%〜16重量%の結合水含量を有する。追加の遊離水は、極性溶媒又は可塑剤として組み込まれてもよく、これはデンプンの重量には包含されないことが既知である。
【0044】
本発明で用いてもよい代表的なデンプンは、すべてスターレー(Starley)からの、スタードリ(StarDri)100、スタデックス(STADEX)(登録商標)10、スタデックス(STADEX)(登録商標)15、又はスタデックス(STADEX)(登録商標)65である。スタデックス(STADEX)(登録商標)10及びスタデックス(STADEX)(登録商標)15は、デントコーンデンプン由来の白色デキストリンである。これらのデキストリンは、冷水において低い溶解度を有し、高い粘度が必要とされる接着適用において結合剤として使用される。スタデックス(StaDex)65はまた、デントコーンデンプン由来の白色デキストリンであり、冷水に中程度の溶解度を有し、中程度の固体濃度で高い粘度が必要とされる接着適用において結合剤として使用される。スタードリ(StarDri)材料は、食用において典型的に使用される非構造化前のマルチデキストリンデンプンである。
【0045】
典型的には、ポリヒドロキシアルカノエートコポリマーはブレンド中に、成形又は押出成形物品の少なくとも20重量%部、又は30重量%、40重量%、50重量%、60重量%、70重量%、80重量%、又は90重量%部の量で存在する。環境分解性である熱可塑性ポリマー又はコポリマーは、ブレンド中に、成形又は押出成形物品の少なくとも2重量%部、又は5重量%、10重量%、20重量%、30重量%、40重量%、50重量%、60重量%、70重量%、又は80重量%部の量で存在する。ポリヒドロキシアルカノエート以外の環境分解性であるポリマーの分解速度は酸素の非存在下ではより遅くなることがあるため、嫌気分解性物品について、ポリヒドロキシアルカノエートコポリマーの総含有量は、50%を超え、60%を超え、又は70%を超える。
【0046】
(任意成分)
加工性を変更するため、及び/又は最終製品の弾性、引張り強度、及び弾性率のような物理的特性を変更するために、任意物質を加工助剤として用いてもよい。他の利益には、酸化安定性を包含する安定性、明るさ、色、可撓性、弾力性、作業性、加工助剤、粘度調節剤、及び抑臭が挙げられるが、これらに限定されない。これらの任意成分は、組成物の約70重量%未満、約0.1重量%〜約50重量%、又は約0.1重量%〜約40重量%の量で存在してもよい。
【0047】
この組成物から形成される製品の機械的特性を変更するために、可塑剤を組成物中に用いてもよい。一般に可塑剤は、弾性率及び引張り強度を低下させ、並びにポリマー製品の最終的な引っ張り伸び、衝撃強度、及び引き裂き強度を増加させる傾向がある。可塑剤はまた、組成物の融点を低下させ、それによって溶融加工をより低い温度で可能にするために、並びにエネルギー必要条件及び熱分解を最小にするために用いられてもよい。これらの可塑剤は、典型的には、上述の特性の有利な組み合わせを得るために必要ではない。
【0048】
可塑剤の非限定例には、ヒドロキシル可塑剤、糖アルコール、多価アルコール、尿素及び尿素誘導体を包含するヒドロキシル基を持たない水素結合形成有機化合物、糖アルコール無水物、動物タンパク質、植物タンパク質、生分解性の有機酸エステル、脂肪酸、又は同様なものが挙げられる。適した可塑剤は、グリセロールトリアセテート、メチルリシノレート、セバシン酸ジメチル、フタル酸ジヘキシル、カプロラクトンジオール、カプロラクトントリオール、及び上記で参照した米国特許第3,182,036号及び第5,231,148号に記載されるもののような他のものにより例示される。
【0049】
更なる実施形態では、可塑剤は、セバシン酸ジメチル、グリセリン、トリアセチン、グリセロール、モノステアレート、ソルビトール、エリスリトール、グルシドール(glucidol)、マンニトール、スクロース、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジエチレングリコールジベンゾエート、ジプロピレングリコールジベンゾエート、トリエチレングリコールカプレート−カプリレート、ブチレングリコール、ペンタメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、アジピン酸ジイソブチル、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、パルミチン酸アミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、メチルピロリドン、テトラメチレンスルホン、オキサ一価酸(oxa monoacids)、オキサ二価酸、ポリオキサ二価酸、ジグリコール酸、クエン酸トリエチル、アセチルクエン酸トリエチル、クエン酸トリ−n−ブチル、アセチルクエン酸トリ−n−ブチル、アセチルアセチルクエン酸トリ−n−ヘキシル、乳酸アルキル、フタル酸ポリエステル、アジピン酸ポリエステル、グルテートポリエステル、フタル酸ジイソノニル、フタル酸ジイソデシル、フタル酸ジヘキシル、アルキルアリルエーテル(alkyl alylether)ジエステルアジパート、アジピン酸ジブトキシエトキシエチル、及びこれらの混合物から成る群から選択される。適した分子量は、約20,000g/mol未満、約5,000g/mol未満、又は約1,000g/mol未満である。存在する場合、最終成形又は押出成形物品組成物中の可塑剤の量は、約0.1%〜約70%、約0.5%〜約50%、又は約1%〜約30%である。
【0050】
核生成剤は一般に、結晶化速度を増加するため、結晶の大きさを減少するため、及び透明性を改善するために用いられる。核生成剤はまた、熱可塑性ポリエステルのような部分的結晶性プラスチック材料のメルトフロー及び離型行動を改善することができる。PCT国際公開特許WO02/055581及びPCT国際公開特許WO02/50156(オートラン(Autran)ら、各々2001年12月20日出願)に開示されているように、ポリヒドロキシブチラートのような第2のポリヒドロキシアルカノエートは、第1のポリヒドロキシアルカノエートに対して核生成剤として作用することができ、及びそれによって第1のポリヒドロキシアルカノエートの結晶化速度を改善することができる。更なる核生成剤には、タルク、窒化ホウ素、酸化チタン、微小雲母(micromica)、チョーク、塩、ソルビトールアセタール、粘土、炭酸カルシウム、塩化ナトリウム、リン酸カルシウム、両方共クラリアント・コーポレーション(Clariant Corporation)(ロードアイランド州コベントリ)から市販される、リコモント(LICOMONT)(登録商標)CaV102及びリコモント(LICOMONT)(登録商標)NaV101(モンタン酸、即ち長鎖(C28〜C32)直鎖カルボン酸のそれぞれカルシウム及びナトリウム塩)、及びミリケン・ケミカル(Milliken Chemical)(サウスカロライナ州インマン)から市販される、ミルアド(MILLAD)(登録商標)3988(1,2,3,4−ビス−(3,4−ジメチルベンジリデンソルビトール))が挙げられる。核生成剤は、用いられる場合、成形又は押出成形物品の通常、約0.01重量%〜約5重量%を構成する。
【0051】
更なる任意成分には、塩、スリップ剤、結晶化促進剤又は遅延剤、臭気マスキング剤、架橋剤、乳化剤、界面活性剤、シクロデキストリン、潤滑剤、その他の加工助剤、光学的光沢剤、酸化防止剤、難燃剤、染料、顔料、充填剤、タンパク質及びそのアルカリ塩、ワックス、粘着付与樹脂、増量剤、キチン、キトサン、及びこれらの混合物が挙げられる。
【0052】
充填剤は更に、粘土、シリカ、雲母、珪灰石、水酸化カルシウム、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、硫酸マグネシウム、カオリン、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、タルク、二酸化チタン、木粉、クルミ殻粉、αセルロース綿状塊、セルロース繊維、キチン、キトサン粉末、有機シリコーン粉末、ナイロン粉末、ポリエステル粉末、ポリプロピレン粉末、デンプン、及びこれらの混合物から成る群から選択されてもよい。用いられる場合、充填剤の量は、成形又は押出成形物品の0.1重量%〜60重量%である。
【0053】
潤滑剤は、例えば、金属石鹸、炭化水素ワックス、脂肪酸、長鎖アルコール、脂肪酸エステル、脂肪酸アミド、シリコーン、フルオロケミカル、アクリル、及びこれらの混合物から成る群から選択されてもよい。用いられる場合、潤滑剤の量は、成形又は押出成形物品の0.1重量%〜20重量%である。
【0054】
天然ポリマーもまた本発明に用いられてもよい。適したタンパク質系ポリマーには、大豆タンパク質、ゼインタンパク質、及びこれらの組み合わせが挙げられる。天然ポリマーは、約0.1%〜約80%、又は約1%〜約60%の量で存在してもよい。
【0055】
(押出成形及び成形)
本明細書で使用する時、「成形又は押出成形物品」は、環境分解性である熱可塑性ポリマーとブレンドされたPHAコポリマーから形成される、及び成形又は押出成形技術、例えば射出成形、吹込み成形、圧縮成形、又はパイプ、チューブ、異形、ケーブル、若しくはフィルムの押し出しを用いて形成される物体である。成形又は押出成形物品は、例えば玩具のような中空でない物体、又は例えば瓶、容器、タンポン・アプリケータ、薬剤の身体開口部への挿入用アプリケータ、使い捨ての医療機器、手術用機器、若しくは同様なもののような中空の物体であってもよい。
【0056】
熱可塑性樹脂の射出成形は、多段階プロセスであり、これにより本発明の組成物は溶融されるまで加熱され、次にそれが成形される密閉金型中に押し込まれ、及び最後に冷却されることにより固化される。PHAコポリマーブレンドは、熱分解を最小にするために、約180°C未満、又はより典型的には約160°C未満の溶融温度で溶融加工される。
【0057】
射出成形に用いられる機械の3つの一般型は、ラム、射出部分付きスクリュー・プラスティケーター、及び往復スクリュー装置である(高分子科学工学百科事典(Encyclopedia of Polymer Science and Engineering)8巻、102〜138ページ、ジョン・ワイリー・アンド・サンズ(John Wiley and Sons)、ニューヨーク、1987年(「EPSE−3」)を参照のこと)。ラム射出成形機は、シリンダー、スプレッダー、及びプランジャから構成される。プランジャは、溶融物を金型の中に押し込む。第2段階の射出部分付きスクリュー・プラスティケーターは、プラスティケーター、一方通行弁、スプレッダーなしのシリンダー、及びラムから構成される。スクリューによる可塑化後、ラムは溶融物を金型の中に押し込む。往復スクリュー射出機は、バレル及びスクリューから構成される。スクリューは回転して材料を溶融及び混合し、次いで前方に移動して溶融物を金型の中に押し込む。
【0058】
適した射出成形機の例は、金型、ノズル、及びバレルを有し、このバレルがゾーンに分割され、各ゾーンが熱電対及び温度制御装置を装備するエンゲル・ティーバーレス(Engel Tiebarless)ES60TL装置である。射出成形機のゾーンは、前部、中央、及び後部ゾーンとして記載することができ、それによってペレットは制御された温度下で前部ゾーンの中に導入される。射出成形機のノズル、金型、及びバレル構成要素の温度は、ペレットの溶融加工温度及び用いられる金型に従って変化し得るが、典型的には次の範囲である。ノズル、120〜170℃、前部ゾーン、100〜160℃、中央ゾーン、100〜160℃、後部ゾーン、60〜150℃、及び金型5〜50℃。 その他の典型的な加工条件には、約2100kPa〜約13,790kPaの射出圧力、約2800kPa〜約11,032kPaの保持圧力、約2秒〜約15秒の保持時間、及び約2cm/秒〜約20cm/秒の射出速度が挙げられる。その他の適した射出成形機の例には、ファンドルンモデル(Van Dorn Model)150−RS−8F、バッテンフェルドモデル(Battenfeld Model)1600、及びエンゲルモデル(Engel Model)ES80が挙げられる。
【0059】
熱可塑性樹脂の圧縮成形は、多量の本発明の組成物を開いたダイの下部半分に入れることから成る。ダイの上部及び下部の半分を圧力下で接合すると、次いで溶融された組成物はダイの形状に適合する。次に金型を冷却してプラスチックを硬化する(EPSE−3を参照のこと)。
【0060】
吹込み成形は、瓶及びその他の中空の物体を製造するために用いられる(EPSE−3を参照のこと)。この方法では、パリソンとして既知の溶融組成物のチューブが、中空の密閉金型の中に押し出される。パリソンは次にガスにより膨張され、組成物を金型の壁に対して強く押す。その後の冷却によりプラスチックを硬化する。次に金型が開けられ、及び物品が取り出される。
【0061】
吹込み成形は、射出成形に対して幾つかの利点を有する。用いられる圧力は、射出成形よりはるかに低い。吹込み成形は、典型的には、約170kPa〜約690kPaのプラスチックと金型表面との間の圧力で達成され得る。比較すると、射出成形圧力は、約69,000kPa〜約137,900kPaに達し得る(EPSE−3を参照のこと)。組成物が、容易な貫流金型(flow through molds)には高過ぎる分子量を有する場合には、吹込み成形が選択される技術である。高分子量ポリマー(又はコポリマー)は、低分子量ポリマーより、多くの場合良好な特性を有し、例えば高分子量材料は環境による応力亀裂に対してより大きな抵抗力を有する(EPSE−3を参照のこと)。吹込み成形により、製品内に非常に薄い壁を製造することが可能である。これは、より少ない組成物が用いられ、及び固化時間がより短く、結果として材料保存がより安価で、及びより高い処理量をもたらすことを意味する。吹込み成形の別の重要な特徴は、それが雌型の金型のみを用いるため、パリソンのノズルにおける押出成形条件の僅かな変更で壁の厚さを変えられることである(EPSE−3を参照のこと)。これは、必要な壁の厚さを前もって予想できない構造に関しては利点である。幾つかの厚さの物品の評価を行うことができ、そして仕様を満たす最も薄い、したがって最も軽く及び最も安価な物品を用いることができる。
【0062】
パイプ、チューブ、ロッド、ケーブル、又は異形のような押出成形物品を形成するために押出成形が用いられる。組成物が加熱室に供給され、及び連続回転スクリューによりこの室を通過させられる。プラスチック押出成形には、1軸押出成形機又は2軸押出成形機が通常用いられる。組成物が可塑化され、及びパイプダイヘッドを通って運ばれる。引取機が、補正ダイ(calibration die)、真空タンク補正装置、及び冷却装置を有する補正及び冷却部分を通して、パイプを引き抜く。硬質パイプは長さごとに切断されるが、可撓性パイプは巻かれる。異形押し出しは、一段階プロセスで実行されてもよい。押出成形手順は、ヘンセン,F.(Hensen,F.)のプラスチック押出成形技術(Plastic Extrusion Technology)、43〜100ページに更に記載されている。
【0063】
本発明の水に流すことのできるタンポン・アプリケータは、外側のチューブ状部材及び内側のチューブ状部材又はプランジャを具備する熱可塑性アプリケータを提供するために、多様な成形又は押出成形技術を用いて、所望の形状又は構成に成形又は押出成形される。別の実施形態では、外側のチューブ状部材及びプランジャは、異なる成形又は押出成形技術により製造されてもよく、及び更なる実施形態では、外側の部材が、本発明のブレンドから成形又は押出成形され、及びプランジャは環境分解性の別の物質から製造される。
【0064】
一般に、本発明の水に流すことのできるタンポン・アプリケータを製造する方法は、本発明の組成物を配合機中に入れることを伴い、及びこの組成物は溶融ブレンドされ及びペレットに加工される。次にペレットは、射出成形装置を用いて水に流すことのできるタンポン・アプリケータに構築される。射出成形プロセスは典型的には、制御された温度、時間、及び速度の下で実行され、及び溶融加工ペレット又は熱可塑性組成物を伴い、溶融された熱可塑性組成物は、金型の中に射出され、冷却され、及び所望のプラスチック物体に成形される。あるいは組成物を射出成形装置の中に直接入れることもでき、及び溶融物が所望の水に流すことのできるタンポン・アプリケータに成形される。
【0065】
本発明の水に流すことのできるタンポン・アプリケータを製造する手順の1つの例は、ブレンドを組成物の溶融温度を超える温度で押し出してロッドを形成し、ロッドをペレットに切断し、及びペレットを所望の水に流すことのできるタンポン・アプリケータの形態に射出成形することを伴う。
【0066】
熱可塑性組成物を溶融ブレンドするために通常用いられる配合機は、一般に1軸押出成形機、2軸押出成形機、及び混練押出成形機である。本明細書に用いるのに適した市販の押出成形機の例には、ブラック−クラウソン(Black-Clawson)1軸押出成形機、ワーナー・アンド・プフライデラー(Werner and Pfleiderer)同方向回転2軸押出成形機、ハッケ(HAAKE)(登録商標)ポリラブシステム(Polylab System)異方向回転2軸押出成形機、及びバス(Buss)混練押出成形機が挙げられる。ポリマーのブレンド及び配合の総括論議は、高分子科学工学百科事典(Encyclopedia of Polymer Science and Engineering)、6巻、571〜631ページ、1986年、及び11巻、262〜285ページ、1988年、ジョン・ワイリー・アンド・サンズ(John Wiley and Sons)、ニューヨークに開示されており、これらの開示は本明細書に参考として組み込まれる。
【0067】
本発明の水に流すことのできるタンポン・アプリケータは、その包装が耐汚染性であり及び乾いた廃棄物と共に使い捨て可能であることを条件として、いずれかの適した包装の中に包装され得る。適した包装は、その処分について環境への懸念が最小であるか又は全く生じない生分解性材料から製造されるものである。しかしながら、本発明のタンポン・アプリケータは、紙、不織布、セルロース、熱可塑性樹脂、若しくはその他のいずれかの適した水に流すことのできる材料、又はこれらの材料の組み合わせから製造された水に流すことのできる包装中に包装できることが企図される。
【0068】
(アニーリング・サイクル時間)
アニーリング・サイクル時間は、本明細書では、保持時間と冷却時間を加算したものとして定義される。特定の成形用に実質的に最適化された加工条件と共に、アニーリング・サイクル時間は、コポリマーブレンド組成物の関数である。実質的に最適化された加工条件は、ゾーン、ノズル、及び成形装置の金型の温度設定、ショットサイズ、射出圧力、及び保持圧力である。環境分解性であるポリマーと共にブレンドされたPHAコポリマーについて本明細書で提供されるアニーリング・サイクル時間は、PHAコポリマーが存在しないブレンドについてのこうした時間より、少なくとも10秒間短い。本発明の更なる実施形態では、本明細書で提供されるアニーリング・サイクル時間は、環境分解性である熱可塑性ポリマー又はコポリマーを含まない、環境分解性である成形又は押出成形物品を形成するためのアニーリング・サイクル時間より、少なくとも15、20、25、30、35、40、45、又は50秒間短い。本明細書に提供されるような、エンゲル・ティーバーレス(Engel Tiebarless)ES60TL射出成形機を用いて製造される1/2インチ長さ(L)(12.7mm)×1/8インチ幅(W)(3.175mm)×1/16インチ高さ(H)(1.5875mm)の寸法を有するドッグボーン張力試験片(dogbone tensile bar)は、本明細書でアニーリング・サイクル時間を測定するための成形又は押出成形物品を代表するものとしての基準を提供する。
【0069】
保持時間は、初期材料射出後に保持圧力下で成形品が保持される時間の長さである。結果は、気泡及び/又はひけマーク、好ましくは両方が、外部表面上に、好ましくは外部及び内部表面(可能であれば)の両方に、(20−20の視力を有し及び視覚異常のない人の)裸眼により、成形又は押出成形物品の表面から約20cmの距離から視覚的に観察されないことである。これは、その成形品の精度及び表面的な質を確実にすることである。しかしながら、収縮は金型の設計により考慮されており、約1.5%〜5%、約1.0%〜2.5%、又は1.2%〜2.0%の収縮は起きてもよい。より短い保持時間は、成形品が上記の目視試験に合格しなくなるまで、金型の形状及び質感に適合しなくなるまで、完全に充填しなくなるまで、又は過剰の収縮を示すまで保持時間を短くすることにより決定される。その結果、こうした事象が起きる前までの時間の長さを、より短い保持時間として記録する。
【0070】
冷却時間は、成形品が金型の中で固化し及び金型から容易に取り出される時間として定義される。金型は、少なくとも2つの部分を包含し、その結果成形物品は容易に取り出される。取り出すために、金型は2部分の分割線で開けられる。完成した成形品は、開けられた金型から手で取り出すことができるか、又はそれは、金型が開けられる時に、人手の介入なしに排出装置により自動的に押し出され得る。成形品の形状に依存して、こうした排出装置は金型の中に埋め込まれたピン又はリングから成ってもよく、それは金型が開けられる時に前方に押し出され得る。例えば金型は、標準的ダイアル型又は成形品の排出を機械的に援助するための機械的ロッド型排出ピンを含有できる。適した大きさのロッド型排出ピンは、1/8インチ(3.175mm)、及び同様なものである。より短い冷却時間は、成形品が金型上にとらえられて及び容易に飛び出せなくなるまでの冷却時間を減少することにより決定される。その結果、成形品がとらえられる前までの時間の長さを、より短い冷却時間として記録する。
【0071】
ポリマーブレンド材料の熱分解を避けるために十分低いが、成形のために材料の自由流を可能にするために十分高く設定された加工温度が用いられる。PHAコポリマーブレンドは、熱分解を最小にするために、約180°C未満、又はより典型的には約160°C未満の溶融温度で溶融加工される。一般にポリマーは、溶融後に分解温度を越える温度に長期間暴露されると熱分解する可能性がある。本開示の見地から当業者に理解されるように、熱分解を起こすために必要な特定の時間は、特定材料、溶融温度(Tm)を超える時間の長さ、及びTmを超える温度数に依存する。温度は、熱分解の危険を最小にするためにポリマー溶融物の自由流を可能にするために、合理的に可能なだけ低いことができる。押出成形中は、押出成形機中の高剪断力が、押出成形機中の温度を設定温度より高く上昇させる。そのため、設定温度は材料の溶融温度より低くてもよい。低い加工温度はまたサイクル時間を減らすのを助ける。例えば、制限するわけではないが、射出成形機のノズル及びバレル構成要素の設定温度は、ポリマー材料の溶融加工温度、及び用いられる金型の種類に従って変わることができ、並びにTmより約20℃低い温度からTmより約30℃高い温度までであることができるが、典型的には次の範囲である。ノズル、120〜170℃、前部ゾーン、100〜160℃、中央ゾーン、100〜160℃、後部ゾーン、60〜160℃。射出成形機の設定型温はまた、ポリマー材料の種類及び用いられる金型の種類に依存する。より高い型温は、ポリマーがより速く結晶化するのを助け、及びサイクル時間を減らす。しかしながら、型温が高過ぎると、成形品は、金型から変形して出てくるという結果になる場合がある。型温は、5〜60℃である。典型的には型温は25〜50℃である。
【0072】
成形射出速度は、組成物の流速に依存する。流速が速ければ速いほど、粘度は低くなり、より遅い速度が射出成形には必要である。射出速度は、約5cm/秒〜20cm/秒の範囲であり得、一つの実施形態では、射出速度は10cm/秒である。粘度が高い場合は、押出成形機の圧力が溶融材料を金型の中に押し込んで金型を充填するように射出速度が増加される。射出成形圧力は、加工温度及びショットサイズに依存する。自由流は、約14Mpa以下の射出圧力の読みに依存する。
【0073】
(環境分解性及び水洗可能性)
本発明で製造される成形又は押出成形物品は、環境分解性である。「環境分解性」とは、生分解性、分解性、分散性、若しくは堆肥化可能性、又はこれらの組み合わせであることとして定義される。本明細書で使用する時、「水に流すことのできる」とは、既存の下水基盤設備に有害な結果を与えずに、物品を安全に下水道に流せることを意味する。結果として、本発明の成形又は押出成形物品は、固形廃棄物堆肥化又は下水収集及び処理施設で、容易に及び安全に処分することができる。本発明の成形又は押出成形物品の環境における分解性は、こうした材料の、それらの使用後の環境への蓄積という問題に解決策を提供する。タンポン・アプリケータのような使い捨て製品に用いられた場合の本発明の成形又は押出成形物品の水に流すことのできる性能は、消費者に追加の簡便さ及び個別性を提供する。生分解性、分解性、分散性、堆肥化可能性、及び水に流すことのできる性能はすべて異なる基準を有し、及び異なる試験を通じて測定されるが、一般に、本発明の成形又は押出成形物品は、1を超えるこれらの基準を満たす。
【0074】
生分解性は、有機物質が好気性条件に暴露された時、物質が二酸化炭素及び水のような単純化合物に分解するか、又は嫌気性条件下で、天然起源の微生物の作用により、物質が二酸化炭素、水、及びメタンのような単純化合物に分解することとして定義される。生分解性は、成形又は押出成形物品の有機構成要素が、生物活性を介して分解を受けるが、そこには持続する代謝産物が存在しないことを意味する。
【0075】
生分解性についての多様な異なる標準化方法が、様々な組織により及び異なる国々で確立されてきた。例えば、好気性の生分解性について、米国材料試験協会(American Society for Testing and Materials)(ASTM)は、地方自治体の固形廃棄物堆肥化についてのASTM D5338(制御された堆肥化条件下でのプラスチック材料の好気性生分解を判定するための標準試験方法(Standard Test Method for the Determining Aerobic Biodegradation of Plastic Materials Under Controlled Composting Conditions))、及び地方自治体の下水処理についてのASTM D5271(活性汚泥下水処理システムにおけるプラスチック材料の好気性生分解を評価するための標準試験方法(Standard Test Method for Assessing the Aerobic Biodegradation of Plastic Materials in an Activated Sludge Wastewater Treatment System))を構築した。これらの試験は、関心のある基質の微生物による同化の結果として放出される二酸化炭素の量をモニターすることにより、時間の関数として石化する試験物質の百分率を測定する。これらの試験における二酸化炭素の生成は、典型的には電気分解酸素消費量測定を介して測定される。経済協力開発機構(Organization for Economic Cooperation and Development)(OECD)の301Bのようなその他の標準的手順もまた、物質の好気性生分解性を評価するために用いられてもよい。酸素が存在しない場合の標準的な生分解試験は、ASTM D5511(高固体嫌気性消化条件下でのプラスチック材料の嫌気性生分解を判定するための標準試験方法(Standard Test Method for Determining the Anaerobic Biodegradation of Plastic Materials Under High Solids Anaerobic Digestion Conditions))、又はASTM D5526(加速された埋立ゴミ処理条件下でのプラスチック材料の嫌気性生分解を判定するための標準試験方法(Standard Test Method for Determining Anaerobic Biodegradation of Plastic Materials Under Accelerated Landfill Conditions))のような様々な手順に記載されている。これらの試験は、汚水浄化槽、嫌気性消化、又は埋立ゴミ処理場の物質の生分解性を評価するために用いられる。
【0076】
分解は、成形又は押出成形物品が、より小さい部分に、物理的、化学的、又は生物学的手段で壊れる能力を有する場合である。分解は、具体的な環境条件下での物質の重量喪失を判定することにより評価される。好気分解試験及び嫌気分解試験の両方が用いられる。これらの試験では、重量損失は、典型的には、活性又は消化汚泥に曝露した後、1ミリメートルの開口部を有する18メッシュのふるい上に保持されない試験物質の量によって決定される。初期試料とふるい上に回収された試料との重さの差を用いて、分解の速度及び程度を決定する。生分解性及び分解についての試験は、本質的に同じ環境が試験に用いられるために、類似している。主な違いは、分解については、残った物質の重さが測定されるが、一方、生分解性については、発生した気体が測定されることである。
【0077】
本発明の成形又は押出成形物品は、嫌気性条件下で28日以内に50%を超える分解を有し、及び更なる実施形態では、こうした条件下で28日以内に60%を超える、又は80%を超える分解を有する。
【0078】
実施例。PHAコポリマーを含む成形試験試料、及び環境分解性であるポリマー又はコポリマーとブレンドされるPHAコポリマー
次の組成物が配合され及び試験試料に成形される。様々な組成物は、次のような表記を有する。
【0079】
【表1】

1ポリヒドロキシアルカノエートコポリマー、この場合単位はC4C6であり、この場合C4は、−O−CH(CH3)−CH2−C(O)−であり、及びC6は、−O−CH(C3H7)−CH2−C(O)−であり、及びC6の量は全重量の10〜12%(11.3%C6)である
2ポリヒドロキシブチラート、粒径30μm、グッドフェロー・ケンブリッジ・リミテッド(Goodfellow Cambridge Limited)英国から入手可能
3セバシン酸ジメチル、サイエンティフィック・ポリマー・プロダクツ(Scientific Polymer Products)から入手可能
4二酸化チタン、デュポン白色顔料及び鉱物製品(DuPont White Pigment & Mineral Products)から入手可能
5ユーラカミド(Euracamide)、クロンプトン・コーポレーション(Crompton Corporation)からケマミドEウルトラ(Kemamide E Ultra)として入手可能
6二価酸−二価アルコール脂肪族ポリエステルは、ビオノーレ(BIONOLLE)(登録商標)3001として昭和高分子株式会社(Showa Highpolymer Company,Ltd)から入手可能である
7ポリ乳酸、バイオマー(BIOMER)(登録商標)L9000としてバイオマー(Biomer)(ドイツ、クライリング(Krailling)、フロスト−カステン通り(Frost-Kasten-Str.))から入手可能
8直鎖状低密度PE、KN226としてシェブロン・フィリップス・ケミカルズ(Chevron Philips Chemicals)から入手可能
9ポリ(エチレン−コ−メタクリレート)、この場合メタクリレート含有量は27%であり、TC221としてエクソン・モービル(Exxon-Mobil)から入手可能である
10ポリ(エチレン−コ−ビニルアセテート)、この場合ビニルアセテート含有量は28%であり、エルバックス(ELVAX)(登録商標)VAX260としてデュポン(DuPont)から入手可能である
12ポリヒドロキシアルカノエートコポリマー、この場合単位はC4C6であり、この場合C4は、−O−CH(CH3)−CH2−C(O)−であり、及びC6は、−O−CH(C3H7)−CH2−C(O)−であり、及びC6の量は全重量の5〜6%(5.7%/5.9% C6 50/50)である
13ポリヒドロキシアルカノエートコポリマー、この場合単位はC4C6であり、この場合C4は、−O−CH(CH3)−CH2−C(O)−であり、及びC6は、−O−CH(C3H7)−CH2−C(O)−であり、及びC6の量は全重量の2〜3%(2.5%C6)である
【0080】
配合(ポリマーのブレンド)。成分が秤量され、重量百分率に基づいて共に乾燥ブレンドされ、及び30mmのスクリュー直径、6加熱ゾーン、及び4穴ダイプレートを有するワーナー・プフライデラー(Werner Pfleider)ZSK−30同方向回転2軸押出成形機の中に供給される。溶融ブレンド混合物が、押出成形機末端部にダイに押し出され4つのロッドを形成する。ロッドはコンベヤーで運ばれ、空冷され、及び射出成形のためにペレタイザーを用いてペレット化される。
【0081】
あるいは、組成物9.及び12.は、ハッケ(HAAKE)(登録商標)ポリラブシステム(Polylab System)異方向回転2軸押出成形機の中に供給される。押出成形機は、乾燥ブレンドされた混合物を溶融プラスチックの単一ストランドに配合するための単一穴ダイプレートを装備しており、この溶融プラスチックの単一ストランドは空冷され、次に射出成形のためにペレタイザーを用いてペレット化される。
【0082】
組成物10.は、ワーナー・プフライデラー(Werner Pfleider)ZSK−30押出成形機を用いて、25%の組成物12.及びPHA1/PHB2/DMSA3/TiO24/ケマミドE(KemamideE)5=57.75/2.25/12.75/1.5/0.75から製造される。
【0083】
組成物11.は、ワーナー・プフライデラー(Werner Pfleider)ZSK−30押出成形機を用いて、50%の組成物12.及びPHA1/PHB2/DMSA3/TiO24/ケマミドE(KemamideE)5=38.5/1.5/8.5/1/0.5から製造される。
【0084】
射出成形。エンゲル・ティーバーレス(Engel Tiebarless)ES200TL射出成形機又はES60TL射出成形機を用いて、タンポン・アプリケータ又は「ドッグボーン(dogbone)」と称される標準化された張力試験片が、配合されたブレンドを用いてそれぞれ製造される。射出成形プロセスは、25mmのスクリュー、並びに温度、時間、速度、及び圧力の制御された加工条件を用い、ペレットは溶融加工され、金型の中に射出され、冷却され、次いで所望のタンポン・アプリケータ又はドッグボーン張力試験片(dogbone tensile bar)に成形される。
【0085】
成形に影響する通常の射出成形手順及びパラメータは、次のようである。射出成形機が始動され、並びに温度が、油圧オイルについて(機械については、通常約30℃)、材料について(4加熱ゾーンについては表2、3、及び4を参照のこと)、及び金型について(35℃〜60℃)設定される。送り速度を押出成形機について設定する。
【0086】
組成物が射出押出成形機のホッパー中に供給される。スクリューは、溶融材料を供給ホッパーから直接取り込み、それをスクリュー先端に運ぶ。スクリューの運搬作用は、その先端の前に圧力を構築する。この圧力がスクリューを押し返す。1回分の射出について十分な溶融物が空間に供給されると同時に、スクリューの回転は停止する。ノズルが金型のスプルーブッシングを押した時、金型が型締めされ、次に油圧シリンダー中の突発的な制御圧力の上昇が、スクリューを前方に押して、溶融物を金型の空洞中に送り込む。手順のこの部分は初期充填サイクルを表し、この場合金型は容積測定で約95%充填され、及び射出機の油圧は最大に達する。
【0087】
手動設定パラメータには、射出速度(材料を金型に押し出すほど十分に高いが、多くのはみ出しを与えるほど高過ぎず、通常10cm/秒であり、その範囲は5cm/秒〜20cm/秒である)、及びショットサイズ(小さ過ぎると成形品を充填しないが、大き過ぎると多くのはみ出しを有する)が挙げられ、射出又は充填サイクルは、射出速度、油圧オイル、溶融材料、及び金型の温度、並びに材料の粘度により影響され、スクリュー駆動部の圧力依存状態は、粘度、分子の分解、結晶化度、及び成形品表面の分子の配向、成形品、及び表面の品質により影響される。
【0088】
保持サイクルは、油圧が保持圧力に変えられた時に始まる。材料の残り(約5%の体積)が、金型の空洞の中に詰められる。金型は、圧力下で、金型のゲート(溶融材料は成形品までゲートを通過する)が凍結される(即ち、更なる溶融物が成形品に入ったり又は出たりできない)まで保持される。このサイクルの時間が保持時間である。次に油圧はゼロまで低下する。
【0089】
設定パラメータには、保持圧力(高過ぎるとはみ出しが多く、低過ぎると空隙及びひけマークを避けるために残りの5%の材料を成形品の中に押し込めない)、保持時間(更なる材料が成形品に入ったり又は出たりせず、成形品の品質を保証するようにゲートが凍結されるまでに十分なほど長く、さもなければ、成形品は不規則な寸法、空隙、又はひけマークを有する)が挙げられ、及び保持サイクルは、保持圧力への切り替え、圧力保存効果の制御、空洞壁の温度、金型の変形、型締め装置の安定性、及び型締め力の効果の大きさにより影響される。
【0090】
成形品が十分に固化され及び冷却された時、型締め装置が開く。成形品は、可動圧盤上に設置された金型の中に半分ある。排出装置が、静止した圧盤から調節できる距離で成形品を排出する。冷却時間は、自動排出を生じるのに十分なほど長い。
【0091】
物理的特性。本発明の材料の破断時の引張り強度、破断時の伸長百分率、及びヤング率は、当該技術分野において既知の方法、例えば、「薄いプラスチックシートの引っ張り特性についての標準試験方法(Standard Test Method for Tensile Properties of Thin Plastic Sheeting)」159〜167ページに記載されるASTM D882−95a試験方法に従って決定される。本明細書に記載される組成物は、射出成形されて、1/2インチ長さ(L)(12.7mm)×1/8インチ幅(W)(3.175mm)×1/16インチ高さ(H)(1.5875mm)の寸法を有する「ドッグボーン形状」の試験試料を形成する。こうした試験試料は、破断時の引張り強度、破断時の伸長百分率、及び弾性率について、インストロン引張り試験機(50ポンド(22.679692kg)ロードセル、グリップ距離2.54cm、ゲージ長12.7mm、つかみ具の隔たり5mm、及びクロスヘッド速度5.08cm/分を装備したモデル(Model)1122(マサチューセッツ州カントン所在インストロン・コーポレーション(Instron Corporation)から))を用いて評価される。各分析について、「ドッグボーン形状」の試験試料は、破断が起きるまで引っ張られ、及び破断時の引張り強度、破断時の伸長百分率、及び弾性率の特性を決定するために、荷重対伸長のプロットが生成される。破断時の引張り強度は、試験試料の断面積で割り算された破断時の荷重であり、及びメガパスカル又はMPa(ニュートン/平方メートル)の単位で定義される。破断時の伸長百分率は、破裂する時点での伸長の長さをゲージ長で割り算し、次に100を掛けることにより決定される。ヤング率は、荷重−伸長曲線の初めの直線部分の傾きであり、及びMPaの単位で定義される。
【0092】
硬度特性は、「ゴム特性−デュロメーター硬度についての標準試験方法(Standard Test Method for Rubber Property-Durometer Hardness)」、388〜391ページに記載されるASTM D2240−97試験方法に従って決定される。本明細書に記載される組成物は、「ドッグボーン形状」の試験試料に射出成形されるが、これは1スタック当たり3つのドッグボーンの群に積み重ねられ、その際各ドッグボーンのスタックは、3/16インチ(4.7625mm)の合計の厚さを有する。硬度の値は、PTCインスツルメンツ(PTC Instruments)からのモデル307LショアDデュロメーター(Model 307 L Shore D Durometer)のような硬度計を用いて、ドッグボーンスタックの様々な点で測定され、及び平均の硬度測定値が決定される。
【0093】
表1は、組成物1.〜11.の成形試験試料の物理的特性を提供する。
【0094】
【表2】

組成物1.は、「べたつき」の特性を示し、及び金型から容易にはずれない。組成物2.〜11.は、多様な成形物品について受容できる物理的特性を示し、及び表1は、特定用途のための特定組成物の選択のし方を当業者に教示する。例えば、より柔らかい物品には、より低い硬度数及びより低いヤング率を有する組成物が選択される。より大きい破断伸長は、より少ない脆性を有するより弾性の組成物を示唆する。より高い破断応力は、より強い一体性及びより高い耐久性を示唆する。
【0095】
表2は、組成物2.〜7.及び9.〜11.について2軸押出成形機を用いた配合条件を提供する。
【0096】
【表3】

アニーリング・サイクル時間は、本明細書では、温度、ショットサイズ、射出圧力及び保持圧力の最適加工条件下で、成形物品を形成するための保持時間と冷却時間を加算したものとして定義される。
【0097】
表3は、組成物2.〜6.及び9.〜11.についてのタンポン・アプリケータの射出成形条件及びアニーリング・サイクル時間を提供する。30秒を超える時間については5秒間隔が用いられる。30秒未満については、1秒間隔が用いられる。
【0098】
【表4】

表3のデータは、C4C6単位を有し、この場合C6の量が10〜12モル%であるポリヒドロキシアルカノエートコポリマーを含むタンポン・アプリケータのアニーリング・サイクル時間が、別のポリマー、例えば、二価酸−二価アルコール脂肪族ポリエステル(組成物3.、50秒間短い)、ポリ乳酸(組成物4.、10秒間短い)、直鎖状低密度ポリエチレン(組成物5.、15秒間短い)、又はポリ(エチレン−コ−メタクリレート)(組成物6.、20秒間短い)とブレンドされた場合に、より短いことを示している。特に、C4C6単位を有し、及びC6の量が2〜8モル%であるポリヒドロキシアルカノエートコポリマーと共にブレンドされた場合には、アニーリング・サイクル時間はより短い(組成物9.及び11.、115秒間短い、組成物10.、105秒間短い)。
【0099】
表4は、組成物2.〜4.及び9.〜11.についての標準化された成形試料(ドッグボーン)の射出成形条件及びアニーリング・サイクル時間を提供する。アプリケータ及びドッグボーンの金型の設計は、ドッグボーン金型は、ランナーに接続したスプルーを有する従来のランナーシステムであり、及び材料を4つのゲートに送るという点で異なる。各ゲートは、材料の物理試験のために用いられる成形品の異なる形状の成形に対して開けられる。ドッグボーン張力試験片(Dogbone tensile bars)は、ドッグボーン成形ゲートが開いており、及びその他の3つのゲートが閉まっている時にのみ製造される。ドッグボーン張力試験片(Dogbone tensile bars)は、標準化された成形物品を表す。
【0100】
【表5】

表4のデータは、C4C6単位を有し、この場合C6の量が10〜12モル%であるポリヒドロキシアルカノエートコポリマーを含む標準化試験成形物品のアニーリング・サイクル時間が、別のポリマー、例えば、二価酸−二価アルコール脂肪族ポリエステル(組成物3.、10秒間短い)、又はポリ乳酸(組成物4.、30秒間短い)とブレンドされた場合に、より短いことを示している。特に、C4C6単位を有し、及びC6の量が2〜8モル%であるポリヒドロキシアルカノエートコポリマーと共にブレンドされた場合には、サイクル時間はより短い(組成物9.、45秒間短い、組成物10.、42秒間短い、組成物11.、36秒間短い)。
【0101】
嫌気分解。この試験の目的は、嫌気性条件下での水に流すことのできる製品の生物学的分解を評価することである。高速度の分解は、製品が汚水浄化槽内の汚物中又は嫌気性消化汚泥中に認識できないという証拠を提供する。製品を秤量し、及び1.5Lの嫌気性消化汚泥を含有する2Lの琥珀色ガラス瓶に加える。発生気体の放出を可能にするために1穴のストッパーで瓶に蓋をする。ふるいわけ水準では、試験中の各製品について、3つの複製瓶をインキュベーターに35℃で設置する。確証試験では、3つの瓶を各時点で用意する。試験は、静的条件下で行う。定期的(7日、14日、及び28日)に、瓶を取りだし及び内容物を1mmのふるいに通す。1mmのふるい上に保持された物質を乾燥し及び秤量し、並びに生成物の重量損失の百分率を決定する。表5は、組成物2.〜6.及び9.〜11.の成形されたアプリケータのこうしたデータを提供する。
【0102】
【表6】

C4C6単位を有し、及びC6の量が2〜8モル%であるポリヒドロキシアルカノエートコポリマーと共にブレンドされた、C4C6単位を有し、この場合C6の量が10〜12モル%であるポリヒドロキシアルカノエートコポリマーを含む組成物は、特に望ましい嫌気分解の結果を提供する。
【0103】
好気分解。この試験の目的は、好気性の現場及び地方自治体の活性汚泥下水処理場での水に流すことのできる製品の最終結果を評価することである。高い分解速度は、材料の生物学的分解が起きていることを示唆する。この試験方法は、下水管用(down-the-drain)化学薬品のために開発された、他の連続流活性汚泥試験に類似している。この試験は、その終点が、試験システムを通る特定化学物質の損失の代わりに、システム中の材料の質量の損失であるという点で、他の試験と異なっている。試験装置は、多孔質のステンレス鋼の濾過器を有する6Lガラス反応器から成る。ステンレス鋼の濾過器は、活性汚泥固体を反応器中に保持するために用いられる。未処理下水を、およそ15mL/分の速度で反応器中に連続的に供給する。これは、約7時間の水力滞留時間(HRT)に相当する。活性汚泥浮遊物(MLSS)及び廃棄された固形物部分を週基準で定期的に測定し、MLSSを2500〜4500mg/Lに維持する。この試験では、予め秤量した試験材料をメッシュの袋(1.6mmの大きさの開口部を有するガラス繊維スクリーニング)の中に設置し、次いで多孔質の深い反応器中に懸濁する。指定された時点で、試験材料を有するメッシュの袋の1つを反応器から取り出し、及びその内容物を1mmのふるいを通して洗い流す。1mmのふるい上に残る材料の量を次に乾燥し及び秤量する。試験材料の質量損失を時間と共に決定する。
【0104】
【表7】

【0105】
【表8】

C4C6単位を有し、及びC6の量が2〜8モル%であるポリヒドロキシアルカノエートコポリマーと共にブレンドされた、C4C6単位を有し、この場合C6の量が10〜12モル%であるポリヒドロキシアルカノエートコポリマーを含む表7の組成物は、特に望ましい好気分解の結果を提供する。表6のPHA組成物は、分解の速度が物品の厚さに依存することを示している。
【0106】
「発明を実施するための最良の形態」で引用したすべての文献は、関連部分において本明細書に参考として組み込まれているが、いずれの文献の引用も、それが本発明に対する先行技術であるとの容認と解釈されるべきではない。
本発明の特定の実施形態を例示し記載したが、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく他の様々な変更及び修正を実施できることが、当業者には自明であろう。したがって、本発明の範囲内にあるそのようなすべての変更及び修正を、添付の特許請求の範囲で扱うものとする。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
環境分解性(environmentally degradable)である熱可塑性ポリマー又はコポリマーの少なくとも5重量%部、及び
少なくとも2つのランダムに繰り返すモノマー単位を含むポリヒドロキシアルカノエートコポリマーの少なくとも20重量%部を含み、
第1のモノマー単位が構造(I)を有し
【化1】

この場合、R1がH、又はC1若しくはC2アルキルであり、及びnが1又は2であり、並びに
第2のモノマー単位が構造(II)を有し
【化2】

この場合、R2がC3〜C19アルキル若しくはC3〜C19アルケニルであり、
又は前記第2のモノマー単位が構造(III)を有し
この場合、mは2〜9であり
【化3】

少なくとも80%の前記ランダムに繰り返すモノマー単位が、前記第1のモノマー単位の前記構造を有し、
前記成形又は押出成形物品を形成するためのアニーリング・サイクル時間(annealing cycle time)が、前記環境分解性である熱可塑性ポリマー又はコポリマーを含まない成形又は押出成形物品を形成するためのアニーリング・サイクル時間より、少なくとも10秒間短いことを特徴とする環境分解性である成形又は押出成形物品。
【請求項2】
環境分解性である熱可塑性ポリマー又はコポリマーの少なくとも5重量%部、及び
少なくとも2つのランダムに繰り返すモノマー単位を含むポリヒドロキシアルカノエートコポリマーの少なくとも20重量%部を含み、
第1のモノマー単位が構造(I)を有し
【化4】

この場合、R1がCH3であり、及びnが1であり、並びに
第2のモノマー単位が構造(II)を有し
【化5】

この場合、R2がC3アルキルであり、
20%までの前記ランダムに繰り返すモノマー単位が、前記第2のモノマー単位の前記構造を有することを特徴とする環境分解性である成形又は押出成形物品。
【請求項3】
前記ポリヒドロキシアルカノエートコポリマーが、第1のポリヒドロキシアルカノエートコポリマーであり、及び
前記環境分解性である熱可塑性ポリマー又はコポリマーが、第2のポリヒドロキシアルカノエートコポリマーであって、ランダムに繰り返すモノマー単位(I)及び(II)を有し、かつ前記第1のポリヒドロキシアルカノエートコポリマー中に存在する構造単位(II)百分率とは異なる構造単位(II)百分率を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の環境分解性である成形又は押出成形物品。
【請求項4】
1がCH3であり、nが1であり、及び前記第2のモノマー単位が構造IIを有し、R2が直鎖又は分岐鎖のC3アルキルであることを特徴とする請求項1、2、又は3に記載の環境分解性である成形又は押出成形物品。
【請求項5】
環境分解性である熱可塑性ポリマー又はコポリマーが、
ポリラクチドポリマー若しくはコポリマー;
デンプン;
ポリブチレンコハク酸/アジピン酸コポリマー(polybutylene succinate/adipate copolymer)、ポリラクチド、ポリカプロラクトン、若しくはポリエチレンコハク酸(polyethylene succinate)、又はこれらの組み合わせ;又は
二価酸/二価アルコール脂肪族ポリエステル、脂肪族/芳香族コポリエステル、若しくはポリヒドロキシカルボン酸、又はこれらの組み合わせ;
デンプン;
又はこれらの組み合わせであることを特徴とする請求項1、2、3、又は4に記載の環境分解性である成形又は押出成形物品。
【請求項6】
加工助剤を更に含むことを特徴とする請求項1、2、3、4、又は5に記載の環境分解性である成形又は押出成形物品。
【請求項7】
該加工助剤が、
(a)セバシン酸ジメチル、グリセリン、トリアセチン、グリセロール、モノステアレート、ソルビトール、エリスリトール、グルシドール(glucidol)、マンニトール、スクロース、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジエチレングリコールジベンゾエート、ジプロピレングリコールジベンゾエート、トリエチレングリコールカプレート−カプリレート、ブチレングリコール、ペンタメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、アジピン酸ジイソブチル、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、パルミチン酸アミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、メチルピロリドン、テトラメチレンスルホン、オキサ一価酸(oxa monoacids)、オキサ二価酸、ポリオキサ二価酸、ジグリコール酸、クエン酸トリエチル、アセチルクエン酸トリエチル、クエン酸トリ−n−ブチル、アセチルクエン酸トリ−n−ブチル、アセチルクエン酸トリ−n−ヘキシル、乳酸アルキル、フタル酸ポリエステル、アジピン酸ポリエステル、グルテートポリエステル(glutate polyester)、フタル酸ジイソノニル、フタル酸ジイソデシル、フタル酸ジヘキシル、アジピン酸アルキルアリルエーテル(alkyl
alylether)ジエステル、アジピン酸ジブトキシエトキシエチル、及びこれらの混合物から成る群から選択される可塑剤、
(b)ポリヒドロキシブチラート、ソルビトールアセタール、窒化ホウ素、酸化チタン、タルク、粘土、炭酸カルシウム、塩化ナトリウム、金属リン酸塩、及びこれらの混合物から成る群から選択される核生成剤(nucleating agent)、
(c)粘土、シリカ、雲母、珪灰石、水酸化カルシウム、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、硫酸マグネシウム、カオリン、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、タルク、二酸化チタン、木粉、クルミ殻粉、α−セルロース綿状塊、セルロース繊維、キチン、キトサン粉末、有機シリコーン粉末、ナイロン粉末、ポリエステル粉末、ポリプロピレン粉末、デンプン、及びこれらの混合物から成る群から選択される充填剤、若しくは
(d)金属石鹸、炭化水素ワックス、脂肪酸、長鎖アルコール、脂肪酸エステル、脂肪酸アミド、シリコーン、フルオロケミカル、アクリル、及びこれらの混合物から成る群から選択される潤滑剤、
又はこれらの混合物である請求項7に記載の環境分解性である成形又は押出成形物品。
【請求項8】
前記成形又は押出成形物品を形成するためのアニーリング・サイクル時間が、前記環境分解性である熱可塑性ポリマー又はコポリマーを含まない成形又は押出成形物品を形成するためのアニーリング・サイクル時間より、少なくとも10秒間短いことを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の環境分解性である成形又は押出成形物品。
【請求項9】
環境分解性である熱可塑性ポリマー又はコポリマーを含む前記成形又は押出成形物品の前記アニーリング・サイクル時間が、前記環境分解性である熱可塑性ポリマー又はコポリマーを含まない環境分解性である成形又は押出成形物品を形成するためのアニーリング・サイクル時間より、少なくとも15、20、25、30、35、40、45、又は50秒間短いことを特徴とする請求項8に記載の環境分解性である成形又は押出成形物品。
【請求項10】
前記物品がタンポン・アプリケータであることを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載の環境分解性である成形又は押出成形物品。
【請求項11】
水に流すことのできるタンポン・アプリケータの形態であることを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載の環境分解性である成形又は押出成形物品。
【請求項12】
前記物品がタンポン・アプリケータであり、及び前記環境分解性である熱可塑性ポリマー又はコポリマーが、ポリブチレンコハク酸/アジピン酸コポリマー若しくはポリラクチド、又はこれらの組み合わせであることを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載の環境分解性である成形又は押出成形物品。
【請求項13】
該アプリケータが、嫌気分解条件下で28日以内に50%を超えて分解されることを特徴とする請求項10、11、又は12に記載の水に流すことのできるタンポン・アプリケータ。
【請求項14】
該アプリケータが、嫌気分解条件下で28日以内に80%を超えて分解されることを特徴とする請求項13に記載の水に流すことのできるタンポン・アプリケータ。
【請求項15】
環境分解性である熱可塑性ポリマー又はコポリマーの少なくとも5重量%部、及び
少なくとも2つのランダムに繰り返すモノマー単位を含むポリヒドロキシアルカノエートコポリマーの少なくとも20重量%部を溶融状態まで加熱してブレンドを形成する工程であって、
第1のモノマー単位が構造(I)を有し
【化6】

この場合、R1がH、又はC1若しくはC2アルキルであり、及びnが1又は2であり、並びに
第2のモノマー単位が構造(II)を有し
【化7】

この場合、R2がC3〜C19アルキル若しくはC3〜C19アルケニルであり、
又は前記第2のモノマー単位が構造(III)を有し
【化8】

この場合、mは2〜9であり、かつ
少なくとも80%の前記ランダムに繰り返すモノマー単位が前記第1のモノマー単位の前記構造を有するものである工程;
前記溶融されたブレンドをアニール(anneal)させる工程;及び
前記物品を成形又は押出成形する工程;
を含む環境分解性である成形又は押出成形物品を形成する方法であって:
該方法が、前記環境分解性である熱可塑性ポリマー又はコポリマーを含まない成形又は押出成形物品を形成するためのアニーリング・サイクル時間より、少なくとも10秒間短いアニーリング・サイクル時間を有することを特徴とする方法。

【公表番号】特表2006−525136(P2006−525136A)
【公表日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−501299(P2006−501299)
【出願日】平成16年4月23日(2004.4.23)
【国際出願番号】PCT/US2004/012787
【国際公開番号】WO2004/101683
【国際公開日】平成16年11月25日(2004.11.25)
【出願人】(590005058)ザ プロクター アンド ギャンブル カンパニー (2,280)
【Fターム(参考)】