説明

ポリヒドロキシベンゼン誘導体および皮膚外用剤

【課題】ポリヒドロキシベンゼンを熱や光に対して安定化させ、保存性がよく、皮膚浸透性が高く、生体内に広く分布するフォスファターゼによって速やかに加水分解され、しかも本来の健康に有用な生理活性を発揮できる新規なポリヒドロキシベンゼン誘導体、およびそれを含む皮膚外用剤の提供。
【解決手段】ポリヒドロキシベンゼンをアルキルフォスフォリック化ポリヒドロキシベンゼンからなるポリヒドロキシベンゼン誘導体またはその塩とする。分枝型脂肪族アルコールとオキシ塩化リンを反応させて、モノアルキルジクロロフォスフェートまたはジアルキルモノクロロフォスフェートを合成し、これを別途ポリヒドロキシベンゼンと酢酸を反応させて得た1−ヒドロキシ−4−フェニル酢酸ベンゼンと反応させ、その後に酸加水分解してリン酸エステル部が分岐したポリヒドロキシフェノール誘導体を製造し、これを0.03重量%以上含有する美白化粧料とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、化粧品、医薬部外品及び医薬品などに配合され、皮膚に対して美白作用を有するポリヒドロキシベンゼン誘導体およびそれを用いた皮膚外用剤に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ポリヒドロキシベンゼンは、抗酸化作用をもつことが知られており、またメラニン生成過程の代謝中間物であるドーパキノンからドーパクロムへの生合成を抑制し、さらに黒色メラニンを還元し漂白させる作用を持つことが知られており、このようなメラニン合成抑制作用、メラニン還元作用により皮膚の美白化、しみ、そばかす、黒皮症、肝班等の治療を期待できる美白化粧料の成分として周知である。
【0003】
しかし、ポリヒドロキシベンゼンは、熱や酸化に対して非常に不安定であり、不活性化されたり分解されたりしやすいため、必ずしも充分な生理作用が得られない場合がある。
【0004】
このような不安定性を改善するために、例えばポリヒドロキシベンゼンのうち、ジヒドロキシベンゼンに属するハイドロキノンの酸化されやすい水酸基を、グルコシド化した誘導体が知られている(特許文献1)。
【0005】
ただし、これらのグルコシド化したポリヒドロキシベンゼン誘導体は、親水性が高いので、皮膚浸透性が芳しくない欠点があった。
【0006】
因みに、ハイドロキノン製剤は、欧米では医薬品として用いられているが、ハイドロキノンを除く誘導体の効果の発現は、きわめて緩慢で美白効果が充分ではない。なお、ハイドロキノンは、効果が認められるがアレルギーを起こしやすくする感作性があるため、一般には、使用が制限されている。
【0007】
ハイドロキノンの安全性を向上させるため、高級アルコールのアルキルモノエ−テルなどにするという試みがなされたが、エ−テル類として安全性の面で充分に満足できるものが得られていない。また、その他にもできるだけ少量の使用で安全性を高めるというモノテトラヒドロピラニルエ−テル誘導体などが知られている(特許文献2)。
【0008】
また、安定性、皮膚浸透性の両方が改善されたポリヒドロキシベンゼン誘導体としては、ヒドロキシアルキルエーテル配糖体が知られている(特許文献3)。
【0009】
【特許文献1】特開昭60− 16906号公報
【特許文献2】特開平06−192062号公報
【特許文献3】特開平07−291989号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、前記した特許文献1に記載されているように、脂溶性を付与するためにポリヒドロキシベンゼンの水酸基を脂肪酸でアシルエステル化したものでは、保存状態での熱や光に対する経時的な安定性が好ましくなく、また、表皮中には充分な量のエステラーゼやリパーゼが存在しないので、アシルエステル化物からヒドロキシフェノールへの変換が速やかにまたは充分には行なえなかった。
【0011】
また、ポリヒドロキシベンゼンの水酸基をアシルエステル化し、また配糖体化したものは、上記同様に表皮中に充分なエステラーゼやリパーゼ、それにグルコシダーゼが存在しないために、ポリヒドロキシベンゼンへの変換は充分ではなかった。
【0012】
そこで、この発明の課題は、ポリヒドロキシベンゼン誘導体が有する上記の問題点を解決して、ポリヒドロキシベンゼンを熱や光に対して安定化させて保存性をよくし、かつ皮膚浸透性を高め、生体内に広く分布するフォスファターゼによって速やかに加水分解され、しかもポリヒドロキシベンゼン本来の有用な生理活性を発揮できる新規なポリヒドロキシベンゼン誘導体を得ることである。
【0013】
また、従来の化粧料における美白成分が、生体外での安定性と生体内での易分解性が両立しないという問題点を解決し、特にポリヒドロキシベンゼンを熱や光に対して安定化させ、かつ皮膚浸透性を高め、さらに生体内に広く分布する酵素等によって速やかに分解され、しかもポリヒドロキシベンゼンとして本来有用な生理活性作用によって美白性のある化粧料とすることである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記の課題を解決するために、この発明においては、ジヒドロキシベンゼンまたはトリヒドロキシベンゼンからなるポリヒドロキシベンゼンにおいて、ヒドロキシル基の1つ以上が、炭素数3〜30のアルキル基を有するアルキルリン酸基(アルキルフォスフォリック基とも別称される)に置換されているポリヒドロキシベンゼンまたはその塩からなるポリヒドロキシベンゼン誘導体としたのである。
【0015】
この発明のポリヒドロキシベンゼン誘導体を、化学式を用いて具体的に説明すると、以下の通りである。
【0016】
【化1】

【0017】
(化1式中、Rは下記の化2の式で表わされるアルキルリン酸基を表わし、R〜Rは、水素原子(H)、水酸基(OH)または下記の[化2]の式で表わされるアルキルリン酸基を表わす。)
【0018】
【化2】

【0019】
(化2式中、R、Rのいずれか一方は、炭素数3〜30のアルキル基を表わし、他方は水素原子(H)または炭素数3〜30のアルキル基を表わす。)
【0020】
ここで、上記したポリヒドロキシベンゼンにおいて、ジヒドロキシベンゼン誘導体とトリヒドロキシベンゼン誘導体の組合せを表1中に示した。表1中のAは、水酸基または化2の式で表わされるアルキルリン酸基を表わす。
【0021】
【表1】

【0022】
上記したポリヒドロキシベンゼン誘導体は、分子内構造にリン酸エステル部を有し、その部分にアルキル基を有するため、適度な脂溶性があって細胞内に取り込まれやすいという特性を有する。
【0023】
また、このポリヒドロキシベンゼン誘導体及びその塩は、皮膚内に浸透するとエステラーゼやリパーゼがなくても、ほぼ全ての生体内組織に分布しているフォスファターゼ他の酵素等によってポリヒドロキシベンゼンやリン脂質等に加水分解され、有用な効果を生体に及ぼすものである。
【0024】
上述のように好ましい作用のあるものの中で、前記した[化2]におけるアルキル基としては、2位に分枝を有する炭素数4〜30のものが好ましく、さらに好ましくは、2−ヘプチルウンデシル基、2−オクチルドデシル基、2−ヘキシルデシル基または2−(1,3,3−トリメチル−n−ブチル)−5,7,7−トリメチル−n−オクチル基である。その理由としては、直鎖アルキルに比べ、ハンドリングの良さ等の理由が挙げられる。
【0025】
この発明におけるポリヒドロキシベンゼン誘導体の塩としては、例えばポリヒドロキシベンゼン誘導体のナトリウム、カリウム、マグネシウムまたはカルシウム等の無機塩、2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオール、モノエタノールアミン、トリエタノールアミン等の有機アミン塩及びL−アルギニン、L−リジン等の塩基性アミノ酸塩等が挙げられ、これに限るものではない。
【0026】
そして、このようなポリヒドロキシベンゼン誘導体を製造するには、下記の[化3]で示される分枝型脂肪族アルコールとオキシ塩化リンを反応させて、[化4]の式で示されるモノアルキルジクロロフォスフェートまたは[化5]の式で示されるジアルキルモノクロロフォスフェートを合成し、別途、ポリヒドロキシベンゼンの一方のフェノール性水酸基を適当な保護基、例えば、ベンジル基等によって保護したものと反応させ、アルキルリン酸エステル化後に該保護基を接触還元等により脱離することからなる製造方法を採用できる。
【0027】
【化3】

【0028】
【化4】

【0029】
【化5】

【0030】
(化5式中、R1、Rは、水素(H)または炭素数3〜30のアルキル基を表わす。ただし、R=R=水素(H)である場合を除く。)
【0031】
また、皮膚外用剤として、例えば美白化粧料についての課題を解決する発明としては、例えば前記[化1]の式で表わされるポリヒドロキシベンゼン誘導体またはその塩を美白性の有効成分として含有する皮膚外用剤とする。
【0032】
上記したポリヒドロキシベンゼンのアルキルリン酸エステルまたはその塩からなるポリヒドロキシベンゼン誘導体は、分子内構造にリン酸エステル部を有し、その部分にアルキル基を有するため、適度な脂溶性があって細胞内に取り込まれやすいという特性を有する。
【0033】
また、このポリヒドロキシベンゼン誘導体は、皮膚内に浸透するとエステラーゼやリパーゼがなくても、ほぼ全ての生体内組織に分布しているフォスファターゼ他の酵素等によってポリヒドロキシベンゼンに加水分解され、美白作用を皮膚に及ぼす。
所定のpH調整されている美白化粧料では、ポリヒドロキシベンゼン誘導体の作用がより効率よく充分に発揮される。
【発明の効果】
【0034】
この発明は、ポリヒドロキシベンゼンのアルキルリン酸エステルまたはその塩からなるポリヒドロキシベンゼン誘導体とすることによって、熱や酸化に不安定なポリヒドロキシベンゼンを安定化できるため、使用前の保存状態でポリヒドロキシベンゼンが分解されることを抑制でき、しかも皮膚外用剤として使用した際には、生体内に広く分布するフォスファターゼによって速やかにポリヒドロキシベンゼンに分解され、ポリヒドロキシベンゼン本来の有用な生理活性を発揮する利点がある。
【0035】
また、例えば美白化粧料としての皮膚外用剤に係る発明においては、有効成分のポリヒドロキシベンゼン誘導体を、アルキルリン酸エステル化したポリヒドロキシベンゼンまたはその塩からなるポリヒドロキシベンゼン誘導体とすることによって、熱や酸化に対してポリヒドロキシベンゼンが安定化し、化粧料の使用前の保存状態でポリヒドロキシベンゼンが分解されることを抑制でき、更に化粧料を使用した際には、皮膚内に存在するフォスファターゼ他の酵素等によって速やかにポリヒドロキシベンゼン及びリン脂質などに分解され、ポリヒドロキシベンゼン本来の皮膚の美白に有用な生理活性、すなわち皮膚の美白化、しみ、そばかす、黒皮症、肝班等の治療に効果を発揮できる利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
この発明に用いるポリヒドロキシベンゼンのアルキルリン酸エステルまたはその塩からなるポリヒドロキシベンゼン誘導体(前記[化1]の式で示されるポリヒドロキシベンゼンのアルキルリン酸エステル誘導体)は、以下の方法で製造できる。
【0037】
先ず、トルエン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼンなどから選ばれる非極性溶媒を用いて、トリメチルアミン、トリエチルアミン、N,N−ジメチルアニリンなどから選ばれる塩基の存在下で、前記[化3]の式で示される分枝型脂肪族アルコールとオキシ塩化リンを−20〜20℃において反応させて、前記[化4]の式で示されるモノアルキルジクロロフォスフェートもしくは前記[化5]の式で示されるジアルキルモノクロロフォスフェートを製造する。取り出しについては蒸留により単離するか、または上記の非極性溶媒の溶液として次工程へ進んでも良い。
【0038】
そして、別途、ポリヒドロキシベンゼンの一方のフェノール性水酸基を適当な保護基、例えば、ベンジル基等によって保護したものと反応させ、アルキルリン酸エステル化後に該保護基を接触還元等により脱離し、定法により精製することで前記[化1]の式で示されるポリヒドロキシベンゼン誘導体を製造できる。
【0039】
前記[化3]の式で示される脂肪族アルコールの具体例としては、プロパノール、ブタノール、ペンタノ−ル、ヘキサノール、ヘプタノ−ル、オクタノ−ル、ノナノ−ル、デカノール、ウンデカノール、ドデカノール、トリデカノール、テトラデカノール、ペンタデカノ−ル、ヘキサデカノール、ヘプタデカノ−ル、オクタデカノ−ル、ノナデカノ−ル、エイコサノール、ヘンエイコサウンデカノール、デコサノール、トリコサノール、トテラコサノール、ペンタコサノ−ル、ヘキサコサノール、ヘプタコサノ−ル、オクタコサノ−ル、ノナコサノ−ル、トリアコンタノールの直鎖および分岐型アルコールが挙げられ、好ましくは2位で分岐した2−(1,3,3−トリメチル−n−ブチル)−5,7,7−トリメチル−n−オクタノール、2−メチルデカノール、2−エチルデカノール、2−プロピルデカノール、2−ブチルデカノール、2−ペンチルデカノール、2−ヘキシルデカノール、2−ヘプチルデカノール、2−オクチルデカノール、2−ノニルデカノール、2−メチルウンデカノール、2−エチルウンデカノール、2−プロピルウンデカノール、2−ブチルウンデカノール、2−ペンチルウンデカノール、2−ヘキシルウンデカノール、2−ヘプチルウンデカノール、2−オクチルウンデカノール、2−ノニルウンデカノール、2−デシルウンデカノール、2−メチルドデカノール、2−エチルドデカノール、2−プロピルドデカノール、2−ブチルドデカノール、2−ペンチルドデカノール、2−ヘキシルドデカノール、2−ヘプチルドデカノール、2−オクチルドデカノール、2−ノニルドデカノール、2−デシルドデカノール、2−ウンデシルドデカノール、2-イソヘプチルイソウンデカノールなどが挙げられる。
【0040】
ポリヒドロキベンゼンの一方のフェノール性水酸基をベンジル基によって保護したものは、ポリヒドロキベンゼンをベンジルクロライドもしくは発煙硫酸などの脱水剤の存在下で、−30℃〜20℃においてフェニル酢酸と反応させ、濾過などの方法により単離される。
【0041】
上記で得られたポリヒドロキベンゼンのベンジルエーテルをトルエン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼンなどから選ばれる非極性溶媒下に、トリメチルアミン、トリエチルアミン、N,N−ジメチルアニリンなどから選ばれる塩基存在下、前記[化4]の式で示されるモノアルキルジクロロフォスフェートもしくは前記[化5]の式で示されるジアルキルモノクロロフォスフェートと−20℃〜20℃において反応させた後、塩酸、硫酸、酢酸などから選ばれる酸によって−10〜50℃において加水分解する。
【0042】
このとき、残存する塩基を除去するために塩酸、硫酸、酢酸などの酸や塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化アンモニウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウムなどの無機塩の水溶液により洗浄し、非極性溶媒を留去するが、より高品質を要求される場合にはカラムクロマトなどにより、前記[化1]の式で示されるポリヒドロキシベンゼン誘導体を単離する。またはエタノール、グリセロールなどの溶液で取り出しても良い。このように、この発明のポリヒドロキシベンゼン誘導体の単離精製方法は、一般的方法に従えばよく、特に制限する必要はない。
【0043】
前記[化1]の式で示されるこの発明のポリヒドロキシベンゼン誘導体のうちアルキルリン酸基(アルキルフォスフォリック基)が1,4−ジヒドロキシベンゼンに一置換したものの具体的な化合物の例としては、例えば直鎖アルキル基では、1−ヒドロキシ-4−(n−プロピルフォスフォリック)−ベンゼン、1−ヒドロキシ-4−(n−ブチルフォスフォリック)−ベンゼン、1−ヒドロキシ−4−(n−ペンチルフォスフォリック)−ベンゼン、1−ヒドロキシ−4−(n−へキシルフォスフォリック)−ベンゼン、1−ヒドロキシ−4−(n−オクチルフォスフォリック)−ベンゼン、1−ヒドロキシ−4−(n−ノニルフォスフォリック)−ベンゼン、1−ヒドロキシ−4−(n−デシルフォスフォリック)−ベンゼン、1−ヒドロキシ−4−(n−ウンデシルフォスフォリック)−ベンゼン、1−ヒドロキシ−4−(n−ドデシルフォスフォリック)−ベンゼン、1−ヒドロキシ−4−(n−テトラドシルフォスフォリック)−ベンゼン、1−ヒドロキシ−4−(n−ヘキサデシルフォスフォリック)−ベンゼン、1−ヒドロキシ−4−(n−オクタデシルフォスフォリック)−ベンゼン、1−ヒドロキシ−4−(n−イコシルフォスフォリック)-ベンゼン、1−ヒドロキシ−4−(n−ドコシルフォスフォリック)−ベンゼン、1−ヒドロキシ−4−(n−トリコシルフォスフォリック)−ベンゼン、1−ヒドロキシ−4−(n−テトラコシルフォスフォリック)−ベンゼン、1−ヒドロキシ−4−(n−ペンタコシルフォスフォリック)−ベンゼン、1−ヒドロキシ−4−(n−ヘキサコシルフォスフォリック)−ベンゼン、1−ヒドロキシ−4−(n−へプタコシルフォスフォリック)−ベンゼン、1−ヒドロキシ−4−(n−オクタコシルフォスフォリック)−ベンゼン、1−ヒドロキシ-4−(n−ノナコシルフォスフォリック)−ベンゼン、1−ヒドロキシ−4−(n−トリアコンタシルフォスフォリック)−ベンゼン、2位で分枝したアルキル基では1−ヒドロキシ−4−[2−(1,3,3−トリメチル−n−ブチル)−5,7,7−トリメチル−n−オクチル]フォスフォリック−ベンゼン、1−ヒドロキシ−4−(2−メチルデシルフォスフォリック)−ベンゼン、1−ヒドロキシ−4−(2−エチルデシルフォスフォリック)−ベンゼン、1−ヒドロキシ−4−(2−プロピルデシルフォスフォリック)−ベンゼン、1−ヒドロキシ−4−(2−ブチルデシルフォスフォリック)−ベンゼン、1−ヒドロキシ−4−(2−ペンチルデシルフォスフォリック)−ベンゼン、1−ヒドロキシ−4−(2−ヘキシルデシルフォスフォリック)−ベンゼン、1−ヒドロキシ−4−(2−ヘプチルデシルフォスフォリック)−ベンゼン、1−ヒドロキシ−4−(2−オクチルデシルフォスフォリック)−ベンゼン、1−ヒドロキシ−4−(2−ノニルデシルフォスフォリック)−ベンゼン、1-ヒドロキシ−4−(2−メチルウンデシルフォスフォリック)−ベンゼン、1−ヒドロキシ−4−(2−エチルウンデシルフォスフォリック)−ベンゼン、1−ヒドロキシ−4−(2−プロピルウンデシルフォスフォリック)−ベンゼン、1−ヒドロキシ−4−(2−ブチルウンデシルフォスフォリック)−ベンゼン、1−ヒドロキシ−4−(2−ペンチルウンデシルフォスフォリック)−ベンゼン、1−ヒドロキシ−4−(2−ヘキシルウンデシルフォスフォリック)−ベンゼン、1−ヒドロキシ−4−(2−ヘプチルウンデシルフォスフォリック)−ベンゼン、1−ヒドロキシ−4−(2−オクチルウンデシルフォスフォリック)−ベンゼン、1−ヒドロキシ−4−(2−ノニルウンデシルフォスフォリック)−ベンゼン、1−ヒドロキシ−4−(2−デシルウンデシルフォスフォリック)−ベンゼン、1−ヒドロキシ−4−(2−メチルドデシルフォスフォリック)−ベンゼン、1−ヒドロキシ−4−(2−エチルドデシルフォスフォリック)−ベンゼン、1−ヒドロキシ−4−(2−プロピルドデシルフォスフォリック)−ベンゼン、1−ヒドロキシ−4−(2−ブチルドデシルフォスフォリック)−ベンゼン、1−ヒドロキシ−4−(2−ペンチルドデシルフォスフォリック)−ベンゼン、1−ヒドロキシ−4−(2−ヘキシルドデシルフォスフォリック)−ベンゼン、1−ヒドロキシ−4−(2−ヘプチルドデシルフォスフォリック)−ベンゼン、1−ヒドロキシ−4−(2−オクチルドデシルフォスフォリック)−ベンゼン、1−ヒドロキシ−4−(2−ノニルドデシルフォスフォリック)−ベンゼン、1−ヒドロキシ−4−(2−デシルドデシルフォスフォリック)−ベンゼン、1−ヒドロキシ−4-(2−ウンデシルドデシルフォスフォリック)−ベンゼン、1−ヒドロキシ−4−[ビス(2−メチルデシル)フォスフォリック]-ベンゼン、1−ヒドロキシ−4−[ビス(2−エチルデシル)フォスフォリック]-ベンゼン、1−ヒドロキシ−4−[ビス(2−プロピルデシル)フォスフォリック]-ベンゼン、1−ヒドロキシ−4−[ビス(2−ブチルデシル)フォスフォリック]-ベンゼン、1−ヒドロキシ−4−[ビス(2−ペンチルデシル)フォスフォリック]−ベンゼン、1−ヒドロキシ−4−[ビス(2−ヘキシルデシル)フォスフォリック]−ベンゼン、1−ヒドロキシ−4−[ビス(2−ヘプチルデシル)フォスフォリック]−ベンゼン、1−ヒドロキシ−4−[ビス(2−オクチルデシル)フォスフォリック]−ベンゼン、1−ヒドロキシ−4−[ビス(2−ノニルデシル)フォスフォリック]−ベンゼン、1−ヒドロキシ-4−[ビス(2−メチルウンデシル)フォスフォリック]−ベンゼン、1−ヒドロキシ−4−[ビス(2−エチルウンデシル)フォスフォリック]−ベンゼン、1−ヒドロキシ−4−[ビス(2−プロピルウンデシル)フォスフォリック]−ベンゼン、1−ヒドロキシ−4-[ビス(2−ブチルウンデシル)フォスフォリック]−ベンゼン、1−ヒドロキシ−4−[ビス(2−ペンチルウンデシル)フォスフォリック]−ベンゼン、1−ヒドロキシ−4−[ビス(2−ヘキシルウンデシル)フォスフォリック]−ベンゼン、1−ヒドロキシ−4−[ビス(2−ヘプチルウンデシル)フォスフォリック]−ベンゼン、1−ヒドロキシ−4−[ビス(2−オクチルウンデシル)フォスフォリック]−ベンゼン、1−ヒドロキシ−4−[ビス(2−ノニルウンデシル)フォスフォリック]−ベンゼン、1−ヒドロキシ−4−[ビス(2−デシルウンデシル)フォスフォリック]−ベンゼン、1−ヒドロキシ−4−[ビス(2−メチルドデシル)フォスフォリック]−ベンゼン、1−ヒドロキシ−4−[ビス(2−エチルドデシル)フォスフォリック]−ベンゼン、1−ヒドロキシ−4-[ビス(2−プロピルドデシル)フォスフォリック]−ベンゼン、1−ヒドロキシ−4−[ビス(2−ブチルドデシル)フォスフォリック]−ベンゼン、1−ヒドロキシ−4−[ビス(2−ペンチルドデシル)フォスフォリック]−ベンゼン、1−ヒドロキシ−4−[ビス(2−ヘキシルドデシル)フォスフォリック]−ベンゼン、1−ヒドロキシ−4−[ビス(2−ヘプチルドデシル)フォスフォリック]−ベンゼン、1−ヒドロキシ−4−[ビス(2−オクチルドデシル)フォスフォリック]−ベンゼン、1−ヒドロキシ−4−[ビス(2−ノニルドデシル)フォスフォリック]−ベンゼン、1−ヒドロキシ−4−[ビス(2−デシルドデシル)フォスフォリック]−ベンゼン、1−ヒドロキシ−4−[ビス(2−ウンデシルドデシル)フォスフォリック]−ベンゼンなどが挙げられる。
【0044】
次に、アルキルフォスフォリック基が1,4−ジヒドロキシベンゼンに2置換したものの具体的な化合物の例としては、例えば直鎖アルキル基では、1,4−ジ(n−プロピルフォスフォリック)−ベンゼン、1,4−ジ(n−ブチルフォスフォリック)−ベンゼン、1,4−ジ(n−ペンチルフォスフォリック)−ベンゼン、1,4−ジ(n−へキシルフォスフォリック)−ベンゼン、1,4−ジ(n-オクチルフォスフォリック)−ベンゼン、1,4−ジ(n−ノニルフォスフォリック)−ベンゼン、1,4−ジ(n−デシルフォスフォリック)−ベンゼン、1,4−(n−ウンデシルフォスフォリック)−ベンゼン、1,4−ジ(n−ドデシルフォスフォリック)−ベンゼン、1,4−(n−テトラドシルフォスフォリック)−ベンゼン、1,4−ジ(n−ヘキサデシルフォスフォリック)-ベンゼン、1,4−ジ(n−オクタデシルフォスフォリック)−ベンゼン、1,4−ジ(n−イコシルフォスフォリック)−ベンゼン、1,4−ジ(n−ドコシルフォスフォリック)−ベンゼン、1,4−ジ(n−トリコシルフォスフォリック)−ベンゼン、1,4−ジ(n−テトラコシルフォスフォリック)−ベンゼン、1,4−ジ(n−ペンタコシルフォスフォリック)−ベンゼン、1,4−ジ(n−ヘキサコシルフォスフォリック)−ベンゼン、1,4−ジ(n−へプタコシルフォスフォリック)−ベンゼン、1,4−ジ(n−オクタコシルフォスフォリック)−ベンゼン、1,4−ジ(n−ノナコシルフォスフォリック)−ベンゼン、1,4−ジ(n−トリアコンタシルフォスフォリック)−ベンゼン、2位で分枝したアルキル基では1,4−ジ[2−(1,3,3−トリメチル−n−ブチル)−5,7,7−トリメチル−n−オクチル]フォスフォリック−ベンゼン、1,4−ジ(2−メチルデシルフォスフォリック)−ベンゼン、1,4−ジ(2−エチルデシルフォスフォリック)−ベンゼン、1,4−ジ(2−プロピルデシルフォスフォリック)−ベンゼン、1,4−ジ(2−ブチルデシルフォスフォリック)−ベンゼン、1,4−ジ(2−ペンチルデシルフォスフォリック)−ベンゼン、1,4−ジ(2−ヘキシルデシルフォスフォリック)−ベンゼン、1,4−ジ(2−ヘプチルデシルフォスフォリック)−ベンゼン、1,4−ジ(2−オクチルデシルフォスフォリック)−ベンゼン、1,4−ジ(2−ノニルデシルフォスフォリック)−ベンゼン、1,4−ジ(2−メチルウンデシルフォスフォリック)−ベンゼン、1,4−ジ(2−エチルウンデシルフォスフォリック)−ベンゼン、1,4−ジ(2−プロピルウンデシルフォスフォリック)−ベンゼン、1,4−ジ(2−ブチルウンデシルフォスフォリック)−ベンゼン、1,4−ジ(2−ペンチルウンデシルフォスフォリック)−ベンゼン、1,4−ジ(2−ヘキシルウンデシルフォスフォリック)−ベンゼン、1,4−ジ(2−ヘプチルウンデシルフォスフォリック)−ベンゼン、1,4−ジ(2−オクチルウンデシルフォスフォリック)−ベンゼン、1,4−ジ(2−ノニルウンデシルフォスフォリック)−ベンゼン、1,4−ジ(2−デシルウンデシルフォスフォリック)−ベンゼン、1,4−ジ(2−メチルドデシルフォスフォリック)−ベンゼン、1,4−ジ(2−エチルドデシルフォスフォリック)−ベンゼン、1,4−ジ(2−プロピルドデシルフォスフォリック)−ベンゼン、1,4−ジ(2−ブチルドデシルフォスフォリック)−ベンゼン、1,4−ジ(2−ペンチルドデシルフォスフォリック)−ベンゼン、1,4−ジ(2−ヘキシルドデシルフォスフォリック)−ベンゼン、1,4−ジ(2−ヘプチルドデシルフォスフォリック)−ベンゼン、1,4−ジ(2−オクチルドデシルフォスフォリック)−ベンゼン、1,4−ジ(2−ノニルドデシルフォスフォリック)−ベンゼン、1,4−ジ(2−デシルドデシルフォスフォリック)−ベンゼン、1,4−ジ(2−ウンデシルドデシルフォスフォリック)−ベンゼン、1,4−ジ[ビス(2−メチルデシル)フォスフォリック]−ベンゼン、1,4−ジ[ビス(2−エチルデシル)フォスフォリック]−ベンゼン、1,4−ジ[ビス(2−プロピルデシル)フォスフォリック]−ベンゼン、1,4−ジ[ビス(2−ブチルデシル)フォスフォリック]−ベンゼン、1,4−ジ[ビス(2−ペンチルデシル)フォスフォリック]−ベンゼン、1,4−ジ[ビス(2−ヘキシルデシル)フォスフォリック]-ベンゼン、1,4−ジ[ビス(2−ヘプチルデシル)フォスフォリック]−ベンゼン、1,4−ジ[ビス(2−オクチルデシル)フォスフォリック]-ベンゼン、1,4−ジ[ビス(2−ノニルデシル)フォスフォリック]−ベンゼン、1,4−ジ[ビス(2−メチルウンデシル)フォスフォリック]−ベンゼン、1,4−ジ[ビス(2−エチルウンデシル)フォスフォリック]−ベンゼン、1,4−ジ[ビス(2−プロピルウンデシル)フォスフォリック]−ベンゼン、1,4−ジ[ビス(2−ブチルウンデシル)フォスフォリック]−ベンゼン、1,4−ジ[ビス(2−ペンチルウンデシル)フォスフォリック]−ベンゼン、1,4−ジ[ビス(2−ヘキシルウンデシル)フォスフォリック]−ベンゼン、1,4−ジ[ビス(2−ヘプチルウンデシル)フォスフォリック]−ベンゼン、1-ヒドロキシ-4-[ビス(2−オクチルウンデシル)フォスフォリック]−ベンゼン、1,4−ジ[ビス(2−ノニルウンデシル)フォスフォリック]−ベンゼン、1,4−ジ[ビス(2−デシルウンデシル)フォスフォリック]−ベンゼン、1,4−ジ[ビス(2−メチルドデシル)フォスフォリック]−ベンゼン、1,4−ジ[ビス(2−エチルドデシル)フォスフォリック]−ベンゼン、1,4−ジ[ビス(2−プロピルドデシル)フォスフォリック]−ベンゼン、1,4−ジ[ビス(2−ブチルドデシル)フォスフォリック]−ベンゼン、1,4−ジ[ビス(2−ペンチルドデシル)フォスフォリック]−ベンゼン、1,4−ジ[ビス(2−ヘキシルドデシル)フォスフォリック]−ベンゼン、1,4−ジ[ビス(2−ヘプチルドデシル)フォスフォリック]−ベンゼン、1,4−ジ[ビス(2−オクチルドデシル)フォスフォリック]−ベンゼン、1,4−ジ[ビス(2−ノニルドデシル)フォスフォリック]−ベンゼン、1,4−ジ[ビス(2−デシルドデシル)フォスフォリック]−ベンゼン、1,4−ジ[ビス(2−ウンデシルドデシル)フォスフォリック]−ベンゼンなどが挙げられる。
【0045】
また、この発明においては、上記の1,4−ジヒドロキシベンゼン誘導体以外にも1,2−ジヒドロキシベンゼン、もしくは1,3−ジヒドロキシベンゼンについても同様の誘導体が使用可能であり、またトリヒドロキシベンゼンにおいてはアルキルフォスフォリック基が一置換したもの、二置換したもの、および三置換したものが使用可能である。また、分子内や分子間で直鎖アルキルと分岐アルキルが共存していても使用可能である。
【0046】
さらに、本発明においてはポリヒドロキシベンゼンのアルキルリン酸エステルの塩も使用可能であり、例えばナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩、カルシウム塩、マグネシウム塩等のアルカリ土類金属塩、アルギニン等の塩基性アミノ酸、2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオール、モノエタノールアミン、トリエタノールアミン等の有機アミンを用いることができる。
【0047】
そして、この発明の皮膚外用剤で美白作用を充分に及ぼすようにするために配合されるポリヒドロキシベンゼン誘導体またはその塩の含有量は、0.05重量%以上とすることが、好ましい。0.01重量%以下の含有量では、美白効果が望めないか、または確実に得られない。
【0048】
この発明の皮膚外用剤のpHは、特に限定されるものではないが、皮膚外用剤の一般的な保存状態において安定性を高めるために、pH4.0〜9.0とすることが好ましく、その他のpH領域では加水分解が起こりやすく安定な製剤が得られないことがある。
【0049】
この発明の皮膚外用剤は上記の必須成分の他に、通常の化粧料、医薬部外品、医薬品等に用いられる各種成分、例えば油性成分、乳化剤、保湿剤、増粘剤、薬効成分、防腐剤、顔料、粉体、pH調整剤、紫外線吸収剤、抗酸化剤、香料等を適宜配合することができる。
【0050】
前記した油性成分の具体例としては、流動パラフィン、ワセリン、マイクロクリスタリンワックス、スクワラン、ホホバ油、ミツロウ、カルナウバロウ、ラノリン、オリーブ油、ヤシ油、高級アルコール、脂肪酸、高級アルコールと脂肪酸のエステル、シリコーン油等が挙げられる。
【0051】
乳化剤としては、例えばポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油等の非イオン界面活性剤、ステアロイル乳酸ナトリウム等のアニオン界面活性剤、大豆リン脂質等の両性界面活性剤、塩化アルキルトリメチルアンモニウム等のカチオン界面活性剤が挙げられる。
【0052】
保湿剤としては、例えばグリセリン、ソルビトール、キシリトール、マルチトール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,2−ペンタンジオールなどが挙げられる。
【0053】
増粘剤としては、例えばカルボキシビニルポリマー、キサンタンガム、メチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ゼラチン、ベントナイト等の粘土鉱物等が挙げられる。薬効成分としては、例えば各種ビタミンおよびその誘導体、アラントイン、グリチルリチン酸およびその誘導体、各種動植物抽出物等が挙げられる。
【0054】
この発明の皮膚外用剤は、前記した所定のポリヒドロキシベンゼン誘導体及びその塩を美白有効成分として配合することの他に、特に限定されず、周知の化粧料の製造方法により製造することができ、一般的な皮膚化粧料に限定されず、医薬部外品、外用医薬品等にも適用でき、それらの剤型は目的に応じて、クリーム状、乳液状、液状、ゲル状、軟膏状、パック状、スティック状、パウダー状等の形態を選択的に採用することができる。
【実施例1】
【0055】
[ポリヒドロキシベンゼン誘導体の製造例1]
2−(1,3,3−トリメチル−n−ブチル)−5,7,7−トリメチル−n−オクタノールとオキシ塩化リンを反応させ、[2−(1,3,3−トリメチル−n−ブチル)−5,7,7−トリメチル−n−オクチル]ジクロロフォスフェートを合成した。これを別途、1,4−ジヒドロキシベンゼン(別名ハイドロキノン)とフェニル酢酸を反応させて得た1−フェニル酢酸−4−ヒドロキシベンゼンと反応させ、生成した1−フェニル酢酸−[2−(1,3,3−トリメチル−n−ブチル)−5,7,7−トリメチル−n−オクチル]−フォスフォリック-ベンゼンを塩酸にて加水分解し、洗浄し単離精製して1−ヒドロキシ−4−[2−(1,3,3−トリメチル−n−ブチル)−5,7,7−トリメチル−n−オクチル]フォスフォリック−ベンゼン(その化学構造[化6]には後述する13C−NMRにおけるピークの帰属番号を併記した。)を製造した。以下、合成工程毎に詳細に説明する。
【0056】
【化6】

【0057】
(1) 1−フェニル酢酸−4−ヒドロキシベンゼンの合成
窒素置換下、フェニル酢酸1307.1g(9.6モル)を−5℃に冷却し、28%発煙硫酸54.3g(0.2モル)を滴下し、1,4−ジヒドロキシベンゼン110.1g(1.0モル)を仕込む。同温度で17時間反応させ、濾過、冷アセトンにより洗浄し、210.5gの1−フェニル酢酸−4−ヒドロキシベンゼン(純度85.4%)をwetケーキとして得た。
【0058】
(2) [2−(1,3,3−トリメチル−n−ブチル)−5,7,7−トリメチル−n−オクチル]ジクロロフォスフェートの合成
窒素置換下、トルエン540mL及びオキシ塩化リン138.0g(0.9モル)を仕込み、−10℃に冷却する。そこに、2−(1,3,3−トリメチル−n−ブチル)−5,7,7−トリメチル−n−オクタノール243.5g(0.9モル、1.0モル比)とトリエチルアミン91.1g(0.9モル)の溶液を滴下し、0℃で12時間反応した。25℃に昇温した後、濾過によりトリエチルアミンの塩酸塩を除去し、1003.9gの[2−(1,3,3−トリメチル−n−ブチル)−5,7,7−トリメチル−n−オクチル]ジクロロフォスフェートのトルエン溶液(濃度34.7%)を得た。
【0059】
(3) 1−ヒドロキシ−4−[2−(1,3,3−トリメチル−n−ブチル)−5,7,7−トリメチル−n−オクチル]フォスフォリック−ベンゼンの合成
窒素置換下、トルエン2000mLに上記の1−フェニル酢酸−4−ヒドロキシベンゼン198.4g(1.0モル)を仕込み、室温でトリエチルアミン202.4gを滴下し、1時間攪拌する。その後、−10℃に冷却し、上記の[2−(1,3,3−トリメチル−n−ブチル)−5,7,7−トリメチル−n−オクチル]ジクロロフォスフェートのトルエン溶液1003.9g(0.9モル)を1時間かけて滴下し、同温度で14時間攪拌する。得られた反応マスに6.7%の塩酸水溶液12312gを加え、35℃で4時間加水分解を行い、トルエン層を10%塩酸/7.1%塩化ナトリウム水溶液1000gで2回洗浄した後、更に20%塩化ナトリウム水溶液で1回洗浄した。そして、トルエン層についてカラムクロマトを行い、分取したフラクションを減圧濃縮(35℃、2Torr)によりトルエンを留去し、338.9gの1−ヒドロキシ−4−[2−(1,3,3−トリメチル−n−ブチル)−5,7,7−トリメチル−n−オクチル]フォスフォリック−ベンゼン(純度94.6%)を得た。収率は72.5%(対1,4−ジヒドロキシベンゼン)であった。
【0060】
得られた1−ヒドロキシ−4−[2−(1,3,3−トリメチル−n−ブチル)−5,7,7−トリメチル−n−オクチル]フォスフォリック−ベンゼンの分子構造を赤外線吸収スペクトル(IR)および核磁気構造スペクトル(1H−NMR、13C−NMR)によって同定し、これらの結果(ピークの位置と対応する基または炭素原子)を[表2〜4]にそれぞれまとめて示した。これにより得られた化合物が、所期した分子構造のポリヒドロキシベンゼン誘導体である1−ヒドロキシ−4−[2−(1,3,3−トリメチル−n−ブチル)−5,7,7−トリメチル−n−オクチル]フォスフォリック−ベンゼンであることが確認できた。
【0061】
【表2】

【0062】
【表3】

【0063】
【表4】

【実施例2】
【0064】
[ポリヒドロキシベンゼン誘導体の製造例2]
実施例1において、2−(1,3,3−トリメチル−n−ブチル)−5,7,7−トリメチル−n−オクタノールの代わりに2−オクチルドデカノールを用いたこと以外は実施例1と全く同様の方法で化合物を得た。なお、得られた化合物の分子構造を赤外線吸収スペクトル(IR)および核磁気構造スペクトル(1H−NMR、13C−NMR)によって同定し、所期した分子構造のポリヒドロキシフェノール誘導体である1−ヒドロキシ−4−(2−オクチルドデシルフォスフォリック)−ベンゼンであることを確認した。なお、ピークの位置と対応する基または炭素原子の結果による同定については、実施例1を代表例とし、その記載を省略した。
【0065】
これにより得られた化合物が、所期した分子構造のポリヒドロキシフェノール誘導体である1-ヒドロキシ−4−(2−オクチルドデシルフォスフォリック)−ベンゼン(純度89.5%)であることが確認できた。その収率は55.7%(対1,4−ジヒドロキシベンゼン)であった。
【実施例3】
【0066】
[ポリヒドロキシベンゼン誘導体の塩の製造例3]
1−ヒドロキシ−4−[2−(1,3,3−トリメチル−n−ブチル)−5,7,7−トリメチル−n−オクチル]フォスフォリック−ベンゼンのナトリウム塩を以下の方法で製造した。
【0067】
実施例1と全く同様の方法で、1−ヒドロキシ−4−[2−(1,3,3−トリメチル−n−ブチル)−5,7,7−トリメチル−n−オクチル]フォスフォリック−ベンゼンの反応マスを得て、その反応マスに6.7%の塩酸水溶液12312gを加え、35℃で4時間加水分解を行い、トルエン層を10%塩酸/7.1%塩化ナトリウム水溶液1000gで2回洗浄した後、更に20%塩化ナトリウム水溶液で1回洗浄した。
【0068】
そして、トルエン層に30%NaOH水溶液を加え、pHを7に調整する。分液後の水層にエタノールを加え、減圧濃縮により水及びエタノールを留去し、析出した結晶を濾過、乾燥し、1−ヒドロキシ−4−[2−(1,3,3−トリメチル−n−ブチル)−5,7,7−トリメチル−n−オクチル]フォスフォリック−ベンゼンナトリウム塩(純度93.5%)を得た。その収率は、70.0%(対1,4−ジヒドロキシベンゼン)であった。
【0069】
得られた化合物の分子構造を赤外線吸収スペクトル(IR)および核磁気構造スペクトル(1H−NMR、13C−NMR)によって同定し、所期した分子構造のヒドロキシフェノール誘導体である1-ヒドロキシ-4-[2−(1,3,3−トリメチル−n−ブチル)−5,7,7−トリメチル−n−オクチル]フォスフォリック-ベンゼンナトリウム塩であることを確認した。なお、ピークの位置と対応する基または炭素原子の結果による同定については、実施例1を代表例とし、その記載を省略した。
【0070】
[実施例4〜7]
上述の製造例1で得られた実施例1のポリヒドロキシベンゼン誘導体を用いて、表5に示す配合割合によって皮膚外用剤(化粧水)を調製し、下記の評価によって美白効果の判定を行ない、その結果を表5中に併記した。
【0071】
[比較例1、2]
表5に示す配合割合によって、ポリヒドロキシベンゼン関連化合物を配合することなく皮膚外用剤(コントロール)と4−ヒドロキシフェニル−β−D−グルコピラノシド(別名β−アルブチン)配合皮膚外用剤を調製し、下記の評価によって美白効果の判定を行ない、その結果を表5中に併記した。
【0072】
[美白効果の判定]
シミ、ソバカスや色黒等の悩みを持つ被験者を一群20名とし、各化粧料を毎日、朝と夜、3ヶ月間塗布使用させ、3ヶ月後に累積塗布効果を以下の判定基準により自己判定させ、さらに判定結果を以下の基準で評価した。
【0073】
著効:色素沈着がほとんど目立たなくなった。
有効:薄くなった。
やや有効:やや薄くなった。
無効:変化なし。
【0074】
[評価]
◎:被験者のうち著効、有効の示す割合(有効率)が80%以上。
○:被験者のうち著効、有効の示す割合(有効率)が60%以上80%未満。
△:被験者のうち著効、有効の示す割合(有効率)が40%以上60%未満。
×:被験者のうち著効、有効の示す割合(有効率)が40%未満。
【0075】
【表5】

【0076】
表5に示した結果からも明らかなように、実施例のポリヒドロキシベンゼン誘導体は0.01%の配合量では美白効果は認められず、0.05%以上で美白効果が認められ、0.5%配合では、比較例2の4−ヒドロキシフェニル−β−D−グルコピラノシドの3%配合品以上の美白効果が認められた。当然、実施例7の5%配合品は、顕著な美白効果が認められた。比較例1のコントロールでは美白効果は認められなかった。
【0077】
[実施例8〜13]
同様に、製造例2と製造例3のポリヒドロキシベンゼン誘導体やその他本発明のポリヒドロキシベンゼン誘導体を用いて皮膚外用剤(化粧水)を調製し、前記の評価によって美白効果の判定を行ない、その結果を表6中に併記した。
【0078】
【表6】

【0079】
表6の結果からも明らかなように、製造例2、3のポリヒドロキシベンゼン誘導体を配合した実施例8〜13の全てに、美白効果が認められた。
【0080】
[熱安定性試験]
参考例の1,4−ジヒドロキシベンゼン(図1中のp−ヒドロキシフェノール)および実施例1〜3のポリヒドロキシベンゼン誘導体の1%水溶液における50℃での熱安定性試験結果を図1に示した。図1の結果からも明らかなように、実施例1〜3の優れた熱安定性が確認された。
【0081】
[光安定性試験]
参考例の1,4−ジヒドロキシベンゼン(図2中のp−ヒドロキシフェノール)および実施例1〜3のポリヒドロキシベンゼン誘導体の1%水溶液におけるUVB(50mW/cm)での光安定性試験結果を図2に示した。図1の結果からも明らかなように、実施例1〜3の優れた光安定性が確認された。
【0082】
[浸透性・有効成分代謝性試験]
1,4−ジヒドロキシベンゼンおよびその既存誘導体である4−ヒドロキシフェニル−β−D−グルコピラノシド、そして実施例1〜3のポリヒドロキシベンゼン誘導体をヒト細胞でヒト皮膚を再構築した経皮吸収試験で一般的に用いられている三次元培養皮膚モデルに使用した際の浸透量および三次元培養皮膚モデル内に存在する酵素により代謝された1,4−ジヒドロキシベンゼン供給量を表7に示した。
【0083】
実施例1〜3のポリヒドロキシベンゼン誘導体は、1,4−ジヒドロキシベンゼンおよび4−ヒドロキシフェニル−β−D−グルコピラノシドよりも優れた浸透性を示し、生体中の酵素により効率的に1,4−ジヒドロキシベンゼンに代謝されることが確認された。
【0084】
【表7】

【0085】
以下に、所定のヒドロキシフェノール誘導体を有効成分とする実施例として、化粧料の代表的な処方例を示す。各行右端の数値は配合割合(重量%)である。
【0086】
[実施例14](ゲル状クリーム)
1-ヒドロキシ-4-[2−(1,3,3−トリメチル−n−ブチル)−5,7,7−トリメチル−n−オクチル]フォスフォリック−ベンゼンナトリウム塩 5.0
グリセリン 10.0
エタノール 5.0
水酸化ナトリウム 0.5
カルボキシビニルポリマー 0.8
香料 適量
防腐剤 適量
精製水 残余
【0087】
[実施例15](乳液)
1−ヒドロキシ−4−[2−(1,3,3−トリメチル−n−ブチル)−5,7,7−トリメチル−n−オクチル]フォスフォリック−ベンゼン 10.0
1,3−ブチレングリコール 10.0
カルボキシビニルポリマー 0.3
スクワラン 5.0
セタノール 0.8
L−アルギニン 0.3
香料 適量
防腐剤 適量
精製水 残余
【0088】
[実施例16](クリーム)
1−ヒドロキシ−4−[2−(1,3,3−トリメチル−n−ブチル)−5,7,7−トリメチル−n−オクチル]フォスフォリック−ベンゼン 10.0
1,3−ブチレングリコール 10.0
カルボキシビニルポリマー 0.3
スクワラン 5.0
セタノール 2.0
ミツロウ 3.0
L−アルギニン 0.3
香料 適量
防腐剤 適量
精製水 残余
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】熱安定性試験の結果を示し、有効成分残存率と試験時間の関係を示す図表
【図2】光安定性試験の結果を示し、有効成分残存率と試験時間の関係を示す図表

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジヒドロキシベンゼンまたはトリヒドロキシベンゼンからなるポリヒドロキシベンゼンにおけるヒドロキシル基の1つ以上が、炭素数3〜30のアルキル基を有するアルキルリン酸基に置換されているポリヒドロキシベンゼンのアルキルリン酸エステルまたはその塩からなるポリヒドロキシベンゼン誘導体。
【請求項2】
アルキルリン酸基のアルキル基が、2位で分岐した炭素数4〜30のアルキル基である請求項1に記載のポリヒドロキシベンゼン誘導体。
【請求項3】
請求項1または2のいずれかに記載のポリヒドロキシベンゼン誘導体を美白性の有効成分として含有する皮膚外用剤。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−105958(P2010−105958A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−279565(P2008−279565)
【出願日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【出願人】(592215011)東洋ビューティ株式会社 (13)
【Fターム(参考)】