説明

ポリヒドロキシポリマーを含む熱老化耐性ポリアミド組成物

A)融点および/またはガラス転移を有するポリアミド樹脂;
B)少なくとも1種類の多価ポリマー0.25〜20重量%;
C)1種または複数種の共安定剤0〜3重量%;
D)1種または複数種の補強剤0〜約60重量%;
を含む熱可塑性組成物であって、
前記ポリアミド樹脂が、少なくとも210℃の前記融点を有し、かつ半芳香族反復単位約20〜約35モル%を含む(III)群ポリアミドと、半芳香族反復単位約50〜約95モル%を含む(IV)群ポリアミドと、少なくとも260℃の前記融点を有し、かつ95モル%を超える半芳香族反復単位を含む(V)群ポリアミドと、融点を持たない(VI)群ポリアミドと、からなる群から選択され、但し、前記1種または複数種の補強剤が10重量%未満存在する場合には、前記1種または複数種の共安定剤も少なくとも0.1重量%存在することを条件とする、熱可塑性組成物が開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、向上した長期高温安定性を有するポリアミド組成物の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリアミドをベースとする高温樹脂は、望ましい耐薬品性、加工性および耐熱性を有する。このため、要求の厳しい高性能自動車および電機/電子用途に特によく適している。自転車のボンネット下の領域では150℃を超える、200℃さえ超える温度に達することが多いため、自動車分野において耐熱性構造を有することが現在、かつ一般的に望まれている。自動車ボンネット下用途および電気/電子用途などにおいて、プラスチック部品が長期間かかる高温にさらされた場合、ポリマーの熱酸化が原因で機械的性質が一般に低下する傾向がある。この現象は熱老化と呼ばれる。
【0003】
熱老化特性を向上させる試みでは、ポリアミド樹脂を含む熱可塑性組成物に熱安定剤(酸化防止剤とも呼ばれる)を添加することが従来の慣例であった。かかる熱安定剤の例としては、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤およびリン系酸化防止剤が挙げられる。ポリアミド組成物については、高温にさらした場合に組成物の機械的性質を維持するために、3種類の熱安定剤が従来から使用されている。1つは、上述のようにリン系協力剤と任意に組み合わされたフェノール系酸化防止剤の使用、リン系協力剤と任意に組み合わされた芳香族アミンの使用、3つ目は、銅塩および誘導体の使用である。フェノール系酸化防止剤は、老化温度120℃まで、熱可塑性組成物の機械的/物理的性質を向上させることが知られている。
【0004】
米国特許第5,965,652号明細書には、その場で形成される、コロイド状の銅を含有する熱安定性ポリアミド成形性組成物が開示されている。しかしながら、開示されている組成物は、140℃での熱老化に対してのみ、衝撃強さの維持を示す。
【0005】
英国特許第839,067号明細書には、強有機塩基の銅塩およびハロゲン化物を含むポリアミド組成物が開示されている。しかしながら、開示されている組成物は、170℃での熱老化に対してのみ、向上した屈曲(bending)熱安定性性能を示す。
【0006】
既存の技術では、長期耐熱老化性の向上が不十分となるだけでなく、その向上した熱老化特性は、例えば自動車ボンネット下用途および電気/電子用途などにおいて高温にさらされることを伴う、さらに要求の厳しい用途には不十分である。
【0007】
米国特許出願公開第2006/0155034号明細書および米国特許出願公開第2008/0146718号明細書には、熱安定剤としての金属粉末を繊維補強剤と共に含むポリアミド組成物が開示されている。開示の組成物は、215℃での長期熱老化で引張り強さおよび破断点伸びなどの向上した機械的性質を示す。しかしながら、かかる金属粉末は高価であるだけでなく、自然燃焼しやすいことから、非常に不安定である。
【0008】
欧州特許第1041109号明細書には、融点150〜280℃を有する、ポリアミド樹脂、多価アルコールを含むポリアミド組成物であって、優れた流動性および機械的強度を有し、かつ射出溶接技術において有用である組成物が開示されている。
【0009】
残念なことに、既存の技術では、ポリアミド組成物をベースとする成形物品は、長期の高温暴露でその機械的性質の許容できない劣化を受けるか、あるいは高コストの熱安定剤を使用するために非常に費用がかかる。
【0010】
物品の製造に適しており、かつ長期の高温暴露後に優れた機械的性質を示す、低コストのポリアミド組成物が依然として必要とされている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0011】
A)融点および/またはガラス転移を有するポリアミド樹脂;
B)少なくとも2000の数平均分子量(Mn)を有し、かつエチレン/ビニルアルコールコポリマーおよびポリ(ビニルアルコール)からなる群から選択される、少なくとも1種類の多価ポリマー0.25〜20重量%;
C)融点が存在する場合には前記ポリアミド樹脂の前記融点から30℃を超えて低い温度であり、または前記融点が存在しない場合には少なくとも250℃である、熱重量分析によって決定される10%重量減少温度(loss temperature)を有する1種または複数種の共安定剤(co-stabilizer(s))であって、第2級アリールアミン、ヒンダードアミン光安定剤、ヒンダードフェノール、およびその混合物からなる群から選択される1種または複数種の共安定剤0〜3重量%;
D)1種または複数種の補強剤0〜約60重量%;
を含む熱可塑性組成物が本明細書において開示かつ請求され、
すべての重量%は、熱可塑性組成物の全重量に対するものであり、かつ前記ポリアミド樹脂が、
少なくとも210℃の前記融点を有し、かつ
(aa)(i)炭素原子8〜20個を有する芳香族ジカルボン酸および炭素原子4〜20個を有する脂肪族ジアミン;
からなる群のうちの1種または複数種から選択されるモノマーから誘導される半芳香族反復単位約20〜約35モル%;および
(bb)(ii)炭素原子6〜20個を有する脂肪族ジカルボン酸および炭素原子4〜20個を有する前記脂肪族ジアミン;および
(iii)炭素原子4〜20個を有するラクタムおよび/またはアミノカルボン酸;
からなる群のうちの1種または複数種から選択されるモノマーから誘導される脂肪族反復単位約65〜約80モル%;
を含む、(III)群ポリアミドと、
(cc)(i)炭素原子8〜20個を有する芳香族ジカルボン酸および炭素原子4〜20個を有する脂肪族ジアミン;
からなる群のうちの1種または複数種から選択されるモノマーから誘導される半芳香族反復単位約50〜約95モル%;および
(dd)(ii)炭素原子6〜20個を有する脂肪族ジカルボン酸および炭素原子4〜20個を有する前記脂肪族ジアミン;および
(iii)炭素原子4〜20個を有するラクタムおよび/またはアミノカルボン酸;
からなる群のうちの1種または複数種から選択されるモノマーから誘導される脂肪族反復単位約5〜約50モル%;
を含む、(IV)群ポリアミドと、
少なくとも260℃の前記融点を有し、かつ
(ee)i.炭素原子8〜20個を有する芳香族ジカルボン酸および炭素原子4〜20個を有する脂肪族ジアミン;
からなる群のうちの1種または複数種から選択されるモノマーから誘導される、95モル%を超える半芳香族反復単位;および
(ff)ii.炭素原子6〜20個を有する脂肪族ジカルボン酸および炭素原子4〜20個を有する前記脂肪族ジアミン;および
iii.炭素原子4〜20個を有するラクタムおよび/またはアミノカルボン酸;
からなる群のうちの1種または複数種から選択されるモノマーから誘導される脂肪族反復単位5モル%未満;
を含む、(V)群ポリアミドと、
融点を持たず、かつポリ(ヘキサメチレンイソフタルアミド/ヘキサメチレンテレフタルアミド)(6I/6T)およびポリ(ヘキサメチレンイソフタルアミド/ヘキサメチレンテレフタルアミド/ヘキサメチレンヘキサンジアミド)(6I/6T/66)からなる群から選択される、(VI)群ポリアミドと、
からなる群から選択され、
但し、前記1種または複数種の補強剤が10重量%未満存在する場合には、前記1種または複数種の共安定剤も少なくとも0.1重量%存在することを条件とする。
【発明を実施するための形態】
【0012】
説明のために、別段の指定がない限り、「高温」とは、好ましくは210℃以上、最も好ましくは230℃以上の温度を意味する。
【0013】
本発明において、別段の指定がない限り、「長期」とは、500時間以上、好ましくは1000時間以上の老化時間を意味する。
【0014】
本明細書において使用され、本明細書に開示されるポリアミド組成物に、またはその組成物から製造された物品に適用される、「高い熱安定性」という用語は、エアオーブン老化(AOA)条件に試験温度210℃で少なくとも500時間の試験期間の間、大気中で暴露され、次いでISO527−2/1A法に従って試験されたポリアミド組成物からなる厚さ4mmの成形試験片の物理的性質(例えば、引張り強さ)の保持を意味する。試験片の物理的性質は、同一組成および形状を有する非暴露対照と比較され、保持率%で表される。他の好ましい実施形態において、試験温度は230℃であり、試験期間は500時間であり、暴露された試験片は、少なくとも70%の引張り強さの保持率(%)を有する。本明細書において、「高い熱安定性」とは、前記成形試験片が平均で、少なくとも500時間の試験期間、試験温度210℃で暴露した場合に、引張り強さの保持率50%を満たす、または超えることを意味する。所定の暴露温度および時間に対して物理的性質の保持率が高い組成物は、優れた熱安定性を有する。
【0015】
「210℃で」および「230℃で」という表現は、実際の温度が公称試験温度から+/−2℃異なり得るということを理解した上で、試験片がさらされる環境の公称温度を意味する。
【0016】
「(メタ)アクリレート」という用語は、アクリレートエステルおよびメタクリレートエステルを包含することを意味する。
【0017】
「ブレンドポリアミド」という用語は、ポリアミドブレンドを形成するために、以下に開示される(III)群から(VI)群のポリアミドとブレンドするのに適しているポリアミドの群である。
【0018】
本明細書において、融点およびガラス転移は、示差走査熱量測定(DSC)を用いて走査速度10℃/分にて最初の加熱走査において決定され、融点は、吸熱ピークの最大で得られ、ガラス転移は、明らかな場合にはエンタルピーにおける変化の中点と見なされる。
【0019】
本発明で使用される熱可塑性組成物はポリアミドを含む。ポリアミドは、1種または複数種のジカルボン酸および1種または複数種のジアミン、および/または1種または複数種のアミノカルボン酸の縮合生成物、かつ/または1種または複数種の環状ラクタムの開環重合生成物である。適切な環状ラクタムはカプロラクタムおよびラウロラクタムである。ポリアミドは完全に脂肪族または半芳香族であり得る。
【0020】
本発明の樹脂組成物において使用される完全に脂肪族のポリアミドは、脂肪族および脂環式モノマー、例えばジアミン、ジカルボン酸、ラクタム、アミノカルボン酸、およびその反応性等価物から形成される。適切なアミノカルボン酸は11−アミノドデカン酸である。適切なラクタムはカプロラクタムおよびラウロラクタムである。本発明の文脈において、「完全に脂肪族のポリアミド」という表現は、2種類以上のかかるモノマーから誘導されるコポリマー、および2種類以上の完全に脂肪族ポリアミドのブレンドも意味する。直鎖状、分岐状、および環状モノマーが使用される。
【0021】
完全に脂肪族のポリアミドに含まれるカルボン酸モノマーとしては、限定されないが、例えばアジピン酸(C6)、ピメリン酸(C7)、スベリン酸(C8)、アゼライン酸(C9)、デカン二酸(C10)、ドデカン二酸(C12)、トリデカン二酸(C13)、テトラデカン二酸(C14)、およびペンタデカン二酸(C15)などの脂肪族カルボン酸が挙げられる。ジアミンは、限定されないが、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、2−メチルペンタメチレンジアミン、2−エチルテトラメチレンジアミン、2−メチルオクタメチレンジアミン;トリメチルヘキサメチレンジアミン、メタ−キシレンジアミン、および/またはその混合物などの、炭素原子4個以上を有するジアミンの中から選択することができる。
【0022】
半芳香族ポリアミドは、芳香族基を含有するモノマーから形成される、ホモポリマー、コポリマー、ターポリマーまたは四元以上のポリマーである。1種または複数種の芳香族カルボン酸は、テレフタレート、またはテレフタレートとイソフタル酸、フタル酸、2−メチルテレフタル酸およびナフタル酸などの1種または複数種の他のカルボン酸との混合物であることができる。さらに、その1種または複数種の芳香族カルボン酸を、上述のように1種または複数種の脂肪族ジカルボン酸と混合することができる。
【0023】
本明細書に開示される好ましいポリアミドはホモポリマーまたはコポリマーであり、そのコポリマーという用語は、2種類以上のアミドおよび/またはジアミド分子反復単位を有するポリアミドを意味する。ホモポリマーとコポリマーは、それらそれぞれの反復単位によって識別される。本明細書に開示されるコポリマーについては、反復単位は、コポリマー中に存在する反復単位(モル%)の多い順に列挙されている。以下のリストには、ホモポリマーおよびコポリマーポリアミド(PA)におけるモノマーおよび反復単位を識別するために使用される略語を示す:
【0024】
【表1】

【0025】
当技術分野において、単独で使用された場合に「6」という用語は、ε−カプロラクタムから形成されるポリマー反復単位を意味する。その代わりに、T、例えば6Tなどの二酸と組み合わせて使用される場合の「6」は、HMDを意味する。ジアミンおよび二酸を含む反復単位において、ジアミンは最初に示される。さらに、「6」がジアミンと組み合わせて使用される場合、例えば66は、最初の「6」はジアミンHMDを意味し、2番目の「6」はアジピン酸を意味する。同様に、他のアミノ酸またはラクタムから誘導される反復単位は、炭素原子の数を表す1つの数字として示される。
【0026】
様々な実施形態においてブレンドポリアミドとして有用なポリアミドとしては
融点210℃未満を有し、ポリ(ペンタメチレンデカンジアミド)(PA510)、ポリ(ペンタメチレンドデカンジアミド)(PA512)、ポリ(ε−カプロラクタム/ヘキサメチレンヘキサンジアミド)(PA6/66)、ポリ(ε−カプロラクタム/ヘキサメチレンデカンジアミド)(PA6/610)、ポリ(ε−カプロラクタム/ヘキサメチレンドデカンジアミド)(PA6/612)、ポリ(ヘキサメチレントリデカンジアミド)(PA613)、ポリ(ヘキサメチレンペンタデカンジアミド)(PA615)、ポリ(ε−カプロラクタム/テトラメチレンテレフタルアミド)(PA6/4T)、ポリ(ε−カプロラクタム/ヘキサメチレンテレフタルアミド)(PA6/6T)、ポリ(ε−カプロラクタム/デカメチレンテレフタルアミド)(PA6/10T)、ポリ(ε−カプロラクタム/ドデカメチレンテレフタルアミド)(PA6/12T)、ポリ(ヘキサメチレンデカンジアミド/ヘキサメチレンテレフタルアミド)(PA610/6T)、ポリ(ヘキサメチレンドデカンジアミド/ヘキサメチレンテレフタルアミド)(PA612/6T)、ポリ(ヘキサメチレンテトラデカンジアミド/ヘキサメチレンテレフタルアミド)(PA614/6T)、ポリ(ε−カプロラクタム/ヘキサメチレンイソフタルアミド/ヘキサメチレンテレフタルアミド)(PA6/6I/6T)、ポリ(ε−カプロラクタム/ヘキサメチレンヘキサンジアミド/ヘキサメチレンデカンジアミド)(PA6/66/610)、ポリ(ε−カプロラクタム/ヘキサメチレンヘキサンジアミド/ヘキサメチレンドデカンジアミド)(PA6/66/612)、ポリ(ε−カプロラクタム/ヘキサメチレンヘキサンジアミド/ヘキサメチレンデカンジアミド/ヘキサメチレンドデカンジアミド)(PA6/66/610/612)、ポリ(2−メチルペンタメチレンヘキサンジアミド/ヘキサメチレンヘキサンジアミド/ヘキサメチレンテレフタルアミド)(PA D6/66//6T)、ポリ(2−メチルペンタメチレンヘキサンジアミド/ヘキサメチレンヘキサンジアミド/)(PA D6/66)、ポリ(デカメチレンデカンジアミド)(PA1010)、ポリ(デカメチレンドデカンジアミド)(PA1012)、ポリ(デカメチレンデカンジアミド/デカメチレンテレフタルアミド)(PA1010/10T)ポリ(デカメチレンデカンジアミド/ドデカメチレンデカンジアミド/デカメチレンテレフタルアミド/ドデカメチレンテレフタルアミド(PA1010/1210/10T/12T)、ポリ(11−アミノウンデカンアミド)(PA11)、ポリ(11−アミノウンデカンアミド/テトラメチレンテレフタルアミド)(PA11/4T)、ポリ(11−アミノウンデカンアミド/ヘキサメチレンテレフタルアミド)(PA11/6T)、ポリ(11−アミノウンデカンアミド/デカメチレンテレフタルアミド)(PA11/10T)、ポリ(11−アミノウンデカンアミド/ドデカメチレンテレフタルアミド)(PA11/12T)、ポリ(12−アミノドデカンアミド)(PA12)、ポリ(12−アミノドデカンアミド/テトラメチレンテレフタルアミド)(PA12/4T)、ポリ(12−アミノドデカンアミド/ヘキサメチレンテレフタルアミド)(PA12/6T)、ポリ(12−アミノドデカンアミド/デカメチレンテレフタルアミド)(PA12/10T)ポリ(ドデカメチレンドデカンジアミド)(PA1212)、およびポリ(ドデカメチレンドデカンジアミド/ドデカメチレンドデカンジアミド/ドデカメチレンテレフタルアミド))(PA1212/12T)の群から選択される脂肪族または半芳香族ポリアミドを含む、(I)群ポリアミド;
が挙げられる。
【0027】
(I)群ポリアミドは、融点が210℃未満であるような程度まで半芳香族反復単位を含むことができ、一般にこの群の半芳香族ポリアミドは、半芳香族反復単位を40モル%未満有する。半芳香族反復単位は、炭素原子8〜20個を有する芳香族ジカルボン酸および炭素原子4〜20個を有する脂肪族ジアミンからなる群のうちの1種または複数種から選択されるモノマーから誘導される単位として定義される。
【0028】
様々な実施形態においてブレンドポリアミド組成物として有用な他のポリアミドとしては、
少なくとも210℃の融点を有し、かつポリ(テトラメチレンヘキサンジアミド)(PA46)、ポリ(ε−カプロラクタム)(PA6)、ポリ(ヘキサメチレンヘキサンジアミド/(ε−カプロラクタム/)(PA66/6)ポリ(ヘキサメチレンヘキサンジアミド)(PA66)、ポリ(ヘキサメチレンヘキサンジアミド/ヘキサメチレンデカンジアミド)(PA66/610)、ポリ(ヘキサメチレンヘキサンジアミド/ヘキサメチレンドデカンジアミド)(PA66/612)、ポリ(ヘキサメチレンヘキサンジアミド/デカメチレンデカンジアミド)(PA66/1010)、ポリ(ヘキサメチレンデカンジアミド)(PA610)、ポリ(ヘキサメチレンドデカンジアミド)(PA612)、ポリ(ヘキサメチレンテトラデカンジアミド)(PA614)、ポリ(ヘキサメチレンヘキサデカンジアミド)(PA616)、およびポリ(テトラメチレンヘキサンジアミド/2−メチルペンタメチレンヘキサンジアミド)(PA46/D6)からなる群から選択される脂肪族ポリアミドを含む、(II)群ポリアミド;
が挙げられる。
【0029】
本発明において有用な好ましいポリアミドは、少なくとも210℃の融点を有し、かつ
(a)i)炭素原子8〜20個を有する芳香族ジカルボン酸および炭素原子4〜20個を有する脂肪族ジアミン;
からなる群のうちの1つまたは複数から選択されるモノマーから誘導される半芳香族反復単位約20〜約35モル%;
(b)ii)炭素原子6〜20個を有する脂肪族ジカルボン酸および炭素原子4〜20個を有する前記脂肪族ジアミン;
iii)炭素原子4〜20個を有するラクタムおよび/またはアミノカルボン酸;
からなる群のうちの1つまたは複数から選択されるモノマーから誘導される脂肪族反復単位約65〜約80モル%;
を含む、(III)群ポリアミドと、
(cc)(i)炭素原子8〜20個を有する芳香族ジカルボン酸および炭素原子4〜20個を有する脂肪族ジアミン;
からなる群のうちの1種または複数種から選択されるモノマーから誘導される半芳香族反復単位約50〜約95モル%;
(dd)(ii)炭素原子6〜20個を有する脂肪族ジカルボン酸および炭素原子4〜20個を有する前記脂肪族ジアミン;
(iii)炭素原子4〜20個を有するラクタムおよび/またはアミノカルボン酸;
からなる群のうちの1種または複数種から選択されるモノマーから誘導される脂肪族反復単位約5〜約50モル%;
を含む、(IV)群ポリアミドと、
少なくとも260℃の前記融点を有し、かつ
(ee)(i)炭素原子8〜20個を有する芳香族ジカルボン酸および炭素原子4〜20個を有する脂肪族ジアミン;
からなる群のうちの1種または複数種から選択されるモノマーから誘導される、95モル%を超える半芳香族反復単位;
(ff)(ii)炭素原子6〜20個を有する脂肪族ジカルボン酸および炭素原子4〜20個を有する前記脂肪族ジアミン;
(iii)炭素原子4〜20個を有するラクタムおよび/またはアミノカルボン酸;
からなる群のうちの1種または複数種から選択されるモノマーから誘導される脂肪族反復単位5モル%未満;
を含む、(V)群ポリアミドと、
融点を持たず、かつポリ(ヘキサメチレンイソフタルアミド/ヘキサメチレンテレフタルアミド)(6I/6T)およびポリ(ヘキサメチレンイソフタルアミド/ヘキサメチレンテレフタルアミド/ヘキサメチレンヘキサンジアミド)(6I/6T/66)からなる群から選択される、(VI)群ポリアミドである。
【0030】
好ましい(III)群〜(VI)群ポリアミドは、少なくとも約60ミリ当量/kgのアミン末端、好ましくは少なくとも70ミリ当量/kgのアミン末端を有するポリアミドである。アミン末端は、フェノール/メタノール/水の混合物(50:25:25(体積))中のポリアミドの2%溶液を0.1N塩酸で滴定することによって決定される。終点は、電位差滴定または電気伝導度滴定で決定することができる(Kohan,M.I.Ed.Nylon Plastics Handbook,Hanser:Munich,1995;p.79およびWaltz,J.E.and Taylor,G.B.,Anal.Chem.1947 19,448−50参照)。
【0031】
(III)群ポリアミドの他の好ましいポリアミドは、10℃/分にて示差走査熱量測定で決定された、少なくとも210℃、好ましくは少なくとも260℃の融点を有する。
【0032】
(III)群ポリアミドの他の好ましいポリアミドは、前記半芳香族反復単位がテレフタル酸から誘導され;さらに好ましくは、さらに、前記脂肪族反復単位がアジピン酸から誘導され、さらに好ましくは、さらに、前記脂肪族ジアミンが1,4−ブタンジアミンまたは1,6−ヘキサンジアミンである、ポリアミドである。
【0033】
一実施形態において、ポリアミド樹脂は、少なくとも210℃の融点を有する(III)群ポリアミドを含み、かつポリ(テトラメチレンヘキサンジアミド/テトラメチレンテレフタルアミド)(PA46/4T)、ポリ(テトラメチレンヘキサンジアミド/ヘキサメチレンテレフタルアミド)(PA46/6T)、ポリ(テトラメチレンヘキサンジアミド/2−メチルペンタメチレンヘキサンジアミド/デカメチレンテレフタルアミド)PA46/D6/10T)、ポリ(ヘキサメチレンヘキサンジアミド/ヘキサメチレンテレフタルアミド)(PA66/6T)、ポリ(ヘキサメチレンヘキサンジアミド/ヘキサメチレンイソフタルアミド/ヘキサメチレンテレフタルアミドPA66/6I/6T、およびポリ(ヘキサメチレンヘキサンジアミド/2−メチルペンタメチレンヘキサンジアミド/ヘキサメチレンテレフタルアミド(PA66/D6/6T)からなる群から選択される。最も好ましいポリアミドはPA66/6Tである。
【0034】
好ましい(IV)群ポリアミドは、ポリ(テトラメチレンテレフタルアミド/ヘキサメチレンヘキサンジアミド)(PA4T/66)、ポリ(テトラメチレンテレフタルアミド/ε−カプロラクタム)(PA4T/6)、ポリ(テトラメチレンテレフタルアミド/ヘキサメチレンドデカンジアミド)(PA4T/612)、ポリ(テトラメチレンテレフタルアミド/2−メチルペンタメチレンヘキサンジアミド/ヘキサメチレンヘキサンジアミド)(PA4T/D6/66)、ポリ(ヘキサメチレンテレフタルアミド/2−メチルペンタメチレンテレフタルアミド/ヘキサメチレンヘキサンジアミド)(PA6T/DT/66)、ポリ(ヘキサメチレンテレフタルアミド/ヘキサメチレンヘキサンジアミド)PA6T/66、ポリ(ヘキサメチレンテレフタルアミド/ヘキサメチレンデカンジアミド)(PA6T/610)、ポリ(ヘキサメチレンテレフタルアミド/ヘキサメチレンテトラデカンジアミド)(PA6T/614)、ポリ(ノナメチレンテレフタルアミド/ノナメチレンデカンジアミド)(PA9T/910)、ポリ(ノナメチレンテレフタルアミド/ノナメチレンドデカンジアミド)(PA9T/912)、ポリ(ノナメチレンテレフタルアミド/11−アミノウンデカンアミド)(PA9T/11)、ポリ(ノナメチレンテレフタルアミド/12−アミノドデカンアミド)(PA9T/12)、ポリ(デカメチレンテレフタルアミド/11−アミノウンデカンアミド)(PA10T/11)、ポリ(デカメチレンテレフタルアミド/12−アミノドデカンアミド)(PA10T/12)ポリ(デカメチレンテレフタルアミド/デカメチレンデカンジアミド)(PA10T/1010)、ポリ(デカメチレンテレフタルアミド/デカメチレンドデカンジアミド)(PA10T/1012)、ポリ(デカメチレンテレフタルアミド/テトラメチレンヘキサンジアミド)(PA10T/46)、ポリ(デカメチレンテレフタルアミド/ε−カプロラクタム)(PA10T/6)、ポリ(デカメチレンテレフタルアミド/ヘキサメチレンヘキサンジアミド)(PA10T/66)、ポリ(ドデカメチレンテレフタルアミド/ドデカメチレンドデカンジアミド)(PA12T/1212)、ポリ(ドデカメチレンテレフタルアミド/ε−カプロラクタム)(PA12T/6)、およびポリ(ドデカメチレンテレフタルアミド/ヘキサメチレンヘキサンジアミド)(PA12T/66);からなる群から選択され;最も好ましい(IV)群ポリアミドはPA6T/66である。
【0035】
好ましい(V)群ポリアミドは、ポリ(テトラメチレンテレフタルアミド/2−メチルペンタメチレンテレフタルアミド)PA4T/DT、ポリ(テトラメチレンテレフタルアミド/ヘキサメチレンテレフタルアミド)PA4T/6T、ポリ(テトラメチレンテレフタルアミド/デカメチレンテレフタルアミド)PA4T/10T、ポリ(テトラメチレンテレフタルアミド/ドデカメチレンテレフタルアミド)PA4T/12T、ポリ(テトラメチレンテレフタルアミド/2−メチルペンタメチレンテレフタルアミド/ヘキサメチレンテレフタルアミド)(PA4T/DT/6T)、ポリ(テトラメチレンテレフタルアミド/ヘキサメチレンテレフタルアミド/2−メチルペンタメチレンテレフタルアミド)(PA4T/6T/DT)、ポリ(ヘキサメチレンテレフタルアミド/2−メチルペンタメチレンテレフタルアミド)(PA6T/DT)、ポリ(ヘキサメチレンヘキサンジアミド/ヘキサメチレンイソフタルアミド)(PA6T/6I)、ポリ(ヘキサメチレンテレフタルアミド/デカメチレンテレフタルアミド)PA6T/10T、ポリ(ヘキサメチレンテレフタルアミド/ドデカメチレンテレフタルアミド)(PA6T/12T)、ポリ(ヘキサメチレンテレフタルアミド/2−メチルペンタメチレンテレフタルアミド/ポリ(デカメチレンテレフタルアミド)(PA6T/DT/10T)、ポリ(ヘキサメチレンテレフタルアミド/デカメチレンテレフタルアミド/ドデカメチレンテレフタルアミド)(PA6T/10T/12T)、ポリ(デカメチレンテレフタルアミド)(PA10T)、ポリ(デカメチレンテレフタルアミド/テトラメチレンテレフタルアミド)(PA10T/4T)、ポリ(デカメチレンテレフタルアミド/2−メチルペンタメチレンテレフタルアミド)(PA10T/DT)、ポリ(デカメチレンテレフタルアミド/ドデカメチレンテレフタルアミド)(PA10T/12T)、ポリ(デカメチレンテレフタルアミド/2−メチルペンタメチレンテレフタルアミド/(デカメチレンテレフタルアミド)(PA10T/DT/12T)、ポリ(ドデカメチレンテレフタルアミド)(PA12T)、ポリ(ドデカメチレンテレフタルアミド)/テトラメチレンテレフタルアミド)(PA12T/4T)、ポリ(ドデカメチレンテレフタルアミド)/ヘキサメチレンテレフタルアミド)PA12T/6T、ポリ(ドデカメチレンテレフタルアミド)/デカメチレンテレフタルアミド)(PA12T/10T)、およびポリ(ドデカメチレンテレフタルアミド)/2−メチルペンタメチレンテレフタルアミド)(PA12T/DT)からなる群から選択され;最も好ましい(V)群ポリアミドはPA6T/DTである。
【0036】
この熱可塑性組成物はさらに、
(E)上記で開示される210℃未満の融点を有する(I)群ポリアミドおよび上記で開示される少なくとも210℃の融点を有する(II)群ポリアミドからなる群から選択される1種または複数種のブレンドポリアミド0.1〜30重量%、好ましくは0.1〜10重量%を含み得る。
【0037】
様々な実施形態において、ポリアミドは、それぞれ(I)群ポリアミド、(II)群ポリアミド、(III)群ポリアミド、(IV)群ポリアミド、(V)ポリアミド群または(VI)群ポリアミドである。
【0038】
ポリアミドは、2種類以上のポリアミドのブレンドであってもよい。好ましいブレンドとしては、(I)群と(II)群のポリアミド;(I)群と(III)群のポリアミド、(I)群と(VI)群のポリアミド、(II)群と(III)群のポリアミド、(II)群と(IV)群のポリアミド、(II)群と(V)群のポリアミド、(II)群と(VI)群のポリアミド、(III)群と(VI)群のポリアミド、および(IV)群と(V)群のポリアミドからなる群から選択されるブレンドが挙げられる。
【0039】
好ましいブレンドとしては、(II)群と(V)群のポリアミドが挙げられ、具体的な好ましいブレンドとしては、ポリ(ヘキサメチレンヘキサンジアミド)(PA66)およびポリ(ヘキサメチレンテレフタルアミド/2−メチルペンタメチレンテレフタルアミド)(PA6T/DT)が挙げられる。
【0040】
他の好ましいブレンドとしては、(II)群と(III)群のポリアミドが挙げられ、具体的な好ましいブレンドとしては、ポリ(ε−カプロラクタム)(PA6)およびポリ(ヘキサメチレンヘキサンジアミド/ヘキサメチレンテレフタルアミド(PA66/6T)が挙げられる。
【0041】
本発明のポリアミドは、例えばオートクレーブを使用したバッチプロセスなどにおいて、または連続プロセスを用いて、当業者に公知の手段によって製造することができる。例えば、Kohan,M.I.Ed.Nylon Plastics Handbook,Hanser:Munich,1995;pp.13−32を参照されたい。潤滑剤、消泡剤、および末端キャップ剤などの添加剤を重合混合物に添加することができる。アミン末端の濃度は、反応化学量論を制御するためにpHを調節し;重合反応器から水を除去した結果として、重合プロセスにおけるジアミン損失の量を制御することによって、ポリアミドの製造において制御することができる。アミン末端は、当技術分野でよく知られているように、末端キャップ剤を添加することによって調節することもできる。一般的な末端キャップ剤は酢酸である。
【0042】
この熱可塑性組成物は、ポリマー材料に関してゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)で決定される、少なくとも2000の数平均分子量(Mn)を有し、エチレン/ビニルアルコールコポリマーおよびポリ(ビニルアルコール)からなる群から選択される、少なくとも1種類のポリヒドロキシポリマー0.25〜20重量%を含む。好ましくは、ポリヒドロキシポリマーは、Mn5000〜50,000を有する。
【0043】
一実施形態において、ポリヒドロキシポリマーはエチレン/ビニルアルコールコポリマー(EVOH)である。EVOHは、ビニルアルコール反復単位含有率10〜90モル%、好ましくは30〜80モル%、40〜75モル%、50〜75モル%、および50〜60モル%を有し、残りのモル%はエチレンである。熱可塑性組成物に適しているEVOHは日本合成化学工業株式会社(日本,東京)から市販のSoarnol(登録商標)AまたはDコポリマーおよびクラレ株式会社(日本,東京)から市販のEVAL(登録商標)コポリマーである。
【0044】
一実施形態において、ポリヒドロキシポリマーはポリ(ビニルアルコール)ポリマー(PVOH)である。熱可塑性組成物に適しているPVOHポリマーは、Kuraray Europe Gmbhから市販のMowiol(登録商標)ブランド樹脂である。
【0045】
この熱可塑性組成物は、熱可塑性ポリアミド組成物の全重量に対して、ポリヒドロキシポリマー1〜15重量%、好ましくは1〜10重量%、さらに好ましくは1〜7重量%、またさらに好ましくは2〜7重量%を含み得る。
【0046】
ポリアミド組成物は、融点が存在する場合にはポリアミド樹脂の融点から30℃を超えて低い温度であり、または前記融点が存在しない場合には少なくとも250℃である、熱重量分析(TGA)によって決定される10%重量減少温度を有する1種または複数種の共安定剤であって、第2級アリールアミン、ヒンダードフェノール、ヒンダードアミン光安定剤(HALS)、およびその混合物からなる群から選択される1種または複数種の共安定剤0〜3重量%を含み得る。
【0047】
本発明の目的では、TGA重量減少は、ASTM D 3850−94に従って加熱速度10℃/分を用いて、空気パージストリーム中にて適切な流量0.8mL/秒で決定される。この1種または複数種の共安定剤は好ましくは、TGAによって決定される、少なくとも270℃、さらに好ましくは290℃、320℃、および340℃、最も好ましくは少なくとも350℃の10%重量減少温度を有する。
【0048】
この1種または複数種の共安定剤は好ましくは、ポリアミド組成物の全重量に対して、約0.1〜3または約3重量%、さらに好ましくは0.1または約0.1〜1または約1重量%;またはさらに好ましくは0.1または約0.1〜0.7または約0.7重量%で存在する。
【0049】
本発明において有用な第2級アリールアミンは、低揮発性を有する高分子量有機化合物である。好ましくは、その高分子量有機化合物は、熱重量分析(TGA)によって決定される、少なくとも290℃、好ましくは少なくとも300℃、320℃、340℃、最も好ましくは少なくとも350℃の10%重量減少温度と共に、少なくとも260g/モル、好ましくは少なくとも350g/モルの分子量を有することをさらに特徴とする、第2級アリールアミンからなる群から選択される。
【0050】
第2級アリールアミンとは、窒素原子に化学的に結合した2個の炭素ラジカルを含有するアミン化合物であって、少なくとも1つ、好ましくは両方の炭素ラジカルが芳香族であるアミン化合物を意味する。好ましくは、例えば、フェニル、ナフチルまたはヘテロ芳香族基などの芳香族ラジカルの少なくとも1つが、炭素原子1〜約20個を含有することが好ましい、少なくとも1つの置換基で置換されている。
【0051】
適切な第2級アリールアミンの例としては、Uniroyal Chemical Company,Middlebury,Conn.からNaugard445として市販されている4,4’ジ(α,α−ジメチルベンジル)ジフェニルアミン;Uniroyal Chemical CompanyからAminoxとして市販されている、ジフェニルアミンとアセトンの反応の第2級アリールアミン縮合生成物;Uniroyal Chemical CompanyからNaugard SAとして市販されているパラ−(パラトルエンスルホニルアミド)ジフェニルアミンが挙げられる。他の適切な第2級アリールアミンとしては、ICI Rubber Chemicals,Calcutta,Indiから入手可能なN,N’−ジ−(2−ナフチル)−p−フェニレンジアミンである。他の適切な第2級アリールアミンとしては、4,4’−ビス(α,α’−t−オクチル)ジフェニルアミン、4,4’−ビス(α−メチルベンズヒドリル)ジフェニルアミン、および欧州特許第0509282B1号明細書に記載のアミンが挙げられる。ポリアミド組成物に好ましい共安定剤は第2級アリールアミンである。
【0052】
ヒンダードフェノールとは、少なくとも1つのフェノール基を含有する有機化合物であって、その芳香族部位が、置換基としてフェノールのヒドロキシル基を有する炭素に直接隣接する少なくとも1つの位置で、好ましくは両方の位置で置換されている、有機化合物を意味する。ヒドロキシル基に隣接する置換基は、炭素原子1〜10個を有するアルキル基から適切に選択されるアルキルラジカルであり、好ましくは第3級ブチル基であるだろう。ヒンダードフェノールの分子量は適切には、少なくとも約260、好ましくは少なくとも約500、さらに好ましくは少なくとも約600である。特に配合物を成形するために用いられる加工温度で低揮発性を有し、少なくとも290℃、好ましくは少なくとも300℃、320℃、340℃、最も好ましくは少なくとも350℃の10%TGA重量減少温度を有することをさらに特徴とする、ヒンダードフェノールが最も好ましい。
【0053】
適切なヒンダードフェノール化合物としては、例えば、CIBA Specialty Chemicals,Tarrytown,N.Y.からIrganox(登録商標)1010として市販されているテトラキス(メチレン(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナメート))メタン、CIBA Specialty ChemicalsからIrganox(登録商標)1098として市販されているN,N’−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−ヒドロキシヒドロ−シンナムアミド)が挙げられる。他の適切なヒンダードフェノールとしては、1,3,5−トリメチル−2,4,6トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼンおよび1,6ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル4ヒドロキシヒドロシンナメート)が挙げられ、どちらもCIBA Specialty Chemicalsから、Irganox(登録商標)1330および259としてそれぞれ市販されている。このポリアミド組成物に好ましい共安定剤はヒンダードフェノールである。Irganox1098は、この組成物に最も好ましいヒンダードフェノールである。
【0054】
このヒンダードアミン光安定剤(HALS)は、1種または複数種のヒンダードアミン型光安定剤(HALS)であることができる。
【0055】
HALSは、以下の一般式の化合物およびその組み合わせである:
【0056】
【化1】

【0057】
これらの式中、R1からR5は、独立した置換基である。適切な置換基の例は、水素、エーテル基、エステル基、アミン基、アミド基、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アラルキル基、シクロアルキル基およびアリール基であり、次にその置換基は官能基を含有し得る;官能基の例は、アルコール、ケトン、無水物、イミン、シロキサン、エーテル、カルボキシル基、アルデヒド、エステル、アミド、イミド、アミン、ニトリル、エーテル、ウレタンおよびその組み合わせである。ヒンダードアミン光安定剤は、ポリマーまたはオリゴマーの一部も形成し得る。
【0058】
好ましくは、HALSは、置換ピペリジン化合物から誘導される化合物、特に、アルキル置換ピペリジル、ピペリジニルまたはピペラジノン化合物、および置換アルコキシピペリジニル化合物から誘導される化合物である。かかる化合物の例は:2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリドン;2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジノール;ビス−(1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジル)−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシベンジル)ブチルマロネート;ジ−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート(Tinuvin(登録商標)770,MW481);N−(2−ヒドロキシエチル)−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジノールとコハク酸のオリゴマー(Tinuvin(登録商標)622);シアヌル酸とN,N−ジ(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−ヘキサメチレンジアミンのオリゴマー;ビス−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)スクシネート;ビス−(1−オクチルオキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)セバケート(Tinuvin(登録商標)123);ビス−(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニル)セバケート(Tinuvin(登録商標)765);Tinuvin(登録商標)144;Tinuvin(登録商標)XT850;テトラキス−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート;N,N’−ビス−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−ヘキサン−1,6−ジアミン(Chimasorb(登録商標)T5);N−ブチル−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジンアミン;2,2’−[(2,2,6,6−テトラメチル−ピペリジニル)−イミノ]−ビス−[エタノール];ポリ((6−モルホリン−S−トリアジン−2,4−ジイル)(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)−イミノヘキサメチレン−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)−イミノ)(Cyasorb(登録商標)UV3346);5−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)−2−シクロ−ウンデシル−オキサゾール)(Hostavin(登録商標)N20);1,1’−(1,2−エタン−ジ−イル)−ビス−(3,3’,5,5’−テトラメチル−ピペラジノン);8−アセチル−3−ドデシル−7,7,9,9−テトラメチル−1,3,8−トリアザスピロ(4,5)デカン−2,4−ジオン;ポリメチルプロピル−3−オキシ−[4(2,2,6,6−テトラメチル)−ピペリジニル]シロキサン(Uvasil(登録商標)299);1,2,3,4−ブタン−テトラカルボン酸−1,2,3−トリス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニル)−4−トリデシルエステル;α−メチルスチレン−N−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)マレイミドとN−ステアリルマレイミドのコポリマー;β,β,β’,β’−テトラメチル−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン−3,9−ジエタノール、1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニルエステルとの1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸ポリマー(Mark(登録商標)LA63);1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニルエステルとの2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン−3,9−ジエタノール、β,β,β’,β’−テトラメチル−ポリマー(Mark(登録商標)LA68);D−グルシトール,1,3:2,4−ビス−O−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニリデン)−(HALS7);7−オキサ−3,20−ジアザジスピロ[5.1.11.2]−ヘンイコサン−21−オン−2,2,4,4−テトラメチル−20−(オキシラニルメチル)のオリゴマー(Hostavin(登録商標)N30);プロパン二酸,[(4−メトキシフェニル)メチレン]−,ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニル)エステル(Sanduvor(登録商標)PR31);ホルムアミド,N,N’−1,6−ヘキサンジイルビス[N−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル(Uvinul(登録商標)4050H);1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリアミン,N,N’’’−[1,2−エタンジイルビス[[[4,6−ビス[ブチル(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニル)アミノ]−1,3,5−トリアジン−2−イル]イミノ]−3,1−プロパンジイル]]−ビス[N’,N’’−ジブチル−N’,N’’−ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニル)(Chimassorb(登録商標)119 MW2286);ポリ[[6−[(1,1,3,33−テトラメチルブチル)アミノ]−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル][(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)−イミノ]−1,6−ヘキサンジイル[(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)イミノ]](Chimassorb(登録商標)944 MW2000〜3000);1,5−ジオキサスピロ(5,5)ウンデカン3,3−ジカルボン酸,ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ペリジニル)エステル(Cyasorb(登録商標)UV−500);1,5−ジオキサスピロ(5,5)ウンデカン3,3−ジカルボン酸,ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ペリジニル)エステル(Cyasorb(登録商標)UV−516);N−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル−N−アミノ−オキサミド;4−アクリロイルオキシ−1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジン.1,5,8,12−テトラキス[2’,4’−ビス(1’’,2’’,2’’,6’’,6’’−ペンタメチル−4’’−ピペリジニル(ブチル)アミノ)−1’,3’,5’−トリアジン−6’−イル]−1,5,8,12−テトラアザドデカン;HALS PB−41(Clariant Huningue S.A.);Nylostab(登録商標)S−EED(Clariant Huningue S.A.);3−ドデシル−1−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−ピロリジン−2,5−ジオン;Uvasorb(登録商標)HA88;1,1’−(1,2−エタン−ジ−イル)−ビス−(3,3’,5,5’−テトラ−メチル−ピペラジノン)(Good−rite(登録商標)3034);1,1’1’’−(1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリイルトリス((シクロヘキシルイミノ)−2,1−エタンジイル)トリス(3,3,5,5−テトラメチルピペラジノン)(Good−rite(登録商標)3150)および;1,1’,1’’−(1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリイルトリス((シクロヘキシルイミノ−2,1−エタンジイル)トリス(3,3,4,5,5−テトラメチルピペラジノン)(Good−rite(登録商標)3159);である。Tinuvin(登録商標)およびChimassorb(登録商標)材料は、Ciba Specialty Chemicalsから入手可能であり;Cyasorb(登録商標)材料はCytec Technology Corp.から入手可能であり;Uvasil(登録商標)材料はGreat Lakes Chemical Corp.から入手可能であり;Saduvor(登録商標)、Hostavin(登録商標)、およびNylostab(登録商標)材料はClariant Corp.から入手可能であり;Uvinul(登録商標)材料はBASFから入手可能であり;Uvasorb(登録商標)材料はPartecipazioni Industrialiから入手可能であり;Good−rite(登録商標)材料はB.F.Goodrich Co.から入手可能であり、Mark(登録商標)材料はAsahi Denka Co.から入手可能である。
【0059】
熱可塑性ポリアミド組成物に好ましい共安定剤はHALSである。好ましいHALSとしては、約1000を超える、好ましくは約2000を超える分子量を有する、高分子量オリゴマーまたはポリマーHALSが挙げられる。
【0060】
他の具体的なHALSは、ジ−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート(Tinuvin(登録商標)770,MW481)Nylostab(登録商標)S−EED(Clariant Huningue S.A.);1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリアミン,N,N’’’−[1,2−エタンジイルビス[[[4,6−ビス[ブチル(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニル)アミノ]−1,3,5−トリアジン−2−イル]イミノ]−3,1−プロパンジイル]]−ビス[N’,N’’−ジブチル−N’,N’’−ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニル)(Chimassorb(登録商標)119 MW2286);およびポリ[[6−[(1,1,3,33−テトラメチルブチル)アミノ]−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル][(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)−イミノ]−1,6−ヘキサンジイル[(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)イミノ]](Chimassorb(登録商標)944 MW2000〜3000)からなる群から選択される。
【0061】
第2級アリールアミンとHALSの混合物を使用することができる。好ましい実施形態は、少なくとも2種類の共安定剤を含み、上記で開示されるように、少なくとも1つは、第2級アリールアミンから選択され;少なくとも1つはHALSの群から選択され、共安定剤の混合物の総重量%は、少なくとも0.5重量%、好ましくは少なくとも0.9重量%である。
【0062】
熱可塑性組成物は、(F)2個を超えるヒドロキシル基を有し、かつゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)で決定される2000未満の数平均分子量(Mn)を有する、少なくとも1種の多価アルコール0.25〜5.0重量%をさらに含み得る。
【0063】
多価アルコールは、2個を超えるヒドロキシル基を含有する脂肪族ヒドロキシル化合物、2個を超えるヒドロキシル基を含有する脂肪族−脂環式化合物、2個を超えるヒドロキシル基を含有する脂環式化合物、芳香族およびサッカリドから選択される。
【0064】
多価アルコールにおける脂肪族鎖は、炭素原子のみならず、例えば窒素、酸素および硫黄原子から選択される1種または複数種のへテロ原子も含み得る。多価アルコールに存在する脂環式環は、単環式であるか、または二環式もしくは多環式環構造の一部であることができ、炭素環式または複素環式であってもよい。多価アルコールに存在する複素環式環は、単環式であるか、または二環式もしくは多環式環構造の一部であることができ、例えば窒素、酸素および硫黄原子から選択される1種または複数種のヘテロ原子を含み得る。1種または複数種の多価アルコールは、エーテル、カルボン酸、カルボン酸アミドまたはカルボン酸エステル基などの1種または複数種の置換基を含有し得る。
【0065】
2個を超えるヒドロキシル基を含有する多価アルコールの例としては、限定されないが、トリオール、例えばグリセロール、トリメチロールプロパン、2,3−ジ−(2’−ヒドロキシエチル)−シクロヘキサン−1−オール、ヘキサン−1,2,6−トリオール、1,1,1−トリス−(ヒドロキシメチル)エタン、3−(2’−ヒドロキシエトキシ)−プロパン−1,2−ジオール、3−(2’−ヒドロキシプロポキシ)−プロパン−1,2−ジオール、2−(2’−ヒドロキシエトキシ)−ヘキサン−1,2−ジオール、6−(2’−ヒドロキシプロポキシ)−ヘキサン−1,2−ジオール、1,1,1−トリス−[(2’−ヒドロキシエトキシ)−メチル]−エタン、1,1,1−トリス−[(2’−ヒドロキシプロポキシ)−メチル]−プロパン、1,1,1−トリス−(4’−ヒドロキシフェニル)−エタン、1,1,1−トリス−(ヒドロキシフェニル)−プロパン、1,1,3−トリス−(ジヒドロキシ−3−メチルフェニル)−プロパン、1,1,4−トリス−(ジヒドロキシフェニル)−ブタン、1,1,5−トリス−(ヒドロキシフェニル)−3−メチルペンタン、ジ−トリメチロールプロパン、トリメチロールプロパンエトキシレート、またはトリメチロールプロパンプロポキシレート;ポリオール、例えばペンタエリトリトール、ジペンタエリトリトール、およびトリペンタエリトリトール;サッカリド、例えばシクロデキストリン、D−マンノース、グルコース、ガラクトース、スクロース、フルクトース、キシロース、アラビノース、D−マンニトール、D−ソルビトール、D−またはL−アラビトール、キシリトール、イジトール、タリトール、アリトール、アルトリトール、ギルトール(guilitol)、エリトリトール、トレイトール、およびD−グロン−y−ラクトン等が挙げられる。
【0066】
好ましい多価アルコールとしては、少なくとも1個の原子によって互いに分かれている、それぞれの炭素原子に結合している一対のヒドロキシル基を有するアルコールが挙げられる。特に好ましい多価アルコールは、一対のヒドロキシル基が、1つの炭素原子によって互いに分かれている、それぞれの炭素原子に結合している、アルコールである。
【0067】
好ましくは、熱可塑性組成物で使用される多価アルコールは、ペンタエリトリトール、ジペンタエリトリトール、トリペンタエリトリトール、ジ−トリメチロールプロパン、D−マンニトール、D−ソルビトールおよびキシリトールである。さらに好ましくは、使用される多価アルコールは、ジペンタエリトリトールおよび/またはトリペンタエリトリトールである。最も好ましい多価アルコールはジペンタエリトリトール(DPE)である。
【0068】
様々な実施形態において、熱可塑性組成物中の前記多価アルコールの含有率は、0.25〜5重量%、好ましくは0.5〜3重量%である。多価アルコールが存在する場合、少なくとも2000の数平均分子量(Mn)を有するポリヒドロキシポリマーが、組成物の全重量に対して、好ましくは約0.25〜10重量%、さらに好ましくは約0.5〜6重量%で存在する。
【0069】
熱可塑性組成物は、1種または複数種の補強剤を0〜約60重量%、好ましくは約10〜60重量%、約12.5〜55重量%および15〜50重量%含む。補強剤が10重量%未満存在する場合、少なくとも0.1重量%の1種または複数種の共安定剤が熱可塑性組成物中に存在する。補強剤は、あらゆる充填剤であることができるが、好ましくは、炭酸カルシウム、円形および非円形断面を有するガラス繊維、ガラスフレーク、ガラスビーズ、炭素繊維、タルク、マイカ、珪灰石、か焼クレー、カオリン、珪藻土、硫酸マグネシウム、ケイ酸マグネシウム、硫酸バリウム、二酸化チタン、炭酸ナトリウムアルミニウム、バリウムフェライト、チタン酸カリウムおよびその混合物からなる群から選択される。
【0070】
非円形断面を有するガラス繊維とは、ガラス繊維の縦方向に対して垂直に横たわり、かつ断面の長直線距離に相当する、長軸を有する断面を有するガラス繊維を意味する。非円形断面は、長軸に対して垂直な方向に、断面の最長直線距離に相当する短軸を有する。繊維の非円形断面は、繭型(8の字形)形状、長方形の形状;楕円形の形状;おおよそ三角形の形状;多角形の形状;および矩形の形状などの様々な形状を有する。当業者には理解されるように、断面は他の形状を有し得る。長軸の長さと短軸の長さの比は、好ましくは約1.5:1〜約6:1である。その比は、さらに好ましくは約2:1〜5:1、さらに好ましくは約3:1〜約4:1である。適切なガラス繊維は、欧州特許第0 190 001号明細書および欧州特許第0 196 194号明細書に開示されている。
【0071】
成形または押出し成形熱可塑性物品は任意に、反応性官能基および/またはカルボン酸の金属塩を含むポリマー強化剤0〜50重量%を含む。一実施形態において、成形熱可塑性組成物は、(G)エチレン、グリシジル(メタ)アクリレート、および任意に1種または複数種の(メタ)アクリレートエステルのコポリマー;不飽和カルボン酸無水物でグラフト化されたエチレン/α−オレフィンまたはエチレン/α−オレフィン/ジエンコポリマー;エチレン、2−イソシアナトエチル(メタ)アクリレート、および任意に1種または複数種の(メタ)アクリレートエステルのコポリマー;並びに、相当するイオノマーを形成するためにZn、Li、MgまたはMn化合物と反応させたエチレンおよびアクリル酸のコポリマー;からなる群から選択されるポリマー強化剤2〜20重量%を含む。
【0072】
本明細書では、熱可塑性組成物は、当技術分野で通常使用されている他の添加剤、他のかかる熱安定剤または酸化防止剤、帯電防止剤、発泡剤、潤滑剤、可塑剤、および着色剤および顔料も含んでもよい。
【0073】
他の熱安定剤としては、銅安定剤、およびその混合物が挙げられる。
【0074】
熱可塑性組成物の重要な利点は、従来の銅熱安定剤を使用することなく、高い熱安定性が提供されることである。銅熱安定剤は、高温にて長期間にわたって腐食剤として作用する傾向があり;環境によっては、半芳香族ポリマーの劣化を実際に引き起こす。したがって、他の実施形態は、前記ポリアミド組成物が原子吸光分光法で決定される25ppm未満の銅を含む、成形または押出成形熱可塑性物品である。
【0075】
本明細書において、熱可塑性組成物は、すべてのポリマー成分が適切に混合され、すべての非ポリマー成分がポリマーマトリックス中に適切に分散されている、溶融ブレンドによる混合物である。本発明のポリマー成分および非ポリマー成分の混合に、あらゆる溶融ブレンド法を用いることができる。例えば、ポリマー成分および非ポリマー成分は、一軸スクリュー押出機もしくは二軸スクリュー押出機、撹拌機、一軸スクリューまたは二軸スクリューニーダー、またはバンバリーミキサーなどの溶融混合機に供給され、添加工程は、1度にすべての成分の添加または処理単位での逐次的な添加であることができる。ポリマー成分および非ポリマー成分が処理単位で逐次添加される場合、ポリマー成分および/または非ポリマー成分の一部を最初に添加し、次いで、適切な混合組成物が得られるまで、続いて添加される残りのポリマー成分および非ポリマー成分と溶融混合される。強化用充填剤が長い物理的形状を示す(例えば、長いガラス繊維である)場合、延伸押出し成形を用いて、強化組成物を調製することができる。
【0076】
上記で開示されるポリヒドロキシポリマーを有するポリアミド組成物は、それから製造される成形または押出成形物品の高温での長期熱安定性を高めるのに有用である。物品の長期熱安定性は、様々な試験期間、様々な試験温度で厚さ4mmの試験試料を暴露(エアオーブン老化)することによって評価することができる。本明細書で開示される組成物のオーブン試験温度は210℃、試験期間は500時間;かつ230℃および500時間である。エアオーブン老化後の試験試料をISO527−2/1A試験法に従って、引張り強さおよび破断伸びについて試験し;成形された通りに乾燥された(DAM)同一組成および形状を有する非暴露対照と比較する。DAM対照との比較によって、引張り強さの保持率および/または破断伸びの保持率が得られ、このように、種々の組成物を長期熱安定性性能に関して評価することができる。
【0077】
様々な実施形態において、熱可塑性ポリアミド組成物は、DAM非暴露対照との比較に基づいて、少なくとも50%、好ましくは少なくとも60、70、80、および90%の引張り強さのAOA210℃/500時間保持率を有する。
【0078】
様々な実施形態において、熱可塑性ポリアミド組成物は、DAM非暴露対照との比較に基づいて、210℃/500時間の暴露後に、少なくとも70%;好ましくは少なくとも80、および90%の引張り強さの保持率を有する。
【0079】
他の態様において、本発明は、高温用途での上記に開示されるポリアミド組成物の使用に関する。
【0080】
他の態様において、本発明は、本発明の熱可塑性組成物を造形することによって、物品を製造する方法に関する。物品の例は、フィルム、ラミネート、自動車部品、エンジン部品または電気/電子部品である。「造形」とは、例えば、押出し成形、射出成形、熱成形、圧縮成形または吹込み成形などのあらゆる造形技術を意味する。好ましくは、物品は射出成形または吹込み成形によって造形される。
【0081】
本明細書で開示される成形熱可塑性組成物は、以下の基準;耐衝撃性基準;著しい軽量化(例えば、従来の金属と比較して);耐熱性;オイル環境に対する耐性;冷却材などの化学剤に対する耐性;よりコンパクトな、一体化されたデザインを可能にする騒音低減;のうちの1つまたは複数を満たす多くの車両用構成要素における用途を有し得る。熱可塑性組成物から製造される、具体的な成形または押出し成形熱可塑性物品は、インタークーラー(CAC);シリンダーヘッドカバー(CHC);油受皿;エンジン冷却システム、例えばサーモスタットおよびヒーターハウジングおよびクーラントポンプ;マフラーなどの排気システムおよび触媒コンバータ用ハウジング;空気取入れ口マニホールド(AIM);タイミングチェーンベルトフロントカバー;からなる群から選択される。長期高温暴露に対する所望の機械的耐性の説明的な例として、インタークーラーが挙げられる。インタークーラーは、エンジンの燃焼効率を向上させる車両のラジエータの一部である。ターボチャージャーでの圧縮後、インタークーラーは、給気温度を低減し、空気の密度を増加し、したがって、より多くの空気をシリンダー内に入れて、エンジン効率を高める。入る空気の温度は、インタークーラーに入るときに200℃を超えるため、この部分は、高温下にて長時間、良好な機械的性質を維持する組成物で作られる必要がある。
【0082】
補強剤10重量%未満を有する、本明細書に記載の熱可塑性組成物から製造される、他の具体的な押出成形または成形熱可塑性物品は、液体および気体を輸送するパイプ、パイプ用の内側ライニング、燃料ライン、エアブレーキチューブ、冷却液用パイプ、エアダクト、気送管、油圧ホース、ケーブルカバー、コネクター、キャニスター、およびプッシュプル・ケーブルからなる群から選択される。他の非自動車用途は、ケーブルタイ、および電気/電子コネクターである。
【0083】
本発明はさらに、以下の実施例によって説明される。以下の実施例は、説明のためにのみ記載されており、本発明をそれに制限するために使用されるものではないことを理解されたい。
【実施例】
【0084】
方法
配合方法A
スクリュー回転数約300rpm、押出量13.6kg/時および手動で測定される溶融温度約355℃を用いて、バレル設定約310℃で操作して、30mm二軸スクリュー押出機(Coperion製ZSK30)において、表に示す成分を溶融ブレンドすることによって、PA6T/66を用いた実施例および比較例を調製した。スクリュー側方供給装置を通して、溶融物にガラス繊維を添加した。表に示す成分量は、熱可塑性組成物の全重量に対する重量%で表される。
【0085】
配合混合物をレースまたはストランド状で押出し、水浴で冷却し、顆粒に細断し、水分の吸収を防ぐために、密閉されたアルミニウム裏張りバッグに入れた。冷却および切断条件は、材料の水分レベルが0.15重量%未満に確実に維持されるように調節した。
【0086】
配合方法B
スクリュー回転数約300rpm、押出量110kg/時を用いて約280℃で操作して、40mm二軸スクリュー押出機(Berstorff ZE40)において、表に示す成分を溶融ブレンドすることによって、PA66およびPA66/6Tを用いた実施例および比較例を調製した。スクリュー側方供給装置を通して、溶融物にガラス繊維を添加した。表に示す成分量は、熱可塑性組成物の全重量に対する重量%で表される。
【0087】
配合混合物をレースまたはストランド状で押出し、水浴で冷却し、顆粒に細断し、水分の吸収を防ぐために、密閉されたアルミニウム裏張りバッグに入れた。冷却および切断条件は、材料の水分レベルが0.15重量%未満に確実に維持されるように調節した。
【0088】
物理的性質の測定
機械的引張り特性、すなわち弾性率、破断応力(引張り強さ)および破断ひずみ(破断点伸び)をISO527−2/1Aに従って測定した。射出成形ISO引張り試験片で測定を行った。PA6T/66試験片の金型温度は90〜100℃であり;両方の樹脂の溶融温度は325〜330℃であった。PA66およびPA66/6T金型温度は100℃であり、溶融温度は295〜300℃であった;
【0089】
ISO527/1Aに従って、試験速度5mm/分(引張り強さおよび伸び)にて、試験片の厚さは4mm、幅10mmであった。引張弾性率は1mm/分で測定された。
【0090】
エアオーブン老化(AOA)
ISO2578に詳述される手順に従って、再循環エアオーブン(Heraeus型UT6060)において試験片を暴露、すなわち熱老化した。様々な試験時間で、試験片をオーブンから取り出し、室温に冷却し、試験の準備ができるまで、アルミニウム裏張りバッグ内に密閉した。次いで、Zwick引張り装置を使用して、ISO527に従って、機械的引張り特性を測定した。5つの試験片から得られた平均値を表に示す。
【0091】
引張り強さ(TS)および破断点伸び(EL)の保持率は、100%とみなされる対照片の値と比較して、500時間および1000時間熱老化した後の引張り強さおよび破断点伸びのパーセンテージに相当する。対照片は、試験片と同一組成および形状であるが、成形された通りに乾燥されて試験され、AOA条件にさらされていない。
【0092】
材料
PA6T/66は、HTN502 NC010を意味し、融点310℃を有し、ASTM D2857法に従って範囲0.9〜1.0(一般に0.96)のインヘレント粘度(IV)を有する、E.I.DuPont de Nemours and Company,Wilmington,Delaware,USAから入手可能な、その2つの酸がモル比55:45で使用された、テレフタル酸、アジピン酸、およびヘキサメチレンジアミンから製造されたコポリアミドを意味する。
【0093】
PA66/6Tは、以下の手順に従って提供された、それぞれモル比75/25の1,6−ヘキサン二酸とテレフタル酸、および1,6−ヘキサメチレンジアミンで製造された半芳香族ポリアミドを意味する:従来の消泡剤100g、次亜リン酸ナトリウム20g、重炭酸ナトリウム220g、80%HMD水溶液2476g、および氷酢酸1584gと共に、ポリアミド66塩溶液(pH8.1を有する51.7重量%溶液3928ポンド)およびpH7.6の25.2重量%ポリアミド6T塩溶液2926ポンドをオートクレーブに装入した。次いで、この溶液を加熱すると同時に、圧力を265絶対psiに上昇させ、そのポイントで蒸気を排気し、265絶対psiで圧力を維持し、バッチの温度が250℃に達するまで、加熱を続けた。次いで、圧力をゆっくりと6絶対psiに下げ、それと同時にバッチ温度をさらに280〜290℃に上昇させた。次いで、圧力を6絶対psiに保ち、温度を280〜290℃に20分間保った。最後に、ポリマー溶融物を押出し成形してストランドを形成し、冷却し、ペレットに切断した。得られたポリアミド66/6Tは、融点約268+/−1℃および相対粘度(ASTM D−789法による)42+/−2を有する。
【0094】
ガラス繊維A 長さ4.5mmのチョップトガラス繊維は、Owens Corning Vetrotex,Franceから入手可能なOCV983を意味する。
【0095】
ガラス繊維Dは、PPG Industries,Pittsburgh,PAから入手可能なPPG3540チョップトガラス繊維を意味する。
【0096】
ガラス繊維Eは、Chongqing Polycomp International Corp.,Chongqing,Chinaから入手可能なCPIC 301HPチョップトガラス繊維を意味する。
【0097】
Soarnol(登録商標)Aは、日本合成化学工業株式会社(日本,東京)から入手可能な、ビニルアルコール反復単位約56モル%を有するエチレンビニルアルコールコポリマー(EVOH)を意味する。
【0098】
Soarnol(登録商標)Dは、日本合成化学工業株式会社(日本,東京)から入手可能な、ビニルアルコール反復単位約71モル%を有するエチレンビニルアルコールコポリマー(EVOH)を意味する。
【0099】
DPEは、Di−Penta 93としてPerstorp Speciality Chemicals AB,Perstorp,Swedenから市販されていたジペンタエリトリトールを意味する。
【0100】
EVAL E105Bは、日本のクラレ株式会社から入手可能な、ビニルアルコール反復単位約56モル%を有するエチレンビニルアルコールコポリマーを意味する。
【0101】
EVAL F101Bは、日本のクラレ株式会社から入手可能な、ビニルアルコール反復単位約68モル%を有するエチレンビニルアルコールコポリマーを意味する。
【0102】
銅熱安定剤は、ステアレートワックスバインダー0.5部中のヨウ化カリウム7部とヨウ化銅1部との混合物を意味する。
【0103】
Naugard(登録商標)445ヒンダードアミンは、Uniroyal Chemical Company,Middlebury,Connから市販されている4,4’ジ(α,α−ジメチルベンジル)ジフェニルアミンを意味する。
【0104】
Irganox(登録商標)1098安定剤は、Ciba Speciality Chemicals Inc,Tarrytown,New Yorkから入手可能である。
【0105】
Chimassorb(登録商標)944は、Ciba Specialty Chemicalsから供給されている、(ポリ[[6−[(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ]−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル][(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)−イミノ]−1,6−ヘキサンジイル[(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)イミノ]])を意味する。
【0106】
Chimassorb(登録商標)119は、Ciba Specialty Chemicalsから供給されている、(1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリアミン,N,N’’’−[1,2−エタンジイルビス[[[4,6−ビス[ブチル(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニル)アミノ]−1,3,5−トリアジン−2−イル]イミノ]−3,1−プロパンジイル]]−ビス[N’,N’’−ジブチル−N’,N’’−ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニル))である。
【0107】
黒色顔料Aは、PA66担体中の40重量%ニグロシン黒色顔料濃縮物を意味する。
【0108】
黒色顔料Bは、PA6担体中の25重量%カーボンブラックを意味する。
【0109】
黒色顔料Cは、Clariant Corporationによって製造されている、HTN502H NC010ポリマー中に分散された20重量%カーボンブラックマスターバッチを意味する。
【0110】
Wax OPは、Clariant Corp.,Charlotte,NCによって製造されている潤滑剤である。
【0111】
実施例1〜4およびC−1〜C−3
PA6T/66組成物に関して実施例1〜4および比較例C−1〜C−3の組成を表1に示す。210℃および230℃で500時間および1000時間のAOA後の引張り特性、ならびに物理的性質の保持率を表1に示す。引張り強さ(TS)の値が高くなるほど、機械的性質が良くなることを意味する。引張り強さの保持率(%)が高いほど、熱安定性が相対的に高いことを意味する。
【0112】
表1のデータから、Soarnol(登録商標)D EVOH3重量%および6重量%を有する実施例1および実施例2は、従来の銅安定剤を有する比較例1と同等の引張り強さの保持率(%)を有することが示されている。さらに、実施例1および2は、EVOHを含有しない比較例C−2よりも著しく高い熱安定性を有する。
【0113】
Soarnol(登録商標)A EVOH3重量%および6重量%を有する実施例3および4も、比較例1と同等の引張り強さの保持率(%)を有する。さらに、実施例3および4は、EVOHを含有しない比較例C−2よりも著しく高い熱安定性を有する。
【0114】
これらは意外かつ驚くべき結果であり、低レベルのEVOHコポリマーを含有するPA6T/66組成物が、銅安定剤を使用することなく高い熱安定性を有し得ることが実証されている。
【0115】
【表2】

【0116】
実施例5〜10
実施例5〜10は、PA6T/66組成物の熱安定性に対する、EVOHコポリマーと組み合わせた共安定剤の影響を例証する。
【0117】
実施例5〜10の組成物、210℃および230℃で500時間および1000時間のAOA後の引張り特性、および物理的性質の保持率を表2に示す。
【0118】
実施例5〜7は、PA6T/66組成物の熱安定性に対する、様々なレベルのEVOHの存在下での第2級アリールアミン共安定剤の影響を示す。実施例5〜7は、210℃/500時間のAOAでの引張り強さ保持率83〜85%を示し;つまり、EVOHのみ(実施例1および2は保持率72〜75%を示す)および第2級アリールアミンのみ(C−3は保持率64%を示す)よりも著しく高い。
【0119】
実施例8および10は、2種類の異なる共安定剤、第2級アリールアミン(Naugard(登録商標)445)およびHALS(Chimassorb(登録商標)安定剤)の存在下でのEVOHが、第2級アリールアミンのみ、およびEVOHのみ(実施例5〜7)と比較して熱安定性の向上を示すことを表している。
【0120】
実施例9は、EVOHの存在下でのヒンダードフェノールの影響を示す。
【0121】
【表3】

【0122】
実施例11〜15
実施例11〜15は、ビニルアルコール反復単位50〜60モル%を有するSoarnol(登録商標)A EVOHコポリマーと組み合わせた共安定剤、好ましい実施形態の、PA6T/66組成物の熱安定性に対する影響を例証する。
【0123】
実施例11〜15の組成物;210℃および230℃で500時間および1000時間のAOA後の引張り特性;および引張り特性の保持率(%)を表3に示す。
【0124】
実施例11〜13は、様々なレベルのSoarnol(登録商標)A EVOHの存在下での第2級アリールアミン共安定剤のPA6T/66組成物の熱安定性に対する影響を示す。実施例11〜13は、210℃/500時間のAOA後の引張り強さ保持率87〜100%を示し;Soarnol(登録商標)A(実施例3および4は保持率73〜80%を示す)のみ、および第2級アリールアミンのみ(C−3は保持率64%を示す)よりも著しく高いことを示す。これらは意外かつ驚くべき結果であり、C−1で例証される従来の銅安定剤(保持率77%)と比較して熱安定性の著しい向上を示す。
【0125】
実施例14および15は、2つの異なる共安定剤、第2級アリールアミン(Naugard(登録商標)445)およびHALS(Chimassorb(登録商標)安定剤)の存在下でのSoarnol(登録商標)A EVOHの影響を示す。
【0126】
【表4】

【0127】
実施例16〜18およびC−4
PA66/6T組成物に関して実施例16〜18および比較例C−4の組成を表4に示す。210℃および230℃で500時間および1000時間のAOA後の引張り特性および物理的性質の保持率を表4に示す。
【0128】
実施例16および17から、PA66/6TにおけるEVOH5重量%が、従来の銅安定剤を有するC−4と比較して、同等の引張り強さ保持率(%)を提供することが示されている。さらに、実施例18は、EVOHの存在下での第2級アリールアミン共安定剤の効果を示す。実施例18は、従来の銅安定化組成物(C−4);および安定剤としてEVOHのみを含有する実施例16および17と比較して、熱安定性の有意かつ驚くべき向上を示す。
【0129】
【表5】

【0130】
実施例3、19およびC−5〜C−6
PA6T/66組成物に関して、実施例3および19、比較例C−5およびC−6の組成を表5に示す。210℃および230℃で500時間および1000時間のAOA後の引張り特性を表5に示す。DPEとSoarnol Aの組み合わせを含む実施例19は、実施例3(Soarnol Aのみ含有する)で約60%;安定剤としてDPEのみ含有するC−6で約67%;安定剤としてNaugard(登録商標)445を0.25%のみ含有するC−3で60%の保持率と比較して、210℃で1000時間のAOA後の引張り強さ保持率90%を示す(表1参照)。これは、DPEとEVOH(Soarnol A)の組み合わせが、DPEまたはEVOHのみよりも、AOA性能の意外かつ驚くべき向上を示すことを意味する。
【0131】
【表6】

【0132】
実施例19〜21
PA6T/66組成物に関して、実施例19〜21の組成を表6に示す。210℃および230℃で500時間および1000時間のAOA後の引張り特性、および物理的性質の保持率を表6に示す。実施例20および21は、ポリマー強化剤、Soarnol AおよびDPEを含む。実施例20〜21のAOA後の引張り強さ保持率は、強化剤が存在しない実施例19よりも高い、またはそれと同等である。
【0133】
【表7】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
A)融点および/またはガラス転移を有するポリアミド樹脂;
B)少なくとも2000の数平均分子量(Mn)を有し、かつエチレン/ビニルアルコールコポリマーおよびポリ(ビニルアルコール)からなる群から選択される、少なくとも1種類の多価ポリマー0.25〜20重量%;
C)融点が存在する場合には前記ポリアミド樹脂の前記融点から30℃を超えて低い温度であり、または前記融点が存在しない場合には少なくとも250℃である、熱重量分析によって決定される10%重量減少温度を有する1種または複数種の共安定剤であって、第2級アリールアミン、ヒンダードアミン光安定剤、ヒンダードフェノール、およびその混合物からなる群から選択される1種または複数種の共安定剤0〜3重量%;
D)1種または複数種の補強剤0〜約60重量%;
を含む熱可塑性組成物であって、
すべての重量%が、前記熱可塑性組成物の全重量に対するものであり、かつ前記ポリアミド樹脂が、
少なくとも210℃の前記融点を有し、かつ
(aa)i.炭素原子8〜20個を有する芳香族ジカルボン酸および炭素原子4〜20個を有する脂肪族ジアミン;
からなる群のうちの1種または複数種から選択されるモノマーから誘導される半芳香族反復単位約20〜約35モル%;および
(bb)ii.炭素原子6〜20個を有する脂肪族ジカルボン酸および炭素原子4〜20個を有する前記脂肪族ジアミン;および
iii.炭素原子4〜20個を有するラクタムおよび/またはアミノカルボン酸;
からなる群のうちの1種または複数種から選択されるモノマーから誘導される脂肪族反復単位約65〜約80モル%;
を含む、(III)群ポリアミドと、
(cc)(i)炭素原子8〜20個を有する芳香族ジカルボン酸および炭素原子4〜20個を有する脂肪族ジアミン;
からなる群のうちの1種または複数種から選択されるモノマーから誘導される半芳香族反復単位約50〜約95モル%;および
(dd)(ii)炭素原子6〜20個を有する脂肪族ジカルボン酸および炭素原子4〜20個を有する前記脂肪族ジアミン;および
(iii)炭素原子4〜20個を有するラクタムおよび/またはアミノカルボン酸;
からなる群のうちの1種または複数種から選択されるモノマーから誘導される脂肪族反復単位約5〜約50モル%;
を含む、(IV)群ポリアミドと、
少なくとも260℃の前記融点を有し、かつ
(ee)i.炭素原子8〜20個を有する芳香族ジカルボン酸および炭素原子4〜20個を有する脂肪族ジアミン;
からなる群のうちの1種または複数種から選択されるモノマーから誘導される、95モル%を超える半芳香族反復単位;および
(ff)ii.炭素原子6〜20個を有する脂肪族ジカルボン酸および炭素原子4〜20個を有する前記脂肪族ジアミン;および
iii.炭素原子4〜20個を有するラクタムおよび/またはアミノカルボン酸;
からなる群のうちの1種または複数種から選択されるモノマーから誘導される脂肪族反復単位5モル%未満;
を含む、(V)群ポリアミドと、
融点を持たず、かつポリ(ヘキサメチレンイソフタルアミド/ヘキサメチレンテレフタルアミド)(6I/6T)およびポリ(ヘキサメチレンイソフタルアミド/ヘキサメチレンテレフタルアミド/ヘキサメチレンヘキサンジアミド)(6I/6T/66)からなる群から選択される、(VI)群ポリアミドと、
からなる群から選択され、
但し、前記1種または複数種の補強剤が10重量%未満存在する場合には、前記1種または複数種の共安定剤も少なくとも0.1重量%存在することを条件とする、熱可塑性組成物。
【請求項2】
前記ポリアミド樹脂が、(III)群ポリアミドである、請求項1に記載の熱可塑性組成物。
【請求項3】
前記ポリアミド樹脂が、(IV)群ポリアミドである、請求項1に記載の熱可塑性組成物。
【請求項4】
前記ポリアミド樹脂が、(V)群ポリアミドである、請求項1に記載の熱可塑性組成物。
【請求項5】
前記ポリアミド樹脂が、(VI)群ポリアミドである、請求項1に記載の熱可塑性組成物。
【請求項6】
(E)210℃未満の融点を有し、かつポリ(ペンタメチレンデカンジアミド)(PA510)、ポリ(ペンタメチレンドデカンジアミド)(PA512)、ポリ(ε−カプロラクタム/ヘキサメチレンヘキサンジアミド)(PA6/66)、ポリ(ε−カプロラクタム/ヘキサメチレンデカンジアミド)(PA6/610)、ポリ(ε−カプロラクタム/ヘキサメチレンドデカンジアミド)(PA6/612)、ポリ(ヘキサメチレントリデカンジアミド)(PA613)、ポリ(ヘキサメチレンペンタデカンジアミド)(PA615)、ポリ(ε−カプロラクタム/テトラメチレンテレフタルアミド)(PA6/4T)、ポリ(ε−カプロラクタム/ヘキサメチレンテレフタルアミド)(PA6/6T)、ポリ(ε−カプロラクタム/デカメチレンテレフタルアミド)(PA6/10T)、ポリ(ε−カプロラクタム/ドデカメチレンテレフタルアミド)(PA6/12T)、ポリ(ヘキサメチレンデカンジアミド/ヘキサメチレンテレフタルアミド)(PA610/6T)、ポリ(ヘキサメチレンドデカンジアミド/ヘキサメチレンテレフタルアミド)(PA612/6T)、ポリ(ヘキサメチレンテトラデカンジアミド/ヘキサメチレンテレフタルアミド)(PA614/6T)、ポリ(ε−カプロラクタム/ヘキサメチレンイソフタルアミド/ヘキサメチレンテレフタルアミド)(PA6/6I/6T)、ポリ(ε−カプロラクタム/ヘキサメチレンヘキサンジアミド/ヘキサメチレンデカンジアミド)(PA6/66/610)、ポリ(ε−カプロラクタム/ヘキサメチレンヘキサンジアミド/ヘキサメチレンドデカンジアミド)(PA6/66/612)、ポリ(ε−カプロラクタム/ヘキサメチレンヘキサンジアミド/ヘキサメチレンデカンジアミド/ヘキサメチレンドデカンジアミド)(PA6/66/610/612)、ポリ(2−メチルペンタメチレンヘキサンジアミド/ヘキサメチレンヘキサンジアミド/ヘキサメチレンテレフタルアミド)(PAD6/66//6T)、ポリ(2−メチルペンタメチレンヘキサンジアミド/ヘキサメチレンヘキサンジアミド/)(PAD6/66)、ポリ(デカメチレンデカンジアミド)(PA1010)、ポリ(デカメチレンドデカンジアミド)(PA1012)、ポリ(デカメチレンデカンジアミド/デカメチレンテレフタルアミド)(PA1010/10T)ポリ(デカメチレンデカンジアミド/ドデカメチレンデカンジアミド/デカメチレンテレフタルアミド/ドデカメチレンテレフタルアミド(PA1010/1210/10T/12T)、ポリ(11−アミノウンデカンアミド)(PA11)、ポリ(11−アミノウンデカンアミド/テトラメチレンテレフタルアミド)(PA11/4T)、ポリ(11−アミノウンデカンアミド/ヘキサメチレンテレフタルアミド)(PA11/6T)、ポリ(11−アミノウンデカンアミド/デカメチレンテレフタルアミド)(PA11/10T)、ポリ(11−アミノウンデカンアミド/ドデカメチレンテレフタルアミド)(PA11/12T)、ポリ(12−アミノドデカンアミド)(PA12)、ポリ(12−アミノドデカンアミド/テトラメチレンテレフタルアミド)(PA12/4T)、ポリ(12−アミノドデカンアミド/ヘキサメチレンテレフタルアミド)(PA12/6T)、ポリ(12−アミノドデカンアミド/デカメチレンテレフタルアミド)(PA12/10T)ポリ(ドデカメチレンドデカンジアミド)(PA1212)、およびポリ(ドデカメチレンドデカンジアミド/ドデカメチレンドデカンジアミド/ドデカメチレンテレフタルアミド))(PA1212/12T)からなる群から選択される脂肪族または半芳香族ポリアミドを含む、(I)群ポリアミドと、
少なくとも210℃の融点を有し、かつポリ(テトラメチレンヘキサンジアミド)(PA46)、ポリ(ε−カプロラクタム)(PA6)、ポリ(ヘキサメチレンヘキサンジアミド/(ε−カプロラクタム/)(PA66/6)ポリ(ヘキサメチレンヘキサンジアミド)(PA66)、ポリ(ヘキサメチレンヘキサンジアミド/ヘキサメチレンデカンジアミド)(PA66/610)、ポリ(ヘキサメチレンヘキサンジアミド/ヘキサメチレンドデカンジアミド)(PA66/612)、ポリ(ヘキサメチレンヘキサンジアミド/デカメチレンデカンジアミド)(PA66/1010)、ポリ(ヘキサメチレンデカンジアミド)(PA610)、ポリ(ヘキサメチレンドデカンジアミド)(PA612)、ポリ(ヘキサメチレンテトラデカンジアミド)(PA614)、ポリ(ヘキサメチレンヘキサデカンジアミド)(PA616)、およびポリ(テトラメチレンヘキサンジアミド/2−メチルペンタメチレンヘキサンジアミド)(PA46/D6)からなる群から選択される脂肪族ポリアミドを含む、(II)群ポリアミドと、からなる群から独立して選択される1種または複数種のブレンドポリアミド0.1〜30重量%;
をさらに含む、請求項1に記載の熱可塑性組成物。
【請求項7】
前記1種または複数種のポリヒドロキシポリマーが、エチレン/ビニルアルコールコポリマーを含み、かつビニルアルコール含有率40〜75モル%を有し、残りのモル%がエチレンである、請求項1に記載の熱可塑性組成物。
【請求項8】
前記少なくとも1種類の共安定剤が、1種または複数種の第2級アリールアミンである、請求項1に記載の熱可塑性組成物。
【請求項9】
前記少なくとも1種類の共安定剤が、1種または複数種のヒンダードフェノールである、請求項1に記載の熱可塑性組成物。
【請求項10】
(F)2個を超えるヒドロキシル基を有し、かつ2000未満の数平均分子量(Mn)を有する、少なくとも1種類の多価アルコール0.25〜5.0重量%をさらに含む、請求項1に記載の熱可塑性組成物。
【請求項11】
炭酸カルシウム、円形および非円形断面を有するガラス繊維、ガラスフレーク、ガラスビーズ、炭素繊維、タルク、マイカ、珪灰石、か焼クレー、カオリン、珪藻土、硫酸マグネシウム、ケイ酸マグネシウム、硫酸バリウム、二酸化チタン、炭酸ナトリウムアルミニウム、バリウムフェライト、チタン酸カリウムおよびその混合物からなる群から選択される補強剤10〜60重量%を含む、請求項1に記載の熱可塑性組成物。
【請求項12】
(G)エチレン、グリシジル(メタ)アクリレート、および任意に1種または複数種の(メタ)アクリル酸エステルのコポリマー;不飽和カルボン酸無水物でグラフトされたエチレン/α−オレフィンまたはエチレン/α−オレフィン/ジエンコポリマー;エチレン、2−イソシアナトエチル(メタ)アクリレート、および任意に1種または複数種の(メタ)アクリル酸エステルのコポリマー;並びに、相当するイオノマーを形成するためにZn、Li、MgまたはMn化合物と反応させたエチレンとアクリル酸のコポリマーからなる群から選択されるポリマー強化剤2〜20重量%をさらに含む、請求項1に記載の熱可塑性組成物。
【請求項13】
前記熱可塑性ポリアミド組成物が、原子吸光分光法で決定される、25ppm未満の銅を含む、請求項1に記載の熱可塑性組成物。
【請求項14】
インタークーラー;シリンダーヘッドカバー;油受皿;エンジン冷却システム、サーモスタットおよびヒーターハウジング、クーラントポンプ、マフラー、触媒コンバータ用ハウジング;空気取入れ口マニホールド;およびタイミングチェーンベルトフロントカバー;からなる群から選択される、請求項1に記載の熱可塑性組成物。

【公表番号】特表2013−501094(P2013−501094A)
【公表日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−522994(P2012−522994)
【出願日】平成22年7月28日(2010.7.28)
【国際出願番号】PCT/US2010/043515
【国際公開番号】WO2011/014548
【国際公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】