説明

ポリビニルアセタール樹脂組成物及びその製造方法

【課題】ナノダイヤモンド及び/又はカーボンナノチューブが高い濃度で均一に分散したポリビニルアセタール樹脂分散物、並びにその樹脂分散物を簡便に製造する方法を提供する。
【解決手段】ポリビニルアセタール樹脂と、ナノダイヤモンド及び/又はカーボンナノチューブとを含有する樹脂組成物であって、ポリビニルアセタール樹脂に対して、ナノダイヤモンド及びカーボンナノチューブの合計が0.1〜30質量%であることを特徴とするポリビニルアセタール樹脂組成物、及びナノダイヤモンド及び/又はカーボンナノチューブを分散したポリビニルアルコール溶液と、アルデヒドとを、水及び/又は有機溶剤中で酸触媒存在下にてアセタール化反応させる工程を有することを特徴とするポリビニルアセタール樹脂組成物の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリビニルアセタール樹脂とナノダイヤモンド及び/又はカーボンナノチューブとを含有する樹脂組成物、並びにその樹脂組成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリビニルアセタール樹脂は、透明性、靭性に優れる材料であるが、その一方で、剛性や表面硬度が十分でないために、広範囲な用途に用いることは困難であった。そのため、これらの物性が改善されたバランスの良い透明材料を提供することが求められている。
【0003】
透明な熱可塑性樹脂には、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)を主体とするメタクリル樹脂や、ポリカーボネート(PC)樹脂等が一般的に良く知られている。しかし、PMMAを主体とするメタクリル樹脂は、透明性、剛性、表面硬度が優れるものの、靭性が著しく不足する欠点がある。また、PCは、透明性、靭性に優れるものの、剛性及び表面硬度が著しく不足するという欠点がある。これらの透明材料の課題を改善する方法として、透明な熱可塑性樹脂と無機材料との複合化が近年検討されている。
【0004】
特開2008-255226号(特許文献1)には、ポリビニルアセタール樹脂とフュームドシリカとを含有する樹脂組成物であって、ポリビニルアセタール樹脂100重量部に対してフュームドシリカ4〜60重量部を含有する樹脂組成物が開示されており、前記樹脂組成物は、ポリビニルアセタール樹脂とフュームドシリカとを、ローラーミキサー、二軸押出機等の混練装置で溶融混練することにより製造すると記載されている。しかしながら、ポリビニルアセタール樹脂に、フュームドシリカ等の充填材を混練機等によって均一に分散させるには高い剪断をかけて長時間にわたって混練しなければならず、また60重量部という高い濃度でフュームドシリカ等の充填材をポリビニルアセタール樹脂に均一に分散させるのは凝集等の問題のため非常に困難である。
【0005】
また従来から、帯電防止等の目的のために、カーボンブラック、炭素繊維等の導電性フィラーを樹脂に含有させ導電性を付与する方法が知られている。
【0006】
特開2008-255226号(特許文献2)には、ポリビニルアセタール等の樹脂及びナノスケールカーボンチューブを含有する樹脂組成物であって、前記ナノスケールカーボンチューブの最外面を構成する炭素網面の長さが500 nm以下であり、樹脂組成物が、ナノスケールカーボンチューブの凝集物を実質的に含有しておらず、ナノスケールカーボンチューブが樹脂組成物全体にわたって均一に分散していることを特徴とする樹脂組成物を開示しており、前記樹脂組成物は、ナノスケールカーボンチューブ及び樹脂を含む混合物を混練し、ペレット化することで製造すると記載されている。しかしながら、ポリビニルアセタール樹脂に、ナノスケールカーボンチューブを混練機等によって均一に分散させるには高い剪断をかけて長時間にわたって混練しなければならず、またナノスケールカーボンチューブを高い濃度でポリビニルアセタール樹脂に均一に分散させるのは凝集等の問題のため非常に困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008-255226号
【特許文献2】特開2004-124086号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、本発明の目的は、ナノダイヤモンド及び/又はカーボンナノチューブが高い濃度で均一に分散したポリビニルアセタール樹脂分散物、並びにその樹脂分散物を簡便に製造する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的に鑑み鋭意研究の結果、本発明者は、ポリビニルアルコールへの分散性に優れたナノダイヤモンド及び/又はカーボンナノチューブを用いて、前記ナノダイヤモンド及び/又はカーボンナノチューブが分散したポリビニルアルコール溶液からポリビニルアセタール樹脂を製造することによって、ナノダイヤモンド及び/又はカーボンナノチューブが高濃度で均一に分散したポリビニルアセタール樹脂を簡便に得ることができることを見出し、本発明に想到した。
【0010】
すなわち、本発明のポリビニルアセタール樹脂組成物は、ポリビニルアセタール樹脂と、ナノダイヤモンド及び/又はカーボンナノチューブとを含有し、ポリビニルアセタール樹脂に対して、ナノダイヤモンド及びカーボンナノチューブの合計が0.1〜30質量%であることを特徴とする。
【0011】
ポリビニルアセタール樹脂と、ナノダイヤモンド及び/又はカーボンナノチューブとを含有する樹脂組成物を製造する本発明の方法は、ナノダイヤモンド及び/又はカーボンナノチューブを分散したポリビニルアルコール溶液と、アルデヒドとを、水及び/又は有機溶剤中で酸触媒存在下にてアセタール化反応させる工程を有することを特徴とする。
【0012】
ポリビニルアセタール樹脂と、ナノダイヤモンド及び/又はカーボンナノチューブとを含有する樹脂組成物を製造する本発明のもう一つの方法は、ポリビニルアセタール樹脂と、ナノダイヤモンド及び/又はカーボンナノチューブとを混練することを特徴とする。
【0013】
混練に用いる前記ポリビニルアセタール樹脂は、10モル%以上の水酸基を有するのが好ましい。
ただし、前記水酸基のモル%は、以下の式:
水酸基(モル%)=[(残存する水酸基のモル数)/(原料ポリビニルアルコール中の水酸基及びアセチル基の合計モル数)]×100
で表される。
【0014】
前記ナノダイヤモンドは爆射法によって得られたものであるのが好ましい。
【0015】
前記カーボンナノチューブはカップスタック型であるのが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】酸化処理Bによって得られた精製ナノダイヤモンド及び処理前のグラファイト相を有するナノダイヤモンドの赤外吸収スペクトルの一例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
1.組成
本発明の方法により得られるポリビニルアセタール樹脂組成物は、ナノダイヤモンド及び/又はカーボンナノチューブが樹脂中に均一に分散されたものであり、ポリビニルアセタール樹脂の合成時(アセタール化反応時)にナノダイヤモンド及び/又はカーボンナノチューブを、ポリビニルアセタール樹脂合成の原料であるポリビニルアルコールの溶液に分散物させて添加することにより得られる。
【0018】
ポリビニルアセタール樹脂組成物中のナノダイヤモンド及び/又はカーボンナノチューブの含有量は、ポリビニルアセタール樹脂組成物の使用目的によって適宜調節することが可能であり、ナノダイヤモンド及びカーボンナノチューブの合計として0.1〜30質量%の範囲であるのが好ましく、1〜25質量%の範囲であるのがより好ましく、1〜20質量%の範囲であるのが最も好ましい。特に、ポリビニルアセタール樹脂組成物をマスターチップとして製造する場合は、1〜30質量%含有させるのが好ましい。また、カーボンナノチューブを帯電防止等の目的で添加する場合は、0.1〜20質量%であるのが好ましい。
【0019】
ポリビニルアセタール樹脂組成物中の、ナノダイヤモンドとカーボンナノチューブとの比率は、ポリビニルアセタール樹脂組成物の使用目的に応じて好ましい比率を設定することができる。特にポリビニルアセタール樹脂の硬度を高めることを目的とする場合は、ナノダイヤモンドのみ、又はナノダイヤモンドが主となるような添加比率を採用するのが好ましく、一方、ポリビニルアセタール樹脂の導電性を高めることを目的とする場合は、カーボンナノチューブのみ、又はカーボンナノチューブが主となるような添加比率を採用するのが好ましい。
【0020】
(1)ポリビニルアセタール樹脂
ポリビニルアセタール樹脂は、ポリビニルアルコール(PVA)とアルデヒドとを、水及び/又は有機溶剤中で酸触媒存在下にてアセタール化反応させ、必要に応じて中和し、洗浄した後、乾燥することにより得ることができる。アセタール化反応により得られるポリビニルアセタール樹脂の構造は下記式(I)で表される。
【0021】
【化1】


【0022】
上記式(I)中、k+l+m=1であり、Rはアセタール化反応に用いたアルデヒドの残基を表す。このとき、2種以上のアルデヒドを併用しても構わない。上記式において、各結合の配列の仕方は特に制限されず、ブロック的であっても、ランダム的であってもよい。
【0023】
(2)ナノダイヤモンド
ナノダイヤモンドは、爆射法で得られた未精製のナノダイヤモンドを酸化処理して得られる30〜250 nm(動的光散乱法)のメジアン径を有するものが好ましい。爆射法で得られた未精製のナノダイヤモンドを含む微粒子は、ナノダイヤモンドの表面をグラファイト系炭素が覆ったコア/シェル構造を有しており、黒く着色している。このまま用いても良いが、より着色の少ないポリビニルアセタール樹脂組成物を得るためには、ナノダイヤモンドを含む微粒子を酸化処理し、前記グラファイト相の一部又はほぼ全部を除去して用いるのが好ましい。
【0024】
酸化処理して得られたナノダイヤモンドは、2〜10 nm程度のナノサイズのダイヤモンドの一次粒子からなるメジアン径30〜250 nm(動的光散乱法)の二次粒子である。グラファイト相を除去することにより、着色成分はほとんどなくなるが、図1に示すように、微量に残ったグラファイト系炭素の表面に存在する-COOH、-OH等の親水性官能基のため、親水的な溶剤に速やかに分散させることができる。ナノダイヤモンドを安定に分散することのできる溶剤としては、水、エチレングリコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、ノルマルプロピルアルコール、ノルマルブチルグリコール、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジメチルホルムアミド等が挙げられる。特にエチレングリコールは、ナノダイヤモンドに対する親和性が極めて良好であり、安定な分散物を与える。
【0025】
(3)カーボンナノチューブ
カーボンナノチューブは、グラファイトを筒状に巻いた形状を有する炭素材料であり、1〜1500 nmの直径、及び数nmから1 mm程度の長さを有する。本発明で用いるカーボンナノチューブの形状は、特に限定されないが、直径1〜1000 nmが好ましく、5〜500 nmがより好ましく、10〜300 nmが最も好ましく、長さは10 nmから5 μmが好ましく、20 nmから1 μmがより好ましい。カーボンナノチューブには単層のもの、多層構造になったもの、カップスタック状のもの等があるが、本発明に使用するカーボンナノチューブは、カップスタック状の構造を有するものが好ましい。
【0026】
カップスタック型カーボンナノチューブは、底のないカップ形状をなす炭素網層が数個〜数百個積層した炭素繊維であり、繊維の内外壁に炭素網層の端面が露出した構造を有している。炭素網層の端面は水酸基やカルボキシル基等の官能基が多く活性度が高いと考えられるため、カップスタック型カーボンナノチューブは各種溶剤、樹脂等との親和性に非常に優れている。
【0027】
カップスタック型カーボンナノチューブは、市販のもの、国際公開第2008/004347号、特開2003-147644号、Qingfeng Liu et al. “Synthesis, Purification and Opening of Short Cup-Stacked Carbon Nanotubes”, Journal of Nanoscience and Nanotechnology, vol. 9, 4554-4560, 2009等に記載のものを用いることができる。
【0028】
カップスタック型カーボンナノチューブを安定に分散することのできる溶剤としては、エチレングリコール、エチレングリコールモノブチルエーテル、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、ノルマルプロピルアルコール、ノルマルブチルグリコール等が挙げられる。
【0029】
(4)その他の添加剤
樹脂組成物には、発明の効果を阻害しない範囲で必要に応じて各種の添加剤、例えば、酸化防止剤、安定剤、紫外線吸収剤、滑剤、難燃剤、加工助剤、帯電防止剤、着色剤、耐衝撃助剤、接着力調整剤、充填剤、耐湿剤が添加されていても良い。なお、剛性に優れた成形品を得るためには、可塑剤を実質的に含まないのが好ましい。
【0030】
(5) 樹脂組成物の特性
樹脂組成物は、厚さ1 mmに成形した場合に、可視光線透過率が80%以上であるのが好ましい。可視光線透過率が80%以上であることによって、透明材料として広く使用することができる。可視光線透過率は、より好適には85%以上である。また、厚さ1 mmに成形した場合に、ヘイズ値が10%以下であるのが好ましい。ヘイズ値が10%以下であることによって、透明材料として広く使用することができる。ヘイズ値は、より好適には5%以下である。
【0031】
樹脂組成物を成形することで、成形品が得られる。成形方法は特に限定されないが、溶融成形するのが好ましい。溶融成形としては、押出成形、射出成形などの各種の成形方法を採用することができる。また、他の素材との積層体にすることもできる。
【0032】
前記成形品は、その表面の鉛筆硬度がF以上であるのが好ましい。鉛筆硬度がF以上であることによって、表面に摩擦による傷が発生するのを抑制できる。一般に、透明な成形品はその表面に傷が発生して透明性が損なわれることを嫌うので、この点は重要である。鉛筆硬度は、より好適にはH以上である。
【0033】
前記成形品は、透明性、靭性、剛性及び表面硬度に優れているので、透明性と力学特性が要求される様々な成形品、例えば、フィルム、シート又は射出成形品として用いられる。透明性と力学特性上の要請から、現状ではアクリル樹脂やポリカーボネート樹脂等が用いられているような用途に、好適に用いることができる。このような用途としては、例えば、高速道路等の遮音壁等の壁材や窓材等の建材、光学レンズや映像レンズ等の光学部材、車両用部材、家電用部材、食品用包装用トレーや蓋材、カップが挙げられる。
【0034】
また樹脂組成物は、プラスチック、ガラス等の基材表面にコートすることにより、前記プラスチック、ガラス等の基材の耐衝撃性を著しく高めることが可能である。特に、ダイヤモンドは高い屈折率を有するため、例えば、ナノダイヤモンドを含有するポリビニルアセタール樹脂組成物をプラスチックレンズ等のコート材として用いることにより、高い屈折率のコート層を設けることができ、前記プラスチックレンズ等の光学性能に対して悪影響を与えずに耐衝撃性を付与することが可能である。また、さらにナノダイヤモンドの含有量を変えた、屈折率の異なるコート層を積層し、濃度勾配を付与した表面コート層を形成することにより、反射防止効果の付与、レンズの薄層化等が可能である。
【0035】
2.製造方法
[1]ポリビニルアセタール樹脂組成物
(1)ナノダイヤモンド及び/又はカーボンナノチューブを分散させたポリビニルアルコール溶液を使用する方法
ポリビニルアセタール樹脂組成物は、ナノダイヤモンド及び/又はカーボンナノチューブを分散させたポリビニルアルコール(PVA)溶液とアルデヒドとを、水及び/又は有機溶剤中で酸触媒存在下にてアセタール化反応させ、必要に応じて中和し、洗浄した後、乾燥することにより得ることができる。特に爆射法で得られたナノダイヤモンド及び/又はカップスタック型カーボンナノチューブは前述のようにアルコール等の親水的溶媒への分散性に優れているため、PVAに容易に分散させることができ、上記方法によりナノダイヤモンド及び/又はカーボンナノチューブが高い濃度で均一に分散されたポリビニルアセタール樹脂組成物が得られる。アセタール化反応により得られるポリビニルアセタール樹脂の構造は下記式(I)に表される。
【0036】
【化2】


【0037】
上記式(I)中、k+l+m=1であり、Rはアセタール化反応に用いたアルデヒドの残基を表す。このとき、2種以上のアルデヒドを併用しても構わない。上記式において、各結合の配列の仕方は特に制限されず、ブロック的であっても、ランダム的であってもよい。
【0038】
PVAへのナノダイヤモンド及び/又はカーボンナノチューブの添加量は、最終的に得られるポリビニルアセタール樹脂100質量%に対して、ナノダイヤモンド及びカーボンナノチューブの合計が0.1〜30質量%となるようにする。
【0039】
ポリビニルアセタール樹脂のアセタール化度は、好ましくは55〜83モル%である。アセタール化度が55モル%未満のポリビニルアセタール樹脂は製造工程が煩雑になって製造コストが高くなるとともに溶融加工性も低下することから好ましくない。一方、83モル%を超えてPVAをアセタール化しようとすれば、アセタール化反応の時間を長くすることが必要になり経済的に不利になる。
【0040】
ここで、アセタール化度(モル%)は、以下の式:
アセタール化度(モル%)=[(アセタール化された水酸基のモル数)/(原料ポリビニルアルコール中の水酸基及びアセチル基の合計モル数)]×100
によって表され、前記式(I)のk、l及びmを用いて、[2k/(2k+l+m)]×100(モル%)と表される。
【0041】
ポリビニルアセタール樹脂の製造に用いられるPVAは、特に限定されず、ポリ酢酸ビニル等をアルカリ触媒又は酸触媒を用いてけん化することにより製造されたもの等、従来公知のPVAを用いることができる。PVAは完全にけん化されたものであっても、部分的にけん化されたものであってもよい。けん化度は、80モル%以上であるのが好ましく、90モル%以上であるのがより好ましく、95モル%以上であるのがさらに好ましい。PVAは1種類のものを単独で使用してもよいし、2種類以上を混合して使用してもよい。PVAとして、エチレン-ビニルアルコール共重合体、部分けん化エチレン-ビニルアルコール共重合体等の、ビニルアルコールと共重合可能なモノマーとの共重合体を用いることもできる。さらに、一部にカルボン酸等の官能基が導入された変性PVAを用いることもできる。
【0042】
ポリビニルアセタール樹脂の製造に用いられるPVAは、平均重合度が200〜4000であるのが好ましい。より好ましくは200〜3000、さらに好ましくは300〜2000である。PVAの平均重合度が200以下であると、得られる成形品の力学物性が低下する。一方、平均重合度が4000を越えるPVAを用いることにより、ポリビニルアセタール樹脂の平均重合度が4000を越えると、溶融粘度が高くなりすぎるため溶融混練や成形等の操作が困難となる。平均重合度は、けん化されていない部分(酢酸ビニル基)をあらかじめ水酸化ナトリウムを用いて完全にけん化した後、粘度計を用いて水との相対粘度を求め、相対粘度から計算によって算出される(JIS K6726を参照)。
【0043】
ポリビニルアセタール樹脂の製造に用いられるアルデヒドは特に限定されず、ホルムアルデヒド(パラホルムアルデヒドを含む)、アセトアルデヒド(パラアセトアルデヒドを含む)、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒド、アミルアルデヒド、ヘキシルアルデヒド、ヘプチルアルデヒド、2-エチルヘキシルアルデヒド、シクロヘキシルアルデヒド、フルフラール、グリオキザール、グルタルアルデヒド、ベンズアルデヒド、2-メチルベンズアルデヒド、3-メチルベンズアルデヒド、4-メチルベンズアルデヒド、p-ヒドロキシベンズアルデヒド、m-ヒドロキシベンズアルデヒド、フェニルアセトアルデヒド、β-フェニルプロピオンアルデヒド等が挙げられる。これらのアルデヒドは単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。上記アルデヒドとして、工業的な入手性、製造の容易性などの観点から、ブチルアルデヒドが特に好ましく用いられる。即ち、ポリビニルアセタール樹脂がポリビニルブチラールであることが特に好ましい。このとき、ブチルアルデヒドを主として用い、他のアルデヒドを併用しても良い。
【0044】
PVAのアセタール化反応、中和、脱水、洗浄は、特に制限されるものでなく、公知の方法で行うことができる。例えば、ナノダイヤモンド及び/又はカーボンナノチューブを分散させたPVAの水溶液とアルデヒドとを酸触媒の存在下、アセタール化反応させて樹脂粒子を析出させる水媒法、ナノダイヤモンド及び/又はカーボンナノチューブ、並びにPVAを有機溶媒中に分散させ、酸触媒下でアルデヒドとアセタール化反応させ、この反応液をポリビニルアセタール樹脂に対して貧溶媒である水等に析出させる溶媒法等を適用することができる。本願発明において、爆射法によって得られたナノダイヤモンド、及び/又はカップスタック型カーボンナノチューブを使用する場合、これらのナノダイヤモンド及びカーボンナノチューブは親水的な溶媒に対する分散性が高いため、前記水媒法を採用するのが好ましい。
【0045】
これらの方法により得られたスラリーは、酸触媒により酸性を呈しているため、必要に応じて、水酸化ナトリウムや炭酸ナトリウムなどのアルカリ性の中和剤を添加して、pHが5〜9、好ましくは6〜9、さらに好ましくは6〜8となるように調整する。次いで、脱水と洗浄を行い、乾燥することにより、パウダー状、顆粒状又はペレット状のポリビニルアセタール樹脂を得ることができる。
【0046】
使用する酸触媒は特に限定されず、酢酸、p-トルエンスルホン酸等の有機酸類、又は硝酸、硫酸、塩酸等の無機酸類が挙げられる。アセタール化反応後の中和剤は特に限定されないが、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア、酢酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム等のアルカリ類、エチレンオキサイド等のアルキレンオキサイド類、エチレングリコールジグリシジルエーテル等のグリシジルエーテル類が挙げられる。
【0047】
(2)ポリビニルブチラール樹脂に混練する方法
ポリビニルアセタール樹脂組成物は、ポリビニルアセタール樹脂と、ナノダイヤモンド及び/又はカーボンナノチューブとを、ローラーミキサー、二軸押出機等の公知の混練装置で溶融混練して作製することができる。この場合、水酸基が多く残存している構造を有するポリビニルアセタール樹脂を用いるのが好ましい。特に爆射法で得られたナノダイヤモンド及び/又はカップスタック型カーボンナノチューブはアルコール等の親水的溶媒への分散性に優れているため、前記の水酸基が多く残存している構造を有するポリビニルアセタール樹脂に容易に分散させることができる。
【0048】
混練によりポリビニルアセタール樹脂組成物を作製する場合、ポリビニルアセタール樹脂の水酸基は、10モル%以上であるのが好ましく、15〜40モル%であるのがより好ましく、20〜35モル%であるのが最も好ましい。ポリビニルアセタール樹脂のアセタール化度としては、90モル%以下であるのが好ましく、60〜85モル%であるのがより好ましく、65〜80モル%であるのが最も好ましい。
【0049】
なお、前記水酸基のモル%は、以下の式:
水酸基(モル%)=[(水酸基のモル数)/(原料ポリビニルアルコール中の水酸基及びアセチル基の合計モル数)]×100
によって表され、前記式(I)のk、l及びmを用いて、[l/(2k+l+m)]×100(モル%)で表される。
【0050】
(3)ナノダイヤモンド及び/又はカーボンナノチューブを分散させたポリ酢酸ビニルを使用する方法
ナノダイヤモンド及び/又はカーボンナノチューブを分散させたポリ酢酸ビニルをけん化して作製したPVAを用いて、アルデヒドとアセタール化反応させてポリビニルアセタール樹脂組成物を製造することもできる。けん化及びアセタール化反応については前述の方法で行うのが好ましい。
【0051】
[2]ナノダイヤモンド
ナノダイヤモンドとしては、爆射法により得られた未精製の粗ダイヤモンド(BDと言うこともある。)、又はBDを酸化処理しグラファイト系炭素の一部又は全部を除去したものが好ましい。前記酸化処理して得られるナノダイヤモンドとしては、後述のグラファイト相の一部が除去されたダイヤモンド粒子(グラファイト-ダイヤモンド粒子と呼ぶ)及びグラファイト相がほとんど除去された精製ナノダイヤモンド粒子が好ましい。
【0052】
酸化処理したダイヤモンド粒子の比重は、グラファイト系炭素(グラファイトの比重:2.25 g/cm3)の残存量が少なくなればなるほどダイヤモンドの比重(3.50 g/cm3)に近づく。従って、精製度が高くグラファイト系炭素の残存量が少ないほど比重が高くなる。本発明で用いるナノダイヤモンドの比重は2.55 g/cm3(ダイヤモンド24体積%)以上3.48 g/cm3(ダイヤモンド98体積%)以下であるのが好ましく、3.0 g/cm3(ダイヤモンド84体積%)以上3.46 g/cm3(ダイヤモンド97体積%)以下であるのがより好ましく、3.38 g/cm3(ダイヤモンド90体積%)以上3.45 g/cm3(ダイヤモンド96体積%)以下であるのが最も好ましい。なおナノダイヤモンド中のダイヤモンドの体積%は、前記ダイヤモンドの比重3.50 g/cm3及びグラファイトの比重2.25 g/cm3を用いて、ナノダイヤモンドの比重から算出した。
【0053】
未精製の粗ダイヤモンドの酸化処理方法としては、(a) 硝酸等の共存下で高温高圧処理する方法(酸化処理A)、(b)水及び/又はアルコールからなる超臨界流体中で処理する方法(酸化処理B)、(c)水及び/又はアルコールからなる溶媒に酸素を共存させて、前記溶媒の標準沸点以上の温度及び0.1 MPa(ゲージ圧)以上の圧力で処理する方法(酸化処理C)、又は(d)380〜450℃で酸素を含む気体により処理する方法(酸化処理D)が挙げられる。これらの酸化処理は、単独で行ってもよいし、組合せて行っても良い。酸化処理を組合せる場合は、爆射法で得られた未精製の粗ダイヤモンドにまず酸化処理Aを施し、さらに酸化処理B〜Cのいずれかを施すのが好ましい。
【0054】
爆射法で得られた未精製の粗ダイヤモンドに酸化処理Aを施すことによりグラファイト相の一部が除去されたダイヤモンド粒子(グラファイト-ダイヤモンド粒子)が得られ、このグラファイト-ダイヤモンド粒子に酸化処理B〜Cのいずれかの処理を施すことにより前記グラファイト相をさらに除去することができる。
【0055】
(1) 爆射法によるBDの合成
爆射法によるBDの合成は、例えば、水と多量の氷を満たした純チタン製の耐圧容器に、電気雷管を装着した爆薬[例えば、TNT(トリニトロトルエン)/HMX(シクロテトラメチレンテトラニトラミン)=50/50]を胴内に収納させ、片面プラグ付き鋼鉄製パイプを水平に沈め、この鋼鉄製パイプに鋼鉄製のヘルメット状カバーを被覆して、前記爆薬を爆裂させることにより行うことができる。反応生成物としてのBDは容器中の水及び氷中から回収する。
【0056】
前記爆射法は、Science, Vol. 133, No.3467(1961), pp1821-1822、特開平1-234311号、特開平2-141414号、Bull. Soc. Chem. Fr. Vol. 134(1997), pp. 875-890、Diamond and Related materials Vol. 9(2000), pp861-865、Chemical Physics Letters, 222(1994), pp. 343-346、Carbon, Vol. 33, No. 12(1995), pp. 1663-1671、Physics of the Solid State, Vol. 42, No. 8 (2000), pp. 1575-1578、K. Xu. Z. Jin, F. Wei and T. Jiang, Energetic Materials, 1, 19(1993)、特開昭63-303806号、特開昭56-26711報、英国特許第1154633号、特開平3-271109号、特表平6-505694号(WO93/13016号)、炭素, 第22巻, No. 2, 189〜191頁(1984)、Van Thiei. M. & Rec., F. H., J. Appl. Phys. 62, pp. 1761〜1767 (1987)、特表平7-505831号 (WO94/18123号)、米国特許第5861349号及び特開2006-239511号等に記載の方法を用いることができる。
【0057】
(2)酸化処理工程
(i)酸化処理A
爆射法で得られた未精製の粗ダイヤモンド(BD)は、まず酸化処理Aを施すのが好ましい。酸化処理Aを施すことによりグラファイト相の一部が除去されたグラファイト-ダイヤモンド粒子が得られる。酸化処理Aは、(a) 爆射法で得られたBDを、酸中で酸化性分解処理する工程、(b)酸化性分解処理したBDを、さらに厳しい条件で処理する酸化性エッチング処理工程、(c)酸化性エッチング処理後の液を中和する工程、(d)脱溶媒工程、及び(e)洗浄工程からなり、必要に応じてグラファイト-ダイヤモンド粒子分散液の(f)pH及び濃度を調製する工程、又は(g) 乾燥して微粉末とする工程からなる。
【0058】
(a) 酸化性分解処理工程
回収したBDを55〜56質量%の濃硝酸、又は濃硝酸と濃硫酸との混合物とともに、1.4 MPa程度の圧力及び150〜180℃程度の温度で10〜30分間処理し、電気雷管等の混入金属、炭素等の夾雑物等の不純物を分解する。
【0059】
(b) 酸化性エッチング処理工程
酸化性分解処理したBDは、濃硝酸中で酸化性分解処理よりもさらに厳しい条件(例えば、1.4 MPa、200〜240℃)で行う。このような条件で10〜30分処理すると、BD表面を被覆する硬質炭素、すなわちグラファイトを大部分除去することができる。
【0060】
(c) 中和工程
酸化性エッチング処理後のグラファイト-ダイヤモンド粒子を含む硝酸水溶液(pHが2〜6.95)に、それ自身又はその分解反応生成物が揮発性の塩基性物質を加えて中和反応させる。塩基性物質の添加によりpH7.05〜12に上昇する。前記塩基性物質を使用することにより、凝集したグラファイト-ダイヤモンド粒子内に浸透した塩基が、粒子内の硝酸と反応し、ガス化することにより凝集体を個々のグラファイト-ダイヤモンド粒子に解体するといった効果が得られる。この工程により、グラファイト-ダイヤモンド粒子の大きな比表面積及び孔部吸着空間が形成されるものと思われる。
【0061】
塩基性材料としては、アンモニア、ヒドラジン、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、エタノールアミン、プロピルアミン、イソプロピルアミン、ジプロピルアミン、アリルアミン、アニリン、N,N-ジメチルアニリン、ジイソプロピルアミン、ジエチレントリアミンやテトラエチレンペンタミンのようなポリアルキレンポリアミン、2-エチルヘキシルアミン、シクロヘキシルアミン、ピペリジン、ホルムアミド、N,N-メチルホルムアミド、尿素等を挙げることができる。
【0062】
(d) 脱溶媒工程
得られたグラファイト-ダイヤモンド粒子を含む液は、遠心分離、デカンテーション等により脱溶媒するのが好ましい。
【0063】
(e) 水洗工程
脱溶媒したグラファイト-ダイヤモンド粒子は水洗するのが好ましい。洗浄操作は3回以上行うのが好ましい。水洗したグラファイト-ダイヤモンド粒子は、再度遠心分離し、脱水するのが好ましい。
【0064】
(f) pH及び濃度を調製する工程
グラファイト-ダイヤモンド粒子分散液は、pH 4〜10、好ましくはpH5〜8、より好ましくはpH6〜7.5に調節する。グラファイト-ダイヤモンド粒子濃度は0.05〜16%、好ましくは0.1〜12%、より好ましくは1〜5%に調製するのが好ましい。液中に分散しているグラファイト-ダイヤモンド粒子は、ほとんどが2〜250 nmのメジアン径(数基準で80%以上、重量基準で70%以上が2〜250 nmの範囲にある)である。
【0065】
BD及びBDに酸化処理Aを施して得られたグラファイト-ダイヤモンド粒子は、主として粒界及び表面にグラファイト相を有する。BD及びグラファイト-ダイヤモンド粒子は、グラファイト以外の不純物として、(i) 非晶質炭素、(ii) 炭化水素、ヘテロ原子含有炭化水素等の炭化水素不純物、及び(iii) 金属(鉄、珪素、硫黄等)、金属酸化物、金属塩(金属硫酸塩、金属カーボネート等)、金属カーバイド等の金属系不純物を有する。これらの不純物によりBD及びグラファイト-ダイヤモンド粒子の表面は、メチル基、メチレン基、メチン基、カルボニル基、カルボキシル基、アミノ基、アミド基、ニトロ基、硝酸エステル基、スルホン酸基、炭素原子に結合した水酸基(結合性水酸基)等の官能基が存在する。
【0066】
グラファイト相を有するナノダイヤモンド(グラファイト-ダイヤモンド粒子)はさらに酸化処理B〜Dを施すことによりグラファイト層をさらに除去するのが好ましい。もちろんBDに直接酸化処理Bを施しても良い。
【0067】
(ii)酸化処理B
酸化処理Bは、(a) グラファイト相を有するナノダイヤモンドと、酸化性化合物と、水及び/又はアルコールからなる溶媒とからなる混合物A(単に「混合物A」とよぶことがある)を調製し、(b) この混合物Aを、溶媒の臨界点以上の温度及び圧力にした状態でグラファイト相を有するナノダイヤモンドを処理し、(c) 得られた精製ダイヤモンド粒子を含む液を遠心分離して溶媒を除去する工程を有する。さらに、脱溶媒した精製ダイヤモンド粒子を(d)水洗及び遠心分離により脱水する工程を設けるのが好ましい。工程(c)と(d)の間に、必要に応じて、脱溶媒した精製ダイヤモンド粒子を(e)塩基性溶液で中和する工程、及び(f)弱酸で処理する工程を設けてもよい。工程(c)又は(d)で得られた精製ダイヤモンド粒子は乾燥して微粉末にする。
【0068】
(a) 混合物Aの調製工程
混合物Aは、グラファイト相を有するナノダイヤモンドの粉末に、酸化性化合物、及び水及び/又はアルコールからなる溶媒を混合することにより調製する。又は、前記溶媒にあらかじめグラファイト相を有するナノダイヤモンドを分散した液に、前記酸化性化合物又はその溶液を添加して調製しても良い。混合物Aには、酸化性化合物による酸化反応を促進させるため、塩基性化合物又は酸化性化合物を添加しても良い。
【0069】
酸化性化合物としては、硝酸、過酸化水素、過炭酸ナトリウム、過炭酸カリウム、過ホウ酸ナトリウム、過ホウ酸カリウム、次亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸カリウム、亜塩素酸ナトリウム、亜塩素酸カリウム、塩素酸リチウム、塩素酸ナトリウム、塩素酸カリウム、過塩素酸リチウム、過塩素酸ナトリウム、過塩素酸カリウム、過マンガン酸ナトリウム、過マンガン酸カリウム、マンガン酸ナトリウム、マンガン酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、重クロム酸カリウム、クロム酸カリウム等が挙げられ、硝酸及び過酸化水素が好ましい。特に酸化性化合物を単独で使用する場合は、過酸化水素を使用するのが最も好ましい。
【0070】
酸性化合物としては、硝酸、硫酸、塩酸、リン酸、ホウ酸、フッ酸、臭化水素酸等の無機酸、及び蟻酸、酢酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸等の有機酸が挙げられ、無機酸が好ましく、硝酸がより好ましい。
【0071】
塩基性化合物としては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化バリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、四ホウ酸リチウム、四ホウ酸ナトリウム、四ホウ酸カリウム、アンモニア等が挙げられる。
【0072】
酸化性化合物と酸性化合物とを組合せて使用する場合は、過酸化水素と硝酸との組合せが好ましく、酸化性化合物と塩基性化合物とを組合せて使用する場合は、過酸化水素とアンモニアとの組合せが好ましい。
【0073】
溶媒としては、水、アルコール又はこれらの混合液を用いる。アルコールとしては炭素数1〜3の低級アルコールが好ましい。低級アルコールの具体例として、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール及びこれらの混合液が挙げられる。
【0074】
前記酸化性化合物の混合物A中の濃度は、0.01〜10 mol/Lが好ましく、0.1〜5 mol/Lがより好ましい。酸化性化合物の濃度により酸化処理の強さを調節することができ、得られるナノダイヤモンドに残存するグラファイト系炭素の量を調節することができる。
【0075】
混合物A中のグラファイト相を有するナノダイヤモンドの濃度は、0.05〜16質量%が好ましく、0.1〜12質量%がより好ましく、1〜10質量%が最も好ましい。この濃度が16質量%を超えると、精製が不十分となる恐れがある。一方0.05質量%未満であると、回収時のロスの割合が多くなり、効率が悪い。
【0076】
(b) 超臨界処理工程
混合物Aを溶媒の臨界点以上の温度及び圧力で処理する。水の臨界温度は374℃であり、臨界圧力は22.1 MPaである。メタノールの臨界温度は240℃であり、臨界圧力は8.0 MPaである。エタノールの臨界温度は243℃であり、臨界圧力は7.0 MPaである。イソプロパノールの臨界温度は244℃であり、臨界圧力は5.4 MPaである。n-プロパノールの臨界温度は264℃であり、臨界圧力は5.1 MPaである。処理温度は溶媒の臨界温度以上、600℃以下であるのが好ましく、550℃以下であるのがより好ましい。処理圧力は溶媒の臨界圧力以上、100 MPa以下であるのが好ましく、70 MPa以下であるのがより好ましく、50 MPa以下であるのが最も好ましい。処理時間は温度及び圧力により適宜設定すればよいが、1〜24時間が好ましい。
【0077】
酸化性化合物を含む超臨界流体に、グラファイト相を有するナノダイヤモンドを接触させると、超臨界流体の有する高い拡散性と高い溶解性とにより、粒界のグラファイト相に前記化合物が深く浸透し、前記化合物によるグラファイト相の酸化が促進されるものと考えられる。このような激しい反応性を有する超臨界流体により、グラファイト相を効率的に分解することができる。
【0078】
(c) 脱溶媒工程
得られた精製ダイヤモンド粒子を含む液は、遠心分離等により脱溶媒するのが好ましい。
【0079】
(d) 水洗工程
デカンテーション法により、脱溶媒した精製ダイヤモンド粒子を水洗するのが好ましい。洗浄操作は3回以上行うのが好ましい。水洗した精製ダイヤモンド粒子は、再度遠心分離し、脱水するのが好ましい。
【0080】
(e) 中和工程
工程(c)で脱溶媒した精製ダイヤモンド粒子を、塩基性溶液で中和してもよい。塩基性溶液としては水酸化ナトリウム水溶液及び水酸化カリウム水溶液が好ましい。塩基性溶液の濃度は0.01〜0.5 mol/Lが好ましい。脱溶媒した精製ダイヤモンド粒子に塩基性溶液を添加し、超音波処理するのが好ましい。中和後、遠心分離し、塩基性溶液を除去する。
【0081】
(f) 弱酸処理工程
工程(e)で中和した精製ダイヤモンド粒子を弱酸溶液で洗浄するのが好ましい。弱酸溶液によって、中和処理後に残留しているナトリウム等の金属イオンを除去することができる。弱酸溶液の例として、0.01〜0.5 mol/Lの塩酸が挙げられる。中和した精製ダイヤモンド粒子に弱酸溶液を添加し、超音波処理するのが好ましい。洗浄後、遠心分離し、弱酸溶液を除去する。
【0082】
(iii)酸化処理C
酸化処理Cは、(a) グラファイト相を有するナノダイヤモンドと、水及び/又はアルコールからなる溶媒とからなる混合物Bを調製し、(b) この混合物Bに酸素を共存させた状態で、処理溶媒の標準沸点以上の温度及び0.1 MPa(ゲージ圧)以上の圧力でグラファイト相を有するナノダイヤモンドを処理し、(c) 得られた精製ダイヤモンド粒子を含む液を遠心分離して溶媒を除去する工程を有する。さらに、脱処理溶媒した精製ダイヤモンド粒子を(d)水洗及び遠心分離により脱水する工程を設けるのが好ましい。工程(c)又は(d)で得られた精製ダイヤモンド粒子は乾燥して微粉末にする。
【0083】
(a)混合物Bの調製工程
混合物Bは、グラファイト相を有するナノダイヤモンドと、水及び/又はアルコールからなる溶媒とを混合することにより調製する。混合物B中のグラファイト相を有するナノダイヤモンドの濃度は、0.05〜16質量%が好ましく、0.1〜12質量%がより好ましく、1〜10質量%が最も好ましい。この濃度が16質量%を超えると、精製が不十分となる恐れがある。一方0.05質量%未満であると、回収時のロスの割合が多くなり生産性が悪化する。
【0084】
溶媒としては、前記混合物Aの調製で用いることのできるものと同じものが使用できる。
【0085】
(b) 精製処理工程
混合物Bをオートクレーブに入れ、酸素を導入する。オートクレーブ内に空気がある場合、酸素で置換するのが好ましい。酸素の導入量は、グラファイト相を有するナノダイヤモンド中のグラファイト1 gに対して、0.1モル以上が好ましく、0.15モル以上がより好ましく、0.2モル以上が最も好ましい。この導入量の上限は特に制限されない。ナノダイヤモンド中のグラファイトの割合は、例えば、JIS K2249に準拠してナノダイヤモンドの比重を測定し、この比重から、ダイヤモンドの比重を3.50 g/cm3とし、グラファイトの比重を2.25 g/cm3として算出することができる。
【0086】
処理溶媒の標準沸点Tb以上及び0.1 MPa(ゲージ圧)以上となるように、オートクレーブ内の温度及び圧力を調整する。処理溶媒のTb以上及び0.1 MPa(ゲージ圧)以上にする限り、処理溶媒を亜臨界状態[Tb以上の温度及び0.1 MPa(ゲージ圧)以上の圧力で、かつ臨界温度Tc未満及び/又は臨界圧力Pc未満の状態]にしてもよいし、超臨界状態にしてもよい。亜臨界又は超臨界状態の酸素及び処理溶媒により、グラファイト相を効率的に選択酸化することができる。
【0087】
処理温度の下限は(処理溶媒の臨界温度Tc-150℃)が好ましく、(Tc−100℃)がより好ましい。処理温度の上限は800℃が好ましく、600℃がより好ましい。処理圧力の下限は、処理溶媒の臨界圧力Pcの30%が好ましく、Pcの50%がより好ましく、Pcの70%が最も好ましい。処理圧力の上限は70 MPaが好ましく、50 MPaがより好ましい。処理時間は温度及び圧力により適宜設定すればよいが、0.1〜24時間が好ましい。
【0088】
表1に、酸素、水及び低級アルコールのTb、Tc及びPcを示す。水及び低級アルコールのTcは、酸素のTc(-118℃)より遥かに高く、水及び低級アルコールのPcは、酸素のPc(5.1 MPa)以上である。従って、水及び/又は低級アルコールからなる処理溶媒をTb以上及び0.1 MPa(ゲージ圧)以上にしたとき、酸素は亜臨界状態のままか超臨界状態となり、処理溶媒を超臨界状態にしたとき、酸素も超臨界状態となる。
【0089】
【表1】

【0090】
(c) 脱溶媒工程
酸化処理Cと同様にして行う。
【0091】
(d) 水洗工程
酸化処理Cと同様にして行う。
【0092】
(iv)酸化処理D
酸化処理Dは、前記グラファイト相を有するナノダイヤモンドを反応管に入れ、常圧下で酸素を含む気体を流しながら380〜450℃に加熱する工程を有する。加熱温度は400〜430℃であるのが好ましい。酸素を含む気体は、酸素ガス、空気等を使用できるが、簡便さから空気が好ましい。
【0093】
(3)メディア分散処理
爆射法により得られたBD、及びBDに酸化処理Aを施して得られたグラファイト-ダイヤモンド粒子の動的光散乱法で求めたメジアン径は30〜250 nmである。これらの粒子は、1〜10 nm程度の径を有するナノサイズのダイヤモンドが強固に凝集した凝集体である。酸化処理を効率よく行い、着色の少ない精製ダイヤモンド粒子を得るために、酸化処理B〜Dの前にBD又はグラファイト-ダイヤモンド粒子をビーズミル等の公知のメディア分散法により粉砕するのが好ましい。ビーズミルによる分散は、ジルコニアビーズを使用するのが好ましい。BD又はグラファイト-ダイヤモンド粒子をメディア分散することにより、メジアン径を100 nm以下にするのが好ましく、50 nm以下にするのがより好ましく、30 nm以下にするのが最も好ましい。
【0094】
ビーズミルによる分散は市販の装置を用いて行うことができる。連続的に分散液を供給しながら、ビーズによる粉砕を行うことができる装置を使用するのが好ましく、例えば0.1 mm径のジルコニアビーズを0.15 Lのベッセルに充填し、10 m/s程度の周速で回転子を回転させながら、5%程度のグラファイト-ダイヤモンド粒子の水分散物を0.12 L/minで供給し粉砕する。さらに細かく分散させたいときは、0.05 mm径のジルコニアビーズを用いてもよい。
【0095】
[3]カーボンナノチューブ
(1)カーボンナノチューブの合成
カーボンナノチューブは、既存の方法により合成することができる。特に、カップスタック型カーボンナノチューブは、特開2003-147644号、Qingfeng Liu et al. “Synthesis, Purification and Opening of Short Cup-Stacked Carbon Nanotubes”, Jounal of Nanoscience and Nanotechnology, vol. 9, 4554-4560, 2009等に記載の方法により合成したものが好ましい。
【0096】
カップスタック型カーボンナノチューブは、公知の縦型反応器を用いて、炭素源としてベンゼン、及び触媒としてフェロセンを用いて気相成長法によって合成することができる。以下に製造方法の一例を示す。
【0097】
20℃における蒸気圧と同程度の分圧のベンゼンを、水素気流により流量0.3 L/hでチャンバーに送り込み、一方で、185℃で気化させたフェロセンを、ほぼ3×10-7mol/sの濃度でチャンバーに送り込み、前記ベンゼン及びフェロセンを約1100℃で約20分間反応させることにより、カップスタック型カーボンナノチューブが得られる。この方法によって得られるカップスタック型カーボンナノチューブは、約100 nmの直径及び数十nm〜数十μmの長さを有する。この形状は、原料の流量、反応温度を変更することで調節することができる。
【実施例】
【0098】
以下本発明を実施例により具体的に説明するが本発明はこの実施例に限定されるものではない。
【0099】
実施例1
(1)ナノダイヤモンドの作製
TNT(トリニトロトルエン)とRDX(シクロトリメチレントリニトロアミン)を60/40の比で含む0.65 kgの爆発物を3 m3の爆発チャンバー内で爆発させて生成するBDを保存するための雰囲気を形成した後、同様の条件で2回目の爆発を起こしBDを合成した。爆発生成物が膨張し熱平衡に達した後、15 mmの断面を有する超音速ラバルノズルを通して35秒間ガス混合物をチャンバーより流出させた。チャンバー壁との熱交換及びガスにより行われた仕事(断熱膨張及び気化)のため、生成物の冷却速度は280℃/分であった。サイクロンで捕獲した生成物(黒色の粉末、BD)の比重は2.55 g/cm3、メジアン径(動的光散乱法)は220 nmであった。このBDは比重から計算して、76体積%のグラファイト系炭素と24体積%のダイヤモンドからなっていると推定された。
【0100】
このBDを60質量%硝酸水溶液と混合し、160℃、14気圧、20分の条件で酸化性分解処理を行った後、130℃、13気圧、1時間で酸化性エッチング処理を行った。酸化性エッチング処理により、BDからグラファイトが一部除去された粒子が得られた。この粒子を、アンモニアを用いて、210℃、20気圧、20分還流し中和処理した後、自然沈降させデカンテーションにより35質量%硝酸での洗浄を行い、さらにデカンテーションにより3回水洗し、遠心分離により脱水し、120℃で加熱乾燥し、グラファイト相を有するナノダイヤモンドの粉末を得た。このナノダイヤモンドの粉末の比重は3.38 g/cm3であり、メジアン径は120 nm(動的光散乱法)であった。比重から計算して、90体積%のダイヤモンドと10体積%のグラファイト系炭素からなっていると推定された。
【0101】
(2)ポリビニルアセタール樹脂組成物の作製
275 gのPVA(重合度700及びけん化度99モル%)を、2770 gの水に加熱しながら溶解した。このPVA水溶液に前記ナノダイヤモンドの粉末を、得られるポリビニルアセタール樹脂に対して12質量%となるように添加した。前記ナノダイヤモンドの粉末は、前記PVA水溶液に速やかに均一に分散された。このナノダイヤモンドの粉末が分散したPVA水溶液を、12℃に保温しながら、200 gの塩酸(35重量%)と148 gのn-ブチルアルデヒドを加え、2時間保持して反応生成物を析出させた。その後、44℃に昇温しで3時間保持して反応を完了させ、過剰の水で洗浄し、未反応のアルデヒドを洗い流した。さらに残存する塩酸を水酸化ナトリウム水溶液で中和し、脱水した後で、再び大過剰の水でpH=7になるまで洗浄し、揮発分が1.0%になるまで乾燥することにより、12質量%のナノダイヤモンド粉末が均一に分散したポリビニルアセタール樹脂組成物を得た。このポリビニルアセタール樹脂のアセタール化度は77モル%であった。
【0102】
実施例2
(1)カップスタック型カーボンナノチューブの作製
ベンゼンの分圧が、ベンゼンの20℃における蒸気圧と同程度になるようにベンゼン及び水素を混合し、ベンゼンの流量が0.3 L/hとなるようにチャンバーに送り込んだ。一方で、185℃で気化させたフェロセンを、ほぼ3×10-7mol/sの濃度でチャンバーに送り込んだ。チャンバー内で、ベンゼン及びフェロセンを約1100℃で約20分間反応させることにより、約100 nmの直径及び数十nm〜数十μmの長さを有するカップスタック型カーボンナノチューブが得られた。
【0103】
(2)ポリビニルアセタール樹脂組成物の作製
ナノダイヤモンドを分散させたPVA水溶液の代わりに、前記カップスタック型カーボンナノチューブを、得られるポリビニルアセタール樹脂に対して5質量%となるように添加したPVAを使用した以外は、実施例1と同様にして5質量%のカップスタック型カーボンナノチューブが均一に分散したポリビニルアセタール樹脂組成物を作製した。
【0104】
実施例3
ナノダイヤモンドを分散させたPVA水溶液の代わりに、前記ナノダイヤモンドの粉末及び前記カップスタック型カーボンナノチューブを、得られるポリビニルアセタール樹脂に対してそれぞれ10質量%及び4質量%となるように添加したPVAを使用した以外は、実施例1と同様にして10質量%のナノダイヤモンド及び4質量%のカップスタック型カーボンナノチューブが均一に分散したポリビニルアセタール樹脂組成物を作製した。
【0105】
実施例4
(1)ナノダイヤモンドの作製
実施例1で作製したナノダイヤモンドの粒子をビーズミルにより分散処理した。ビーズミルによる分散は、アシザワファインテック株式会社製スターミルLMZを用いて行った。243 gの前記ナノダイヤモンドの粒子を水/トリエチレングリコール(50:50の容量比)に分散して5質量%の水分散液を調製し、ディゾルバーで予備分散した。0.1 mm径のジルコニアビーズを0.15 Lのベッセルに充填し、10 m/sの周速で回転子を回転させながら、前記ナノダイヤモンドの粒子の分散液を0.12 L/minで供給し、連続的に分散処理を行った。約2.0 h分散処理した後のナノダイヤモンドの粒子はメジアン径40 nmであった。
【0106】
ビーズミルによって分散処理したナノダイヤモンドの粒子の2.0質量%水分散液30 mLを、オートクレーブ(容量50 mL、SUS316製)に入れ、酸素導入管、温度計及び調圧弁を有する蓋で密封し、炉内に設置した。オートクレーブ内の空気を酸素で置換した後、オートクレーブ内が1.0 MPa(ゲージ圧)の圧力となるように、室温で酸素を導入した。オートクレーブを平均昇温速度6.5℃/分で昇温し、400±5℃の温度及び5±1 MPaの圧力で2時間保持した。オートクレーブを室温まで冷却した後、大気圧まで減圧し、精製されたナノダイヤモンドを含む液を回収した。この液は、上澄みと薄い灰色を呈する精製ナノダイヤモンドの沈殿とに分離していた。
【0107】
前記精製ナノダイヤモンドを含む液を、自然沈降させデカンテーションにより3回水洗し、さらに遠心分離により脱水し、120℃で加熱乾燥し、ナノダイヤモンド粒子を得た。得られた精製ナノダイヤモンドは、メジアン径48 nm、比重3.46 g/cm3であった。この比重から算出した組成は、ダイヤモンド97体積%及びグラファイト3体積%であった。
【0108】
(2)ポリビニルアセタール樹脂組成物の作製
実施例1のナノダイヤモンドを分散させたPVA水溶液の代わりに、前記精製ナノダイヤモンドの粉末を、得られるポリビニルアセタール樹脂に対して18質量%となるように添加したPVAを使用した以外は、実施例1と同様にして18質量%の精製ナノダイヤモンドが均一に分散したポリビニルアセタール樹脂組成物を作製した。
【0109】
(3)ポリビニルアセタール樹脂組成物をコートしたポリエチレンテレフタレート
前記18質量%の精製ナノダイヤモンドを含有するポリビニルアセタール樹脂組成物を、ポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡社製、O-PET、75μm)の表面に3μmの厚さでディップコートした。このフィルムの透過率は、可視光領域で90%以上であり、入射角60°でのヘイズは0.3〜0.4%であった。
【0110】
実施例5
実施例1で作製したナノダイヤモンドを分散させたPVA水溶液の代わりに、前記精製ナノダイヤモンド及び前記カップスタック型カーボンナノチューブを、得られるポリビニルアセタール樹脂に対してそれぞれ1質量%及び0.5質量%となるように添加したPVAを使用した以外は、実施例1と同様にして1質量%の精製ナノダイヤモンド及び0.5質量%のカップスタック型カーボンナノチューブが均一に分散したポリビニルアセタール樹脂組成物を作製した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリビニルアセタール樹脂と、ナノダイヤモンド及び/又はカーボンナノチューブとを含有する樹脂組成物であって、ポリビニルアセタール樹脂に対して、ナノダイヤモンド及びカーボンナノチューブの合計が0.1〜30質量%であることを特徴とするポリビニルアセタール樹脂組成物。
【請求項2】
請求項1に記載のポリビニルアセタール樹脂組成物において、前記ナノダイヤモンドが爆射法によって得られたものであることを特徴とするポリビニルアセタール樹脂組成物。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のポリビニルアセタール樹脂組成物において、前記カーボンナノチューブがカップスタック型であることを特徴とするポリビニルアセタール樹脂組成物。
【請求項4】
ポリビニルアセタール樹脂と、ナノダイヤモンド及び/又はカーボンナノチューブとを含有する樹脂組成物を製造する方法であって、ナノダイヤモンド及び/又はカーボンナノチューブを分散したポリビニルアルコール溶液と、アルデヒドとを、水及び/又は有機溶剤中で酸触媒存在下にてアセタール化反応させる工程を有することを特徴とする方法。
【請求項5】
ポリビニルアセタール樹脂と、ナノダイヤモンド及び/又はカーボンナノチューブとを混練することによりポリビニルアセタール樹脂組成物を製造する方法。
【請求項6】
請求項5に記載の方法において、前記ポリビニルアセタール樹脂が10モル%以上の水酸基を有することを特徴とする方法。
ただし、水酸基のモル%は、以下の式:
水酸基(モル%)=[(残存する水酸基のモル数)/(原料ポリビニルアルコール中の水酸基及びアセチル基の合計モル数)]×100
で表される。
【請求項7】
請求項4〜6のいずれかに記載の方法において、前記ナノダイヤモンドが爆射法によって得られたものであることを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項4〜7のいずれかに記載の方法において、前記カーボンナノチューブがカップスタック型であることを特徴とする方法。

【図1】
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【公開番号】特開2012−67243(P2012−67243A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−214983(P2010−214983)
【出願日】平成22年9月27日(2010.9.27)
【出願人】(500462834)ビジョン開発株式会社 (51)
【Fターム(参考)】