説明

ポリビニルアセタール樹脂組成物

【課題】スクリーン印刷性に優れるとともに、デラミネーションの発生を防止することが可能なポリビニルアセタール樹脂組成物を提供する。また、本発明は、該ポリビニルアセタール樹脂組成物を用いて製造されるポリビニルアセタール樹脂溶液、導電ペースト、セラミックペースト及びセラミックグリーンシートの提供。
【解決手段】ビニルアルコール単位、酢酸ビニル単位、ビニルアセタール単位及びビニルカルボン酸単位で表される構成単位を有するカルボキシル変性ポリビニルアセタール樹脂と、ビニルアルコール単位、酢酸ビニル単位、ビニルアセタール単位及びビニルアミン単位で表される構成単位を有するアミノ変性ポリビニルアセタール樹脂とを含有することを特徴とするポリビニルアセタール樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スクリーン印刷性に優れるとともに、デラミネーションの発生を防止することが可能なポリビニルアセタール樹脂組成物に関する。また、本発明は、該ポリビニルアセタール樹脂組成物を用いて製造されるポリビニルアセタール樹脂溶液、導電ペースト、セラミックペースト及びセラミックグリーンシートに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、種々の電子機器に搭載される電子部品の小型化、積層化が進んでおり、多層回路基板、積層コイル、積層セラミックコンデンサ等の積層型電子部品が広く使用されている。
なかでも、積層セラミックコンデンサは、一般に次のような工程を経て製造されている。
まず、ポリビニルブチラール樹脂やポリ(メタ)アクリル酸エステル系樹脂等のバインダー樹脂を有機溶剤に溶解した溶液に可塑剤、分散剤等を添加した後、セラミック原料粉末を加え、ボールミル等の混合装置により均一に混合し、脱泡後に一定粘度を有するセラミックスラリー組成物を得る。このスラリー組成物をドクターブレード、リバースロールコーター等を用いて、離型処理したポリエチレンテレフタレートフィルム、またはSUSプレート等の支持体面に流延して、これを加熱等により、溶剤等の揮発分を溜去させた後、支持体から剥離してセラミックグリーンシートを得る。
次に、得られたセラミックグリーンシート上に、内部電極となる導電ペーストをスクリーン印刷により塗布したものを交互に複数枚積み重ね、加熱圧着して積層体を作製した後、積層体中に含まれるバインダー樹脂成分等を熱分解して除去する処理、いわゆる脱脂処理を行い、焼成して得られるセラミック焼結体の端面に外部電極を形成する工程を経て積層セラミックコンデンサが得られる。
【0003】
このとき、内部電極を形成するために用いる導電ペーストとしては、例えば、特許文献1に示すように、電極を構成するパラジウムやニッケル等の金属材料と、塗布するセラミックグリーンシート表面に適合する有機溶剤と、エチルセルロース等のバインダー樹脂とを含有するものが用いられている。
しかしながら、近年、積層セラミックコンデンサには更なる高容量化が求められており、より一層の多層化、薄膜化が検討されている。このように極めて薄膜化が進んだ積層セラミックコンデンサを、従来のエチルセルロースをバインダー樹脂とした導電ペーストを用いて製造した場合、ポリビニルアセタール樹脂をバインダー樹脂として用いたセラミックグリーンシートとの接着性が劣るため、いわゆるデラミネーションと呼ばれる層間剥離が発生しやすく、また、エチルセルロース自体の熱分解性が劣るため、上記積層体を脱脂処理した場合、焼成後にカーボン成分が残留し、電気特性を損なうといった問題点があった。
【0004】
このようなデラミネーションの問題を解決するため、セラミックグリーンシートとの接着性に優れるポリビニルアセタール樹脂を、導電ペーストのバインダー樹脂として用いる方法が検討されている。
しかしながら、ポリビニルアセタール樹脂をバインダー樹脂とした導電ペーストでは、スクリーン印刷により導電ペーストを印刷しようとしても、糸引きや目詰まりといった問題を生じやすく、結果的に版離れが悪くなったり、厚み精度が落ちたりして、パターンを鮮明に描画できずに生産歩留まりを低下させるといった問題が新たに生じていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特公平3−35762号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、スクリーン印刷性に優れるとともに、デラミネーションの発生を防止することが可能なポリビニルアセタール樹脂組成物を提供することを目的とする。また、本発明は、該ポリビニルアセタール樹脂組成物を用いて製造されるポリビニルアセタール樹脂溶液、導電ペースト、セラミックペースト及びセラミックグリーンシートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、下記式(1)、(2)、(3)及び(4)で表される構成単位を有するカルボキシル変性ポリビニルアセタール樹脂と、下記式(1)、(2)、(3)及び(5)で表される構成単位を有するアミノ変性ポリビニルアセタール樹脂とを含有するポリビニルアセタール樹脂組成物である。
【0008】
【化1】

式(3)中、Rは、水素原子又は炭素数1〜20のアルキル基を表し、式(4)中、Rは、水素原子又はナトリウム原子を表す。
以下、本発明を詳述する。
【0009】
本発明者は、上記式(1)、(2)、(3)及び(4)で表される構成単位を有するカルボキシル変性ポリビニルアセタール樹脂と、上記式(1)、(2)、(3)及び(5)で表される構成単位を有するアミノ変性ポリビニルアセタール樹脂とを含有するポリビニルアセタール樹脂組成物を、バインダー樹脂として用いた場合、両方の樹脂が擬似架橋を形成し、マイクロゲル化することで、糸引き等を防止して印刷性が大幅に向上することを見出した。また、本発明者は、該ポリビニルアセタール樹脂組成物は、セラミックグリーンシートとの接着性に優れ、デラミネーションの問題を解決できることも見出し、本発明を完成させるに至った。
【0010】
本発明のポリビニルアセタール樹脂組成物は、上記式(1)、(2)、(3)及び(4)で表される構成単位を有するカルボキシル変性ポリビニルアセタール樹脂を含有する。
【0011】
上記カルボキシル変性ポリビニルアセタール樹脂は、上記式(1)で表される水酸基を有する構成単位を有する。
また、上記式(1)で表される水酸基を有する構成単位の割合の好ましい下限は17モル%、好ましい上限は49.4モル%である。
上記式(1)で表される水酸基を有する構成単位の割合が17モル%未満であると、カルボキシル変性ポリビニルアセタール樹脂の有機溶剤に対する溶解性が低下したり、カルボキシル変性ポリビニルアセタール樹脂を含有する溶液の粘度安定性が低下したりする。上記式(1)で表される水酸基を有する構成単位の割合が49.4モル%を超えると、カルボキシル変性ポリビニルアセタール樹脂の吸湿性が高くなって安定性が低下したり、有機溶剤に対する溶解性が低下したりする。上記式(1)で表される水酸基を有する構成単位の割合は、より好ましい下限が20モル%、より好ましい上限が36モル%である。
【0012】
上記カルボキシル変性ポリビニルアセタール樹脂は、上記式(2)で表されるアセチル基を有する構成単位を有する。
また、上記式(2)で表されるアセチル基を有する構成単位の割合の好ましい下限は0.1モル%、好ましい上限は15モル%である。
【0013】
上記式(2)で表されるアセチル基を有する構成単位の割合が上記範囲を外れると、後述するような原料となるカルボキシル変性ポリビニルアルコールの有機溶剤に対する溶解性が低下し、カルボキシル変性ポリビニルアルコールのアセタール化反応を行うことが困難となる。
【0014】
上記カルボキシル変性ポリビニルアセタール樹脂は、上記式(3)で表されるアセタール基を有する構成単位を有する。
また、上記式(3)で表されるアセタール基を有する構成単位の割合の好ましい下限は48モル%、好ましい上限は80モル%である。
なかでも、機械的強度と耐溶剤性とのバランスの観点から、上記式(3)中のRは、メチル基又はプロピル基であることが好ましい。
【0015】
上記式(3)で表されるアセタール基を有する構成単位の割合が48モル%未満であると、上記カルボキシル変性ポリビニルアセタール樹脂の吸湿性が高くなって安定性が低下したり、有機溶剤に対する溶解性が低下したりするため、機械的強度及び耐溶剤性が低下することがある。上記式(3)で表されるアセタール基を有する構成単位の割合が80モル%を超えると、上記カルボキシル変性ポリビニルアセタール樹脂の製造自体が困難となり、仮に製造できたとしても、得られるカルボキシル変性ポリビニルアセタール樹脂の有機溶剤に対する溶解性が低下する。
上記式(3)で表されるアセタール基を有する構成単位の割合は、より好ましい下限が60モル%、より好ましい上限が78モル%である。
【0016】
上記カルボキシル変性ポリビニルアセタール樹脂は、上記式(4)で表されるカルボキシル基又はカルボン酸塩を有する構成単位を有する。このような構成単位を有することで、上記カルボキシル変性ポリビニルアセタール樹脂は、上記アミノ変性ポリビニルアセタール樹脂と疑似架橋構造を形成することが可能となる。
【0017】
上記式(4)で表されるカルボキシル基又はカルボン酸塩を有する構成単位の割合の下限は0.5モル%、上限は20モル%である。
上記式(4)で表されるカルボキシル基又はカルボン酸塩を有する構成単位の割合が0.5モル%未満であると、上記カルボキシル変性ポリビニルアセタール樹脂におけるカルボキシル基又はカルボン酸塩の含有量が低下するため、スクリーン印刷性及び接着性が低下する。上記式(4)で表されるカルボキシル基又はカルボン酸塩を有する構成単位の割合が20モル%を超えると、カルボキシル変性ポリビニルアルコールのアセタール化反応を行うことが困難となったり、得られるカルボキシル変性ポリビニルアセタール樹脂の貯蔵安定性が低下したりする。
上記式(4)で表されるカルボキシル基又はカルボン酸塩を有する構成単位の割合は、好ましい下限が1モル%、好ましい上限が15モル%であり、より好ましい下限が1.5モル%、より好ましい上限が12モル%である。
【0018】
上記カルボキシル変性ポリビニルアセタール樹脂は、平均重合度の好ましい下限が200、好ましい上限が4000である。上記平均重合度が200未満であると、上記カルボキシル変性ポリビニルアセタール樹脂の接着性が低下したり、機械的強度が低下したりする。上記平均重合度が4000を超えると、上記カルボキシル変性ポリビニルアセタール樹脂を含有する溶液の粘度安定性が低下することがある。
上記カルボキシル変性ポリビニルアセタール樹脂の平均重合度のより好ましい下限は300、より好ましい上限は3300であり、更に好ましい下限は400、更に好ましい上限は2500である。
なお、本明細書において、上記カルボキシル変性ポリビニルアセタール樹脂の平均重合度は、原料であるカルボキシル変性ポリビニルアルコールの平均重合度から求めることができる。また、本明細書において、カルボキシル変性ポリビニルアルコールの平均重合度とは、混合物であるカルボキシル変性ポリビニルアルコールにおけるそれぞれのカルボキシル変性ポリビニルアルコールの重合度から求めた平均値を意味する。
【0019】
上記カルボキシル変性ポリビニルアセタール樹脂は、アルデヒドにより、カルボキシル変性ポリビニルアルコールをアセタール化することによって得ることができる。また、上記アセタール化反応は、従来公知の方法で行うことができる。
このような方法でカルボキシル変性ポリビニルアセタール樹脂を得ることにより、上記式(4)で表されるカルボキシル基又はカルボン酸塩を有する構成単位の割合を調整して、カルボキシル変性ポリビニルアセタール樹脂に目的とする性能を付与することが容易となる。また、従来公知のアセタール化反応のみによってカルボキシル変性ポリビニルアセタール樹脂を得ることができるため、不純物等が発生しにくく、カルボキシル変性ポリビニルアセタール樹脂を容易に得ることができる。
【0020】
上記アルデヒドは特に限定されず、例えば、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒド、アミルアルデヒド、ヘキシルアルデヒド、ヘプチルアルデヒド、2−エチルヘキシルアルデヒド、シクロヘキシルアルデヒド、フルフラール、グリオキザール、グルタルアルデヒド、ベンズアルデヒド、2−メチルベンズアルデヒド、3−メチルベンズアルデヒド、4−メチルベンズアルデヒド、p−ヒドロキシベンズアルデヒド、m−ヒドロキシベンズアルデヒド、フェニルアセトアルデヒド、β−フェニルプロピオンアルデヒド等が挙げられる。なかでも、アセトアルデヒド又はブチルアルデヒドを単独で用いるか、又は、アセトアルデヒド及びブチルアルデヒドを併用することが好ましい。
【0021】
上記カルボキシル変性ポリビニルアルコールは、上記式(1)で表される水酸基を有する構成単位を60〜99.4モル%、上記式(2)で表されるアセチル基を有する構成単位を0.1〜25モル%、及び、上記式(4)で表されるカルボキシル基又はカルボン酸塩を有する構成単位を0.5〜20モル%の割合で有することが好ましい。
このようなカルボキシル変性ポリビニルアルコールを原料として用いることにより、上記式(1)、(2)、(3)及び(4)で表される構成単位を上述した割合で有する、上記カルボキシル変性ポリビニルアセタール樹脂を得ることができる。
【0022】
本発明のポリビニルアセタール樹脂組成物は、上記式(1)、(2)、(3)及び(5)で表される構成単位を有するアミノ変性ポリビニルアセタール樹脂を含有する。
【0023】
上記アミノ変性ポリビニルアセタール樹脂の上記式(1)、(2)及び(3)で表される構成単位については、上記カルボキシル変性ポリビニルアセタール樹脂のものと同様であり、その詳しい説明を省略する。
【0024】
上記アミノ変性ポリビニルアセタール樹脂は、上記式(5)で表されるアミノ基を有する構成単位を有する。このような構成単位を有することで、上記アミノ変性ポリビニルアセタール樹脂は、上記カルボキシル変性ポリビニルアセタール樹脂と疑似架橋構造を形成することが可能となる。
【0025】
上記式(5)で表されるアミノ基を有する構成単位の割合の下限は0.5モル%、上限は20モル%である。
上記式(5)で表されるアミノ基を有する構成単位の割合が0.5モル%未満であると、上記アミノ変性ポリビニルアセタール樹脂におけるアミノ基の含有量が低下するため、スクリーン印刷性及び接着性が低下する。上記式(5)で表されるアミノ基を有する構成単位の割合が20モル%を超えると、アミノ変性ポリビニルアルコールのアセタール化反応を行うことが困難となったり、得られるアミノ変性ポリビニルアセタール樹脂の貯蔵安定性が低下したりする。
上記式(5)で表されるアミノ基を有する構成単位の割合は、好ましい下限が1モル%、好ましい上限が15モル%であり、より好ましい下限が1.5モル%、より好ましい上限が12モル%である。
【0026】
上記アミノ変性ポリビニルアセタール樹脂は、平均重合度の好ましい下限が200、好ましい上限が4000である。上記平均重合度が200未満であると、上記アミノ変性ポリビニルアセタール樹脂の接着性が低下したり、機械的強度が低下したりする。上記平均重合度が4000を超えると、上記アミノ変性ポリビニルアセタール樹脂を含有する溶液の粘度安定性が低下することがある。
上記アミノ変性ポリビニルアセタール樹脂の平均重合度のより好ましい下限は300、より好ましい上限は3300であり、更に好ましい下限は400、更に好ましい上限は2500である。
【0027】
上記アミノ変性ポリビニルアセタール樹脂は、アルデヒドにより、アミノ変性ポリビニルアルコールをアセタール化することによって得ることができる。また、上記アセタール化反応は、従来公知の方法で行うことができる。
このような方法でアミノ変性ポリビニルアセタール樹脂を得ることにより、上記式(5)で表されるアミノ基を有する構成単位の割合を調整して、アミノ変性ポリビニルアセタール樹脂に目的とする性能を付与することが容易となる。また、従来公知のアセタール化反応のみによってアミノ変性ポリビニルアセタール樹脂を得ることができるため、不純物等が発生しにくく、アミノ変性ポリビニルアセタール樹脂を容易に得ることができる。
【0028】
上記アミノ変性ポリビニルアルコールは、上記式(1)で表される水酸基を有する構成単位を60〜99.4モル%、上記式(2)で表されるアセチル基を有する構成単位を0.1〜25モル%、及び、上記式(5)で表されるアミノ基を有する構成単位を0.5〜20モル%の割合で有することが好ましい。
このようなアミノ変性ポリビニルアルコールを原料として用いることにより、上記式(1)、(2)、(3)及び(5)で表される構成単位を上述した割合で有する、上記アミノ変性ポリビニルアセタール樹脂を得ることができる。
【0029】
本発明のポリビニルアセタール樹脂組成物は、カルボキシル変性ポリビニルアセタール樹脂とアミノ変性ポリビニルアセタール樹脂とを1:9〜9:1の割合で含有することが好ましい。両樹脂の割合が上記範囲外であると、相互作用に偏りが生じ、スクリーン印刷性が低下することがある。
より好ましくは2:8〜8:2である。
【0030】
本発明のポリビニルアセタール樹脂組成物は、上記カルボキシル変性ポリビニルアセタール樹脂と上記アミノ変性ポリビニルアセタール樹脂とを含有し、疑似架橋することができることから、本発明のポリビニルアセタール樹脂組成物を用いることにより、スクリーン印刷性及び接着性に優れた導電ペーストやセラミックペーストを得ることができる。
【0031】
なお、上記のような用途に用いられる場合、本発明のポリビニルアセタール樹脂組成物は、従来公知のポリビニルアセタール樹脂、アクリル樹脂等の他のバインダー樹脂と混合して用いられてもよい。
【0032】
本発明のポリビニルアセタール樹脂組成物、及び、水酸基を1個以上有する化合物からなる有機溶剤を含有するポリビニルアセタール樹脂溶液もまた本発明の1つである。
【0033】
上記有機溶剤は、水酸基を1個以上有する化合物からなるものであれば特に限定されず、一般的に用いられる有機溶剤を使用することができる。
上記有機溶剤として、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、ベンジルアルコール等のアルコール類、テルピネオール、ジヒドロテルピネオール等のテルピネオール類及びその誘導体、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール等のグリコール類、他にもブチルカルビトール、テキサノール等が挙げられる。これらの有機溶剤は単独で用いられてもよく、水酸基を含有しない化合物からなる有機溶剤と併用してもよい。
【0034】
上記有機溶剤の配合量は特に限定されないが、本発明のポリビニルアセタール樹脂組成物100重量部に対する好ましい下限は100重量部、好ましい上限は10000重量部である。上記有機溶剤の配合量が100重量部未満であると、得られるポリビニルアセタール樹脂溶液の粘度が高くなり、本発明のポリビニルアセタール樹脂組成物の分散能力が阻害されることがある。上記有機溶剤の配合量が10000重量部を超えると、得られるポリビニルアセタール樹脂溶液において、本発明のポリビニルアセタール樹脂組成物の性能が充分に発揮されないことがある。
【0035】
本発明のポリビニルアセタール樹脂溶液及び導電粉末を含有する導電ペーストもまた、本発明の1つである。
【0036】
上記導電粉末としては充分な導電性を示すものであれば特に限定されず、例えば、ニッケル、パラジウム、白金、金、銀、銅、これらの合金等からなる粉末が挙げられる。これらの導電粉末は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0037】
上記導電粉末の配合量は特に限定されないが、本発明のポリビニルアセタール樹脂組成物100重量部に対する好ましい下限は100重量部、好ましい上限は10000重量部である。上記導電粉末の配合量が100重量部未満であると、上記導電粉末の密度が低くなり、導電性が低下することがある。上記導電粉末の配合量が10000重量部を超えると、本発明のポリビニルアセタール樹脂組成物の性能が充分に発揮されないことがある。
【0038】
本発明のポリビニルアセタール樹脂溶液及びセラミック粉末を含有するセラミックペーストもまた、本発明の1つである。更に、このような本発明のセラミックペーストを用いて製造されるセラミックグリーンシートもまた、本発明の1つである。
本発明のポリビニルアセタール樹脂組成物を用いて得られるセラミックグリーンシートは、耐溶剤性に優れ、機械的強度も高いものとなる。
【0039】
上記セラミック粉末は特に限定されず、例えば、アルミナ、ジルコニア、ケイ酸アルミニウム、酸化チタン、酸化亜鉛、チタン酸バリウム、マグネシア、サイアロン、スピネムルライト、炭化ケイ素、窒化ケイ素、窒化アルミニウム等からなる粉末が挙げられる。これらのセラミックス粉末は単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0040】
上記セラミック粉末の配合量は特に限定されないが、本発明のポリビニルアセタール樹脂組成物100重量部に対する好ましい下限は100重量部、好ましい上限は10000重量部である。上記セラミックス粉末の配合量が100重量部未満であると、セラミックペーストを用いて得られるセラミックグリーンシートにおいて、上記セラミックス粉末の密度が低くなり、機械的強度が低下することがある。上記セラミックス粉末の配合量が10000重量部を超えると、得られるセラミックペースト及びセラミックグリーンシートにおいて、本発明のポリビニルアセタール樹脂組成物の性能が充分に発揮されないことがある。
【0041】
本発明のセラミックペーストは、本発明の効果を損なわない範囲で、可塑剤、潤滑剤、帯電防止剤等を適宜含有してもよい。
【0042】
本発明のセラミックペーストを用いてセラミックグリーンシートを製造する方法は特に限定されず、例えば、本発明のセラミックペーストを剥離性の支持体上に塗布した後、加熱して乾燥する方法等が挙げられる。
上記剥離性の支持体上にセラミックペーストを塗布する方法は特に限定されず、例えば、ロールコーター、ダイコーター、カーテンコーター等の従来公知の方法が挙げられる。
【発明の効果】
【0043】
本発明によれば、スクリーン印刷性に優れるとともに、デラミネーションの発生を防止することが可能なポリビニルアセタール樹脂組成物を提供することができる。また、本発明は、該ポリビニルアセタール樹脂組成物を用いて製造されるポリビニルアセタール樹脂溶液、導電ペースト、セラミックペースト及びセラミックグリーンシートを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0044】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されない。
【0045】
(実施例1)
(カルボキシル変性ポリビニルアセタール樹脂の作製)
カルボキシル変性ポリビニルアルコール(カルボキシル基を有する構成単位を含むカルボキシル変性ポリビニルアルコール、カルボキシル基単位含有量3.0モル%、平均重合度1700)100重量部に純水1000重量部を加え、90℃の温度で約2時間攪拌し溶解させた。この溶液を40℃に冷却し、これに濃度35重量%の塩酸90重量部とn−ブチルアルデヒド90重量部とを添加し、液温を10℃に下げてこの温度を保持してアセタール化反応を行い、反応生成物を析出させた。その後、液温を40℃、3時間保持して反応を完了させ、常法により中和、水洗及び乾燥を経て、カルボキシル変性ポリビニルアセタール樹脂の白色粉末を得た。得られたカルボキシル変性ポリビニルアセタール樹脂の残存水酸基量は22モル%、アセチル単位含有量は1.0モル%、ブチラール単位含有量は74モル%、カルボキシル基単位含有量3.0モル%であった。
【0046】
(アミノ変性ポリビニルアセタール樹脂の作製)
アミノ変性ポリビニルアルコール(平均重合度1000)100重量部に純水1000重量部に加え、90℃の温度で約2時間攪拌し溶解させた。この溶液を40℃に冷却し、これに濃度35重量%の塩酸90重量部とn−ブチルアルデヒド90重量部とを添加し、液温を10℃に下げてこの温度を保持してアセタール化反応を行い、反応生成物を析出させた。その後、液温を40℃、3時間保持して反応を完了させ、常法により中和、水洗及び乾燥を経て、アミノ変性ポリビニルアセタール樹脂の白色粉末を得た。得られたアミノ変性ポリビニルアセタール樹脂の残存水酸基量は22.3モル%、アセチル単位含有量は1.2モル%、ブチラール単位含有量は73.5モル%、アミノ基単位含有量4.0モル%であった。
【0047】
(ポリビニルアセタール樹脂溶液の作製)
得られたカルボキシル変性ポリビニルアセタール樹脂5重量部、得られたアミノ変性ポリビニルアセタール樹脂5重量部を、テルピネオール15重量部とテルピネオールアセテート60重量部との混合溶剤で溶解することにより、ポリビニルアセタール樹脂溶液を得た。
【0048】
(導電ペーストの作製)
導電性粉末としてニッケル粉100重量部、チタン酸バリウム25重量部を、テルピネオール10重量部とテルピネオールアセテート40重量部との混合溶剤を混合させた。
その後、得られたポリビニルアセタール樹脂溶液を添加、混合し、三本ロールにて分散させることにより、導電ペーストを得た。
【0049】
(実施例2)
実施例1の(ポリビニルアセタール樹脂溶液の作製)において、得られたカルボキシル変性ポリビニルアセタール樹脂9重量部、得られたアミノ変性ポリビニルアセタール樹脂1重量部を、テルピネオール15重量部とテルピネオールアセテート60重量部との混合溶剤で溶解した以外は実施例1と同様にして、ポリビニルアセタール樹脂溶液及び導電ペーストを作製した。
【0050】
(実施例3)
実施例1の(ポリビニルアセタール樹脂溶液の作製)において、得られたカルボキシル変性ポリビニルアセタール樹脂1重量部、得られたアミノ変性ポリビニルアセタール樹脂9重量部を、テルピネオール15重量部とテルピネオールアセテート60重量部との混合溶剤で溶解した以外は実施例1と同様にして、ポリビニルアセタール樹脂溶液及び導電ペーストを作製した。
【0051】
(実施例4)
実施例1の(ポリビニルアセタール樹脂溶液の作製)において、実施例1で得られたカルボキシル変性ポリビニルアセタール樹脂5重量部に代えて、実施例1で得られたカルボキシル変性ポリビニルアセタール樹脂を酸洗浄した後、再乾燥させたカルボン酸塩を含有しない完全カルボキシル変性ポリビニルアセタール樹脂5重量部を添加した以外は実施例1と同様にして、ポリビニルアセタール樹脂溶液及び導電ペーストを作製した。
【0052】
(実施例5)
(カルボキシル変性ポリビニルアセタール樹脂の作製)
カルボキシル変性ポリビニルアルコール(カルボキシル基を有する構成単位を含むカルボキシル変性ポリビニルアルコール、カルボキシル基単位含有量0.5モル%、平均重合度1700)100重量部に純水1000重量部を加え、90℃の温度で約2時間攪拌し溶解させた。この溶液を40℃に冷却し、これに濃度35重量%の塩酸90重量部とn−ブチルアルデヒド90重量部とを添加し、液温を10℃に下げてこの温度を保持してアセタール化反応を行い、反応生成物を析出させた。その後、液温を40℃、3時間保持して反応を完了させ、常法により中和、水洗及び乾燥を経て、カルボキシル変性ポリビニルアセタール樹脂の白色粉末を得た。得られたカルボキシル変性ポリビニルアセタール樹脂の残存水酸基量は22.7モル%、アセチル単位含有量は1.2モル%、ブチラール単位含有量は75.6モル%、カルボキシル基単位含有量0.5モル%であった。
【0053】
(ポリビニルアセタール樹脂溶液の作製)
得られたカルボキシル変性ポリビニルアセタール樹脂を使用した以外は実施例1と同様にして、ポリビニルアセタール樹脂溶液を作製した。
【0054】
(導電ペーストの作製)
実施例1で得られたカルボキシル変性ポリビニルアセタール樹脂5重量部に代えて、得られたポリビニルアセタール樹脂溶液5重量部を添加した以外は実施例1と同様にして、導電ペーストを作製した。
【0055】
(実施例6)
(カルボキシル変性ポリビニルアセタール樹脂の作製)
カルボキシル変性ポリビニルアルコール(カルボキシル基を有する構成単位を含むカルボキシル変性ポリビニルアルコール、カルボキシル基単位含有量20モル%、平均重合度1700)100重量部に純水1000重量部を加え、90℃の温度で約2時間攪拌し溶解させた。この溶液を40℃に冷却し、これに濃度35重量%の塩酸90重量部とn−ブチルアルデヒド90重量部とを添加し、液温を10℃に下げてこの温度を保持してアセタール化反応を行い、反応生成物を析出させた。その後、液温を40℃、3時間保持して反応を完了させ、常法により中和、水洗及び乾燥を経て、カルボキシル変性ポリビニルアセタール樹脂の白色粉末を得た。得られたカルボキシル変性ポリビニルアセタール樹脂の残存水酸基量は22.1モル%、アセチル単位含有量は0.6モル%、ブチラール単位含有量は57.3モル%、カルボキシル基単位含有量20モル%であった。
【0056】
(ポリビニルアセタール樹脂溶液の作製)
得られたカルボキシル変性ポリビニルアセタール樹脂を添加した以外は実施例1と同様にして、ポリビニルアセタール樹脂溶液を作製した。
【0057】
(導電ペーストの作製)
得られたポリビニルアセタール樹脂溶液を使用した以外は実施例1と同様にして、導電ペーストを作製した。
【0058】
(実施例7)
(セラミックスラリーの作製)
セラミックス粉末としてチタン酸バリウム(BT−03、平均粒径0.3μm、堺化学工業社製)70重量部、トルエン30重量部とエタノール30重量部との混合溶剤、及び、ED−216(楠本化成社製、分散剤)1重量部をボールミルで48時間混合した後、トルエン30重量部とエタノール30重量部との混合溶剤に溶解した実施例1で得られたカルボキシル変性ポリビニルアセタール樹脂4重量部、実施例1で得られたアミノ変性ポリビニルアセタール樹脂4重量部を加え、ボールミルで12時間混合することにより、セラミックスラリーを得た。
【0059】
(セラミックグリーンシートの作製)
得られたセラミックスラリーを、コーターを用いて乾燥後の厚みが2μmとなるように離型処理したPETフィルム上に塗工した後、70℃で5分加熱して乾燥することにより、セラミックグリーンシートを得た。
【0060】
(実施例8)
実施例7の(セラミックスラリーの作製)において、実施例1で得られたカルボキシル変性ポリビニルアセタール樹脂4重量部及び得られたアミノ変性ポリビニルアセタール樹脂4重量部に代えて、実施例1で得られたカルボキシル変性ポリビニルアセタール樹脂7.2重量部、実施例1で得られたアミノ変性ポリビニルアセタール樹脂0.8重量部を添加した以外は実施例7と同様にして、セラミックスラリーおよびセラミックグリーンシートを作製した。
【0061】
(実施例9)
実施例7の(セラミックスラリーの作製)において、実施例1で得られたカルボキシル変性ポリビニルアセタール樹脂4重量部及び得られたアミノ変性ポリビニルアセタール樹脂4重量部に代えて、実施例1で得られたカルボキシル変性ポリビニルアセタール樹脂0.8重量部、実施例1で得られたアミノ変性ポリビニルアセタール樹脂7.2重量部を添加した以外は実施例7と同様にして、セラミックスラリーおよびセラミックグリーンシートを作製した。
【0062】
(実施例10)
実施例7の(セラミックスラリーの作製)において、実施例1で得られたカルボキシル変性ポリビニルアセタール樹脂4重量部に代えて、実施例1で得られたカルボキシル変性ポリビニルアセタール樹脂を酸洗浄した後、再乾燥させたカルボン酸塩を含有しない完全カルボキシル変性ポリビニルアセタール樹脂4重量部を添加した以外は実施例7と同様にして、セラミックスラリーおよびセラミックグリーンシートを作製した。
【0063】
(実施例11)
実施例7の(セラミックスラリーの作製)において、実施例1で得られたカルボキシル変性ポリビニルアセタール樹脂4重量部に代えて、実施例5で得られたカルボキシル変性ポリビニルアセタール樹脂4重量部を添加した以外は実施例7と同様にして、セラミックスラリーおよびセラミックグリーンシートを作製した。
【0064】
(実施例12)
実施例7の(セラミックスラリーの作製)において、実施例1で得られたカルボキシル変性ポリビニルアセタール樹脂4重量部に代えて、実施例6で得られたカルボキシル変性ポリビニルアセタール樹脂4重量部を添加した以外は実施例7と同様にして、セラミックスラリーおよびセラミックグリーンシートを作製した。
【0065】
(比較例1)
実施例1の(ポリビニルアセタール樹脂溶液の作製)において、得られたカルボキシル変性ポリビニルアセタール樹脂5重量部及び得られたアミノ変性ポリビニルアセタール樹脂5重量部に代えて、エチルセルロース(Wako社製、STD45)10重量部を添加した以外は実施例1と同様にして、エチルセルロース樹脂溶液及び導電ペーストを作製した。
【0066】
(比較例2)
実施例1の(ポリビニルアセタール樹脂溶液の作製)において、得られたカルボキシル変性ポリビニルアセタール樹脂5重量部及び得られたアミノ変性ポリビニルアセタール樹脂5重量部に代えて、得られたカルボキシル変性ポリビニルアセタール樹脂10重量部を添加した以外は実施例1と同様にして、ポリビニルアセタール樹脂溶液及び導電ペーストを作製した。
【0067】
(比較例3)
実施例1の(ポリビニルアセタール樹脂溶液の作製)において、得られたカルボキシル変性ポリビニルアセタール樹脂5重量部及び得られたアミノ変性ポリビニルアセタール樹脂5重量部に代えて、得られたアミノ変性ポリビニルアセタール樹脂10重量部を添加した以外は実施例1と同様にして、ポリビニルアセタール樹脂溶液及び導電ペーストを作製した。
【0068】
(比較例4)
(カルボキシ及びアミノ変性ポリビニルアルコールの作製)
撹拌機、温度計、還流冷却管及び滴下漏斗を備えたセパラブルフラスコに、酢酸ビニル2000重量部、メタノール220重量部、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.6重量部及びビニルアミン10重量部、アクリル酸を10重量部入れ、窒素ガスにてバブリングした後、ビニルアミン10重量部、アクリル酸を10重量部を滴下させながら60℃で5時間共重合させた。次いで、重合反応液中にメタノール蒸気を吹込んで未反応モノマーを除去した後、共重合体の30℃、25%のメタノール溶液を調製した。このメタノール溶液2740重量部に、2.2Nの水酸化ナトリウムのメタノール溶液18重量部を添加することにより、粒子を作製した。得られた粒子をメタノールで洗浄し、乾燥することにより、白色のカルボキシ及びアミノ変性ポリビニルアルコールを得た。
得られたカルボキシ及びアミノ変性ポリビニルアルコールは、上記式(1)で表される水酸基を有する構成単位の割合が96.6モル%、上記式(2)で表されるアセチル基を有する構成単位の割合が0.9モル%、上記式(4)で表されるカルボキシル基を有する構成単位の割合が1.5モル%及び、上記式(5)で表されるアミノ基を有する構成単位の割合が1.5モル%であり、平均重合度が1000であった。
【0069】
(カルボキシ及びアミノ変性ポリビニルアセタール樹脂の作製)
得られたカルボキシ及びアミノ変性ポリビニルアルコール100重量部に純水1000重量部を加え、90℃の温度で約2時間攪拌し溶解させた。この溶液を40℃に冷却し、これに濃度35重量%の塩酸90重量部とn−ブチルアルデヒド90重量部とを添加し、液温を10℃に下げてこの温度を保持してアセタール化反応を行い、反応生成物を析出させた。その後、液温を40℃、3時間保持して反応を完了させ、常法により中和、水洗及び乾燥を経て、カルボキシ及びアミノ変性ポリビニルアセタール樹脂の白色粉末を得た。得られたカルボキシ及びアミノ変性ポリビニルアセタール樹脂の残存水酸基量は22.4モル%、アセチル単位含有量は0.9モル%、ブチラール単位含有量は73.7モル%、カルボキシル基単位含有量1.5モル%、アミノ単位含有量1.5モル%であった。
【0070】
(ポリビニルアセタール樹脂溶液の作製)
得られたカルボキシ及びアミノ変性ポリビニルアセタール樹脂10重量部を添加した以外は実施例1と同様にして、ポリビニルアセタール樹脂溶液を作製した。
【0071】
(導電ペーストの作製)
得られたポリビニルアセタール樹脂溶液を使用した以外は実施例1と同様にして、導電ペーストを作製した。
【0072】
(比較例5)
実施例7の(セラミックスラリーの作製)において、実施例1で得られたカルボキシル変性ポリビニルアセタール樹脂4重量部及び実施例1で得られたアミノ変性ポリビニルアセタール樹脂4重量部に代えて、エチルセルロース(Wako社製、STD45)8重量部を添加した以外は実施例7と同様にして、セラミックスラリーおよびセラミックグリーンシートを作製した。
【0073】
(比較例6)
実施例7の(セラミックスラリーの作製)において、実施例1で得られたカルボキシル変性ポリビニルアセタール樹脂4重量部及び実施例1で得られたアミノ変性ポリビニルアセタール樹脂4重量部に代えて、実施例1で得られたカルボキシル変性ポリビニルアセタール樹脂8重量部を添加した以外は実施例7と同様にして、セラミックスラリーおよびセラミックグリーンシートを作製した。
【0074】
(比較例7)
実施例7の(セラミックスラリーの作製)において、実施例1で得られたカルボキシル変性ポリビニルアセタール樹脂4重量部及び実施例1で得られたアミノ変性ポリビニルアセタール樹脂4重量部に代えて、実施例1で得られたアミノ変性ポリビニルアセタール樹脂8重量部を添加した以外は実施例7と同様にして、セラミックスラリーおよびセラミックグリーンシートを作製した。
【0075】
(比較例8)
実施例7の(セラミックスラリーの作製)において、実施例1で得られたカルボキシル変性ポリビニルアセタール樹脂4重量部及び実施例1で得られたアミノ変性ポリビニルアセタール樹脂4重量部に代えて、比較例4で得られたカルボキシ及びアミノ変性ポリビニルアセタール樹脂8重量部を添加した以外は実施例7と同様にして、セラミックスラリーおよびセラミックグリーンシートを作製した。
【0076】
<評価1>
実施例1〜6及び比較例1〜4で得られた導電ペーストについて以下の評価を行った。結果を表1に示した。
【0077】
(1)塗工性評価
スクリーン印刷機(マイクロテック社製、MT−320TV)とスクリーン版(320mm×320mm)を用いて、平滑なガラス板上に実施例及び比較例で作製した導電ペーストを乾燥塗膜厚が1μmになるようにスクリーン印刷を行い、印刷面を目視又は拡大顕微鏡で観察し、擦れの数を調べ、下記の基準により評価した。
○:印刷面のペーストに擦れが認められない(擦れ傷が1個以下)
×:印刷面のペーストに擦れが認められる(擦れ傷が2個以上)
【0078】
(2)糸曳き評価
スクリーン印刷機(マイクロテック社製、MT−320TV)とスクリーン版(320mm×320mm)を用いて、平滑なガラス板上に実施例及び比較例で作製した導電ペーストを乾燥塗膜厚が1μmになるようにスクリーン印刷を行い、印刷面を目視又は拡大顕微鏡で観察し、印刷面の端の形状を確認し、下記の基準により評価した。
○:印刷面に糸状のペーストがまったく認められない(印刷面端の糸状印刷面が1個以下)
×:印刷面に糸状のペーストが認められる(印刷面端の糸状印刷面が2個以上)
【0079】
(3)接着性評価
(評価用グリーンシートの作製)
ポリビニルブチラール樹脂(積水化学工業社製、エスレックB「BM−S」、重合度800)10重量部を、トルエン30重量部とエタノール15重量部との混合溶剤に加え、攪拌溶解し、更に、可塑剤としてジブチルフタレート3重量部を加え、攪拌溶解した。得られた樹脂溶液に、セラミック粉末としてチタン酸バリウム(堺化学工業社製「BT−01(平均粒径0.3μm)」)100重量部を加え、ボールミルで48時間混合してセラミックスラリー組成物を得た。得られたスラリー組成物を、離型処理したポリエステルフィルム上に、乾燥後の厚みが約5μmになるように塗布し、常温で1時間風乾し、熱風乾燥機、80℃で3時間、続いて120℃で2時間乾燥させてセラミックグリーンシートを得た。
【0080】
実施例及び比較例で作製した導電ペーストを用いて、作成した評価用グリーンシート上にマイクロテック社製スクリーン印刷機(MT−320TV)とスクリーン版(320mm×320mm)を用いて、スクリーン印刷用導電ペーストをセラミックグリーンシート上に10cm×10cmの正方形にスクリーン印刷し、得られたセラミックグリーンシートを5cm角に切断し、それを100枚積層し、圧力150kg/cm、10分間の熱圧着条件で圧着し、セラミックグリーンシート積層体を得た。
得られたセラミックグリーンシート積層体を窒素雰囲気で、昇温速度3℃/分で450℃まで昇温し、5時間保持後、さらに昇温速度5℃/分で1350℃まで昇温し、10時間保持し、セラミック焼結体を得た。この焼結体を半分に割り、シート状態を観察し、下記の基準により評価した。
○:デラミネーションなし(デラミネーション率5%未満)
×:デラミネーションあり(デラミネーション率5%以上)
【0081】
<評価2>
実施例7〜12及び比較例5〜8で得られたセラミックグリーンシートについて以下の評価を行った。結果を表1に示した。
【0082】
(1)耐溶剤性
得られたセラミックグリーンシート上にテルピネオール又はジヒドロテルピネオールをスポイトにて一滴(約0.02g)滴下し、60℃で5分乾燥した後、セラミックグリーンシートの状態を目視にて観察し、以下の基準で評価した。
○:セラミックグリーンシートに皺及び穴のいずれも観察されなかった。
×:セラミックグリーンシートに皺又は穴が観察された。
【0083】
(2)機械的強度
得られたセラミックグリーンシートをPETフィルムから剥離し、剥離したシートについてテンシロン引張試験機を用いて破断点応力を測定し、下記の基準で評価した。なお、長さ20mm×幅50mmの試験片を用い、試験速度を25mm/分とした。
○:破断点応力が20MPa以上であった。
×:破断点応力が20MPa未満であった。
【0084】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0085】
本発明によれば、スクリーン印刷性に優れるとともに、デラミネーションの発生を防止することが可能なポリビニルアセタール樹脂組成物を提供することができる。また、本発明は、該ポリビニルアセタール樹脂組成物を用いて製造されるポリビニルアセタール樹脂溶液、導電ペースト、セラミックペースト及びセラミックグリーンシートを提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)、(2)、(3)及び(4)で表される構成単位を有するカルボキシル変性ポリビニルアセタール樹脂と、
下記式(1)、(2)、(3)及び(5)で表される構成単位を有するアミノ変性ポリビニルアセタール樹脂とを含有する
ことを特徴とするポリビニルアセタール樹脂組成物。
【化1】

式(3)中、Rは、水素原子又は炭素数1〜20のアルキル基を表し、式(4)中、Rは、水素原子又はナトリウム原子を表す。
【請求項2】
カルボキシル変性ポリビニルアセタール樹脂とアミノ変性ポリビニルアセタール樹脂とを9:1〜1:9の割合で含有することを特徴とする請求項1記載のポリビニルアセタール樹脂組成物。
【請求項3】
請求項1又は2記載のポリビニルアセタール樹脂組成物、及び、水酸基を1個以上有する化合物からなる有機溶剤を含有することを特徴とするポリビニルアセタール樹脂溶液。
【請求項4】
請求項3記載のポリビニルアセタール樹脂溶液及び導電粉末を含有することを特徴とする導電ペースト。
【請求項5】
請求項3記載のポリビニルアセタール樹脂溶液及びセラミックス粉末を含有することを特徴とするセラミックペースト。
【請求項6】
請求項5記載のセラミックペーストを用いてなることを特徴とするセラミックグリーンシート。

【公開番号】特開2012−102270(P2012−102270A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−253111(P2010−253111)
【出願日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】