説明

ポリビニルアルコールベースの生分解性、生体適合性、架橋ポリマーの調製用重合硬化性組成物

本発明は、以下を含む、ポリビニルアルコールベースの生分解性、生体適合性、架橋ポリマーの調製用重合硬化性組成物に関する:
5から100重量%の、一般式(I)から(III)の1のビニルエステルモノマー(複数可):
【化1】


(ここでXは酸素、硫黄、窒素、及びリンであり;nは1から1000であり、少なくとも20%のnは≧2であり;Rは水素、1から30の炭素原子を有し、ヘテロ原子を随意に含み、且つ−OH、−COOH、−CN、−CHO、及び=Oから選択される1以上の置換基で随意に置換される、直鎖、分岐鎖又は環状、飽和又は不飽和、n価炭化水素基、並びに生分解性、生体適合性オリゴマー及びポリマーのn価ラジカルから選択され;mは1から5の整数であり;Rは水素、−OH、=O、及びRについて列挙された選択肢から選択され;Rは水素、−OH、及びRについて列挙された選択肢から選択される);0から50重量%のエチレン性不飽和コモノマー;0から10重量%の重合開始剤(複数可);並びに0から95重量%の溶媒(複数可)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリビニルアルコールベースの生分解性、生体適合性、架橋ポリマーの調製用重合硬化性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
技術水準
長年、ヒト及び動物の生体のためのインプラントとして使用され得、例えば、組織(骨など)用の支持材又は構成材として働き得る、生分解性塑性材料及びそれから作製される成形品を開発するために、医化学の分野において努力がなされてきた。この目的のためには、塑性材料及びそれらの分解生成物は、一方では毒性が低い必要があり、また他方では容易に加工でき且つ機械的に高度に安定でなければならない。さらに、これらの材料は、成形品の表面に接着し、プラスチックの周りに自家骨材料の形成を開始させることができるよう、骨芽細胞などの細胞に高い親和性を有するべきである。これに関連して、時間が経つにつれて溶解し、その分解生成物は生体によって吸収され、同時に骨組織などの天然の組織によって置換される塑性材料を使用することが特に望ましい。
【0003】
過去には、ポリ乳酸及びポリグリコール酸をベースとするポリマー、並びにポリラクトン及びポリラクタムをベースとするポリマーの使用により、ある程度の成功が達成され得たが、これらのポリマーは、一般に架橋されず、従って、機械的に比較的不安定であり、いくつかの用途においては速く溶解し過ぎる(バルク侵食)。これらの不都合を解消するために、フマル酸などの架橋性基を有する共重合体(例えば、ブロック共重合体)が調製された(例、T. Matsuda, M. Mizutani, S. Arnold, Macromolecules 33, 795-800 (2000)、及びM. Mizutani, T. Matsuda, Journal of Biomedical Materials Research 61(1), 53-60 (2002)を参照のこと)。しかしながら、これらの材料は、多くの不都合を有することが明らかとなった。一方において、重合性基礎組成物は、多くの場合、融解物又は溶液の形態でのみ加工され得、そのことは取り扱いが困難というだけでなく、高い熱量が必要であり、且つ溶媒が除去されなければならないことから、高いエネルギー費及び材料費の原因ともなる。他方において、架橋率が低く、ポリマーの形状安定性、機械的安定性、及び弾性は低架橋密度に起因して不十分であり、そのため人工骨材料としてのそれらの使用は、実質的に不可能であった。末端アクリレート基の導入は、カプロン酸誘導体の重合速度の向上をもたらしたが(M. Mizutani, T. Matsuda, Journal of Biomedical Materials Research 62, 395 (2002))、他の不都合は解消され得なかった。
【0004】
米国特許出願番号2004/0110439には、医療用途のための生体適合性、架橋タンパク質繊維が記載されており、それらはエラスチン、コラーゲン、及びゼラチンなどのバイオポリマーの重合誘導体から紡ぎ出され、融合された生細胞を随意に含む。しかしながら、不十分な剛性及び弾性に起因して、これらの材料は、例えば代用骨としても不適切であった。
【0005】
課題の詳細な概要は、例えば、出願人のWO2006/108202中にも見出すことができ、そこにはアクリレートベースの組成物が前記課題の解決策として記載されており、該組成物はゼラチン、ケラチン、フィブリン、又はカゼインなどのバイオポリマーの加水分解物を随意に含み、そしてそれはラピッドプロトタイピング又は迅速製造手順などの生成的製造手順に適している。従って、成形品が比較的容易且つ経済的な方法で得られ得、多孔性を含む該品の機械的特性は、骨のものと類似しており、随意に表面修飾の後で、良好な細胞接着を可能にする。
【0006】
しかしながら、継続的研究の過程で、発明者らは、WO2006/108202に記載の塑性材料は、そこに開示されるポリアクリレートをベースとする成形品の分解生成物、即ちアクリレートが、残存するモノマーにも起因して、細胞にとって都合悪く有毒であり、その結果そこに接着する細胞が死ぬかもしれず、又は、生体内での塑性材料の生物学的分解が開始するとすぐに、さらなる細胞の接着が阻害されるかもしれない、という不都合を有することを見出した。
【0007】
JP−A−09143194において、Tokiwa Yutakaらは、Streptomycetes又はBacilliのプロテアーゼの存在下、脂肪族ジカルボン酸のジビニルエステル及び各糖の酵素的糖鎖付加による、糖のビニルオキシカルボニルアルカノイル誘導体の(即ちジアルカン酸のビニル/糖混合エステルの)製造を記載している。マルトース及びアジピン酸ジビニルが、開示されている糖及びジビニルエステルの唯一の例である。主な焦点は、調製手順にある。そのように製造される化合物が、高分子化学及び医薬における使用に適しているかもしれないことは一般的に言及されているが、このような化合物を含む重合性組成物、又はそれから製造されるポリマー若しくはこれらのポリマーから作製される3次元品の特性、に関する情報はない。
【0008】
日本特許番号2000−086806において、同じ発明者は、このような化合物のホモポリマーの、明確にはビニルアジピン酸グルコースのホモポリマーの、微生物による生分解性に関する詳細を、後から記載しており、それはある場合には70%超に達すると言われている。しかしながら、分解の過程で生じる分解生成物は言及されていない。
【0009】
日本特許番号2003−321624において、同じ発明者は、類似の材料から作製されるコーティングを開示しており、それらは、塑性材料、金属、紙、ゴム、繊維、などの様々な表面への良好な接着性、生分解性、及びタンパク質、ヌクレオシド、ヌクレオチド、核酸、などに対する親和性(この親和性のおかげで上記コーティングは、例えばそれらを検出するために使用され得る)、を示すと言われている。この場合も、アジピン酸ジビニルが、ジビニルエステル出発材料として言及される唯一の例である。コーティングは、硫酸第一鉄/過酸化水素触媒系の存在下、ポリ乳酸のフィルムなどの品を、ビニルアジピン酸糖の水性溶液中に浸漬することにより製造される。様々な細胞成分の検出を別にすれば、このようなコーティングの他の可能な用途は言及されていない。
【0010】
JP−A−2001−316465には、リパーゼでの酵素的触媒作用による、糖アルコール及び脂肪族ジカルボン酸又はそれらの誘導体からの、水溶性直鎖状ポリエステルの調製が記載されている。アジピン酸ジビニル及びセバシン酸ジビニルが、可能な出発生成物(そこから、見たところビニルアルコールの切断を含む酵素的エステル交換により、アジピン酸又はセバシン酸と共に、各糖の直鎖状ポリエステルが製造される)として言及されている。
【0011】
類似の手法が、JP−A−11276188に開示されており、ここで「ポリマー糖エステル」は、リパーゼを産生しているAlcaligenes属細菌の存在下、セバシン酸ジビニルから製造され、即ちこの場合も、見たところポリエステルは糖及びジカルボン酸から製造される。
【0012】
しばらくの間、生分解性ポリマーが、柔らかい結合組織及び支持組織(血管、心臓弁、腹壁、など)の再構築にも適しているかどうか調べられてきた。骨の場合と同様、目的は、インプラントの機能喪失を伴わず、器官特異的組織の新たな形成を伴う、人工材料の完全な溶解である。これまで、天然のポリマー(例、コラーゲン及びエラスチン)及び人工のポリマー(例、ポリグリコール酸、ポリ乳酸、ポリジオキサノン)が、インプラントの調製のための出発材料として用いられてきた。移植片の分解(ほとんど制御できない)、及びそれに関連する動脈瘤の発生は、いまだに課題となっている。それを別にしても、異物反応(実際には、生体内における材料の速い分解/再構築により防がれる)が多くのインプラントの場合に誘導される。L. Xue, H.P. Greisler, "Bio-materials in the development and future of vascular grafts", J. Vasc. Surg. 37, 472-480 (2003)を参照されたい。
【0013】
文献上、ビニルカーボネート及びビニルカルバメートも、重合において使用されることが知られている。WO 93/18070 A1(EP 629.214 B1に対応する)には、架橋されておらず、低い水溶性を有し、又は水不溶性であり、それらの側鎖に次式:
ポリマー−(L)−(O)−CO−O−C(R)−O−CO−(O)n−R
(ここでm及びnは0又は1である)の脂溶性メチレンジエステル基を含む生分解性ポリマーが記載されており、前記基は、水溶性の残留ポリマーを生じさせるために、エステラーゼ酵素により順に切断され得る。Lは、随意的な脂溶性リンカーを表す。m=1であれば、側鎖はカーボネートを含む。多数の実施形態の1つにおいて、ポリマーはポリビニルアルコールであり得、そのため、リンカーLが存在しない場合、ポリビニルアルコールを含むポリマーと解釈され得る。しかしながら、WO 93/18070 A1の実施形態はいずれも架橋されておらず、そのため低から中程度の機械的強度を有し得るのみの直鎖状ポリマーのみがそこに記載されており、例えば代用骨としてのそれらの使用を排除している。
【0014】
WO 2003/37944には、ビニルカーボネートで末端キャップされ、フッ素化された側鎖を有し、3−[トリス(トリメチルシロキシ)シリル]プロピルビニルカーボネート及びN−ビニルピロリドンと共重合され、コンタクトレンズ用材料として使用されるヒドロゲルを生じさせる、種々のポリシロキサンが記載されている。そのようにして得られるヒドロゲルは架橋されているが、このような共重合体の生分解性は、言及されていないだけでなく、それらをコンタクトレンズ用材料としての使用に適したものにするためには完全に望ましくない。
【0015】
WO 2006/71388にも、生物医学装置(特にコンタクトレンズ)の調製用のプレポリマーとして使用され得、それらの鎖中にカーボネート基又はカルバメート基を含む、ポリシロキサンが記載されている。これらのプレポリマーは、具体的には次式:
M(DiiPS)Dii
(ここでMは重合性エチレン性不飽和ラジカルであり、Diiはジイソシアネート化合物の二価のラジカルであり、PSはポリシロキサンジオール又はジアミンの二価のラジカルであり、xは少なくとも2であり、は式−NH−CO−NH−、−NH−COO−、又は−OCO−NH−の二価の基を表す)を有する。基M及びPSは、カーボネート基、ウレイド基若しくはウレタン基又は鎖中にエーテル基も含み得る。多数の可能な実施形態の1つにおいて、Mは末端ビニルカーボネート又はビニルカルバメート基を有し得る。親水性カーボネート、カルバメート又はウレイド基の存在について言及されている利点は、開裂性ではなく、親水性コモノマーとの適合性の向上である。2−メタクリロイルオキシエチルビニルカーボネートが可能なコモノマーとして言及されている。それらの高い引張係数を別にすれば、これらのプレポリマーから作製される塑性材料の利点は、高い酸素透過性にあり、それはコンタクトレンズとしての使用のために必要である。生分解性は、この場合も望ましくない。同じ出願人のWO 2006/71479及びWO 2001/74932にも、コンタクトレンズの調製及びコーティングが記載されており、この場合も可能なコポリマーとして2−メタクリロイルオキシエチルビニルカーボネート及びN−(カルボキシエチル)ビニルカルバメートが開示されている。
【0016】
従って、先行技術のポリマーはいずれも、代用骨の材料あるいは歯の詰め物の材料などの高度に安定な材料のための使用に適さないであろう。
【0017】
この理由のため、本発明の目的は、生体インプラントとして、特に代用骨の材料として又は歯の詰め物の材料として使用され得る生体適合性塑性材料の調製用の改善された組成物を提供することであった。
【発明の概要】
【0018】
発明の開示
第一の態様において、本発明は、好ましくはポリビニルアルコールベースの、生分解性、生体適合性、架橋ポリマーの調製用重合硬化性組成物を提供することにより、上記目標を達成し、前記組成物は以下を含む:

a)一般式(I)から(III)のうちの1の化合物から独立に選択される、
5から100重量%の1以上のビニルエステルモノマー:
【0019】
【化1】

【0020】
(ここで
Xは酸素、硫黄、窒素、及びリンから選択されるヘテロ原子であり;
nはそれぞれ独立に1から1000、好ましくは1から50、より好ましくは1から20、さらにより好ましくは1から20、さらにより好ましくは1から20、さらにより好ましくは1から10、及び特に好ましくは1から3であり、少なくとも20%のnは≧2であり;
基Rは、以下から独立に選択され
i)水素;1から30、好ましくは3から25、より好ましくは4から20、及び特に好ましくは5から15の炭素原子を有し、鎖中及び/又は鎖の末端に酸素、硫黄、窒素、及びリンから選択される1以上のヘテロ原子を随意に含み、且つ−OH、−COOH、−CN、−CHO、及び=Oから選択される1以上の置換基で随意に置換される、直鎖、分岐鎖又は環状、飽和又は不飽和、n価炭化水素基;及び
ii)ポリサッカリド、ポリペプチド、ポリアミド、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリエーテル、及び脂肪酸誘導体から選択される、生分解性、生体適合性オリゴマー及びポリマーのn価ラジカル;
mは0から4の整数であり;
基Rは、水素、−OH、=O、及びRについて列挙された選択肢から選択され;並びに
基Rは、水素、−OH、及びRについて列挙された選択肢から選択される);
b)(メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマル酸、ビニルピロリドン及びα−オレフィンモノマーから選択される、0から50重量%の1以上のエチレン性不飽和コモノマー;
c)熱開始剤及び光開始剤から選択される、0から10重量%の1以上の重合開始剤;並びに
d)水、低級アルコール、エーテル、ケトン、エステル、アミド及び炭化水素溶媒から選択される、0から95重量%の1以上の溶媒。
【0021】
従って、随意的な溶媒は別として、本発明の新規の組成物は、主成分(複数可)として以下を含み、これらは重合性モノマーであり、以下全て「ビニルエステル」と言う:
−一般式(I)の、1以上のカルボン酸ビニルエステル(複数可)及び/又は
−一般式(II)の、1以上の炭酸、チオ炭酸若しくはカルバミン酸ビニルエステル(複数可)又は1以上のビニルオキシカルボニルリン化合物、好ましくはリンの酸の(特にホスホン酸の)ビニルオキシカルボニル誘導体及び/又は
−一般式(III)の、リンの酸の1以上のビニルエステル(複数可)、好ましくは1以上のリン酸ビニル。
【0022】
組成物はビニルエステル誘導体に基づくため、それらの重合は、部分的に、好ましくは主として、ポリビニルアルコールからなるポリマー鎖を形成する。従って、生体内のポリマーの生分解の過程において、主としてポリビニルアルコール及び−少なくとも中間では−対応する遊離酸又は部分エステル(単純化のため、以下まとめて「酸」と言う)、並びに/又は生分解性オリゴマー及びポリマーのラジカルが形成されるだろう。ポリビニルアルコールは、薬物処方においてしばしば見出され得る毒性のないポリマーであり、生体にいかなる害を及ぼすこともなく排泄される。
【0023】
式(I)のモノマーの場合、例えば、脂肪酸、糖酸、又はアミノ酸が形成される;本発明によれば、特に、食品中にも見出され得、従って無害であるそれらの酸が使用される。これは成分a)ii)として使用されるオリゴマー及びポリマー(以下まとめて「バイオポリマー」と言う)についても当てはまる:このように、本発明は、良好な耐容性を示し、生物にとって無害な、生物学的物質又は容易に分解され得る塑性材料を使用する。さらなる詳細が以下に見出され得る。
【0024】
式(II)のモノマーの場合、例えば、(チオ)炭酸セミエステル又はカルバミン酸が形成され、それは全てへテロ原子に結合したカルボキシル基を含み、不安定であり、自発的に脱炭酸する。このことは、カルボキシル基は基R上に残されていないこと、形成される唯一の酸成分はCOであり、それは肺から排出されることを意味する。酸成分が局所的に残されていないため、式(II)の化合物は、本発明の組成物中の好ましいモノマーである。
【0025】
式(III)のモノマーの場合、ポリマーの分解の過程で、リンの酸(好ましくはリン酸)のみが生体内で形成され、前記酸はほぼ無害であり、部分的には、生体内で自然に産生される物質のために必要でさえある。
【0026】
従って、塑性材料は、上記組成物から得られ得、少なくとも20モル%の多官能性ビニルエステルモノマーの存在(20%のnが≧2であるため)に起因して安定に架橋されており、その(仮にあるとしても)非常に低い毒性に起因して、問題なく生体内に導入され得る。単官能性及び多官能性ビニルエステルモノマーの割合及びモノマー含量などのパラメーターを適切に選択することにより、ヒドロゲル(例えば、水中の、低モノマー含量を有する組成物由来)又はいわゆる「PEG−o−ゲル」(即ち、溶媒としてポリエチレングリコールを含む)及び硬い弾性品(例えば、多官能性モノマーの含量が高い無溶媒組成物由来)が形成され得、次いで、例えば、組織、軟骨若しくは骨の代用材料として又は歯の詰め物の材料として使用され得る。それとは別に、そのようにして得たポリマーは、怪我又は遺伝的素因により引き起こされる組織の損傷のために、例えば心臓弁用の組織支持材として、シャント及びステント用の基本材料として、及び接着剤又は包帯(例えば、パッチ)として、使用され得る。このような処方は、例えば医療用品用の、並びにモノマー及びポリマーの低毒性が望ましい、例えば食品と接触する、他の分野における、様々な基質用のコーティングの調製にも適している。
【0027】
組成物中のビニルエステル部分の数は、パラメーターnの適切な選択により決定される。例えば10,000g/molを超える、あるいはさらに1,000,000g/molを超える高分子量のバイオポリマーのビニルエステルが使用される場合、例えば、スターチがバイオポリマーとして使用される場合、置換の程度に依存して、1,000までの反応部位(即ち、ビニルエステル基)がポリマー骨格上に存在し得る。しかしながら、高い架橋密度(いくつかの用途のためには、及び生体内でのポリマーの溶解速度を向上させるためには、高すぎるかもしれない)に起因して、バイオポリマーの場合における基Rとして、より少ない反応部位(即ち、モノマー分子当たり、50まで、20まで、又は10までのビニルエステル基)も好ましい。特に、Rとしてバイオポリマーではなく、モノマー又は短鎖オリゴマー(二量体など)が使用される場合、好ましくはわずか10まで、より好ましくはわずか3までのビニルエステル基がモノマー分子中に存在する。
【0028】
式(I)中のパラメーターmの値(即ち、ビニルエステル基及びR基を除く、ヘテロ原子X上の置換基の数)は、0とヘテロ原子Xの価数から2減らした数(これは、酸素についてはm=0、窒素についてはm=1、硫黄についてはm=0から4、及びリンについてはm=0から3であることを意味する)の間で変わり得る。=Oなどの多官能性基がヘテロ原子に結合している場合、可能なさらなる置換基Rの数は、当然、前記基の価数に従って減少する。
【0029】
さらに、2以上の基R及びRは、Xが環原子である環状構造を形成するために、互いに連結され得る。式(I)は、いくつかのビニルエステル/ヘテロ原子部分が、基Rに結合し得ること、1以上のヘテロ原子Xが、Rについて列挙された選択肢から選択される1を超える置換基Rを有し得ること、を示す。
【0030】
成分A)i)(バイオポリマーではない)としての基Rの炭素原子の数は、とりわけnの各値に依存する。ジビニル(チオ)カーボネート又はビニルカルバメートなどの超短鎖を有する化合物、及び30炭素原子までを有し、高度に分岐している、又は環状構造により中断されている長鎖ラジカルが使用され得るが、このような超短鎖、超長鎖、又は高度に分岐した構造は、本発明によれば好ましくない。非常に低い分子量を有する化合物は、それらの相対的な揮発性に起因して扱いが難しく、長鎖又は高度に分岐した基は、生体内で分解するのがより難しい。従って、上述のように、炭素原子の数はnの値に依存するが、3から25の炭素原子を有するR基がむしろ好ましく、それらの基のうち、4から20の炭素原子を有するもの、及び特に5から15の炭素原子を有するものが、一般的にはより好ましい。RがRについて列挙された選択肢から選択される基である場合、機械的特性及び重合特性の観点から、該基は好ましくは低級アルキル又はアルコキシ基などの短鎖の基である。
【0031】
従って式(I)のビニルエステルモノマーは、好ましくは4から20の炭素原子を有する脂肪族カルボン酸及びヒドロキシカルボン酸、糖酸、アミノ酸、並びに上記酸のポリマー及び共重合体から選択され、より好ましくは次の酸及びそれらの誘導体から選択される:コハク酸、アジピン酸、フマル酸、クエン酸、酒石酸、アスパラギン酸、オキソグルタル酸、グルタミニン酸、ガラクタル酸、エチレンジアミン四酢酸、ブタンテトラカルボン酸、シクロペンタンテトラカルボン酸、ポリグルタミン酸、ポリアスパラギン酸、ヒアルロン酸、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、及びポリ(乳酸−co−グリコール酸)。
【0032】
がバイオポリマーの残基である場合、前記バイオポリマーは、例えば、以下から選択され得る:ポリエチレングリコール、ゼラチン、キトサン、セルロース、アミロース、及びグリコーゲン。この選択は、本発明の組成物から調製されるポリマーの分解生成物が良好な耐容性であること、及び組成物の出発物質が容易に入手可能であること、を保証する。
【0033】
式(III)のビニルエステルモノマーの場合、即ちリンの酸のビニルエステルの場合、Rは好ましくはOH−、低級アルキル若しくはアルコキシ基、又はバイオポリマー若しくはバイオオリゴマーである。いくつかの好ましい実施形態において、両R基はアルコキシ基であり、それらの一方は特に好ましくは別のビニルオキシ基であり、そのためモノマーは、本発明の組成物中で架橋剤として働く各リンの酸のジビニルエステルである。他の特に好ましいバリエーションの場合、式(III)のビニルエステルモノマーは、分解の過程において、生体によって使用され得る生成物を生じさせるために、ヌクレオシド、ヌクレオチド、又は核酸のビニルエステルであり得る。
【0034】
本発明の組成物は、式(I)から(III)のうち1つの1ビニルエステルモノマーのみを含み得るが、しかしながら、重合において必要最低限の架橋密度を生じさせるために、該モノマーは、その場合少なくとも二官能性、即ちジビニルエステルである必要がある。従って、架橋の程度を制御し易くすることから、該組成物は好ましくは、いくつかの異なるビニルエステルモノマー、例えば、1つの単官能性モノマー及び少なくとも1つの二官能性又はより高い官能性のモノマーを含む。異なるビニルエステルモノマーが存在する場合、それらは全て式(I)から(III)のうちの1つ又は異なるものに対応し得る。このことは、該組成物が、例えば、ビニルカルボキシレート、ビニルカルボネート又はカルバメート、及びビニルホスフェートの組合せを含み得ることを意味する。重合の過程において硬化生成物の所望の特性が得られる限り、このような組合せの選択は特に限定されず、それから調製されるべきポリマーの各用途に応じて自由に選択され得る。
【0035】
好ましい実施形態において、重合の過程において高含量のポリビニルアルコールを含むプラスチックを生じさせるために、少なくとも1のビニルエステルモノマーが、含まれる全てのモノマーの少なくとも50モルパーセント、より好ましくは少なくとも70モルパーセント及び特に好ましくは少なくとも90モルパーセントを占め、このことは本発明の上記利点をさらにより良く確立する。
【0036】
さらに、本発明の組成物のビニルエステルモノマーの少なくとも35モルパーセント、より好ましくは少なくとも50モルパーセントは、好ましくは、架橋剤として機能し、n≧2である、二官能性又はより多官能性のモノマーである。組成物中の総モノマー含量が低くても高くても、このことは、形状復元性並びに硬度及び安定性などの所望の機械的特性を保証するために、十分な架橋密度を与えるという利点を有する。
【0037】
さらなるヘテロ原子が鎖内又はその末端に随意に存在し得るという事実は、糖(糖酸)、アミノ酸若しくはペプチド又は脂肪酸ラジカルなどの特定の鎖長を有する生体分子(それらから本発明のビニルエステルモノマーは調製される)が多くの場合ヘテロ原子を含むという事実に起因する。同じことは、随意的な置換基、不飽和及び分岐部位にも当てはまる。随意的な置換基は、本発明の組成物から調製されるポリマーの表面への細胞の接着を促進するという目的にも適合し得、そのことは以下に更により詳細に記載される。
【0038】
本発明の組成物のビニルエステルモノマーは、商業的に入手可能であるか、又は文献から知得される手順に従って、若しくは下記合成例に開示される手順に従って、調製され得る。当業者は、本明細書中に記載されていないさらなる化合物を合成するために、それに応じて反応パラメーターを変化させなければならないかもしれないことを理解するであろう。ヘテロ原子Xとして硫黄を有する式(II)のビニルエステルを調製するために、例えば合成例8に記載のプロトコールが適用され得、エチレングリコールの代わりに、対応するチオール又は例えばシステインなどのHS基含有アミノ酸(必要であれば、その他の官能基は保護されてもよい)を使用し、それをクロロギ酸ビニルエステルと反応させ得る。適切な場合には、チオールの低い反応性を補うために、(例えば室温まで)反応温度を上げてもよい。所望の化合物を生じる任意の他の手順も適しており、それに関連して、次の参考文献が引用され得る。
【0039】
カーボネート:
R.A. Olofson and J. Cuomo, Tetrahedron Lett. 21(9), 819-22 (1980)は、触媒としてフッ化ベンジルトリメチルアンモニウムを使用する、トリメチルシリルビニルエーテル及びクロロフマル酸イソブチルエステルからのイソブチルビニルカーボネートの合成を記載する。
R.A. Olofson, Dang Vu Anh; D.S. Morrison, and P.F. De Cusati, J. Org. Chem. 55(1), 1-3 (1990)は、クラウンエーテル触媒を使用する、クロロフマル酸若しくはフルオロフマル酸エステル及びアルデヒドからの一段合成を記載する。
K. Rege, S. Hu, J.A. Moore, J.S. Dordick, and S.M. Cramer, J. Am. Chem. Soc. 126(39), 12306-12315 (2004)は、メチレンオキシムビニルカーボネート及びアルコールから出発する、化学酵素合成及び従って位置選択的合成を記載する。
【0040】
カルバメート:
R.A. Olofson, B.A. Bauman, and D.J. Wancowicz, J. Org. Chem. 43(4), 752-4 (1978)は、各アミン、ホスゲン、及びジ(エタナール−2−イル)水銀からのビニルカルバメートの調製を記載する。
A.J. Duggan and F.E. Roberts, Tetrahedron Lett. 20(7), 595-8 (1979)は、各アミン及びS−フェニルビニルチオカーボネートから出発する合成を記載する。
【0041】
チオカーボネート:
A.J. Duggan and F.E. Roberts, Tetrahedron Lett. 20(7), 595-8 (1979)は、チオクロロフマル酸S−フェニルエステル及びビニルアルコールからの、S−フェニルビニルチオカーボネートの合成を記載する。
R.A. Olofson and J. Cuomo, J. Org. Chem. 45(12), 2538-41 (1980)は、チオクロロフマル酸S−フェニルエステル及びトリメチルシリルビニルエーテルからの類似の合成を記載する。
【0042】
ビニルエステルモノマー調製用の他の可能な出発物質は、わずかに挙げるだけでも、例えば、糖及び糖酸誘導体を含む種々のモノアルコール及びポリアルコール(例、種々のグリコール、グリセリン、シクロヘキサンジメタノール、ヘキサンジオール、ヘキサノール、ブタノール、エタノール、ドデカノール、トリメチロールプロパン、酒石酸ステアリル、グルコース、リボース、フルクトース、グリセリンアルデヒド、ジヒドロキシアセトン、デオキシリボース、セロビオース、グルコピラノース、エリスロース、トレオース、及びそれらのチオアナログ)、アミン及びポリアミン、アミノ酸(好ましくは必須アミノ酸)、ヌクレオチド及びヌクレオベース、ペプチド(例、ジェファーミン(jeffamine)、ピペリジン、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、1,12−ジアミノ−4,9−ジアザドデカン、1,5,10−トリアザデカン、ヘキシルアミン、及びドデシルアミン)、ポリマー及びバイオポリマー(例、スターチ、セルロース、キトサン、アルギネート、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルスターチ、ヒアルロネート、ゼラチン、カゼイン、ポリビニルアルコール、ポリ(エチレンカーボネート)、ポリ(1,2−プロピレンカーボネート)、ポリカプロラクトンジオール)、さらにPEG−カプロラクトン、PEG−グリコール、PEG−ラクチド、PEG−エチレンカーボネート、及びPEG−プロピレンカーボネートなどの2ブロック共重合体及び3ブロック共重合体、並びにサリチル酸エチルエステル、アスコルビン酸、ユビキノン、没食子酸、クエン酸、クルクミン、レチノール、カルシフェロール、チアミン、ジアミノピリミジンなどの生物学的活性を示す様々な化合物を含む。
【0043】
必要であれば、成分b)としての随意的なコモノマーが導入され得、種々の目的、例えば、細胞の接着を促進するための表面修飾の目的、例えば開始剤又は随意的な添加剤などの組成物中の特定の成分を、分子中の特定の部位にそれらを固定するために、強固に結合させる目的、さらに重合生成物の機械的特性を改変する目的、に役立ち得る。好ましくは、生体適合性の無毒化合物がこの目的のために使用されるが、アクリル酸誘導体及びメタクリル酸誘導体などの少量の他の化合物も使用され得る。これは、組成物中の他の成分、並びにこれらのコモノマーがポリマー鎖中にどの様に及びどこに導入されるかという事実、にも依存する。好ましくは、成分b)として使用されるコモノマーは、以下の誘導体が比較的良好な耐容性を示し、及び/又は細胞表面上の官能基、添加剤、若しくは開始剤などの所望の相手に容易に結合することから、(メタ)アクリル酸無水物、(メタ)アクリル酸グリシジルエステル、(メタ)アクリロイルオキシコハク酸無水物、(メタ)アクリロイルオキシメチルコハク酸無水物、(メタ)アクリル酸2−オキソ−1,3−ジオキソラニルメチルエステル、ビニルコハク酸無水物、ビニレンカーボネート、及びマレイン酸無水物から選択される。フリーラジカル開環重合を起こすコモノマー(例、環状カーボネート)は、ポリビニルアルコール骨格を中断し、生体内で開裂可能であり、従ってより容易且つ迅速に除去され得るより短いポリビニルアルコール鎖を与えるため、同様に適している。
【0044】
本発明の好ましい実施形態において、少なくとも1つのモノマー又はコモノマーが、第一又は第二の原子価により、例えば、ファンデルワールス力又は水素結合により、細胞表面又はその上の受容体に結合することができる官能基を有する。一方においては、このことは硬化ポリマーへの細胞の良好な接着を保証し、他方においては、生細胞が、当分野において知られているように、「添加剤」として組成物中に導入され得、これらの官能基を介して固定され得る。
【0045】
組成物は、例えば、UV/VIS−硬化性組成物の場合、重合開始剤を含み得る。しかしながら、重合は、開始剤を使用せずに、熱的に又は電子線若しくはガンマ線によっても開始され得るが、それは好ましくない。本発明の好ましい実施形態において、生成物の硬化がそれ故によりコスト効率良く且つより完全に行なわれ得ることから、0.1から10重量%、好ましくは0.2から5重量%、更により好ましくは0.5から3重量%の少なくとも1の重合開始剤が、成分c)として含まれる。少なくとも1の開始剤が光開始剤、特にUV/VIS開始剤であることが更により好ましく、それにより本発明の組成物がラピッドプロトタイピング又は迅速製造手順に特に適したものとなる。
【0046】
上記のように、最終生成物のいくつかの応用の観点から、例えば、所望の生成物がヒドロゲルである場合、組成物は溶媒を含み得る。しかしながら多くの場合、例えば、組成物がラピッドプロトタイピング又は迅速製造手順において使用される場合、溶媒を含まない組成物が好ましい。溶媒が使用される場合、この溶媒は好ましくは水、又はアルコール、グリコール(ポリグリコール)、若しくは油(植物油)などの別の良好な耐容性を示す溶媒である。
【0047】
随意的な添加剤により、組成物は所望の特性を付与され得る。このような添加剤の量は、本発明の効果が損なわれない限り、特に限定されない。好ましくは、添加剤は、重合増感剤及び阻害剤、安定剤、変性剤、可塑剤、着色剤、生物活性剤、骨芽細胞及び平滑筋細胞などの細胞、増粘剤、並びに充填剤から選択される。一方において、これらの添加剤により、技術水準に普通に従うプラスチック添加剤が導入され得、他方において、硬化した最終生成物の性質が影響され得る。従って、特に好ましい実施形態において、生物活性剤は、薬物、タンパク質、及び細胞表面受容体のリガンドから選択され得る。例えば、血小板凝集阻害剤/血液凝固阻害剤又は免疫抑制剤、さらに細胞増殖及び細胞分化に影響を与えるためのペプチドが、組成物に導入され得、及び/又は硬化ポリマーの表面に結合され得る。さらに、抗体(例、抗−CD34又は抗−CD133)などの細胞選択的タンパク質(抗原/抗体反応を介して幹細胞若しくは前駆細胞に結合し得、又は表面上の炎症を防ぐための阻害剤を補完し得る)も、この群に属する。カルボキシメチルデキストラン、プロテオグリカン、コラーゲン、ゼラチン、グルコサミノグリカン、フィブロネクチン、レクチン、ポリカチオン、並びにRGDペプチドなどの天然及び人工の生物学的細胞結合剤などの、細胞接着を改善するための公知の薬剤が、導入され得、及び/又は表面に結合され得る。一方において、良好な細胞接着がこのようにして保証され得、他方において、薬物と組み合わせて使用される場合、本発明の組成物から得られるポリマーは、特定の生体組織用の代替物若しくは支持材料としてのその機能に加えて又はその代わりに、薬物担体として機能し得る。
【0048】
更なる可能な充填材料としては、リン酸三カルシウム、Ca(PO、及びヒドロキシアパタイト(それらは、一方において、骨の形成のためのカルシウム源として働き、他方において、細胞の接着を改善する)、並びに移植者の自家血清又は血漿などの種々の有機性充填剤が挙げられる。
【0049】
1以上の添加剤はまた、モノマーに、例えば、1以上の上記コモノマー(エステルの形態で、又はモノマー(コモノマー)の他の官能基を介して、上記のように容易に誘導体化され得る)に共有結合していてもよい。このことは、添加剤を組成物中の他の成分と単に物理的に混合する場合におそらく達成され得るよりも、より均一な添加剤の分布を保証するだけでなく、他の成分が既に予め硬化された後に各添加剤が添加される場合には、特定の成分の、ポリマーの表面への限定的な結合を提供する。特に好ましくは、モノマー又はコモノマーに共有結合したこれらの添加剤の少なくとも1つは、薬物又は細胞接着を促進する薬剤などの生物活性剤である(このような薬剤は、主に最終塑性材料の表面においてその機能を果たす必要があるからである)。
【0050】
第二の態様において、本発明は、好ましくはポリビニルアルコールベースの、生分解性、生体適合性、架橋ポリマーに関し、該ポリマーは硬化した状態の上記組成物からなる。好ましくは、このようなポリマーは、細胞の接着を促進するために、ファンデルワールス力又は水素結合など、第一又は第二の結合価を介して細胞表面又はその上の受容体に結合可能な官能基をその表面に有する。例えば、上記細胞結合剤の1つは、好ましくは本発明のポリマーの表面に結合し得る。このポリマーの種類は特に限定されない。例えば、構造体、基質上のコーティング、又はフィルム、さらにヒドロゲル又は「PEG−o−ゲル」であり得る。
【0051】
第三の態様において、本発明は、第一の態様による本発明の組成物を重合させることによる、このような生分解性、生体適合性、架橋ポリマーの調製方法に関する。手順のいくつかの好ましい実施形態において、組成物の一部が予め硬化されてもよく、その後、組成物の残りがそこに加えられ、混合物が硬化される。これは、組成物中のいくつかの成分の、表面への標的化された付着を許容する。そのように取得されたポリマーは、例えば、後硬化の目的で、過剰な添加剤若しくは残存するモノマー(コモノマー)を除去する又は失活させるために、表面若しくは機械的特性を改変するために、さらに移植物としてのその使用の観点から滅菌する目的で、随意に後処理に供されてもよい。後処理としては、熱処理、抽出、再沈殿又は表面含浸などの表面処理が挙げられ得る。
【0052】
本発明の方法において、重合は、上述のように、熱的に又は光化学的に開始され得る。光化学的に開始される重合は、好ましくは、例えば、ラピッドプロトタイピング又は迅速製造手順の場合における、生成的製造手順のために使用される。従って、骨あるいは骨片の構造などの複雑な構造が、比較的コスト効率良く、且つそれらの寸法に関して正確に、迅速に再現され得る。それらの低い毒性に起因して、本発明の組成物は、損傷を受けた組織に直接適用された後、in vivoで硬化されることにも適している。しかしながら、それらはまた、随意に分解可能な袋などに入れて生体内に導入され、その後適切に成形され、その後in vivo又はex vivoで硬化され得る。
【0053】
第四及び第五の形態において、本発明は、本発明の組成物において、又は本発明の方法において、さらに種々の他の用途において、重合性モノマー若しくは架橋剤として使用されるのに適した種々の新規化合物に関し、並びに本発明の組成物又は方法におけるまさにこの使用に関する。
【0054】
本発明は、以下の説明のための非限定的な例を参照して、更に詳細に記載される。
【実施例】
【0055】
以下、実施例において使用する化合物を、それらの略号と共に表に列挙する。
【0056】
上付き文字a)からe)は、各出発化合物及び基準化合物の商業的供給元を示し、以下の供給者を表す:
a):TCIヨーロッパ
b):イボクラール・ビバデント
c):コグニス(フォトマー4006 F)
d):サートマー(サートマー415)
e):シグマアルドリッチ
【0057】
【表1−1】

【0058】
【表1−2】

【0059】
【表1−3】

【0060】
【表1−4】

【0061】
合成例1:セバシン酸ジビニルエステル(SEVE)の合成
【0062】
【化2】

【0063】
15g(74.2mmol)のセバシン酸、0.66g(2.06mmol)の酢酸水銀(II)、及び0.12gのハイドロキノンを、250ml三つ口フラスコ中、75mlの酢酸ビニルにプレチャージし、アルゴン下20分間撹拌した。次いで、0.09g(0.01mmol)のp−トルエンスルホン酸を触媒として添加し、反応混合物を4時間還流させた。室温まで冷却した後、得られた溶液を200mlの酢酸エチルで希釈し、150mlの2N NaOHで抽出した。有機相をNaSOで乾燥し、揮発性成分をロータリーエバポレーターで除去した。シリカゲルでのフラッシュカラムクロマトグラフィー(PE:EE=10:1)による精製で、8.9g(th.の47%)の無色液体を得た。
1H-NMR (CDCl3), δ(ppm): 7.25 (2H, dd, J=14.07/6.25 Hz, H2C=CH-); 4.84 (2H, dd, J=14.07/1.56 Hz, -HC=C(H)H); 4.52 (2H, dd, J=6.25/1.56 Hz, -HC=C(H)H); 2.35 (4H, t, -CO-CH2-); 1.62 (4H, q5, -CO-CH2-CH2-);1.29 (8H, s, -CH2-).
【0064】
合成例2:オクタン二酸ジビニルエステル(KVE)の合成
【0065】
【化3】

【0066】
合成は、合成例1と同様に行なった。シリカゲルでのフラッシュカラムクロマトグラフィー(PE:EE=10:1)による精製で、11.4g(th.の47%)の無色液体を得た。
1H-NMR (CDCl3), δ(ppm): 7.26 (2H, dd, J=13.84/6.21 Hz, H2C=CH-); 4.85 (2H, dd, J=13.84/1.47 Hz, -HC=C(H)H); 4.54 (2H, dd, J=6.21/1.47 Hz, -HC=C(H)H); 2.37 (4H, t, -CO-CH2-); 1.65 (4H, q5, -CO-CH2-CH2-);1.48-1,25 (4H, m, -CH2-).
【0067】
合成例3:N−アセチルフェニルアラニンビニルエステル(PAVE)の合成
【0068】
【化4】

【0069】
Lit.:M.I. Weinhouse, K.D. Janda, "A new methodology for the preparation of vinyl esters", Synthesis 1, 81-83 (1993).
【0070】
a)N−アセチルフェニルアラニン2−(フェニルセレノ)エチルエステルの合成
50ml丸底フラスコ中、2.55g(13.3mmol)の1−(3−ジメチルアミノプロピル)−3−エチルカルボジイミド塩酸塩及び1.7g(8.2mmol)のフェニルアラニンを、20mlのTHF中1.87g(9.3mmol)の2−(フェニルセレノ)エタノールの溶液に添加した。次いで反応混合物を室温で12時間撹拌した。次いで混合物を50mlの酢酸エチルで希釈し、50mlの0.5M HCl溶液で抽出した。有機相を硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過し、溶媒を真空中で除去した。カラムクロマトグラフィー(PE:EE=2:1)による精製で、2.9g(th.の91%、lit.の98%)の黄色液体を得た。
1H-NMR (CDCl3), δ(ppm): 7.3-7.1 (10H, m, Ar-H); 6.62 (1H, d, J=8.7 Hz, NH); 4.64 (1H, m, N-CH); 4.31 (2H, t, O-CH2-); 3.25-3.01 (4H, m, -Ar-CH2- + -Se-CH2-); 1.97 (3H, s, -CH3).
【0071】
b)N−アセチルフェニルアラニンビニルエステル(PAVE)の合成
20mlのTHF中2.6g(6.66mmol)のN−アセチルフェニルアラニン2−(フェニルセレノ)エチルエステルの溶液に、8mlの30%H溶液を0℃で10分以内に滴加し、溶液をさらに30分間0℃で撹拌した。混合物を室温で12時間撹拌した後、80mlのCHClで希釈し、3×50mlの水で抽出した。次いで有機相を硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒を除去した。残渣を70mlクロロホルムに溶解させ、24時間還流させた。冷却後、溶媒を除去した。フラッシュカラムクロマトグラフィー(PE:EE=3:1)で、1.3g(th.の84%、lit.の93%)の淡黄色液体を得た。
1H-NMR (CDCl3), δ(ppm): 7.3-7.1 (6H, m, Ar-H + H2C=CH-); 6.4 (1H, d, J=8.9 Hz, NH); 4.86 (1H, dd, J=13.67/1.51 Hz, -HC=CHH); 4.65 (1H, m, N-CH); 4.54 (1H, dd, J=6.18/1.51 Hz, -HC=CHH); 3.25-3.05 (2H, m, -CH2-); 1.95 (3H, s,-CH3).
【0072】
合成例4:ジエチレングリコールビス[O−(O’−ビニルマレイノイル)ポリ乳酸(DVMPL)の合成
【0073】
【化5】

【0074】
a)ジエチレングリコールビスポリ乳酸の合成
0.74g(6.9mmol)ジエチレングリコールをCaClと一晩撹拌し、濾過した。次いで乾燥したアルコールを、10g(69mmol)のD,L−ラクチドと共に三つ口フラスコ中にプレチャージし、130℃に加熱した。D,L−ラクチドが融解した時点で、94mg(0.2mmol)Sn−オクチル酸を触媒として加え、真空にし、混合物を130℃で6時間撹拌した。冷却後、混合物を少量のCHClに溶解させ、冷石油エーテル(PE)で沈殿させた。上清を静かに移し、残渣を再沈殿させた。9g(th.の76%)の無色固体を単離することができた。
1H-NMR (CDCl3) δ(ppm): 5.13 (20H, m, CH-CO); 4.25 (4H, m, CH2-O); 3.65 (4H, m, CH2-O); 1.55 (60H, m, CH3-C-O).
【0075】
b)ジエチレングリコールビス[(O−マレイノイル)ポリ乳酸]の合成
8g(5.2mmol)のジエチレングリコールビスポリ乳酸及び3.74g(26.1mmol)の無水マレイン酸を、100mlのクロロホルムに溶解し、36時間60℃に加熱した。室温まで冷却した後、揮発性成分を真空中で除去した。石油エーテルでクロロホルムから再沈殿させた後、8.4g(th.の98%)の無色固体を得た。
1H-NMR (CDCl3) δ(ppm): 6.59 (2H, m, =CH); 6.33 (2H, m, =CH); 5.12 (20H, m, CH-CO); 4.26 (4H, m, CH2-O); 3.64 (4H, m, CH2-O); 1.55 (60H, m, CH3-C-O).
【0076】
c)ジエチレングリコールビス[O−(O’−フェニルセレノエチルマレイノイル)ポリ乳酸]の合成
合成は、150mlのDMF中、8.4g(4.82mmol)ジエチレングリコールビス[(O−マレイノイル)ポリ乳酸]、2.05g(10.2mmol)2−(フェニルセレノ)エタノール、2.61g(13.6mmol)1−(3−ジメチルアミノプロピル)−3−エチルカルボジイミド塩酸塩、及び2.33g(19.1mmol)4−ジメチルアミノピリジンを用いて、合成例3a)と同様に行なった。PEでクロロホルムから再沈殿させた後、9.8g(th.の96%)の黄色がかった固体を得た。
1H-NMR (CDCl3) δ(ppm): 7.52 (4H, m, Ar-H); 7.25 (4H, m, Ar-H); 6.51 (2H, d, =CH); 6.48 (2H, d, =CH); 5.12 (20H, m, CH-CO); 4.29 (8H, m, CH2-O + CH2-OCO); 3.64 (4H, m, CH2-O); 3.07 (4H, t, Se-CH2-); 1.53 (m, 60H, CH3-C-O).
【0077】
d)ジエチレングリコールビス[O−(O’−ビニルマレイノイル)ポリ乳酸](DVMPL)の合成
合成は、100mlのTHF中、9.8g(4.64mmol)ジエチレングリコールビス[O−(O’−フェニルセレノエチルマレイノイル)ポリ乳酸]及び6mlの30%H溶液を用いて、合成例3b)と同様に行なった。ビニルエステルへの変換は、150mlのクロロホルム中で行なった。次いで溶液を50mlの容量まで濃縮し、生成物をPEで沈殿させた。7.8g(th.の95%)の無色固体を得た。
1H-NMR (CDCl3) δ (ppm): 7.26 (2H, m, H2C=CH-); 6.61 (2H, m, =CH); 6.58 (2H, m, =CH); 5.12 (20H, m, CH-CO); 4.85 (2H, m, -HC=CHH); 4.54 (2H, m, -HC=CHH); 4.27 (4H, m, CH2-O); 3.63 (4H, m, CH2-O); 1.55 (60H, m, CH3-C-O).
【0078】
合成例5:(2−オキソ−1,3−ジオキソラン−4−イル)メチルメタクリレート(MC)の合成
【0079】
【化6】

【0080】
10ml(78.8mmol)のトリエチルアミン、3g(25.4mmol)の4−ヒドロキシメチル−1,3−ジオキソラン−2−オンを、100mlフラスコ中、35mlの塩化メチレンにプレチャージし、アルゴンでフラッシュした。0℃にて、塩化メタクリル酸を撹拌しながらシリンジを用いてゆっくりと滴加した。次いで反応混合物を室温で更に2時間撹拌した。混合物を100mlの1N HCl溶液及び100mlの水で抽出し、有機相を硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過し、溶媒を真空中で除去した。カラムクロマトグラフィー(PE:EE=4:1)による精製で、3.2g(th.の68%)の無色液体を得た。
1H-NMR (CDCl3), δ(ppm): 6.13 (1H, s, H(H)C=); 5.64 (1H, s, H(H)C=); 5.05-4.87 (1H, m, -CH); 4.62-4.23 (4H, m, 2 x -CH2-); 1.93 (3H, s, -CH3).
【0081】
合成例6:三量体脂肪酸トリビニルエステル(TFVE)の合成
【0082】
【化7】

【0083】
合成は、三量体脂肪酸(ユニダイム60、アリゾナケミカル)から合成例1と同様に行なった。シリカゲルでのカラムクロマトグラフィー(PE:EE=5:1)による精製で、38.2g(th.の75%)の表題化合物を黄色がかった液体として得た。
Rf = 0.62 (PE:EE = 9:1)
1H-NMR (CDCl3), δ(ppm): 7.30 (3H, dd, J=6.26/14.09 Hz, H2C=CH-O-CO); 4.88 (3H, dd, J=1.47/13.99 Hz, H2C=CH-O-CO, cis); 4.55 (3H, dd, J=1.57/6.26 Hz, H2C=CH-O-CO, trans); 2.39 (7,5H, t, -CH2-COO-); 1.56-0.86 (99.2H, bm, alkyl-H).
IR (ATR, 薄膜): 2927, 2853, 1750, 1650, 1462, 1141, 954, 870 cm-1.
【0084】
合成例7:ω,ω’−3,6,9−トリオキサウンデカン二酸ジビニルエステル(TUVE)の合成
【0085】
【化8】

【0086】
2.94g(13.4mmol)の3,6,9−トリオキサウンデカン二酸、0.46g(0.7mmol)の酢酸パラジウム(II)、及び0.08g水酸化カリウムを、250ml三つ口フラスコ中、60ml酢酸ビニルにプレチャージし、アルゴン雰囲気下、50℃で70時間撹拌した。室温まで冷却した後、得られた溶液を200mlの酢酸エチルで希釈し、100mlの水で2回抽出した。有機相をNaSOで乾燥し、揮発性成分をロータリーエバポレーターを用いて除去した。シリカゲルでのフラッシュカラムクロマトグラフィー(PE:EE=1:1)による精製で、0.95g(th.の26%)の黄色液体を得た。
Rf = 0,67 (PE/EA 1:1)
1H-NMR (CDCl3), δ(ppm): 7.29 (2H, dd, J=6.26/13.89 Hz, H2C=CH-O-CO); 4.92 (2H, dd, J=1.76/13.89 Hz, H2C=CH-O-CO, cis); 4.63 (3H, dd, J=1.76/6.26 Hz, H2C=CH-O-CO, trans); 4.24 (4H, s, -O-CH2-COO-); 3.80-3.64 (4H, m, -O-CH2-CH2-O-).
IR (ATR, 薄膜): 2932, 2882, 1768, 1649, 1240, 1181, 1112, 949, 875 cm-1.
【0087】
合成例8:1,2−エチレングリコールビス(ビニルカーボネート)(EGDVC)の合成
1,2−エタンジイルビス(ビニルカーボネート)、炭酸ビニル2−(ビニルオキシカルボニルオキシ)エチルエステル
【0088】
【化9】

【0089】
1.5g(24.2mmol)のエチレングリコール及び13.3g(167mmol)のピリジンを、100ml単口フラスコ中、50mlのジクロロメタンにプレチャージした。次いで反応混合物をアイスバスを用いて0℃に冷却し、アルゴン雰囲気下、5.56g(52.2mmol)のクロロギ酸ビニルエステルを、撹拌しながらシリンジを用いて5分以内に滴加した。添加の完了後、混合物を0℃で更に5分間撹拌した。アイスバスを取り外し、反応混合物を室温で1時間撹拌した。次いで反応混合物を100mlのジクロロメタンで希釈し、150mlの1N塩酸で抽出した。次いで有機相を100mlの飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を、1スパチュラ先端量のハイドロキノンの存在下で留去した。フラッシュカラムクロマトグラフィー(PE:EE=5:1)による精製で、4.1g(th.の84%)の表題化合物を無色液体として得た。
Rf = 0.44 (PE:EE = 5:1)
1H-NMR (CDCl3), δ (ppm): 7.06 (2H, dd, J=6.18/13.75 Hz, H2C=CH-O-CO); 4.92 (2H, dd, J=2.37/13.75 Hz, H2C=CH-O-CO); 4.63 (2H, dd, J=2.37/6.18 Hz, H2C=CH-O-CO, trans); 4.43 (4H, s, -CH2-).
【0090】
合成例9:1,4−ブタンジオールビス(ビニルカーボネート)(BDDVC)の合成
ブタン−1,4−ジイルビス(ビニルカーボネート)、炭酸ビニル4−(ビニルオキシカルボニルオキシ)ブチルエステル
【0091】
【化10】

【0092】
合成は、1,4−ブタンジオール及びクロロギ酸ビニルエステルを用いて合成例8と同様に行なった。シリカゲルでのカラムクロマトグラフィー(PE:EE=3:1)による精製で、3.6g(th.の94%)の表題化合物を無色液体として得た。
Rf= 0.77 (PE:EE = 3:1)
1H-NMR (CDCl3), δ (ppm): 7.07 (2H, dd, J=6.16/13.78 Hz, H2C=CH-O-CO); 4.91 (2H, dd, J=2.06/13.78 Hz, H2C=CH-O-CO, cis); 4.57 (2H, dd, J=2.05/6.17 Hz, H2C=CH-O-CO, trans); 4.23 (4H, t, OC-O-CH2-CH2-); 1.81 (4H, m, OC-O-CH2-CH2-).
元素分析 (C10H14O6): 計算値C: 52.17, H: 6.13;
実測値C: 51.78, H: 6.26.
【0093】
合成例10:1,6−ヘキサンジオールビス(ビニルカーボネート)(HDDVC)の合成
ヘキサン−1,6−ジイルビス(ビニルカーボネート)、炭酸ビニル6−(ビニルオキシカルボニルオキシ)ヘキシルエステル
【0094】
【化11】

【0095】
合成は、1,6−ヘキサンジオール及びクロロギ酸ビニルエステルを用いて合成例8と同様に行なった。シリカゲルでのカラムクロマトグラフィー(PE:EE=5:1)による精製で、5.5g(th.の84%)の表題化合物を無色液体として得た。
Rf = 0.53 (PE:EE = 5:1)
1H-NMR (CDCl3), δ (ppm): 7.07 (2H, dd, J=6.16/13.78 Hz, H2C=CH-O-CO); 4.91 (2H, dd, J=2.06/13.78 Hz, H2C=CH-O-CO, cis); 4.57 (2H, dd, J=2.05/6.17 Hz, H2C=CH-O-CO, trans); 4.18 (4H, t, OC-O-CH2-CH2-); 1.70 (4H, m, OC-O-CH2-CH2-); 1.41 (4H, m, -CH2-CH2-CH2-CH2-).
【0096】
合成例11:ジエチレングリコールビス(ビニルカーボネート)(DEGDVC)の合成
3−オキサペンタン−1,5−ジイルビス(ビニルカーボネート)、炭酸ビニル2−[2−(ビニルオキシカルボニルオキシ)エトキシ]エチルエステル
【0097】
【化12】

【0098】
合成は、ジエチレングリコール及びクロロギ酸ビニルエステルを用いて合成例8と同様に行なった。シリカゲルでのカラムクロマトグラフィー(PE:EE=5:1)による精製で、3.3g(th.の95%)の表題化合物を無色液体として得た。
Rf = 0.42 (PE:EE = 3:1)
1H-NMR (CDCl3), δ (ppm): 7.03 (2H, dd, J=6.26/13.88 Hz, H2C=CH-O-CO); 4.87 (2H, dd, J=2.06/13.78 Hz, H2C=CH-O-CO, cis); 4.54 (2H, dd, J=1.96/6.26 Hz, H2C=CH-O-CO, trans); 4.31 (4H, t, (OC-O-CH2-CH2)2-O); 3.71 (4H, t, (OC-O-CH2-CH2)2-O).
【0099】
合成例12:ポリエチレングリコール(400)ビス(ビニルカーボネート)(PEGDVC)の合成
炭酸ビニル2−[ω−(ビニルオキシカルボニルオキシ)ポリオキシエチレン(400)オキシ]エチルエステル
【0100】
【化13】

【0101】
合成は、ポリエチレングリコール400及びクロロギ酸ビニルエステルを用いて合成例8と同様に行なった。シリカゲルでのカラムクロマトグラフィー(PE:EE=1:2)による精製で、2.0g(th.の93%)の表題化合物を無色液体として得た。
1H-NMR (CDCl3), δ (ppm): 7.07 (2H, dd, J=6.26/13.79 Hz, H2C=CH-O-CO); 4.,91 (2H, dd, J=1.96/13.79 Hz, H2C=CH-O-CO, cis); 4.57 (2H, dd, J=1.96/6.26 Hz, H2C=CH-O-CO, trans); 4.34 (4H, t, CO-O-CH2-); 3.79-3.56 (26H, m, -CH2-O-).
IR (ATR, 薄膜): 1758 (C=O), 1650 (C=C), 1241, 1152 cm-1.
【0102】
合成例13:ジエチレングリコールビス[O−(O’−ビニルオキシカルボニル)−ポリ乳酸](DEG(PLAVC))の合成
【0103】
【化14】

【0104】
合成は、ジエチレングリコールビスポリ乳酸及びクロロギ酸ビニルエステルを用いて合成例8と同様に行なった。精製は、混合物をCHClに溶解し、冷PE中で沈殿させることにより行なった。4.1g(th.の94%)の表題化合物が、無色の高粘性油として得られた。
1H-NMR (CDCl3), δ (ppm): 7.04 (2H, dd, J=6.06/13.68 Hz, =CH-O-CO); 5.16 (10H, m, O-CH(CH3)-COO); 4.96 (2H, dd, J=1.94/13.88 Hz, H2C=CH-O-CO, cis); 4.61 (2H, dd, J=1.94/6.06 Hz, H2C=CH-O-CO, trans); 4.40-4.18 (4H, m, OC-O-CH2-CH2-O); 3.72-3.60 (4H, m, OC-O-CH2-CH2-O); 1.70-1.35 (30H, m, O-CH(CH3)-COO).
IR (ATR, 薄膜): 1750 (C=O), 1652 (C=C), 1263, 1188, 1085 cm-1.
【0105】
合成例14:2−シアノエチルビニルカーボネート(CEVC)の合成
炭酸2−シアノエチルビニルエステル
【0106】
【化15】

【0107】
合成は、2−シアノエタノール(ヒドロキシプロピオニトリル)及びクロロギ酸ビニルエステルを用いて合成例8と同様に行なった。シリカゲルでのカラムクロマトグラフィー(PE:EE=3:1)による精製で、2.8g(th.の92%)の表題化合物を無色液体として得た。
Rf= 0.54 (PE:EE = 3:1)
1H-NMR (CDCl3), δ (ppm): 7.04 (1H, dd, J=6.16/13.78 Hz, H2C=CH-O-CO); 4.96 (1H, dd, J=2.24/13.78 Hz, H2C=CH-O-CO, cis); 4.64 (1H, dd, J=2.14/6.06 Hz, H2C=CH-O-CO, trans); 4.39 (2H, t, OC-O-CH2); 2.78 (2H, t, CH2-CN).
元素分析 (C6H7NO3): 計算値 C: 51.07, H: 5.00, N: 9.92;
実測値 C: 51.21, H: 4.98, N: 9.73.
【0108】
合成例15:グリセリントリス(ビニルカーボネート)の合成
プロパン−1,2,3−トリイルトリス(ビニルカーボネート)、炭酸2,3−ビス(ビニルオキシカルボニルオキシ)−プロピルビニルエステル
【0109】
【化16】

【0110】
合成は、グリセリン及びクロロギ酸ビニルエステルを用いて合成例8と同様に行なった。シリカゲルでのカラムクロマトグラフィー(PE:EE=5:1)による精製で、0.8g(th.の75%)の表題化合物を無色液体として得た。
Rf = 0.64 (PE:EE = 3:1)
1H-NMR (CDCl3), δ (ppm): 7.04 (3H, dd, J=6.16/13.78 Hz, H2C=CH-O-CO); 5.21 (1H, m, (OC-O-H2C)2CH-O-CO); 4.94 (3H, dd, J=2.67/11.73 Hz, H2C=CH-O-CO, cis); 4.62 (3H, dd, J=2.34/6.24 Hz, H2C=CH-O-CO, trans); 4.45 (4H, m, (OC-O-H2C)2-CH-O-CO).
【0111】
合成例16:エチルビニルカーボネート(EVC)の合成
炭酸エチルビニルエステル
【0112】
【化17】

【0113】
合成は、エタノール及びクロロギ酸ビニルエステルを用いて合成例8と同様に行なった。シリカゲルでのカラムクロマトグラフィー(PE:EE=5:1)による精製で、1.3g(th.の83%)の表題化合物を無色液体として得た。
Rf= 0.58 (PE:EE = 3:1)
1H-NMR (CDCl3), δ (ppm): 7.06 (1H, dd, J=6.26/13.88 Hz, H2C=CH-O-CO); 4.88 (1H, dd, J=1.96/13.88 Hz, H2C=CH-O-CO, cis); 4.54 (1H, dd, J=1.96/6.06 Hz, H2C=CH-O-CO, trans); 4.24 (2H, q, OC-O-CH2-CH3); 1.31 (3H, t, OC-O-CH2-CH3).
【0114】
合成例17:ヒマシ油トリス(ビニルカーボネート)(RiTVC)の合成
主として(約80%):プロパン−1,2,3−トリイルトリス[(R)−(Z)−12−ビニルオキシカルボニルオキシ−9−オクタデカン酸]
【0115】
【化18】

【0116】
合成は、ヒマシ油及びクロロギ酸ビニルエステルを用いて合成例8と同様に行なった。シリカゲルでのカラムクロマトグラフィー(PE:EE=5:1)による精製で、1.5g(th.の53%)の無色粘性液体を得た。
1H-NMR (CDCl3), δ (ppm): 7.08 (3H, dd, J=6.26/13.88 Hz, H2C=CH-O-CO); 5.55-5.22 (8H, m, -CH2-CH=CH-CH2 und CH2)2-CH-O-CO); 4.88 (3H, dd, J=1,76/13.88 Hz, H2C=CH-O-CO, cis); 4.75 (3H, quin, CH2-CHO-CH2); 4.55 (3H, dd, J=1.76/6.06 Hz, H2C=CH-O-CO, trans); 4.23 (2H, dd, CO-O-CH2); 4.19 (2H, dd, CO-O-CH2); 2.45-2.22 (12H, m, OOC-CH2-CH2 及びHC=CH-CH2-COH); 2.12-1.95 (6H, m); 1.72-1.10 (60H, m); 1.02-0.80 (9H, m).
IR (ATR, 薄膜): 1751 (C=O), 1650 (C=C), 1252, 1158 cm-1.
【0117】
合成例18:水和ヒマシ油トリス(ビニルカーボネート)(HRiTVC)の合成
主として(約80%):プロパン−1,2,3−トリイルトリス[(R)−(Z)−12−ビニルオキシカルボニルオキシオクタデカン酸]
【0118】
【化19】

【0119】
合成は、水和ヒマシ油(ロキシオール G 15、オレオケミカルズ)及びクロロギ酸ビニルエステルを用いて合成例8と同様に行なった。シリカゲルでのカラムクロマトグラフィー(PE:EE=5:1)による精製で、0.77g(th.の77%)の無色粘性液体を得た。
1H-NMR (CDCl3), δ (ppm): 7.10 (3H, dd, J=6.16/13.79 Hz, H2C=CH-O-CO); 5.39-5.20 (8H, m, -CH2-CH=CH-CH2 [6H] 及び(CH2)2-CH-O-CO [2H]); 4.90 (3H, dd, J=1.86/ 13.79 Hz, H2C=CH-O-CO, cis); 4.75 (1H, m, CH2-CHO-CH2); 4.55 (3H, dd, J=1.86/ 6.16 Hz, H2C=CH-O-CO, trans); 4.29 (2H, dd, OCO-CH2-COH); 4.14 (2H, dd, OCO-CH2-COH); 2.45-2.22 (12H, m, OOC-CH2-CH2 [6H] and HC=CH-CH2-COH [6H]); 2.31 (6H, t); 1.70-1.50 (18H, m); 1.50-1.20 (81H, m); 1.08-0.82 (14H, m).
IR (ATR, 薄膜): 2932, 2858, 1753, 1462, 1250, 1156, 949, 865 cm-1.
【0120】
合成例19:N,N’−ジメチル−1,2−エチレンジアミンビス(ビニルカルバメート)(DMEDDVCA)の合成
N,N’−ジメチル−N,N’−エタン−1,2−ジイルビス(カルバミン酸)、N−メチル−N−2−[N’−メチル−N’−(ビニルオキシカルボニル)アミノ]エチルカルバミン酸ビニルエステル
【0121】
【化20】

【0122】
合成は、N,N’−ジメチル−1,2−エチレンジアミン及びクロロギ酸ビニルエステルを用いて合成例8と同様に行なった。シリカゲルでのカラムクロマトグラフィー(PE:EE=1:1)による精製で、3.1g(th.の96%)の表題化合物を無色液体として得た。
Rf = 0.47 (PE:EE = 1:1)
1H-NMR (CDCl3), δ (ppm): 7.17 (2H, m, H2C=CH-O-CO); 4.75 (2H, m, H2C=CH-O-CO, cis); 4.42 (2H, m, H2C=CH-O-CO, trans); 3.47 (4H, s, N-CH2); 2.98 (6H, s, N-CH3).
元素分析 (C10H16N2O4): 計算値 C: 52.62, H: 7.07, N: 12.27;
実測値 C: 52.34, H: 6.99, N: 12.10.
【0123】
合成例20:ピペラジンビス(ビニルカルバメート)(PDVCA)の合成
ジエチレンジアミンビス(ビニルカルバメート)、N,N’−ビス(ビニルオキシカルボニル)ヘキサヒドロ−1,4−ジアジン
【0124】
【化21】

【0125】
合成は、ピペリジン及びクロロギ酸ビニルエステルを用いて合成例8と同様に行なった。シリカゲルでのカラムクロマトグラフィー(PE:EE=1:1)による精製で、1.2g(th.の91%)の表題化合物を無色液体として得た。
Rf= 0.70 (PE:EE = 1:1)
1H-NMR (CDCl3), δ (ppm): 7.21 (2H, dd, J=6.36/13.98 Hz, H2C=CH-O-CO); 4.81 (2H, dd, J=1.66/11.73 Hz, H2C=CH-O-CO, cis); 4.50 (2H, dd, J=1.76/6.26, H2C=CH-O-CO, trans); 3.56 (8H, s, CH2-CH2).
【0126】
合成例21:3,3’−エチレンジオキシビス(プロピルアミン)ジビニルカルバメート(ジェファーミンビス(ビニルカルバメート)、JAVM)の合成
【0127】
【化22】

【0128】
合成は、3,3’−エチレンジオキシビス(プロピルアミン)及びクロロギ酸ビニルエステルを用いて合成例8と同様に行なった。シリカゲルでのカラムクロマトグラフィー(PE:EE=1:1)による精製で、1.03g(th.の72%)の表題化合物を無色液体として得た。
Rf = 0.43 (PE:EE = 1:1)
1H-NMR (CDCl3), δ (ppm): 7.20 (2H, dd, J=6.36/13.99 Hz, H2C=CH-O-CO); 5.93-5.73 (0.6H, bs, -OC-NH-CH2-); 5.65-5.39 (1.4H, bs, -OC-NH-CH2-); 4.69 (2H, dd, J=1,37/ 14.09 Hz, H2C=CH-O-CO, cis); 4.40 (2H, dd, J=1.08/6.36 Hz, H2C=CH-O-CO, trans); 3.66-3.46 (8H, m, -CH2-O-CH2-CH2-O-CH2-); 3.35 (4H, q, -CH2-CH2-NH-CO-); 1.82 (4H, quin, -O-CH2-CH2-CH2-NH-).
IR (ATR, 薄膜): 3331, 2932, 2872, 1718, 1649, 1526, 1240, 1166, 1101, 954, 860 cm-1.
【0129】
合成例22:ビス[ω−アミノポリエチレングリコール(500)]アミントリス(ビニルカルバメート)(EAVM)の合成
【0130】
【化23】

【0131】
合成は、ビス[ω−アミノポリエチレングリコール(500)]アミン(ジェファーミンEDH−176、ハンツマン)及びクロロギ酸ビニルエステルを用いて合成例8と同様に行なった。シリカゲルでのカラムクロマトグラフィー(PE:EE=1:1)による精製で、2.02g(th.の86%)の表題化合物を無色液体として得た。
1H-NMR (CDCl3), δ (ppm): 7.14 (2H, dd, J=6.36/13.99 Hz, H2C=CH-O-CO-NH); 7.13 (1H, dd, J=6.36/13.99 Hz, H2C=CH-O-CO-N(CH2)2); 5.82-5.62 (2H, bs, -OC-NH-CH2-); 4.70 (1H, dd, J=1.47/13.99Hz, H2C=CH-O-CO-N(CH2)2, cis); 4.65 (2H, dd, J=1.27/13.99 Hz, H2C=CH-O-CO-NH, cis); 4.39 (1H, dd, J=1.37/6.26Hz, H2C=CH-O-CO-N(CH2)2, trans); 4.35 (2H, dd, J=1.37/6.26Hz, H2C=CH-O-CO-NH, trans); 3.72-3.40 (92H, m, -CH2-O-CH2-CH2-O-CH2-); 3.37-3.30 (4H, m, -CH2-CH2-NH-CO-).
IR (ATR, 薄膜): 3336, 2872, 1743, 1718, 1649, 1526, 1245, 1101, 949, 860 cm-1.
【0132】
合成例23:サルコシンメチルエステルビニルカルバメート(SMEVCA)の合成
N−メチル−N−(ビニルオキシカルボニル)グリシンメチルエステル、N−(メトキシカルボニルメチル)−N−メチルカルバミン酸ビニルエステル
【0133】
【化24】

【0134】
合成は、サルコシン及びクロロギ酸ビニルエステルを用いて合成例8と同様に行なった。シリカゲルでのカラムクロマトグラフィー(PE:EE=1:1)による精製で、1.9g(th.の96%)の表題化合物を無色液体として得た。
Rf = 0.57 (PE:EE = 1:1)
1H-NMR (CDCl3), δ (ppm): 7.12 (1H, m, H2C=CH-O-CO); 4.76 (1H, m, H2C=CH-O-CO, cis); 4.44 (1H, m, H2C=CH-O-CO, trans); 4.03 (2H, s, N-CH2-COO); 4.03 (3H, s, CO-O-CH3); 2.99 (3H, s, N-CH3).
元素分析 (C7H11NO4): 計算値 C: 48.55, H: 6.40, N: 8.09;
実測値 C: 48.51, H: 6.56, N: 8.02.
【0135】
合成例24:N,O−ビス(ビニルオキシカルボニル)−N−メチルヒドロキシルアミン(MHADVC)の合成
N−メチル−N−(ビニルオキシカルボニルオキシ)カルバミン酸ビニルエステル
【0136】
【化25】

【0137】
合成は、N−メチルヒドロキシルアミン及びクロロギ酸ビニルエステルを用いて合成例8と同様に行なった。シリカゲルでのカラムクロマトグラフィー(PE:EE=6:1)による精製で、1.4g(th.の86%)の表題化合物を無色液体として得た。
Rf = 0.36 (PE:EE = 6:1)
1H-NMR (CDCl3), δ (ppm): 7.17-7.00 (2H, m, CH2=CH-O-CO); 5.09-5.1 (1H, dd, J=2.4/13.7 Hz, CH2=CH-O-CO-N, cis); 4.94-4.86 (1H, dd, J=2.0/13.9 Hz, CH2=CH-O-CO-O, cis); 4.75-4.71 (1H, dd, J=2.6/6.07 Hz, CH2=CH-O-CO-N, trans); 4.62-4.58 (1H, dd, J=2.1/6.2 Hz, CH2=CH-O-CO-O, trans); 3.75 (3H, s, -NCH3).
元素分析 (C7H9NO5): 計算値 C: 44.92, H: 4.85, N: 7.48;
実測値 C: 44.54, H: 5.06, N: 7.24.
【0138】
合成例25:N−メトキシビニルカルバメート(MVCA)の合成
N−メトキシカルバミン酸ビニルエステル
【0139】
【化26】

【0140】
合成は、O−メチルヒドロキシルアミン及びクロロギ酸ビニルエステルを用いて合成例8と同様に行なった。シリカゲルでのカラムクロマトグラフィー(PE:EE=8:1)による精製で、0.9g(th.の79%)の表題化合物を無色液体として得た。
Rf = 0.18 (PE:EE = 8:1)
1H-NMR (CDCl3), δ (ppm): 7.22-7.112 (1H, dd, J=6.1/13.7 Hz, H2C=CH-O-CO); 4.88-4.80 (1H, dd, J=2.0/13.7 Hz, H2C=CH-O-CO, cis); 4.57-4.53 (1H, dd, J=1.9/6.3 Hz, H2C=CH-O-CO, trans); 3.76 (3H, s, O-CH3).
元素分析 (C4H7NO3): 計算値 C: 41.03, H: 6.03, N: 11.96;
実測値 C: 41.25, H: 6.16, N: 11.74.
【0141】
合成例26:N−アクリロイル−N−メトキシビニルカルバメート(AMVCA)の合成
N−メトキシ−N−プロペノイルカルバミン酸ビニルエステル
【0142】
【化27】

【0143】
合成は、N−メトキシアクリルアミド及びクロロギ酸ビニルエステルを用いて合成例8と同様に行なった。シリカゲルでのカラムクロマトグラフィー(PE:EE=9:1)による精製で、1.6g(th.の91%)の表題化合物を無色液体として得た。
Rf = 0.34 (PE:EE = 9:1)
1H-NMR (CDCl3), δ (ppm): 7.12-7.02 (1H, dd, J=6.3/13.8 Hz, CH2=CH-O-CO); 6.29-6.21 (1H, dd, J=11.0/17.5 Hz, CH2=CH-CO-N); 5.80-5.71 (1H, dd, J=0.5/17.5 Hz, CH2=CH-CO-N, cis); 5.58-5.25 (1H, dd, J=0.5/11.3 Hz, CH2=CH-CO-N, trans); 5.07-4.99 (1H, dd, J=2.3/13.7 Hz, CH2=CH-O-CO, cis); 4.71-4.67 (1H, dd, J=2.3/6.1 Hz, CH2=CH-O-CO, trans); 3.90 (3H, s, -OCH3).
元素分析 (C7H9NO3): 計算値 C: 49.12, H: 5.30, N: 8.18;
実測値 C: 49.08, H: 5.38, N: 8.22.
【0144】
合成例27:ビニルオキシカルボニルホスホン酸ジエチルエステル(VCPDE)の合成
【0145】
【化28】

【0146】
2.0g(19mmol)のクロロギ酸ビニルエステルを50ml二つ口フラスコ中にプレチャージし、0℃で撹拌しながら、3.13g(19mmol)の亜リン酸トリエチルをゆっくりと滴加した。添加の完了後、反応混合物を室温で更に2時間撹拌した。反応中に形成された塩化エチルの完全な除去のために、溶液を30分間40℃に加熱した。減圧蒸留による精製で、2.5g(th.の64%)の表題化合物を無色液体として得た。
Bp.: 125-128℃/8 mbar
Rf = 0,35 (PE:EE = 1:1)
1H-NMR (CDCl3), δ (ppm): 7.01-6.99 (1H, dd, J=0.7/6.3 Hz, H2C=CH-O-CO); 4.88-4.79 (1H, m, H2C=CH-O-CO, cis); 4.55-4.48 (1H, m, H2C=CH-O-CO, trans); 4.12-3.97 (4H, m, O-CH2); 1.17-1.09 (6H, m, -CH3).
元素分析 (C7H13O5P): 計算値 C: 40.39, H: 6.30, P: 14.88;
実測値 C: 40.60, H: 6.24, P: 14.71.
【0147】
合成例28:2−(ジエトキシホスホリルオキシ)エチルアミンビニルカルバメート(EPEVC)の合成
【0148】
【化29】

【0149】
0.81mlのトリエチルアミン(5.8mmol)を10mlの無水THFにプレチャージし、0.76gの2−ヒドロキシビニルカルバメート(5.8mmol)を添加した。次いで反応溶液を−78℃に冷却し、4mlのTHF中の0.83mlのクロロ亜ホスホン酸ジエチル(5.8mmol)を滴加した。添加の完了後、反応混合物を室温で12時間撹拌した。白色固体を濾別し、残渣を炭酸水素ナトリウムの5%水性溶液(3×10ml)で洗浄した。次いで有機相を硫酸ナトリウムで乾燥した。乾燥剤を濾別した後、溶媒をロータリーエバポレーターで除去した。粗生成物を、シリカゲルでのカラムクロマトグラフィー(PE:EE=1:5)により精製した。0.39g(th.の25%)の表題化合物を無色油として得た。
Rf = 0.28 (PE:EE = 1:5)
1H-NMR (CDCl3), δ (ppm): 7.11-7.19 (1H, dd, J=6.4/14.0 Hz, CH2=CH); 5.69 (1H, s, N-H); 4.68-4.74 (1H, dd, J=1.3/14.0 Hz, CH2=CH, trans); 4.39-4.42 (1H, dd, J=1.2/6.3 Hz, CH2=CH, cis); 4.04-4.16 (6H, m, CH2-CH3, P-OCH2); 3.45-3.51 (2H, m, CH2NH); 1.29-1.35 (6H, m, CH2-CH3).
元素分析 (C9H18NO6P:): 計算値 C: 40.42, H: 6.74, N: 5.24;
実測値 C: 40.10, H: 6.61, N: 4.99.
【0150】
合成例29:エチルビス[2−(ビニルオキシカルボニルアミノ)エチル]ホスフェート(EBVCAEP)の合成
【0151】
【化30】

【0152】
合成は、2当量の2−ヒドロキシエチルアミンビニルカルバメート及び1当量のジクロロエチルホスフィネートを用いて合成例28と同様に行なった。粗生成物を、シリカゲルでのカラムクロマトグラフィー(PE:EE=1:5)により精製した。1.05g(th.の43%)の表題化合物を無色の高粘性油として得た。
Rf = 0.23 (PE:EE = 1:5)
1H-NMR (CDCl3), δ (ppm): 7.11-7.21 (2H, dd, J=6.3/14.3 Hz, CH2=CH); 5.76 (2H, s, N-H); 4.69-4.76 (2H, dd, J=1.4/14.1 Hz, CH2=CH, trans); 4.40-4.44 (2H, dd, J=1.6/6.3 Hz, CH2=CH, cis); 4.04-4.19 (6H, m, CH2-CH3, POCH2-CH2); 3.44-3.51 (4H, m, CH2NH); 1.26-1.35 (3H, m, CH2-CH3).
元素分析 (C12H21N2O8P:): 計算値 C: 40.91, H: 6.01, N: 7.95;
実測値 C: 40.63, H: 5.70, N: 7.90.
【0153】
合成例30:ジエチルビニルホスフェート(DEVP)の合成
【0154】
【化31】

【0155】
10mlのN−ブチルリチウム溶液(ヘキサン中2.1M溶液)を、0℃でアルゴン雰囲気下、50mlの無水THFに滴加した。溶液を0℃で30分間、室温で15時間撹拌し、次いで−76℃で3.01mlクロロホスホン酸ジエチル(20mmol)に加え、0℃で1時間、次いで室温で16時間、撹拌した。白色固体を濾別し、溶媒をロータリーエバポレーターで除去した。わずかに黄色がかった粗生成物をシリカゲルでのカラムクロマトグラフィー(PE:EE=4:1)により精製した。2.2g(th.の60%)の表題化合物を黄色がかった液体として得た。
Rf =0.48 (PE:EE = 4:1)
1H-NMR (CDCl3), δ (ppm): 6.51-6.61 (1H, dd, J=6.3/12.6 Hz, CH2=CH); 4.85-4.91 (1H, dd, J=1,2/12,6 Hz, CH2=CH, trans); 4.53-4.57 (1H, dd, J=1.2/6.3 Hz, CH2=CH, cis); 4.09-4.21 (4H, m, CH2-CH3); 1.29-1.37 (6H, m, CH2-CH3).
【0156】
合成例31:ジビニルエチルホスフェート(DVEP)の合成
【0157】
【化32】

【0158】
合成は、n−ブチルリチウム溶液(ヘキサン中2.1M溶液)/THF及びジクロロエチルホスフィネートを用いて合成例30と同様に行なった。暗黄色粗生成物を、シリカゲルでのカラムクロマトグラフィー(PE:EE=3:1)により精製した。1.9g(th.の36%)の表題化合物を黄色液体として得た。
Rf =0.42 (PE : EE = 3:1)
1H-NMR (CDCl3), δ (ppm): 6.48-6.65 (2H, dd, J=1.4/6.6 Hz, CH2=CH); 4.87-5.01 (2H, dd, J=1.1/13.5 Hz, CH2=CH, trans); 4.57-4.68 (2H, m, CH2=CH, cis); 4.14-4.32 (2H, m, CH2-CH3); 1.30-1.45 (3H, m, CH2-CH3).
元素分析 (C6H11O4P): 計算値 C: 40.46, H: 6.22;
実測値 C: 40.68, H: 6.11.
【0159】
合成例32:トリビニルホスフェート(TVP)の合成
【0160】
【化33】

【0161】
合成は、n−ブチルリチウム溶液(ヘキサン中2.1M溶液)/THF及び塩化ホスホリルを用いて合成例30と同様に行なった。橙黄色粗生成物を、シリカゲルでのカラムクロマトグラフィー(PE:EE=5:1)により精製した。1.0g(th.の26%)の表題化合物を暗黄色液体として得た。
Rf =0.43 (PE : EE = 5:1)
1H-NMR (CDCl3), δ (ppm): 6.46-6.66 (3H, m, CH2=CH); 4.86-5.09 (3H, m, CH2=CH, trans); 4.57-4.77 (3H, m, CH2=CH, cis).
【0162】
高分子量化合物の合成
が生分解性、生体適合性オリゴマー又はポリマー(例、天然物のビニルエステル)のn価ラジカルである化合物の合成は、対応するビニルエステル、ビニルカーボネート、及びビニルカルバメートの調製と同様に行なう。
【0163】
OH基含有ポリマー(例、グリコーゲン、アミロース、セルロース、又はヒドロキシエチルセルロースなどのポリサッカリド)は、例えば、DMA/LiClなどの適切な溶媒中でクロロギ酸ビニルエステルを反応させてもよい。合成例6におけるポリ乳酸ブロック共重合体の合成と同様、全てのOH終端ポリエステル(例、OH終端ポリグリコール酸)及びポリエーテル(例、PEG2000)を反応させ、対応するカーボネートを得てもよい。
【0164】
ゼラチンのリジン単位上の遊離アミノ基は、クロロギ酸ビニルエステルと自発的に反応し、対応するカルバメートを与える。それと同様に、種々の更なるポリペプチド及びタンパク質を変換し得る。キトサンも反応させることができ、この場合、等量のクロロギ酸ビニルエステルを適宜選択し、OH基の前にアミノ基を選択的に反応させる。
【0165】
【化34】

【0166】
キトサンを、ビニルエステルの調製用にも使用してもよい。この目的のために、例えば、遊離アミノ基をアクリル酸ビニルと反応させる(前記基はマイケル反応においてアクリル酸の二重結合と反応する)。ビニルエステルを得るための別の可能性が、合成例7におけるトリオキサウンデカン二酸からのTUVEの調製と同様、カルボキシエチルセルロースのPd(II)触媒反応に存在する。
【0167】
本発明による硫黄ベースのビニルエステルは、上記手順のいずれかに従って得られ得、例えば、チオールからは、例えばシステイン残基を有するポリペプチドのチオール基とクロロギ酸ビニルエステルとの反応が、やはり最も容易な方法である。
【0168】
さらに、ホスファチジルコリンなどのリン脂質の遊離P−OH基は、各酸塩化物を得るために、まず塩化オキサリルと穏やかな条件下で反応させることができる。次いで、リン脂質の所望のビニルエステルを、例30及び31と同様に行なう反応により得てもよい。
【0169】
従って、容易に反応し得る水酸基、チオール基及び/又はアミノ基などの官能基を有する、多数のポリサッカリド、ポリペプチド、ポリアミド、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリエーテル、及び脂肪酸誘導体を、各ビニルエステルへと容易に変換することができ、その後、所望の生分解性、生体適合性、架橋ポリマー(それらは例えば代用骨材料又は組織支持/代替材料として使用するのに適している)を得るために、本発明の重合性組成物へと容易に変換することができる。
【0170】
出発ポリマーの溶解性は、それを対応するビニルエステルへと変換することにより、通常顕著に改善される。しかしながら、上に示したようにほとんど固体のみが得られる。特にこれらの場合において、光重合性製剤としての使用のためには、程度の差はあっても大量の液体コモノマー及び/又は溶媒が必要である。各溶媒中のモノマーの5%未満(例えば1%)溶液も可能であるが、それらは低重合率をもたらし、その後溶媒を除去するためにしばしば大量のエネルギーを必要とすることから、本発明によれば好ましくない。ラピッドプロトタイピング手順を用いてこれらの生成物を成形することは困難でもある。当然、重度に希釈したモノマー溶液の粘度が増粘剤により実用的な値に上がる可能性はあるが、しかしながらそれも好ましくない。
【0171】
従って、本発明の以下の実施例は、粘性/液状ビニルエステルモノマー及び開始剤のみを含む、本発明の組成物の好ましい実施形態を記載する。溶媒及び添加剤の種類及び量(それらは随意に添加され得、既に上で詳細に記載されている)は、過度の実験を行なうことなく、当業者により選択され得る。
【0172】
実施例1から50:本発明の組成物の調製
単官能基及び二官能基ビニルエステルを、式(I)から(III)のモノマーとして使用し−2つのケースでは、合成例5において調製したコモノマー(2−オキソ−1,3−ジオキソラン−4−イル)メチルメタクリレート(MC)と組み合わせて−、本発明の組成物を得るために、以下のUV光開始剤(A)から(C)の1つと混合した:
開始剤A: 0.5重量%のIrgacure819(Ciba)
開始剤B: モル比1:1の1重量%のカンファーキノン及び4−ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル(CC/DMAB)
開始剤C: 2重量%のDarocur1173(Ciba)
【0173】
実施例19において、AVE/MC共重合体からなる硬化試料の表面を、生物活性剤として酵素の例としてアルカリホスファターゼ(ALP)を使用する以下の方法で改変した:
直径1.3cmの小さなポリマーのプレートを、3mlのALP溶液(2mg/ml)に浸し、4℃で16時間、pH8の0.05M Tris−HCl緩衝液中で振盪した。プレートを緩衝溶液で数回洗浄し、遊離の未反応のカーボネートMCをエタノールアミンと反応させた。
【0174】
表面上に環状カーボネートを有するポリマー上への酵素の固定化の一般的な概説は、D.C. Webster, "Cyclic carbonate functional poly-mers and their applications", Progress in Organic Coatings 47(1), 77-86 (2003)に見出だすことができる。
【0175】
このようにして、以下の実施例1から50において、本発明の各組成物E1からE50を得た。
実施例1:デカン酸ビニルエステル、DVE n=1 開始剤A
実施例2:ヘキサン酸ビニルエステル、HVE n=1 開始剤A
実施例3:N−アセチルフェニルアラニンビニルエステル、PAVE
n=1 開始剤A
実施例4:アジピン酸ジビニルエステル、AVE n=2 開始剤A
実施例5:セバシン酸ジビニルエステル、SEVE n=2 開始剤A
実施例6:オクタン二酸ジビニルエステル、KVE n=2 開始剤B
実施例7:アジピン酸ジビニルエステル、AVE n=2 開始剤B
実施例8:セバシン酸ジビニルエステル、SEVE n=2 開始剤B
実施例9:オクタン二酸ジビニルエステル、KVE n=2 開始剤B
実施例10:AVE:HVE=1:1 開始剤B
実施例11:AVE:HVE=3:1 開始剤B
実施例12:AVE:DVE=1:1 開始剤B
実施例13:AVE:DVE=3:1 開始剤B
実施例14:AVE:PAVE=1:1 開始剤B
実施例15:AVE:PAVE=3:1 開始剤B
実施例16:AVE:DVMPL=1:1 開始剤B
実施例17:AVE:DVMPL=3:1 開始剤B
実施例18:AVE:MC=20:1 開始剤B
実施例19:AVE:MC=20:1、加えて表面修飾 開始剤B
実施例20:三量体脂肪酸トリビニルエステル、TFVE
n=3 開始剤A
実施例21:トリオキサウンデカン二酸ジビニルエステル、TUVE
n=2 開始剤A
実施例22:エチレングリコールビス(ビニルカーボネート)、EGDVC
n=2 開始剤A
実施例23:ブタンジオールビス(ビニルカーボネート)、BDDVC
n=2 開始剤A
実施例24:ヘキサンジオールビス(ビニルカーボネート)、HDDVC
n=2 開始剤A
実施例25:グリセリントリス(ビニルカーボネート)、GTVC
n=3 開始剤A
実施例26:ジエチレングリコールビス(ビニルカーボネート)、DEGDVC
n=2 開始剤A
実施例27:ポリエチレングリコールビス(ビニルカーボネート)、PEGDVC
n=2 開始剤A
実施例28:2−シアノエチルビニルカーボネート、CEVC
n=1 開始剤A
実施例29:エチルビニルカーボネート、EVC n=1 開始剤A
実施例30:ヒマシ油トリス(ビニルカーボネート)、RiTVC
n=3 開始剤A
実施例31:水和ヒマシ油トリス(ビニルカーボネート)、HRiTVC
n=3 開始剤A
実施例32:ジエチレングリコールビス[O−(O’−ビニルオキシカルボニル)ポリ乳酸]、DEG(PLAVC) n=2 開始剤A
実施例33:N,N’−ジメチルエチレンジアミンビス(ビニルカルバメート)、DMEDDVCA n=2 開始剤A
実施例34:ピペラジンビス(ビニルカルバメート)、PDVCA
n=2 開始剤A
実施例35:エチレンジオキシビス(プロピルアミン)ジビニルカルバメート、JAVM
n=2 開始剤A
実施例36:ビス[アミノポリエチレングリコール(500)]アミントリビニルカルバメート、EAVM n=3 開始剤A
実施例37:サルコシンメチルエステルビニルカルバメート、SMEVCA
n=1 開始剤A
実施例38:N,O−ビス(ビニルオキシカルボニル)−N−メチルヒドロキシルアミン、MHADVC n=2 開始剤C
実施例39:N−メトキシビニルカルバメート、MVCA
n=1 開始剤C
実施例40:N−アクリロイル−N−メトキシビニルカルバメート、AMVCA
n=1 開始剤C
実施例41:ビニルオキシカルボニルホスホン酸ジエチルエステル、VCPDE
n=1 開始剤C
実施例42:EGDVC:CEVC=5:1 開始剤A
実施例43:EGDVC:EVC=5:1 開始剤A
実施例44:DMEDDVCA:PDVCA=5:1 開始剤A
実施例45:DMEDDVCA:SMEVCA=5:1 開始剤A
実施例46:2−(ジエトキシホスホリルオキシ)エチルアミンビニルカルバメート、EPEVC n=1 開始剤A
実施例47:エチルビス[2−(ビニルオキシカルボニルアミノ)エチル]ホスフェート、EBVCAEP n=2 開始剤A
実施例48:ジエチルビニルホスフェート、DEVP n=1 開始剤A
実施例49:ジビニルエチルホスフェート、DVEP n=2 開始剤A
実施例50:トリビニルホスフェート、TVP n=3 開始剤A
【0176】
比較例1から8:基準組成物の調製
比較例として技術水準を示す基準組成物C1からC8を得るために、本発明のビニルエステルモノマーに代えて、他の光重合性モノマーを、上記実施例と同様に、開始剤と混合した。
比較例1:1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、HDDA 開始剤A
比較例2:トリメチロールプロパントリアクリレート、TTA 開始剤A
比較例3:エトキシ化TTA、MG1200、ETA 開始剤A
比較例4:ポリエチレングリコールジアクリレート、MG800、PEG−DA
開始剤A
比較例5:1,4−ブタンジオールジメタクリレート、BDMA 開始剤A
比較例6:1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、HDDA 開始剤B
比較例7:ポリエチレングリコールジアクリレート、MG800、PEG−DA
開始剤B
比較例8:TTA:ETA=1:1 開始剤B
【0177】
硬化試験
硬化試験には、本発明の組成物E1からE6、E20からE41、及びE46からE50(上記のように得た)、並びに基準組成物C1からC5を使用した。光DSC測定には、これらの組成物それぞれおよそ5mgを、アルミニウム製のDSCディッシュに正確に測りとり、ディッシュを、5分間窒素でフラッシュした測定セルの右のセンサー上に置いた。各組成物の重合した試料を含むディッシュを左のセンサー上に置き、基準とした。ディッシュをセンサー上に置いた2.0分後に、DSC装置の記録を開始し、1.0分後、照射を開始した。波長範囲λ=320〜500nmのUVフィルターを備えた導波管(EXFO Omnicureシリーズ2000)を線源として使用した。DSCラインが一定になったとき、測定を停止した。全ての測定を窒素下で行なった。
【0178】
DSC測定の結果、最大熱流量tmaxの時間(最も高い重合速度([s])に達するまでの時間に相当する)、ピーク面積ΔH(重合の過程で放出される熱量([J/g])に相当する)、及びピークの高さh([mW/mg])を決定した。二重結合変換は、以下の等式(1)に従い、ピーク面積ΔH、モノマーの分子量MG、及び各モノマーの理論重合熱(ΔH)から計算した:
【0179】
【数1】

【0180】
ΔH 重合熱[J/モル](ピーク面積)
ΔH 個別成分の理論重合熱[J/モル]
【0181】
更に、重合速度Rを、ピークの高さ、理論重合熱、及び樹脂の密度ρから、
以下のように計算することができる(式2):
【0182】
【数2】

【0183】
重合速度[モルl−1−1
h ピークの高さ[mW/mg]
ρ 樹脂の密度[g/dm
【0184】
測定結果を以下の表1に記載する。
【0185】
【表2−1】

【0186】
【表2−2】

【0187】
式(I)の二官能基モノマーを使用するそれらの実施例の組成物は、一般に良好〜非常に良好な重合速度Rで硬化することが理解され得る。予想通り、ほとんどの一官能基モノマーはゆっくりと硬化したが、それでも二官能基及び三官能基の比較例の範囲内の重合速度を有していた。実施例20、36、及び特に50のモノマーのみが、顕著にゆっくりと硬化したが、それは、最初の2つのモノマーの場合には、高分子モノマーの低い移動度及びそれ故のビニルエステル基間の長い距離に起因すると推測され、実施例50の場合には、実施例50は三官能性であるが、三リン酸の安定化効果に起因すると推測される。その観点から、実施例49の二官能性リン酸エステル、並びに実施例40及び41の「一官能基」モノマーの好成績は、多少驚くべきことである。後者2つの場合、これは、一方において実施例40では追加のアクリロイル基の存在(それ故、この実施例においてモノマーは実際に二官能性である)に起因すると推測され、他方において実施例41ではホスホン酸基及び低分子量に起因すると推測される。同数の官能基を有する同じ大きさのモノマー(例、E22及びC5又はE23及びC1)を比較すると、新規モノマーの反応性は、高反応性アクリレートのものと、今までインプラント用に使用されているそれらのメタクリレートのものとの間にあることが、容易に理解され得る。ほとんど全ての本発明の組成物は、比較例の重合速度に達し、あるいは、多くの場合、より高い重合速度さえ示した。
【0188】
本発明の組成物のtmaxの値は、大半は、ほとんどの比較例(C5(メタクリレートであり、メタクリレートは実際においてほとんどの場合アクリレートより好まれる)を除く)のものよりも高かったが、特に、本発明の好ましい組成物においては、少なくとも35%、より好ましくは50%の二官能性又は多官能性の(それ故迅速に硬化する)ビニルエステルがいずれにせよ架橋剤として使用されるため、本発明の実際の実施のために許容可能な範囲内である。実施例40、47、及び25は全ての本発明の組成物のうち最も良い成績を示し、比較例のうちの最も迅速に開始する混合物の範囲内である。
【0189】
試験した全ての組成物の二重結合変換DBCは、比較例のものの範囲内であり、実施例41のホスホン酸誘導体が最も良い値となった。さらに、実施例48及び49の2つの二官能性ビニルホスフェートも非常に高いDBC値となり、実施例50の三官能性リン酸エステルも平均を超える結果となったことは、注目に値する。従って、試験した本発明の組成物は、商業的な製品の実用的な調製に適している。それとは別に、比較的低い反応性を示すことが知られているビニルエステル−そのカーボネート形、カルバメート形及びホスフェート形も−は、塊状重合反応において、驚くほど高い反応性を示し、それはアクリレート(メタクリレート)のもの(基準として働き、商業的に広く普及している)と同程度である。
【0190】
毒性試験
A)骨芽細胞
毒性を評価するために、骨芽細胞様細胞MC3T3−E1(供給元:ATCC CRL−2596)を使用した。まず、接着細胞を、プロナーゼを用いてお互い及びペトリ皿の底から分離し、次いで、当初の1g/lから4.5g/lのグルコース濃度まで追加のグルコースを添加し、並びに10%FCS(ウシ胎仔血清)、30μg/mlゲンタマイシン(広域抗生物質)、L−グルタミン(400mg/l)、及びアスコルビン酸(50mg/l)を添加した、市販の最少必須培地イーグルアルファ改変(αMEM)からなる新たに調製した培地と混合し、40,000細胞/mlの細胞濃度とした。この細胞懸濁液1mlをマルチウェルプレートの各ウェル(直径1.9cm)にプレチャージした。
【0191】
細胞を含むマルチウェルを、実施例及び比較例で使用したモノマーの量を次第に増加させて、5%COを含む加湿雰囲気下、37℃で5日間インキュベートした。次いで細胞をリン酸緩衝生理食塩水で洗浄し、細胞を破壊するために測定まで凍結した。細胞を融解した後、デオキシリボ核酸の量(細胞数に比例する)を、蛍光色素で染色し、(360nmの励起の後)460nmの蛍光を測定し、そして予め準備した検量線と値を比較することにより、決定した。コントロールと比較して、半分の細胞が生存した補間濃度を、「in vitro LC50」という。結果を以下の表2に記載する。
【0192】
【表3−1】

【0193】
【表3−2】

【0194】
表は、本発明の組成物に用いるビニルエステルモノマーが、比較例のアクリレートよりも、少なくとも二桁、骨芽細胞に対して低毒性であることを示す。本発明のモノマーAMVCA(N−アクリロイル−N−メトキシビニルカルバメート)は、唯一の例外であり、そこに含まれるアクリロイル基に起因して、比較例の大部分と同様に有毒である。このことは、in vivoで用いられるポリマー用のモノマーとして有毒なアクリレートを使用することを避けるという本発明の目的を、明確にし、確認する。従って本発明の新規化合物N−アクリロイル−N−メトキシビニルカルバメート(その重合特性に起因して、多様な用途のための価値のあるモノマーである)は、最終ポリマー生成物中に残存するモノマーが含まれないようにしなければならないことから、請求項1の本発明の組成物に限られた方法でのみ使用し得る。このことは、例えば、抽出、再沈殿などの、ポリマーの後処理により保証され得る。
【0195】
B)内皮細胞
式(I)のモノマーの追加の毒性試験のために、ヒト臍静脈内皮細胞(HUVEC)を使用した。コンフルエントな初代培養をトリプシン処理した後、細胞を、20%ウシ胎仔血清を含む市販のMedium199に懸濁し、40,000細胞/cmの濃度で96ウェル細胞培養プレート中に入れ、再びコンフルエントになるまで培養した(37℃、5%CO)。次いで細胞上清を除去し、内皮細胞を、モノマー濃度を増加させて(10%ウシ胎仔血清を含むMedium199中、0.1nMから1mM)、24時間インキュベートした。細胞増殖への影響を、非放射性細胞増殖及び細胞毒性試験(EZ4U、Biomedica、ウィーン)により調べた。この試験は、生細胞による無色のテトラゾリウム塩から強く着色したホルマザン誘導体への変換に基づく。光化学的に測定する染色は、試料中の生細胞数に比例する。従って、細胞の増殖への試験物質の影響を、測光法により決定し得る。モノマー溶液を添加せずに培養した内皮細胞を、生育コントロールとして使用した。下記表3は、半値最大増殖阻害、Cmax1/2となったモノマー濃度を示す。
【0196】
【表4】

【0197】
この表は、本発明の組成物に用いる式(I)のビニルエステルモノマーの細胞による耐容性が、アクリレートのものよりも少なくとも二桁良いことを明確に示す。
【0198】
生体適合性試験
A)試料体の調製
生体適合性を評価するために、実施例E7からE19及び比較例C6からC8の組成物を使用して、試料体を調製した。
【0199】
小さな円形プレートを調製するために、混合物をシリコーンの型に流し込み、窒素雰囲気下、UV設備(Hg高圧ランプ、フィルターなし、1000W)上で硬化させた。このようにして得られた試料体を、残存するモノマーを除去するために、超音波浴中、有機溶媒及び水で抽出した。抽出したポリマー体をUV光の照射により滅菌した。
【0200】
更なる基準として、即ち比較例9として、MW1400のポリカプロラクトン(シグマアルドリッチより入手可能)を融解し、またシリコーンの型に流し込み、プレートを得た。
【0201】
B)骨芽細胞での試験
生体適合性を調べるために、骨芽細胞様細胞MG−63(ATCC CRL−1427)(毒性試験について記載したのと同様に調製し、同じ培地に懸濁し、上記と同様に、試料体を入れたマルチウェルプレートのウェルに分注した)を使用した。
【0202】
マルチウェルを、試料体の存在下、5%COを含む加湿雰囲気下、37℃で3日間インキュベートした。次いで、生細胞の代謝活性(細胞の生命力)を、毒性試験について上記したのと同様にEZ4U試験(Biomedica、ウィーン)により、測光法により決定し、細胞培養ディッシュ上の細胞活性(細胞を、商業的に入手可能な培養ディッシュ上に培養し、生育コントロールとして使用した)と関連付けた。下記表4には、各試料体例について、コントロールに対する割合(コントロール=100%の細胞)として、試料中の含まれる細胞数を記載する。
【0203】
【表5】

【0204】
表は、比較例の試料体は、細胞数を顕著に減少させ、一方本発明の組成物から調製した試料体は細胞を増殖させさえしたことを明確に示す。
【0205】
C)内皮細胞での試験
生体適合性試験のために、ヒト臍静脈内皮細胞(HUVEC)を再び使用した。コンフルエントな初代培養をトリプシン処理した後、細胞を、20%ウシ胎仔血清(FCS)を含むMedium199に懸濁し、試験する試料体上に置いた(40,000細胞/cm)。24時間の培養(37℃、5%CO)後、細胞上清を除去し、内皮細胞をリン酸緩衝生理食塩水(PBS)で洗浄し、10%FCSを含むMedium199で1時間平衡化した。次いで細胞増殖を、EZ4U試験により決定した。細胞接着を改善するために、特別に前処理したプラスチックカバースリップ(「細胞培養処理プラスチックカバースリップ」、サーマノックス(登録商標)、Fa.Nunc)上の内皮細胞の増殖を比較の目的で測定し、100%とした。表5には、データを複数の測定の平均値として記載する。
【0206】
【表6】

【0207】
特別に細胞接着を促進するために表面を前処理したプラスチック上に見られる細胞の2倍までの数の細胞が、本発明の組成物から調製したポリマー試料体上に蓄積したことが理解され得る。適切な表面処理の後、本発明のポリマーは、対照よりも良い値を容易に生じさせ得たが、これは実施例19から明らかとなる。それに対して、比較例から調製したポリマーは全て、(顕著に)より悪い結果を生じさせる。HDDAのみが、実施例の最も低い値に近い値を与える。
【0208】
実施例7及び比較例2の組成物から作製した試料体上に接着した内皮細胞の形態を、走査型電子顕微鏡により調べた。350×(図1a、1b)又は150×(図1c)の倍率での写真を図1に示す。図1aのアクリレートの対照(比較例2のポリマー)では、試料体にほとんど結合していない(それはそれらの丸い形から明確になる)、個別の細胞のみが見られた。それに対して、本発明の組成物E7から製造したプラスチックには、細胞は良好に接着し(それは、図1bにおいてそれらの規則正しい形から明確になる)、多数の細胞が試料体に結合していたが、それは図1cにおいて明確に見ることができる。
【0209】
機械的特性
直径5mm、高さ1mmの円形試料体(その機械的特性は、以下のようにナノインデンテーションにより測定した)を、本発明の実施例7から17、20から27、30から32、33、35、36、及び38から45の組成物、並びに比較例C1からC4、C8、及びC9のものを使用して形成させた。
【0210】
押込み硬さHIT及び押込み係数EITを、ナノインデンターXP、MTSシステムズ社を使用して決定した。この目的のために、試料体を、二液型接着剤によりアルミニウムブロックに貼り、様々な程度の粗さを有する紙やすりにより研磨し、磨いた。バーコビッチのダイヤモンドピラミッドで、押込み深さ2μm及び押込み速度0.1μm/sを使用して、押込みを行なった。最大負荷で30秒の保持時間の後、試料体を再び緩和した。押込み係数EITは、最大負荷における緩和曲線の傾きから直ちに計算することが出来る:
【0211】
【数3】

【0212】
s,i 試料及び圧子のポアソン比(全ての試料についてv=0.35)
圧子の係数[MPa]
押込み接点の減少係数[MPa]
ここで
【0213】
【数4】

【0214】
S 接触強度[N/m]
投影接触面積[m
【0215】
押込み硬さHITは、最大荷重Fmaxから計算した(W.C. Oliver, G.M. Pharr, J. Mater. Res. 7, 1564 (1992)、及びISO14577):
【0216】
【数5】

【0217】
max 最大強度[N]
ここで:
【0218】
【数6】

【0219】
maxmaxにおける押込み深さ[m]
最大負荷における緩和曲線の接線とx軸との交点[m]
ε 圧子定数
【0220】
表3には、結果を複数の測定の平均値として記載する。
【0221】
【表7−1】

【0222】
【表7−2】

【0223】
広範な様々な硬さと弾性値を示すポリマー体を、本発明の組成物から製造することが出来ることが、表から明らかになる。コモノマー、若しくは軟化剤、充填剤などの随意的な添加剤の添加により、並びに/又は、組成物の重合後の熱処理及び/若しくは抽出工程などの適切な後処理により、この多様性はさらに顕著に増加させ得る。従って、全ての点で比較例のものよりもよい結果を得ることは、容易に可能であり、このことは、本発明の組成物が、例えば医療製品用に、又は食品若しくは薬物と接触させて使用する材料用に、ヒト若しくは動物の体内又は表面において、あるいはコーティング材料として、様々な用途に使用され得ることを意味する。従って、本発明のモノマー及び組成物の産業上の利用可能性(例、組織支持材料の調製用又は組織代替材料の調製用)には、何の疑いもない。
【図面の簡単な説明】
【0224】
【図1】図1aは、比較例2の組成物から作製した試料体上に接着した内皮細胞の形態を示す走査型電子顕微鏡写真を示す図であり(倍率350×)、図1bは、実施例7の組成物から作製した試料体上に接着した内皮細胞の形態を示す走査型電子顕微鏡写真を示す図であり(倍率350×)、図1cは、実施例7の組成物から作製した試料体上に接着した内皮細胞の形態を示す走査型電子顕微鏡写真を示す図である(倍率150×)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)一般式(I)から(III)のうちの1の化合物から独立に選択される、
5から100重量%の1以上のビニルエステルモノマー:
【化1】


(ここで
Xは酸素、硫黄、窒素、及びリンから選択されるヘテロ原子であり;
nはそれぞれ独立に1から1000、好ましくは1から50、より好ましくは1から20、さらにより好ましくは1から20、さらにより好ましくは1から20、さらにより好ましくは1から10、及び特に好ましくは1から3であり、少なくとも20%のnは≧2であり;
基Rは、以下から独立に選択され
i)水素;1から30、好ましくは3から25、より好ましくは4から20、及び特に好ましくは5から15の炭素原子を有し、鎖中及び/又は鎖の末端に酸素、硫黄、窒素、及びリンから選択される1以上のヘテロ原子を随意に含み、且つ−OH、−COOH、−CN、−CHO、及び=Oから選択される1以上の置換基で随意に置換される、直鎖、分岐鎖又は環状、飽和又は不飽和、n価炭化水素基;及び
ii)ポリサッカリド、ポリペプチド、ポリアミド、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリエーテル、及び脂肪酸誘導体から選択される、生分解性、生体適合性オリゴマー及びポリマーのn価ラジカル;
mは0から4の整数であり;
基Rは、水素、−OH、=O、及びRについて列挙された選択肢から選択され;並びに
基Rは、水素、−OH、及びRについて列挙された選択肢から選択される);
b)(メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマル酸、ビニルピロリドン及びα−オレフィンモノマーから選択される、0から50重量%の1以上のエチレン性不飽和コモノマー;
c)熱開始剤及び光開始剤から選択される、0から10重量%の1以上の重合開始剤;並びに
d)水、低級アルコール、エーテル、ケトン、エステル、アミド及び炭化水素溶媒から選択される、0から95重量%の1以上の溶媒
を含む、好ましくはポリビニルアルコールベースの、生分解性、生体適合性、架橋ポリマーの調製用重合硬化性組成物。
【請求項2】
一般式(I)、(II)、又は(III)のうちの1の少なくとも1のビニルエステルモノマーが、含まれる全てのモノマーの50モルパーセントを占めることを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
全てのビニルエステルモノマーの少なくとも35モルパーセント、好ましくは少なくとも50モルパーセントが、二官能性又はより多官能性の架橋モノマーであり、nが≧2であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
少なくとも1の基Rがビニルオキシである、少なくとも1の式(III)のビニルエステルモノマーを含むことを特徴とする、請求項1から3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
少なくとも1のビニルエステルモノマーが、1,4−ブタンジオールビス(ビニルカーボネート)、2−シアノエチルビニルカーボネート、N,N’−ジメチル−1,2−エチレンジアミンビス(ビニルカルバメート)、サルコシンメチルエステルビニルカルバメート、N,O−ビス(ビニルオキシカルボニル)−N−メチルヒドロキシルアミン、N−メトキシビニルカルバメート、N−アクリロイル−N−メトキシビニルカルバメート、ビニルオキシカルボニルホスホン酸ジエチルエステル、2−(ジエトキシホスホリルオキシ)エチルアミンビニルカルバメート、エチルビス[2−(ビニルオキシカルボニルアミノ)エチル]ホスフェート、及びジビニルエチルホスフェートから選択されることを特徴とする、請求項1から4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
成分b)として使用されるコモノマーが、(メタ)アクリル酸無水物、(メタ)アクリル酸グリシジルエステル、(メタ)アクリロイルオキシコハク酸無水物、(メタ)アクリロイルオキシメチルコハク酸無水物、(メタ)アクリル酸2−オキソ−1,3−ジオキソラニルメチルエステル、ビニルコハク酸無水物、ビニレンカーボネート、及びマレイン酸無水物から選択されることを特徴とする、請求項1から5のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項7】
更なる成分e)として、重合増感剤及び阻害剤、安定剤、変性剤、軟化剤、染色剤、生物活性剤、例えば骨芽細胞などの細胞、増粘剤、並びに充填剤から選択される1以上の添加剤を含むことを特徴とする、請求項1から6のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項8】
生物活性剤が、薬物、タンパク質、抗体、及びリガンドから選択されることを特徴とする、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
1以上の添加剤が、モノマー又はコモノマーに共有結合していることを特徴とする、請求項1から8のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項10】
モノマー又はコモノマーに共有結合している少なくとも1の添加剤が、生物活性剤であることを特徴とする、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
硬化した状態の、請求項1から10のいずれか1項に記載の組成物からなる、ポリビニルアルコールベースの、生分解性、生体適合性、架橋ポリマー。
【請求項12】
請求項1から10のいずれか1項に記載の組成物を重合させることによる、請求項11に記載のポリビニルアルコールベースの、生分解性、生体適合性、架橋ポリマーの調製方法。
【請求項13】
組成物の一部が予め硬化され、その後残りの組成物が加えられ、混合物が硬化されることを特徴とする、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
重合が、ラピッドプロトタイピング又は迅速製造手順などの生成的製造工程の過程で行なわれることを特徴とする、請求項12又は13に記載の方法。
【請求項15】
ポリマーが、硬化後に1以上の後処理工程に供されることを特徴とする、請求項12から14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
後処理工程が、後硬化、熱処理、抽出、再沈殿、及び表面処理工程から選択されることを特徴とする、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
【化2】


で示される1,4−ブタンジオールビス(ビニルカーボネート)。
【請求項18】
【化3】


で示される2−シアノエチルビニルカーボネート。
【請求項19】
【化4】


で示されるN,N’−ジメチル−1,2−エチレンジアミンビス(ビニルカルバメート)。
【請求項20】
【化5】


で示されるサルコシンメチルエステルビニルカルバメート。
【請求項21】
【化6】


で示されるN,O−ビス(ビニルオキシカルボニル)−N−メチルヒドロキシルアミン。
【請求項22】
【化7】


で示されるN−メトキシビニルカルバメート。
【請求項23】
【化8】


で示されるN−アクリロイル−N−メトキシビニルカルバメート。
【請求項24】
【化9】


で示されるビニルオキシカルボニルホスホン酸ジエチルエステル。
【請求項25】
【化10】


で示される2−(ジエトキシホスホリルオキシ)エチルアミンビニルカルバメート。
【請求項26】
【化11】


で示されるエチルビス[2−(ビニルオキシカルボニルアミノ)エチル]ホスフェート。
【請求項27】
【化12】


で示されるジビニルエチルホスフェート。
【請求項28】
生分解性、生体適合性、架橋ポリマー調製用の、請求項1から10のいずれか1項に記載の組成物、又は請求項12から16のいずれか1項に記載の方法における、ビニルエステルモノマーとしての、請求項17から27のいずれか1項に記載の化合物の使用。

【図1】
image rotate


【公表番号】特表2011−505179(P2011−505179A)
【公表日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−534317(P2010−534317)
【出願日】平成20年11月21日(2008.11.21)
【国際出願番号】PCT/AT2008/000422
【国際公開番号】WO2009/065162
【国際公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【出願人】(507000729)テヒニーシェ ウニヴェルジテート ウィーン (6)
【Fターム(参考)】