説明

ポリビニルアルコール系樹脂及びその用途

【課題】 水溶液の粘度安定性、高速塗工性、架橋剤との反応性、フィルムの水溶性、延伸性、ガスバリヤー性に優れた新規なポリビニルアルコール系樹脂を提供すること。
【解決手段】 一般式(1)で表される構造単位を含有するポリビニルアルコール系樹脂。


(式中、RおよびRはそれぞれ独立してアルキル基を有していてもよい炭素数1〜3のアルキレン基である)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規のポリビニルアルコール系樹脂及びその用途に関し、さらに詳しくは、水溶液の粘度安定性、架橋剤との反応性、フィルムとしたときの水溶性、延伸性、ガスバリヤー性、乳化剤とした時のエマルジョンの放置安定性に優れたポリビニルアルコール系樹脂及びその用途に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、ポリビニルアルコール系樹脂(以下、ポリビニルアルコールをPVAと略記する)は、その優れた水溶性、界面特性、皮膜特性(造膜性、強度、耐油性等)、等を利用して、分散剤、乳化剤、懸濁剤、繊維加工剤、紙加工剤、バインダー、接着剤、フィルム等に広く用いられている。そして、特殊な場合を除いて通常は、水溶液として使用に供せられている。
その目的に合わせて種々のケン化度のPVA系樹脂が使用されるが、比較的ケン化度の高いPVA系樹脂の場合、その水溶液は、水温の低い冬期等においては、時間と共に粘度が上昇し、極端な場合にはゲル化して流動性が全くなくなることもある。また、紙加工用途などの場合、近年、高速塗工性が重要な課題となっているが、かかる高ケン化度のPVA系樹脂水溶液は、高せん断速度下で増粘し、塗工性が低下するという問題点があった。
【0003】
一方、部分ケン化型のPVA系樹脂ではこのような問題点は少ないが、水溶液が発泡しやすかったり、フィルム等の成形材料として用いた場合に、残存アセチル基に由来する酢酸臭のため、食品や化粧品などの包装素材としては使用できないというの問題点があった。
【0004】
また、PVA系樹脂からなるフィルムは優れたガスバリヤー性を示し、この特徴は高ケン化度PVA系樹脂からなるフィルムを高度に延伸することによって、さらに向上させることが可能であるが、通常の高ケン化度PVA系樹脂は延伸性に乏しく、そのフィルムは柔軟性に欠けるという問題点があった。
【0005】
上述の問題点、特に、高ケン化度PVA系樹脂水溶液の低温粘度安定性および高速塗工性の改善を目的として、種々の変性PVAが検討されており、例えば、脂肪族ビニルエステルの重合の際に重合機内の圧力を大気圧よりも高い圧力に保ち、大気圧下での反応液の沸点温度より2〜80℃高い温度で重合し、得られた脂肪族ポリビニルエステルをケン化してなるPVA系樹脂(例えば、特許文献1参照。)、および、かかるPVA系樹脂を主成分とする高速塗工性に優れたPVA系紙コート剤(例えば、特許文献2参照。)が提案されている。
また、本出願人も、側鎖に1,2−グリコール成分を含有するPVA系樹脂を提案している(例えば、特許文献3、および特許文献4参照。)。
【特許文献1】特開平11−279210号
【特許文献2】特開平11−279986号
【特許文献3】特開2002−284818号
【特許文献4】特開2004−285143号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1および特許文献2の開示技術では、重合温度を上げるために加圧する必要があるため、製造上加圧設備を設けなければならないといった問題点があり、又、得られたPVA系樹脂は、その主鎖中に1,2−グリコール結合が存在するため、耐熱性に乏しく、着色し易いという欠点があった。更に、導入できる1,2−グリコール量の制御も容易ではなく、水溶液の粘度安定性や高速塗工時の塗工性についてもまだまだ満足のいくものではなく、更なる向上が求められており、また、存在する水酸基がすべて2級アルコールであるため、架橋剤等との反応性においても充分ではなかった。
【0007】
また、特許文献3および特許文献4に開示されたPVA系樹脂は、下記一般式(3)に示される構造単位を有する変性PVA系樹脂であり、水溶液の粘度安定性や粘度安定性に優れ、高速塗工時の高剪断速度下においても良好な流動性を有し、1級水酸基の存在によって架橋剤との反応性が高く、低結晶性であるにもかかわらず分子内および分子間の水素結合力が維持されており、耐水性に優れたフィルムを得ることができるものであるが、共重合によって導入された一般式(3)の構造単位あたりの1級水酸基がひとつであるため、所望の特性を得る為には、変性量を多くしなければならないという課題が残されているものであった。
【化1】

【課題を解決するための手段】
【0008】
しかるに、本発明者はかかる事情に鑑み鋭意研究を重ねた結果、下記一般式(1)で表される構造単位を含有する新規PVA系樹脂が上記目的に合致することを見出し、本発明を完成した。
【化2】

(式中、RおよびRはそれぞれ独立してアルキル基を有していてもよい炭素数1〜3のアルキレン基である)
【発明の効果】
【0009】
本発明の新規PVA系樹脂は、特定の構造単位を有しており、高ケン化度品であっても低結晶性であるため、水溶性、水溶液の粘度安定性、高速塗工性に優れ、フィルムとしたときの延伸性に優れ、低結晶性にもかかわらず水素結合力が維持されている為、ガスバリヤー性に優れ、さらに各種架橋剤との反応性に優れるため、接着剤、成形物、包装材用水溶性フィルム、被覆剤、紙加工剤、乳化剤、懸濁剤、ガスバリヤー性フィルム、偏光フィルム等の用途に好適である。
また、一般式(1)で表される構造単位中に、1級水酸基が二個存在するため、比較的少ない変性量で上述の特徴が得られるため、経済的にもメリットが大きい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明について詳述する。
本発明の新規PVA系樹脂は、下記一般式(1)で示される構造単位を有するPVA系樹脂である。
【化3】

上記一般式(1)において、R及びRはそれぞれ独立してアルキル基を有していてもよい炭素数1〜3のアルキレン基である。
【0011】
かかるPVA系樹脂を得るに当たっては、特に限定されないが、ビニルエステル系単量体と下記一般式(2)で示される化合物との共重合体をケン化する方法が好ましく用いられる。
[化4]
RO−R−CH=CH―R−OR (2)
上記一般式(2)において、R及びRはそれぞれ独立してアルキル基を有していてもよい炭素数1〜3のアルキレン基であり、R及びRは、それぞれ独立して水素原子または−CO−R基(式中、Rは、アルキル基、好ましくはメチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基またはオクチル基であり、かかるアルキル基は必要に応じて、ハロゲン基、水酸基、エステル基、カルボン酸基、スルホン酸基等の置換基を有していてもよい)である。
一般式(2)で示される具体的な化合物としては、1,4−ジヒドロキシ−2−ブテン、1,4−ジアシロキシ−2−ブテン、1−ヒドロキシ−4−アシロキシ−2−ブテン、1,4−ジアシロキシ−1−メチル−2−ブテン、1,5−ジアシロキシ−2−ペンテン、1,6−ジアシロキシ−2−ヘキセン、1,6−ジアシロキシ−3−ヘキセンなどが挙げられ、なかでも、共重合反応性および工業的な取り扱いにおいて優れるという点で、R、Rがメチレン基で、R、Rが−CO−Rで、Rがアルキル基である1,4−ジアシロキシ−2−ブテンが好ましく、そのなかでも特にRがメチル基である1,4−ジアセトキシ−2−ブテンがより好ましい。
【0012】
ビニルエステル系単量体としては、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バレリン酸ビニル、酪酸ビニル、イソ酪酸ビニル、ピバリン酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、安息香酸ビニル、バーサチック酸ビニル等が挙げられる。なかでも、経済的な点から酢酸ビニルが好ましく用いられる。
【0013】
また、本発明においては、上記の共重合成分以外にも本発明の目的を阻害しない範囲において、他の単量体を0.5〜10モル%程度共重合させることも可能で、例えばエチレン、プロピレン、イソブチレン、α−オクテン、α−ドデセン、α−オクタデセン等のオレフィン類、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸等の不飽和酸類あるいはその塩あるいはモノ又はジアルキルエステル等、アクリロニトリル、メタアクリロニトリル等のニトリル類、ジアセトンアクリルアミド、アクリルアミド、メタクリルアミド等のアミド類、エチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、メタアリルスルホン酸等のオレフィンスルホン酸あるいはその塩、アルキルビニルエーテル類、ジメチルアリルビニルケトン、N−ビニルピロリドン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、ポリオキシエチレン(メタ)アリルエーテル、ポリオキシプロピレン(メタ)アリルエーテル等のポリオキシアルキレン(メタ)アリルエーテル、ポリオキシエチレン(メタ)アクリレート、ポリオキシプロピレン(メタ)アクリレート等のポリオキシアルキレン(メタ)アクリレート、ポリオキシエチレン(メタ)アクリルアミド、ポリオキシプロピレン(メタ)アクリルアミド等のポリオキシアルキレン(メタ)アクリルアミド、ポリオキシエチレン(1−(メタ)アクリルアミド−1,1−ジメチルプロピル)エステル、ポリオキシエチレンビニルエーテル、ポリオキシプロピレンビニルエーテル、ポリオキシエチレンアリルアミン、ポリオキシプロピレンアリルアミン、ポリオキシエチレンビニルアミン、ポリオキシプロピレンビニルアミン等が挙げられる。
【0014】
さらに、N−アクリルアミドメチルトリメチルアンモニウムクロライド、N−アクリルアミドエチルトリメチルアンモニウムクロライド、N−アクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロライド、2−アクリロキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド、2−メタクリロキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド、2−ヒドロキシ−3−メタクリロイルオキシプロピルトリメチルアンモニウムクロライド、アリルトリメチルアンモニウムクロライド、メタアリルトリメチルアンモニウムクロライド、3−ブテントリメチルアンモニウムクロライド、ジメチルジアリルアンモニウムクロライド、ジエチルジアリルアンモニウムクロライド等のカチオン基含有モノマー、アセトアセチル基含有モノマー、3,4−ジアセトキシ−1−ブテン、エチレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネート、グリセリンモノアリルエーテル、酢酸イソプロペニル、1−メトキシビニルアセテート等も挙げられる。
【0015】
上記のビニルエステル系単量体と一般式(2)で示される化合物(さらには他の単量体)を共重合する方法としては、特に制限はなく、塊状重合、溶液重合、懸濁重合、分散重合、またはエマルジョン重合等の公知の方法を採用することができるが、通常は溶液重合が行われる。
共重合時の単量体成分の仕込み方法としては特に制限されず、一括仕込み、分割仕込み、連続仕込み等任意の方法が採用されるが、一般式(1)で示される構造単位が共重合体の分子鎖中に均一に分布させられる点で、滴下重合が好ましく、特にはHANNA法に基づく重合方法が好ましい。
また、重合度調整や末端基を変性する目的で、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド等のアルデヒド化合物や、チオ酢酸、ドデシルメルカプタン、ラウリルメルカプタン等のメルカプタン化合物などの各種連鎖移動剤を使用することも可能である。
【0016】
かかる共重合で用いられる溶媒としては、通常、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n−プロパノール、ブタノール等の低級アルコールやアセトン、メチルエチルケトン等のケトン類等が挙げられ、工業的には、メタノールが好適に使用される。
溶媒の使用量は、目的とする共重合体の重合度に合わせて、溶媒の連鎖移動定数を考慮して適宜選択すればよく、例えば、溶媒がメタノールの時は、S(溶媒)/M(単量体)=0.01〜10(重量比)、好ましくは0.05〜3(重量比)程度の範囲から選択される。
【0017】
共重合に当たっては重合触媒が用いられ、かかる重合触媒としては、例えばアゾビスイソブチロニトリル、過酸化アセチル、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウリル等の公知のラジカル重合触媒やアゾビスジメチルバレロニトリル、アゾビスメトキシジメチルバレロニトリル等の低温活性ラジカル重合触媒等が挙げられ、重合触媒の使用量は、触媒の種類により異なり一概には決められないが、重合速度に応じて任意に選択される。例えば、アゾイソブチロニトリルや過酸化アセチルを用いる場合、ビニルエステル系単量体に対して0.01〜0.2モル%が好ましく、特には0.02〜0.15モル%が好ましい。
また、共重合反応の反応温度は、30℃〜沸点程度で行われ、より具体的には、35〜150℃、好ましくは40〜75℃の範囲で行われる。
【0018】
本発明においては、一般式(2)で示される化合物の共重合割合は特に限定されないが、後述の一般式(1)で示される構造単位の導入量に合わせて共重合割合を決定すればよい。
【0019】
得られた共重合体は、次いでケン化されるのであるが、かかるケン化にあたっては、上記で得られた共重合体をアルコール又は含水アルコールに溶解し、アルカリ触媒又は酸触媒を用いて行われる。アルコールとしては、メタノール、エタノール、プロパノール、tert−ブタノール等が挙げられるが、メタノールが特に好ましく用いられる。アルコール中の共重合体の濃度は系の粘度により適宜選択されるが、通常は10〜60重量%の範囲から選ばれる。ケン化に使用される触媒としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ナトリウムメチラート、ナトリウムエチラート、カリウムメチラート、リチウムメチラート等のアルカリ金属の水酸化物やアルコラートの如きアルカリ触媒、硫酸、塩酸、硝酸、メタスルフォン酸、ゼオライト、カチオン交換樹脂等の酸触媒が挙げられる。
【0020】
かかるケン化触媒の使用量については、ケン化方法、目標とするケン化度等により適宜選択されるが、アルカリ触媒を使用する場合は通常、ビニルエステル系単量体及び一般式(2)で示される化合物の合計量1モルに対して0.1〜30ミリモル、好ましくは2〜15ミリモルの割合が適当である。
また、ケン化反応の反応温度は特に限定されないが、10〜60℃(特には、20〜50℃)であることが好ましい。
【0021】
本発明のPVA系樹脂の平均重合度(JIS K6726に準拠して測定)は使用目的により適宜選択され、特に限定されないが、通常は300〜4000(さらには300〜2600、特には500〜2200)であることが好ましく、かかる平均重合度が300未満の場合、塗膜やフィルム強度が低くなる場合があるため好ましくなく、4000を超えると一般式(1)で示される構造単位の導入量を本発明の効果が得られる程度まで多くすることが困難となったり、重合速度が極端に遅くなったりする場合があるため好ましくない。
【0022】
また、かかるPVA系樹脂のケン化度は特に限定されず、使用目的により適宜選択されるが、通常は60モル%以上(さらには70モル%以上、特には80モル%以上)であることが好ましく、かかるケン化度が60モル%未満では水溶性が低くなるため、好ましくない。
【0023】
また、本発明のPVA系樹脂における一般式(1)で示される構造単位の含有量は、特に限定されないが、0.1〜20モル%(さらには0.5〜15モル%、特には1〜10モル%)であることが好ましい。かかる一般式(1)で示される構造単位の含有量が0.1モル%未満である場合、本発明の効果が充分に得られなず、逆に20モル%を超えると、PVA系樹脂の重合度が低くなり、その結果充分な塗膜強度やフィルム強度が得られなかったり、耐水性が不足する場合があるため好ましくない。
【0024】
かくして得られた一般式(1)で示される構造単位を含有するPVA系樹脂は高ケン化度であっても低結晶性であるため、水への溶解速度が大きく、水溶液の粘度安定性にも優れており、高速塗工時の高せん断速度下においても増粘することなく良好な塗工性を有するものである。
【0025】
また、本発明のPVA系樹脂は種々の有機系および無機系架橋剤を併用することで、耐水性を付与することが可能である。かかる有機系架橋剤としてはアルデヒド系化合物(ホルムアルデヒド、グリオキザール、グルタルジアルデヒド等)、アミノ樹脂(尿素樹脂、グアナミン樹脂、メラミン系樹脂)、メチロール化合物(メチロール化メラミン、メチロール化尿素、メチロール化ビスフェノールS等)、エポキシ系化合物(水溶性エポキシ樹脂、ポリアミドポリアミンエピクロルヒドリン等)、ヒドラジド化合物(アジピン酸ジヒドラジド、カルボジヒドラジド、ポリヒドラジド等)、イソシアネート系化合物などが挙げられる。また、無機系架橋剤としては、ホウ酸、ホウ酸塩(ホウ砂等)、チタニウム化合物(テトラアルコキシチタネート等)、アルミニウム化合物(硫酸アルミニウム、塩化アルミニウム、硝酸アルミニウム等)、リン化合物(亜リン酸エステル、ビスフェノールA変性ポリリン酸等)、アルコキシ基やグリシジル基などの反応性官能基を有するシリコーン化合物、ジルコニウム化合物などの金属系架橋剤が有効であり、中でもイソシアネート系化合物やジルコニウム化合物が好適である。
【0026】
かかるイソシアネート系化合物としては、トリレンジイソシアネート(TDI)、水素化TDI、トリメチロールプロパン−TDIアダクト(例えばバイエル社製、「Desmodur L」)、トリフェニルメタントリイソシアネート、メチレンビスジフェニルイソシアネート(MDI)、水素化MDI、重合MDI、ヘキサメチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、4,4−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等が挙げられる。その他、ポリオールに過剰のポリイソシアネートで予めポリマー化した、末端基がイソシアネート基を持つプレポリマーも挙げられる。かかるイソシアネート系化合物の配合割合としては、イソシアネート基と水酸基のモル比(NCO/OH)が0.1〜2であることが好ましい。
【0027】
また、かかるジルコニウム化合物としては、塩化ジルコニウム、酢酸ジルコニウム、酢酸ジルコニル、硝酸ジルコニウム、硝酸ジルコニル、硫酸ジルコニウム、硫酸ジルコニル、ジルコニウムアセチルアセトネート、炭酸ジルコニウムアンモニウム、炭酸ジルコニウムカリウム、オクチル酸ジルコニル、オキシ塩化ジルコニウム、ヒドロキシ塩化ジルコニウム、ヒドロキシ塩化ジルコニル等が上げられる。中でも炭酸ジルコニウムアンモニウム、炭酸ジルコニルカリウムが好ましい。
本発明のPVA系樹脂と架橋剤による耐水性を利用した応用例としては、イソシアネート系化合物を架橋剤として用いた水性ビニルウレタン型接着剤、感熱記録用媒体の保護層、インクジェット記録用媒体(インク受容層、光沢層)などが挙げられる。
【0028】
さらに、本発明のPVA系樹脂を製膜して得られるフィルムは水溶性に優れるため、農薬、洗剤、洗濯用衣類、土木用添加剤、殺菌剤、染料、顔料等の各種物品に対する水溶性包装材として有用である。かかる水溶性包装用途に用いるときのPVA系樹脂のケン化度は、65〜98モル%が好ましい。ただし、酸性物質、あるいはアルカリ性物質を包装する場合には、そのケン化度は98.1〜100モル%が好ましく、更には99〜100モル%が好ましい。これは、かかるケン化度が98.1モル%未満では、酸性物質やアルカリ性物質を包装し保管する際に、フィルムの水溶解性が経時により低下する恐れがあるためである。
【0029】
さらに、かかるPVA系樹脂フィルムは延伸性に優れており、その一軸延伸フィルムは、柔軟性とガスバリヤー性を兼ね備えているため、衣類、食品などの包装材料素材等に好適である。
また、かかるPVA系樹脂フィルムを、プロトン酸などの脱水促進剤によって脱水処理を施した後、乾熱延伸、湿式延伸、などの公知の方法で延伸し、さらにホウ素化合物によって固定処理することで、ポリビニレン構造を有するPVAフィルムが得られ、かかるPVAフィルムは偏光フィルムとして有用である。
【0030】
また、本発明のPVA系樹脂は、各種無機粒子の分散剤として優れており、かかる特性を利用した用途として、紙の顔料コーティング用バインダーや、インクジェット記録用媒体の無機微粒子バインダーが挙げられる。かかるインクジェット記録用媒体は、本発明のPVA系樹脂と無機微粒子を含有する塗工液を紙、フィルム、レジンコーティッドペーパーなどの支持基材上に塗工してなるもので、インク受理層、光沢層のいずれに対しても適用が可能であり、その際の無機微粒子としては、インク受理層の場合には非晶質シリカが、光沢層の場合には気相法シリカ、コロイダルシリカ、アルミナゾルなどが好適であり、特に光沢層に用いた場合、優れた光沢性が得られる。
【0031】
本発明のPVA系樹脂はその特性を利用して各種用途に使用することができ、一部の用途については前述したが、さらにその他の具体例として以下のものが挙げられる。
(1)接着剤関係
木材、紙、アルミ箔、プラスチック等の接着剤、粘着剤、再湿剤、不織布用バインダー、石膏ボードや繊維板等の各種建材用バインダー、各種粉体造粒用バインダー、セメントやモルタル用添加剤、ホットメルト型接着力、感圧接着剤、アニオン性塗料の固着剤、等。
【0032】
(2)成形物関係
繊維、フィルム、シート、パイプ、チューブ、防漏膜、暫定皮膜、ケミカルレース用水溶性繊維、低結晶化や延伸性向上を目的とした各種フィルムの改質用添加剤、等。
【0033】
(3)被覆剤関係
紙のクリアーコーティング剤、紙のサイジング剤、繊維製品用サイズ剤、経糸糊剤、繊維加工剤、皮革仕上げ剤、塗料、防曇剤、金属腐食防止剤、亜鉛メッキ用光沢剤、帯電防止剤、導電剤、船底塗料、スケーリング防止剤、等。
【0034】
(4)乳化剤関係
エチレン性不飽和化合物、ブタジエン性化合物、各種アクリル系モノマーの乳化重合用乳化剤、ポリオレフィン、ポリエステル樹脂等の疎水性樹脂、エポキシ樹脂、パラフィン、ビチューメン等の後乳化剤、等。
【0035】
(5)懸濁剤関係
塗料、墨汁、水性カラー、接着剤等の顔料分散安定剤、塩化ビニル、塩化ビニリデン、スチレン、(メタ)アクリレート、酢酸ビニル等の各種ビニル化合物の懸濁重合用分散安定剤、等。
【0036】
(6)疎水性樹脂用ブレンド剤関係
疎水性樹脂の帯電防止剤、及び親水性付与剤、複合繊維、フィルムその他成形物用添加剤、等。
(7)凝集剤関係
水中懸濁物及び溶存物の凝集剤、パルプ、スラリーの濾水剤、等。
(8)増粘剤関係
各種水溶液やエマルジョンの増粘剤、等。
【0037】
(9)土壌改良剤関係
(10)感光剤、感電子関係、感光性レジスト樹脂、等。
(11)その他イオン交換樹脂、イオン交換膜関係、キレート交換樹脂、等。
上記の中でも、(1)〜(7)の用途に特にその有用性が期待される。
【0038】
なお、各種用途に適用するに当たっては、必要に応じて、可塑剤を添加することが好ましく、該可塑剤としては3価〜6価の多価アルコール(グリセリン、トリメチロールプロパン、ジグリセリン、ペンタエリスリトール、キシロール、アラビノース、リブロース、ソルビトール等)、各種アルキレンオキサイド(エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドの混合付加体等)が挙げられる。
【実施例】
【0039】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。尚、例中、「部」、「%」とあるのは、断りのない限り重量基準を意味する。
実施例1
還流冷却器、滴下漏斗、撹拌機を備えた反応缶に、酢酸ビニル1300g、メタノール520g、1,4−ジアセトキシ−2−ブテン(R、Rがメチレン基、R、Rが−CO−Rで、Rがメチル基)52.0g(2モル%)を仕込み、アゾビスイソブチロニトリルを0.1モル%(対仕込み酢酸ビニル)投入し、撹拌しながら窒素気流下で温度を上昇させ重合を行った。
その後、酢酸ビニルの重合率が83.6%となった時点で重合禁止剤を仕込み、重合を終了した。続いて、メタノール蒸気を吹き込む方法により未反応の酢酸ビニル単量体を系外に除去し共重合体のメタノール溶液を得た。
【0040】
次いで、該溶液をメタノールで希釈して濃度40%に調整してニーダーに仕込み、溶液温度を40℃に保ちながら、水酸化ナトリウムの2%メタノール溶液を共重合体中の酢酸ビニル1モルに対して8ミリモルとなる割合で加えてケン化を行った。ケン化が進行すると共にケン化物が析出し、遂には粒子状となった。生成したPVA系樹脂を濾別し、メタノールでよく洗浄して熱風乾燥機中で乾燥し、目的物を得た。
【0041】
得られたPVA系樹脂のケン化度は、残存酢酸ビニル単位の加水分解に要するアルカリ消費量で分析を行ったところ、99.7モル%であり、重合度は、JIS K 6726に準じて分析を行ったところ、840であった。又、該PVA系樹脂(I)の4%水溶液の粘度は、ヘプラー粘度計により測定したところ、8.9mPa・s(20℃)であり、変性量はNMR測定より算出したところ2.0モル%であった。
【0042】
得られたPVA系樹脂のIRスペクトル、H−NMR(溶媒:DMSO−d6)スペクトルの帰属は以下の通りであった。IRチャートを図1に、H−NMRチャートを図2に示す。
【0043】
[IR](図1参照)
3360cm−1:OH(strong)
2950、2910cm−1:メチレン(strong)
1440cm−1:メチレン(strong)
1240cm−1:メチン(weak)
1144cm−1:結晶バンド(HとOH間、strong)
1100cm−1:C−O(medium)
850cm−1:メチレン(medium)
660cm−1:OH(medeium broad)
【0044】
H−NMR](図2参照)
1.2〜1.6ppm:メチレンプロトン、メチンプロトン(変性種に起因)
3.4〜3.5ppm:メチレンプロトン(変性種に起因)
3.8〜3.9ppm:メチンプロトン
4.1〜4.6ppm:水酸基
【0045】
得られたPVA系樹脂について以下の評価を行った。結果を表1〜4に示す。
【0046】
[水溶液の粘度安定性]
PVA系樹脂の8%水溶液をガラス容器に入れ、水溶液の温度を20℃とした。次に、ガラス容器を5℃の恒温水槽内に放置して、1時間及び24時間放置後の粘度を測定し、増粘倍率を求め以下の通り評価した。
○・・・増粘倍率が1.5倍未満
△・・・増粘倍率が1.5倍以上、2.5倍未満
×・・・増粘倍率が2.5倍以上
尚、増粘倍率は下式より算出される。
増粘倍率=(5℃で24時間後の粘度)/(5℃で1時間後の粘度)
【0047】
[水溶液の発泡性]
PVA系樹脂の1%水溶液250mlを容量1Lのメスシリンダーに入れ、40℃に調温後、ディフューザーストーンを液底部に入れ、空気を0.2L/minで通気して発泡させ、5分後の水溶液と泡沫を合わせた容積を測定し、以下の通り評価した。
○・・・容積が400ml未満
△・・・容積が400ml以上、1000ml未満
×・・・容積が1000ml以上
【0048】
[高速塗工性]
PVA系樹脂の10%水溶液の30℃における高剪断速度下での粘度上昇を測定し、下記の通り評価した。尚、測定装置としては島津製作所社製のフローテスターCFT−500Cを用いた。
○・・・剪断速度が6×10/s以上で粘度上昇が極大値を示す場合
×・・・剪断速度が6×10/s未満で粘度上昇が極大値を示す場合
【0049】
[木材接着性能]
PVA系樹脂を80℃の蒸留水中で撹拌し完全に溶解した後、約15%濃度の水溶液を調製し、テフロン製の型に、かかるPVA系樹脂水溶液と架橋剤としてのイソシアネート化合物(MDI、イソシアネート基量:6.71×10−3mol/g)を入れ接着剤を作製した。
尚、イソシアネート化合物とPVA系樹脂の配合割合は、イソシアネート基とPVA系樹脂中の水酸基の割合が1:5となるように配合した。
得られた接着剤を、被着材(マカバ:平均比重0.73、含水率約12%)に塗布量が220g/mとなるように塗布し、塗布後は約1MPaで20℃×1日圧締し、その後120℃×2時間熱処理行い、シングルラップ引っ張り剪断型の試験片として、クロスヘッドスピード10mm/分で、引っ張り試験を行い、以下の通り評価した。
○・・・接着強さが40Kgf/cm以上
△・・・接着強さが30kgf/cm以上、40kgf/cm未満
×・・・接着強さが30Kgf/cm未満
【0050】
[エマルジョンの放置安定性]
攪拌機、還流冷却器、滴下漏斗、温度計を備えたセパラブルフラスコに水140部、PVA系樹脂10部、pH調整剤として酢酸ナトリウム0.02部、重合モノマー(メタクリル酸メチル/アクリル酸n−ブチル=60/40(重量比))12.5部を仕込み、攪拌しながらフラスコ内の温度を60℃に上げた。その間、窒素ガスでフラスコ内を置換しながら1%の過硫酸アンモニウム水溶液5部を添加して重合を開始した。初期重合を30分間行ない、残りの重合モノマー112.5部を4時間かけて滴下し、さらに1%の過硫酸アンモニウム水溶液5部を1時間毎に4回添加し、重合を行った。その後、75℃で1時間熟成した後、冷却して、固形分45%のメタクリル酸メチル/アクリル酸n−ブチル共重合体の水性エマルジョンを得た。
450mlマヨネーズ瓶に得られたエマルジョン300gを入れ、BROOKFIELD型粘度計にて、25℃でのエマルジョン粘度(V)を測定し、さらに、60℃の恒温槽内に10日間放置した後、25℃でのエマルジョン粘度(V10)を測定して、その粘度比(V10/V)を求めた。
【0051】
[インクジェット記録用媒体の光沢性]
PVA系樹脂15部を水85部に溶解させたものに、コロイダルシリカ(WRグレース社製「Ludox AS−40」、粒径20nm、固形分40%)をPVA系樹脂/コロイダルシリカ=1/2(固形分重量比)となるように混合し、ホモジナイザー(特殊機化工業社製「T.K.ROBOMICS」)にて5000rpmで5分間攪拌し、固形分15%の塗工液を作製した。
かかる水分散液を坪量270g/mの上質紙上に50μmのアプリケーターにて塗工し、105℃の熱風乾燥機中で5分間乾燥させて厚み7.5μmの塗工層を形成してインクジェット記録用媒体を得た。
得られたインクジェット記録用媒体の法線に対して60度の光沢度を、変角光度計(日本電色工業社製「VG−Σ80」)を使用し測定した。
【0052】
[フィルムの水溶性]
PVA系樹脂の10%水溶液を60℃の熱ロールに流延し厚さ30μmのキャストフィルムを作成した。フィルムを40mm×40mmに切り、これをスライドマウントにはさみ、20℃で攪拌している水中に浸漬し、フィルムが完全に溶解するまで時間(秒数)を測定し以下の基準で評価した。
○・・・30秒以内
△・・・30秒以上、60秒未満
×・・・60秒以上
【0053】
[フィルムの延伸性]
PVA系樹脂の10%水溶液を60℃の熱ロールに流延し、厚さ100μmのキャストフィルムを作製した。かかるフィルムより200mm×40mmの試験片を切り出し、精密万能試験機(島津製作所社製「オートグラフIS−5000」)により、150℃で200mm/minの速度で6倍の長さになるまで延伸し、以下の基準で評価した。
○・・・フィルムが破断せず
×・・・フィルムが破断
【0054】
[フィルムのガスバリヤー性]
PVA系樹脂の10%水溶液をPETフィルム上に流延し、23℃、50%RHの雰囲気下で48時間放置後、五酸化リン入りデシケーター中に2週間静置して乾燥させ、厚さ3μmおよび20μmのキャストフィルムを作製した。厚さ3μmのフィルムを用い、湿度0%RHの酸素透過度を酸素透過度測定装置(MOCON社製「OXTRAN2/20」)を用いて測定、湿度37%RHおよび52%RHの酸素透過度を酸素透過度測定装置(MOCON社製「OXTRAN TWIN」)を用いて測定した。また、厚さ20μmのフィルムを用い、湿度81%RHの酸素透過度を酸素透過度測定装置(MOCON社製「OXTRAN TWIN」)を用いて測定し、厚さ3μmの値に換算した。
【0055】
実施例2
還流冷却器、滴下漏斗、撹拌機を備えた反応缶に、酢酸ビニル1300g、メタノール104g、1,4−ジアセトキシ−2−ブテン(R、Rがメチレン基、R、Rが−CO−Rで、Rがメチル基)27.6g(1.06モル%)を仕込み、アゾビスイソブチロニトリルを0.1モル%(対仕込み酢酸ビニル単量体)投入し、撹拌しながら窒素気流下で温度を上昇させ、67℃で重合を開始したと同時に1,4−ジアセトキシ−2−ブテンの20%メタノール溶液の仕込みをHANNA法に従って開始し、重合率80.5%までに46ml仕込んだ。
酢酸ビニルの重合率が80.5%となった時点で、重合を終了し、続いて、メタノール蒸気を吹き込む方法により未反応の酢酸ビニル単量体を系外に除去し共重合体のメタノール溶液を得た。
【0056】
次いで、該溶液をメタノールで希釈して濃度40%に調整してニーダーに仕込み、溶液温度を40℃に保ちながら、水酸化ナトリウムの2%メタノール溶液を共重合体中の酢酸ビニル1モルに対して7ミリモルとなる量を加えてケン化を行った。ケン化が進行すると共にケン化物が析出し、遂には粒子状となった。生成したPVA系樹脂を濾別し、メタノールでよく洗浄して熱風乾燥機中で乾燥し、目的物を得た。
【0057】
得られたPVA系樹脂のケン化度は、残存酢酸ビニル単位の加水分解に要するアルカリ消費量で分析を行ったところ、99.2モル%であり、重合度は、JIS K 6726に準して分析を行ったところ、1290であった。又、該PVA系樹脂の4%水溶液の粘度は、ヘプラー粘度計により測定したところ、17.0mPa・s(20℃)であり、変性量はNMR測定より算出したところ1.5モル%であった。
得られたPVA系樹脂について実施例1と同様の評価を行った。結果を表1〜4に示す。
【0058】
実施例3
還流冷却器、滴下漏斗、撹拌機を備えた反応缶に、酢酸ビニル1300g、メタノール65g、1,4−ジアセトキシ−2−ブテン(R、Rメチレン基、R、Rが−CO−Rで、Rがメチル基)154.6g(6モル%)を仕込み、アゾビスイソブチロニトリルを0.1モル%(対仕込み酢酸ビニル)投入し、撹拌しながら窒素気流下で温度を上昇させ重合を行った。
その後、酢酸ビニルの重合率が65.2%となった時点で重合禁止剤を仕込み、重合を終了した。続いて、メタノール蒸気を吹き込む方法により未反応の酢酸ビニル単量体を系外に除去し共重合体のメタノール溶液を得た。
【0059】
次いで、該溶液をメタノールで希釈して濃度40%に調整してニーダーに仕込み、溶液温度を40℃に保ちながら、水酸化ナトリウムの2%メタノール溶液を共重合体中の酢酸ビニル1モルに対して7ミリモルとなる割合で加えてケン化を行った。ケン化が進行すると共にケン化物が析出し、遂には粒子状となった。生成したPVA系樹脂を濾別し、メタノールでよく洗浄して熱風乾燥機中で乾燥し、目的物を得た。
【0060】
得られたPVA系樹脂のケン化度は、残存酢酸ビニル単位の加水分解に要するアルカリ消費量で分析を行ったところ、99.3モル%であり、重合度は、JIS K 6726に準じて分析を行ったところ、690であった。又、該PVA系樹脂(I)の4%水溶液の粘度は、ヘプラー粘度計により測定したところ、6.9mPa・s(20℃)であり、変性量はNMR測定より算出したところ5.9モル%であった。
【0061】
比較例1
実施例1において、1,4−ジアセトキシ−2−ブテンを仕込まないで、酢酸ビニルのみを重合(S/M=0.8、S:メタノール、M:酢酸ビニル)し、ケン化を行った以外は同様に行い、PVA系樹脂を得た。
得られたPVA系樹脂のケン化度は、残存酢酸ビニル単位の加水分解に要するアルカリ消費量で分析を行ったところ、99.5モル%であり、重合度は、JIS K 6726に準じて分析を行ったところ、860であった。又、該PVA系樹脂(I)の4%水溶液の粘度は、ヘプラー粘度計により測定したところ、9.1mPa・s(20℃)であった。
得られたPVA系樹脂について実施例1と同様の評価を行った。結果を表1〜4に示す。
【0062】
比較例2
実施例1において、メタノールの仕込み量を845gとし、1,4−ジアセトキシ−2−ブテンに替えて、3,4−ジアセトキシ−1−ブテンを用い、アゾビスイソブチロニトリルを0.08モル%(対仕込み酢酸ビニル)投入し、酢酸ビニルの重合率が91.2%となった時点で重合禁止剤を仕込んだ以外は実施例1と同様に重合及びケン化を行いPVA系樹脂を得た。
得られたPVA系樹脂のケン化度は、残存酢酸ビニル単位の加水分解に要するアルカリ消費量で分析を行ったところ、99.6モル%であり、重合度は、JIS K 6726に準じて分析を行ったところ、850であった。又、該PVA系樹脂(I)の4%水溶液の粘度は、ヘプラー粘度計により測定したところ、9.0mPa・s(20℃)であり、変性量はNMR測定より算出したところ2.1モル%であった。
得られたPVA系樹脂について実施例1と同様の評価を行った。結果を表1〜4に示す。
【0063】
【表1】

【0064】
【表2】

【0065】
【表3】



【0066】
【表4】

【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明のPVA系樹脂は、水溶性、水溶液の粘度安定性、高速塗工性に優れ、フィルムとしたときの延伸性、柔軟性、ガスバリヤー性に優れ、さらに各種架橋剤との反応性に優れるため、接着剤、成形物、包装材用水溶性フィルム、被覆剤、紙加工剤、インクジェット記録用媒体用無機微粒子バインダー、乳化剤、懸濁剤、ガスバリヤー性フィルム、偏光フィルム等の用途に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】実施例1で得られたPVA系樹脂のIRスペクトルチャートである。
【図2】実施例1で得られたPVA系樹脂のH−NMRスペクトルチャートである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1)で示される構造単位を含有することを特徴とするポリビニルアルコール系樹脂。
【化1】


(式中、RおよびRはそれぞれ独立してアルキル基を有していてもよい炭素数1〜3のアルキレン基である)
【請求項2】
ビニルエステル系単量体と一般式(2)で示される化合物との共重合体をケン化してなることを特徴とする請求項1記載のポリビニルアルコール系樹脂。
[化2]
RO−R−CH=CH―R−OR (2)
(式中、R及びRはそれぞれ独立してアルキル基を有していてもよい炭素数1〜3の
アルキレン基であり、R及びRは、それぞれ独立して水素原子または−CO−R基であって、Rはアルキル基を示す)
【請求項3】
一般式(1)で示される構造単位の含有量が0.1〜20モル%であることを特徴とする請求項1または2記載のポリビニルアルコール系樹脂。
【請求項4】
請求項1〜3いずれか記載の新規ポリビニルアルコール系樹脂を用いることを特徴とする接着剤。
【請求項5】
請求項1〜3いずれか記載の新規ポリビニルアルコール系樹脂を用いることを特徴とする成形物。
【請求項6】
請求項1〜3いずれか記載のポリビニルアルコール系樹脂を用いることを特徴とする水溶性フィルム。
【請求項7】
請求項1〜3いずれか記載のポリビニルアルコール系樹脂を用いることを特徴とする被覆剤。
【請求項8】
請求項1〜3いずれか記載のポリビニルアルコール系樹脂を用いることを特徴とする紙加工剤。
【請求項9】
請求項1〜3いずれか記載のポリビニルアルコール系樹脂を用いることを特徴とする乳化剤。
【請求項10】
請求項1〜3いずれか記載のポリビニルアルコール系樹脂を用いることを特徴とする懸濁剤。
【請求項11】
請求項1〜3いずれか記載のポリビニルアルコール系樹脂を用いることを特徴とする偏光フィルム。



【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−176589(P2006−176589A)
【公開日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−369718(P2004−369718)
【出願日】平成16年12月21日(2004.12.21)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(000004101)日本合成化学工業株式会社 (572)
【Fターム(参考)】