説明

ポリビニルアンモニウム化合物、ポリビニルアンモニウム化合物の製造方法、ポリビニルアンモニウム化合物を含有する酸性溶液及び銅めっきを電気分解的に析出する方法

本発明はポリビニルアンモニウム化合物、前記化合物の製造方法、銅めっきを電気分解的に析出するために少なくとも前記ポリビニルアンモニウム化合物を含む酸性水溶液、並びに、前記酸性水溶液を用いて銅めっきを電気分解的に析出する方法に関しており、前記ポリビニルアンモニウム化合物は一般化学式(I)に相当し、並びに、一般化学式(I)のポリビニルアンモニウム化合物において、添え字I及びmを有するモノマー単位の一つが、又は両方が中性の状態で存在する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリビニルアンモニウム化合物、ポリビニルアンモニウム化合物の製造方法、並びに銅めっきを電気分解的に析出するための前記化合物を含有する酸性溶液、並びに前記化合物を含有する前記溶液を用いて銅めっきを電気分解的に析出する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
金属又はプラスチック材料上の例えば広い表面に、装飾的な輝き、かつ均一な表面の製造、又は例えば半導体又はプリント回路基板の製造における延性層の形成のために、様々な方法やめっき液が用いられている。
【0003】
【特許文献1】DE947656C1
【特許文献2】DE1521062A1
【特許文献3】DE2039831C1
【特許文献4】DE10261852B3
【特許文献5】US4110176
【特許文献6】EP0068807A2
【特許文献7】DE1246347B1
【特許文献8】EP0107109A2
【特許文献9】DE2746938A1
【特許文献10】US3502551
【特許文献11】DE1152863A
【特許文献12】DE1165962B
【特許文献13】DE1218247A
【特許文献14】DE2706521A1
【特許文献15】DE19643091A1
【特許文献16】DE19758121A1
【特許文献17】DE1521031A
【特許文献18】DE933843B
【特許文献19】EP0071050A1
【特許文献20】EP0216387A2
【特許文献21】US4774285
【非特許文献1】Fikentscher, Cellulosechemie 13: (1932) p58
【0004】
そのため、平滑能(レベリング)という用語は、銅めっき液に例えると、滑らかにし、かつ、短いめっき時間の後に、擦りむきや、擦り傷を含むかもしれない粗い物質の表面を見えなくする、それによって傷の無い鏡のような表面が得られる金属めっき液の性能に関係していると理解されている。
【0005】
結晶体から成るめっきの代わりに光沢のある銅層を得るために、光沢のある銅表面のめっき用に少量の有機系添加剤が、大抵は酸性の銅電解液に添加されても良い。
【0006】
ポリエチレングリコール、チオ尿素のような複数の化合物、及び、チオヒダントイン、チオカルバミン酸エステル、並びにチオ燐酸エステルのようなそれらの誘導体の化合物又は混合物がしばしば添加された。かように得られたコーティングは、しかしながら、もろい又は光沢の少ない不十分なレベリングであり、従って、かように得られた銅層の品質は、現代の高い需要にはもはや合っていない。従って、これら添加剤は、今日では重要性を失った。
【0007】
光沢のある銅層を生産するための、特定のフェナジニウム化合物及びその誘導体の使用が、長い間知られてきた。これらフェナジニウム化合物は、例えば特許文献1に記載されているが、銅コーティングの電解生産用浴中の添加剤として使用される。
【0008】
これら化合物は、しかしながらまた、他の添加剤と組み合わせて使用されても良い。例えば特許文献2は、水溶液ようの浴組成として、少なくとも一つのスルホン酸基を含有する有機系硫化物、並びに混合物又は化学結合の状態にある、少なくとも3つの、好ましくは6つの酸素元素を含み且つ6以上の炭素元素を有する脂肪族炭化水素鎖とは結合していないポリエーテルを含む、酸銅浴を提案している。これら浴は、光沢と延性のある銅層をめっきすることが可能となる。好ましいポリエーテルは、少なくとも296、好ましくは約5000の分子量を有する、1,3−ジオキサン重合物である。上述の浴添加剤と組み合わせて、ジエチル−フェノサフラニン−アゾ−ジメチル−アニリン、ジメチル−フェノサフラニン−アゾ−ジメチル−アニリン、ジエチル−フェノサフラニン−アゾ−フェノ−ル及びジメチル−アゾ−(2−ヒドロキシ−4−エチルアミノ−5−メチル)−ベンゼンのようなフェナジン系染料が用いられることもある。フェナジン系染料は、高い平滑能と光沢のあるめっきを得ることを可能にする。しかしながら、特許文献2に記載された銅電解液は、高い陰極性電流密度を用いることを許可していない。その上、めっきされた銅表面は、事前の中間処理を受けた後にニッケルめっきのみをされ得る。
【0009】
特許文献3は更に、酸素を含有する高分子化合物及び水溶性を増加するための官能基を有するチオ化合物に加え、高分子フェナジニウム化合物の群の中から少なくとも一つの更なる染料を含む、硫酸銅電解液を記載している。これら浴は、更に非イオン性湿潤剤及び有機硫黄化合物を含有しても良い。しかしながら、これら浴は不規則に平滑にされた銅被膜を析出するのみであった。プリント回路基板を製造するためにこの浴を用いると、平坦にされた孔の縁として引き合いに出される現象であるが、プリント回路基板内の孔に直接近接して減少された銅層を示すようになる。その結果、半田付け処理の際、前記孔の入口で銅被膜に亀裂を形成するかもしれない。装飾的な銅めっきの場合、この不利益が、加工物の様々な位置で不均一な外観の層をもたらす結果となる。従って、前記浴は装飾的で、鏡面磨きされた被膜をめっきするには適していない。
【0010】
オリゴマーフェナジニウム化合物の混合物を銅めっきの電気分解的析出用酸性浴への添加剤とするものは、特許文献4に記載されている。そのような浴は、既に良好なめっき結果を得ることが可能である。しかしながら、その欠点は、前記フェナジニウム化合物の製造が非常に高価であることである。他の欠点は、これらフェナジニウム化合物が非常に濃い色を有し、電解液を着色することである。その結果として、その作業がしばしば不愉快で困難である、というのは、実施タンク及びラインの他部分の両方、並びに手を永続的に着色するからである。
【0011】
光沢があり、かつ平滑なめっきを行うために、染料の代わりに、銅浴へポリアルカノールアミンと塩化ベンジル(特許文献5)のようなアルキル化剤又は4級化剤(quarternization agent)との反応生成物、及び、ポリアルキレンイミンとエピクロロヒドリン及びアルキル化剤(特許文献6)との反応生成物を添加剤として用いることも記載されている。
【0012】
ポリアルキレンイミンが有機硫黄化合物と共にめっき浴への添加剤として使用され得るということも記載されている。例えば特許文献7は、光沢がありかつ平滑な銅被膜の製造における光沢剤として、一つか多数の直鎖又は枝分かれしたポリアルキレンイミン乃至その機能性誘導体を有機硫黄化合物と共に使用することが遊離であることを明示している。機能性誘導体は、具体的にはポリアルキレンイミンの塩、及びそれと二酸化炭素、炭酸エステル、ハロゲン化アルキル乃至脂肪酸との反応生成物の塩である。これら物質は浴中で他の一般に用いられている光沢剤及び/又は湿潤剤と一緒に使用することが可能である。上記銅電解液は、しかしながら、それらが一般的に電気分解的析出用に使われているように、高い電流密度の使用が不可能である。上記添加剤は電流密度の狭い範囲においてのみ有効であるために、今日殆んど(特許)出願を見つけることができない。
【0013】
更に、特許文献8は銅浴用の硫黄化合物とアクリルアミドとの反応生成物を記載している。
【0014】
特許文献9は、酸素を含有する高分子化合物及び水溶性を高めるための官能基を有する有機硫黄化合物と共に、他の物のうち(inter alia)、添加剤として酸アミドを含む浴を開示している。この浴は、しかしながら、光沢度分布の改善を成しえただけであった。銅被膜の平滑能および視覚的外観は、しかしながら改善することができなかった。
【0015】
水溶性酸銅浴は、更に特許文献10から公知であり、前記浴は、少なくとも一つの銅塩、少なくとも一つの無機酸、できるかぎり塩化物、および添加剤として窒素含有脂肪族炭化水素化合物、酸素含有高分子化合物、水溶性を向上するための官能基を有する有機硫黄化合物を含む。組み合わされた添加剤は、めっきされた銅層の光沢と平滑能を改善することを意図している。
【0016】
更に酸銅めっき浴への添加剤として、チオ尿素−ホルムアルデヒド縮合物の使用が記載されている。例えば特許文献11は、平滑化剤(leveller)としてチオ尿素−ホルムアルデヒドの予備縮合物を記載している。記載された浴は、基礎光沢剤として、ジチオカルバミン酸誘導体のタイプの化合物を含み得る。特許文献12は、平滑銅被膜を製造するための酸浴中で、チオ尿素、ホルムアルデヒド、分子中に少なくとも二つのアミノ基を有する化合物の縮合生成物の使用を記載している。加えて、前記浴は公知の基礎光沢剤を含み得る。
【0017】
特許文献13は、鏡面磨きされた平滑な銅被膜を製造するための酸電解銅めっき浴が、水に難溶の化合物を含み、かつ、分子中にチオカルボニル基かつアリル又はアラルキルラジカルが1:1の比で構成され、これら二つの基は、互いに結合された又は環状システムの要素部分を形成するヘテロ原子によって分離されていることを述べている。例えばこれらは、チオセミカルバジドの芳香族N−一置換生成物、また、芳香族アルデヒドのチオセミカルバゾン、チオカルボヒドラジドの誘導体、チオカルボニル基およびチウラムモノ及びポリスルフィドを有するヘテロ環状化合物、ジキサントゲンモノ及びポリスルフィド、ヒドラジンジチオカルボンアミドである。これら化合物は、スルホン及びスルホキシドの誘導体と共に使用されることが可能である。
【0018】
特許文献11、12、13で述べられためっき浴の不利益は、開示された添加剤が光沢のある銅表面を得ることを可能にするにもかかわらず、これら添加剤は悪い平滑能をもたらすだけである。化合物の水への低い溶解性からなる他の欠点に加え、これら添加剤は一般的な実施において出された需要に合うことができない。
【0019】
浴添加剤として、エピハロゲンヒドリンと置換されたピリジンとの反応生成物、有機硫黄化合物、及び湿潤剤を含有する銅電解液が、更に特許文献14から公知である。これら浴は光沢度(分布)は改善できるが、金属分布は改善できない。
【0020】
特許文献15は、金属の又は金属化された表面を処理するための試剤、前記試剤は水溶性ポリアミドアミン及び/又はポリアミンとエピクロロヒドリンとの水溶性反応生成物を含むこと、並びに、銅浴、貴金属浴又は合金浴中でのこの試剤の使用、これら試剤の製造方法について記載している。特許文献16は、銅浴へ添加可能なジハロゲンヒドリンと1−ハロゲン−2,3−プロパンジオールとポリアミドアミンの反応生成物を記載している。前記めっき浴は良好な分布で延性のある銅めっきを可能とするが、被膜は平滑能が殆んど見られず、従って装飾目的又はブラインドビア(blind vias)を充填する目的には適していない。
【0021】
銅めっき浴中における、アミノ基、又はその機能誘導体、又は窒素原子を介するヘテロ環状ラジカル結合を含む高分子化合物の使用が特許文献17から公知である。特許文献18も、例えば酸銅電解液用にポリビニルアミン及びポリビニルピロリドンの使用が記載されている。これら化合物は、しかしながら、殆んど平滑能効果を示さないのみである。その上、付与され得る電流密度は低い又は上記化合物の添加の間にむしろ低下される。前述のポリビニルアミンはそれによってめっき上で攻撃的な効果を有し、その結果は実施中に縞様浮上り構造が見えることを伴う脆化となる。また、前記ポリビニルアミンの誘導体は再度ではあるが、悪い光沢及び平滑能効果をあらわすだけである。
【0022】
前記先行技術の欠点に加え、前記添加剤は、これら添加剤が使用されないめっき方法と比較して機械特性を下げることが証明された。特に、銅被膜の硬度及び破断伸びが悪化しうる。同様に、続く電気めっき処理のための続く活性化を所望の不動態化現象が、これら物質を使用してめっきされた銅層で発生する。その上、銅めっきの際に抑性剤として働く、列挙された物質の多くは、金属分布を下げ、それによって金属層の厚みを局所的に減少した結果、プリント回路基板の孔の中や孔の縁で破壊を生じることが見られるかもしれない。これらの問題は、銅のめっき層が続いて起こる半田付け処理を介する熱負荷を受けた場合に、特に明らかとなった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
従って、本発明の一つの課題は、金属、プレスチック回路基板又はプリント回路基板材料などの加工部品の金属化の際の、公知の銅浴及び方法、具体的には特に光沢のある、即ち鏡面磨きされた、並びに良く平滑化され、かつ延性のある銅被膜を再現性良く製造することを可能にする添加剤をもたらすための公知の銅浴及び方法の欠点を回避することである。また本発明の他の課題は、プリント回路基板のような加工部品の表面の最も小さな孔さえも充填することを可能にすることである。更に本発明の他の課題は、それによって添加剤に、簡便にかつ安価に合成可能、並びに、品質に変化の無いようにすることである。更に本発明の他の課題は、比較的高い電流密度を用いて鏡面磨きされた、かつ延性のある銅層を製造することを可能にすることである。更に本発明の他の課題は、実施可能な範囲で、例えば4A/dm以上の高い平均電流密度を用いる電気めっき時間を減少することである。更に本発明の他の課題は、マイクロビア(microvias)の充填もより速く行うことである。更に本発明の他の課題は、そのようなタイプの銅めっき浴の組成を長時間にわたって不変であるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0024】
上記課題の解決方法は、請求項1に記載されたようなポリビニルアンモニウム化合物、請求項10に記載されたような前記化合物を製造する方法、請求項18に記載されたような銅めっきを電気分解的に析出するための酸性水溶液、並びに、請求項22に記載されたような少なくとも一つのポリビニルアンモニウム化合物を含有する溶液を用いる銅めっきを電気分解的に析出する方法である。本発明の好ましい実施形態は従属請求項中に記載されている。
【0025】
本発明のポリビニルアンモニウム化合物は、好ましくは有機ハロゲン化物を用いて、異なった又は同一のモノマー単位を含みうる、該当する開始ポリマーから作ることが可能である。鏡面磨きされた平滑な銅めっき電解製造用めっき液中で、装飾的な及び/又は延性のある表面の製造で使用するために、本発明のポリビニルアンモニウム化合物は、単一で、又は本発明の他のポリビニルアンモニウム化合物との混合状態で有利に使用することが可能である。前記液は、例えば、衛生及び自動車産業用プラスチック部品の装飾的な銅めっき用に使用することが可能である。更に、前記ポリビニルアンモニウム化合物は、銅めっき液中で、プリント回路基板又は他の回路キャリア(circuit carrier)上に銅めっきを電気分解的に析出し、その際、前記銅めっきはプリント回路基板又は他の回路キャリアに含まれたマイクロビアを選択的かつ完全に充填するために有利に使用することが可能である。その上、前記ポリビニルアンモニウム化合物は、集積回路製造の際トレンチに、より具体的には高いアスペクト比を有するトレンチ(trench)の表面上に施された、半導体基板(ウェハ)の表面上に銅めっきを電気分解的に析出するための銅めっき液中で、有利に使用することが可能である。それによる銅めっきは、半導体回路基板の全表面に均一に製造される。
【0026】
本発明の化合物は、一般化学式(I)に係るポリビニルアンモニウム化合物である。
【化4】

ここで、l、m、nはモノマー単位の添え字であって、ポリビニルアンモニウム化合物中の各モノマー単位の画分(fraction)を[モル%]で示していて、その際、l+m+n=100%であって、次の条件を有する、即ち
1) l+m+nに関するl+mは、1から100モル%までの範囲内にあり、l+m+nに関するnは99から0モル%までの範囲内にあり、かつ、
2) l+mに関するmは、1から100モル%までの範囲内にあり、l+mに関するlは、99から0モル%までの範囲内にあり、
は、ラジカルであり、置換された及び非置換のアラルキル及びアルケニルを含む群から選択され、
は、CHO又はHであり、その際、Rはポリビニルアンモニウム化合物中符号lを有する全てのモノマー単位中で同じ又は異なっており、次の条件を有する、即ち、添え字lを有する全てのモノマー単位に関する添え字lを有するH含有モノマー単位の画分は1から100モル%までの範囲内にあり、かつ、添え字lを有するCHO含有モノマー単位の画分は99から0モル%までの範囲内にあり、
はラジカルであり、1から6までの炭素原子を有する飽和カルボン酸、3から8までの炭素原子を有する不飽和カルボン酸、並びに、前記カルボン酸のエステル、無水物、アミド、及びニトリルから選択され、その際、Rはポリビニルアンモニウム化合物中に添え字nを有する全てのモノマー単位中で同じ又は異なっており、及び、
は酸アニオン(acid anion)であって、
並びに、一般化学式(I)のポリビニルアンモニウム化合物は、添え字l及びm又は両方を有するモノマー単位の一つが中性の状態で存在する。
【0027】
ポリビニルアンモニウム化合物は、l+m+nに関するl+mの合計が1から98モル%までの範囲にあり、より明確には1から95モル%までの範囲、さらにより明確には1から90モル%までの範囲、最も明確には1から60モル%までの範囲内にある、モノマー単位を含んでも良い。従って、l+m+nに関するnは99から2モル%までの範囲、より明確には99から5モル%までの範囲、さらにより明確には99から10モル%までの範囲、最も明確には99から40モル%までの範囲内にある。
【0028】
本発明のポリビニルアンモニウム化合物中に添え字l、m、nを有するモノマー単位の順序は任意に決定できる。ポリビニルアンモニウム化合物は、それによって、ブロックポリマー又は共重合体の形態のモノマー単位を含んでも良く、その際、交互ブロックポリマー、及び交互共重合体であっても良い。高分子鎖の末端にある、ポリビニルアンモニウム化合物中モノマー単位の結合していない原子価は、例えばハロゲンによって飽和状態にしても良い。上記内容は、添え字l、nを有するモノマー単位に関する開始ポリマーにも同様に適用される。
【0029】
添え字l及びmを有するモノマー単位の一つが中性の状態で存在する、本発明のポリビニルアンモニウム化合物は、それによって、次の一般化学式(Ia)、(Ib)、(Ic)を有する、ここで、R、R、R、l、m、n及びAは上記で定義されたものと同様の意味を有する。
【化5】

【化6】

【化7】

【0030】
本発明のポリビニルアンモニウム化合物の様々な形体は、当業者に公知の単純な方法で次々と変化され得る。
【0031】
ここで使用されているように、ポリビニルアンモニウム化合物という用語は、一般化学式(I)を有する、塩含有のポリビニルアンモニウム化合物だけでなく、常に一般化学式(Ia)、(Ib)、(Ic)を有するポリビニルアンモニウム化合物も含み、添え字l及びm又はその両方を有するモノマー単位の一つが中性の状態で存在する。
【0032】
ポリビニルアンモニウム化合物中に添え字lを有する全てのモノマー単位に関してR=Hである、添え字lを有するモノマー単位の画分は、開始ポリマー製造方法における抽出物の選択によって、並びに、それ自体を製造する方法から得られる。この画分は、本発明の化合物を製造する方法において、例えば本発明の化合物の続いて起こる加水分解を介して変更することもできる。
【0033】
開始ポリマーを製造する方法によっては、添え字m及び恐らくはlを有するモノマー単位の他に、本発明のポリビニルアンモニウム化合物中に添え字nを有する様々なモノマー単位が存在することができ、前記モノマー単位は、従って異なるラジカルRを含む。
【0034】
アラルキルはベンジル又はフェニルエチル、かつ、アルケニルはビニル又はアリル(allyl)であることが好ましい。置換されたアラルキル及びアルケニルは、低級アルキル、スルホ−又はカルボキシルアルキル、ヒドロキシ、ニトリル、チオシアネート、シアネート、チオール、及びアミノを含む群から選択された置換基を好ましくは含み、ここで、アミノはNH、NHR'又はNR'R''であっても良く、ここで、R'とR''は順に低級アルキルであっても良い。
【0035】
本発明に関連して用いられた、低級アルキルという用語は、好ましくは1から5の炭素原子を有するアルキル、より明確にはメチル、エチル、n−プロピル、イロプロピル、n−ブチル、イソブチル、又はtert−ブチルと解釈する。
【0036】
ここで用いられたアラルキルという用語は、ヘテロアリール(heteroaryl)又はアリール(aryl)、より明確にはフェニル及びナフチルと解釈でき、直鎖又は枝分かれアルキル、より明確には低級アルキルでモノ−、ジ−、トリ−、ポリ−置換されている。
【0037】
ここで用いられたアルケニルという用語は、低級アルケニル、つまり2から6の炭素原子を有するアルキレン、より明確にはエチレン、n−プロピレン、イソプロピレン、n−ブチレン、イソブチレン、又はtert−ブチレン、及びそれらの異性体を含む。
【0038】
好ましくは、ポリビニルアンモニウム化合物中に存在する飽和カルボン酸は、エタン酸、プロピオン酸、及び酪酸であっても良い。好ましくは、存在する不飽和カルボン酸は、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、ビニル酢酸(vinylacetic acid)、マレイン酸、フマル酸、及びイタコン酸であっても良い。
【0039】
酸アニオンAが、好ましくは次のアニオンを含む群から選択されても良い、即ち、硫酸水素アニオン(hydrogen sulfate)、ハロゲン化物アニオン(halide)、擬ハロゲン化物アニオン(pseudohalide)、テトラフルオロホウ酸アニオン(tetrafluoroborate)、ヘキサフルオロ燐酸アニオン(hexafluorophosphate)、硝酸アニオン(nitrate)、酢酸アニオン(acetate)、トリフルオロ酢酸アニオン(trifluoroacetate)、及びメタンスルホン酸アニオン(methanesulfonate)の群。
【0040】
好ましくは、ポリビニルアンモニウム化合物は、500から500,000までの範囲内の分子量(Mw)を有する。
【0041】
特に好ましいポリビニルアンモニウム化合物は、ポリビニルアンモニウム化合物中に添え字lを有する全てのモノマー単位に関して、R=Hである添え字lを有するモノマー単位の画分が90から95モル%までの範囲内にあり、かつ、添え字lを有するCHO−含有モノマー単位の画分が5から10モル%までの範囲内にあり、その際、これらポリビニルアンモニウム化合物は500から500,000までの範囲内の分子量を好ましくは有するが、15,000から45,000までの分子量が特に好ましい。更に、n=0モル%であるポリビニルアンモニウム化合物も好ましい。
【0042】
本発明のポリビニルアンモニウム化合物は以下のa)とb)の反応により得ることが可能である、即ち、
a)少なくとも一つの、次の一般化学式(II)の開始ポリマー
【化8】

ここで、R、R、l及びnは上記と同様の意味を有し、その際、l+n=100モル%にして次の条件を有する、即ち、lは1から100モル%までの範囲内にあり、かつ、nは99から0モル%までの範囲内にある、一実施形態において、l+nに関するlは、1から98モル%まで、より明確には1から95モル%まで、更により明確には1から90モル%まで、最も明確には1から60モル%までの範囲内にある。従って、l+nに関するnは、99から2モル%まで、より明確には99から5モル%まで、更により明確には99から10モル%まで、最も明確には99から40モル%までの範囲内にある。
b)開始ポリマーに有機ラジカルを生ぜしめる少なくとも一つの試薬であり、前記試薬は置換された、及び非置換のアルケニル化(alkenylation)及びアラルキル化(
aralkylation)試薬である。
【0043】
前記反応のために選択される温度は、室温から反応混合物の沸騰する温度の値までの範囲に好ましくは定める。20から100℃までの範囲の温度が特に好ましい。
【0044】
前記反応は、水溶性の、好ましくは酸薬剤中で行われ、かつ、反応混合物が撹拌されることが好ましい。
【0045】
有機ラジカルを生ぜしめる試薬は、ポリビニルアンモニウム化合物中に存在する添え字lを有する開始ポリマーのモノマー単位の量に関して、より少ない量で好ましくは使用される。開始ポリマーは、ポリビニルアンモニウム化合物中に存在する添え字lを有する開始ポリマーのモノマー単位の量に関して、1から50モル%までの少なくとも一つの試薬と、好ましくは反応される。
【0046】
前記反応において使用された試薬の濃度減少は、サンプリングによって、例えばガスクロマトグラフィーによって制御されうる。反応は、遊離試薬が存在しなくなった時点で終了する。
【0047】
有機ラジカルを開始ポリマー中に生ぜしめる試薬を用いて、開始ポリマーの式(II)中に添え字lを有するモノマー単位の窒素基にラジカルRが導入され、それによって、式(I)に係る本発明のポリビニルアンモニウム化合物中に添え字mを有するモノマー単位、又は、その中性又は半中性(semi-neutral)状態を形成する。開始ポリマーの添え字lを有するモノマー単位の全てが反応されない場合、添え字l及びmを有するモノマー単位を少なくとも含む本発明のポリビニルアンモニウム化合物は、それに応じて得られる。
【0048】
使用される試薬は、置換された、又は非置換のアルケニル化及びアラルキル化試薬を含む。特に好ましいそのような試薬は、アルケニル及びアラルキルハロゲン化物、例えば、塩化アリル、臭化アリル、塩化ベンジル、臭化ベンジル、塩化フェニルエチル、臭化フェニルエチルである。前記アルケニル化及びアラルキル化試薬は、低級アルキル、及び/又は、スルホ又はカルボキシルアルキル、ヒドロキシル、ニトリル、チオシアネート、シアネート、チオール、アミノのような置換基を含んでも良く、ここで、アミノはNH、NHR'又はNR'R''であってもよく、ここで、R'とR''は順に低級アルキルである。
【0049】
好ましい開始ポリマーは、添え字lを有する全てのモノマー単位に関して、R=Hである添え字lを有するモノマー単位の画分を有し、該画分は90から95モル%までの範囲内であり、かつ、添え字lを有するCHO−含有モノマー単位の画分は5から10モル%までの範囲内にあり、前記開始ポリマーは500から500,000までの範囲内のMwを含むが、15,000から45,000までの範囲が特に好ましい。n=0モル%であるポリビニルアンモニウム化合物が好ましい。
【0050】
本発明のポリビニルアンモニウム化合物は、次の開始ポリマーの反応生成物であることが好ましい、
i)式(II)に係る開始ポリマーが、n=0モル%を有し、R=Hである添え字lを有するモノマー単位の量が100モル%(ポリビニルアミン)である、又は、
ii)式(II)に係る開始ポリマーが、n=1〜99モル%の添え字nを有するモノマー単位と、Rが全てHである添え字lを有する99から1モル%までのモノマー単位から成る共重合体の状態にある、又は
iii)n=0モル%である式(II)に係る開始ポリマーが、R=Hが99から1モル%までに相当するモノマー単位の画分である添え字lを有するモノマー単位と、R=CHOが1から99モル%までの範囲内にあるモノマー単位の画分である添え字lを有するモノマー単位から成る共重合体(ビニルアミンモノマー単位とN−ビニルホルムアミドモノマー単位から成る共重合体)の状態にある。
【0051】
これら開始ポリマーは、ポリビニルアンモニウム化合物中に存在する開始ポリマーの添え字lを有するモノマー単位の量に関して、少なくとも一つの有機ラジカルを生ぜしめる1から50モル%の試薬と、好ましくは反応される。
【0052】
開始ポリマーは重合によって製造することが可能である。例えば特許文献19は、10から90モル%までのビニルアミンと、90から10モル%までのN−ビニルホルムアミドから成る水溶性共重合体の製造、及び、10から200までの範囲のK値でスラリー用凝集剤として使用されることが記載されている。10から95モル%までのN−ビニルホルムアミドと、90から5モル%までの酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、C−からC−までのアルキルビニルエーテル、N−ビニルピロリドン、並びに、アクリル酸及びメタクリル酸のエステル、アミド及びニトリルから成る水溶性共重合体から該ホルムアミド基の少なくとも30%を加水分解下で分解したものの製造は、特許文献20及び特許文献21から公知である。
【0053】
それによって、K値は溶液中での高分子物質の平均分子量を示し、かつ、高分子溶液の相対粘度からフィケンチャー(Fikentscher)によって誘導された(非引用文献1)。K値は次の数式1を用いて計算される。
【数1】

数式1中、cは溶液中の高分子物質の濃度[g/100ml]であり、ηは溶液の粘度、ηoは溶媒の粘度、及び、kはフィケンチャーに係る値である(K=1000・k)。
【0054】
また、開始ポリマーは市販されている。登録商標ルパミン(Lupamin)1595(95モル%のビニルアミンモノマー単位と、5モル%のN−ビニルホルムアミドモノマー単位から成る共重合体の水溶液にして、Mw15,000)、登録商標ルパミン9095(95モル%のビニルアミンモノマー単位と、5モル%のN−ビニルホルムアミドモノマー単位から成る共重合体の水溶液にして、Mw340,000)又は、登録商標ルパミン4595(95モル%のビニルアミンモノマー単位と、5モル%のN−ビニルホルムアミドモノマー単位から成る共重合体の水溶液にして、Mw45,000)のようなビーエーエスエフ社(BASF AG)の製品が例えば使用され得る。これら開始ポリマーから製造された、本発明に係るポリビニルアンモニウム化合物は、単独で、又は、銅めっき用混合物で特に効果的に使用されるということが証明された、というのは、それらは銅電解液中で高い電流密度において顕著な明度(brilliance)を示すからである。
【0055】
使用されるめっき液に従って、ポリビニルアンモニウム化合物中で他の酸アニオンとの反応の結果得られる酸アニオンを、塩アニオン相互交換によって交換することが有利かもしれない。従って、反応後、ポリビニルアンモニウム化合物は洗浄され、イオン交換クロマトグラフィーや引き続く適切な溶離のようなものによって酸アニオン交換することが可能である。例えばハロゲン化物アニオンは、硫酸水素アニオン、擬ハロゲン化物アニオン、テトラフルオロホウ酸アニオン、ヘキサフルオロ燐酸アニオン、硝酸アニオン、酢酸アニオン、トリフルオロ酢酸アニオン、及びメタンスルホン酸アニオンを含む群から選択された、他の酸アニオンと交換され得る。
【0056】
本発明の製造方法は、実施例1から3に記載の製造例1から3によって説明する。
【0057】
本発明の他の基本的な課題のための解決法は、銅被膜を電気分解的に析出するための酸性水溶液であり、前記溶液は少なくとも一つの本発明のポリビニルアンモニウム化合物を含み、前記溶液を用いる対応する銅めっきを電気分解的に析出する方法である。ポリビニルアンモニウム化合物は、銅めっき浴において特に有利であることが判明した、というのは、それらは高いガルバニック活性(galvanic activity)によって特徴付けられているからである。
【0058】
酸電解銅めっき液中で本発明のポリビニルアンモニウム化合物を用いることによって、後者を高い電流密度で稼動することが可能となる。その上、それ自体が公知であるように他の添加剤と組み合わせることによって、均一で光沢のある、鏡面磨きされた銅めっきを得ることが可能となる。更に、本発明に係るそれらの合成により、ポリビニルアンモニウム化合物の効果は増大する。その結果、銅電解液に本発明のポリビニルアンモニウム化合物の少なくとも一つを添加することにより、顕著な光沢と平滑能が実現され、それによって、高いアスペクト比を有するブラインドマイクロビアでさえも充填することが可能である。
【0059】
本発明のポリビニルアンモニウム化合物は、単独で、又は、光沢剤乃至湿潤剤と組み合わせられた状態で、銅電解液へ、より明確には酸性の、好ましくは硫酸液へ添加され得る。
【0060】
加工部品上へ電解方法によって銅層のめっきを可能にするために、前記加工部品は陽極及び、めっき液と接触するようにもたらされる。それから、前記金属がめっきするように加工部品と陽極の間に電流が発生される。
【0061】
銅電解液の基本的な組成は、広い範囲内で変化しても良い。一般的に、次の組成の酸性の銅含有水溶液が使用される、即ち、20から300g/lまで、好ましくは180から220g/lまでの硫酸銅(CuSO4・5H2O)、50から350g/lまで、好ましくは50から90g/lまでの濃硫酸、0.01から0.25g/lまで、好ましくは0.05から0.14g/lまでの塩化物イオン。
【0062】
少なくとも部分的に、硫酸銅以外に他の銅塩も使用され得る。硫酸も、部分的に又は全体的に、フッ化ホウ素酸、メタンスルホン酸、又は他の酸によって置き換えられ得る。塩化物イオンは、塩化アルカリ(例えば、塩化ナトリウム)として、又は、塩酸の状態で、酸毎に(p.a.)加えられる。添加剤が既にハロゲン化物イオンを含んでいる場合には、塩化ナトリウムの添加は、部分的に、又は全体的に省略しても良い。
【0063】
本発明のポリビニルアンモニウム化合物又は、これらポリビニルアンモニウム化合物の混合物は、0.0001から0.4g/lまでの濃度で溶液に好ましくは添加されるが、その際、0.005から0.05g/lまでの濃度が特に好ましい。
【0064】
その上、溶液は、一般に用いられている光沢剤、平滑化剤、又は湿潤剤を含んでも良い。予め決められた物理的性質を有する光沢のある銅めっきを得るために、少なくとも一つの水溶性硫黄化合物及び酸素を含有する高分子量化合物が、本発明の賛成溶液に添加されても良い。窒素を含有する言おう化合物のような更なる添加物も添加されても良い。前記酸素を含有する高分子量化合物は、より明確には、フェノール、アルカノール及びアルカンジオールのグリコールエーテル、脂肪族カルボン酸のグリコールエステル、並びにポリエーテルやポリエステルである。
【0065】
これら個々の化合物は、次の濃度範囲で、使用可能状態で含まれている、即ち、0.005から20g/lまで、好ましくは0.01から5g/lまでの範囲の、一般的に用いられている酸素を含有する高分子量化合物、0.0005から0.4g/lまで、好ましくは0.001から0.15g/lの範囲の、一般的に用いられている水溶性有機硫黄化合物。
【0066】
表1には、使用され得る、いくつかの酸素を含有する高分子量化合物のリストがある。
【0067】
表2には、いくつかの硫黄化合物のリストがある。適切な官能基は、水溶性を目的として組み入れられている。
【0068】
硫黄を含有する窒素化合物、より明確には窒素を含有するチオ化合物、好ましくはチオ尿素誘導体が、次の濃度で使用されることが可能である、即ち、0.0001から0.50g/l、好ましくは0.0005から0.04g/l。好ましい窒素を含有するチオ化合物は、表3に列挙されている。
【0069】
基本化合物の様々な部分成分が、溶液を製造するために添加される。めっき中の稼動条件は、より明確には以下のように調整され得る、即ち、pHは1未満、温度は15℃から50℃まで、好ましくは、20℃から40℃まで、陰極の電流密度は0.5から12A/dmまで、好ましくは3から7A/dmまで。
【0070】
めっき液は、強い流れを生じることによって及び必要ならば清浄空気を注入することによって撹拌され得る、それによって、電解液の表面は強く撹拌される。このことは、電極の近接での質量輸送(mass transport)を最大にし、かつ、電流密度を最大可能にする。陰極の運動も、各々の表面での質量輸送を改善する。増大された輸送及び電極の運動が、均一で拡散制御されためっきを実行することを可能にする。前記運動は、水平、垂直でも良く、及び/又は振動によって生じても良い。空気の注入との組み合わせが、特に効果的である。
【0071】
銅含有量を一定に保つために、銅陽極の溶解によって銅が電気化学的に補給されても良い。0.02から0.07重量%のリンを含有する銅が陽極として使用されても良い。前記銅陽極は、フィルターバッグ中に収容されるべきである。白金めっきされたチタン、又は他の被膜から作られた不活性陽極の使用も可能である。加工部品が垂直な又は水平な位置で被膜される、めっきラインは従来技術に述べられている。必要に応じて、機械的な及び/又は科学的な残渣を分離するためのフィルターが、電解液循環路内に挿入されても良い。
【0072】
本発明のめっき液は、装飾的な銅めっきを製造するためにちょうど適している。その上それは、プリント回路基板上のブラインドマイクロビアを電解充填するために使用され得る。特にチップキャリア製造において、とりわけ狭い回路トレースにおいて、貫通孔を覆う銅めっきの信頼性を増すことができるような有望な技術を、これは引き起こす。同様に、本発明の溶液は、集積回路の製造中に、半導体基板(ウェハ)のトレンチに施された表面上に導電性のパターンを製造する賢明な方法をもたらす。本発明の銅めっき方法を実施することによって、高いアスペクト比(1:10)を有するトレンチに関わり無くウェハの全表面に渡って、殆んど均一の層厚み(平坦な)が成し遂げられ、それによってそのようなタイプのトレンチ(ブラインドマイクロビア)は銅充填される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0073】
前記方法のより良い理解をもたらすために、実施例4から8に記載の方法例1から5が与えられる。
【実施例1】
【0074】
製造例1:
100gの登録商標ルパミン1595(95モル%のビニルアミンモノマー単位と、5モル%のN-ビニルホルムアニドモノマー単位から成る共重合体の水溶液にして、Mw15,000)を3.2gの塩化ベンジル(ビニルアミンモノマー単位に関して11モル%)と共に、生成物が、もはや遊離塩化ベンジルを含まなくなるまで(ガスクロマトグラフィー試験する)、2時間に渡って撹拌しながら100℃の温度まで加熱された。反応が停止され、生成物を分離した。
【実施例2】
【0075】
製造例2:
100gの登録商標ルパミン9095(95モル%のビニルアミンモノマー単位と、5モル%のN-ビニルホルムアミドモノマー単位から成る共重合体の水溶液にして、Mw340,000)を3.2gの塩化ベンジル(ビニルアミンモノマー単位に関して15モル%)と共に、生成物が、もはや遊離塩化ベンジルを含まなくなるまで(ガスクロマトグラフィー試験する)、2時間に渡って撹拌しながら100℃の温度まで加熱された。反応が停止され、生成物を分離した。
【実施例3】
【0076】
製造例3:
100gの登録商標ルパミン4595(95モル%のビニルアミンモノマー単位と、5モル%のN-ビニルホルムアミドモノマー単位から成る共重合体の水溶液にして、Mw45,000)を26.5gの塩化ベンジル(ビニルアミンモノマー単位に関して10モル%)と共に、生成物が、もはや遊離塩化ベンジルを含まなくなるまで(ガスクロマトグラフィー試験する)、2時間に渡って撹拌しながら100℃の温度まで加熱された。反応が停止され、生成物を分離した。
【実施例4】
【0077】
方法例1(比較例):
溶解可能で、リンを含有する銅陽極を備えた電解槽内で、以下の組成を有する銅溶液が使用された。
200g/l 硫酸銅(CuSO・5HO)
60g/l 濃硫酸
0.12g/l 塩化ナトリウム
次の光沢剤が添加された。
1.5g/l ポリプロピレングリコール(800Da(Dalton))
0.006g/l 3−メルカプトプロパン−1−スルホン酸ナトリウム塩
25℃の電解液温度において、かつ、4A/dmの電流密度において、均一に光沢があるが、鏡面磨きされていない、わずかに曇っためっきが、ブラシがけされた真鍮板上に得られた。
【実施例5】
【0078】
方法例2(比較例):
25mg/lのポリビニルピロリドンが、方法例1に係るめっき液に補足的に添加された。方法例1に表された条件下における銅のめっき後、銅層の外観はわずかに改善された。この場合、真鍮板は、より光沢を帯びていたが、鏡面磨き仕上げをまだ呈してはいなかった。その上、鋼電流密度が発生したために、板は焼けを示した(パウダー状銅めっき)。
【実施例6】
【0079】
方法例3(本発明に従う例):
25mg/lの製造例3で製造されたような本発明の化合物が、方法例1の電解液に補足的に添加された。方法例1に表された条件下における銅のめっき後、真鍮板上の銅層の外観は非常に良くなった。めっきは顕著に光沢があり、反射特性を有した。前記板は焼けを示さなかった。ブラシの筋は全く観察されなかった。このことは、銅電解液の優れた平滑効果を示した。
【0080】
方法例1〜3によると、本発明のポリビニルアンモニウム化合物無しでは悪い平滑能が実行されることを示す傾向がある。別個の比較例においては、その上、方法例2に従って、本発明のポリビニルアンモニウム化合物を製造するための可能な開始ポリマーの使用は、所望の結果をもたらさないことを示す傾向がある。本発明のポリビニルアンモニウム化合物だけが、良好な効果を有する。
【実施例7】
【0081】
方法例4(比較例):
ブラインドマイクロビアを施されたプリント回路基板を被覆するために、以下の組成を有する銅めっき液が、溶解可能で、リンを含有する銅陽極を備えた電解槽中に入れられた。
120g/l 硫酸銅(CuSO・5HO)
200g/l 濃硫酸
0.05g/l 塩化ナトリウム
次の光沢剤が添加された。
0.5g/l ポリプロピレングリコール(820Da)
0.005g/l ビス(ω−スルホプロピル)ジスルフィド,ジナトリウム塩
25℃の電解液温度において、かつ、1A/dmの電流密度において、僅かに曇っためっきが、前もって16μmの銅によって補強され、かつ、110分間露出されたブラインドマイクロビアを施されたプリント回路基板上に得られる傾向があった、120μm幅かつ60μm深さのブラインドビアには、殆んど銅が充填されなかった。
【実施例8】
【0082】
方法例5(本発明に従う例):
製造例2に係る本発明の化合物30mg/lが、方法例5の電解液に補足的に追加された。方法例4に表された条件下における銅のめっき後、プリント回路基板の外観は改善された。120μm幅かつ60μm深さのブラインドビアは、完全に、かつ選択的に銅充填された。銅めっき後、銅表面上にトレンチは殆んど観察されなかった。めっきされた銅の総量は低かった。
【0083】
ブラインドビアを電解銅めっきするための、今まで用いられた技術と比較して、この結果は、他の進歩を引き起こす、というのは、ブラインドビアの充填がかなり改善している。その上、表面は活性化することなく、更なる処理がされ得る。
【0084】
ここに記載された実施例や実施形態は、説明する目的のみであり、その理解の内での様々な修正及び変更、並びに、この出願中に記載された特徴の組み合わせは、当業者に動機づけとなり、また、記載された発明の精神かつ全範囲及び添付された請求項の範囲の内に含まれ得るであろうということが理解される。ここに挙げられた全ての出版物、特許、及び特許願は、これによって引用文献に組み込まれている。
【表1】

【表2】

【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般化学式(I)を有するポリビニルアンモニウム化合物であって、
【化1】

上記一般化学式(I)を有する化合物は、その一般化学式(I)中、l、m、nがモル%で表される、ポリビニルアンモニウム化合物中の各モノマー単位の画分を示すモノマー単位の添え字であり、前記化合物中で、l+m+nは100モル%であって以下の条件、即ち、
1)l+m+nに関する、l+mは1から100モル%の範囲内にあり、かつ、l+m+nに関する、nは99から0モル%の範囲内にある、及び、
2)l+mに関する、mは1から100モル%の範囲内にあり、かつ、l+mに関する、lは99から0モル%の範囲内にある、
は置換された、及び非置換のアラルキル及びアルケニルを含む群から選択されたラジカルであり、
はCHO又はHであって、前記ポリビニルアンモニウム化合物中に添え字lを有する全てのモノマー単位内で、同一か又は異なっており、添え字lを有する全てのモノマー単位に関して、添え字lを有するHを含有するモノマー単位の画分は、1から100モル%の範囲内にあり、かつ、添え字lを有する全てのモノマー単位に関して、添え字lを有するCHOを含有するモノマー単位の画分は、99から0モル%の範囲内にあるという条件を有し、
は、1から6までの炭素原子を有する飽和カルボン酸ラジカル、3から8までの炭素原子を有する不飽和カルボン酸、並びに前記カルボン酸のエステル、無水物、アミド、及びニトリルを含む群から選択されたラジカルであって、Rはポリビニルアンモニウム化合物中に添え字nを有する全てのモノマー単位内で、同一か又は異なっており、かつ、
は酸アニオンである、という条件を有するか、
添え字l又はm乃至その両方を有するモノマー単位の一つが中性の状態で存在する、一般化学式(I)を有するポリビニルアンモニウム化合物。
【請求項2】
アラルキルがベンジル又はフェニルエチルであることを特徴とする、請求項1に記載のポリビニルアンモニウム化合物。
【請求項3】
アルケニルがビニル又はアリルであることを特徴とする、請求項1又は2に記載のポリビニルアンモニウム化合物。
【請求項4】
酸アニオンが、硫酸水素アニオン、ハロゲン化物アニオン、擬ハロゲン化物アニオン、テトラフルオロホウ酸アニオン、ヘキサフルオロ燐酸アニオン、硝酸アニオン、酢酸アニオン、トリフルオロ酢酸アニオン、及びメタンスルホン酸アニオンを含む群から選択されることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載のポリビニルアンモニウム化合物。
【請求項5】
飽和カルボン酸が、エタン酸、プロピオン酸、及び酪酸を含む群から選択されることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載のポリビニルアンモニウム化合物。
【請求項6】
不飽和カルボン酸が、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、ビニル酢酸、マレイン酸、フマル酸、及びイタコン酸を含む群から選択されることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載のポリビニルアンモニウム化合物。
【請求項7】
前記ポリビニルアンモニウム化合物が、500から500,000の範囲内に分子量Mwを有することを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載のポリビニルアンモニウム化合物。
【請求項8】
前記ポリビニルアンモニウム化合物が、次のa)とb)、即ち、
a)次の一般化学式(II)を有する、少なくとも一つの開始ポリマー
【化2】

上記一般化学式(II)を有する化合物は、その一般化学式(II)中、RとR並びにlとnは上記に示されたものと同様の意味を有し、前記化合物中のl+nは100モル%であって、lは1から100モル%の範囲内にあり、かつ、nは99から0モル%の範囲内にあるという条件を有する、
b)前記開始ポリマー中に有機ラジカルを生ぜしめる少なくとも一つの試薬、前記試薬は置換された及び非置換のアルケニル化剤及びアラルキル化剤を含む群から選択されている、
のa)が、b)と反応することによって合成されうることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一項に記載のポリビニルアンモニウム化合物。
【請求項9】
アルケニル化剤及びアラルキル化剤が、塩化アリル、臭化アリル、塩化ベンジル、臭化ベンジル、塩化フェニルエチル、臭化フェニルエチルを含む群から選択されることを特徴とする、請求項8に記載のポリビニルアンモニウム化合物。
【請求項10】
次のa)、即ち、
a)次の一般化学式(II)を有する少なくとも一つの開始ポリマー、
【化3】

上記一般化学式(II)を有する化合物は、その一般化学式(II)中、RとR並びにlとnは上記に示されたものと同様の意味を有し、前記化合物中のl+nは100モル%であって、lは1から100モル%の範囲内にあり、かつ、nは99から0モル%の範囲内にあるという条件を有する、
が、b)、即ち
b)開始ポリマー中に有機ラジカルを生ぜしめる少なくとも一つの試薬、前記試薬は置換された及び非置換のアルケニル化剤及びアラルキル化剤を含む群から選択される、
と反応されることを特徴とする、請求項1〜9のいずれか一項に記載のポリビニルアンモニウム化合物を製造する方法。
【請求項11】
前記反応を実施するために、温度が20から100℃までの範囲内に調整されることを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記反応が、水溶性薬剤中で実施されることを特徴とする、請求項10又は11に記載の方法。
【請求項13】
アルケニル化剤及びアラルキル化剤が、塩化アリル、臭化アリル、塩化ベンジル、臭化ベンジル、塩化フェニルエチル、臭化フェニルエチルを含む群から選択されることを特徴とする、請求項10〜12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
開始ポリマーが、ポリビニルアンモニウム化合物中に添え字lを有して存在する、開始ポリマーのモノマー単位の量に関して、1から50モル%の少なくとも一つのアルケニル化剤及びアラルキル化剤と反応されることを特徴とする、請求項10〜13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
開始ポリマー中で、添え字lを有する全てのモノマー単位に関して、R=Hである添え字lを有するモノマー単位が90から95モル%の範囲内であり、かつ、添え字lを有するCHOを含有するモノマー単位の画分が10から5モル%の範囲内に存在することを特徴とする、請求項10〜14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
開始ポリマー中で、l=100モル%であることを特徴とする、請求項10〜15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
反応後、ポリビニルアンモニウム化合物は洗浄され、かつ、酸アニオンAは塩アニオン相互交換によって他の酸アニオンと交換され、前記他の酸アニオンが、硫酸水素アニオン、擬ハロゲン化物アニオン、テトラフルオロホウ酸アニオン、ヘキサフルオロ燐酸アニオン、硝酸アニオン、酢酸アニオン、トリフルオロ酢酸アニオン、及びメタンスルホン酸アニオンを含む群から選択されることを特徴とする、請求項10〜16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
銅被膜を電気分解的に析出するための銅イオンを含む酸性水溶液において、請求項1〜9のいずれか一項に記載の少なくとも一つのポリビニルアンモニウム化合物を含むことを特徴とする、酸性水溶液。
【請求項19】
少なくとも一つのポリビニルアンモニウム化合物が、0.0001から4g/lの範囲内の濃度で含有されていることを特徴とする、請求項18に記載の酸性水溶液。
【請求項20】
酸性水溶液が、窒素を含有する硫黄化合物、及び高分子窒素化合物を含む群から選択された化合物を更に含むことを特徴とする、請求項18又は19に記載の酸性水溶液。
【請求項21】
全濃度0.0001から0.50g/lの範囲内で、酸性水溶液が、窒素を含有する硫黄化合物及び高分子窒素含有化合物を含むことを特徴とする、請求項20に記載の酸性水溶液。
【請求項22】
酸性水溶液が請求項1〜9のいずれか一項に記載の少なくとも一つのポリビニルアンモニウム化合物を含むことを特徴とする、加工部品及び陽極を、酸性溶液を含む銅イオンと接触するようにもたらすこと、及び加工部品と陽極の間に電流を発生することを含む、銅めっきを電気分解的に析出するための方法。
【請求項23】
装飾表面を製造する目的で、鏡面磨きされた、平滑な銅めっきを析出するための、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
ブラインドマイクロビアを施されたプリント回路基板上に銅めっきを製造するための、請求項22に記載の方法。
【請求項25】
半導体基板上に銅めっきを製造するための、請求項22に記載の方法。

【公表番号】特表2008−533224(P2008−533224A)
【公表日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−500108(P2008−500108)
【出願日】平成18年3月1日(2006.3.1)
【国際出願番号】PCT/EP2006/002064
【国際公開番号】WO2006/094755
【国際公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【出願人】(597075328)アトーテヒ ドイッチュラント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (33)
【Fターム(参考)】