説明

ポリビニルエステルに基づいた水性塗料組成物

本願において開示される実施態様は、ポリビニルエステルに基づいたラテックスであって、予め決定された程度で部分的に加水分解された、ビニルエステル基を備えたポリビニルエステルに基づいた粒子状物質を有するもの、および本願明細書に開示されるポリビニルエステルに基づいたラテックスを変成し形成する方法に関する。本願明細書に開示される実施態様は、本願明細書に開示されるポリビニルエステルに基づいたラテックス、および蛍光増白剤(OBA)を含むコーティング組成物であって、ポリビニルエステルに基づいた粒子状物質が印刷メディア基体用のコーティング組成物中のOBAのためのキャリヤの役割をするコーティング組成物に関する。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
開示の分野
本願の開示は、一般に部分的に加水分解されたポリビニルエステルに基づいたラテックス、および蛍光増白剤のためのキャリヤとしてのコーティング組成物におけるそれらの使用に関する。
【0002】
背景
紙に様々な物理的性質および所望の外観を提供するために、紙コーティング組成物は製紙業において使用される。一般に、紙コーティング組成物は、ピグメント(例えばクレー、炭酸カルシウム、および/または二酸化チタン)およびバインダーを、他の構成要素とともに含む水性の分散物から作られている。
【0003】
ブレードコーター、エアーナイフコーター、ロッドコーターおよびロールコーターのような高速コーティング機により、紙コーティング組成物を、紙の連続したウエブに適用できる。生産性を増加させるためにより速い塗工機を使用し、かつ乾燥費を減少させて、かつバインダー分布を改良するためにより高固形分のコーティング組成物を使用することは有利となりうる。したがって、紙コーティング組成物の流動性はコーティング作業の間の、組成物のレオロジーおよび移動性(runability)に関して重要である。
【0004】
コーティング組成物は、紙コーティング組成物の流動性をコントロールするために増粘剤をしばしば含んでいる。コーティング組成物はさらに、たとえば保湿剤、潤滑剤、消泡剤、架橋剤および蛍光増白剤(optical brightening agent:OBA)などの構成要素を含むことができる。OBAは単独でコーティング組成物中でよく作用するが、コーティング組成物中のポリビニルアルコール(PVOH)の使用はそれらの性能を向上させる。どのようにして、またなぜこのようなことが生じるかは完全には理解されていない。しかし、PVOHはOBAと錯体を形成し、それによりその活性なコンフォメーションにOBAを固定すると信じられている(P. Hentzschel, Polyvinyl Alcohol, in: Pigment Coating and Surface Sizing, Fapet Oy, Helsinki, 2000).
【0005】
PVOHは、様々な形態で製紙メーカーに供給できる。これらの形態としては、顧客によって約20重量%から約30重量%の固形分の水溶液にされる、乾燥樹脂を含む。このアプローチの利点は、それほど高価でない等級のPVOHを使用できるということである。PVOHの別の形態は、製造者によってあらかじめ溶かされ、約15重量%から約25重量%の固形分で顧客に提供されるものである。それはほとんど水であるものを出荷するので、これは製紙メーカーにとって高価である。最後に、PVOHは、紙コーティング組成物に乾燥物として加えられる、乾燥した微粒物として供給できる。この最後の生成物は比較的高価な粉砕物質であるが、現場での懸濁ができない場合に便利である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
形態にかかわらず、コーティング組成物中のPVOH固体パーセントは、典型的に、紙コーティングプロセスに必要な粘度によって制限される。さらに、PVOHは、しばしば紙コーティング中のバインダーおよびピグメントと強く相互作用することがある。その結果、貧弱なレオロジーの紙コーティング組成物が得られ、紙コーティングプロセスへの悪影響が生ずる。その結果、紙コーティング中のOBAのためのキャリヤとしてのPVOHの使用の好適な代替え物が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願明細書に開示される実施態様は、ポリビニルエステル(PVE)に基づいたラテックスであって、予め決定された程度で部分的に加水分解された、ビニルエステル基を備えたPVEに基づいた粒子状物質を有するもの、および本願明細書に開示されるPVEに基づいたラテックスを変成し形成する方法に関する。本願明細書に開示される実施態様は、本願明細書に開示されるPVEに基づいたラテックス、および蛍光増白剤(OBA)を含むコーティング組成物であって、PVEに基づいた粒子状物質が印刷メディア基体用のコーティング組成物中のOBAのためのキャリヤの役割をするコーティング組成物に関する。
【0008】
様々な実施態様において、開示のPVEに基づいた粒子状物質は、コーティング組成物が適用される印刷メディア基体の外観および明るさを向上することを支援できる。これは、コーティング組成物中のOBAと会合し、コーティング組成物が適用される基体へOBAを運ぶPVEに基づいた粒子状物質によって達成される。様々な実施態様においては、部分的に加水分解されたビニルエステル基の予め決定された加水分解の程度は、本質的にPVEに基づいた粒子状物質によって保持されるOBAの量と直線関係を有する。これは、PVEに基づいた粒子状物質の予め決定された加水分解の程度の調節により、コーティング組成物中に保持されるOBAの量を調節することを許容する。
【0009】
さらに、開示されるPVEに基づいた粒子状物質の使用は、PVOHを使用する必要を排除し、それによりここで議論されるようなその使用に関連した問題を解消する。さらに、PVOHを使用する場合と比較して、PVEに基づいた粒子状物質のより高い重量パーセントが、コーティング組成物中で維持できる。さらに、PVOHを使用する場合と比較して、本発明のPVEに基づいた粒子状物質は、同等なOBAキャリヤ効率および結合強度を提供でき、また改良されたレオロジー特性を提供し、紙コーティング組成物中のより大きな固形分重量パーセントを許容する。
【0010】
様々な実施態様においては、本発明のコーティング組成物は追加の構成要素を含むことができる。そのような追加の構成要素の例としては、これらに限定されるものではないが、たとえばクレーおよび炭酸カルシウムを始めとする様々な好適なシステムから選ばれることができるピグメント、潤滑剤、消泡剤、バインダーおよび他の公知の添加剤があげられる。様々な実施態様においては、以下により詳細に議論されるように、本発明のPVEに基づいたラテックスへのバインダーの添加は、コーティング組成物用のバインダー組成物を提供する。
【0011】
様々な実施態様においては、バインダー組成物を形成するPVEに基づいた粒子状物質、およびバインダーは、バインダーに対してポリビニルエステルに基づいた粒子状物質が約0.125から約3部まで量で存在することができる。さらなる実施態様では、バインダー組成物は、ピグメントまたはピグメントのブレンドの100部当たり、約3部から約25部までの量でコーティング組成物中に存在することができる。
【0012】
様々な実施態様においては、PVEに基づいた粒子状物質の予め決定された加水分解の程度は、ビニルエステル基の5から80パーセントであることができる。さらなる実施態様では、PVEに基づいた粒子状物質の予め決定された加水分解の程度は、ビニルエステル基の10から50パーセントであることができる。PVEに基づいた粒子状物質のビニルエステル基の予め決定されたパーセンテージの部分的加水分解は、予め決定されたモル量の塩基とビニルエステル基を反応させることにより達成できる。あるいは、PVEに基づいた粒子状物質のビニルエステル基の予め決定されたパーセンテージの部分的加水分解は、予め決定されたモル量の水溶性酸とビニルエステル基を反応させることにより達成されることができる。
【0013】
様々な実施態様においては、PVEに基づいた粒子状物質は、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルおよび酪酸ビニルからなる群から選択されるモノマーから形成されたホモポリマーあるいはコポリマーであることができる。あるいは、PVEに基づいた粒子状物質は、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルおよび酪酸ビニルから成る基から選ばれたモノマーおよび少なくとも1つの他の相違するモノマーから形成されたコポリマーである。少なくとも1つの他の相違するモノマーの例は、エチレン、ビニルバーサテート、アクリレート、メタアクリレート、およびカルボン酸からなる群から選択される。PVEに基づいた粒子状物質のコポリマーを形成するのに他のモノマーを使用することもできる。様々な実施態様においては、ホモポリマーとコポリマーの混合物も、ラテックスのポリビニルエステルに基づいた粒子状物質を形成するために使用できる。
【0014】
したがって、様々な実施態様においては、PVEに基づいたラテックスの具体例は、予め決定された程度に部分的に加水分解されたアセテート基を備えたPVAcに基づいた粒子状物質を含むポリ酢酸ビニル(PVAc)に基づいたラテックスであることができ、またPVAcに基づいたラテックスを形成し変成する方法も本発明の実施態様に含まれる。本発明の実施態様はさらに、本発明のPVAcに基づいたラテックスおよびOBAを含むコーティング組成物であって、PVAcに基づいた粒子状物質が印刷メディア基体用のコーティング組成物中のOBAのためのキャリヤの役割をする組成物を含む。
【0015】
本発明の実施態様は、さらにコーティング組成物中にOBAを保持する方法を含む。この方法は、コーティング組成物中に本発明のPVEに基づいたラテックスと、ポリビニルエステルに基づいた粒子状物質と会合するOBAを提供すること、および印刷メディア基体の少なくとも一面をコーティング組成物で被覆することを含み、ここで該ポリビニルエステルに基づいた粒子状物質が蛍光増白剤のキャリヤの役割をするものである。
【0016】
定義
本明細書において、用語「印刷メディア基体」は、印刷が行われる表面を有する基体をいい、コーティング組成物および印刷方法の実施態様によって変成することができる。
印刷メディア基体の例として、異なる厚さ、強さ、および/または重量の紙および/または板紙があげられるが、これらに制限されるものではない。紙および/または板紙は繊維のアマルガメーション(amalgamation)から形成され、該繊維としては、少なくとも部分的に、たとえばセルロース、ヘミセルロース、リグニンのような野菜および/または木材繊維、および/または合成繊維があげられる。さらに、他の構成要素も印刷メディア基体に含まれることができる。
【0017】
他の印刷メディア基体としては、たとえば上等皮紙、透明フィルム、つや消しフィルム、コート紙、ヘビーウエイトコート紙、高光沢写真紙、半光沢写真紙、紙に基づいた半光沢のサテンポスター用紙、キャンバス、マイラー、セピア、ブループリント、プラスチックフィルム、プラスチックラミネート、フォームボードおよび厚紙があげられるが、これらはほんの一例である。
【0018】
本願明細書において、用語「サスペンション」は、非常に小さな粒子状物質(固体、半固体物質または液体)が液体媒体(例えば水)の中でほぼ一様に分散されたシステムをいう。
【0019】
本願明細書において、用語「バインダー組成物」は、PVEに基づいた粒子状物質を含むPVEに基づいたラテックスおよび少なくとも1つの追加のバインダーとの組み合わせを含む。
【0020】
本願明細書において、用語「ポリビニルエステルに基づいたラテックス」、「ポリビニルエステルに基づいた粒子状物質」、「ポリビニルエステル」および「ビニルエステル」は、文脈上明らかに相違する場合を除き、「ポリ酢酸ビニルに基づいたラテックス」、「ポリ酢酸ビニルに基づいた粒子状物質」、「ポリ酢酸ビニル」および「酢酸ビニル」とそれぞれ置き換えられることがある。そのような置き換えが為される場合、本願明細書の開示により加水分解が行われるそれぞれのペンダント基の置き換えも行われる。例えば、「ポリビニルエステルに基づいたラテックス」、「ポリビニルエステルに基づいた粒子状物質」および/または「ポリビニルエステル」が、「ポリ酢酸ビニルに基づいたラテックス」、「ポリ酢酸ビニルに基づいた粒子状物質」および「ポリ酢酸ビニル」にそれぞれ置換される場合、文脈上明らかに相違する場合を除き、「ビニルエステル基」も「アセテート基」と置き換えられる。
【0021】
本願明細書において、用語「ポリビニルエステル」は以下の一般式の構造を有する重合されたモノマー単位を含むポリマー鎖をいう:
H2C=CH−O−(C=O)−R,
式中、Rはアルキル鎖であり、ペンダント基のエステル官能基R−(C=O)−O−は、明細書に記載されるように加水分解されることができる。拡張され、用語「ビニルエステル基」は、ビニルエステルモノマーの重合の後にも、エステル官能基を記載するために使用される。
【0022】
本願明細書において、「ポリ酢酸ビニル」は以下の一般式の構造の重合されたモノマー単位を含むポリマー鎖をいう:
H2C=CH−O−(C=O)−R,
式中、Rはメチル基であり、ペンダント基のアセテート官能基CH3−(C=O)−O−は、明細書に記載されるように加水分解されることができる。
【0023】
本願明細書において、「PVE」はポリビニルエステルのための略号である。
【0024】
本願明細書において、「PVAc」はポリ酢酸ビニルのための略号である。
【0025】
本願明細書において、「溶液」は、1つ以上の他の物質中に、1つ以上の物質が分子またはイオンレベルで一様に分散された混合物をいう。
【0026】
コーティング組成物の構成要素のためのユニットは、ピグメントの100部当たりの乾燥した部で示される。部は特記のない限り、乾燥重量をいう。
【0027】
本願明細書において、用語「ある(a)」、「特定の(the)」、「1以上」、および「少なくとも1つ」は交換可能に使用され、文脈上明らかに相違する場合を除き、複数の場合も含む。異なるような定義がされていない限り、すべての科学的用語および専門用語は、それらが関係する技術分野において一般に使用されるものと同じ意味を有していると了解される。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】図1は、本発明のPVACに基づくラテックスを形成するための、PVAcラテックスの部分加水分解の間のpHの変化を示す。
【図2】図2A−2Eは、PVOHを含むコーティング組成物と比較した、本発明のPVAcに基づいたラテックスを含むコーティング組成物についての、粘度(図2A−2C)、ピック試験(図2D)、および明るさ(図2E)の試験結果を示す。
【図3】図3A−3Cは、PVOHを含むコーティング組成物と比較した、本発明のPVAcに基づいたラテックスを含むコーティング組成物についての粘度(図3A)、デルタック(Deltack)合否試験(合格までのパス数を評価)(図3B)および蛍光試験(図3C)の結果を示す。
【0029】
詳細な説明
本発明の実施態様は、予め決定された程度に部分的に加水分解されたビニルエステル基を備えたPVEに基づいた粒子状物質を含む、ポリビニルエステル(PVE)に基づいたラテックス、およびPVEに基づいたラテックスを形成する方法に関する。様々な実施態様において、PVEに基づいたラテックスは、予め決定された程度にPVEに基づいた粒子状物質上のビニルエステル基を部分的に加水分解し、PVEラテックスを変成することにより形成できる。
【0030】
本願明細書に開示される実施態様はさらに、PVEに基づいたラテックスおよび蛍光増白剤(OBA)を含む、印刷メディア基体用コーティング組成物、および該コーティング組成物を適用する方法および使用する方法を含む。様々な実施態様においては、PVEに基づいた粒子状物質は、コーティング組成物中においてOBAのためのキャリヤの役割をする。PVEに基づいた粒子状物質は、OBAのためのキャリヤとして、ポリビニルアルコール(PVOH)の使用と比較して有益な特性を示す。これらは、PVOHを使用した場合と比較して、コーティング組成物中にPVEに基づいた粒子状物質をより大きい重量パーセントで組み入れることができ、さらにPVOHを使用した場合と比較して同等のOBA保持効率を有し、良好な結合強度を示す。さらに、PVOHを使用した場合と比較して、PVEに基づいたラテックスを使用する場合には、コーティング組成物のレオロジーが改良される。例えば、PVOHを使用した場合と比較して、PVEに基づいたラテックスを使用したコーティング組成物においては、高剪断時のより小さい粘度が観察される。
【0031】
様々な実施態様においては、本発明のコーティング組成物は、PVEに基づいたラテックスおよびOBAを含む水性サスペンションである。任意に、本発明のコーティング組成物は、コーティングのレオロジー特性および/または本発明のコーティング組成物で被覆された印刷メディア基体の仕上がりコーティング特性を向上させ、および/または所望のものとするために、追加の成分をサスペンション中に、または溶解して含むことができる。そのような追加の成分としては、ピグメント、バインダー(PVEに基づいたラテックスに加えて)、分散剤、保護コロイド、コロイドのための溶剤、金属イオン封鎖剤、増粘剤、保湿剤、潤滑剤、界面活性剤、湿潤剤、架橋剤およびその他同種のものがあげられるが、これらに制限されるものではない。さらに、本発明のコーティング組成物は、1つ以上の可塑剤、フィラー、および/またはたとえばカルボキシメチルセルロースのような保水剤などを含むことができる。
【0032】
本発明のPVEに基づいたラテックスを形成するのに使用されるPVEラテックスは、多くの方法で形成できる。例えば、PVEラテックスは、公知の方法により、例えば乳化重合プロセスで適切なモノマーを重合するか共重合することにより形成できる。本発明のPVEラテックスを形成するために使用される乳化重合は、フリーラジカル開始剤より開始されることができる。本発明において有用な典型的なフリーラジカル開始剤としては、公知のレドックス系、過酸化物システム、アゾ誘導体およびヒドロペルオキシドシステムがあげられる。
【0033】
乳化重合は、典型的には約50℃から約90℃の範囲の温度で実行できる。モノマー転化は典型的には約95から約99パーセントの範囲である。ラテックス中で調製されたPVE−粒子状物質は、典型的には約45から約60パーセントの固形分;約200から約5000センチポアズまでの粘度;および約100から約3000ナノメートルの粒径を有している。
【0034】
本発明で使用されるPVEラテックスは、ビニルエステルモノマー単独から、またはビニルエステルモノマーおよび少なくとも1つの他の異なるモノマーの組み合わせから調製できる。本発明において有用な好適なビニルエステルモノマーの例としては、商業的に利用可能なビニルエステルモノマーがあげられる。そのようなビニルエステルモノマーの例としては、プロピオン酸ビニルおよび酪酸ビニルがあげられ、それらはどちらも加水分解できる。予め決定された程度に部分的に加水分解されたビニルエステル基を備えたPVEに基づいた粒子状物質を含むPVEラテックスを調製するために、他のビニルエステルモノマーを使用することができる。
【0035】
PVEに基づいた粒子状物質のコポリマーを形成するために使用される少なくとも1つの他の異なるモノマーの例としては、上に記載されたビニルエステルモノマーと共重合することができるモノマーがあげられる。本発明に有用なそのような異なるモノマーとしては、エチレンモノマー、ビニルバーサテートモノマー、アクリレートモノマー、メタアクリレートモノマーおよびそれらの組み合わせからなる群から選択されるものがあげられるが、それらに制限されるものではない。そのようなモノマーの具体例としては、アクリル酸ブチルモノマー、2−エチルヘキシルアクリレートモノマー、マレイン酸ジブチルモノマー、エチレンモノマー、ビニルネオデカノエートモノマー、ビニルネオノナノエートモノマー、バルサティック酸(登録商標)のビニルエステル(ヘキシオンスペシャリティー社、コロンバス、オハイオ州から利用可能)、およびそれらの組み合わせがあげられるが、それらに制限されるものではない。PVEラテックスを調製するのに、酢酸ビニルモノマーとともに他のビニルエステルモノマーを使用することができる。そのようなビニルエステルモノマーの例としては、プロピオン酸ビニルおよび酪酸ビニルがあげられるが、それらに制限されるものではない。
【0036】
さらに、酢酸ビニルおよび少なくとも2つ以上の相違するモノマーを含むヘテロポリマーも可能である。相違するモノマーは、PVAcラテックスを形成するために利用されるモノマーの合計の約5から約80重量%までの範囲で典型的に利用される。様々な実施態様においては、ホモ重合および共重合から形成されて得られたPVEラテックスが組み合わせられて混合物とされ、本発明のPVEに基づいたラテックスを形成するために使用できる。
【0037】
さらなる実施態様では、本発明で使用されるPVEラテックスは、ダウケミカル社(ミッドランド、MI)からのUCAR(登録商標)ラテックス、チバスペシャリティーケミカルズ(バーゼル、スイス)からのLatexia(登録商標)、ダウライヒホールドスペシャリティーラテックス LLC(リサーチトライアングル パーク、NC)からのSynthemul(登録商標)、およびセラニース社(ダラス、TX)からのRexyn(登録商標)のような商業的サプライヤから得ることができる。
【0038】
様々な実施態様においては、PVEに基づいた粒子状物質の加水分解の予め決定された程度は、ビニルエステル基の5から80パーセントであることができる。さらなる実施態様では、PVEに基づいた粒子状物質の加水分解の予め決定された程度は、ビニルエステル基の10から50パーセントであることができる。PVEに基づいた粒子状物質のビニルエステル基の予め決定されたパーセンテージの部分加水分解は、予め決定されたモル量の塩基とPVEに基づいた粒子状物質中のビニルエステル基を反応させることにより達成できる。塩基の例としては、水性の水酸化ナトリウム溶液、水酸化カリウム溶液および水酸化アンモニウムがあげられるが、それらに制限されるものではない。
【0039】
あるいは、PVEに基づいた粒子状物質のビニルエステル基の予め決定されたパーセンテージを部分的に加水分解することは、予め決定されたモル量の水溶性の酸とPVEに基づいた粒子状物質中のビニルエステル基を反応させることにより達成することができる。水溶性の酸の例としては硫酸および塩酸があげられるが、それらに制限されるものではない。
【0040】
ついで、得られたPVEに基づいたラテックスは、コーティング組成物において使用されるか、および/または少なくとも1つのさらなるバインダーと配合されてバインダー組成物を形成するために使用できる。バインダー組成物に関して、バインダーとPVEに基づいたラテックスを直接配合することは、コーティング組成物を形成する際の予備混合工程を回避することを支援し、分散体で存在する配合物はレオロジーへの悪影響を最小限にするのを支援できる。様々な実施態様においては、バインダー組成物はコーティング組成物とは別に液体分散物として製造することができる。言いかえれば、バインダー組成物は、PVEに基づいた粒子状物質(バインダー自体)および少なくとも1つの追加のバインダーを含むPVEに基づいたラテックスの分散体である。様々な実施態様においては、バインダー組成物を形成するPVEに基づいた粒子状物質およびバインダーは、PVEに基づいた粒子状物質のバインダーへの重量比率が1:8から3:1であることができる。言い換えれば、様々な実施態様においては、バインダー組成物を形成するPVEに基づいた粒子状物質およびバインダーは、バインダーに対してポリビニルエステルに基づいた粒子状物質が約0.125から約3部まで量で存在することができる。
【0041】
コーティング組成物および/またはバインダー組成物のためのバインダーは、ピグメント粒子状物質、およびコーティング組成物中の他の固体を結合するために有用な多くのバインダーから選択することができる。バインダーの選択は、部分的には少なくともコーティング組成物のレオロジーおよび保水性を変成するそれらの能力に基づくことができる。バインダー選択はさらに最終用途の印刷メディア基体によることができる。
【0042】
好適なバインダーの例は、スチレンブタジエン、スチレンブタジエンアクリロニトリル、カルボキシル化スチレンブタジエン、カルボキシル化スチレンブタジエンアクリロニトリル、スチレンアクリレート、カルボキシル化スチレンアクリレート、(カルボキシメチル)セルロース、たとえばカゼインまたは大豆蛋白のような天然蛋白質、スターチ、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニルのホモポリマーおよびコポリマー、アクリルラテックス、天然由来のラテックス材料、およびエチレン−酢酸ビニルコポリマーおよびそれらの組み合わせからなる群から選択されることができるが、これらに限定されるものではない。
他のさらなるバインダーの添加も可能である。これらのバインダーは、これらに限定されるものではないが、たとえばカルボン酸または他の改質剤を少量(典型的には100部のモノマー当たり6部未満)で含むことができる。
【0043】
様々な実施態様においては、コーティング組成物は、前記のPVEに基づいたラテックスまたはバインダー組成物、およびOBAを含み、該ポリビニルエステルに基づいた粒子状物質はOBAのためのキャリヤの役割を果たす。驚くべきことに、PVEに基づいた粒子状物質のビニルエステル基の部分的に加水分解される予め決定された程度は、本質的にポリビニルエステルに基づいた粒子状物質によって保持される蛍光増白剤の量と線形相関を有する。したがって、コーティング組成物中に保持されるOBAの量は、ポリビニルエステルに基づいた粒子状物質の加水分解の予め決定された程度を、PVEに基づいた粒子状物質の所定の重量パーセントに調節および/または選択することにより調節できる。
【0044】
好適なOBAの例としては、漂白剤、蛍光剤、着色剤、それらの組み合わせ、または同種のものがあげられるが、これらに限定されるものではない。具体例としては、スチルベン誘導体、ベンゾオキサゾール類およびチオフェナート類、たとえばビス(トリアジニルアミノ)スチルベン、4,4’−ジアミノスチルベン−2,2’ジスルホ、4,4’−ビス(ベンゾオキサゾール−2−イル)スチルベン、2,5−(ジ−5−tert−ブチルベンゾイル)チオフェナート、2,2’―(1,2−エテンジイル ジ−4,1−フェニレン)ビスベンズオキサゾール、およびそれらの組み合わせがあげられる。他のOBAとしては、商品名UVITEX OBおよびTINOPAL(チバスペシャリティーケミカルズ、バーゼル、スイス)、BLANKOPHOR(Lanxess、ドイツ)、およびHOSTALUXおよびLEUCOPHOR(クラリアント、スイス)があげられる。さらに、他のOBAおよび/またはOBAの組み合わせも可能である。
【0045】
先に議論されたように、本発明のコーティング組成物はさらに追加の成分(懸濁してまたは溶解して)を、コーティングのレオロジーおよび/またはコーティング組成物で被覆された印刷メディア基体の仕上げコーティング特性を向上させ、および/または所望のものを得るために含むことができる。そのような追加の成分としては、ピグメント、分散剤、保護コロイド、コロイドのための溶剤、金属イオン封鎖剤およびその他同種のものがあげられるが、これらに制限されるものではない。
【0046】
コーティング組成物のためのピグメントは、コーティング組成物において有用な多くの異なるピグメントから選ばれることができる。そのようなピグメントの例としては、固体および/または中空のプラスチックピグメント、カオリンクレーのようなコーティンググレードのクレー、二酸化チタン、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、タルク、硫酸亜鉛、硫酸アルミニウム、酸化カルシウム反応生成物、リトポン、硫化亜鉛、他のコーティングピグメント、他の同様の材料および混合物の水性分散物があげられるが、これらに制限されるものではない。本発明のPVEに基づいたラテックスは、コーティング組成物に加えられる前に固体のおよび/または中空プラスチックピグメントと混合されることができる。さらに、コーティング組成物は、さらにたとえば酸化亜鉛および/または少量の分散剤又は安定剤、たとえばポリアクリル酸コポリマーまたはピロリン酸テトラナトリウムのようのような他の添加剤を含むことができる。
【0047】
コーティング組成物用の他の任意の成分に関して、潤滑剤および消泡剤を含むことができるが、これらに制限されるものではない。コーティング組成物とともに使用できる潤滑剤の例としては、ステアリン酸カルシウム、ポリエチレンエマルションおよびポリグリセライドがあげられるが、これらに制限されるものではない。様々な実施態様においては、組成物は、ピグメントの100部あたり潤滑剤を1部まで含むことができる。コーティング組成物ともに使用できる消泡剤の例としては、パラフィンミネラルオイル、脂肪酸またはシリコーンに基づいた生成物、たとえばNopcomaster(ナプコ ペーパー テクノロジー、ノルウエイ)またはEtingal(BASF、ドイツ)があげられるが、これらに制限されるものではない。様々な実施態様においては、組成物は、ピグメントの100部あたり消泡剤0.5部までを含むことができる。
【0048】
PVEに基づいたラテックスは、ピグメントの100部あたり所定量でコーティング組成物中に含まれることができる。この量は所望の白色度、明るさ、結合強度、および低減された色戻り特性を備えた印刷メディア基体のためのコーティングを達成する範囲であることができる。例えば、コーティング組成物は集合的に、PVEに基づいた粒子状物質と他のバインダーを、100部のピグメント当たり約3部から、100部のピグメント当たり約25部の範囲で含むことができる。あるいは、追加のバインダーを含まず、PVEに基づいたラテックスからのPVEに基づいた粒子状物質がコーティング組成物の中に存在するただ一つのバインダーであることもできる。様々な実施態様においては、本発明のコーティング組成物は、一般にピグメント100部あたり約3から4部のOBAを含むことができる。
【0049】
先の記載は例示のために為されたものであり、何らの制限を与えるものでないことが理解されるべきである。具体的な実施態様が例示されたが、当該技術分野における当業者は、他の構成要素が、特定の実施態様において置換されることができることを認識するであろう。特許請求の範囲は、先行技術によって制限された範囲を除き、開示された様々な実施態様の適合および変更をも包含することを意図する。
【0050】
本発明について開示された実施態様はさらにコーティング組成物の適用方法、本発明のPVEに基づいたラテックスを含むコーティング組成物で被覆された基体を含む。
【0051】
先の詳細な説明では、様々な特徴は開示を能率的にするために例示的な実施態様の中で一まとめにされた。開示された方法は、特許請求の範囲の任意の請求項に記載された発明が、より多くの要件を必要とするように解釈されるべきではない。以下の特許請求の範囲が示すように、発明の主題は、単一の示された実施態様のすべての特徴を備えていないものにも存する。
【0052】
したがって、以下に記載される特許請求の範囲は発明の詳細な説明に組み込まれ、本発明の異なる実施態様として独立したものである。
【0053】
本発明は、以下の例によってさらに例証される。具体的な例、材料、量および手順は、ここに述べられるような開示の範囲および精神に従って広く解釈されることが理解されるべきである。
【0054】
実施例:
本発明の様々な態様が以下の例によって例証される。
具体的な例、材料、量および手順は、ここに述べられるような開示の範囲および精神に従って広く解釈されることが理解されるべきである。
特記のない限り、すべての部およびパーセンテージはすべて乾燥した材料に基づいた重量による。特記のない限り、使用される化学薬品はすべて商業的に利用可能なものである。
【0055】
実施例1
40重量パーセント固形分でPVAc粒子状物質(ホモポリマー)を含むポリ酢酸ビニル(PVAc)ラテックスXZ 92806(ダウケミカル社、ミッドランド、MI)の500gを、10重量%水酸化ナトリウム溶液を186.4g加えることにより、室温で部分的に加水分解した。塩基の量は、PVAc−粒子状物質中のアセテート官能性基の20パーセントを加水分解する量に対応する。図1は、分散物のpHが13から時間とともに減少し、3日後にpHが約8.5となったことを示す。生じるPVAcに基づいたラテックスは、少なくとも2か月を超える、良好な貯蔵安定性を示す。
【0056】
その後、PVAcに基づいたラテックスは、スチレンブタジエンバインダーDL 920(ダウケミカル社、ミツドランド、MI)と混合され、混合物の合計ポリマー重量の12.5%、25%、37.5%および50重量%とされた。得られたブレンドの各々の10部の乾燥したポリマーが、商品名HYDROCARB 90(Omya社、プロクター、VT)で販売されている炭酸カルシウム100部と、商品名TINOPAL ABP−Z(チバスペシャリティーケミカルズ、バーゼル、スイス)で販売されているOBA1部を含むコーティング組成物中で使用される。
【0057】
コーティング組成物のpHは、10の重量%NaOH溶液でpH 8.5に調節され、さらに70%の固形分に調節される。次いで、異なるコーティング組成物が上質紙上にコーティングされ、商品名Mowiol 6−98(クラレ社、東京、日本)で販売されるパウダ形状のPVOHで調製された配合物と比較される。
【0058】
コーティング配合物は、14g/cmのコート重量で、65g/mの上質紙基体上に塗布され、次に、分速(m/分)36メートルで連続的な研究室スケールの塗工機を使用して、4.5%の含水量に乾燥された。紙は、実験の全体にわたって連続的に適度な一定圧力を加えつつ、70℃の温度で、1つの側当たり2つのニップを使用して、研究室スケールのカレンダー機でカレンダー加工された。
【0059】
PVOHの量は、100部のピグメント当たり、0.25、0.5、0.75および1部である。これらの量は、PVAcに基づいたラテックスとスチレンブタジエンバインダーの上記の異なる重量%を有するコーティング組成物中の水酸基と同等な数に対応する。
【0060】
その後、PVAcに基づいたラテックスを含んでいるコーティング組成物と、PVOHを含んでいるコーティング組成物の粘度が比較される。図2A−2Eは、Mowiol 6−98を含むコーティング組成物と、PVAcに基づいたラテックスを含むコーティング組成物との比較を示す。図2Aの中で示されるように、PVAcに基づいたラテックス(ホモポリマー)を含むコーティング組成物は、コーティング組成物中の水酸基と同等の数において、より小さいブルックフィールド粘度(100回転/分、スピンドル4)を提供する。
【0061】
図2BはPVAcに基づいたラテックスを含むコーティング組成物は、PVOHを含んでいるものと比較して、高剪断速度においてより小さい粘度を有していることを示す。
この試験については、粘度は、Physica MCR 301コーンプレートレオメータ(Anton Par、オーストリア)で測定された。
【0062】
上記のコーティング組成物の高剪断速度(500,000/秒)における粘度は、0.4mmの毛細管の直径を有するACAV A2毛細管レオメータ(ACAシステムズ、Oy、フィンランド)で測定された。図2Cは、PVAcに基づいたラテックス(ホモポリマー)を含むコーティング組成物は、PVOHを含んでいるものと比較して、高剪断速度においてより小さい粘度を有していることを示す。
【0063】
コーティング組成物用のコーティング結合強度も、IGTピック試験機を使用して測定された。IGTピック試験は、A2タイプ印刷適性試験装置(IGR Reprotest BV)で実行された。コート紙片(4mm×22mm)は、Reprotest BVからの振り子駆動方式および中程度の粘度試験油を使用して、36ニュートン(N)の印刷圧力で、インキングされたアルミニウムディスクで印刷された。印刷の後に、コーティングが損傷を示し始める距離が、双眼実体顕微鏡の下でマークされる。その後、印の付けられた距離は、IGR速度カーブへ転送され、1秒当たりのセンチメートル(cm/秒)での速度が使用されたドライブカーブ上で読まれる。より高い速度は、乾燥ピックに対する大きな抵抗を示す。図2Dに示されるように、すべての上記の列記されたコーティング組成物(PVAcに基づいたラテックス(ホモポリマー)、およびPVOHを含んでいるものの両方)では、本質的に同一のコーティング結合強度が観察される。
【0064】
最後に、PVAcに基づいたラテックスを含むコーティング組成物は、PVOHを含むコーティング組成物と比較して、良好な不透明度、同等なISO明度、および同等なOBA運搬効率(紫外光を使用したISO明度により測定)を有する。ISO明度は、Technidyne Color Touch 2 (ISO モデル)で、D65 光源を使用して、ISO 2469.2470によって測定される。
【0065】
実施例2
50.4重量パーセント固形分でポリビニルアセテート−ブチルアクリレートコポリマーを含むXU 31613(ダウケミカル社、ミッドランド、MI)の500gを、10重量%水酸化ナトリウム溶液を174.4g加えることにより、室温で部分的に加水分解した。塩基の量は、PVAc−粒子状物質中のアセテート官能性基の20パーセントを加水分解する量に対応する。分散物のpHが約13から時間とともに減少し、3日後にpHが約9.5となった。生じるPVAcに基づいたラテックスは、少なくとも2か月を超える、良好な貯蔵安定性を示す。
【0066】
その後、PVAcに基づいたラテックスは、スチレンブタジエンバインダーDL 920(ダウケミカル社、ミツドランド、MI)と混合され、混合物の合計ポリマー重量の12.5%、25%、37.5%および50重量%とされた。得られたブレンドの各々の10部の乾燥したポリマーが、商品名HYDROCARB 90(Omya社、VT)で販売されている炭酸カルシウム100部と、商品名TINOPAL ABP−Z(チバスペシャリティーケミカルズ、バーゼル、スイス)で販売されているOBA1部を含むコーティング組成物中で使用される。
【0067】
コーティング組成物のpHは、10重量%のNaOH溶液でpH8.5に調節され、さらに70%の固形分に調節される。次いで、異なるコーティング組成物が上質紙上にコーティングされ、商品名Mowiol 6−98(クラレ社、東京、日本)で販売されるパウダ形状のPVOHで調製された配合物と比較される。PVOHの量は、100部のピグメント当たり、0.25、0.5、0.75および1部である。
【0068】
PVAcに基づいたラテックスを含んでいるコーティング組成物と、PVOHを含んでいるコーティング組成物の粘度が比較される。図2A−2Eは、Mowiol 6−98を含むコーティング組成物と、PVAcに基づいたラテックスを含むコーティング組成物との比較を示す。図2Aに示されるように、PVAcに基づいたラテックス(コポリマー)を含むコーティング組成物は、コーティング組成物中の水酸基の同等の数において、同等のブルックフィールド粘度(100回転/分、スピンドル4)を提供する。
【0069】
図2BはPVAcに基づいたラテックスを含むコーティング組成物は、PVOHを含んでいるものと比較して、高剪断速度においてより小さい粘度を有していることを示す。この試験については、粘度は、前述のPhysica MCR 301コーンプレートレオメータで測定された。
【0070】
上記のコーティング組成物の高剪断速度における粘度は、前述のACAV A2毛細管レオメータ(ACAシステムズ、Oy、フィンランド)で測定された。図2Cは、PVAcに基づいたラテックス(コポリマー)を含むコーティング組成物は、PVOHを含んでいるものと比較して、高剪断速度においてより小さい粘度を有していることを示す。
【0071】
コーティング組成物のコーティング結合強度も、上述のIGTピック試験機を使用して測定された。図2Dに示されるように、すべての上記の列記されたコーティング組成物(PVAcに基づいたラテックス(コポリマー)、およびPVOHを含んでいるものの両方)では、本質的に同一のコーティング結合強度が観察される。最後に、PVAcに基づいたラテックスを含むコーティング組成物は、PVOHを含むコーティング組成物と比較して、良好な不透明度、同等なISO明度、および同等なOBA運搬効率(紫外光を使用したISO明度により測定)を有する。ISO明度は、上述のように測定された。
【0072】
実施例3
実施例1および2のそれぞれのPVAcに基づいたラテックスの1.25部を、スチレンブタジエンバインダーDL 920(ダウケミカル社、ミッドランド、MI)の8.75部と混合した。次いで、上記の配合されたラテックスの10部を、商品名Capim SP(Imerys、フランス)で販売されるクレーピグメント100部、商品名TINOPAL ABP−Z(チバスペシャリティーケミカルズ、バーゼル、スイス)で販売されているOBA1部、および商品名DST 3250(ダウケミカル社、ミッドランド、MI)で販売される増粘剤0.35部と混合した。
【0073】
コーティング組成物のpHは、10重量%のNaOH溶液でpH8.5に調節され、さらに63%の固形分に調節される。
次いで、異なるコーティング組成物が上質紙上にコーティングされ、Mowiol 6−98の0.25部とスチレンブタジエンバインダーDL 920の9.75部を使用した配合物と比較される。
【0074】
次いで、PVAcに基づいたラテックスを含むコーティング組成物、およびPVOHを含んでいるものの粘度が比較された。PVAcに基づいたラテックスを含むコーティング組成物はより高いブルックフィールド粘度(図3A)を与えた。それは、増粘剤の低減を許容する。
【0075】
コーティング組成物についてのコーティング結合強度が、合否試験により測定される。
図3Bに示されるように、すべての上記の列記されたコーティング組成物(PVAcに基づいたラテックス(ホモポリマーおよびコポリマー)、およびPVOHを含んでいるものの両方)では、本質的に同一のコーティング結合強度が観察される。合否試験はPruefbau印刷適性試験装置でテストされる。紙片が、商品名Huber Wegschlagfarbe No.520068として商業的に利用可能なインキで印刷される。最初に190マイクロリットル(μl)が、インキ分配ロールに適用される。スチール印刷ディスクが、30μlのインキボリュームを達成するようインキングされる。コート紙片は、次いで試験装置にマウントされ、0.5m/秒の速度および800Nの印刷圧力で、インキングされたスチールディスクで印刷される。3秒の遅延時間の後、紙片は同じスチールリールを使用して、再度印刷される。この手続きは、コート紙片の表面が破壊されるまで繰り返される。コート紙表面を破壊させるのに必要な印刷のパスの数は、紙の表面の強さの尺度である。PVAcに基づいたラテックスを含むコーティング組成物は、PVOHを含むコーティング組成物と比較して、良好な不透明度、改良されたCIE白色度(図3C)、および改良されたOBA運搬効率(紫外光を使用した蛍光により測定)を有する。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
予め決定された程度に部分的に加水分解されたビニルエステル基を有する、ポリビニルエステルに基づいた粒子状物質を含むラテックス、を含む、ポリビニルエステルに基づいたラテックス。
【請求項2】
加水分解の予め決定された程度が、ビニルエステル基の10から50パーセントである、請求項1記載のポリビニルエステルに基づいたラテックス。
【請求項3】
ポリビニルエステルに基づいた粒子状物質が、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルおよび酪酸ビニルからなる群から選択されるモノマーから形成されたホモポリマーまたはコポリマーを含む、請求項1または2記載のポリビニルエステルに基づいたラテックス。
【請求項4】
ポリビニルエステルに基づいた粒子状物質が、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニルからなる群から選択されるモノマー、および少なくとも1つの他の相違するモノマーから形成されたコポリマーを含む、請求項1から3のいずれか1項記載のポリビニルエステルに基づいたラテックス。
【請求項5】
ポリビニルエステルに基づいたラテックスが、部分的にアセテート基を加水分解したポリ酢酸ビニルに基づいたラテックスである、請求項1から4のいずれか1項記載のポリビニルエステルに基づいたラテックス。
【請求項6】
ビニルエステル基を有するポリビニルエステルに基づいた粒子状物質を含むポリビニルエステルに基づいたラテックスを提供すること;および
該ポリビニルエステルに基づいた粒子状物質のビニルエステル基の予め決定された割合を部分的に加水分解すること、を含む、請求項1から5のいずれか1項記載のポリビニルエステルに基づいたラテックスの調製方法。
【請求項7】
予め決定された程度に部分的に加水分解されたビニルエステル基を備えたポリビニルエステルに基づいた粒子状物質を含むポリビニルエステルに基づいたラテックス;および
蛍光増白剤を含み、該ポリビニルエステルに基づいた粒子状物質が蛍光増白剤のためのキャリヤとして作用する、コーティング組成物。
【請求項8】
ポリビニルエステルに基づいたラテックスが、予め決定された程度に部分的に加水分解されたアセテート基を含む、ポリ酢酸ビニルに基づいたラテックスである、請求項7記載の組成物。
【請求項9】
バインダーに対してポリビニルエステル粒子状物質の約0.125から約3部までを含み、該バインダーがスチレンブタジエン、カルボキシル化スチレンブタジエン、スチレンブタジエンアクリロニトリル、カルボキシル化スチレンブタジエンアクリロニトリル、スチレンアクリレート、カルボキシル化スチレンアクリレート、(カルボキシメチル)セルロース、スターチ、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニルホモポリマーおよびコポリマー、エチレン−酢酸ビニルコポリマー、並びにそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1から8のいずれか1項記載のコーティング組成物。
【請求項10】
コーティング組成物中にピグメントが提供され、ピグメント100部に対して、ポリビニルエステルに基づいた粒子状物質およびバインダーが約3部から約25部の量で存在する、請求項1から9のいずれか1項記載のコーティング組成物。


【図1】
image rotate

【図2A】
image rotate

【図2B】
image rotate

【図2C】
image rotate

【図2D】
image rotate

【図2E】
image rotate

【図3A】
image rotate

【図3B】
image rotate

【図3C】
image rotate


【公表番号】特表2011−515558(P2011−515558A)
【公表日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−501821(P2011−501821)
【出願日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【国際出願番号】PCT/US2009/001923
【国際公開番号】WO2009/120370
【国際公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【出願人】(502141050)ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー (1,383)
【Fターム(参考)】