説明

ポリフェニレンエーテルの製造方法

【課題】分子量やガラス転移温度などの特性が異なる多種類のポリフェニレンエーテルを効率、生産性よく製造する方法、及び、ガラス転移温度が高く、かつ機械的特性等の改善が期待できる分子量分布の狭いポリフェニレンエーテルを製造する方法を提供すること。
【解決手段】フェノール化合物(A)を、少なくとも一種以上のポリフェニレンエーテルの良溶媒及び少なくとも一種以上のポリフェニレンエーテルの貧溶媒からなる混合溶媒を用い、触媒の存在下、酸素含有ガスを用いて酸化カップリングし、重合終結時における良溶媒が35質量%以上であるポリフェニレンエーテルの製造方法において、重合終結時における重合溶液の形態が沈殿析出重合であり、重合に用いられる成分(A)が式(1)で表されるフェノール化合物であり、かつ重合に用いる成分(A)の全量に対し、10質量%〜100質量%の(A)と貧溶媒からなる混合溶液(B)を重合中に逐次添加することを特徴とするポリフェニレンエーテルの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はポリフェニレンエーテルを安定的に沈殿析出させることができ、かつガラス転移温度が高く、分子量分布の狭いポリフェニレンエーテルを効率的に製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリフェニレンエーテルは加工性、生産性に優れ、溶融射出成型法や溶融押出成型法などの成型方法により、所望の形状の製品や部品を効率よく生産できるため、電気・電子材料分野、自動車分野、その他各種工業材料分野、食品の包装分野の製品や部品用の材料として幅広く用いられている。用途の多様化に伴い、分子量やガラス転移温度等の特性が異なる多種類のポリフェニレンエーテルが求められ、耐熱性が高く、機械的特性にも優れるポリフェニレンエーテルが望まれるようになってきた。
多種類のポリフェニレンエーテルを造り分ける製造方法としては、バッチ方式での製造が有用であり、広い範囲の分子量の設計が可能な効率的な製造方法が望まれているが、反応器へのスケールによる収率の悪化により、原料であるフェノール類を必要以上に用いなければならないという問題が生じている。そのため無駄を少なくし、環境への負荷の低減を目的に、スケール発生の少ないバッチ方式の製造方法が望まれている。
【0003】
また、一般的に耐熱性の高いポリフェニレンエーテルとしては、例えば、2,3,6−トリメチルフェノールと2,6−ジメチルフェノールからなるポリフェニレンエーテルにより、従来公知のポリフェニレンエーテルと比較し、ガラス転移温度が数℃高いポリフェニレンエーテルが開示されている(例えば、特許文献1、2参照。)。特許文献1には、製造の際の重合形態は均一状態で、反応混合物が曇点温度を有しており、重合温度を曇点温度以上の高い温度で実施することが記載されているが、均一状態で重合するためには目的物の組成、粘度に応じて細かな温度制御が必要であり、工業的な観点から高効率であるとは言えない。また特許文献2に記載のポリフェニレンエーテルは、従来公知のポリフェニレンエーテルと比較し低分子量で沈殿することから、従来公知のポリフェニレンエーテル同等の高分子量のポリフェニレンエーテルを得るには、均一溶液系で重合することが好ましい旨が明記されており、沈殿析出重合は不向きであることが示唆されている。
【0004】
また、芳香族炭化水素と、脂肪族炭化水素からなる混合溶媒中でのポリフェニレンエーテルの製造方法(例えば、特許文献3参照。)では、重合終了時の重合液の形態は沈殿析出重合となっているが、全仕込み量に対する2,6−ジメチルフェノール及び2、3、6−トリメチルフェノールの合計が重量分率にして10質量%未満と低く、また分子量分布やスケールの量に関しては開示されていない。
【特許文献1】WO2003/042282号公報
【特許文献2】特開昭50−150798号公報
【特許文献3】特開平11―12354号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、分子量やガラス転移温度などの特性が異なる多種類のポリフェニレンエーテルを反応器へのスケールの発生や収率の低下が抑制された、即ち効率、生産性に優れたポリフェニレンエーテルの製造方法、及びガラス転移温度が高く、かつ機械的特性等の改善が期待できる分子量分布の狭いポリフェニレンエーテルを製造する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、前記課題を解決するため鋭意検討を重ねた結果、驚くべきことに、ポリフェニレンエーテルを沈殿析出重合で製造する際に、重合に用いる成分(A)の全量に対し、10質量%〜100質量%の(A)と貧溶媒からなる混合溶液(B)を重合中に逐次添加することで、反応器へのスケールの発生や収率の低下が抑制され、機械的特性を得るために十分な分子量を持ち、かつ分子量分布の狭いポリフェニレンエーテルを製造できる事を見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、
[1]フェノール化合物(A)を、少なくとも一種以上のポリフェニレンエーテルの良溶媒及び少なくとも一種以上のポリフェニレンエーテルの貧溶媒からなる混合溶媒を用い、触媒の存在下、酸素含有ガスを用いて酸化カップリングし、重合終結時における良溶媒が35質量%以上であり、重合終結時における重合溶液の形態が沈殿析出重合であるポリフェニレンエーテルの製造方法において、重合に用いられる成分(A)が式(1)で表されるフェノール化合物であり、かつ重合に用いる成分(A)の全量に対し、10質量%〜100質量%の(A)と貧溶媒からなる混合溶液(B)を重合中に逐次添加することを特徴とするポリフェニレンエーテルの製造方法。
【0007】
【化1】

【0008】
・・・式(1)
(式(1)中、R、R、R3、R4は各々独立の置換基を表し、Rはアルキル基,置換アルキル基,アラルキル基,置換アラルキル基,アリール基,置換アリール基,アルコキシ基または置換アルコキシ基であり、R、R3、R4はRについて定義されたものと同一の基に加え更に水素またはハロゲンであっても良い。)
【0009】
[2]重合に用いるフェノール化合物(A)が、式(2)で表されるフェノール化合物(C)及び式(3)で表されるフェノール化合物(D)からなることを特徴とする請求項1に記載のポリフェニレンエーテルの製造方法。
【0010】
【化2】

【0011】
・・・式(2)
(式(2)中、R、R、は各々独立の置換基を表し、Rはアルキル基,置換アルキル基,アラルキル基,置換アラルキル基,アリール基,置換アリール基,アルコキシ基または置換アルコキシ基であり、RはRについて定義されたものと同一の基に加え更に水素またはハロゲンであっても良い。)
【0012】
【化3】

【0013】
・・・式(3)
(式(3)中、R、R、R、は各々独立の置換基を表し、Rはアルキル基,置換アルキル基,アラルキル基,置換アラルキル基,アリール基,置換アリール基,アルコキシ基または置換アルコキシ基であり、R、Rについて定義されたものと同一の基に加え更に水素またはハロゲンであっても良い。)
【0014】
[3]重合に用いるフェノール化合物(A)が、フェノール化合物(C)60質量%〜95質量%及びフェノール化合物(D)5質量%〜40質量%からなることを特徴とする請求項1または2に記載のポリフェニレンエーテルの製造方法。
[4]フェノール化合物(C)が2,6―ジメチルフェノール、フェノール化合物(D)が2,3,6―トリメチルフェノールであることを特徴とする請求項1〜3いずれか1項に記載のポリフェニレンエーテルの製造方法。
[5]ポリフェニレンエーテルの貧溶媒が炭素数にして1個〜10個までのアルコールを主成分とする、少なくとも1種以上の溶媒であることを特徴とする請求項1〜4いずれか1項に記載のポリフェニレンエーテルの製造方法。
【0015】
[6]該ポリフェニレンエーテルの数平均分子量が10000〜40000であることを特徴とする請求項1〜5いずれか1項に記載のポリフェニレンエーテルの製造方法。
[7]触媒の構成成分が銅化合物、ハロゲン化合物及び一般式(4)で表されるジアミン化合物からなる触媒を用いることを特徴とする請求項1〜6いずれか1項に記載のポリフェニレンエーテルの製造方法。
【0016】
【化4】

【0017】
・・・式(4)
(式中、R10,R11,R13,R14はそれぞれ独立に水素、炭素数1から6の直鎖状または分岐状アルキル基で、全てが同時に水素ではない。R12は炭素数2から5の直鎖状またはメチル分岐を持つアルキレン基である)
【0018】
[8]重合中に逐次添加する成分(B)の組成が、成分(A)対貧溶媒の重量比で25:1〜1:10であることを特徴とする請求項1〜7いずれか1項に記載のポリフェニレンエーテルの製造方法。
[9]ポリフェニレンエーテルの貧溶媒がメタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、n−ブタノール、2−ブタノール、Tert−ブタノールからなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1〜8いずれか1項に記載のポリフェニレンエーテルの製造方法、
である。
【発明の効果】
【0019】
本発明により、特定のフェノール化合物を用いて酸化重合を行ないポリフェニレンエーテルを沈殿析出重合において製造するに際し、貧溶媒と特定フェノール化合物を重合中に逐次添加することで、機械的特性を得るために十分な分子量を持ち、かつ分子量分布の狭いポリフェニレンエーテルを提供することができ、更に分子量の異なる多種類のポリフェニレンエーテルを効率、生産性よく製造することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明について、以下具体的に説明する。
本発明に用いられるフェノール化合物(A)は下記一般式(1)で表される化合物である。
【0021】
【化5】

【0022】
・・・式(1)
式(1)中、R、R、R3、R4は各々独立の置換基を表し、Rはアルキル基,置換アルキル基,アラルキル基,置換アラルキル基,アリール基,置換アリール基,アルコキシ基または置換アルコキシ基であり、R、R3、R4はRについて定義されたものと同一の基に加え更に水素またはハロゲンであっても良い。
【0023】
一般式(1)で表されるようなフェノール化合物(A)としては、例えば、フェノール化合物(C)、フェノール化合物(D)、2、3、5、6―テトラメチルフェノール、2、3、5−トリメチルフェノール、3,5―ジメチル―4―フェニルフェノール、2−クロロ―3,5,6―トリメチルフェノール、2,3―ジクロロ―5,6―ジメチルフェノール、2,3―ジエチル―5―メチルフェノール、2,3,5―トリエチルフェノール、2−ブロモ―3,5,6―トリメチルフェノール、2,3―ジブロモ―5,6―ジメチルフェノール、2,3,5,6―テトラエチルフェノール等が挙げられる。
【0024】
これらの中でも、フェノール化合物(C)、フェノール化合物(D)が好ましく用いられ、フェノール化合物(A)は、フェノール化合物(C)とフェノール化合物(D)からなることが更に好ましい。
本発明に用いられるフェノール化合物(C)は下記一般式(2)で表される化合物である。
【0025】
【化6】

【0026】
・・・式(2)
式(2)中、R、Rは各々独立の置換基を表し、RはRで定義された同一の基であり、RはRについて定義されたものと同一の基に加え更に水素またはハロゲンであっても良い。
【0027】
フェノール化合物(C)としては、例えば、o−クレゾール、2,6−ジメチルフェノール、2−エチルフェノール、2−メチル−6−エチルフェノール、2,6−ジエチルフェノール、2−n−プロピルフェノール、2−エチル−6−n−プロピルフェノール、2−メチル−6−クロルフェノール、2−メチル−6−ブロモフェノール、2−メチル−6−イソプロピルフェノール、2−メチル−6−n−プロピルフェノール、2−エチル−6−ブロモフェノール、2−メチル−6−n−ブチルフェノール、2,6−ジ−n−プロピルフェノール、2−エチル−6−クロルフェノール、2−メチル−6−フェニルフェノール、2−フェニルフェノール、2,6−ジフェニルフェノール、2,6−ビス−(4−フルオロフェニル)フェノール、2−メチル−6−トリルフェノール、2,6−ジトリルフェノール、等が挙げられる。
【0028】
本発明に於いてこれらのフェノール化合物(C)の中でも2,6−ジメチルフェノールは工業上非常に重要であり好ましく用いられる。並びに好ましくはこれらのフェノール化合物は一種類でも用いられるし、いくつか組み合わせて用いても良い。例えば、2,6−ジメチルフェノールと2,6−ジエチルフェノールを組み合わせて使用する方法、2,6−ジメチルフェノールと2,6−ジフェニルフェノールを組み合わせて用いる方法などである。このような混合フェノール化合物を用いる場合には2,6−ジメチルフェノールとの比が1:99から99:1の重量比である混合フェノール化合物を用いることができる。また使用するフェノール化合物の中に、製造の際の副産物として含まれている少量のm−クレゾール、p−クレゾール、2,4−ジメチルフェノール、2,4,6−トリメチルフェノール等が含まれていても全くかまわない。
【0029】
本発明に用いられるフェノール化合物(D)は下記一般式(3)で表される化合物である。
【0030】
【化7】

【0031】
・・・式(3)
式(3)中、R、R、R、は各々独立の置換基を表し、RはRで定義された同一の基であり、R、RはRについて定義されたものと同一の基に加え更に水素またはハロゲンであっても良い。
【0032】
フェノール化合物(D)としては、例えば、2、5−ジメチルフェノール、2,3,6−トリメチルフェノール、2,5−ジエチルフェノール、2−メチル−5−エチルフェノール、2−エチル−5−メチルフェノール、2−アリル−5−メチルフェノール、2、5−ジアリルフェノール、2,3−ジエチル−6−n―プロピルフェノール、2−メチル−5−クロルフェノール、2−メチル−5−ブロモフェノール、2−メチル−5−イソプロピルフェノール、2−メチル−5−n−プロピルフェノール、2−エチル−5−ブロモフェノール、2−メチル−5−n−ブチルフェノール、2,5−ジ−n−プロピルフェノール、2−エチル−5−クロルフェノール、2−メチル−5−フェニルフェノール、2,5−ジフェニルフェノール、2,5−ビス−(4−フルオロフェニル)フェノール、2−メチル−5−トリルフェノール、2,5−ジトリルフェノール、2,6−ジメチル−3−アリルフェノール、2,3,6−トリアリルフェノール、2,3,6−トリブチルフェノール、2,6−ジ−n−ブチル−3−メチルフェノール、2,6−ジ−t−ブチル−3−メチルフェノール、2,6−ジメチル−3―n−ブチルフェノール、2,6−ジメチル−3―t―ブチルフェノール、等が挙げられる。
【0033】
本発明に於いてこれらのフェノール化合物(D)の中でも2,3,6−トリメチルフェノールは工業上非常に重要であり好ましく用いられる。並びに好ましくはこれらのフェノール化合物は一種類でも用いられるし、いくつか組み合わせて用いても良い。例えば、2,3,6−トリメチルフェノールと2,5−ジメチルフェノールを組み合わせて使用する方法、2,3,6−トリメチルフェノールと5−ジフェニルフェノールを組み合わせて用いる方法などである。このような混合フェノール化合物を用いる場合には2,3,6−トリメチルフェノールとの比が1:99から99:1の重量比である混合フェノール化合物を用いることができる。また使用するフェノール化合物(D)の中に、製造の際の副産物として含まれている少量のo−クレゾール、p−クレゾール、2,4−ジメチルフェノール、2,4,6−トリメチルフェノール等が含まれていても全くかまわない。
【0034】
本発明において、フェノール化合物(C)とフェノール化合物(D)からなるフェノール化合物(A)を酸化重合せしめる場合、フェノール化合物(A)はフェノール化合物(C)60質量%〜95質量%、及びフェノール化合物(D)40〜5質量%からなることが好ましく、フェノール化合物(C)70質量%〜90質量%、及びフェノール化合物(D)30〜10質量%からなることがさらに好ましく、フェノール化合物(A)がフェノール化合物(C)70〜85質量%、及びフェノール化合物(D)30〜15質量%からなることが最も好ましい。
【0035】
本発明において、ポリフェニレンエーテルの良溶媒とは、ポリフェニレンエーテルを溶解させることができる溶媒である。このような溶媒を例示すると、ベンゼン、トルエン、キシレン(o−、m−、p−の各異性体を含む)、エチルベンゼン、スチレンなどの芳香族炭化水素、クロロホルム、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素、ニトロベンゼンのようなニトロ化合物が挙げられる。また、若干の貧溶媒性はもってはいるものの良溶媒に分類されるものとしては、ペンタン、ヘキサン、へプタン、シクロヘキサン、シクロへプタン等の脂肪族炭化水素類、酢酸エチル、ギ酸エチル等のエステル類、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテルなどのエーテル類、ジメチルスルホキシド等が例示される。これらの良溶媒は、単独でも用いられるし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中でも好ましい良溶媒はベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、スチレン等の芳香族炭化水素やクロロベンゼン、ジクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素である。
【0036】
本発明において、ポリフェニレンエーテルの貧溶媒とは、ポリフェニレンエーテルを全く溶解しないか、わずかに溶解できる溶媒である。例えば、エーテル類、ケトン類、アルコール類である。好ましくは貧溶媒として炭素数にして1個から10個までのアルコールを用いる方法である。このような貧溶媒としては例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、エチレングリコール等を挙げることができ、このような貧溶媒に、更に水が含まれていてもよい。これらの貧溶媒は単独でも用いられるし、2種以上を組み合わせて用いても良く、貧溶媒の特徴を損なわない範囲において良溶媒を含有しても構わない。特に好ましい貧溶媒はメタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、n−ブタノール、2−ブタノール、Tert−ブタノールである。
【0037】
しばしば用いられる溶媒の例としてはトルエンやキシレン等の芳香族炭化水素単独溶媒や、これにメタノール、エタノール等のアルコール類を含有させた混合溶媒である。
フェノール性化合物を酸化重合させて得られる重合体であるポリフェニレンエーテルに対する良溶媒と貧溶媒の比率を変化させ、貧溶媒の比率を大きくすることで反応の進行とともに重合体が反応溶媒中に粒子として析出する沈殿重合法になる。
【0038】
本発明におけるポリフェニレンエーテルは、数平均分子量が10000〜40000であると、成型体の溶融加工性と十分な機械特性が期待され好ましく、13000〜40000であるとより好ましい。数平均分子量が10000以下であると十分な機械特性が得られない可能性があり、また数平均分子量が40000を越すと加熱溶融時の条件等によっては溶融加工性が低下し、所望の成型体が得られない場合がある。さらにポリスチレン換算分子量から得られる重量平均分子量Mwと数平均分子量Mnから求められるMw/Mn値が3.0以下であるような分子量分布の狭いポリフェニレンエーテルは、溶融加工性が悪化せず成型体の機械的物性向上が期待され、Mw/Mn値が2.8以下であるとより好ましい。機械的特性向上を期待し数平均分子量を増加させる場合、Mw/Mnが3.0以上であると著しくMwが増大し、加熱溶融時の条件によっては溶融加工性が低下し、所望の成型片が得られない場合がある。
【0039】
本発明におけるポリフェニレンエーテルの製造方法において、反応溶媒中に重合体が粒子として析出した後、酸素含有ガスの供給量にもよるが、1分以上重合を継続すると本発明の効果が好適に発揮され、10分以上重合を継続するとより好適に、30分以上重合を継続すると更に好適に発揮される。
【0040】
本発明は重合を終了させる時のポリフェニレンエーテルの良溶媒は35質量%以上であり、好ましくは40質量%、より好ましくは45質量%以上、さらに好ましくは50質量%以上、最も好ましくは55質量%以上である。フェノール性化合物を酸化重合させて得られる重合体であるポリフェニレンエーテルに対する良溶媒と貧溶媒の比率を変化させ、貧溶媒の比率が高いほど反応の進行とともに重合体が反応溶媒中に粒子として析出する沈殿重合法になるが、良溶媒が35質量%以上であると、所望の分子量を得られ、或いは所望の分子量を得るために重合時間が著しく長期化する可能性がある、重合中に外部からの加熱が必要となることがある等、効率的にポリフェニレンエーテルを得られなくなる場合がある。
【0041】
本発明における重合中逐次添加するフェノール化合物(A)の濃度は重合に用いる該混合フェノール化合物(A)の全量に対し、10〜100質量%の範囲で任意に選択すると反応器への付着するスケールを抑制し、さらに分子量分布の狭いポリフェンエーテルを沈殿析出重合により安定に得ることができる。40〜100質量%の範囲が好ましく、60〜100質量%の範囲がより好ましく、80〜95質量%の範囲がさらに好ましい。
【0042】
本発明における重合中に逐次添加する混合溶液(B)は、フェノール化合物(A)と上記ポリフェニレンエーテルの貧溶媒からなり、フェノール化合物(A)対貧溶媒の重量比は任意の範囲で選択できるが25:1〜1:10であると、分子量分布の狭いポリフェニレンエーテルを沈殿析出重合により安定に得ることができ好ましい。更に好ましくは15:1〜1:5の範囲であり、より好ましくは10:1〜1:1の範囲である。添加する成分(B)の添加開始は重合開始と同時が好ましく、ポリフェニレンエーテルが析出するより以前に添加を開始するのが好ましい。
【0043】
フェノール化合物(C)とフェノール化合物(D)からなるフェノール化合物(A)を使用する手法としては以下のものが上げられる。
1. 重合に用いるフェノール化合物(A)全量と貧溶媒を混合溶液(B)とし、成分(B)を滴下すると同時に重合開始させる方法。
2. 重合に用いるフェノール化合物(A)全量と貧溶媒を混合溶液(B)とし、成分(B)を滴下し、重合槽内にフェノール化合物(A)全量に対し0.01〜90質量%の範囲で滴下した後重合を開始し、混合溶液(B)を逐次添加する方法。
3. フェノール化合物(C)の全量を反応初期に張り込み酸化重合を行ない、フェノール化合物(D)の全量と貧溶媒を混合溶液(B)とし、重合中逐次添加する方法。
4. フェノール化合物(D)の全量を反応初期に張り込み酸化重合を行ない、フェノール化合物(C)の全量と貧溶媒を混合溶液(B)とし、重合中逐次添加する方法。
5. 重合中に逐次滴下するフェノール化合物(C)とフェノール化合物(D)の重量分率(C)/(D)が、重合初期に張り込んだ成分(C)と成分(D)の重量分率(C)’/(D)’と等しくなるよう調製し、重合を開始し逐次添加する方法。
6. 重合中に逐次滴下するフェノール化合物(C)とフェノール化合物(D)の重量分率(C)/(D)が、重合初期に張り込んだ成分(C)と成分(D)の重量分率(C)’/(D)’より大きくなるよう調製し、重合を開始し逐次添加する方法。
7. 重合中に逐次滴下するフェノール化合物(C)とフェノール化合物(D)の重量分率(C)/(D)が、重合初期に張り込んだ成分(C)と成分(D)の重量分率(C)’/(D)’より小さくなるよう調製し、重合を開始し逐次添加する方法。
【0044】
添加終了は重合途中であれば特に限定されないが、添加終了後も重合を継続することで、重合系内に添加されて間もない未反応の混合フェノール化合物(A)が重合し、より多くのフェノール化合物(A)をポリフェニレンエーテル構造に重合することができ、効率的にポリフェニレンエーテルを得ることができるため、添加終了後1分以上重合を継続するほうが好ましく、10分以上がより好ましく、30分以上が更に好ましい。
本発明のように、重合の途中に混合フェノール化合物(A)とポリフェニレンエーテルの貧溶媒からなる混合溶液(B)を重合途中に逐次添加することで、所望の数平均分子量を有し、かつ分子量分布の狭いポリフェニレンエーテルを製造でき、さらに好適に分散したポリフェニレンエーテル粒子を製造できる。
【0045】
本発明の重合方法において重合に用いる溶液中のフェノール化合物(A)全量の濃度は特に限定されないが、全重合溶液中において10〜50重量%が好ましく、15〜30質量%とすると沈殿析出重合の特徴が発揮され更に好ましい。
本発明で用いられる触媒は、一般的にポリフェニレンエーテルの製造に用いることができる公知の触媒系が全て使用できる。一般的に知られている触媒系は酸化還元能を有する遷移金属イオンとこの金属イオンと錯形成可能なアミン化合物からなるものが知られており、例えば銅化合物とアミンからなる触媒系、マンガン化合物とアミンからなる触媒系、コバルト化合物とアミンからなる触媒系、等である。重合反応は若干のアルカリ性条件下で効率よく進行するため、ここに若干のアルカリもしくは更なるアミンを加えることもある。
【0046】
本発明で好適に使用される触媒は、触媒の構成成分として銅化合物、ハロゲン化合物および一般式(4)で表されるジアミン化合物からなる触媒である。
【0047】
【化8】

【0048】
・・・式(4)
(式中、R10,R11,R13,R14はそれぞれ独立に水素、炭素数1から6の直鎖状または分岐状アルキル基で、全てが同時に水素ではない。R12は炭素数2から5の直鎖状またはメチル分岐を持つアルキレン基である)
【0049】
ここで述べられた触媒成分の銅化合物の例を列挙する。好適な銅化合物としては第一銅化合物、第二銅化合物またはそれらの混合物を使用することができる。第二銅化合物としては、例えば塩化第二銅、臭化第二銅、硫酸第二銅、硝酸第二銅等を例示することができる。また第一銅化合物としては、例えば塩化第一銅、臭化第一銅、硫酸第一銅、硝酸第一銅等を例示することができる。これらの中で特に好ましい金属化合物は塩化第一銅、塩化第二銅、臭化第一銅、臭化第二銅である。またこれらの銅塩は酸化物(例えば酸化第一銅)、炭酸塩、水酸化物等と対応するハロゲンまたは酸から使用時に合成しても良い。しばしば用いられる方法は先に例示の酸化第一銅とハロゲン化水素(またはハロゲン化水素の溶液)を混合して作成する方法である。
【0050】
ハロゲン化合物としては例えば塩化水素、臭化水素、ヨウ化水素、塩化ナトリウム、臭化ナトリウム、ヨウ化ナトリウム、塩化カリウム、臭化カリウム、ヨウ化カリウム、塩化テトラメチルアンモニウム、臭化テトラメチルアンモニウム、ヨウ化テトラメチルアンモニウム、塩化テトラエチルアンモニウム、臭化テトラエチルアンモニウム、ヨウ化テトラエチルアンモニウム等である。またこれらは水溶液や適当な溶媒を用いた溶液として使用できる。これらのハロゲン化合物は、成分として単独でも用いられるし、2種類以上組み合わせて用いても良い。好ましいハロゲン化合物は、塩化水素の水溶液、臭化水素の水溶液である。
【0051】
これらの化合物の使用量は特に限定されないが、銅原子のモル量に対してハロゲン原子として2倍以上20倍以下が好ましく、使用されるフェノールの100モルに対して好ましい銅原子の使用量としては0.02モルから0.6モルの範囲である。
【0052】
次に触媒成分のジアミン化合物の例を列挙する.例えばN、N、N’、N’‐テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N’−トリメチルエチレンジアミン、N,N’−ジメチルエチレンジアミン、N,N−ジメチルエチレンジアミン、N−メチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラエチルエチレンジアミン、N,N,N’−トリエチルエチレンジアミン、N,N’−ジエチルエチレンジアミン、N,N−ジエチルエチレンジアミン、N−エチルエチレンジアミン、N,N−ジメチル−N’−エチルエチレンジアミン、N,N’−ジメチル−N−エチルエチレンジアミン、N−n−プロピルエチレンジアミン、N,N’−ジーn−プロピルエチレンジアミン、N−i−プロピルエチレンジアミン、N,N’−ジーi−プロピルエチレンジアミン、N−n−ブチルエチレンジアミン、N,N’−ジーn−ブチルエチレンジアミン、N−i−ブチルエチレンジアミン、N,N’−ジーi−ブチルエチレンジアミン、N−t−ブチルエチレンジアミン、N,N’−ジーt−ブチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチル−1,3−ジアミノプロパン、N,N,N’−トリメチル−1,3−ジアミノプロパン、N,N’−ジメチル−1,3−ジアミノプロパン、N−メチル−1,3−ジアミノプロパン、N,N,N’,N’−テトラメチル−1,3−ジアミノ−1−メチルプロパン、N,N,N’,N’−テトラメチル−1,3−ジアミノ−2−メチルプロパン、N,N,N’,N’−テトラメチル−1,4−ジアミノブタン、N,N,N’,N’−テトラメチル−1,5−ジアミノペンタン等が挙げられる。
【0053】
本発明にとって好ましいジアミン化合物は2つの窒素原子をつなぐアルキレン基の炭素数が2または3のものである。これらのジアミン化合物の使用量は特に限定されないが、通常使用されるフェノールの100モルに対して0.01モルから10モルの範囲で用いられる。
【0054】
本発明において触媒の構成成分として、更に3級モノアミン化合物または2級モノアミン化合物をそれぞれ単独で、またはこれらを組み合わせて含ませることは好ましい。
3級モノアミン化合物とは、脂環式3級アミンを含めた脂肪族3級アミンである。例えばトリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリイソブチルアミン、ジメチルエチルアミン、ジメチルプロピルアミン、アリルジエチルアミン、ジメチル−n−ブチルアミン、ジエチルイソプロピルアミン、N−メチルシクロヘキシルアミン等が挙げられる。これらの第3級モノアミンは単独でも用いられるし、2種類以上組み合わせて用いても良い。これらの使用量は特に限定されないが、通常使用されるフェノールの100モルに対して15モル以下の範囲が好ましい。
【0055】
2級モノアミン化合物の例として、第2級脂肪族アミンとしては例えば、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジ−n−プロピルアミン、ジ−i−プロピルアミン、ジ−n−ブチルアミン、ジ−i−ブチルアミン、ジ−t−ブチルアミン、ジペンチルアミン類、ジヘキシルアミン類、ジオクチルアミン類、ジデシルアミン類、ジベンジルアミン類、メチルエチルアミン、メチルプロピルアミン、メチルブチルアミン、シクロヘキシルアミンが挙げられる。芳香族を含む2級モノアミン化合物の例としては、N−フェニルメタノールアミン、N−フェニルエタノールアミン、N−フェニルプロパノールアミン、N−(m−メチルフェニル)エタノールアミン、N−(p−メチルフェニル)エタノールアミン、N−(2’,6’−ジメチルフェニル)エタノールアミン、N−(p−クロロフェニル)エタノールアミン、N−エチルアニリン、N−ブチルアニリン、N−メチル−2−メチルアニリン、N−メチル−2,6−ジメチルアニリン、ジフェニルアミン等が挙げられるがこれらの例には限定されない。これらの2級モノアミン化合物は単独でも用いられるし、2種類以上組み合わせて用いても良い。使用量は特に限定されないが、通常使用されるフェノールの100モルに対し15モル以下の範囲が好ましい。
【0056】
本発明において、重合中逐次添加する混合溶液(B)中に重合活性の向上を目的とし、上記触媒を含ませることは好ましい。
本発明には従来より活性に向上効果を有することが知られている界面活性剤を添加することについて何ら制限されない。例えば、Aliquat336やCapriquatの商品名で知られるトリオクチルメチルアンモニウムクロライドである。使用量は重合反応混合物の全量に対して0.1質量%を超えない範囲が好ましい。
【0057】
本発明の重合における酸素含有ガスは純酸素の他、酸素と窒素等の不活性ガスとを任意の割合で混合したもの、空気、更には空気と窒素、希ガス等の不活性ガスとを任意の割合で混合したもの等が使用できる。重合反応中の系内圧力は常圧で充分であるが必要に応じて減圧でも加圧でも使用できる。酸素含有ガスの供給速度は、除熱や重合速度等を考慮して任意に選択できるが、重合に用いるフェノール混合物1モル当たりの純酸素として5Nml/分以上が好ましく、10Nml/分以上がさらに好ましい。
重合の温度は特に限定されないが、低すぎると反応が進行しにくく、また高すぎると反応の選択性が低下することがあるので、0〜100℃、好ましくは10〜80℃の範囲である。
【0058】
本発明の重合反応系に、アルカリ金属の水酸化物、アルカリ土類金属の水酸化物、アルカリ金属のアルコキサイド、硫酸マグネシウム、塩化カルシウム等の中性塩、ゼオライト等も添加することができる。
重合反応終了後の後処理方法については特に制限はない。通常、塩酸や酢酸等の酸、またはエチレンジアミン4酢酸(EDTA)及びその塩、ニトリロトリ酢酸及びその塩等を反応液に加えて触媒を失活させる。その後重合終結時の重合溶液の形状がスラリーであるため、触媒の洗浄除去を目的として、重合に用いたポリフェニレンエーテルの溶解能が低い溶媒を主成分とする溶液を用いて繰り返し洗浄を実施することがより好ましい。その後、各種乾燥機を用いた乾燥工程において乾燥するという操作でポリフェニレンエーテルが回収できる。
【0059】
本発明の方法で得られたポリフェニレンエーテルは、従来既知の熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂と溶融混練することができる。次に熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂の例を列挙する。
例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、アクリロニトリル/スチレン樹脂、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン樹脂、メタクリル樹脂、塩化ビニル、ポリアミド、ポリアセタール、超高分子量ポリエチレン、ポリブチレンテレフタレート、ポリメチルペンテン、ポリカーボネート、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルエーテルエーテルケトン、液晶ポリマー、ポリテトラフロロエチレン、ポリエーテルイミド、ポリアリレート、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、ポリアミドイミド、フェノール、尿素、メラミン、不飽和ポリエステル、アルキッド、エポキシ、ジアリルフタレート等の樹脂が挙げられる。また溶融混練時に、導電性、難燃性、耐衝撃性等の効果を付与する目的で従来既知の添加剤や熱可塑性エラストマーを加えることがより好ましい。
【実施例】
【0060】
次に実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるべきではない。
なお測定は以下の方法に従って行なった。
(1)分子量の測定方法
昭和電工(株)製ゲルパーミエーションクロマトグラフィーSystem21で標準ポリスチレンを用いて検量線を作成し測定する。標準ポリスチレンの分子量は、3650000、2170000、1090000、681000、204000、52000、30200、13800、3360、1300、550のものを用いる。カラムは昭和電工(株)製K−805Lを2本直列につないで使用する。また、溶媒はクロロホルム、溶媒の流量は1.0ml/min、カラムの温度は40℃で測定する。ポリフェニレンエーテルの0.1重量%クロロホルム溶液を作製して測定する。検出部のUVの波長は、標準ポリスチレンの場合は254mn、ポリフェニレンエーテルの場合は283nmである。
(2)収率
重合に供したモノマー質量に対する乾燥ポリフェニレンエーテルの質量割合を100分率で測定した。
【0061】
(3)ガラス転移温度測定
得られたポリフェニレンエーテルのガラス転移温度は示差走査熱量計DSC(PerkinElmer製−Pyris1)を用い測定した。窒素雰囲気中毎分10℃の昇温速度で室温から280℃まで加熱後50℃まで毎分40℃で降温し、その後毎分10℃の昇温速度でガラス転移温度を測定した。
(4)反応器へのスケール付着確認
重合液を反応器から抜き出した後、反応器内の付着しているスケールの量を目視にて確認した。
【0062】
[実施例1]
重合槽底部に酸素含有ガス導入の為のスパージャー、撹拌タービン翼及びバッフル、重合槽上部のベントガスラインに還流冷却器を備えた10リットルのジャケット付き重合槽に500ml/分の流量で窒素ガスを吹き込みながら、1.099gの塩化第二銅2水和物、4.705gの35%塩酸、41.971gのN,N,N’,N’−テトラメチルプロパンジアミン、31.658gのジ−n−ブチルアミン、1264gのn−ブタノール、544gのメタノール、3792gのキシレン、136gの2,6−ジメチルフェノール、24gの2,3,6−トリメチルフェノールを入れ、均一溶液となり、かつ反応器の内温が40℃になるまで撹拌した。
【0063】
また、貯蔵槽に窒素ガス導入の為のスパージャー、撹拌タービン翼及びバッフル、貯蔵槽上部のベントガスラインに還流冷却器を備えた5リットルの貯蔵槽に、200ml/分の流量で窒素ガスを吹き込みながら、720gのメタノール、1224gの2,6−ジメチルフェノール、216gの2,3,6−トリメチルフェノールを入れ、均一溶液となるまで撹拌し、(B)混合溶液を調合した。
【0064】
次いで、激しく撹拌した重合槽へ、重合槽へ1000Nml/分の速度で酸素ガスをスパージャーより導入を始めると同時に、貯蔵槽から送液ポンプを用い、(B)混合溶液を17.4g/分の速度で逐次添加した。280分通気し、反応器の内温が40℃になるようコントロールした。なお、酸素ガスを供給開始140分後ポリフェニレンエーテルが析出しスラリー状の形態を示した。重合終結時の重合液の形態は沈殿析出重合である。
【0065】
酸素含有ガスの通気をやめ、重合混合物にエチレンジアミン四酢酸3カリウム塩(同仁化学研究所製試薬)の50%水溶液を11.5g添加し60分間重合混合物を撹拌し、次いでハイドロキノン(和光純薬社製試薬)を少量ずつ添加し、スラリー状のポリフェニレンエーテルが白色となるまで撹拌を続けた。
反応器の内温は40℃になるようコントロールした。
その後、濾過して濾残の湿潤ポリフェニレンエーテルをメタノール6400gともに10L洗浄槽に入れ分散させ、30分間撹拌した後再度ろ過し、湿潤ポリフェニレンエーテルを得た。洗浄槽の内温は40℃になるようコントロールした。これを3回繰り返し、次いで140℃で150分真空乾燥し乾燥ポリフェニレンエーテルを得た。
【0066】
乾燥ポリフェニレンエーテルを用いて分子量の測定・ガラス転移温度測定を行なった。また、反応器等へのスケールは確認されなかった。また、ポリフェニレンエーテルを1gを裁断アルミ板の間に挟み、330℃、10MPaの条件下10分間加熱し、ポリフェニレンエーテルのフィルムサンプルを作製し、フィルムサンプルの透明性を目視にて確認した。フィルムの透明性は、蛍光灯と肉眼の間にフィルムを置き、光源が確認できれば○とし、確認できない場合は×とした。結果を表1に示す。
【0067】
[実施例2]
重合槽底部に酸素含有ガス導入の為のスパージャー、撹拌タービン翼及びバッフル、重合槽上部のベントガスラインに還流冷却器を備えた10リットルのジャケット付き重合槽に500ml/分の流量で窒素ガスを吹き込みながら、1.093gの塩化第二銅2水和物、4.681gの35%塩酸、41.751gのN,N,N’,N’−テトラメチルプロパンジアミン、31.493gのジ−n−ブチルアミン、1264gのn−ブタノール、544gのメタノール、3792gのキシレン、136gの2,6−ジメチルフェノール、24gの2,3,6−トリメチルフェノールを入れ、均一溶液となり、かつ反応器の内温が40℃になるまで撹拌した。
【0068】
また、貯蔵槽に窒素ガス導入の為のスパージャー、撹拌タービン翼及びバッフル、貯蔵槽上部のベントガスラインに還流冷却器を備えた5リットルの貯蔵槽に、200ml/分の流量で窒素ガスを吹き込みながら、720gのメタノール、1152gの2,6−ジメチルフェノール、288gの2,3,6−トリメチルフェノールを入れ、均一溶液となるまで撹拌し、(B)混合溶液を調合した。
次いで、激しく撹拌した重合槽へ、重合槽へ1000Nml/分の速度で酸素ガスをスパージャーより導入を始めると同時に、貯蔵槽から送液ポンプを用い、(B)混合溶液を17.4g/分の速度で逐次添加した。280分通気し、反応器の内温が40℃になるようコントロールした。なお、酸素ガスを供給開始140分後ポリフェニレンエーテルが析出しスラリー状の形態を示した。重合終結時の重合液の形態は沈殿析出重合である。
【0069】
酸素含有ガスの通気をやめ、重合混合物にエチレンジアミン四酢酸3カリウム塩(同仁化学研究所製試薬)の50%水溶液を11.4g添加し60分間重合混合物を撹拌し、次いでハイドロキノン(和光純薬社製試薬)を少量ずつ添加し、スラリー状のポリフェニレンエーテルが白色となるまで撹拌を続けた。
反応器の内温は40℃になるようコントロールした。
その後、濾過して濾残の湿潤ポリフェニレンエーテルをメタノール6400gともに10L洗浄槽に入れ分散させ、30分間撹拌した後再度ろ過し、湿潤ポリフェニレンエーテルを得た。洗浄槽の内温は40℃になるようコントロールした。これを3回繰り返し、 次いで140℃で150分真空乾燥し乾燥ポリフェニレンエーテルを得た。
乾燥ポリフェニレンエーテルを用いて分子量の測定・ガラス転移温度測定等を行なった。また、反応器等へのスケールは確認されなかった。結果は表1に示す。
【0070】
[実施例3]
重合槽底部に酸素含有ガス導入の為のスパージャー、撹拌タービン翼及びバッフル、重合槽上部のベントガスラインに還流冷却器を備えた10リットルのジャケット付き重合槽に500ml/分の流量で窒素ガスを吹き込みながら、1.087gの塩化第二銅2水和物、4.656gの35%塩酸、41.533gのN,N,N’,N’−テトラメチルプロパンジアミン、31.328gのジ−n−ブチルアミン、632gのn−ブタノール、544gのメタノール、4425gのキシレン、140gの2,6−ジメチルフェノール、40gの2,3,6−トリメチルフェノールを入れ、均一溶液となり、かつ反応器の内温が40℃になるまで撹拌した。
【0071】
また、貯蔵槽に窒素ガス導入の為のスパージャー、撹拌タービン翼及びバッフル、貯蔵槽上部のベントガスラインに還流冷却器を備えた5リットルの貯蔵槽に、200ml/分の流量で窒素ガスを吹き込みながら、720gのメタノール、1080gの2,6−ジメチルフェノール、360gの2,3,6−トリメチルフェノールを入れ、均一溶液となるまで撹拌し、(B)混合溶液を調合した。
次いで、激しく撹拌した重合槽へ、重合槽へ1000Nml/分の速度で酸素ガスをスパージャーより導入を始めると同時に、貯蔵槽から送液ポンプを用い、(B)混合溶液を17.5g/分の速度で逐次添加した。280分通気し、反応器の内温が40℃になるようコントロールした。なお、酸素ガスを供給開始140分後ポリフェニレンエーテルが析出しスラリー状の形態を示した。重合終結時の重合液の形態は沈殿析出重合である。
【0072】
酸素含有ガスの通気をやめ、重合混合物にエチレンジアミン四酢酸3カリウム塩(同仁化学研究所製試薬)の50%水溶液を11.5g添加し60分間重合混合物を撹拌し、次いでハイドロキノン(和光純薬社製試薬)を少量ずつ添加し、スラリー状のポリフェニレンエーテルが白色となるまで撹拌を続けた。
反応器の内温は40℃になるようコントロールした。
その後、濾過して濾残の湿潤ポリフェニレンエーテルをメタノール6400gともに10L洗浄槽に入れ分散させ、30分間撹拌した後再度ろ過し、湿潤ポリフェニレンエーテルを得た。洗浄槽の内温は40℃になるようコントロールした。これを3回繰り返し、次いで140℃で150分真空乾燥し乾燥ポリフェニレンエーテルを得た。
乾燥ポリフェニレンエーテルを用いて分子量の測定・ガラス転移温度測定等を行なった。また、反応器等へのスケールは確認されなかった。結果は表1に示す。
【0073】
[実施例4]
重合槽内に入れる塩化第二銅2水和物を2.747g、35%塩酸を7.712g、N,N,N’,N’−テトラメチルプロパンジアミンを63.796g、ジ−n−ブチルアミンを31.658、n−ブタノールを441g、メタノール413g、キシレンを4721g、2,6―ジメチルフェノールの量を136g、2,3,6−トリメチルフェノールの量を24gとし、貯蔵槽内に入れる2,6―ジメチルフェノールの量を1224g、2,3,6−トリメチルフェノールの量を216gとし、酸素通気時間を380分とした以外は実施例3と同様に実施した。なお、酸素ガスを供給開始155分後ポリフェニレンエーテルが析出しスラリー状の形態を示した。重合終結時の重合液の形態は沈殿析出重合である。結果を表1に示す。
【0074】
[実施例5]
重合槽内に入れる2,6―ジメチルフェノールの量を96g、2,3,6−トリメチルフェノールの量を64gとし、貯蔵槽内に入れる2,6―ジメチルフェノールの量を864g、2,3,6−トリメチルフェノールの量を576gとした以外は実施例3と同様に実施した。なお、酸素ガスを供給開始130分後ポリフェニレンエーテルが析出しスラリー状の形態を示した。重合終結時の重合液の形態は沈殿析出重合である。結果を表1に示す。
【0075】
[実施例6]
重合槽に入れる塩化第二銅2水和物を1.110g、35%塩酸を4.754g、N,N,N’,N’−テトラメチルプロパンジアミンを42.409g、ジ−n−ブチルアミンを15.994g、n−ブタノールを1267g、メタノール1181g、キシレンを3168g、2,6−ジメチルフェノールを152g、2,3,6−トリメチルフェノールを8gとし、貯蔵槽に入れる2,6−ジメチルフェノールを1368g、2,3,6−トリメチルフェノールを72gとした以外は実施例1と同様に実施した。酸素ガス供給開始150分後にポリフェニレンエーテルが析出し、スラリー状の形態を示した。重合終結時の重合液の形態は沈殿析出重合である。結果を表1に示す。
【0076】
[実施例7]
重合槽に入れる塩化第二銅2水和物を1.105g、35%塩酸を4.730g、N,N,N’,N’−テトラメチルプロパンジアミンを42.190g、ジ−n−ブチルアミンを31.823g、n−ブタノールを1264g、メタノール544g、キシレンを3792g、2,6−ジメチルフェノールを144g、2,3,6−トリメチルフェノールを16gとし、貯蔵槽に入れる2,6−ジメチルフェノールを1296g、2,3,6−トリメチルフェノールを144gとした以外は実施例1と同様に実施した。酸素ガス供給開始150分後にポリフェニレンエーテルが析出し、スラリー状の形態を示した。重合終結時の重合液の形態は沈殿析出重合である。結果を表1に示す。
【0077】
[実施例8]
重合槽に入れる塩化第二銅2水和物を1.082g、35%塩酸を4.632g、N,N,N’,N’−テトラメチルプロパンジアミンを41.314g、ジ−n−ブチルアミンを31.162g、n−ブタノールを1267g、メタノール544g、キシレンを3793g、2,6−ジメチルフェノールを112g、2,3,6−トリメチルフェノールを48gとし、貯蔵槽に入れる2,6−ジメチルフェノールを1008g、2,3,6−トリメチルフェノールを432gとした以外は実施例1と同様に実施した。酸素ガス供給開始150分後にポリフェニレンエーテルが析出し、スラリー状の形態を示した。重合終結時の重合液の形態は沈殿析出重合である。結果を表1に示す。
【0078】
[実施例9]
重合槽に入れる2,6−ジメチルフェノールを360g、2,3,6−トリメチルフェノールを120gとし、貯蔵槽に入れる2,6−ジメチルフェノールを840g、2,3,6−トリメチルフェノールを280gとした以外は実施例3と同様に実施した。酸素ガス供給開始130分後にポリフェニレンエーテルが析出し、スラリー状の形態を示した。重合終結時の重合液の形態は沈殿析出重合である。結果を表1に示す。
【0079】
[比較例1]
重合槽に入れる2,6−ジメチルフェノールを160gとし、貯蔵槽に入れる2,6−ジメチルフェノールを1440gとした以外は実施例1と同様に実施した。酸素ガス供給開始130分後にポリフェニレンエーテルが析出し、スラリー状の形態を示した。重合終結時の重合液の形態は沈殿析出重合である。反応器等へのスケールが確認された。結果を表1に示す。
【0080】
[比較例2]
重合槽底部に酸素含有ガス導入の為のスパージャー、撹拌タービン翼及びバッフル、重合槽上部のベントガスラインに還流冷却器を備えた10リットルのジャケット付き重合槽に500ml/分の流量で窒素ガスを吹き込みながら、1.099gの塩化第二銅2水和物、4.705gの35%塩酸、41.971gのN,N,N’,N’−テトラメチルプロパンジアミン、31.658gのジ−n−ブチルアミン、1264gのn−ブタノール、1264gのメタノール、3792gのキシレン、1360gの2,6−ジメチルフェノール、240gの2,3,6−トリメチルフェノールを入れ、均一溶液となり、かつ反応器の内温が40℃になるまで撹拌した。
【0081】
次いで、激しく撹拌した重合槽へ、重合槽へ1000Nml/分の速度で酸素ガスをスパージャーより280分通気し、反応器の内温が40℃になるようコントロールした。なお、酸素ガスを供給開始140分後ポリフェニレンエーテルが析出しスラリー状の形態を示した。重合終結時の重合液の形態は沈殿析出重合である。
酸素含有ガスの通気をやめ、重合混合物にエチレンジアミン四酢酸3カリウム塩(同仁化学研究所製試薬)の50%水溶液を11.5g添加し60分間重合混合物を撹拌し、次いでハイドロキノン(和光純薬社製試薬)を少量ずつ添加し、スラリー状のポリフェニレンエーテルが白色となるまで撹拌を続けた。
【0082】
反応器の内温は40℃になるようコントロールした。
その後、濾過して濾残の湿潤ポリフェニレンエーテルをメタノール6400gともに10L洗浄槽に入れ分散させ、30分間撹拌した後再度ろ過し、湿潤ポリフェニレンエーテルを得た。洗浄槽の内温は40℃になるようコントロールした。これを3回繰り返し、次いで140℃で150分真空乾燥し乾燥ポリフェニレンエーテルを得た。
乾燥ポリフェニレンエーテルを用いて分子量の測定・ガラス転移温度測定を行なった。また、反応器等へのスケールは確認されなかった。結果を表1に示す。
【0083】
[比較例3]
重合槽に入れる塩化第二銅2水和物を1.087g、35%塩酸を4.656g、N,N,N’,N’−テトラメチルプロパンジアミンを41.533g、ジ−n−ブチルアミンを31.328g、n−ブタノールを632g、メタノール1264g、キシレンを4425g、2,6−ジメチルフェノールを1200g、2,3,6−トリメチルフェノールを100gとした以外は実施例1と同様に実施した。酸素ガス供給開始140分後にポリフェニレンエーテルが析出し、スラリー状の形態を示した。重合終結時の重合液の形態は沈殿析出重合である。結果を表1に示す。
【0084】
[比較例4]
重合槽に入れる2,6−ジメチルフェノールを72g、2,3,6−トリメチルフェノールを88gとし、貯蔵槽に入れる2,6−ジメチルフェノールを648g、2,3,6−トリメチルフェノールを792gとし、酸素ガス通気時間を200分とした以外は実施例1と同様に実施した。酸素ガス供給開始100分後にポリフェニレンエーテルが析出し、スラリー状の形態を示した。重合終結時の重合液の形態は沈殿析出重合である。結果を表1に示す。
【0085】
[比較例5]
重合槽に入れる塩化第二銅2水和物を1.110g、35%塩酸を4.754g、N,N,N’,N’−テトラメチルプロパンジアミンを42.409g、ジ−n−ブチルアミンを15.994g、n−ブタノールを1267g、メタノール1901g、キシレンを3168g、2,6−ジメチルフェノールを1520g、2,3,6−トリメチルフェノールを80gとした以外は比較例3と同様に実施した。酸素ガス供給開始140分後にポリフェニレンエーテルが析出し、スラリー状の形態を示した。重合終結時の重合液の形態は沈殿析出重合である。結果を表1に示す。
【0086】
[比較例6]
重合槽に入れる塩化第二銅2水和物を1.082g、35%塩酸を4.632g、N,N,N’,N’−テトラメチルプロパンジアミンを41.314g、ジ−n−ブチルアミンを31.162g、n−ブタノールを1264g、メタノール1264g、キシレンを3793g、2,6−ジメチルフェノールを1120g、2,3,6−トリメチルフェノールを480gとした以外は比較例3と同様に実施した。酸素ガス供給開始140分後にポリフェニレンエーテルが析出し、スラリー状の形態を示した。重合終結時の重合液の形態は沈殿析出重合である。結果を表1に示す。
【0087】
[比較例7]
重合槽底部に酸素含有ガス導入の為のスパージャー、撹拌タービン翼及びバッフル、重合槽上部のベントガスラインに還流冷却器を備えた10リットルのジャケット付き重合槽に500ml/分の流量で窒素ガスを吹き込みながら、1.649gの酸化第二銅、12.399gの47%臭化水素水溶液、3.9725gのジーt−ブチルエチレンジアミン、19.232gのジ−n−ブチルアミン、58.535gのブチルジメチルアミン、5962gのトルエン、108.8gの2,6−ジメチルフェノール、19.2gの2,3,6−トリメチルフェノールを入れ、均一溶液となり、かつ反応器の内温が40℃になるまで撹拌した。
【0088】
また、貯蔵槽に窒素ガス導入の為のスパージャー、撹拌タービン翼及びバッフル、貯蔵槽上部のベントガスラインに還流冷却器を備えた5リットルの貯蔵槽に、200ml/分の流量で窒素ガスを吹き込みながら、640gのトルエン、979.2gの2,6−ジメチルフェノール、172.8gの2,3,6−トリメチルフェノールを入れ、均一溶液となるまで撹拌し、(B)混合溶液を調合した。
次いで、激しく撹拌した重合槽へ、重合槽へ800Nml/分の速度で酸素ガスをスパージャーより導入を始めると同時に、貯蔵槽から送液ポンプを用い、(B)混合溶液を17.4g/分の速度で逐次添加した。280分通気し、反応器の内温が40℃になるようコントロールした。重合終結時の重合液は溶液状態であった。
【0089】
酸素含有ガスの通気をやめ、重合混合物にエチレンジアミン四酢酸4ナトリウム塩(同仁化学研究所製試薬)の2.5%水溶液を800g添加し100分間重合混合物を撹拌後静置し、液−液分離により有機相と水相を分離した。得られた有機相にメタノールを過剰に加えてポリフェニレンエーテルを析出後濾過し、濾残のポリフェニレンエーテルをメタノール5120gに分散させた。
次いでハイドロキノン(和光純薬社製試薬)を少量ずつ添加し、スラリー状のポリフェニレンエーテルが白色となるまで撹拌を続けた。
反応器の内温は40℃になるようコントロールした。
【0090】
その後、濾過して濾残の湿潤ポリフェニレンエーテルをメタノール5120gともに10L洗浄槽に入れ分散させ、30分間撹拌した後再度ろ過し、湿潤ポリフェニレンエーテルを得た。洗浄槽の内温は40℃になるようコントロールした。これを3回繰り返し、次いで140℃で150分真空乾燥し乾燥ポリフェニレンエーテルを得た。
乾燥ポリフェニレンエーテルを用いて分子量の測定・ガラス転移温度測定を行なった。また、反応器等へのスケールは確認されなかった。結果を表1に示す。
【0091】
【表1】

【0092】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0093】
収率の低下を抑え、分子量が十分かつ分子量分布の狭いポリフェニレンエーテルを広範囲の分子量設計が可能となる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フェノール化合物(A)を、少なくとも一種以上のポリフェニレンエーテルの良溶媒及び少なくとも一種以上のポリフェニレンエーテルの貧溶媒からなる混合溶媒を用い、触媒の存在下、酸素含有ガスを用いて酸化カップリングし、重合終結時における良溶媒が35質量%以上であり、重合終結時における重合溶液の形態が沈殿析出重合であるポリフェニレンエーテルの製造方法において、重合に用いられる成分(A)が式(1)で表されるフェノール化合物であり、かつ重合に用いる成分(A)の全量に対し、10質量%〜100質量%の(A)と貧溶媒からなる混合溶液(B)を重合中に逐次添加することを特徴とするポリフェニレンエーテルの製造方法。
【化1】

・・・式(1)
(式(1)中、R、R、R3、R4は各々独立の置換基を表し、Rはアルキル基,置換アルキル基,アラルキル基,置換アラルキル基,アリール基,置換アリール基,アルコキシ基または置換アルコキシ基であり、R、R3、R4はRについて定義されたものと同一の基に加え更に水素またはハロゲンであっても良い。)
【請求項2】
重合に用いるフェノール化合物(A)が、式(2)で表されるフェノール化合物(C)及び式(3)で表されるフェノール化合物(D)からなることを特徴とする請求項1に記載のポリフェニレンエーテルの製造方法。
【化2】

・・・式(2)
(式(2)中、R、R、は各々独立の置換基を表し、Rはアルキル基,置換アルキル基,アラルキル基,置換アラルキル基,アリール基,置換アリール基,アルコキシ基または置換アルコキシ基であり、RはRについて定義されたものと同一の基に加え更に水素またはハロゲンであっても良い。)
【化3】

・・・式(3)
(式(3)中、R、R、R、は各々独立の置換基を表し、Rはアルキル基,置換アルキル基,アラルキル基,置換アラルキル基,アリール基,置換アリール基,アルコキシ基または置換アルコキシ基であり、R、Rについて定義されたものと同一の基に加え更に水素またはハロゲンであっても良い。)
【請求項3】
重合に用いるフェノール化合物(A)が、フェノール化合物(C)60質量%〜95質量%及びフェノール化合物(D)5質量%〜40質量%からなることを特徴とする請求項1または2に記載のポリフェニレンエーテルの製造方法。
【請求項4】
フェノール化合物(C)が2,6―ジメチルフェノール、フェノール化合物(D)が2,3,6―トリメチルフェノールであることを特徴とする請求項1〜3いずれか1項に記載のポリフェニレンエーテルの製造方法。
【請求項5】
ポリフェニレンエーテルの貧溶媒が炭素数にして1個〜10個までのアルコールを主成分とする、少なくとも1種以上の溶媒であることを特徴とする請求項1〜4いずれか1項に記載のポリフェニレンエーテルの製造方法。
【請求項6】
該ポリフェニレンエーテルの数平均分子量が10000〜40000であることを特徴とする請求項1〜5いずれか1項に記載のポリフェニレンエーテルの製造方法。
【請求項7】
触媒の構成成分が銅化合物、ハロゲン化合物及び一般式(4)で表されるジアミン化合物からなる触媒を用いることを特徴とする請求項1〜6いずれか1項に記載のポリフェニレンエーテルの製造方法。
【化4】

・・・式(4)
(式中、R10,R11,R13,R14はそれぞれ独立に水素、炭素数1から6の直鎖状または分岐状アルキル基で、全てが同時に水素ではない。R12は炭素数2から5の直鎖状またはメチル分岐を持つアルキレン基である)
【請求項8】
重合中に逐次添加する成分(B)の組成が、成分(A)対貧溶媒の重量比で25:1〜1:10であることを特徴とする請求項1〜7いずれか1項に記載のポリフェニレンエーテルの製造方法。
【請求項9】
ポリフェニレンエーテルの貧溶媒がメタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、n−ブタノール、2−ブタノール、Tert−ブタノールからなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1〜8いずれか1項に記載のポリフェニレンエーテルの製造方法。