説明

ポリフェニレンエーテル樹脂粉粒体の製造方法

【課題】 ポリフェニレンエーテルの製造方法において、造粒時に平均粒径のそろったポリフェニレンエーテル樹脂の粉粒体を提供する。
【解決手段】 (A)金属塩とアミンからなる錯体触媒の存在下、ポリフェニレンエーテルの良溶媒、または良溶媒と非溶媒との混合物を用いて、1種あるいは2種以上のフェノール化合物を酸化重合させポリフェニレンエーテルが均一に溶解した重合反応液を製造し、(B)得られた重合反応液に、重合停止剤、または重合停止剤と還元剤とを接触させ触媒を除去した重合反応液に、(C)触媒を除去した重合反応液を、水に添加し攪拌して水分散液とし、攪拌もしくは水分散液を循環しながら加温することにより脱溶媒して造粒するに際し、(D)水分散液の少なくとも一部を湿式粉砕機に循環し粉砕するポリフェニレンエーテル樹脂粉粒体の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ポリフェニレンエーテルの製造方法に関する。詳しくは造粒時に平均粒径のそろった粒子状のポリフェニレンエーテルの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】ポリフェニレンエーテルは、フェノール化合物を銅、マンガン、あるいはコバルトを含有する酸化カップリング重合触媒を用い、芳香族系溶剤、あるいは芳香族系溶剤と非溶剤の混合溶媒中で酸素の存在下で重合し得られる。反応後のポリフェニレンエーテル溶液は反応停止操作および触媒除去操作後、ポリフェニレンエーテルの非溶媒中に投入され造粒される。
【0003】しかしながら、ポリフェニレンエーテル製造工程の造粒には、多量の非溶媒が必要となりまた溶媒の回収にも多量のエネルギーが必要となる。さらにこのようにして造粒されたポリフェニレンエーテルの粒子は微細な粉末の割合が多く、後工程に飛散や成形時のホッパーから押し出し機の食い込み不良といった問題が発生していた。
【0004】これらの問題点を解決するため、種々の検討が行われている。例えば、非溶媒を用いずにポリフェニレンエーテル溶液を水中に分散させ造粒する検討(USP−4263426)がおこなわれているが、造粒時に粒子が会合して著しく大きな塊となってしまい後工程の取り扱いが非常に難しくなってしまう。また造粒時の粒径の増大化検討は、造粒方法(特公昭45−587、特公昭60−23696)、微小粒子の粒径増加方法(特公昭55−17775、特開昭63−243129)、粒径増大補助剤の検討(特開昭62−172022)などが挙げられる。
【0005】しかしながら、上記に提案された方法だけでは、造粒後のポリフェニレンエーテル粉末に微細な粉末の割合が多く含まれ、先に挙げた問題点を全て解決するには不十分であった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、従来のような欠点を克服して、ポリフェニレンエーテル溶液から効率よく、しかも平均粒径のそろったポリフェニレンエーテルの製造方法を提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記事情に鑑み、鋭意検討を行った結果、ポリフェニレンエーテルが均一に溶解した重合反応液を水と混合し、かつ混合溶液の少なくとも一部を湿式粉砕器に循環し粉砕することにより、造粒時に平均粒径のそろったポリフェニレンエーテル粒子が得られることを見い出し、本発明を完成するに至った。
【0008】即ち、本発明は、(A)金属塩とアミンからなる錯体触媒の存在下、ポリフェニレンエーテルの良溶媒、または良溶媒と非溶媒との混合溶媒を用いて、1種あるいは2種以上のフェノール化合物を酸化重合させポリフェニレンエーテルが均一に溶解した重合反応液を製造し、(B)得られた重合反応液に、重合停止剤、または重合停止剤と還元剤とを接触させ触媒を除去した重合反応液に、(C)触媒を除去した重合反応液を、水に添加し攪拌して水分散液とし、攪拌もしくは水分散液を循環しながら加温することにより脱溶媒して造粒するに際し、(D)水分散液の少なくとも一部を湿式粉砕機に循環し粉砕するポリフェニレンエーテル樹脂粉粒体の製造方法である。
【0009】
【発明の実施の形態】本発明におけるポリフェニレンエーテルは、一般式(1)で表される化合物から酸化重合によって誘導されるものである。
【化1】


(式中、R1 、R2 、R3 及びR4 は、各々独立に水素、アルキル基、置換アルキル基、ハロゲン基、アリール基、置換アリール基、フェニル基又は置換フェニル基である。)
【0010】代表的なポリフェニレンエーテルは、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−メチル−6−エチル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2,6−ジエチル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−エチル−6−n−プロピル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2,6−ジ−n−プロピル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−メチル−6−n−ブチル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−エチル−6−イソプロピル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−メチル−6−クロロエチル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−メチル−6−ヒドロキシエチル−1,4−フェニレン)エーテル等のホモポリマー、また2,6−ジメチルフェノールに共重合体成分として2,3,6−トリメチルフェノールおよびo−クレゾールの1種あるいは両方を組み合わせたポリフェニレンエーテル共重合体等が挙げられる。
【0011】また、本発明のポリフェニレンエーテルには、本発明の主旨に反さない限り、従来ポリフェニレンエーテルに存在させてもよいことが提案されている他の種々のフェニレンエーテルユニットを部分構造として含んでいてもよい。例えば、特開平1−297428号公報及び特開昭63−301222号公報に記載の2−(ジアルキルアミノメチル)−6−メチルフェニレンエーテルユニットや、2−(N−アルキル−N−フェニルアミノメチル)−6−メチルフェニレンエーテルユニット等や、ポリフェニレンエーテル樹脂の主鎖中にジフェノキノン等が少量結合したものが挙げられる。さらに、炭素−炭素二重構造を持つ化合物により変性されたポリフェニレンエーテル(例えば特開平2−276823号公報、特開昭63−108059号公報、特開昭59−59724号公報)も含むことができる。
【0012】本発明に用いるポリフェニレンエーテル樹脂の分子量は30℃クロロホルム中の固有粘度が0.1〜0.7であるのが好ましい。更に好ましくは0.2〜0.6の範囲にあるポリフェニレンエーテルが本発明の効果が著しく現れる。
【0013】本発明のポリフェニレンエーテルは、例えば、特公昭42−3195号公報、特公昭45−23555号公報、特開昭64−33131号公報等に例示されるように、フェノール化合物を金属の塩と各種アミンとの組み合わせからなる触媒を用いて酸化重合される。重合溶媒は、例えばポリフェニレンエーテルの良溶媒であるベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、ジクロロメタン、クロロホルム、ジクロルベンゼン等のハロゲン化炭化水素、ニトロベンゼン等のニトロ化合物等が挙げられる。
【0014】また、前記の良溶媒にポリフェニレンエーテルの非溶媒であるメタノール、エタノール等のアルコール類、ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、酢酸エチル等のエステル類、ジメチルホルムアミド等のアミド類等を任意の割合および組成で混合し重合溶媒として用いることができる。重合溶媒中の非溶媒の割合が多くなると重合中にポリフェニレンエーテルが析出してくる沈澱重合となるが、本発明では重合後にポリフェニレンエーテルが析出しない溶液重合が溶液の移送や反応停止工程あるいは触媒分離工程等におけるハンドリングの点で好ましい。
【0015】本発明におけるポリフェニレンエーテルが均一に溶解した重合反応液はポリフェニレンエーテル重合後のポリマー含有溶液であり、ポリフェニレンエーテルの濃度は重量で5〜70%、好ましくは10〜50%の範囲である。また、ポリフェニレンエーテル重合反応液は加熱等による濃縮工程により、任意の濃度に調整する事も可能である。重合反応液にはポリフェニレンエーテルのほかに重合触媒や、触媒除去のための薬品、副生成物除去のための薬品等が含まれていてもかまわない。
【0016】本発明において、ポリフェニレンエーテル重合反応液は、攪拌機付きで、かつ湿式粉砕機を通る循環経路付きの槽において、水とバッチあるいは連続的に混合される。攪拌機は同方向あるいは往復回転いずれでもかまわず、また、水とポリフェニレンエーテル重合反応液の混合液の一部は湿式粉砕機を経由して槽内を循環する。湿式粉砕機は溶液内の固形成分を粉砕できる構造のものが良く、例えば、相川鉄工(株)製のゴラトール(商品名)や小松ゼノア(株)製のディスインテグレーター(商品名)等の構造を持つものが好ましい。湿式粉砕機を循環させない場合は、ポリフェニレンエーテル重合液が造粒する際に粒子の会合が起きて著しく大きな塊ができてしまうので好ましくない。
【0017】ポリフェニレンエーテル重合反応液/水の重量比は0.01〜1の範囲でおこなわれるが、好ましくは0.1〜0.5の範囲でおこなわれる。造粒は1段あるいは2段以上の直列に連結した槽でおこなわれ、温度40〜100℃の範囲で脱溶剤される。2段以上直列に連結した槽で造粒する場合、各槽の温度は40〜100℃の範囲で任意に選べばよいが、少なくとも1槽は本発明記載の攪拌機付きで、かつ湿式粉砕機を通る循環経路付きの槽としなければならい。槽内の滞留時間は1〜120分必要で、造粒されたポリフェニレンエーテルは連続あるいはバッチで遠心分離機や真空ろ過等により固液分離される。
【0018】固液分離後、湿潤した造粒ポリフェニレンエーテルは80℃〜200℃で不活性ガス雰囲気あるいは空気雰囲気等の酸素存在下で連続的またはバッチで乾燥させられる。不活性ガスは一般に、窒素、アルゴン、ヘリウム等が使用される。乾燥条件に規定はないが、乾燥後のポリフェニレンエーテル粒子の50%重量平均径は0.2〜2mmの範囲にあることが好ましい。それより平均粒径が小さいと後工程における飛散や成形時のホッパーから押し出し機の食い込み不良が発生し、粒径が大きいとポリフェニレンエーテルと他樹脂と溶融混練の際に均一に混ぜる事ができない混練不良の問題が起きる。
【0019】本発明方法によれば、乾燥後の固形化ポリフェニレンエーテル樹脂の平均粒径が0.2〜2mm、嵩比重が0.3〜0.6g/ccのものが得られるため、押出機によって溶融混練してペレット化する際に、食い込み不良とか未溶融部分が残るなどのトラブルもなく、成形材料として好適に使用することが可能である。
【0020】
【実施例】以下に具体例により本発明を説明するが、本発明は、これらの実施例によって何ら限定される物ではい。
【0021】下記の操作にて得られたポリフェニレンエーテル粒子は窒素を5Nm3/hで流しながら135〜140℃で6時間以上乾燥して、ポリフェニレンエーテルの乾粉を得、乾粉粒子の粒度分布、平均粒径及び100μm以下の粒子の割合を測定した。粒度分布及び140メッシュパスの100μm以下の粒子の割合は、JIS規格(JIS Z8801)に準じて行った。10、18.5、60、120、140、280メッシュの篩を用い、TNK篩振動機(タナカ化学機器社製)を用いて10分間振動し篩をかけることで測定した。また、平均粒径は50%重量平均径により求めた。
【0022】押出機による押出試験は、池貝鉄工(株)製2軸押出機(PCM−30)を用い、乾燥後のポリフェニレンエーテル粉体40重量部とスチレン系樹脂(電気化学工業(株)製、商品名HI-UM-301 )60重量部をミキサーでよく混合した後、溶融混練しストランドを切断してペレット状の樹脂組成物のペレットを得た。押し出し機のストランド中に発生するの不完全溶融のポリフェニレンエーテル樹脂を目視で観察し混練不良を判定した。
【0023】実施例1臭化第二銅2kgをジブチルアミン35kg、トルエン800kg、に溶解させた。この触媒溶液に、2,6−ジメチルフェノール200kgをトルエン500kgに溶かした溶液を加えた。これらの混合液を反応器内にて、酸素を供給しながら40℃で重合を3時間行った。反応停止後、水と接触させて反応液から触媒を除去し、ポリフェニレンエーテルが均一に溶解した重合反応液を得た。このポリフェニレンエーテル重合反応液を攪拌しながら90℃の温水中に添加した。この時ポリフェニレンエーテル重合反応液/水の重量比は0.1であった。この水分散液を90℃に保ちつつ、湿式粉砕機(商品名:ゴラトール)に全水分散液の20倍/時間の量で循環して湿式粉砕を1時間行った後、水分散液を抜き出した。固液分離後、乾燥したポリフェニレンエーテル粉体の粒度を振動篩で測定した。平均粒径は0.66mm、嵩比重は0.39であった。押し出し機試験をおこなったところ混練不良は認められなかった。
【0024】実施例2ポリフェニレンエーテル重合反応液/水の重量比は0.005、かつ湿式粉砕機(商品名:ゴラトール)に全水分散液の20倍/時間の量で循環した以外は実施例1と同じ方法により乾燥ポリフェニレンエーテル粉体を得た。平均粒径は0.48mm、嵩比重は0.32であった。押し出し機試験をおこなったところ混練不良は認められなかった。
【0025】比較例1ポリフェニレンエーテル重合反応液/水の重量比は0.1、かつ湿式粉砕機(商品名:ゴラトール)に全水分散液を循環させなかった以外は実施例1と同じ方法により乾燥ポリフェニレンエーテル粉体を得た。ポリフェニレンエーテル粉体の粒径は90重量%以上が10メッシュ以上であり、嵩比重は0.27であった。押し出し機試験をおこなったところ混練不良が認められた。
【0026】
【発明の効果】本発明の方法によれば、ポリフェニレンエーテル製造の造粒時に、ポリフェニレンエーテルが均一に溶解した重合反応液を水と混合し、かつ混合溶液の少なくとも一部を湿式粉砕器に循環し粉砕することにより、平均粒径のそろったポリフェニレンエーテル粒子を造粒できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 (A)金属塩とアミンからなる錯体触媒の存在下、ポリフェニレンエーテルの良溶媒、または良溶媒と非溶媒との混合溶媒を用いて、1種あるいは2種以上のフェノール化合物を酸化重合させポリフェニレンエーテルが均一に溶解した重合反応液を製造し、(B)得られた重合反応液に、重合停止剤、または重合停止剤と還元剤とを接触させ触媒を除去した重合反応液に、(C)触媒を除去した重合反応液を、水に添加し攪拌して水分散液とし、攪拌もしくは水分散液を循環しながら加温することにより脱溶媒して造粒するに際し、(D)水分散液の少なくとも一部を湿式粉砕機に循環し粉砕することを特徴とするポリフェニレンエーテル樹脂粉粒体の製造方法。
【請求項2】 ポリフェニレンエーテル重合反応溶液に用いられるポリフェニレンエーテル良溶媒がベンゼン、トルエン及びキシレンからなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項1記載のポリフェニレンエーテル樹脂粉粒体の製造方法。
【請求項3】 ポリフェニレンエーテル重合反応溶液に用いられる錯体触媒の金属塩が銅、マンガン又はコバルトからなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項1記載のポリフェニレンエーテル樹脂粉粒体の製造方法。
【請求項4】 ポリフェニレンエーテルの重合反応液/水の重量比が0.01〜1.0の範囲にある請求項1記載のポリフェニレンエーテル樹脂粉粒体の製造方法。
【請求項5】 造粒工程の水分散液の湿式粉砕機への循環量が全水分散液の1〜30倍/時間である請求項1記載のポリフェニレンエーテル樹脂粉粒体の製造方法。
【請求項6】 乾燥後の固形化ポリフェニレンエーテル樹脂の平均粒径が0.2〜2mm、嵩比重が0.3〜0.6g/ccである請求項1記載のポリフェニレンエーテル樹脂粉粒体の製造方法。

【公開番号】特開2000−281799(P2000−281799A)
【公開日】平成12年10月10日(2000.10.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平11−88994
【出願日】平成11年3月30日(1999.3.30)
【出願人】(000004466)三菱瓦斯化学株式会社 (1,281)
【Fターム(参考)】