説明

ポリフェニレンエーテル樹脂組成物の製造方法

本発明は(A)ポリフェニレンエーテルおよび(B)スチレン系樹脂を含有し、且つ該スチレン系樹脂(B)が1,4−シス結合を90%以上有するポリブタジエンを含有するゴム変性ポリスチレンを少なくとも含むスチレン系樹脂であるポリフェニレンエーテル樹脂組成物の製造方法であって、第1工程において、ポリフェニレンエーテル(A)と、(B1)非水素添加のポリブタジエンを含有するゴム変性ポリスチレンを除く上記スチレン系樹脂の一部または全部とを溶融混練した後、さらに、第2工程において、(B2)1,4−シス結合を90%以上有するポリブタジエンを含有するゴム変性ポリスチレンを含む残りのスチレン系樹脂を溶融混練するポリフェニレンエーテル樹脂組成物の製造方法および該製造法によって得られたポリフェニレンエーテル樹脂組成物に関する。本発明によると、黒点異物、未溶融物、色ぶれなどの様々な外観不良、熱滞留安定性、熱暴露性、低温衝撃性などの実用特性、とくに耐熱劣化特性に優れた変性PPEを安定供給することが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリフェニレンエーテル系樹脂組成物の製造方法および該方法で得られるポリフェニレンエーテル系樹脂組成物に関する。さらに詳しくは、安価で、機械物性に優れ表面外観性の良好な、塗装性のよい原材料を提供できるポリフェニレンエーテル樹脂組成物の製造方法及び該方法で得られる樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリフェニレンエーテルとスチレン系樹脂とをベースとする混合樹脂(以下、変性PPEと記述する。)は、ポリフェニレンエーテルとスチレン系樹脂との混合比率により、スチレン系樹脂単独からポリフェニレンエーテル単独までの範囲で任意の耐熱性を有し、電気特性、寸法安定性、耐衝撃性、耐酸性、耐アルカリ性、低吸水性、低比重等の優れた特性を有する。また、変性PPE樹脂は、有害性が問題と言われているハロゲン系化合物および三酸化アンチモンを用いずに難燃化が可能であり、環境や安全衛生面にも優れ、さらに、無機充填剤、無機補強剤を添加することで高強度、高剛性、高耐熱の材料が設計され、世界中で多様な用途に使われており、用途例としては、電気・電子関係部品、事務機器部品、各種外装材、工業用品などが挙げられる。
【0003】
このように変性PPEは、多種多様な用途、さらに世界各地で使われている近年の状況から、消費される世界各地で生産し、供給していくことが望まれている。また、近年は家電製品の大型化に伴い、例えば、大型のテレビ、複写機、プリンター筐体等の大型成型品用途に適した熱安定性に優れ、外観特性の良い材料が望まれている。
ところで、変性PPEの特性は、ポリフェニレンエーテルと共に主原料として用いられるゴム変性ポリスチレンの特性および変性PPEの製造方法により大きく左右される。
変性PPEにおいて、ゴム変性ポリスチレンとして、1,4−シス結合を50%以上、1,2−ビニル結合を10%以下含有するポリブタジエンを用いることにより、1,4−シス結合が少ないポリブタジエンを用いた場合に比較して、優れた組成物特性が得られることは従来から知られている(例えば、特許文献1)。
【0004】
しかしながら、一般的には世界各地で比較的容易に入手できるこれらのポリブタジエンを用いたゴム変性ポリスチレンを用いた場合、溶融混練時にポリブタジエンの劣化により、耐衝撃性や耐薬品性が低下するなどの問題から、変性PPEを製造する際の熱履歴を著しく抑制する必要があり、高速回転の押出機を用いて高い剪断速度で大量生産するのには制約があった。
近年、ゴム変性ポリスチレンとして、全二重結合の5〜70重量%が水素添加された部分水添共役ジエン系ゴムを用いた変性PPEが開発され、該変性PPEが特に熱安定性において優れることが知られている(例えば、特許文献2)。
しかしながら、部分水添共役ジエン系ゴムはガラス転移温度が高いため、低温衝撃性において懸念され、また、従来のゴム変性ポリスチレンに比較し、部分水添共役ジエン系ゴムを用いたゴム変性ポリスチレンは、部分水添共役ジエン系ゴムの製造において費用がかかり、結果として変性PPEの製造費用が高くなるという問題もあった。
低温衝撃性を改良するために、ガラス転移温度の低い1,4−シス結合を90%以上有する共役ジエン系ゴムを用いたゴム変性ポリスチレンと全二重結合の5〜70重量%が水素添加された部分水添共役ジエン系ゴムを用いたゴム変性ポリスチレンとを併用することが知られている(例えば、特許文献3)。
【0005】
ところが、やはり1,4−シス結合を90%以上有する共役ジエン系ゴムの劣化が進むため、変性PPEを製造する際の熱履歴を著しく抑制する必要があり、高速回転の押出機を用いて高い剪断速度で大量生産するのは難しかった。
一方、変性PPEの製造方法としては、押出機、好ましくは二軸押出機を用いて、加熱溶融混練する方法が一般的である。また、近年は高速回転の大量生産押出機が主流となりつつある。
従来の変性PPEにおいては、一般的にはポリフェニレンエーテル、スチレン系樹脂その他の添加剤とを一括供給して比較的低剪断で溶融混練して製造されていた。
【0006】
近年、第一段階として比較的高濃度のポリフェニレンエーテルを含有するポリフェニレンエーテルとスチレン系樹脂との中間体組成物を製造し、第二段階として該中間体組成物とスチレン系樹脂を溶融混練して目的とするポリフェニレンエーテル樹脂組成物を製造する技術が提案されている(例えば、特許文献4〜7)。
しかしながら、これらの製造方法は、優れた材料特性と安定供給の両立が十分でなく、黒点異物、未溶融物、色ぶれなどの様々な外観不良、熱滞留安定性、熱暴露性などの実用特性において必ずしも満足できるものではなかった。また、最近の重要な顧客要求であるグローバルスタンダードに合致した材料の供給、即ち、世界各地の顧客拠点で安定して優れた同一特性を有する変性ポリフェニレンエーテPPEを安定供給することに対しては製造法および組成共に不十分なものであった。
【0007】
【特許文献1】特開昭47−39456号公報
【0008】
【特許文献2】特開平03−143953号公報
【0009】
【特許文献3】特開平06−032975号公報
【0010】
【特許文献4】特開平04−117444号公報
【0011】
【特許文献5】特開平07−216100号公報
【0012】
【特許文献6】特開平08−134261号公報
【0013】
【特許文献7】特開平10−292053号公報
【発明の開示】
【0014】
本発明の課題は、黒点異物、未溶融物、色ぶれなどの様々な外観不良、熱滞留安定性、熱暴露性、低温衝撃性などの実用特性、とくに耐熱劣化特性に優れた変性PPEを安定供給することを可能とする製造方法を提供することである。
【0015】
本発明者は、鋭意検討を重ねた結果、特定の製造方法により、実用特性に優れ、高度に安定した特性を有する変性PPEを安定供給することができることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0016】
即ち、本発明は、
[1](A)ポリフェニレンエーテルおよび(B)スチレン系樹脂を含有し、且つ該スチレン系樹脂(B)が1,4−シス結合を90%以上有するポリブタジエンを含有するゴム変性ポリスチレンを少なくとも含むスチレン系樹脂であるポリフェニレンエーテル樹脂組成物の製造方法であって、
ポリフェニレンエーテル(A)と第1のスチレン系樹脂を溶融混練することにより溶融混練物を得る第1工程、ここで第1のスチレン系樹脂は、その全量に対し80重量%以上が(B1)水素添加ポリブタジエンを含有するゴム変性ポリスチレンおよび/またはホモポリスチレンであるスチレン系樹脂である、および、
該溶融混練物に第2のスチレン系樹脂を溶融混練する第2工程、ここで第2のスチレン系樹脂は(B2)1,4−シス結合を90%以上有するポリブタジエンを含有するゴム変性ポリスチレンを含む、
からなるポリフェニレンエーテル樹脂組成物の製造方法、
[2]ポリスチレン(B1)が、全二重結合の5〜70%が水素添加された部分水添ポリブタジエンを含有するゴム変性ポリスチレンからなる[1]記載のポリフェニレンエーテル樹脂組成物の製造方法、
[3]第2のスチレン系樹脂が更に単独スチレン重合体からなる[2]記載のポリフェニレンエーテル樹脂組成物の製造方法、
[4]第1工程において、更に(C)リン系難燃剤を、ポリフェニレンエーテル(A)と第1のスチレン系樹脂の合計量100重量部に対して1〜80重量部添加する[1]〜[3]のいずれかに記載のポリフェニレンエーテル樹脂組成物の製造方法。
[5]第2工程において、更に(C)リン系難燃剤および/またはその他の添加剤を加える[1]〜[4]のいずれかに記載のポリフェニレンエーテル樹脂組成物の製造方法、
[6]リン系難燃剤(C)としてホスファゼン化合物を用いる[4]または[5]に記載のポリフェニレンエーテル樹脂組成物の製造方法、
[7]第2工程において、更にポリオレフィン系重合体0.1〜5重量部を添加する[1]〜[6]のいずれかに記載のポリフェニレンエーテル樹脂組成物の製造方法、
[8]第2工程において、更にビニル芳香族炭化水素を主体とする少なくとも1個の重合体ブロックと、共役ジエン化合物を主体とする少なくとも1個の重合体ブロックを有するブロック共重合体の水素添加ブロック共重合体0.1〜15重量部を添加する[1]〜[7]のいずれかに記載のポリフェニレンエーテル樹脂組成物の製造方法、
[9]第2工程において、ビニル芳香族炭化水素を主体とする更に少なくとも1個の重合体ブロックと、共役ジエン化合物を主体とする少なくとも1個の重合体ブロックを有するブロック共重合体の水素添加ブロック共重合体であって、
(a)水素添加前のブロック共重合体の共役ジエン化合物に基づくビニル結合量が10〜70%、
(b)共役ジエン化合物に基づく不飽和二重結合の全水素添加率が60〜85%、
(c)水素添加前のブロック共重合体のビニル芳香族炭化水素由来の単量体単位含有量が20〜60重量%、
である水素添加ブロック共重合体0.1〜15重量部を添加する[1]〜[7]のいずれか1項に記載のポリフェニレンエーテル樹脂組成物の製造方法。
[10]第1工程の溶融混練後、中間原料ペレットを製造し、該中間原料ペレットを第2工程の溶融混練に用いる[1]〜[9]のいずれかに記載のポリフェニレンエーテル樹脂組成物の製造方法、
[11]第2工程において、リン系酸化防止剤を添加する[1]〜[10]の何れかに記載のポリフェニレンエーテル樹脂組成物の製造方法。
[12]第2工程で添加するリン系酸化防止剤が、ペンタエリスリトール−ジフォスファイト誘導体である[1]〜[11]の何れかに記載のポリフェニレンエーテル樹脂組成物の製造方法。
[13]第2工程で添加するリン系酸化防止剤が、ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトール−ジ−ホスファイトを添加する[11]に記載のポリフェニレンエーテル樹脂組成物の製造方法。
[14][1]〜[13]の何れかに記載の製造方法によって得られたポリフェニレンエーテル樹脂組成物。
[15]1,4−シス結合を90%以上有するポリブタジエンに由来するガラス転移温度が−85℃以下である[14]に記載のポリフェニレンエーテル樹脂組成物、
[16][14]または[15]のポリフェニレンエーテル樹脂組成物からなる大型テレビおよび大型複写機外装部品。
である。
【0017】
本発明により、黒点異物、未溶融物、色ぶれなどの様々な外観不良が少なく、熱滞留安定性、熱暴露性、低温衝撃性などの実用特性に優れたポリフェニレンエーテル樹脂組成物を安定的に生産することが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】実施例および比較例で使用した二軸押出機の概略説明図である。符号の説明は、以下のとおりである。F1:原料第1供給口(トップフィード口)F2:原料第2供給口(サイドフィード口)L1:液状難燃剤第1添加口(圧入ノズル)L2:液状難燃剤第2添加口(圧入ノズル)V1:第1ベント口V2:第2ベント口M:無機フィラー供給口
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明は、(A)ポリフェニレンエーテルと(B)1,4−シス結合を90%以上有するポリブタジエンを含有するゴム変性ポリスチレンを少なくとも含むスチレン系樹脂を有するポリフェニレンエーテル樹脂組成物の製造方法である。
本発明の製造方法において、第1工程は、ポリフェニレンエーテル(A)と、(B1)非水素添加のポリブタジエンを含有するゴム変性ポリスチレンを除くスチレン系樹脂の一部または全部とを溶融混練して、ポリフェニレンエーテルの未溶融物がない混合物とする工程である。この第1工程において、必要に応じて(C)リン系難燃剤を添加して溶融混練することもできる。
本発明の製造方法において、第2工程は、第1工程で得られた混合物と、(B2)1,4−シス結合を90%以上有するポリブタジエンを含有するゴム変性ポリスチレンを含む、第1工程で用いた残りのスチレン系樹脂とを溶融混練し、その際必要であれば更に(C)リン系難燃剤を添加し、また必要に応じてその他の添加剤を加えて溶融混練して最終の本発明の目的物である組成のポリフェニレンエーテル樹脂組成物(以下、最終の変性PPEという。)を得る工程である。
本発明の製造方法においては、図1に示す押出し機を用いて、第1工程と第2工程とを連続的に一台の押出機で行うこともできるが、第1工程で溶融混練して中間原料としての混合物を得た後に該混合物からなる中間原料ペレットを得て、さらに第2工程として該中間原料ペレットと、残りのスチレン系樹脂および必要に応じてリン系難燃剤やその他の添加剤とを溶融混練する逐次製造法で最終の変性PPEを製造することが、いろいろな特性を持った最終の変性PPEの製造に応用できるため好ましい。
本発明の製造方法においては、窒素や炭酸ガスなどの不活性ガスを押出機の原料供給口(図1のF1、F2)に供給して溶融混練することが好ましく、得られた変性PPEの黒点異物、熱安定性に対する効果が大きく、特に第1工程において効果的である。
本発明で用いられるポリフェニレンエーテル(A)としては、下記の単独重合体または共重合体を挙げることができる。ポリフェニレンエーテルの単独重合体の代表例としては、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−メチル−6−エチル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2,6−ジエチル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−エチル−6−n−プロピル−1,4−フェニレン)エーテルポリ(2,6−ジ−n−プロピル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−メチル−6−n−ブチル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−エチル−6−イソプロピル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−メチル−6−クロロエチル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−メチル−6−ヒドロキシエチル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−メチル−6−クロロエチル−1,4−フェニレン)エーテル等が挙げられる。
この中で、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレン)エーテルが好ましく、特開昭63−301222号公報等に記載されている、2−(ジアルキルアミノメチル)−6−メチルフェニレンエーテルユニットや2−(N−アルキル−N−フェニルアミノメチル)−6−メチルフェニレンエーテルユニット等を部分構造として含んでいるポリフェニレンエーテルも好ましく用いられる。
共重合体の例としては、2,6−ジメチルフェノールと2,3,6−トリメチルフェノールとの共重合体、2,6−ジメチルフェノールとo−クレゾールとの共重合体あるいは2,6−ジメチルフェノールと2,3,6−トリメチルフェノール及びo−クレゾールとの共重合体等が挙げられる。
実用上特に好ましいのは、30℃のクロロホルム溶液で測定した固有粘度が0.3〜0.7の範囲、好ましくは0.35〜0.6の範囲にあるポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレン)エーテルであり、固有粘度の異なる二種以上を用いて分子量分布を広くすることも可能である。
本発明において、第1工程の第1のスチレン系樹脂に用いられる、(B1)水素添加ポリブタジエンを含有するゴム変性ポリスチレンおよび/またはホモポリスチレンは、例えば、スチレン単独重合体、スチレンと共重合可能なビニル化合物との共重合体およびゴム変性ポリスチレンに代表されるグラフト共重合体が挙げられ、これらは単独であっても併用しても良い。最も有用な好ましいゴム変性ポリスチレンは、全二重結合の5〜70%が水素添加された部分水添ポリブタジエンを含有するゴム変性ポリスチレンである。第1工程で添加する第1のスチレン系樹脂の全量に対する上記ポリスチレン(B1)の含有量は80重量%以上でなければならない。
第1工程においてはゴム変性ポリスチレンを用いないこともできるが、より優れた耐衝撃性を得るためには用いることが望ましく、本発明の第1工程で用いられる有用なゴム変性ポリスチレンは、全二重結合の5〜70%が、好ましくは15〜60%が、より好ましくは25〜45%が水素添加された部分水添ポリブタジエンを含有するゴム変性ポリスチレンである。また、第1工程で用いられるスチレン系樹脂の一部として、非水素添加のポリブタジエンを含有するゴム変性ポリスチレンを併用してもかまわない。但し、本発明の目的を達成するためには、非水素添加のポリブタジエンを含有するゴム変性ポリスチレンの併用割合は、第1工程で用いられるスチレン系樹脂全量の20重量%以下、より好ましくは10重量%以下にするべきであり、特に好ましくは併用するべきでない。
通常市販されている一般的なゴム変性ポリスチレン、即ち非水素添加のポリブタジエンを含有するゴム変性ポリスチレンのみを第1のスチレン系樹脂として用いた場合には耐熱劣化特性が劣り、本発明は達成されない。
本発明に用いられる上記ゴム変性ポリスチレンについては、日本特許第2902424号に詳細に記述されている。該ゴム変性ポリスチレンに用いられる部分水添ポリブタジエンは、全二重結合の中、5〜70%が水素添加され、しかも1,2−ビニル結合量が3重量%以下、好ましくは2重量%以下であり、更に未水素添加の1,4−結合量は30重量%以上であることが望ましい。全二重結合の水素添加率が、5重量%以上であれば、部分水添の効果が十分に発揮される。
本発明において、第2工程で用いられる第2のスチレン系樹脂は、(B2)少なくとも1,4−シス結合を90%以上有するポリブタジエンを含有するゴム変性ポリスチレンを必須成分とするが、(B2)成分以外に、非水添のポリブタジエンを含有するゴム変性ポリスチレン、スチレン単独重合体、スチレンと共重合可能なビニル化合物との共重合体等のスチレン系樹脂と併用しても良い。また、第1工程で用いた部分水添ポリブタジエンを含有するゴム変性ポリスチレンを、本発明の製造方法の特徴を損なわない範囲の少量であれば、第2工程においても添加しても良い。
該ゴム変性ポリスチレン(B2)において、1,4−シス結合を90%以上有するポリブタジエンの含有量は、5〜25重量%が好ましく、より好ましくは7〜20%であり、特に好ましくは9〜15重量%である。一般に、ゴム含量25重量%以上のゴム変性ポリスチレンは商業的には製造し難い。
本発明の樹脂組成物において、1,4−シス結合を90%以上有するポリブタジエンを含有するゴム変性ポリスチレン(B2)の含有量は、要求される機械特性によってことなるが、通常は樹脂組成物100重量部当たり1〜80重量部、好ましくは2〜70重量部、特に好ましくは3〜60重量部である。
一般に、ポリブタジエンはブタジエンを重合する際の触媒種等の重合条件によって、ミクロ構造が決まる。1,4−シス結合が比較的少なくビニル結合や1,4−トランス結合が多いポリブタジエンは熱架橋しやすく、熱安定性に劣るため本発明のポリフェニレンエーテル系樹脂組成物には好ましくない。
1,4−シス結合を90%以上有するポリブタジエンは、1,4−シス結合が多いほど好ましく、一般に市販されている1,4−シス結合が多いポリブタジエンは、約95%以上の1,4−シス結合を有しており、特に好ましくは約97%以上の1,4−シス結合を有しているポリブタジエンである。1,4−シス結合を90%以上有するポリブタジエンは、1,4−シス結合が少ないポリブタジエンに比較してガラス転移点が低いため、それを用いたゴム変性ポリスチレンは耐衝撃性、特に低温衝撃性を向上させるのに優れており、その有用な特性を得るために、本発明の製造方法は極めて優れている。
第2工程のスチレン系樹脂としては、前記したように1,4−シス結合を90%以上有するポリブタジエンを含有するゴム変性ポリスチレン(B2)のほかにその他のスチレン系樹脂を併用することができ、例えば耐衝撃性がそれほど必要でない場合には安価なスチレン単独重合体を併用することが経済的に有利である。
本発明の第1工程および第2工程で用いられるゴム変性ポリスチレンは、上記のポリブタジエンゴムの存在下でスチレンまたはスチレンと該スチレンと共重合可能な化合物とを重合する従来から知られた一般的なゴム変性ポリスチレンの製造方法によって得ることができる。具体的には、スチレンおよび必要に応じて混合されるスチレンと共重合可能な化合物またはその他の溶剤に1〜15重量%のポリブタジエンゴムを溶解し、該ゴム溶液をグラフト重合し、さらに未反応の単量体や溶剤を除去することによって製造される。勿論、上記以外のその他のゴム成分を悪影響及ぼさない範囲で併用することができる。
スチレンと共重合可能な化合物としては、α−メチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、モノクロロスチレン、p−メチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、エチルスチレン等のスチレン系化合物;メチルメタクリレート、エチルメタクリレート等のメタクリル酸エステル類;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等の不飽和ニトリル化合物類;無水マレイン酸等の酸無水物等が挙げられる。スチレンとともに使用される、共重合可能な化合物の使用量は、スチレンと共重合可能な化合物との合計量に対して20重量%以下が好ましく、さらに好ましくは15重量%以下である。
本発明で用いられるゴム変性ポリスチレンは、分散ゴム粒子の体積平均径が約0.05〜3μmの範囲が好ましく、1〜2μmの範囲のものがより好ましい。また、場合によっては、0.05〜1.5μmのゴム粒子のものと2〜4μmのゴム粒子のものとを併用することも好ましい。
本発明の(C)リン系難燃剤としては、赤リン、有機リン酸エステル化合物、ホスファゼン化合物、ホスホルアミド化合物等が挙げられる。
有機リン酸エステル化合物の具体例としては、トリフェニルフォスフェート、フェニルビスドデシルホスフェート、フェニルビスネオペンチルホスフェート、フェニル−ビス(3,5,5′−トリ−メチル−ヘキシルホスフェート)、エチルジフェニルホスフェート、2−エチル−ヘキシルジ(p−トリル)ホスフェート、ビス−(2−エチルヘキシル)p−トリルホスフェート、トリトリルホスフェート、ビス−(2−エチルヘキシル)フェニルホスフェート、トリ−(ノニルフェニル)ホスフェート、ジ(ドデシル)p−トリルホスフェート、トリクレジルホスフェート、ジブチルフェニルホスフェート、2−クロロエチルジフェニルホスフェート、p−トリルビス(2,5,5′−トリメチルヘキシル)ホスフェート、2−エチルヘキシルジフェニルホスフェート、ビスフェノールA・ビス(ジフェニルホスフェート)、ジフェニル−(3−ヒドロキシフェニル)ホスフェート、ビスフェノールA・ビス(ジクレジルホスフェート)、レゾルシン・ビス(ジフェニルホスフェート)、レゾルシン・ビス(ジキシレニルホスフェート)、2−ナフチルジフェニルフォスフェート、1−ナフチルジフェニルフォスフェート、ジ(2−ナフチル)フェニルフォスフェート等が挙げられる。この中で、レゾルシン類およびビスフェノールA類のリン酸エステル化合物は、揮発性、耐熱性面において好ましい。
ホスファゼン化合物は、一般式(I)で示される環状および直鎖状の構造を有するものであるが、環状構造化合物が好ましく、n=3および4の6員環および8員環のフェノキシホスファゼン化合物が特に好ましい。
【0020】
【化1】

【0021】
(ここで、Rはそれぞれ独立に炭素数1〜20の脂肪族基または芳香族基を表し、nは3以上の整数である。)
さらに、これらの化合物は、フェニレン基、ビフェニレン基および下記に示す基からなる群より選ばれた架橋基によって架橋されていても良い。
【0022】
【化2】

【0023】
(式中Xは、−C(CH−、−SO−、−S−、または−O−を示す。)
一般式(I)で示されるホスファゼン化合物は、公知の化合物であり、例えばJames E.Mark,Harry R.Allcock,Robert West著、″Ino−rganic Polymers″Pretice−Hall International,Inc.,1992,p61−p140に記載されている。これらホスファゼン化合物を得るための合成例は、特公平3−73590号公報、特開平9−71708号公報、特開平9−183864号公報および特開平11−181429号公報等に開示されている。ホスファゼン化合物は、難燃性、耐熱性面においてより好ましい。
本発明の樹脂組成物には必要に応じ、(D)難燃助剤として、ドリップ防止剤を含んでいてもよい。このドリップ防止剤とは、燃焼の際に、ドリップ(滴下)を抑制する働きのある添加剤であり、公知のものが使用できる。ドリップ防止剤は、ポリフェニレンエーテルとスチレン系樹脂(回収スチレン系樹脂、バージン材も含む。)との合計100重量部に対し、0.01〜5重量部、好ましくは0.05〜3重量部の範囲で添加される。
本発明では、特に、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などに代表されるポリフェニレンエーテル系樹脂中でフィブリル構造を形成するものがドリップの抑制効果が高いので好適である。このようなドリップ防止剤が含まれる樹脂組成物は特に難燃性に優れている。このようなポリテトラフルオロエチレン(PTFE)の中でも、分散性に優れたもの、たとえば水などの溶液にPTFEを乳化分散させたもの、またアクリル酸エステル系樹脂、メタクリル酸エステル系樹脂、スチレン−アクリロニトリル共重合体樹脂等でPTFEをカプセル化処理したものは、変性PPE樹脂からなる成形体に、よい表面外観を与えるので好ましい。
水などの溶液にPTFEを乳化分散させたものの場合、特に制限はないが、PTFEが1μm以下の平均粒子径であるものが好ましく、特に0.5μm以下であることが好ましい。このようなPTFEとして市販されているものの具体例としては、テフロン(登録商標)30J(商標、三井デュポンフルオロケミカル(株))、ポリフロンD−2C(商標、ダイキン化学工業(株))、アフロンAD1(商標、旭硝子(株))などが挙げられる。
また、このようなポリテトラフルオロエチレンは、公知の方法によって製造することもできる(米国特許第2393967号明細書参照)。具体的には、ペルオキシ二硫酸ナトリウム、カリウムまたはアンモニウムなどの遊離基触媒を使用して、水性の溶媒中において、0.7〜7MPaの圧力下で、0〜200℃、好ましくは20〜100℃の温度条件のもと、テトラフルオロエチレンを重合させることによって、ポリテトラフルオロエチレンを白色の固体として得ることができる。
このようなポリテトラフルオロエチレンは、分子量が10万以上、好ましくは20万〜300万程度のものが望ましい。このため、ポリテトラフルオロエチレンが配合された樹脂組成物は、燃焼時のドリップが抑制される。さらに、ポリテトラフルオロエチレンとシリコーン樹脂とを併用すると、ポリテトラフルオロエチレンのみを添加したときに比べて、さらにドリップを抑制し、しかも燃焼時間を短くすることができる。
本発明の第1工程における配合割合は、粉状ポリフェニレンエーテルの未溶融物を残さないことと第2工程で色々な組成の最終組成物を得るために重要であり、リン系難燃剤を含まない場合には、粉状ポリフェニレンエーテル/第1のスチレン系樹脂=50〜95重量部/50〜5重量部の割合であることが好ましく、より好ましくは粉状ポリフェニレンエーテル/第1のスチレン系樹脂=55〜90重量部/45〜10重量部の割合である。リン系難燃剤を含む場合には、粉状ポリフェニレンエーテル/第1のスチレン系樹脂=50〜99重量部/50〜1重量部、これらの合計100重量部に対してリン系難燃剤1〜80重量部の割合であることが好ましく、より好ましくは粉状ポリフェニレンエーテル/第1のスチレン系樹脂=55〜95重量部/45〜5重量部、これらの合計100重量部に対してリン系難燃剤2〜65重量部の割合である。
本発明の第1工程において、リン系難燃剤を添加する位置は特に限定されないが、粉状ポリフェニレンエーテルの未溶融物を発生させないために、粉状ポリフェニレンエーテル(図1のF1から供給)が溶融した後、即ち押出機のバレル途中(図1のL1およびL2)から添加するのが好ましい。
本発明で得られる最終の変性PPEは、第1工程により得られる中間原料ペレットの1種以上を用いて、1,4−シス結合を90%以上有するポリブタジエンを含有するゴム変性ポリスチレン(B2)を含むスチレン系樹脂、および必要に応じてリン系難燃剤やその他の添加剤を添加して溶融混練する第2工程を経て得られる。
本発明において、さらなる特性の改善のためにその他の添加剤が添加される。その他の添加剤としては、耐衝撃性改善のためにはエラストマー、剛性や寸法性の改善のためには無機充填剤及び強化剤、耐光性改善のためには紫外線吸収剤や光安定剤、熱安定性改善のためには熱安定剤などが挙げられ、必要に応じて適宜添加される。
本発明において得られるポリフェニレンエーテル樹脂組成物、即ち目的とする最終の変性PPEは、使われる用途により各成分の割合は異なり、難燃性を必要としない用途にはポリフェニレンエーテル/(第1+第2)スチレン系樹脂=5〜95重量部/95〜5重量部、好ましくは10〜85重量部/90〜15重量部の割合の範囲、難燃性を必要とする用途にはポリフェニレンエーテル/(第1+第2)スチレン系樹脂=5〜95重量部/95〜5重量部、且つ、これらの合計100重量部に対してリン系難燃剤1〜50重量部の割合、好ましくはポリフェニレンエーテル/(第1+第2)スチレン系樹脂=10〜85重量部/90〜15重量部、且つ、これらの合計100重量部に対してリン系難燃剤3〜35重量部の割合の範囲から耐熱性も加味して適宜決定される。
本発明において、第1工程で用いられる好適な押出機は、同方向回転または異方向回転のベント口付き二軸押出機である。押出機スクリューは、ミキシングゾーンを適宜設けた構成とし、回転数は必要な剪断力と押出レートを加味して適宜設定される。第1工程における設定温度は、一般に240〜340℃の範囲、好ましくは260〜320℃の範囲である。
本発明は、第1工程において、スクリュー直径40mm以上、特にスクリュー直径70mm以上の二軸押出機を用いて、スクリューの周速度50cm/秒以上、特に周速度100cm/秒以上の高速回転、即ち高剪断力で製造されるポリフェニレンエーテル樹脂組成物の製造に有効であり、スクリューの高速回転が可能であるため、生産性を高めることができ、且つ得られた樹脂組成物の特性が優れる。直径40mm未満の小型押出機においては従来の製造方法でも組成物の性能は特に劣るものではないが、生産性が劣り商業的には実用的でない。また、従来の製造方法では、生産性を上げるためにスクリュー回転数を上げたり、大型押出機を用いた場合には、混練による発熱が大きく、得られた樹脂組成物の特性の低下を抑制するために、混練性を向上するためのニーディングディスクの組み込みが制限され、押出レートを落とすなど、結果として、押出機の大きさに対して生産性が制約されていた。
本発明において、第1工程で得た中間原料ペレットを用いて、二段階の製造方法により製造する場合の第2工程の押出機としては、単軸押出機、同方向回転または異方向回転の二軸押出機いずれも使用可能である。これらの押出機は、ベント口付きがより好ましい。
第2工程においては、第1工程に比べて比較的弱い剪断で十分であり、第2工程における設定温度は、一般に220〜300℃の範囲とし、樹脂温度は、好ましくは320℃以下、より好ましくは300℃以下となるようにスクリュウ構成、回転数、押出温度を設定する。このような温度以下で行なうために熱劣化の少ない優れた樹脂特性の組成物が得られる。
本発明の特徴は、第2工程において弱い剪断力の押出機、あるいは剪断力の小さいスクリューを用いることができ、その結果として樹脂の劣化をきわめて少なくすることで、優れた樹脂特性の組成物を得ることができる。
このようにして製造された本発明のポリフェニレンエーテル樹脂組成物は、ポリブタジエンの熱劣化による、1,4−シス結合を90%以上有するポリブタジエンに由来するガラス転移点の上昇が小さいため、低いガラス転移点を示し、1,4−シス結合を90%以上有するポリブタジエンに由来するガラス転移温度は−85℃以下が好ましく、より好ましくは−90℃以下である。本発明のポリフェニレンエーテル樹脂組成物は、樹脂特性、特に熱的安定性、高温暴露などによる耐熱劣化特性、特に低温での耐衝撃性に優れる。
本発明の製造方法は、上記の点において、極めて優れており、商業的にも極めて有益である。
本発明において、ポリブタジエンに由来するガラス転移温度の測定は、後述する実施例に記載の方法で行なった。
本発明において、さらなる特性の改善のために添加されるその他の添加剤としては、耐衝撃性改善のためにはエラストマー、剛性や寸法性の改善のためには無機充填剤及び強化剤、耐光性改善のためには紫外線吸収剤や光安定剤、熱安定性改善のためには熱安定剤などが挙げられ、必要に応じて適宜添加される。
本発明の樹脂組成物には、衝撃向上剤としてゴム状重合体を添加できる。ゴム状重合体としては、スチレン−ブタジエンブロック共重合体、スチレン−イソプレンブロック共重合体、及びそれらの水素添加物、天然ゴム;ポリイソプレンゴム、ポリブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、エチレン−プロピレンゴム、クロロプレンゴム、アクリルゴム、イソプレン−イソブチレンゴム、ポリペンテナマーゴム、及びその他の合成ゴムが挙げられる。このうち、スチレン−ブタジエンブロック共重合体およびスチレン−イソプレンブロック共重合体の水素添加物が衝撃向上効果の上で好ましい。
【0024】
本発明に使用される水素添加ブロック共重合体は、ビニル芳香族炭化水素を主体とする少なくとも1個好ましくは2個以上の重合体ブロックと、共役ジエン化合物を主体とする少なくとも1個の重合体ブロックを有するブロック共重合体の水素添加物である。ビニル芳香族炭化水素としては、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−ターシャルブチルスチレン等のアルキルスチレン、パラメトキシスチレン、ビニルナフタレン等のうちから1種、または2種以上が選ばれ、中でもスチレンが好ましい。共役ジエン化合物は1対の共役二重結合を有するジオレフィンであり、例えば1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン(イソプレン)、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエンなどであるが、特に一般的なものとしては1,3−ブタジエン、イソプレンが挙げられる。これらは一種のみならず二種以上を使用してもよい。
本発明に使用される水素添加ブロック共重合体において、水素添加前のブロック共重合体の製造方法としては、例えば特公昭36−19286号公報、特公昭43−17979号公報、特公昭46−32415号公報、特公昭49−36957号公報、特公昭56−28925号公報、特開昭59−166518号公報などに記載された方法が挙げられる。これらの方法により、ブロック共重合体は下記一般式で表されるブロック共重合体として得られる。
(A−B)、A−(B−A)、B−(A−B)
(上式において、Aはビニル芳香族炭化水素を主体とする重合体ブロックであり、Bは共役ジエン化合物を主体とする重合体である。AブロックとBブロックとの境界は必ずしも明瞭に区別される必要はない。又、nは1以上、一般に1〜5の整数である。)
あるいは一般式
[(B−A)m+1−X、[(A−B)m+1−X、[(B−A)−B]m+1−X、
[(A−B)−A]m+1−X、
(上式において、A,B,nは前記と同じであり、Xは例えば四塩化ケイ素、四塩化スズ、エポキシ化大豆油、2〜6官能のエポキシ基含有化合物、ポリハロゲン化炭化水素、カルボン酸エステル、ジビニルベンゼン等ポリビニル化合物などのカップリング剤の残基又は多官能有機リチウム化合物等の開始剤の残基を示す。また、mは1以上、一般に1〜10の整数である。)
尚、上記において、ビニル芳香族炭化水素を主体とする重合体ブロックとはビニル芳香族炭化水素由来の単量体単位を50重量%以上、好ましくは70重量%以上含有するビニル芳香族炭化水素と共役ジエン化合物との共重合体ブロック及びビニル芳香族炭化水素単独重合体ブロックを示し、共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックとは共役ジエン化合物由来の単量体単位が50重量%を超える量で、好ましくは70重量%以上含有する共役ジエン化合物とビニル芳香族炭化水素との共重合体ブロック及び共役ジエン化合物単独重合体ブロックを示す。
共重合体ブロック中のビニル芳香族炭化水素由来の単量体単位は均一に分布していても、又テーパー状に分布していてもよい。又、該共重合体部分には、ビニル芳香族炭化水素由来の単量体単位が均一に分布している部分及びテーパー状に分布している部分がそれぞれ複数個共存していてもよい。本発明で使用する水素添加ブロック共重合体は、上記一般式で表されるブロック共重合体の水素添加物を任意の割合で併用できる。
本発明において、水素添加前のブロック共重合体中の共役ジエン化合物に基づくビニル結合量は、好ましくは10〜70%、更に好ましくは15〜60%、特に好ましくは25〜50%である。ここに、ビニル結合量とは、ブロック共重合体中に1,2−結合、3,4−結合及び1,4−結合の結合様式で組み込まれている共役ジエン化合物のうち、1,2−結合及び3,4−結合で組み込まれているものの割合である。ビニル結合量が10%未満又は70%を超える場合は、水素添加ブロック共重合体とポリフェニレンエーテルおよびスチレン系樹脂との親和性が劣るため好ましくない。ビニル結合量は、ビニル化剤としてジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジフェニルエーテル、テトラヒドロフラン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル等のエーテル化合物、トリメチルアミン、トリエチルアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、ジアゾビシクロ[2,2,2]オクタン等の第3級アミンなどを用いてブロック共重合体の製造時に調整することができる。
本発明で使用する水素添加ブロック共重合体は、上記のブロック共重合体を水素添加すること(水素添加反応)により得られる。水素添加反応に使用される触媒としては、(1)Ni、Pt、Pd、Ru等の金属をカーボン、シリカ、アルミナ、ケイソウ土等に担持させた担持型不均一系触媒、(2)Ni、Co、Fe、Cr等の有機酸塩又はアセチルアセトン塩などの遷移金属塩と有機アルミニュウム等の還元剤とを用いる、いわゆるチーグラー型触媒、(3)Ti、Ru、Rh、Zr等の有機金属化合物等のいわゆる有機金属錯体等の均一触媒が知られている。水素添加反応の具体的な方法としては、特公昭42−8704号公報、特公昭43−6636号公報、特公昭63−4841号公報、特公平1−37970号公報、特公平1−53851号公報、特公平2−9041号公報に記載された方法が挙げられ、炭化水素溶媒中で水素添加触媒の存在下に水素添加して、水素添加物を得ることができる。その際、ブロック共重合体の水素添加率は、反応温度、反応時間、水素供給量、触媒量等を調整することによりコントロールできる。
本発明に使用される水素添加ブロック共重合体は、共役ジエン化合物に基づく不飽和二重結合の全水素添加率が好ましくは60〜85%、好ましくは65%〜85%のものである。全水素添加率が60%未満では熱安定性が劣る。全水素添加率が60〜85%の場合に、耐薬品性、流動性、耐衝撃性等のバランスに優れる。
更に、本発明では、水素添加ブロック共重合体において、水素添加前の共役ジエン化合物に基づくビニル結合部の水素添加率を90%以上、好ましくは95%以上にすることが好ましい。ビニル結合部の水素添加率が90%未満の場合には、熱安定性が劣るため好ましくない。ここで、ビニル結合部の水素添加率とは、水素添加前のブロック共重合体中に組み込まれている共役ジエン化合物に基づくビニル結合量に対する、水素添加されたビニル結合量の割合を云う。
なお、ブロック共重合体中のビニル芳香族炭化水素に基づく芳香族二重結合の水素添加率については特に制限はないが、水素添加率を50%以下、好ましくは30%以下、更に好ましくは20%以下にすることが好ましい。水素添加率は、赤外分光光度計や核磁気共鳴装置(NMR)等により知ることができる。
本発明に使用される水素添加前のブロック共重合体におけるビニル芳香族炭化水素由来の単量体単位の含有量は、好ましくは20〜60重量%、更に好ましくは25〜50重量%である。ビニル芳香族炭化水素由来の単量体単位の含有量が20重量%未満の場合は変性PPEとの相溶性が劣り、60重量%を越える場合には耐薬品性、耐衝撃性が劣る。但し、ポリオレフィン系重合体と併用添加する場合においては、ビニル芳香族炭化水素由来の単量体単位の含有量は、好ましくは25〜90重量%、更に好ましくは30〜80重量%である。
本発明で用いられる水素添加ブロック共重合体のメルトフローレート(ASTM−D−1238準拠:230℃、2.16kg荷重)は、好ましくは10g/10分以下、更に好ましくは2g/10分以下である。MFRが10g/10分を越える場合には、耐衝撃性が劣る。メルトフローレートの下限は、0.1g/10分以下は測定精度がなく数値として表すのは難しいが、0.1g/10分以下のものも本発明では用いられる。
また、実用的な水素添加ブロック共重合体としての数平均分子量は、GPCによる測定において、ピーク分子量が標準ポリスチレン換算で好ましくは4万〜30万、更に好ましくは5万〜25万、特に好ましくは6万〜20万である。
上記のようにして得られた水素添加ブロック共重合体の溶液から、通常の方法で脱溶剤することにより、本発明の水素添加ブロック共重合体を得ることができる。必要に応じ、金属類を脱灰する工程を採用することができる。また、必要に応じ、反応停止剤、酸化防止剤、中和剤、界面活性剤等を用いてもよい。
本発明で使用する水素添加ブロック共重合体は、窒素、酸素、ケイ素、リン、硫黄、スズから選ばれる極性基含有官能基が重合体に結合した官能化重合体や水素添加ブロック共重合体を無水マレイン酸などの変性剤で変性した官能化ブロック共重合体も含まれる。
また、本発明の水素添加ブロック共重合体には、軟化剤あるいは加工助剤として公知のナフテン系、パラフィン系のプロセスオイル及びこれらの混合オイルを配合できる。
上記した重合体の中で、本発明の樹脂組成物に添加するゴム状重合体としては、スチレン−ブタジエンブロック共重合体もしくはスチレン−イソプレンブロック共重合体が好ましい。ゴム状重合体の好ましい添加量は、樹脂組成物100重量部当たり0.1〜15重量部、より好ましくは0.1〜10重量部、更に好ましくは0.5〜5重量部、特に好ましくは0.5〜3重量部の範囲である。
本発明の組成物には、ポリオレフィン系重合体を添加することができる。具体的には、エチレンの単独重合体、エチレン−α−オレフィン共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体およびエチレン−アクリル酸エステル共重合体が好ましく、特にポリエチレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ブテン共重合体、エチレン−オクテン共重合体、エチレン−メタクリル酸エチル共重合体が好ましく、これらの1種以上を用いることができる。これらポリオレフィン系重合体は、しばしば射出成形時の金型からの離型性を向上させる役割を果たす。
スチレン−ブタジエンブロック共重合体またはスチレン−イソプレンブロック共重合体、及びそれらの水素添加物とポリオレフィンやオレフィン系共重合体とを併用して添加することは、耐衝撃性と離型性に対する相乗効果が有り特に好ましい。ポリオレフィンやオレフィン系共重合体と併用添加して用いられるゴム状重合体としては、特にスチレンブロックの数平均分子量が15,000以上のスチレン−ブタジエンブロック共重合体およびスチレン−イソプレンブロック共重合体の水素添加物が好ましい。ポリオレフィン系重合体の添加量は、樹脂組成物100重量部当たり好ましくは0.1〜5重量部、より好ましくは0.5〜3重量部である。
本発明組成物に対して、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤などの安定剤を添加して、組成物の熱安定性や耐光性を向上させることができる。
酸化防止剤の具体例としては、例えば2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、n−オクタデシル−3−(4’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェニル)プロピオネート、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、2,4−ビス〔(オクチルチオ)メチル〕−o−クレゾール、2−t−ブチル−6−(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート、2,4−ジ−t−アミル−6−〔1−(3,5−ジ−t−アミル−2−ヒドロキシフェニル)エチル〕フェニルアクリレート、2−[1−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ペンチルフェニル)]アクリレートなどのヒンダードフェノール系酸化防止剤;ジラウリルチオジプロビオネート、ラウリルステアリルチオジプロピオネートペンタエリスリトール−テトラキス(β−ラウリルチオプロピオネート)などのイオウ系酸化防止剤;トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイトなどのリン系酸化防止剤などを挙げることができる。
本発明の製造方法において、第2工程において、リン系酸化防止剤を更に添加すると、成形品、特に大型成形品の表面外観をより良好にできる。殊に射出成形で得られる大型成形品、例えば、21インチ以上のTV筐体、ファックス外装品、コンピューターモニター外装品、プリンター外装品等においては、成形品が大きいため、射出成形時高い射出圧力で一気に金型内部に樹脂を注入する必要があり、その結果溶融樹脂先端部(所謂フローフロント)が変形及び剪断発熱し樹脂温度が350℃程度まで上昇するため、一般に、できあがる成形品の表面に黒筋と呼ばれる表面外観不良が発生し易い傾向がある。また、このような黒筋を発生する場合、銀状痕の発生も目立つ。表面外観が悪いと、成形体に塗装を施した場合には、塗布膜の剥がれが発生し、好ましくない。このような現象を抑えるには、リン系酸化防止剤剤の添加が好ましい。ここでいうリン系酸化防止剤とは上記、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト及びその誘導体、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト及びその誘導体などのリン系酸化防止剤の他、ペンタエリスリトール型ジフォスファイト誘導体がある。特にビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトール−ジ−フォスファイトが好ましい。
変性PPEにおいては、酸化亜鉛や硫化亜鉛などの亜鉛化合物も熱安定剤として使われることもある。
紫外線吸収剤、光安定剤の具体例としては、例えば2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾールなどのベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤や2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノンなどのベンゾフェノン系紫外線吸収剤、あるいはヒンダードアミン系光安定剤などを挙げることができる。
上記の安定剤以外に、本発明の組成物には必要により、あるいは組成物の特性に悪影響を与えない範囲で、ベンガラ、二酸化チタンなどの顔料;パラフィンワックス、マイクロクリスタンワックス、低分子量ポリエチレンワックス、などのワックス類;無定形ポリオレフィン、エチレン−エチルアクリレート共重合体などのポリオレフィン系又は低分子量のビニル芳香族系熱可塑性樹脂を添加しても良い。
本発明の樹脂組成物には、重質炭酸カルシウム、膠質炭酸カルシウム、軟質炭酸カルシウム、シリカ、カオリン、クレー、酸化チタン、硫酸バリウム、酸化亜鉛、アルミナ、水酸化マグネシウム、タルク、マイカ、ガラスフレーク、ハイドロタルサイト、針状フィラー(ウオラストナイト、チタン酸カリウム、塩基性硫酸マグネシウム、セプライト、ゾノトライト、ホウ酸アルミニウム)、ガラスビーズ、シリカビーズ、アルミナビーズ、カーボンビーズ、ガラスバルーン、金属系導電性フィラー、非金属製導電性フィラー、カーボン、磁性フィラー、圧電・焦電フィラー、摺動性フィラー、封止材用フィラー、紫外線吸収フィラー、制振用フィラー、導電性フィラー(ケッチェンブラック、アセチレンブラック)等で、ファイバーは、ガラス繊維、炭素繊維、金属繊維等を添加し、用途に応じた複合体を得ることができる。
また、従来から知られた各種難燃剤や難燃助剤、例えばハロゲン化合物、水酸化マグネシウムや水酸化アルミニウム等の水酸化物、ホウ酸亜鉛化合物、スズ酸亜鉛化合物、三酸化アンチモン、さらにはシリカ、シリカアルミナなどの無機ケイ素化合物、テトラフルオロエチレン系ポリマー、シリコーン化合物などを添加して更なる難燃性の向上も可能である。
これらの添加剤は、押出加工時の剪断や熱による劣化を抑制するためにも第2工程において添加することが好ましく、特に繊維状の無機補強剤は第2工程の押出機シリンダーの途中から供給することが繊維の切断を抑制するためにも好ましい。
【実施例】
【0025】
本発明を実施例に基づいて説明する。
【0026】
[製造例1]
部分水添ポリブタジエンの製造
全二重結合の5〜70%が水素添加された部分水添ポリブタジエンを含有するゴム変性ポリスチレンの製造に用いる部分水添ポリブタジエンは、次に述べる方法で製造した。
内容積10リットルの撹拌機、ジャケット付きオートクレーブを反応機として用いて、ブタジエン/n−ヘキサン混合液(ブタジエン濃度20重量%)を20リットル/時間で、n−ブチルリチウム/n−ヘキサン溶液(濃度5重量%)を70ミリリットル/時間で導入し、重合温度110℃でブタジエンの連続重合を実施した。得られた活性重合体をメタノールで失活させ、別の内容積10リットルの撹拌機、ジャケット付きの反応機に重合体溶液8リットルを移し、温度60℃にて、水添触媒としてジ−p−トリル−ビス(1−シクロペンタジエニル)チタニウム/シクロヘキサン溶液(濃度1.2ミリモル/リットル)250ミリリットルと、n−ブチルリチウム溶液(濃度6ミリモル/リットル)50ミリリットルとを0℃、0.2MPaの水素圧下で混合したものを添加、水素分圧0.3MPaにて60分間反応させた。得られた部分水添重合体溶液は酸化防止剤として、2,6−ジ−t−ブチルヒドロキシトルエンを重合体100重量部当たり0.5重量部添加して溶剤を除去した。メタノール失活後にサンプリングして得た部分水添ポリブタジエンの分析値は表1に示す通りであった。
【0027】
【表1】

【0028】
*1:溶液粘度は、5重量%のスチレン溶液を、25℃下でキャノンフェンスケ型粘度計を用いて測定。
*2:ビニル結合量は、赤外分析法(IR)を用いて測定し、ハンプトン法により算出した。
*3:水素添加率は、核磁気共鳴装置(NMR)を用いて測定した。
【0029】
[製造例2]
部分水添ポリブタジエン含有ゴム変性ポリスチレンの製造
製造例1で得られた部分水素添加共役ジエンゴムを以下の混合液に溶解し、均一な溶液とした。
ポリブタジエン 8.8重量%
スチレン 78.5重量%
エチルベンゼン 14.0重量%
α−メチルスチレン2量体 0.12重量%
t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート 0.03重量%
次いで、上記混合液を撹拌機付の直列4段式反応機に連続的に送液して、第1段は撹拌数190rpm、126℃、第2段は50rpm、133℃、第3段は20rpm、140℃、第4段は20rpm、155℃で重合を行った。引き続きこの固形分73重量%の重合液を脱揮装置に導き、未反応単量体及び溶媒を除去し、ゴム変性芳香族ビニル樹脂を得た。得られたゴム変性芳香族ビニル樹脂を分析した結果、ゴム含量は約12重量%、ゴムの体積平均粒子径は約1.5μm、マトリックスポリスチレンの還元粘度ηsp/cは0.68dl/g(30℃下、0.5g/100mlトルエン溶液)であった。
【0030】
実施例及び比較例においては、特に断らない限りにおいて、下記原材料を用いた。
成分(A1)としてのポリフェニレンエーテル(PPE−1);固有粘度が0.48のポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレン)エーテル粉体を用いた。
成分(A2)としてのポリフェニレンエーテル(PPE−2);固有粘度が0.38のポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレン)エーテル粉体を用いた。
成分(B1)としての部分水添ポリブタジエン含有ゴム変性ポリスチレン(HIPS−1);製造例2の部分水添ポリブタジエン変性ポリスチレンを用いた。
成分(B2)としての1,4−シス結合を90%以上有するポリブタジエンを含有するゴム変性ポリスチレン(HIPS−2);製造例2のゴム変性ポリスチレンの製造例に従って、1,4−シス結合を約98%有するポリブタジエンを約12重量%含有する、分散ゴム体積平均粒子径約1.5μm、マトリックスポリスチレンの還元粘度ηsp/cが0.70dl/g(30℃下、0.5g/100mlトルエン溶液)であるゴム変性ポリスチレンを製造して用いた。
ゴム非変性のホモポリスチレン(GPPS)として、PSジャパン(株)製、商品名ポリスチレン685を用いた。
成分(C)としてのリン酸エステル難燃剤(BDP);大八化学工業社製、CR741を用いた。
成分(C)としてのホスファゼン化合物(PZ):大塚化学(株)製のSPS−100を用いた。
成分(D)としての難燃助剤(PTFE−MB):PTFEを25重量%含有するアクリレートポリマーとの混合物。三菱レイヨン(株)製、商品名メタブレンA3000を用いた。
その他の成分として、以下のものを用いた。
水素添加ブロック共重合体−1(HTR−1):スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体の水素添加物であり、それぞれの結合スチレンが30重量%、ブタジエンに基づく不飽和二重結合の全水素添加率が95%以上、数平均分子量約8万の水素添加ブロック共重合体。
水素添加ブロック共重合体−2(HTR−2):スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体の水素添加物であり、それぞれの結合スチレンが17.5重量%、ブタジエンに基づく不飽和二重結合の全水素添加率が95%以上、数平均分子量約15万、パラフィン系プロセスオイルが35重量%の水素添加ブロック共重合体。
水素添加ブロック共重合体−3(HTR−3):スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体の水素添加物であり、それぞれのスチレン含有量が15重量%、ブタジエンに基づく不飽和二重結合の全水素添加率が約75%、数平均分子量約7万の水素添加ブロック共重合体。
ポリオレフィン重合体−1(PE):MFR0.5g/10min(ASTM D1238,190℃,2.16kg)の低密度ポリエチレン(PE)。
ポリオレフィン重合体−2(EP):エチレン−プロピレン共重合体(EP)としての三井化学(株)製、タフマー P−0680。
ポリオレフィン重合体−3(EEA):エチレン−エチルアクリレート共重合体としての三井・デュポンポリケミカル(株)製、EVAFLEX−EEA A−703。
実施例および比較例で得られた樹脂組成物の特性は、以下の試験方法により評価した。
1)未溶融物;250℃で圧縮成形して得られた約300×300mm、厚み1mmの平板を用いて真空成形して厚み約0.05mmのフィルムを作成した。
作成したフィルムの大きさ100mm×100mmの範囲に存在する粒状に観察されるポリフェニレンエーテル粉体の未溶融物を目視判定した。粒状物が10個以下の場合は○、10〜50個見られる場合は△、50個を越える場合は×と判定した。
2)黒点異物;160×160mm、厚み1mmのプレス金型で、250℃で圧縮成形した平板表面に観察される黒点の数を数えた。100μm以上を1点/個とし、合計点数50点以下を○、50点を越える場合を△、100点を越える場合を×とした。
3)ゴムTg;ASTM D1238に準拠したメルトインデクサーを用いて、250℃、10kg荷重で押し出された円柱状の試験片を作成し、(株)オリエンテック社製、RHEOVIBRON DDV=25FP型を用いて、引張り荷重100gf(約1N)、加振周波数35Hz、昇温速度2℃/分の条件下で引っ張り振動による動的粘弾性挙動を測定した。得られた損失弾性率のピークに相当する温度をガラス転移点Tg(℃)とした。
4)アイゾッド衝撃強度;ASTM D256に準拠し、射出成形して得られた約3.2mm厚みの試験片を用いて、ノッチ付き23℃、−30℃にて測定した。
5)成形安定性;型締め圧80トンの射出成形機を使用し、加熱シリンダー設定最高温度290℃で成形した試験片の−30℃のアイゾッド衝撃強度に対する、加熱シリンダー設定最高温度320℃で成形した試験片の−30℃のアイゾッド衝撃強度の割合(アイゾッド衝撃強度保持率(%))で表した。成形サイクルは、約60秒/サイクルで成形した。尚、得られる樹脂組成物のポリフェニレンエーテルの含有量が35重量%未満のものについては上記同様、型締め圧80トンの射出成形機を使用し、加熱シリンダー設定最高温度220℃で成形する。
6)耐熱暴露性;型締め圧80トンの射出成形機を使用し、加熱シリンダー設定最高温度290℃で成形した試験片の−30℃のアイゾッド衝撃強度に対する、120℃空気中で500時間暴露した後の−30℃のアイゾッド衝撃強度の割合(アイゾッド衝撃強度保持率(%))で表した。射出成形して得られた約3.2mm厚みの試験片を用いて、ノッチを入れた後に熱暴露した。尚、得られる樹脂組成物のポリフェニレンエーテルの含有量が35重量%未満のものついては上記同様、型締め圧80トンの射出成形機を使用し、加熱シリンダー設定最高温度220℃で成形する。
7)耐薬品性;射出成形して得られた約3.2mm厚みの試験片を用い、ASTM D638に準拠して引張り強度(TSa)を測定した。一方で、試験片を試験片表面のひずみが1%になる円弧の形状を有するバーに取り付けて、イソプロピルアルコールとシクロヘキサンとの重量比60/40の混合液に23℃下に浸して30分保持した後、同様に引張強度(TSb)を測定した。TSbのTSaに対する割合(引張強度保持率)%で表した。
8)表面外観性及び塗装性:
最終組成物のポリフェニレンエーテル含有量が38重量%以上の樹脂組成物は、15cm×15cm×厚み2mmの板状成形体を型締め圧80tの成形機を用い、樹脂温度320℃で成形する。この時のゲートは成形体の15cmの辺中央からのコールドランナー方式/1mmφのピンゲートで実施する。ポリフェニレンエーテルが35重量%未満の樹脂組成物は、縦×横×奥行=72×135×10.2cmの五面成形体(大型成形体)を型締め圧1500tの射出成型機で得る。この時のシリンダー設定温度は280℃にする。射出成形のゲートは各側4面の縁の中心及び天面の中心に設る。金型のゲート部はホットランナー方式で行い、温度設定を285℃とする。成形品の冷却後の厚みは縁四面が1.5mm、天面が2mmの厚みであり、キャビティーのテーパーは2°である。このようにして得られる板状成形体及び大型成形体の外観を、目視にて確認した。成形品の塗装評価は(株)SGIクレオス社製、Mr.カラースプレー、品番J8(グレー色)を塗布後乾燥させ、その仕上がりを確認した。
板状成形体の表面外観及の評価は、黒筋、シルバー、フローマークの総合判定で評価され、◎(良)>○>△>×(悪)で評価される。大型成形体は、黒筋、シルバー、フローマークの発生が顕著なので、黒筋、シルバー、フローマークの各項目を、◎(良)>○>△>×(悪)で評価した。塗装性の目視評価は板状成形体及び大型成形体とも、塗装ムラ、塗膜剥離で総合評価され、◎(良)>○>△>×(悪)で評価される。
9)大型成形体の落下試験(実用衝撃試験)及び成形反り評価
大型成形体の実用衝撃強度の試験は、8)に記載の五面成形体により成形体のコーナーとコンクリート面(地表面)にを1.5mに持ち上げて、コーナー4辺の自由落下により評価される。この時に割れが発生したものを×、全く割れが発生しなかったものを○とした。
大型成形体の反りは、成形体を成形後24時間25℃、湿度50%の恒温室に放置し、天面部を上にして、鋼鉄製定盤の上におき、中心部がどれくらいそっているかを評価する。
全く反りが認められないものを○、コーナー部の反りが定盤から3mm以上反るものを×として評価した。
10)荷重撓み温度:ASTM D648に準拠し、厚み6.4mmの試験片を用いて1.82MPaの条件にて測定した。
11)難燃性:UL−94に準拠し、1.6mm厚みの試験片で垂直燃焼試験を評価した。
【0031】
[実施例1]
実施例1において、第1工程の押出機は、ウェルナー社製の二軸同方向回転押出機ZSK−40MC(スクリュー径40mm,バレル数11,L/D=約47)を使用した。その押出機のバレル構成は、No.1は原料の第1供給口、No.6およびNo.10はベント口付き、No.6と7の間およびNo.10と11の間に難燃剤注入口、No.7および8は副供給(サイドフィード)口付きとした。また、各ゾーンのバレル温度は、バレルNo.1は水冷、前段(バレルNo.2〜6)を290℃、後段(バレルNo.7〜11)を270℃に設定した。
原料の供給口およびフィーダーホッパーへは窒素を供給し、原料供給ラインの酸素濃度を2wt%以下になるようにした。各原料の押出機への供給は重量式フィーダーを用いた。
ダイのブレーカープレートには100メッシュのスクリーンを装着、第1ベント口は約900hPaに真空吸引、第2ベント口は閉止、スクリュ回転数600rpm、150kg/hrにて混練押出を行い、表2に示す実施例1第1工程のCR−1ペレットを製造した。ダイ出口の溶融樹脂温度は約350℃であった。その際安定剤として酸化亜鉛を0.2重量部およびトリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト(チバスペシャリティーケミカルズ製、商標名:Irgafos168)を0.2重量部添加した。第2工程は、表2に示す組成に基づき、前記CR−1ペレットとHIPS−2(B2)のほかに、水素添加スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(HTR−1)1重量部とポリオレフィン重合体として低密度ポリエチレン(PE)1重量部、およびビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトール−ジ−ホスファイト(旭電化工業製、商標名アデガスタブPEP−36)を0.2重量部混合し、スクリュー径50mm(ベント口付き、3段ダルメージ付き)の単軸押出機を用い、シリンダー最高設定温度290℃、ダイプレートには100メッシュのスクリーンを装着、ベント口は約900hPaに真空吸引、スクリュ回転数300rpm、100kg/hrにて混練押出を行い、樹脂組成物ペレットを得た。その際のダイ出口の溶融樹脂温度は、約300℃であった。
アイゾッド衝撃強度は、型締め圧80トンの射出成形機を使用し、加熱シリンダー設定最高温度290℃で成形した試験片により測定した。その他の特性は、前記評価方法により測定し、表2の結果を得た。
【0032】
[実施例2および3]
実施例1の第1工程と同一押出条件にて、さらに液状リン酸エステル難燃剤BDPを第1および第2注入口から半量づつ分割して供給してCR−2およびCR−3のペレットを得た。第2工程は実施例1と同様の操作により表2の実施例2および3に示した組成物を製造し、実施例1と同様に組成物特性を評価し、表2の結果を得た。
【0033】
[実施例4]
実施例2の第1工程で得たCR−2および実施例3の第1工程で得たCR−3とを40/60の重量比で混合して、実施例1の第2工程の操作により、表2の実施例4に示した組成物を製造し、実施例1と同様に組成物特性を評価し、表2の結果を得た。
【0034】
[比較例1]
実施例1の第1工程の押出機を用い、実施例1と同一組成の成分を第1供給口から一括供給して、樹脂組成物を1段で製造した。設定温度、スクリーン、スクリュ回転数、押出レートは実施例1と同一押出条件にて混練押出を行い、樹脂組成物ペレットを得た。実施例1と同様に組成物特性を評価し、表2の結果を得た。
【0035】
[比較例2]
実施例2において、部分水添ポリブタジエン含有ゴム変性ポリスチレン(HIPS−1)を全て1,4−シス結合を90%以上有するポリブタジエンを含有するゴム変性ポリスチレン(HIPS−2)に変更し、実施例2と同一の操作を行い、表2に示す結果を得た。
【0036】
[比較例3]
実施例1の第1工程の押出機を用い、実施例2と同一組成の樹脂成分を第1供給口から一括供給、および液状リン酸エステル難燃剤BDPを第1および第2注入口から半量づつ分割して供給し、樹脂組成物を1段で製造した。設定温度、スクリーン、スクリュ回転数、押出レートは実施例1と同一押出条件にて混練押出を行い、樹脂組成物ペレットを得た。
実施例1と同様に組成物特性、及び表面外観性、塗装性を評価し、表2の結果を得た。
【0037】
[実施例5、6、7]
実施例1の第1工程の押出機を用い、PPE−1、HIPS−1およびGPPSの樹脂成分を第1供給口から供給、HIPS−2を第2供給口から供給し、表3に示す実施例1と同一組成の樹脂組成物を1段で製造した。設定温度、スクリーン、スクリュ回転数、押出レートは実施例1と同一押出条件にて混練押出を行い、樹脂組成物ペレットを得た。HTRおよびPEは、実施例5および7は第1供給口から、実施例6は第2供給口から供給した。実施例1と同様に組成物特性、及び表面外観性、塗装性を評価し、表3の結果を得た。
【0038】
[実施例8〜11]
実施例1の第1工程の押出機を用い、それぞれ表4に示す組成の第1工程CR−4およびCR−5の樹脂ペレットを製造した。設定温度、スクリーン、スクリュ回転数、押出レートは実施例1と同一押出条件とした。第2工程は、ウェルナー社製の二軸同方向回転押出機ZSK−40(スクリュー径40mm,バレル数9,L/D=約37)を使用し、シリンダー最高設定温度290℃、ダイプレートには100メッシュのスクリーンを装着、ベント口は約900hPaに真空吸引、スクリュ回転数250rpm、100kg/hrにて混練押出を行った。第2工程の組成は、前記CR−4またはCR−5ペレットを用い、表4に示す組成で混合した後、押出機に供給した。ただし、実施例6においては、リン酸エステル難燃剤BDPをバレル途中から圧入添加した。
得られた組成物を実施例1同様に成形し、前記の評価条件にて特性評価し、表4の結果を得た。
【0039】
[実施例12〜16]
表5に示す組成に基づき、実施例2と同様の押出条件にて樹脂組成物を得た。同様に組成物の特性、及び表面外観性、塗装性を評価し、表5の結果を得た。
【0040】
【表2】

【0041】
【表3】

【0042】
【表4】

【0043】
【表5】

【0044】
[実施例17、18]
実施例17、18において、第1工程の押出機は、ウェルナー社製の二軸同方向回転押出機ZSK−40MC(スクリュー径40mm,バレル数11,L/D=約47)を使用した。その押出機のバレル構成は、No.1は原料の第1供給口、No.6およびNo.10はベント口付き、No.6と7の間およびNo.10と11の間に難燃剤注入口、No.7および8は副供給(サイドフィード)口付きとした。また、各ゾーンのバレル温度は、バレルNo.1は水冷、前段(バレルNo.2〜6)を290℃、後段(バレルNo.7〜11)を270℃に設定した。
原料の供給口およびフィーダーホッパーへは窒素を供給し、原料供給ラインの酸素濃度を2wt%以下になるようにした。各原料の押出機への供給は重量式フィーダーを用いた。
ダイのブレーカープレートには100メッシュのスクリーンを装着、第1ベント口は約900hPaに真空吸引、第2ベント口は閉止、スクリュ回転数600rpm、150kg/hrにて混練押出を行い、表2に示す実施例1第1工程のCR−1ペレットを製造した。ダイ出口の溶融樹脂温度は約350℃であった。その際安定剤として酸化亜鉛を0.2重量部およびトリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト(チバスペシャリティーケミカルズ製、商標名:Irgafos168)を添加した。
第2工程は、表6に示す組成に基づき、前記CR−1ペレットとHIPS−2(B2)のほかに、水素添加スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(HTR−1)1重量部とポリオレフィン重合体として低密度ポリエチレン(PE)1重量部、および実施例18においてはビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトール−ジ−ホスファイト(旭電化工業製、商標名アデガスタブPEP−36)、0.2重量部を混合し、スクリュー径50mm(ベント口付き、3段ダルメージ付き)の単軸押出機を用い、シリンダー最高設定温度290℃、ダイプレートには100メッシュのスクリーンを装着、ベント口は約900hPaに真空吸引、スクリュ回転数300rpm、100kg/hrにて混練押出を行い、樹脂組成物ペレットを得た。その際のダイ出口の溶融樹脂温度は、約300℃であった。組成物のアイゾッド衝撃強度は、型締め圧80トンの射出成形機を使用し、加熱シリンダー設定最高温度220℃で成形した試験片により測定した。筐体の特性は、前記評価方法により表面外観性、塗装性、落下試験を評価し、表6の結果を得た。
【0045】
[比較例4]
実施例17と同一組成の成分を第1供給口から一括供給して、樹脂組成物を1段で製造した。設定温度、スクリーン、スクリュ回転数、押出レートは実施例17と同一押出条件にて混練押出を行い、樹脂組成物ペレットを得た。組成物の特性、及び筐体の特性は実施例17と同様に評価し表6の結果を得た。
【0046】
[比較例5]
実施例18と同一組成の成分を第1供給口から一括供給して、樹脂組成物を1段で製造した。設定温度、スクリーン、スクリュ回転数、押出レートは実施例17と同一押出条件にて混練押出を行い、樹脂組成物ペレットを得た。組成物の特性、及び筐体の特性は実施例17と同様に評価し表6の結果を得た。
【表6】

【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明の製造方法は、変性ポリフェニレンエーテル樹脂の商業的生産に利用できる。また、それから得られた変性ポリフェニレンエーテル樹脂は、射出成形、押出成形、シート・フィルム成形、発泡成形およびその他の成形加工技術を組み合わせた加工方法により実用品に加工でき、各種電気・電子部材、各種自動車部材、各種事務機部材、住宅・各種配管・配線等工業部材、光学機器部材、各種屋外部材など、幅広く利用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ポリフェニレンエーテルおよび(B)スチレン系樹脂を含有し、且つ該スチレン系樹脂(B)が1,4−シス結合を90%以上有するポリブタジエンを含有するゴム変性ポリスチレンを少なくとも含むスチレン系樹脂であるポリフェニレンエーテル樹脂組成物の製造方法であって、
ポリフェニレンエーテル(A)と第1のスチレン系樹脂を溶融混練することにより溶融混練物を得る第1工程、ここで第1のスチレン系樹脂は、その全量に対し80重量%以上が(B1)水素添加ポリブタジエンを含有するゴム変性ポリスチレンおよび/またはホモポリスチレンであるスチレン系樹脂である、および、
該溶融混練物に第2のスチレン系樹脂を溶融混練する第2工程、ここで第2のスチレン系樹脂は(B2)1,4−シス結合を90%以上有するポリブタジエンを含有するゴム変性ポリスチレンを含む、
からなるポリフェニレンエーテル樹脂組成物の製造方法。
【請求項2】
ポリスチレン(B1)が、全二重結合の5〜70%が水素添加された部分水添ポリブタジエンを含有するゴム変性ポリスチレンからなる請求項1記載のポリフェニレンエーテル樹脂組成物の製造方法。
【請求項3】
第2のスチレン系樹脂が更に単独スチレン重合体からなる請求項2記載のポリフェニレンエーテル樹脂組成物の製造方法。
【請求項4】
第1工程において、更に(C)リン系難燃剤を、ポリフェニレンエーテル(A)と第1のスチレン系樹脂の合計量100重量部に対して1〜80重量部添加する請求項1〜3のいずれか1項に記載のポリフェニレンエーテル樹脂組成物の製造方法。
【請求項5】
第2工程において、更に(C)リン系難燃剤および/またはその他の添加剤を加える請求項1〜4のいずれか1項に記載のポリフェニレンエーテル樹脂組成物の製造方法。
【請求項6】
リン系難燃剤(C)としてホスファゼン化合物を用いる請求項4または5に記載のポリフェニレンエーテル樹脂組成物の製造方法。
【請求項7】
第2工程において、更にポリオレフィン系重合体0.1〜5重量部を添加する請求項1〜6のいずれか1項に記載のポリフェニレンエーテル樹脂組成物の製造方法。
【請求項8】
第2工程において、更にビニル芳香族炭化水素を主体とする少なくとも1個の重合体ブロックと、共役ジエン化合物を主体とする少なくとも1個の重合体ブロックを有するブロック共重合体の水素添加ブロック共重合体0.1〜15重量部を添加する請求項1〜7のいずれか1項に記載のポリフェニレンエーテル樹脂組成物の製造方法。
【請求項9】
第2工程において、更にビニル芳香族炭化水素を主体とする少なくとも1個の重合体ブロックと、共役ジエン化合物を主体とする少なくとも1個の重合体ブロックを有するブロック共重合体の水素添加ブロック共重合体であって、
(a)水素添加前のブロック共重合体の共役ジエン化合物に基づくビニル結合量が10〜70%、
(b)共役ジエン化合物に基づく不飽和二重結合の全水素添加率が60〜85%、
(c)水素添加前のブロック共重合体のビニル芳香族炭化水素由来の単量体単位含有量が20〜60重量%、
である水素添加ブロック共重合体0.1〜15重量部を添加する請求項1〜7のいずれか1項に記載のポリフェニレンエーテル樹脂組成物の製造方法。
【請求項10】
第1工程の溶融混練後、中間原料ペレットを製造し、該中間原料ペレットを第2工程の溶融混練に用いる請求項1〜9のいずれか1項に記載のポリフェニレンエーテル樹脂組成物の製造方法。
【請求項11】
第2工程において、リン系酸化防止剤を添加する請求項1〜10に記載の何れか1項に記載のポリフェニレンエーテル樹脂組成物の製造方法。
【請求項12】
第2工程で添加するリン系酸化防止剤が、ペンタエリスリトール−ジフォスファイト誘導体である、請求項11に記載のポリフェニレンエーテル樹脂組成物の製造方法。
【請求項13】
第2工程で添加するリン系酸化防止剤が、ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトール−ジ−ホスファイトを添加する請求項11に記載のポリフェニレンエーテル樹脂組成物の製造方法。
【請求項14】
請求項1〜13に記載のいずれかの製造方法によって得られたポリフェニレンエーテル樹脂組成物。
【請求項15】
1,4−シス結合を90%以上有するポリブタジエンに由来するガラス転移温度が−85℃以下である請求項14に記載のポリフェニレンエーテル樹脂組成物。
【請求項16】
請求項14または15に記載のポリフェニレンエーテル樹脂組成物からなる大型テレビおよび大型複写機外装部品。

【図1】
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【国際公開番号】WO2005/030872
【国際公開日】平成17年4月7日(2005.4.7)
【発行日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−514276(P2005−514276)
【国際出願番号】PCT/JP2004/014371
【国際出願日】平成16年9月30日(2004.9.30)
【出願人】(303046314)旭化成ケミカルズ株式会社 (2,513)
【Fターム(参考)】