説明

ポリフェノールおよび/またはビタミンCを含有するアセロラ処理物

【課題】種々の疾患に対して有効な改善効果を発揮する製剤を提供する。
【解決手段】本発明のポリフェノールおよび/またはビタミンCを含有するアセロラ処理物は、抗酸化活性、動脈硬化予防活性、発ガン抑制活性、腫瘍成長抑制活性、血管新生阻害活性、抗アレルギー活性、抗炎症活性、コレステロール低下活性、抗菌活性、抗う蝕活性、口臭軽減活性、血小板凝集抑制活性、抗インフルエンザウィルス活性、胃癌抑制活性および中性脂肪吸収低下活性を有するため、これらの活性を利用した新規な製剤、食品、飲料、および化粧品等として有用である。
またアセロラポリフェノールはビタミンC安定化活性を有するため、この活性を利用した新規な製剤、食品、飲料、および化粧品等として有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリフェノールおよび/またはビタミンCを含有するアセロラ処理物、その製造方法およびその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
アセロラはキントラノオ科ヒイラギトラノオ属の熱帯果実で、カリブ海諸島を原産としている。アセロラ果実は、果実100g当り約1,500mg、あるいはそれ以上の豊富なビタミンCを含む植物として知られている。ビタミンCは、抗酸化活性を有することが知られており、現在では世界各国で飲料や健康食品として用いられている。
【0003】
ところで、アセロラは鮮やかな赤色を呈していることから、多種多様なポリフェノール成分が含まれることも期待される。ポリフェノールは、抗酸化活性を有し、動脈硬化や糖尿病、ガン等といったいわゆる生活習慣病に対し予防効果がある天然成分として近年注目を浴びている成分である。
【0004】
本発明者らは、アセロラにはアントシアニン色素やケルセチン配糖体をはじめとするポリフェノールが約100〜300mg/100g程度含まれており、このアセロラポリフェノールが血糖値上昇抑制活性およびAGE生成阻害活性を示すことから、糖尿病および/または糖尿病合併症の予防・治療に有効であることを見出している(特許文献1)。
【0005】
その他、現在までにポリフェノールやビタミンCについて知られている一般的な機能性として、以下のものが挙げられる。
【0006】
1.動脈硬化は、LDLの酸化が原因とされている。ポリフェノールは、このLDLの酸化を抑えることが知られており(非特許文献1)、動脈硬化の予防に有効である。
2.ポリフェノールは、いくつかの動物実験から、経口投与により発ガンを抑制することが知られている(非特許文献2)。
3.ポリフェノールは、腫瘍細胞としてサルコーマ180を用いた実験から、カテキンを含む緑茶葉に抗腫瘍活性を有することが知られている(非特許文献3)。
【0007】
4.ポリフェノールは、血管の新生を阻害する活性を有することが知られている(非特許文献4)。
5.シソ種子中のポリフェノールは、抗アレルギー活性を有することが知られている(非特許文献5)。
6.ポリフェノールは、抗炎症活性を有することが知られている(非特許文献6)。
【0008】
7.ポリフェノールである茶カテキンは、胆汁酸ミセルへの小腸におけるコレステロール吸収を阻害する活性を有することが知られており(非特許文献7)、血漿コレステロールの上昇抑制に有効である。
8.ポリフェノールである茶カテキンは、アンジオテンシンI変換酵素を阻害する効果を有することが知られており(非特許文献8)、血圧上昇抑制剤として有効である。
9.グァバに含まれるポリフェノールは、抗菌活性を有することが知られている(非特許文献9)。
【0009】
10.ウーロン茶に含まれるポリフェノール類は、グルコシル・トランスフェラーゼ阻害活性を有することが知られており(非特許文献10)、抗う蝕剤として有効である。
11.リンゴに含まれるポリフェノールは、消臭活性を有することが知られている(非特許文献11)。
12.赤ワインに含まれるポリフェノールは、血小板凝集阻害活性を有することが知られている(非特許文献12)。
【0010】
13.黄杞茶に含まれるポリフェノールは、リポ蛋白質リパーゼの酵素活性を高める効果を有することが知られており(非特許文献13)、抗肥満剤として有効である。
14.茶に含まれるポリフェノールは、インフルエンザウィルスの感染を抑制する効果を有することが知られている(非特許文献14)。
15.フラボノイドの一種であるケルセチンやルチンは、ビタミンCの共存下で、相乗的にヘモグロビンの酸化を抑制することが知られている(非特許文献15)。
16.柑橘類に含まれるフラボノイドは、ビタミンCの共存下で、LDLの酸化を相乗的に抑制し、アテローム性動脈硬化症を相乗的に予防する効果を示すことが知られている(非特許文献16)。
17.ビタミンCは、ピロリ菌感染による胃癌の発症を抑制する効果を示すことが知られている(非特許文献17)。
【0011】
一方、高脂血症は、血液中のコレステロールやトリグリセリド(中性脂肪)のいずれかあるいは両方が高値になった状態であり、高脂肪食の長期摂取、家族性、加齢などが原因と考えられる。高脂血症は動脈硬化を引き起こす病因であり、高血圧症、糖尿病、肥満などの病気が重なると、狭心症や心筋梗塞、脳梗塞などの重篤な病気へとつながる。高脂血症の基準は血中総コレステロールが220mg/dL以上であるか、あるいはトリグリセリド150mg/dL以上でかつ肝臓で合成されたHDLが40mg/dL未満であることである。これらの基準により、高コレステロール血症、高トリグリセリド血症、混合型高脂血症と診断される。平成11年度の国民栄養調査(厚生労働省)によれば、高脂血症者の割合は男性では40歳代で59.6%、女性では50歳代で62.5%まで増加している。また、平成14年度の国民栄養調査(厚生労働省)によると、国民1人1日当たりの総エネルギー摂取量における脂質の占める割合が、20〜40歳代で成人の適正比率の上限である25%を上回っており、脂肪のとりすぎが指摘されている。従来知られている抗高脂血症薬は、コレステロールとトリグリセリドのいずれかあるいは両方を低下させる効果を持つ。代表的な例としてはHMG−CoA還元酵素阻害薬、プロブコール、クロフィブラート系、ニコチン酸誘導体、EPA製剤などが挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特願2003−314207号
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】Lancet, 344, 1152, 1994
【非特許文献2】Annu. Rev. Nutr., 21, 381, 2001
【非特許文献3】Agric. Biol. Chem., 57, 1879, 1998
【非特許文献4】Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 90, 2690, 1993
【非特許文献5】食品と開発, 32, 41, 1997
【非特許文献6】Chem. Toxic., 33, 1061, 1995
【非特許文献7】Biochim. Biophys. Acta., 1127, 141, 1992
【非特許文献8】日本農芸化学会誌, 61, 803, 1987
【非特許文献9】Biosci. Biotechnol. Biochem., 66, 1727, 2002
【非特許文献10】Appl. Env. Microbiol., 59, 968, 1993
【非特許文献11】食品と開発, 29, 43, 1994
【非特許文献12】Proceedings of the symposium, “Polyphenols, Wine and Health,” Bordeaux, France, 7, 1999
【非特許文献13】Bio. Pharm. Bull., 21, 517, 1998
【非特許文献14】Antiviral Res., 21, 289, 1993
【非特許文献15】Biomed. Pharmacotherapy, 57, 124, 2003
【非特許文献16】J. Medicinal Food, 4, 187, 2001) (J. Agric, Food Chem., 46, 1453, 1998
【非特許文献17】Gut, 50, 165, 2002
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の目的は、ポリフェノールおよび/またはビタミンCを含有するアセロラ処理物、その製造方法およびその使用を提供することである。
【0015】
本発明の目的はまた、抗酸化活性、動脈硬化予防活性、発ガン抑制活性、腫瘍成長抑制活性、血管新生阻害活性、抗アレルギー活性、抗炎症活性、コレステロール低下活性、抗菌活性、抗う蝕活性、口臭軽減活性、血小板凝集抑制活性、抗インフルエンザウィルス活性、胃癌抑制活性、および中性脂肪吸収低下活性を有するポリフェノールおよび/またはビタミンCを含有するアセロラ処理物およびこれらの活性を利用した新規な製剤、食品、飲料、および化粧品等を提供することである。
【0016】
本発明の目的はまた、ビタミンC安定化活性を有するアセロラポリフェノールを利用した新規な製剤、食品、飲料、および化粧品等を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明者らは、ポリフェノールおよび/またはビタミンCを含有するアセロラ処理物が、抗酸化活性、動脈硬化予防活性、発ガン抑制活性、腫瘍成長抑制活性、血管新生阻害活性、抗アレルギー活性、抗炎症活性、コレステロール低下活性、抗菌活性、抗う蝕活性、口臭軽減活性、血小板凝集抑制活性、抗インフルエンザウィルス活性、胃癌抑制活性、および中性脂肪吸収低下活性を有することを発見した。
【0018】
本発明者らはまた、アセロラポリフェノールがビタミンC安定化活性を有することを発見した。
【0019】
上記課題を解決する本発明は、以下の発明を包含する。
(1)ポリフェノールおよび/またはビタミンCを含有するアセロラ処理物。
(2)アセロラ処理物が、アセロラ搾汁、アセロラ破砕物、アセロラ抽出物またはアセロラ精製物である、上記(1)に記載アセロラ処理物。
(3)上記(1)または(2)に記載のアセロラ抽出物または処理物を有効成分として含有する抗酸化剤。
(4)上記(1)または(2)に記載のアセロラ抽出物または処理物を有効成分として含有する動脈硬化予防剤。
(5)上記(1)または(2)に記載のアセロラ抽出物または処理物を有効成分として含有する発ガン抑制剤。
【0020】
(6)上記(1)または(2)に記載のアセロラ抽出物または処理物を有効成分として含有する腫瘍成長抑制剤。
(7)上記(1)または(2)に記載のアセロラ抽出物または処理物を有効成分として含有する血管新生阻害剤。
(8)上記(1)または(2)に記載のアセロラ抽出物または処理物を有効成分として含有する抗アレルギー剤。
(9)上記(1)または(2)に記載のアセロラ抽出物または処理物を有効成分として含有する抗炎症剤。
(10)上記(1)または(2)に記載のアセロラ抽出物または処理物を有効成分として含有するコレステロール低下剤。
【0021】
(11)上記(1)または(2)に記載のアセロラ抽出物または処理物を有効成分として含有する抗菌剤。
(12)上記(1)または(2)に記載のアセロラ抽出物または処理物を有効成分として含有する抗う蝕剤。
(13)上記(1)または(2)に記載のアセロラ抽出物または処理物を有効成分として含有する口臭軽減剤。
(14)上記(1)または(2)に記載のアセロラ抽出物または処理物を有効成分として含有する血小板凝集抑制剤。
(15)上記(1)または(2)に記載のアセロラ抽出物または処理物を有効成分として含有する抗インフルエンザウィルス剤。
【0022】
(16)上記(1)または(2)に記載のアセロラ抽出物または処理物を有効成分として含有する胃癌抑制剤。
(17)アセロラポリフェノール(本明細書においてアセロラ由来のポリフェノールを意味する。以下同じ)およびビタミンCを有効成分として含有する抗酸化剤。
(18)アセロラポリフェノールを有効成分として含有するビタミンCの安定化剤。
(19)上記(1)または(2)に記載のアセロラ抽出物または処理物を有効成分として含有する中性脂肪吸収低下剤。
(20)上記(3)、(10)、(17)、(18)および(19)の何れかに記載の剤を含有する食品。
【発明の効果】
【0023】
本発明のポリフェノールおよび/またはビタミンCを含有するアセロラ処理物は、種々の疾患に対して有効な改善効果を発揮する。
【0024】
本発明のポリフェノールおよび/またはビタミンCを含有するアセロラ処理物は、抗酸化活性、動脈硬化予防活性、発ガン抑制活性、腫瘍成長抑制活性、血管新生阻害活性、抗アレルギー活性、抗炎症活性、コレステロール低下活性、抗菌活性、抗う蝕活性、口臭軽減活性、血小板凝集抑制活性、抗インフルエンザウィルス活性、胃癌抑制活性、および中性脂肪吸収低下活性を有するため、これらの活性を利用した新規な製剤、食品、飲料、および化粧品等として有用である。
【0025】
またアセロラポリフェノールはビタミンC安定化活性を有するため、この活性を利用した新規な製剤、食品、飲料、および化粧品等として有用である。
【0026】
本発明で提供される製剤の有効成分は、天然成分であるアセロラ由来のため、副作用の問題が少ない。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】実施例3および実施例4で調製したパウダーについて、ESRでスーパーオキサイドアニオンラジカルの消去活性を測定した結果を示したグラフである。
【図2】アセロラポリフェノール画分のリパーゼ阻害活性を示した図である。
【図3】血漿中トリグリセライド値の経時変化を示した図である。値は平均値±標準誤差で示した。
【図4】各群の血中総コレステロールの変化を示した図である。値は平均値±標準偏差で示した。
【図5】各群の血中LDL-コレステロールの変化を示した図である。値は平均値±標準偏差で示した。
【図6】各群の体重100g当たりの肝臓重量を示した図である。値は平均値±標準偏差で示した。
【図7】各群の肝臓1g当たりの総コレステロール量を示した図である。値は平均値±標準偏差で示した。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明は、ポリフェノールおよび/またはビタミンCを含有するアセロラ処理物に関する。
【0029】
本発明で用いるアセロラの生産地や品種は特に限定されないが、生産地としては、例えば沖縄、ブラジルが挙げられる。
【0030】
また、アセロラ処理物とは、アセロラ果実を搾汁したアセロラ搾汁、アセロラ果実を破砕、粉砕等したアセロラ破砕物、アセロラ果実を抽出したアセロラ抽出物、またはアセロラ果実を粉末化処理したり、精製工程を行ったりして得られるアセロラ精製物等を指すが、これらに限定されるわけではない。また、果実とは、可食部と種部を含んだ果実全体を指す。
【0031】
アセロラ搾汁は、アセロラの果実を常法に従って搾って回収することにより得ることができる。
【0032】
アセロラ破砕物は、アセロラの果実の可食部と種部、または種部を取り除いた可食部を、ミキサー等で破砕・粉砕することにより得ることができる。また、破砕物に抽出処理、凍結乾燥等の処理を施すこともできる。
【0033】
アセロラ抽出物は、アセロラの果実を、水、有機溶媒等により抽出することにより得ることができる。溶媒として、特に水が好ましく、純水、精製水等を用いることができる。親水性有機溶媒を用いる場合は、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、グリセリン、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール等のアルコール、アセトン、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、1,4-ジオキサン、ピリジン、ジメチルスルホキシド、N,N-ジメチルホルムアミド、酢酸等の公知の有機溶媒から選択することができる。特にメチルアルコールを用いて抽出することが好ましい。上記の親水性有機溶媒、特にメチルアルコールおよびエチルアルコールは、水との混合物として用いることが好ましい。
【0034】
抽出条件は特に限定されないが、抽出溶媒の使用量は、通常、果実100重量部に対して、100重量部〜1000重量部程度、好ましくは200重量部〜500重量部程度である。抽出の温度範囲は、効率良く抽出を行うという観点から、0℃〜120℃、好ましくは20℃〜50℃である。抽出時間は1時間〜24時間程度、好ましくは1時間〜2時間程度である。
【0035】
アセロラ精製物は、アセロラ搾汁やアセロラ抽出物等に、必要に応じて精製処理等を施したものを指す。例えば、アセロラ抽出物について、抽出後、ろ過あるいは遠心分離により抽出残渣を除いたり、また、さらに減圧濃縮等することにより、所望の濃度にまで適宜濃縮することにより得ることができる。なお、アセロラ抽出物については、さらに、凍結乾燥、噴霧乾燥等によって乾燥させることにより、粉末状に調製することもできる。その際、賦形剤等と混合して乾燥させてもよい。また、アセロラ抽出物には糖分や有機酸が非常に多く含まれるため、それらを除く精製工程を行うことも好ましい。精製処理の方法として、溶媒分画または、カラム分画、順相又は逆相クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、ゲルろ過等が挙げられる。これらの方法を組み合わせて用いることもできる。
【0036】
アセロラ精製物は、アセロラポリフェノールを比較的高濃度で含有するものであることが好ましい。アセロラポリフェノールとしては具体的には、シアニジン−3−ラムノシドとペラルゴニジン−3−ラムノシド等のアントシアニン系色素、クエルシトリン(ケルセチン−3−ラムノシド)、イソクエルシトリン(ケルセチン−3−グルコシド)、ハイペロサイド(ケルセチン−3−ガラクトシド)等のケルセチン配糖体、アスチルビンが挙げられる。これらのポリフェノール類は複数のポリフェノール化合物からなる混合物として提供されても、個々のポリフェノール化合物が単離された形態で提供されてもよい。ポリフェノール化合物を高濃度で精製する方法は特に限定されないが、例えばHPLC、合成吸着剤クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、ゲルろ過等があり、特に合成吸着剤クロマトグラフィーが好ましい。この場合、溶出条件としては、例えば10〜50%エタノール溶液を用いて溶出することが好ましい。またさらに、アントシアニン色素は酸性条件下で安定化するため、この溶出液に塩酸又は酢酸などを加え酸性にすることが特に好ましい。
【0037】
アセロラ搾汁やアセロラ抽出物等から得られたアセロラポリフェノール画分もまた本発明に好適に使用される。ここでアセロラポリフェノール画分とはアセロラ搾汁やアセロラ抽出物等から上述の各種クロマトグラフィーにより上述の溶出条件で溶出された、ポリフェノール化合物を含有する画分を指す。アセロラポリフェノール画分には、溶出液、その濃縮物およびその乾燥物が包含される。
【0038】
この他、アセロラのポリフェノールおよびビタミンCを常法に従って単離して用いることもできる。
【0039】
このようにして得られたポリフェノールおよび/またはビタミンCを含有するアセロラ処理物は、抗酸化活性、動脈硬化予防活性、発ガン抑制活性、腫瘍成長抑制活性、血管新生阻害活性、抗アレルギー活性、抗炎症活性、コレステロール低下活性、抗菌活性、抗う蝕活性、口臭軽減活性、血小板凝集抑制活性、抗インフルエンザウィルス活性、胃癌抑制活性、および中性脂肪吸収低下活性を有する。
【0040】
本発明の好ましい形態の一つに、コレステロール低下剤又は中性脂肪吸収低下剤としての形態がある。これらの形態に用いられるアセロラ処理物は少なくともポリフェノールを含んでいることが好ましい。コレステロール低下剤および中性脂肪吸収低下剤は、高脂血症の予防又は治療剤として有用である。また中性脂肪吸収低下剤は、体脂肪を減少させる効果又は少ないレベルに維持する効果も有する。
【0041】
血中のコレステロールは、肝臓で合成されるものと食事から摂取するものがあり、肝臓で合成されたものは超低比重リポタンパク質(VLDL)に含まれて血中に放出され、低比重リポタンパク質(LDL)になると細胞の受容体を介して取り込まれる。また、肝細胞のコレステロール含有量が増加すると、細胞のLDL取り込みが抑制(受容体の合成が抑制)され、その結果として血中のコレステロールが上昇する。このことから、肝臓中コレステロール量の低下効果は、血中コレステロール値の抑制につながる。図7には、アセロラ処理物が肝臓中のコレステロール量を低下させる効果を奏することが示されている。
【0042】
一方、食事でとった中性脂肪は、口の中や小腸で消化、分解されてから小腸壁を通過し、再び中性脂肪となる。そして、血液中を運搬され、筋肉や臓器など全身の組織に行き渡る。このときエネルギーとして使われなかった余剰分は、脂肪組織に貯蔵されたり、肝臓に取り込まれたりする。ここで、体脂肪とは体についている脂肪組織の総称であるから、中性脂肪の吸収抑制は体脂肪の低下につながる。
【0043】
本発明者らはまた、アセロラポリフェノールが、ビタミンCの安定化剤として特に優れていることを見出した。アセロラポリフェノールとビタミンCとは、それぞれ単独でも抗酸化剤として機能すると考えられるが、両者が組み合わされた場合には、ビタミンCが安定化されることから、相乗的な抗酸化作用が発揮されるため好ましい。アセロラポリフェノールとビタミンCとの比は特に限定されないが、例えば重量比で1:1000〜10:1、より好ましくは1:50〜1:1である。本発明のこの形態において、アセロラポリフェノールとビタミンCとは上記のアセロラ処理物中に一緒に含まれたものであってもよく、それぞれ別個に入手されたアセロラポリフェノールとビタミンCとを混合したものであってもよい。ビタミンCはアセロラに由来するものには限定されず、天然又は合成のビタミンC(アスコルビン酸)が使用できる。
【0044】
本発明のポリフェノールおよび/またはビタミンCを含有するアセロラ処理物を公知の医薬用担体と組み合わせて製剤化し、例えば抗酸化剤、動脈硬化予防剤、発ガン抑制剤、腫瘍成長抑制剤、血管新生阻害剤、抗アレルギー剤、抗炎症剤、コレステロール低下剤、抗菌剤、抗う蝕剤、口臭軽減剤、血小板凝集抑制剤、抗インフルエンザウィルス剤、胃癌抑制剤および中性脂肪吸収低下剤として投与することができる。
【0045】
投与形態としては、特に制限はなく、必要に応じ適宜選択されるが、一般には錠剤、カプセル剤、顆粒剤、細粒剤、散剤、丸剤、液剤、シロップ剤、懸濁剤、乳剤、エリキシル剤等の経口剤、又は注射剤、点滴剤、坐剤、吸入剤、経皮吸収剤、経粘膜吸収剤、経鼻剤、経腸剤、貼付剤、軟膏剤等の非経口剤として、症状に応じて単独で、または組み合わせて使用される。この製剤の添加量は、添加対象物の種類、使用形態等の諸条件によって異なるが、通常、添加対象物全体に対し0.01質量%〜20質量%の範囲で用いることが好ましい。
【0046】
製剤の投与量は、患者の年令、体重、疾患の程度、投与経路により異なるが、経口投与では、アセロラの処理物乾燥粉末として、通常1日10mg〜3000mgであり、投与回数は、通常、経口投与では1日1回〜3回である。
【0047】
経口剤は、例えばデンプン、乳糖、白糖、マンニット、カルボキシメチルセルロース、コーンスターチ、無機塩類等の賦形剤を用いて常法に従って製造される。
【0048】
この種の製剤には、適宜前記賦形剤の他に、結合剤、崩壊剤、界面活性剤、滑沢剤、流動性促進剤、矯味剤、着色剤、香料等を使用することができる。
【0049】
結合剤の具体例としては、結晶セルロース、結晶セルロース・カルメロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート、カルメロースナトリウム、エチルセルロース、カルボキシメチルエチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、コムギデンプン、コメデンプン、トウモロコシデンプン、バレイショデンプン、デキストリン、アルファー化デンプン、部分アルファー化デンプン、ヒドロキシプロピルスターチ、プルラン、ポリビニルピロリドン、アミノアルキルメタクリレートコポリマーE、アミノアルキルメタクリレートコポリマーRS、メタクリル酸コポリマーL、メタクリル酸コポリマー、ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート、ポリビニルアルコール、アラビアゴム、アラビアゴム末、寒天、ゼラチン、白色セラック、トラガント、精製白糖、マクロゴールが挙げられる。
【0050】
崩壊剤の具体例としては、結晶セルロース、メチルセルロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、カルメロース、カルメロースカルシウム、カルメロースナトリウム、クロスカルメロースナトリウム、コムギデンプン、コメデンプン、トウモロコシデンプン、バレイショデンプン、部分アルファー化デンプン、ヒドロキシプロピルスターチ、カルボキシメチルスターチナトリウム、トラガントが挙げられる。
【0051】
界面活性剤の具体例としては、大豆レシチン、ショ糖脂肪酸エステル、ステアリン酸ポリオキシル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、セスキオレイン酸ソルビタン、トリオレイン酸ソルビタン、モノステアリン酸ソルビタン、モノパルミチン酸ソルビタン、モノラウリン酸ソルビタン、ポリソルベート、モノステアリン酸グリセリン、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウロマクロゴールが挙げられる。
【0052】
滑沢剤の具体例としては、コムギデンプン、コメデンプン、トウモロコシデンプン、ステアリン酸、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、含水二酸化ケイ素、軽質無水ケイ酸、合成ケイ酸アルミニウム、乾燥水酸化アルミニウムゲル、タルク、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、リン酸水素カルシウム、無水リン酸水素カルシウム、ショ糖脂肪酸エステル、ロウ類、水素添加植物油、ポリエチレングリコールが挙げられる。
【0053】
流動性促進剤の具体例としては、含水二酸化ケイ素、軽質無水ケイ酸、乾燥水酸化アルミニウムゲル、合成ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウムが挙げられる。
【0054】
また、このような製剤に、液剤、シロップ剤、懸濁剤、乳剤、エリキシル剤として投与する場合には、矯味矯臭剤、着色剤を含有してもよい。
【0055】
ビタミンC安定化剤としてのアセロラポリフェノール、ならびに抗酸化剤としてのアセロラポリフェノールおよびビタミンCもまた、上記と同様に製剤化し、投与することができる。
【0056】
本発明のポリフェノールおよび/またはビタミンCを含有するアセロラ処理物はまた、常法に従って、固形、半固形、液体等の形態の食品に添加することができる。限定されるわけではないが、固形食品としては、ビスケット等のブロック菓子類、粉末スープ等の粉末状食品等を挙げることができる。また、アセロラの抽出物乾燥粉末をそのまま食品として使用することもできる。半固形食品としては、カプセル、ゼリー等を挙げることができる。飲料としては、例えば果汁飲料、清涼飲料、アルコール飲料等を挙げることができる。また、摂取時に水等の液体担体を用いて希釈する粉末飲料の形態としてもよい。さらに、本発明のポリフェノールおよび/またはビタミンCを含有するアセロラ処理物を食品に添加して、いわゆる特定保健用食品(例えば、糖尿病・糖尿病合併症予防食品)とすることもできる。
【0057】
また、このような食品に、必要に応じて常法に従って、安定化剤、pH調整剤、糖類、甘味料、各種ビタミン類、ミネラル類、抗酸化剤、賦形剤、可溶化剤、結合剤、滑沢剤、懸濁剤、湿潤剤、皮膜形成物質、矯味剤、矯臭剤、着色剤、香料、保存料等を添加することができる。
【0058】
ビタミンC安定化剤としてのアセロラポリフェノール、ならびに抗酸化剤としてのアセロラポリフェノールおよびビタミンCもまた、上記と同様に食品の形態で使用することができる。
【0059】
本発明のポリフェノールおよび/またはビタミンCを含有するアセロラ処理物はまた、常法に従って、化粧水、美容液、乳液等の化粧品や、ファンデーション、口紅等のメイクアップ化粧品に添加することもできる。ビタミンC安定化剤としてのアセロラポリフェノール、ならびに抗酸化剤としてのアセロラポリフェノールおよびビタミンCについても同様である。
【0060】
本発明の製剤の製造原料であるアセロラは現在までに製剤、食品、飲料、化粧品等に供されており、安全性は確立されている。
【0061】
以下に本発明の好適な実施例を示すが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0062】
実施例1
ブラジル産のアセロラ果実100gを200mlの80%エタノールで抽出を行い、6000rpmで5分間遠心分離し、ろ過した。この操作を2回行い、上清をエバポレーターで濃縮した。ここで得られたサンプルに賦形剤等を添加しパウダー化することも可能であったが、この状態では糖分が40〜60%と非常に多く含まれていたため、酵母を用いて糖分を資化し、ポリフェノール含量を高めることを行った。具体的には、エバポレーターで濃縮したサンプルを、Brix値が20〜30%になるように蒸留水で再溶解し、2%の酵母(Saccharomyces cerevisiae)を添加し、32℃で20時間発酵した。発酵後、遠心分離、ろ過を行い、上清を凍結乾燥しパウダー4.08gを得た。このパウダーを成分分析した結果、グルコース2.4%、フルクトース13.7%、ビタミンC35.2%、総ポリフェノール1.72%であった。
【0063】
実施例2
ブラジル産のアセロラ果実を搾汁し、果汁を400ml作製した。この果汁をBrix値が20〜30%になるようにエバポレーターで濃縮し、得られた濃縮果汁に2%の酵母(Saccharomyces cerevisiae)を添加し、32℃で20時間発酵した。発酵後、遠心分離、ろ過を行い、上清を凍結乾燥しパウダー15.9gを得た。このパウダーを成分分析した結果、グルコース0%、フルクトース0%、ビタミンC38.6%、総ポリフェノール0.71%であった。
【0064】
実施例3
ブラジル産のアセロラ果実100gを搾汁し、得られた残渣を300mlの蒸留水で2回洗浄した。洗浄後、遠心分離を行い、32gの残渣を回収した。得られた残渣に蒸留水を320ml添加し、細かく粉砕後、121℃で1時間加熱加圧抽出を行った。抽出後、氷冷し、遠心分離、ろ過後、上清を凍結乾燥しパウダー475mgのパウダーを得た。このパウダーを成分分析した結果、グルコース0%、フルクトース0%、ビタミンC0.005%、総ポリフェノール6.8%であった。
【0065】
実施例4
ブラジル産のアセロラ果実1654gから種子を取り除き、残りの可食部をホモジナイズし3倍量のメタノールを添加し1時間抽出した。この操作を2回行い、遠心・ろ過後、凍結乾燥し84.4gを得た。このサンプルでは糖分を約40〜60%、ビタミンCを約10%含まれるため、さらにポリフェノール含量を高めるために、カラム処理を行い、糖分やビタミンCを除去した。具体的には、得られたパウダーを再度蒸留水に溶解し、この液をC18カートリッジカラム(Waters Sep-Pak Vac 35cc C18カートリッジカラム)に供し、蒸留水で洗浄後、0.2% TFA/メタノール溶液で溶出した。その後、凍結乾燥を行いパウダー2.79gを得た。このパウダーを成分分析した結果、グルコース0%、フルクトース0%、ビタミンC0%、総ポリフェノール38.6%であった。
【0066】
実施例5
ブラジル産のアセロラ果実100gを搾汁し、果汁と残渣を得た。残渣は蒸留水で洗浄し、この洗浄液と果汁を混ぜ合わせて凍結乾燥した。得られたサンプルを再度蒸留水に溶解し、この溶解液を合成吸着樹脂(アンバーライト XAD7HP)に供し、蒸留水で洗浄後、0.2% TFA/メタノール溶液で溶出した。その後、凍結乾燥を行いパウダー120mgを得た。このパウダーを成分分析した結果、グルコース0%、フルクトース0%、ビタミンC0%、総ポリフェノール40%であった。
【0067】
実施例6
次に、アセロラポリフェノール含有物の抗酸化活性の評価を行った。上述した実施例のうち、ビタミンCの影響がなく、ポリフェノール自体の活性が評価できる実施例3と実施例4で調製したパウダーについて抗酸化活性を評価した。
【0068】
[抗酸化活性の評価]
抗酸化活性は、キサンチン-キサンチンオキシダーゼ反応系によるスーパーオキシドアニオンラジカルの消去活性で評価し、ラジカルの検出はESRを用いた。
【0069】
DMPO 15μl、50mM リン酸緩衝液(pH7.4)50μl、サンプル50μl、2mMヒポキサンチン/リン酸緩衝液溶液50μl、0.4unit/mlキサンチンオキシダーゼ(XOD)/リン酸緩衝液50μlを混合し、XOD添加後45秒後にESR測定を行った。また、実施例3および実施例4のサンプルはいずれも濃度を0.5mg/mlに揃えて行った。
【0070】
なお、ESR装置は日本電子社製ESR(JES-FR30)を用い、ESRによるスペクトル解析は以下の条件で行った。
磁場掃引幅:335.9±5mT
磁場変調:0.1mT
増幅率:100
掃引時間:2分、応答時間:0.1秒
測定温度:室温
【0071】
測定結果を図1に示した。図1より、実施例3および実施例4で調製したパウダーは、いずれも強い抗酸化活性を示すことが確認された。
【0072】
実施例7
実施例1で調製したパウダー20g、乳糖60g、デンプン15g、ステアリン酸マグネシウム5gを均一に混合し、1錠200mgの錠剤を製造した。この錠剤は、1錠あたりアセロラポリフェノール含有物を40mg含有する。実施例2から実施例5で調製したパウダーについても、同様に錠剤を製造した。
【0073】
この製剤の使用により、成人に対して1日約120mg〜480mg程度のアセロラポリフェノール含有物を投与することができる。
【0074】
実施例8
実施例1で調製したパウダー50g、乳糖40g、デンプン10gを均一に混合し、乾燥固化させた後、散剤及び顆粒剤を製造した。この製剤は、アセロラポリフェノール含有物を50%含有していた。実施例2から実施例5で調製したパウダーについても、同様に散剤及び顆粒剤を製造した。
【0075】
この製剤の使用により、成人に対して1日約150mg〜450mg程度のアセロラポリフェノール含有物を投与することができる。
【0076】
実施例9
アセロラビタミンC及びアセロラポリフェノールの調製
5200gのアセロラ果実を精製水3500gを添加しながらワーリングブレンダーにより、果実粉砕物を調製した。この粉砕物に40%重量となるようにエタノールを添加し、一晩、攪拌抽出し、遠心分離により上清を回収した後、フィルターろ過により清明な抽出液を回収した。この抽出液を減圧蒸留濃縮により、エタノールを除去し、アセロラ果実抽出濃縮液を得た。
【0077】
この濃縮液を、合成吸着剤であるアンバーライトXAD(品名XAD7HP、オルガノ株式会社)カラムに負荷しアセロラポリフェノールを樹脂に吸着させた。この時、カラムを素通りしたアセロラ果実抽出濃縮液をアセロラビタミンC溶液とした。樹脂に吸着したアセロラポリフェノールは、エタノールにより溶出させた。この溶出液は、減圧蒸留器により乾固させアセロラポリフェノール粉末として10.3gを得た。この粉末中のポリフェノール含量をカテキンを標準物質としてフォーリンデニス法により測定したところ85.9%であった。
【0078】
実施例10
アセロラポリフェノールを添加したアセロラビタミンCの安定性試験
アスコルビン酸として0.1%最終濃度になるように実施例1で調製したアセロラビタミンC溶液をpH3.6のクエン酸-リン酸緩衝液で希釈し、ここに実施例9で調製したアセロラポリフェノール粉末を最終ポリフェノール濃度として0.004%、0.01%及び0.05%となるように溶解させた。アセロラポリフェノールを添加しない検体を含めて、全てを0.2μmのフィルターろ過し、40℃で保存試験を実施し、0、1、4、5、8日目のアスコルビン酸濃度をインドフェノール法により測定した。その結果をアスコルビン酸残存率として表1に示す。
【0079】
【表1】

【0080】
表1の結果より、保存1日目ではアセロラポリフェノール添加群と無添加と比較しても残存率に大きな違いは認められなかったが、保存8日目ではポリフェノール添加濃度が高いほどアスコルビン酸残存率が高いことから、アセロラビタミンCを含む抗酸化剤にアセロラポリフェノールを添加することが有効であることが確認された。
【0081】
実施例11
アセロラポリフェノールを添加したアスコルビン酸試薬の安定性試験
アスコルビン酸として0.1%最終濃度になるようにアスコルビン酸(試薬特級、和光純薬製)水溶液をpH3.6のクエン酸-リン酸緩衝液で希釈し、ここに実施例9で調製したアセロラポリフェノール粉末を最終ポリフェノール濃度として0.004%、0.01%及び0.05%となるように溶解させた。アセロラポリフェノールを添加しない検体を含めて、全てを0.2μmのフィルターろ過し、40℃で保存試験を実施し、0、1、4、5、8日目のアスコルビン酸濃度をインドフェノール法により測定した。その結果をアスコルビン酸残存率として表2に示す。
【0082】
【表2】

【0083】
表2の結果より、保存1日目ではアセロラポリフェノール添加群と無添加を比較しても残存率に大きな違いは認められなかったが、保存8日目ではポリフェノール添加濃度が高いほどアスコルビン酸残存率が高いことから、アセロラビタミンCを含む抗酸化剤にアセロラポリフェノールを添加することが有効であることが確認された。
【0084】
実施例12
1)アセロラポリフェノール画分の調製
アセロラ果実から種子を取り除き、残りの可食部をホモジナイズし3倍量のメタノールを添加し1時間抽出した。この操作を2回行い、遠心・ろ過後、凍結乾燥し、再度蒸留水に溶解した。この液をC18カートリッジカラム(BAKERBOND speTM C18 Disposableカラム)に供し、蒸留水で洗浄後、0.2% TFA/メタノール溶液で溶出し、濃縮乾固して抽出物を得た。ここで得られた抽出物をアセロラポリフェノール画分(AP画分)とした。AP画分のポリフェノール含量をFolin-Denis法により測定したところ、ポリフェノール含量は25%であった。
【0085】
2)AP画分のリパーゼ阻害活性
AP画分のリパーゼ阻害活性を測定した。ブタ膵リパーゼ(SIGMA)50μl(0.5mg/ml)、検体50μl(1.0mg/ml、0.5mg/ml)、1.25mM 4-methylumbelliferyl oleate (Fulka)100μlを混合し、37°Cにて20分間インキュベート後、0.1N塩酸1mlを加えて反応を停止させた。さらに、0.1Mクエン酸三ナトリウム2mlを加えてpH調製を行った後、励起波長320nm、蛍光波長450nmにおいて蛍光を測定した。
【0086】
図2から明らかなようにAP画分はリパーゼ阻害活性を示した。
【0087】
3)動物試験(単回投与)
7週齢のICR雄マウス(日本クレア)を用いて、AP画分投与群5匹と対照群5匹の2群に分けて脂質負荷後の血漿中トリグリセライド値を調べた。体重約30gのマウスを一晩絶食させた後、綿実油(2.5ml/kg体重の量)を投与した。次に、AP画分投与群には生理食塩水で溶解したAP画分(250mg/kg体重の量)を胃内ゾンデで投与し、対照群には生理食塩水を投与した。1、2、4および6時間後に尾静脈より採血し、血漿中トリグリセライド値を測定した。血漿中トリグリセライド値の測定にはトリグリセライドEテストワコー(和光純薬)を用いた。その結果、AP画分投与群は対照群に比べトリグリセライド値の上昇が抑えられる傾向が認められた(図3)。
【0088】
4)動物試験(連続投与)
7週齢のCD(SD)/IGS雄ラット(日本チャールス・リバー)を用いて、AP画分投与群6匹、対照群6匹および正常群6匹の3群に分けて脂質負荷試験を行った。AP画分投与群と対照群は綿実油0.5ml/bodyを毎日1回14日間連続して投与した。AP画分投与群には綿実油投与後、直ちに、蒸留水に溶解したAP画分(250mg/kg体重の量)を胃内ゾンデで投与した。対照群には蒸留水を投与した。なお、正常群については、綿実油の投与は行わず蒸留水のみを投与した。0、7、14日目の綿実油負荷前に眼窩静脈より採血し、血漿中の総コレステロールおよびLDL-コレステロールを測定した。各測定結果は0日目の測定結果を100とした変化率により評価した。
【0089】
また、試験終了後、18時間絶食させてネンブタール(40mg/kg)麻酔下にて開腹し、肉眼的観察を行った。次に、肝臓を摘出して、重量を測定後、肝臓中の総コレステロール量を測定した。
【0090】
AP画分投与群の7日目および14日目の血漿中総コレステロールは正常群と同様の値を示し、対照群よりも有意に低かった(図4)。LDL-コレステロールについても同様であった(図5)。解剖時における肉眼的観察では、いずれの群も肝臓を含む主要臓器に異常部位は観察されなかった。肝臓重量については正常群とAP画分投与群は対照群に対して若干低い値を示したが、有意差はなかった(図6)。肝臓中の総コレステロール量の平均値はAP画分投与群で最も低い値を示した(図7)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アセロラポリフェノールを有効成分として含有するコレステロール低下剤。
【請求項2】
アセロラポリフェノールが、アセロラ搾汁又はアセロラ抽出物から得られたポリフェノール化合物含有画分である、請求項1に記載のコレステロール低下剤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−52028(P2011−52028A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−283450(P2010−283450)
【出願日】平成22年12月20日(2010.12.20)
【分割の表示】特願2004−320679(P2004−320679)の分割
【原出願日】平成16年11月4日(2004.11.4)
【出願人】(505126610)株式会社ニチレイフーズ (71)
【出願人】(505145149)株式会社ニチレイバイオサイエンス (7)
【Fターム(参考)】