説明

ポリフェノール類活性炭結合体

【課題】本発明は、水中もしくはアルカリ水溶液中でもポリフェノール類が溶出されにくく、消臭性に優れたポリフェノール類と活性炭の結合体を得ることを課題とする。
【解決手段】(A)非重合体カテキン類60〜98重量%、(B)ポリフェノール類、(C)カフェイン及び(D)カリウムを含有し、非重合体カテキン類に含まれる非エピ体カテキン類(C)及びエピ体カテキン類(D)の割合が(C)/(D)=0.05〜2.0である緑茶抽出物と、(1)ベンゼン吸着性能が20%〜60%以上、(2)細孔半径の最頻値が5Å〜30Åの範囲、(3)細孔半径が30Å以下の細孔の占める累積細孔容積が細孔半径50Å以下の細孔の占める累積細孔容積の80%以上及び(4)細孔半径8〜20Åの細孔の占める累積細孔容積が細孔半径50Å以下の細孔の占める累積細孔容積の50%〜90%の範囲である活性炭を組み合わせ結合させることにより課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は消臭性に優れたポリフェノール類と活性炭の結合体に関する。
【背景技術】
【0002】
活性炭は特定の物質を選択的に分離、除去、精製するなどの目的で吸着効率を高めるために化学的または物理的な処理(活性化、賦活)を施した多孔質の炭素を主な成分とする物質であり、従来より特定の臭いの吸着、脱色等の目的で広く利用されている。活性炭は非極性分子に対する選択的吸着性が大きく、アンモニアなどの極性分子である悪臭物質の吸着には十分な効果を奏することができないことが経験されており、特に水中でのアンモニアに対する消臭効果はほとんど無い。
【0003】
一方、緑茶抽出物に含有されるカテキン類を代表とするポリフェノール類は抗菌機能や殺菌効果を発揮する他、消臭機能を有しているが、固形状態ではそれらの機能を発揮することが難しく、その活用範囲や用途などが制限されていた。
これらの問題点を解決するために、活性炭と植物ポリフェノールからなる組成物(例えば、特許文献1参照。)や脱臭剤および脱臭具(例えば、特許文献2参照。)が提案されている。しかし、活性炭やポリフェノール類のスクリーニングが充分ではなく、活性炭へのポリフェノール類の吸着性能の低さや、活性炭からのポリフェノール類の溶出があり、用途が限定され、充分な機能を発揮することができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特願平10−116614号公報
【特許文献2】特願平7−124469号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
これまで茶抽出物を製造する工程で活性炭を使用されることがあったが、液相用の活性炭を使用することが大半であり、水溶液中でポリフェノール類以外の不純物や臭気等を取り除く目的が主であった。
またこれらの工程で、ポリフェノール類も活性炭に少量吸着されるが、その活性炭を乾燥後、再度、水にそれらを適当量添加すると、活性炭に吸着されていたポリフェノール類が溶出される。さらに、アルカリ水溶液中ではポリフェノール類の溶出が顕著である。
機能性に優れたポリフェノール類と活性炭の利用を試みた場合、通常のポリフェノール類と活性炭を混合させただけでは、抗菌性などを期待し水中に添加した場合、ポリフェノール類の溶出が課題となる。水中だけでなく、固形状の形態で使用する場合においても、空気中の湿気によって、活性炭からポリフェノール類の溶出が課題となる。工業的に応用する場合においても、例えば不織布に添着させる場合、水などの溶媒に分散させ接着剤などを用いて添着させるが、単なる混合体であれば、ポリフェノール類が溶出し問題となる。また、活性炭のみでは、揮発性有機化合物の一部やアンモニアについては、効果が充分に認められないことが現状であった。
よって、本発明は、優れた機能性をもつポリフェノール類と活性炭が結合した、水中もしくはアルカリ水溶液中でもポリフェノール類が溶出されることのない、消臭効果に優れたポリフェノール類と活性炭の結合体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、ポリフェノール類および非重合体カテキン類の組成および、種々ある活性炭について検討した結果、次の成分(A)、(B)、(C)及び(D)、
(A)非重合体カテキン類
(B)ポリフェノール類
(C)カフェイン
(D)カリウム
を含有し、当該成分(A)、(B)、(C)及び(D)が次の(イ)、(ロ)及び(ハ)、
(イ)(A)/(B)=0.61〜0.99
(ロ)(C)/(B)=0.0001〜0.1
(ハ)(D)/(B)=0.0001〜0.03
を満たしており、非重合体カテキン類に含まれる非エピ体カテキン類(E)およびエピ体カテキン類(F)の割合が(E)/(F)=0.05〜2.0で、非重合カテキン類の濃度が60.0〜98.0重量%である茶抽出物と、(1)ベンゼン吸着性能が20%〜60%以上であり、(2)細孔半径の最頻値が5Å〜30Åの範囲であり、(3)細孔半径が30Å以下の細孔の占める累積細孔容積が細孔半径50Å以下の細孔の占める累積細孔容積の80%以上であり、(4)細孔半径8〜20Åの細孔の占める累積細孔容積が細孔半径50Å以下の細孔の占める累積細孔容積の50%〜90%の範囲である活性炭からなることを特徴とするポリフェノール類活性炭結合体が上記課題を解決することを見出した。
【発明の効果】
【0007】
本発明のポリフェノール類と活性炭の結合体は、これまでのポリフェノール類活性炭混合物では、水中およびアルカリ水溶液中にて溶出されたポリフェノール類が活性炭から溶出されず、消臭効果に優れている。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明におけるポリフェノール類は光合成を行う植物のほとんどに含有されているものであり、特に限定するものではないがフラボン、フラボノール、フラバノン、イソフラボン、アントシアニン、フラバノール等のフラボノイド類、その他の非フラボノイド類、及びこれらの誘導体、重合体等が挙げられる。
ポリフェノール類の具体例としては、カテキン、エピカテキン、ガロカテキン、カテキンガレート、エピカテキンガレート、ガロカテキンガレート、エピガロカテキンガレート、エピガロカテキン、タンニン酸、ガロタンニン、エラジタンニン、カフェー酸、ジヒドロカフェー酸、クロロゲン酸、イソクロロゲン酸、ゲンチシン酸、ホモゲンチシン酸、没食子酸、エラグ酸、ロズマリン酸、ルチン、クエルセチン、クエルセタギン、クエルセタゲチン、ゴシペチン、アントシアニン、ロイコアントシアニン、プロアントシアニジン、エノシアニン、及びこれらの誘導体、重合体、立体異性体から選ばれる1種又は2種以上の混合物が挙げられる。
【0009】
茶より得られるポリフェノール類としては、(+)−カテキン、(−)−ガロカテキン、(−)−ガロカテキンガレート、(−)−エピカテキン、(−)−エピカテキンガレート、(−)−エピガロカテキン、(−)−エピガロカテキンガレート、遊離型テアフラビン、テアフラビンモノガレートA、テアフラビンモノガレートB、テアフラビンジガレート等があり、これらの誘導体、重合体、立体異性体から選ばれる1種又は2種以上の混合物が挙げられる。
【0010】
非重合体カテキン類とは、カテキン、ガロカテキン、カテキンガレート及びガロカテキンガレートなどの非エピ体カテキン類及びエピカテキン、エピガロカテキン、エピカテキンガレート及びエピガロカテキンガレート等のエピ体カテキン類をあわせての総称であり、ポリフェノール類に含まれる。
本発明における茶抽出物とは、茶樹(Camellia sinensis var. sinensisCamellia sinensis varassamica、またはこれらの雑種)の葉や茎から直接、或いはこれらを一次原料として製造された茶葉(例えば、煎茶、玉露、かぶせ茶、番茶、釜炒り緑茶等の不発酵茶、不発酵茶に花の香りを移したジャスミン茶等の花茶、白茶等の弱発酵茶、烏龍茶等の半発酵茶、紅茶等の発酵茶等)から、熱水又は水溶性有機溶媒により抽出された抽出液を、濃縮および/または乾燥させたものであって、その中でも緑茶等の不醗酵茶から、熱水又は水溶性溶媒により抽出された抽出液が望ましい。また市販のサンフェノン(太陽化学株式会社製)、テアフラン(株式会社伊藤園製)、ポリフェノン(三井農林株式会社製)等、ポリフェノール含有素材も使用できる。
【0011】
本発明のポリフェノール類活性炭結合体の原料として用いる茶抽出物の、非重合体カテキン類の濃度は、消臭効果の観点から、60.0〜98.0重量%が好ましく、さらに70.0〜95.0重量%が好ましく、特に75.0〜90.0重量%が好ましい。
さらに(B)ポリフェノール類に対する(A)非重合体カテキン類の割合は、好ましくは(A)/(B)=0.61〜0.99であり、さらに好ましくは(A)/(B)=0.75〜0.99であり、消臭効果の観点から、最も好ましいのは(A)/(B)=0.80〜0.95である。
【0012】
本発明のポリフェノール類活性炭結合体の原料として用いる茶抽出物の(B)ポリフェノール類に対する(C)カフェインの割合は、カテキン類の活性炭への結合性の観点から、(C)/(B)=0〜0.1が好ましく、さらに好ましくは(C)/(B)=0〜0.08である。さらに(B)ポリフェノール類に対する(D)カリウムの割合は、カテキン類の活性炭への結合性の観点から、(D)/(B)=0〜0.03が好ましく、さらに好ましくは(D)/(B)=0〜0.01である。
効率的にポリフェノール類を活性炭に結合させるために、非重合体カテキン類の非エピ体カテキン類(E)およびエピ体カテキン類(F)の割合が(E)/(F)=0.05〜2.0であることが好ましく、さらに好ましくは(E)/(F)=0.05〜1.0の範囲であり、最も好ましくは(E)/(F)=0.05〜0.8の範囲である。
【0013】
本発明において用いられる活性炭としては、形状は特に限定するものではないが、粒状でも粉末状でもスラリー状でも繊維状等でもよいが、取り扱いやポリフェノール類との結合性の面から粒状が好ましい。
使用する活性炭の主たる使用用途は液相用や気相用は特に限定するものではないが、ポリフェノール類の結合性の面から好ましくは一般に悪臭ガス用や臭気の除去、空気清浄などの気相用として使用されるものが好ましい。
活性炭のベンゼン吸着性能の測定方法は、公知の方法を用いればよく、例えば110〜120℃で3時間乾燥し、デシケーター中で放冷した試料約10gをU字管に精秤し、20℃の恒温槽中で、20℃のベンゼン中に乾燥空気を180ml/分の速さで送り10倍の乾燥空気で薄めたベンゼン(分圧7mmHg)を通じて重量増加が終了した後、次式でベンゼン吸着性能を算出する。ベンゼン吸着性能(%)={(増加重量)/(試料重量)}×100(%)。
【0014】
本発明において用いられる(1)活性炭のベンゼン吸着性能は好ましくは20%〜60%であり、より好ましくは30〜40%である。20%未満ではポリフェノール類の活性炭への結合力が弱くなり、アルカリ水溶液でポリフェノール類が溶出することがあり好ましくない。60%以上ではポリフェノール類と活性炭の結合力が弱くなる。これは、ベンゼン吸着性能は活性炭の吸着性能を表す指標であるとともに、活性炭の細孔内部の疎水性の強さを表す指標ともなる。そのために活性炭のベンゼン吸着性能が60%以上になると、ポリフェノール類と活性炭の親和性が低くなり、ポリフェノール類の結合量が低下すると考えられる。
【0015】
細孔半径やその最頻値、累積細孔容積の測定方法は、公知の方法を用いればよく、例えば水蒸気吸着法により作成した細孔分布曲線に基づいて規定され、求めた細孔分布曲線から細孔半径やその最頻値、累積細孔容積を求めることができる。細孔半径が30Å以下の細孔の占める累積細孔容積(以後V0−30とする)を求め、さらに細孔半径50Å以下の細孔の占める累積細孔容積(以後V50とする)を求め、それらの値から、活性炭の要件(3)であるV50に対するV0−30の割合(%)を、次式によって求めることができる。(V0−30/V50)×100。同様に細孔半径8〜20Åの細孔の占める累積細孔容積(以後V8−20とする)を求め、V8−20およびV50の値から、活性炭の要件(4)であるV50に対するV8−20の割合(%)を、次式によって求めることができる。(V8−20/V50)×100。
【0016】
本発明において用いる活性炭は(1)〜(4)記載の要件、すなわちベンゼン吸着性能が20%〜60%であり、かつ活性炭の細孔半径の最頻値(以後RMAXとする)が5Å〜30Åの範囲であり、(V0−30/V50)×100が80%以上であり、(V8−20/V50)×100が50%〜90%の範囲が好ましく、より好ましくは60〜80%の範囲であるという(1)〜(4)の全ての特性を備えていることが必要である。それらの4つの要件を備えていることによって、ポリフェノール類との結合性が高くなり、アルカリ性水溶液中でのポリフェノール類活性炭結合体からのポリフェノール類の溶出が極めて少なくなり、臭気物質などの消臭能力が高くなる。
【0017】
上記した(1)〜(4)の要件を備える活性炭のうちでも、(1)ベンゼン吸着性能が25%〜40%であり、(2)細孔半径の最頻値が5Å〜25Åの範囲であり、(3)(V0−30/V50)×100が85%であり、(4)(V8−20/V50)×100が50%〜85%の範囲である活性炭がポリフェノール類との結合性が非常に高くなり、アルカリ性水溶液や各種溶媒、酸性水溶液中でもポリフェノール類の溶出が極めて少なく、好ましい。
活性炭の原料はヤシ殻、石炭、木炭等、特に限定するものではないが、ポリフェノール類の結合力の観点よりヤシ殻由来が好ましい。
【0018】
本発明におけるポリフェノール類活性炭結合体とは従来のポリフェノール類活性炭混合物と異なり、アルカリ水溶液中にポリフェノール類活性炭結合体を含浸させてもポリフェノール類が容易に溶出されない状態となっているものをいう。
ポリフェノール類が活性炭から溶出するか確認するためには、特に限定するものではないが、ポリフェノール類活性炭結合体を0.2Nの水酸化ナトリウム水溶液に1重量%の濃度となるように配合し10分間攪拌した後、1N塩酸でpHを3に調製した水溶液に含まれるポリフェノール類の含量が0.05重量%以下、好ましくは0.01重量%以下、さらに好ましくは0.005重量%以下であることで確認することができる。
【0019】
本発明におけるポリフェノール類と活性炭の結合体を得る処理としては、ポリフェノール類を水に対して0.1%から20%、より好ましくは1%から10%に添加し、ポリフェノール類溶液のpHを酸性に調製することが好ましい。調製するpHの数値は1.0から4.0が好ましく、より好ましくは1.8から3.0の範囲がポリフェノール類と活性炭の反応性の観点から好ましい。pH調製に用いられる酸剤については、特に限定されるものではないが、塩酸が好ましい。その後、配合したポリフェノール類と同量の活性炭を添加する。数時間攪拌もしくは静置し反応させる。
その後前記混合液から、遠心分離、濾過、篩別等の方法によって結合体を分離し洗浄し、乾燥させる。
【0020】
前記乾燥方法としては、真空乾燥、自然乾燥、ロータリーエバポレータ、ドラム回転式、ロータリーコイルドライヤーによる乾燥など、公知の方法を用いればよく、特に限定されない。乾燥時間などは、使用する方法に応じて適宜決定すればよい。
得られたポリフェノール類と活性炭の結合体は粒状でも粉末状でも繊維状でもスラリー状でもよく、粒状の結合体を粉砕して粉末状にしてもよい。
前記粉砕方法としては、例えば、衝撃摩擦粉砕機、遠心力粉砕機、ボールミル(チューブミル、コンパウンドミル、円錐形ボールミル、ロッドミル)、振動ミル、コロイドミル、摩擦円盤ミル、ジェットミルなどの微粉砕用の粉砕機が好適に用いられる。
粉砕方法としては、ボールミルが一般的であるが、ボールミルを用いる場合、金属粉の混入を避けるために、ボールや粉砕容器は、アルミナ、メノウなどの非金属製であることが好ましい。
ポリフェノール類活性炭結合体に含まれるポリフェノール類の含量は10〜30%の範囲に含まれる。ポリフェノール類活性炭結合体に含まれるポリフェノール類含量を直接測定することができないために、上記に記載したようにポリフェノール類溶液と活性炭を反応させる際に、反応前後の溶液中に含まれるポリフェノール類量を測定しておき、次式のように反応前後の溶液中のポリフェノール類量の差異からポリフェノール類活性炭結合体に含まれるポリフェノール類の含量を求めることができる。ポリフェノール類活性炭結合体に含まれるポリフェノール類の含量(%)={(TP1−TP2)×V/100}/〔AC+{(TP1−TP2)×V/100}〕×100
反応前のポリフェノール類含量(%);TP1
反応後のポリフェノール類含量(%);TP2
反応時の液量(ml);V
活性炭量(g);AC
以下に、実施例と比較例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例】
【0021】
本実施例で使用した茶抽出物の非重合体カテキン類及びポリフェノール類の測定方法は以下の方法で行った。
<非重合体カテキン類の測定>
検体を適当な濃度に希釈し、その溶液をフィルター(0.45μm)でろ過し、島津製作所製、高速液体クロマトグラフ(型式SCL−10AVP)を用い、Cep−pakC18カラム(4.6mm×10mm:資生堂製)を装着し、カラム温度40℃で分析した。移動相はメタノール/水/リン酸=17/83/0.5溶液とし、試料注入量は10μL、UV検出器波長は280nmの条件で行った。
ここで検出された(+)−カテキン、(−)−エピカテキン、(−)−ガロカテキン、(−)−カテキンガレート、(−)−エピカテキンガレート、(−)−ガロカテキンガレート、(−)−エピガロカテキンガレート、(−)−エピガロカテキン等、非重合体成分の含量を合計し、非重合体カテキン類含量とした。
<ポリフェノール類の測定>
ポリフェノール類含量の測定は酒石酸鉄法により、標準液として没食子酸エチルを用い、没食子酸エチルの換算量として求める(既存添加物第3版 チャ抽出物中のポリフェノール含量測定法)。検体を適当な濃度に希釈し、その溶液5mLを酒石酸鉄標準溶液(硫酸第一鉄・7水和物100mg、酒石酸ナトリウム・カリウム500mgを蒸留水で100mLとする)5mLで発色させ、リン酸緩衝液(1/15Mリン酸水素二ナトリウム溶液と1/15Mリン酸二水素ナトリウム溶液を混合しpH7.5に調整する)で25mLに定容したものを、540nmで吸光度を測定し、没食子酸エチルによる検量線からポリフェノール類含量を求めた。
【0022】
実施例1
表1に記載した分析値の緑茶抽出物A10gを50℃のイオン交換水80gに加え、攪拌して溶解させた後、1N塩酸にてpHを2.0に調製し、攪拌しながら表2に記載した分析値の活性炭Aを9.8g加えて、攪拌しながら24時間保持した。その後、篩別し上清を取り除いた。その後ロータリーコイルドライヤーにより乾燥させ、本発明品のポリフェノール類活性炭結合体Aを15g得た。
得られた結合体Aを0.2N水酸化ナトリウム水溶液に1重量%となるように配合し10分間攪拌した後、1N塩酸でpHを3に調製した水溶液に含まれるポリフェノール類の含量が0.002重量%であり、結合体であることが確認できた。
【0023】
実施例2
表1に記載した分析値の緑茶抽出物B10gを50℃のイオン交換水80gに加え、攪拌して溶解させた後、1N塩酸にてpHを2.0に調製し、攪拌しながら表2に記載した分析値の活性炭Bを9.8g加えて、攪拌しながら24時間保持した。その後、篩別し上清を取り除いた。その後ロータリーコイルドライヤーにより乾燥させ、本発明品のポリフェノール類活性炭結合体Bを15g得た。
得られた結合体Bを0.2N水酸化ナトリウム水溶液に1重量%となるように配合し10分間攪拌した後、1N塩酸でpHを3に調製した水溶液に含まれるポリフェノール類の含量が0.003重量%であり、結合体であることが確認できた。
【0024】
実施例3
表1に記載した分析値の緑茶抽出物C10gを50℃のイオン交換水80gに加え、攪拌して溶解させた後、1N塩酸にてpHを2.0に調製し、攪拌しながら表2に記載した分析値の活性炭Cを9.8g加えて、攪拌しながら24時間保持した。その後、篩別し上清を取り除いた。その後ロータリーコイルドライヤーにより乾燥させ、本発明品のポリフェノール類活性炭結合体Cを15g得た。
得られた結合体Cを0.2N水酸化ナトリウム水溶液に1重量%となるように配合し10分間攪拌した後、1N塩酸でpHを3に調製した水溶液に含まれるポリフェノール類の含量が0.004重量%であり、結合体であることが確認できた。
【0025】
比較例1
表1に記載した分析値の緑茶抽出物a10gを50℃のイオン交換水80gに加え、攪拌して溶解させた後、1N塩酸にてpHを2.0に調製し、攪拌しながら表2に記載した分析値の活性炭aを9.8g加えて、攪拌しながら24時間保持した。その後、篩別し上清を取り除いた。その後ロータリーコイルドライヤーにより乾燥させ、比較品のポリフェノール類と活性炭の混合体aを約15g得た。
得られた混合体aを0.2N水酸化ナトリウム水溶液に1重量%となるように配合し10分間攪拌した後、1N塩酸でpHを3に調製した水溶液に含まれるポリフェノール類の含量が0.08重量%であり、ポリフェノール類の溶出が確認され、結合体ではなく混合体であることが確認された。
【0026】
比較例2
表1に記載した分析値の緑茶抽出物b10gを50℃のイオン交換水80gに加え、攪拌して溶解させた後、1N塩酸にてpHを2.0に調製し、攪拌しながら表2に記載した分析値の活性炭bを9.8g加えて、攪拌しながら24時間保持した。その後、篩別し上清を取り除いた。その後ロータリーコイルドライヤーにより乾燥させ、比較品のポリフェノール類と活性炭の混合体bを約15g得た。
得られた混合体bを0.2N水酸化ナトリウム水溶液に1重量%となるように配合し10分間攪拌した後、1N塩酸でpHを3に調製した水溶液に含まれるポリフェノール類の含量が0.09重量%であり、ポリフェノール類の溶出が確認され、結合体ではなく混合体であることが確認された。
【0027】
比較例3
表1に記載した分析値の緑茶抽出物c10gを50℃のイオン交換水80gに加え、攪拌して溶解させた後、1N塩酸にてpHを2.0に調製し、攪拌しながら表2に記載した分析値の活性炭cを9.8g加えて、攪拌しながら24時間保持した。その後、篩別し上清を取り除いた。その後ロータリーコイルドライヤーにより乾燥させ、比較品のポリフェノール類と活性炭の混合体cを約15g得た。
得られた混合体cを0.2N水酸化ナトリウム水溶液に1重量%となるように配合し10分間攪拌した後、1N塩酸でpHを3に調製した水溶液に含まれるポリフェノール類の含量が0.10重量%であり、ポリフェノール類の溶出が確認され、結合体ではなく混合体であることが確認された。
【0028】
比較例4
表1に記載した分析値の緑茶抽出物d10gを50℃のイオン交換水80gに加え、攪拌して溶解させた後、1N塩酸にてpHを2.0に調製し、攪拌しながら表2に記載した分析値の活性炭dを9.8g加えて、攪拌しながら24時間保持した。その後、篩別し上清を取り除いた。その後ロータリーコイルドライヤーにより乾燥させ、比較品のポリフェノール類と活性炭の混合体dを約15g得た。
得られた混合体dを0.2N水酸化ナトリウム水溶液に1重量%となるように配合し10分間攪拌した後、1N塩酸でpHを3に調製した水溶液に含まれるポリフェノール類の含量が0.10重量%であり、ポリフェノール類の溶出が確認され、結合体ではなく混合体であることが確認された。
【0029】
実施例1から3および比較例1から4までで使用した原料の茶抽出物と活性炭の詳細について、表1および表2に記載した。
【0030】
【表1】

【0031】
【表2】

【0032】
試験例1
上記で得られた本願発明品及び比較品、活性炭の単品について、下記に記載の消臭試験を実施し、結果を表3に示した。
【0033】
<消臭試験1:アンモニア消臭試験>
におい袋に2.6Lの空気とアンモニア気体50mlを入れて初期濃度を測定後、そこに結合体A及び結合体B、結合体C、混合体a、混合体b、混合体c、混合体d、活性炭aを1g入れて、30分間常温で放置する。その後、株式会社ガステック製検知管式気体測定器を用いてにおい袋中のアンモニア量を測定した。結果は初期濃度を100とし、30分後の濃度を相対的に示した。数値が低いほど消臭効果が高いことを示す。
【0034】
<消臭試験2:トリメチルアミン消臭試験>
におい袋に2.6Lの空気とトリメチルアミン気体5mlを入れて初期濃度を測定後、そこに結合体A及び結合体B、結合体C、混合体a、混合体b、混合体c、混合体d、活性炭aを1g入れて、30分間常温で放置する。その後、株式会社ガステック製検知管式気体測定器を用いてにおい袋中のトリメチルアミン量を測定した。結果は初期濃度を100とし、30分後の濃度を相対的に示した。数値が低いほど消臭効果が高いことを示す。
【0035】
<消臭試験3:メチルメルカプタン消臭試験>
におい袋に2.6Lの空気とメチルメルカプタン気体0.5mlを入れて初期濃度を測定後、そこに結合体A及び結合体B、結合体C、混合体a、混合体b、混合体c、混合体d、活性炭aを1g入れて、30分間常温で放置する。その後、株式会社ガステック製検知管式気体測定器を用いてにおい袋中のメチルメルカプタン量を測定した。結果は初期濃度を100とし、30分後の濃度を相対的に示した。数値が低いほど消臭効果が高いことを示す。
【0036】
<消臭試験4:ホルムアルデヒド消臭試験>
におい袋に2.6Lの空気とホルムアルデヒド気体50mlを入れて初期濃度を測定後、そこに結合体A及び結合体B、結合体C、混合体a、混合体b、混合体c、混合体d、活性炭aを1g入れて、30分間常温で放置する。その後、株式会社ガステック製検知管式気体測定器を用いてにおい袋中のホルムアルデヒド量を測定した。結果は初期濃度を100とし、30分後の濃度を相対的に示した。数値が低いほど消臭効果が高いことを示す。
【0037】
<消臭試験5:官能試験>
におい袋に2.6Lの空気とトリメチルアミン気体5mlを入れて初期濃度を測定後、そこに結合体A及び結合体B、結合体C、混合体a、混合体b、混合体c、混合体d、活性炭aを1g入れて、30分間常温で放置する。10名の訓練されたパネラーがにおい袋中の臭気を嗅ぎ、以下の基準で数値化し、その平均値で臭気の強さを評価した。
0点:無臭。全く臭気が感じられない。
1点:やっと臭気を感じる。何の臭気か判別できない。
2点:臭気が感じられる。何の臭気か判別できる。
3点:かなり臭う。
4点:強く臭う。
5点:激しく臭う。耐えられないほどの強烈な臭気。
【0038】
【表3】

【0039】
表3の結果より本願発明品の結合体は、比較品の混合体や使用した原料の活性炭と比較して消果が高いことは明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明によれば、活性炭が有する機能に加えて、ポリフェノール類が有する優れた消臭機能が付与された結合体が提供される。これらは、水中もしくはアルカリ水溶液中でもポリフェノール類が活性炭から溶出することがないために、応用の範囲が広がり、優れた消臭効果をもつ。したがって、本発明は各種の分野での利用が期待でき産業上貢献大である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(A)、(B)、(C)及び(D)、
(A)非重合体カテキン類
(B)ポリフェノール類
(C)カフェイン
(D)カリウム
を含有し、当該成分(A)、(B)、(C)及び(D)が次の(イ)、(ロ)及び(ハ)、
(イ)(A)/(B)=0.61〜0.99
(ロ)(C)/(B)=0.0001〜0.1
(ハ)(D)/(B)=0.0001〜0.03
を満たしており、非重合体カテキン類に含まれる非エピ体カテキン類(E)およびエピ体カテキン類(F)の割合が(E)/(F)=0.05〜2.0で、非重合カテキン類の濃度が60.0〜98.0重量%である茶抽出物と、(1)ベンゼン吸着性能が20%〜60%以上であり、(2)細孔半径の最頻値が5Å〜30Åの範囲であり、(3)細孔半径が30Å以下の細孔の占める累積細孔容積が細孔半径50Å以下の細孔の占める累積細孔容積の80%以上であり、(4)細孔半径8〜20Åの細孔の占める累積細孔容積が細孔半径50Å以下の細孔の占める累積細孔容積の50%〜90%の範囲である活性炭からなることを特徴とするポリフェノール類活性炭結合体。
【請求項2】
請求項1記載のポリフェノール類活性炭結合体を0.2Nの水酸化ナトリウム水溶液に1重量%の濃度となるように配合し10分間攪拌した後、1N塩酸でpHを3に調製した水溶液に含まれるポリフェノール類の含量が0.05重量%以下であることを特徴とするポリフェノール類活性炭結合体。
【請求項3】
請求項1記載の茶抽出物が緑茶抽出物であることを特徴とするポリフェノール類活性炭結合体。

【公開番号】特開2011−212098(P2011−212098A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−81081(P2010−81081)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(000204181)太陽化学株式会社 (244)
【Fターム(参考)】