説明

ポリフッ化ビニリデン系樹脂製釣糸

【課題】引張強度および結節強度が高く、フィッシュアイ状欠陥数が少ないことにより、優れた屈曲摩耗特性を有することから、従来よりも耐久性に優れたポリフッ化ビニリデン系樹脂製釣糸を提供する。
【解決手段】ポリフッ化ビニリデン樹脂100重量部に対し、ジオルガノポリシロキサン化合物0.001〜10重量部を配合した樹脂組成物を溶融紡糸してなるモノフィラメントであって、その引張強度が600〜760MPa、結節強度が475〜550MPa、繊維軸に平行に伸びたフィッシュアイ状欠陥数が長さ20mm当たり6個以下かつ、JIS L−1095−7.10.2Bの規定に準じて測定した屈曲摩耗試験においてモノフィラメントが切断するまでの摩擦子の往復回数が5000回以上であることを特徴とする釣糸。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、引張強度および結節強度が高く、フィッシュアイ状欠陥数が少ないことにより、優れた屈曲摩耗特性を有することから、従来よりも耐久性が極めて改善され、特にルアーラインとして適したポリフッ化ビニリデン系樹脂製釣糸に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリフッ化ビニリデン系樹脂(以下、特に指定しない限りPVDF樹脂という)を主体とする合成樹脂モノフィラメントは、強靭性、耐摩耗性、感度および耐候性などに優れており、特に、高比重(1.78)で水中に沈みやすく、吸水性が殆どないことから、釣糸、特にハリスとして好適に利用されてきた。
【0003】
近年、釣具の進化はめざましく、特に釣糸の分野では、それぞれの釣り用途に最も適した釣糸の開発が盛んに行われており、中でも前記特徴を活かしたPVDF樹脂製釣糸に関しては、色々な分野への用途展開が期待される素材として釣り人から注目されている。
【0004】
しかし、PVDF樹脂製釣糸は、道糸特にルアーラインとして使用した場合に、ナイロン製釣糸に比べて耐久性が劣ることから、その点の改善がしきりに望まれていた。
【0005】
釣糸の耐久性を改善する方法として、例えばポリアミド樹脂に特定のシリコーン化合物を0.7〜10重量%配合した樹脂組成物を使用することにより耐磨耗性を改善する方法(例えば、特許文献1参照)、ポリアミド樹脂にシリコーンなどの油脂を練り込んだ含油ポリアミド樹脂からなるモノフィラメントの表面に、練り込んだ油脂と同じ成分の皮膜を作ることにより強固な撥水性皮膜を形成する方法(例えば、特許文献2参照)などがすでに提案されているが、いずれも吸湿しやすいポリアミド樹脂にシリコーンを添加することにより糸の滑りを改善したり、撥水性を向上したりすることによる耐久性改善を目指したものであり、ポリアミド釣糸に対してはある程度改善効果は見られるが、素材自体の吸水性が低く、滑り性が良好なPVDF素材に対しての改善効果は認められないものであった。
【0006】
一方、弗素系ポリマーの改質方法としては、4弗化エチレン―エチレン共重合体樹脂、4弗化エチレン―6弗化プロピレン共重合体樹脂及びパーフルオロアルキルビニルエーテル―4弗化エチレン共重合体樹脂など弗素樹脂と無機充填剤とからなる弗素樹脂組成物に、ジオルガノポリシキロサン化合物を0.001〜10重量部配合して溶融成型したペレット状樹脂組成物(例えば、特許文献3参照)が提案されているが、この提案は、溶融成型時に発生する弗素系ガスによる無機充填剤の変色及び変質の防止を目的とするものであり、釣糸の耐久性改善とは関係がないものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006―115802号公報
【特許文献2】特開2001―86906号公報
【特許文献3】特許第2707103号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上述した従来技術における問題点の解決を課題として検討した結果達成されたものである。
【0009】
したがって本発明の目的は、引張強度および結節強度が高く、フィッシュアイ状欠陥数が少ないことにより、優れた屈曲摩耗特性を有することから、従来よりも耐久性が極めて改善され、特にルアーラインとして適したPVDF樹脂製釣糸を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するために本発明によれば、PVDF樹脂100重量部に対し、ジオルガノポリシロキサン化合物0.001〜10重量部を配合した樹脂組成物を溶融紡糸してなるモノフィラメントであって、その引張強度が600〜760MPa、結節強度が475〜550MPa、繊維軸に平行に伸びたフィッシュアイ状欠陥数が長さ20mm当たり6個以下かつ、JIS L−1095−7.10.2Bの規定に準じて測定した屈曲摩耗試験においてモノフィラメントが切断するまでの摩擦子の往復回数が5000回以上であることを特徴とする釣糸が提供される。
【0011】
なお、本発明の釣糸においては
前記PVDF樹脂のJIS K 7210(1999)の方法に従って230℃、荷重10kgで測定されたメルトフローレート(以下、MFRという)が1.5〜3.5g/10分、の範囲であること、および
ルアーラインであること
が、いずれも好ましい条件であり、これらの条件を満たした場合には、さらに優れた効果を期待することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、引張強度および結節強度が高く、フィッシュアイ状欠陥数が少ないことにより、優れた屈曲摩耗特性を有することから、従来よりも耐久性が極めて改善され、特にルアーラインとして適したPVDF樹脂製釣糸を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0014】
本発明の釣糸は、PVDF樹脂100重量部に対し、ジオルガノポリシロキサン化合物0.001〜10重量部を配合した樹脂組成物を溶融紡糸してなるモノフィラメントであって、その引張強度が600〜760MPa、結節強度が475〜550MPa、繊維軸に平行に伸びたフィッシュアイ状欠陥数が長さ20mm当たり6個以下かつ、JIS L−1095−7.10.2Bの規定に準じて測定した屈曲摩耗試験においてモノフィラメントが切断するまでの摩擦子の往復回数が5000回以上であることを特徴とするものである。
【0015】
まず、本発明の釣糸は、PVDF樹脂からなることが必須であり、PVDF以外の弗素系樹脂を使用した場合には、高強度、耐摩耗性、高比重、耐候性、低吸水性に優れるなどの特徴を部分的に満たすことは可能であるが、これらの要求性能を総て兼備するには至らず、特に高強度モノフィラメント得ることが困難であり、釣糸に求められる前記特性をバランスよく実現することができなくなってしまう。
【0016】
本発明で使用するPVDF樹脂とは、フッ化ビニリデン単位を含む重合体であり、例えばフッ化ビニリデン単独重合体、フッ化ビニリデンを構成単位として70重量%以上含有する共重合体、さらには、これら重合体の混合物が挙げられる。
【0017】
また、フッ化ビニリデン単位との共重合モノマーとしては、4フッ化エチレン、6フッ化プロピレン、3フッ化エチレン、3フッ化塩化エチレン、フッ化ビニルなどが挙げられ、これらの少なくとも1種類を使用することができる。
【0018】
本発明の釣糸において、上記のPVDF樹脂100重量部に対し、ジオルガノポリシロキサン化合物0.001〜10重量部を配合した樹脂組成物を溶融紡糸してなるモノフィラメントからなることが必要であり、さらに、PVDF樹脂100重量部に対し、ジオルガノポリシロキサン化合物0.01〜1重量部からなることが好ましい。
【0019】
これは、ジオルガノポリシロキサン化合物の配合量が上記範囲を下まわると、PVDF樹脂を紡糸する際に発生するポリマーの剪断発熱で局部的な高温部分が発生することによりゲル化ポリマーが発生し、そのポリマーが核となって、フィッシュアイを形成してしまい、逆にジオルガノポリシロキサン化合物の配合量が上記範囲を上回ると、ジオルガノポリシロキサン化合物が異物として働き、釣糸として必要な強度が得られなくなるばかりか、あまりにも添加量が多くなると安定した吐出が得られなくなり、紡糸が出来なくなるからである。
【0020】
ここで、ジオルガノポリシロキサン化合物とは、シロキサンポリマーの硅素原子の夫々に2個の有機基を有する化合物であり、例えば、特殊メチルフェニルシロキサン(YF−33、MOMENTIVE製)、ジメチルシロキサン(KF−96、信越シリコーン製)、ポリジメチルシロキサン(バイフルイドM、バイエル製)、メチルフェニルシロキサン(KF−54、信越シリコーン製)等を市場から入手して使用できる。
【0021】
また、PVDF樹脂のJIS K 7210(1999)の方法に従って230℃、荷重10kgで測定されたMFRは、1.5〜3.5g/10分の範囲さらに、1.7〜3.0g/10分であることが好ましい。
【0022】
これは、PVDF樹脂のMFRが1.5g/10分より低すぎると、溶融押し出しの際スクリューに掛かる負荷が大きすぎたり、生産性が低下したりしてしまい、逆にMFRが3.5g/10分より高くなると、釣糸として必要な強度が得られなくなる傾向にあるからである。
【0023】
次に、本発明の釣糸を構成するPVDF樹脂モノフィラメントは、引張強度が650〜1000MPa、結節強度が475〜550MPaであることが必要であり、さらには引張強度が680〜950MPa、結節強度が500〜550MPaであることが好ましい。
【0024】
これは、引張強度が上記範囲を下回ると、直線部の強度が低いために、釣り糸に適用しにくくなり、逆に引張強度が上記範囲を上回ると、繊維表層部のポリマーが高配向化するため結節強度が低下しやすくなるからである。
【0025】
また、結節強度が上記範囲を下回ると、糸同士または糸と仕掛け金具との結び目が弱くなるために、釣糸に適用しにくくなり、逆に上記範囲を上回る結節強度を得ることは、引張強度との関係上、技術的に難しくなるからである。
【0026】
本発明の釣糸を構成するPVDF樹脂モノフィラメントは、繊維軸に平行に伸びたフィッシュアイ状欠陥数が長さ20mm当たり6個以下かつ、JIS L−1095−7.10.2Bの規定に準じて測定した屈曲摩耗試験においてモノフィラメントが切断するまでの摩擦子の往復回数が5000回以上であることが必要であり、さらに、フィッシュアイ状欠陥数が長さ20mm当たり4個以下かつ、屈曲摩耗試験においてモノフィラメントが切断するまでの摩擦子の往復回数が6000回以上であることが好ましい。
【0027】
これは、フィッシュアイ状欠陥数が20mm当たり6個以上あると、屈曲状態で繰り返し擦過される屈曲摩耗試験を行った場合に、フィッシュアイ部分が擦過を受けることにより成長し、その部分を核にして糸切れが発生してしまうことから、モノフィラメントが切断するまでの摩擦子の往復回数が5000回より少なくなってしまい、釣糸としての耐久性が悪くなってしまうからである。
【0028】
すなわち、リールに巻き取られた釣糸が、釣竿のガイドに折り曲げられた状態で繰り返し擦過されることに注目し、検討を繰り返した結果、釣糸の表面にあるフィッシュアイと呼ばれる欠陥部分が繰り返しガイドによる擦過を受けることにより成長し、その部分を核にして糸切れが発生することが見出されたのである。
【0029】
なお、本発明の目的と要求性能を阻害しない範囲であれば、PVDF樹脂モノフィラメントに対し、可塑剤、耐光剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、蛍光増白剤、結晶化抑制剤などの添加剤を含有せしめることができる。また、染色などにより、連続的、非連続的に同一の色で着色したり、部分ごとに色を変えて着色したりして釣糸の視認性を向上させることが出来る。
【0030】
本発明の釣糸を構成するPVDF樹脂モノフィラメントは、以下に説明する方法により効率的に製造することができる。
【0031】
まず、PVDF樹脂モノフィラメントを溶融紡糸するに際しては、例えばエクストルダー型溶融紡糸機を使用して、ポリマー温度、押出圧力、口金孔径、紡糸速度などの各条件を適宜選択することができる。
【0032】
なお、PVDF樹脂とジオルガノポリシロキサン化合物を混合する場合には、PVDF樹脂ペレットに直接所定の重量比率に計量したジオルガノポリシロキサン化合物を添加し、ブレンドして使用する方法、あらかじめ高濃度にジオルガノポリシロキサン化合物を添加したマスターバッチを作成しておき、紡糸機供給前にブレンドする方法などが使用できる。
【0033】
次に、溶融紡糸機から紡出されたポリマー溶融物は、短い気体ゾーンを通過した後、例えば水、グリセリン、ポリエチレングリコールなどの冷却媒体中で冷却固化されて、未延伸糸となる。
【0034】
冷却固化された未延伸糸は、引き続き1段乃至多段延伸される。この際、未延伸糸は、温水、ポリエチレングリコール、グリセリンおよびシリコーンオイルなどの熱媒体浴、熱気体浴、または水蒸気浴中で、全延伸倍率5.0倍以上、好ましくは5.5倍以上に延伸される。
【0035】
さらに、延伸された合成樹脂モノフィラメントは、延伸歪みの除去を目的として、適宜定長および/または弛緩熱処理を行なってもよい。
【0036】
なお、本発明の釣糸の断面形状は、必ずしも円形断面だけに限定はされず、その目的に応じて、三角断面、四角断面などの多角形断面や多葉断面などの異形断面であってもよく、さらには合成樹脂モノフィラメント同士を撚り合わせたり、単糸に縒りを掛けたりするなどの2次加工したものであってもよい。
【0037】
さらに、本発明の釣糸の直径についても特に限定はされないが、釣糸としては通常0.05mm〜1mmが好ましく、扱いやすさおよび強度特性の点からいえば、さらに0.1mm〜0.7mmが好ましい。
【0038】
こうして得られたPVDF樹脂製モノフィラメントを釣糸として使用した場合には、従来のPVDF樹脂製モノフィラメントからなる釣糸に比べて高い耐久性と優れた強度特性とを兼ね備えた釣り糸となることから、特にルアーラインに有用である。
【実施例】
【0039】
以下に、本発明の釣糸を実施例に基づいて説明するが、PVDF樹脂製モノフィラメントの各物性測定と釣糸の評価は以下の方法に準じて行った。
【0040】
[引張強度および結節強度]
JIS L1013の規定に準じて測定した。すなわち、釣り糸を20℃、65%RHの温湿度調整室で24時間放置後、(株)オリエンテック社製「テンシロンUTM−4−100型」引張試験機を使用して、試長250mm、引張速度300mm/分の条件で引張破断強力および結節破断強力を1サンプルに対して5回測定し、その平均を求め強度を算出した。
【0041】
[屈曲摩耗試験]
JIS L―1095―7.10.2Bの規定に準じて測定した。すなわち、固定されたφ3.0mmの摩擦子(硬質鋼線(SWP−SF))の上に接触させたモノフィラメントを、前記摩擦子の左右各55度の角度で斜め下に設けたフリーローラー2個(ローラー間距離:70mm)の下に掛け、別の1個のフリーローラーの上を介してモノフィラメントの一端に0.2g/dの荷重をかけてセットする。モノフィラメント試料を往復回数:105回/分、往復ストローク:25mmの条件で摩擦子に接触往復させて、同一試料につき各10本のモノフィラメントについて夫々切断するまでの往復曲げ回数を室温にて測定して平均値を求めた。この平均値が大きいほど耐屈曲摩耗性が良好なことを表す。
【0042】
[直径測定]
MITUTOYO社製「デジタルマイクロメータ」を使用し、釣糸のとなるモノフィラメントの直径をその長さ方向に沿って5箇所無作為に測定し、その平均値を求めた。
【0043】
[フィッシュアイ状欠陥]
釣糸となるモノフィラメントを20mmにカットしたサンプルを作成し、キーエンス社製マイクロスコープVH−7000を使い倍率200倍で糸の表面から順にピントを送りながら繊維軸と垂直方向のフィッシュアイ状欠陥を監察する。
【0044】
上記、監察を繊維軸方向にずらしながら行い20mmのサンプル中に存在するフィッシュアイの個数を測定する。
【0045】
このとき各水準についてn=5で行いそれぞれの平均の個数で判定した。
【0046】
[メルトフローレート(MFR)]
JIS K 7210(1999)の規定に準じて測定した。すなわち、乾燥したPVDF樹脂ペレットをTOYOSEIKI社製「メルトジルシデクサー(形式T−01型)」で230℃、荷重10kgの条件出で測定した。
【0047】
1サンプルに対して5回測定し、その平均を求めMFRの値とした。
【0048】
[実釣評価]
複数の釣り人にルアーフィッシングにより実釣評価してもらい、次の二段階で評価した。
○…従来のPVDF樹脂製釣糸に比べて耐久性があり、繰り返しキャストを行っても糸の表面に変化がなかった。
×…従来のPVDF樹脂製釣糸同様、繰り返しキャストを行うことにより釣糸の表面が白化し、根掛りしたときに簡単に糸が切れてしまった。
【0049】
[実施例1]
PVDF樹脂ペレット(VP835、ダイキン工業社製)100重量部に対し、メチルフェニルシロキサン(YF−33、MOMENTIVE社製)0.1重量部をブレンドした樹脂組成物をエクストルダー型紡糸機に供給し、260℃の紡糸温度で溶融混練して、紡糸口金からポリマー溶融物を紡出した。
【0050】
そして、このポリマー溶融物を20℃のポリエチレングリコール液中で冷却固化して未延伸糸とし、さらにこの未延伸糸を165℃のポリエチレングリコール浴中で3.5倍の一段目延伸を行い、次に155℃のポリエチレングリコール浴中で0.95倍の中間熱処理を行った。
【0051】
さらに、180℃の乾熱浴中で全延伸倍率が6.4倍となるように二段目延伸を行い、引き続いて155℃の乾熱浴中で0.90倍の熱処理を施すことにより、直径約0.20mmの合成樹脂モノフィラメントを得た。
【0052】
[実施例2]
モノフィラメントを構成する樹脂組成物を、PVDF樹脂ペレット(Solef1013、ソルベイソレクシス社製)100重量部に対し、ジメチルシロキサン(KF−96、信越シリコーン社製)1.0重量部をブレンドした樹脂組成物に変更した以外は、実施例1と同じ製造方法で合成樹脂モノフィラメントを得た。
【0053】
[実施例3]
モノフィラメントを構成する樹脂組成物を、PVDF樹脂ペレット(Solef1012、ソルベイソレクシス社製)100重量部に対し、メチルフェニルシロキサン(KF−54、信越シリコーン製)0.01重量部をブレンドした樹脂組成物に変更した以外は、実施例1と同じ製造方法で合成樹脂モノフィラメントを得た。
【0054】
[実施例4]
モノフィラメントを構成する樹脂組成物を、PVDF樹脂ペレット(VP835、ダイキン工業社製)100重量部に対し、ポリジメチルシロキサン(バイフルイドM、バイエル製)5.0重量部をブレンドした樹脂組成物に変更した以外は、実施例1と同じ製造方法で合成樹脂モノフィラメントを得た。
【0055】
[比較例1]
モノフィラメントを構成する樹脂組成物を、PVDF樹脂ペレット(VP835、ダイキン工業社製)のみに変更した以外は、実施例1と同じ製造方法で合成樹脂モノフィラメントを得た。
【0056】
[比較例2]
ジオルガノポリシロキサン化合物のブレンド量を、PVDF樹脂ペレット100重量部に対し、15重量部とした樹脂組成物に変更した以外は、実施例1と同じ製造方法で合成樹脂モノフィラメントを得た。
【0057】
[比較例3]
モノフィラメントを構成する樹脂組成物を、4弗化エチレン−6弗化プロピレン共重合樹脂(NP−101、ダイキン工業社製)に変更し、紡糸温度を280℃に変更した以外は、実施例1と同じ製造方法で合成樹脂モノフィラメントを得た。
【0058】
[比較例4]
モノフィラメントを構成する樹脂組成物を、エチレン−4弗化エチレン共重合樹脂(EP−620、ダイキン工業社製)に変更した以外は、実施例1と同じ製造方法で合成樹脂モノフィラメントを得た。
【0059】
[比較例5]
モノフィラメントを構成する樹脂組成物を、パーフルオロアルキルビニルエーテル−4弗化エチレン共重合樹脂(AP−201、ダイキン工業社製)に変更し、紡糸温度を320℃に変更した以外は、実施例1と同じ製造方法で合成樹脂モノフィラメントを得た。
【0060】
以上、各合成樹脂モノフィラメントの原料組成および各種物性およびこれら合成樹脂モノフィラメントを釣り糸に使用した場合の評価結果を表1に示す。
【0061】
【表1】

【0062】
表1の結果から明らかなように、本発明の釣り糸(実施例1〜4)は、引張強度および結節強度が高く、フィッシュアイ状欠陥数が少ないことにより、優れた屈曲摩耗特性を有することから、優れた耐久性を具備しており、釣糸として従来のものよりも優れていることが分かる。
【0063】
一方、PVDF樹脂にジオルガノポリシロキサン化合物の添加をしていない釣糸(比較例1)は、強度が優れるもののフィッシュアイの数が多くなり、屈曲摩耗回数も低いことから耐久性の劣る釣糸となってしまった。
【0064】
また、PVDF樹脂製モノフィラメントにジオルガノポリシロキサン化合物を入れすぎた場合(比較例2)は、釣糸として必要な強度が得られなくなるばかりか、添加量が多すぎるため紡糸機に原料を供給する過程で咬み込み不良が発生して長時間の安定した紡糸が出来なかった。
【0065】
モノフィラメントを構成する樹脂組成物に、PVDF以外の弗素樹脂を使用した場合(比較例3〜5)は、ジオルガノポリシロキサン化合物の添加によりフィッシュアイの数は少なくなっているが、原料の特徴から引張強度、結節強度が低くなり、釣糸として使用した場合直ぐに切れてしまうものであった。
【産業上の利用可能性】
【0066】
以上説明したように、本発明の釣り糸は、従来のPVDF樹脂製モノフィラメントからなる釣り糸に比べて引張強度および結節強度が高く、フィッシュアイ状欠陥数が少ないことにより、優れた屈曲摩耗特性を有することから、耐久性に優れた特性を具備しており、特にルアーラインとしてその性能を遺憾なく発揮する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリフッ化ビニリデン樹脂100重量部に対し、ジオルガノポリシロキサン化合物0.001〜10重量部を配合した樹脂組成物を溶融紡糸してなるモノフィラメントであって、その引張強度が600〜760MPa、結節強度が475〜550MPa、繊維軸に平行に伸びたフィッシュアイ状欠陥数が長さ20mm当たり6個以下かつ、JIS L−1095−7.10.2Bの規定に準じて測定した屈曲摩耗試験においてモノフィラメントが切断するまでの摩擦子の往復回数が5000回以上であることを特徴とする釣糸。
【請求項2】
前記ポリフッ化ビニリデン系樹脂のJIS K 7210(1999)の方法に従って230℃、荷重10kgで測定されたメルトフローレート(以下、MFRという)が1.5〜3.5g/10分、の範囲であることを特徴とする請求項1に記載の釣糸。
【請求項3】
ルアーラインであることを特徴とする請求項1または2に記載の釣糸。

【公開番号】特開2012−179023(P2012−179023A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−45257(P2011−45257)
【出願日】平成23年3月2日(2011.3.2)
【出願人】(000219288)東レ・モノフィラメント株式会社 (239)
【Fターム(参考)】