説明

ポリブチレンテレフタレートおよび難燃添加剤を含有するポリマー組成物

ポリマー成分として、A.90〜50重量%のポリブチレンテレフタレート(PBT)、B.10〜50重量%のポリエチレンテレフタレート(PET)(ポリマー成分は合計で100重量%になる)、ポリマー成分の合計100重量部に対して、C.10〜40重量部の、ホスフィン酸および/またはジホスフィン酸の金属塩、あるいはそれらのポリマー誘導体、D.3〜30重量部の、窒素、または窒素およびリン光体を含有する、ホスフィン酸および/またはジホスフィン酸の金属塩、あるいはそれらのポリマー誘導体の難燃協力剤、E.0〜80部のガラス繊維を含有するポリマー組成物。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、ポリブチレンテレフタレートおよび難燃添加剤を含有するポリマー組成物に関する。このようなポリマー組成物は、電気および電子装置の部品、例えば、コネクター、リレーおよびボビンのハウジング、ランプのソケットなどに多用されている。
【0002】
このような組成物においては、他の特性を許容できるレベルに維持しながら、高レベルの難燃性を有することが重要である。近年における他の重要な要件は、環境問題への関心の高まりから、ハロゲンフリー難燃剤を使用することである。これは新規組成物の配合に対する自由度を制限し、それ故、より改良された組成物の開発を困難にしている。
【0003】
国際公開第99/02606号パンフレットから、熱可塑性ポリエステル、例えばポリブチレンテレフタレート、有機リン化合物、およびトリアジンから誘導される化合物を含むハロゲンフリーの難燃性ポリマー組成物が知られている。この国際公開第99/02606号パンフレットに記載の組成物は、組成物中の適度の濃度の難燃剤が高レベルの難燃性を示す。しかしながら、さらに改良された組成物がなお必要とされている。本発明の目的は、そうしたさらに改良された組成物を提供することにある。
【0004】
驚いたことに、この目的は、
ポリマー成分として、
A.90〜50重量%のポリブチレンテレフタレート(PBT)
B.10〜50重量%のポリエチレンテレフタレート(PET)
(ポリマー成分は合計で100%になる)、
ポリマー成分の合計100重量部に対して
C.10〜40重量部の、ホスフィン酸および/またはジホスフィン酸の金属塩、あるいはそれらのポリマー誘導体、
D.3〜30重量部の、窒素、または窒素およびリン光体を含有する、ホスフィン酸および/またはジホスフィン酸の金属塩、あるいはそれらのポリマー誘導体の難燃協力剤、
E.0〜80部のガラス繊維
を含有するポリマー組成物により達成される。
【0005】
驚いたことに、この組成物は高レベルの難燃性を示す。高レベルの難燃性を有することを示す等級UL V0のこの組成物からは、壁厚の薄い物体を製造することさえ可能である。本発明の組成物は、特に、薄い壁厚で短い燃焼時間を示す。さらに、この組成物で作られた物体の表面は、比較的高いレベルの光沢を示す。
【0006】
本発明によれば、0.4mm厚、好ましくは0.3mm厚のサンプルによる測定で、燃焼時間が好ましくは25秒未満、より好ましくは22秒未満の組成物が提供される。
【0007】
[A.PBT]
ポリブチレンテレフタレート(PBT)は、ブタンジオールと、テレフタル酸および/またはテレフタル酸のメチルエステルとの重縮合反応により製造することができる。
【0008】
[B.PET]
ポリエチレンテレフタレート、PETは、エチレンジオールと、テレフタル酸および/またはテレフタル酸のメチルエステルとの重縮合反応により製造することができる。PBTおよびPETは、他のモノマー単位、例えば他のアルキレンジオールおよび芳香族ジカルボン酸などのモノマー単位を、少量、例えば5重量%以下含んでもよい。
【0009】
本組成物は80〜52重量%のPBTおよび20〜48重量%のPETを含有することが好ましく、70〜54重量%のPBTおよび30〜46重量%のPETを含有することがより好ましい。これは全てAとBで100重量%を占めるという条件においてである。これは、ポリマー組成物が、ポリマー成分としてPETおよびPBTのみを含有し、他のポリマーは含有しないことを意味する。
【0010】
[C.金属ホスフィナート]
難燃性エラストマー組成物中の成分Cは、ホスフィン酸および/またはジホスフィン酸の金属塩、あるいはそれらのポリマー誘導体からなり、これらはまた金属ホスフィナートとも称される。この用語もまた、この化合物を示すために本明細書中でさらに使用されるであろう。
【0011】
金属ホスフィナートは、適切には、式[RP(O)O]m+(式I)で示されるホスフィン酸および/または式[O(O)PR−R−PR(O)O]2−m+(式II)で示されるジホスフィン酸の金属、並びに/あるいはそのポリマーである。ここで
−RおよびRは、水素、直鎖状、分岐状および環状のC1〜C6脂肪族基、並びに芳香族基からなる群より選択される同一または異なる置換基であり、
−Rは、直鎖状、分岐状および環状のC1〜C10脂肪族基、並びにC6〜C10の芳香族および脂肪族−芳香族基からなる群より選択され、
−Mは、Mg、Ca、Al、Sb、Sn、Ge、Ti、Zn、Fe、Zr、Ce、Bi、Sr、Mn、Li、NaおよびKからなる群より選択される金属であり、そして
−m、nおよびxは、1〜4の範囲の同一または異なる整数である。
【0012】
本発明で成分Cとして使用し得る適切な金属ホスフィナートは、例えば、独国特許出願公開第2252258号明細書、独国特許出願公開第2447727号明細書、PCT/W−097/39053および欧州特許第0932643B1号明細書に記載されている。好ましいホスフィナートは、アルミニウム−、カルシウム−および亜鉛ホスフィナート、すなわちそれぞれ金属M=Al、Ca、Znの金属ホスフィナート、およびこれらの組み合わせである。RおよびRが、同一または異なり、かつH、直鎖状もしくは分岐状C〜Cアルキル基、および/またはフェニルである金属ホスフィナートもまた好ましい。R、Rが、同一または異なり、かつ水素(H)基、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基およびフェニル基からなる群より選択されることが特に好ましい。RおよびRが、同一または異なり、かつH、メチル基およびエチル基からなる置換基群より選択されることがより好ましい。
【0013】
が、メチレン基、エチレン基、n−プロピレン基、イソプロピレン基、n−ブチレン基、tert−ブチレン基、n−ペンチレン基、n−オクチレン基、n−ドデシレン基、フェニレン基およびナフチレン基からなる群より選択されることもまた好ましい。
【0014】
金属ホスフィナートが、ハイポホスフェートおよび/またはC〜Cジアルキルホスフィナートを含むことが非常に好ましく、Ca−ハイポホスフェートおよび/またはAl−C〜Cジアルキルホスフィネート、すなわちAl−ジメチルホスフィナート、Al−メチルエチルホスフィネートおよび/またはAl−ジエチルホスフィネートを含むことがより好ましい。最良の結果は、Al−ジエチルホスフィナートを使用すると得られる。
【0015】
[D.窒素含有および窒素/リン光体含有難燃剤]
難燃性エラストマーコポリマー組成物中の、窒素含有および窒素/リン光体含有成分Dは、それ自身が難燃剤であり、かつ/またはホスフィネート系難燃剤の難燃協力剤である、任意の窒素または窒素およびリン光体含有化合物とすることができる。成分Dとして使用し得る適切な窒素含有および窒素/リン光体含有化合物は、例えば、PCT/EP97/01664、独国特許出願公開第19734437号明細書、独国特許出願公開第1973772号明細書および独国特許出願公開第19614424号明細書に記載されている。
【0016】
好ましくは、窒素含有協力剤は、ベンゾグアナミン、トリス(ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、アラントイン、グリコウリル、メラミン、メラミンシアヌレート、ジシアンジアミド、グアニジンおよびカルボジイミド、並びにこれらの誘導体からなる群より選択される。
【0017】
より好ましくは、窒素含有協力剤は、メラミンの縮合生成物を含む。メラミンの縮合生成物には、例えば、メレム、メラムおよびメロン、並びにこれらの高次誘導体および混合物がある。メラミンの縮合生成物は、例えば、PCT国際公開第96/16948号パンフレットに記載の方法で製造することができる。
【0018】
好ましくは、窒素/リン光体含有難燃剤は、メラミンとリン酸との反応生成物および/またはその縮合生成物である。メラミンとリン酸との反応生成物および/またはその縮合生成物とは、本明細書中では、メラミンまたはメラミンの縮合生成物、例えば、メレム、メラムおよびメロンと、リン酸との反応から得られる化合物と理解される。
【0019】
例としては、PCT国際公開第98/39306号パンフレットに記載されているような、ジメラミンホスフェート、ジメラミンピロホスフェート、メラミンホスフェート、メラミンポリホスフェート、メラミンピロホスフェート、メラミンポリホスフェート、メラムポリホスフェート、メロンポリホスフェートおよびメレムポリホスフェートが挙げられる。より好ましくは、窒素/リン光体含有難燃剤は、メラミンポリホスフェートである。
【0020】
難燃剤成分Dは、好ましくは、メラミンシアヌレートまたはメラミンポリホスフェートである。最も好ましくは、難燃剤成分Dは、メラミンシアヌレートである。
【0021】
本発明の組成物は、難燃剤成分CとしてAl−ジエチルホスフィナートを含有し、かつ、難燃剤成分Dとしてメラミンシアヌレートを含有することが、特に好ましい。
【0022】
[E.ガラス繊維]
本発明の組成物は、好ましくは40〜80重量部の、より好ましくは45〜75重量部の、より一層好ましくは50〜70重量部のガラス繊維を含有する。
【0023】
[F.その他の添加剤]
本発明の組成物は、通常の添加剤、例えば加工助剤、顔料、着色剤、安定剤、充填剤などをさらに含有することができる。本発明の組成物は、好ましくは10重量部未満の、より好ましくは5重量部未満の、より好ましくは2重量部未満の、最もに好ましくは1重量部未満のさらに別の有機添加剤を含む。
【0024】
本発明の組成物は成分A〜Fから構成されることが好ましい。
【0025】
実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0026】
[材料]
PBT1:PBT1060、オランダ(the Netherlands)のDSMより供給のPBT。
PBT2:PBT5007、オランダのDSMより供給のPBT。
PET:BAGA5018、オランダのDSMより供給のPET。
ガラス繊維:中国(China)のCPICより供給のCPIC ECS 303Aガラス繊維。
DEPAL:Exolit OP 1230、ドイツ(Germany)のClariantより供給のアルミニウムジエチルホスフィナート。
Mecy:Sechuan Mecy powder、中国のSechuanより供給のメラミンシアヌレート粉末。
Melapur 200/70:メラミンポリホスフェート、スイス(Switzerland)のCibaより供給。
【0027】
[コンパウンディング]
スクリュー速度を400rpm、スループットを25kg/hrとし、溶融温度を270℃に調節したZSK 25/33二軸押出機により、PBTおよびPBT/PETと、難燃剤成分、ガラス繊維および通常パッケージの安定剤とを溶融ブレンドして成形組成物を調製した。ガラス繊維は、押出機シリンダのほぼ中央にある側面供給口から添加した。押出機からの溶融物は造粒ダイを通して移送する。押出機で混練して得られた粒状体は、その後の使用の前に90℃で24時間乾燥させた。
【0028】
[試験用サンプルの成形]
機械特性およびUL−94−Vによる難燃性を試験するための試験用サンプルを、Engel 80 A型射出成形機で調製した。射出成形において、設定温度は250〜265℃を使用した。成形温度は90℃であった。
【0029】
サンプルについて測定した特性:
−MVR(280℃/2.16kg):ISO 1133による、温度280℃、重量2.16kgでのメルトボリュームレート。
−TM、TS、E.a.b.:ISO527−1Aによる引張係数、引張強さおよび破断伸び。
−シャルピーN:ISO179/1eAによるノッチ付シャルピー衝撃強さ。
−シャルピーUN:ISO179/1eUによるノッチなしシャルピー衝撃強さ。
−UL94V(0.4mm;48h):サンプル厚さ0.4mm、23℃、相対湿度50%、48時間のサンプルのプレコンディショニングでの、UL94V試験による難燃性。燃焼時間(5つの試験片の合計残炎時間t1+t2)、すなわち、着火後のサンプルの燃焼持続時間を測定した。
GWIT−IEC60695−2−13によるグローワイヤー着火温度。
光沢:光沢を目視により判定した。
【0030】
[実施例1、2および比較実験A、B]
本発明の実施例1および2、並びに比較実験AおよびBの組成を有するコンパウンドを、上記のように調製し、試験した。組成および試験結果を表1および2に示す。
【0031】
【表1】



【0032】
【表2】



【0033】
本発明のサンプルは、燃焼時間が改善され、かつ、より高い光沢を有している。また、GWITの値も向上している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマー成分として、
A.90〜50重量%のポリブチレンテレフタレート(PBT)
B.10〜50重量%のポリエチレンテレフタレート(PET)
(前記ポリマー成分は合計で100重量%になる)、
前記ポリマー成分の合計100重量部に対して
C.10〜40重量部の、ホスフィン酸および/またはジホスフィン酸の金属塩、あるいはそれらのポリマー誘導体、
D.3〜30重量部の、窒素、または窒素およびリン光体を含有する、ホスフィン酸および/またはジホスフィン酸の金属塩、あるいはそれらのポリマー誘導体の難燃協力剤、
E.0〜80部のガラス繊維
を含有するポリマー組成物。
【請求項2】
厚さ0.4mmのサンプルで、25秒未満の燃焼時間を示す請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
80〜52重量%のPBTおよび20〜48重量%のPETを含有する請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
40〜80重量%のガラス繊維を含有する請求項1または2に記載の組成物。
【請求項5】
ホスフィン酸および/またはジホスフィン酸の金属塩、あるいはそれらのポリマー誘導体を、20〜30重量部含有する請求項1〜4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
窒素、または窒素およびリン光体を含有する、ホスフィン酸および/またはジホスフィン酸の金属塩、あるいはそれらのポリマー誘導体の難燃協力剤を、8〜20重量部含有する請求項1〜5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
成分CがAl−ジエチルホスフィナートである請求項1〜6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
成分Dがメラミンシアヌレートである請求項1〜7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
前記組成物は、成分A、B、C、D、EおよびFからなり、成分Fは、1種以上の通常の添加剤である請求項1〜8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか一項に記載の組成物から製造される物体。

【公表番号】特表2012−522083(P2012−522083A)
【公表日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−502574(P2012−502574)
【出願日】平成22年3月24日(2010.3.24)
【国際出願番号】PCT/EP2010/053804
【国際公開番号】WO2010/112375
【国際公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【出願人】(503220392)ディーエスエム アイピー アセッツ ビー.ブイ. (873)
【Fターム(参考)】