説明

ポリプリントラクト改変レトロウイルスベクター

機能性ポリプリントラクト(PPT)を欠く組込み欠損レトロウイルスベクター導入カセットを提供する。また、異種のヌクレオチド配列、1又は2個のレトロウイルス長末端反復(LTR)、パッケージングシグナル、rev応答配列及び真核生物プロモーターから成り、機能性PPTを欠く単離された核酸;この単離された核酸を含むベクター;組み換えレトロウイルス粒子及びこれらのmRNA;レトロウイルスベクターキット;及び組込み欠損ベクター粒子を産生し、所定のヌクレオチド配列の遺伝子発現を行い、かつ所定のヌクレオチド配列を宿主細胞ゲノムに部位特異的又は非特異的様式で挿入する方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2007年12月11日に出願された米国仮出願61/007、118に基づく優先権を主張し、その内容は本明細書にその全体が取り込まれている。
この発明は、組込み欠損レトロウイルスベクター並びに遺伝子治療及び基礎生物学などにおいてこれを使用する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
細胞に特定の外部遺伝子又は自己遺伝子配列を導入し、この遺伝子の発現を調節する処理能力は、医学及び生物研究の分野において、価値がある。この処理能力は、遺伝子制御の研究や疾患治療のための治療上の基礎の設計を含む、しかしこれらに限られない、様々な有用な用途に用いられる。
宿主細胞への特定の外部遺伝子又は自己遺伝子の導入は、遺伝子配列を適切な核酸ベクターに導入することにより行うことができる。所望の宿主細胞にこのような組み換えベクターを導入する様々な方法が開発されてきた。ウイルスベクターを使用することにより、広汎な宿主細胞に組み換え分子を迅速に導入することができる。
【0003】
レトロウイルスは、DNAプロウイルス中間体を経由して複製を行うRNAウイルスであり、通常感染した宿主細胞のゲノムに組込まれている。全ての既知のレトロウイルスは、ウイルスRNAをビリオンへパッケージングすること、標的細胞へ進入すること、ウイルスRNAを逆転写してDNAプロウイルスを形成すること、及びこのプロウイルスをこの標的細胞ゲノムへ安定して組込むこと(インテグレーション)を含む複製サイクルの特徴を共通に持つ。複製能のある単純なプロウイルスは、一般に、調節性の長末端反復(LTR)並びにコアタンパク質(gag)、プロテアーゼ(pro)、逆転写酵素(pol)、RNase H(pol)、インテグラーゼ(pol)及び外膜糖タンパク質(env)をコードするgag、pro、pol及びenv遺伝子を有する。複雑なレトロウイルスはまた、一般に、追加のアクセサリー遺伝子をも有する。
【0004】
レトロウイルスベクターは、遺伝子運搬のための一般的道具であり、レトロウイルスベクターが有する非再配列(unrearranged)型の単一コピーの遺伝子を非常に広範囲の細胞に運搬する能力は、遺伝子を細胞に運搬する上で最適である。組換え(リコンビナント)型レトロウイルスベクターは、宿主細胞ゲノムに導入遺伝子(トランスジーン)の組込み(インテグレーション)を可能にするが、大部分のレトロウイルスは、分裂細胞にのみ遺伝子導入ができる。このことは、肝細胞、筋肉繊維、造血幹細胞(HSC)及び神経細胞の様な、非増殖性細胞に対するin vivo遺伝子導入のためにこれらを使用することを制限する可能性がある。非分裂細胞は、身体において圧倒的に多い長期生存型の細胞であり、肝臓、筋肉及び脳を含む遺伝子導入の最も望ましい標的とみなされる。
【0005】
レンチウイルスは、レトロウイルスの下位群であり、非分裂細胞に感染することができる。これらのウイルスには、HIV-1、HIV-2、SIV、EIAV及びFIVがあるが、これらに限定されない。レンチウイルスは、gag、pol及びenv遺伝子を有し、更に2個の長末端反復(LTR)配列に隣接したその他のアクセサリー遺伝子を有する。
レトロウイルスベクターの使用に基づく遺伝子導入の主な課題は、挿入による突然変異誘発や2重鎖DNAの存在によるDNA損傷応答の誘導を最小にしながら、安定した導入遺伝子の発現を達成することである。挿入による突然変異誘発を避ける1つの方法は、ゲノム上の特定の部位を標的に導入遺伝子組込みを行うことである。
【0006】
挿入による突然変異誘発を最小にして導入遺伝子の発現を得る1つの方法は、非組込み型レンチウイルス(NIL)ベクターを作成することである。NILベクターは、インテグラーゼタンパク質自体を無能にする又はウイルスLTRにおけるインテグラーゼ認識配列(att)を変化させる突然変異の組合せを導入することにより作られてきた(例えば、Yanez-Munoz他、(2006)Nat Med 12(3):348-353; Nightigale他、(2006) Mol Ther13(6):1121-1132を参照)。最近のin vitro及びin vivoの研究により、NILベクターは安定した導入を媒介し、高レベルの導入遺伝子発現を可能にすることが分かってきた(例えば、Yanez-Munov他、(2006)Nat Med 12(3):348-353; Nightigale他、(2006) Mol Ther13(6):1121-1132を参照)。そのため、ベクター組込みを必要とせずに、レンチウイルスにより媒介された遺伝子導入及び発現の高い効率を、in vivoにおいて利用することが可能になった。しかし、上記の方法で作成されたベクターの形は、線型や3種類の環状エピソームベクター型である。エピソーム形の大部分を構成するこの線型DNA型が存在することで、遊離した2重鎖DNA末端の存在によるDNA損傷応答を誘導する可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、改善された組込み欠損ベクターシステムを提供するものであり、その最終産物は、均一な分布の、1-LTRを含む環状ベクター型であり、これらはDNA損傷応答の誘導の危険性を減少させて、動物細胞に遺伝子を導入することを媒介できる。1-LTRのみが形成されるという事実により、非組込みベクターのより良い調節が可能になる。更に、新しい組込み欠損ベクターシステムは、FLIP及びCreを媒介とするベクター組込みを含む、しかしこれらに限定されない、環状のベクター型に基づく応用分野において、現在用いられている非組込み型レトロウイルスシステムより顕著に効率が良い。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以下、本発明の幾つかの態様を紹介し、多くの場合、これらの態様の変化した態様及び置き換えた態様を紹介する。これらは、無数のかつ変化した態様の単なる例示である。与えられた態様の1又はそれ以上の代表的な特徴の記載も同様に例示である。このような態様は、通常記載した特徴とともに又は特徴なしに存在することができる;同様に、これらの特徴は、概要に紹介された又はされてないに関係なく、本発明の他の態様に適用できる。過度な繰り返しを除くために、本概要は、これらの特徴の全ての可能な組合せを紹介しないし、示唆しない。
【0009】
本発明は、機能性ポリプリントラクト(PPT)を欠いた組込み欠損レトロウイルスベクター導入カセットを提供する。幾つかの態様において、このレトロウイルスベクター導入カセットは、機能性中央ポリプリントラクト(cPPT)を欠く。幾つかの態様において、このレトロウイルスベクター導入カセットは、異種の配列を含む。
【0010】
本発明は、異種のヌクレオチド配列、1又は2個のレトロウイルス長末端反復(LTR)、パッケージングシグナル、rev応答配列及び真核生物プロモーターから成り、機能性PPTを欠く単離された核酸を提供する。幾つかの態様において、この核酸は、ウイルスの複製起点又は宿主によるベクター核酸の複製を直接若しくは間接的に媒介できる配列を含む
。幾つかの態様において、この核酸は、2個のLTRの間にバクテリアの複製起点及びバクテリアの選択マーカーを有する。幾つかの態様において、このウイルスの複製起点は、Epstein-BarrウイルスOriP及びSV40複製起点からなる群から選択される。幾つかの態様において、宿主によるベクター核酸の複製を直接若しくは間接的に媒介できる配列は、(a)宿主細胞複製装置により認識される配列、(b)宿主細胞複製装置と結合及び/又は宿主細胞複製装置を調節できるタンパク質をコードする配列、及び(c)(b)のタンパク質と結合できる又は前記ベクターの配列を認識できるタンパク質をコードする配列、からなる群から選択される。
【0011】
幾つかの態様において、この異種の配列は、1又は2以上のマーカー遺伝子、治療遺伝子、抗ウイルス遺伝子、抗腫瘍遺伝子、サイトカイン遺伝子、抗原をコードする遺伝子、宿主クロマチンと結合できる配列、宿主DNA及び宿主クロマチン及びベクターの核酸と結合できる蛋白質をコードする配列、DNAメチル化活性を有するタンパク質をコードする配列、DNAメチル化活性、DNA脱メチル化活性及び/又はシチジン脱アミノ化活性を有するタンパク質をコードする配列、並びにこれらの組合せからなる群から選択される。幾つかの態様において、この異種の配列は、Oct4、Nanog、Klf4、Sox2、FGF-4、Ssea-1、Stat-3及びMycのような、しかしこれらに限定されない、誘導された多分化性幹細胞(iPS)の脱分化及び/又は樹立と関係する遺伝子のヌクレオチド配列である。幾つかの態様において、このマーカー遺伝子は、β−ガラクトシダーゼ遺伝子、ヒグロマイシン遺伝子、ブラストシジン遺伝子、MGMT遺伝子、ネオマイシン遺伝子、ピューロマイシン遺伝子、シトシンデアミナーゼ遺伝子、分泌性アルカリ性ホスファターゼ遺伝子、蛍光タンパク質遺伝子及びこれらの組合せからなる群から選択される。幾つかの態様において、この核酸は、機能性cPPTを欠く。幾つかの態様において、この核酸は、転写後の調節エレメント(PRE)を含む。幾つかの態様において、このPREはWoodchuck(北米産のマーモット)肝炎ウイルス転写後調節エレメントを含む。
【0012】
幾つかの態様において、本発明の核酸はベクターに含まれている。幾つかの態様において、このベクターは単一LTRのみを含む。幾つかの態様において、このベクターは、LTRのU3領域に自己不活化欠失を有する。幾つかの態様において、U3領域のこの欠失部分は、誘導プロモーターに置換される。幾つかの態様において、このベクターは、部位特異的組み換え部位を含む。幾つかの態様において、この部位特異的組み換え部位は、LTRのU3領域にある。幾つかの態様において、部位特異的組み換え部位は、loxP及びFRTからなる群から選択される。幾つかの態様において、このベクターは、LTRのU3領域に制限部位を有する。幾つかの態様において、このベクターは、少なくとも2種の異なるレトロウイルスからの配列を含む。幾つかの態様において、この少なくとも2個のこのレトロウイルスは、レンチウイルスを含む。幾つかの態様において、このベクターLTRは、少なくとも2種の異なるレトロウイルスからの配列を含む。幾つかの態様において、この少なくとも2個のこのレトロウイルスは、レンチウイルスを含む。幾つかの態様において、このベクターは、少なくとも2種の異なるレトロウイルスからの配列及びウイルス粒子内でベクターの交差パッキングを提供するcis配列をコードする少なくとも1種の配列を含む。幾つかの態様において、このcis配列は、RRE、このRREに隣接する領域からのEnv遺伝子断片及びcPPTからなる群から選択される。
【0013】
本発明はまた、本発明のベクターを含む組み換えレトロウイルス粒子を提供する。幾つかの態様において、この組み換えレトロウイルス粒子は、遺伝子治療における使用を意図する。
本発明はまた、標的細胞を本願発明の組み換えレトロウイルス粒子に感染させて産生されるレトロウイルスプロウイルスを提供する。
本発明はまた、本願発明のレトロウイルスプロウイルスのmRNA又は他のRNAを提供する。
本発明はまた、本願発明のレトロウイルスベクター及びこのレトロウイルスベクターをパッケージングにするために必要な1又は2以上のタンパク質をコードする少なくとも1以上の構築体を含む誘導レトロウイルスベクターパッケージング細胞株を提供する。
【0014】
本発明はまた、レトロウイルスベクターキットを提供する。幾つかの態様において、このレトロウイルスキットは、(a)機能性PPTを欠く組込み欠損レトロウイルスベクター導入カセット、及び(b)このレトロウイルスベクターをパッケージングするために必要な1又は2以上のタンパク質をコードする少なくとも1個の構築体を含むパッケージング細胞株から成る。
本発明はまた、組込み欠損ベクター粒子の製法を提供する。幾つかの態様において、この製法は、パッケージング細胞株に、機能性PPTを欠く組込み欠損レトロウイルスベクター導入カセットをトランスフェクトする段階から成り、該パッケージング細胞株がパッケージングされるレトロウイルスベクターのためのタンパク質を提供する。
本発明はまた、動物ゲノムへのヌクレオチド配列の組込み無しに、動物細胞内で所定のヌクレオチド配列を発現させる方法を提供する。幾つかの態様において、この方法は、1又は2以上の細胞を本願発明の組込み欠損レトロウイルス粒子に感染させることから成る。
【0015】
本発明はまた、所定のヌクレオチド配列を宿主細胞ゲノムに部位特異的に挿入する方法を提供する。幾つかの態様において、この方法は、(a)適合しうる宿主細胞に、所定のヌクレオチド配列及び1又は2以上の部位特異的組み換え配列の実施可能な組合せを含む請求項3又は13に記載の組み換え欠損ベクターを形質導入する段階、及び(b)該適合する宿主細胞へ、該組み換え配列における部位特異的組込みを媒介できるヌクレアーゼ又はリコンビナーゼをコードする配列から成る核酸を遺伝子導入又は形質導入する段階から成り、この(b)の遺伝子導入又は形質導入する段階が、(a)とは別の段階又は(a)と同じ段階で行われてもよく、またこの所定のヌクレオチド配列は、該宿主細胞のゲノムに部位特異的に挿入される。
幾つかの態様において、この組み換え配列における部位特異的組込みを媒介できるリコンビナーゼは、Cre又はFLPである。幾つかの態様において、この(b)の遺伝子導入又は形質導入する段階は、(a)と同じ段階で行われ、かつこのヌクレアーゼ又はリコンビナーゼをコードする配列は、(a)の組み換え欠損ベクターである。幾つかの態様において、この(b)の遺伝子導入又は形質導入する段階は、(a)と同じ段階で行われ、かつ前記ヌクレアーゼ又はリコンビナーゼをコードする配列は、(a)の換え欠損ベクターとは別のベクター、プラスミド又は核酸分子である。
【0016】
本発明はまた、所定のヌクレオチド配列を宿主細胞ゲノムに非特異的に挿入する方法を提供する。幾つかの態様において、この方法は、(a)宿主細胞に、所定のヌクレオチド配列及び1又は2以上の部位特異的組み換え配列の実施可能な組合せを含む本願発明の組み換え欠損ベクターを形質導入する段階、及び(b)該宿主細胞へ、該宿主ゲノムへの組込みを媒介できるトランスポザーゼをコードする配列から成る核酸を遺伝子導入又は形質導入する段階から成り、この(b)の遺伝子導入又は形質導入する段階は、(a)とは別の段階又は(a)と同じ段階で行われてもよく、またこの所定のヌクレオチド配列は、該宿主細胞のゲノムに挿入される。幾つかの態様において、この(b)の遺伝子導入又は形質導入する段階は、(a)と同じ段階で行われ、かつこのトランスポザーゼをコードする配列が、(a)の組み換え欠損ベクターである。幾つかの態様において、この(b)の遺伝子導入又は形質導入する段階は、(a)と同じ段階で行われ、かつこのトランスポザーゼをコードする配列は、(a)の組み換え欠損ベクターとは別のベクター、プラスミド又は核酸分子である。幾つかの態様において、このトランスポゾン又はトランスポザーゼはマリナー(ショウジョウバエのmariner transposon)型である。幾つかの態様において、このトランスポゾン又はトランスポザーゼはSleeping Beauty(眠り姫)である。
【0017】
本発明の目的は、機能性ポリプリントラクトを欠く組込み欠損レトロウイルスベクター導入カセットを提供することである。
また、上記で述べられた本発明の目的は、本発明により全体又は部分的に達成され、また本願発明の他の目的は、以下に最善を尽くして記載し添付した図との関連で記載が進むに従い明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】エピソーム形成に影響する細胞因子を描写する概略図である。略語:LTR−長端末反復;RNA-ウイルスゲノムRNA;1-LTR-1個のLTRを持つ環状型; 2-LTR-2個のLTRを有する環状型; HR-宿主細胞相同組み換えをベースとしたDNA修復経路; NHEJ-宿主細胞非同種DNA末端結合(NHEJ)経路。
【図2】本発明の代表的レトロウイルスベクター導入カセットを示す概略図である。略語追記:Amp-アンピシリン抵抗をコードする配列;pUCori-pUCシリーズのベクターからの複製起点(Vieira & Messing (1982) Gene 19(3):259-268);CMV-主要即時型初期サイトメガロウイルスプロモーター;RRE-ヒト免疫不全ウイルス(HIV)のRev応答配列;cPPT−中央ポリプリントラクト;GFP−緑色蛍光タンパク質をコードする配列;PRE-転写後調節エレメント;ΔPPT-PPT欠失;U3Δ-自己不活化(SIN)を起こす欠失を含むLTRU3領域; R-LTR R領域; U5-LTR U5領域。
【図3】本発明のレトロウイルスベクター導入カセット(例えば、シャトルベクターpTK459)及び標準的ベクター(例えば、pTK113)を並べた比較を示す概略図である。
【図4】シャトルベクターをベースとしたHirt検定を用いた、異なるHIV-1エピソーム型の割合の解析を示す概略図である。標的細胞(例えば、293T細胞)に、標準的技法を用いて、ベクター粒子を遺伝子導入させ、またHirt抽出(Hirt(1967) J Mol Biol 26:365-369)を用いてベクター由来の2重鎖の環状DNAを抽出した。標準的技法を用いてバクテリアをこれらの環状型により形質転換し、環状ベクター型を含むバクテリアクローンを同定した。DNAを同定したバクテリアクローンから調製し、環状型を各1カ所切断する1又は2以上の制限酵素で消化し、消化した線型DNAをアガロースゲルで分離した。1LTR/2LTRの割合を線型分子の長さを測定して定めることができる。
【図5】PPT-及びPPT/cPPT-欠失ベクターによる1-LTR HIV-1エピソームの形成を示すSouthernブロット解析を示すゲルのオートラジオグラフである。293T細胞に伝統的なHIV-1ベクターvTK945(レーン1,4)、PPT-欠失ベクターvTK1023(レーン2,5)、又はPPT及びcPPT-欠失ベクター、vTK1039(レーン3,6)の何れかを形質導入した。16時間後(レーン1〜3)又は形質導入5継代後(レーン4〜6)形質導入した細胞から抽出したDNAについてSouthernブロット解析を行った。WTベクターvTK945により産生したエピソームベクターDNAの大部分は線型であった(レーン1)。更に、組込まれたvTK945ゲノムのみが5継代培養後に検出された(レーン4)。対照的に、vTK1023及びvTK1039の1-LTR型のみが形質導入24時間後に検出できた。これらのベクターのゲノムは、形質導入5継代後には検出できなかった(レーン5,6)という事実は、PPT欠失ベクターは、組込み欠損であることを示した(線型ベクター型を欠くことから予想されたように)。
【図6】1-LTR、2-LTR及び変異環状エピソームの相対的存在量を解析するために用いたシャトル−ベクター検定の結果を示す棒グラフである。293T細胞にPPT配列を有する(pTK1054;図7参照)又は有しない(TK1046;図7参照)組込み型又は非組込み型シャトルベクターを形質導入し、またエピソームを形質導入16時間後に抽出した。各形質導入を3通り行った。PPTの欠失は、2-LTR及び変異環状エピソームの減少をもたらし、同時に100%に及ぶ1-LTR環状エピソームの増加をもたらす。
【図7】シャトルベクターpTK1054及びシャトルベクターpTK1046の概略図である。図から分かるように、シャトルベクター(pTK1054)はPPT配列を含み、他方シャトルベクター(pTK1046)はこの配列を欠く。略語の追加:WPRE-Woodchuck肝炎ウイルス転写後調節エレメント。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
大きな遺伝子搭載物を非分裂細胞へ運搬するレトロウイルスベクターの能力は、1又は2以上の特別の核酸配列を細胞内に導入するための有望な道を拓く。しかしながら、有効な運搬様式の中にレトロウイルスベクターシステムの完全な能力を実現することは、現在のところレトロウイルスベクターにより誘導される挿入突然変異誘発の可能性により妨げられている。従って、本発明は、当該技術分野の様々な問題の中で、レトロウイルスベクターが媒介する挿入突然変異誘発に関わる危険性の問題に取り組み、組込み欠損レトロウイルスベクター並びにこれを作成及び使用する方法を提供する。
【0020】
非組込み型レトロウイルスベクターを作成する従来の方法は、線型ベクターDNAが宿主ゲノムに挿入されるベクターライフサイクルの組込み段階を阻害することを前提とする。これらの従来の方法では、非組込み型レトロウイルスベクターは、インテグラーゼ欠損のパッケージングシステムの使用又はベクターのattサイトの変異により作られた。そのため、これらの方法により作られたエピソームベクターの型は、線型又は1-LTR、2-LTR及び自己挿入産物(図1参照)を含む様々な環状DNA型を含む。
【0021】
これに対して、本発明では、組込みに先立つレトロウイルス逆転写過程を標的にすることにより、非組込み型レトロウイルスベクターを産生することに基づく。本発明の方法は、逆転写過程で線型ベクターDNAの産生を劇的に低下させること、及び実質的に1-LTR環状DNAのみを産生すること、に基づく。実質的に1-LTR型のみを産生するという事実は、非組込み型ベクターの制御をより良くさせる。1つの利点は、線型ベクターDNAの劇的な減少はDNA損傷修復応答を誘導する危険性を減らす。更にFLP及びCreを介するベクター組込みを含む、しかしこれに限定されない、環状ベクター型に基づく特別の応用の観点において、この新しい組込み欠損ベクターシステムは、現在用いられている非組込み型レトロウイルスシステムと比べて顕著により効率がよい。更に、ウイルスの複製起点、又は宿主細胞によるベクター核酸の複製を媒介することができる配列を含む本発明のエピソーム1-LTR型を、分裂する標的細胞内に維持することができる。逆に、一時的な遺伝子発現が望まれる応用において、本発明の複製起点を含まないエピソーム1-LTR型は、分裂細胞内に維持されないという理由で有用である。
【0022】
1.定義
本明細書で用いられる用語は特定の態様を記載することだけを目的とするためであり、制限するためではないことを理解すべきである。他に定義しなければ、本明細書で用いられる全ての技術的及び科学的用語は、本明細書に開示する対象事項が属する、当業者が通常理解する意味と同じである。本明細書に記載したものに類似した又は同等な如何なる方法及び材料も本明細書に開示した対象物の実施又は試験において用いることができるが、代表的な方法及び材料を本明細書において記載する。本明細書に記載された全ての出版物、特許申請、特許及び他の参照物は、その全体が参考文献として取り込まれている。
長年にわたる特許法の慣例に従い、用語"1つの"、"ある"及び"その"は、請求の範囲を含めて本申請において用いられたとき、"1又は2以上"を表す。
他の指示がなければ、この明細書及び請求の範囲に用いられる含有物、反応条件、その他の量を表す数字は全ての場合、用語"約"により修飾されていると理解すべきである。従って、逆に指示されなければ、本明細書及び添付の請求の範囲に述べられた数値的パラメータは、本明細書に開示した対象物によって得ようと追求された希望する特性によって変わりうる近似である。
【0023】
本明細書で用いる用語"約"は、重さ、時間、分量、その他の量のような測定可能な値を表す場合、特定の値から、ある態様では±20%、ある態様では±10%、ある態様では±5%、ある態様では±1%及びある態様では0.1%の変位を包含することを意味し、このような変位は、開示した方法を行うために、及び/又は開示した組成を使用するために、適切である。
本明細書で用いたように、用語"cis調節配列"又は"cis配列"は、当業者が通常理解するのと同じ意味を有し、即ち、DNA又はRNAの同一鎖上に位置する遺伝子の発現を調節するDNA又はRNAの領域である。
本明細書で用いるように、用語"適合しうる宿主細胞"は、そのゲノムの中に1又は2以上の部位特異的組み換え配列を有する宿主細胞を意味し、ゲノムの中の部位特異的組み換え配列は、本明細書において開示した組込み欠損ベクターの組み換え配列と互換性のある配列である。この適合しうる宿主細胞組み換え配列は、宿主ゲノムに所定のヌクレオチド配列を部位特異的に挿入するための本明細書に開示した方法において有用である。
【0024】
本明細書において用いるように、用語"構築体"は、DNA断片(複数)、RNA断片(複数)又はこれらの組合せを一つの細胞から他の細胞に移動させる核酸分子に関して用いることができる。用語"ベクター"は"構築体"と互換性を持って用いることができる。用語"構築体"は、プラスミド構築体;ファージミド構築体;コスミドベクター;及びPCR産物を含む、しかしこれに限定されない、線型核酸構築体;を含む、しかしこれらに限定されない、環状核酸構築体を含むことができる。
本明細書で用いる用語"遺伝子治療"は、患者内の適切な細胞(複数)に外来性の核酸を挿入することにより、患者の病的状態を治療するための一般的方法を表す。この核酸を、その機能が維持できるように細胞に挿入する、例えば、特定のポリペプチドを発現する能力を維持すること。ある症例では、外来性核酸の挿入により、治療上有効量の特定のポリペプチドの発現がもたらされる。
【0025】
核酸に関して用いられる用語"異種の"は、この核酸が、自然界では互いに同じ関係ではない1又は2以上の部分配列を含むことを示す。例えば、この核酸を、組み換えにより作ることができて、無関係の遺伝子から2又は3以上の配列を配置させて、新しい機能性核酸を作成することができる。幾つかの態様において、例えば、異なる遺伝子からコードする配列の発現を調節するために配置した1遺伝子からのプロモーターを、この核酸は有する。従って、コードする配列に関して述べると、このプロモーターは、異種である。用語"異種の"は、宿主細胞に対して固有でない、核酸に対して表すために用いることができる。本明細書の幾つかの態様において、用語"異種のヌクレオチド配列"は、"所定のヌクレオチド配列"と互換性がある。
本明細書で用いる"抽出した"は、自然に生ずる核酸配列、DNA断片、DNA分子、コードする配列又はオリゴヌクレオチドは、その自然の環境から取り除かれる又は合成分子又はクローン化した産物であることを意味する。
【0026】
"LTR"は長末端反復である。LTRは、レトロウイルスに見出される配列である。このLTR配列は、一般に少なくとも数百塩基長の、通常その末端に逆位反復を有し(しばしばTGAAで始まりTTCAで終わる)、挿入部位に隣接した細胞DNA配列内で2倍化した短直列反復と隣接する。短逆位反復は、完全長のウイルス、レトロトランスポゾン又はベクターDNAを宿主ゲノムに組込む際に必要とされる。組込み配列は時折、attachment(付着)のために、attと呼ばれる。このLTRの内部に、3種の特徴的な下位領域がある:U3 (5'-LTRから転写されるエンハンサー及びプロモーター領域)、R(RNAの両端での反復)及びU5 (5'-LTRから転写される)。このLTR及び隣接する配列(プライマー結合部位、スプライス部位、2量化結合配列及び取り込み配列)は、レトロウイルスベクターのcis作用性配列を含む。LTR核酸配列、例えば核酸断片又は部分、の起源は、マウスレトロウイルス、マウスVL30配列、レトロトランスポゾン、サルレトロウイルス、トリレトロウイルス、ネコレトロウイルス、レンチウイルス、トリレトロウイルス及びウシレトロウイルス、泡沫状ウイルスを含むがこれらに限定されない。
【0027】
本明細書で用いるように、用語"非機能性"は、それがin vivoで機能性であるように、機能しないエレメント(例えばPPT)を表わす。非限定的実施例として、句"非機能性PPT"は、不在、変異した又は修飾されてレトロウイルス内又はレトロウイルスに基づくベクター内でPPTにより通常行われる機能を行うことができないPPTを表すことができる。又は、あるいは更に、"非機能性PPT"は通常のin vivo及び/又はin vitroの機能をPPTが行うことを妨げるベクター内の位置に存在するPPTを表わすことができる。従って、幾つかの態様において、非機能性PPTは、欠失又はそのヌクレオチド配列中の他の突然変異により非機能性にされ、及び幾つかの態様において、非機能性PPTは、1又は2以上のその本来の生物活性を阻止する核酸内部の位置に存在することで非機能性にされる。
【0028】
用語"非組込み型"及び"組込み欠損"は本発明のウイルスベクター及びウイルス粒子を記載するために、本明細書では互換的に用いられる。本発明の非組込み型及び組込み欠損ウイルスベクター/粒子は、これらのベクター/粒子の形質導入が実質的に1-LTRエピソームのみの産生をもたらす様に、機能性PPTを欠く。線型2重鎖DNAの産生が劇的に減少する結果として、線型2重鎖DNA型を経由した宿主ゲノムへの核酸配列の挿入に対する通常の活性は実質的に除去される。
用語"核酸"は単鎖又は2重鎖型のデオキシリボヌクレオチド又はリボヌクレオチドポリマーを表し、及び他に制限されなければ、自然に生成されたヌクレオチドと同様に核酸に対してハイブリッド形成を行う自然のヌクレオチドの既知の類縁体を包含する。用語"核酸"、"ヌクレオチド配列"及び"ポリヌクレオチド配列は、本明細書では互換的に用いられる。
【0029】
用語"実施可能な組合せ"は、2又は3以上の異なる核酸配列の機能的な組み換えを表し、この組み換えで、互いの物理的な近接性により、1又は2以上の異なる核酸配列が異なる核酸の他の活性及び/又は挙動に影響を与えることになる。幾つかの態様において、所定のヌクレオチド配列は、1又は2以上の部位特異的組み換え配列を持った実施可能な組合せである。幾つかの態様において、所定のヌクレオチド配列を、1又は2以上の部位特異的組み換え配列上で、ヌクレアーゼ又はリコンビナーゼの操作により核酸内の所与の位置に組込むことができる。
用語"動作可能な連結"は、核酸発現制御配列(プロモーター又は一連の転写因子結合部位)及び第2の核酸配列の間の機能的な連結を表し、ここでこの発現制御配列は、第2の配列に対応した核酸の転写を命令する。
【0030】
"パッケージングカセット"は、パッケージングベクターにより形質導入された細胞によるウイルス粒子の産生のために必要な構成材料をコードする。このパッケージングカセットは、ウイルス粒子産生に必要な全ての構成材料を任意に含む、又はウイルスパッケージングに必要な全ての構成材料の部分集合を任意に含む。例えば、幾つかの態様において、パッケージング細胞に、1以上のパッケージングカセットを形質導入し、これらの1つは、ウイルス粒子を産生する上で相補的役割を有する。
本明細書で用いるように、用語"ポリヌクレオチド"は、単鎖、2重鎖又は高次構造を持つことに関係なく全ての形のDNA及びRNAを表わす。あるポリヌクレオチドは、化学的に合成可能であり、又は宿主細胞又は有機体から抽出できる。特別のポリヌクレオチドは、天然に存在する残基及び合成残基の両者を含むことができる。
本明細書で用いるように、用語"ポリプリントラクト"は、レトロウイルスRNA中に(又はレトロウイルスをベースとしたベクター由来のRNA中に)存在する約15ヌクレオチドの配列を表し、これはプラス鎖DNA合成のためのプライマー結合部位として働くことができる。例えば、Rausch 及び Le Grice (2004) Int J Biochem Cell Biol 36:1752-1766を参照されたい。
【0031】
"レトロウイルス"は、逆転写酵素を経由して複製する単鎖RNA、2重鎖RNAウイルス及びレトロウイルス粒子である。あるレトロウイルスは、複製能力がある又は複製の力がないことができる。代表的なレトロウイルスとしては、モロニーマウス白血病ウイルス(MoMuLV)、ハーベイマウス肉腫ウイルス(HaMuSV)、マウス乳癌ウイルスMuMTV)、テナガザル白血病ウイルス(GaLV)、ネコ白血病ウイルス(FLV)、ラウス肉腫ウイルス(RSV)、HTLV-1及びHTLV-2、マソン・ファイザー・サルウイルス(アカゲザル腫瘍化ウイルス)、ウシ白血病ウイルス、チンパンジー泡沫状ウイルス、ヒト免疫不全ウイルスHIV-1及びHIV-2、サル免疫不全ウイルス(SIV)、ネコ免疫不全ウイルス(FIV)及びウマ伝染性貧血ウイルス(EIAV)及び泡沫性ウイルスを含むがこれらに限定されない。
【0032】
本明細書で用いるように、用語"自己不活化"及びこれらの文法上の変形体はベクター及びこれらにコードされたウイルスを表し、これらが細胞内に入ると、感染した細胞内で転写的に不活性であるLTR(複数)を有する細胞型を産生する。一般的に、これは、ベクターのLTRに欠失又は活性を減らす変異を導入することにより達成できる。その様なものとして、"自己不活化欠失"はウイルスベクター(例えば、レトロウイルスベクター)内の欠失であり、逆転写後、ウイルスLTR(複数)内のプロモーター機能を欠く。しかしながら、幾つかの態様において、自己不活化ベクターは、動作可能に連結したヌクレオチド配列の直接の転写能を維持できる、ベクター本体内のプロモーター(例えば、単一LTRの外側又は2個のLTRの間)を含有する。
【0033】
本明細書内の幾つかの用語は互換性を持って用いることができる。従って、"ビリオン""ウイルス"、"ウイルス粒子"、"ウイルスベクター"、"ウイルス構築体"、"ベクター粒子"、"ウイルスベクター導入カセット"及び"シャトルベクター"はウイルス及びウイルス様粒子を表し、これらはウイルス様進入機構により細胞内に核酸を導入することができる。このようなベクター粒子は、ある条件下で、感染した細胞への遺伝子導入を媒介することができる。このような細胞を本明細書において、"標的細胞"と表わす。レトロウイルスベクターは、ウイルス感染過程を利用して遺伝子を導入するために使われてきた。レトロウイルスゲノム中の外来遺伝子クローンを、感染感受性がある又はレトロウイルスにより形質導入の感受性がある細胞に伝搬することができる。
【0034】
II.代表的態様
本明細書において、親レトロウイルスポリプリントラクト(PPT)が欠失し又はそうでなければ機能性PPTを欠いた組込み欠損レトロウイルスベクター導入カセット(図2及び図3に代表的態様を示す;またMa 及び Kafri (2004) Mol Ther 10(1):139-149; Bayer 他 (2008) Mol Ther 16(12):1968-1976)を参照されたい)を記載する。従って、本明細書に開示した幾つかの態様において、図2及び図3に示すが、これらに限定されない、組込み欠損レトロウイルスベクターを含む方法及び組成物が提供される。本明細書に開示した発明はまた、図2及び図3に示されたような組込み欠損レトロウイルスベクターを含むだけではなく、更にウイルスの複製起点、又は宿主が直接又は間接的にベクター核酸の複製を媒介することができる配列を含むことができる。幾つかの態様において、ウイルスの複製起点はEBV-OriP及びSV40複製起点を含むがこれらに限定されない。幾つかの態様において、ウイルス複製起点は、CMVプロモーターの上流に位置する。本明細書に記載されているレトロウイルスベクター組成物において、逆転写の間の線型ベクターDNAの産生は劇的に減少する。実際、本明細書に記載されたベクターからのベクター導入の過程で、産生したレトロウイルスベクターDNAは、1-LTRのみを含む実質的に均一なエピソーム2重鎖環状DNAである(図4〜6参照)。
【0035】
例えば、シャトルベクター検定を用いて、1-LTR、2-LTR及び変異環状エピソームの相対存在量を解析した。293T細胞に、PPT配列を伴う(pKT1054;図7参照)又は伴わない(TK1046;図7参照)、組込み型(IN+)又は非組込み型(IN-)シャトルベクターの形質導入を行い、エピソームを形質導入16時間後に収穫した。各遺伝子導入を3通り行った。図6に示すように、PPTの欠失により、2-LTR及び変異環状エピソームが減少し、同時に1-LTR環状エピソームが100%にまで増加した。図7は、PPT配列を含むシャトルベクターpTK1054、及びPPT配列を欠くシャトルベクターpTK1046の概念図である。
【0036】
本明細書に記載の方法及び組成物による、1-LTRエピソームHIV-1ベクター形成の1つの可能なメカニズムを特徴付け及び代表的データを図4及び図5に示す。1-LTRべクター型のレベルは、相同組み換えを欠損した細胞株において減少しなかったという事実に基づき、1-LTRベクター型の生成における逆転写の役割が焦点となった。より詳細には、ベクターのポリプリントラクト(PPT)の欠失は、線型2重鎖DNAベクター型の産生を劇的に減少させ、同時に組込み欠損ベクターを提供する(図5)ことが示された。図5に示すように、1-LTRベクター型のみがPPT欠失ベクターを導入した293T細胞に検出できた。特定の操作理論に囚われることを望まないが、PPTの欠失により、cPPTの上流に位置する、隠れた(クリプティック)RNAプライマーからのプラス鎖DNA合成が可能となると信じられる。これは、"第二ジャンプ"を阻害することができて、1-LTRベクター型の形成のみをもたらす。あるいは、又は更に、第二鎖合成がこのプライマー結合部位(PBS)及び/又は隠れた部位から開始できる。
【0037】
本発明の幾つかの態様において、機能性ポリプリントラクト(PPT)を欠く組込み欠損レトロウイルスベクター導入カセットを含む組成物が提供される。幾つかの態様において、異種のヌクレオチド配列、1又は2個のレトロウイルス長末端反復(LTR)、パッケージングシグナル、rev応答成分及び真核生物のプロモーターを含み、機能性PPTを欠く単離された核酸が提供される。幾つかの態様において、単離された核酸は更に、2個のLTRの間に位置するバクテリア複製起点を含む。幾つかの態様において、単離された核酸は更に、バクテリア選択マーカー(即ち、バクテリアのコード配列で、発現がなければバクテリア生育を妨げ及び/又は殺作用がある化合物の存在下での生育を、この発現が可能にする)を含む。幾つかの態様において、単離された核酸は更に、ウイルスの複製起点、又は宿主が直接又は間接的にベクター核酸の複製を媒介することができる配列を含む。幾つかの態様において、ウイルス複製起点は、Epstein Barrウイルス(EBV) OriP及びSV40の複製起点を含むことができるがこれらに限定されない。幾つかの態様において、核酸を含むベクターが提供される。幾つかの態様において、ベクターを含む組み換えレトロウイルス粒子が提供される。
【0038】
幾つかの態様において、ベクター及びパッケージングされるレトロウイルスベクターに必要なタンパク質をコードする少なくとも1つの構築体を含む誘導レトロウイルスベクターをパッケージングする細胞株を提供する。
幾つかの態様において、レトロウイルスベクターをパーケージするためのタンパク質を提供する、パッケージングする細胞株に機能性PPTを欠く組込み欠損レトロウイルスベクター導入カセットを遺伝子導入する方法を、組込み欠損ベクター粒子を産生するために提供する。
幾つかの態様において、機能性PPTを欠く組込み欠損レトロウイルスベクター導入カセット;及びレトロウイルスベクターをパッケージングするに必要なタンパク質をコードする少なくとも1つの構築体を含む、レトロウイルスベクターキットを提供する。
【0039】
幾つかの態様において、実質的に動物ゲノムへのヌクレオチド配列の組込み無しに、動物細胞において所定のヌクレオチド配列の遺伝子発現を得るために、所定のヌクレオチド配列を含む本発明の組込み欠損レトロウイルス粒子を細胞に感染させる方法を提供する。幾つかの態様において、ウイルス複製起点、又は宿主がベクター核酸の複製を媒介することができる配列、を含む本明細書に開示した組込み欠損レトロウイルスベクター導入カセットを、分裂する標的細胞内に維持することができる。逆に表現すると、一時的遺伝子発現のみが望まれる応用に於いて、複製起点を有しない本発明の組込み欠損レトロウイルスベクター導入カセットは、分裂細胞内に維持されないということで有用である。例えば、幾つかの態様において、本発明の複製起点を欠く組込み欠損レトロウイルスベクター導入カセットは、幹細胞における所定の遺伝子の一時的発現を得るために有用である。幾つかの態様において、所定の遺伝子は、幹細胞の分化を調節する遺伝子である。幾つかの態様において、この幹細胞は、遺伝子治療に於いて重要である。
【0040】
幾つかの態様において、宿主が直接又は間接的にベクター核酸の複製を媒介することができる配列は、宿主細胞の複製装置により認識される配列;宿主細胞複製装置と結びつく及び/又は調節するタンパク質をコードする配列;及び宿主細胞複製装置と結びつく及び/又は調節するタンパク質と結合できるタンパク質をコードする配列;を含むが、これに限定されない。
【0041】
従って、非組込みレトロウイルスベクター組成物及び本発明の方法を、挿入突然変異誘発を避けるために用いることができる。幾つかの態様において、動物ゲノムを標的としたヌクレオチド配列の組込みにより、動物細胞内に所定のヌクレオチド配列の遺伝子発現を行わせるための方法を提供する。幾つかの態様において、本発明の組込み欠損ベクター組成物は、有用であるが、その理由は、FLP及びCreが介在するベクター組込みを含む、しかしこれらに限定されない、環状ベクター型に基づく応用との関連で、このベクター組成物は、現在用いられている非組込みレトロウイルスシステムより顕著により効率が良いからである。例えば、非組込みレトロウイルスベクター組成物及び本発明の方法を用いて、宿主のゲノムを標的とした所定の遺伝子の組込みを得ることができるが、その際、非組込みレトロウイルスベクター組成物及び本明細書に開示した方法を、既知の自発的複製システム及び部位特異的再結合システムと組み合わせる。幾つかの態様において、本発明の組込み欠損レトロウイルスベクター導入カセットは、幹細胞に於いて所定の遺伝子発現を得るために重要である。幾つかの態様において、幹細胞は遺伝子治療に於いて重要である。
【0042】
本発明の幾つかの態様において、異種の配列を含む、機能性ポリプリントラクト(PPT)を欠く組込み欠損レトロウイルスベクター導入カセットを提供する。幾つかの態様において、この異種の配列は、1又は2以上のマーカー遺伝子、治療遺伝子、抗ウイルス遺伝子、抗腫瘍遺伝子、サイトカイン遺伝子、抗原をコードする遺伝子、宿主クロマチンと結合できる配列、宿主DNA及び宿主クロマチン及びベクターの核酸と結合できるタンパク質をコードする配列、DNAメチル化活性を有するタンパク質をコードする配列、DNA脱メチル化活性、シトシンデアミナーゼ活性及びこれらの組合せを含む、しかしこれらに限定されない。幾つかの態様において、宿主クロマチンと結合することができる配列は、マトリクス結合領域(MAR)及びスカフォルド(足場)/マトリクス接着領域(S/MAR)からなる群から選択される。幾つかの態様において、マーカー遺伝子は、β−ガラクトシダーゼ遺伝子、ヒグロマイシン遺伝子、ブラストシジン遺伝子、MGMT遺伝子、ネオマイシン遺伝子、ピューロマイシン遺伝子、シトシンデアミナーゼ遺伝子、分泌アルカリホスファターゼ遺伝子、蛍光タンパク質遺伝子及びこれらの組合せを含む、しかしこれらに限定されない。
【0043】
幾つかの態様において、本明細書に開示された対象事項の核酸を含むベクターを提供する。幾つかの態様において、そのベクターは、単一LTRのみを含む。幾つかの態様において、そのベクターは、少なくとも2個の異なるレトロウイルスからの配列を含む。幾つかの態様において、その少なくとも2個の異なるレトロウイルスは、レンチウイルスを含む。幾つかの態様において、そのベクターLTRは、少なくとも2個の異なるレトロウイルスからの配列を含む。幾つかの態様において、少なくとも2種の異なるレトロウイルスは、レンチウイルスを含む。幾つかの態様において、このベクターは、少なくとも2種の異なるレトロウイルスからの配列を含み、かつその配列の少なくとも1個の配列は、ウイルス粒子の中でベクターの交差パッケージングを提供するcis配列をコードする。幾つかの態様において、cis配列は、RRE及びcPPTに隣接する領域からのEnv遺伝子断片であるRREを含む、しかしこれに限定されない。幾つかの態様において、機能性PPTを欠く組込み欠損レトロウイルスベクター導入カセットは、少なくとも2個の異なるレトロウイルスからの配列及びPPTを含むレトロウイルスベクター導入カセット含むが、このPPTは事実上非機能的である。
【0044】
幾つかの態様において、本発明は、所定のヌクレオチド配列をホストゲノムに部位特異的に挿入するための方法を提供し、この方法は、本明細書に開示した組込み欠損ベクターを適合しうる宿主細胞に導入することを含み、所定のヌクレオチド配列及び1又は2以上の部位特異的再結合配列の実施可能な組合せを含み;及び適合しうる宿主細胞に再結合配列に部位特異的組込みを媒介することができるヌクレアーゼ又はリコンビナーゼをコードする配列を含む核酸を遺伝子導入する又は核酸で形質導入することを含む。
【0045】
幾つかの態様において、第2の遺伝子導入/形質導入段階は無く、かつ遺伝子導入/形質導入は、全て同一段階において生ずる。幾つかの態様において、再結合配列において部位特異的組込みを行いうるリコンビナーゼは、Cre又はFLPである。幾つかの態様において、第2の遺伝子導入/形質導入段階はなく、かつヌクレアーゼ又はリコンビナーゼをコードする配列を含む核酸は、組込み欠損ベクターである。幾つかの態様において、遺伝子導入/形質導入段階は、同一段階で生じ、かつヌクレアーゼ又はリコンビナーゼをコードする配列を含む核酸は、組込み欠損ベクター以外の別なベクター又はプラスミド又は核酸分子上にある。幾つかの態様において、部位特異的組込みを媒介できるヌクレアーゼ又はリコンビナーゼにより認識される配列は、loxP部位又は偽loxP部位である。幾つかの態様において、その配列は、Cre又はCre変異に対する認識部位である。幾つかの態様において、挿入されるべき遺伝子は、3'LTR配列のU3領域に位置することができる。幾つかの態様において、そのベクターは、1又は2以上のレポーター遺伝子を含む。
【0046】
幾つかの態様において、本発明は、所定のヌクレオチド配列を宿主細胞ゲノムに非特異的に挿入するための方法を提供するが、その方法は:宿主細胞に、所定のヌクレオチド配列及び1又は2以上のトランスポゾン配列の実施可能な組合せを含む、本明細書で開示した対象事項の組込み欠損ベクターを導入すること;及び適合しうる宿主細胞に、宿主ゲノムへの組込みを媒介することができるトランスポザーゼをコードする配列を含む核酸を遺伝子導入又はこの核酸で形質導入すること;を含む。幾つかの態様において、第2の遺伝子導入/形質導入段階はなく、かつ遺伝子導入/形質導入は全て同一段階で生ずる。幾つかの態様において、遺伝子導入/形質導入は全て同一段階で生じ、かつトランスポザーゼをコードする配列を含む核酸は、組込み欠損ベクターである。幾つかの態様において、遺伝子導入/形質導入は全て同一段階で生じ、かつトランスポザーセをコードする配列を含む核酸は、組込み欠損ベクター以外の別なベクター又はプラスミド又は核酸分子上にある。幾つかの態様において、トランスポゾン及びトランスポザーゼは、Sleeping Beauty(眠り姫)のようなマリナー(ショウジョウバエmariner transposon)タイプである(例えば、米国特許第6,613,752号; Robertson (1993) Nature 362:241-245; Ivics 他 (1997) Cell 91:501-510; Plasterk 他(1999) Trends Genet 15:326-332; Zayed 他. (2003) Nuc. Acid Res 31(9):2313-2322; Arkhipova 他 (2005) Proc Natl Acad Sci USA 102:11781-11786を参照されたい)。
【0047】
本明細書に記載した対象事項は、非組込みレトロウイルスベクター組成物及び方法の開発を記載する。ベクター導入過程において、本明細書に記載した対象事項の組成物及び方法により産生したレトロウイルスベクターゲノムは、実質的に均一であり、エピソーム2重鎖1-LTR環状型DNAである。実質的に1-LTR型のみが産生されるという事実は、非組込みベクターのより良い調節を可能にする。従って、本明細書に開示した対象物の、非組込みレトロウイルスベクター組成物及び方法は、動物細胞における所定のヌクレオチド配列の遺伝子発現を得る無数の用途及び利点を有し、その用途及び利点としては、FLP及びCreが媒介するベクター組込みを含む、しかしこれらに限定されない、環状ベクター型に基づく応用と組み合わせて用いるとき、DNA損傷修復応答の誘導の危険性の減少及び顕著な効率の増加である。
【0048】
本発明の様々な詳細事項は、本発明の範囲から離れることなく変更できることを理解すべきである。更に、上記の記載は、描写する目的で行ったものであり、制限する目的で行ったものではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機能性ポリプリントラクト(PPT)を欠く組込み欠損レトロウイルスベクター導入カセット。
【請求項2】
機能性中央ポリプリントラクト(cPPT)を欠く請求項1に記載のレトロウイルスベクター導入カセット。
【請求項3】
異種の配列を含む請求項1に記載のレトロウイルスベクターカセット。
【請求項4】
異種のヌクレオチド配列、1又は2個のレトロウイルス長末端反復(LTR)、パッケージングシグナル、rev応答配列及び真核生物プロモーターから成り、機能性PPTを欠く単離された核酸。
【請求項5】
ウイルスの複製起点又は宿主によるベクター核酸の複製を直接若しくは間接的に媒介できる配列を含む請求項4に記載の核酸。
【請求項6】
2個のLTRの間にバクテリアの複製起点及びバクテリアの選択マーカーを有する請求項4又は5に記載の核酸。
【請求項7】
前記ウイルスの複製起点が、Epstein-BarrウイルスOriP及びSV40複製起点からなる群から選択される請求項5に記載の核酸。
【請求項8】
前記宿主によるベクター核酸の複製を直接若しくは間接的に媒介できる配列が、下記(a)〜(c)からなる群から選択される請求項5に記載の核酸。
(a)宿主細胞複製装置により認識される配列、
(b)宿主細胞複製装置と結合及び/又は宿主細胞複製装置を調節できるタンパク質をコードする配列、及び
(c)(b)のタンパク質と結合できる又は前記ベクターの配列を認識できるタンパク質をコードする配列
【請求項9】
前記異種の配列が、1又は2以上のマーカー遺伝子、治療遺伝子、抗ウイルス遺伝子、抗腫瘍遺伝子、サイトカイン遺伝子、抗原をコードする遺伝子、宿主クロマチンと結合できる配列、宿主DNA及び宿主クロマチン及びベクターの核酸と結合できる蛋白質をコードする配列、DNAメチル化活性を有するタンパク質をコードする配列、並びにこれらの組合せからなる群から選択される請求項4に記載のベクター。
【請求項10】
前記マーカー遺伝子が、β−ガラクトシダーゼ遺伝子、ヒグロマイシン遺伝子、ブラストシジン遺伝子、MGMT遺伝子、ネオマイシン遺伝子、ピューロマイシン遺伝子、シトシンデアミナーゼ遺伝子、分泌性アルカリ性ホスファターゼ遺伝子、蛍光タンパク質遺伝子及びこれらの組合せからなる群から選択される請求項6に記載のベクター。
【請求項11】
機能性cPPTを欠く請求項4に記載の核酸。
【請求項12】
転写後の調節エレメントを含む請求項4に記載の核酸。
【請求項13】
請求項4に記載の核酸を含むベクター。
【請求項14】
LTRを一つだけ含む請求項3又は13に記載のベクター。
【請求項15】
前記LTRのU3領域に自己不活化欠失を有する請求項3又は13に記載のベクター。
【請求項16】
前記U3領域の欠失部分が誘導プロモーターに置換された請求項15に記載のベクター。
【請求項17】
部位特異的組み換え部位を含む請求項3又は13に記載のベクター。
【請求項18】
前記部位特異的組み換え部位が、前記LTRのU3領域にある請求項17に記載のベクター。
【請求項19】
前記部位特異的組み換え部位が、loxP及びFRTからなる群から選択される請求項17に記載のベクター。
【請求項20】
前記LTRのU3領域に制限部位を有する請求項3又は13に記載のベクター。
【請求項21】
前記ベクターが、少なくとも2種の異なるレトロウイルスからの配列を含む請求項3又は13に記載のベクター。
【請求項22】
前記少なくとも2種の異なるレトロウイルスが、レンチウイルスを含む請求項21に記載のベクター。
【請求項23】
前記ベクターLTRが、少なくとも2種の異なるレトロウイルスからの配列を含む請求項3又は13に記載のベクター。
【請求項24】
前記少なくとも2種の異なるレトロウイルスが、レンチウイルスを含む請求項23に記載のベクター。
【請求項25】
前記ベクターが、少なくとも2種の異なるレトロウイルスからの配列及びウイルス粒子内でベクターの交差パッキングを提供するcis配列をコードする少なくとも1種の配列を含む請求項3又は13に記載のベクター。
【請求項26】
前記cis配列が、RRE、該RREに隣接する領域からのEnv遺伝子断片及びcPPTからなる群から選択される請求項25に記載のベクター。
【請求項27】
請求項3又は13に記載のベクターを含む組み換えレトロウイルス粒子。
【請求項28】
遺伝子治療における使用のための請求項27に記載の組み換えレトロウイルス粒子。
【請求項29】
標的細胞を請求項27に記載の組み換えレトロウイルス粒子に感染させて産生されるレトロウイルスプロウイルス。
【請求項30】
請求項29に記載のレトロウイルスプロウイルスのmRNA。
【請求項31】
請求項29に記載のレトロウイルスプロウイルスのRNA。
【請求項32】
請求項3又は13に記載のレトロウイルスベクター及びこのレトロウイルスベクターをパッケージングにするために必要な1又は2以上のタンパク質をコードする少なくとも1以上の構築体を含む誘導レトロウイルスベクターパッケージング細胞株。
【請求項33】
下記(a)及び(b)から成るレトロウイルスベクターキット。
(a)機能性PPTを欠く組込み欠損レトロウイルスベクター導入カセット
(b)このレトロウイルスベクターをパッケージングするために必要な1又は2以上のタンパク質をコードする少なくとも1個の構築体を含むパッケージング細胞株
【請求項34】
パッケージング細胞株に、機能性PPTを欠く組込み欠損レトロウイルスベクター導入カセットをトランスフェクトする段階から成り、該パッケージング細胞株がパッケージングされるレトロウイルスベクターのためのタンパク質を提供する、組込み欠損ベクター粒子の製法。
【請求項35】
動物ゲノムへのヌクレオチド配列の組込み無しに、動物細胞内で所定のヌクレオチド配列を発現させる方法であって、1又は2以上の細胞を請求項27に記載の組込み欠損レトロウイルス粒子に感染させることから成る方法。
【請求項36】
(a)適合しうる宿主細胞に、所定のヌクレオチド配列及び1又は2以上の部位特異的組み換え配列の実施可能な組合せを含む請求項3又は13に記載の組み換え欠損ベクターを形質導入する段階、及び
(b)該適合する宿主細胞へ、該組み換え配列における部位特異的組込みを媒介できるヌクレアーゼ又はリコンビナーゼをコードする配列から成る核酸を遺伝子導入又は形質導入する段階
から成り、該(b)の遺伝子導入又は形質導入する段階が、(a)とは別の段階又は(a)と同じ段階で行われてもよく、また
(c)該所定のヌクレオチド配列が、該宿主細胞のゲノムに部位特異的に挿入される、
該所定のヌクレオチド配列を宿主細胞ゲノムに部位特異的に挿入する方法。
【請求項37】
前記組み換え配列における部位特異的組込みを媒介できるリコンビナーゼが、Cre又はFLPである請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記(b)の遺伝子導入又は形質導入する段階が、(a)と同じ段階で行われ、かつ前記ヌクレアーゼ又はリコンビナーゼをコードする配列が、前記組み換え欠損ベクターである請求項36に記載の方法。
【請求項39】
前記(b)の遺伝子導入又は形質導入する段階が、(a)と同じ段階で行われ、かつ前記ヌクレアーゼ又はリコンビナーゼをコードする配列が、前記組み換え欠損ベクターとは別のベクター、プラスミド又は核酸分子である請求項36に記載の方法。
【請求項40】
(a)宿主細胞に、所定のヌクレオチド配列及び1又は2以上の部位特異的組み換え配列の実施可能な組合せを含む請求項3又は13に記載の組み換え欠損ベクターを形質導入する段階、及び
(b)該宿主細胞へ、該宿主ゲノムへの組込みを媒介できるトランスポザーゼをコードする配列から成る核酸を遺伝子導入又は形質導入する段階から成り、該(b)の遺伝子導入又は形質導入する段階が、(a)とは別の段階又は(a)と同じ段階で行われてもよく、また
(c)該所定のヌクレオチド配列が、該宿主細胞のゲノムに挿入される、
該所定のヌクレオチド配列を宿主細胞ゲノムに非特異的に挿入する方法。
【請求項41】
前記(b)の遺伝子導入又は形質導入する段階が、(a)と同じ段階で行われ、かつ前記トランスポザーゼをコードする配列が、前記組み換え欠損ベクターである請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記(b)の遺伝子導入又は形質導入する段階が、(a)と同じ段階で行われ、かつ前記トランスポザーゼをコードする配列が、前記組み換え欠損ベクターとは別のベクター、プラスミド又は核酸分子である請求項40に記載の方法。
【請求項43】
前記トランスポゾン又はトランスポザーゼがマリナー(ショウジョウバエのmariner transposon)型である請求項40に記載の方法。
【請求項44】
前記トランスポゾン又はトランスポザーセがSleeping Beauty(眠り姫)である請求項43に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2011−505835(P2011−505835A)
【公表日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−538155(P2010−538155)
【出願日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際出願番号】PCT/US2008/086409
【国際公開番号】WO2009/076524
【国際公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【出願人】(501345323)ザ ユニバーシティ オブ ノース カロライナ アット チャペル ヒル (52)
【氏名又は名称原語表記】THE UNIVERSITY OF NORTH CAROLINA AT CHAPEL HILL
【住所又は居所原語表記】308 Bynum Hall,Campus Box 4105,Chapel Hill,North Carolina 27599−4105, United States of America
【Fターム(参考)】