説明

ポリプロピレンの不織布およびその用途

【課題】外観が良好でしかも伸縮性に優れ、残留歪が小さくポリオレフィンとの接着性に優れるポリプロピレン系の不織布を提供することにある。
【解決手段】本発明は、アイソタクティックポリプロピレン(i):1〜40重量部と、プロピレンが45〜89モル%、エチレンが10〜25モル%および炭素数4〜20のα-オレフィン;残部が共重合してなるプロピレン・エチレン・α-オレフィン共重合体(ii)(ただし、炭素数4〜20のα-オレフィンの共重合量は30モル%を超えることはない):60〜99重量部とを含有するポリプロピレン樹脂組成物を製造し紡糸して得られた繊維と、他の樹脂からなる繊維とを混合してなることを特徴とする不織布である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、伸縮性に優れ、残留歪が小さく、優れた感触を有する不織布およびその用途に関する。さらに詳しくは本発明は、特定のポリプロピレン組成物を成形してなる優れた特性を有する不織布およびその用途に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリプロピレンは、安価で剛性、耐湿性および耐熱性に優れていると共に、成形性も良好であるので、このような特性を利用して大量の不織布が製造され衛生材料をはじめとして種々の用途に用いられてはじめている。
【0003】
しかしながら、ポリプロピレンは剛性が高く、伸縮性に欠けるとの特性を有しているために、伸縮性および残留歪が小さいことが要求となる分野においてはポリプロピレンからなる不織布を使用することができないとされている。このような伸縮性が必要な部分には、これまで熱可塑性のポリウレタンが用いられることが多い(特許文献1)。
【0004】
ポリウレタンの代わりに軟質のポリオレフィンを用いる(特許文献2)ことで一定の改善は見られるが、上記のような伸縮性を必要とされる用途にでは成形体の外観が劣り、また感触も不良であるという問題がある。
【0005】
また軟質ポリオレフィン/アイソタクティックポリプロピレンを連続重合する(特許文献3)ことで弾性ファイバー類への使用する例もあるが軟質ポリオレフィン/アイソタクティックポリプロピレンのブレンド比と伸縮性への効果が明確に示されていない。
【0006】
更に軟質ポリオレフィン/高MFR(250〜550)の低粘度ホモポリプロピレンのブレンド組成物を繊維等に加工する際に加工性・柔軟性(ドレープ性)が得られる。(特許文献4)しかしながら伸縮性の記載がない。
【0007】
一方、スチレンからなる成分単位を有する共重合体を用いると伸縮性は優れるが強度が充分に発現しないだけでなく、ポリオレフィンからなる不織布あるいはポリオレフィンからなるフィルムとの接着性が不良で衛生材料などとして使用する場合に接着の問題が障害になり、自由な製品設計ができにくいという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】WO02/65679号パンフレット
【特許文献2】WO93/15251号パンフレット
【特許文献3】WO2003/040201号パンフレット
【特許文献4】WO01/094462号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、ポリプロピレンおよびプロピレン・エチレン・α−オレフィン共重合体を用いた新規な不織布およびその用途を提供することを目的としている。
さらに本発明は、外観が良好でしかも伸縮性に優れ、残留歪が小さくポリオレフィンと優れた接着性を有するポリオレフィン系の不織布およびその用途を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の不織布は、
アイソタクティックポリプロピレン(i):1〜40重量部と、
プロピレンが45〜89モル%、エチレンが10〜25モル%および炭素数4〜20のα-オレフィン;残部が共重合してなるプロピレン・エチレン・α-オレフィン共重合体(ii)(ただし、炭素数4〜20のα-オレフィンの共重合量は30モル%を超えることはない):60〜99重量部とを含有するポリプロピレン樹脂組成物を製造し紡糸して得られた繊維と、他の樹脂からなる繊維とを混合してなることを特徴とする不織布である。
【0011】
本発明の不織布は、不織布を延伸倍率150%の条件で延伸した後の残留歪みが50%未満であることが好ましい。
さらに本発明の不織布は、衛生材料、使い捨てオムツ、生理用品、吸収性物品、使い捨てマスク、バンソウコウ、貼布剤、使い捨て手術着、レスキューガウン、各医療用フィルムまたはシートとして使用することができる。
【0012】
本発明の不織布は、アイソタクティックポリプロピレン(i)と、
所定量のプロピレン、エチレン、必要により他のα−オレフィンが共重合したプロピレン・エチレン・α−オレフィン共重合体(ii)を用いて形成された繊維を用いて形成されており、延伸性で、かつ150%延伸後の不織布に残留歪みが小さく、弾力性を有する不織布として使用することができる。しかも、本発明の不織布を製造する際の紡糸工程において、糸切れなどが生じにくく、効率よく本発明の不織布を製造することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の不織布は、外観が良好でしかも伸縮性に優れ、残留歪が小さい伸縮性の不織布である。しかも、本発明の不織布は、ポリウレタン系の不織布と異なり、不織布を用いて所定の形状に付形する際に、ポリオレフィン系の接着剤を用いても非常に良好に接着することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、この実施例11〜13で使用した不織布製造装置の一例を示す概念図である。
【図2】図2は、図1に示した不織布製造装置に配置されたノズルのパターン配置の部分図面である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に本発明の不織布およびその用途について具体的に説明する。
本発明の不織布は、アイソタクティックポリプロピレン(i)と、所定量のプロピレン、エチレン、必要により他のα−オレフィンが共重合したプロピレン・エチレン・α−オレフィン共重合体(ii)とからなるプロピレン系重合体から形成された樹脂組成物を用いて紡糸することにより形成される繊維から形成される不織布である。
【0016】
以下、本発明の不織布を構成するプロピレン系重合体組成物について具体的に説明する。
本発明の不織布を形成する繊維を形成する樹脂は、アイソタクティックポリプロピレン(i)と、特定量のプロピレン、エチレン、必要によりα−オレフィンが共重合したプロピレン・エチレン・α−オレフィン共重合体(ii)とからなるオレフィン系組成物から形成されている。
【0017】
まず初めに、プロピレン系重合体組成物に含まれる各成分(i)、(ii)について説明する。
アイソタクティックポリプロピレン(i)
本発明では、不織布を製造するためのプロピレン系樹脂組成物を形成するために、特定の特性を有する特定のプロピレン重合体が用いられる。本発明で使用するポリプロピレンは、下記の特性を有していればホモポリプロピレンであっても、プロピレン・α-オレフィンランダム共重合体であっても、プロピレンブロック共重合体であってもよいが、好ましくはホモポリプロピレンあるいはプロピレン-αオレフィンランダム共重合体である。
【0018】
本発明で用いられるアイソタクティックポリプロピレン(i)のメルトフローレート(MFR;ASTM D1238、230℃、2.16kg荷重下)は、組成物にした後のMFRが不織布の成形に好ましいものであれば良く、特に制限はないが、通常0.1〜2000g/10分、好ましくは0.1g/10分以上250g/10分未満、更に好ましくは0.1〜100g/10分である。またDSC測定により求められるアイソタクティックポリプロピレンの融点は、通常は120℃以上であり、130℃以上であることが好ましく、150℃以上であることが更に好ましい。
【0019】
本発明で使用するアイソタクティックポリプロピレン(i)がプロピレン・α-オレフィンランダム共重合体である場合にα-オレフィンとしては、エチレン及びまたは炭素数4〜20のα−オレフィンから選ばれることが好ましく、このようなα−オレフィンは、通常は0.3〜7モル%の量で、好ましくは0.3〜6モル%、更に好ましくは0.3〜5モル%の量で含有している。
【0020】
本発明で用いられるアイソタクティックポリプロピレン(i)は、種々の方法により製造することができその製造方法に特に制限はないが、例えばチーグラー・ナッタ触媒あるいはメタロセン触媒などの重合触媒の存在下に重合して製造されるアイソタクティックポリプロピレンは、市場で容易に入手することができると共に、このような市販のアイソタクティックポリプロピレンをそのまま利用できる。
【0021】
プロピレン・エチレン・α-オレフィンランダム共重合体(ii)
本発明で使用するプロピレン・エチレン・α-オレフィンランダム共重合体(ii)は、プロピレン成分が45〜89モル%、エチレン成分が10〜25モル%、さらに炭素数4〜20のα−オレフィン成分が0〜30モル%の範囲内の量で共重合していることが必要である。このような量でプロピレン成分、エチレン成分、および、α−オレフィン成分が共重合したプロピレン・エチレン・α-オレフィンランダム共重合体(ii)を使用することにより、アイソタクティックポリプロピレン(i)と共同して、伸縮性があり、残留歪みが小さく、しかも紡糸しやすいオレフィン系組成物を得ることができる。
【0022】
特に本発明で使用するプロピレン・エチレン・α-オレフィンランダム共重合体(ii)においてはプロピレン成分の共重合量は、好ましくは45〜80モル%、特に好ましくは50〜75モル%であり、エチレン成分の共重合量は、好ましくは10〜23モル%、特に好ましくは12〜23モル%である、さらに、プロピレン・エチレン・α-オレフィンランダム共重合体(ii)に必要に応じて共重合される炭素数4〜20のα-オレフィン成分は、好ましくは、0〜25モル%、特に好ましくは、0〜20モル%の範囲内にある。
【0023】
このような量でプロピレン成分、エチレン成分、さらには、炭素数4〜20のα-オレフィン成分が共重合したプロピレン・エチレン・α-オレフィンランダム共重合体(ii)は、アイソタクティックポリプロピレンとの相溶性が良好となり、組成物とすることで得られるプロピレン系重合体組成物からは、上述の好ましい態様の不織布を製造することができる。
【0024】
本発明で使用する上記プロピレン・エチレン・α-オレフィンランダム共重合体(ii)について135℃のデカリン中で測定した極限粘度[η]は、通常0.01〜10dl/g、好ましくは0.05〜10dl/gの範囲にある。このようにプロピレン・エチレン・α-オレフィンランダム共重合体(ii)の極限粘度[η]が、前記範囲内にあると、アイソタクティックポリプロピレンと混合してオレフィン系組成物を製造した際に、両者を均一に混練することができるので、このオレフィン径組成物を紡糸して得られる不織布も均一性が高く、良好な特性を有するようになる。
【0025】
上記のようなプロピレン・エチレン・α−オレフィン共重合体(ii)の中でも、本発明では、JIS K6301に準拠して、JIS3号ダンベルを用い、スパン間:30mm、引っ張り速度:30mm/minで23℃にて測定した、100%歪での応力(M100)が通常は4Mpa以下、好ましくは3Mpa以下、更に好ましくは2Mpa以下である共重合体を使用することが望ましい。
【0026】
さらに、プロピレン・エチレン・α-オレフィンランダム共重合体(ii)は、X線回折で測定した結晶化度が20%以下、好ましくは0〜15%であるものが好ましく利用できる。またプロピレン・エチレン・α-オレフィンランダム共重合体(ii)は、単一のガラス転移温度を有しており、かつ示差走査熱量計(DSC)によって測定したガラス転移温度(Tg)が、通常は-10℃以下、好ましくは-15℃以下の範囲にあることが望ましい。
【0027】
このプロピレン・エチレン・α-オレフィンランダム共重合体(ii)は、示差走査型熱量計(DSC)における吸熱曲線において融点(Tm、℃)が存在する場合には、融解熱量ΔHが30J/g以下であり、かつプロピレン含量(C3含量(mol%))と融解熱量ΔH(J/g)との関係において以下の関係式が成り立つものが好ましく利用できる。
【0028】
ΔH<345Ln(C3含量mol%)-1492
ただしこの場合に、プロピレン含量は、76≦C3含量(mol%)≦90の範囲にある。
またGPCにより測定した分子量分布(Mw/Mn、ポリスチレン換算、Mw:重量平均分子量、Mn:数平均分子量)は4.0以下、好ましくは3.0以下、より好ましくは2.5以下であることが好ましい。
【0029】
上記のようなプロピレン・エチレン・α-オレフィン共重合体(ii)は、本発明の目的を損なわない範囲で、その一部が極性モノマーによりグラフト変性される等、変性されていてもよい。また、同様に目的を損なわない範囲で、他のモノマー、ジエン等が共重合されていてもよい。
【0030】
プロピレン・エチレン・α-オレフィンランダム共重合体(ii)の製造
本発明で使用するプロピレン・エチレン・α-オレフィンランダム共重合体(ii)を製造するに際し用いる触媒としては特に制限はなく公知のチーグラー・ナッタ触媒、メタロセン触媒あるいはポストメタロセン触媒と称せられる触媒を使用して製造することができる。特に本発明では共重合性の良好なメタロセン触媒あるいはポストメタロセン触媒を使用することが好ましい。
【0031】
本発明のプロピレン・エチレン・α-オレフィンランダム共重合体(ii)を構成するα−オレフィンは、炭素数4〜20のα-オレフィンであり、このような炭素数4〜20のα−オレフィンの例としては、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、4-メチル-1- ペンテン、3-メチル-1- ペンテン、1-オクテン、3-メチル-1- ブテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラドデセン、1-ヘキサデセン、1-オクタデセンおよび1-エイコセンなどを挙げることができる。
【0032】
プロピレン系樹脂組成物
本発明の不織布を製造するに用いるプロピレン系樹脂組成物は、上記アイソタクティックポリプロピレン(i)1〜40重量に対し、プロピレン・エチレン・α-オレフィン共重合体(ii)を60〜99重量部の量で含有している。本発明では好ましくはアイソタクティックポリプロピレン(i)1〜30重量に対し、プロピレン・エチレン・α-オレフィン共重合体(ii)を70〜99重量部の量で含有していることが望ましい。さらに本発明では、より好ましくはアイソタクティックポリプロピレン(i)1〜25重量に対し、プロピレン・エチレン・α-オレフィン共重合体(ii)を75〜99重量部の量で含有していることが望ましい。なお、アイソタクティックポリプロピレン(i)と、プロピレン・エチレン・α-オレフィン共重合体(ii)との合計量は100重量部である。
【0033】
上記プロピレン系樹脂組成物としては、このプロピレン系樹脂組成物について示差走査型熱量計(DSC)で測定した吸熱曲線において、100℃以上の領域に融点(Tm、℃)の最大ピークが存在し、その最大ピークにおける融解熱量が5〜40J/gの範囲にあることである。
【0034】
また、本発明で使用するプロピレン系樹脂組成物は、メルトフローレート(ASTM D 1238,230℃、荷重2.16kg)が、通常0.1〜2000g/10分、好ましくは0.1g/10分以上250g/10分未満、更に好ましくは0.1〜100g/10分である。
【0035】
プロピレン系樹脂組成物の製造
本発明の不織布を製造するに際しては、予めアイソタクティックポリプロピレン(i)とプロピレン・エチレン・α-オレフィン共重合体(ii)とを混練してプロピレン系樹脂組成物を製造した後に、このプロピレン系樹脂組成物を用いて紡糸して不織布に成形するのが好ましい。ここでプロピレン系樹脂組成物は、各成分を上記のような範囲で種々公知の方法、たとえば、多段重合法、ヘンシェルミキサー、V-ブレンダー、リボンブレンダー、タンブラブレンダー等で混合する方法、あるいは混合後、一軸押出機、二軸押出機、ニーダー、バンバリーミキサー等で溶融混練後、造粒あるいは粉砕する方法を採用して製造することができる。また不織布製法に応じて成形性を確保する目的で必要に応じて分解促進剤(デグラ剤)として有機過酸化物等を添加してもよい。また混合時に添加した分解促進剤(デグラ剤)が反応して選択される不織布製造法に応じた流動性が得られていても良い。
【0036】
本発明のプロピレン樹脂組成物には、本発明の目的を損なわない範囲で、耐候性安定剤、耐熱安定剤、帯電防止剤、スリップ防止剤、アンチブロッキング剤、防曇剤、滑剤、顔料、染料、可塑剤、老化防止剤、塩酸吸収剤、酸化防止剤、親水化剤等の添加剤が必要に応じて配合されていてもよい。また、本発明の趣旨を逸脱しない限り、その他の重合体等を、本発明の目的を損わない範囲で配合することもできる。
【0037】
プロピレン系樹脂組成物からなる不織布の製法
上記のようにして調製されたプロピレン系樹脂組成物から不織布を製造する方法としては、例えば、短繊維乾式法、短繊維湿式法、メルトブローン法、スパンボンド法、フラッシュ法、スパンレース法(最新の紡糸技術117頁、繊維学会編(株)高分子刊行会、1992年)などの方法を挙げることできる。上記のような方法を採用して不織布を製造するに際しては、使用するプロピレン樹脂組成物のメルトフローレートの採用する方法に対応させて調整することが好ましい。例えば、スパンボンド法では、230℃で測定したメルトフローレートが1〜200g/min、特に10〜100g/minの範囲内にあることが好ましい。メルトブローン法では10g/min以上、特に20〜1000g/minの範囲内にあることが好ましい。
【0038】
上記のようにして紡糸したウエッブからなる本発明の不織布においては、この不織布を構成する繊維の径を、0.1〜100μm程度にするのが一般的である。本発明の不織布では、比較的細い繊維(例えば10μm以下)と、比較的太い繊維(例えば10μmより太いもの)とを混合してあるいは積重ねて用いても良い。本発明の不織布を形成する繊維の長さに特に制限はなくスパンボンド法では通常連続繊維からなり、メルトブローン法では連続繊維または一部不連続繊維であり、乾式では通常1cm程度〜数十cmの繊維を使用するのが一般的である。
【0039】
上記のようにして形成された繊維に交絡を形成することにより、不織布とすることができる。このような交絡を形成する方法としては、例えば、ニードルパンチ、ウオータージェット、超音波シール等の手段による交絡処理、あるいは熱エンボスロールによる熱融着処理を行うことができる。特に本発明では熱エンボスロールによる熱融着処理により交絡を形成する方法が有利である。熱エンボスロールによる熱融着処理の場合、エンボスロールのエンボス面積率は、適宜決められるが、通常5〜30%である。
【0040】
上記のようにして得られる本発明の不織布は、良好な伸縮性を有しており、本発明の不織布を150%伸長した後、この不織布に残留する残留歪が50%未満である。特に本発明ではこの残留歪が40%以下にすることが好ましく、30%以下にすることが特に好ましい。
【0041】
このように本発明の不織布における上記残留歪みの上限を50%未満とすることにより、本発明の伸縮性不織布を衣料、衛生材料、スポーツ材料に用いた場合であっても、製品の型崩れなどを目立たなくすることが出来る。
【0042】
本発明の不織布は、通常は30%以上の応力保持率を有しており、特にこの応用保持力が35%以上であることが好ましく、さらに40%以上であることが特に好ましい。上記応力保持率を30%以上にすることにより、本発明の不織布が良好な伸縮性を有するようになり、本発明の不織布を例えば衣料、衛生材料、スポーツ材料に用いた場合に製品の型崩れなどを目立たなくすることができる。
【0043】
本発明の不織布は高い強度を有しており、本発明の不織布の25mm幅における目付けあたりの最大強度は、通常は0.05〜1N/目付、好ましくは0.1〜1N/目付である。上記最大強度を0.05N/目付以上にすることにより、本発明の不織布は優れた伸縮性を有するようになり、例えば本発明の不織布を、衣料、衛生材料、スポーツ材料に用いた場合にも、着用時あるいは着用中に破れなどの発生を抑制することができる。
【0044】
本発明の不織布は、上述のように高い伸縮性を有しており、最大点伸度は、通常150%/以上、好ましくは200%以上、さらに好ましくは250%以上である。上記最大点伸度を150%以上にすることにより、本発明の不織布を、衣料、衛生材料、スポーツ材料のような伸縮性が必要な用途に用いた場合であっても、着用時あるいは着用中に破れなどの発生を抑制することができる。
【0045】
本発明の不織布の目付けには特に制限はないが、通常ポリオレフィンを不織布としたときの目付けであればよいが特に1〜200g/m2とするのが一般的である。
また本発明の不織布は、その目的を達成する範囲であれば、上記詳述のアイソタクティックポリプロピレン(i)とプロピレン・エチレン・α−オレフィン共重合体(ii)からプロピレン系樹脂組成物を製造し紡糸して得られた繊維と、他の樹脂からなる繊維との混合物であってもよい(以下、混合繊維からなる不織布と称する)。
【0046】
ここでいう他の樹脂とは、その目的からは、通常、ポリオレフィンを主成分とするものが挙げられる。例えば、ホモポリプロピレン、10重量%以下のエチレンを含むプロピレンランダムコポリマー(またはプロピレン-エチレンランダム共重合体)、低密度直鎖状ポリエチレン、高密度ポリエチレン等ポリオレフィン類、また例えばホモポリエチレンと高密度ポリエチレンの混合物等ポリオレフィン同士の混合物、等が挙げられる。特に、ホモポリプロピレン、10重量%以下のエチレンを含むプロピレンランダムコポリマー(またはプロピレン-エチレンランダム共重合体)を主成分とする場合は、更に伸縮性、感触に優れた不織布を得ることができる。これらの樹脂は、本発明の目的を損なわない範囲で、ポリオレフィン系以外の他の樹脂、耐候性安定剤、耐熱安定剤、帯電防止剤、スリップ防止剤、アンチブロッキング剤、防曇剤、滑剤、顔料、染料、可塑剤、老化防止剤、塩酸吸収剤、酸化防止剤、親水化剤等の添加剤が必要に応じて配合されていてもよい。
【0047】
この混合繊維からなる不織布の製造方法は従来公知の方法が適用でき、たとえば、特開2002−242069号公報に記載された方法が挙げられる。このような場合、他の樹脂からなる繊維の配合比率は、通常は不織布全体の70重量%以下、好ましくは50重量%以下、更に好ましくは30重量%以下である。
【0048】
さらに本発明の不織布は、本発明の目的を損わない範囲で他の不織布、あるいはフィルム等と積層してもよい。
本発明に係る積層体は、上記伸縮性不織布からなる層を少なくとも1層含有する積層体である。この積層体は、以下の方法により製造することができる。上記方法と同様にして繊維を堆積させた後、この堆積物の上に、たとえば、伸長性を有する不織布を積層する。次いで、これらを融着する。融着方法としては、得に限定されないが、上記と同様の交絡処理や熱融着処理、接着剤による接合が挙げられ、なかでも熱エンボス加工が好ましく用いられる。接着剤により接合する場合、前記接着剤としては、たとえば酢酸ビニル系、塩化ビニル系、ポリビニルアルコール系等の樹脂系接着剤;スチレンーブタジエン系、スチレン‐イソプレン系、ウレタン系等のゴム系接着剤などが挙げられる。また、これらの接着剤を、有機溶剤に溶解した溶剤系接着剤およびエマルジョン化した水性エマルジョン接着剤などが挙げられる。これらの接着剤の中でも、スチレン‐イソプレン系、スチレン‐ブタジエン系等のゴム系のホットメルト接着剤が、良触感を損なわない点で好ましく用いられる。
【0049】
伸長性を有する不織布としては、前記伸縮性不織布の最大点伸度に追従できるものであれば特に限定されないが、積層体を、たとえば、使い捨てオムツなどの衛生材料に使用する場合、良触感、高伸縮性、かつ優れたヒートシール性が求められるため、ポリオレフィン類、特にポリエチレンおよび/またはポリプロピレンを含むポリマーからなる不織布が好ましく用いられる。また、熱エンボス加工を施して前記積層体を形成する場合には、前記伸長性不織布としては、本発明に係る伸縮性不織布と良好な相溶性、接着性を示すポリマーからなる不織布が好ましい。
【0050】
伸長性不織布を形成する繊維は、たとえば、モノコンポーネント型、芯鞘型、分割型、海島型、サイドバイサイド型の繊維が好ましく、これらの混合繊維であってもよい。
また、本発明に係る積層体として、前記伸縮性不織布からなる層に熱可塑性ポリマーフィルムを積層したものが挙げられる。この熱可塑性ポリマーフィルムは通気フィルムや開孔フィルムであってもよい。
【0051】
このようにして得られた積層体は、前記プロピレン系重合体組成物からなる伸縮性不織布層が優れたヒートシール性を有するため、層間での剥離が起こらない。また、かつ極めて良好な触感を有する伸縮性積層体である。
【0052】
このような場合に積層される他の繊維層は、通常は不織布全体目付の70重量%以下、好ましくは50重量%以下、更に好ましくは30重量%以下である。また、本発明を損なわない範囲で延伸加工などの加工を施しても良い。延伸加工方法は、従来公知の方法が適用でき、部分的に延伸する方法であっても、全体的に延伸する方法であってもよい。また、一軸延伸してもよいし、二軸延伸してもよい。
【0053】
本発明の不織布は、伸縮性に富んでおり、各種衛生材料、使い捨てオムツ、生理用品、吸収性物品、使い捨てマスク、バンソウコウ、貼布剤、使い捨て手術着、レスキューガウン等、各医療用フィルムあるいはシート、メディカルガウン、手術用キャップ、使い捨てキャップなどとして使用することができる。
【0054】
以下、本発明の不織布の具体的な用途につい例を挙げて詳細に記述する。
吸収性物品
使い捨ておむつあるいは生理用品等の吸収性物品は、身体へのフィット性が求められる。本発明の不織布は優れた伸縮性を有しているので、この伸縮性を利用して、具体的には、展開型使い捨ておむつあるいはパンツ型使い捨ておむつには、トップシート、バックシート、ウェストバンド(延長テープ、サイドフラップ)、ファスニングテープ、立体ギャザー、レッグカフ、またパンツ型使い捨ておむつのサイドパネル等の部位に好適に用いることができる。これら部位に本発明品を使用することで、装着者の動きに追随し装着者の身体にフィットすることが可能となる。
【0055】
使い捨てマスク
使い捨てマスクは一般に、口許周辺被覆部と、前記被覆部の両側から延びる耳掛け部から構成されている。マスク着用時には、一度耳掛け部を伸ばして耳に引っ掛ける必要があり、伸縮性が必要となる。また、身体の動きにも追随する必要がある。本発明の不織布は伸縮性を有しているので、使い捨てマスクの耳掛け部に使用することでこれら要求を満足することが可能となる。
【0056】
バンソウコウ、貼布剤
絆創膏等に用いられる基材には、肌にかぶれを起こさないための充分な通気性、ごわごわ感を感じさせない柔軟性、肌に対する充分なフィット性が要求されてきた。本発明の不織布は、伸縮性を有するとともに、通気性を有し、更に優れた伸縮性を有するためこれら絆創膏等に用いられる基材として好適に使用される。
【0057】
使い捨て手術着、レスキューガウン
使い捨て手術着、レスキューガウンなどの腕、肘、肩、袖など可動間接部には通気性、伸縮性が求められる。本発明の不織布は、通常の不織布と同様に不織布であるため通気性を有し、更に優れた伸縮性を有するためこれら使い捨て手術着、レスキューガウンなどの腕、肘、肩など可動間接部に用いられる基材として好適に使用される。
【0058】
また本発明品はポリプロピレン組成物から構成されているため、このような使い捨て用途において主に使用されるポリオレフィン部材との接着性にも優れた効果を発揮する。すなわち、上記のようにして本発明の不織布を使用する場合、例えば接合部分にホットメルト型の接着剤などを用いて貼着することにより、接合することができる。このようなホットメルト型のポリオレフィン系のホットメルト接着剤、アクリル系のホットメルト型接着剤などがあるが、本発明の不織布は、これらのホットメルト型接着剤に対して非常に親和性が良いので、確実に接着を行うことができる。
【0059】
このように本発明の不織布は、伸縮性に優れ残留歪の小さいポリプロピレン系の不織布であり、衛生材料をはじめとして不織布として種々の用途に利用することができる。
特にオムツにおいては伸長性に優れ、伸縮性に優れ残留歪が小さいことからはきやすくさらに身体の動きに追随した保持性が得られ、さらに不織布で有るため通気性が良いことから特に優れた性能を付与できる。
【実施例】
【0060】
以下、本発明について実施例に基づいてさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例などよって限定されるものではない。
以下、物性試験条件等を記す。
【0061】
ポリプロピレン組成物の評価
〔融点(Tm)およびガラス転移温度(Tg)〕
DSCの吸熱曲線を求め、最大ピーク位置の温度をTmとする。測定は、試料をアルミパンに詰め、100℃/分で200℃まで昇温し、200℃で10分間保持した後、100℃/分で-150℃まで10℃/minで降温し、次いで10℃/分で昇温する際の吸熱曲線より求めた。
〔極限粘度[η]〕
135℃、デカリン中で測定した。
〔Mw/Mn〕
GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)を用い、オルトジクロロベンゼン溶媒で、140℃で測定した。
【0062】
不織布の評価
〔引張試験〕
不織布の最大点伸度
得られた不織布から、流れ方向(MD)5.0cm、横方向(CD)2.5cmの試験片5枚を切り取った。この試験片を、引張試験機(インテスコ社製、MODEL201N型)の治具に、チャック間30mm、引張速度30mm/minの条件で延伸し、最大荷重時の伸度(単位:%)を求めた。
【0063】
150%延伸後の不織布の残留歪み
得られた不織布から、流れ方向(MD)5.0cm、横方向(CD)2.5cmの試験片5枚を切り取った。この試験片を、引張試験機(インテスコ社製、MODEL201N型)の治具に、チャック間30mm、引張速度30mm/min、延伸倍率150%の条件で延伸し、その後、直ちに同じ速度で原長まで回復させて、引張荷重が0Nになった時点の歪みを測定した。歪みの平均値を残留歪み(単位:%)として評価した。
【0064】
成形性
以下に示す不織布を製造する際の紡糸しやすさを以下の基準で評価した。
紡糸成形性の評価
ノズル面近傍の紡糸状況を目視で観察し、5分間あたりの糸切れ回数(単位:回/5min)を数えた。ここで、「糸切れ」は、成形中に1本の繊維が単独で切れる現象、または繊維同士が融着して繊維が切れた場合などを含むものとする。
【0065】
触媒の調製
本発明の合成例において使用した触媒は、次のようにして調製した。
重合開始時においては、トリフェニルカルベニウム(テトラキスペンタフルオロフェニル)ボレートのトルエン溶液を0.38ml、[ジメチル(t-ブチルアミド)(テトラメチル-η5-シクロペンタジエニル)シラン]チタンジクロライドのトルエン溶液を0.38ml採り、さらに希釈用のトルエンを4.24ml加えて、トリフェニルカルベニウム(テトラキスペンタフルオロフェニル)ボレートがB換算で0.002ミリモル/リットルに、[ジメチル(t-ブチルアミド)(テトラメチル-η5-シクロペンタジエニル)シラン]チタンジクロライドがTi換算で0.0005ミリモル/リットルとなるトルエン溶液を5ml調製し、触媒溶液とした。
【0066】
使用した樹脂の合成
〔合成例1〕
(プロピレン・エチレン・ブテン共重合体の合成、PEB-1)
充分に窒素置換した容量2000mlの重合装置に、833mlの乾燥ヘキサンと、100gの1-ブテンと、トリイソブチルアルミニウム(1.0mmol)を常温で仕込んだ後、重合装置内温を40℃に昇温し、プロピレンを導入して系内の圧力を0.76MPaになるように加圧した後に、エチレンを導入して系内圧力を0.8MPaに調整した。
【0067】
次いで、ジメチルメチレン(3-tert-ブチル-5-メチルシクロペンタジエニル)フルオレニルジルコニウムジクロライド0.001mmolとアルミニウム換算で0.3mmolのメチルアルミノキサン(東ソー・ファインケム社製)を含有するトルエン溶液を重合器内に添加し、内温40℃、系内圧力をエチレンを導入することにより0.8MPaに保ちながら20分間重合し、20mlのメタノールを添加し重合を停止した。脱圧後、2リットルのメタノール中で重合溶液からポリマーを析出し、真空下130℃、12時間乾燥した。得られたポリマーは、36.4gであり、極限粘度[η]は1.81dl/gであり、ガラス転移温度Tgは−29℃であり、プロピレン含量は76モル%でありエチレン含量は17モル%であり、ブテン含量は8モル%であり、GPCにより測定した分子量分布(Mw/Mn)は2.1であった。またDSC測定による融解熱量は明瞭な融解ピークは確認できなかった。
【0068】
上記のようにして得られたプロピレン・エチレン・1-ブテン共重合体をPEB-1とする。
〔合成例2〜7〕
合成例1と同様に各モノマー分圧を調整することで構成するモノマー含有量を変更したプロピレン系樹脂組成物(表1)が得られた(PEB-2、PEB-3,PEB-4,PE-5,PEB-6)。
【0069】
【表1】

【0070】
〔合成例8〕
(エチレン・1-ブテン共重合体の合成、EB-9)
下記に示す方法によりエチレン・1−ブテン共重合体(EB-9)を製造した。
【0071】
<触媒溶液の調整>
トリフェニルカルベニウム(テトラキスペンタフルオロフェニル)ボレートを18.4mg採り、トルエンを5ml加えて溶解させ、濃度が0.004ミリモル/mlのトルエン溶液を調整した。また、〔ジメチル(t-ブチルアミド)(テトラメチル-η5-シクロペンタジエニル)シラン〕チタンジクロライドを1.8mg採り、トルエンを5ml加えて溶解させ、濃度が0.001ミリモル/mlのトルエン溶液を調整した。
【0072】
重合開始時においては、トリフェニルカルベニウム(テトラキスペンタフルオロフェニル)ボレートのトルエン溶液を0.38ml、〔ジメチル(t-ブチルアミド)(テトラメチル-η5-シクロペンタジエニル)シラン〕チタンジクロライドのトルエン溶液を0.38ml採り、さらに希釈用のトルエンを4.24ml加えて、トリフェニルカルベニウム(テトラキスペンタフルオロフェニル)ボレートがB換算で0.002ミリモル/リットルに〔ジメチル(t-ブチルアミド)(テトラメチル-η5-シクロペンタジエニル)シラン〕チタンジクロライドがTi換算で0.0005ミリモル/リットルとなるトルエン溶液を5ml調整し、触媒溶液とした。
【0073】
<重合>
充分に窒素置換した容量1.5リットルの撹拌翼付きSUS製オートクレーブに、23℃でヘプタン750mlを導入した。
【0074】
このオートクレーブに、撹拌翼を回し、かつ氷冷しながら1-ブテン6g、水素150mlを導入した。
次に、このオートクレーブを100℃まで加熱し、更に全圧が6kg/cm2となるように、エチレンで加圧した。
【0075】
オートクレーブの内圧が6kg/cm2になったところで、トリイソブチルアルミニウム(TIBA)の1.0ミリモル/mlヘキサン溶液1.0mlを窒素で圧入した。続いて、上記触媒のトルエン溶液5mlを窒素でオートクレーブに圧入して重合を開始した。
【0076】
その後、5分間、オートクレーブを内温が100℃になるように温度調節し、かつ圧力が6kg/cm2となるように直接的にエチレンの供給を行った。重合を開始してから5分後に、オートクレーブにポンプでメタノール5mlを装入して重合を停止させ、オートクレーブを大気圧まで脱圧した。反応溶液に3リットルのメタノールを撹拌しながら注いだ。得られた溶媒を含む重合体を130℃、13時間、600Torrで乾燥してエチレン・1-ブテン共重合体(EB-9)を得た。この共重合体(EB-9)の性状を下記表2に示す。
【0077】
得られたエチレン・1-ブテン共重合体(EB-9)の組成比(エチレン/1−ブテン)は、85モル%/15モル%であった。
【0078】
【表2】

【0079】
上記表2に示す(1)密度は、ASTM D1505に従い、23℃にて求めた値である。また、(2)MFRについて、MFR2は、ASTM D1238に従い、190℃、2.16kg荷重で測定した値であり、MFR10は、190℃、10kg荷重で測定した値をMFR2.10kg荷重での測定した値である。
【0080】
さらに(3)分子量分布(Mw/Mn)は、ゲルパーミエイションクロマトグラフィーにより、前記の条件にて測定した値である。
なお実施例、参考例、比較例に示す不織布の成形に際しては、上記合成例に準じ、100倍以上のスケールにて合成したものである。
【0081】
上記のほかに、
アイソタクティックポリプロピレン(三井化学(株)製ポリプロピレンB101,MFR=0.5g/10分、Tm=165℃)を用意した。このポリプロピレンをiPP-1とする。
【0082】
プロピレンホモポリマー(ASTM D1238に準拠し、温度230℃、荷重2.16kgで測定したMFRが35g/10分、密度0.91g/cm3、Tm=161℃)を用意した。このプロピレンホモポリマーをiPP-2とする。
【0083】
シンジオタクティックポリプロピレンの合成sPP-1
特開平2−274763号公報に記載の方法に従い、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)フルオレニルジルコニウムジクロライドおよびメチルアルミノキサンからなる触媒を用いて、水素の存在下でプロピレンの塊状重合法によって得られたシンジオタクティックポリプロピレンのメルトフローインデックスが、4.4g/10分、GPCによる分子量分布は2.3であり、13C−NMRによって測定されたシンジオタクチックペンタッド分率(r.r.r.r)が0.823、示差走査熱量分析で測定したTmが127℃、Tcが57℃であった。このシンジオタクティックポリプロピレンをsPP-1とする。
【0084】
ハゼル(株)製、ポリエチレンとプロピレン系の共重合体組成物(Z104S)を用意した。この共重合体組成物をEP-8とする。
[参考例1]
三井ポリプロピレン(B101:MFR=0.5、Tm=165℃、iPP-1)5重量%と、合成例2で得られたプロピレン・エチレン・1-ブテン共重合体(PEB-2、プロピレン含量:68モル%、エチレン含量:13モル%、1-ブテン含量:19.0モル%、MFR=8g/10分)95重量%と、iPP-1とPEB-2との合計重量に対して0.02重量%のデグラ剤(商品名:PH25B、日本油脂(株)製)とを混合し、二軸押出機を用いて200℃で混練してプロピレン重合体組成物(組成物1)を製造した。この組成物1について示差走査型熱量計(DSC)で吸熱曲線を測定したところ、融点(Tm、℃)の最大ピークが154.2℃にあり、この最大ピークにおける融解熱量は5J/gであった。
【0085】
こうして得られたプロピレン系重合体組成物1を、ノズル径0.6mmφ、ノズルピッチが縦方向8mm、横方向9mmの紡糸口金を有するスパンボンド成形機を用いて、ダイ温度を290℃、単孔吐出量1g/分/孔の条件で紡糸し、冷却風温度:20℃、延伸エアー風速2000m/分の条件で延伸して、上記組成物1からなるウエッブを捕集面に堆積させた。
【0086】
この堆積したウエッブを70℃でエンボス加工(エンボス面積率7%、エンボスロール径150mmφ、刻印ピッチ:縦方向および横方向2.1mm、刻印形状:菱形)して目付けが100g/m2のスパンボンド不織布を製造した。
【0087】
得られた不織布を構成する樹脂の組成、不織布の製造条件、および、不織布の特性を表3に示す。
表3に示すように、得られた不織布は、150%延伸後の残留歪みが21%と小さく触感も良好であり、最大点伸度は423%で実用範囲であり、しかも紡糸性にも優れている。
【0088】
[参考例2]
参考例1において、ポリプロピレンiPP-1の使用量を40重量%に変え、さらにプロピレン・エチレン・1-ブテン共重合体であるPEB-2の使用量を60重量%に変えた以外は同様にしてプロピレン重合体組成物(組成物2)を製造した。この組成物2について示差走査型熱量計(DSC)で吸熱曲線を測定したところ、融点(Tm、℃)の最大ピークが155.5℃にあり、この最大ピークにおける融解熱量は40J/gであった。
【0089】
さらに、このプロピレン重合体組成物(組成物2)を用いた以外は実施例1と同様にして目付けが100g/m2のスパンボンド不織布を製造した。
得られた不織布を構成する樹脂の組成、不織布の製造条件、および、不織布の特性を表3に示す。
【0090】
表3に示すように、得られた不織布は、150%延伸後の残留歪みが37%と小さく触感も良好であり、最大点伸度は373%で実用範囲であり、しかも紡糸性にも優れている。
【0091】
[参考例3]
参考例1において、ポリプロピレンiPP-1の使用量を15重量%に変え、さらにプロピレン・エチレン・1-ブテン共重合体であるPEB-2の使用量を85重量%に変えた以外は同様にしてプロピレン重合体組成物(組成物3)を製造した。この組成物3について示差走査型熱量計(DSC)で吸熱曲線を測定したところ、融点(Tm、℃)の最大ピークが154.6℃にあり、この最大ピークにおける融解熱量は15J/gであった。
【0092】
さらに、このプロピレン重合体組成物(組成物3)を用いた以外は実施例1と同様にして目付けが100g/m2のスパンボンド不織布を製造した。
得られた不織布を構成する樹脂の組成、不織布の製造条件、および、不織布の特性を表3に示す。
【0093】
表3に示すように、得られた不織布は、150%延伸後の残留歪みが29%と小さく触感も良好であり、最大点伸度は393%で実用範囲であり、しかも紡糸性にも優れている。
【0094】
[参考例4]
参考例1において、ポリプロピレンiPP-1の使用量を15重量%に変え、さらにプロピレン・エチレン・1-ブテン共重合体であるPEB-2の使用量を85重量%に変えた以外は同様にしてプロピレン重合体組成物(組成物3)を製造した。
【0095】
さらに、このプロピレン重合体組成物(組成物3)を用い、単孔吐出量0.6g/分・孔にした以外は参考例1と同様にして目付けが100g/m2のスパンボンド不織布を製造した。
【0096】
得られた不織布を構成する樹脂の組成、不織布の製造条件、および、不織布の特性を表3に示す。
表3に示すように、得られた不織布は、150%延伸後の残留歪みが30%と小さく触感も良好であり、最大点伸度は409%で実用範囲であり、しかも紡糸性にも優れている。
【0097】
[参考例5]
参考例1において、ポリプロピレンiPP-1の使用量を15重量%に変え、さらにプロピレン・エチレン・1-ブテン共重合体であるPEB-2の使用量を85重量%に変えた以外は同様にしてプロピレン重合体組成物(組成物3)を製造した。
【0098】
さらに、このプロピレン重合体組成物(組成物3)を用い、目付け量を50g/m2にした以外は参考例1と同様にしてスパンボンド不織布を製造した。
得られた不織布を構成する樹脂の組成、不織布の製造条件、および、不織布の特性を表3に示す。
【0099】
表3に示すように、得られた不織布は、150%延伸後の残留歪みが30%と小さく触感も良好であり、最大点伸度は260%で実用範囲であり、しかも紡糸性にも優れている。
【0100】
[参考例6]
参考例1において、ポリプロピレンiPP-1の使用量を10重量%に変え、さらにプロピレン・エチレン・1-ブテン共重合体であるPEB-2の代わりに、合成例3で得られたプロピレン・エチレン・1-ブテン共重合体(PEB-3、プロピレン含量:45.0モル%、エチレン含量:25.0モル%、1-ブテン含量:30.0モル%)を90重量%使用した以外は同様にしてプロピレン重合体組成物(組成物4)を製造した。この組成物4について示差走査型熱量計(DSC)で吸熱曲線を測定したところ、融点(Tm、℃)の最大ピークが154.2℃にあり、この最大ピークにおける融解熱量は10J/gであった。
【0101】
さらに、このプロピレン重合体組成物(組成物4)を用いた以外は参考例1と同様にして目付けが100g/m2のスパンボンド不織布を製造した。
得られた不織布を構成する樹脂の組成、不織布の製造条件、および、不織布の特性を表3に示す。
【0102】
表3に示すように、得られた不織布は、150%延伸後の残留歪みが40%と小さく触感も良好であり、最大点伸度は410%で実用範囲であり、しかも紡糸性にも優れている。
【0103】
[参考例7]
参考例1において、ポリプロピレンiPP-1の使用量を10重量%に変え、さらにプロピレン・エチレン・1-ブテン共重合体であるPEB-2の代わりに、合成例4で得られたプロピレン・エチレン・1-ブテン共重合体(PEB-4、プロピレン含量:65.0モル%、エチレン含量:10.0モル%、1-ブテン含量:25.0モル%)を90重量%使用した以外は同様にしてプロピレン重合体組成物(組成物5)を製造した。この組成物5について示差走査型熱量計(DSC)で吸熱曲線を測定したところ、融点(Tm、℃)の最大ピークが153.1℃にあり、この最大ピークにおける融解熱量は10J/gであった。
【0104】
さらに、このプロピレン重合体組成物(組成物5)を用いた以外は参考例1と同様にして目付けが100g/m2のスパンボンド不織布を製造した。
得られた不織布を構成する樹脂の組成、不織布の製造条件、および、不織布の特性を表3に示す。
【0105】
表3に示すように、得られた不織布は、150%延伸後の残留歪みが33%と小さく触感も良好であり、最大点伸度は413%で実用範囲であり、しかも紡糸性にも優れている。
【0106】
[参考例8]
参考例1において、ポリプロピレンiPP-1の使用量を10重量%に変え、さらにプロピレン・エチレン・1-ブテン共重合体であるPEB-2の代わりに、合成例5で得られたプロピレン・エチレン共重合体(PE-5、プロピレン含量:80.0モル%、エチレン含量:20.0モル%)を90重量%使用した以外は同様にしてプロピレン重合体組成物(組成物6)を製造した。この組成物6について示差走査型熱量計(DSC)で吸熱曲線を測定したところ、融点(Tm、℃)の最大ピークが153.9℃にあり、この最大ピークにおける融解熱量は10J/gであった。
【0107】
さらに、このプロピレン重合体組成物(組成物6)を用いた以外は参考例1と同様にして目付けが100g/m2のスパンボンド不織布を製造した。
得られた不織布を構成する樹脂の組成、不織布の製造条件、および、不織布の特性を表3に示す。
【0108】
表3に示すように、得られた不織布は、150%延伸後の残留歪みが30%と小さく触感も良好であり、最大点伸度は469%は実用範囲であり、しかも紡糸性にも優れている。
【0109】
[参考例9]
三井ポリプロピレン(B101:MFR=0.5、Tm=165℃) (iPP-1)20重量%と、合成例1で得られたプロピレン・エチレン・ブテン共重合体(PEB-1、プロピレン含量:75.0モル%、エチレン含量:17.0モル%、1-ブテン含量:8.0モル%)80重量%とを200℃で2軸押出機にて混練してプロピレン系重合体組成物(組成物7)を得た。この組成物7について示差走査型熱量計(DSC)で吸熱曲線を測定したところ、融点(Tm、℃)の最大ピークが153.4℃にあり、この最大ピークにおける融解熱量は10J/gであった。
【0110】
こうして得られた組成物7を用い、ノズル径0.6mmφ、ノズルピッチが縦方向8mm、横方向9mmの紡糸口金を有するスパンボンド成形機を用いて、ダイ温度290℃、単孔吐出量は1.0g/(分・孔)、冷却風温度20℃、延伸エアー風速2000m/分の条件で溶融紡糸し、組成物7からなるウェッブを捕集面上に堆積させた。このウェッブを70℃でエンボス加工(エンボス面積率:7%、エンボスロール径:150mmφ、刻印ピッチ:縦方向および横方向2.1mm、刻印形状:ひし形)して目付けが165g/m2のスパンボンド不織布を製造した。
【0111】
得られた不織布を構成する樹脂の組成、不織布の製造条件、および、不織布の特性を表3に示す。
表3に示すように、得られた不織布は、150%延伸後の残留歪みが22%と小さく触感も良好であり、最大点伸度は732%で実用範囲であり、しかも紡糸性に優れている。
【0112】
[参考例10]
MFR(ASTM D1238に準拠し、温度230℃、荷重2.16kgで測定)30g/10分、密度0.91g/cm3、融点160℃のプロピレンホモポリマー(iPP-2)20重量%と、合成例1で得られたプロピレン・エチレン・ブテン共重合体(PEB-1、プロピレン含量:75.0モル%、エチレン含量:17.0モル%、1-ブテン含量:8.0モル%))80重量%とを200℃で2軸押出機にて混練してプロピレン系重合体組成物(組成物8)を得た。この組成物8について示差走査型熱量計(DSC)で吸熱曲線を測定したところ、融点(Tm、℃)の最大ピークが153.3℃にあり、この最大ピークにおける融解熱量は20J/gであった。
【0113】
こうして得られた組成物8を用い、ノズル径0.6mmφ、ノズルピッチが縦方向8mm、横方向9mmの紡糸口金を有するスパンボンド成形機を用いて、ダイ温度250℃、単孔吐出量は1.0g/(分・孔)、冷却風温度20℃、延伸エアー風速2000m/分の条件で溶融紡糸し、組成物8からなるウェッブを捕集面上に堆積させた。このウェッブを70℃でエンボス加工(エンボス面積率:7%、エンボスロール径:150mmφ、刻印ピッチ:縦方向および横方向2.1mm、刻印形状:ひし形)して目付けが156g/m2のスパンボンド不織布を製造した。
【0114】
得られた不織布を構成する樹脂の組成、不織布の製造条件、および、不織布の特性を表3に示す。
表3に示すように、得られた不織布は、150%延伸後の残留歪みが24%と小さく触感も良好であり、最大点伸度は452%で実用範囲であり、しかも紡糸性に優れている。
【0115】
〔比較例1〕
参考例1において、ポリプロピレンiPP-1の使用量を50重量%に変え、さらにプロピレン・エチレン・1-ブテン共重合体であるPEB-2の使用量を50重量%変えた以外は同様にしてプロピレン重合体組成物(組成物9)を製造した。この組成物9について示差走査型熱量計(DSC)で吸熱曲線を測定したところ、融点(Tm、℃)の最大ピークが155.8℃にあり、この最大ピークにおける融解熱量は50J/gであった。
【0116】
さらに、このプロピレン重合体組成物(組成物9)を用いた以外は参考例1と同様にして目付け100g/m2のスパンボンド不織布を製造した。
得られた不織布を構成する樹脂の組成、不織布の製造条件、および、不織布の特性を表3に示す。
【0117】
表3に示すように、得られた不織布は、150%延伸後の残留歪みが58%と大きく延伸性に劣ると共に、触感も良くなく、最大点伸度が150%と小さかった。
〔比較例2〕
参考例1において、ポリプロピレンiPP-1の使用量を10重量%に変え、さらにプロピレン・エチレン・1-ブテン共重合体であるPEB-2の代わりに、合成例6で製造したプロピレン・エチレン・1-ブテン共重合体(PEB-6、プロピレン含量:70.0モル%、エチレン含量:5.0モル%、1-ブテン含量:25.0モル%)を90重量%使用した以外は同様にしてプロピレン重合体組成物(組成物10)を製造した。この組成物10について示差走査型熱量計(DSC)で吸熱曲線を測定したところ、融点(Tm、℃)の最大ピークが154.3℃にあり、この最大ピークにおける融解熱量は10J/gであった。
【0118】
さらに、このプロピレン重合体組成物(組成物10)を用いた以外は参考例1と同様にして目付けが100g/m2のスパンボンド不織布を製造した。
得られた不織布を構成する樹脂の組成、不織布の製造条件、および、不織布の特性を表3に示す。
【0119】
表3に示すように、得られた不織布は、150%延伸後の残留歪みが54%と大きく触感が悪かった。
〔比較例3〕
参考例1において、ポリプロピレンiPP-1の代わりに、シンジオタクティックポリプロピレンsPP-1を10重量%使用し、さらにプロピレン・エチレン・1-ブテン共重合体であるPEB-2の代わりに合成例5で得られたプロピレン・エチレン共重合体(PE-5、プロピレン含量:80.0モル%、エチレン含量:20.0モル%)を90重量%使用した以外は同様にしてプロピレン重合体組成物(組成物11)を製造した。この組成物11について示差走査型熱量計(DSC)で吸熱曲線を測定したところ、融点(Tm、℃)の最大ピークが153.2℃にあり、この最大ピークにおける融解熱量は10.01J/gであった。
【0120】
さらに、このプロピレン重合体組成物(組成物11)を用いた以外は参考例1と同様にして目付けが100g/m2のスパンボンド不織布を製造した。
得られた不織布を構成する樹脂の組成、不織布の製造条件、および、不織布の特性を表3に示す。
【0121】
表3に示すように、得られた不織布は、150%延伸後の残留歪みが29%と小さく、紡糸の際に5分間当り15回の糸切れが発生して非常に紡糸性が悪い。
〔比較例4〕
参考例1において、バゼル社Z104Sについて示差走査型熱量計(DSC)で吸熱曲線を測定したところ、融点(Tm、℃)の最大ピークが141.9℃にあり、この最大ピークにおける融解熱量は25J/gであった。
【0122】
さらに、バゼル社Z104Sを用い、樹脂吐出温度を240℃に変え、単孔吐出量を0.6にg/分・孔に変え、延伸エアー風量を4000m/分に変え、目付けを80g/m2にした以外は参考例1と同様にしてスパンボンド不織布を製造した。
【0123】
得られた不織布を構成する樹脂の組成、不織布の製造条件、および、不織布の特性を表3に示す。
表3に示すように、得られた不織布は、150%延伸後の残留歪みが67%と大きく触感も悪かった。
【0124】
〔比較例5〕
参考例1において、ポリプロピレンiPP-1を使用せずに、合成例8で製造したエチレン・1-ブテン共重合体(EB-9,エチレン含量;85モル%、1-ブテン含量;15モル%)の使用量を100重量%とした。
【0125】
さらに、このエチレン・1-ブテン共重合体(EB-9)を用い、樹脂の吐出温度を200℃に変え、単孔吐出量を0.6g/分・孔に変え、延伸エアー速度を3000m/分に変え、さらに目付け70g/m2に変えた以外は参考例1と同様にしてスパンボンド不織布を製造した。
【0126】
得られた不織布を構成する樹脂の組成、不織布の製造条件、および、不織布の特性を表3に示す。
表3に示すように、得られた不織布は、150%延伸後の残留歪みを測定使用としたが、破断して測定できなかった。またこの不織布の最大点伸度は90%であった。
【0127】
表3に示すように、得られた不織布は、150%延伸後の残留歪測定に試験の最中に不織布が破断し、有効な弾性を有していなかった。従って、この不織布は、伸縮性が要求される、使い捨てオムツ、生理用品等の吸収性物品、並びに、使い捨てマスク、バンソウコウ、貼布剤、使い捨て手術着、レスキューガウン等、各医療用フィルムあるいはシート等に用いるには不適切であると判断した。
【0128】
【表3】

【0129】
[実施例11]
ポリプロピレンiPP-1の使用量を15重量%、さらにプロピレン・エチレン・1-ブテン共重合体であるPEB-2の使用量85重量%としたプロピレン重合体組成物(組成物3)を製造した。
【0130】
MFR(ASTM D1238に準拠し、温度230℃、荷重2.16kgで測定)60g/10分、密度0.91g/cm3、融点160℃のプロピレンホモポリマー(i-PP-3)92重量部とMFR(ASTM D1238に準拠して、温度190℃、荷重2.16kgで測定)5g/10分、密度0.97g/cm3、融点134℃の高密度ポリエチレン(以下、「HDPE」と略す)8重量部との混合物1と組成物3とを、それぞれ独立に押出機(30mmφ)を用いて溶融した後、図2に示すように紡糸口金を配置した図1に示すような不織布製造装置(スパンボンド成形機、捕集面上の機械の流れ方向に垂直な方向の長さ:100mm)を用いて、樹脂温度とダイ温度がとも230℃、冷却風温度20℃、延伸エア風速2000m/分の条件でスパンボンド法により溶融紡糸し、混合物1からなる繊維Aと組成物3からなる繊維Bとを含む混合繊維からなるウェッブを、混合物1と組成物3の重量比率が20重量%:80重量%となるように調整して、捕集面上に堆積させた。
【0131】
すなわち、この実施例では、異なる2種類の樹脂を用いて同時に紡糸可能な図1に示すような不織布製造装置を用いて不織布を製造した。この図1に示す不織布製造装置には、図2に示すようにノズルが配置されている。
【0132】
なお、図1において、付番1は、第1の押出機、付番1'は第2の押出機であり、第1押出機および第2押出機には種類の異なる樹脂が用いられる。図1において、付番2は紡糸口金、付番3は連続フィラメント、付番4は冷却風、付番5はエジェクター、付番6は捕捉装置、付番7は吸引装置、付番8はウエブ、付番9は巻取りロールであり、図2において、付番11、付番12はスパンボンド不織布溶融紡糸用ノズルであり、ノズル11およびノズル12からは異なる種類の樹脂が吐出される。
【0133】
前記紡糸口金は、図2に示すようなノズル配置パターンを有し、ノズル径0.6mmφであり、ノズルのピッチが縦方向8mm、横方向9mmであり、ノズル数の比は繊維A用ノズル:繊維B用ノズル=1:3である。繊維Aの単孔吐出量は0.45g/(分・孔)、繊維Bの単孔吐出量0.6g/(分・孔)とした。
【0134】
この堆積したウエッブを70℃でエンボス加工(エンボス面積率7%、エンボスロール径150mmφ、刻印ピッチ:縦方向および横方向2.1mm、刻印形状:菱形)して目付けが50g/m2のスパンボンド不織布を製造した。
【0135】
得られた不織布を構成する樹脂の組成、不織布の製造条件、および、不織布の特性を表3に示す
表3に示すように、得られた不織布は、150%延伸後の残留歪みが39%と小さく触感も良好であり、最大点伸度も340%で実用範囲であり、しかも紡糸性にも優れている。
【0136】
[実施例12]
繊維Bに使用する樹脂としてPE-5を使用した以外は実施例11と同様にして目付けが50g/m2のスパンボンド不織布を製造した。この組成物について示差走査型熱量計(DSC)で吸熱曲線を測定したところ、融点(Tm、℃)の最大ピークが154.0℃にあり、この最大ピークにおける融解熱量は31J/gであった。
【0137】
得られた不織布を構成する樹脂の組成、不織布の製造条件、および、不織布の特性を表4に示す。
表4に示すように、得られた不織布は、150%延伸後の残留歪みが40%と小さく触感も良好であり、最大点伸度も352%で実用範囲であり、しかも紡糸性にも優れている。
【0138】
[実施例13]
目付を変更した以外は実施例12と同様にして目付けが25g/m2のスパンボンド不織布を製造した。
【0139】
得られた不織布を構成する樹脂の組成、不織布の製造条件、および、不織布の特性を表4に示す。
表4に示すように、得られた不織布は、150%延伸後の残留歪みが40%と小さく触感も良好であり、最大点伸度も280%で実用範囲であり、しかも紡糸性にも優れている。
【0140】
【表4】

【産業上の利用可能性】
【0141】
本発明の不織布は、伸縮性に優れており、しかも150%延伸後の残留歪が少ない。従って、本発明の不織布は伸縮させながら使用する衛生材料、使い捨てオムツなどの吸収体、絆創膏の基布、使い捨て手術着、レスキューガウンなどとして使用することができる。
【0142】
また、本発明の不織布は、オレフィン系の接着剤などの接着剤に対する親和性が良好であり、接合部分などを例えばオレフィン系のホットメルト接着剤などを用いて接合することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アイソタクティックポリプロピレン(i):1〜40重量部と、
プロピレンが45〜89モル%、エチレンが10〜25モル%および炭素数4〜20のα-オレフィン;残部が共重合してなるプロピレン・エチレン・α-オレフィン共重合体(ii)(ただし、炭素数4〜20のα-オレフィンの共重合量は30モル%を超えることはない):60〜99重量部とを含有するポリプロピレン樹脂組成物を製造し紡糸して得られた繊維と、他の樹脂からなる繊維とを混合してなることを特徴とする不織布。
【請求項2】
他の樹脂からなる繊維が、ポリオレフィンを主成分とするものである請求項1記載の不織布。
【請求項3】
他の樹脂からなる繊維が、ホモポリプロピレン、10重量%以下のエチレンを含むプロピレンランダムコポリマーを主成分とするものである請求項1記載の不織布。
【請求項4】
他の樹脂からなる繊維が、ホモポリエチレンと高密度ポリエチレンの混合物等ポリオレフィン同士の混合物を主成分とするものである請求項1記載の不織布。
【請求項5】
不織布が、延伸倍率150%の条件で延伸した後の残留歪みが50%未満であることを特徴とする請求項1記載の不織布。
【請求項6】
不織布が、スパンボンド不織布であることを特徴とする請求項1記載の不織布。
【請求項7】
上記不織布を形成するポリプロピレン樹脂組成物について、示差走査型熱量計(DSC)で測定した吸熱曲線の100℃以上の領域に融点(Tm、℃)の最大ピークが存在し、該最大ピークにおける融解熱量が5〜40J/gの範囲内にあることを特徴とする請求項1記載の不織布。
【請求項8】
請求項1〜7の何れかの項記載の不織布を有することを特徴とする衛生材料。
【請求項9】
請求項1〜7の何れかの項記載の不織布を有することを特徴とする使い捨てオムツ。
【請求項10】
請求項1〜7の何れかの項記載の不織布を有することを特徴とする生理用品。
【請求項11】
請求項1〜7の何れかの項記載の不織布を有することを特徴とする吸収性物品。
【請求項12】
請求項1〜7の何れかの項記載の不織布を有することを特徴とする使い捨てマスク
【請求項13】
請求項1〜7の何れかの項記載の不織布を有することを特徴とするバンソウコウ。
【請求項14】
請求項1〜7の何れかの項記載の不織布を有することを特徴とする貼布剤。
【請求項15】
請求項1〜7の何れかの項記載の不織布を有することを特徴とする使い捨て手術着。
【請求項16】
請求項1〜7の何れかの項記載の不織布を有することを特徴とするレスキューガウン。
【請求項17】
請求項1〜7の何れかの項記載の不織布を有することを特徴とする各種医療用フィルムまたはシート。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−12759(P2012−12759A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−185160(P2011−185160)
【出願日】平成23年8月26日(2011.8.26)
【分割の表示】特願2006−547883(P2006−547883)の分割
【原出願日】平成17年11月25日(2005.11.25)
【出願人】(000005887)三井化学株式会社 (2,318)
【Fターム(参考)】