説明

ポリプロピレンシート

【課題】例えば食品や医薬品等の包装用その他の用途に用いられるポリプロピレンシートに係り、そのシート作製時もしくは容器等の製造または加熱滅菌処理等する際にブリードが生じることなく、かつ成形性のよいポリプロピレンシートを提供する。
【解決手段】 Tダイ押出法や押出ラミネート法等の溶融押出法によって製造されるポリプロピレンシートであって、プロピレン−エチレン共重合体を基材樹脂として、それに少なくとも分散剤や安定剤等の用途として有機ヒドロキシド化合物を添加した樹脂組成物をシート状に形成してなる層を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば各種の包装分野、特に包装容器等の製造に用いられるポリプロピレンシートに関する。更に詳しくは、食品・医薬品・工業品等の収納、包装に適した高温滅菌処理が可能な、高耐熱性の包装用容器等の製造に適するポリプロピレンシートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、各種の包装分野、例えば食品や医薬品等を包装する包装容器等の包装材料としてポリプロピレンシートが広く用いられている(下記特許文献1,2参照)。この種のシートを用いた包装材料は、近年の消費者の生活の質的向上と、安全性等への意識の高まりとともに、健康上安全で安心して使用できることが求められている。また工場等でシートを作製する際の生産性の面からも、シート中の成分が外部に染み出す、いわゆるブリードが無いシートの供給が望まれている。さらに、用途によっては、高耐熱性、耐衝撃性等の物性がより優れたシートが求められている。
【0003】
ところで、上記のようなポリプロピレンを重合する際に用いる触媒としては、マルチサイト触媒とシングルサイト触媒とがあり、マルチサイト触媒を用いてポリプロピレンを重合する際には、安定剤や分散剤等の用途として添加剤を配合することがある。その添加剤としては、主にステアリン酸系物質や金属石鹸等が用いられているが、それらの物質はブリード性を有しており、例えば樹脂製成形品の生産現場では、生産機器へのブリードの付着、およびその清掃のためのコストが発生する等の問題がある。
【0004】
また上記シートを食品や医薬品等の包装に使用した場合に、上記添加剤が人体に影響があるという報告はなされていないものの、それらの物質が内容物に付着したり混入するのは決して好ましいものではない。さらに上記のステアリン酸系物質や金属石鹸以外に、上記安定剤や分散剤等の用途として使用されている添加剤としては、例えばハイドロタルサイト系物質があるが、これらの物質は食品や医薬品等用の包装材としては、内容物の変質等の悪影響が懸念されることから使用を控える場合が多い。
【0005】
一方、前記のシングルサイト触媒を用いてポリプロピレンを重合する際には、ステアリン酸系、或いはハイドロタルサイト系物質を使用することなく重合させることが可能ではあるが、重合強度の安定性が必ずしも充分ではないため、現段階では包装用のシート材として用いることは難しい。さらに安定剤や分散剤等の添加剤を配合せずに重合を機械的に安定させる方法も各所で検討されているが、現段階では必ずしも充分に満足し得る方法がないのが実情である。
【0006】
【特許文献1】特開平7−173302号公報
【特許文献2】特開平11−170454号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記従来の問題点に鑑みて提案されたもので、その目的とするところは、上記のブリード等の問題を解消し、包装材などとして必要な物性を有するポリプロピレンシートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するために、前記従来のステアリン酸系物質や金属石鹸等の添加剤を用いることなく、かつ包装材などとして必要な物性を有するポリプロピレンシートを作製すべく、鋭意検討を重ねた結果、ポリプロピレンとエチレンの共重合体からなる樹脂組成物中に、その組成物の分散剤や安定剤等の用途として有機ヒドロキシド化合物を添加することによって、ブリードが無く、かつ耐熱性やその他の必要物性を有するポリプロピレンシートが得られることを見い出したものである。なお、上記のようなポリプロピレンとエチレンとの共重合体からなる樹脂組成物をTダイ押出方式で作製された実績は無く、作製方法や条件から開発する必要を有した。本発明はかかる知見に基づいて完成したものである。
【0009】
すなわち、本発明によるポリプロピレンシートは、Tダイ押出法や押出ラミネート法等の溶融押出法によって製造されるポリプロピレンシートであって、プロピレン−エチレン共重合体を基材樹脂として、それに少なくとも分散剤や安定剤等の用途として有機ヒドロキシド化合物を添加した樹脂組成物をシート状に形成してなる層を有することを特徴とする。
【0010】
また上記のポリプロピレンシートは複数の層からなり、その少なくとも最外層を上記樹脂組成物をシート状に成形してなる層で形成することを特徴とする。さらに上記のポリプロピレンシートは複数の層からなり、その複数の層のうち上記樹脂組成物をシート状に成形してなる層が少なくともシート全体の50重量%以上となるように構成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によるポリプロピレンシートは、上記のように分散剤や安定剤等の用途として有機ヒドロキシド化合物を用いたため、ブリードが生じるおそれがなく、かつ包装材などとして必要な物性も良好に確保できるもので、例えば食品や医薬品を収容する容器等の素材として使用しても内容物に何ら悪影響を及ぼすおそれがなく安心して使用することができる。
【0012】
さらに上記のポリプロピレンシートを複数の層で構成し、その少なくとも最外層を上記樹脂組成物をシート状に成形してなる層で形成すると、その最外層以外の層に前記従来のステアリン酸系物質や金属石鹸等を用いた場合にもブリードの発生を抑制することができる。また上記のポリプロピレンシートを複数の層で構成し、その複数の層のうち上記樹脂組成物をシート状に成形してなる層が少なくともシート全体の50重量%以上となるようにすると、上記以外の層に前記従来のステアリン酸系物質や金属石鹸等を用いた場合にもブリードの発生を防止することができる。
【0013】
また上記の樹脂組成物を用いてTダイ押出法や押出ラミネート法等の溶融押出法によりポリプロピレンシートを作製する際にも前記従来例のようにブリードが発生して生産機器を汚損したり、またシートから容器等の製造過程、および用途によっては滅菌等のための加熱工程においても、各種ブリードが起こるおそれが可及的に低減され、生産機器の清掃コストやブリード検査やブリード対策のためのコストが不要となり、製作コストを大幅に低減することが可能となる。
【0014】
さらに上記シートの用途たとえば包装材などとして必要な物性を確保する必要がある場合に、例えば上記のポリプロピレン樹脂組成物を用いて作製されるシート状の層を少なくとも1層設け、それ以外に物性の異なる層を設けた多層構造とすることにより、各種用途に適する物性を有するポリプロピレンシートやそれを用いた包装容器等の包装材を容易・安価に提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明によるポリプロピレンシートを具体的に説明する。本発明によるポリプロピレンシートを構成する樹脂組成物としては、その基材樹脂としてプロピレン−エチレン共重合体を用いるもので、そのプロピレン−エチレン共重合体としては、特にランダム共重合体が望ましく、そのプロピレン−エチレン共重合体におけるエチレン成分含量は50重量%以下、より好ましくは1.5〜20重量%の範囲内とするのが望ましい。エチレン含有量が50重量%を超えると、共重合体がポリエチレンと類似した挙動を示すようになり、耐熱性等の必要物性の低下を招くことがあるからである。またエチレン成分含量を1.5〜20重量%の範囲内にすると、上記シートから包装用容器等を製造する場合などにも適する物性を確保することが可能となる。
【0016】
上記プロピレン−エチレン共重合体のJIS K 7210に基づくメルトフローレイト(MFR)は、10g/10min以下となるようにするのが望ましい。メルトフローレイトが10g/10minを超えると、Tダイ押出法や押出ラミネート法等の溶融押出法によりシートを作製する際の樹脂の流れのコントロールが難しくなって良好なシートを作製するのが困難になるからである。
【0017】
また本発明によるポリプロピレンシートを構成する樹脂組成物は、その基材樹脂としてのプロピレン−エチレン共重合体に、分散剤や安定剤等の用途として有機ヒドロキシド化合物を添加したもので、その有機ヒドロキシド化合物は、上記プロピレン−エチレン共重合体におけるプロピレンとエチレンの分散性を良くするか、または重合の安定性を良くする、或いは両方の性質を良くするものであれば具体的な組成は適宜である。
【0018】
上記の樹脂組成物には、必要に応じて上記の有機ヒドロキシド化合物の他に各種の改質材を添加してもよく、その場合の樹脂組成物に対する有機ヒドロキシド化合物を含めた改質剤の添加割合は10〜50重量%が好ましく、より好ましくは20〜40重量%の範囲内とするのが望ましい。
【0019】
さらに、上記の樹脂組成物には、1〜80重量%の範囲内で無機充填材を含有させてもよい。また上記の樹脂組成物には、5重量%以下の公知のシート成形用の他のオレフィン含有共重合体を配合してもよく、さらに公知のシート成形用の添加剤や帯電防止剤を配合してもよい。
【0020】
上記のような樹脂組成物を用いて作製されるポリプロピレンシートは、単層または多層構造のいずれでもよく、またプロピレンシートの厚みは特に制限は無いが、通常は200〜2000μmの範囲内とするのが好ましく、更に好ましくは350〜1400μmの範囲内とするのが望ましい。
【0021】
また上記ポリプロピレンシートの作製方法としては、Tダイ押出法や押出ラミネート法等の溶融押出法が比較的簡便で、容易・安価に作製することができる。例えば単層の場合には、樹脂組成物をTダイ押出法等により単独でシート状に押出し成形すればよく、また多層の場合は、例えばTダイ押出法による共押出または押出ラミネート加工等により作製することができる。
【0022】
共押出による成形法としては、例えば各々の層を形成するための樹脂組成物や材料をそれぞれ異なった押出機を用いて溶解押出し、これをフィードブロックにて積層しフラットダイにて製膜する方法や、多層ダイを用いてダイ内にて製膜する方法等が挙げられる。またラミネート加工としては、例えばエキストルージョンラミネート、ホットメルトラミネート、ドライラミネート、ウェットラミネート等の方法を用いることができる。
【0023】
上記ポリプロピレンシートを構成する層の数や材質等は特に限定はないが、多層構造とする場合には、上記プロピレン−エチレン共重合体よりなる層の他に、例えばエチレン・ビニルアルコール(EVOH)やポリ塩化ビニリデン(PVDC)等のバリア性に優れた樹脂層を設けてもよく、その際、エチレン−プロピレンゴムまたはエチレン−酢酸ビニル共重合体等からなる接着剤で隣接する層を接着するようにしてもよい。また必要に応じてアルミ蒸着層、アルミ箔、アルミニウム、鉄、銅等のバリア性に優れた層を設けてもよい。これらのバリア層は1層または2層以上複数層設けるようにしてもよい。
【0024】
さらに上記のポリプロピレンシートを用いて包装容器等を製造し、その上部周縁部に貼着されるシール用の蓋体に、いわゆるイージーピール等の易開封性を付与させたい場合には、シール層(最上層)の表面(上面)に、凝集剥離、もしくは層間剥離を目的とした処方・処理等を施してもよい。
【0025】
また上記のような容器等を製造する場合には、前記のような樹脂組成物を、Tダイ押出法や押出ラミネート法等の溶融押出法によってシート状に成形してから、熱成形等により包装容器等を製造するもので、上記の溶融押出法によってシート状に成形された樹脂組成物は、冷却工程において一旦形状が固定される。その冷却工程の冷却手段としては、例えば水冷、空冷、エンドレスベルト、またはロール等による冷却方法を適用することができる。
【0026】
上記の冷却方法は適宜であるが、本発明による樹脂組成物を構成するプロピレン−エチレン共重合体のメルトフローレイトは、前述のように10g/10min以下となるようにするのが望ましく、このような樹脂組成物は、溶融張力が非常に低いため、溶融押出法で成形する際の成形温度や冷却方法には工夫を要する。
【0027】
従来ポリプロピレンを基材とした樹脂組成物をTダイ押出法等の溶融押出法によりシート状に成形する際の押出機部分の溶融時設定温度としては一般的に140℃〜220℃の範囲で設定するが、本発明における設定温度としては、上記のように樹脂組成物の溶融張力が低いことから140℃〜190℃設定温度範囲で製膜させることが望ましい。
【0028】
例えば押出温度、Tダイ出口温度、ロール温度を公知の製膜条件とすると、樹脂の溶融張力が低いことから木目模様等、綺麗な製膜とすることが難しい。また製膜条件は、樹脂組成物の溶融張力をいかにして高く保つことができるかが必須条件である。それらの観点からも上記のように比較的低い設定温度範囲で製膜させることが望ましい。
【0029】
また冷却工程での冷却方法および冷却温度としては、例えば順次シート状に成形された樹脂組成物にロール等を直接接触させて冷却させる方法が望ましく、その際のロール等の表面温度は30〜50℃の範囲に設定するのが望ましい。このような比較的低い温度で急冷することによって上記成形体の表面に膜が形成され、それによって成形性や保形性を高めることができる。
【実施例】
【0030】
次に、本発明によるポリプロピレンシートの具体的な実施例および比較例について説明する。
【0031】
以下の実施例および比較例では、それぞれ後述する樹脂組成物を用いてTダイ押出法またはTダイ共押出法によりポリプロピレンシートを作製したもので、その樹脂組成物を構成する基材樹脂等の素材名、およびそれらのメルトフローレイト(MFR)、密度、曲げ剛性等を下記表1にまとめて示す。また上記樹脂組成物に分散剤や安定剤等の用途で添加した物質名は下記表1の備考に記載の通りである。
【0032】
【表1】

【0033】
上記のようにして作製した各ポリプロピレンシートを用いて食品や医薬品を包装する容器等を製造するのに適するか否かを調べた。なお、上記のような容器を製造するのに適するシートの要件としては、
1)ステアリン酸カルシウム等の添加剤の析出(ブリード)が無いこと。
2)滅菌温度に耐えること(一般に122℃、25分)。
3)成形性に問題が無いこと(カップ形状、熱版接触加熱成型時)。
4)引張特性等の物性が下記表2の程度であること。
5)外装に光沢があること。
等を挙げることができる。
【0034】
【表2】

【0035】
以下の実施例および比較例においては、上記の要件のうち特にブリードと成形性について調べた。そのブリードについては、シートを作製する場合はもとより、オートクレーブ等により122℃、25分間の滅菌処理を施した後に、水中パーティクル測定によりブリードがあるか否かを判定してブリードが生じなかったものを○、少量でも生じたものは×とした。また成形性については熱版接触加熱方式によって容器を製造して成形性(フランジや側壁の厚み、熱収縮性、表面性、黄変等)を調べ、成形性が良好であるものを○、良好でないものを×とした。
【0036】
〔実施例1〕
本実施例は下記表3に示すように単層構造のポリプロピレンシートをTダイ押出法により作製したものである。
【0037】
【表3】

【0038】
上記のポリプロピレンシートを作製するための素材となるポリプロピレン樹脂組成物としては、前記表1の素材番号(5)のプロピレン−エチレンランダム共重合体に、分散剤や安定剤等の用途として有機ヒドロキシド化合物を添加したものを81.5重量%、前記表1の素材番号(9)の低密度ポリエチレンを15重量%、素材番号(8)の顔料マスターバッジを3.5重量%の割合で混合したものを用い、その樹脂組成物をTダイ押出法により厚さ1000μmのシート状に押出成形してポリプロピレンシートを作製したものである。
【0039】
上記実施例においてポリプロピレンシートを作製する際にブリードは生じることなく、また上記ポリプロピレンシートにオートクレーブにより122℃、25分間の滅菌処理を施した後に、水中パーティクル測定によりブリードがあるか否かを判定したところ、ブリードはなかった。また成形性については、熱版接触加熱方式によって容器を製造してフランジや側壁の厚み、熱収縮性、表面性、黄変等を調べたところ、いずれも良好であった。
【0040】
〔実施例2〕
本実施例は下記表4に示すように中心層の両側にそれぞれ同一構成のコア層と、その外側に同一構成のシール層と外層とを設けた3種5層構造のポリプロピレンシートをTダイ共押出法により作製したものである。
【0041】
【表4】

【0042】
上記中心層を形成するための樹脂組成物としては、前記表1の素材番号(5)のプロピレン−エチレンランダム共重合体に分散剤や安定剤等の用途として有機ヒドロキシド化合物を添加したもの(100重量%)を用い、それを厚さ100μmのシート状に押出し成形したものである。
【0043】
また上記各コア層を形成するための樹脂組成物としては、前記表1の素材番号(5)のプロピレン−エチレンランダム共重合体に分散剤や安定剤等の用途として有機ヒドロキシド化合物を添加したものを81.5重量%、前記表1の素材番号(7)の低密度ポリエチレンを15重量%、素材番号(8)の顔料マスターバッジを3.5重量%の割合で混合したものを用い、それを厚さ350μmのシート状に押出し成形したものである。
【0044】
さらに上記シール層と外層を形成するための樹脂組成物としては、それぞれ前記表1の素材番号(5)のプロピレン−エチレンランダム共重合体に分散剤や安定剤等の用途として有機ヒドロキシド化合物を添加したものを81.5重量%、素材番号(9)の低密度ポリエチレンを15重量%、素材番号(8)の顔料マスターバッジを3.5重量%の割合で混合したものを用い、それを厚さ100μmのシート状に押出成形したものである。
【0045】
上記実施例においても、ポリプロピレンシートの作製時にブリードは生じることなく、また上記ポリプロピレンシートにオートクレーブにより122℃、25分間の滅菌処理を施した後に、水中パーティクル測定によりブリードがあるか否かを判定したところ、ブリードはなかった。また成形性については、熱版接触加熱方式によって容器を製造してフランジや側壁の厚み、熱収縮性、表面性、黄変等を調べたところ、いずれも良好であった。
【0046】
〔実施例3〕
本実施例は下記表5に示すように中心層の両側にそれぞれ同一構成のコア層と、その外側に同一構成のシール層と外層とを設けた3種5層構造のポリプロピレンシートをTダイ共押出法により作製したものである。
【0047】
【表5】

【0048】
上記中心層を形成するための樹脂組成物としては、前記表1の素材番号(1)のプロピレン単独重合体に分散剤や安定剤としてステアリン酸系物質を添加したもの(100重量%)を用い、それを厚さ100μmのシート状に押出し成形したものである。
【0049】
また上記各コア層を形成するための樹脂組成物としては、前記表1の素材番号(5)のプロピレン−エチレンランダム共重合体に分散剤や安定剤等の用途として有機ヒドロキシド化合物を添加したものを81.5重量%、素材番号(7)の低密度ポリエチレンを15重量%、素材番号(8)の顔料マスターバッジを3.5重量%の割合で混合したものを用い、それを厚さ350μmのシート状に押出し成形したものである。
【0050】
さらに上記シール層と外層を形成するための樹脂組成物としては、それぞれ前記表1の素材番号(5)のプロピレン−エチレンランダム共重合体に分散剤や安定剤等の用途として有機ヒドロキシド化合物を添加したものを85重量%、素材番号(9)の低密度ポリエチレンを15重量%の割合で混合したものを用い、それを厚さ100μmのシート状に押出し成形したものである。
【0051】
上記実施例においては、中心層として従来と同様に分散剤や安定剤等の用途としてステアリン酸系物質を添加した樹脂組成物を用いたにも拘わらず、ポリプロピレンシートを作製する際にブリードは生じることなく、また上記ポリプロピレンシートにオートクレーブにより122℃、25分間の滅菌処理を施した後に、水中パーティクル測定によりブリードがあるか否かを判定した際にも、ブリードは認められなかった。これはステアリン酸系物質を添加した中心層が、その両側のそれぞれ2つの層で覆われていること、および上記中心層は比較的薄いためにステアリン酸系物質のシート全体に対する割合が少ないためにブリードが生じなかったものと思われる。また成形性については、熱版接触加熱方式によって容器を製造してフランジや側壁の厚み、熱収縮性、表面性、黄変等を調べたが、いずれも良好であった。
【0052】
〔実施例4〕
本実施例は下記表6に示すように中心層の両側にそれぞれ同一構成のコア層と、その外側に同一構成のシール層と外層とを設けた3種5層構造のポリプロピレンシートをTダイ共押出法により作製したものである。
【0053】
【表6】

【0054】
上記中心層を形成するための樹脂組成物としては、前記表1の素材番号(5)のプロピレン−エチレンランダム共重合体に分散剤や安定剤等の用途として有機ヒドロキシド化合物を添加したもの(100重量%)を用い、それを厚さ100μmのシート状に押出し成形したものである。
【0055】
また上記各コア層を形成するための樹脂組成物としては、前記表1の素材番号(5)のプロピレン−エチレンランダム共重合体に分散剤や安定剤等の用途として有機ヒドロキシド化合物を添加したものを81.5重量%、素材番号(7)の低密度ポリエチレンを15重量%、素材番号(8)の顔料マスターバッジを3.5重量%の割合で混合したものを用い、それを厚さ350μmのシート状に押出し成形したものである。
【0056】
さらに上記シール層と外層を形成するための樹脂組成物としては、それぞれ前記表1の素材番号(5)のプロピレン−エチレンランダム共重合体に分散剤や安定剤等の用途として有機ヒドロキシド化合物を添加したものを85重量%、素材番号(9)の低密度ポリエチレンを15重量%の割合で混合したものを用い、それを厚さ100μmのシート状に押出し成形したものである。
【0057】
上記実施例においても、ポリプロピレンシートの作製時にブリードが生じることはなく、また上記ポリプロピレンシートにオートクレーブにより122℃、25分間の滅菌処理を施した後に、水中パーティクル測定によりブリードがあるか否かを判定した場合にもブリードは認められなかった。また成形性については、熱版接触加熱方式によって容器を製造してフランジや側壁の厚み、熱収縮性、表面性、黄変等を調べたところ、いずれも良好であった。
【0058】
〔実施例5〕
本実施例はバリア処方の多層構造としたもので、下記表7に示すように中心層の両側にそれぞれ同一構成の接着樹脂層を介して同一構成のコア層と、その外側に同一構成のシール層と外層とを設けた3種5層構造のポリプロピレンシートをTダイ共押出法により作製したものである。なお、中心層の両側にそれぞれ接着樹脂を介して同一構成のコア層を積層すると共に、その外側に同一構成のシール層と外層とをラミネート法等により設けることもできる。
【0059】
【表7】

【0060】
上記中心層を形成するための樹脂組成物としては、前記表1の素材番号(11)のエチレン・ビニルアルコール共重合体(100重量%)を用い、それをTダイ押出法により厚さ60μmのシート状に押出し成形した後に、その両面に素材番号(10)の接着樹脂を厚さ20μm程度塗布して全体厚さ100μm程度に形成したものである。
【0061】
また上記各コア層を形成するための樹脂組成物としては、前記表1の素材番号(5)のプロピレン−エチレンランダム共重合体に分散剤や安定剤等の用途として有機ヒドロキシド化合物を添加したものを81.5重量%、素材番号(7)の低密度ポリエチレンを15重量%、素材番号(8)の顔料マスターバッジを3.5重量%の割合で混合したものを用い、それを厚さ350μmのシート状に押出し成形してラミネートしたものである。
【0062】
さらに上記シール層と外層を形成するための樹脂組成物としては、それぞれ前記表1の素材番号(5)のプロピレン−エチレンランダム共重合体に分散剤や安定剤等の用途として有機ヒドロキシド化合物を添加したものを81.5重量%、素材番号(9)の低密度ポリエチレンを15重量%、素材番号(8)の顔料マスターバッジを3.5重量%の割合で混合したものを用い、それを厚さ100μmのシート状に押出し成形してラミネートしたものである。
【0063】
上記実施例においても、ポリプロピレンシートの作製時にブリードは生じることなく、また上記ポリプロピレンシートにオートクレーブにより122℃、25分間の滅菌処理を施した後に、水中パーティクル測定によりブリードがあるか否かを判定したところ、ブリードはなかった。また成形性については、熱版接触加熱方式によって容器を製造してフランジや側壁の厚み、熱収縮性、表面性、黄変等を調べたところ、いずれも良好であった。
【0064】
〔実施例6〕
本実施例はイージーピール等の易開封性処方の多層構造としたもので、下記表8に示すように中心層の両側にそれぞれ同一構成のコア層と、その外側に易開封性処方のシール層と外層とを設けた4種5層構造のポリプロピレンシートをTダイ共押出法により作製したものである。
【0065】
【表8】

【0066】
上記中心層を形成するための樹脂組成物としては、前記表1の素材番号(5)のプロピレン−エチレンランダム共重合体に分散剤や安定剤等の用途として有機ヒドロキシド化合物を添加したもの(100重量%)を用い、それを厚さ100μmのシート状に押出し成形したものである。
【0067】
また上記各コア層を形成するための樹脂組成物としては、前記表1の素材番号(5)のプロピレン−エチレンランダム共重合体に分散剤や安定剤等の用途として有機ヒドロキシド化合物を添加したものを90重量%、素材番号(7)の低密度ポリエチレンを10重量%の割合で混合したものを用い、それを厚さ350μmのシート状に押出し成形したものである。
【0068】
さらに上記易開封性処方のシール層を形成するための樹脂組成物としては、前記表1の素材番号(5)のプロピレン−エチレンランダム共重合体に分散剤や安定剤等の用途として有機ヒドロキシド化合物を添加したものを65重量%、素材番号(12)の高密度ポリエチレンを20重量%、素材番号(6)の低密度ポリエチレンを10重量%、素材番号(13)のリニアローデンポリエチレンを5重量%の割合で混合したものを用い、それを厚さ100μmのシート状に押出し成形したものである。
【0069】
また上記外層を形成するための樹脂組成物としては、前記表1の素材番号(5)のプロピレン−エチレンランダム共重合体に分散剤や安定剤等の用途として有機ヒドロキシド化合物を添加したものを85重量%、素材番号(9)の低密度ポリエチレンを15重量%の割合で混合したものを用い、それを厚さ100μmのシート状に押出し成形したものである。
【0070】
上記実施例においても、ポリプロピレンシートの作製時にブリードは生じることなく、また上記ポリプロピレンシートにオートクレーブにより122℃、25分間の滅菌処理を施した後に、水中パーティクル測定によりブリードがあるか否かを判定した際にも、ブリードは認められなかった。また成形性については、熱版接触加熱方式によって容器を製造してフランジや側壁の厚み、熱収縮性、表面性、黄変等を調べたところ、いずれも良好であった。
【0071】
〔実施例7〕
本実施例も易開封性処方の多層構造としたもので、下記表9に示すように中心層の両側にそれぞれ同一構成の接着樹脂層を介して同一構成のコア層と、その外側に同一構成のシール層と外層とを設けた3種5層構造のポリプロピレンシートをTダイ共押出法により作製したものである。なお、中心層の両側にそれぞれ接着樹脂を介して同一構成のコア層を積層すると共に、その外側に同一構成のシール層と外層とをラミネート法等により設けることもできる。
【0072】
【表9】

【0073】
上記中心層を形成するための樹脂組成物としては、前記表1の素材番号(11)のエチレン・ビニルアルコール共重合体(100重量%)を用い、それをTダイ押出法により厚さ60μmのシート状に押出し成形した後に、その両面に素材番号(10)の接着樹脂を厚さ20μm程度塗布して全体厚さ100μm程度に形成したものである。
【0074】
また上記各コア層を形成するための樹脂組成物としては、前記表1の素材番号(5)のプロピレン−エチレンランダム共重合体に分散剤や安定剤等の用途として有機ヒドロキシド化合物を添加したものを90重量%、素材番号(7)の低密度ポリエチレンを10重量%の割合で混合したものを用い、それを厚さ350μmのシート状に押出し成形したものである。
【0075】
さらに上記易開封性処方のシール層を形成するための樹脂組成物としては、前記表1の素材番号(5)のプロピレン−エチレンランダム共重合体に分散剤や安定剤等の用途として有機ヒドロキシド化合物を添加したものを65重量%、素材番号(12)の高密度ポリエチレンを20重量%、素材番号(6)の低密度ポリエチレンを10重量%、素材番号(13)のリニアローデンポリエチレンを5重量%の割合で混合したものを用い、それを厚さ100μmのシート状に押出し成形したものである。
【0076】
また上記外層を形成するための樹脂組成物としては、前記表1の素材番号(5)のプロピレン−エチレンランダム共重合体に分散剤や安定剤等の用途として有機ヒドロキシド化合物を添加したものを85重量%、素材番号(9)の低密度ポリエチレンを15重量%の割合で混合したものを用い、それを厚さ100μmのシート状に押出し成形したものである。
【0077】
上記実施例においても、ポリプロピレンシートの作製時にブリードは生じることなく、また上記ポリプロピレンシートにオートクレーブにより122℃、25分間の滅菌処理を施した後に、水中パーティクル測定によりブリードがあるか否かを判定したところ、ブリードはなかった。また成形性については、熱版接触加熱方式によって容器を製造してフランジや側壁の厚み、熱収縮性、表面性、黄変等を調べたところ、いずれも良好であった。
【0078】
〔比較例1〕
本比較例は下記表10に示すように中心層の両側にそれぞれ同一構成のコア層と、その外側に同一構成のシール層と外層とを設けた3種5層構造のポリプロピレンシートをTダイ共押出法により作製したものである。
【0079】
【表10】

【0080】
上記中心層を形成するための樹脂組成物としては、前記表1の素材番号(1)のプロピレン単独重合体に、分散剤や安定剤等の用途として有機ヒドロキシド化合物を添加したもの(100重量%)を用い、それを厚さ100μmのシート状に押出し成形したものである。
【0081】
また上記各コア層を形成するための樹脂組成物としては、上記と同様に素材番号(1)のプロピレン単独重合体に分散剤や安定剤としてステアリン酸系物質を添加したものを77重量%、素材番号(3)の高密度ポリエチレンを20重量%、素材番号(4)の顔料マスターバッジを3重量%の割合で混合したものを用い、それを厚さ350μmのシート状に押出し成形したものである。
【0082】
さらに上記シール層と外層を形成するための樹脂組成物としては、それぞれ前記表1の素材番号(1)のプロピレン単独重合体に分散剤や安定剤等の用途としてステアリン酸系物質を添加したものを40重量%、素材番号(2)のプロピレン−エチレンランダム共重合体にシングルサイト触媒を添加したものを30重量%、素材番号(3)の高密度ポリエチレンを20重量%の割合で混合したものを用い、それを厚さ100μmのシート状に押出し成形したものである。
【0083】
上記比較例で作製したポリプロピレンシートを用いて熱版接触加熱方式により容器を製造したところ成形性には殆ど問題はなかったが、ポリプロピレンシートを作製する際にブリードが生じ、また上記ポリプロピレンシートにオートクレーブにより122℃、25分間の滅菌処理を施した後に、水中パーティクル測定によりブリードがあるか否かを判定した際にもブリードが見られた。特に、本例では全ての層を構成する樹脂にステアリン酸系物質が添加されているためにブリードの発生が顕著に認められたものと思われる。
【0084】
〔比較例2〕
本比較例も下記表11に示すように中心層の両側にそれぞれ同一構成のコア層と、その外側に同一構成のシール層と外層とを設けた3種5層構造のポリプロピレンシートをTダイ共押出ラミネート法により作製したものである。
【0085】
【表11】

【0086】
上記中心層を形成するための樹脂組成物としては、前記表1の素材番号(5)のプロピレン単独重合体に、分散剤や安定剤等の用途として有機ヒドロキシド化合物を添加したもの(100重量%)を用い、それを厚さ100μmのシート状に押出し成形したものである。
【0087】
また上記各コア層を形成するための樹脂組成物としては、上記と同様に素材番号(5)のプロピレン単独重合体に分散剤や安定剤等の用途として有機ヒドロキシド化合物を添加したものを81.5重量%、素材番号(7)の低密度ポリエチレンを15重量%、素材番号(4)の顔料マスターバッジに分散剤や安定剤としてステアリン酸系物質を添加したものを3.5重量%の割合で混合したものを用い、それを厚さ350μmのシート状に押出し成形したものである。
【0088】
さらに上記シール層と外層を形成するための樹脂組成物としては、それぞれ上記と同様に素材番号(5)のプロピレン単独重合体に分散剤や安定剤等の用途としてステアリン酸系物質を添加したものを85重量%、素材番号(6)の低密度ポリエチレンを15重量%で混合したものを用い、それを厚さ100μmのシート状に押出し成形したものである。
【0089】
上記比較例においては、ポリプロピレンシートを作製する際にブリードが生じ、また上記ポリプロピレンシートにオートクレーブにより122℃、25分間の滅菌処理を施した後に、水中パーティクル測定によりブリードがあるか否かを判定した際にもブリードが見られた。これはステアリン酸系物質を添加したコア層の両側のそれぞれシール層と外層とがあるにも拘わらずブリードが生じたのは、上記コア層を覆うシール層と外層とが比較的薄く、しかもコア層が厚いためにステアリン酸系物質のシート全体に対する割合が多く、それによってブリードが生じたものと思われる。また成形性については、熱版接触加熱方式によって容器を製造してフランジや側壁の厚み、熱収縮性、表面性、黄変等を調べたところ、食品や医薬品を収容する包装用容器等に使用するシートとしては決して良好であるとは言えないものであった。
【産業上の利用可能性】
【0090】
以上のように本発明によるポリプロピレンシートは、そのシート作製時もしくはそのシートで包装用容器等を製造する際もしくは加熱滅菌処置等を施す際にもブリードが生じることがなく、また包装容器等の製造時の成形性も極めて良好である。従って、食品や医薬品を収容する容器を製造するための素材シートとしても充分に使用可能であり、ポリプロピレン樹脂の産業上の利用可能性および食品や医薬品等に用いる樹脂の選択の自由度を高めることができる等の利点がある。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
Tダイ押出法や押出ラミネート法等の溶融押出法によって製造されるポリプロピレンシートであって、プロピレン−エチレン共重合体を基材樹脂として、それに少なくとも分散剤や安定剤等の用途として有機ヒドロキシド化合物を添加した樹脂組成物をシート状に成形してなる層を有することを特徴とするポリプロピレンシート。
【請求項2】
上記ポリプロピレンシートは複数の層からなり、その少なくとも最外層を上記樹脂組成物をシート状に成形してなる層で形成することを特徴とする請求項1に記載のポリプロピレンシート。
【請求項3】
上記ポリプロピレンシートは複数の層からなり、その複数の層のうち上記樹脂組成物をシート状に成形してなる層はシート全体の50重量%以上であることを特徴とする請求項1または2に記載のポリプロピレンシート。

【公開番号】特開2008−297423(P2008−297423A)
【公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−144713(P2007−144713)
【出願日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【出願人】(502038989)ベスパック株式会社 (19)
【Fターム(参考)】