説明

ポリプロピレン延伸多層フィルム

【課題】剛性とヒートシール強度のバランスに優れるポリプロピレン延伸多層フィルムを得ること。
【解決手段】融点が155℃以上のプロピレン重合体(A)を含有する基材層の少なくとも片面に、融点が140℃以下であるプロピレン/1−ブテン共重合体(B)を含有する層が積層されたシートを延伸して得られるポリプロピレン延伸多層フィルムであって、プロピレン重合体(A)を含有する基材層の厚みに対する、プロピレン/1−ブテン共重合体(B)を含有する層の厚みの比((B)/(A))が0.025〜0.25であり、横方向および/または縦方向の120℃における加熱収縮率が3.0%以下であることを特徴とする前記ポリプロピレン延伸多層フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒートシール強度および剛性に優れるポリプロピレン延伸多層フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
ポリプロピレン延伸フィルムは、透明性や剛性等に優れることから、各種の包装材料として、広く用いられている。ポリプロピレン延伸フィルムにヒートシール性を付与する方法としては、高融点のポリプロピレン基材層に低融点の樹脂を共押出法で積層した後、延伸する方法、およびポリプロピレン延伸フィルムにポリエチレン系樹脂フィルムまたはポリプロピレン系樹脂フィルムをラミネートする方法などがある。
共押出により積層して延伸する方法では、一般に、ヒートシール強度が弱いため、重量物の包装に向いていないという問題があり、またラミネートにより積層する方法では有機溶剤等を使用するラミネート工程が必要であるため、地球環境に与える負荷が大きく、経済的にも好ましくない。
そこで、共押出によりヒートシール層を積層して延伸したポリプロピレン系フィルムにおいて、ヒートシール強度を改善する方法が検討されている。例えば、特開平7−329260号公報には、結晶性ポリプロピレンからなる基材層の少なくとも一方の表面に150℃以下の樹脂層を4μm以上積層する方法が記載されている。また、特開2003−170555号公報には、基材層にプロピレン単独重合体と低融点のプロピレン/エチレン共重合体のブレンド物を用いる手法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−329260号明細書
【特許文献2】特開2003−170555号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記の方法では、低融点の熱融着層を厚くしたり、低融点の樹脂を基材にブレンドしたりするため、ヒートシール強度は向上するものの、それに伴って剛性が悪化するという問題がある。
本発明の目的は、剛性とヒートシール強度のバランスに優れるポリプロピレン延伸多層フィルムを得ることである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決するために、本発明者等は、鋭意検討した結果、本発明が、上記の課題を解決できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は、融点が140℃以下であるプロピレン/1−ブテン共重合体(B)を含有する層が積層されたシートを延伸して得られるポリプロピレン延伸多層フィルムであって、プロピレン重合体(A)を含有する基材層の厚みに対する、プロピレン/1−ブテン共重合体(B)を含有する層の厚みの比((B)/(A))が0.025〜0.25であり、横方向および/または縦方向の120℃における加熱収縮率が3.0%以下であることを特徴とする前記ポリプロピレン延伸多層フィルムに関する。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、剛性とヒートシール強度のバランスに優れるポリプロピレン延伸多層フィルムが得られる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
基材層に用いられるプロピレン重合体(A)は、アイソタクチックプロピレン系重合体が好ましく用いられ、プロピレン単独重合体、エチレンおよび/または炭素数4〜12のα−オレフィンとプロピレンとの共重合体が特に好ましい。α−オレフィンとしては、たとえば1−ブテン、4−メチルペンテン−1、1−オクテン、1−ヘキセン等が挙げられ、特に1−ブテンが好ましい。共重合は延伸性などを制御する目的で行われ、プロピレン以外のモノマーがエチレンの場合、エチレンの含有量としては、5重量%以下、好ましくは3重量%以下、さらに好ましくは2重量%以下である(プロピレン重合体(A)を100重量%とする)。プロピレン以外のモノマーが炭素数4〜12のα−オレフィンの場合、α−オレフィンの含有量としては、7重量%以下、好ましくは5重量%以下、さらに好ましくは3重量%以下である(プロピレン重合体(A)を100重量%とする)。エチレンが5重量%を超えるか、α−オレフィンが7重量%を超えると結晶性が低下し、製品の剛性を損なう場合がある。
【0008】
プロピレン重合体(A)の融点は、155℃以上であり、好ましくは156℃以上である。融点が155℃より低い場合には、製品の剛性を損なう場合がある。
【0009】
プロピレン重合体(A)のMFRは、樹脂の押出特性や延伸性の観点から、好ましくは0.1〜200g/10minであり、より好ましくは1〜150g/10min、さらに好ましくは1〜20g/10minである。
【0010】
プロピレン重合体(A)の20℃キシレン可溶部量(CXS、単位:重量%)は、剛性や耐ブロッキング性の観点から、好ましくは10重量%以下であり、より好ましくは5重量%以下である。
【0011】
本発明において、プロピレン重合体(A)には、必要に応じて添加剤を添加してもよい。添加剤としては、例えば、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、滑剤、造核剤、防曇剤、アンチブロッキング剤等が挙げられる。
【0012】
表層にはプロピレン/1−ブテン共重合体(B)を単独で使用してもよく、それ以外の共重合体をブレンドして用いてもよい。プロピレン/1−ブテン共重合体(B)以外の共重合体をブレンドする場合は、プロピレン/エチレン共重合体が好ましい。
表層がプロピレン/1−ブテン共重合体(B)とプロピレン/エチレン共重合体とを含有する場合には、プロピレン/1−ブテン共重合体(B)の含有量は、シール強度や低温ヒートシール性の観点から、55重量%〜100重量%が好ましく(プロピレン−エチレン共重合体の含有量は0重量%〜45重量%である)、60重量%〜100重量%がより好ましい(プロピレン−エチレン共重合体の含有量は0重量%〜40重量%である)。
【0013】
プロピレン/1−ブテン共重合体(B)の1−ブテン含有量は、好ましくは5重量%以上40重量%未満、より好ましくは10重量%以上35重量%未満、さらに好ましくは15重量%以上30重量%未満である(プロピレン/1−ブテン共重合体(B)の重量を100重量%とする)。上記プロピレン/エチレン共重合体のエチレン含有量は、好ましくは1重量%以上10重量%未満、より好ましくは2重量%以上7重量%未満である(プロピレン/エチレン共重合体の重量を100重量%とする)。
【0014】
プロピレン/1−ブテン共重合体(B)の1−ブテン含有量が5重量%未満の場合、十分なシール強度や低温ヒートシール性が得られない場合があり、40重量%を超えると耐ブロッキング性が悪化する場合がある。
【0015】
プロピレン/1−ブテン共重合体(B)の融点は140℃以下であり、好ましくは80℃以上135℃以下、より好ましくは100℃以上135℃以下である。融点が140℃を超えるとヒートシール強度や低温ヒートシール性を損なうことがある。また、プロピレン/エチレン共重合体をブレンドする場合、プロピレン/エチレン共重合体の融点は好ましくは150℃以下であり、より好ましくは120℃以上140℃以下である。
【0016】
プロピレン/1−ブテン共重合体(B)のMFRは、樹脂の押出特性などの観点から、好ましくは0.1〜200g/10minであり、より好ましくは1〜150g/10min、さらに好ましくは1〜20g/10minである。
【0017】
プロピレン/1−ブテン共重合体(B)の20℃キシレン可溶成分量(CXS、単位:重量%)は、フィルムの耐ブロッキング性の観点から、好ましくは25重量%以下であり、より好ましくは20重量%以下、さらに好ましくは15重量%以下である。
【0018】
プロピレン/1−ブテン共重合体(B)には、必要に応じて添加剤やその他の樹脂を添加してもよい。添加剤としては、例えば、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、滑剤、造核剤、防曇剤、アンチブロッキング剤等が挙げられる。その他の樹脂としては、エチレン系樹脂が挙げられる。
【0019】
本発明で使用されるプロピレン重合体(A)およびプロピレン/1−ブテン共重合体(B)の製造方法としては、公知の重合触媒を用いて、公知の重合方法によって製造する方法が挙げられる。
公知の重合触媒としては、例えば、マグネシウム、チタンおよびハロゲンを必須とする固体触媒成分と、有機アルミニウム化合物と、必要に応じて用いられる電子供与性化合物等の第3成分とからなる触媒系、シクロペンタジエニル環を有する周期表第IV族の遷移金属化合物とアルキルアルミノキサンからなる触媒系、またはシクロペンタジエニル環を有する周期表第IV族の遷移金属化合物とそれと反応してイオン性の錯体を形成する化合物および有機アルミニウム化合物からなる触媒系等が挙げられる。好ましくはマグネシウム、チタンおよびハロゲンを必須とする固体触媒成分と、有機アルミニウム化合物と、電子供与性化合物からなる触媒系であり、例えば、特開昭61−218606号公報、特開昭61−287904号公報、特開平1−319508号公報、特開平7−216017号公報等に記載されている触媒系である。
【0020】
公知の重合方法としては、例えば、不活性炭化水素溶媒によるスラリー重合法、溶媒重合法、無溶媒による液相重合法、気相重合法等が挙げられ、好ましくは気相重合法、あるいは、前記の重合法を組み合わせ、それらを連続的に行なう方法、例えば、液相−気相重合法等が挙げられる。
【0021】
本発明のポリプロピレン延伸多層フィルムにおける、プロピレン重合体(A)を含有する基材層の厚みに対する、プロピレン/1−ブテン共重合体(B)を含有する層の厚みの比((B)/(A))は0.025〜0.25であり、ヒートシール強度と剛性の観点から、好ましくは0.05〜0.20、より好ましくは0.07〜0.18である。
【0022】
プロピレン重合体(A)を含有する基材層の厚みは、剛性や延伸性の観点から、5μm以上100μm未満が好ましく、10μm以上70μm未満がより好ましく、15μm以上50μm未満がさらに好ましい。
【0023】
プロピレン/1−ブテン共重合体(B)を含有する層の厚みは、ヒートシール強度や剛性の観点から、0.5μm以上5μm未満が好ましく、1μm以上4μm未満がより好ましく、1μm以上3μm未満がさらに好ましい。
【0024】
ポリプロピレン延伸多層フィルムの横方向および/または縦方向の120℃における加熱収縮率は3.0%以下であり、好ましくは2.0%以下であり、さらに好ましくは1.0%以下である。加熱収縮率が3.0%を超えると、十分なヒートシール強度が得られないことがある。
【0025】
本発明において加熱収縮率は以下のようにして測定できる。
まず、本発明のポリプロピレン延伸多層フィルムから、A4サイズのフィルムを採取する。該フィルムに横方向または縦方向の標線間距離が20cmとなるように標線を引く。そして、該フィルムを120℃で保温しているオーブン中で吊るして5分間保持する。その後、フィルムを取り出し、室温にて30分間冷却した後に、標線間距離を測定する。そして、以下の計算式から横方向または縦方向の加熱収縮率を算出する。
加熱収縮率(%)={(20−加熱後の標線間距離)/20}×100
【0026】
テンター方式で加熱収縮率を3.0%以下にする方法としては、延伸時の予熱から熱固定までの加熱時間を長くする方法、オーブンの温度を高めに設定する方法、熱固定時の緩和率を大きくする方法、延伸倍率を下げる方法がある。特に、延伸時の予熱から熱固定までの加熱時間を長くする方法が、効果が大きく好ましい。
ロール延伸方式で加熱収縮率を3.0%以下にする方法としては、延伸時の予熱から熱固定までの加熱時間を長くする方法、ロールの温度を高めに設定する方法、延伸倍率を下げる方法がある。
【0027】
延伸時の予熱から熱固定までの加熱時間を長くする方法としては、具体的に、好ましくは30〜100秒、より好ましくは40〜100秒かけて延伸オーブンを通過させる。
熱固定時の緩和率としては、好ましくは3〜20%、より好ましくは5〜15%、さらに好ましくは10〜15%が好適である。
なお、延伸倍率を下げる方法はフィルムの剛性の低下を招くこともあるので、注意が必要である。
【0028】
基材層および表層の製造方法としては、インフレーション法、Tダイ法、カレンダー法等が挙げられる。多層フィルムの製造方法としては、押出ラミネート法、熱ラミネート法、ドライラミネート法等が挙げられる。
【0029】
本発明のポリプロピレン延伸多層フィルムは、縦方向一軸延伸方式、横方向一軸延伸方式、逐次二軸延伸方式、同時二軸延伸方式あるいはチューブラー二軸延伸方式にて延伸加工される。これらの中で、二軸延伸方式が好ましく、逐次二軸延伸方式がより好ましい。
【実施例】
【0030】
以下、実施例および比較例により本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。実施例および比較例で用いた物性の測定方法を下記に示した。
【0031】
(1)メルトフローレート(MFR、単位:g/10分)
JIS K7210に従い測定した。
【0032】
(2)コモノマー含量(単位:重量%)
高分子分析ハンドブック(1995年、紀伊国屋書店発行)の616ページ以降に記載されている方法により、赤外分光法で測定を行い求めた。
【0033】
(3)融点(Tm、単位:℃)
示差走査熱量計(パーキンエルマー社製DSC)を用いて、試片約10mgを窒素雰囲気下220℃で5分間保持した後、300℃/minで150℃まで冷却した。150℃で1分間保持した後、50℃/分の降温速度で50℃まで降温した。
その後に50℃で1分保持した後、5℃/分で昇温させて、得られた融解吸熱カーブの最大ピークのピーク温度の小数位以下を四捨五入してTm(融点)とした。ピークが複数あるものは、高温側のピークを採用した。
なお、本測定器を用いて5℃/分の降温速度ならびに昇温速度で測定したインジウム(In)のTmは156.6℃であった。
【0034】
(4)20℃キシレン可溶成分量(CXS、単位:重量%)
10gのポリプロピレンを1000mlの沸騰キシレンに溶解した後、50℃まで徐冷し、次いで氷水に浸し攪拌しながら20℃まで冷却し、20℃で一晩放置した後、析出したポリマーを濾別し、濾液からキシレンを蒸発させ、60℃で減圧乾燥して20℃のキシレンに可溶なポリマーを回収し、回収されたポリマーの重量からCXSを算出した。
【0035】
(5)ヒートシール強度(単位:g/25mm)
フィルムの表面同士を重ね合わせ、所定温度に加熱されたヒートシーラー(テスター産業株式会社製)で2kg/cmの荷重で2秒間圧着してヒートシールを行った。このサンプルを一昼夜23℃、湿度50%の雰囲気下で状態調整した後、23℃、湿度50%の雰囲気下で剥離速度200mm/分、剥離角度90度で剥離した時の剥離抵抗力をヒートシール強度とした。
【0036】
(6)剛性(ヤング率、単位:MPa)
長さ120mm、幅20mmの試験片の長手方向をフィルムの縦方向(MD)に一致させて試験片を採取し、また、長さ120mm、幅20mmの試験片の長手方向をフィルムの横方向(TD)に一致させて試験片を採取し、採取されたそれぞれの試験片について、引張試験機によってチャック間隔60mm、引張速度5mm/分の条件で、S−S曲線をとり、初期弾性率(ヤング率)を測定した。
【0037】
(7)TD加熱収縮率(単位:%)
長軸が縦方向(MD)と平行になるように、A4サイズのフィルムを採取し、横方向の標線間距離が20cmとなるように二本の標線を引き、120℃で保温しているオーブン中で吊るして5分間保持した。その後、フィルムを取り出し、室温にて30分間冷却した後に、標線間距離を測定した。加熱収縮率を、次の計算式から算出した。

加熱収縮率(%)={(20−加熱後の標線間距離)/20}×100
【0038】
[実施例1]
基材層用にプロピレン単独重合体(A:MFR=2.1g/10分、融点=160℃、CXS=3.0重量%)、表層用にプロピレン/1−ブテン共重合体(B1:MFR=7.1g/10分、1−ブテン含有量=25重量%、融点=128℃、CXS=9.5重量%)を用い、それぞれ樹脂温度260℃、230℃で各々別の押出機で溶融押出し、一基の共押出Tダイに供給した。このTダイから2種2層構成(チルロール側に表層用樹脂)で押出された樹脂を30℃の冷却ロールで冷却して、厚み約1mmのキャストシートを得た。
得られたキャストシートを低速ロールと、高速ロールの周速差により120℃で縦方向に5倍に延伸した。引き続いて加熱炉にて予熱温度165℃、延伸温度165℃で横方向に8倍に延伸し、170℃で熱処理を行いながら横方向の幅を13%緩和した。加熱炉の入り口から出口までは63秒かけてフィルムを通過させた。加熱炉から出たフィルムを25℃の冷却ロールで冷却し、巻き取り機で巻き取り、表層/基材層厚み=2.5/20μmである二軸延伸多層フィルムを作成した。得られたフィルムの物性を表1に示す。得られたフィルムはヒートシール強度および剛性のバランスに優れるフィルムであった。
【0039】
[実施例2]
基材層用樹脂と表層用樹脂には実施例1と同様の樹脂を使用し、横方向延伸時の延伸温度を157℃に変更した以外は実施例1と同様の方法で二軸延伸多層フィルムを作成した。得られたフィルムの物性を表1に示す。得られたフィルムはヒートシール強度および剛性のバランスに優れるフィルムであった。
【0040】
[実施例3]
基材層用樹脂と表層用樹脂には実施例1と同様の樹脂を使用し、横方向延伸時の延伸温度を157℃、熱処理温度を165℃に変更した以外は実施例1と同様の方法で二軸延伸多層フィルムを作成した。得られたフィルムの物性を表1に示す。得られたフィルムはヒートシール強度および剛性のバランスに優れるフィルムであった。
【0041】
[実施例4]
基材層用樹脂と表層用樹脂には実施例1と同様の樹脂を使用し、横方向延伸時の延伸温度を157℃、熱処理温度を165℃、延伸後の緩和率を6.5%に変更した以外は実施例1と同様の方法で二軸延伸多層フィルムを作成した。得られたフィルムの物性を表1に示す。得られたフィルムはヒートシール強度および剛性のバランスに優れるフィルムであった。
【0042】
[比較例1]
基材層用樹脂と表層用樹脂には実施例1と同様の樹脂を使用し、横方向延伸時の延伸速度を変更し、25秒かけてオーブンを通過させた以外は、実施例4と同様の方法で二軸延伸多層フィルムを作成した。得られたフィルムは加熱収縮率の大きいフィルムであり、十分なヒートシール強度が得られなかった。
【0043】
[比較例2]
基材層用樹脂と表層用樹脂には実施例1と同様の樹脂を使用し、横方向延伸時の延伸速度を変更し、19秒かけてオーブンを通過させた以外は実施例3と同様の方法で二軸延伸多層フィルムを作成した。得られたフィルムは加熱収縮率の大きいフィルムであり、十分なヒートシール強度が得られなかった。
【0044】
[比較例3]
表層用樹脂にプロピレン/エチレン共重合体(B2:MFR=8.4g/10分、エチレン含有量=4.3重量%、融点=139℃、CXS=4.4重量%)を用いた以外は、実施例3と同様の方法で二軸延伸多層フィルムを作成した。得られたフィルムは十分なヒートシール強度が得られなかった。
【0045】
[比較例4]
表層用樹脂にプロピレン/エチレン/1−ブテン共重合体(B3:MFR=7.9g/10分、エチレン含有量=4.0重量%、1−ブテン含有量=3.6重量%、融点=132℃、CXS=5.2重量%)を用い、比較例3と同様の方法で二軸延伸多層フィルムを作成した。得られたフィルムは十分なヒートシール強度が得られなかった。
【0046】
[実施例5]
表層用樹脂として、実施例1で使用したプロピレン/1−ブテン共重合体(B1)65重量%と、比較例3で使用したプロピレン/エチレン共重合体(B2)35重量%の比率でブレンドして使用した以外は、実施例4と同様の方法で二軸延伸多層フィルムを作成した。表層用に用いた樹脂の融点は134℃であった。得られたフィルムの物性を表1に示す。得られたフィルムはヒートシール強度および剛性のバランスに優れるフィルムであった。
【0047】
[比較例5]
表層用樹脂にプロピレン/1−ブテン共重合体(B1)を用い、表層/基材層の厚みを6μm/16.5μmとした以外は、実施例3と同様の方法で製膜を行った。得られたフィルムは表層厚みが厚く、本願の構成要件である層構成を満足しないため、剛性が劣るフィルムであった。
【0048】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明のポリプロピレン延伸多層フィルムは、ヒートシール強度と剛性に優れ、食品包装用フィルム等に利用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
融点が155℃以上のプロピレン重合体(A)を含有する基材層の少なくとも片面に、融点が140℃以下であるプロピレン/1−ブテン共重合体(B)を含有する層が積層されたシートを延伸して得られるポリプロピレン延伸多層フィルムであって、プロピレン重合体(A)を含有する基材層の厚みに対する、プロピレン/1−ブテン共重合体(B)を含有する層の厚みの比((B)/(A))が0.025〜0.25であり、横方向および/または縦方向の120℃における加熱収縮率が3.0%以下であることを特徴とする前記ポリプロピレン延伸多層フィルム。
【請求項2】
プロピレン/1−ブテン共重合体(B)を含有する層の厚みが0.5μm以上5μm未満である請求項1に記載のポリプロピレン延伸多層フィルム。

【公開番号】特開2011−88375(P2011−88375A)
【公開日】平成23年5月6日(2011.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−244227(P2009−244227)
【出願日】平成21年10月23日(2009.10.23)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】