ポリプロピレン樹脂成形体
【課題】優れた耐衝撃性を有し、低光沢なポリプロピレン樹脂成形体を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明のポリプロピレン樹脂成形体は、下記(A)〜(D)を満たす、ポリプロピレン成分と、含エチレン共重合体成分と、を含むポリプロピレン樹脂組成物を、成形および熱処理してなり、成形体表面に、含エチレン共重合体成分を含む突起を有する。(A)230℃、21.6N荷重における、ポリプロピレン成分のMFRPPと、含エチレン共重合体成分のMFRERとの比(MFRPP/MFRER)が、0.03〜5である。(B)含エチレン共重合体を形成する単量体の全質量100質量部に含まれる、α−オレフィンの含有量が20〜60質量部である。(C)230℃、21.6N荷重における、含エチレン共重合体成分のMFRERが、0.5〜70(g/10分)である。(D)含エチレン共重合体の流動温度が、70℃以下である。
【解決手段】本発明のポリプロピレン樹脂成形体は、下記(A)〜(D)を満たす、ポリプロピレン成分と、含エチレン共重合体成分と、を含むポリプロピレン樹脂組成物を、成形および熱処理してなり、成形体表面に、含エチレン共重合体成分を含む突起を有する。(A)230℃、21.6N荷重における、ポリプロピレン成分のMFRPPと、含エチレン共重合体成分のMFRERとの比(MFRPP/MFRER)が、0.03〜5である。(B)含エチレン共重合体を形成する単量体の全質量100質量部に含まれる、α−オレフィンの含有量が20〜60質量部である。(C)230℃、21.6N荷重における、含エチレン共重合体成分のMFRERが、0.5〜70(g/10分)である。(D)含エチレン共重合体の流動温度が、70℃以下である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリプロピレン樹脂成形体に関する。より詳しくは、優れた耐衝撃性を有し、成形体表面の突起により光沢を調整されてなるポリプロピレン樹脂成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリプロピレン樹脂は、安価でありながら、優れた軽量性、機械的強度、および成形性等を有することから、多くの樹脂成形品に汎用されている。なかでも、自動車部品においては、バンパー、ロッカーモール、サイドモール、およびオーバーフェンダー等の外装部品、ならびにインストルメントパネル、グローブボックス、ドアライナー、およびピラー等の内装部品等に幅広く利用されている。
【0003】
特に、自動車の内装部品として使用されるポリプロピレン樹脂成形体(以下、単に「成形体」とも称する)は、外観上の観点から、表面の光沢をある程度低減させることが求められる。このような要求に対応すべく、例えば、特許文献1では、ポリプロピレン樹脂と、高分子量のゴム成分と、無機フィラーとを含むポリプロピレン系樹脂組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−010775号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の発明によると、表面の光沢をある程度低減させることはできるものの、所望の耐衝撃性の確保とのバランスを取ることは容易ではなかった。
【0006】
そこで本発明の目的は、優れた耐衝撃性を有し、低光沢なポリプロピレン樹脂成形体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を行った。その過程で、所定の物性を有する成分を含むポリプロピレン樹脂組成物を、成形および熱処理することにより、含エチレン共重合体成分が成形体表面に突起状に析出し、表面光沢が低減されることを見出した。さらに、本発明者らは、このポリプロピレン樹脂成形体が、所望の耐衝撃性を有することを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0008】
すなわち、本発明のポリプロピレン樹脂成形体は、ポリプロピレン成分と、含エチレン共重合体成分と、を含むポリプロピレン樹脂組成物を、成形および熱処理してなる。そして、ポリプロピレン成分および含エチレン共重合体は、下記(A)〜(D)を満たし、成形体表面に、含エチレン共重合体成分を含む突起を有する。(A)230℃、21.6N荷重における、ポリプロピレン成分のメルトフローレート(MFRPP)と、含エチレン共重合体成分のメルトフローレート(MFRER)との比(MFRPP/MFRER)が、0.03〜5である。(B)含エチレン共重合体を形成する単量体の全質量100質量部に含まれる、α−オレフィンの含有量が20〜60質量部である。(C)230℃、21.6N荷重における、含エチレン共重合体成分のメルトフローレート(MFRER)が、0.5〜70(g/10分)である。(D)含エチレン共重合体の流動温度が、70℃以下である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、優れた耐衝撃性を有し、低光沢なポリプロピレン樹脂成形体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施形態に係るポリプロピレン樹脂成形体を模式的に表した斜視図である。
【図2A】実施例1のポリプロピレン樹脂成形体(鏡面)における、熱処理時間と光沢との関係を表したグラフである。
【図2B】実施例1のポリプロピレン樹脂成形体(シボ光沢)における、熱処理時間と光沢との関係を表したグラフである。
【図3A】比較例1のポリプロピレン樹脂成形体(鏡面)における、熱処理時間と光沢との関係を表したグラフである。
【図3B】比較例1のポリプロピレン樹脂成形体(シボ光沢)における、熱処理時間と光沢との関係を表したグラフである。
【図4A】実施例1のポリプロピレン樹脂成形体(鏡面)における、熱処理前の表面を観察した、共焦点レーザー顕微鏡による二次元像である。
【図4B】実施例1のポリプロピレン樹脂成形体(鏡面)における、熱処理前の表面を観察した、共焦点レーザー顕微鏡による三次元像である。
【図5A】実施例1のポリプロピレン樹脂成形体(鏡面)における、熱処理後(216h)の表面を観察した、共焦点レーザー顕微鏡による二次元像である。
【図5B】実施例1のポリプロピレン樹脂成形体(鏡面)における、熱処理後(216h)の表面を観察した、共焦点レーザー顕微鏡による三次元像である。
【図6A】比較例1のポリプロピレン樹脂成形体(鏡面)における、熱処理前の表面を観察した、共焦点レーザー顕微鏡による二次元像である。
【図6B】比較例1のポリプロピレン樹脂成形体(鏡面)における、熱処理前の表面を観察した、共焦点レーザー顕微鏡による三次元像である。
【図7A】比較例1のポリプロピレン樹脂成形体(鏡面)における、熱処理後(216h)の表面を観察した、共焦点レーザー顕微鏡による二次元像である。
【図7B】比較例1のポリプロピレン樹脂成形体(鏡面)における、熱処理後(216h)の表面を観察した、共焦点レーザー顕微鏡による三次元像である。
【図8A】実施例1のポリプロピレン樹脂成形体(鏡面)における、熱処理前の成形体表面のFT−IRチャートである。
【図8B】実施例1のポリプロピレン樹脂成形体(鏡面)における、熱処理後の成形体表面のFT−IRチャートである。
【図9A】実施例1のポリプロピレン樹脂形成体(鏡面およびシボ光沢)における、突起の面積と光沢との相関を表すグラフである。
【図9B】実施例1のポリプロピレン樹脂形成体(鏡面およびシボ光沢)における、突起のサイズと光沢との相関を表すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の好ましい形態を説明するが、本発明の技術的範囲は特許請求の範囲の記載に基づいて定められるべきであり、下記の形態のみには制限されない。
【0012】
本形態は、ポリプロピレン成分と、含エチレン共重合体成分と、を含むポリプロピレン樹脂組成物を、成形および熱処理してなるポリプロピレン樹脂成形体に関する。そして、ポリプロピレン成分および含エチレン共重合体は、下記(A)〜(D)を満たし、成形体表面に、含エチレン共重合体成分を含む突起を有する。(A)230℃、21.6N荷重における、ポリプロピレン成分のメルトフローレート(MFRPP)と、含エチレン共重合体成分のメルトフローレート(MFRER)との比(MFRPP/MFRER)が、0.03〜5である。(B)含エチレン共重合体を形成する単量体の全質量100質量部に含まれる、α−オレフィンの含有量が20〜60質量部である。(C)230℃、21.6N荷重における、含エチレン共重合体成分のメルトフローレート(MFRER)が、0.5〜70(g/10分)である。(D)含エチレン共重合体の流動温度が、70℃以下である。
【0013】
以下、図面を参照しつつ本形態について詳細に説明する。ただし、図面の記載は理解の容易のために簡略化されている。したがって、本発明の技術的範囲が図示する形態(形状、サイズなど)によって限定されることはない。
【0014】
図1は、本形態のポリプロピレン樹脂成形体を模式的に表した斜視図である。図1によると、ポリプロピレン樹脂成形体1の表面に、突起3が存在する。
【0015】
ポリプロピレン樹脂成形体1は、ポリプロピレン樹脂組成物を成形および熱処理することによって得られる。以下、本形態のポリプロピレン樹脂組成物の各構成要素について詳細に説明する。ただし、本発明の技術的範囲が下記の具体的な形態のみに制限されることはない。
【0016】
[ポリプロピレン成分]
ポリプロピレン成分は、ポリプロピレン樹脂成形体の必須の構成要素であって、主に成形体の機械物性に寄与しうる。なお、本明細書において、「ポリプロピレン成分」とは、プロピレンを含むエチレン性不飽和単量体を重合してなる樹脂成分を意味する。また、本明細書において、「エチレン性不飽和単量体」とは、エチレン(CH2=CH2)の水素原子が置換されてなる化合物をいう。
【0017】
ポリプロピレン成分は、プロピレンを含むエチレン性不飽和単量体を重合してなる樹脂成分であれば、特に制限はないが、ホモポリプロピレンであることが好ましく、アイソタクチック構造を有するアイソタクチックホモポリプロピレンであることがより好ましい。アイソタクチックホモポリプロピレンのアイソタクティシティーは、好ましくは95〜99.9%であり、より好ましくは96〜99.5%であり、さらに好ましくは97〜99である。かようなポリプロピレン成分を使用することにより、ポリプロピレン樹脂成形体の機械的強度が向上しうる。
【0018】
ポリプロピレン成分としては、上述のホモプロピレン以外にも、ヘテロポリプロピレンを使用することができる。ヘテロポリプロピレンに使用されるプロピレン以外のエチレン性不飽和単量体としては、例えば、エチレン、ブテン、およびヘキセンなどが挙げられるが、これらに制限されるものではない。ヘテロポリプロピレンに含まれる繰り返し単位の総数のうち、プロピレン由来の繰り返し単位の割合は、好ましくは5〜40%であり、より好ましくは15〜35%である。また、ヘテロポリプロピレンは、ブロック共重合体またはランダム共重合体のいずれであってもよい。なお、ポリプロピレン成分に含まれるポリプロピレンは、1種を単独であるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0019】
ポリプロピレン成分の重量平均分子量は、特に制限はないが、好ましくは100000〜700000であり、より好ましくは150000〜500000であり、さらに好ましくは180000〜300000である。ポリプロピレン成分の重量平均分子量がかような範囲にあると、成形性および機械物性のバランスが良好となりうる。
【0020】
また、ポリプロピレン成分のメルトフローレート(MFRPP)は、0.5〜100であることが好ましく、5〜70であることがより好ましく、10〜50であることがさらに好ましい。なお、本明細書におけるメルトフローレートの値は、後述の実施例に記載の測定方法により求めた値を採用する。
【0021】
[含エチレン共重合体成分]
含エチレン共重合体成分は、ポリプロピレン樹脂成形体に含まれる必須の構成要素であって、成形体表面の突起の形成および耐衝撃性の向上に寄与しうる。
【0022】
含エチレン共重合体成分は、エチレンおよびエチレン以外のエチレン性不飽和単量体を含む共重合体からなる。含エチレン共重合体成分を構成する、エチレン以外のエチレン性不飽和単量体としては、特に制限はないが、例えば、プロピレン、1−ブテン、cis−2−ブテン、trans−2−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、スチレン、および1−オクテンが挙げられる。このうち、1−オクテンまたは1−ブテンを少なくとも1種含むことが好ましい。これらのエチレン以外のエチレン性不飽和単量体は1種を単独であるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0023】
含エチレン共重合体成分は、エチレンおよびエチレン以外のエチレン性不飽和単量体からなるブロック共重合体であってもよいし、ランダム共重合体であってもよいが、特に低温衝撃性の観点から、ランダム共重合体であることが好ましい。
【0024】
本形態のポリプロピレン樹脂成形体に使用される上記ポリプロピレン成分および含エチレン共重合体成分は、以下の(A)〜(D)を満たす。
【0025】
(A)230℃、21.6N荷重における、ポリプロピレン成分のメルトフローレート(MFRPP)と、含エチレン共重合体成分のメルトフローレート(MFRER)との比(MFRPP/MFRER)が、0.03〜5である。このうち、MFRPP/MFRERが0.1〜2.0であることが好ましく、0.5〜1.5であることがより好ましい。MFRPP/MFRERが、0.03未満または5を超えると、ポリプロピレン成分中に含エチレン共重合体成分が微細に分散されないために、成形体表面に突起が均一に形成されない虞がある。
【0026】
(B)含エチレン共重合体を形成する単量体の全質量100質量部に含まれる、エチレン以外のエチレン性不飽和単量体の含有量が20〜60質量部である。このうち、エチレン以外のエチレン性不飽和単量体の含有量が25〜50質量部であることが好ましく、30〜45質量部であることがより好ましい。エチレン以外のエチレン性不飽和単量体の含有量が20質量部未満または60質量部を超えると、上記ポリプロピレン成分との相溶性が低下するために、ポリプロピレン樹脂組成物を熱処理した際に、含エチレン共重合体成分を含む突起が形成されにくくなる虞がある。
【0027】
(C)230℃、21.6N荷重における、含エチレン共重合体成分のメルトフローレート(MFRER)が、0.5〜70(g/10分)である。このうち、MFRERが1.0〜40(g/10分)であることが好ましく、5〜35(g/10分)であることがより好ましく、10〜30(g/10分)であることがさらに好ましい。MFRERが、0.5(g/10分)未満であると、粘度が高くなるために、熱処理による突起の形成が不十分となる虞がある。一方、MFRERが、70(g/10分)を超えると、所望の耐衝撃性が得られない虞がある。
【0028】
(D)含エチレン共重合体の流動温度が、30〜70℃である。このうち、流動温度が30〜50℃であることが好ましく、40〜65℃であることより好ましい。本形態で用いられる含エチレン共重合体は、ポリプロピレン樹脂組成物の熱処理温度(80℃程度)よりも低い温度で流動する必要がある。流動温度が70℃を超えると、熱処理による突起の形成が不十分なため、所望の光沢の低下がなされない虞がある。一方、流動温度が30℃未満であると、室温付近で流動するため、ポリプロピレン樹脂組成物の製造の際のハンドリングが困難となる虞がある。なお、本明細書における「流動温度」とは、測定対象物が液体状態になる温度を意味し、後述の実施例に記載の測定方法により求めた値を採用する。
【0029】
本形態に係るポリプロピレン樹脂成形体に含まれる含エチレン共重合体の含有量は、本発明の効果を著しく損なわない範囲において、当業者が適宜調製することができる。好ましくは、ポリプロピレン樹脂組成物の全質量100質量部に対して、10〜60質量部であり、より好ましくは20〜55質量部であり、さらに好ましくは25〜50質量部である。含エチレン共重合体の含有量がかような範囲にあると、ポリプロピレン樹脂成形体の耐衝撃性が向上しうる。さらに、成形体表面の突起が十分に形成されるため、低光沢性に優れ、またこの低光沢性を長期間維持することができる。
【0030】
本形態に係るポリプロピレン樹脂組成物は、本発明の効果を著しく損なわない範囲において、上記ポリプロピレン成分および含エチレン共重合体以外の他の重合体成分、充填剤、および添加剤などのその他の成分を含みうる。
【0031】
他の重合体成分は、特に制限はなく、熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂のいずれであってもよい。熱可塑性樹脂としては、例えば、エチレンのホモポリマー、α−オレフィンのホモポリマー(ただし、上記ポリプロピレン成分を除く)、エチレンまたは炭素原子数3〜10のエチレン性不飽和単量体からなる共重合体(ただし、上記含エチレン共重合体を除く)、ポリアミド、ポリカーボネート、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS)、ポリアセタール、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリ乳酸、ポリビニルアルコール、無水マレイン酸変性ポリプロピレン、アタクチックポリプロピレン、シンジオタクチックポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエステル、ポリスチレン、ポリ(スチレン−水添ブタジエン−スチレン)トリブロック共重合体(SEBS)、およびポリ(スチレン−ブタジエン−スチレン)トリブロック共重合体(SBS)などが挙げられる。このうち、エチレンのホモポリマーとしては、例えば、高密度ポリエチレンおよび低密度ポリエチレンなどが挙げられる。α−オレフィンのホモポリマーとしては、ポリプロピレン、ポリ−1−ブテン、ポリ−1−ペンテン、ポリ−1−ヘキセン、ポリ(3−メチル−1−ペンテン)、ポリ(3−メチル−1−ブテン)、ポリ(4−メチル−1−ペンテン)、ポリ−1−ヘキセン、ポリ−1−ヘプテン、ポリ−1−オクテン、ポリ−1−デセン、およびポリスチレンなどが挙げられる。また、エチレンまたは炭素原子数3〜10のエチレン性不飽和単量体からなる共重合体は、単量体としてエチレンまたは炭素原子数3〜10のエチレン性不飽和単量体を少なくとも1種含むものであれば特に制限はない。このうち、単量体に用いる炭素原子数3〜10のエチレン性不飽和単量体としては、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−デセン、スチレン、および無水マレイン酸からなる群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。また、エチレンまたは炭素原子数3〜10のエチレン性不飽和単量体からなる共重合体に用いられる単量体としては、エチレン、プロピレン、および1−ブテンからなる群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。これらの他の重合体成分は、1種を単独であるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。2種以上の重合体の組み合わせとしては、特に制限はないが、エチレンまたはα−オレフィンのホモポリマー(ただし、上記ポリプロピレン成分を除く)と、エチレンまたは炭素原子数3〜10のエチレン性不飽和単量体からなる共重合体(ただし、上記含エチレン共重合体を除く)との混合物であることが好ましい。他の重合体成分の含有量は特に制限はないが、ポリプロピレン樹脂組成物の全質量に対して、好ましくは10〜60質量%である。
【0032】
充填剤は、特に制限はなく、当分野で通常使用されるものを適宜選択することができる。充填剤は、無機充填剤または有機充填剤のいずれも使用することができるが、無機充填剤が好ましく使用される。無機充填剤としては、例えば、タルク、カオリナイト、焼成クレー、バイロフィライト、セリナイト、およびウォラストナイトなどの天然ケイ酸(塩)、沈降性炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、および炭酸マグネシウムなどの炭酸塩、水酸化アルミニウムおよび水酸化マグネシウムなどの水酸化物、酸化亜鉛、亜鉛華、および酸化マグネシウムなどの酸化物、含水ケイ酸カルシウム、含水ケイ酸アルミニウム、含水ケイ酸、および無水ケイ酸などの合成ケイ酸(塩)などの粉末状フィラー、マイカなどのフレーク状フィラー、塩基性硫酸マグネシウムウィスカー、チタン酸カルシウムウィスカー、ホウ酸アルミニウムウィスカー、セピオライト、PMF(Processed Mineral Filler)、ゾノトライト、チタン酸カリウム、エレスタダイトなどの繊維状フィラー、ガラスバルン、フライアッシュバルンなどのバルン状フィラーなどが挙げられる。このうち、コストと物性バランスの観点から、タルクを使用することが好ましい。これらの充填剤は、1種を単独であるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。無機充填剤の平均のアスペクト比は、機械物性向上の観点から、1:3.0〜1:10.0であることが好ましく、1:4.0〜1:8.0であることがより好ましい。また、これらの無機充填剤は、無処理のまま使用してもよいし、予め表面処理されているものを使用してもよい。上記表面処理としては、例えば、シランカップリング剤、高級脂肪酸、脂肪酸金属塩、不飽和有機酸、有機チタネート、ポリエチレングリコールなどの表面処理剤を使用した化学的または物理的処理方法が挙げられる。
【0033】
添加剤は、特に制限はなく、当分野で通常使用されるものを適宜選択することができる。例えば、酸化防止剤、耐熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、内部滑剤、外部滑剤、帯電防止剤、難燃剤、増核剤、銅害防止剤、中和剤、可塑剤、顔料、染料、分散剤、発泡剤、消泡剤、架橋剤、および過酸化物などが挙げられる。これらの添加剤は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用しても勿論よい。これらの添加剤の含有量は、ポリプロピレン樹脂組成物の全質量100質量部に対して、0.0001〜10質量部であることが好ましい。
【0034】
本形態のポリプロピレン樹脂成形体は、上記の各成分を含むポリプロピレン樹脂組成物を成形および熱処理してなり、成形体表面に含エチレン共重合体成分を含む突起を有する。本明細書において突起とは、熱処理によってポリプロピレン樹脂組成物中に含まれる含エチレン共重合体成分が成形体表面に析出してなる略半球形の部分をいう。したがって、該突起部分に含まれる含エチレン共重合体の含有量は、熱処理前のポリプロピレン樹脂組成物に含まれる含エチレン共重合体の含有量よりも多い。この点において、射出成形などによって形成されたシボ面における突起とは区別される。
【0035】
本形態のポリプロピレン樹脂成形体における突起の析出量は、後述の熱処理条件により異なり、所望の光沢度に合わせて適宜調節することが可能である。光沢を効果的に低減させる観点からは、突起が存在する領域が、ポリプロピレン樹脂成形体表面の全面積100面積%に対して、10〜60面積%であることが好ましい。また、突起の平均サイズは、1.0〜200μmであることが好ましい。なお、突起の存在領域の面積および平均サイズは、後述の実施例に記載の方法により測定した値を採用する。
【0036】
次に、本形態のポリプロピレン樹脂成形体の製造方法を説明する。
【0037】
本形態のポリプロピレン樹脂成形体は、上記ポリプロピレン成分と、上記含エチレン共重合体とを含むポリプロピレン樹脂組成物を成形および熱処理してなる。
【0038】
ポリプロピレン樹脂組成物の製造方法は、特に制限なく、従来公知の方法を適宜採用することができる。好ましい製造方法としては、ポリプロピレン成分および含エチレン共重合体、ならびに必要に応じて、他の重合体成分、充填剤、および添加剤などを押出機中で溶融混練する方法が挙げられる。より詳しくは、まず、ポリプロピレン成分および含エチレン共重合体成分、ならびに必要に応じてその他の成分をドライブレンドし、その後、押出混合機を用いて溶融混練させる。この際、ドライブレンドには、ヘンシェルミキサー、タンブラー、およびリボンミキサーなどの公知の混合装置を使用することができる。また、溶融混練に用いる押出混合機としては、例えば、オープンロール、同方向二軸押出機、異方向二軸押出機、単軸押出機、ニーダー、およびバンバリーなどが挙げられる。これらの押出混合機のうち、同方向二軸押出機を用いることが好ましい。溶融混練の際の温度は、好ましくは160〜350℃であり、より好ましくは170〜260℃である。かような範囲の温度で混練することによって、樹脂が熱分解や劣化を起こすことなく十分に溶融混練することができる。
【0039】
次に、かようにして得られたポリプロピレン樹脂組成物を成形する工程について説明する。ポリプロピレン樹脂組成物を成形する方法については、特に制限はなく、従来公知の方法を適宜採用することができる。成形方法としては、例えば、射出成形法、射出圧縮成形法、押出成形法、カレンダー成形法、インフレーション成形法、圧縮成形法、ブロー成形法などが挙げられる。このうち、生産性の観点から、射出成形法を用いて成形することが好ましい。
【0040】
そして、成形されたポリプロピレン樹脂組成物は、熱処理することによって、成形体表面に、含エチレン共重合体成分を含む突起が形成される。熱処理温度は、含エチレン共重合体の流動温度以上であれば特に制限はないが、好ましくは50〜160℃であり、より好ましくは、60〜100℃である。かような範囲の温度で熱処理することによって、成形体が変形することなく、低光沢化に十分な突起が形成されうる。また、熱処理時間も、突起の形成に支障をきたさない限りにおいては、特に制限はないが、好ましくは3時間以上であり、より好ましくは5時間以上である。かような時間で熱処理することにより、低光沢化に十分な突起を形成することができる。なお、熱処理時間の上限は特に制限はないが、生産性の観点からは、6時間以下であることが好ましい。
【0041】
本発明のポリプロピレン樹脂成形体は、上述のとおり、熱処理温度および熱処理時間を調整することによって、成形体表面の突起の析出量(面積およびサイズ)を適宜調節することができる。したがって、所望の光沢度を有するポリプロピレン樹脂成形体を容易に製造することができる。言い換えると、単一の組成を有するポリプロピレン樹脂組成物であっても、熱処理条件を変化させることにより、成形体の表面光沢を自在に変化させることが可能である。
【実施例】
【0042】
本発明の作用効果を、以下の実施例および比較例を用いて説明する。ただし、本発明の技術的範囲が以下の実施例のみに制限されるわけではない。
【0043】
(メルトフローレート(MFR)の測定方法)
本明細書におけるメルトフローレートは、JIS K7210に従い、230℃、2.16kg荷重で測定された値を採用した。
【0044】
(流動温度の測定方法)
本明細書における流動温度は、動的機械測定装置を用いた貯蔵弾性率の温度変化から求めた。具体的には、まず、30×3×0.3(mm3)の大きさに成形した含エチレン共重合体成分からなる試験片を作製した。これを動的機械測定装置(RSAIII、TAインストルメント)に装着し、引張りモード下、一定周波数(1.0Hz)で引張り歪を加えながら、4.0(℃/分)で昇温した。得られる貯蔵弾性率(E’)の温度変化で、試験片が完全に溶融状態になり、測定不可になる温度を流動温度とした。
【0045】
(各成分)
<ポリプロピレン成分(A−1)>
MFRが30(g/10分)のアイソタクチックホモポリプロピレン(PM900A、サンアロマー株式会社製)を使用した。
【0046】
<含エチレン共重合体成分(B−1)>
α−オレフィンとして1−オクテンを30質量%含み、MFRが26(g/10分)、流動温度が55℃であるエチレン−オクテン共重合体ゴム(Engage8130、ダウケミカル株式会社製)を使用した。
【0047】
<含エチレン共重合体成分(B−2)>
α−オレフィンとして1−ブテンを35質量%含み、MFRが20(g/10分)、流動温度が60℃であるエチレン−ブテン共重合体ゴム(ENR7447、ダウケミカル株式会社製)を使用した。
【0048】
<含エチレン共重合体成分(B−3)>
α−オレフィンとして1−オクテンを9.0質量%含み、MFRが10(g/10分)、流動温度が101℃であるエチレン−オクテン共重合体ゴム(8200、ダウケミカル株式会社製)を使用した。
【0049】
<充填剤(C)>
平均粒子径が2.0μmのタルク(ネオタルクユニ05、ネオライト興産株式会社製)を使用した。
【0050】
<酸化防止剤(D)>
イルガノックス(登録商標)B225(チバガイギー株式会社製)を使用した。
【0051】
<安定剤(E)>
カルシウムステアレート(日油株式会社製)を使用した。
【0052】
(ポリプロピレン樹脂成形体の製造)
[実施例1]
まず、ポリプロピレン樹脂組成物を調製した。ポリプロピレン成分(A−1)を64質量%と、含エチレン共重合体成分(B−1)を36質量%と、酸化防止剤を0.10質量部と、安定剤を0.050質量部とを、ヘンシェルミキサーでブレンドした。これを、同方向二軸押出機(TEX30α、株式会社日本製鋼所製)を用いて、溶融混練およびペレタイズすることによってペレット状のポリプロピレン樹脂組成物を得た。なお、この際のシリンダー設定温度は180℃、スクリュー回転数は700rpm、吐出量は30(kg/h)とした。
【0053】
次に、得られたポリプロピレン樹脂組成物を、射出成形機を用いて成形し、光沢評価用試験片および物性評価用試験片を作製した。光沢評価用試験片は、下記表1の条件に従って、鏡面およびシボ(#540:棚沢八光)の2種類を作製した。物性評価用試験片は、下記表2の条件に従って作製した。
【0054】
【表1】
【0055】
【表2】
【0056】
そして、得られた試験片をギアーオーブン中、80℃で熱処理することによって、ポリプロピレン樹脂成形体を得た。なお、各成分の配合比およびMFR比は表3に示すとおりである。また、熱処理時間は、下記表4および5に示すとおりである。
【0057】
[実施例2]
ポリプロピレン樹脂組成物の各成分として、ポリプロピレン成分(A−1)を64質量%と、含エチレン共重合体成分(B−2)を36質量%と、酸化防止剤(D)を0.10質量部と、安定剤(E)を0.050質量部とを使用したこと以外は、実施例1と同様の方法でポリプロピレン樹脂成形体を得た。
【0058】
[実施例3]
ポリプロピレン樹脂組成物の各成分として、ポリプロピレン成分(A−1)を50質量%と、含エチレン共重合体成分(B−1)を30質量%と、フィラー成分(C)を20質量%と、酸化防止剤(D)を0.10質量部と、安定剤(E)を0.050質量部とを使用したこと以外は、実施例1と同様の方法でポリプロピレン樹脂成形体を得た。
【0059】
[実施例4]
ポリプロピレン樹脂組成物の各成分として、ポリプロピレン成分(A−1)を50質量%と、含エチレン共重合体成分(B−2)を30質量%と、フィラー成分(C)を20質量%と、酸化防止剤(D)を0.10質量部と、安定剤(E)を0.050質量部とを使用したこと以外は、実施例1と同様の方法でポリプロピレン樹脂成形体を得た。
【0060】
[比較例1]
ポリプロピレン樹脂組成物として、MFRが80(g/10分)のアイソタクチックホモポリプロピレンを74質量%と、MFRが0.01(g/10分)であり、プロピレン含有量が50質量%のエチレン−プロピレン共重合体ゴムを26質量%とを含む、比較用ポリプロピレン樹脂組成物(PM990A型番、サンアロマー株式会社製)を使用したこと以外は、実施例1と同様の方法で、ポリプロピレン樹脂成形体を得た。なお、該ポリプロピレン樹脂成形体のMFRは28(g/10分)であった。
【0061】
[比較例2]
ポリプロピレン樹脂組成物の各成分として、ポリプロピレン成分(A−1)を64質量%と、含エチレン共重合体成分(B−3)を36質量%と、酸化防止剤(D)を0.10質量部と、安定剤(E)を0.050質量部とを使用したこと以外は、実施例1と同様の方法でポリプロピレン樹脂成形体を得た。
【0062】
[比較例3]
ポリプロピレン樹脂組成物の各成分として、ポリプロピレン成分(A−1)を50質量%と、含エチレン共重合体成分(B−3)を30質量%と、フィラー成分(C)を20質量%と、酸化防止剤(D)を0.10質量部と、安定剤(E)を0.050質量部とを使用したこと以外は、実施例1と同様の方法でポリプロピレン樹脂成形体を得た。
【0063】
【表3】
【0064】
(物性測定)
<光沢測定>
JIS−Z8741に基づき、得られたポリプロピレン樹脂成形体(光沢評価用試験片)の表面の光沢度(入射角60°、受光角60°)を測定した。結果を表4に示す。
【0065】
<衝撃強度測定>
得られたポリプロピレン樹脂成形体(物性評価用試験片)を切削加工した試験片(100(長さ)×40(幅)×4(厚み)mm3)を、ISO179−1に準拠し、23℃におけるシャルピー衝撃強度を測定した。結果を表4に示す。
【0066】
<ポリプロピレン樹脂成形体表面の観察、ならびに突起のサイズおよび面積の測定>
共焦点レーザー顕微鏡(VK9000、株式会社キーエンス製)を用いて、得られたポリプロピレン樹脂成形体(光沢評価用試験片)の表面の観察を行った。また、突起のサイズおよび面積の測定は付属の解析ソフトVK Analyzerにより行った。まず、レーザー顕微鏡による3D高さ情報より、基礎面から10μm以上のものを突起とみなした。そして、2値化処理によって突起面と基礎面とに分離し、その面積比および粒径を求めることによって測定した。なお、100μm×100μmの領域においてn=5で測定した際の平均値を求めた。結果を図4〜7および表5に示す。
【0067】
<突起に含まれる樹脂成分の分析>
実施例1において、光沢評価用試験片を216時間熱処理して得られたポリプロピレン樹脂成形体および熱処理前の光沢評価用試験片の表面を顕微FT−IR(MFT−2000、日本分光株式会社製)を用いて分析した。結果を図8に示す。
【0068】
(結果)
実施例1〜4および比較例1〜3の光沢測定および衝撃強度測定の結果を下記表4に示す。
【0069】
【表4】
【0070】
表4によると、実施例1〜4では熱処理前(0h)と比較して、熱処理後(216h)の鏡面光沢は著しく減少することが確認された。逆に、シボ光沢の場合は、熱処理後に光沢度が著しく増加することが示された。一方、比較例1〜3では、鏡面およびシボとも、熱処理前後の光沢の大きな変化は見られなかった。また、実施例1〜4は、いずれも高い衝撃強度を有していた。以上の結果より、本発明のポリプロピレン樹脂成形体は、低光沢でありながら、優れた耐衝撃性を有することが示された。
【0071】
また、実施例1および比較例1の鏡面およびシボ光沢の熱処理時間と光沢変化との関係を図2および3に示す。これらの図によると、実施例1では、熱処理時間が長くなるにつれ、鏡面(図2A)の光沢は著しく現象し、一方、シボ面(図2B)の光沢は著しく増加していることが示された。比較例1では、熱処理時間が長くなっても、鏡面(図3A)およびシボ面(図3B)とも光沢はほとんど変化しなかった。
【0072】
実施例1および比較例1の熱処理前後の成形品の共焦点レーザー顕微鏡写真を図4〜7に示す。実施例1ならびに比較例1の、熱処理前および80℃で216時間熱処理後の、2次元像および3次元像を,図4〜7にそれぞれ示す。これらの図によると、実施例1では、熱処理後に、成形体表面に略球形の突起が形成されていることが確認された。一方、比較例1では、熱処理前後で表面形態に大きな変化は見られなかった。上記表4の光沢変化はこの成形体表面に形成された突起の存在によるものであることが示された。
【0073】
実施例1の熱処理前後の成形体表面のFT−IRチャートを図8に示す。これらの図によると、熱処理前と比較して、熱処理後のチャートではエチレン−オクテン共重合体由来の720cm−1のピークが増大している。これは、成形体表面に形成された突起がエチレン−オクテン共重合体を含むことを意味する。
【0074】
実施例1および比較例1の成形体表面に形成された突起の面積およびサイズの測定結果を下記表5に示す。
【0075】
【表5】
【0076】
表5によると、実施例1では熱処理時間が長くなるにつれ、突起の面積およびサイズがとも増大しており、光沢変化との相関があることを示唆していた。
【0077】
実施例1の成形体表面に形成された突起の面積およびサイズと、表面光沢との相関を図9に示す。図9より、鏡面およびシボ光沢ともに、光沢の増減は、突起の面積およびサイズと強い相関があることが示された。
【符号の説明】
【0078】
1 ポリプロピレン樹脂成形体、
3 突起。
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリプロピレン樹脂成形体に関する。より詳しくは、優れた耐衝撃性を有し、成形体表面の突起により光沢を調整されてなるポリプロピレン樹脂成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリプロピレン樹脂は、安価でありながら、優れた軽量性、機械的強度、および成形性等を有することから、多くの樹脂成形品に汎用されている。なかでも、自動車部品においては、バンパー、ロッカーモール、サイドモール、およびオーバーフェンダー等の外装部品、ならびにインストルメントパネル、グローブボックス、ドアライナー、およびピラー等の内装部品等に幅広く利用されている。
【0003】
特に、自動車の内装部品として使用されるポリプロピレン樹脂成形体(以下、単に「成形体」とも称する)は、外観上の観点から、表面の光沢をある程度低減させることが求められる。このような要求に対応すべく、例えば、特許文献1では、ポリプロピレン樹脂と、高分子量のゴム成分と、無機フィラーとを含むポリプロピレン系樹脂組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−010775号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の発明によると、表面の光沢をある程度低減させることはできるものの、所望の耐衝撃性の確保とのバランスを取ることは容易ではなかった。
【0006】
そこで本発明の目的は、優れた耐衝撃性を有し、低光沢なポリプロピレン樹脂成形体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を行った。その過程で、所定の物性を有する成分を含むポリプロピレン樹脂組成物を、成形および熱処理することにより、含エチレン共重合体成分が成形体表面に突起状に析出し、表面光沢が低減されることを見出した。さらに、本発明者らは、このポリプロピレン樹脂成形体が、所望の耐衝撃性を有することを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0008】
すなわち、本発明のポリプロピレン樹脂成形体は、ポリプロピレン成分と、含エチレン共重合体成分と、を含むポリプロピレン樹脂組成物を、成形および熱処理してなる。そして、ポリプロピレン成分および含エチレン共重合体は、下記(A)〜(D)を満たし、成形体表面に、含エチレン共重合体成分を含む突起を有する。(A)230℃、21.6N荷重における、ポリプロピレン成分のメルトフローレート(MFRPP)と、含エチレン共重合体成分のメルトフローレート(MFRER)との比(MFRPP/MFRER)が、0.03〜5である。(B)含エチレン共重合体を形成する単量体の全質量100質量部に含まれる、α−オレフィンの含有量が20〜60質量部である。(C)230℃、21.6N荷重における、含エチレン共重合体成分のメルトフローレート(MFRER)が、0.5〜70(g/10分)である。(D)含エチレン共重合体の流動温度が、70℃以下である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、優れた耐衝撃性を有し、低光沢なポリプロピレン樹脂成形体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施形態に係るポリプロピレン樹脂成形体を模式的に表した斜視図である。
【図2A】実施例1のポリプロピレン樹脂成形体(鏡面)における、熱処理時間と光沢との関係を表したグラフである。
【図2B】実施例1のポリプロピレン樹脂成形体(シボ光沢)における、熱処理時間と光沢との関係を表したグラフである。
【図3A】比較例1のポリプロピレン樹脂成形体(鏡面)における、熱処理時間と光沢との関係を表したグラフである。
【図3B】比較例1のポリプロピレン樹脂成形体(シボ光沢)における、熱処理時間と光沢との関係を表したグラフである。
【図4A】実施例1のポリプロピレン樹脂成形体(鏡面)における、熱処理前の表面を観察した、共焦点レーザー顕微鏡による二次元像である。
【図4B】実施例1のポリプロピレン樹脂成形体(鏡面)における、熱処理前の表面を観察した、共焦点レーザー顕微鏡による三次元像である。
【図5A】実施例1のポリプロピレン樹脂成形体(鏡面)における、熱処理後(216h)の表面を観察した、共焦点レーザー顕微鏡による二次元像である。
【図5B】実施例1のポリプロピレン樹脂成形体(鏡面)における、熱処理後(216h)の表面を観察した、共焦点レーザー顕微鏡による三次元像である。
【図6A】比較例1のポリプロピレン樹脂成形体(鏡面)における、熱処理前の表面を観察した、共焦点レーザー顕微鏡による二次元像である。
【図6B】比較例1のポリプロピレン樹脂成形体(鏡面)における、熱処理前の表面を観察した、共焦点レーザー顕微鏡による三次元像である。
【図7A】比較例1のポリプロピレン樹脂成形体(鏡面)における、熱処理後(216h)の表面を観察した、共焦点レーザー顕微鏡による二次元像である。
【図7B】比較例1のポリプロピレン樹脂成形体(鏡面)における、熱処理後(216h)の表面を観察した、共焦点レーザー顕微鏡による三次元像である。
【図8A】実施例1のポリプロピレン樹脂成形体(鏡面)における、熱処理前の成形体表面のFT−IRチャートである。
【図8B】実施例1のポリプロピレン樹脂成形体(鏡面)における、熱処理後の成形体表面のFT−IRチャートである。
【図9A】実施例1のポリプロピレン樹脂形成体(鏡面およびシボ光沢)における、突起の面積と光沢との相関を表すグラフである。
【図9B】実施例1のポリプロピレン樹脂形成体(鏡面およびシボ光沢)における、突起のサイズと光沢との相関を表すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の好ましい形態を説明するが、本発明の技術的範囲は特許請求の範囲の記載に基づいて定められるべきであり、下記の形態のみには制限されない。
【0012】
本形態は、ポリプロピレン成分と、含エチレン共重合体成分と、を含むポリプロピレン樹脂組成物を、成形および熱処理してなるポリプロピレン樹脂成形体に関する。そして、ポリプロピレン成分および含エチレン共重合体は、下記(A)〜(D)を満たし、成形体表面に、含エチレン共重合体成分を含む突起を有する。(A)230℃、21.6N荷重における、ポリプロピレン成分のメルトフローレート(MFRPP)と、含エチレン共重合体成分のメルトフローレート(MFRER)との比(MFRPP/MFRER)が、0.03〜5である。(B)含エチレン共重合体を形成する単量体の全質量100質量部に含まれる、α−オレフィンの含有量が20〜60質量部である。(C)230℃、21.6N荷重における、含エチレン共重合体成分のメルトフローレート(MFRER)が、0.5〜70(g/10分)である。(D)含エチレン共重合体の流動温度が、70℃以下である。
【0013】
以下、図面を参照しつつ本形態について詳細に説明する。ただし、図面の記載は理解の容易のために簡略化されている。したがって、本発明の技術的範囲が図示する形態(形状、サイズなど)によって限定されることはない。
【0014】
図1は、本形態のポリプロピレン樹脂成形体を模式的に表した斜視図である。図1によると、ポリプロピレン樹脂成形体1の表面に、突起3が存在する。
【0015】
ポリプロピレン樹脂成形体1は、ポリプロピレン樹脂組成物を成形および熱処理することによって得られる。以下、本形態のポリプロピレン樹脂組成物の各構成要素について詳細に説明する。ただし、本発明の技術的範囲が下記の具体的な形態のみに制限されることはない。
【0016】
[ポリプロピレン成分]
ポリプロピレン成分は、ポリプロピレン樹脂成形体の必須の構成要素であって、主に成形体の機械物性に寄与しうる。なお、本明細書において、「ポリプロピレン成分」とは、プロピレンを含むエチレン性不飽和単量体を重合してなる樹脂成分を意味する。また、本明細書において、「エチレン性不飽和単量体」とは、エチレン(CH2=CH2)の水素原子が置換されてなる化合物をいう。
【0017】
ポリプロピレン成分は、プロピレンを含むエチレン性不飽和単量体を重合してなる樹脂成分であれば、特に制限はないが、ホモポリプロピレンであることが好ましく、アイソタクチック構造を有するアイソタクチックホモポリプロピレンであることがより好ましい。アイソタクチックホモポリプロピレンのアイソタクティシティーは、好ましくは95〜99.9%であり、より好ましくは96〜99.5%であり、さらに好ましくは97〜99である。かようなポリプロピレン成分を使用することにより、ポリプロピレン樹脂成形体の機械的強度が向上しうる。
【0018】
ポリプロピレン成分としては、上述のホモプロピレン以外にも、ヘテロポリプロピレンを使用することができる。ヘテロポリプロピレンに使用されるプロピレン以外のエチレン性不飽和単量体としては、例えば、エチレン、ブテン、およびヘキセンなどが挙げられるが、これらに制限されるものではない。ヘテロポリプロピレンに含まれる繰り返し単位の総数のうち、プロピレン由来の繰り返し単位の割合は、好ましくは5〜40%であり、より好ましくは15〜35%である。また、ヘテロポリプロピレンは、ブロック共重合体またはランダム共重合体のいずれであってもよい。なお、ポリプロピレン成分に含まれるポリプロピレンは、1種を単独であるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0019】
ポリプロピレン成分の重量平均分子量は、特に制限はないが、好ましくは100000〜700000であり、より好ましくは150000〜500000であり、さらに好ましくは180000〜300000である。ポリプロピレン成分の重量平均分子量がかような範囲にあると、成形性および機械物性のバランスが良好となりうる。
【0020】
また、ポリプロピレン成分のメルトフローレート(MFRPP)は、0.5〜100であることが好ましく、5〜70であることがより好ましく、10〜50であることがさらに好ましい。なお、本明細書におけるメルトフローレートの値は、後述の実施例に記載の測定方法により求めた値を採用する。
【0021】
[含エチレン共重合体成分]
含エチレン共重合体成分は、ポリプロピレン樹脂成形体に含まれる必須の構成要素であって、成形体表面の突起の形成および耐衝撃性の向上に寄与しうる。
【0022】
含エチレン共重合体成分は、エチレンおよびエチレン以外のエチレン性不飽和単量体を含む共重合体からなる。含エチレン共重合体成分を構成する、エチレン以外のエチレン性不飽和単量体としては、特に制限はないが、例えば、プロピレン、1−ブテン、cis−2−ブテン、trans−2−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、スチレン、および1−オクテンが挙げられる。このうち、1−オクテンまたは1−ブテンを少なくとも1種含むことが好ましい。これらのエチレン以外のエチレン性不飽和単量体は1種を単独であるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0023】
含エチレン共重合体成分は、エチレンおよびエチレン以外のエチレン性不飽和単量体からなるブロック共重合体であってもよいし、ランダム共重合体であってもよいが、特に低温衝撃性の観点から、ランダム共重合体であることが好ましい。
【0024】
本形態のポリプロピレン樹脂成形体に使用される上記ポリプロピレン成分および含エチレン共重合体成分は、以下の(A)〜(D)を満たす。
【0025】
(A)230℃、21.6N荷重における、ポリプロピレン成分のメルトフローレート(MFRPP)と、含エチレン共重合体成分のメルトフローレート(MFRER)との比(MFRPP/MFRER)が、0.03〜5である。このうち、MFRPP/MFRERが0.1〜2.0であることが好ましく、0.5〜1.5であることがより好ましい。MFRPP/MFRERが、0.03未満または5を超えると、ポリプロピレン成分中に含エチレン共重合体成分が微細に分散されないために、成形体表面に突起が均一に形成されない虞がある。
【0026】
(B)含エチレン共重合体を形成する単量体の全質量100質量部に含まれる、エチレン以外のエチレン性不飽和単量体の含有量が20〜60質量部である。このうち、エチレン以外のエチレン性不飽和単量体の含有量が25〜50質量部であることが好ましく、30〜45質量部であることがより好ましい。エチレン以外のエチレン性不飽和単量体の含有量が20質量部未満または60質量部を超えると、上記ポリプロピレン成分との相溶性が低下するために、ポリプロピレン樹脂組成物を熱処理した際に、含エチレン共重合体成分を含む突起が形成されにくくなる虞がある。
【0027】
(C)230℃、21.6N荷重における、含エチレン共重合体成分のメルトフローレート(MFRER)が、0.5〜70(g/10分)である。このうち、MFRERが1.0〜40(g/10分)であることが好ましく、5〜35(g/10分)であることがより好ましく、10〜30(g/10分)であることがさらに好ましい。MFRERが、0.5(g/10分)未満であると、粘度が高くなるために、熱処理による突起の形成が不十分となる虞がある。一方、MFRERが、70(g/10分)を超えると、所望の耐衝撃性が得られない虞がある。
【0028】
(D)含エチレン共重合体の流動温度が、30〜70℃である。このうち、流動温度が30〜50℃であることが好ましく、40〜65℃であることより好ましい。本形態で用いられる含エチレン共重合体は、ポリプロピレン樹脂組成物の熱処理温度(80℃程度)よりも低い温度で流動する必要がある。流動温度が70℃を超えると、熱処理による突起の形成が不十分なため、所望の光沢の低下がなされない虞がある。一方、流動温度が30℃未満であると、室温付近で流動するため、ポリプロピレン樹脂組成物の製造の際のハンドリングが困難となる虞がある。なお、本明細書における「流動温度」とは、測定対象物が液体状態になる温度を意味し、後述の実施例に記載の測定方法により求めた値を採用する。
【0029】
本形態に係るポリプロピレン樹脂成形体に含まれる含エチレン共重合体の含有量は、本発明の効果を著しく損なわない範囲において、当業者が適宜調製することができる。好ましくは、ポリプロピレン樹脂組成物の全質量100質量部に対して、10〜60質量部であり、より好ましくは20〜55質量部であり、さらに好ましくは25〜50質量部である。含エチレン共重合体の含有量がかような範囲にあると、ポリプロピレン樹脂成形体の耐衝撃性が向上しうる。さらに、成形体表面の突起が十分に形成されるため、低光沢性に優れ、またこの低光沢性を長期間維持することができる。
【0030】
本形態に係るポリプロピレン樹脂組成物は、本発明の効果を著しく損なわない範囲において、上記ポリプロピレン成分および含エチレン共重合体以外の他の重合体成分、充填剤、および添加剤などのその他の成分を含みうる。
【0031】
他の重合体成分は、特に制限はなく、熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂のいずれであってもよい。熱可塑性樹脂としては、例えば、エチレンのホモポリマー、α−オレフィンのホモポリマー(ただし、上記ポリプロピレン成分を除く)、エチレンまたは炭素原子数3〜10のエチレン性不飽和単量体からなる共重合体(ただし、上記含エチレン共重合体を除く)、ポリアミド、ポリカーボネート、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS)、ポリアセタール、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリ乳酸、ポリビニルアルコール、無水マレイン酸変性ポリプロピレン、アタクチックポリプロピレン、シンジオタクチックポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエステル、ポリスチレン、ポリ(スチレン−水添ブタジエン−スチレン)トリブロック共重合体(SEBS)、およびポリ(スチレン−ブタジエン−スチレン)トリブロック共重合体(SBS)などが挙げられる。このうち、エチレンのホモポリマーとしては、例えば、高密度ポリエチレンおよび低密度ポリエチレンなどが挙げられる。α−オレフィンのホモポリマーとしては、ポリプロピレン、ポリ−1−ブテン、ポリ−1−ペンテン、ポリ−1−ヘキセン、ポリ(3−メチル−1−ペンテン)、ポリ(3−メチル−1−ブテン)、ポリ(4−メチル−1−ペンテン)、ポリ−1−ヘキセン、ポリ−1−ヘプテン、ポリ−1−オクテン、ポリ−1−デセン、およびポリスチレンなどが挙げられる。また、エチレンまたは炭素原子数3〜10のエチレン性不飽和単量体からなる共重合体は、単量体としてエチレンまたは炭素原子数3〜10のエチレン性不飽和単量体を少なくとも1種含むものであれば特に制限はない。このうち、単量体に用いる炭素原子数3〜10のエチレン性不飽和単量体としては、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−デセン、スチレン、および無水マレイン酸からなる群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。また、エチレンまたは炭素原子数3〜10のエチレン性不飽和単量体からなる共重合体に用いられる単量体としては、エチレン、プロピレン、および1−ブテンからなる群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。これらの他の重合体成分は、1種を単独であるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。2種以上の重合体の組み合わせとしては、特に制限はないが、エチレンまたはα−オレフィンのホモポリマー(ただし、上記ポリプロピレン成分を除く)と、エチレンまたは炭素原子数3〜10のエチレン性不飽和単量体からなる共重合体(ただし、上記含エチレン共重合体を除く)との混合物であることが好ましい。他の重合体成分の含有量は特に制限はないが、ポリプロピレン樹脂組成物の全質量に対して、好ましくは10〜60質量%である。
【0032】
充填剤は、特に制限はなく、当分野で通常使用されるものを適宜選択することができる。充填剤は、無機充填剤または有機充填剤のいずれも使用することができるが、無機充填剤が好ましく使用される。無機充填剤としては、例えば、タルク、カオリナイト、焼成クレー、バイロフィライト、セリナイト、およびウォラストナイトなどの天然ケイ酸(塩)、沈降性炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、および炭酸マグネシウムなどの炭酸塩、水酸化アルミニウムおよび水酸化マグネシウムなどの水酸化物、酸化亜鉛、亜鉛華、および酸化マグネシウムなどの酸化物、含水ケイ酸カルシウム、含水ケイ酸アルミニウム、含水ケイ酸、および無水ケイ酸などの合成ケイ酸(塩)などの粉末状フィラー、マイカなどのフレーク状フィラー、塩基性硫酸マグネシウムウィスカー、チタン酸カルシウムウィスカー、ホウ酸アルミニウムウィスカー、セピオライト、PMF(Processed Mineral Filler)、ゾノトライト、チタン酸カリウム、エレスタダイトなどの繊維状フィラー、ガラスバルン、フライアッシュバルンなどのバルン状フィラーなどが挙げられる。このうち、コストと物性バランスの観点から、タルクを使用することが好ましい。これらの充填剤は、1種を単独であるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。無機充填剤の平均のアスペクト比は、機械物性向上の観点から、1:3.0〜1:10.0であることが好ましく、1:4.0〜1:8.0であることがより好ましい。また、これらの無機充填剤は、無処理のまま使用してもよいし、予め表面処理されているものを使用してもよい。上記表面処理としては、例えば、シランカップリング剤、高級脂肪酸、脂肪酸金属塩、不飽和有機酸、有機チタネート、ポリエチレングリコールなどの表面処理剤を使用した化学的または物理的処理方法が挙げられる。
【0033】
添加剤は、特に制限はなく、当分野で通常使用されるものを適宜選択することができる。例えば、酸化防止剤、耐熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、内部滑剤、外部滑剤、帯電防止剤、難燃剤、増核剤、銅害防止剤、中和剤、可塑剤、顔料、染料、分散剤、発泡剤、消泡剤、架橋剤、および過酸化物などが挙げられる。これらの添加剤は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用しても勿論よい。これらの添加剤の含有量は、ポリプロピレン樹脂組成物の全質量100質量部に対して、0.0001〜10質量部であることが好ましい。
【0034】
本形態のポリプロピレン樹脂成形体は、上記の各成分を含むポリプロピレン樹脂組成物を成形および熱処理してなり、成形体表面に含エチレン共重合体成分を含む突起を有する。本明細書において突起とは、熱処理によってポリプロピレン樹脂組成物中に含まれる含エチレン共重合体成分が成形体表面に析出してなる略半球形の部分をいう。したがって、該突起部分に含まれる含エチレン共重合体の含有量は、熱処理前のポリプロピレン樹脂組成物に含まれる含エチレン共重合体の含有量よりも多い。この点において、射出成形などによって形成されたシボ面における突起とは区別される。
【0035】
本形態のポリプロピレン樹脂成形体における突起の析出量は、後述の熱処理条件により異なり、所望の光沢度に合わせて適宜調節することが可能である。光沢を効果的に低減させる観点からは、突起が存在する領域が、ポリプロピレン樹脂成形体表面の全面積100面積%に対して、10〜60面積%であることが好ましい。また、突起の平均サイズは、1.0〜200μmであることが好ましい。なお、突起の存在領域の面積および平均サイズは、後述の実施例に記載の方法により測定した値を採用する。
【0036】
次に、本形態のポリプロピレン樹脂成形体の製造方法を説明する。
【0037】
本形態のポリプロピレン樹脂成形体は、上記ポリプロピレン成分と、上記含エチレン共重合体とを含むポリプロピレン樹脂組成物を成形および熱処理してなる。
【0038】
ポリプロピレン樹脂組成物の製造方法は、特に制限なく、従来公知の方法を適宜採用することができる。好ましい製造方法としては、ポリプロピレン成分および含エチレン共重合体、ならびに必要に応じて、他の重合体成分、充填剤、および添加剤などを押出機中で溶融混練する方法が挙げられる。より詳しくは、まず、ポリプロピレン成分および含エチレン共重合体成分、ならびに必要に応じてその他の成分をドライブレンドし、その後、押出混合機を用いて溶融混練させる。この際、ドライブレンドには、ヘンシェルミキサー、タンブラー、およびリボンミキサーなどの公知の混合装置を使用することができる。また、溶融混練に用いる押出混合機としては、例えば、オープンロール、同方向二軸押出機、異方向二軸押出機、単軸押出機、ニーダー、およびバンバリーなどが挙げられる。これらの押出混合機のうち、同方向二軸押出機を用いることが好ましい。溶融混練の際の温度は、好ましくは160〜350℃であり、より好ましくは170〜260℃である。かような範囲の温度で混練することによって、樹脂が熱分解や劣化を起こすことなく十分に溶融混練することができる。
【0039】
次に、かようにして得られたポリプロピレン樹脂組成物を成形する工程について説明する。ポリプロピレン樹脂組成物を成形する方法については、特に制限はなく、従来公知の方法を適宜採用することができる。成形方法としては、例えば、射出成形法、射出圧縮成形法、押出成形法、カレンダー成形法、インフレーション成形法、圧縮成形法、ブロー成形法などが挙げられる。このうち、生産性の観点から、射出成形法を用いて成形することが好ましい。
【0040】
そして、成形されたポリプロピレン樹脂組成物は、熱処理することによって、成形体表面に、含エチレン共重合体成分を含む突起が形成される。熱処理温度は、含エチレン共重合体の流動温度以上であれば特に制限はないが、好ましくは50〜160℃であり、より好ましくは、60〜100℃である。かような範囲の温度で熱処理することによって、成形体が変形することなく、低光沢化に十分な突起が形成されうる。また、熱処理時間も、突起の形成に支障をきたさない限りにおいては、特に制限はないが、好ましくは3時間以上であり、より好ましくは5時間以上である。かような時間で熱処理することにより、低光沢化に十分な突起を形成することができる。なお、熱処理時間の上限は特に制限はないが、生産性の観点からは、6時間以下であることが好ましい。
【0041】
本発明のポリプロピレン樹脂成形体は、上述のとおり、熱処理温度および熱処理時間を調整することによって、成形体表面の突起の析出量(面積およびサイズ)を適宜調節することができる。したがって、所望の光沢度を有するポリプロピレン樹脂成形体を容易に製造することができる。言い換えると、単一の組成を有するポリプロピレン樹脂組成物であっても、熱処理条件を変化させることにより、成形体の表面光沢を自在に変化させることが可能である。
【実施例】
【0042】
本発明の作用効果を、以下の実施例および比較例を用いて説明する。ただし、本発明の技術的範囲が以下の実施例のみに制限されるわけではない。
【0043】
(メルトフローレート(MFR)の測定方法)
本明細書におけるメルトフローレートは、JIS K7210に従い、230℃、2.16kg荷重で測定された値を採用した。
【0044】
(流動温度の測定方法)
本明細書における流動温度は、動的機械測定装置を用いた貯蔵弾性率の温度変化から求めた。具体的には、まず、30×3×0.3(mm3)の大きさに成形した含エチレン共重合体成分からなる試験片を作製した。これを動的機械測定装置(RSAIII、TAインストルメント)に装着し、引張りモード下、一定周波数(1.0Hz)で引張り歪を加えながら、4.0(℃/分)で昇温した。得られる貯蔵弾性率(E’)の温度変化で、試験片が完全に溶融状態になり、測定不可になる温度を流動温度とした。
【0045】
(各成分)
<ポリプロピレン成分(A−1)>
MFRが30(g/10分)のアイソタクチックホモポリプロピレン(PM900A、サンアロマー株式会社製)を使用した。
【0046】
<含エチレン共重合体成分(B−1)>
α−オレフィンとして1−オクテンを30質量%含み、MFRが26(g/10分)、流動温度が55℃であるエチレン−オクテン共重合体ゴム(Engage8130、ダウケミカル株式会社製)を使用した。
【0047】
<含エチレン共重合体成分(B−2)>
α−オレフィンとして1−ブテンを35質量%含み、MFRが20(g/10分)、流動温度が60℃であるエチレン−ブテン共重合体ゴム(ENR7447、ダウケミカル株式会社製)を使用した。
【0048】
<含エチレン共重合体成分(B−3)>
α−オレフィンとして1−オクテンを9.0質量%含み、MFRが10(g/10分)、流動温度が101℃であるエチレン−オクテン共重合体ゴム(8200、ダウケミカル株式会社製)を使用した。
【0049】
<充填剤(C)>
平均粒子径が2.0μmのタルク(ネオタルクユニ05、ネオライト興産株式会社製)を使用した。
【0050】
<酸化防止剤(D)>
イルガノックス(登録商標)B225(チバガイギー株式会社製)を使用した。
【0051】
<安定剤(E)>
カルシウムステアレート(日油株式会社製)を使用した。
【0052】
(ポリプロピレン樹脂成形体の製造)
[実施例1]
まず、ポリプロピレン樹脂組成物を調製した。ポリプロピレン成分(A−1)を64質量%と、含エチレン共重合体成分(B−1)を36質量%と、酸化防止剤を0.10質量部と、安定剤を0.050質量部とを、ヘンシェルミキサーでブレンドした。これを、同方向二軸押出機(TEX30α、株式会社日本製鋼所製)を用いて、溶融混練およびペレタイズすることによってペレット状のポリプロピレン樹脂組成物を得た。なお、この際のシリンダー設定温度は180℃、スクリュー回転数は700rpm、吐出量は30(kg/h)とした。
【0053】
次に、得られたポリプロピレン樹脂組成物を、射出成形機を用いて成形し、光沢評価用試験片および物性評価用試験片を作製した。光沢評価用試験片は、下記表1の条件に従って、鏡面およびシボ(#540:棚沢八光)の2種類を作製した。物性評価用試験片は、下記表2の条件に従って作製した。
【0054】
【表1】
【0055】
【表2】
【0056】
そして、得られた試験片をギアーオーブン中、80℃で熱処理することによって、ポリプロピレン樹脂成形体を得た。なお、各成分の配合比およびMFR比は表3に示すとおりである。また、熱処理時間は、下記表4および5に示すとおりである。
【0057】
[実施例2]
ポリプロピレン樹脂組成物の各成分として、ポリプロピレン成分(A−1)を64質量%と、含エチレン共重合体成分(B−2)を36質量%と、酸化防止剤(D)を0.10質量部と、安定剤(E)を0.050質量部とを使用したこと以外は、実施例1と同様の方法でポリプロピレン樹脂成形体を得た。
【0058】
[実施例3]
ポリプロピレン樹脂組成物の各成分として、ポリプロピレン成分(A−1)を50質量%と、含エチレン共重合体成分(B−1)を30質量%と、フィラー成分(C)を20質量%と、酸化防止剤(D)を0.10質量部と、安定剤(E)を0.050質量部とを使用したこと以外は、実施例1と同様の方法でポリプロピレン樹脂成形体を得た。
【0059】
[実施例4]
ポリプロピレン樹脂組成物の各成分として、ポリプロピレン成分(A−1)を50質量%と、含エチレン共重合体成分(B−2)を30質量%と、フィラー成分(C)を20質量%と、酸化防止剤(D)を0.10質量部と、安定剤(E)を0.050質量部とを使用したこと以外は、実施例1と同様の方法でポリプロピレン樹脂成形体を得た。
【0060】
[比較例1]
ポリプロピレン樹脂組成物として、MFRが80(g/10分)のアイソタクチックホモポリプロピレンを74質量%と、MFRが0.01(g/10分)であり、プロピレン含有量が50質量%のエチレン−プロピレン共重合体ゴムを26質量%とを含む、比較用ポリプロピレン樹脂組成物(PM990A型番、サンアロマー株式会社製)を使用したこと以外は、実施例1と同様の方法で、ポリプロピレン樹脂成形体を得た。なお、該ポリプロピレン樹脂成形体のMFRは28(g/10分)であった。
【0061】
[比較例2]
ポリプロピレン樹脂組成物の各成分として、ポリプロピレン成分(A−1)を64質量%と、含エチレン共重合体成分(B−3)を36質量%と、酸化防止剤(D)を0.10質量部と、安定剤(E)を0.050質量部とを使用したこと以外は、実施例1と同様の方法でポリプロピレン樹脂成形体を得た。
【0062】
[比較例3]
ポリプロピレン樹脂組成物の各成分として、ポリプロピレン成分(A−1)を50質量%と、含エチレン共重合体成分(B−3)を30質量%と、フィラー成分(C)を20質量%と、酸化防止剤(D)を0.10質量部と、安定剤(E)を0.050質量部とを使用したこと以外は、実施例1と同様の方法でポリプロピレン樹脂成形体を得た。
【0063】
【表3】
【0064】
(物性測定)
<光沢測定>
JIS−Z8741に基づき、得られたポリプロピレン樹脂成形体(光沢評価用試験片)の表面の光沢度(入射角60°、受光角60°)を測定した。結果を表4に示す。
【0065】
<衝撃強度測定>
得られたポリプロピレン樹脂成形体(物性評価用試験片)を切削加工した試験片(100(長さ)×40(幅)×4(厚み)mm3)を、ISO179−1に準拠し、23℃におけるシャルピー衝撃強度を測定した。結果を表4に示す。
【0066】
<ポリプロピレン樹脂成形体表面の観察、ならびに突起のサイズおよび面積の測定>
共焦点レーザー顕微鏡(VK9000、株式会社キーエンス製)を用いて、得られたポリプロピレン樹脂成形体(光沢評価用試験片)の表面の観察を行った。また、突起のサイズおよび面積の測定は付属の解析ソフトVK Analyzerにより行った。まず、レーザー顕微鏡による3D高さ情報より、基礎面から10μm以上のものを突起とみなした。そして、2値化処理によって突起面と基礎面とに分離し、その面積比および粒径を求めることによって測定した。なお、100μm×100μmの領域においてn=5で測定した際の平均値を求めた。結果を図4〜7および表5に示す。
【0067】
<突起に含まれる樹脂成分の分析>
実施例1において、光沢評価用試験片を216時間熱処理して得られたポリプロピレン樹脂成形体および熱処理前の光沢評価用試験片の表面を顕微FT−IR(MFT−2000、日本分光株式会社製)を用いて分析した。結果を図8に示す。
【0068】
(結果)
実施例1〜4および比較例1〜3の光沢測定および衝撃強度測定の結果を下記表4に示す。
【0069】
【表4】
【0070】
表4によると、実施例1〜4では熱処理前(0h)と比較して、熱処理後(216h)の鏡面光沢は著しく減少することが確認された。逆に、シボ光沢の場合は、熱処理後に光沢度が著しく増加することが示された。一方、比較例1〜3では、鏡面およびシボとも、熱処理前後の光沢の大きな変化は見られなかった。また、実施例1〜4は、いずれも高い衝撃強度を有していた。以上の結果より、本発明のポリプロピレン樹脂成形体は、低光沢でありながら、優れた耐衝撃性を有することが示された。
【0071】
また、実施例1および比較例1の鏡面およびシボ光沢の熱処理時間と光沢変化との関係を図2および3に示す。これらの図によると、実施例1では、熱処理時間が長くなるにつれ、鏡面(図2A)の光沢は著しく現象し、一方、シボ面(図2B)の光沢は著しく増加していることが示された。比較例1では、熱処理時間が長くなっても、鏡面(図3A)およびシボ面(図3B)とも光沢はほとんど変化しなかった。
【0072】
実施例1および比較例1の熱処理前後の成形品の共焦点レーザー顕微鏡写真を図4〜7に示す。実施例1ならびに比較例1の、熱処理前および80℃で216時間熱処理後の、2次元像および3次元像を,図4〜7にそれぞれ示す。これらの図によると、実施例1では、熱処理後に、成形体表面に略球形の突起が形成されていることが確認された。一方、比較例1では、熱処理前後で表面形態に大きな変化は見られなかった。上記表4の光沢変化はこの成形体表面に形成された突起の存在によるものであることが示された。
【0073】
実施例1の熱処理前後の成形体表面のFT−IRチャートを図8に示す。これらの図によると、熱処理前と比較して、熱処理後のチャートではエチレン−オクテン共重合体由来の720cm−1のピークが増大している。これは、成形体表面に形成された突起がエチレン−オクテン共重合体を含むことを意味する。
【0074】
実施例1および比較例1の成形体表面に形成された突起の面積およびサイズの測定結果を下記表5に示す。
【0075】
【表5】
【0076】
表5によると、実施例1では熱処理時間が長くなるにつれ、突起の面積およびサイズがとも増大しており、光沢変化との相関があることを示唆していた。
【0077】
実施例1の成形体表面に形成された突起の面積およびサイズと、表面光沢との相関を図9に示す。図9より、鏡面およびシボ光沢ともに、光沢の増減は、突起の面積およびサイズと強い相関があることが示された。
【符号の説明】
【0078】
1 ポリプロピレン樹脂成形体、
3 突起。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリプロピレン成分と、含エチレン共重合体成分と、を含むポリプロピレン樹脂組成物を、成形および熱処理してなるポリプロピレン樹脂成形体;
前記ポリプロピレン成分および前記含エチレン共重合体は、下記(A)〜(D)を満たし、
前記ポリプロピレン樹脂成形体は、表面に前記含エチレン共重合体成分を含む突起を有する;
(A)230℃、21.6N荷重における、前記ポリプロピレン成分のメルトフローレート(MFRPP)と、前記含エチレン共重合体成分のメルトフローレート(MFRER)との比(MFRPP/MFRER)が、0.03〜5であり、
(B)前記含エチレン共重合体を形成する単量体の全質量100質量部に含まれる、α−オレフィンの含有量が20〜60質量部であり、
(C)230℃、21.6N荷重における、前記含エチレン共重合体成分のメルトフローレート(MFRER)が、0.5〜70(g/10分)であり、
(D)前記含エチレン共重合体の流動温度が、70℃以下である。
【請求項2】
前記ポリプロピレン樹脂成形体表面の全面積100面積%に対して、10〜60面積%の領域において、前記突起が存在する、請求項1に記載のポリプロピレン樹脂成形体。
【請求項3】
前記突起の平均サイズが1.0〜200μmである、請求項1または2に記載のポリプロピレン樹脂成形体。
【請求項4】
前記含エチレン共重合体成分の含有量は、前記ポリプロピレン樹脂組成物の全質量100質量部に対して、10〜60質量部である、請求項1〜3のいずれか1項に記載のポリプロピレン樹脂成形体。
【請求項5】
前記成形は射出成形による、請求項1〜4のいずれか1項に記載のポリプロピレン樹脂成形体。
【請求項1】
ポリプロピレン成分と、含エチレン共重合体成分と、を含むポリプロピレン樹脂組成物を、成形および熱処理してなるポリプロピレン樹脂成形体;
前記ポリプロピレン成分および前記含エチレン共重合体は、下記(A)〜(D)を満たし、
前記ポリプロピレン樹脂成形体は、表面に前記含エチレン共重合体成分を含む突起を有する;
(A)230℃、21.6N荷重における、前記ポリプロピレン成分のメルトフローレート(MFRPP)と、前記含エチレン共重合体成分のメルトフローレート(MFRER)との比(MFRPP/MFRER)が、0.03〜5であり、
(B)前記含エチレン共重合体を形成する単量体の全質量100質量部に含まれる、α−オレフィンの含有量が20〜60質量部であり、
(C)230℃、21.6N荷重における、前記含エチレン共重合体成分のメルトフローレート(MFRER)が、0.5〜70(g/10分)であり、
(D)前記含エチレン共重合体の流動温度が、70℃以下である。
【請求項2】
前記ポリプロピレン樹脂成形体表面の全面積100面積%に対して、10〜60面積%の領域において、前記突起が存在する、請求項1に記載のポリプロピレン樹脂成形体。
【請求項3】
前記突起の平均サイズが1.0〜200μmである、請求項1または2に記載のポリプロピレン樹脂成形体。
【請求項4】
前記含エチレン共重合体成分の含有量は、前記ポリプロピレン樹脂組成物の全質量100質量部に対して、10〜60質量部である、請求項1〜3のいずれか1項に記載のポリプロピレン樹脂成形体。
【請求項5】
前記成形は射出成形による、請求項1〜4のいずれか1項に記載のポリプロピレン樹脂成形体。
【図1】
【図2A】
【図2B】
【図3A】
【図3B】
【図4A】
【図4B】
【図5A】
【図5B】
【図6A】
【図6B】
【図7A】
【図7B】
【図8A】
【図8B】
【図9A】
【図9B】
【図2A】
【図2B】
【図3A】
【図3B】
【図4A】
【図4B】
【図5A】
【図5B】
【図6A】
【図6B】
【図7A】
【図7B】
【図8A】
【図8B】
【図9A】
【図9B】
【公開番号】特開2010−209225(P2010−209225A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−57145(P2009−57145)
【出願日】平成21年3月10日(2009.3.10)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【出願人】(597021842)サンアロマー株式会社 (27)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年3月10日(2009.3.10)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【出願人】(597021842)サンアロマー株式会社 (27)
【Fターム(参考)】
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