説明

ポリプロピレン樹脂組成物およびそれからなるフィルム

【課題】不透明性が高く、滑り性および外観に優れるフィルムを提供することにあり、更にはこのようなフィルムの材料として有用なポリプロピレン樹脂組成物を提供する。
【解決手段】ポリプロピレン(成分(A))と、密度が0.900g/cm以上0.970g/cm未満であり、190℃、2.16kg荷重下で測定されるメルトフローレートが0.5〜3g/10分であるポリエチレン(成分(B))と、有機過酸化物を粉末状ポリオレフィンに1〜30質量%含浸させたマスターバッチ(成分(C))とを含む混合物を溶融混練してなるポリプロピレン樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不透明性が高く、滑り性および外観に優れるフィルムを与えることができるポリプロピレン樹脂組成物、並びにそれからなるフィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリプロピレン樹脂は、包装、容器、家電製品、自動車部品等の分野で幅広く利用されている。
食品包装用、医療用、工業用、農業用等のフィルムやシートでは、用途に応じて、高い透明性(低いヘイズ値)が求められるものもあれば、逆に高い不透明性(高いヘイズ値)が求められるものもある。
不透明なフィルムとしては、例えば、特許文献1には、結晶性ポリプロピレンからなる二軸延伸フィルムの少なくとも片面に、結晶性ポリプロピレン、ポリエチレン、有機過酸化物からなる組成物を少なくとも一軸延伸したフィルムを積層した半透明二軸延伸積層フィルムが記載されている。
また、特許文献2には、プロピレン共重合体、190℃におけるMFRが1g/10分以下の低密度ポリエチレン、190℃におけるMFRが0.01〜0.3g/10分の高密度ポリエチレンに対して、所定量の有機過酸化物、フェノール系酸化防止剤および脂肪酸のアルカリ金属塩を添加した混合物がポリプロピレンフィルムの少なくとも片面に積層されている事を特徴とするヒートシール性艶消し二軸延伸ポリプロピレンフィルムが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭56−38341号公報
【特許文献2】特開平5−329992号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に記載のフィルムは不透明性が不十分であった。また、特許文献2に記載の手法では、非常に低MFRの高密度ポリエチレンと低密度ポリエチレンを使用している為、フィッシュアイ等の問題が懸念される。
本発明が解決しようとする課題は、不透明性が高く、滑り性および外観に優れるフィルムを提供することにあり、更にはこのようなフィルムの材料として有用なポリプロピレン樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、プロピレンの単独重合体、またはプロピレンと1種以上のコモノマーとからなり、コモノマー含量が20質量%以下であるプロピレン系ランダム共重合体(但し、プロピレン系ランダム共重合体の全質量を100質量%とする。)であるポリプロピレン(成分(A))と、密度が0.900g/cm以上0.970g/cm未満であり、190℃、2.16kg荷重下で測定されるメルトフローレートが0.5〜3g/10分であるポリエチレン(成分(B))と、有機過酸化物を粉末状ポリオレフィンに1〜30質量%含浸させたマスターバッチ(成分(C))(但し、有機過酸化物と粉末状ポリオレフィンとの合計量を100質量%とする。)とを含む混合物を溶融混練してなるポリプロピレン樹脂組成物であって、前記混合物が、成分(A)と成分(B)との合計量を100質量%としたとき、成分(A)の含有量が65〜95質量%であり、成分(B)の含有量が5〜35質量%であり、かつ、成分(A)と成分(B)との合計100質量部に対して、0.005〜0.5質量部の前記有機過酸化物を0.005〜0.5質量部含む混合物であることを特徴とするポリプロピレン樹脂組成物に係るものである。
また、本発明は、前記ポリプロピレン樹脂組成物からなる1層以上を有するフィルムに係るものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明により、本発明により、不透明性が高く、滑り性および外観に優れるフィルムが得られる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
本発明のポリプロピレン樹脂組成物は、
成分(A):プロピレンの単独重合体、またはプロピレンと1種以上のコモノマーとからなり、コモノマー含量が20質量%以下であるプロピレン系ランダム共重合体(但し、プロピレン系ランダム共重合体の全質量を100質量%とする。)であるポリプロピレンと、
成分(B):密度が0.900g/cm以上0.970g/cm未満であり、190℃、2.16kg荷重下で測定されるメルトフローレートが0.5〜3g/10分であるポリエチレンと、
成分(C):有機過酸化物を粉末状ポリオレフィンに1〜30質量%含浸させたマスターバッチ(但し、有機過酸化物と粉末状ポリオレフィンとの合計量を100質量%とする。)と
を含む混合物を溶融混練してなるポリプロピレン樹脂組成物であって、
前記混合物が、成分(A)と成分(B)との合計量を100質量%としたとき、成分(A)の含有量が65〜95質量%であり、成分(B)の含有量が5〜35質量%であり、かつ、成分(A)と成分(B)との合計100質量部に対して、0.005〜0.5質量部の前記有機過酸化物を混合物である。
【0008】
本発明のポリプロピレン樹脂組成物の230℃、2.16kg荷重下で測定されるメルトフローレート(以下、「MFR」と略記する。)としては、該組成物の加工性の観点から、好ましくは、0.1〜100g/10分であり、より好ましくは、0.1〜50g/10分であり、更に好ましくは、0.1〜10g/10分である。該組成物のMFRは、成分(A)および成分(B)の分子量や、成分(C)の添加量を変化させることにより調節することができる。
【0009】
本発明のポリプロピレン樹脂組成物のダイスウェル比(以下、「SR」と略記する。)として、好ましくは、1.00〜1.25であり、より好ましくは、1.01〜1.20である。ここで、ポリプロピレン樹脂組成物のSRとは、キャピラリーダイから押し出されたポリプロピレン樹脂組成物の直径と、キャピラリーの内径との比である。かかるSRは、JIS K7199に従って230℃の試験温度、2.16kgの公称荷重で測定されたものである。
【0010】
前記混合物に含まれる成分(A)と成分(B)との含有量としては、成分(A)と成分(B)との合計の質量を100質量%としたとき、成分(A)の含有量が65〜95質量%であり、成分(B)の含有量が5〜35質量%であり、好ましくは、成分(A)の含有量が65〜90質量%であり、成分(B)の含有量が10〜35質量%であり、より好ましくは、成分(A)の含有量が65〜80質量%であり、成分(B)の含有量が20〜35質量%である。
成分(A)の含有量が65質量%より少ないと、該組成物の製膜性が悪化したり、該組成物から製造されたフィルムのフィッシュアイが多発したりする。
【0011】
前記混合物に含まれる成分(C)由来の有機過酸化物の含有量としては、成分(A)と成分(B)との合計100質量部に対して、0.005〜0.5質量部であり、好ましくは、0.005〜0.3質量部であり、より好ましくは、0.01〜0.1質量部である。有機過酸化物の含有量が0.005質量部より少ないと、該有機過酸化物を含有する混合物を溶融混練して得られた組成物から製造されるフィルムの不透明性が不十分となり(換言すれば、該フィルムのヘイズ値が十分に上がらず)、0.5質量部より多いと、前記組成物の製膜性が悪化することがある。また、有機過酸化物を直接添加した場合には、有機過酸化物が十分に分散せず、得られるフィルムにフィッシュアイが多発する。有機過酸化物を粉末状ポリオレフィンに含浸させたマスターバッチを用いることにより、有機過酸化物の配合時の取扱性や安全性が向上し、有機過酸化物を容易に均一に分散させることができ、得られるフィルムのフィッシュアイを低減させることができる。
【0012】
成分(A)は、好ましくは、結晶性ポリプロピレンであり、より好ましくは、アイソタクチックポリプロピレンである。ここで、「結晶性ポリプロピレン」とは、示差走査熱量分析法(DSC)の昇温過程において、140℃以上の温度域にピーク(融解エンタルピー)が存在するポリプロピレンを意味する。ポリプロピレンとしては、プロピレンの単独重合体、またはプロピレンと1種以上のコモノマーとからなるプロピレン系ランダム共重合体であり、コモノマーとしては、例えば、エチレン、炭素数4以上のα−オレフィン等が挙げられる。前記ランダム共重合体としては、例えば、プロピレンとエチレンとのランダム共重合体、プロピレンと炭素数4以上のα−オレフィンとのランダム共重合体、およびプロピレンとエチレンと炭素数4以上のα−オレフィンとのランダム共重合体が挙げられる。前記ランダム共重合体を構成する炭素数4以上のα−オレフィンとしては、例えば、1−ブテン、4−メチルペンテン−1、1−オクテン、1−ヘキセン等が挙げられ、好ましくは、1−ブテンである。
【0013】
成分(A)がプロピレン系ランダム共重合体である場合には、該共重合体に含まれるコモノマーの量は、ポリプロピレン樹脂組成物からなる成形体の剛性の観点から、該共重合体の全質量を100質量%とすると、20質量%以下であり、好ましくは、15質量%以下であり、より好ましくは、10質量%以下である。
【0014】
成分(A)の融点は、ポリプロピレン樹脂組成物からなる成形体の剛性の観点から、好ましくは、120℃以上であり、より好ましくは、125℃以上166℃以下である。
【0015】
JIS−K7210に従って、230℃、2.16kg荷重下で測定される成分(A)のMFRは、ポリプロピレン樹脂組成物の押出特性の観点から、好ましくは、0.1〜10g/10分であり、より好ましくは、1〜10g/10分である。
【0016】
成分(A)は、公知の重合触媒を用いて、公知の重合方法によって製造することができる。
公知の重合触媒としては、例えば、マグネシウム、チタンおよびハロゲンを含有する固体触媒成分と、有機アルミニウム化合物と、必要に応じて用いられる電子供与性化合物等の第3成分とからなる触媒系、シクロペンタジエニル環を有する周期表第IV族遷移金属の化合物とアルキルアルミノキサンからなる触媒系、およびシクロペンタジエニル環を有する周期表第IV族の遷移金属化合物と、それと反応してイオン性の錯体を形成する化合物と、有機アルミニウム化合物とからなる触媒系等が挙げられる。好ましくはマグネシウム、チタンおよびハロゲンを含有する固体触媒成分と、有機アルミニウム化合物と、電子供与性化合物とからなる触媒系であり、例えば、特開昭61−218606号公報、特開昭61−287904号公報、特開平1−319508号公報、特開平7−216017号公報等に記載されている触媒系である。
【0017】
公知の重合方法としては、例えば、不活性炭化水素溶媒を用いるスラリー重合法や溶媒重合法、無溶媒による液相重合法、気相重合法等が挙げられ、好ましくは気相重合法、あるいは、前記の重合法の内の2つ以上を連続的に行なう方法、例えば、液相−気相重合法等が挙げられる。
【0018】
成分(B)としては、例えば、密度が0.900g/cm以上0.945g/cm未満のポリエチレンである所謂「低密度ポリエチレン」、密度が0.945g/cm以上0.970g/cm未満のポリエチレンである所謂「高密度ポリエチレン」等が挙げられる。成分(B)に代えて密度が0.900g/cm未満のポリエチレンを配合した場合には、フィルムのヘイズが十分に高くならないことがある。
【0019】
成分(B)として、密度が0.900g/cm以上0.945g/cm未満のポリエチレンを用いる場合に、かかるポリエチレンとしては、チューブラー法やヴェッセル法による高圧法低密度ポリエチレンが挙げられるが、エチレンとα−オレフィンの共重合体である直鎖状低密度ポリエチレンであってもよい。かかるポリエチレンを構成するα−オレフィンとしては、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン等が挙げられ、好ましくは、1−ヘキセンである。
【0020】
成分(B)の融点は、好ましくは、100℃以上140℃未満であり、より好ましくは、110℃以上140℃未満である。ポリプロピレン樹脂組成物の耐熱性の観点から、成分(B)の融点は100℃以上であることが好ましい。
【0021】
JIS−K7210に従って、190℃、2.16kg荷重下で測定される成分(B)のMFRは、0.5〜3g/10分であり、好ましくは、0.5〜2g/10分である。成分(B)のMFRが0.5g/10分より小さいと、それが得られるフィルムにおけるフィッシュアイ発生の原因となる場合があり、3g/10分より大きいと、得られるフィルムの不透明性が十分に上がらないことがある。
【0022】
成分(C)の調整に用いられる有機過酸化物としては、10℃以上30℃未満で固体であるもの、10℃以上120℃未満で液体であるものである。10℃以上30℃未満で固体であっても加熱により120℃までの温度範囲で溶解し液体になるものも含まれる。成分(B)は1種または2種以上を混合して使用することができる。
【0023】
また、成分(C)の調整に用いられる有機過酸化物が10℃以上30℃未満で固体であるものとしては、粉状または粒状のものを例示することができる。その粒子径は特に制限はないが、取扱いの便利さや、均一な成分(C)を調整することを目的とする観点から、通常、粒子径100〜2000μm(もしくは9メッシュ篩通過)であり、好ましくは、100〜1000μm(もしくは16メッシュ篩通過)であり、より好ましくは、100〜500μm(もしくは32メッシュ篩通過)である。ここで粒子径とは、粒子径加積曲線の重量百分率50%にあたる粒子径(以下、D50と記す)のことである。
【0024】
成分(C)の調製に用いられる有機過酸化物としては、例えば、過酸化アルキル類、過酸化ジアシル類、過酸化エステル類、過酸化カーボネート類等が挙げられる。過酸化アルキル類としては、例えば、ジクミルパーオキサイド、ジ−tert−ブチルパーオキサイド、ジ−tert−ブチルクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3、tert−ブチルクミル、1,3−ビス(tert−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、3,6,9−トリエチル−3,6,9−トリメチル−1,4,7−トリパーオキソナン等が挙げられる。
【0025】
過酸化ジアシル類としては、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、デカノイルパーオキサイド等が挙げられる。過酸化エステル類としては、例えば、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート、α−クミルパーオキシネオデカノエート、tert−ブチルパーオキシネオデカノエート、tert−ブチルパーオキシネオヘプタノエート、tert−ブチルパーオキシピバレート、tert−ヘキシルパーオキシピバレート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、tert−アミルパーオキシル−2−エチルヘキサノエート、tert−ブチルーパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、tert−ブチルパーオキシイソブチレート、ジ−tert−ブチルパーオキシヘキサヒドロテレフタレート、tert−アミルパーオキシ3,5,5−トリメチルヘキサノエート、tert−ブチルパーオキシ3,5,5−トリメチルヘキサノエート、tert−ブチルパーオキシアセテート、tert−ブチルパーオキシベンゾエート、ジ−ブチルパーオキシトリメチルアディペート等が挙げられる。
【0026】
過酸化カーボネート類としては、例えば、ジ−3−メトキシブチルパーオキシジカーボネート、ジ(2−エチルヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジイソプロピルパーオキシカーボネート、tert−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、ジ(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジセチル パーオキシジカーボネート、ジミリスチルパーオキシジカーボネート等が挙げられる。
【0027】
成分(C)の調製に用いられる有機過酸化物は、好ましくは、過酸化アルキル類であり、より好ましくは、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルパーオキシ)ヘキサン、1,3−ビス(tert−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼンまたは3,6,9−トリエチル−3,6,9−トリメチル−1,4,7−トリパーオキソナンである。
【0028】
成分(C)は、有機過酸化物を粉末状ポリオレフィンに含浸させて調製された含浸パウダー(マスターバッチ)であり、本明細書では、該含浸パウダーを「マスターバッチ」と称する。かかるマスターバッチを使用することにより、ポリプロピレン樹脂組成物の加工時の有機過酸化物の取扱性が向上し、フィッシュアイが少ないフィルムを与え得るポリプロピレン樹脂組成物が得られる。成分(C)における有機過酸化物の含有量は、1〜30質量%であり、好ましくは3〜20質量%である(但し、有機過酸化物と粉末状ポリオレフィンとの合計量を100質量%とする。)。
【0029】
レーザー回折式粒子径分布測定法で得られる、粉末状ポリオレフィンの粒子径加積曲線の質量百分率50%にあたる粒子径(D50)としては、ポリプロピレン樹脂組成物の加工時の有機過酸化物の分散性の観点から、好ましくは、200μm〜700μmである。
【0030】
成分(C)の調製に用いられる粉末状ポリオレフィンは、一つの態様においてはプロピレン単独重合体、他の態様においてはプロピレンに由来する構造単位と、エチレンに由来する構造単位および炭素数4〜10のα−オレフィンに由来する構造単位からなる群から選択される少なくとも1種の構造単位とを有するプロピレン共重合体であり、更に他の態様においては、これらの混合物である。なお、「エチレンに由来する構造単位」と「炭素数4〜10のα−オレフィンに由来する構造単位」をまとめて「コモノマーに由来する構造単位」と記すことがある。
【0031】
前記粉末状ポリオレフィンは、好ましくは、プロピレンに由来する構造単位80〜100質量%と、コモノマーに由来する構造単位0〜20質量%とを有するポリオレフィン(但し、プロピレンに由来する構造単位と、コモノマーに由来する構造単位との合計を100質量%とする。)である。
【0032】
前記粉末状ポリオレフィンとしてのプロピレン共重合体に含まれるプロピレンに由来する構造単位と、コモノマーに由来する構造単位との含有量として、好ましくは、プロピレンに由来する構造単位の含有量が80〜99.9質量%であり、コモノマーに由来する構造単位の含有量が0.1〜20質量%であり、より好ましくは、プロピレンに由来する構造単位の含有量が85〜99.9質量%であり、コモノマーに由来する構造単位の含有量が0.1〜15質量%であり、更に好ましくは、プロピレンに由来する構造単位の含有量が90〜99質量%であり、コモノマーに由来する構造単位の含有量が1〜10質量%であり、特に好ましくは、プロピレンに由来する構造単位の含有量が90〜97質量%であり、コモノマーに由来する構造単位の含有量が3〜10質量%である(但し、プロピレンに由来する構造単位の含有量と、コモノマーに由来する構造単位の含有量との合計を100質量%とする。)。
【0033】
前記プロピレン共重合体に含まれる炭素数4〜10のα−オレフィンとしては、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、1−デセン等が挙げられ、好ましくは、1−ブテン、1−ヘキセンまたは1−オクテンである。
【0034】
前記プロピレン共重合体としては、プロピレン−エチレンランダム共重合体、プロピレンと炭素数4〜10のα−オレフィンとのランダム共重合体、プロピレンとエチレンと炭素数4〜10のα−オレフィンとのランダム共重合体等が挙げられる。プロピレンと炭素数4〜10のα−オレフィンとのランダム共重合体としては、プロピレン−1−ブテンランダム共重合体、プロピレン−1−ヘキセンランダム共重合体、プロピレン−1−オクテンランダム共重合体、プロピレン−1−デセンランダム共重合体等が挙げられる。プロピレンとエチレンと炭素数4〜10のα−オレフィンとのランダム共重合体としては、プロピレン−エチレン−1−ブテン共重合体、プロピレン−エチレン−1−ヘキセン共重合体、プロピレン−エチレン−1−オクテン共重合体、プロピレン−エチレン−1−デセン共重合体等が挙げられる。成分(C)用の粉末状ポリオレフィンは、これらのプロピレン共重合体の混合物であってもよく、プロピレン単独重合体とプロピレン共重合体との混合物であってもよい。
【0035】
前記粉末状ポリオレフィンは、好ましくは、プロピレン−エチレンランダム共重合体粒子、プロピレン−1−ブテンランダム共重合体粒子またはプロピレン−エチレン−1−ブテンランダム共重合体粒子であり、より好ましくは、プロピレンに由来する構造単位90〜97質量%と、エチレンに由来する構造単位3〜10質量%とを有するエチレン−プロピレンランダム共重合体粒子、プロピレンに由来する構造単位90〜97質量%と、1−ブテンに由来する構造単位3〜10質量%とを有するエチレン−プロピレンランダム共重合体粒子、またはプロピレンに由来する構造単位80〜98質量%と、エチレンに由来する構造単位1〜10質量%と、1−ブテンに由来する構造単位1〜10質量%とを有するエチレン−プロピレンランダム共重合体粒子であり、更に好ましくは、プロピレンに由来する構造単位93〜97質量%と、エチレンに由来する構造単位3〜7質量%とを有するエチレン−プロピレンランダム共重合体粒子、プロピレンに由来する構造単位93〜97質量%と、1−ブテンに由来する構造単位3〜7質量%とを有するエチレン−プロピレンランダム共重合体粒子、またはプロピレンに由来する構造単位85〜98質量%と、エチレンに由来する構造単位1〜5質量%と、1−ブテンに由来する構造単位1〜10質量%とを有するエチレン−プロピレンランダム共重合体粒子である。
【0036】
前記粉末状ポリオレフィンは、結晶性を示すプロピレンと他のオレフィンとの共重合体の粒子であることが好ましい。共重合体の結晶性の程度は、該共重合体に含まれる20℃キシレン可溶部(以下、CXSと記す)の量により表すことができる。共重合体のCXSが多いということは、該共重合体には非晶部分が多く、該共重合体は結晶性が低いことを示し、共重合体のCXSが少ないということは、該共重合体には非晶部分が少なく、該共重合体は結晶性が高いことを示す。
【0037】
前記粉末状ポリオレフィンのCXSの含有量は、好ましくは、0.5質量%以上20質量%未満であり、より好ましくは、0.5質量%以上10質量%未満であり、更に好ましくは、1質量%以上5質量%未満である。
【0038】
前記粉末状ポリオレフィンの融点は、好ましくは、120℃以上160℃未満である。ここで、融点とは、示差走査型熱量分析法(DSC)によって測定される吸熱曲線のピーク温度を意味する。前記粉末状ポリオレフィンの融点は、前記CXSの含有量と同様に、成分(C)に用いられる粉末状ポリオレフィンの結晶性の程度の指標である。
【0039】
温度230℃、荷重2.16kgで測定される前記粉末状ポリオレフィンのMFRは、得られるフィルムの物性や該フィルムにおけるフィッシュアイの発生抑制の観点から、好ましくは、1〜50g/10分であり、より好ましくは、1〜30g/10分であり、更に好ましくは、2〜20g/10分である。
【0040】
135℃テトラリン中で測定される前記粉末状ポリオレフィンの極限粘度([η])は、得られるフィルムの物性や該フィルムにおけるフィッシュアイの発生抑制の観点から、好ましくは、1dl/g以上3dl/g未満であり、より好ましくは、1.3dl/g以上3dl/g未満であり、更に好ましくは、1.5dl/g以上2.5dl/gである。
【0041】
前記粉末状ポリオレフィンの見掛け嵩比重は、好ましくは、0.20g/cm以上0.45g/cm未満である。
【0042】
前記粉末状ポリオレフィンは、粒子径が特定範囲内に分布した粒子の集合であることが好ましい。その粒子径分布は、レーザー回折式粒子径分布測定法(但し、媒体を使用しない乾式法)で求められる。乾式のレーザー回折式粒子径分布測定法とは、レーザー回折式粒子径分布測定装置(例えば、Sympatec社製HELOS&RODOS(商品名)等)を用いて、溶媒を用いずに粒子径分布を測定する方法である。
【0043】
前記粉末状ポリオレフィンの粒子径100μm未満の粒子の含有量は、好ましくは、1質量%以上20質量%未満であり、粒子径300μm未満の粒子の含有量は、好ましくは、5質量%以上80質量%未満であり、粒子径1000μm未満の粒子の含有量は、好ましくは、80質量%以上である。前記粉末状ポリオレフィンの粒子径加積曲線の質量百分率50%にあたる粒子径(D50)は、好ましくは、100μm以上700μm未満であり、粒子径加積曲線の質量百分率99%にあたる粒子径(以下、D99と記す)は、好ましくは、500μm以上2000μm未満である。
【0044】
前記粉末状ポリオレフィンの粒子径分布については、成分(C)における有機過酸化物の高含有量化、その濃度の均一性、さらには成分(C)の取り扱い性の観点から、好ましくは、粒子径100μm未満の粒子の含有量が1質量%以上10質量%未満であり、粒子径300μm未満の粒子の含有量が10質量%以上70質量%未満であり、粒子径1000μm未満の粒子の含有量が80質量%以上であり、D50が200μm以上700μm未満であり、D99が700μm以上2000μm未満であり、より好ましくは、粒子径100μm未満の粒子の含有量が1質量%以上5質量%未満であり、粒子径300μm未満の粒子の含有量が10質量%以上50質量%未満であり、粒子径1000μm未満の粒子の含有量が80質量%以上であり、D50が300μm以上700μm未満であり、D99が900μm以上2000μm未満である。
【0045】
前記粉末状ポリオレフィンとしては、公知の重合触媒を用いて、オレフィンをモノマーとして用いて、公知の重合方法によって製造されたポリオレフィン粒子、公知の重合方法によって製造されたポリオレフィンを粉砕して得られた粒子、公知の重合方法によって製造されたポリオレフィンをその融点以上の温度で溶融混練し、次いで冷却固化し、得られた固化物を粉砕して得られた粒子等が例示される。
【0046】
前記ポリオレフィン粒子またはポリオレフィンの製造に使用される重合触媒として、チーグラー型触媒系;チーグラー・ナッタ型触媒系;シクロペンタジエニル環を有する周期表第IV族遷移金属の化合物とアルキルアルミノキサンとからなる触媒系;シクロペンタジエニル環を有する周期表第IV族遷移金属の化合物と、それと反応してイオン性の錯体を形成する化合物と、有機アルミニウム化合物とからなる触媒系;ならびにシリカおよび粘土鉱物のような無機粒子に、シクロペンタジエニル環を有する周期表第IV族遷移金属の化合物、イオン性の錯体を形成する化合物および有機アルミニウム化合物のような触媒成分を担持させた触媒系を例示することができる。これらの触媒系は、例えば、特開昭61−218606号公報、特開平5−194685号公報、特開平7−216017号公報、特開平9−316147号公報、特開平10−212319号公報、特開2004−182981号公報、特開2004−067850号公報に記載されている。重合触媒は、上記の触媒系の存在下でモノマーを予備重合させて調製される予備重合触媒であってもよい。
【0047】
ポリオレフィン粒子またはポリオレフィンの製造方法として、重合温度において液状のオレフィンを媒体として重合を行うバルク重合法;プロパン、ブタン、イソブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタンおよびオクタンのような不活性炭化水素溶媒中で重合を行う溶液重合法やスラリー重合法;ならびに気体状態の単量体を媒体として、その媒体中で気体状態の単量体を重合する気相重合法を例示することができる。これらの重合方法は、バッチ式、連続式またはこれらの組み合わせで行われる。これらの重合方法はまた、連結された2以上の重合反応槽を用いて、各重合反応槽で重合体の組成や特性を調整する、連続的な多段式で行われてもよい。中でも、工業的かつ経済的な観点から、連続式の気相重合法、またはバルク重合法と気相重合法とを連続的に行うバルク−気相重合法が好ましい。これらの重合方法における重合工程の、重合温度、重合圧力、モノマー濃度、触媒投入量および重合時間のような条件は、成分(C)に用いられる粉末状ポリオレフィンに応じて適宜、変更し、決定される。ポリオレフィン粒子またはポリオレフィンは、該重合体中の超低分子量オリゴマーのような副生物や残留溶媒を除去するために、その融解温度よりも低温で乾燥してもよい。
【0048】
成分(C)に用いられる粉末状ポリオレフィンが、ポリオレフィンを融点以上の温度にて溶融混練し、次いで冷却固化して、得られた固化物を粉砕して得られた粒子である場合には、その溶融混練方法としては、溶融押出機やバンバリーミキサーのような公知の溶融混練装置を用いて、融点以上の温度で溶融混練する方法が挙げられる。前記ポリオレフィンがプロピレン重合体の場合、溶融混練する際の温度は、好ましくは、180℃以上、より好ましくは、180〜300℃、更に好ましくは、180〜250℃である。
【0049】
公知の溶融混練装置として、東芝機械(株)製のSE(登録商標)、(株)池貝製のFS(登録商標)、(株)テクノベル製のSZW(登録商標)などのような単軸押出機、Coperion Werner Pfleiderer製のZSK(登録商標)、東芝機械(株)製のTEM(登録商標)、日本製鋼所(株)製のTEX(登録商標)、(株)テクノベル製のKZW(登録商標)のような二軸同方向回転押出機、および日本製鋼所(株)製のCMP(登録商標)、神戸製鋼所(株)製のFCM(登録商標)やNCM(登録商標)やLCM(登録商標)のような二軸異方向回転押出機を例示することができる。
【0050】
ポリオレフィンを溶融混練し、更に冷却固化して得られた固化物の形状としては、ストランド、シート、平板、およびストランドを適当な長さに裁断したペレットを例示することができる。
【0051】
成分(C)に用いられる粉末状ポリオレフィンには、貯蔵中の酸化劣化を抑制して安定化するために中和剤、酸化防止剤等の公知の添加剤を含有させてもよい。添加剤の配合は、ミキサーなどによる攪拌混合法や、溶融混練法等の公知の混合方法によって行ってもよい。前記添加剤を配合する場合のその配合量は、通常、前記粉末状ポリオレフィン100質量部に対して、0.001〜0.5質量部であり、好ましくは、0.01〜0.2質量部である。
【0052】
前記粉末状ポリオレフィンとして、ポリオレフィンを粉砕して得られる粒子、またはポリオレフィンを融点以上の温度にて溶融混練し、次いで冷却固化し、得られた固化物を粉砕して得られる粒子を使用する場合に、その粒子の製造には、公知の粉砕装置を用いることができる。
【0053】
公知の粉砕装置として、スパイラルミル、ターボミル、ピンミル、ハンマーミル、JETミル、ジェット気流粉砕機(シングルトラックジェットミル、ジェットオーミル)、カッターミル、ロータリーカッターミル、ビーズミル、ボールミル、ロールミル、スターミル、ジョークラッシャーミル、インペラーミル、振動ミル、衝撃式粉砕機等を例示することができる。
【0054】
目的の粒子径分布を有する粉末状ポリオレフィンを得るための好ましい粉砕方法としては、液体窒素を用いて粉砕する冷凍粉砕法が挙げられる。
冷凍粉砕法は、液体窒素(約−196℃)雰囲気下でポリオレフィンを粉砕して得られた粒子、またはポリオレフィンを融点以上の温度にて溶融混練し、次いで冷却固化し、得られた固化物を粉砕して得られた粒子を、その脆化点以下の温度に冷却した後、ターボミル、ピンミル、ハンマーミル、リンレックスミル、インペラーミル、スパイラルミル等の粉砕機を用いて粉砕を行う方法である。
【0055】
また、ポリオレフィンを粉砕して得られた粒子は、目的の粒子径分布を達成するために、フィルターを通過させることができる。かかるフィルターとしては公知の仕様のものを用いることができる。
公知のフィルターとして、織金網、クリンプ金網、溶接金網、デミスター、スパイラル金網、積層金属フィルター、金属焼結フィルター等が挙げられる。織金網としては、平織の織金網、綾織の織金網、繻子織の織金網、平畳織の織金網、綾畳織の織金網等を例示することができる。フィルターの材質は、金属製や樹脂製のいずれでもよく、好ましくは、ステンレス鋼製である。ポリオレフィンの粉砕粒子は、1枚のフィルターを通過させてもよく、重ねた複数枚のフィルターを通過させてもよく、また、1段階でも2段階以上に分けてフィルターを通過させてもよく、異なる仕様(材質、形状、開き目等)のフィルターを併用してもよい。フィルターの開き目は、目的の粒子径分布に応じて適宜決定される。成分(C)における有機過酸化物の高含有量化、その濃度の均一性、さらには成分(C)の取り扱い性に優れる粉末状ポリオレフィンを得る観点から、好ましくは、100〜3000μmであり、より好ましくは、300〜2000μmであり、更に好ましくは、300〜1500μmである。フィルターの開き目とは、JIS−B8356の方法によりフィルターメディアを通過する最大グラスビーズの粒子径(μm)により決定される値である。
【0056】
成分(C)に用いられる粉末状ポリオレフィンが、ポリオレフィンを粉砕して得られた粒子である場合、有機過酸化物を高濃度に含有でき、かつ取扱い性に優れる成分(C)を効率よく製造する観点から、特定の粒子径分布を満足するポリオレフィン粒子である必要があり、粉砕に用いられるポリオレフィンとして、好ましくは、粒子径の大きいものである。
【0057】
成分(C)に用いられる粉末状ポリオレフィンが、ポリオレフィンを粉砕して得られた粒子である場合に、粉砕前のポリオレフィンのD50で表される大きさは、好ましくは、700〜5000μm、より好ましくは、700〜3000μm、更に好ましくは、700〜1500μmである。
【0058】
また、成分(C)に用いられる粉末状ポリオレフィンが、ポリオレフィンを融点以上の温度で溶融混練し、次いで冷却固化し、得られた固化物を粉砕して得られた粒子である場合に、最も長い部分の長さで表された該固化物の大きさは、通常、1〜50mmであり、好ましくは、2〜10mmであり、より好ましくは、2〜5mmある。また、該固化物の形状は、該固化物を粉砕して得られる粒子の生産性、生産安定性の観点から、好ましくは、直径が2〜5mmのペレット状である。
【0059】
成分(C)に用いられる粉末状ポリオレフィンに有機過酸化物を含浸させる方法としては、公知のミキサーを用いて粉末状ポリオレフィンを混合しながら有機過酸化物を添加する方法が好ましい。公知のミキサーとしては、タンブルミキサー、ヘンシェルミキサー、スーパーミキサー等を例示することができる。
【0060】
本発明において、前記成分(A)、成分(B)及び成分(C)を含む前記混合物には、必要に応じて添加剤を添加してもよい。添加剤としては、例えば、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、滑剤、造核剤、防曇剤、アンチブロッキング剤等が挙げられる。
かかる添加剤の配合量は、好ましくは、成分(A)と成分(B)との合計100質量部に対して、0.01〜0.5質量部である。
【0061】
滑剤としては、樹脂用の滑剤として公知の炭化水素系化合物、脂肪酸系化合物、高級アルコール系化合物、脂肪酸アミド系化合物、脂肪酸エステル系化合物、金属石鹸系化合物を用いることができ、特に脂肪酸アミド系化合物や金属石鹸系化合物を用いることが好ましい。
【0062】
炭化水素系化合物としては、例えば、流動パラフィン、パラフィンワックス、合成ポリエチレンワックス等が挙げられる。脂肪酸系化合物としては、例えば、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アルキジン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、オレイン酸、エルカ酸、ネルボン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸等が挙げられる。高級アルコール系化合物としては、例えば、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、オレイルアルコール、ラウリルアルコール等が挙げられる。脂肪酸アミド系化合物としては、飽和脂肪酸アミド系化合物や不飽和脂肪酸アミド系化合物が用いられ、ミリスチン酸アミド、パルミチン酸アミド、ステアリン酸アミド、アルキジン酸アミド、ベヘニン酸アミド、リグノセリン酸アミド、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、ネルボン酸アミド、リノール酸アミド、リノレン酸アミド、アラキドン酸アミド、エチレンビスオクタデカンアミド、メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスヒドロキシステアリン酸アミド、エチレンビスカプリル酸アミド、エチレンビスカプリン酸アミド等が挙げられ、好ましくは、オレイン酸アミド、ベヘニン酸アミド、エルカ酸アミドが挙げられ、さらに好ましくは、エルカ酸アミドである。脂肪酸エステル系化合物としては、ステアリルステアレート、ステアリン酸モノグリセリド、硬化ひまし油等が挙げられる。金属石鹸系化合物としてはステアリン酸リチウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸亜鉛、ラウリン酸カルシウム、ラウリン酸バリウム、ラウリン酸亜鉛、オクチル酸亜鉛、リシノール酸カルシウム、リシノール酸バリウム、リシノール酸亜鉛、ベヘニル燐酸亜鉛、ステアリル燐酸亜鉛等が挙げられ、好ましくはステアリン酸マグネシウムやステアリン酸カルシウムである。
【0063】
本発明のフィルムは、上記のポリプロピレン樹脂組成物からなる1層以上を有するフィルムであり、該組成物を製膜して得られる。
本発明のフィルムの厚みは、剛性や透明性の観点から、好ましくは、5μm以上100μm未満であり、より好ましくは、10μm以上80μm未満であり、更に好ましくは、10μm以上70μm未満である。
【0064】
本発明のポリプロピレン樹脂組成物からフィルムを製膜する手法としては、例えば、樹脂フィルムの製造に通常用いられるTダイ法、インフレーション法、カレンダー法等を用いて単層フィルムとして製膜する方法の他に、多層フィルムの少なくとも1層として製膜する方法が挙げられる。
【0065】
本発明のフィルムは単層フィルムであってもよく、本発明のポリプロピレン樹脂組成物からなる層を少なくとも1層含む多層フィルムであってもよい。また、本発明のフィルムは未延伸フィルムであってもよく、その未延伸フィルムを1軸方向または2軸方向に延伸して製造した延伸フィルムであってもよい。好ましくは、未延伸フィルムである。
【0066】
多層フィルムは本発明のポリプロピレン樹脂組成物からなる層とその他の層からなるフィルムであって、その他の層としては、例えば、プロピレン単独重合体からなる層、プロピレンとエチレンおよび炭素数4以上のα−オレフィンからなる群から選択される1種以上のコモノマーとからなるプロピレン系ランダムまたはブロック共重合体からなる層や、これらのプロピレン系重合体ポリエチレンやポリブテン等のオレフィン系樹脂、エチレンとα−オレフィンとの共重合体エラストマー等との混合物の層、ポリプロピレン2軸延伸フィルム、未延伸または延伸ナイロンフィルムや延伸ポリテレフタル酸エチルフィルム等が挙げられる。
【0067】
多層フィルムの製造方法としては、例えば、共押し出し加工法、押出ラミネート法、熱ラミネート法、ドライラミネート法等が挙げられる。
【実施例】
【0068】
以下、実施例および比較例により本発明を更に詳しく説明する。実施例および比較例で用いた物性の測定方法を下記に示した。
【0069】
(1)メルトフローレート(MFR、単位:g/10分)
JIS K7210に従い測定した。
ポリプロピレン:(230℃、2.16kg荷重)
ポリエチレン:(190℃、2.16kg荷重)
【0070】
(2)ポリプロピレン中のコモノマー含量(単位:質量%)
高分子分析ハンドブック(1995年、紀伊国屋書店発行)の616ページ以降に記載されている方法により、赤外分光法で測定を行い求めた。
【0071】
(3)ポリプロピレン中の20℃キシレン可溶成分量(CXS、単位:質量%)
試料1gを沸騰キシレン100mlに完全に溶解させた後、20℃に降温、4時間放置した。その後、これを析出物と溶液とに濾別し、濾液を乾固して減圧下70℃で乾燥し、残存物を得た。得られた残存物の質量を測定して、20℃キシレン可溶成分量(CXS)を求めた。
【0072】
(4)融点(Tm、単位:℃)
示差走査熱量計(パーキンエルマー社製DSC)を用いて、試片約10mgを窒素雰囲気下220℃で5分間保持した後、300℃/分で150℃まで冷却した。150℃で1分間保持した後、50℃/分の降温速度で50℃まで降温した。
その後に50℃で1分保持した後、5℃/分で昇温させて、得られた融解吸熱カーブの最大ピークのピーク温度の小数位以下を四捨五入してTm(融点)とした。ピークが複数あるものは、高温側のピークを採用した。
なお、本測定器を用いて5℃/分の降温速度ならびに昇温速度で測定したインジウム(In)のTmは156.6℃であった。
【0073】
(5)ポリエチレンの密度(単位:g/cm
JIS−K7112のA法(水中置換法)に従い測定した。
【0074】
(6)フィルムのヘイズ(単位:%)
JIS−K7136に従って測定した。
【0075】
(8)フィルムの摩擦係数 μs、μk(単位:−)
室温23℃、湿度50%のもと、MD100mm×TD75mmのフィルムサンプル2枚の測定面同士を重ね合わせ、質量200gの錘を設置面積63.5mm×63.5mmで載せ、TOYOSEKI FRICTION TESTER TR−2型を用い、移動速度15cm/分で測定した。
【0076】
(9)フィルムのフィッシュアイ(個/m
フィルム製膜機に設置した(株)NIRECO社製フィルム欠陥検査装置MujiKenを用いて、100μm以上のフィッシュアイ数を測定した。
カメラ:一次元CCD、8,192画素
スキャンレート:最大約0.06msec/ライン(160MHz)
分解能:50μm/画素
【0077】
使用したポリプロピレン(A)
(A1):プロピレン含有量=96.0質量%、エチレン含有量=4.0質量%、MFR=6.2g/10分、融点=142℃、CXS含有量=2.9質量%の結晶性プロピレン/エチレンランダム共重合体
(A2):プロピレン含有量=94.4質量%、エチレン含有量=5.6質量%、MFR=1.4g/10分、融点=133℃、CXS含有量=5.0質量%の結晶性プロピレン/エチレンランダム共重合体
(A3): MFR=7.8g/10分、融点=165℃、CXS含有量=0.8質量%のプロピレン単独重合体
(A4): MFR=0.5g/10分、融点=165℃、CXS含有量=0.4質量%のプロピレン単独重合体
(A5): プロピレン含有量=90.7質量%、エチレン含有量=2.5質量%、ブテン含有量=6.8質量%、MFR=3.5g/10分、融点=132℃、CXS含有量=2.5質量%の結晶性プロピレン/エチレン/ブテンランダム共重合体
【0078】
使用したポリエチレン(B)
(B1)京葉ポリエチレン(株)社製 高密度ポリエチレンE3100(密度=0.952g/cm3、MFR=1.0g/10分)
(B2)住友化学(株)社製 直鎖状低密度ポリエチレン スミカセンα CS8051(エチレン/1−ヘキセン共重合体、密度=0.940g/cm3、MFR=2.2g/10分、融点=127℃)
(B3)住友化学(株)社製 直鎖状低密度ポリエチレン スミカセンE FV102(エチレン/1−ヘキセン共重合体、密度=0.926g/cm3、MFR=0.73g/10分、融点=125℃)
(B4)住友化学(株)社製 低密度ポリエチレン スミカセン F218−0 (密度=0.919g/cm3、MFR=1.0g/10分、融点=109℃)
(B5)住友化学(株)社製 直鎖状低密度ポリエチレン スミカセンE FV103(エチレン/1−ヘキセン共重合体、密度=0.905g/cm3、MFR=1.0g/10分、融点=113℃)
(B6)京葉ポリエチレン(株)社製 高密度ポリエチレンG2500(密度=0.961g/cm3、MFR=5.4g/10分)
(B7)京葉ポリエチレン(株)社製 高密度ポリエチレンG1900(密度=0.955g/cm3、MFR=16g/10分)
(B8)(株)プライムポリマー社製 高密度ポリエチレン ハイゼックス7000F(密度=0.950g/cm3、MFR=0.05g/10分)
(B9)住友化学(株)社製 直鎖状低密度ポリエチレン スミカセンE FV401(エチレン/1−ヘキセン共重合体、密度=0.905g/cm3、MFR=3.8g/10分、融点=113℃)
(B10)三井化学(株)社製 超低密度ポリエチレン タフマー A0550S(エチレン/ブテン共重合体、密度=0.860g/cm3、MFR=0.6g/10分、融点<50℃)
【0079】
使用した有機過酸化物を含浸させたマスターバッチ(C)
(C1)プロピレン含有量=93.3質量%、エチレン含有量=2.2質量%、ブテン含有量=4.5質量%、MFR=7.0g/10分、融点=140℃、CXS含有量=1.7質量%の結晶性プロピレン/エチレン/ブテンランダム共重合体を液体窒素で十分に冷却した後、インペラーミルへ連続的に導入することによって粉砕処理を行い、フィルターに通過させ分級することで粒子径D50=400μmの粉末状ポリオレフィンを得、この粉末に対し、パーヘキサ25B(日本油脂(株)製、化学名:2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)へキサン)を8質量%含浸させたポリオレフィン系マスターバッチ
【0080】
[実施例1]
結晶性ポリプロピレン(A1)80質量%、ポリエチレン(B1)20質量%、(A1)と(B1)の合計量100質量部に対して、有機過酸化物を含浸させたマスターバッチ(C1)0.31質量部、ステアリン酸カルシウム(共同薬品株式会社製)0.05質量部、イルガノックス1010(チバスペシャリティーケミカルズ社製)0.05質量部、イルガノックス1076(チバスペシャリティーケミカルズ社製)0.01質量部を添加し、ヘンシェルミキサーにて3分間混合した後、220℃で溶融混練してペレットを得た。得られたペレットのMFRは12g/10分、SRは1.06であった。
【0081】
[フィルムの製膜]
50mmφの押出機にTダイを取り付け、得られたペレットを温度240℃で溶融混練して押出を行った。溶融押出された樹脂を、40℃に温調され、18m/分で回転する冷却ロールにて冷却固化させ、厚さ30μmのフィルムを得た。得られたフィルムの物性を表1に示す。得られたフィルムは、ヘイズが高く、滑り性に優れ、フィッシュアイの少ないフィルムであった。
【0082】
[実施例2]
実施例1において、結晶性ポリプロピレン(A1)の配合量を70質量%、ポリエチレン(B1)の配合量を30質量%に変更した以外は実施例1に従って、ペレットを作成し、フィルムを得た。得られたペレットのMFRは8.8g/10分、SRは1.18であり、得られたフィルムは、ヘイズが高く、滑り性に優れ、フィッシュアイの少ないフィルムであった。
【0083】
[実施例3]
実施例1において、結晶性ポリプロピレン(A1)を(A2)に変更し、有機過酸化物を含浸させたマスターバッチ(C1)の配合量を0.45質量部に変更した以外は実施例1に従って、ペレットを作成し、フィルムを得た。得られたペレットのMFRは6.4g/10分、SRは1.10であり、得られたフィルムは、ヘイズが高く、滑り性に優れ、フィッシュアイの少ないフィルムであった。
【0084】
[実施例4]
実施例1において、結晶性ポリプロピレン(A1)を(A3)に変更した以外は実施例1に従って、ペレットを作成し、フィルムを得た。得られたペレットのMFRは15g/10分、SRは1.08であり、得られたフィルムは、ヘイズが高く、滑り性に優れ、フィッシュアイの少ないフィルムであった。
【0085】
[実施例5]
実施例1において、結晶性ポリプロピレン(A1)を(A4)に変更した以外は実施例1に従って、ペレットを作成し、フィルムを得た。得られたペレットのMFRは7.0g/10分、SRは1.10であり、得られたフィルムは、ヘイズが高く、滑り性に優れ、フィッシュアイの少ないフィルムであった。
【0086】
[実施例6]
実施例1において、ポリエチレン(B1)を(B2)に、有機過酸化物を含浸させたマスターバッチ(C1)の量を0.28質量部に変更した以外は実施例1に従って、ペレットを作成し、フィルムを得た。得られたペレットのMFRは9.8g/10分、SRは1.06であり、得られたフィルムは、ヘイズが高く、滑り性に優れ、フィッシュアイの少ないフィルムであった。
【0087】
[実施例7]
実施例1において、ポリエチレン(B1)を(B3)に、有機過酸化物を含浸させたマスターバッチ(C1)の量を0.45質量部に変更した以外は実施例1に従って、ペレットを作成し、フィルムを得た。得られたペレットのMFRは17g/10分、SRは1.11であり、得られたフィルムは、ヘイズが高く、滑り性に優れ、フィッシュアイの少ないフィルムであった。
【0088】
[実施例8]
実施例1において、ポリエチレン(B1)を(B3)とし、配合量を30質量%に、有機過酸化物を含浸させたマスターバッチ(C1)の配合量を0.45質量部に変更した以外は実施例1に従って、ペレットを作成し、フィルムを得た。得られたペレットのMFRは11g/10分、SRは1.27であり、得られたフィルムは、ヘイズが高く、滑り性に優れ、フィッシュアイの少ないフィルムであった。
【0089】
[実施例9]
実施例1において、結晶性ポリプロピレン(A1)を(A3)に、ポリエチレン(B1)を(B3)に、変更した以外は実施例1に従って、ペレットを作成し、フィルムを得た。得られたペレットのMFRは17g/10分、SRは1.10であり、得られたフィルムは、ヘイズが高く、滑り性に優れ、フィッシュアイの少ないフィルムであった。
【0090】
[実施例10]
実施例1において、ポリエチレン(B1)を(B4)に、有機過酸化物を含浸させたマスターバッチ(C1)の量を0.28質量部に変更した以外は実施例1に従って、ペレットを作成し、フィルムを得た。得られたペレットのMFRは16g/10分、SRは1.29であり、得られたフィルムは、ヘイズが高く、滑り・耐ブロッキング性能の優れるフィルムであった。
【0091】
[実施例11]
実施例1において、結晶性ポリプロピレン(A1)を(A4)に変更し、有機過酸化物を含浸させたマスターバッチ(C1)の量を0.80質量部に変更し、脂肪酸アミド系化合物としてエルカ酸アミドを0.05質量部添加した以外は実施例1に従って、ペレットを作成し、フィルムを得た。得られたペレットのMFRは7.0g/10分、SRは1.10であり、得られたフィルムは、ヘイズが高く、滑り性に優れ、フィッシュアイの少ないフィルムであった。
【0092】
[実施例12]
実施例1において、結晶性ポリプロピレン(A1)を(A4)に変更し、有機過酸化物を含浸させたマスターバッチ(C1)の量を0.80質量部に変更し、脂肪酸アミド系化合物としてエルカ酸アミドを0.1質量部添加した以外は実施例1に従って、ペレットを作成し、フィルムを得た。得られたペレットのMFRは8.0g/10分、SRは1.09であり、得られたフィルムは、ヘイズが高く、滑り性に優れ、フィッシュアイの少ないフィルムであった。
【0093】
[実施例13]
実施例1において、結晶性ポリプロピレン(A1)を(A4)に変更し、有機過酸化物を含浸させたマスターバッチ(C1)の量を0.80質量部に変更し、脂肪酸アミド系化合物としてオレイン酸アミドを0.1質量部添加した以外は実施例1に従って、ペレットを作成し、フィルムを得た。得られたペレットのMFRは7.5g/10分、SRは1.08であり、得られたフィルムは、ヘイズが高く、滑り性に優れ、フィッシュアイの少ないフィルムであった。
【0094】
[実施例14]
実施例1において、結晶性ポリプロピレン(A1)を(A4)に変更し、有機過酸化物を含浸させたマスターバッチ(C1)の量を0.80質量部に変更し、脂肪酸アミド系化合物としてベヘニン酸アミドを0.1質量部添加した以外は実施例1に従って、ペレットを作成し、フィルムを得た。得られたペレットのMFRは8.2g/10分、SRは1.08であり、得られたフィルムは、ヘイズが高く、滑り性に優れ、フィッシュアイの少ないフィルムであった。
【0095】
[実施例15]
実施例1において、結晶性ポリプロピレン(A1)を(A2)に変更し、有機過酸化物を含浸させたマスターバッチ(C1)の量を0.80質量部に変更し、脂肪酸アミド系化合物としてエルカ酸アミドを0.1質量部添加した以外は実施例1に従って、ペレットを作成し、フィルムを得た。得られたペレットのMFRは10.7g/10分、SRは1.08であり、得られたフィルムは、ヘイズが高く、滑り性に優れ、フィッシュアイの少ないフィルムであった。
【0096】
[実施例16]
実施例1において、結晶性ポリプロピレン(A1)を(A5)に変更し、有機過酸化物を含浸させたマスターバッチ(C1)の量を0.80質量部に変更し、脂肪酸アミド系化合物としてエルカ酸アミドを0.1質量部添加した以外は実施例1に従って、ペレットを作成し、フィルムを得た。得られたペレットのMFRは15.4g/10分、SRは1.05であり、得られたフィルムは、ヘイズが高く、滑り性に優れ、フィッシュアイの少ないフィルムであった。
【0097】
[実施例17]
実施例1において、結晶性ポリプロピレン(A1)を(A5)に変更し、ポリエチレン(B1)を(B5)に変更し、有機過酸化物を含浸させたマスターバッチ(C1)の量を0.80質量部に変更し、脂肪酸アミド系化合物としてエルカ酸アミドを0.1質量部添加した以外は実施例1に従って、ペレットを作成し、フィルムを得た。得られたペレットのMFRは7.7g/10分、SRは1.05であり、得られたフィルムは、ヘイズが高く、滑り性に優れ、フィッシュアイの少ないフィルムであった。
【0098】
[比較例1]
実施例1において、結晶性ポリプロピレン(A1)の配合量を60質量%、ポリエチレン(B1)の配合量を40質量%、有機過酸化物を含浸させたマスターバッチ(C1)の配合量を0.45質量部に変更した以外は実施例1に従って、ペレットを作成し、フィルムを得た。得られたペレットのMFRは7.0g/10分、SRは1.24であり、得られたフィルムは、無数の穴があいていた。
【0099】
[比較例2]
実施例1において、有機過酸化物を含浸させたマスターバッチ(C1)の配合量を0.04質量部に変更した以外は実施例1に従って、ペレットを作成し、フィルムを得た。得られたペレットのMFRは6.5g/10分、SRは1.22であり、得られたフィルムは、十分にヘイズが上がらなかった。
【0100】
[比較例3]
実施例1において、ポリエチレン(B1)を(B6)に変更した以外は実施例1に従って、ペレットを作成し、フィルムを得た。得られたペレットのMFRは18g/10分、SRは1.15であり、得られたフィルムは、ヘイズが十分に上がらなかった。
【0101】
[比較例4]
実施例1において、ポリエチレン(B1)を(B7)に変更した以外は実施例1に従って、ペレットを作成し、フィルムを得た。得られたペレットのMFRは20g/10分、SRは2.29であり、得られたフィルムは、ヘイズが低く、フィッシュアイが多く、外観の劣るフィルムであった。
【0102】
[比較例5]
実施例1において、ポリエチレン(B1)を(B8)に変更し、有機過酸化物を含浸させたマスターバッチ(C1)の配合量を0.35質量部に変更した以外は実施例1に従って、ペレットを作成し、フィルムを得た。得られたペレットのMFRは15g/10分、SRは1.14であった。欠点検知器で検出されるフィッシュアイの個数が比較的多く、さらに非常に大きなフィッシュアイも多発し、外観の劣るフィルムであった。
【0103】
[比較例6]
実施例1において、結晶性ポリプロピレン(A1)の配合量を100質量%に変更した以外は実施例1に従って、ペレットを作成し、フィルムを得た。得られたペレットのMFRは29g/10分、SRは1.00であり、得られたフィルムは、ヘイズが低く、滑り性に劣る結果であった。
【0104】
[比較例7]
比較例6で得られたペレット80質量%、ポリエチレン(B1)20質量%タンブルミキサーでペレットブレンドし、フィルムを得た。得られたフィルムは、ヘイズの上がり方が不十分であり、フィッシュアイが多い結果であった。
【0105】
[比較例8]
実施例1において、ポリエチレン(B1)を(B3)に変更し、有機過酸化物を含浸させたマスターバッチ(C1)の配合量を0.04質量部に変更した以外は実施例1に従って、ペレットを作成し、フィルムを得た。得られたペレットのMFRは6.2g/10分、SRは1.29であり、得られたフィルムは、ヘイズが十分に高くならなかった。
【0106】
[比較例9]
実施例1において、ポリエチレン(B1)を(B9)に変更した以外は実施例1に従って、ペレットを作成し、フィルムを得た。得られたペレットのMFRは15g/10分、SRは1.84であり、得られたフィルムは、ヘイズが低く、滑り性が劣る結果であった。
【0107】
[比較例10]
実施例1において、ポリエチレン(B1)を(B3)とし、配合量を40質量%に、有機過酸化物を含浸させたマスターバッチ(C1)の配合量を0.45質量部に変更した以外は実施例1に従って、ペレットを作成し、フィルムを得た。得られたペレットのMFRは6.0g/10分、SRは1.43であり、得られたフィルムは、ヘイズは高いものの、フィッシュアイが多く、フィルムに無数の穴が開いていた。
【0108】
[比較例11]
実施例1において、結晶性ポリプロピレン(A1)を(A4)に、ポリエチレン(B1)を(B10)に変更し、有機過酸化物を含浸させたマスターバッチ(C1)の量を0.80質量部に変更し、脂肪酸アミド系化合物としてエルカ酸アミドを0.1質量部添加した以外は実施例1に従って、ペレットを作成し、フィルムを得た。得られたペレットのMFRは15g/10分、SRは1.84であり、得られたフィルムは、ヘイズが低く、滑り性が劣る結果であった。
【0109】
[比較例12]
実施例1において、結晶性ポリプロピレン(A1)を(A4)に、有機過酸化物を含浸させたマスターバッチ(C1)を用いることなく有機過酸化物としてパーヘキサ25Bを0.064質量部添加した以外は実施例1に従って、ペレットを作成し、フィルムを得た。得られたペレットのMFRは3.3g/10分、SRは1.53であり、得られたフィルムは、ヘイズが低く、フィッシュアイが極めて多い、外観の劣るフィルムであった。
【0110】
[比較例13]
実施例1において、結晶性ポリプロピレン(A1)を(A4)に、有機過酸化物を含浸させたマスターバッチ(C1)を用いることなく有機過酸化物としてパーヘキサ25Bを0.080質量部添加し、脂肪酸アミド系化合物としてエルカ酸アミドを0.1質量部添加した以外は実施例1に従って、ペレットを作成し、フィルムを得た。得られたペレットのMFRは6.9g/10分、SRは1.16であり、得られたフィルムは、ヘイズが低く、フィッシュアイが極めて多い、外観の劣るフィルムであった。
【0111】
【表1】

【0112】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0113】
本発明のポリプロピレン樹脂組成物は、食品用、工業用、農業用等のシートやフィルムに利用できる。本組成物を使用して製膜すれば、ABAのような無機物を使わずとも表面が粗面化し、ヘイズが高く、滑り性に優れ、フィッシュアイの様な外観上の欠点が少ないフィルムが得られる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロピレンの単独重合体、またはプロピレンと1種以上のコモノマーとからなり、コモノマー含量が20質量%以下であるプロピレン系ランダム共重合体(但し、プロピレン系ランダム共重合体の全質量を100質量%とする。)であるポリプロピレン(成分(A))と、
密度が0.900g/cm以上0.970g/cm未満であり、190℃、2.16kg荷重下で測定されるメルトフローレートが0.5〜3g/10分であるポリエチレン(成分(B))と、
有機過酸化物を粉末状ポリオレフィンに1〜30質量%含浸させたマスターバッチ(成分(C))(但し、有機過酸化物と粉末状ポリオレフィンとの合計量を100質量%とする。)とを含む混合物を溶融混練してなるポリプロピレン樹脂組成物であって、
前記混合物が、
成分(A)と成分(B)との合計量を100質量%としたとき、成分(A)の含有量が65〜95質量%であり、成分(B)の含有量が5〜35質量%であり、
かつ、成分(A)と成分(B)との合計100質量部に対して、0.005〜0.5質量部の前記有機過酸化物を含む混合物であることを特徴とするポリプロピレン樹脂組成物。
【請求項2】
成分(B)が密度0.900g/cm以上0.945g/cm未満であるポリエチレンであることを特徴とする請求項1に記載のポリプロピレン樹脂組成物。
【請求項3】
成分(B)が密度0.945g/cm以上0.970g/cm未満であるポリエチレンであることを特徴とする請求項1に記載のポリプロピレン樹脂組成物。
【請求項4】
230℃、2.16kg荷重下で測定される成分(A)のメルトフローレートが0.1〜10g/10分であるポリプロピレンであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のポリプロピレン樹脂組成物。
【請求項5】
前記混合物が、成分(A)と成分(B)との合計100質量部に対して、更に脂肪酸アミド系化合物を0.01〜0.5質量部含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のポリプロピレン樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載のポリプロピレン樹脂組成物からなる1層以上を有するフィルム。
【請求項7】
未延伸フィルムである請求項6に記載のフィルム。

【公開番号】特開2012−236973(P2012−236973A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−39771(P2012−39771)
【出願日】平成24年2月27日(2012.2.27)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】