説明

ポリプロピレン樹脂製フィルムおよびその製造方法

【課題】フィルム成形後の紫外線吸収剤のブリードが抑制されたポリプロピレン樹脂製フィルムを提供すること。
【解決手段】プロピレン系樹脂とトリアジン系紫外線吸収剤とを含むプロピレン系樹脂組成物を溶融押出することによって得られたフィルムを、50(℃)以上、該プロピレン系樹脂組成物の融解主ピーク温度(℃)以下の温度で熱処理してなるポリプロピレン樹脂製フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルム成形後の紫外線吸収剤のブリードが抑制されたポリプロピレン樹脂製フィルムおよびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
プロピレン系樹脂に紫外線吸収性能を付与するために、紫外線吸収剤を添加することは一般的によく知られている。例えば、特許文献1には、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、トリアジン系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤から選択される1種または2種以上の紫外線吸収剤をプロピレン系樹脂に添加し、成形してなるフィルムが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−228760号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に記載のフィルムでは、紫外線吸収剤の種類や添加量によっては、フィルム成形後、経時によって、フィルム表面に紫外線吸収剤がブリードし、フィルムが白化する問題があった。本発明の課題は、フィルム成形後の紫外線吸収剤のブリードが抑制されたポリプロピレン樹脂製フィルムおよびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
即ち、本発明は、プロピレン系樹脂とトリアジン系紫外線吸収剤とを含むプロピレン系樹脂組成物を溶融押出することによって得られたフィルムを、50(℃)以上、該プロピレン系樹脂組成物の融解主ピーク温度(℃)以下の温度で熱処理してなるポリプロピレン樹脂製フィルムに係るものである。
【0006】
また、本発明は、プロピレン系樹脂とトリアジン系紫外線吸収剤とを含むプロピレン系樹脂組成物を、溶融押出することによって、フィルムを得る工程(工程1)、および該フィルムを、50(℃)以上、該プロピレン系樹脂組成物の融解主ピーク温度(℃)以下の温度で熱処理して、ポリプロピレン樹脂製フィルムを得る工程(工程2)を含むポリプロピレン樹脂製フィルムの製造方法に係るものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明により、フィルム成形後の紫外線吸収剤のブリードが抑制されたポリプロピレン樹脂製フィルムを得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明のポリプロピレン樹脂製フィルムは、プロピレン系樹脂とトリアジン系紫外線吸収剤とを含むプロピレン系樹脂組成物を溶融押出することによって得られたフィルムを、50(℃)以上、該プロピレン系樹脂組成物の融解主ピーク温度(℃)以下の温度で熱処理してなる。
【0009】
本発明におけるプロピレン系樹脂とは、プロピレンに由来する構造単位の含有量が50重量%以上であり、好ましくは、70%以上であり、より好ましくは、80重量以上である(プロピレン系樹脂の全重量を100重量%とする。)。
【0010】
プロピレン系樹脂としては、例えば、プロピレン単独重合体、プロピレン−エチレン共重合体、プロピレン−1−ブテン共重合体、プロピレン−1−ヘキセン共重合体、プロピレン−1−オクテン共重合体、プロピレン−1−ヘプテン共重合体、プロピレン−1−ノネン共重合体、プロピレン−1−デセン共重合体、プロピレン−1−ウンデセン共重合体、プロピレン−1−ドデセン共重合体、プロピレン−1−トリデセン共重合体、プロピレン−1−テトラデセン共重合体、プロピレン−1−ペンタデセン共重合体、プロピレン−1−ヘキサデセン共重合体、プロピレン−1−ヘプタデセン共重合体、プロピレン−1−オクタデセン共重合体、プロピレン−1−ナノデセン共重合体、プロピレン−1−エイコセン共重合体、エチレン−プロピレン−1−オクテン共重合体、エチレン−1−ブテン−1−ヘキセン共重合体等が挙げられ、好ましくは、プロピレン単独重合体、プロピレン−エチレン共重合体、プロピレン−1−ブテン共重合体またはエチレン−プロピレン−1−ブテン共重合体であり、より好ましくは、プロピレン単独重合体である。これらポリプロピレン系樹脂は、1種単独でも2種以上併用してもよい。
【0011】
本発明におけるトリアジン系紫外線吸収剤としては、例えば、下記一般式(1)で表されるトリアジン化合物が挙げられ、これらは、特開2009−98701号公報や、特開2009−185291号公報に記載されている。
【0012】
【化1】

(式中、Rは、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数3〜8のシクロアルキル基、炭素数3〜8のアルケニル基、炭素数6〜18のアリール基、炭素数7〜18のアルキルアリール基又は炭素原子数7〜18のアリールアルキル基を表す。但し、これらのアルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アリール基、アルキルアリール基又はアリールアルキル基は、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、炭素数1〜12のアルキル基又は炭素原子数1〜12のアルコキシ基で置換されていてもよく、酸素原子、硫黄原子、カルボニル基、エステル基、アミド基又はイミノ基で中断されていてもよい。また、前記の置換及び中断は組み合わされてもよい。Rは、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜12のアルキル基又は炭素数3〜8のアルケニル基を表し、Rは、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜12のアルキル基又はヒドロキシ基を表し、Rは、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜12のアルキル基又は−O−Rを表す。)
【0013】
前記一般式(1)のR、R、R及びRで表される炭素数1〜12のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、第二ブチル基、第三ブチル基、n−アミル基、イソアミル基、第三アミル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、イソオクチル基、第三オクチル基、2−エチルヘキシル基、n−ノニル基、イソノニル基、n−デシル基、n−ウンデシル基、n−ドデシル基等が挙げられる。
【0014】
前記一般式(1)のRで表される炭素数3〜8のシクロアルキル基としては、例えば、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基等が挙げられる。
【0015】
前記一般式(1)のRで表される炭素原子数6〜18のアリール基又は炭素原子7〜18のアルキルアリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、2−メチルフェニル基、3−メチルフェニル基、4−メチルフェニル基、4−ビニルフェニル基、3−イソプロピルフェニル基、4−イソプロピルフェニル基、4−n−ブチルフェニル基、4−イソブチルフェニル基、4−第三ブチルフェニル基、4−n−ヘキシルフェニル基、4−シクロヘキシルフェニル基、4−n−オクチルフェニル基、4−(2−エチルヘキシル)フェニル基、2,3−ジメチルフェニル基、2,4−ジメチルフェニル基、2,5−ジメチルフェニル基、2,6−ジメチルフェニル基、3,4−ジメチルフェニル基、3,5−ジメチルフェニル基、2,4−ジ第三ブチルフェニル基、2,5−ジ第三ブチルフェニル基、2,6−ジ−第三ブチルフェニル基、2,4−ジ第三ペンチルフェニル基、2,5−ジ第三アミルフェニル基、2,5−ジ第三オクチルフェニル基、ビフェニル基、2,4,5−トリメチルフェニル基等が挙げられ、炭素数7〜18のアリールアルキル基としては、例えば、ベンジル基、フェネチル基、2−フェニルプロパン−2−イル基、ジフェニルメチル基等が挙げられる。
【0016】
前記一般式(1)において、R及びRで表される炭素原子数3〜8のアルケニル基としては、例えば、直鎖及び分岐のプロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基が不飽和結合の位置によらず挙げられる。
【0017】
が炭素数1〜12のアルキル基又は炭素数3〜8のアルケニル基を表す場合、ベンゼン環の3位に置換されていることが好ましい。
【0018】
前記一般式(1)で表されるトリアジン化合物として、好ましくは、以下のような化合物No.1〜No.11である。
【0019】
【化2】

化合物No.1
【0020】
【化3】

化合物No.2
【0021】
【化4】

化合物No.3
【0022】
【化5】

化合物No.4
【0023】
【化6】

化合物No.5
【0024】
【化7】

化合物No.6
【0025】
【化8】

化合物No.7
【0026】
【化9】

化合物No.8
【0027】
【化10】

化合物No.9
【0028】
【化11】

化合物No.10
【0029】
【化12】

化合物No.11
【0030】
前記一般式(1)で表されるトリアジン化合物として、より好ましくは、2,6−ジフェニル−4−(2−ヒドロキシ−4−ヘキシルオキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−6−(2−ヒドロキシ−4−n−オクチルオキシフェニル)−1,3,5−トリアジン又は2,4−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−6−(2−ヒドロキシ−4−イソ−オクチルオキシフェニル)−1,3,5−トリアジンであり、更に好ましくは、2,4−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−6−(2−ヒドロキシ−4−n−オクチルオキシフェニル)−1,3,5−トリアジン及び/又は2,4−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−6−(2−ヒドロキシ−4−イソ−オクチルオキシフェニル)−1,3,5−トリアジンである。また、トリアジン系紫外線吸収剤は2種以上を混合して用いてもよい。
【0031】
また、好ましいトリアジン系紫外線吸収剤としては、日本サイテック インダストリーズ(株)社製「サイアソーブUV−1164(化合物No.10)、1164G(化合物No.11)、株式会社ADEKA社製T712、LA46(化合物No.2)等が挙げられる。
【0032】
プロピレン系樹脂組成物に含まれるプロピレン系樹脂とトリアジン系紫外線吸収剤との含有量として、紫外線吸収性能の発現とフィルム成形性の観点から、好ましくは、プロピレン系樹脂が95.5〜99.85重量%であり、トリアジン系紫外線吸収剤が0.15〜4.5重量%であり、より好ましくは、プロピレン系樹脂が99.2〜99.7重量%であり、トリアジン系紫外線吸収剤が0.3〜0.8重量%である(但し、プロピレン系樹脂とトリアジン系紫外線吸収剤との合計の重量を100重量%とする。)。
【0033】
プロピレン系樹脂組成物には、トリアジン系紫外線吸収剤以外の他の紫外線吸収剤を含んでいてもよく、他の紫外線吸収剤としては、例えば、分子量が400以上であるベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤等が挙げられる。トリアジン系紫外線吸収剤以外の他の紫外線吸収剤を含む場合のプロピレン系樹脂とトリアジン系紫外線吸収剤と他の紫外線吸収剤との含有量として、好ましくは、プロピレン系樹脂が90.5〜99.75重量%であり、トリアジン系紫外線吸収剤が0.15〜4.5重量%であり、他の紫外線吸収剤が0.1〜1.0重量%である。
【0034】
分子量が400以上であるベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤として、好ましくは、2,2−メチレンビス〔6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノール〕(分子量:664)〔株式会社ADEKA社製LA−31等〕または2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4,6−ビス(1−メチル−1−フェニルエチル)フェノール(分子量:447)〔BASFジャパン社製TINUVIN234等〕である。
【0035】
また、プロピレン系樹脂組成物には、本発明の効果を著しく抑制しない範囲で、プロピレン系樹脂とトリアジン系紫外線吸収剤の他に、1種類以上の添加剤を含んでいてもよい。添加剤としては、例えば、中和剤、酸化防止剤、加工安定剤、造核剤、透明化核剤、帯電防止剤、滑剤、加工助剤、金属石鹸、着色剤(カーボンブラック、酸化チタンなどの顔料)、発泡剤、抗菌剤、可塑剤、難燃剤、架橋剤、架橋助剤、高輝度化剤等が挙げられる。酸化防止剤としては、例えば、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤、ヒンダードアミン系光安定剤等が挙げられ、また、1分子中にたとえば、フェノール系の酸化防止機構とリン系の酸化防止機構とを併せ持つユニットを有する複合型の酸化防止剤も用いることができる。中でも酸化防止剤が好ましく用いられる。例えば、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、ヒドロキシルアミン系酸化防止剤等が挙げられる。特に好ましくは、フェノール系酸化防止剤が用いられる。
【0036】
本発明で用いるプロピレン系樹脂は、JIS K7210に準拠して、温度230℃、荷重21.18Nで測定されるメルトフローレイト(MFR)が0.1〜200g/10分の範囲内であることが好ましく、0.5〜15g/10分の範囲内であることがより好ましい。MFRがこの範囲内にあるプロピレン系樹脂を用いることにより、押出機に大きな負担をかけることなく、均一なポリプロピレン樹脂製フィルムを得ることができる。
【0037】
本発明で用いるプロピレン樹脂組成物は、プロピレン系樹脂と紫外線吸収剤とを混練して得ることができる。混練方法としては、一軸押出機、二軸押出機、ハンバリーミキサー、熱ロール等の混練機を用いる方法が挙げられる。押出機には、フィルターを装着して使用することが好ましい。
【0038】
本発明のポリプロピレン樹脂製フィルムは、前記のプロピレン系樹脂組成物を溶融押出することによって得られたフィルムを、50(℃)以上、該プロピレン樹脂組成物の融解主ピーク温度(℃)以下の温度で熱処理して得られる。熱処理の温度として、フィルムの透明性を維持する観点から、好ましくは、55(℃)〜100(℃)である。溶融押出する方法としては、Tダイ法およびインフレーション法等の公知の方法を用いることが可能であるが、透明性の高いフィルムを得る観点から、Tダイ法が好ましい。
【0039】
Tダイ法によってポリプロピレン樹脂製フィルムを成形する場合の押出温度は、220℃〜280℃が好ましく、240℃以上270℃以下がより好ましい。成形時の冷却ロール温度は低いほど得られるフィルムの透明性は向上する傾向にあるが、作業環境の湿度によってロールへの結露が発生する恐れがあるため、10℃〜40℃が好ましく、15℃〜25℃がより好ましい。
【0040】
本発明のポリプロピレン樹脂製フィルムの厚さは、10〜200μmが好ましく、20〜100μmがより好ましい。
【0041】
本発明のポリプロピレン樹脂製フィルムを偏光板の保護フィルム、位相差フィルム、視野角拡大フィルム等の光学用途に用いる場合、該フィルムは透明性に優れていることが好ましく、具体的には、JIS K 7105に従って測定される全ヘイズ値が10%以下、好ましくは7%以下、更に好ましくは2%以下である。
【0042】
本発明のポリプロピレン樹脂製フィルムは、溶融押出することによって得られたフィルムは、熱処理が施される。ここで、前記の溶融押出することによって得られたフィルムは、通常、室温まで冷却された状態のことであり、本発明においては、このように一旦冷却されて冷却固化されたフィルムに対して、熱処理を行う。ここでいう熱処理とは、該フィルムを所定の温度に加熱することを意味し、その方法は任意である。熱処理の方法としては、フィルムを加熱されたロールに接触させる方法、フィルムの雰囲気温度を加熱する方法、フィルムを加熱された液体に接触させる方法、フィルムに加熱された気体または液体を吹き付ける方法、セラミックヒーター等により赤外線をフィルムに照射する方法、等が挙げられる。
【0043】
溶融押出することによって得られたフィルムに施される熱処理は、Tダイ法やインフレーション法で成形されるライン上でフィルム成形後直ちに実施されてもよく、フィルムを巻き取った後に実施されてもよい。フィルムを巻き取った後に熱処理を実施する場合、フィルムを繰り出しながら熱処理が実施されてもよく、巻き取った巻の状態で加熱環境中に保持することによって熱処理が実施されてもよい。巻き取った巻の状態で加熱環境中に保持することによって熱処理が実施される場合、加熱環境としては雰囲気温度が加熱温調されたギアオーブンやエージングルーム等を用いることができる。
【0044】
溶融押出することによって得られたフィルムに施される熱処理の温度は、50℃以上、プロピレン系樹脂組成物の融解主ピーク温度以下の範囲である。熱処理の温度が50℃未満では、紫外線吸収剤のブリードを抑える効果の発現が十分でなく、プロピレン系樹脂組成物の融解種ピーク温度よりも高い温度ではフィルムが溶融するため好ましくない。なお、ここでいう熱処理の温度は、フィルムの到達温度を意味するものであり、ヒーター等の発熱体や熱媒体等の温度を示すものではない。従って、適用する加熱の方法に応じて、加熱時間を加味し、フィルムの温度が所定の温度に達するよう調整を行う必要がある。
【0045】
溶融押出することによって得られたフィルムに施される熱処理の継続時間は、前記の所定の温度範囲において、1秒以上である。
【0046】
溶融押出することによって得られたフィルムの密度として、良好な透明性を発現する観点から、好ましくは、870〜890(kg/m)である。
【0047】
本発明のポリプロピレン樹脂製フィルムとして、紫外線吸収剤のブリードを抑える効果の発現と透明性を維持する観点から、好ましくは、熱処理後のフィルムの密度が熱処理前のフィルムの密度に対して1〜40(kg/m)高いことである。ここで、熱処理後のフィルムの密度とは、熱処理を24時間行った後のフィルムの密度のことであり、例えば、熱処理温度を60℃で行う場合は、60℃で24時間熱処理を行った後に得られたフィルムの密度のことであり、熱処理温度を80℃で行う場合は、80℃で24時間熱処理を行った後に得られたフィルムの密度のことである。
【0048】
本発明のポリプロピレン樹脂製フィルムは、光学用ポリプロピレン樹脂製フィルムであることが好ましい。
【0049】
また、本発明のポリプロピレン樹脂製フィルムの製造方法は、プロピレン系樹脂とトリアジン系紫外線吸収剤とを含むプロピレン系樹脂組成物を、溶融押出することによって、フィルムを得る工程(工程1)、および該フィルムを、50(℃)以上、該プロピレン系樹脂組成物の融解主ピーク温度(℃)以下の温度で熱処理して、ポリプロピレン樹脂製フィルムを得る工程(工程2)を含む。
【実施例】
【0050】
以下、実施例により具体的に説明する。
【0051】
[評価項目]
(メルトフローレート(MFR、単位:g/10分))
JIS K7210に従い、条件−14の方法で測定した。
【0052】
(融解主ピーク温度)
パーキンエルマー社製の示差走査熱量計を用いて、試料10mgを入れた容器を窒素雰囲気下で220℃で5分間保持し、試料を溶融させた。次いで、220℃から40℃まで、5℃/分の降温速度で降温させた。その後、40℃から180℃まで、5℃/分の昇温速度で昇温させて融解吸熱カーブを得た。得られた融解吸熱カーブの主ピークのピーク温度を、該試料の融解主ピーク温度(Tm)とした。なお、該示差走査熱量計を用いて5℃/分の昇温速度で測定したインジウム(In)の融点は156.6℃であった。
(ブリード性)
ポリプロピレン樹脂製フィルムを300mm×200mmのサイズに切り抜き、これをステンレス製の枠に固定した。このサンプルを、温度が60℃、湿度が90%RHの恒温恒湿環境中に、フィルム表面が自由表面となる状態で保存した。所定の時間を経過するごとにサンプルを取り出してフィルムの状態を観察し、紫外線吸収剤のブリードの有無を確認した。紫外線吸収剤がブリードしたフィルム表面は白化部として観察される。評価基準は下記の通りとした。
◎: 紫外線吸収剤のブリードは全く観察されない
○: フィルム上の部位によって僅かに紫外線吸収剤のブリードが観察される
×: 紫外線吸収剤のブリードが観察される
(フィルムの密度)
JIS−K7112−D法に示される、密度勾配管法を用いてフィルムの密度を測定した。
【0053】
[マスターバッチの作成]
プロピレン系樹脂(プロピレン単独重合体、MFR8g/10分、Tm163℃、CXS0.4重量%)が90重量%、紫外線吸収剤が10重量%となるようにこれらを配合し、さらにプロピレン系樹脂と紫外線吸収剤の合計100重量部に対して、フェノール系酸化防止剤0.15重量部を添加した。これら3成分の混合物をシリンダー径50mmの押出機にて溶融混練してストランドを作成し、冷却、カットして約2mmのマスターバッチペレットを作成した。(マスターバッチの紫外線吸収剤濃度は10重量%)
トリアジン系紫外線吸収剤としては、日本サイテック インダストリーズ(株)社製「サイアソーブUV−1164」 (2,4−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−6−(2−ヒドロキシ−4−n−オクチルオキシフェニル)−1,3,5−トリアジン)を用いた。
【0054】
[実施例1]
Tダイ法を用いてフィルム成形を行った。トリアジン系紫外線吸収剤のマスターバッチが10重量%、プロピレン系樹脂(プロピレン単独重合体、MFR8g/10分、Tm163℃、CXS0.4重量%)が90重量%となるようにこれらを混合し、シリンダー径50mmの単軸押出機へ供給し、樹脂温度275℃、引取り速度 8m/分、冷却ロール20℃でエアーチャンバーを用いて押出成形を行い、平均厚さ75μmのフィルムを得た。得られたフィルムは紙製のコアに巻き取った。このフィルムの密度は886(kg/m)であった。また、このフィルムのTmは163(℃)であった。
この巻フィルムを、巻形態のまま、雰囲気温度が60℃に保たれたギアオーブン中に24時間保管した。次に、フィルムを巻から繰り出して所定のサイズに切り抜き、紫外線吸収剤のブリード評価を行った。結果を表1に示す。
【0055】
[実施例2]
雰囲気温度を80℃とした他は、実施例1と同様に評価を行った。結果を表1に示す。
【0056】
[比較例1]
雰囲気温度を23℃とした他は、実施例1と同様に評価を行った。結果を表1に示す。なお、雰囲気温度を23℃とは、実質的に熱処理を実施せず、室温で保管することを意味する。
【0057】
[比較例2]
雰囲気温度を40℃とした他は、実施例1と同様に評価を行った。結果を表1に示す。
【0058】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロピレン系樹脂とトリアジン系紫外線吸収剤とを含むプロピレン系樹脂組成物を溶融押出することによって得られたフィルムを、50(℃)以上、該プロピレン系樹脂組成物の融解主ピーク温度(℃)以下の温度で熱処理してなるポリプロピレン樹脂製フィルム。
【請求項2】
プロピレン系樹脂がプロピレン単独重合体である請求項1に記載のポリプロピレン樹脂製フィルム。
【請求項3】
溶融押出することによって得られたフィルムの密度が870〜890(kg/m)であり、熱処理後のフィルムの密度が熱処理前のフィルムの密度に対して1〜40(kg/m)高い請求項1または2に記載のポリプロピレン樹脂製フィルム。
【請求項4】
光学用ポリプロピレン樹脂製フィルムである請求項1〜3いずれかに記載のポリプロピレン樹脂製フィルム。
【請求項5】
プロピレン系樹脂とトリアジン系紫外線吸収剤とを含むプロピレン系樹脂組成物を、溶融押出することによって、フィルムを得る工程(工程1)、および該フィルムを、50(℃)以上、該プロピレン系樹脂組成物の融解主ピーク温度(℃)以下の温度で熱処理して、ポリプロピレン樹脂製フィルムを得る工程(工程2)を含むポリプロピレン樹脂製フィルムの製造方法。

【公開番号】特開2012−162643(P2012−162643A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−23789(P2011−23789)
【出願日】平成23年2月7日(2011.2.7)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】