説明

ポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子の製造方法

【課題】 ポリオレフィン系樹脂粒子を含む水系分散物を耐圧容器から放出するポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子の製造方法において、放出後の耐圧容器内の残存樹脂粒子を減少させ、特に帯電防止性を有するポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子を効率よく製造すること
【解決手段】 ポリオレフィン系樹脂100重量部に対し、特定のヒドロキシアルキルモノエタノールアミンを0.05重量部以上5重量部以下含んでなるポリオレフィン系樹脂粒子を、耐圧容器内にpH2以上6以下の水系分散媒、分散剤としてリン酸カルシウム塩、発泡剤とともに仕込み水系分散物となし、該ポリオレフィン系樹脂粒子の融点−20℃以上融点+20℃以下の温度範囲で加圧することにより該ポリオレフィン系樹脂粒子に発泡剤を含有させ、該水系分散物を耐圧容器内よりも低圧の雰囲気下に放出することを特徴とするポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は型発泡成形に好適なポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子の製造方法に関する。さらに詳しくは、生産効率が低くなりやすい帯電防止性を有するポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子を、高い効率で生産しうる製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子の製造方法としては、揮発性発泡剤を含有する重合体粒子密閉容器内で水に分散させ、容器内の圧力を該発泡剤蒸気圧あるいはそれ以上の圧力に保持しながら該重合体の軟化温度以上に加熱した後、容器内の水面下の一端を開放し、重合体粒子と水とを同時に容器内よりも低圧の雰囲気下に放出することを特徴とする技術が提案されている(特許文献1)。また炭酸ガス、窒素、空気などの無機ガスを発泡剤として使用する技術が開示されている(特許文献2)。
【0003】
さらに帯電防止性能を有するポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子およびその製造方法としては、ヒドロキシモノエタノールアミンを含有するポリオレフィン系樹脂を、揮発性発泡剤を用いて製造する技術が開示されている(特許文献3)。またヒドロキシアルキルエタノールアミンとトリアジン骨格を有する化合物を含有させたポリオレフィン系樹脂を水を発泡剤として製造する技術が開示されている(特許文献4)。さらにノニオン系界面活性剤を含有するポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子を無機ガスを発泡剤として製造する技術が開示されている(特許文献5)。
【0004】
しかしこれらの技術で多く用いられる耐圧容器内から水系分散物を放出する製造方法では、耐圧容器内のポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子を全量安定して放出することはできず、一部が放出しきれずに缶内に残ってしまい、生産効率の面で課題があった。特に帯電防止剤を含有するポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子を製造する場合はこの影響が顕著であり、おおむね帯電防止剤を含有しない場合に比べ5倍程度も缶内に残ってしまう問題があった。
【特許文献1】特開昭52−77174号公報
【特許文献2】特開昭60−245650号公報
【特許文献3】特開平8−12798号公報
【特許文献4】WO2005−080486号公報
【特許文献5】特開平7−304895号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、ポリオレフィン系樹脂粒子を含む水系分散物を耐圧容器から放出するポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子の製造方法において、放出後の耐圧容器内の残存樹脂粒子を減少させ、特に帯電防止性を有するポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子を効率よく製造することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、帯電防止剤を含有するポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子の製造方法において、耐圧容器内に残る粒子量を減らす検討を行った結果、特定の帯電防止剤と炭酸ガス系発泡剤を用いること、或いは、炭酸ガス系発泡剤を用いずとも、水系分散媒のpHを一定の範囲にすることで、缶内残粒子を劇的に減少できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
即ち本発明は、ポリオレフィン系樹脂100重量部に対し、一般式(1):
【0008】
【化3】

(式中、Rは炭素数8以上22以下のアルキル基)で示されるヒドロキシアルキルモノエタノールアミンを0.05重量部以上5重量部以下含んでなるポリオレフィン系樹脂粒子を、耐圧容器内にpH2以上6以下の水系分散媒、分散剤としてリン酸カルシウム塩、発泡剤とともに仕込み水系分散物となし、該ポリオレフィン系樹脂粒子の融点−20℃以上融点+20℃以下の温度範囲で加圧することにより該ポリオレフィン系樹脂粒子に発泡剤を含有させ、該水系分散物を耐圧容器内よりも低圧の雰囲気下に放出することを特徴とするポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子の製造方法に関する。
【0009】
本発明の別の態様としては、ポリオレフィン系樹脂100重量部に対し、一般式(1):
【0010】
【化4】

(式中、Rは炭素数8以上22以下のアルキル基)で示されるヒドロキシアルキルモノエタノールアミンを0.05重量部以上5重量部以下含有するポリオレフィン系樹脂粒子を、耐圧容器内に水系分散媒、分散剤としてリン酸カルシウム塩、炭酸ガス系発泡剤とともに仕込み水系分散物となし、該ポリオレフィン系樹脂粒子の融点−20℃以上融点+20℃以下の温度範囲で加圧することにより該ポリオレフィン系樹脂粒子に発泡剤を含有させ、該水系分散物を耐圧容器内よりも低圧の雰囲気下に放出することを特徴とするポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子の製造方法に関する。
【0011】
好ましい態様としては、
(1)リン酸カルシウム塩が、第三リン酸カルシウムである、
(2)ポリオレフィン系樹脂が、エチレン−プロピレンランダム共重合体、ブテン−1−プロピレンランダム共重合体、エチレン−ブテン−1−プロピレンランダム3元共重合体、直鎖状低密度ポリエチレンの少なくとも1種以上であることを特徴とする、
(3)前記ポリオレフィン系樹脂粒子が、ポリオレフィン系樹脂100重量部に対し、さらに有機顔料を0.001重量部以上0.1重量部以下含有することを特徴とする、
前記記載のポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子の製造方法に関する。
【0012】
更に本発明は、前記記載の製造方法を用いて得られるポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子を型内発泡成形してなる発泡成形体に関する。
【発明の効果】
【0013】
本発明により、ポリオレフィン系樹脂粒子を耐圧容器から水系分散物として放出するポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子の製造方法において、放出後の耐圧容器内の残存樹脂粒子を減少させ、特に帯電防止性を有するポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子を効率よく製造することができる。
【0014】
また、残存樹脂粒子の減少だけではなく、通常、耐圧容器内の内壁に残る分散剤残渣が見られず、洗浄の必要が無いほど綺麗になり、生産工程が効率的になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明におけるポリオレフィン系樹脂は、主モノマーとしてオレフィン系単量体を含んでなるものであり、たとえば、エチレン−プロピレンランダム共重合体、ブテン−1−プロピレンランダム共重合体、エチレン−ブテン−1−プロピレンランダム3元共重合体、エチレン−プロピレンブロック共重合体、ホモポリプロピレンなどのポリプロピレン系樹脂;低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体などのポリエチレン系樹脂;ポリブテン、ポリペンテンなどがあげられ、これらは単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。
【0016】
これらのうちでも、エチレン−プロピレンランダム共重合体、ブテン−1−プロピレンランダム共重合体、エチレン−ブテン−1−プロピレンランダム3元共重合体、直鎖状低密度ポリエチレンの少なくとも1種以上が型内発泡成形に好適に使用しうるポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子を容易に得られるという点から好ましい。
【0017】
本発明においては前記ポリオレフィン系樹脂に一般式(1):
【0018】
【化5】

(式中、Rは炭素数8以上22以下のアルキル基)で示されるヒドロキシアルキルモノエタノールアミンが加えられる。一般式(1)で示されるヒドロキシアルキルモノエタノールアミンは、一般的には帯電防止剤として使用されている。
【0019】
一般式(1)で示されるヒドロキシアルキルモノエタノールアミンは、得られる型内発泡成形体の帯電防止性を良好にし、かつ成形性、発泡成形体の耐変色性などを良好に維持する効果に加え、本発明の主効果である耐圧容器内に残留する粒子量を激減させる効果がある。
【0020】
前記一般式(1)中のRは炭素数8以上22以下のアルキル基であるが、8未満の場合、あるいは22をこえる場合、帯電防止効果は不充分となる。
【0021】
前記一般式(1)中のRの具体例としては、たとえばオクチル基、ノニル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基のごとき直鎖のアルキル基などがあげられるが、これらに限定されるものではない。
【0022】
本発明におけるポリオレフィン系樹脂100重量部に対する一般式(1)で示されるヒドロキシアルキルモノエタノールアミン(以下、単に、「ヒドロキシアルキルモノエタノールアミン」と称する場合がある)の添加量は0.05重量部以上5重量部以下、好ましくは0.1重量部以上3重量部以下である。前記帯電防止剤の添加量が0.05重量部未満の場合、耐圧容器内残粒子量を低減させる効果が不十分となる。一方、5重量部をこえると、得られる発泡成形体の表面にべとつきが生じやすくなり、またヒドロキシアルキルモノエタノールアミンが耐圧容器内で水系分散媒中への溶出量が増えすぎるため、水系分散物中のポリオレフィン系樹脂粒子同士が互着しやすくなり、ひいては、耐圧容器内残粒子量を低減する効果が減少する。
【0023】
前記帯電防止剤は、たとえば、グリセリン脂肪酸エステル、アルキルジエタノールアミド、ソルビタン脂肪酸エステルなどのノニオン界面活性剤やカチオン界面活性剤あるいは両性界面活性剤などの帯電防止剤と併用して使用しても差し支えない。
【0024】
ポリオレフィン系樹脂と一般式(1)で示されるヒドロキシアルキルモノエタノールアミンとの混合順序、混合の仕方などには特に限定はないが、ポリオレフィン系樹脂の一部と一般式(1)で示されるヒドロキシアルキルモノエタノールアミンとから、まず、前記ヒドロキシアルキルモノエタノールアミン含有率の高いマスターバッチ、たとえば前記ヒドロキシアルキルモノエタノールアミンの含有率が5〜40重量%のマスターバッチを調製し、これと残りのポリオレフィン系樹脂とを混合する方法が前記ヒドロキシアルキルモノエタノールアミンを均一に分散させやすいという点から好ましい。
【0025】
本発明に用いる前記ポリオレフィン系樹脂と一般式(1)で示されるヒドロキシアルキルモノエタノールアミンを含んでなるポリオレフィン系樹脂組成物には、必要に応じて有機顔料を加えてもよい。
【0026】
前記有機顔料としては、たとえばペリレン系、ポリアゾ系の有機顔料が例示されるが、これらに限定されるものではない。
【0027】
前記有機顔料の含有量はポリオレフィン系樹脂100重量部に対し、0.001重量部以上0.1重量部以下の範囲が分散性や帯電防止性の点から好ましい。前記含有量が0.1重量部をこえるとポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子の気泡径が微細となり、該予備発泡粒子から得られる発泡成形体の表面性が劣り、見栄えが悪くなる傾向にある。
【0028】
ポリオレフィン系樹脂と、必要に応じて添加される、帯電防止剤や有機顔料等の添加剤との混合順序、混合の仕方などにはとくに限定はないが、前記ポリオレフィン系樹脂とヒドロキシアルキルモノエタノールアミンの場合と同様、まず添加剤含有率の高いマスターバッチを調製し、これに残りのポリオレフィン系樹脂を混合する方法が添加剤を均一に分散させやすいという点から好ましい。たとえば顔料の場合、顔料含有率が0.1重量%以上5重量%以下のマスターバッチを調製することが好ましい。
【0029】
ポリオレフィン系樹脂は、通常、予備発泡に利用されやすいように、あらかじめ押出機、ニーダー、バンバリーミキサー、ロールなどを用いて溶融し、円柱状、楕円状、球状、立方体状、直方体状などの所望の粒子形状で、その粒子の平均粒径が0.1〜10mm、好ましくは0.5〜5mmになるように成形加工される。その際、ヒドロキシアルキルモノエタノールアミンや必要に応じて添加される帯電防止剤、有機顔料などの添加剤は、通常、樹脂粒子の製造過程において溶融した樹脂中に添加することが好ましい。
【0030】
本発明においては、以上のようにして得られた、ポリオレフィン系樹脂100重量部に対し、一般式(1)で示されるヒドロキシアルキルモノエタノールアミンを0.05重量部以上5重量部以下含んでなるポリオレフィン系樹脂粒子を、耐圧容器内にpH2以上6以下の水系分散媒、分散剤としてリン酸カルシウム塩、発泡剤とともに仕込み水系分散物となし、該ポリオレフィン系樹脂粒子の融点−20℃以上融点+20℃以下の温度範囲で加圧することにより該ポリオレフィン系樹脂粒子に発泡剤を含有させ、該水系分散物を耐圧容器内よりも低圧の雰囲気下に放出することによってポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子を製造するものである。
【0031】
前記耐圧容器には、とくに限定はなく、使用する圧力および温度に耐えられるものであればいずれのものでも使用しうる。前記耐圧容器の具体例としては、たとえばオートクレーブ型の耐圧容器があげられる。
【0032】
前記水系分散媒は特に限定はないが、通常、環境面、経済性などの面から水が好ましい。本発明において水系分散媒のpHは2以上6以下であり、その調整方法について特に限定はないが、代表的には、水に塩酸、クエン酸などの酸を適量添加することにより調整できる。pHが2以上であれば分散剤として加えるリン酸カルシウムがあまり溶解しないため、多量に使用せずとも十分な分散効果が得られる上、金属製耐圧容器を用いる場合に腐食の懸念が少ない。またpHが6以下であれば、水系分散物を耐圧容器内より放出した後の耐圧容器内に残留する樹脂粒子量を減らす効果が十分に得られる。
【0033】
分散剤として使用するリン酸カルシウム塩は特に限定はないが、中でも、第三リン酸カルシウムが、少ない使用量でも水系分散物を安定的に放出させることができるため好ましい。
【0034】
また、少量のドデシルベンゼンスルフォン酸ナトリウム、α−オレフィンスルフォン酸ナトリウムなどの、一般に分散助剤として使用されているアニオン界面活性剤を分散助剤として併用しうる。
【0035】
また、分散剤の使用量についても一般に使用される量であり、ポリオレフィン系樹脂100重量部に対して0.1重量部以上5重量部以下程度である。また、分散助剤を使用する場合の使用量も、ポリオレフィン系樹脂100重量部に対して0.001重量部以上0.3重量部以下程度という一般的な量であるが、とくにこの範囲に制限されるものではない。
【0036】
さらに、水系分散物中におけるポリオレフィン系樹脂粒子の割合も、一般に採用される割合である水100重量部に対して20重量部以上100重量部以下であることが好ましいが、水系分散媒に対する粒子比率が高いほど放出後に残留する量が増える傾向があり、粒子比率が低いほど生産性は低下する傾向がある。
【0037】
なお耐圧容器内に残留する樹脂粒子量が減少するメカニズムに関して詳細は不明だが、水系分散媒のpHが下がることによりヒドロキシアルキルモノエタノールアミンがポリオレフィン系樹脂粒子から溶出しやすくなり、これがリン酸カルシウム塩や樹脂粒子そのものなどと相互作用していると考えられる。
【0038】
前記発泡剤は特に限定はなく、環境面から水、無機ガスとして空気、窒素、炭酸ガス、高い発泡倍率が得られ易いという面から揮発性発泡剤などが挙げられる。なかでも、炭酸ガス系発泡剤を発泡剤として用いた場合、炭酸ガスは水に溶解しpHが下がり、概ね前記範囲となる。炭酸ガスは水系分散媒のpH調整の手間が不要になるため、本発明を代表する態様の一つである。
【0039】
前記ポリオレフィン系樹脂粒子の融点は、示差走査熱量計(たとえばセイコー電子工業(株)製のDSC6200型)を用いてポリオレフィン系樹脂粒子5〜6mgを10℃/minの昇温速度で40℃から220℃まで昇温する事により樹脂粒子を融解し、その後10℃/minで220℃から40℃まで冷却することにより結晶化させた後に、さらに10℃/minで40℃から220℃まで昇温したときに得られるDSC曲線から、2回目の昇温時の融解ピーク温度として求められる。
【0040】
また、耐圧容器内の水系分散物はポリオレフィン系樹脂粒子の融点−20℃以上融点+20℃以下の温度範囲とするが、製造するポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子の原料樹脂種、添加剤、発泡倍率、使用する発泡剤種により、当該範囲内において適宜決められ、当該温度にて加圧して発泡剤が含浸せしめられる。一般に揮発性発泡剤を用いる場合は、加熱温度は低く、無機ガスなどでは加熱温度は高い傾向がある。また高温であるほど得られる予備発泡粒子の発泡倍率が高くなる傾向がある。
【0041】
また、前記耐圧容器内よりも低圧の雰囲気下とは、一般に予備発泡粒子を製造する際に、耐圧容器中の水系分散物を放出する低圧の雰囲気として採用される条件であるかぎりとくに制限はないが、たとえば大気中に放出する際には大気下、揮発性発泡剤を回収するために密閉系内に放出する場合には密閉系内の雰囲気下などのことである。
【0042】
以上のようにして得られる本発明のポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子の大きさは0.3〜10mg/粒であることが好ましい。また、本発明の製造方法によって得られるポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子の発泡倍率は、2〜60倍であることが好ましく、より好ましくは3〜40倍である。ここでいう発泡倍率とは、発泡前の樹脂粒子の密度、予備発泡粒子の重量と水没体積から算出できる真倍率である。
【0043】
前記本発明の製造方法によって得られるポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子の密度は、要すれば使用される充填剤の有無、樹脂密度などによっても異なるが、0.015〜0.5g/mlであることが好ましく、さらには0.022〜0.3g/mlであることが好ましい。
【0044】
本発明の製造方法によって得られたポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子は、型内発泡成形することによって発泡成形体となる。
【0045】
前記ポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子を型内発泡成形に用いる場合には、イ)そのまま用いる方法、ロ)あらかじめ予備発泡粒子中に空気等の無機ガスを圧入し発泡能を付与する方法、ハ)予備発泡粒子を圧縮状態で金型内に充填し成形する方法など、従来既知の方法が使用しうる。
【0046】
本発明で製造されるポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子から発泡成形体を型内発泡成形する方法としては、たとえば閉鎖しうるが密閉し得ない成形型内に前記ポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子を充填し、水蒸気などを加熱媒体として0.05〜0.5MPa程度の加熱水蒸気圧で3〜30秒程度の加熱時間で成形しポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子同士を融着させ、このあと成形金型を水冷により発泡成形体取り出し後の発泡成形体の変形を抑制できる程度まで冷却した後、金型を開き発泡成形体とする方法などが挙げられる。
【0047】
さらに、得られた発泡成形体は各種用途に使用されるが、ヒドロキシアルキルモノエタノールアミンを使用しているため、帯電防止性は高い水準で良好であり、また、該発泡成形体の耐変色性も良好である。
【実施例】
【0048】
次に本発明を実施例および比較例に基づき説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0049】
また実施例及び比較例における評価は下記の方法で行った。
【0050】
(予備発泡粒子の発泡倍率)
嵩体積約50cmのポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子の重量w(g)およびエタノール水没体積v(cm)を求め、発泡前の樹脂粒子の密度d(g/cm)から次式により求める。
予備発泡粒子の発泡倍率=d×v/w
【0051】
(発泡成形体の発泡倍率)
発泡成形体の重量W(g)と発泡成形体の体積(cm)を求め次式により求める。
発泡成形体の発泡倍率=d×V/W
【0052】
(表面固有抵抗)
発泡成形体を温度20℃、湿度65%の室内に90時間保存し、状態を調節したのち、JIS−K6911に準拠し、三菱油化(株)製のハイレスタMCP−HT201を用いて測定し、下記基準にしたがって評価した。
○:1×1011Ω未満
△:1×1011Ω以上1×1012Ω未満
×:1×1012Ω以上
【0053】
(容器内樹脂残留率)
耐圧容器より水系分散物を放出した後、容器内に残留する樹脂粒子量m(g)と初期に耐圧容器に仕込んだ樹脂粒子量m0(g)から次式により算出した
容器内樹脂残留率(%)=m/m0×100
【0054】
(容器内の状態)
耐圧容器内より水系分散物を放出した後、耐圧容器内の状態を目視で確認し、下記基準に従って評価した。
○:分散剤の残渣がほとんど見られず、金属光沢がある
△:分散剤の残渣が若干残り、金属表面が白くコーティングされたように見える
×:分散剤の残渣が多量に残り、強固な洗浄が必要
【0055】
(実施例1〜4)
フェノール系酸化防止剤(BHT)0.2重量部を含有するエチレン含有率3.6重量%、MI6.0g/10分のエチレン−プロピレンランダム共重合体100重量部と、表1に示す種類、量のヒドロキシアルキルモノエタノールアミン(R=10:50%、R=12:50%)と有機顔料(商品名:ピグメントレッド)と、ポリエチレングリコール0.5重量部、タルク0.1重量部を混合し、50mmφの押出機で混練(220℃)したのち、造粒し、樹脂粒子(1.2mg/粒)を製造した。得られた樹脂粒子の融点は142℃であった。
【0056】
300リットル耐圧容器に、水300重量部、得られた樹脂粒子100重量部、分散剤として第三リン酸カルシウム1.0重量部および分散助剤としてノルマンパラフィンスルフォン酸ソーダ0.05重量部とを仕込み、さらに、炭酸ガスを10重量部仕込み、撹拌下、表1に示す温度および内圧で30分間保持したのち、耐圧容器内を炭酸ガスで前記内圧に保持しながら耐圧容器の下部に設けた3mmφオリフィスを通して水系分散物を大気圧下に放出し、予備発泡粒子をえた。そののち水で洗浄し、乾燥させた。
【0057】
【表1】

得られた予備発泡粒子の発泡倍率、容器内樹脂残留率、容器内の状態を評価した結果を表2に示す。
【0058】
【表2】

次に、得られた予備発泡粒子を1mの耐圧容器に仕込み、0.5MPaに加圧し、5時間保持して予備発泡粒子の内圧を0.1MPaに高めたのち450mm×300mm×50mmの金型に充填し、発泡粒子同士を0.3MPaの水蒸気にて加熱、融着させ、発泡成形体を得、金型から取り出した。金型から取り出した発泡成形体を70℃の乾燥器中で24時間乾燥、養生したのち、発泡成形体の物性を測定した。結果を表2に示す。
【0059】
(実施例5)
フェノール系酸化防止剤(BHT)0.2重量部を含有するエチレン含有率2.8重量%、MI8.0g/10分のエチレン−プロピレンランダム共重合体100重量部と、表1に示す種類、量のヒドロキシアルキルモノエタノールアミン(R=10:50%、R=12:50%)と有機顔料(商品名:ピグメントレッド)と、メラミン0.5部、タルク0.3重量部を混合し、50mmφの押出機で混練(220℃)したのち、造粒し、樹脂粒子(1.2mg/粒)を製造した。この樹脂粒子の融点は148℃であった。
【0060】
300リットル耐圧容器に、塩酸を用いてpH3.5に調整した水300重量部、得られた樹脂粒子100重量部、分散剤として第三リン酸カルシウム0.5重量部および分散助剤としてノルマンパラフィンスルフォン酸ソーダ0.02重量部とを仕込み、撹拌下、表1に示す温度とし、さらに空気で加圧することにより表1記載の内圧とした上で30分間保持したのち、耐圧容器内を空気で前記内圧に保持しながら耐圧容器の下部に設けた3mmφオリフィスを通して水系分散物を圧力0.05MPaの飽和水蒸気圧下に放出し、予備発泡粒子をえた。そののち水で洗浄し、乾燥させた。
【0061】
得られた予備発泡粒子の発泡倍率、容器内樹脂残留率、容器内の状態を評価した結果を表2に示す。
【0062】
次に、得られた予備発泡粒子を1mの耐圧容器に仕込み、0.5MPaに加圧し、3時間保持して予備発泡粒子の内圧を0.1MPaに高めたのち450mm×300mm×50mmの金型に充填し、発泡粒子同士を0.3MPaの水蒸気にて加熱、融着させ、発泡成形体を得、金型から取り出した。金型から取り出した発泡成形体を70℃の乾燥器中で24時間乾燥、養生したのち、発泡成形体の物性を測定した。結果を表2に示す。
【0063】
(実施例6)
フェノール系酸化防止剤(オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)0.15重量部を含有した密度0.93g/cm、MI2.0g/10分の直鎖状低密度ポリエチレン)100重量部と、表1に示す種類、量のヒドロキシアルキルモノエタノールアミン(R:10−50%、12−50%)と有機顔料(商品名:ピグメントレッド)と、タルク0.1重量部を混合し、50mmφの押出機で混練(210℃)したのち造粒し、樹脂粒子(3.0mg/粒)を製造した。この樹脂粒子の融点は、融点124℃であった。
【0064】
300リットル耐圧容器に、塩酸を用いてpH4.5に調整した水300重量部、得られた樹脂粒子100重量部、分散剤として第三リン酸カルシウム2.0重量部および分散助剤としてノルマンパラフィンスルフォン酸ソーダ0.05重量部とを仕込み、さらにイソブタンを15重量部仕込み、撹拌下、表1に示す温度および内圧で30分間保持したのち、耐圧容器内をイソブタンガスで前記内圧に保持しながら耐圧容器の下部に設けた5mmφオリフィスを通して水系分散物を大気圧下に放出し、予備発泡粒子をえた。そののち水で洗浄し、乾燥させた。
【0065】
得られた予備発泡粒子の発泡倍率、容器内樹脂残留率、容器内の状態を評価した結果を表2に示す。
【0066】
つぎに、得られた予備発泡粒子を450mm×300mm×50mmの金型に充填し、予備発泡粒子同士を0.08MPaの水蒸気にて加熱、融着させ、発泡成形体を得、金型から取り出した。金型から取り出した発泡成形体を80℃の乾燥器中で24時間乾燥、養生したのち、発泡成形体の物性(発泡成形体の発泡倍率、表面固有抵抗)を評価した。結果を表2に示す。
【0067】
(比較例1〜3)
フェノール系酸化防止剤(BHT)0.2重量部を含有するエチレン含有率3.6重量%、MI6.0g/10分のエチレン−プロピレンランダム共重合体100部と、表1に示す種類、量の帯電防止剤と有機顔料(商品名:ピグメントレッド)と、ポリエチレングリコール0.5重量部、タルク0.1重量部を混合し、50mmφの押出機で混練(220℃)したのち、造粒し、樹脂粒子(1.2mg/粒)を製造した。この樹脂粒子の融点は、融点142℃であった。
【0068】
300リットル耐圧容器に、水300重量部、得られた樹脂粒子100重量部、分散剤として第三リン酸カルシウム1.0重量部および分散助剤としてノルマンパラフィンスルフォン酸ソーダ0.05重量部とを仕込み、さらに、炭酸ガスを10重量部仕込み、撹拌下、表1に示す温度および内圧で30分間保持したのち、耐圧容器内を炭酸ガスで前記内圧に保持しながら耐圧容器の下部に設けた3mmφオリフィスを通して水系分散物を大気圧下に放出し、予備発泡粒子をえた。そののち水で洗浄し、乾燥させた。
【0069】
得られた予備発泡粒子の発泡倍率、容器内樹脂残留率、容器内の状態を評価した結果を表2に示す。
【0070】
次に、得られた予備発泡粒子を1mの耐圧容器に仕込み、0.5MPaに加圧し、5時間保持して予備発泡粒子の内圧を0.1MPaに高めたのち450mm×300mm×50mmの金型に充填し、発泡粒子同士を0.3MPaの水蒸気にて加熱、融着させ、発泡成形体を得、金型から取り出した。金型から取り出した発泡成形体を70℃の乾燥器中で24時間乾燥、養生したのち、発泡成形体の物性を測定した。結果を表2に示す。
【0071】
(比較例4)
耐圧容器に仕込む分散剤を第三リン酸マグネシウムに変えた以外は実施例1と同様に行った。結果を表2に示す。
【0072】
(比較例5)
耐圧容器に仕込む水のpHを調整しなかった以外は実施例4と同様に行った。結果を表2に示す。
【0073】
(比較例6)
耐圧容器に仕込む水のpHを調整しなかった以外は実施例5と同様に行った。結果を表2に示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオレフィン系樹脂100重量部に対し、一般式(1):
【化1】

(式中、Rは炭素数8以上22以下のアルキル基)で示されるヒドロキシアルキルモノエタノールアミンを0.05重量部以上5重量部以下含んでなるポリオレフィン系樹脂粒子を、耐圧容器内にpH2以上6以下の水系分散媒、分散剤としてリン酸カルシウム塩、発泡剤とともに仕込み水系分散物となし、該ポリオレフィン系樹脂粒子の融点−20℃以上融点+20℃以下の温度範囲で加圧することにより該ポリオレフィン系樹脂粒子に発泡剤を含有させ、該水系分散物を耐圧容器内よりも低圧の雰囲気下に放出することを特徴とするポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子の製造方法。
【請求項2】
ポリオレフィン系樹脂100重量部に対し、一般式(1):
【化2】

(式中、Rは炭素数8以上22以下のアルキル基)で示されるヒドロキシアルキルモノエタノールアミンを0.05重量部以上5重量部以下含有するポリオレフィン系樹脂粒子を、耐圧容器内に水系分散媒、分散剤としてリン酸カルシウム塩、炭酸ガス系発泡剤とともに仕込み水系分散物となし、該ポリオレフィン系樹脂粒子の融点−20℃以上融点+20℃以下の温度範囲で加圧することにより該ポリオレフィン系樹脂粒子に発泡剤を含有させ、該水系分散物を耐圧容器内よりも低圧の雰囲気下に放出することを特徴とするポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子の製造方法。
【請求項3】
リン酸カルシウム塩が、第三リン酸カルシウムである請求項1または2記載のポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子の製造方法。
【請求項4】
ポリオレフィン系樹脂が、エチレン−プロピレンランダム共重合体、ブテン−1−プロピレンランダム共重合体、エチレン−ブテン−1−プロピレンランダム3元共重合体、直鎖状低密度ポリエチレンの少なくとも1種以上であることを特徴とする請求項1から3何れか一項記載のポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子の製造方法。
【請求項5】
前記ポリオレフィン系樹脂粒子が、ポリオレフィン系樹脂100重量部に対し、さらに有機顔料を0.001重量部以上0.1重量部以下含有することを特徴とする請求項1から4何れか一項に記載のポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子の製造方法。
【請求項6】
請求項1から5何れか一項に記載の製造方法を用いて得られるポリオレフィン系樹脂予備発泡粒子を型内発泡成形してなる発泡成形体。

【公開番号】特開2009−215438(P2009−215438A)
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−60978(P2008−60978)
【出願日】平成20年3月11日(2008.3.11)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】