説明

ポリプロピレン系樹脂発泡粒子、及びその発泡粒子成形体

【課題】 ポリプロピレン系樹脂発泡粒子成形体の特徴である靭性、耐熱性、易焼却性、易リサイクル性などの優れた性質を損なうことなく、低い加熱温度における型内成形でも優れた物性を有するポリプロピレン系樹脂発泡粒子成形体を安定的に得ることが可能なポリプロピレン系樹脂発泡粒子を提供する。
【解決手段】 発泡粒子1〜3mgを試験片としてJIS K7121(1987年)に記載されている熱流束示差走査熱量測定法に基づいて、10℃/分の昇温速度で200℃まで昇温した後に、10℃/分の冷却速度で30℃まで降温し、再度10℃/分の昇温速度で30℃から200℃まで昇温した際に得られるDSC曲線により定まる樹脂融点が120℃以上140℃未満のポリプロピレン系樹脂発泡粒子であって、該発泡粒子を耐圧容器内で前記樹脂融点より5℃低い温度の飽和水蒸気により10秒間加熱した際に、加熱前後の発泡粒子の見かけ密度比[(加熱前の発泡粒子の見かけ密度)/(加熱後の発泡粒子の見かけ密度)]が1.5を超えない、ことを特徴とするポリプロピレン系樹脂発泡粒子。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子、及びこれを型内成形して得られる発泡粒子成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリプロピレン系樹脂はその機械強度、耐熱性、加工性、価格等のバランスに優れていること及び易焼却性、易リサイクル性等の優れた性質を有することから種々の分野で使用されている。また、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子を型内成形して得られる発泡粒子成形体は、上記ポリプロピレン系樹脂の優れた性質を損なうことなく更に、緩衝性、断熱性、軽量性等の特性を付加できるため、包装材料、建築材料、車輌用衝撃吸収材料等に広く使用されてきている。
【0003】
ポリプロピレン系樹脂発泡粒子を型内発泡成形して得られるポリプロピレン系樹脂発泡粒子成形体は類似の用途に使用されるポリスチレン系樹脂発泡粒子成形体と比較して、一般に耐熱性、耐薬品性、靭性、圧縮歪回復性等に優れている。一方、型内成形の際に、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子を二次発泡させると共に該発泡粒子を相互に融着させるためには、ポリスチレン系樹脂発泡粒子の型内成形条件に比べてより高温の加熱、すなわちより高い飽和蒸気圧の水蒸気による加熱が必要であった。そのため、高耐圧仕様の金型と高いプレス圧の専用の成形機が必要となり、それに伴い使用するエネルギーコストも大きなものであった。
【0004】
このような問題点の解決法として、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子表面をより低融点の異種樹脂で被覆する方法が開示されている(例えば、特許文献1)。この被覆に用いられる装置は複雑でかつ工程も煩雑であり、型内成形時における樹脂粒子の相互融着性は向上するものの、発泡粒子内部の二次発泡性が不十分であるため外観において改善の余地が残されていた。この問題点を解決するためには、二次発泡性を高めることを目的として発泡粒子内部の圧力を大きく高める内圧付与工程、高圧縮比での型内成形、又は当初の目的に反する成形圧力の引き上げが必要であった。
【0005】
他の問題点の解決法として、比較的低融点のポリプロピレン系樹脂を基材樹脂として用いる方法、例えば、メタロセン系重合触媒を使用して重合されたポリプロピレン系樹脂を基材樹脂として使用したポリプロピレン系樹脂発泡粒子が開示されている(例えば、特許文献2及び3)。一般に、メタロセン系重合触媒存在下で重合されたポリプロピレン系樹脂は、従来のチーグラー・ナッタ系触媒存在下で重合されたポリプロピレン系樹脂に比べて低融点となる傾向がある。しかし、メタロセン系重合触媒存在下に重合された前記特許文献記載のポリプロピレン系樹脂発泡粒子を使用した場合でも、型内成形時に加熱媒体として必要な水蒸気の飽和蒸気圧力の低減化、型内成形にて得られる発泡粒子成形体の外観性、発泡粒子相互の融着性等の成形安定性の点から改良の余地を残すものであった。
【0006】
また、ポリプロピレン系樹脂にビニル系単量体を含浸させて、グラフト重合して得られる、(ポリプロピレン系樹脂含有量/ビニル系単量体からなる重合体含有量)比が97〜65重量%/3〜35重量%である変性ポリプロピレン系樹脂を基材樹脂として用いた無架橋発泡粒子が知られている(例えば、特許文献4)。このポリプロピレン系樹脂粒子にビニル系単量体を含浸させてグラフト重合して得られる発泡粒子の耐熱性能は、融点あるいはガラス転移温度などの高分子ポリマー特有の状態転移に依存する傾向があり、融点の低いポリプロピレン系樹脂を選定することにより、型内成形する際に加熱用水蒸気の飽和蒸気圧力を下げることは可能であると考えられるが、耐熱性を維持する上で問題点を残すものであった。
【0007】
更に、融点の異なる二種のポリプロピレン系樹脂を混合して使用する方法も提案されている。例えば、融点の温度差が15〜30℃の二種類のポリプロピレン系樹脂を混合した、メルトインデックス(JIS K7210(1999年)試験条件M(温度230℃、荷重2.16kg)に準拠した測定値)が3〜20(g/10分)であるポリプロピレン系樹脂を基材樹脂とした発泡倍率が10〜50倍のポリプロピレン系樹脂発泡粒子が報告されている(特許文献5)。しかし提案されたポリプロピレン系樹脂発泡粒子の型内成形の際には、140℃を超える加熱温度が必要であり、加熱媒体として高い飽和蒸気圧力の水蒸気を用いる必要があった。
【0008】
【特許文献1】特開2000−894号公報
【特許文献2】特開平6−240041号公報
【特許文献3】特開2001−431151号公報
【特許文献4】特開平10−292064号公報
【特許文献5】特開2006−96805号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子成形体の特徴である靭性、耐熱性、易焼却性、易リサイクル性などの優れた性質を損なうことなく、低い加熱温度における型内成形でも優れた物性を有するポリプロピレン系樹脂発泡粒子成形体を安定的に得ることが可能なポリプロピレン系樹脂発泡粒子、及びこれを型内成形して得られる発泡粒子成形体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記問題点を解決するために、発泡粒子の示差走査熱量測定におけるDSC曲線、及び型内成形前後の見かけ密度比と、発泡粒子の型内成形時の挙動、並びに該発泡粒子を型内成型して得られる発泡粒子成形体の機械的物性との関係について検討を行ったところ、発泡粒子の示差走査熱量測定におけるDSC曲線の融解ピークの頂点温度と、発泡粒子の型内成形時の二次発泡前後の見かけ密度等を制御することにより、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子の優れた物性を損なうことなく、発泡粒子の型内成形温度範囲を低温側に広げて、かつ安定的に優れた物性を有する発泡粒子成形体が得られることを見出し、本発明を完成させた。また、更に発泡粒子の基材樹脂として、それぞれ特定範囲の融点を有し、かつ該融点の差が一定範囲にある2種類のポリプロピレン系樹脂を特定割合に配合した混合樹脂を使用することにより、単独のポリプロピレン系樹脂を選択して使用しなくても比較的容易に上記の効果と同様の効果を有する発泡粒子、及びその発泡粒子成形体が得られることを見出した。
【0011】
即ち本発明は、以下の(1)ないし(5)に示すポリプロピレン系樹脂発泡粒子(以下、第1の態様ということがある。)、及び該ポリプロピレン系樹脂発泡粒子を型内成形して得られる、以下の(6)に示す発泡粒子成形体(以下、第2の態様ということがある。)を提供するものである。
(1)発泡粒子1〜3mgを試験片としてJIS K7121(1987年)に記載されている熱流束示差走査熱量測定法に基づいて、10℃/分の昇温速度で200℃まで昇温した後に、10℃/分の冷却速度で30℃まで降温し、再度10℃/分の昇温速度で30℃から200℃まで昇温した際に得られるDSC曲線により定まる樹脂融点が120℃以上140℃未満のポリプロピレン系樹脂発泡粒子(b)であって、該発泡粒子(b)を耐圧容器内で前記樹脂融点より5℃低い温度の飽和水蒸気により10秒間加熱した際に、加熱前後の発泡粒子の見かけ密度比(ρ)[(加熱前の発泡粒子の見かけ密度)/(加熱後の発泡粒子の見かけ密度)]が1.5を超えない、
ことを特徴とするポリプロピレン系樹脂発泡粒子。
(2)前記ポリプロピレン系樹脂発泡粒子(b)の基材樹脂であるポリプロピレン系樹脂(a)が、融点110℃超135℃以下のポリプロピレン系樹脂(a1)50〜80重量%と、融点125℃以上140℃以下のポリプロピレン系樹脂(a2)50〜20重量%との混合樹脂(但し、ポリプロピレン系樹脂(a1)とポリプロピレン系樹脂(a2)との合計は100重量%である)であり、かつポリプロピレン系樹脂(a1)とポリプロピレン系樹脂(a2)との融点温度差[(a2の融点)−(a1の融点)]が5℃以上15℃未満である、
ことを特徴とする前記(1)に記載のポリプロピレン系樹脂発泡粒子。
(3)前記ポリプロピレン系樹脂(a1)及びポリプロピレン系樹脂(a2)のいずれか一方、又は双方がメタロセン重合触媒存在下に重合して得られたポリプロピレン系樹脂である、
ことを特徴とする前記(2)に記載のポリプロピレン系樹脂発泡粒子。
(4)前記ポリプロピレン系樹脂(a1)及びポリプロピレン系樹脂(a2)の少なくともいずれか一方のメルトフローレイトがJIS K7210(1999年)試験条件M(温度230℃、荷重2.16kg)に基づく測定値で20(g/10分)以上である、
ことを特徴とする前記(2)又は(3)に記載のポリプロピレン系樹脂発泡粒子。
(5)発泡粒子1〜3mgを試験片としてJIS K7122(1987年)に記載されている熱流束示差走査熱量測定法に基づいて、10℃/分の昇温速度で常温から200℃まで昇温した際に得られるDSC曲線において複数の吸熱ピークが現れる発泡粒子(b)であって、該吸熱ピークの内、頂点温度が120℃以上135℃以下を示す吸熱ピークの合計熱量が、全吸熱ピークの合計熱量の50〜90%であることを特徴とする前記(1)ないし(4)のいずれかに記載のポリプロピレン系樹脂発泡粒子。
(6)前記(1)ないし(5)のいずれかに記載のポリプロピレン系樹脂発泡粒子(b)を型内成形してなるポリプロピレン系樹脂発泡粒子成形体。
【発明の効果】
【0012】
第1の態様におけるポリプロピレン系樹脂発泡粒子(b)は、型内成形の際に、成形温度範囲が従来のポリプロピレン系樹脂発泡粒子と比較して低温側に広げることが可能であり、発泡粒子相互の融着性、二次発泡性等に優れるという特徴を有する。
その結果、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子(b)は、従来のポリプロピレン系樹脂発泡粒子では困難であった、低い加熱温度(低い飽和蒸気圧での水蒸気加熱)での型内成形が可能となり、成形機の型締め圧力を低くすることができ、また金型の厚みを薄くすることができるので、成形機や金型をより低圧仕様の設計とすることが可能である。更に、成形設備面でもより安価な設計が可能になると共に、従来のポリプロピレン系樹脂発泡粒子の型内発泡に比べ成形時の大幅なエネルギーコストの削減も可能になる。
また、第1の態様におけるポリプロピレン系樹脂発泡粒子(b)は、型内成形加熱時において、発泡粒子相互間の融着温度を発泡粒子が二次発泡する発泡温度よりも低く制御することにより、発泡粒子相互間の融着が二次発泡に先行して起こるようにすることができることから、加熱蒸気による成形体内部まで均一な加熱状態を達成できることから、通常のポリプロピレン系樹脂発泡粒子では困難であった厚肉成型が可能となり、特に、100mm以上の厚みを有する発泡粒子成形体である厚肉発泡粒子成形体を成型し、これをスライスして使用した場合も内部まで融着不良のないシート状物、或いは板状物を得ることが可能になる。
【0013】
第1の態様のポリプロピレン系樹脂発泡粒子を型内成形して得られる、第2の態様の発泡粒子成形体(c)は、外観、機械的物性等に優れているばかりでなく、成形時の収縮、変形が少ないので寸法安定性にも富み、種々の製品に好適に使用することが可能である。
また、第2の態様における発泡粒子成形体は、既存のポリプロピレン系樹脂発泡粒子成形体よりも柔軟性に富む成形体とすることが可能であるので、複雑なダイカット製品や折り曲げなどの加工を行うような製品にも使用可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の第1の態様である、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子を「ポリプロピレン系樹脂発泡粒子(b)」、又は「発泡粒子(b)」ということがある。
また、本発明のポリプロピレン系樹脂発泡粒子(b)の製造に使用する基材樹脂をポリプロピレン系樹脂(a)ということがあり、ポリプロピレン系樹脂(a)が2種類の樹脂からなる混合物である場合には、融点が110℃超135℃以下である樹脂を「ポリプロピレン系樹脂(a1)」、融点が125℃以上140℃以下である樹脂を「ポリプロピレン系樹脂(a2)」ということがある。
発泡粒子(b)を型内成形して得られるポリプロピレン系樹脂発泡粒子成形体を「ポリプロピレン系樹脂発泡粒子成形体(c)」、又は「発泡粒子成形体(c)」ということがある。
【0015】
〔1〕第1の態様であるポリプロピレン系樹脂発泡粒子(b)について
第1の態様であるポリプロピレン系樹脂発泡粒子(b)は、発泡粒子1〜3mgを試験片としてJIS K7121(1987年)に記載されている熱流束示差走査熱量測定法に基づいて、10℃/分の昇温速度で200℃まで昇温した後に、10℃/分の冷却速度で30℃まで降温し、再度10℃/分の昇温速度で30℃から200℃まで昇温した際に得られるDSC曲線により定まる樹脂融点が120℃以上140℃未満のポリプロピレン系樹脂発泡粒子(b)であって、該発泡粒子(b)を型内で前記樹脂融点より5℃低い温度の飽和蒸気圧の水蒸気により加熱した際に、加熱前後の発泡粒子の見かけ密度比(ρ)[(加熱前の発泡粒子の見かけ密度)/(加熱後の発泡粒子の見かけ密度)]が1.5以下である、ことを特徴とする。
【0016】
本発明のポリプロピレン系樹脂備発泡粒子(b)の基材樹脂であるポリプロピレン系樹脂(a)としては、その重合用単量体がプロピレンを主成分とするものであれば、その組成、合成法に特に制限はなく、例えば、プロピレン単独重合体、プロピレンランダム共重合体、プロピレンブロック共重合体、プロピレングラフト共重合体、及びこれらの混合物などを使用することができるが、その詳細は後述する。
【0017】
(1)ポリプロピレン系樹脂発泡粒子(b)
(イ)ポリプロピレン系樹脂発泡粒子(b)のDSC曲線における樹脂融点
ポリプロピレン系樹脂発泡粒子(b)は、発泡粒子1〜3mgを試験片としてJIS K7121(1987年)に記載されている熱流束示差走査熱量測定法に基づいて、10℃/分の昇温速度で200℃まで昇温した後に、10℃/分の冷却速度で30℃まで降温し、再度10℃/分の昇温速度で30℃から200℃まで昇温した際に得られるDSC曲線(以下、2回目のDSC曲線ということがある。)により定まる樹脂融点が120℃以上140℃未満である。
該樹脂融点は、発泡粒子(b)の型内成形する際の主な物理的性質を支配することになる。ポリプロピレン系樹脂発泡粒子(b)が融点の異なる2種類のポリプロピレン系樹脂からなる場合には、それらの樹脂の融点差により、2回目のDSC曲線に複数の融解に起因する吸熱ピークが形成されることがある。この場合には、後述するある程度の値以上の融解熱量を有する最も高温側の融解ピークの頂点温度がポリプロピレン系樹脂発泡粒子を型内成形する際の主な物理的性質を支配することになる。
【0018】
尚、上記熱流束示差走査熱量測定の際に常温から10℃/分の昇温速度で200℃までの1回目の昇温の際に得られるDSC曲線(以下、1回目のDSC曲線ということがある。)における融解ピークは、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子(b)を構成するポリプロピレン系樹脂(a)に固有の結晶領域の融解に起因する主吸熱ピークとは別に、主吸熱ピークよりも高温側にも該樹脂の二次結晶領域の融解に基づく吸熱ピークが出現する場合がある。この二次結晶領域の融解に基づく吸熱ピークの出現は、発泡粒子の二次発泡性、発泡粒子成形体の機械的物性に影響することから、後述する特定の範囲内にあることが好ましい。本発明の第1の態様においては、上記二次結晶領域の融解に基づく吸熱ピークをリセットし型内成形する際の主な物理的性質を支配する発泡粒子の樹脂融点を正確に定めるために、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子(b)の樹脂融点を2回目のDSC曲線の融解ピークの頂点温度に基づいて測定することとしている。また、本明細書において、常温とは概ね25℃のことである。
【0019】
本発明においてポリプロピレン系樹脂発泡粒子(b)の樹脂融点は、JIS K7122(1987年)に記載の方法にて求められる値であり、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子(b)を形成するポリプロピレン系樹脂(a)が2種類の混合樹脂からなる場合も含めて、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子1〜3mgを試験片として、示差走査熱量測定装置により常温から10℃/分の昇温速度で200℃まで昇温することにより樹脂を融解後、結晶化を抑制する10℃/分の降温速度で30℃まで降温し、結晶化率の極めて少ないポリプロピレン系樹脂発泡粒子(b)について10℃/分の昇温速度の際に得られる2回目のDSC曲線に基づいて求められる。上記樹脂融点測定によって得られるDSC曲線には結晶融解に基づく1または2以上の吸熱ピークが出現する。1の吸熱ピークが出現する場合には、その吸熱ピークの頂点温度を樹脂融点とし、2以上の吸熱ピークが出現する場合には、各々の吸熱ピークの熱量を下記の部分面積解析法にて求め、吸熱ピークの熱量が4(J/g)以上の吸熱ピークの内で最も高温側に現れる吸熱ピークの頂点温度を樹脂融点(TmA)とする(図2参照)。また、上記樹脂融点測定の試験片としては、発泡粒子以外に、発泡粒子成形体片、或いは発泡粒子基材樹脂を準用できる。
【0020】
図1に基づいて上記の部分面積解析法を説明する。得られたDSC曲線上の80℃に相当する点αと、樹脂の融解終了温度Teに相当するDSC曲線上の点βとを結ぶ直線(α−β)を引く。次に最低温部に観察される吸熱ピークXと吸熱ピークXに隣接する吸熱ピークXとの間の谷部に当たるDSC曲線上の点γからグラフの縦軸と平行な直線を引き、前記直線(α−β)と交わる点をδとする。更に吸熱ピークXに隣接する吸熱ピークXが観察されるので、吸熱ピークXと吸熱ピークXとの間の谷部に当たるDSC曲線上の点γからグラフの縦軸と平行な直線を引き、上記直線(α−β)と交わる点をδとする。以降、吸熱ピークX、吸熱ピークX、吸熱ピークX・・・が観察される場合は同様の操作を繰り返す。上記操作により、得られる線分(δn−γn)(nは1以上の整数)が、吸熱ピークの面積を定める際の各吸熱ピーク境界線となる。そこで、吸熱ピークの熱量に相当する各吸熱ピークの面積は、吸熱ピークXにおいては、吸熱ピークXを示すDSC曲線と、線分(δ−γ)と、線分(α−δ)とによって囲まれる面積であり、吸熱ピークXにおいては、吸熱ピークXを示すDSC曲線と、線分(δ−γ)と、線分(δ−γ)と、線分(δ−δ)とによって囲まれる面積であり、吸熱ピークXにおいては、吸熱ピークXを示すDSC曲線と、線分(δ−γ)と、線分(δ−β)とによって囲まれる面積として定められる。以降、吸熱ピークX、吸熱ピークX、吸熱ピークX・・・が観察される場合も同じ要領で吸熱ピークの面積を定めることができ、そこで、各吸熱ピークの熱量(△H1、△H2、△H3・・・)J/gは、上記のように定められた各吸熱ピークの面積に基づいて示差走査熱量測定装置により機械的に算出される。また、全吸熱ピーク熱量(△H)は、各吸熱ピークの熱量の合計(△H=△H1+△H2+△H3・・・)に相当する。なお、上記測定方法において、ベースラインである直線(α−β)を引くために、DSC曲線上の点αを温度80℃に対応する点とした理由は、80℃に対応する点を始点とし、融解終了温度を終点したベースラインが、吸熱ピークの熱量を再現性良く安定して求める上で好適であるとの発明者らの知見による。
【0021】
ポリプロピレン系樹脂発泡粒子(b)を型内成形する際に、2回目のDSC曲線にて定まる樹脂融点(TmA)が「120℃以上140℃未満」である発泡粒子を使用すると、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子の優れた物性を損なうことなく、発泡粒子の型内成形可能な温度範囲をより低温側に広げることが可能となる。
すなわち、上記樹脂融点(TmA)を有する発泡粒子(b)を使用することにより、低い加熱温度(低い飽和蒸気圧での水蒸気加熱)での型内成形が可能となるので、成形機の型締め圧力を下げることができ、また成形機や金型をより低圧の設計とすることができ、従来のポリプロピレン系樹脂発泡粒子の型内発泡に比べ成形時の大幅なエネルギーコストの削減も可能になる。
【0022】
(ロ)ポリプロピレン系樹脂発泡粒子(b)の加熱前後の見かけ密度比(ρ
第1の態様におけるポリプロピレン系樹脂発泡粒子(b)は、耐圧容器内で前記樹脂融点より5℃低い温度の飽和蒸気圧の水蒸気により10秒間加熱した際に、加熱前後の発泡粒子の見かけ密度比(ρ)[(加熱前の発泡粒子の見かけ密度)/(加熱後の発泡粒子の見かけ密度)]が1.5を超えない、ことを特徴とする。なお、見かけ密度比(ρ)は、一般に発泡粒子成形体の優れた外観、発泡粒子相互の融着性に優れる発泡粒子成形体を得る観点から1.3以上であることが好ましい。
【0023】
本発明における見かけ密度比(ρ)は、以下の測定法からそれぞれの見かけ密度を測定して、算出される。
(i)加熱前の発泡粒子の見かけ密度(ρ)の測定
23℃の水の入ったメスシリンダーを用意し、該メスシリンダーに相対湿度50%、23℃、1atmの条件にて2日放置した約500mlの発泡粒子(発泡粒子群の重量W1)を金網などを使用して沈めて、水位上昇分より読みとられる発泡粒子群の容積V1(L)にてメスシリンダーに入れた発泡粒子群の重量W1(g)を割り算(W1/V1)することにより求める。
(ii)加熱後の発泡粒子の見かけ密度(ρ)の測定
発泡粒子を耐圧容器内に充填して、発泡粒子の樹脂融点(TmA)より5℃低い飽和蒸気圧の水蒸気により10秒間加熱した後、圧力を開放し常圧とし、次いで水冷して発泡粒子を取り出す。該発泡粒子を60℃のオーブンで12時間乾燥させ、次いで0.2MPa(G)の空気で12時間加圧した後、約500mlの発泡粒子(発泡粒子群の重量W2)を、23℃の水の入ったメスシリンダーに金網などを使用して沈めて、水位上昇分より読みとられる発泡粒子群の容積V2(L)にてメスシリンダーに入れた発泡粒子群の重量W2(g)を割り算(W2/V2)することにより求める。
(iii)見かけ密度比(ρ)は下式より算出する。
見かけ密度比(ρ)=(加熱前の発泡粒子の見かけ密度)/(加熱後の発泡粒子の見かけ密度)
【0024】
型内成形に使用される発泡粒子は、その性質から、発泡粒子が相互に融着し、次いで二次発泡する性質の融着先行型発泡粒子と、発泡粒子の二次発泡が先行し、次いで発泡粒子の相互融着が起こる性質の二次発泡先行型発泡粒子とに分けることができる。二次発泡先行型発泡粒子の場合には、二次発泡が融着に先行するために、型内に充填された発泡粒子の二次発泡によりその間隙が狭められ、その結果加熱媒体である水蒸気の該間隙への流入、通過が阻害されて、発泡粒子相互の融着も阻害されることになる。
一方、型内成形において融着先行型発泡粒子を使用する場合には、融着に先立って上記のような型内に充填された発泡粒子によりその間隙が狭められるようなことが起こり難いので、型内成形においては、融着先行型発泡粒子の使用がより好ましい。なお、周知のポリプロピレン系樹脂発泡粒子は二次発泡先行型発泡粒子に分類されるものである。
【0025】
前記加熱前後の見かけ密度比(ρ)の測定を、「樹脂融点(TmA)より5℃低い温度の飽和蒸気圧の水蒸気により加熱する」条件を採用する理由は、発泡粒子成形体を得るための型内成形時の加熱温度条件が発泡粒子の樹脂融点より5℃程度低い条件が採用されるからである。
従来の加熱前後の見かけ密度比(ρ)が1.5を超える発泡粒子は、相対的に発泡力が大きいので、二次発泡先行型発泡粒子としての挙動を示している。一方、加熱前後の見かけ密度比(ρ)が1.5を超えない物理的性質を有する発泡粒子(b)を使用すると型内成形の際に融着先行型発泡粒子としての挙動を示すものとなるので、前記した発泡粒子の型内成形温度範囲をより低温側に広げることができ、かつ発泡粒子の二次発泡よりも融着が先行する型内成形を行いうるので、従来の型内成形と比較して成形条件が改良され、かつ二次発泡性に優れる発泡粒子成形体を製造することが可能となる。本発明における融着先行型発泡粒子の好ましい製造方法については後述する。
なお、実際に発泡粒子を型内成形する場合の操作条件として、圧縮充填成形、発泡粒子への内圧付与等の種々の条件を選択することができるが、いずれの条件を採用した場合にも加熱前後の見かけ密度比(ρ)が1.5を超える場合には、二次発泡先行型発泡粒子となる可能性が高い。
【0026】
発泡粒子(b)は、10〜500g/リットル(L)の範囲の見かけ密度をとりうるが、発泡粒子成形体としての軽量性、緩衝性等の基本特性向上の観点から300g/L以下が好ましく、180g/L以下がより好ましい。一方、発泡粒子の見かけ密度があまりにも低くなると気泡が破泡しやすくなる点から、発泡粒子(b)の見かけ密度は12g/L以上が好ましく、15g/L以上がより好ましい。
【0027】
(2)ポリプロピレン系樹脂(a)
発泡粒子(b)の基材樹脂であるポリプロピレン系樹脂(a)は、その組成、重合法に特に制限はなく、例えば、プロピレン単独重合体、エチレン−プロピレンランダム共重合体、プロピレン−ブテンランダム共重合体、エチレン−プロピレンブロック共重合体、エチレン−プロピレン−ブテン三元共重合体等が例示でき、またポリプロピレン系樹脂(a)として複数の樹脂の混合物を使用することも可能である。以下、ポリプロピレン系樹脂(a)について具体的に説明する。
(イ)モノマー成分
発泡粒子(b)を構成するポリプロピレン系樹脂(a)は、プロピレンモノマーを主原料として重合したプロピレン系樹脂から選択することができ、本発明の発泡粒子(b)の2回目のDSC曲線における樹脂融点(TmA)が120℃以上140℃未満を示すものであればプロピレン単独重合体、プロピレン系ブロック共重合体、プロピレン系ランダム共重合体、またはプロピレン系グラフト共重合体からなるプロピレン系共重合体の使用が可能である。なお、上記プロピレン系共重合体としては、プロピレンと共重合可能なコモノマー成分との共重合体からなり、該コモノマー成分としては、エチレン又は/及び炭素数4〜20のα−オレフィンなどのエチレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、4−メチル−1−ブテンなどが例示される。
【0028】
上記プロピレン系共重合体は、プロピレン−エチレンランダム共重合体、プロピレン−ブテンランダム共重合体等の2元共重合体であっても、プロピレン−エチレン−ブテンランダム共重合体等の3元共重合体であっても良い。また、プロピレン系共重合体中のプロピレン以外のコモノマー成分の割合は特に制限されるものではないが、ポリプロピレン系樹脂(a)が1種又は2種以上の混合樹脂からなる場合であっても、重合後のポリピロピレン系樹脂の2回目のDSC曲線における融点が120℃以上140℃未満となるものから選択される。
尚、各ポリプロピレン系共重合体は、該共重合体中のプロピレンに由来する構造単位が好ましくは70重量%以上、より好ましくは80〜99.5重量%含有し、エチレン又は/及び炭素数4〜20のα−オレフィンから得られる構造単位が、好ましくは30重量%以下、より好ましくは0.5〜20重量%含有することが好ましい。
【0029】
(ロ)重合触媒
ポリプロピレン系樹脂(a)を製造する際に用いる重合触媒は特に限定されるものではなく、重合触媒としての性能を有した有機金属錯体等を用いることができる。一般的にはチーグラー・ナッタ触媒といわれるチタン、アルミニウム、マグネシウムなどを核元素とし、一部または全部をアルキル基で修飾した有機金属錯体、メタロセン重合触媒、又は均一系触媒といわれるジルコニウム、チタン、トリウム、ルテチウム、ランタン、鉄などの遷移金属又は硼素を核元素としシクロペンタン環などで修飾した有機金属錯体単体或いは前記有機金属錯体とメチルアルモキサンとの併用系などを使用することができる。
【0030】
本発明において使用されるポリプロピレン系樹脂(a)の中でメタロセン重合触媒を用いて重合したポリプロピレン系樹脂は、従来のチーグラー・ナッタ触媒においては重合が困難であったモノマーをプロピレンと共重合させることができ、該ポリプロピレン共重合体も発泡粒子を製造する基材樹脂として用いることができる。このようなモノマーの例としては、例えば、シクロペンテン、ノルボルネン、1,4,5,8−ジメタノ−1,2,3,4,4a,8,8a,6−オクタヒドロナフタレン等の環状オレフィン、5−メチル−1,4−ヘキサジエン、7−メチル−6−オクタジエン等の非共役ジエン、スチレン、ジビニルベンゼン等の芳香族不飽和化合物などの1種又は2種以上を挙げることができる。
また、メタロセン重合触媒(特に架橋アズレニル型のものが好ましい)を使用した場合には、例えば特開2003−327740号公報に記載されているように、13C−NMRで測定した、全プロピレン挿入中のプロピレンモノマー単位の2,1−挿入に基づく位置不規則単位、及びプロピレンモノマー単位の1,3−挿入に基づく位置不規則単位等の存在により、チーグラー・ナッタ触媒を使用した場合と比較してより低融点のポリプロピレン系樹脂が得られる傾向がある。
【0031】
(ハ)混合樹脂からなるポリプロピレン系樹脂(a)
(i)2種類の混合樹脂からなるポリプロピレン系樹脂(a)
本発明におけるポリプロピレン系樹脂発泡粒子(b)の基材樹脂であるポリプロピレン系樹脂(a)としては、2種類以上のポリプロピレン系樹脂を混合したものを使用することができる。実用的な面からは2種類のポリプロピレン系樹脂を混合して使用するのが好ましく、この場合、ポリプロピレン系樹脂(a)が融点110℃超135℃以下のポリプロピレン系樹脂(a1)50〜80重量%と、融点125℃以上140℃以下のポリプロピレン系樹脂(a2)50〜20重量%との2種類の混合樹脂(但し、ポリプロピレン系樹脂(a1)とポリプロピレン系樹脂(a2)との合計は100重量%である)からなり、かつポリプロピレン系樹脂(a1)とポリプロピレン系樹脂(a2)との融点温度差[(a2の融点)−(a1の融点)]が5℃以上15℃未満であることが好ましい。なお、本発明において上記2種類のポリプロピレン系樹脂を混合してなるものをポリプロピレン系樹脂(a)として使用する場合には、本発明の目的、効果を阻害しない範囲において、その他の樹脂成分(3種類目以降のポリプロピレン系樹脂も含む)が更に含まれていてもよい。
【0032】
上記ポリプロピレン系樹脂(a1)は、低融点(融点:110℃超135℃以下)であるので、型内成形の際に融着開始温度が低く、発泡粒子(b)の型内成形温度範囲をより低温側に広げて、発泡粒子同士の融着性を向上する作用を有する。一方、ポリプロピレン系樹脂(a2)は、(a1)より高融点(融点:125℃以上140℃以下)であるので型内成形の際の寸法安定性、及び耐熱性を向上する作用を有する。
尚、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子(b)の2回目の昇温の際に現れるDSC曲線により定まる樹脂融点が120℃以上140℃未満である点からも、このような樹脂融点を有するポリプロピレン系樹脂発泡粒子(b)に対応する基材樹脂であるポリプロピレン系樹脂(a)としては、融点110℃超135℃以下のポリプロピレン系樹脂(a1)と、融点125℃以上140℃以下のポリプロピレン系樹脂(a2)とからなる混合樹脂であることが望ましい。
【0033】
ポリプロピレン系樹脂(a1)とポリプロピレン系樹脂(a2)との融点温度差は、5℃以上15℃未満が好ましいのは、該融点温度差が5℃以上であると、本発明の顕著な効果である発泡粒子の型内成形温度範囲をより一層低温側に広げることが可能となり、一方、該融点温度差が15℃未満では両樹脂間の相溶性が良好に維持されて、また、型内成形の際にポリプロピレン系樹脂発泡粒子(b)の伸びが低下することなく、良好な二次発泡性が得られる。融点温度差が15℃以上であると特別な手法なしには樹脂同士の充分な混練が難しくなり、また、発泡粒子の型内成型時の二次発泡抑制効果が過大となり、発泡粒子成形体表面の平滑性を失う虞など、良好な成型体を得ることが出来なくなる憂いがある。
【0034】
(ii)融点の測定方法
ポリプロピレン系樹脂(a1)及び(a2)の融点は、それぞれポリプロピレン系樹脂1〜3mgを示差走査熱量測定において10℃/分の速度で200℃まで加熱し、続いて、該200℃の温度到達後直ちに10℃/分の冷却速度で200℃から30℃まで冷却した後、再度10℃/分の加熱速度で30℃から200℃まで加熱したときに得られるそれぞれのDSC曲線の吸熱ピークの頂点温度で表される。DSC曲線に複数の吸熱ピークがある場合には、最大面積の吸熱ピークの頂点温度を採用する。上記示差走査熱量測定はJIS K7121(1987年)に準拠して測定される融点である。
【0035】
(iii)ポリプロピレン系樹脂(a1)と(a2)の製造
前記ポリプロピレン系樹脂(a1)及び(a2)は、共にプロピレン単独重合体、並びにプロピレンとエチレン又は/及び炭素数4〜20のα−オレフィンとのランダム共重合体として製造することが可能である。
前記ポリプロピレン系樹脂(a1)と(a2)をそれぞれ製造する際に使用するコモノマーとしては、エチレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、4−メチル−1−ブテンなどが例示される。従って、ポリプロピレン系樹脂(a1)と(a2)としては、それぞれ具体的にプロピレン−エチレンランダム共重合体、プロピレン−ブテン1ランダム共重合体、プロピレン−エチレン−ブテン−1ランダム共重合体等が挙げられる。また、ポリプロピレン系樹脂(a1)と(a2)中のエチレン単位又は/及び炭素数4〜20のα−オレフィン単位は、得られる発泡粒子の樹脂融点および強度の観点から適宜選択される。また、使用するチーグラー・ナッタ触媒、メタロセン重合触媒等の触媒種により、その好ましいエチレン単位又は/及び炭素数4〜20のα−オレフィン単位は異なる。
【0036】
共重合に使用する好ましいモノマー成分の割合は、ポリプロピレン系樹脂(a1)とポリプロピレン系樹脂(a2)との組み合わせから、種々の組み合わせが考えられる。
例えば、メタロセン重合触媒を使用する場合、ポリプロピレン系樹脂(a1)中のエチレン単位又は/及び炭素数4〜20のα−オレフィン単位は、好ましくは0.5〜8重量%であり、より好ましくは1.0〜7重量%であり、ポリプロピレン系樹脂(a2)中のエチレン単位又は/及び炭素数4〜20のα−オレフィン単位は、ポリプロピレン系樹脂(a1)中のエチレン単位又は/及び炭素数4〜20のα−オレフィン単位の1.5〜4倍程度とすることができる。
【0037】
また、融点が110℃超135℃以下のポリプロピレン系樹脂(a1)としては、例えば、メタロセン重合触媒を使用しプロピレンとコモノマーを共重合して得られるプロピレン−エチレンランダム共重合体、プロピレン−ブテン1ランダム共重合体、プロピレン−エチレン−ブテン−1ランダム共重合体が好ましい。該メタロセン重合触媒を使用して得られる融点が110〜135℃のポリプロピレン系樹脂は、融点が125℃以上140℃以下のポリプロピレン系樹脂(a2)との相溶性に優れることから特に好ましい。
【0038】
ポリプロピレン系樹脂(a)としては、相対的に低融点の樹脂が好適に使用されるので、前記ポリプロピレン系樹脂(a1)及びポリプロピレン系樹脂(a2)のいずれか一方、又は双方がメタロセン重合触媒存在下に重合して得られたポリプロピレン系樹脂であることが望ましい。更に、上記ポリプロピレン系樹脂(a1)とポリプロピレン系樹脂発泡粒子(a2)からなる混合樹脂を使用して型内成形する際に、発泡粒子の融着性と二次発泡性の双方の両立を図るには、ポリプロピレン系樹脂(a1)50〜80重量%と、ポリプロピレン系樹脂(a2)50〜20重量%からなる混合樹脂(但し、ポリプロピレン系樹脂(a1)とポリプロピレン系樹脂(a2)との合計は100重量%である)が好ましい。
ポリプロピレン系樹脂(a)中のポリプロピレン系樹脂(a1)が50重量%以上であると型内成形温度を低温側に広げて、融着性をより一層向上させることができ、一方、ポリプロピレン系樹脂(a1)が80重量%以下であると、発泡粒子(b)を型内成型して外観性、機械的物性等に、より一層優れる発泡粒子成形体を得ることができる。
【0039】
(ニ)他の樹脂成分
本発明の発泡粒子(b)の基材樹脂であるポリプロピレン系樹脂(a)(ポリプロピレン系樹脂(a1)とポリプロピレン系樹脂(a2)との混合樹脂も含む)には、本発明の効果を損なわない範囲内で他のポリマー成分や添加剤を押出機等の混練手段等により含有させることができる。
前記の他のポリマー成分としては、例えば、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状超低密度ポリエチレン、エチレンと炭素数4以上のα-オレフィンとの共重合体である直鎖状低密度ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体などのポリエチレン系樹脂、或いはポリスチレン、スチレン−無水マレイン酸共重合体等のポリスチレン系樹脂、エチレン−プロピレン系ゴム、エチレン−1-ブテンゴム、プロピレン−1-ブテンゴム、エチレン−プロピレン−ジエン系ゴム、イソプレンゴム、ネオプレンゴム、ニトリルゴムなどのゴム、スチレン−ジエンブロック共重合体やスチレン−ジエンブロック共重合体の水添物などのスチレン系熱可塑性エラストマーなどが挙げられる。
【0040】
これらの樹脂、ゴム、或いはエラストマーは2種以上を組合せて用いることもできる。上記他のポリマー成分をポリプロピレン系樹脂に配合する場合、これら他のポリマー成分の含有量は合計で、ポリプロピレン系樹脂(a)100重量部に対して20重量部以下、更に10重量部以下とすることが好ましい。
また、発泡粒子を構成する基材樹脂は、無架橋ポリプロピレン系樹脂であっても、例えば、従来公知の方法により架橋された架橋ポリプロピレン系樹脂であってもよいが、リサイクル性、発泡粒子の生産性などを考慮すると、無架橋ポリプロピレン系樹脂が好ましい。
【0041】
(ホ)添加剤
ポリプロピレン系樹脂(a)に配合する添加剤としては、気泡調整剤、帯電防止剤、導電性付与剤、滑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、難燃剤、金属不活性剤、顔料、染料、結晶核剤、或いは無機充填材等の各種の添加剤が挙げられ、これらを所望に応じて発泡粒子を構成するポリプロピレン系樹脂に含有させることができる。上記の気泡調整剤としては、タルク、炭酸カルシウム、シリカ、酸化チタン、石膏、ゼオライト、ホウ砂、水酸化アルミニウム、カーボン等の無機物の他、リン酸系核剤、フェノール系核剤、アミン系核剤等の有機系核剤が挙げられる。これらの各種添加剤の含有量はその添加目的により異なるが、基材樹脂100重量部に対して好ましくは25重量部以下、より好ましくは15重量部以下、更に好ましくは8重量部以下であり、5重量部以下が特に好ましい。
【0042】
(ヘ)ポリプロピレン系樹脂(a1)とポリプロピレン系樹脂(a2)との混練方法
発泡粒子(b)の製造原料用のポリプロピレン系樹脂(a1)とポリプロピレン系樹脂(a2)からなる基材樹脂は、必要により上記他の樹脂成分および添加剤を混合した後に混練機により充分均一になるように混練する。通常、樹脂が溶融する温度に加熱して短軸押出機にて混練、押し出しするが、二軸混練機等の混練性の高い押出機や、例えば特開2006-69143号公報に記載されるように飢餓的成形方法を採用して押出機にて混練することもできる。ここでいう押出機の飢餓運転条件とは、融点や溶融粘度の大きく異なる樹脂同士が良好に分散するように混練するための手法であって、原料供給部を押出機の搬送能力を賄う様に原料樹脂ペレットで満たして押出した一般的な充満運転条件時の樹脂の吐出量に対し、同じスクリュー回転数での樹脂の吐出量が充満運転時以下となる様に、樹脂の供給を容量式のフィーダーで調整しつつ供給して押出す方法である。なお、充満運転時に対する飢餓運転時の吐出量は好ましくは60〜80%である。
【0043】
(ト)ポリプロピレン系樹脂(a1)とポリプロピレン系樹脂(a2)のメルトフローレイト(MFR)
ポリプロピレン系樹脂(a)としてポリプロピレン系樹脂(a1)及びポリプロピレン系樹脂(a2)からなる混合物を使用する場合には、これらの少なくともいずれか一方のメルトフローレイト(JIS K7210(1999年)の試験条件M(温度230℃、荷重2.16kg)における測定値)が20(g/10分)以上であることが望ましい。このようなポリプロピレン系樹脂(a)を使用することにより、一次発泡により発泡粒子(b)を好適に製造でき、更に型内成形の際に低い加熱温度で発泡粒子相互間の融着強度が特に優れたものとなる。
【0044】
(3)ポリプロピレン系樹脂発泡粒子(b)の製造
本発明の発泡粒子(b)の製造には、溶融樹脂を押出機から紐状に押出し、該紐状物を、発泡粒子を製造するのに適した長さに切断して造粒する等、公知の造粒方法にてプロピレン系樹脂粒子(a)を製造する。なお、樹脂粒子(a)および発泡粒子(b)の1個当たりの平均重量は、通常0.01〜10.0mgが好ましく、0.1〜5.0mgがより好ましい。
上記のようにして得られたプロピレン系樹脂粒子(a)と発泡剤とを密閉容器内で水等の分散媒体に分散させ、撹拌下に加熱して樹脂粒子を軟化させるとともに樹脂粒子に発泡剤を含浸させた後、樹脂粒子の軟化温度以上の温度で容器内より低圧下(通常大気圧下)に樹脂粒子を放出して発泡させるなど、特公昭49−2183号公報、特公昭56−1344号公報、特公昭62−61227号公報などに記載の公知の発泡方法を採用することができる。また、発泡粒子を得るために密閉容器内の内容物を密閉容器から低圧域に放出する際には、使用した発泡剤あるいは窒素、空気等の無機ガスで密閉容器内に背圧をかけて該容器内の圧力が急激に低下しないようにして、内容物を放出すること好ましい。このような操作により、得られる発泡粒子(b)の見かけ密度が更に均一なものとなる。
【0045】
前記した方法によって密閉容器から低圧域に放出されることにより得られたポリプロピレン系樹脂発泡粒子は、該放出後に通常行われる大気圧下での養生工程を経た後、加圧用の密閉容器に充填された空気などの加圧気体により加圧処理して発泡粒子内の圧力を0.01〜0.6MPa(G)に調整した後、該発泡粒子を該容器内から取り出して、水蒸気や熱風を用いて加熱することにより、より低い見かけ密度の発泡粒子とする(以下、この工程を二段発泡ということがある。)ことが可能である。
【0046】
(イ)発泡剤
上記方法において使用する発泡剤としては、有機系物理発泡剤や無機系物理発泡剤、又はこれらの混合物等を用いることができる。有機系物理発泡剤としてはプロパン、ブタン、ヘキサン、ペンタン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素類、シクロブタン、シクロヘキサン等の脂環式炭化水素類、クロロフロロメタン、トリフロロメタン、1,1−ジフロロエタン、1,1,1,2−テトラフロロエタン、メチルクロライド、エチルクロライド、メチレンクロライド等のハロゲン化炭化水素、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、メチルエチルエーテル等のジアルキルエーテル等が挙げられ、これらの2種以上を混合して用いることができる。前記無機系物理発泡剤としては、窒素、二酸化炭素、アルゴン、空気、水等が挙げられ、これらの2種以上を混合して用いることができる。有機系物理発泡剤と無機系物理発泡剤とを混合して用いる場合、上記した有機系物理発泡剤と無機系物理発泡剤より任意に選択したものを組合わせて用いることができる。なお、無機系物理発泡剤と有機系物理発泡剤とを併用する場合には無機系物理発泡剤が少なくとも30重量%以上含有されることが好ましい。
【0047】
上記発泡剤のうち、特に環境対応の点から、無機系物理発泡剤が好ましく、中でも窒素、空気、二酸化炭素、水が好ましい。なお、発泡粒子を得る際に密閉容器内に樹脂粒子と共に分散媒として水を使用する場合には、該樹脂粒子に吸水性樹脂などを混錬したものを使用することにより分散媒である水を発泡剤として使用することもできる。
発泡剤の使用量は、目的とする発泡粒子の見かけ密度、基材樹脂の種類、または発泡剤の種類等を考慮して決定されるが、通常、樹脂粒子100重量部当たり、有機系物理発泡剤で5〜50重量部、無機系物理発泡剤で0.5〜30重量部を用いることが好ましい。
【0048】
(ロ)分散媒体および分散剤
発泡粒子(b)の製造に際して樹脂粒子を分散させる分散媒体としては、上記した水に限らず、樹脂粒子を溶解させない溶媒であれば使用することができる。水以外の分散媒体としては、例えばエチレングリコール、グリセリン、メタノール、エタノール等が挙げられるが、通常は水が用いられる。
上記方法において、分散媒体中には、必要に応じて、樹脂粒子が分散媒体中に均一に分散するように、酸化アルミニウム、第三リン酸カルシウム、ピロリン酸マグネシウム、酸化亜鉛、カオリンなどの難水溶性無機物質等の分散剤、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アルカンスルホン酸ナトリウムなどのアニオン系界面活性剤等の分散助剤を分散させることが好ましい。発泡粒子を製造する際に分散媒体中に添加される分散剤の量は、樹脂粒子の重量を基準として、樹脂粒子の重量と分散剤の重量との比率(樹脂粒子の重量/分散剤の重量)を20〜2000、更に30〜1000とすることが好ましい。また、分散剤の重量と分散助剤の重量との比率(分散剤の重量/分散助剤の重量)を0.1〜500、更に1〜50とすることが好ましい。
【0049】
(ハ)等温結晶化操作による発泡粒子(b)の製造
本発明の発泡粒子(b)は、上記の製造方法において、特に等温結晶化操作により、発泡粒子の1回目のDSC曲線に複数の吸熱ピークが現れ、且つ、該吸熱ピークの内、頂点温度が120℃以上135℃以下を示す吸熱ピークの合計熱量が、全吸熱ピークの合計熱量の50〜90%となるように結晶構造が調整されたものであることが好ましい。このような発泡粒子は、安定した機械的物性等を有する発泡粒子成形体を得る上で好ましい。なお、等温結晶化操作により、発泡粒子の1回目のDSC曲線に複数の吸熱ピークが現れるようになるのは、該操作により二次結晶が形成され、発泡粒子の1回目のDSC曲線において、該二次結晶領域の融解に起因する吸熱ピークがポリプロピレン系樹脂固有の吸熱ピークとは別に該吸熱ピークの高温側に現れるためである。
【0050】
前記の等温結晶化操作は、ポリプロピレン系樹脂(a)を密閉容器内で分散媒体に分散させて加熱する際に、該樹脂粒子の融解終了温度(以下、Teということがある。)以上に昇温することなく、ポリプロピレン系樹脂(a)粒子の融点(Tm)よりも15℃低い温度以上、Te未満の範囲内の任意の温度(Ta)で止めて、その温度Taで十分な時間、好ましくは5〜60分程度保持し、その後、(Tm−5℃)〜(Te+5℃)の範囲の任意の温度(Tb)に調節し、その温度で樹脂粒子を容器内から低圧域に放出して発泡させる方法により得ることができる。
なお、等温結晶化操作における上記(Tm−15℃)以上、Te未満の範囲内での保持は、該温度範囲内にて多段階に設定することもできるし、また、該温度範囲内で十分な時間をかけてゆっくりと昇温することにより該高温ピークを形成することも可能である。
本発明の発泡粒子(b)の基材樹脂であるポリプロピレン系樹脂(a)の融点(Tm)と、発泡粒子(b)の2回目のDSC曲線における樹脂融点(TmA)と1回目のDSC曲線における低温側の吸熱ピークの頂点温度(PTmA)とは互いに近似するので、発泡粒子のTmAやPTmAからポリプロピレン系樹脂(a)の融点(Tm)を想定することは可能である。
【0051】
ポリプロピレン系樹脂(a)の融点(Tm)は、直接的にはポリプロピレン系樹脂(a)1〜3mgを示差走査熱量測定において10℃/分の速度で200℃まで加熱し、続いて、該200℃の温度到達後直ちに10℃/分の冷却速度で200℃から30℃まで冷却した後、再度10℃/分の加熱速度で30℃から200℃まで加熱したときに得られるDSC曲線の吸熱ピークの頂点温度で表される。なお、DSC曲線に複数の吸熱ピークがある場合には、最大面積の吸熱ピークの頂点温度を採用する。上記示差走査熱量測定は、樹脂融点(TmA)の測定法に記載したと同様に熱流束示差走査熱量測定装置によりJIS K7121(1987年)に準拠して測定される融点である。
【0052】
発泡粒子の等温結晶化操作による二次結晶の形成、および該二次結晶領域の融解に起因する吸熱ピークの熱量の大小は、主として、発泡粒子を製造する際の樹脂粒子に対する上記温度Taと該温度Taにおける保持時間、及び上記温度Tb、並びに(Tm−15℃)以上、(Te+5℃)の範囲内での昇温速度に依存する。発泡粒子の上記該二次結晶領域の融解に起因する吸熱ピークの熱量は、(i)温度Ta又はTbが上記各々の温度範囲内において低い程、(ii)(Tm−15℃)以上、Te未満の範囲内での保持時間が長い程、そして(iii)(Tm−15℃)以上、Te未満の範囲内での昇温速度が遅い程、大きくなる傾向を示す。なお、上記昇温速度は通常0.5〜5℃/分が採用される。一方、前記二次結晶領域の融解に起因する吸熱ピークの熱量は、(i)温度Ta又はTbが上記各々の温度範囲内において高い程、(ii)(Tm−15℃)以上、Te未満の範囲内での保持時間が短い程、(iii)(Tm−15℃)以上、Te未満の範囲内での昇温速度が速い程、そして(iv)Te〜(Te+5℃)の範囲内での昇温速度が遅い程、小さくなる傾向を示す。これらの点を考慮して予備実験を繰り返せば、所望の二次結晶領域の融解に起因する吸熱ピークの熱量を示す発泡粒子の製造条件を知ることができる。なお、上述した二次結晶領域の融解に起因する吸熱ピークの熱量の形成に係る温度範囲は、発泡剤として無機系物理発泡剤を使用した場合の適切な温度範囲である。
従って、発泡剤が有機系物理発泡剤に変更された場合には、その種類や使用量に応じてその適切な温度範囲は上記温度範囲よりもそれぞれ低温側に0〜30℃程度シフトする。
【0053】
(ニ)ポリプロピレン系樹脂発泡粒子(b)のDSC曲線による吸熱ピークの熱量
発泡粒子(b)の1回目のDSC曲線の全吸熱ピーク熱量(△H)は、次のように求められる。
図1は発泡粒子の1回目のDSC曲線の説明図であり、図1に示すように前記DSC曲線上の80℃に相当する点αと、樹脂の融解終了温度Teに相当するDSC曲線上の点βとを結ぶ直線(α−β)を引きそれをベースラインとし、該ベースラインとDSC曲線にて囲まれる部分の面積に相当する熱量を全吸熱ピーク熱量(△H)J/gとする。上記ピークの熱量は、ピークの面積に基づいて示差走査熱量測定装置によって演算されて機械的に算出される。
尚、本発明において、全吸熱ピーク熱量(△H)は、40〜120J/gの範囲にあることが好ましく、さらに45〜100J/gの範囲にあることが好ましく、特に45〜85J/gの範囲にあることが好ましい。
また、図1に示す吸熱ピークx1、x2、x3・・のそれぞれの面積に相当する各吸熱ピークの熱量(△H1、△H2、△H3・・・)は、前述の通り、部分面積解析法により求めることができる。
【0054】
発泡粒子(b)は、1回目のDSC曲線において、発泡粒子1〜3mgを試験片としてJIS K7122(1987年)に記載されている熱流束示差走査熱量測定法に基づいて、10℃/分の昇温速度で常温から200℃まで昇温した際に得られる1回目のDSC曲線において複数の吸熱ピークが現れる発泡粒子(b)であって、該吸熱ピークの内、頂点温度が120℃以上135℃以下を示す吸熱ピークの合計熱量が、全吸熱ピークの合計熱量の50〜90%である結晶構造を有するものであることが、目的とする融着先行型ものとなる発泡粒子の二次発泡性、得られる発泡粒子成形体の機械的強度、耐熱性などの観点から好ましい。上記の頂点温度が120℃以上135℃以下を示す吸熱ピークは、単独の吸熱ピークとして現れる場合もあれば、複数の吸熱ピークとして現れる場合もある。なお、図1は発泡粒子の1回目のDSC曲線の説明図であり、120℃以上135℃以下の範囲に頂点温度(PTmA)を有する吸熱ピークx1が単独で現れる場合が示されている。
【0055】
本発明の発泡粒子が、発泡粒子の1回目のDSC曲線において、頂点温度(PTmA)が120℃以上135℃以下を示す吸熱ピークの存在することが、耐熱性向上の観点と型内成形時の成形温度を更に低くする観点とから好ましい。また、本発明の発泡粒子が、発泡粒子の1回目のDSC曲線において、頂点温度が120℃以上135℃以下を示す吸熱ピークの合計熱量が、全吸熱ピーク熱量(△H)の50〜90%であることが得られる発泡粒子成形体の機械的強度、耐熱性などの物性向上と発泡粒子(b)の低温での型内成形性とのバランスの観点から好ましい。
【0056】
また、発泡粒子(b)の基材樹脂として複数のポリプロピレン系樹脂を混合して使用することにより、発泡粒子(b)の1回目のDSC曲線において、複数の吸熱ピークを形成することが出来るが、更に、前述の通り、等温結晶化操作を行うことによっても、複数の吸熱ピークを形成できると共に該複数の吸熱ピークの内、高温側の吸熱ピークの熱量を増加させることができる。
従って、上記手段、特に等温結晶化操作によって、発泡粒子の1回目のDSC曲線に複数の吸熱ピークが現れる発泡粒子(b)において、該複数の吸熱ピークの内、頂点温度が120℃以上135℃以下を示す吸熱ピークの合計熱量を、全吸熱ピークの合計熱量の50〜90%に調整することができる。なお、等温結晶化操作により形成される吸熱ピークの熱量は、好ましくは2〜30J/g、より好ましくは5〜20J/gの範囲である。
【0057】
なお、発泡粒子の1回目のDSC曲線に複数の吸熱ピークが現れる場合、それらの吸熱ピークが等温結晶化操作により形成されたものであるのか、該操作により形成されたものではないのかは、以下のポリプロピレン系樹脂発泡粒子の示差走査熱量測定方法により確認することができる。
ポリプロピレン系樹脂発泡粒子1〜3mgを示差走査熱量測定装置により10℃/分の加熱速度で200℃まで加熱して、例えば、図3に例示する1回目のDSC曲線が得られたとする。続いて、該200℃の温度到達後直ちに10℃/分の冷却速度で200℃から30℃まで冷却し、再度、該30℃の温度到達後直ちに10℃/分の加熱速度で30℃から200℃まで加熱して、例えば、図4に例示する2回目のDSC曲線が得られたとする。上記の方法により得られた1回目のDSC曲線である図3には、2回目のDSC曲線である図4において消失している吸熱ピークが存在している。即ち、図3の例示における発泡粒子の1回目のDSC曲線には、頂点温度が139℃の吸熱ピークが観察されるが図4の例示における該発泡粒子の2回目のDSC曲線では、139℃付近に頂点温度を有する吸熱ピークが消滅している。この場合、1回目のDSC曲線において、2回目のDSC曲線では消滅する吸熱ピークが等温結晶化操作により形成された吸熱ピークということになり、その他の吸熱ピークはプロピレン系樹脂成分固有の吸熱ピークということになる。
【0058】
(ホ)平均気泡径
本発明の発泡粒子(b)の平均気泡径は、通常30〜500μmであり、50〜350μmであることが好ましい。上記範囲内の平均気泡径を有する発泡粒子(b)は、気泡膜の強度の関係から、後述する発泡粒子の二段発泡や型内成形時に発泡粒子を構成する気泡が破泡する虞がなく良好な二次発泡性を示す。
前記発泡粒子(b)の平均気泡径は、発泡粒子を略2等分に切断し気泡断面を得、該断面を顕微鏡にて撮影した拡大写真に基づき、以下の操作を行うことにより求めることができる。上記気泡断面の拡大写真において、発泡粒子の表面から他方の表面に亘り、且つ気泡断面の中心部を通過する直線を4本、中心部から発泡粒子表面に向かって8方向に引く。続いて、前記4本の直線と交わる気泡の数の総数:N(個)を求める。そして、前記4本の各直線における表面から他の表面までの線分の長さの総和:L(μm)を気泡の数の総数:N(個)にて除する(L/N)ことにより求められる値を発泡粒子の平均気泡径とする。
【0059】
また、前記平均気泡径は、基材樹脂の高メルトフローレイト化、発泡温度の上昇、発泡剤の減量、気泡調整剤の減量及び樹脂粒子の粗粒径化などにより大きくなるため、これらの平均気泡径変動要因を適宜調整することにより目的の平均気泡径を有する発泡粒子(b)を得ることができる。
タルク、水酸化アルミニウム、シリカ、ゼオライト、硼砂等の無機物からなる気泡調節剤は、好ましくは樹脂粒子の製造の際に、基材樹脂100重量部に対して0.01〜5重量部の割合で基材樹脂に配合される。尚、上記発泡粒子製造時の発泡温度や発泡剤の種類及び使用量等でも該平均気泡径が変化するため、目的の平均気泡径を有するものを得るためには、予め予備実験をして条件を設定しておくことが好ましい。
【0060】
〔2〕第2の態様の発泡粒子成形体
(1)ポリプロピレン系樹脂発泡粒子(b)の型内成形方法
本発明の発泡粒子成形体(c)は、必要に応じて、上述した二段発泡における操作と同様の発泡粒子内の圧力を高める操作を行い発泡粒子内の圧力を0.01〜0.2MPa(G)に調整した後、加熱及び冷却が可能であって且つ開閉し密閉できる従来公知の熱可塑性樹脂発泡粒子型内成形用の金型のキャビティー内に充填し、飽和蒸気圧が0.05〜0.25MPa(G)、好ましくは0.08〜0.20MPa(G)の水蒸気を供給して金型内で発泡粒子同士を加熱して膨張、融着させ、次いで得られた発泡粒子成形体を冷却して、キャビティー内から取り出すバッチ式型内成形法(例えば、特公平4−46217号公報、特公平6−49795号公報等に記載される成形方法)を採用して製造することができる。
【0061】
上記型内成形法における水蒸気加熱の方法としては、一方加熱、逆一方加熱、本加熱などの加熱方法を適宜組合せる従来公知の方法を採用できるが、特に、予備加熱、一方加熱、逆一方加熱、本加熱の順に発泡粒子を加熱する方法が好ましい。なお、発泡粒子成形時の上記0.05〜0.25MPa(G)の飽和蒸気圧は、型内成形工程において、金型内に供給される水蒸気の飽和蒸気圧の最大値である。
また、本発明の発泡粒子成形体(c)は、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子(b)を、必要に応じて発泡粒子内の圧力を0.01〜0.2MPa(G)に調整した後、加熱領域と冷却領域とを有する通路内の上下に沿って連続的に移動するベルトによって形成される型内に連続的に供給し、加熱領域を通過する際に飽和蒸気圧が0.05〜0.25MPa(G)の水蒸気を型内に供給して発泡粒子同士を膨張、融着させ、その後冷却領域を通過させて冷却し、次いで得られた発泡粒子成形体を型内から取り出し、適宜長さに順次切断する連続式型内成形法(例えば特開平9−104026号公報、特開平9−104027号公報及び特開平10−180888号公報等に記載される成形方法)により製造することもできる。
【0062】
なお、見かけ密度30g/L以下の発泡粒子成形体を得る場合、従来のポリプロピレン系樹脂発泡粒子の型内成形では、目的の形状にもよるが、発泡粒子内の圧力を高めた発泡粒子を使用して型内成形する方法や、見かけ密度20g/L以下の発泡粒子を製造し、発泡粒子の金型キャビティー内への充填率を大きく高めて型内成形する方法でなければ良好な発泡粒子成形体を得ることが難しかったが、本発明のポリプロピレン系樹脂発泡粒子(b)は、そのような方法によることなく、また、従来の方法よりも低い型内圧力で、良好な発泡粒子成形体(c)を得ることができる。
【0063】
(2)型内成形により得られる発泡粒子成形体
本発明のポリプロピレン系樹脂発泡粒子(b)による型内成形は、前記水蒸気による加熱により発泡粒子の表面同士が先ず融着し、一方で発泡粒子自体が軟化して発泡粒子の表面同士の融着よりも遅れて二次発泡することにより、外観と発泡粒子相互の融着性が共に優れる良好な発泡粒子成形体となると同時に、型内成形時に仮に多少の加熱ムラが発生したとしても成形温度範囲が広いことにより良好な発泡粒子成形体(c)となる。
本発明の発泡粒子成形体(c)は、発泡粒子同士が緊密に融着しており発泡粒子が剥がれることがなく、良好な圧縮強度や柔軟性を示し、圧縮永久歪も小さく、表面に凹凸が極めて少なく平滑であり、寸法安定性にも優れたものである。また、肉厚発泡粒子成形体においても該成形体の内部まで発泡粒子相互の融着性に優れたものとなる。
【0064】
以上のようにして製造される本発明の発泡粒子成形体(c)は、ASTM−D2856−70の手順Cに基づく連続気泡率が40%以下であることが好ましく、30%以下であることがより好ましく、25%以下であることが最も好ましい。連続気泡率が小さい発泡粒子成形体ほど、機械的強度に優れる。また、本発明の発泡粒子成形体(c)の見かけ密度は、機械的強度、緩衝性、軽量性などの観点から、10〜300g/L、更に13〜180g/Lであることが好ましい。なお、発泡粒子成形体の見かけ密度(g/L)は、発泡粒子成形体の重量(g)を該発泡粒子成形体の外形寸法から求められる体積(L)にて除することにより求めることができる。
【実施例】
【0065】
次に、本発明を実施例によりさらに詳しく説明する。但し、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
実施例における評価方法等を以下に記載する。
尚、本発明の実施例、比較例にて使用したDSC装置は、ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン(株)製、商品名:DSC―Q1000である。
【0066】
(1)評価方法
(1−1)基材樹脂について
(i)基材樹脂の融点
「〔1〕第1の態様であるポリプロピレン系樹脂発泡粒子について、(2)ポリプロピレン系樹脂(a)、(ハ)混合樹脂からなるポリプロピレン系樹脂(a)、(ii)融解の測定方法」の項に記載した方法を採用した。
(1−2)発泡粒子について
(i)発泡粒子の樹脂融点の測定
「〔1〕第1の態様であるポリプロピレン系樹脂発泡粒子について、(1)ポリプロピレン系樹脂発泡粒子(b)、(イ)ポリプロピレン系樹脂発泡粒子(b)のDSC曲線における樹脂融点」の項に記載した方法を採用した。
(ii)発泡粒子の1回目のDSC曲線における吸熱ピーク(△H1、△H120−135)の熱量測定
「〔1〕第1の態様であるポリプロピレン系樹脂発泡粒子について、(3)ポリプロピレン系樹脂発泡粒子(b)の製造、(ニ)ポリプロピレン系樹脂発泡粒子(b)のDSC曲線による吸熱ピークの熱量」の項に記載した方法を採用した。
(iii)発泡粒子の見かけ密度(ρ)、及び発泡粒子の加熱前後の見かけ密度比(ρ
「〔1〕第1の態様であるポリプロピレン系樹脂発泡粒子について、(1)ポリプロピレン系樹脂発泡粒子(b)、(ロ)ポリプロピレン系樹脂発泡粒子(b)の加熱前後の見かけ密度比(ρ)」の項に記載した方法を採用した。
【0067】
(iv)発泡粒子の融着圧力の測定
発泡粒子の1回目のDSC曲線に基づき発泡粒子の表面が溶融する温度の下限を予想し、該下限温度に相当する飽和蒸気圧のスチームによる発泡粒子の型内成形を行い得られた発泡粒子成形体について下記の発泡粒子相互の融着性の評価を行い発泡粒子成形体の融着率が50%未満であることを確かめる。次いで、スチームの飽和蒸気圧を0.01MPa高く設定する以外は、同様にして上記の融着性の評価を行った。スチームの飽和蒸気圧を0.01MPa高く設定して融着性の評価を行う操作を、発泡粒子成形体の融着率が50%以上となるまで順次行い、該融着率が50%以上となった時の飽和蒸気圧(該融着率が50%以上となる最低の飽和蒸気圧)を融着圧力とした。なお、上記型内成形にて使用した金型は、成形空間が、縦250mm、横250mm、厚み100mmの直方体形状のものであった。
また、上記の発泡粒子成形体の融着率とは、発泡粒子成形体を折り曲げ略等分に破断させ、破断面を観察して破断面に存在している破断している発泡粒子の数を、該破断面に存在している全ての発泡粒子の数にて除した値の百分率である。
(v)平均気泡径
「〔1〕第1の態様であるポリプロピレン系樹脂発泡粒子について、(1)ポリプロピレン系樹脂発泡粒子(b)、(ホ)平均気泡径」の項に記載した方法を採用した。
【0068】
(1−3)発泡粒子成形体について
(i)内部融着性
発泡粒子を内圧付与等の前処理をせずに、成形空間が、縦250mm、横250mm、厚み100mmの金型で成形し、80℃のオーブン中で養生乾燥後、発泡粒子成形体の中央部から縦70mm、横70mm、厚み100mmの試験片を切り出し、該試験片を厚み方向に略等分となるように折り曲げて破断させ、破断面を観察して破断面に存在している破断している発泡粒子の数を、該破断面に存在している全ての発泡粒子の数にて除した値の百分率を融着率(%)として以下の基準により評価した。
○:試験片の融着率が50%以上である。
×:試験片の融着率が50%未満である。
【0069】
(ii)二次発泡性
発泡成形体の表面を肉眼で観察し以下の基準にて評価した。
○:発泡成形体の表面に凹凸がなく粒子間隙が殆ど認められない良好な表面状態を示す。
△:発泡成形体の表面に粒子間隙および/または凹凸がやや認められる。
×:発泡成形体の表面に粒子間隙および/または凹凸が著しい。
(iii)寸法安定性
養生完了後の発泡粒子成形体の縦、横、及び厚み方向の長さを測定し、金型成形空間の対応する方向との寸法差を求め、その平均値を「発泡成形体の金型成形空間寸法に対する寸法差」として、以下の基準にて評価した。
○:発泡粒子成形体の金型成形空間寸法に対する寸法差が4%未満である。
△:発泡粒子成形体の金型成形空間寸法に対する寸法差が4%以上であるが、発泡粒子成形体の中央部の厚み減少は殆ど見られない。
×:発泡粒子成形体の金型成形空間寸法に対する寸法差が4%以上であり、かつ発泡成形体外周部に対する中央部の厚みが明らかに小さい。
【0070】
(2)実施例、比較例で使用した基材樹脂
実施例、比較例で使用した基材樹脂及びその物理的性質等を表1に示す。
【0071】
【表1】

【0072】
[実施例1〜7]
(1)ポリプロピレン系樹脂発泡粒子の製造
基材樹脂として表1に記載のポリプロピレン系樹脂を表2に示す割合で、ホウ酸亜鉛500重量ppmと共に65mmφの単軸押出機にて溶融混練し、混練物を押出機先端に取り付けた口金の小孔からストランド状に押出し、水槽で冷却し、ストランドを重量が略1mgになるように切断、乾燥して樹脂粒子を得た。
【0073】
上記樹脂粒子1kgを分散媒である水3リットル(L)と共に撹拌機を備えた5Lの密閉容器内に仕込み、更に分散媒中に、分散剤としてカオリン0.3重量部、界面活性剤としてアルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.004重量部、及び硫酸アルミニウム0.01重量部を添加し、密閉容器内に発泡剤として炭酸ガスを8重量部圧入し、撹拌下に表2に示す発泡温度にまで昇温し、同温度に15分間保持して、所定の高温ピーク吸熱量が得られるように等温結晶化操作を行った後、内容物を大気圧下に放出して、表2に示す見かけ密度の発泡粒子を得た。また、前記操作における内容物を大気圧下に放出した時の容器内圧力を表2に併せて示す。なお、上記分散剤、界面活性剤、硫酸アルミニウムおよび発泡剤の使用量を表す重量部は、樹脂粒子100重量部に対する割合である。
得られた発泡粒子の1回目のDSC曲線における、全吸熱ピーク熱量(△H)と頂点温度が120℃以上135℃以下を示す吸熱ピークの熱量(△H120−135)、発泡粒子の2回目のDSC曲線における樹脂融点(表2中、樹脂融点と記載する)、及び発泡粒子の見かけ密度(ρ)、発泡粒子の加熱前後の見かけ密度比(ρ)を表2に示した。
実施例1における1回目のDSC曲線測定結果を図3に、2回目のDSC曲線の測定結果を図4に示す。図3において、実施例1で使用した樹脂3と樹脂5との混合樹脂に固有の吸熱ピークが、頂点温度125℃付近の吸熱ピークとして観察されている。また、図3において、混合樹脂の等温結晶化操作により形成された二次結晶領域の融解に起因する吸熱ピークが、頂点温度139℃付近の吸熱ピークとして観察されている。
図4において、前記樹脂の二次結晶領域の融解に起因する高温側の吸熱ピークは消失し、樹脂3と樹脂5に固有の吸熱ピークの融解に起因する吸熱ピークが、頂点温度が131℃付近、124℃付近の吸熱ピークとしてそれぞれ観察されている。
【0074】
(2)発泡粒子成形体の製造
上記で得られた発泡粒子を縦250mm×横250mm×厚み100mmの平板金型に充填し、表2に示す成形圧(飽和蒸気圧)の水蒸気加熱による型内成形を行い、厚肉発泡粒子成形体を得た。
更に、該発泡粒子成形体を80℃のオーブン中にて12時間養生してポリプロピレン系樹脂発泡粒子成形体を得た。
得られた発泡成形体の密度と、該発泡粒子成形体の内部融着性、二次発泡性、及び寸法安定性の評価結果をまとめて表2に示した。
【0075】
[比較例1〜9]
(1)ポリプロピレン系樹脂発泡粒子の製造
表1に記載のポリプロピレン系樹脂を、単独又はその2種類を表2に示す配合割合とした以外は、実施例1〜7に記載したと同様の方法により、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子を製造した。
実施例1〜7に記載したと同様に、得られた発泡粒子の1回目のDSC曲線における△Hと△H120−135、発泡粒子の2回目のDSC曲線における樹脂融点(表2中、樹脂融点と記載する)、及び発泡粒子の密度(ρ)、発泡粒子の加熱前後の見かけ密度比(ρ)を表2に示した。
(2)発泡粒子成形体の製造
実施例1〜7に記載したと同様の方法により型内成形を行い、厚肉発泡粒子成形体を得た。
更に、該発泡粒子成形体を80℃のオーブン中にて12時間養生してポリプロピレン系樹脂発泡粒子成形体を得た。
得られた発泡粒子成形体の密度と、該発泡粒子成形体の内部融着性、二次発泡性、及び寸法安定性の評価結果をまとめて表2に示した。
【0076】
[評価結果]
(i)実施例1〜7
実施例1〜7の発泡粒子は、本発明の構成要件を満足するものであり、型内成形時の成形圧が低いにもかかわらず、発泡粒子相互の融着性が良好な発泡成形体が得られている。尚、実施例7では基材樹脂のMFRがいずれも20(g/10分)未満であるので成型加熱圧力が多少高くなっている。
【0077】
(ii)比較例1〜5
比較例1〜5の発泡粒子から、発泡粒子の2回目のDSC曲線における樹脂融点にかかわらず、見かけ密度比(ρ)が1.6以上であると、型内成形時の成形圧を低くすることはできず発泡成形体の内部融着性は劣るものとなることがわかる。また、比較例1では更に該樹脂融点が本発明の範囲外であり、型内成形時の加熱蒸気圧力が高くなっている。
(iii)比較例6
比較例6の発泡粒子は、実施例1、2、4、5と同じ成分の樹脂を使用しているが、2種類の樹脂の配合割合が該実施例とは異なるものであるため、見かけ密度比(ρ)が1.6以上となり、発泡成形体の内部融着性に劣るものとなっている。
【0078】
(iv)比較例7
比較例7の発泡粒子は、実施例7と同じ成分の樹脂を使用しているが、2種類の樹脂の配合割合が該実施例とは異なるものであるため、見かけ密度比(ρ)が1.6以上となり、発泡成形体の内部融着性に劣るものとなっている。
(v)比較例8
比較例8の発泡粒子は、2種類の混合樹脂を基材樹脂とするものであり、各樹脂の融点差が3℃と狭いために、見かけ密度比(ρ)が1.6以上となり、発泡成形体の内部融着性に劣るものとなっている。
(vi)比較例9
比較例9の発泡粒子は、2種類の混合樹脂を基材樹脂とするものであり、各樹脂の融点差が17℃と広いために、見かけ密度比(ρ)が1.6以上となり、発泡粒子成形体の表面平滑性、発泡粒子相互の融着性を満足し得る型内成形時の成型圧の下限が高く、発泡粒子成形体の内部融着性に劣るものとなっている。
【0079】
【表2】

【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】本発明における、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子の1回目のDSC曲線の説明図
【図2】本発明における、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子の2回目のDSC曲線の説明図
【図3】本発明の実施例1における、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子の1回目のDSC曲線
【図4】本発明の実施例1における、ポリプロピレン系樹脂発泡粒子の2回目のDSC曲線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発泡粒子1〜3mgを試験片としてJIS K7121(1987年)に記載されている熱流束示差走査熱量測定法に基づいて、10℃/分の昇温速度で200℃まで昇温した後に、10℃/分の冷却速度で30℃まで降温し、再度10℃/分の昇温速度で30℃から200℃まで昇温した際に得られるDSC曲線により定まる樹脂融点が120℃以上140℃未満のポリプロピレン系樹脂発泡粒子(b)であって、
該発泡粒子(b)を耐圧容器内で前記樹脂融点より5℃低い温度の飽和水蒸気により10秒間加熱した際に、加熱前後の発泡粒子の見かけ密度比(ρ)[(加熱前の発泡粒子の見かけ密度)/(加熱後の発泡粒子の見かけ密度)]が1.5を超えない、
ことを特徴とするポリプロピレン系樹脂発泡粒子。
【請求項2】
前記ポリプロピレン系樹脂発泡粒子(b)の基材樹脂であるポリプロピレン系樹脂(a)が、融点110℃超135℃以下のポリプロピレン系樹脂(a1)50〜80重量%と、融点125℃以上140℃以下のポリプロピレン系樹脂(a2)50〜20重量%との混合樹脂(但し、ポリプロピレン系樹脂(a1)とポリプロピレン系樹脂(a2)との合計は100重量%である)であり、かつポリプロピレン系樹脂(a1)とポリプロピレン系樹脂(a2)との融点温度差[(a2の融点)−(a1の融点)]が5℃以上15℃未満である、
ことを特徴とする請求項1に記載のポリプロピレン系樹脂発泡粒子。
【請求項3】
前記ポリプロピレン系樹脂(a1)及びポリプロピレン系樹脂(a2)のいずれか一方、又は双方がメタロセン重合触媒存在下に重合して得られたポリプロピレン系樹脂である、
ことを特徴とする請求項2に記載のポリプロピレン系樹脂発泡粒子。
【請求項4】
前記ポリプロピレン系樹脂(a1)及びポリプロピレン系樹脂(a2)の少なくともいずれか一方のメルトフローレイトがJIS K7210(1999年)試験条件M(温度230℃、荷重2.16kg)に基づく測定値で20(g/10分)以上である、
ことを特徴とする請求項2又は3に記載のポリプロピレン系樹脂発泡粒子。
【請求項5】
発泡粒子1〜3mgを試験片としてJIS K7122(1987年)に記載されている熱流束示差走査熱量測定法に基づいて、10℃/分の昇温速度で常温から200℃まで昇温した際に得られるDSC曲線において複数の吸熱ピークが現れる発泡粒子(b)であって、該吸熱ピークの内、頂点温度が120℃以上135℃以下を示す吸熱ピークの合計熱量が、全吸熱ピークの合計熱量の50〜90%である、
ことを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載のポリプロピレン系樹脂発泡粒子。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか1項に記載のポリプロピレン系樹脂発泡粒子(b)を型内成形してなるポリプロピレン系樹脂発泡粒子成形体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−144096(P2009−144096A)
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−324644(P2007−324644)
【出願日】平成19年12月17日(2007.12.17)
【出願人】(000131810)株式会社ジェイエスピー (245)
【Fターム(参考)】