説明

ポリプロピレン系樹脂組成物、その製法およびそれから得られる発泡体

【課題】高い溶融張力を有し、かつ、ゲルが少ないポリプロピレン系樹脂組成物およびその製造方法を提供する。
【解決手段】メルトフローレートが0.1〜10g/分、メルトテンションが5〜20cN、分子量分布(Mw/Mn)が1.0〜3.0であることを特徴とするポリプロピレン系樹脂組成物(A)に係るものであり、該ポリプロピレン系樹脂組成物(A)の製造方法であって、分子量分布(Mw/Mn)が1.0〜2.7であり、メルトテンションが3cN以下のプロピレン系重合体(B)97〜99.8重量%と半減期が1分となる分解温度が50〜115℃である有機過酸化物(C)0.2〜3重量%を、50〜200℃で溶融混練することを特徴とするポリプロピレン系樹脂組成物の製造方法、該ポリプロピレン系樹脂組成物(A)から得られる発泡体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリプロピレン系樹脂組成物、その製法およびそれから得られる発泡体に関するものである。更に詳しくは、本発明は、高い溶融張力を有し、かつ、ゲルが少ないポリプロピレン系樹脂組成物およびその製法に関するものである。また、本発明は、該ポリプロピレン系樹脂組成物から得られる発泡体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリプロピレン系樹脂は、電気特性、耐溶剤性、成形加工性等の諸特性が優れることに加えて、比重が低いこと、安価であること等の特徴を備えており、発泡成形体やフィルムとして広く実用されている。
例えば、特許文献1あるいは特許文献2に発泡性の改良された改質ポリプロピレンとして、ポリプロピレンと、架橋型ペルオキシドを160〜250℃で溶融混練することにより製造された改質ポリプロピレンが記載されている。
【0003】
【特許文献1】特開2002−80610号公報
【特許文献2】特開2002−53714号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記公報等に記載されている改質ポリプリピレンについても、さらなるゲルの削減が望まれていた。
かかる状況に鑑み、本発明が解決しようとする課題は、高い溶融張力を有し、かつ、ゲルが少ないポリプロピレン系樹脂組成物およびその製造方法を提供することに存する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
すなわち、本発明は、メルトフローレートが0.1〜10g/分、メルトテンションが5〜20cN、分子量分布(Mw/Mn)が1.0〜3.0であることを特徴とするポリプロピレン系樹脂組成物(A)に係るものであり、該ポリプロピレン系樹脂組成物(A)の製造方法であって、分子量分布(Mw/Mn)が1.0〜2.7であり、メルトテンションが3cN以下のプロピレン系重合体(B) 97〜99.8重量%と半減期が1分となる分解温度が50〜115℃である有機過酸化物(C) 0.2〜3重量%を、50〜200℃で溶融混練することを特徴とするポリプロピレン系樹脂組成物の製造方法に係るものであり、該ポリプロピレン系樹脂組成物(A)から得られる発泡体に係るものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、高い溶融張力を有し、かつゲルが少ないポリプロピレン系樹脂組成物を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物(成分(A))は、メルトフローレートが0.1〜10g/分、メルトテンションが5〜20cN、分子量分布(Mw/Mn)が1.0〜3.0であることを特徴とするポリプロピレン系樹脂組成物である。
メルトフローレートが0.1以下の場合、成形性が不十分な場合があり、10以上の場合、メルトテンションが不十分な場合がある。メルトフローレートは0.1〜10g/分であり、好ましくは0.1〜8g/分である。
分子量分布(Mw/Mn)が3.0以上の場合、ゲルが多くなる場合がある。分子量分布(Mw/Mn)は1.0〜3.0であり、好ましくは1.0〜2.7である。
【0008】
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物は、例えば、分子量分布(Mw/Mn)が1.0〜2.7であり、メルトテンションが3cN以下のプロピレン系重合体(B) と半減期が1分となる分解温度が50〜115℃である有機過酸化物(C) を、溶融混練して得られる。溶融混練に用いる装置は、特に限定されないが、コニ−ダー、バンバリーミキサー、ブラベンダー、単軸押出機、2軸押出機などを用いることができる。これらのうちで、2軸押出機が、混練性、生産性の観点から好ましい。溶融混練時の加熱温度は、50℃〜200℃の範囲である。
【0009】
フィード方法は、材料を一括で投入する方法、材料の一部をサイドフィードする方法、予備混練物をフィードする方法が考えられるがいずれの方法でもかまわない。材料を一括フィードする場合は、材料をリボンブレンダー、タンブラーブレンダ−、ヘンシェルミキサー等で予め混合したほうが好ましい。
【0010】
本発明で用いられるプロピレン系重合体(成分(B))とは、プロピレン単独重合体、または、エチレンおよび炭素数4以上のα−オレフィンからなる群から選ばれた少なくとも一種のオレフィンとプロピレンとの共重合体である。
【0011】
エチレンおよび炭素数4以上のα−オレフィンからなる群から選ばれた少なくとも一種のオレフィンとプロピレンとの共重合体としては、エチレンおよび炭素数4以上のα−オレフィンからなる群から選ばれた少なくとも一種のオレフィンとプロピレンとからなるプロピレン系ランダム共重合体、または、プロピレン単独重合体部分とプロピレン−エチレンランダム共重合体部分とを含有するプロピレン系ブロック共重合体が挙げられる。(ただし、前記プロピレン単独重合部分は、1.0重量%以下のエチレンまたは炭素数4以上のα−オレフィンを含有していても良い。なお、前記プロピレン単独重合体の全量を100重量%とする。)
【0012】
本発明で用いられるプロピレン系重合体(成分(B))として、好ましくはプロピレン単独重合体またはプロピレン系ランダム共重合体であり、より好ましくはプロピレン単独重合体である。
【0013】
本発明で用いられるプロピレン系重合体(成分(B))のメルトテンションは3cN以下である。メルトテンションが3cNより大きい場合、ゲルが多くなる場合がある。
【0014】
本発明で用いられるプロピレン系重合体(成分(B))のゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)で測定される分子量分布(重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn))は1.0〜2.7であり、好ましくは1.1〜2.6であり、より好ましくは1.5〜2.0である。
分子量分布(Mw/Mn)が2.7より大きい場合、ゲルが多くなる場合がある。
【0015】
本発明で用いられるプロピレン系重合体(成分(B))の極限粘度([η]、単位:dl/g)は、溶融張力を増加させるという観点から、好ましくは1.0dl/g以上であり、より好ましくは1.5dl/g以上であり、さらに好ましくは2.0dl/g以上である。
【0016】
極限粘度は、ウベローデ型粘度計を用いて濃度0.1、0.2および0.5g/dlの3点について還元粘度を測定する。極限粘度は、「高分子溶液、高分子実験学11」(1982年共立出版株式会社刊)第491頁に記載の計算方法、すなわち、還元粘度を濃度に対しプロットし、濃度をゼロに外挿する外挿法によって求める。プロピレン系重合体(成分(B))については、溶媒としてテトラリンを用い、温度135℃で評価する。
【0017】
前記プロピレン単独重合体、プロピレン系ランダム共重合体、また、プロピレン系ブロック重合体の単独重合体部分の13C−NMRによって測定されるアイソタクチック・ペンタッド分率として、好ましくは0.94以上である。
【0018】
アイソタクチック・ペンタッド分率とは、A.ZambelliらによってMacromolecules,6,925(1973)に記載されている方法(すなわち13C−NMRを用いる方法)によって測定されるポリプロピレン分子鎖中のペンタッド単位でのアイソタクチック連鎖(換言すればプロピレンモノマー単位が5個連続してメソ結合した連鎖)の中心にあるプロピレンモノマー単位の分率である(ただし、NMR吸収ピークの帰属は、その後、発行されたMacromolecules,8,687(1975)に基づいて行う)。
【0019】
具体的には13C−NMRスペクトルのメチル炭素領域の全吸収ピーク中のmmmmピークの面積分率としてアイソタクチック・ペンタッド分率を測定する。この方法によって、英国 NATIONAL PHYSICAL LABORATORYのNPL標準物質 CRM No.M19−14 Polypropylene PP/MWD/2のアイソタクチック・ペンタッド分率を測定したところ、0.944であった。
【0020】
本発明で用いられるプロピレン系重合体(成分(B))は、示差走査熱量計(DSC)で測定した場合に、結晶の融解に基づく融解熱量が1J/g以上であるピークを有するプロピレン系樹脂が好ましい。結晶の融解に基づく融解熱量が1J/g未満であるピークを有する場合、得られる樹脂組成物の剛性が劣ることがある。結晶の融解に基づくピークの測定は、例えば、示差走査熱量計として、セイコー電子工業社製 DSC220Cを用い、昇温速度10℃/minで行う。
結晶の融解に基づく融解熱量はより好ましくは5J/g以上、さらに好ましくは10J/g以上である。
【0021】
前記プロピレン単独重合体、プロピレン系ランダム共重合体、また、プロピレン系ブロック重合体の共重合比(rP×rE)が2.5以下、好ましくは2.0以下、より好ましくは、1.5以下である。共重合比はプロピレンとエチレンの共重合の場合、K.Soga Macromolecular Chemistry and Physics,191,2854(1990)と同様に、rP×rE=4×[PP]×[EE]/[EP]/[EP]に従って算定したときの値である。([PP],[EE],[EP]は13C−NMRスペクトルから求めたダイアド分率である。)
【0022】
本発明で用いられるプロピレン系重合体(成分(B))の製造方法は、公知の重合触媒を用いて、公知の重合方法によって製造する方法が挙げられる。狭分子量分布の共重合体が得られる点から、メタロセン系重合触媒を用いて、製造することが好ましい。メタロセン系重合触媒としては、シクロペンタジエニル骨格を少なくとも1個有する周期表第4族〜第6族の遷移金属錯体と、該金属錯体と対アニオンを形成可能なアルミニウム化合物(たとえば、メチルアルミノキサン)やホウ素化合物(たとえば、トリフェニルメチルテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートあるいはN,N−ジメチルアニリウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート)から成る触媒を挙げることができる。
【0023】
メタロセン系重合触媒の具体例としては、たとえば、特開平6−172414号公報や特開平8−27237号公報やWO2004/044013号公報やWO2003/040195号公報やWO2003/040201号公報等を挙げることができる。
【0024】
本発明で用いられるプロピレン系重合体(成分(B))の重合方法としては、例えば、バルク重合法、溶液重合法、スラリー重合法、気相重合法等が挙げられる。これらの重合法は、バッチ式、連続式のいずれでもよく、また、これらの重合法を任意に組合せてもよい。
【0025】
本発明の有機過酸化物(成分(C))は、半減期1分となる分解温度が50〜115℃である有機過酸化物である。分解温度が低すぎるとグラフト量が向上せず、分解温度が高すぎると樹脂の分解が促進される。また、これらの有機過酸化物は分解してラジカルを発生した後、ポリプロピレン樹脂からプロトンを引き抜く作用があることが好ましい。半減期が1分となる分解温度が50〜120℃である有機過酸化物としては、ジアシルパーオキサイド化合物、パーカボネート化合物(分子骨格中に下記構造式1で表される構造を有する化合物I)やアルキルパーエステル化合物(下記構造式2で表される構造を有する化合物II)等があげられる。


構造式1

構造式2
【0026】
前記構造式1で表される構造を有する化合物Iとしては、ジ−3−メトキシ ブチル パーオキシジカルボネート,ジ−2−エチルヘキシル パーオキシジカルボネート、ビス(4−t−ブチル シクロヘキシル)パーオキシジカルボネート、ジイソプロピル パーオキシジカルボネート、t−ブチル パーオキシイソプロピルカーボネート、ジミリスチル パーオキシカルボネート等があげられる。前記構造式2で表される構造を有する化合物IIとしては、1,1,3,3−テトラメチル ブチル ネオデカノエート,α―クミル パーオキシ ネオデカノエート,t−ブチル パーオキシ ネオデカノエート等があげられる。これらの有機過酸化物(B)のうち、好ましいのは、パーカボネート化合物である。
【0027】
本発明における成分(B)の量は97〜99.8重量%であり、成分(C)の量は0.2〜3重量%である。成分(C)の量が過少の場合、得られる樹脂組成物のメルトテンションが不十分となる場合があり、成分(C)の量が過多の場合、ゲルが発生する場合がある。
【0028】
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、必要に応じて、着色剤、熱安定剤、光安定剤、酸化防止剤、結晶核剤、可塑剤、ビニル単量体及び離型剤を添加することができる。
【0029】
本発明の製造方法によって得られるプロピレン系樹脂組成物は、溶融張力が高く、ゲルが少ないため、射出発泡成形、押出発泡成形、フィルム押出し成形、ブロー成形、シート押出成形等に好適に用いられる。
【0030】
本発明の発泡体を製造するには、主として次の2つの方法を例示することができる。(1):前記の方法で得たプロピレン系樹脂組成物と分解型発泡剤と必要に応じて他の添加剤を含む組成物を溶融加熱し、発泡成形することにより製造することができる。本発明の発泡体の製法の別の例としては、(2)溶融させた状態のプロピレン系樹脂組成物に揮発型発泡剤を圧入したのち、押出機により押し出すことにより発泡体をうる方法を挙げることができる。
【0031】
前記方法(1)の場合には、発泡剤として分解型発泡剤を用いる。分解型発泡剤は発泡剤が分解して炭酸ガス、窒素ガス等の気体を発生する化合物であって、無機系の発泡剤であっても有機系の発泡剤であってもよく、また気体の発生を促す有機酸等を併用添加してもよい。分解型発泡剤の具体例として、次の化合物を挙げられる。
【0032】
(a)無機系発泡剤:重炭酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、重炭酸アンモニウム、炭酸アンモニウム、亜硝酸アンモニウム、クエン酸、クエン酸ナトリウム。
(b)有機系発泡剤:N,N′−ジニトロソテレフタルアミド、N,N′−ジニトロソペンタメチレンテトラミン等のN−ニトロソ化合物;アゾジカルボンアミド、アゾビスイソブチロニトリル、アゾシクロヘキシルニトリル、アゾジアミノベンゼン、バリウムアゾジカルボキシレート等のアゾ化合物;ベンゼンスルフォニルヒドラジド、トルエンスルフォニルヒドラジド、p,p′−オキシビス(ベンゼンスルフェニルヒドラジド)、ジフェニルスルフォン−3,3′−ジスルフォニルヒドラジド等のスルフォニルヒドラジド化合物;カルシウムアジド、4,4′−ジフェニルジスルフォニルアジド、p−トルエンスルフォニルアジド等のアジド化合物。これらの中では、重炭酸水素ナトリウム等の炭酸塩または炭酸水素塩が好ましい。
【0033】
前記の発泡剤の添加量(混練量)は発泡剤の種類および目標発泡倍率により選択すればよいが、プロピレン系樹脂組成物100重量部に対して、0.5〜100重量部の範囲内にあることが好ましい。また、発泡体の気泡径を適宜の大きさにコントロールするために、必要に応じて、クエン酸等の有機カルボン酸またはタルクなどの発泡核剤を併用してもよい。必要に応じて用いられる該発泡核剤は、通常、プロピレン系樹脂組成物100重量部に対して、0.01〜2重量部添加して用いられる。
【0034】
前記発泡方法(1)の場合には、プロピレン系樹脂組成物と前記分解型発泡剤とを共に溶融押出機に供給し、適宜の温度で溶融混練しながら発泡剤を熱分解させることにより気体を発生させ、この気体を含有する溶融状態のプロピレン系樹脂組成物をダイより吐出することにより、発泡体に成形することができる。この方法における溶融混練温度および溶融混練時間は、用いられる発泡剤および混練条件により適宜選択すればよく、通常溶融混練温度が170〜300℃、溶融混練時間が1〜60分間で行うことができる。
【0035】
前記発泡方法(2)の場合には、発泡剤として揮発型発泡剤を用いることができる。このうち好ましい揮発型発泡剤としては、たとえばプロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタンなどの脂肪族炭化水素類;シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサンなどの脂環式炭化水素類;クロロジフルオロメタン、ジフルオロメタン、トリフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロメタン、ジクロロフルオロメタン、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、クロロメタン、クロロエタン、ジクロロトリフルオロエタン、ジクロロフルオロエタン、クロロジフルオロエタン、ジクロロペンタフルオロエタン、テトラフルオロエタン、ジフルオロエタン、ペンタフルオロエタン、トリフルオロエタン、ジクロロテトラフルオロエタン、トリクロロトリフルオロエタン、テトラクロロジフルオロエタン、クロロペンタフルオロエタン、パーフルオロシクロブタンなどのハロゲン化炭化水素類;二酸化炭素、チッ素、空気などの無機ガス;水などの1種または2種以上を挙げることができる。
【0036】
前記(2)の方法における発泡剤の添加量(混練量)は、発泡剤の種類および目標発泡倍率により異なるが、プロピレン系樹脂組成物100重量部に対して、0.5〜100重量部の範囲内にあることが好ましい。また、前記方法(2)の場合には、押出機内で前記プロピレン系樹脂組成物を溶融させ、この押出機内に前記揮発型発泡剤を圧入し、高圧に保持しつつ溶融状態にあるプロピレン系樹脂組成物と混練し、充分に混練されたプロピレン系樹脂組成物と揮発型発泡剤との混練体をダイより押出す。この方法における溶融混練温度および溶融混練時間は、用いられる発泡剤および混練条件により適宜選択すればよく、樹脂の種類により異なるが、溶融混練温度が130〜300℃、溶融混練時間が1〜120分間であることが通常である。
【0037】
前記(1)の方法においても、前記(2)の方法においても、押出機で溶融し、発泡セルを有する溶融物をTダイもしくは円筒状のダイより吐出し、好ましくはシートを成形することにより、発泡体に成形しうる。円筒状のダイより吐出した場合は、通常円筒状シートを1つまたは複数に切り分けた後に平滑にしたシートを引き取る。
【0038】
本発明における発泡体は、軽量性、断熱性、外部からの応力の緩衝性または圧縮強度が好適であるという点から、その密度が0.09〜0.6g/cm3であることが好ましく、特に0.15〜0.3g/cm3であることがさらに好ましい。従って、プロピレン系樹脂組成物の発泡倍率は、好ましくは1.3〜10倍、特に1.6〜6倍発泡の範囲である。
【0039】
また、本発明の発泡体は、好適な耐熱性を有し、外力の緩衝性がよく、そして好適な圧縮強度を有するという点から、その独立気泡率が50%以上であることが好ましく、70%以上であることがさらに好ましい。また、本発明における発泡体の製法において、製造しうる形状としてはシート状やボード状などの板状、チューブ状あるいは袋状などの中空状、円柱状、だ円柱状、角柱状あるいはストランド状などの柱状、粒子状など様々な形状があげられる。
【0040】
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物(A)はメルトテンションが高く、かつMFRが適度であることから、特に発泡シート状に成形することに適している。本発明のポリプロピレン系樹脂組成物(A)から製造された発泡シートは二次成形成が良好であり、熱圧空成形または真空成形により、発泡シートからトレー等を多量に成形することができる。
【0041】
本発明の発泡体は軽量で剛性が高く、かつ耐薬品性、食品衛生性に優れていることから、従来ポリスチレンが使用されていた食品包装用、特にカップラーメン、アイスクリーム容器、魚、肉のトレー等に使用することができる。
【実施例】
【0042】
以下、実施例に基づいて本発明を更に詳しく説明する。
以下に実施例及び比較例で使用した樹脂(略号の意味)を示す。
(1)PP1:MFR=6、Mw/Mn=2.6、エチレン含量 5wt%のプロピレン−エチレン共重合体(本発明の(A):ダウケミカル(株)製 VERSIFY DE2300)
(2)PO:ジセチルパーオキシジカルボネート、半減期が1分となる温度=99℃(本発明の(B))
測定・評価方法は下記のとおりである。
【0043】
メルトフローレート(MFR、単位:g/10分)
ASTM D1238に従って測定する。測定温度は230℃であり、荷重は21.2Nで測定する。
【0044】
溶融張力(MT、単位:cN)
東洋精機社製溶融張力測定機を用い、下記条件にて測定する。
オリフィス:L/D=4 (D=2mm)
予熱:10分
押出速度:5.7mm/分
引取速度:15.6m/分
【0045】
分子量分布
以下の方法によりポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)を測定する。GPCの測定条件は以下のとおりである。
GPC:Waters社製 150C Plus型
カラム:東ソー(株)製 TSK−GEL GMH HR−H(S)×3本直列
サンプル量:300μl(ポリマー濃度0.1wt%)
流量:1ml/分
温度:140℃
溶媒:o−ジクロルベンゼン
検量線は東洋曹達(株)製の標準ポリスチレンを使用し、常法により作成する。またデータ処理は、Waters社製データ処理ソフト「ミレニアム」を使用する。
【0046】
ゲル分率(単位:重量%)
ゲル分率は、400メッシュの金網中に試料2g挿入し、沸騰パラキシレン還流で6時間抽出を行い金網内に残存した残渣の重量から下記の式で算出する。
ゲル分率[重量%]=残渣重量[g]/仕込み重量[g]×100
実施例1
【0047】
予め十分に予備混合したPP1(99wt%重量部)、PO(1wt%)をスクリュー回転数70rpm、シリンダー温度180℃に設定した二軸押出機(東洋精機製20mmφ押出機)のフィーダーより供給し溶融混練を行い評価用のペレットを得る。
得られたペレットを用い、メルトフローレート、メルトテンション、分子量分布(Mw/Mn)、ゲル分率を測定する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
メルトフローレートが0.1〜10g/分、メルトテンションが5〜20cN、分子量分布(Mw/Mn)が1.0〜3.0であることを特徴とするポリプロピレン系樹脂組成物(A)。
【請求項2】
請求項1記載のポリプロピレン系樹脂組成物(A)の製造方法であって、分子量分布(Mw/Mn)が1.0〜2.7であり、メルトテンションが3cN以下のプロピレン系重合体(B) 97〜99.8重量%と半減期が1分となる分解温度が50〜115℃である有機過酸化物(C) 0.2〜3重量%を、50〜200℃で溶融混練することを特徴とするポリプロピレン系樹脂組成物の製造方法。
【請求項3】
請求項1記載のポリプロピレン系樹脂組成物(A)から得られる発泡体。

【公開番号】特開2008−150474(P2008−150474A)
【公開日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−339000(P2006−339000)
【出願日】平成18年12月15日(2006.12.15)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】