説明

ポリプロピレン系樹脂組成物、それからなる積層体および二軸延伸ポリプロピレンフィルム

【課題】透明性、耐傷付き性、耐ブロッキング性、外観および成形性に優れ、印刷特性が良好な二軸延伸ポリプロピレンフィルムを得ることができるポリプロピレン系樹脂組成物、それからなる積層体及び二軸延伸ポリプロピレンフィルムを提供する。
【解決手段】プロピレン系重合体(A)100重量部に対し、レーザー回折法による平均粒径が1.0〜3.0μm、BET法による比表面積が250〜480m/g、細孔容積が1.0ml/g以下、かつ吸油量が200ml/100g以下である、ゲル化法で製造された二酸化ケイ素(B)を0.01〜0.5重量部、および酸変性ポリプロピレン樹脂(C)0.1〜10重量部を含有することを特徴とするポリプロピレン系樹脂組成物、それからなる積層体及び二軸延伸ポリプロピレンフィルムなど。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリプロピレン系樹脂組成物、それからなる積層体および二軸延伸ポリプロピレンフィルムに関し、さらに詳しくは、透明性、耐傷付き性、耐ブロッキング性、外観、成形性などに優れ、特に印刷特性が良好な二軸延伸ポリプロピレンフィルムとして好適なポリプロピレン系樹脂組成物、それからなる積層体および二軸延伸ポリプロピレンフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、二軸延伸ポリプロピレンフィルムに関する要求性能はますます高まってきており、商品価値の高い光学物性を持つフィルムが強く求められている。中でも食品包装材に代表される各種包装材の分野で用いられるアンチブロッキング剤において、アンチブロッキング剤のポリプロピレンフィルムへの分散性が、透明性、外観や耐傷付き性に大きく影響し、商品価値を著しく左右する。例えば、耐ブロッキング性は、フィルム成形時や二次加工時等において必須の性能であり、これらの性能向上のため、通常、アンチブロッキング剤が好適な配合剤として用いられているが、このアンチブロッキング剤の分散性が白斑、印刷特性に、大きく影響している。アンチブロッキング剤の分散性が悪いと、白斑による外観不良や印刷抜けが発生し、商品としての価値が低下することから、白斑および印刷特性の良好なものが必須となっている。アンチブロッキング剤としては、二酸化ケイ素、例えば、合成シリカ等が、比較的柔らかく、フィルム同士のこすれによってもフィルム表面が傷つき難いことから、よく用いられている。
【0003】
このアンチブロッキング剤は、樹脂とともに攪拌機によってブレンドする際、アンチブロッキング剤の粒子が崩壊し易く、粒子が小さくなり、耐ブロッキング性を悪化させるだけでなく、それらが二次凝集を引き起こすことによって、分散性が悪化し、白斑様の外観不良を発生させ、更には印刷抜けの原因ともなり、製品価値を低下させるという問題を有する。
【0004】
以上に挙げたような種々の問題を解決する試みとして、様々な手法が提案されている(例えば、特許文献1〜3参照。)。
特許文献1には、特定性状のポリプロピレン樹脂粒子に、特定性状の合成シリカを含有するポリプロピレン樹脂組成物が開示されている。しかしながら、細孔容積が0.7ml/g以下の比較的硬い合成シリカを使用しており、耐傷付き性において、満足いくものではなかった。
また、特許文献2には、特定性状のポリプロピレン樹脂粒子に、特定の方法(沈降法)で合成された二酸化ケイ素粉末を配合し、溶融押出して得られた延伸フィルムが開示されている。しかしながら、沈降法以外では、分散性と耐傷付き性のバランスが十分満足させるものを得られてはいなかった。
さらに、特許文献3には、平均粒径、比表面積、細孔容積及び吸油量のそれぞれの値が特定範囲の球状合成シリカとプロピレン系重合体とを含む樹脂組成物から得られるポリプロピレン系フィルムが記載されているが、透明性、耐傷付き性、耐ブロッキング性、外観、成形性、印刷特性などが不十分であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−072812号公報
【特許文献2】特開2008−144043号公報
【特許文献3】特開2008−208210号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、前記二軸延伸ポリプロピレンフィルムに要求される高度な性能に対応すべく、透明性、耐傷付き性、耐ブロッキング性、外観および成形性に優れ、印刷特性が良好な二軸延伸ポリプロピレンフィルムを得ることのできるポリプロピレン系樹脂組成物、積層体および二軸延伸ポリプロピレンフィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するため、鋭意研究を重ねた結果、プロピレン系重合体に、特定の物性を有する二酸化ケイ素および酸変性ポリプロピレンを、特定割合で配合してなるポリプロピレン系樹脂組成物により、透明性、耐傷付き性、耐ブロッキング性、外観および成形性に優れ、印刷特性が良好な二軸延伸ポリプロピレンフィルムが得られることを見出し、これらの知見に基づき、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明の第1の発明によれば、プロピレン系重合体(A)100重量部に対し、レーザー回折法による平均粒径が1.0〜3.0μm、BET法による比表面積が250〜480m/g、細孔容積が1.0ml/g以下、かつ吸油量が200ml/100g以下である、ゲル化法で製造された二酸化ケイ素(B)を0.01〜0.5重量部、および酸変性ポリプロピレン樹脂(C)0.1〜10重量部を含有することを特徴とするポリプロピレン系樹脂組成物が提供される。
【0009】
また、本発明の第2の発明によれば、少なくとも層(1)と層(2)の異なる2層からなる積層体であって、前記層(1)が第1の発明に係るポリプロピレン系樹脂組成物からなり、かつ前記層(2)が前記プロピレン系重合体(A)を含み、かつプロピレン系重合体(A)100重量部に対し、前記二酸化ケイ素(B)の含有量が0.01重量部未満の樹脂組成物からなることを特徴とする積層体が提供される。
【0010】
また、本発明の第3の発明によれば、第2の発明に係る積層体を製膜してなることを特徴とする二軸延伸ポリプロピレンフィルムが提供される。
また、本発明の第4の発明によれば、第3の発明において、前記層(1)に相当する層の厚みが0.5〜2.0μmであることを特徴とする二軸延伸ポリプロピレンフィルムが提供される。
さらに、本発明の第5の発明によれば、第3又は4の発明において、前記層(1)の厚みを1.5μmとした際に、フィルム表面に、高さ0.5μm以上の突起が2mm当り50個未満であることを特徴とする二軸延伸ポリプロピレンフィルムが提供される。
【0011】
また、本発明の第6の発明によれば、第3〜5のいずれかの発明に係る二軸延伸ポリプロピレンフィルムからなることを特徴とする食品包装フィルムが提供される。
【0012】
本発明は、上記の如くポリプロピレン系樹脂組成物、積層体、二軸延伸ポリプロピレンフィルムなどに係るものであるが、その好ましい態様としては、次のものが包含される。
(1)第1の発明において、二酸化ケイ素(B)は、細孔容積が0.3〜0.9ml/gであり、吸油量が130〜190ml/100g、好ましくは150〜170ml/100gであることを特徴とするポリプロピレン系樹脂組成物。
(2)第1の発明において、酸変性ポリプロピレン樹脂(C)は、重量平均分子量が10000〜100000、好ましくは20000〜70000であり、酸価が3〜80mgKOH/g、好ましくは10〜60mgKOH/gであり、また、軟化点が130〜170℃、好ましくは140〜160℃であることを特徴とするポリプロピレン系樹脂組成物。
(3)第1の発明において、酸変性ポリプロピレン樹脂(C)は、不飽和カルボン酸および/またはその無水物が、0.1〜12重量%、好ましくは1〜10重量%の割合で含有され、かつアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸または無水シトラコン酸から選ばれ、好ましくは無水マレイン酸であることを特徴とするポリプロピレン系樹脂組成物。
(4)第2の発明において、少なくとも3層からなる積層体であって、前記層(1)が印刷面として用いられ、前記層(2)がコア層であることを特徴とする積層体。
【発明の効果】
【0013】
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物によれば、外観に影響する分散性、透明性、耐傷付き性等に優れ、印刷特性が良好な二軸延伸ポリプロピレンフィルムを得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明のポリプロピレン系樹脂組成物、それからなる積層体および二軸延伸ポリプロピレンフィルムについて、項目毎に詳細に説明するが、本発明は以下の説明に制限されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、任意に変形して実施することができる。なお、本明細書において「〜」という表現を用いて前後に数値または物性値を挟んだ場合、その前後の数値または物性値を含む意味で用いることとする。
【0015】
[1]ポリプロピレン系樹脂組成物
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物は、プロピレン系重合体(A)100重量部に対し、レーザー回折法による平均粒径が1.0〜3.0μm、BET法による比表面積が250〜480m/g、細孔容積が1.0ml/g以下、かつ吸油量が200ml/100g以下である、ゲル化法で製造された二酸化ケイ素(B)を0.01〜0.5重量部、および酸変性ポリプロピレン樹脂(C)0.1〜10重量部を含有することを特徴とするものである。
【0016】
[1−1]プロピレン系重合体(A)
本発明に用いられるプロピレン系重合体(A)は、プロピレン単独重合体、及び/又はプロピレンとプロピレン以外のα−オレフィンとの共重合体(以下、本明細書においては単に、「プロピレン−α−オレフィン共重合体」と称することがある。)である。
プロピレン−α−オレフィン共重合体は、プロピレンとプロピレンを除く炭素数2〜8のα−オレフィンをコモノマーとする共重合体、好ましくはプロピレン含量が97重量%以上、特に好ましくは99重量%以上のプロピレンとα−オレフィンとのランダム共重合体である。ここでは、α−オレフィンの異なるランダム共重合体の混合物であってもよい。
また、プロピレンと共重合させるプロピレンを除く炭素数2〜8のα−オレフィンであるコモノマーは、1種用いてもよいし、また、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
プロピレン−α−オレフィン共重合体としては、プロピレン−エチレンランダム共重合体、プロピレン−エチレン−ブテン−1ランダム共重合体などが好ましい。
【0017】
プロピレンを除く炭素数2〜8のα−オレフィンとしては、例えば、エチレン、1−ブテン、2−メチル−1−プロペン、1−ペンテン、2−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ブテン、1−ヘキセン、2−エチル−1−ブテン、2,3−ジメチル−1−ブテン、2−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、3,3−ジメチル−1−ブテン、1−ヘプテン、メチル−1−ヘキセン、ジメチル−1−ペンテン、エチル−1−ペンテン、トリメチル−1−ブテン、1−オクテン等を挙げることができる。
【0018】
また、成形性の観点からポリプロピレン系重合体(A)は融点が、157〜170℃であることが好ましく、160〜165℃であることがより好ましい。ポリプロピレン系重合体(A)の融点が、157℃以上であると印刷時にかかる加熱に対する耐熱性の点で好ましく、165℃ではより好ましい。一方、170℃以下であると、耐熱性の点で好ましい。ポリプロピレン系重合体(A)の融点は主として、原料として用いられるプロピレンとプロピレン以外のα−オレフィンの種類、共重合比率、MFR等により、適宜制御することができる。なお、本明細書でいう「融点」とは示差走査熱量計(DSC:Differential Scanning Calorimeter)により、測定された融解ピーク温度である。
【0019】
本発明に用いられるプロピレン系重合体(A)は、JIS K7210に準拠したメルトフローレート(以下、MFRとも記す。)[測定温度230℃、荷重21.18N(2.16kg)]について、特に制限はないが、MFRが1〜20g/10分であるのが好ましく、1〜10g/10分がより好ましい。MFRが1g/10分以上、10g/10分以下であると押出性や外観の点で好ましい。
【0020】
また、ポリプロピレン系重合体(A)は、その結晶化度を示すアイソタクチックインデックス(II)が95%以上であることが好ましく、96%以上であることがより好ましい。アイソタクチックインデックス(II)が95%以上であると印刷時にかかる耐熱性の点で好ましい。ポリプロピレン系重合体(A)の結晶化度の制御は、原料の共重合比率や、使用する触媒によって分子量分布を制御することにより調整することができる。なお、結晶化度の指標を示すアイソタクチックインデックス(II)は、改良型ソックスレー抽出器で沸騰ヘプタンにより6時間抽出した場合の残量(重量%)から測定される。
【0021】
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物に用いられるプロピレン系重合体(A)を得るために用いられる触媒は、特に限定されるものではなく、公知の触媒が使用可能である。例えば、チタン化合物と有機アルミニウムを組み合わせた、いわゆるチーグラー・ナッタ触媒(例えば、ポリプロピレンハンドブック(1998年5月15日 初版第1刷発行)等に記載)、あるいは、メタロセン触媒(例えば、特開平5−295022号公報等に記載)が使用できる。食品包装材に代表される各種包装材においては耐熱性の高いものが好ましく、この点においてはプロピレン系重合体(A)として、融点の高いものが得られやすい、チーグラー・ナッタ触媒を用いることが好ましい。
【0022】
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物に用いられるプロピレン系重合体(A)を得るために用いられる重合プロセスは、特に限定されるものではなく、公知の重合プロセスが使用可能である。例えば、スラリー重合法、バルク重合法、気相重合法等が使用できる。また、バッチ重合法や連続重合法のいずれも用いることができ、所望により、二段及び三段等の複数段の連続重合法を用いてもよい。また、2種以上のプロピレン系重合体を機械的に溶融混練することによっても、製造することができる。
【0023】
[1−2]二酸化ケイ素(B)
本発明で用いられる二酸化ケイ素(B)は、ゲル化法で合成されたものである。一般に、アンチブロッキング剤として使用される二酸化ケイ素の合成法としては、湿式法、乾式法が知られている。乾式法とは、高温気相反応で二酸化ケイ素を合成する方法であり、一方、湿式法とは、ケイ酸ナトリウムと酸を反応させて、二酸化ケイ素を合成する方法である。湿式法には、ゲル化法と沈降法があり、ゲル化法は、ケイ酸ナトリウムと硫酸などの酸との反応を、酸性下で進行させて、1次粒子の成長を抑えた状態で、三次元の網目構造により、ゲル化させる合成方法である。ゲル化法は、一次粒子間の反応時間が長く、粒子間の接着強度が高いため、シリカの崩壊がし難く、2次凝集起因の白斑の増加を低減することができる。しかし、沈降法では、一次粒子同士の反応時間がゲル化法に比べ短いため、一次粒子間の接着強度が弱いことから、シリカの崩壊が発生し易い。そのため、崩壊した微細なシリカ同士が2次凝集し白斑が悪化することから、ゲル化法が適している。
【0024】
本発明に用いられるゲル化法で合成された二酸化ケイ素(B)は、平均粒径が1.0〜3.0μmであり、好ましくは1.7〜2.7μmである。平均粒径の値は、レーザー回折法で測定された値である。二酸化ケイ素(B)の平均粒径が1.0μmより小さいと、ロールに巻き取った場合や最終製品で、所望のアンチブロッキング性が得られず、3.0μmより大きいと、印刷時にインキ抜けが発生し品質の低下となる。
また、本発明のポリプロピレン系樹脂組成物に用いる二酸化ケイ素(B)は、比表面積が250〜480m/gである。更に、二酸化ケイ素(B)の比表面積は、好ましくは420m/g以上であり、一方、上限は好ましくは470m/g以下である。ここで、比表面積の測定方法は、BET法に準拠する方法である。
さらに、本発明のポリプロピレン系樹脂組成物に用いる二酸化ケイ素(B)は、細孔容積が1.0ml/g以下であり、好ましくは0.9ml/g以下である。一方、細孔容積の下限は、特に制限されないが、通常、0.3ml/g以上、好ましくは0.4ml/g以上、より好ましくは0.5ml/g以上である。ここで、細孔容積の値は、水銀圧入法またはN吸着法に準拠して測定された値である。
【0025】
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物に用いる二酸化ケイ素(B)は、吸油量が200ml/100g以下である。二酸化ケイ素(B)の吸油量は、好ましくは100ml/100g以上、より好ましくは130ml/100g以上、更に好ましくは150ml/100g以上であり、一方、上限は好ましくは190ml/100g以下、より好ましくは170ml/100g以下である。吸油量は、JIS K5101−13−1またはJIS K5101−13−2により、測定することができる。
二酸化ケイ素(B)の比表面積が250m/gに満たないと、粒子が硬く、フィルムを成形した際にフィルム表面の擦れによる傷付きが発生しやすく、耐傷付き性が悪化し、また、比表面積が250m/g未満であると、フィルムとしたときの印刷特性が悪化する。一方、二酸化ケイ素(B)は、比表面積が480m/gを超えても、フィルムとしたときの耐傷付き性が悪化する。
また、吸油量が100ml/100gより小さいと、細孔容積も小さくなるため、粒子が硬くなり、耐傷付き性が悪化しやすくなる。一方、吸油量が200ml/100gより大きくなると、柔らかく、崩壊しやすい構造となるために2次凝集し易くなり、フィルムとしたときの白斑が多く発生する。また、白斑が発生すると、更にフィルム表面の凹凸が大きくなり、印刷特性が悪化しやすくなる。
同様に、細孔容積が1.0ml/g超になると、柔らかく、崩壊し易くなるため、パウダー状のプロピレン系重合体(A)との混合時に、凝集しやすく、白斑が悪化し、印刷特性が低下する。一方、細孔容積が0.3ml/g未満になると、粒子が硬くなり、フィルムとしたときの耐傷付き性が低下するおそれがある。
【0026】
また、二酸化ケイ素(B)は、有機チタネート系カップリング剤、有機シランカップリング剤、脂肪酸、脂肪酸金属塩、脂肪酸エステルなどによって表面などを処理したものを用いてもよく、また、二種以上組み合わせて表面などを処理してもよい。
さらに、二酸化ケイ素(B)の形状は、特に制限されず、不定形のものでも、定形のものであってもよい。定形のものとしては球状定形のものが挙げられる。
【0027】
上記で説明した二酸化ケイ素(B)は、例えば、富士シリシア社等から該当品を入手することができる。
【0028】
本発明で用いられる二酸化ケイ素(B)の配合量は、プロピレン系重合体(A)100重量部に対し、0.01〜0.5重量部、好ましくは0.05〜0.3重量部の範囲で選ばれる。この配合量が0.01重量部未満では、フィルムの耐ブロッキング性が劣る。また、0.5重量部を超えると、フィルムの透明性を損なうので好ましくない。
【0029】
[1−3]酸変性ポリプロピレン(C)
本発明で用いる酸変性ポリプロピレン(C)は、少なくとも一部が酸変性されたポリプロピレンである。
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物は、酸変性ポリプロピレン(C)を0.1〜10重量部含む。酸変性ポリプロピレン(C)を含むことにより、プロピレン系重合体(A)と二酸化ケイ素(B)との親和性が良好となる。
【0030】
酸変性ポリプロピレン(C)の重量平均分子量は、好ましくは10000〜100000、より好ましくは20000〜70000である。酸変性ポリプロピレン(C)の重量平均分子量が、10000以上、100000以下であることがポリプロピレン系樹脂組成物の押出性及び成形性の点で好ましい。なお、酸変性ポリプロピレン(C)における重量平均分子量は高温GPC法によって測定することができる。
また、酸変性ポリプロピレン(C)の酸価は、好ましくは3〜80mgKOH/g、より好ましくは10〜60mgKOH/gである。酸変性ポリプロピレン(C)の酸価が、3mgKOH/g以上であることが無機物との親和性の点で好ましく、酸価が高いほど二酸化ケイ素(B)との親和性が高まり好ましいが、通常、80mgKOH/g以下である。なお、酸価はJIS K 0070に基づくものである。
【0031】
本発明で用いる酸変性ポリプロピレン(C)は、例えば、末端二重結合を有する低分子量ポリプロピレンに、不飽和カルボン酸および/またはその無水物を、化学的に付加して合成するものが挙げられ、その軟化点が130〜170℃が好ましく、より好ましくは140〜160℃である。酸変性ポリプロピレン(C)の軟化点は130℃以上であるとポリプロピレン系樹脂組成物としたときの耐熱性の点で好ましく、170℃以下であるとポリプロピレン系樹脂組成物の押出性及び成形性の点で好ましい。なお、軟化点はJIS K 2531に基づく方法によって測定することができる。
【0032】
また、酸変性ポリプロピレン(C)は、160℃での溶融粘度が3000〜20000cpsが好ましく、より好ましくは5000〜18000cpsを示すものである。酸変性ポリプロピレン(C)の160℃での溶融粘度が、3000cps以上20000cps以下であると、ポリプロピレン系樹脂組成物の押出性及び成形性の点で好ましい。
【0033】
ここで好ましい末端二重結合を有する低分子量ポリプロピレンとは、1000炭素当たり1〜10、好ましくは2〜7の末端二重結合を有するものである。末端二重結合が上記範囲未満のものでは、所望の酸変性を行うことができない。また、末端二重結合が上記範囲を超えると、酸変性低分子量ポリプロピレンの耐熱性が低下する傾向にある。
【0034】
酸変性ポリプロピレン(C)の酸変性は、溶融グラフト法や溶液グラフト法等で行うことができるが、溶融グラフト法では、通常100〜270℃、好ましくは130〜240℃の温度、反応時間は、通常0.5〜30時間、好ましくは1〜20時間の条件で実施することができる。該酸変性によって得られたものは、不飽和カルボン酸および/またはその無水物が、好ましくは0.1〜12重量%、特に好ましくは1〜10重量%の割合で含有されていることが望ましい。このようなものである限り、変性されたものを未変性のもので希釈したものであってもよい。
また、酸変性剤の不飽和カルボン酸としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸などが挙げられる。不飽和カルボン酸無水物としては、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸などが挙げられ、これらの不飽和カルボン酸を単独で用いたものでも複数種を組み合わせて用いたものであってもよい。また、これらの中でも無水マレイン酸を使用して酸変性したものが望ましい。
【0035】
酸変性ポリプロピレン(C)は、市販品として入手することもできる。市販品としては、例えば、三洋化学社製ユーメックス(登録商標)シリーズ、三菱化学社製モディック(登録商標:Modic)シリーズなどが挙げられ、適宜選択して用いることができる。
【0036】
[1−4]その他の配合剤
本発明に用いられる樹脂組成物には、必要に応じて、通常、プロピレン系樹脂に用いられる添加剤を本発明の目的を損なわない範囲で適宜配合することができる。添加剤としては、例えば、酸化防止剤、帯電防止剤、中和剤、安定剤、無機充填剤等を挙げることができる。
【0037】
[1−5]ポリプロピレン系樹脂組成物の調製方法
本発明で用いるポリプロピレン系樹脂組成物の調製方法としては、プロピレン系重合体(A)のパウダーまたはペレットに、直接、所定量の二酸化ケイ素(B)および酸変性ポリプロピレン(C)、さらに必要に応じて用いる添加剤を加える方法、プロピレン系重合体(A)のパウダー、二酸化ケイ素(B)および酸変性ポリプロピレン(C)、さらに必要に応じて用いる添加剤を含有するマスターバッチをあらかじめ調製しておき、該マスターバッチを、プロピレン系重合体(A)のペレットに、加える方法等を挙げることができる。
【0038】
本発明で用いるポリプロピレン系樹脂組成物は、プロピレン系重合体(A)、二酸化ケイ素(B)、酸変性ポリプロピレン(C)、さらに必要に応じて用いる添加剤を混合した後、溶融混練することによって得られる。
混合には、タンブラーミキサー、スーパーミキサー、ヘンシェルミキサー、スクリューブレンダー、リボンブレンダーなどの公知の方法が適用できる。溶融混練は、例えば、溶融押出機、バンバリーミキサーなどを用い、プロピレン重合体(A)の融点以上の温度で溶融混練する方法であれば、特に限定されない。
溶融混練方法は、単軸押出機、二軸押出機のどちらでも容易に実施できるが、二酸化ケイ素(B)の分散をより効果的に行うには、二軸押出機が好適である。
【0039】
[2]積層体
本発明の積層体は、少なくとも層(1)と層(2)の異なる2層からなる積層体であって、前記層(1)が本発明のポリプロピレン系樹脂組成物からなり、前記層(2)が前記プロピレン系重合体(A)を含み、かつプロピレン系重合体(A)100重量部に対し、前記二酸化ケイ素(B)の含有量が0.01重量部未満の樹脂組成物からなるものである。
【0040】
[2−1]層(1)
層(1)は、本発明のポリプロピレン系樹脂組成物からなる層である。後述するように、本発明の積層体を製膜することにより得られる二軸延伸ポリプロピレン系フィルムは、食品包装フィルムとして有用であるが、この際、層(1)は、最外層、即ち印刷面として用いられることが好ましい。層(1)に、本発明のポリプロピレン系樹脂組成物を用いることにより、実施例において示すような、良好な印刷特性を得ることができる。
【0041】
[2−2]層(2)
層(2)は、前記のプロピレン系重合体(A)を含む層である。本発明の積層体を製膜した二軸延伸ポリプロピレン系フィルムを食品包装フィルムとするときには、少なくとも3層からなる積層体とすることが好ましく、この場合、前記層(2)は、コア層となる。以下、「コア層」という表現を用いる場合には、少なくとも3層からなる積層体を想定した説明である。
コア層には、通常、アンチブロッキング剤を配合しないか、使用したとしても少量とすることが好ましく、本発明の積層体では、層(2)において、プロピレン系重合体(A)100重量部に対し、前記二酸化ケイ素(B)の含有量が0.01重量部未満とする。なお、層(1)に用いる樹脂組成物において、前記二酸化ケイ素(B)の含有量の下限は0である。
層(2)は、プロピレン系重合体(A)を含む層であれば、特に制限されないが、層(1)と積層した場合の密着性が良好であればよいため、プロピレン系重合体(A)は、層(2)に含まれる成分全体を100重量%として、50重量%以上であることが好ましく、70重量%以上であることがより好ましい。本発明の積層体においては層(1)と層(2)とで同種のポリプロピレン(A)を使用しても、異なったものを使用してもよい。ただし、層(1)と層(2)とのそれぞれにおいて使用されるポリプロピレン(A)の融点、MFR、結晶化度などの物性が近いもの同士を組み合わせて使用することが積層体としたときの層間の密着性の観点で好ましい。
【0042】
層(2)をコア層とする場合、帯電防止剤を含むことが好ましい。層(2)に用いられる樹脂組成物においては、従来公知のいかなる帯電防止剤も使用可能であり、その例としては、カチオン系、アニオン系、非イオン系(グリセリン系、アミン系、アミド系)等の帯電防止剤が挙げられる。これらの帯電防止剤は1種のみで用いても複数種を組み合わせて用いてもよい。
層(2)において、帯電防止剤は、プロピレン系重合体(A)100重量部に対して、0.1重量部以上であることが好ましく、より好ましくは0.1重量部以上で8重量部以下である。0.1重量部以上であることにより、層(2)における帯電防止効果が良好となり、上限は、層(1)と層(2)の密着性の観点から、通常、10重量部である。
【0043】
[2−3]他の層
本発明の積層体には、層(1)と層(2)以外に、ラミネート層、アンカーコート層、シーラント層、非印刷層などの他の層を有していてもよい。特に、本発明の積層体を食品包装フィルムなどに用いる場合には、層(2)を挟んで層(1)と逆側において、非印刷層を積層することが食品包装フィルムなどに用いるため、好ましい。
【0044】
[3]二軸延伸ポリプロピレンフィルム
本発明の二軸延伸ポリプロピレンフィルムは、前述した、本発明の積層体を製膜してなるものである。従って、本発明の二軸延伸ポリプロピレンフィルムは、2層以上からなる多層フィルムである。
本発明の二軸延伸ポリプロピレンフィルムにおいて、その全体の厚みは、好ましくは5〜60μm、より好ましくは15〜40μmである。また、本発明の二軸延伸ポリプロピレンフィルムにおいて、前記積層体の層(1)に相当する層の厚みが0.1〜5.0μmであることが好ましく、0.5〜2.0μmであることがより好ましい。
【0045】
また、本発明に係る二酸化ケイ素(B)を含有したポリプロピレン系樹脂組成物から得られたフィルム表面は、二酸化ケイ素(B)の分散性(白斑)、印刷特性を考慮すると、十点平均粗さが(SRRz)が2.00μm未満であることが好ましく、0.900μm未満であることがより好ましい。十点平均粗さが(SRRz)の値が大き過ぎることとは、分散性の悪化のためにフィルム表面の凹凸が大きくなっていることを表しており、印刷特性が悪化し、好ましくない。
【0046】
さらに、本発明で用いられる二酸化ケイ素(B)の粉末を含有したポリプロピレン系樹脂組成物から得られた2層以上の構成からなるフィルムでは、層(1)の厚みを1.5μmとした際に、フィルム表面の0.5μm以上の突起は、印刷特性を考慮すると、2mmあたり50個未満が好ましく、20個未満がより好ましい。突起が多くなり過ぎると、印刷抜けが多くなり、印刷特性が悪化し、好ましくない。
【0047】
[3−1]二軸延伸ポリプロピレンフィルムの延伸方法
本発明の二軸延伸ポリプロピレンフィルムは、同時又は逐次二軸延伸法やインフレーション法により製造することができる。中でも、以下に示す逐次二軸延伸法が好ましい。
前記ポリプロピレン系樹脂組成物を、Tダイで溶融成形を行い、原反シートを作製し、その後、ロール周速差を利用して縦延伸を行う。具体的には、通常90〜150℃、好ましくは100〜140℃の温度で、回転数の異なる二本のロール間に原反シートを通過させ、ロールの回転方向(縦方向)に3〜7倍、好ましくは4〜6倍延伸する。次いで、縦方向延伸フィルムをテンターオーブンの中で6〜12倍、好ましくは7〜10倍に延伸する。
【0048】
引き続き、この二軸延伸ポリプロピレンフィルムを130〜180℃の温度で熱セットすることが望ましい。更に、印刷適性の向上、帯電防止剤の発現を促進させる目的で、コロナ放電処理、又はコロナ処理とワインダーロールの加温による熱処理を、好ましくは80〜130℃、より好ましくは90〜120℃、更に好ましくは100〜110℃で実施することが好ましい。
【0049】
[3−2]二軸延伸ポリプロピレンフィルムの用途
本発明の二軸延伸フィルムは、食品包装、繊維包装、雑貨包装等の包装用途に広く用いられる。用途は表面に印刷されるような食品包装フィルムとして用いることが特に好ましい。本発明の二軸延伸ポリプロピレンフィルムを食品包装フィルムとして用いる場合には、前述した本発明のポリプロピレン系樹脂組成物からなる層(1)を、印刷を施す面として用いることが耐印刷抜けの性能を有する点で好ましい。
【実施例】
【0050】
以下に、本発明を実施例により、更に具体的に説明するが、以下に示す実施例は、本発明の実施態様の一例であり、本発明は、以下の実施例により限定されるものではない。また、以下の実施例における各種の製造条件や評価結果の値は、本発明の実施態様における上限または下限の好ましい値としての意味をもつものであり、好ましい範囲は、前記した上限または下限の値と下記実施例の値または実施例同士の値との組み合わせで規定される範囲であってもよい。
なお、実施例、比較例の物性の測定は、下記の方法で行なった。
【0051】
1.MFR:
JIS K7210(測定温度230℃、荷重21.18N)に準拠して測定した。
2.透明性:
ASTM D−1003に準拠してヘイズを測定した。ヘイズの値が小さいほど透明性に優れるものと評価した。
【0052】
3.耐ブロッキング性:
ASTM D−1893に記載の方法に準拠して測定した。フィルムを30cm(幅)×20cm(長さ)のサイズに調製し、これらのフィルムのコロナ処理面、非処理面で重ね、15kg/cmの荷重下で40℃のギアオーブン(タバイエスペック社製/タバイギアオーブン:GPH−100)内で7日間放置したのち、2cm(幅)×15cm(長さ)、重なり面積10cmにカットした試験片を、引張試験機(東洋精機製作所社製/C型ショッパー抗張力試験機)を用いて、引張り速度500mm/の剥離強度を測定した。この剥離強度が小さいほど耐ブロッキング性に優れるものと評価した。
【0053】
4.耐傷付き性:
コロナ処理面側のフィルムを鏡面サンプル台に固定し、5cm×5cmの擦り治具に非処理面側を外面に取り付け、処理面と未処理面が重なるようにフィルムを置き、3kg荷重をのせた擦り治具を5回滑らせた。鏡面サンプル台のフィルムのヘイズを測定し、3kg荷重をのせた擦り治具を5回滑らせた前後でのヘイズ差(Δヘイズ)を計算した。ヘイズ差(Δヘイズ)の数値が小さい方が耐傷付き性に優れるものと評価した。
【0054】
5.十点平均粗さ値(SRRz):
フィルム表面を東京精密社製粗さ計(SURFCOM1500DX)にて、JIS B0651(2001)「製品の幾何特性仕様(GPS)−表面性状:輪郭曲線方式−触針式表面粗さ測定機の特性」に準拠して測定した。測定器の測定条件は、触針先端曲率半径:5μm、カットオフ波長:0.05mm、カットオフ種別:2CR(位相補償)、測定速度:0.3mm、測定方向:フィルムのMD方向、測定範囲:2mmである。測定方向であるMD方向とは、押出成形するときのフィルムの送り方向、すなわちフィルムの長手方向と平行な方向をいう。尚、十点平均粗さは、JIS B0601(2001)「製品の幾何特性仕様(GPS)−表面性状:輪郭曲線方式−用語,定義及び表面性状パラメータ」で定義される。
十点平均粗さ値が小さいほど粗さがなく、良好であるものと評価した。
【0055】
6.表面突起:
十点平均粗さ値同様の条件でフィルム表面を測定し、0.5μm以上の突起数を測定した。表面突起は突起数が少ないものほど良好と評価した。
【0056】
7.印刷特性:
十点平均粗さ値と表面突起数の総合判定で以下のように4段階評価で、「◎」が最も印刷特性に優れ、「×」が最も印刷特性が悪いものと評価した。
◎:「十点平均粗さ値が0.900未満であり、かつ表面突起数が20個未満である」もの
○:「十点平均粗さ値が0.900未満であり、かつ表面突起数が20個以上50個未満である」または「十点平均粗さ値が0.900以上2.00未満であり、かつ表面突起数が20個未満である」もの
△:「十点平均粗さ値が0.900以上2.00未満であり、かつ表面突起数が20個以上50個未満である」もの
×:「十点平均粗さ値が2.00以上である」および「表面突起数が50個以上である」のうちの少なくとも1つを満たすもの
【0057】
8.白斑数:
10枚のフィルムを目視評価した。任意で30cm×21cmの枠を作り、枠内の白斑数をカウントした。白斑数が少ないほど外観に優れるものと評価した。
【0058】
[実施例1]
ポリプロピレン系重合体(A)として、チーグラー触媒を使用して得られたポリプロピレン単独重合体(JIS K 7210(測定温度230℃、荷重21.18N)に準拠したMFRが3g/10分、結晶性の指標であるアイソタクチックインデックス(II)が98%、SII社製DSC装置RDC220Uにより昇降温度スピード10℃/分で測定された融点が165℃)100重量部に対して、酸化防止剤としてBASF社製イルガノックス(登録商標:Irganox)1010とBASF社製イルガフォス(登録商標:Irgafos)168をそれぞれ0.05重量部、中和剤としてカルシウムステアレート0.05重量部、二酸化ケイ素(B)として、表−1に示した富士シリシア社製SY530Sの二酸化ケイ素0.15重量部、更に、酸変性ポリプロピレン(C)として、三洋化学社製ユーメックス(登録商標)1001(高温GPC法による重量平均分子量が40000、分子量分布が6、JIS K 0070に基づく酸価が26、JIS K 2531に基づく軟化点が154℃、溶融粘度が16000の無水カルボン酸変性ポリプロピレン)を0.5重量部、配合し、ヘンシェルミキサーで混合した後、30mmφの2軸押出機で造粒し、プロピレン系樹脂組成物を得た。
次いで、上記プロピレン系樹脂組成物を表層(層(1)に相当)の原料とし、また、中間層(層(2)に相当)に使用するプロピレン系重合体(A)として、日本ポリプロ社製ノバテック(登録商標)PP FL203D(プロピレン系重合体、MFR3.0、融点162℃)を使用し、それぞれ樹脂温度250℃で溶融押出し、30℃の冷却ロールで急冷して、2種3層の原反シートを作製した。該シートを縦方向5倍、横方向10倍に延伸し、厚み20μm(最外層(層(1)に相当)は1.5μm)の二軸延伸ポリプロピレンフィルムを得た。この時、片面の濡れ試薬による濡れ指数が40dyne/cmになるようにコロナ放電処理を施した。
得られた二軸延伸ポリプロピレンフィルムの物性を表−2に示した。
【0059】
[実施例2]
二酸化ケイ素(B)として、実施例1で用いた富士シリシア社製SY530Sの代わりに、表−1に示した富士シリシア社製SY530S(小粒径品)に変更した以外は、実施例1と同様に、二軸延伸ポリプロピレンフィルムを作製した。
【0060】
[比較例1〜7]
実施例1で用いた富士シリシア社製SY530Sの二酸化ケイ素の代わりに表−1に示した各二酸化ケイ素に変更した以外は、実施例1同様に、二軸延伸ポリプロピレンフィルムを作製した。
【0061】
【表1】

【0062】
【表2】

【0063】
表−1、表−2から明らかなように、本発明に係る二酸化ケイ素(B)を用いた二軸延伸ポリプロピレンフィルムは、透明性、耐傷付き性に優れ、印刷特性、耐ブロッキング性の良好なフィルムが得られた。
これに対し、比較例1〜7の二軸延伸ポリプロピレンフィルムでは、白斑、印刷特性などに優れるフィルムが得られなかった。
すなわち、比較例1では、二酸化ケイ素(B)の代わりに、ゲル化法で得られ、比表面積が本発明で規定した範囲内であるものの、平均粒径、細孔容積および吸油量が本発明で規定した範囲外の二酸化ケイ素を使用したため、白斑により外観が悪く、また、耐ブロッキング性も悪かった。
また、比較例2では、二酸化ケイ素(B)の代わりに、ゲル化法で得られ、細孔容積と吸油量が本発明で規定した範囲内であるものの、平均粒径および比表面積が本発明で規定した範囲外の二酸化ケイ素を使用したため、耐傷付き性と印刷特性との両方が悪かった。
さらに、比較例3では、二酸化ケイ素(B)の代わりに、ゲル化法で得られ、平均粒径と比表面積が本発明で規定した範囲内であるものの、細孔容積と吸油量が本発明で規定した範囲外の二酸化ケイ素を使用したため、白斑による外観と耐ブロッキング性が悪かった。
一方、比較例4では、二酸化ケイ素(B)の代わりに、細孔容積と吸油量が本発明で規定した範囲内であるものの、沈降法で得られ、平均粒径と比表面積が本発明で規定した範囲外の二酸化ケイ素を使用したため、耐傷付き性が悪く、また、印刷特性が悪かった。
また、比較例5では、二酸化ケイ素(B)の代わりに、比表面積、細孔容積、細孔容積および吸油量が本発明規定の範囲外の二酸化ケイ素を使用したため、耐傷付き性、白斑による外観、印刷特性のそれぞれが悪かった。
比較例6は、平均粒径及び比表面積が本発明の規定外の二酸化ケイ素を使用したため、耐ブロッキング性、耐傷付き性及び印刷特性が悪かった。
比較例7では、二酸化ケイ素(B)として、細孔容積、吸油量が本発明で規定した範囲内であるものの、平均粒径、比表面積が本発明で規定した範囲外の二酸化ケイ素を使用したため、耐傷付き性が悪かった。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物、積層体および二軸延伸ポリプロピレンフィルムは、分散性、透明性、耐ブロッキング性、耐傷付き性、外観、印刷特性のバランスが良好であるため、例えば、食品包装材、繊維包装材、雑貨包装材等の包装材用途に広く用いられ、特に、食品包装フィルムの用途に、好適に用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロピレン系重合体(A)100重量部に対し、レーザー回折法による平均粒径が1.0〜3.0μm、BET法による比表面積が250〜480m/g、細孔容積が1.0ml/g以下、かつ吸油量が200ml/100g以下である、ゲル化法で製造された二酸化ケイ素(B)を0.01〜0.5重量部、および酸変性ポリプロピレン樹脂(C)0.1〜10重量部を含有することを特徴とするポリプロピレン系樹脂組成物。
【請求項2】
少なくとも層(1)と層(2)の異なる2層からなる積層体であって、
前記層(1)が請求項1に記載のポリプロピレン系樹脂組成物からなり、かつ
前記層(2)が前記プロピレン系重合体(A)を含み、かつプロピレン系重合体(A)100重量部に対し、前記二酸化ケイ素(B)の含有量が0.01重量部未満の樹脂組成物からなることを特徴とする積層体。
【請求項3】
請求項2に記載の積層体を製膜してなることを特徴とする二軸延伸ポリプロピレンフィルム。
【請求項4】
前記層(1)に相当する層の厚みが0.5〜2.0μmであることを特徴とする請求項3に記載の二軸延伸ポリプロピレンフィルム。
【請求項5】
前記層(1)の厚みを1.5μmとした際に、フィルム表面に、高さ0.5μm以上の突起が2mm当り50個未満であることを特徴とする請求項3又は4に記載の二軸延伸ポリプロピレンフィルム。
【請求項6】
請求項3乃至5のいずれか1項に記載の二軸延伸ポリプロピレンフィルムからなることを特徴とする食品包装フィルム。

【公開番号】特開2013−64060(P2013−64060A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−203296(P2011−203296)
【出願日】平成23年9月16日(2011.9.16)
【出願人】(596133485)日本ポリプロ株式会社 (577)
【Fターム(参考)】