説明

ポリプロピレン系樹脂組成物

【課題】機械的物性に優れ、フローマーク等が目立ち難く、低光沢性、耐傷付き性に優れる、自動車用内装部品に適用できる成形品を製造しうるポリプロピレン系樹脂組成物を提供する。
【解決手段】下記(A)成分100重量部、(B)成分7〜14重量部、(C)成分7〜20重量部、(D)成分24〜36重量部、(E)成分0.1〜3.5重量部、及び(F)成分0.2〜3.0重量部を含有するポリプロピレン系樹脂組成物。
(A)所定のプロピレン・エチレンブロック共重合体A、又は前記共重合体Aとポリプロピレンの混合物
(B)所定のプロピレン・エチレンブロック共重合体B
(C)MFR(230℃、2.16kg荷重下)が0.8g/10分以上20g/10分以下であるエチレン・α−オレフィン共重合体
(D)平均粒径が1μm以上14μm以下である無機充填材
(E)酸変性ポリプロピレン
(F)滑剤

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリプロピレン系樹脂組成物に関する。さらに詳しくは、機械的特性に優れ、フローマーク等が目立ち難く外観が良好で、低光沢性にも優れ、耐傷付き性も良好な成形品を製造できる樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂成形品からなる自動車内装部品においては、通常は、耐傷付き性、低光沢化(成形品に高級感を持たせたり、安全性を考慮し窓ガラスへの移り込みを抑えること目的とする)、フローマーク等の外観不良を隠すために、塗装や表皮貼り合わせといった後工程を施して使用されることが多い。そのため、樹脂成形品の優れた経済性が充分に享受されていない。
【0003】
耐傷付き性、低光沢性、フローマーク外観が良好な材料として、特許文献1にポリプロピレン系樹脂組成物が記載されている。しかしながら、低光沢化がまだ不十分であった。また、高分子量のエチレン・α−オレフィン・ジエン共重合体を用いているため分散性が悪く、成形品表面にブツが発生しやすかった。また、エチレン・α−オレフィン・ジエン共重合体を使用すると原料費が高くなるという問題があった。
【0004】
特許文献2には、成形性、成形外観(フローマーク外観、シボ外観)が良好なプロピレン樹脂組成物が記載されている。しかしながら、このプロピレン樹脂組成物では十分な機械物性は得られない。
特許文献3には、成形性が良好な、特に、射出成形により成形した成形品は、フローマーク、低光沢、及びウエルド外観の点で優れているプロピレン樹脂組成物が記載されている。しかしながら、耐傷付き性については十分ではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−079117号公報
【特許文献2】特開2009−155627号公報
【特許文献3】特開2000−143904号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、機械的物性に優れ、フローマーク等が目立ち難く、低光沢性、耐傷付き性に優れる、自動車用内装部品に適用できる成形品を製造しうるポリプロピレン系樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、以下のポリプロピレン系樹脂組成物等が提供される。
1.下記(A)成分100重量部、(B)成分7〜14重量部、(C)成分7〜20重量部、(D)成分24〜36重量部、(E)成分0.1〜3.5重量部、及び(F)成分0.2〜3.0重量部を含有するポリプロピレン系樹脂組成物。
(A)下記(a1)〜(d1)を満たすプロピレン・エチレンブロック共重合体A、又は前記共重合体Aとポリプロピレンの混合物:
(a1)室温デカン可溶部が16重量%以上25重量%以下
(b1)室温デカン可溶部のエチレン量が45モル%以上65モル%以下
(c1)室温デカン可溶部の極限粘度[η]が2.4dl/g以上4.0dl/g以下
(d1)メルトフローレート(MFR:230℃、2.16kg荷重下)が10g/10分以上53g/10分以下
(B)下記(a2)〜(d2)を満たすプロピレン・エチレンブロック共重合体B:
(a2)室温デカン可溶部:36重量%以上55重量%以下
(b2)室温デカン可溶部のエチレン量が25モル%以上35モル%以下
(c2)室温デカン可溶部の極限粘度[η]が7.0dl/g以上10.0dl/g以下
(d2)MFR(230℃、2.16kg荷重下)が0.08g/10分以上2.0g/10分以下
(C)MFR(230℃、2.16kg荷重下)が0.8g/10分以上20g/10分以下であるエチレン・α−オレフィン共重合体
(D)平均粒径が1μm以上14μm以下である無機充填材
(E)酸変性ポリプロピレン
(F)滑剤
2.前記(B)成分の室温デカン可溶部(a2)が40重量%以上55重量%以下である1に記載のポリプロピレン系樹脂組成物。
3.前記(A)成分の室温デカン可溶部が16重量%以上20重量%以下であり、前記(B)成分の室温デカン可溶部が40重量%以上47重量%以下であり、前記(C)成分の配合量が7〜15重量部である1又は2に記載のポリプロピレン系樹脂組成物。
4.前記無機充填剤(D)がタルクである1〜3のいずれかに記載のポリプロピレン系樹脂組成物。
5.前記滑剤(F)が脂肪酸アミドである1〜4のいずれかに記載のポリプロピレン系樹脂組成物。
6.MFR(230℃、2.16kg荷重下)が10g/10分以上45g/10分以下である1〜5のいずれかに記載のポリプロピレン系樹脂組成物。
7.上記1〜6のいずれかに記載のポリプロピレン系樹脂組成物を成形してなる成形品。
8.自動車のインストルメントパネル用である請求項7に記載の成形品。
【発明の効果】
【0008】
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物からなる成形品は、フローマーク等が目立ち難く、低光沢性、耐傷付き性に優れている。そのため、塗装や表皮張り合わせといった後工程の省略が可能である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物は、下記の成分(A)〜(F)を含有することを特徴とする。
(A)プロピレン・エチレンブロック共重合体A、又は共重合体Aとポリプロピレンの混合物:100重量部
(B)プロピレン・エチレンブロック共重合体B:7〜14重量部
(C)MFR(230℃、2.16kg荷重下)が0.8g/10分以上20g/10分以下であるエチレン・α−オレフィン共重合体:7〜20重量部
(D)平均粒径が1μm以上14μm以下である無機充填材:24〜36重量部
(E)酸変性ポリプロピレン:0.1〜3.5重量部
(F)滑剤:0.2〜3.0重量部
上記成分(A)〜(F)を所定量含有することにより、フローマーク等が目立ち難く、低光沢性、耐傷付き性に優れる成形品が得られる。特に、エチレン部(室温デカン可溶部のエチレン量)の割合が高い成分(A)とエチレン部の割合が低い成分(B)を混合することにより、成分(A)及び(B)のポリプロピレン部とゴム部の界面強度が向上し、耐衝撃性や引張伸び率が向上する。またフローマークも目立ち難くなる。
以下、各成分について説明する。
【0010】
(A)成分(A)
成分(A)は、プロピレン・エチレンブロック共重合体A、又は共重合体Aとポリプロピレンの混合物である。成分(A)は、下記(a1)〜(d1)を満たす。
(a1)室温デカン可溶部が16重量%以上25重量%以下
(b1)室温デカン可溶部のエチレン量が45モル%以上65モル%以下
(c1)室温デカン可溶部の極限粘度[η]が2.4dl/g以上4.0dl/g以下
(d1)MFR(230℃、2.16kg荷重下)が10g/10分以上53g/10分以下
【0011】
上記(a1)について、本発明で使用するプロピレン・エチレンブロック共重合体Aの室温デカン可溶部は、16重量%以上25重量%以下であり、好ましくは16重量%以上20重量%以下である。
室温デカン可溶部が16重量%未満では、得られる成形品の耐衝撃性が不十分となる。一方、25重量%を超えると曲げ弾性率が低下する。
【0012】
上記(b1)について、プロピレン・エチレンブロック共重合体Aの室温デカン可溶部のエチレン量は45モル%以上65モル%以下であり、好ましくは、47モル%以上60モル%以下である。室温デカン可溶部のエチレン量が45モル%未満であると、目標の低光沢性を得ることができない。また65モル%を超えると、目標の低光沢性が得られるものの、十分な衝撃性や引張伸び率を得ることができない。
【0013】
上記(c1)について、プロピレン・エチレンブロック共重合体Aの室温デカン可溶部の極限粘度[η]は2.4dl/g以上4.0dl/g以下であり、好ましくは、2.7dl/g以上3.7dl/g以下である。
[η]が2.4dl/g未満の場合、成形品の光沢を下げる効果が無く、十分な低光沢性を付与することができない。一方、4.0dl/gを超えると、樹脂流動性の低下や混練時に他の樹脂と混ざり難くなるため、成形品にてブツが発生して外観が悪くなり、また、機械物性を低下させる可能性がある。
【0014】
上記(d1)について、プロピレン・エチレンブロック共重合体AのMFRは、10g/10分以上53g/10分以下であり、好ましくは30g/10分以上45g/10分以下である。メルトフローレートが10g/10分未満の場合、流動性が低下し、成形性が悪くなる。一方、53g/10分を超えると、耐衝撃性や引張伸び率が低下する。
【0015】
成分(A)として、上述したプロピレン・エチレンブロック共重合体Aにホモポリプロピレンを添加した混合物を使用してもよい。当該混合物も上記(a1)〜(d1)の要件を満たす。この要件の選択理由は上記プロピレン・エチレンブロック共重合体についての(a1)〜(d1)の選択理由と同様である。ホモポリプロピレンを添加することにより、成形品の剛性を調整することができる。ホモポリプロピレンの添加量は、目的に応じて適宜決定できるが、通常、共重合体Aとホモポリプロピレンの合計に対して15〜35重量%となるように添加する。
ホモポリプロピレンのMFRも目的に応じて、適宜選択できるが、通常10〜53g/10分である。
【0016】
(B)プロピレン・エチレンブロック共重合体B
プロピレン・エチレンブロック共重合体Bは、下記(a2)〜(d2)を満たす。
(a2)室温デカン可溶部:36重量%以上55重量%以下
(b2)室温デカン可溶部のエチレン量が25モル%以上35モル%以下
(c2)室温デカン可溶部の極限粘度[η]が7.0(dl/g)以上10.0(dl/g)以下
(d2)MFR(230℃、2.16kg荷重下)が0.08g/10分以上2.0g/10分以下
【0017】
上記(a2)について、プロピレン・エチレンブロック共重合体Bの常温デカン可溶部は、36重量%以上55重量%以下であり、好ましくは40重量%以上55重量%以下であり、特に好ましくは40重量%以上47重量%以下である。デカン可溶部が36重量%未満の場合、耐衝撃性が低下し、また、フローマークの開始点が短くなり成形品外観が悪くなる。一方、55重量%を超えると、樹脂流動性が低下し成形性が悪くなる。
【0018】
上記(b2)について、プロピレン・エチレンブロック共重合体Bの室温デカン可溶部のエチレン量は25モル%以上35モル%以下であり、好ましくは、25モル%以上30モル%以下である。室温デカン可溶部のエチレン量が25モル%未満及び35モル%を超える場合、十分な耐衝撃性が得られない。
【0019】
上記(c2)について、プロピレン・エチレンブロック共重合体Bのデカン可溶部の極限粘度[η]は7.0dl/g以上10.0dl/g以下であり、好ましくは、8.0dl/g以上9.5dl/g以下である。[η]が7.0dl/g未満の場合、フローマーク開始点が短くなり、成形品外観が悪くなる。また、耐衝撃性や引張伸び率が低下する。一方、10.0dl/gを超えると、樹脂流動性の低下や、混練時に他の樹脂と混ざり難くなり、成形品にブツが生じて外観が悪くなる。
【0020】
上記(d2)について、プロピレン・エチレンブロック共重合体BのMFRは、0.08g/10分以上2.0g/10分以下であり、好ましくは0.1g/10分以上0.7g/10分以下である。MFRが0.08g/10分未満の場合、成形時の樹脂流動性が低下する。一方、2.0g/10分を超えると、成形品の耐衝撃性が低下する。
【0021】
プロピレン・エチレンブロック共重合体Bの配合量は、上述した成分(A)100重量部に対して7〜14重量部であり、好ましくは、8〜12重量部である。共重合体Bの配合量が7重量部未満の場合、フローマーク開始点が短くなり、成形品外観が悪くなる。また、耐衝撃性や引張伸び率が低下する。一方、14重量部を超えると、樹脂流動性が低下し、成形性が悪くなる。
【0022】
本発明で使用するプロピレン・エチレンブロック共重合体A及びBは、例えば、下記の固体状チタン触媒成分(I)と有機金属化合物触媒成分(II)とを含むオレフィン重合用触媒にて、プロピレンを重合し、さらにプロピレンとエチレンを共重合させることにより製造できる。以下、触媒成分及び重合方法について記載する。
【0023】
[固体状チタン触媒成分(I)]
固体状チタン触媒成分(I)は、チタン、マグネシウム、ハロゲン及び必要に応じて電子供与体を含むことを特徴としている。この固体状チタン触媒成分(I)は公知の固体状チタン触媒成分を制限無く用いることができる。固体状チタン触媒成分(I)の製造方法の例を以下に示す。
【0024】
本発明の固体状チタン触媒成分(I)の調製には、マグネシウム化合物及びチタン化合物が用いられる例が多い。
マグネシウム化合物としては、具体的には、塩化マグネシウム、臭化マグネシウム等のハロゲン化マグネシウム;メトキシ塩化マグネシウム、エトキシ塩化マグネシウム、フェノキシ塩化マグネシウム等のアルコキシマグネシウムハライド;エトキシマグネシウム、イソプロポキシマグネシウム、ブトキシマグネシウム、2−エチルヘキソキシマグネシウム等のアルコキシマグネシウム;フェノキシマグネシウム等のアリーロキシマグネシウム;ステアリン酸マグネシウム等のマグネシウムのカルボン酸塩等の公知のマグネシウム化合物を挙げることができる。
【0025】
これらのマグネシウム化合物は単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。またこれらのマグネシウム化合物は、他の金属との錯化合物、複化合物あるいは他の金属化合物との混合物であってもよい。
【0026】
これらの中ではハロゲンを含有するマグネシウム化合物が好ましく、ハロゲン化マグネシウム、特に塩化マグネシウムが好ましく用いられる。他に、エトキシマグネシウムのようなアルコキシマグネシウムも好ましく用いられる。また、該マグネシウム化合物は、他の物質から誘導されたもの、たとえばグリニャール試薬のような有機マグネシウム化合物とハロゲン化チタンやハロゲン化珪素、ハロゲン化アルコール等とを接触させて得られるものであってもよい。
【0027】
チタン化合物としては、例えば、下記式で示される4価のチタン化合物を挙げることができる。
Ti(OR)4−g
(式中、Rは炭化水素基であり、Xはハロゲン原子であり、gは0≦g≦4である。)
【0028】
より具体的には、TiCl、TiBr等のテトラハロゲン化チタン;Ti(OCH)Cl、Ti(OC)Cl、Ti(O−n−C)Cl、Ti(OC)Br、Ti(O−isoC)Br等のトリハロゲン化アルコキシチタン;Ti(OCHCl、Ti(OCCl等のジハロゲン化アルコキシチタン;Ti(OCHCl、Ti(O−n−CCl、Ti(OCBr等のモノハロゲン化アルコキシチタン;Ti(OCH、Ti(OC、Ti(OC、Ti(O−2−エチルヘキシル)等のテトラアルコキシチタン等を挙げることができる。
【0029】
これらの中で好ましいものは、テトラハロゲン化チタンであり、特に四塩化チタンが好ましい。これらのチタン化合物は単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0030】
上記のマグネシウム化合物及びチタン化合物としては、例えば、特開昭57−63310号公報、特開平5−170843号公報等に詳細に記載されている化合物も挙げることができる。
【0031】
本発明で用いられる固体状チタン触媒成分(I)の調製の好ましい具体例としては、下記(P−1)〜(P−4)の方法を挙げることができる。
【0032】
(P−1) マグネシウム化合物及びアルコール等の電子供与体成分(a)からなる固体状付加物と、後述する電子供与体成分(b)と、液状状態のチタン化合物とを、不活性炭化水素溶媒共存下、懸濁状態で接触させる方法。
(P−2) マグネシウム化合物及び電子供与体成分(a)からなる固体状付加物と、電子供与体成分(b)と、液状状態のチタン化合物とを、複数回に分けて接触させる方法。
(P−3) マグネシウム化合物及び電子供与体成分(a)からなる固体状付加物と、電子供与体成分(b)と、液状状態のチタン化合物とを、不活性炭化水素溶媒共存下、懸濁状態で接触させ、且つ複数回に分けて接触させる方法。
(P−4) マグネシウム化合物及び電子供与体成分(a)からなる液状状態のマグネシウム化合物と、液状状態のチタン化合物と、電子供与体成分(b)とを接触させる方法。
【0033】
好ましい反応温度は、−30℃〜150℃、より好ましくは−25℃〜130℃、更に好ましくは−25〜120℃の範囲である。
また、上記の固体状チタン触媒成分の製造には、必要に応じて公知の媒体の存在下に行うこともできる。上記の媒体としては、やや極性を有するトルエン等の芳香族炭化水素やヘプタン、オクタン、デカン、シクロヘキサン等の公知の脂肪族炭化水素、脂環族炭化水素化合物が挙げられるが、これらの中では脂肪族炭化水素が好ましい例として挙げられる。
【0034】
上記の固体状付加物や液状状態のマグネシウム化合物の形成に用いられる電子供与体成分(a)としては、室温〜300℃程度の温度範囲で上記のマグネシウム化合物を可溶化できる公知の化合物が好ましく、たとえばアルコール、アルデヒド、アミン、カルボン酸及びこれらの混合物等が好ましい。これらの化合物としては、たとえば特開昭57−63310号公報、特開平5−170843号公報に詳細に記載されている化合物を挙げることができる。
【0035】
上記のマグネシウム化合物可溶化能を有するアルコールとして、より具体的には、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、イソブタノール、エチレングリコール、2−メチルペンタノール、2−エチルブタノール、n−ヘプタノール、n−オクタノール、2−エチルヘキサノール、デカノール、ドデカノール等の脂肪族アルコール;シクロヘキサノール、メチルシクロヘキサノール等の脂環族アルコール;ベンジルアルコール、メチルベンジルアルコール等の芳香族アルコール;n−ブチルセルソルブ等のアルコキシ基を有する脂肪族アルコール等を挙げることができる。
【0036】
カルボン酸としては、カプリル酸、2−エチルヘキサノイック酸等の炭素数7以上の有機カルボン酸類を挙げることができる。アルデヒドとしては、カプリックアルデヒド、2−エチルヘキシルアルデヒド等の炭素数7以上のアルデヒド類を挙げることができる。
【0037】
アミンとしては、ヘプチルアミン、オクチルアミン、ノニルアミン、ラウリルアミン、2−エチルヘキシルアミン等の炭素数6以上のアミン類を挙げることができる。
【0038】
上記の電子供与体成分(a)としては、上記のアルコール類が好ましく、特にエタノール、プロパノール、ブタノール、イソブタノール、ヘキサノール、2−エチルヘキサノール、デカノール等が好ましい。
【0039】
得られる固体状付加物や液状状態のマグネシウム化合物のマグネシウムと電子供与体成分(a)との組成比は、用いる化合物の種類によって異なるので一概には規定できないが、マグネシウム化合物中のマグネシウム1モルに対して、電子供与体成分(a)は、好ましくは2モル以上、より好ましくは2.3モル以上、更に好ましくは2.7モル以上、5モル以下の範囲である。
【0040】
本発明に用いられる固体状チタン触媒成分(I)に必要に応じて用いられる電子供与体の特に好ましい例としては、芳香族カルボン酸エステル及び/又は複数の炭素原子を介して2個以上のエーテル結合を有する化合物(以下「電子供与体成分(b)」ともいう。)を含んでいてもよい。
【0041】
この電子供与体成分(b)としては、従来オレフィン重合用触媒に好ましく用いられている公知の芳香族カルボン酸エステルやポリエーテル化合物、たとえば特開平5−170843号公報や特開2001−354714号公報等に記載された化合物を制限無く用いることができる。
【0042】
この芳香族カルボン酸エステルとしては、具体的には安息香酸エステルやトルイル酸エステル等の芳香族カルボン酸モノエステルの他、フタル酸エステル類等の芳香族多価カルボン酸エステルが挙げられる。これらの中でも芳香族多価カルボン酸エステルが好ましく、フタル酸エステル類がより好ましい。このフタル酸エステル類としては、フタル酸エチル、フタル酸n−ブチル、フタル酸イソブチル、フタル酸ヘキシル、フタル酸へプチル等のフタル酸アルキルエステルが好ましく、フタル酸ジイソブチルが特に好ましい。
【0043】
また、ポリエーテル化合物としては、より具体的には以下の式(1)で表わされる化合物が挙げられる。
【0044】
【化1】

【0045】
上記式(1)において、mは1≦m≦10の整数、より好ましくは3≦m≦10の整数であり、R11〜R36は、それぞれ独立に、水素原子、あるいは炭素、水素、酸素、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、窒素、硫黄、リン、ホウ素及びケイ素から選択される少なくとも1種の元素を有する置換基である。
【0046】
mが2以上である場合、複数個存在するR11及びR12は、それぞれ同じであっても異なっていてもよい。任意のR11〜R36、好ましくはR11及びR12は共同してベンゼン環以外の環を形成していてもよい。
【0047】
この様な化合物の一部の具体例としては、2−イソプロピル−1,3−ジメトキシプロパン、2−s−ブチル−1,3−ジメトキシプロパン、2−クミル−1,3−ジメトキシプロパン等の1置換ジアルコキシプロパン類;2−イソプロピル−2−イソブチル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジシクロヘキシル−1,3−ジメトキシプロパン、2−メチル−2−イソプロピル−1,3−ジメトキシプロパン、2−メチル−2−シクロヘキシル−1,3−ジメトキシプロパン、2−メチル−2−イソブチル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジイソブチル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ビス(シクロヘキシルメチル)−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジイソブチル−1,3−ジエトキシプロパン、2,2−ジイソブチル−1,3−ジブトキシプロパン、2,2−ジ−s−ブチル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジネオペンチル−1,3−ジメトキシプロパン、2−イソプロピル−2−イソペンチル−1,3−ジメトキシプロパン、2−シクロヘキシル−2−シクロヘキシルメチル−1,3−ジメトキシプロパン等の2置換ジアルコキシプロパン類;2,3−ジシクロヘキシル−1,4−ジエトキシブタン、2,3−ジシクロヘキシル−1,4−ジエトキシブタン、2,3−ジイソプロピル−1,4−ジエトキシブタン、2,4−ジフェニル−1,5−ジメトキシペンタン、2,5−ジフェニル−1,5−ジメトキシヘキサン、2,4−ジイソプロピル−1,5−ジメトキシペンタン、2,4−ジイソブチル−1,5−ジメトキシペンタン、2,4−ジイソアミル−1,5−ジメトキシペンタン等のジアルコキシアルカン類;2−メチル−2−メトキシメチル−1,3−ジメトキシプロパン、2−シクロヘキシル−2−エトキシメチル−1,3−ジエトキシプロパン、2−シクロヘキシル−2−メトキシメチル−1,3−ジメトキシプロパン等のトリアルコキシアルカン類等を例示することができる。
【0048】
これらのうち、1,3−ジエーテル類が好ましく、特に、2−イソプロピル−2−イソブチル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジイソブチル−1,3−ジメトキシプロパン、2−イソプロピル−2−イソペンチル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジシクロヘキシル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ビス(シクロヘキシルメチル)1,3−ジメトキシプロパンが好ましい。
【0049】
これらの化合物は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0050】
本発明で用いられる固体状チタン触媒成分(I)において、ハロゲン/チタン(原子比)(すなわち、ハロゲン原子のモル数/チタン原子のモル数)は、2〜100、好ましくは4〜90であることが望ましく、電子供与体成分(a)や電子供与体成分(b)は、電子供与体成分(a)/チタン原子(モル比)は0〜100、好ましくは0〜10であることが望ましく、電子供与体成分(b)/チタン原子(モル比)は0〜100、好ましくは0〜10であることが望ましい。
【0051】
マグネシウム/チタン(原子比)(すなわち、マグネシウム原子のモル数/チタン原子のモル数)は、2〜100、好ましくは4〜50であることが望ましい。
【0052】
固体状チタン触媒成分(I)のより詳細な調製条件として、電子供与体成分(b)を使用する以外は、例えば、EP585869A1(欧州特許出願公開第0585869号明細書)や特開平5−170843号公報等に記載の条件を好ましく用いることができる。
【0053】
次に、周期表の第1族、第2族及び第13族から選ばれる金属元素を含む有機金属化合物触媒成分(II)について説明する。
【0054】
[有機金属化合物触媒成分(II)]
有機金属化合物触媒成分(II)としては、第13族金属を含む化合物、たとえば、有機アルミニウム化合物、第1族金属とアルミニウムとの錯アルキル化物、第2族金属の有機金属化合物等を用いることができる。これらの中でも有機アルミニウム化合物が好ましい。
【0055】
有機金属化合物触媒成分(II)としては具体的には、前記EP585869A1等の公知の文献に記載された有機金属化合物触媒成分を好ましい例として挙げることができる。
【0056】
本発明の目的を損なわない限り、上記電子供与体成分(a)や電子供与体成分(b)の他、公知の電子供与体成分(c)とを組み合わせて用いてもよい。
このような電子供与体成分(c)として好ましくは、有機ケイ素化合物が挙げられる。この有機ケイ素化合物としては、たとえば下記式で表される化合物を例示できる。
Si(OR’)4−n
(式中、R及びR’は炭化水素基であり、nは0<n<4の整数である。)
【0057】
上記式で示される有機ケイ素化合物としては、具体的には、ジイソプロピルジメトキシシラン、t−ブチルメチルジメトキシシラン、t−ブチルメチルジエトキシシラン、t−アミルメチルジエトキシシラン、ジシクロヘキシルジメトキシシラン、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン、シクロヘキシルメチルジエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、t−ブチルトリエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、シクロヘキシルトリメトキシシラン、シクロペンチルトリメトキシシラン、2−メチルシクロペンチルトリメトキシシラン、シクロペンチルトリエトキシシラン、ジシクロペンチルジメトキシシラン、ジシクロペンチルジエトキシシラン、トリシクロペンチルメトキシシラン、ジシクロペンチルメチルメトキシシラン、ジシクロペンチルエチルメトキシシラン、シクロペンチルジメチルエトキシシラン等が用いられる。
【0058】
このうちビニルトリエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジシクロヘキシルジメトキシシラン、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン、ジシクロペンチルジメトキシシランが好ましく用いられる。
【0059】
また、国際公開第2004/016662号パンフレットに記載されている下記式で表されるシラン化合物も前記有機ケイ素化合物の好ましい例である。
Si(OR(NR
【0060】
式中、Rは、炭素数1〜6の炭化水素基であり、Rとしては、炭素数1〜6の不飽和あるいは飽和脂肪族炭化水素基等が挙げられ、特に好ましくは炭素数2〜6の炭化水素基が挙げられる。具体例としてはメチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、sec−ブチル基、n−ペンチル基、iso−ペンチル基、シクロペンチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基等が挙げられ、これらの中でもエチル基が特に好ましい。
【0061】
は、炭素数1〜12の炭化水素基又は水素であり、Rとしては、炭素数1〜12の不飽和あるいは飽和脂肪族炭化水素基又は水素等が挙げられる。具体例としては水素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、sec−ブチル基、n−ペンチル基、iso−ペンチル基、シクロペンチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基等が挙げられ、これらの中でもエチル基が特に好ましい。
【0062】
は、炭素数1〜12の炭化水素基であり、Rとしては、炭素数1〜12の不飽和あるいは飽和脂肪族炭化水素基又は水素等が挙げられる。具体例としてはメチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、sec−ブチル基、n−ペンチル基、iso−ペンチル基、シクロペンチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基等が挙げられ、これらの中でもエチル基が特に好ましい。
【0063】
上記式で表される化合物の具体例としては、ジメチルアミノトリエトキシシラン、ジエチルアミノトリエトキシシラン、ジエチルアミノトリメトキシシラン、ジエチルアミノトリエトキシシラン、ジエチルアミノトリn−プロポキシシラン、ジn−プロピルアミノトリエトキシシラン、メチルn−プロピルアミノトリエトキシシラン、t−ブチルアミノトリエトキシシラン、エチルn−プロピルアミノトリエトキシシラン、エチルiso−プロピルアミノトリエトキシシラン、メチルエチルアミノトリエトキシシランが挙げられる。
【0064】
また、有機ケイ素化合物の他の例としては、下記式で表される化合物が挙げられる。
RNSi(OR
【0065】
式中、RNは、環状アミノ基であり、この環状アミノ基として、例えば、パーヒドロキノリノ基、パーヒドロイソキノリノ基、1,2,3,4−テトラヒドロキノリノ基、1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリノ基、オクタメチレンイミノ基等が挙げられる。
上記式で表される化合物として具体的には、(パーヒドロキノリノ)トリエトキシシラン、(パーヒドロイソキノリノ)トリエトキシシラン、(1,2,3,4−テトラヒドロキノリノ)トリエトキシシラン、(1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリノ)トリエトキシシラン、オクタメチレンイミノトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0066】
これらの有機ケイ素化合物は、2種以上組み合わせて用いることもできる。
【0067】
プロピレン・エチレンブロック共重合体は、上述したオレフィン重合用触媒の存在下にプロピレンを重合し、次いで、プロピレンとエチレンを共重合させるか、又は予備重合させて得られる予備重合触媒の存在下で、プロピレンを重合し、次いで、プロピレンとエチレンを共重合を行うこと等の方法で製造できる。
【0068】
予備重合は、オレフィン重合用触媒1g当り通常0.1〜1000g、好ましくは0.3〜500g、特に好ましくは1〜200gの量でオレフィンを予備重合させることにより行われる。
予備重合では、本重合における系内の触媒濃度よりも高い濃度の触媒を用いることができる。
予備重合における固体状チタン触媒成分(I)の濃度は、液状媒体1リットル当り、チタン原子換算で、通常約0.001〜200ミリモル、好ましくは約0.01〜50ミリモル、特に好ましくは0.1〜20ミリモルの範囲とすることが望ましい。
【0069】
予備重合における有機金属化合物触媒成分(II)の量は、固体状チタン触媒成分(I)1g当り通常0.1〜1000g、好ましくは0.3〜500gの重合体が生成するような量であればよく、固体状チタン触媒成分(I)中のチタン原子1モル当り、通常約0.1〜300モル、好ましくは約0.5〜100モル、特に好ましくは1〜50モルの量であることが望ましい。
【0070】
予備重合では、必要に応じて前記電子供与体成分等を用いることもでき、この際これらの成分は、前記固体状チタン触媒成分(I)中のチタン原子1モル当り、通常0.1〜50モル、好ましくは0.5〜30モル、さらに好ましくは1〜10モルの量で用いられる。
【0071】
予備重合は、不活性炭化水素媒体にオレフィン及び上記の触媒成分を加え、温和な条件下に行うことができる。
この場合、用いられる不活性炭化水素媒体として具体的には、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカン、灯油等の脂肪族炭化水素;シクロペンタン、メチルシクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、メチルシクロヘプタン、シクロオクタン等の脂環族炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;エチレンクロリド、クロルベンゼン等のハロゲン化炭化水素;あるいはこれらの混合物等を挙げることができる。
これらの不活性炭化水素媒体のうち、特に脂肪族炭化水素を用いることが好ましい。このように、不活性炭化水素媒体を用いる場合、予備重合はバッチ式で行うことが好ましい。
【0072】
一方、オレフィン自体を溶媒として予備重合を行うこともでき、また、実質的に溶媒のない状態で予備重合することもできる。この場合には、予備重合を連続的に行うのが好ましい。
【0073】
予備重合で使用されるオレフィンは、後述する本重合で使用されるオレフィンと同一であっても、異なっていてもよいが、プロピレンであることが好ましい。
予備重合の際の温度は、通常−20〜+100℃であり、好ましくは−20〜+80℃、さらに好ましくは0〜+40℃の範囲である。
【0074】
次に、予備重合を経由した後に、あるいは予備重合を経由することなく実施される本重合について説明する。
本重合は、プロピレン重合体成分を製造する工程及びプロピレン−エチレン共重合体ゴム成分を製造する工程に分けられる。
予備重合及び本重合は、バルク重合法、溶解重合、懸濁重合等の液相重合法あるいは気相重合法のいずれにおいても実施できる。プロピレン重合体成分を製造する工程として好ましいのは、バルク重合や懸濁重合等の液相重合あるいは気相重合法である。また、プロピレン−エチレン共重合体ゴム成分を製造する工程として好ましいのは、バルク重合や懸濁重合等の液相重合あるいは気相重合法であり、より好ましいのは、気相重合法である。
【0075】
本重合がスラリー重合の反応形態を採る場合、反応溶媒としては、上述の予備重合時に用いられる不活性炭化水素を用いることもできるし、反応温度・圧力において液体であるオレフィンを用いることもできる。
【0076】
本重合において、固体状チタン触媒成分(I)は、重合容積1リットル当りチタン原子に換算して、通常は約0.0001〜0.5ミリモル、好ましくは約0.005〜0.1ミリモルの量で用いられる。また、有機金属化合物触媒成分(II)は、重合系中の予備重合触媒成分中のチタン原子1モルに対し、通常約1〜2000モル、好ましくは約5〜500モルとなるような量で用いられる。前記電子供与体成分は、使用される場合であれば、有機金属化合物触媒成分(II)1モルに対して、0.001〜50モル、好ましくは0.01〜30モル、特に好ましくは0.05〜20モルの量で用いられる。
【0077】
本重合を水素の存在下に行えば、得られる重合体の分子量を調節する(下げる)ことができ、メルトフローレートの大きい重合体が得られる。分子量を調整するために必要な水素量は、使用する製造プロセスの種類、重合温度、圧力によって異なるため、適宜調整すればよい。
プロピレン重合体成分を製造する工程では、重合温度、水素量を調整してMFRを調整できる。また、プロピレン−エチレン共重合体ゴム成分を製造する工程においても、重合温度、圧力、水素量を調整して、極限粘度を調整することができる。
【0078】
本重合において、オレフィンの重合温度は、通常、約0〜200℃、好ましくは約30〜100℃、より好ましくは50〜90℃である。圧力(ゲージ圧)は、通常、常圧〜100kgf/cm(9.8MPa)、好ましくは約2〜50kgf/cm(0.20〜4.9MPa)に設定される。
プロピレン・エチレンブロック共重合体の製造方法においては、重合を、回分式、半連続式、連続式の何れの方法においても行うことができる。さらに反応器の形状は、管状型、槽型のいずれも使用できる。さらに重合を、反応条件を変えて二段以上に分けて行うこともできる。この場合、管状と槽型を組合せることができる。
【0079】
また、プロピレン・エチレン共重合体を得るためにエチレン/(エチレン+プロピレン)ガス比を制御している。
エチレン/(エチレン+プロピレン)ガス比は、5〜80モル%、好ましくは、10〜70モル%、より好ましくは15〜60モル%で制御して用いる。
【0080】
本発明で使用するプロピレン・エチレンブロック共重合体の製造方法についてさらに詳細に説明する。
本発明者らの知見に拠れば、プロピレン・エチレンブロック共重合体を構成する室温n−デカンに不溶な部分(Dinsol)は、主としてプロピレン重合体成分から構成される。
一方、室温n−デカンに可溶な部分(Dsol)は、主としてプロピレン−エチレン共重合体ゴム成分から構成される。
【0081】
従って、以下の二つの重合工程(重合工程1及び重合工程2)を連続的に実施することによって、上述した各要件を満たすプロピレン・エチレンブロック共重合体を得ることができる(以下、この方法を「直重法」と呼ぶ)。
[重合工程1]
固体状チタン触媒成分の存在下でプロピレンを重合し、プロピレン重合体成分を製造する工程(プロピレン重合体製造工程)。
[重合工程2]
固体状チタン触媒成分の存在下でプロピレン及びエチレンを共重合してプロピレン−エチレン共重合体ゴム成分を製造する工程(共重合体ゴム製造工程)。
【0082】
本発明で使用するプロピレン・エチレンブロック共重合体は、前述した製造方法で製造されることが好ましく、重合工程1を前段で行い、重合工程2を後段で行うことがより好ましい。また、各重合工程(重合工程1、重合工程2)は2槽以上の重合槽を用いて行うこともできる。ブロック共重合体中のデカン可溶部の含有量は、工程1と工程2の重合時間(滞留時間)を調整すればよい。
【0083】
(C)エチレン・α−オレフィン共重合体
本発明で使用するエチレン・α−オレフィン共重合体は、MFR(230℃、2.16kg荷重下)が0.8g/10分以上20g/10分以下であり、好ましくは2g/10分以上13g/10分以下である。MFRが0.8g/10分未満の場合、樹脂流動性の低下や混練時の分散不良が起こり易く、耐衝撃性等の物性の低下や成形品表面外観の悪化に繋がる。一方、20g/10分を超えると十分な耐衝撃性が得られず、また、成形品表面の光沢性上昇に繋がる。
【0084】
エチレン・α−オレフィン共重合体としては、エチレンと炭素数3以上10以下のα−オレフィンとの共重合体が挙げられる。α−オレフィンとしては、プロピレン、1−ブテン、1−へキセン、1−オクテン等が好ましい。α−オレフィンは1種で使用してもよく、2種以上混合して使用してもよい。
エチレン・α−オレフィン共重合体に占めるα−オレフィンの量は、15重量%以上65重量%以下がよい。
エチレン・α−オレフィン共重合体としては、エチレン−オクテン共重合体、エチレン−ブテン共重合体が好ましい。
【0085】
エチレン・α−オレフィン共重合体の配合量は、上述した成分(A)100重量部に対して7〜20重量部であり、好ましくは、7〜15重量部である。配合量が7重量部未満である場合、十分な耐衝撃性が得られない。一方、20重量部を超えると、十分な剛性(曲げ弾性率)が得られず、また、光沢性が上昇する。さらに耐傷付き性能も低下する。
【0086】
(D)平均粒径が1μm以上14μm以下である無機充填材
本発明で使用する無機充填材としては、特に限定されることなく公知の無機充填材を用いることができる。例えば、タルク、マイカ、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、ガラス繊維、石膏、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、酸化チタン等が挙げられる。その中でも特にタルクが好ましい。
無機充填材の平均粒径は、1μm以上14μm以下、好ましくは3μm以上7μm以下である。平均粒径が1μmより小さいと、無機充填材が凝集して分散不良が発生するため、耐衝撃性、引張伸び率等の機械物性が低下する。一方、14μmより大きい場合も、耐衝撃性や引張伸び率等の機械物性が低下する。
尚、平均粒径は、レーザー回折法により測定される値である。
【0087】
無機充填材の配合量は、上述した成分(A)100重量部に対して24〜36重量部であり、好ましくは27〜33重量部である。配合量が24重量部未満の場合、剛性が低下する。一方、36重量部を超えると耐衝撃性や引張伸び率が低下する。
【0088】
(E)酸変性ポリプロピレン
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物には、成分(A)100重量部に対して、酸変性ポリプロピレンを0.1〜3.5重量部、好ましくは、0.1〜2.5重量部の割合で配合する。酸変性ポリプロピレンの添加量が0.1重量部未満である場合、耐傷付き性の改良効果が発現しない。一方、3.5重量部を超えると、耐衝撃性が低下する場合がある。
【0089】
酸変性ポリプロピレンは、ポリプロピレンを酸変性することにより得られる。ポリプロピレンの変性方法としては、グラフト変性や共重合化がある。
変性に用いる不飽和カルボン酸としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、ナジック酸、フマル酸、イタコン酸、クロトン酸、シトラコン酸、ソルビン酸、メサコン酸、アンゲリカ酸、フタル酸等が挙げられる。また、その誘導体としては、酸無水物、エステル、アミド、イミド、金属塩等があり、例えば、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、無水ナジック酸、無水フタル酸、アクリル酸メチル、メタクル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、マレイン酸モノエチルエステル、アクリルアミド、マレイン酸モノアミド、マレイミド、N−ブチルマレイミド、アクリル酸ナトリウム、メタクリル酸ナトリウム等が挙げられる。これらの中でも、不飽和ジカルボン酸及びその誘導体が好ましく、特に無水マレイン酸又は無水フタル酸が好適である。
【0090】
溶融混練過程で酸変性する場合は、ポリプロピレンと不飽和カルボン酸又はその誘導体を、有機過酸化物を用いて押出機中で混練することにより、不飽和カルボン酸又はその誘導体をグラフト共重合し変性化する。
上記有機過酸化物としては、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、アゾビスイソブチロニトリル、ジクミルパーオキサイド、t−ブチルヒドロパーオキサイド、α,α’−ビス(t−ブチルパーオキシジイソプロピル)ベンゼン、ビス(t−ブチルジオキシイソプロピル)ベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3、ジ−t−ブチルパーオキサイド、クメンヒドロパーオキサイド等を挙げることができる。
【0091】
本発明では、酸変性ポリプロピレンとして不飽和ジカルボン酸又はその誘導体で変性された酸変性ポリプロピレンが好ましく、特に無水マレイン酸変性ポリプロピレンが好ましい。
酸変性ポリプロピレンにおける酸含有量は、0.5重量%〜7.0重量%が好ましく、さらに、0.8重量%〜5.0重量%が好ましい。
酸含有量は、酸変性ポリプロピレンのIRスベクトルを測定し、変性に用いた酸の特有の吸収から測定することができる。尚、無水マレイン酸であれば、1780cm−1付近、メタクリル酸エステルであれば1730cm−1付近に吸収があり、そのピーク面積から決定できる。
酸変性ポリプロピレンの極限粘度(135℃、テトラリン中)は、0.1〜3dl/g程度のものを使用することができる。
【0092】
酸変性ポリプロピレンとして、例えば、三井化学株式会社製のアドマー、三洋化成工業株式会社製のユーメックス、デュポン社製のMZシリーズ、Exxon社製のExxelor、東洋化成株式会社製のポリボンドシリーズ等の市販品(いずれも無水マレイン酸変性ポリプロピレン)を使用することができる。
【0093】
(F)滑剤
滑剤としては、脂肪酸アミドが挙げられる。脂肪酸としては、炭素数15〜30程度の飽和、不飽和脂肪酸が挙げられる。
脂肪酸アミドの具体例としては、オレイン酸アミド、ステアリン酸アミド、エルカ酸アミド、べへニン酸アミド、パルミチン酸アミド、ミリスチル酸アミド、ラウリン酸アミド、カプリル酸アミド、カプロン酸アミド、n−オレイルパルミトアミド、n−オレイルエルカアミド、及びそれらの2量体等が挙げられる。中でもオレイン酸アミド、ステアリン酸アミド、エルカ酸アミド及びエルカ酸アミドの2量体が好ましい。
これらは単独もしくは混合して使用することができる。
【0094】
滑剤の配合量は、上述した成分(A)100重量部に対して0.2〜3.0重量部であり、好ましくは、0.2〜1.5重量部である。滑剤の添加量が0.2重量部未満である場合、十分な耐傷付き性改良効果が認められない。一方、3.0重量部を超えると、組成物から表面改質剤がブリードし、成形時に金型に付着することで金型汚染に繋がる場合がある。
【0095】
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物には、必要に応じて、耐熱安定剤、帯電防止剤、耐候安定剤、耐光安定剤、酸化防止剤、脂肪酸金属塩、分散剤、着色剤、滑剤、顔料等の他の添加剤を本発明の目的を損なわない範囲で配合することができる。
【0096】
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物では、組成物全体のMFR(230℃、2.16kg荷重下)が10g/10分以上45g/10分以下であることが好ましく、特に、10g/10分以上30g/10分以下であることが好ましい。
【0097】
本発明のポリプロピレン系組成物は、上述した成分(A)〜(F)及び必要に応じてその他の添加剤を、公知の方法にて混合することで製造することができる。例えば、各成分を各種ミキサーやタンブラー等により混合してもよく、また、混合したものを押出機等により溶融混練してもよい。さらに、成形の操作性を向上するために、本発明の組成物をペレット等に加工してもよい。
【0098】
本発明の組成物は、公知の加工法、例えば、射出成形や押出成形等により、各種成形品に加工できる。本発明の成形品は、フローマーク等が目立ち難く、低光沢性、耐傷付き性に優れている。そのため、塗装や表皮張り合わせといった後工程を設けなくとも製品として使用できる。従って、特に自動車の内装材(インストルメントパネル、ピラー、ドアトリム等)として好適である。
【実施例】
【0099】
以下、本発明を実施例によってさらに具体的に説明する。
尚、各成分及び本発明のポリプロピレン系樹脂組成物の特性の測定、並びに本発明のポリプロピレン系樹脂組成物及び成形品の評価方法を以下に示す。
【0100】
(1)室温デカン可溶部
プロピレン・エチレンブロック共重合体の室温(25℃)におけるデカン可溶成分量は、次のようにして求めた。まず、試料を5g精秤し、1,000ミリリットルのナス型フラスコに入れ、さらにBHT(ジブチルヒドロキシトルエン、フェノール系酸化防止剤)1gを添加した後、回転子及びn−デカン700ミリリットルを投入した。
次いで、ナス型フラスコに冷却器を取り付け、回転子を作動させながら、135℃のオイルバスでフラスコを120分間加熱して、試料をn−デカンに溶解させた。
次に、1,000ミリリットルのビーカーにフラスコの内容物を注いだ後、ビーカー内の溶液をスターラーで攪拌しながら、室温(25℃)になるまで放冷(8時間以上)した後、析出物を金網でろ取した。ろ液を、さらに、ろ紙でろ過した後、3,000ミリリットルのビーカーに収容されたメタノール2,000ミリリットル中に注ぎ、この液を、室温(25℃)下、スターラーで攪拌しながら、2時間以上放置した。
次に、得られた析出物を金網でろ取した後、5時間以上風乾後、真空乾燥機にて100℃で240〜270分間乾燥し、25℃におけるn−デカン可溶部を回収した。
25℃におけるn−デカン可溶部の含有量(x)は、試料重量をAg、回収したn−デカン可溶部の重量をCgとすれば、x(質量%)=100×C/Aで表される。
【0101】
(2)室温デカン可溶部のエチレン量
フーリエ変換赤外線分光法(FT−IR)により測定した。
【0102】
(3)極限粘度[η]
135℃のデカリンで測定した。
【0103】
(4)メルトフローレートの測定:
ASTM D1238に準拠し、試験荷重2.16kg、試験温度230℃の条件で測定した。
【0104】
(5)無機充填材の平均粒径
レーザー回折法により測定した。
【0105】
(6)酸変性基含有量
酸変性ポリプロピレン2gを採取し、500mlの沸騰p−キシレンに完全に加熱溶解した。冷却後、1200mlのアセトンに投入し、析出物を濾過、乾燥してポリマー精製物を得た。熱プレスにより厚さ20μmのフィルムを作製した。この作製したフィルムの赤外吸収スペクトルを測定し、1780cm−1でのピーク面積から求めた。
【0106】
(7)Izod衝撃強度(J/m)
ASTM D256に準拠し、ノッチ付、ハンマー容量40kg・cm、測定温度23℃の条件で測定した。
【0107】
(8)引張り伸び率
ASTM D638に準拠し、測定した。試験条件は、試験速度10mm/分、チャック間115mm、測定温度23℃とした。
【0108】
(9)曲げ弾性率の測定
ASTM D790に準拠し、スパン間100mm、曲げ速度2mm/分、測定温度23℃の条件で測定した。
【0109】
(10)フローマーク測定方法
成形温度210℃、金型温度40℃、射出速度25mm/s、保圧30MPa、保圧時間10secで、350mm×100mm×厚さ2mmtの成形品を作製し、ゲートからフローマークが目視で観察できる距離を測定した。
【0110】
(11)鏡面グロス
成形温度210℃、金型温度40℃で成形した長さ130mm、幅120mm、厚み3mmで成形品表面をグロスメーター(日本電色工業(株)製 NDH−300)により光源照射角度60°で鏡面グロスを測定した。
【0111】
(12)耐傷付き性
成形温度210℃、金型温度40℃で成形した長さ130mm、幅120mm、厚み2mmで角板の表面をGrainCのシボ加工した成形品を用いてFord 5−Finger Test試験により、目視にて白化が認められない最大荷重(N)を評価した。
【0112】
[プロピレン・エチレンブロック共重合体A及びB]
表1に示すプロピレン・エチレンブロック共重合体(A−1)〜(A−11)及び(B−1)、(B−2)を製造した。尚、(A−1)〜(A−6)はプロピレン・エチレンブロック共重合体Aに該当し、(A−7)〜(A−11)はその比較共重合体である。(B−1)はプロピレン・エチレンブロック共重合体Bに該当し、(B−2)はその比較共重合体である。
【0113】
【表1】

【0114】
製造例A−1
(1)固体状チタン触媒成分の調製
無水塩化マグネシウム952g、デカン4420ml及び2−エチルヘキシルアルコール3906gを、130℃で2時間加熱して均一溶液とした。この溶液中に無水フタル酸213gを添加し、130℃にてさらに1時間攪拌混合し無水フタル酸を溶解させた。
このようにして得られた均一溶液を23℃まで冷却した後、この均一溶液の750mlを、−20℃に保持された四塩化チタン2000ml中に1時間にわたって滴下した。滴下後、得られた混合液の温度を4時間かけて110℃に昇温し、110℃に達したところでフタル酸ジイソブチル(DIBP)52.2gを添加し、これより2時間攪拌しながら同温度に保持した。次いで、熱濾過にて固体部を採取し、この固体部を2750mlの四塩化チタンに再懸濁させた後、再び110℃で2時間加熱した。
加熱終了後、再び熱濾過にて固体部を採取し、110℃のデカン及びヘキサンを用いて、洗浄液中にチタン化合物が検出されなくなるまで洗浄した。
上記の様に調製された固体状チタン触媒成分はヘキサンスラリーとして保存されるが、このうち一部を乾燥して触媒組成を調べた。固体状チタン触媒成分は、チタンを2重量%、塩素を57重量%、マグネシウムを21重量%及びDIBPを20重量%の量で含有していた。
【0115】
(2)予備重合触媒の製造
固体状チタン触媒成分87.5g、トリエチルアルミニウム99.8mL、ジエチルアミノトリエトキシシラン28.4ml、ヘプタン12.5Lを内容量20Lの攪拌機付きオートクレーブに挿入し、内温15〜20℃に保ちプロピレンを875g挿入し、100分間攪拌しながら反応させた。重合終了後、固体成分を沈降させ、上澄み液の除去及びヘプタンによる洗浄を2回行った。得られた予備重合触媒を精製ヘプタンに再懸濁して、固体触媒成分濃度で0.7g/Lとなるよう、ヘプタンにより調整を行った。
【0116】
(3)本重合
内容量58Lのジャケット付循環式管状重合器にプロピレンを40kg/時間、水素を170NL/時間、(2)で製造した触媒スラリーを固体触媒成分として0.34g/時間、トリエチルアルミニウム2.3ml/時間、ジエチルアミノトリエトキシシラン0.93ml/時間を連続的に供給し、気相の存在しない満液の状態にて重合した。管状重合器の温度は70℃であり、圧力は3.5MPa/Gであった。
得られたスラリーは内容量100Lの攪拌機付きベッセル重合器へ送り、さらに重合を行った。重合器へは、プロピレンを15kg/時間、水素を気相部の水素濃度が5.8モル%になるように供給した。重合温度70℃、圧力3.3MPa/Gで重合を行った。
得られたスラリーを内容量2.4Lの移液管に移送し、当該スラリーをガス化させ、気固分離を行い、ポリプロピレンホモポリマーパウダーを得た後、内容量480Lの気相重合器にポリプロピレンホモポリマーパウダーを送り、エチレン/プロピレン共重合を行った。気相重合器内のガス組成が、エチレン/(エチレン+プロピレン)=0.39(モル比)、水素/エチレン=0.071(モル比)になるようにプロピレン、エチレン、水素を連続的に供給した。重合温度70℃、圧力1.1MPa/Gで重合を行った。
得られたプロピレン・エチレンブロック共重合体を80℃で真空乾燥した。
【0117】
製造例A−2
本重合において、気相重合器内のガス組成が、エチレン/(エチレン+プロピレン)=0.31(モル比)、水素/エチレン=0.052(モル比)になるようにプロピレン、エチレン、水素を連続的に供給したことを除き、製造例A−1と同様に実施した。
【0118】
製造例A−3
本重合において、気相重合器内のガス組成が、エチレン/(エチレン+プロピレン)=0.32(モル比)、水素/エチレン=0.094(モル比)になるようにプロピレン、エチレン、水素を連続的に供給したことを除き、製造例A−1と同様に実施した。
【0119】
製造例A−4
本重合において、気相重合器内のガス組成が、エチレン/(エチレン+プロピレン)=0.47(モル比)、水素/エチレン=0.086(モル比)になるようにプロピレン、エチレン、水素を連続的に供給したことを除き、製造例A−1と同様に実施した。
【0120】
製造例A−5
固体触媒の製造及び予備重合触媒の製造は、製造例A−1(1)(2)と同様とした。
本重合について、内容量58Lのジャケット付循環式管状重合器にプロピレンを40kg/時間、水素を97NL/時間、(2)で製造した触媒スラリーを固体触媒成分として0.34g/時間、トリエチルアルミニウム2.2ml/時間、ジエチルアミノトリエトキシシラン0.88ml/時間を連続的に供給し、気相の存在しない満液の状態にて重合した。管状重合器の温度は70℃であり、圧力は3.4MPa/Gであった。
得られたスラリーは内容量100Lの攪拌機付きベッセル重合器へ送り、さらに重合を行った。重合器へは、プロピレンを15kg/時間、水素を気相部の水素濃度が2.8モル%になるように供給した。重合温度70℃、圧力3.1MPa/Gで重合を行った。
得られたスラリーを内容量2.4Lの移液管に移送し、当該スラリーをガス化させ、気固分離を行い、ポリプロピレンホモポリマーパウダーを得た後、内容量480Lの気相重合器にポリプロピレンホモポリマーパウダーを送り、エチレン/プロピレン共重合を行った。気相重合器内のガス組成が、エチレン/(エチレン+プロピレン)=0.33(モル比)、水素/エチレン=0.122(モル比)になるようにプロピレン、エチレン、水素を連続的に供給した。重合温度70℃、圧力1.1MPa/Gで重合を行った。
得られたプロピレン・エチレンブロック共重合体を80℃で真空乾燥した。
【0121】
製造例A−6
本重合において、気相重合器内のガス組成が、エチレン/(エチレン+プロピレン)=0.36(モル比)、水素/エチレン=0.086(モル比)になるようにプロピレン、エチレン、水素を連続的に供給したことを除き、製造例A−1と同様に実施した。
【0122】
製造例A−7
本重合において、気相重合器内のガス組成が、エチレン/(エチレン+プロピレン)=0.10(モル比)、水素/エチレン=0.160(モル比)になるようにプロピレン、エチレン、水素を連続的に供給したことを除き、製造例A−1と同様に実施した。
【0123】
製造例A−8
本重合において、気相重合器内のガス組成が、エチレン/(エチレン+プロピレン)=0.35(モル比)、水素/エチレン=0.134(モル比)になるようにプロピレン、エチレン、水素を連続的に供給したことを除き、製造例A−1と同様に実施した。
【0124】
製造例A−9
固体触媒の製造及び予備重合触媒の製造は、製造例A−1(1)(2)と同様とした。
本重合について、内容量58Lのジャケット付循環式管状重合器にプロピレンを40kg/時間、水素を186NL/時間、(2)で製造した触媒スラリーを固体触媒成分として0.33g/時間、トリエチルアルミニウム2.2ml/時間、ジエチルアミノトリエトキシシラン0.88ml/時間を連続的に供給し、気相の存在しない満液の状態にて重合した。管状重合器の温度は69℃であり、圧力は3.4MPa/Gであった。
得られたスラリーは内容量100Lの攪拌機付きベッセル重合器へ送り、さらに重合を行った。重合器へは、プロピレンを15kg/時間、水素を気相部の水素濃度が6.0モル%になるように供給した。重合温度69℃、圧力3.2MPa/Gで重合を行った。
得られたスラリーを内容量2.4Lの移液管に移送し、当該スラリーをガス化させ、気固分離を行い、ポリプロピレンホモポリマーパウダーを得た後、内容量480Lの気相重合器にポリプロピレンホモポリマーパウダーを送り、エチレン/プロピレン共重合を行った。気相重合器内のガス組成が、エチレン/(エチレン+プロピレン)=0.33(モル比)、水素/エチレン=0.094(モル比)になるようにプロピレン、エチレン、水素を連続的に供給した。重合温度70℃、圧力1.1MPa/Gで重合を行った。
得られたプロピレン・エチレンブロック共重合体を80℃で真空乾燥した。
【0125】
製造例A−10
本重合において、気相重合器内のガス組成が、エチレン/(エチレン+プロピレン)=0.54(モル比)、水素/エチレン=0.086(モル比)になるようにプロピレン、エチレン、水素を連続的に供給したことを除き、製造例A−1と同様に実施した。
【0126】
製造例A−11
本重合において、気相重合器内のガス組成が、エチレン/(エチレン+プロピレン)=0.33(モル比)、水素/エチレン=0.079(モル比)になるようにプロピレン、エチレン、水素を連続的に供給したことを除き、製造例A−1と同様に実施した。
【0127】
製造例B−1
(1)固体状チタン触媒成分の調製
無水塩化マグネシウム952g、デカン4420ml及び2−エチルヘキシルアルコール3906gを、130℃で2時間加熱して均一溶液とした。この溶液中に無水フタル酸213gを添加し、130℃にてさらに1時間攪拌混合を行って無水フタル酸を溶解させた。
このようにして得られた均一溶液を23℃まで冷却した後、この均一溶液の750mlを、−20℃に保持された四塩化チタン2000ml中に1時間にわたって滴下した。滴下後、得られた混合液の温度を4時間かけて110℃に昇温し、110℃に達したところでフタル酸ジイソブチル(DIBP)52.2gを添加し、これより2時間攪拌しながら同温度に保持した。次いで熱濾過にて固体部を採取し、この固体部を2750mlの四塩化チタンに再懸濁させた後、再び110℃で2時間加熱した。
加熱終了後、再び熱濾過にて固体部を採取し、110℃のデカン及びヘキサンを用いて、洗浄液中にチタン化合物が検出されなくなるまで洗浄した。
上記の様に調製された固体状チタン触媒成分はヘキサンスラリーとして保存されるが、このうち一部を乾燥して触媒組成を調べた。固体状チタン触媒成分は、チタンを2重量%、塩素を57重量%、マグネシウムを21重量%及びDIBPを20重量%の量で含有していた。
【0128】
(2)予備重合触媒の製造
内容量14Lの攪拌機付き反応槽にあらかじめヘプタン2Lを装入し、トリエチルアルミニウム53.4mL、2−イソブチル−2−イソプロピル−1,3−ジメトキシプロパン18.3mL、前記(1)で調製した固体状チタン触媒成分60gを装入し、ヘプタン量が6.5Lとなるようにヘプタンを追加した。内温10℃以下に保ち、10分攪拌した後、プロピレン560gを約50分かけて装入した後、60分間攪拌しながら反応させた。重合終了後、固体成分を沈降させ、上澄み液の除去及びヘプタンによる洗浄を2回行った。得られた前重合触媒を内容量200L攪拌機付き反応槽に移液した後、固体触媒成分濃度で0.8g/Lとなるよう、ヘプタンにより調整を行った。この予備重合触媒は固体触媒成分1g当りポリプロピレンを10g含んでいた。
【0129】
(3)本重合
内容量100Lの攪拌機付きベッセル重合器に、プロピレンを70L、トリエチルアルミニウム6.0mL、ジシクロペンチルジメトキシシラン2.2mLを装入した。温度を60℃、水素を気相部の水素濃度が16.4モル%になるように供給した。前記(2)で製造した触媒スラリーを固体触媒成分として0.8gを装入し、重合を開始した。重合温度60℃、圧力3.2MPa/G、水素を気相部の水素濃度が16.4モル%になるように供給しながら、1時間重合した。
得られたスラリーをガス化させ、気固分離を行い、ポリプロピレンホモポリマーパウダーを得た後、内容量480Lの気相重合器にポリプロピレンホモポリマーパウダーを全量移送し、エチレン/プロピレン共重合を行った。気相重合器内のガス組成が、エチレン/(エチレン+プロピレン)=0.17モル比、水素/エチレン=0.002モル比になるようにプロピレン、エチレン、水素を供給した。重合温度70℃、圧力0.75MPa/Gで重合を4.0時間行い、プロピレン・エチレンブロック重合体は、27kg得られた。
得られたプロピレン・エチレンブロック共重合体を80℃で真空乾燥した。
【0130】
製造例B−2
固体触媒の製造及び予備重合触媒の製造は、製造例B−1(1)(2)と同様とした。
本重合について、内容量100Lの攪拌機付きベッセル重合器に、プロピレンを70L、トリエチルアルミニウム6.0mL、ジシクロペンチルジメトキシシラン2.2mLを装入した。温度を60℃、水素を気相部の水素濃度が16.4モル%になるように供給した。前記(2)で製造した触媒スラリーを固体触媒成分として0.8gを装入し、重合を開始した。重合温度60℃、圧力3.2MPa/G、水素を気相部の水素濃度が16.4モル%になるように供給しながら、1時間重合した。
得られたスラリーをガス化させ、気固分離を行い、ポリプロピレンホモポリマーパウダーを得た後、内容量480Lの気相重合器にポリプロピレンホモポリマーパウダーを全量移送し、エチレン/プロピレン共重合を行った。気相重合器内のガス組成が、エチレン/(エチレン+プロピレン)=0.18モル比、水素/エチレン=0.007モル比になるようにプロピレン、エチレン、水素を供給した。重合温度70℃、圧力0.75MPa/Gで重合を1.1時間行い、プロピレン・エチレンブロック重合体は、27kg得られた。
得られたプロピレン・エチレンブロック共重合体を80℃で真空乾燥した。
【0131】
実施例1〜13、比較例1〜15
表2〜表5に示すように、各成分を配合し、タンブラーでドライブレンドした。得られた混合物を、二軸押出機(商品名:TEX、日本製鋼製)で混練して、ポリプロピレン系樹脂組成物ペレットを製造した。混練条件は、混練温度180℃、スクリュー回転速度600rpm,吐出量50kg/hとした。
得られたペレットを、射出成型にて上述した評価項目用試料に成形加工し、評価した。結果を表2〜表5に示す。
【0132】
【表2】

【0133】
【表3】

【0134】
【表4】

【0135】
【表5】

【0136】
表中の成分(A)及び(B)については、上述した製造例で製造した共重合体を使用した(表1参照)。成分(C)〜(F)及びその他については、以下の市販品を使用した。
J−3000GV:ホモポリプロピレン(プライムポリマー社製 製品名:J−3000GV)MFR=30g/10分、室温デカン可溶部:0重量%
・成分(C):エチレン−α・オレフィン共重合体
(C−1) エチレン−オクテンランダム共重合体(ダウエラストマー社製 製品名:EG8200)
MFR=9g/10分、αオレフィン(オクテン)量:37.4重量%
(C−2) エチレン−ブテンランダム共重合体(三井化学社製 製品名:A4050S)
MFR=8g/10分、αオレフィン(ブテン)量:29.1重量%
【0137】
・成分(D):無機充填剤
タルク1(浅田製粉社製 製品名:JM209 平均粒径(レーザー回折):5μm)
タルク2(日本タルク製 製品名:UG剤 平均粒径(レーザー回折):15μm)
【0138】
・成分(E):酸変性ポリプロピレン
(E−1)無水マレイン酸変性ポリプロピレン(三井化学社製 製品名:アドマーQX−100)
[η]=0.43dl/g(135℃、テトラリンで測定)、マレイン酸変性基含有量=3.0重量%
(E−2)無水マレイン酸変性ポリプロピレン(三洋化成社製 製品名:ユーメックス1010)
[η]=0.28dl/g(135℃、テトラリンで測定)、マレイン酸変性基含有量=4.5重量%
【0139】
・成分(F):滑剤
エルカ酸アミド(日本精化製 製品名:ニュートロンS)
【0140】
・その他添加剤
酸化防止剤としてIrganox1010(BASF(株))0.1重量部,Irgafos168(BASF(株))0.1重量部,耐光剤としてLA−52((株)ADEKA製)0.2重量部,滑剤としてステアリン酸カルシウム((株)日本油脂)0.1重量部,及び黒色顔料としてMB PPCM 802Y−307((株)東京インキ製)3重量部を配合した。
【産業上の利用可能性】
【0141】
本発明の樹脂組成物を成形してなる成形品は、自動車の内装材(インパネ、ピラー、ドアトリム等)や家電部品等に使用できる。本成形品は、フローマーク等が目立ち難く、低光沢性、耐傷付き性に優れている。そのため、塗装や表皮張り合わせといった後工程を設けなくとも製品として使用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(A)成分100重量部、(B)成分7〜14重量部、(C)成分7〜20重量部、(D)成分24〜36重量部、(E)成分0.1〜3.5重量部、及び(F)成分0.2〜3.0重量部を含有するポリプロピレン系樹脂組成物。
(A)下記(a1)〜(d1)を満たすプロピレン・エチレンブロック共重合体A、又は前記共重合体Aとポリプロピレンの混合物:
(a1)室温デカン可溶部が16重量%以上25重量%以下
(b1)室温デカン可溶部のエチレン量が45モル%以上65モル%以下
(c1)室温デカン可溶部の極限粘度[η]が2.4dl/g以上4.0dl/g以下
(d1)メルトフローレート(MFR:230℃、2.16kg荷重下)が10g/10分以上53g/10分以下
(B)下記(a2)〜(d2)を満たすプロピレン・エチレンブロック共重合体B:
(a2)室温デカン可溶部:36重量%以上55重量%以下
(b2)室温デカン可溶部のエチレン量が25モル%以上35モル%以下
(c2)室温デカン可溶部の極限粘度[η]が7.0dl/g以上10.0dl/g以下
(d2)MFR(230℃、2.16kg荷重下)が0.08g/10分以上2.0g/10分以下
(C)MFR(230℃、2.16kg荷重下)が0.8g/10分以上20g/10分以下であるエチレン・α−オレフィン共重合体
(D)平均粒径が1μm以上14μm以下である無機充填材
(E)酸変性ポリプロピレン
(F)滑剤
【請求項2】
前記(B)成分の室温デカン可溶部(a2)が40重量%以上55重量%以下である請求項1に記載のポリプロピレン系樹脂組成物。
【請求項3】
前記(A)成分の室温デカン可溶部が16重量%以上20重量%以下であり、前記(B)成分の室温デカン可溶部が40重量%以上47重量%以下であり、前記(C)成分の配合量が7〜15重量部である請求項1又は2に記載のポリプロピレン系樹脂組成物。
【請求項4】
前記無機充填剤(D)がタルクである請求項1〜3のいずれかに記載のポリプロピレン系樹脂組成物。
【請求項5】
前記滑剤(F)が脂肪酸アミドである請求項1〜4のいずれかに記載のポリプロピレン系樹脂組成物。
【請求項6】
MFR(230℃、2.16kg荷重下)が10g/10分以上45g/10分以下である請求項1〜5のいずれかに記載のポリプロピレン系樹脂組成物。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載のポリプロピレン系樹脂組成物を成形してなる成形品。
【請求項8】
自動車のインストルメントパネル用である請求項7に記載の成形品。

【公開番号】特開2012−117005(P2012−117005A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−270194(P2010−270194)
【出願日】平成22年12月3日(2010.12.3)
【出願人】(505130112)株式会社プライムポリマー (180)
【Fターム(参考)】