説明

ポリプロピレン繊維、その製造方法およびそれを用いた製品

【課題】工業的規模で安定して製造できる強度の高いポリプロピレン繊維を提供する。
【解決手段】プロピレン系樹脂(A)と、
固有粘度[η]が0.2〜10dl/gである、プロピレン単独重合体またはプロピレン重合単位を50重量%以上含有するプロピレン−α−オレフィン共重合体(成分(a))と、固有粘度[η]が15〜100dl/gである、エチレン単独重合体またはエチレン重合単位50重量%以上を含有するエチレン−α−オレフィン共重合体(成分(b))を、成分(a)100重量部に対し成分(b)0.01〜20重量部を含有し、
MFR(230℃、21.2N)が0.1〜20g/10分、溶融張力(230℃、口径2mm)が1.0〜50cNであり、伸長流動下においてひずみ硬化性を有するプロピレン系樹脂(B)0.1〜14重量%を含有する樹脂組成物からなることを特徴とするポリプロピレン繊維による。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリプロピレン繊維、その製造方法およびそれを用いた製品に関し、高い強度を有するポリプロピレン繊維とその製造方法、およびそれを用いた製品に関する。
【背景技術】
【0002】
これまで高強度が要求されるような産業資材等の分野では、ポリエステル、ナイロン等の繊維が広く使用されている。しかし、ポリエステル、ナイロン等は耐薬品性の点で問題があり、かつ大量に利用される産業資材分野での焼却時の有害ガスの発生、またリサイクル性など問題も多い。一方、ポリプロピレンの繊維は、比重が小さく、耐薬品性に優れるという特徴を有し、また、リサイクル性にも優れ、焼却時にも有毒ガスが発生しないなど、産業資材分野の材料としては非常に優れている。しかし、高強度のポリプロピレン繊維を工業的規模で生産性よく製造できるものは、未だ実現されていないのが実情である。
【0003】
すなわち、繊維の強度を上げる手段として延伸倍率を上げることは知られているが、延伸倍率を上げると、繊維の破断などが発生する。よってプロピレン樹脂にはより延伸倍率を上げられる性能が求められる。
延伸倍率を上げる手法として、電子線放射により自由末端長鎖分岐を持たせたプロピレン系樹脂を混合する手法が提案されている(特許文献1〜3参照。)。しかしながら、このようなプロピレン系樹脂は、電子線照射という特殊な改質工程を経ているため、経済性が悪い上、混合後の分散が悪く紡糸時に断糸が起こる懸念がある。また、再び溶融混練すると、ゲルが多量に発生し、リサイクル使用は、困難であるという大きな欠点を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭62−191509号公報
【特許文献2】特開平7−53797号公報
【特許文献3】特開平9−132815号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、上記問題点に鑑み、工業的規模で生産性よく安定して製造できる高強度ポリプロピレン繊維を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記課題を解決する為に鋭意研究を重ねた結果、プロピレン系樹脂に特定の性状を有するオレフィン系樹脂を配合することにより、高強度を有するポリプロピレン繊維が工業的規模で安定的に得られることを見いだし、本発明を完成させた。
【0007】
すなわち、本発明の第1の発明によれば、プロピレン系樹脂(A)と、
固有粘度[η](135℃のテトラリン中で測定)が0.2〜10dl/gである、プロピレン単独重合体またはプロピレン重合単位を50重量%以上含有するプロピレン−α−オレフィン共重合体(成分(a))と、固有粘度[η](135℃のテトラリン中で測定)が15〜100dl/gである、エチレン単独重合体またはエチレン重合単位50重量%以上を含有するエチレン−α−オレフィン共重合体(成分(b))を、成分(a)100重量部に対し成分(b)0.01〜20重量部を含有し、
MFR(230℃、21.2N)が0.1〜20g/10分、溶融張力(230℃、口径2mm)が1.0〜50cNであり、伸長流動下においてひずみ硬化性を有するプロピレン系樹脂(B)0.1〜14重量%
を含有する樹脂組成物からなることを特徴とするポリプロピレン繊維が提供される。
【0008】
また、本発明の第2の発明によれば、第1の発明において、プロピレン系樹脂(A)が、プロピレン単独重合体であることを特徴とするポリプロピレン繊維が提供される。
また、本発明の第3の発明によれば、第1又は2の発明の繊維を用いたロープが提供される。
【0009】
また、本発明の第4の発明によれば、第1又は2の発明の繊維を用いた織物が提供される。
また、本発明の第5の発明によれば、第1又は2の発明の繊維を用いたカーペットが提供される。
【0010】
また、本発明の第6の発明によれば、第1又は2の発明の繊維を用いた人工芝が提供される。
また、本発明の第7の発明によれば、第1又は2の発明の繊維を用いたコンクリート補強用繊維ロープが提供される。
【0011】
さらに、本発明の第8の発明によれば、プロピレン系樹脂(A)と、
固有粘度[η](135℃のテトラリン中で測定)が0.2〜10dl/gである、プロピレン単独重合体またはプロピレン重合単位を50重量%以上含有するプロピレン−α−オレフィン共重合体(成分(a))と、固有粘度[η](135℃のテトラリン中で測定)が15〜100dl/gである、エチレン単独重合体またはエチレン重合単位50重量%以上を含有するエチレン−α−オレフィン共重合体(成分(b))を、成分(a)100重量部に対し成分(b)0.01〜20重量部を含有し、
MFR(230℃、21.2N)が0.1〜20g/10分、溶融張力(230℃、口径2mm)が1.0〜50cNであり、伸長流動下においてひずみ硬化性を有するプロピレン系樹脂(B)0.1〜14重量%
を含有する樹脂組成物を、溶融紡糸した後、延伸することを特徴とするポリプロピレン繊維の製造方法。が提供される。
【発明の効果】
【0012】
本発明のポリプロピレン繊維は、原料樹脂組成物として、特定のプロピレン−α−オレフィン共重合体(成分(a))に特定のエチレン−α−オレフィン共重合体(成分(b))を配合することにより、特定のMFRと溶融張力を有し、ひずみ硬化性のプロピレン系樹脂(B)を、プロピレン系樹脂(A)に配合した樹脂組成物を使用することにより、繊維化の際、延伸性に優れるので、強度の高いポリプロピレン繊維を安定して得ることができる。
得られたポリプロピレン繊維は、高い強度を有するので、ロープ、織物、カーペット、人工芝、コンクリート補強用繊維等の用途に極めて好適なものである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明のポリプロピレン繊維の構成成分及びポリプロピレン繊維の製造法について、詳細に説明する。
【0014】
[1.構成成分]
[1.1 プロピレン系樹脂(A)]
本発明のポリプロピレン繊維の原料樹脂組成物の主成分であるプロピレン系樹脂(A)は、その種類に特に制限はなく、プロピレン単独重合体、プロピレンブロック共重合体やプロピレンランダム共重合体等のいずれのものでも使用することができる。プロピレンランダム共重合体としては、例えば、プロピレンとα−オレフィンを共重合してなる結晶性ポリプロピレン樹脂が挙げられる。α−オレフィンとしては、エチレン、ブテン−1、ヘキセン−1、オクテン−1、デセン−1、3−メチルブテン−1、4−メチルペンテン−1、2−メチルペンテン−1等から選ばれる一以上のα−オレフィンが挙げられる。
【0015】
上記プロピレンブロック共重合体としては、例えば、プロピレンを重合又はプロピレンと少量のα−オレフィンを共重合してなる結晶性ポリプロピレン成分と、プロピレンとα−オレフィンとを共重合してなる低結晶性若しくは非晶性プロピレン−α−オレフィンランダム共重合体成分とから構成されたポリプロピレン樹脂が挙げられる。α−オレフィンとしては、エチレン、ブテン−1、ヘキセン−1、オクテン−1、デセン−1、3−メチルブテン−1、4−メチルペンテン−1、2−メチルペンテン−1等から選ばれる一以上のα−オレフィンが挙げられる。低結晶性若しくは非晶性プロピレン−α−オレフィンランダム共重合体成分におけるα−オレフィンは、エチレンが好ましく、ブテン−1、ヘキセン−1、オクテン−1、デセン−1、3−メチルブテン−1、4−メチルペンテン−1、2−メチルペンテン−1等から選ばれる一以上のα−オレフィンが共重合されていてもよい。
これらのうち、より高強度なポリプロピレン繊維を得るためには、プロピレン系樹脂(A)は、プロピレン単独重合体であることが望ましい。
【0016】
ポリプロピレン樹脂(A)は、メルトフローレート(MFR)が0.1〜100g/10分の範囲にあるものが好適である。MFRが0.1g/10分未満では樹脂組成物の延伸性が不十分となる不都合があり、100g/10分を超えると繊維の強度が低下しやすい。より好ましいMFRの下限値は1g/10分、さらに好ましくは5g/10分である。より好ましいMFRの上限値は50g/10分、さらに好ましくは30g/10分である。
なお、MFRは、JIS K7210に準拠して230℃、21.2N荷重にて測定する値である。
【0017】
なお、これらポリプロピレン系樹脂(A)の入手方法は、市販の樹脂を利用するほか、各種公知のプロピレン重合用触媒を用いて公知の重合方法によって製造されたものが利用できる。
【0018】
[1.2 プロピレン系樹脂(B)]
原料樹脂組成物として、上記プロピレン系樹脂(A)に配合されるプロピレン系樹脂(B)は、MFR(230℃、21.2N)が0.1〜20g/10分、溶融張力(190℃、口径2mm)が1.0〜50cNであり、かつ、伸長流動下においてひずみ硬化性を有し、下記成分(a)及び成分(b)を含有し、成分(b)が成分(a)100重量部に対し0.01〜20重量部であるプロピレン系樹脂である。
成分(a):
固有粘度[η](135℃のテトラリン中で測定)が0.2〜10dl/gである、プロピレン単独重合体またはプロピレン重合単位を50重量%以上含有するプロピレン−α−オレフィン共重合体。
成分(b):
固有粘度[η](135℃のテトラリン中で測定)が15〜100dl/gである、エチレン単独重合体またはエチレン重合単位50重量%以上を含有するエチレン−α−オレフィン共重合体。
【0019】
プロピレン系樹脂(B)のMFRは0.1〜20g/10分であり、好ましくは0.5〜15g/10分である。MFRが0.1g/10分未満であるとプロピレン系樹脂(A)への分散が悪化し、紡糸性が悪化する。20g/10分を超えると繊維の延伸性が向上しない為、高強度繊維が得られない。ここでMFRはJIS−K7210(230℃、21.2N)に準拠して測定する値である。
【0020】
本発明で用いるプロピレン系樹脂(B)の溶融張力は1.0〜50cNであり、好ましくは2〜50cN、より好ましくは4〜50cNである。溶融張力が1.0cN未満であると繊維の延伸性が向上しない為、高強度な繊維が得られない。溶融張力が50cNを超えると紡糸性が悪化する。
ここで溶融張力は、口径2.095×長さ40mmオリフィスから、温度190℃、速度20m/分にて樹脂を押し出し、巻取速度を徐々に上げていき、一定となった時の値である。
本発明で用いるプロピレン系樹脂(B)は、伸長流動下におけるひずみ硬化性を有するものである。ひずみ硬化性を有さないものを使用すると繊維の延伸性が向上しない為、高強度な繊維が得られない。
【0021】
ここでひずみ硬化性は、東洋精機製作所製メルテンレオメーターを用い、温度180℃において、伸長粘度とともに急激な粘度上昇を示す非線形現象を意味し、例えば「日本レオロジー学会誌、高分子溶融体の粘度に関する研究、小山清人、174−180頁、Vol.19、1991年」等を参照することができる。ひずみ速度については特に制限されないが、測定装置上の制限から通常0.01〜5/秒で測定が行われる。
【0022】
本発明で用いるプロピレン系樹脂(B)は、上記したように、下記成分(a)及び成分(b)を含有し、成分(b)が、成分(a)100重量部に対し、0.01〜20重量部である。
(a)固有粘度[η]が0.2〜10dl/gである、プロピレン単独重合体またはプロピレン重合単位を50重量%以上含有するプロピレン−α−オレフィン共重合体。
(b)固有粘度[η]が15〜100dl/gである、エチレン単独重合体またはエチレン重合単位50重量%以上を含有するエチレン−α−オレフィン共重合体。
【0023】
[1.2.1 成分(a)]
本発明で用いるプロピレン系樹脂(B)の一成分として用いられる、プロピレン単独重合体またはプロピレン重合単位を50重量%以上含有するプロピレン−α−オレフィン共重合体(以下、成分(a)と略称する場合がある。)は、135℃のテトラリン中で測定した固有粘度[η]が、0.2〜10dl/gであり、好ましくは0.5〜8dl/gである。成分(a)の固有粘度[η]が、0.2dl/g未満であると繊維の延伸性が向上しない為、高強度な繊維が得らず、また、10dl/gを超えると紡糸性が悪化する。
【0024】
成分(a)は、プロピレン単独重合体またはプロピレン重合単位を50重量%以上含有するプロピレン−α−オレフィン共重合体である。プロピレンと共重合されるプロピレン以外のα−オレフィンとしては、特に限定されないが、炭素数2〜12のオレフィンが好ましく用いられる。具体的には、エチレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、4−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン等が挙げられ、これらのオレフィンは1種のみならず2種であってもよい。
【0025】
具体的なプロピレン−α−オレフィン共重合体の例を挙げると、プロピレン−エチレン共重合体、プロピレン−1−ブテン共重合体、プロピレン−1−ペンテン共重合体、プロピレン−1−ヘキセン共重合体、プロピレン−1−オクテン共重合体、プロピレン−1−デセン共重合体、プロピレン−4−メチル−1−ペンテン共重合体、プロピレン−3−メチル−1−ペンテン共重合体があげられる。
プロピレン−α−オレフィン共重合体としては、プロピレン重合単位を通常50重量%以上含有すること、好ましくは80重量%以上、より好ましくは85重量%以上含有するものが好ましい。
【0026】
[1.2.2 成分(b)]
本発明で用いるプロピレン系樹脂(B)の一成分として用いられるエチレン単独重合体またはエチレン重合単位50重量%以上を含有するエチレン−α−オレフィン共重合体(以下、成分(b)という場合がある。)は、135℃のテトラリン中で測定した固有粘度[η]が15〜100dl/gであり、好ましくは17〜50dl/gである。成分(b)の固有粘度[η]が15dl/g未満であると、繊維の延伸性が向上しない為、高強度な繊維が得られない。また、100dl/gを超えるのは、製造上の効率から好ましくない。
【0027】
成分(b)は、エチレン単独重合体またはエチレン重合単位50重量%以上を含有するエチレン−α−オレフィン共重合体であり、エチレンと共重合されるエチレン以外のα−オレフィンとしては、特に限定されないが、炭素数3〜12のオレフィンが好ましく用いられる。具体的には、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、4−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン等が挙げられ、これらのオレフィンは1種のみならず2種であってもよい。
【0028】
本発明で用いるプロピレン系樹脂(B)は、成分(a)と成分(b)とからなる組成物であるが、該組成物中の成分(b)の配合量は、成分(a)100重量部に対して、0.01〜20重量部であり、好ましくは0.02〜10重量部である。成分(b)の量が0.01重量部未満では、得られる該樹脂の溶融張力の向上効果が少なく、20重量部を超えると効果が飽和するほか、紡糸性が悪化する。
【0029】
本発明で用いる上記高溶融張力のプロピレン系樹脂(B)は、上記の諸特性を満足すればいかなる方法で製造してもよく、勿論、別々に製造された成分(a)と成分(b)を、混合装置を用いて混合して製造しても、成分(a)を製造し、引き続き成分(b)を製造してプロピレン系樹脂(B)連続的に製造してもよい。また、使用する重合触媒も、立体規則性ポリプロピレンを製造可能な三塩化チタン系触媒、ハロゲン化マグネシウム担持型のチタン含有固体触媒、あるいはメタロセン触媒等の各種の触媒を用いることが出来る。より好適には、下記に示す製造方法を例示することができる。
以下の好ましいプロピレン系樹脂(B)の連続的製造方法は、大粒径のチタン含有固体触媒成分(イ)と有機アルミニウム化合物(ロ)および有機ケイ素化合物(ハ)からなる立体規則性触媒の存在下、気相中において第一段階で成分(a)(以下、「結晶性ポリプロピレン」ということがある。)を製造し(第1重合工程)、第二段階で成分(b)(以下、「プロピレン・α−オレフィンの共重合体」ということがある。)を連続的に製造する(第2重合工程)方法である。
【0030】
該製造方法において、チタン含有固体触媒成分(イ)は、マグネシウム化合物、シリカ化合物もしくはアルミナ等の無機担体やポリスチレン等の有機担体にチタン化合物を担持したもの、またかかる担持体に必要に応じて、例えば、2−メチル−2−イソブチル−1,3−ジメトキシプロパンなどのエーテル類、ジ−n−ブチルフタレート、ジイソブチルフタレートなどのエステル類の電子供与性化合物を反応せしめたものなら公知のどの様なものでも使用できる。
例えば、マグネシム化合物−アルコール溶液をスプレーし、該固体成分を部分乾燥し、しかる後該部分乾燥固体成分をハロゲン化チタンおよびジ−n−ブチルフタレートなどの電子供与性化合物で処理してなるチタン含有固体触媒成分、マグネシウム化合物をテトラヒドロフラン/アルコール/電子供与体に溶解させ、TiCl単独または該電子供与体との組み合わせで析出させたマグネシム単体をハロゲン化チタンおよび上記電子供与性化合物で処理してなるチタン含有固体触媒成分などが挙げられる。
【0031】
また、該チタン含有触媒成分(イ)は、好ましくは平均粒径が25〜300μm、より好ましくは30〜150μmのものが用いられる。該チタン含有触媒成分(イ)の平均粒径が25μm未満では製造される粉末状のポリプロピレンの流動性すなわち、粉体流動性が著しく損なわれ、重合器の器壁や攪拌翼等へのポリプロピレンの付着による重合系内の汚染や重合器から排出された粉体の搬送が困難になる等、安定運転の大きな妨げとなる場合がある。
さらに、該チタン含有触媒成分(イ)は、正規分布における均一度は2.0以下のものが好ましい。均一度が2.0を超えると得られるポリプロピレンの粉体流動性が悪化して連続での安定運転が困難となる場合がある。
【0032】
有機アルミニウム化合物(ロ)としては、一般式がRAlX3−m(式中、Rは炭素数1〜20の炭化水素基を、Xはハロゲン原子を表し、mは3≧m≧1.5の正数である)で表される有機アルミニウム化合物(ロ)を用いることができる。具体的には、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリ−n−プロピルアルミニウム、トリ−n−ブチルアルミニウム、トリ−i−ブチルアルミニウム、ジメチルアルミニウムクロライ、ジエチルアルミニウムクロライド、メチルアルミニウムセスキクロライド、ジ−n−プロピルアルミニウムモノクロライド、エチルアルミニウムセスキクロライド、エチルアルミニウムジクロリド、ジエチルアルミニウムアイオダイド、エトキシジエチルアルミニウム等を挙げることができ、好ましくはトリエチルアルミニウムを使用する。これら有機アルミニウム化合物は1種の単独あるいは2種以上の混合物として使用することができる。
【0033】
有機ケイ素化合物(ハ)としては、一般式RSi(OR(式中、RおよびRは炭化水素基、Rは炭化水素基もしくはヘテロ原子を含む炭化水素基を表し、0≦X≦2、1≦Y≦3、1≦Z≦3、かつX+Y+Z=4である)で表される有機ケイ素化合物が使用される。具体的には、メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、フェニルメチルジメトキシシラン、t−ブチルトリメトキシシラン、t−ブチルトリエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、メチルエチルジメトキシシラン、メチルフェニルジエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジイソプロピルジメトキシシラン、ジイソブチルジメトキシシラン、ジ−t−ブチルジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン等を挙げることができる。好ましくは、ジイソブチルジメトキシシラン、ジイソプロピルジメトキシシラン、ジ−t−ブチルジメトキシシラン、シクロヘキシルメチルジメトキシシランおよびジフェニルジメトキシシランが使用される。これらの有機ケイ素化合物は、1種の単独あるいは2種以上の混合物として使用することができる。
【0034】
前記チタン含有固体触媒成分(イ)、有機アルミニウム化合物(ロ)および必要に応じて有機ケイ素化合物(ハ)を組み合わせた立体規則性触媒を、第1重合工程のプロピレン重合に用いるが、該チタン含有固体触媒(イ)は、α−オレフィンを予め反応させて予備活性化処理した触媒として用いることが好ましい。
チタン含有固体触媒成分(イ)の予備活性化処理においては、有機アルミニウム化合物の使用量は、特に限定されるものではないが、通常チタン含有固体触媒成分中のチタン原子1モルに対して0.1〜40モル、好ましくは0.3〜20モルの範囲で用い、α−オレフィンを10〜80℃で10分〜48時間かけてチタン含有固体触媒成分(イ)1グラム当たり0.1〜100グラム、好ましくは0.5〜50グラムを反応させる。予備活性化処理においては、予め、有機ケイ素化合物を有機アルミニウム化合物1モルに対して0.01〜10モル、好ましくは0.05〜5モルの範囲で用いてもよい。
【0035】
上記の予備活性化処理に用いられる有機アルミニウムとしては、本重合に用いられる前記例示した有機アルミニウム(ロ)を挙げることができる。この有機アルミニウム化合物として、本重合時に使用される有機アルミニウム化合物(ロ)と同種のものでも、または異なる種類のものを使用できるが、好ましくはトリエチルアルミニウムを用いる。
また予備活性化処理に必要に応じて用いられる有機ケイ素化合物としては、前記例示した有機ケイ素化合物(ハ)と同種のものを挙げることができる。この有機ケイ素化合物(としても、本重合に使用される有機ケイ素化合物(ハ)と同種のものでも、また異なるものを使用でき、好ましくは、ジイソブチルジメトキシシラン、ジイソプロピルジメトキシシラン、ジ−t−ブチルジメトキシシラン、シクロヘキシルメチルジメトキシシランおよびジフェニルジメトキシシランを用いる。
【0036】
チタン含有固体触媒成分(イ)の予備活性化処理に用いられるα−オレフィンとしては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン、1−エイコセン、4−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン等である。これらのオレフィンは、単独のみならず、他のオレフィンの1種または2種以上の混合物をも含んでいてもよい。また、その重合に際してポリマーの分子量を調節するために水素等の分子量調節剤を併用することもできる。
チタン含有固体触媒成分(イ)の予備活性化処理に用いられる不活性溶剤は、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカンおよび流動パラフィン等の液状飽和炭化水素やジメチルポリシロキサンの構造を持ったシリコンオイル等の重合反応に著しく影響を及ぼさない不活性溶剤である。これらの不活性溶剤は、1種の単独溶剤または2種以上の混合溶剤のいずれでもよい。これらの不活性溶剤の使用に際しては重合に悪影響を及ぼす水分、イオウ化合物等の不純物は取り除いた後で使用することが好ましい。
【0037】
上記予備活性化処理されたチタン含有固体触媒成分(イ)の存在下に、気相中においてプロピレンもしくは該プロピレンと少量のα−オレフィンとを重合して結晶性ポリプロピレン(成分(a))を製造する第1重合工程、次いで該結晶性ポリプロピレンの存在下にプロピレンとα−オレフィンとを共重合してプロピレン・α−オレフィン共重合体(成分(b))を製造する第2重合工程を連続的に実施する。
該第1重合工程は気相重合法に限定されるものではなく、スラリー重合法や塊状重合法を採用してもよいが、それに連続する第2重合工程が気相重合法であることが好ましいことから、第1重合工程も気相重合法を採用することが好ましい。第2重合工程としてスラリー重合法や塊状重合法を採用した場合、得られる共重合体が溶液中に溶出し、安定運転の継続が困難となる。
【0038】
結晶性ポリプロピレン(成分(a))の重合条件は、重合形式で異なるが、気相重合法の場合、一定量の粉末状ポリプロピレン系組成物を混合、撹拌しながら予備活性化処理されたチタン含有固体触媒成分(イ)、有機アルミニウム成分(ロ)および有機ケイ素化合物(ハ)からなる立体規則性触媒の存在下、重合温度20〜120℃、好ましくは40〜100℃、重合圧力大気圧〜9.9MPa、好ましくは0.59〜5.0MPaの条件下にプロピレンもしくは該プロピレンと少量のα−オレフィンとを供給して重合し、結晶性ポリプロピレンを製造する。
【0039】
有機アルミニウム化合物(ロ)とチタン含有固体触媒成分(イ)との使用比率はAl/Ti=1〜500(モル比)、好ましくは10〜300である。この場合、チタン含有固体触媒成分(イ)のモル数とは実質的にチタン含有固体触媒成分(イ)中のTiグラム原子数をいう。有機ケイ素化合物(ハ)と有機アルミニウム成分(ロ)の使用率はB/C=1〜10(モル比)、好ましくは1.5〜8である。(ロ)/(ハ)のモル比が過大な場合、結晶性ポリプロピレンの結晶性が低下し、得られるポリプロピレン系組成物の剛性が不十分となる。また、該B/Cモル比が過小な場合には重合活性が著しく低下し、生産性が低下する。
結晶性ポリプロピレン(成分(a))の分子量の調節には、重合時に水素のような分子量調節剤の使用が可能であり、結晶性ポリプロピレンの極限粘度が本発明の要件を満たすように実施される。結晶性ポリプロピレンを重合後、生成した粉末状重合体の一部を抜き出し、極限粘度、メルトフローレート、触媒単位重量当たりの重合収量の測定に供する。
【0040】
第1重合工程の重合に引き続いて、重合温度20〜120℃、好ましくは40〜100℃、重合圧力大気圧〜9.9MPa、好ましくは0.59〜5.0MPaの条件下でプロピレンとα−オレフィンとの混合モノマーを共重合してプロピレン・α−オレフィン共重合体(成分(b))を生成させる第2重合工程を実施する。プロピレン・α−オレフィン共重合体中のα−オレフィン含有量はコモノマーガス中のα−オレフィンモノマーとプロピレンモノマーのガスモル比を制御して、共重合体中のプロピレン含有量が35〜60モル%になるように調節する。
【0041】
一方、結晶性ポリプロピレン(成分(a))の重量に対するプロピレン・α−オレフィン共重合体(成分(b))の重量は、重合時間の調節や一酸化炭素や硫化水素等の触媒の重合活性調節剤を使用して、プロピレン・α−オレフィン共重合体の重量が22〜44重量%になるよう調節する。さらに、プロピレン・α−オレフィン共重合体の分子量は、プロピレン・α−オレフィン共重合体の極限粘度が本発明で用いるポリプロピレン系樹脂(B)の要件を満たすように水素のような分子量調節剤を共重合時に加えて調節される。また、水素の供給方法は、得られるポリプロピレン系組成物が本発明の要件を満たす様に供給される。重合方式は、回分式、半連続式もしくは連続式のいずれでも採用できるが、工業的には連続式の重合方式が好ましい。
【0042】
第2重合工程の終了後に重合系内からモノマーを除去して粉末状のポリプロピレン系樹脂(B)を得ることができる。得られたポリプロピレン系樹脂の一部は極限粘度の測定、およびα−オレフィン含有量の測定ならびに触媒単位重量当たりの重合収量の測定に供する。
【0043】
本発明で用いるプロピレン系樹脂(B)は、上述した製造方法によって、具体的には実施例に記載する方法により得ることができる。
また、プロピレン系樹脂(B)は、市販品である日本ポリプロ社製の高溶融張力ポリプロピレングレードである商品名「ニューフォーマー」(NEWFOAMER)(いずれも登録商標)から本発明の規定を満たす所定のグレードのものを用いることでも可能である。
【0044】
本発明で使用される、プロピレン系樹脂(A)とプロピレン系樹脂(B)とからなる樹脂組成物中に含まれるプロピレン系樹脂(B)の配合量は、0.1〜14重量%、好ましくは0.5〜10重量%、更に好ましくは0.5〜3重量%である。0.1重量%より少ないと繊維の延伸性が向上しない為、高強度な繊維が得られない。14重量%を超えると紡糸性が悪化する。
【0045】
[1.3 その他の成分]
本発明のポリプロピレン繊維には、樹脂組成物中に、通常ポリオレフィンに使用する公知の酸化防止剤、中和剤、光安定剤、紫外線吸収剤、無機充填剤、ブロッキング防止剤、滑剤、帯電防止剤、金属不活性剤、顔料などの各種添加剤を、本発明の目的を損なわない範囲で配合することができる。
【0046】
酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、フォスファイト系酸化防止剤およびチオ系酸化防止剤などが例示でき、中和剤としてはステアリン酸カルシウムやステアリン酸亜鉛などの高級脂肪酸塩類が例示でき、光安定剤および紫外線吸収剤としてはヒンダードアミン類、ニッケル錯化合物、ベンゾトリアゾール類、ベンゾフェノン類などが例示できる。
【0047】
また、無機充填剤およびブロッキング防止剤としては、炭酸カルシウム、シリカ、ハイドロタルサイト、ゼオライト、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウムなどが例示でき、滑剤としてはステアリン酸アマイドなどの高級脂肪酸アマイド類が例示できる。更に、帯電防止剤としては、グリセリン脂肪酸モノエステルなどの脂肪酸部分エステル類が例示でき、金属不活性剤としてはトリアジン類、フォスフォン類、エポキシ類、トリアゾール類、ヒドラジド類、オキサミド類などが例示できる。
これら添加剤の配合量は、ポリプロピレン系樹脂に、好ましくは0.0001〜3重量%、より好ましくは0.001〜1重量%である。
さらに、本発明の効果を著しく損なわない範囲内で他の樹脂を配合することもできる。
【0048】
[2.ポリプロピレン繊維の製造方法]
ポリプロピレン繊維の製造は、マルチフィラメント成形、モノフィラメント成形、フラットヤーン成形等によって好ましく製造され、上記した樹脂組成物を、ノズルを用いて溶融紡糸し、延伸用の繊維(フィラメント、ヤーン等を含む。)を得る。紡糸温度は、該樹脂組成物の融点より30〜80℃高い温度に設定するのが好ましい。延伸用繊維は、好ましくはドラフトを加えた後、延伸される。
延伸倍率は、通常5〜10倍、好ましくは6〜8倍である。延伸は、冷延伸を行った後熱延伸を行う、あるいは冷延伸を行うことなく熱延伸のみを行う等の各種方法が採用できる。冷延伸は通常40℃以下が好ましく、熱延伸は、通常120〜160℃で行うのが好ましい。
【0049】
[3.ポリプロピレン繊維]
本発明のポリプロピレン繊維は、従来にない優れた強度を有するものであり、6.5cN/dtex以上、好ましくは7.0cN/dtex以上の強度を有する。したがって、これを、ロープ、織物(ファブリック)、カーペット、人工芝、コンクリート補強繊維等として、使用することが極めて有効である。
カーペットは、本発明のポリプロピレン繊維をカーペット用基布に織りこみ、縫込み又は接着することにより得られる。人工芝は、本発明のポリプロピレン繊維を、人工芝用の基布に対して縫込み又は接着することにより得られる。また、コンクリート補強用繊維としては、本発明のポリプロピレン繊維を単繊維のまま、あるいはマルチフィラメントにすることにより使用できる。
【実施例】
【0050】
以下、本発明を実施例及び比較例を挙げて、詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例で限定されるものではない。
【0051】
[1.測定・評価法]
実施例および比較例において、ポリプロピレン繊維の測定・評価は、以下の方法に従って行った。
(1)MFR:JIS K7210に準じて加熱温度230℃、荷重21.2Nにて測定した。
(2)溶融張力:(株)東洋精機製作所製メルトテンション2型を用い、190℃に加熱溶融した樹脂組成物を、直径2.095mm、長さ40mmのオリフィスから20mm/分の速度で押し出されたストランドを引き取り、値が安定した時の値を溶融張力とした(単位:cN)。
【0052】
(3)紡糸性
糸成形時の断糸の有無を目視で評価した。
(4)最高延伸倍率
延伸前後の引取速度比から算出した。
(5)繊維強度・繊維伸度の測定方法
JIS−1013Lに準ずる。繊維長10cm、伸長速度100%/分、常温で測定。
【0053】
[2.使用材料]
実施例および比較例において、使用した材料は、以下のとおりである。
・プロピレン系樹脂(A)
PP−1:日本ポリプロ(株)社製のポリプロピレン樹脂
商品名「SA01A」、MFR9g/10分
・プロピレン系樹脂(B)
PP−2:下記の製造例1により得られた本発明の規定を満足するプロピレン系樹脂
【0054】
(製造例1)
(i)遷移金属化合物触媒成分の調整
撹拌機付きステンレス製反応器中において、デカン37.5リットル、無水塩化マグネシウム7.14kgおよび2―エチル−1−ヘキサノール35.1リットルを混合し、撹拌しながら140℃で4時間加熱反応を行って均一な溶液とした。この均一溶液中に無水フタル酸1.67kgを添加し、さらに130℃にて1時間撹拌混合を行い、無水フタル酸をこの均一溶液に溶解した。
得られた均一溶液を室温(23℃)に冷却した後、この均一溶液を−20℃に保持した四塩化チタン200リットル中に3時間かけて全量滴下した。滴下後、4時間かけて110℃に昇温し、110℃に達したところでフタル酸ジ−i−ブチル5.03リットルを添加し、2時間110℃にて撹拌保持して反応を行った。反応終了後、熱濾過して固体部を採取し、固体部を275リットルの四塩化チタン中に再懸濁させた後、再び110℃で2時間、反応を持続した。
反応終了後、再び熱濾過により固体部を採取し、n−ヘキサンにて、洗浄液中に遊離のチタンが検出されてなくなるまで充分洗浄した。続いて、濾過により溶媒を分離し、固体部を減圧乾燥してチタン2.4重量%を含有するチタン含有担持型触媒成分(遷移金属化合物触媒成分)を得た。
【0055】
(ii)予備活性化触媒の調整
内容積30リットルの傾斜羽根付きステンレス製反応器を窒素ガスで置換後、n−ヘキサン18リットル、トリエチルアルミニウム60ミリモルおよび前項で調整したチタン含有担持型触媒成分150g(チタン原子換算で75.16ミリモル)を添加した後、プロピレン500gを供給し、−2℃で40分、予備重合を行った。
別途、同一条件で行った予備重合後に生成したポリマーを分析した結果、チタン含有担粘度[ηA]は2.80dl/gであった。
反応時間終了後、未反応のプロピレンを反応器外に放出し、反応器の気相部を1回、窒素置換した後、反応器内の温度を0℃に保持しながら、反応器内の圧力を0.59MPaに維持するようにエチレンを反応器に連続的に6時間供給し、予備重合を行った。別途、同一の条件で行った予備活性化重合後に生成したポリマーを分析した結果、チタン含有担持型触媒成分1gあたり、ポリマーが73.3g存在し、かつポリマーの固有粘度[ηT]は29.7dl/gであった。
【0056】
エチレンによる予備活性化重合で生成したチタン含有担持型触媒成分1g当たりのポリエチレン量(WB)は、予備活性化処理後のチタン含有型触媒成分1g当たりのポリマー生成量(WT)と予備重合後のチタン含有型触媒成分1g当たりのポリプロピレン生成量(WA)との差として次式で求められる。
[ηB]=([ηT]×WT−[ηA]×WA)/(WT−WA)
反応時間終了後、未反応のエチレンを反応器外に放出し、反応器の気相部を1回、窒素置換し、プロピレン系重合体組成物製造の為の予備活性化触媒スラリーとしたが、別途、同一条件で行ったプロピレンによる予備重合およびエチレンによる予備重合活性化重合のデータを用いた上記式による計算結果から、エチレンによる予備活性化重合で生成したポリエチレン量は、チタン含有担持型触媒成分1g当たり70.3g、該ポリエチレンの固有粘度は30.9dl/gであった。
これにより、135℃のテトラリン中で測定した固有粘度[η]が30.9dl/gである、エチレン単独重合体からなる((b)成分)を得た。
【0057】
(iii)プロピレン−オレフィン共重合体((a)成分)の製造
窒素置換された、内容積110リットルの攪拌機を備えた連続式横型気相重合器(長さ/直径=3.7)に、触媒成分の分散媒体としてポリプロピレンパウダー25kgを導入し、さらに予備活性化触媒のスラリーをチタン含有担持型触媒成分として0.62g/h、またはトリエチルアルミニウムおよびジイソプロピルジメトキシシランをチタン含有担持型触媒成分中のチタン原子に対し、それぞれモル比が90および15となるように連続的に供給した。
【0058】
さらに、重合温度70℃の条件下、重合器内の水素濃度のポリプロピレン濃度に対する比が0.0055となるように水素を、また重合器内の圧力が2.15MPaを保持するようにプロピレンをそれぞれ重合器内に供給して、プロピレンの気相重合を150時間連続して行った。重合中は重合器内の重合体の保有レベルを60容積%に維持するように、重合器からポリマーを11kg/hの速度で抜き出した。抜き出したポリマーを、水蒸気を5容積%含む窒素ガスにより100℃にて30分間接触処理し、固有粘度が1.98dl/gであるポリマーを得た。
得られたポリマーは、予備活性化処理により生成したエチレン−α−オレフィン共重合体((b)成分)の含有率0.90重量%のプロピレン系樹脂(B)であり、プロピレン−オレフィン共重合体((a)成分)の固有粘度は1.86dl/gであった。
【0059】
このプロピレン系樹脂(B)100重量部と、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール0.1重量部、およびステアリン酸カルシウム0.1重量部を混合し、該混合物をスクリュー径40mmの押出機を用いて230℃にて造粒しペレット状のポリプロピレン系樹脂(PP−2)を得た。得られたペレットのMFRは2g/分、溶融張力は21cNで歪み硬化性を有していた。
【0060】
・PP−3:バゼル社製の高溶融張力ポリプロピレン樹脂商品名「PF814」
電子線架橋処理によるポリプロピレンホモポリマー、MFR:3g/10分、溶融張力:25cN、ひずみ硬化性あるが、本発明の規定の成分(a)および成分(b)からなるポリプロピレン系樹脂ではない。
【0061】
(実施例1)
プロピレン系樹脂(A)としてPP−1を99wt%、プロピレン系樹脂(B)としてPP−2を1wt%を、タンプラーにてドライブレンドし、混合物を得た。これをギヤポンプ付きマルチフィラメント紡糸機(ダイス:0.8mmφ×30孔)を用いて、紡糸温度240℃、巻取り速度500m/分で溶融紡糸し、約15デシテクスの未延伸糸を得た。次いで、フィードロール温度90℃、延伸点のヒータ温度130℃、ドローロール温度110℃の条件下で延伸を行い、最高延伸倍率4.3倍で4倍延伸糸を得た。
評価結果を表1に示す。
【0062】
(実施例2)
PP−1を95wt%、PP−2を5wt%とした以外は実施例1と同様にして、約15デシテクスの未延伸糸を得た。次いで、フィードロール温度90℃、延伸点のヒータ温度130℃、ドローロール温度110℃の条件下で延伸を行い、最高延伸倍率4.6倍で4.3倍延伸糸を得た。
評価結果を表1に示す。
【0063】
(実施例3)
PP−1を90wt%、PP−2を10wt%とした以外は実施例1と同様にして、約15デシテクスの未延伸糸を得た。次いで、フィードロール温度90℃、延伸点のヒータ温度130℃、ドローロール温度110℃の条件下で延伸を行い、最高延伸倍率5.0倍で4.7倍延伸糸を得た。
評価結果を表1に示す。
【0064】
(比較例1)
原料をPP−1のみとした以外は実施例1と同様にして、最高延伸倍率を3.8倍にして、3.5倍延伸糸を得た。
評価結果を表1に示す。
【0065】
(比較例2)
PP−1を85wt%、PP−2を15wt%とし、最高延伸倍率を5.0倍とした以外は実施例1と同様にして、4.7倍延伸糸を得た。
評価結果を表1に示す。
【0066】
(比較例3)
PP−1を99wt%、PP−3を1wt%を、タンプラーでドライブレンドし、混合物を得た。これをギヤポンプ付きマルチフィラメント紡糸機(ダイス:0.8mmφ×30孔)を用いて、紡糸温度240℃、巻取り速度500m/分で溶融紡糸したが断糸が多発し繊維が採取できなかった。
【0067】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明のポリプロピレン繊維は、特定のMFRと溶融張力を有し、ひずみ硬化性のプロピレン系樹脂(B)を、プロピレン系樹脂(A)に配合した樹脂組成物を使用することにより、繊維化の際、延伸性に優れるので、強度の高いポリプロピレン繊維を、工業的規模で安定して得ることができ、得られたポリプロピレン繊維は、非常に高い強度を有するので、ロープ、織物、カーペット、人工芝、コンクリート補強用繊維等の用途にも好適に広く使用することができ、産業上の利用性は非常に高いものがある。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロピレン系樹脂(A)と、
固有粘度[η](135℃のテトラリン中で測定)が0.2〜10dl/gである、プロピレン単独重合体またはプロピレン重合単位を50重量%以上含有するプロピレン−α−オレフィン共重合体(成分(a))と、固有粘度[η](135℃のテトラリン中で測定)が15〜100dl/gである、エチレン単独重合体またはエチレン重合単位50重量%以上を含有するエチレン−α−オレフィン共重合体(成分(b))を、成分(a)100重量部に対し成分(b)0.01〜20重量部を含有し、
MFR(230℃、21.2N)が0.1〜20g/10分、溶融張力(230℃、口径2mm)が1.0〜50cNであり、伸長流動下においてひずみ硬化性を有するプロピレン系樹脂(B)0.1〜14重量%
を含有する樹脂組成物からなることを特徴とするポリプロピレン繊維。
【請求項2】
プロピレン系樹脂(A)が、プロピレン単独重合体であることを特徴とする請求項1に記載のポリプロピレン繊維。
【請求項3】
請求項1または2に記載のポリプロピレン繊維を用いたロープ。
【請求項4】
請求項1または2に記載のポリプロピレン繊維を用いた織物。
【請求項5】
請求項1または2に記載のポリプロピレン繊維を用いたカーペット。
【請求項6】
請求項1または2に記載のポリプロピレン繊維を用いた人工芝。
【請求項7】
請求項1または2に記載のポリプロピレン繊維を用いたコンクリート補強用繊維。
【請求項8】
プロピレン系樹脂(A)と、
固有粘度[η](135℃のテトラリン中で測定)が0.2〜10dl/gである、プロピレン単独重合体またはプロピレン重合単位を50重量%以上含有するプロピレン−α−オレフィン共重合体(成分(a))と、固有粘度[η](135℃のテトラリン中で測定)が15〜100dl/gである、エチレン単独重合体またはエチレン重合単位50重量%以上を含有するエチレン−α−オレフィン共重合体(成分(b))を、成分(a)100重量部に対し成分(b)0.01〜20重量部を含有し、
MFR(230℃、21.2N)が0.1〜20g/10分、溶融張力(230℃、口径2mm)が1.0〜50cNであり、伸長流動下においてひずみ硬化性を有するプロピレン系樹脂(B)0.1〜14重量%
を含有する樹脂組成物を、溶融紡糸した後、延伸することを特徴とするポリプロピレン繊維の製造方法。

【公開番号】特開2011−195988(P2011−195988A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−63441(P2010−63441)
【出願日】平成22年3月19日(2010.3.19)
【出願人】(596133485)日本ポリプロ株式会社 (577)
【Fターム(参考)】