ポリベンゾイミダゾール−ポリエーテルケトンケトンブレンド体および混和性ブレンド体
【課題】 ポリベンゾイミダゾール(PBI)とポリエーテルケトンケトン(PEKK)の溶液ブレンド体を製造する製法を提供する。
【解決手段】 PBIは40℃から80℃の間の温度で30分から2時間をかけて硫酸と混合してPBI溶液を製造し、次に室温まで冷却して冷却PBI溶液を作成する。次にPEKKを冷却PBI溶液に加えて混合物を作成し、その混合物を室温で30分から2時間撹拌して撹拌混合物を作成する。この撹拌混合物を過剰量の水に素早く撹拌しながら注入して含水混合物を作成する。この含水混合物を濾過してブレンド体を製造する。このブレンド体を水で洗浄し、乾燥させる。得られたブレンド体は、PBI/PEKK比が1:99から99:1までのあらゆる比率のブレンド体として産出可能である。
【解決手段】 PBIは40℃から80℃の間の温度で30分から2時間をかけて硫酸と混合してPBI溶液を製造し、次に室温まで冷却して冷却PBI溶液を作成する。次にPEKKを冷却PBI溶液に加えて混合物を作成し、その混合物を室温で30分から2時間撹拌して撹拌混合物を作成する。この撹拌混合物を過剰量の水に素早く撹拌しながら注入して含水混合物を作成する。この含水混合物を濾過してブレンド体を製造する。このブレンド体を水で洗浄し、乾燥させる。得られたブレンド体は、PBI/PEKK比が1:99から99:1までのあらゆる比率のブレンド体として産出可能である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリベンゾイミダゾール(PBI)とポリエーテルケトンケトン(PEKK)の溶液ブレンド体を製造する製法において、PBI/PEKK比が1:99から99:1までのあらゆる比率でブレンド体を製造する製法を提供する。
【背景技術】
【0002】
ポリベンゾイミダゾール(PBI)は高い熱安定性を持つ高分子であり、酸化や加水分解に耐性がある。ポリベンゾイミダゾール高分子は芳香族テトラアミンとジフェニルエステルまたは芳香族や複素環ジカルボン酸無水物を一段または二段製法で溶融重合することによって作成できる(例えば、特許文献1から6を参照)。特に、特許文献4は、芳香族ポリベンゾイミダゾールを製造する二段製法を開示する。第一段の溶融重合帯において、発泡プレポリマーが形成されるまでモノマーを170℃より高い温度に加熱する。発泡高分子を冷却、粉砕し、第二段の重合帯に導入して再加熱し、ポリベンゾイミダゾール高分子製品を得る。ポリベンゾイミダゾールは遊離ジカルボン酸またはそれらの酸のメチルエステルから作成することもできる。
【0003】
ポリアリルエーテルケトン高分子にはポリエーテルケトン(PEK)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルエーテルケトンケトン(PEEKK)、ポリエーテルケトンエーテルケトンケトン(PEKEKK)およびポリエーテルケトンケトン(PEKK)など、多くの近縁高分子がある。これらの高分子は成形可能なので、使用に適した部品に容易に形成することができる。これらの高分子は、長期間優れた高温下酸化安定性を示す(特許文献7参照)。ポリアリルエーテルケトンの内、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)は広く市販されており、しかも、優れた熱可塑性成形用樹脂であることが分かっている。室温では、PEEKは結晶相と非晶質相を持つ固体として存在する。この高分子の52から70%を占める非晶質相は、非晶質相のガラス転移温度Tgに相当する約143℃から155℃で軟化する。
【0004】
この高分子の残り48から30%は、約335℃の融解温度Tmを持つ結晶相として非晶質相に分散して存在する。この高分子はTgよりも高い温度に加熱されると軟化し、Tmより高い温度で融解する。PEEKのような部分結晶性高分子の未充填グレードのものは、発生する軟化が高分子の機械的性質、特に剛性(即ち弾性率)に激しい損失を引き起こすので、Tgよりも十分高い温度での成形部品の形態には不向きである。この低下した剛性は、Tgよりも高い温度における応力下での寸法安定性の減少に反映される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国再発行特許第26,065明細書
【特許文献2】米国特許第3,174,947明細書
【特許文献3】米国特許第3,509,108明細書
【特許文献4】米国特許第3,551,389明細書
【特許文献5】米国特許第3,433,772明細書
【特許文献6】米国特許第3,655,632明細書
【特許文献7】米国特許第4,320,224明細書(1982年3月16日付け、「熱可塑性芳香族ポリエーテルケトン」)
【特許文献8】米国特許第4,912,176明細書
【特許文献9】米国特許第5,070,153明細書
【特許文献10】米国特許第5,391,605明細書
【特許文献11】米国特許第5,844,036明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
PBIとポリアリルエーテルケトン(PAEK)の相乗的な性質を研究した従来の試みは低ケトン比のPAEK高分子、主としてケトン比33%のPEEKや、ケトン比50%のPEKに焦点を当ててきた。これらの混合物は、ポリアリルエーテルケトンのマトリックス樹脂の非晶質領域を固定化するというPBIの能力によりポリアリルエーテルケトンの他の充填剤では得られない強化された熱機械特性を得ることができるが、高分子の混和性ブレンド体で得られるそれより不十分である。これらの従来の試みは特許文献8から11に見いだすことが出来る。
【課題を解決するための手段】
【0007】
共に未充填かつ非強化のポリベンゾイミダゾール(PBI)とポリエーテルケトンケトン(PEKK)の溶液ブレンド体を製造するための製法を説明する。40℃から80℃の温度で30分から2時間かけてPBIを硫酸と混合してPBI溶液を作成する。このPBI溶液を室温まで冷却して冷却PBI溶液を形成する。次に冷却PBI溶液にPEKKを添加して混合物を作成し、この混合物を室温で30分から2時間撹拌し、撹拌混合物を作成する。この撹拌混合物を過剰量の水に素早く撹拌しながら注ぎ入れ、混合物から高分子ブレンド体を沈殿させる。この含水混合物を濾過してブレンド体を単離する。このブレンド体を水で洗浄して乾燥する。その結果生じるブレンド体は、PBI/PEKK比が1:99から99:1までのあらゆる比率のブレンド体として産出可能である。
前述のことは、以下の詳細な記述と付属図面を参照することによってより容易に明白となるであろう。なお、TGAは熱重量分析のことである。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】算出したガラス転移温度と実際に記録されたガラス転移温度とをプロットしたグラフである。
【図2】TGAによる温度に対するPBIの重量損失をプロットしたグラフである。
【図3】TGAによる温度に対するPEKKの重量損失をプロットしたグラフである。
【図4】TGAによる温度に対するPBI/PEKK比80:20のブレンド体の重量損失をプロットしたグラフである。
【図5】TGAによる温度に対するPBI/PEKK比70:30のブレンド体の重量損失をプロットしたグラフである。
【図6】TGAによる温度に対するPBI/PEKK比60:40のブレンド体の重量損失をプロットしたグラフである。
【図7】TGAによる温度に対するPBI/PEKK比50:50のブレンド体の重量損失をプロットしたグラフである。
【図8】TGAによる温度に対するPBI/PEKK比40:60のブレンド体の重量損失をプロットしたグラフである。
【図9】TGAによる温度に対するPBI/PEKK比30:70のブレンド体の重量損失をプロットしたグラフである。
【図10】TGAによる温度に対するPBI/PEKK比20:80のブレンド体の重量損失をプロットしたグラフである。
【図11】TGAによる温度に対するPBI/PEKK比10:90のブレンド体の重量損失をプロットしたグラフである。
【図12】増分10単位で変位させたPBI/PEKKの全ブレンド体の重量損失をプロットしたグラフである。
【図13】PBI/PEKKのブレンド体の10%重量損失温度をプロットしたグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
ポリベンゾイミダゾール(PBI)とポリエーテルケトンケトン(PEKK)の溶液ブレンド体を製造するための製法を説明する。40℃から80℃の温度で30分から2時間かけてPBIを硫酸と混合してPBI溶液を作り、その後室温まで冷却して冷却PBI溶液を作成する。室温は20℃から25℃(68°から77°F)の周囲温度と定義する。次にPEKKを冷却PBI溶液に加えて混合物を作成し、この混合物を室温で30分から2時間撹拌し、撹拌混合物を作成する。この撹拌混合物を過剰量の水に素早く撹拌しながら注ぎ入れ高分子ブレンド体を沈殿させる。この含水混合物を濾過して高分子ブレンド体を単離する。この高分子ブレンド体を水で洗浄し乾燥する。その結果生じたブレンド体は、PBI/PEKK比が1:99から99:1までのあらゆる比率のブレンド体として産出可能である。使用する水は、水道水、脱イオン水、蒸留水、脱イオン蒸留水のいずれでも良い。
【0010】
この様な高分子の溶液を一旦製造してしまえば、前述の混合物を液浴中に滴下あるいは噴霧することによって前記高分子ブレンド体が沈殿する。ここで、液浴は水またはメタノールまたは水/メタノール混合液からなる。沈殿した物質は必要に応じて粉砕しても良い。一実施例ではその後のブレンド体の乾燥としては、1〜200mmHgの範囲の圧力、室温から200℃の範囲の温度で行われる真空乾燥が可能であり、これにより樹脂を生成する。この樹脂は射出または圧縮のいずれかにより、それらの元になった純物質の特性の中間になる特定の熱的および機械的特性を持つ製品に成型される。
【0011】
PBIとPEKKは別々に85%から110%の濃度の硫酸に溶かす。94%から98%の硫酸濃度で上手く行くことは判明している。一実施例ではPBIは50℃から70℃の温度で硫酸と混合される。この製法は大気圧下で行われる。この製法は加圧無しで行われる。この製法において、素早く撹拌する工程は、よい混合を保証する装置で行うことができる。この様な装置の例としては、ワーリング(Waring)ブレンダーなどの商用または実験室用のブレンダーがある。ワーリングブレンダーはWaring Commercial社(Torrington,CT)から入手可能である。
【0012】
ポリベンゾイミダゾール(PBI)とポリエーテルケトンケトン(PEKK)のブレンド体を製造する製法はさらに追加工程を含んでもよい。ブレンド体を水で洗浄した後に、塩基中で中和して中和ブレンド体を作ってもよい。この中和ブレンド体を、水で洗浄して洗浄ブレンド体を作る。その後この洗浄ブレンド体を乾燥して、PBI/PEKK比が1:99から99:1までのあらゆる比率のブレンド体として産出することができる。
【0013】
塩基としては、どのような塩基も可能である。塩基は、酸を中和できる物質として定義される。水酸化物と金属酸化物の両方が含まれる。水に可溶な塩基、例えば水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化アンモニウムなどを用いることができるが、これらには限定されない。水酸化アンモニウムが上手く行くことは判明している。
【0014】
この製法では、乾燥工程を90℃から210℃の温度で行ってもよい。乾燥工程は4から12時間かけて行う。この乾燥工程は真空で行ってもよい。乾燥に真空を用いる場合は、1から200mmHgの範囲の真空で、且つ、室温から200℃までの範囲の温度で行う。乾燥工程により樹脂が生成される。
【0015】
ポリベンゾイミダゾール(PBI)とポリエーテルケトンケトン(PEKK)の溶液ブレンド体を製造するこの製法は、PBI/PEKK比が50:50から90:10の比率であるポリベンゾイミダゾール(PBI)とポリエーテルケトンケトン(PEKK)の混和性ブレンド体を製造することもできる。混和性ブレンド体とは、優勢または単一のTgを持つ、即ち、均質かつ均一な混合によるブレンド体または複合物として定義される。PBI/PEKK比が40:60から10:90のブレンド体も混和性となり得るが、それらはPEKKにより近い熱的挙動をする傾向がある。従って、それらの高温性能は僅かしか改善されず、PEKKの方が遙かに成形しやすく安価になるのでこれらのブレンド体の需要はかなり低い。PBI/PEKK比が50:50から90:10のポリベンゾイミダゾール(PBI)とポリエーテルケトンケトン(PEKK)の混和性ブレンド体は、優れた高温性能とより柔軟な製造属性を提供するのにも関わらず、PBIそのものよりも加工しやすいために好適である。
【0016】
得られた樹脂はPBI/PEKK比が50:50から90:10の比率を持ち、400℃より高いガラス転移温度Tgを持つ(図1参照)。この得られた樹脂は600℃での重量損失が20%未満であり(図4、5、6、7を参照)、800℃での重量損失が30%以下である(図4、5、6、7参照)。
【0017】
PBI樹脂とポリエーテルケトンケトンのブレンド体はFoxの関係式に凡そ従う熱特性を示すと期待する人がいるであろう(図1参照)。予想外にも、本溶液製法により作られたPBI/PEKK比50:50から90:10のあらゆる比率のポリベンゾイミダゾール(PBI)とポリエーテルケトンケトン(PEKK)のブレンド体は400℃より高いガラス転移温度Tgを有することが測定された。これは、Foxの関係式で予想されたものよりも大きい熱特性である。
【0018】
Fox方程式は強い相互作用を持たない理想共重合体または理想高分子ブレンド体(もしくは2種類の高分子の混和性ブレンド体)のTgの組成依存性を決定あるいは記述する。Fox方程式は典型的には混合物の単純な線形規則によって与えられたであろうものよりも低い値のTgになると見込まれ、混合物中の2つの成分の存在によるより高い有効自由体積またはランダム性を反映する。すなわち、
1/Tg=m1/Tg1+m2/Tg2 ただし、mはそれぞれの質量分率、または
1/Tg=w/Tg1+(1−w)/Tg2 ただし、wは重量分率
【0019】
本発明の一実施例では、ポリベンゾイミダゾール(PBI)とポリエーテルケトンケトン(PEKK)の溶液ブレンド体を製造する製法を示す。PBIとPEKKは40℃から80℃の温度で30分から2時間かけて強酸と混合して混合物を作り、その後室温まで冷却する。強酸は、硫酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、トリフルオロ酢酸、ジクロロ酢酸、ギ酸、およびそれらの組み合わせからなる一群の酸の中から選択する。室温は20℃から25℃(68°から77°F)の周囲温度として定義する。この混合物を非溶剤の液浴に滴下する。この液浴は水、メタノール、および水/メタノール混合液の一群から選択する。この液浴を素早く撹拌して高分子ブレンド体を沈殿させる。次にこの混合物を濾過して高分子ブレンド体を単離する。この高分子ブレンド体を水で洗浄し、乾燥させる。この結果生じたブレンド体は、PBI/PEKK比が1:99から99:1のあらゆる比率のブレンド体として産出可能である。使用する水は、水道水または脱イオン水のどちらでもよい。
【0020】
この実施例ではPBIとPEKKは一緒に80%から120%の濃度の強酸に溶解される。94%から98%の濃度が上手く行くことは判明している。硫酸が上手く行くことも判明している。一実施例では、PBIは50℃から70℃の間の温度でPEKKと強酸中で混合される。この製法は大気圧下で行われる。この製法は加圧無しに行われる。
【0021】
この実施例では、一緒に混合することは同時でも段階的でもよいと認識されるべきである。段階的に行う場合は、一方または他方の高分子をもう一方の高分子を加える前に添加し溶解あるいは一部溶解する。これは一方の高分子だけを高温下で添加する必要があり、他方の高分子は室温で添加可能な場合などである。
【0022】
本実施例ではポリベンゾイミダゾール(PBI)とポリエーテルケトンケトン(PEKK)のブレンド体を製造する製法はさらに追加工程を有してもよい。ブレンド体を水で洗浄した後、塩基中で中和して中和ブレンド体を作ることができる。この中和ブレンド体を水の中で洗浄して洗浄ブレンド体を作る。次にこの洗浄ブレンド体を乾燥して、PBI/PEKK比が1:99から99:1のあらゆる比率のブレンド体を産出する。塩基はどのような塩基でもよい。水に可溶な塩基、例えば水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化アンモニウムなどを使用することができるが、これらに限定はされない。水酸化アンモニウムが上手く行くことは判明している。
【0023】
本実施例では、このような高分子の溶液が作られ、この混合物を水または水/メタノール混合液中に滴下または噴霧して高分子ブレンド体を沈殿させる。この沈殿物を必要に応じて粉砕してもよい。一実施例ではその後のブレンド体の乾燥としては、1〜200mmHgの範囲の圧力、室温から200℃の範囲の温度で行われる真空乾燥が可能であり、これにより樹脂を生成する。この樹脂は射出または圧縮のいずれかにより、それらの元になった純物質の特性の中間になる特定の熱的および機械的特性を持つ製品に成型される。これらのブレンド体はフィルムや複合材料、合金を強化するのに用いることができる。さらに、これらのブレンド体は成形前に補強あるいは充填することができる。
【0024】
ポリベンゾイミダゾール(PBI)とポリエーテルケトンケトン(PEKK)の溶融ブレンド体を製造する製法も提供される。この代替製法では、ポリベンゾイミダゾール(PBI)とポリエーテルケトンケトン(PEKK)を乾燥状態で予混合して乾燥混合物を作る。複数の加熱帯をもつ押出機に乾燥混合物を入れる。押出機の加熱帯は240℃から410℃の範囲に設定する。この乾燥混合物は押出機を通過し、押出機によって混合され、発生した温度を受けて溶融する。この結果生じた製品は、PBI/PEKK比が1:99から80:20のあらゆる比率のPBI/PEKKの溶融ブレンド体である。
【0025】
この押出機は一軸スクリュー押出機でも二軸スクリュー押出機でもよい。高粘度となりがちなこの種の物質を押出する際には、一軸の場合も二軸の場合も、スクリューは通常20rpmから200rpmで稼働させる。一実施例においては、押出機はスクリュー押出機であり、30〜160rpmの範囲で稼働させる。別の一実施例では、押出機スクリューは40rpmから120rpmの範囲で稼働させる。このような押出機の一例は、ブラベンダー(Brabender)押出機である。北米市場向けには、C.W.Brabender社(South Hackensack,NJ)がBrabender(登録商標) Gmbh & Co.社(KG)と同一製品ラインを提供している。
【0026】
押出機は少なくとも2つの加熱帯を有することになるが、場合によっては3つ以上の加熱帯を有することも可能である。一実施例ではこれらの加熱帯は240℃から400℃の範囲に設定される。他の一実施例においては、加熱帯を250℃から395℃の範囲に設定する。殆どの場合、第一加熱帯は後続の加熱帯よりも低い温度に設定される。このことは、実施例欄において表Dを参照することによってより明白に理解できる。
【0027】
ポリベンゾイミダゾール(PBI)とポリエーテルケトンケトン(PEKK)の混和性ブレンド体を本製法で作ることができる。この場合、ブレンド体は、60:40から80:20のPBI/PEKK比を持ち、600℃での重量損失が20%未満、800℃での重量損失が30%以下となる。
【0028】
PBI樹脂とポリエーテルケトンケトンのブレンド体は凡そ混合則に従った熱特性を示すと期待する人がいるであろう。予想外にも、本溶融ブレンド製法により作られたPBI/PEKK比60:40から80:20のあらゆる比率のポリベンゾイミダゾール(PBI)とポリエーテルケトンケトン(PEKK)のブレンド体は400℃より高いガラス転移温度Tgを有することが測定された。これは、Foxの関係式で予想されたものよりも大きい熱特性である。
【実施例】
【0029】
PBI/PEKKのブレンド体の様々なバッチを準備し、市販されているPBIである、PBI Prformance Products社(CHarlotte NC)から入手可能なCELAZOLE(登録商標) PBI 100 mesh(sample300)と共に試験した。用いたPEKKは非晶質PEKKであった。その一例としては、A1050Gである。PEKKはInfinite Polymer Systems社(State College,PA.)またはOxford Performance Materials社(New Britain,CT;Cytic,W.Patterson,NJ)から入手可能である。以下に概要を示すように、これらのブレンド体を調製した。
【0030】
試料を検査し、それらの結果は表Aで見ることができる。TGAは熱重量分析のことである。加熱または冷却の速さを制御しながら測定した物質の重量損失は、時間と温度の関数として記録している。重量変化の速さについても経時的な重量変化の一次導関数を求めることで頻繁に電子的に測定している。示差走査熱量測定試験をTA Instruments DSC 2020 Modulated DSCで行った。試料は窒素で連続的にフラッシュされた。ガラス転移温度は10℃/minの速度で加熱しながら1回目のスキャンと2回目のスキャンを行って測定した。2回の加熱の間の試料の冷却速度は10℃/minであった。
【実施例1】
【0031】
PEKKとのPBI二成分ブレンド体の調製
実験 311
溶液法によるPBI/PEKK比90:10の調製
4つのブレードを持つガラス製メカニカルスターラーと窒素吸気口及び排気口を装備した500ml三口樹脂フラスコの中に、18グラムのPBI100と180グラムの96%硫酸を添加した。この混合物を60℃で1時間撹拌してPBIを溶解し、室温まで冷却した。冷却したPBI溶液に2グラムのPEKKを添加した。得られた混合物を室温で1時間撹拌し、これを1リットルの水の中にワーリングブレンダーで高速撹拌しながら注入し、次にこれを濾過して高分子ブレンド体を回収した。このブレンド体を水で洗浄し、水酸化アンモニウムで中和し、濾過し、水で再洗浄し、次に120℃真空下で一晩かけて乾燥し、20グラムのPBI/PEKK比90:10のブレンド体を得た。このブレンド体は次の熱的特性を有した。二回目のDSCスキャンの結果、409℃の単一Tgを得た。窒素下におけるTdの開始温度は612℃であり、10℃/minでの10%重量損失のTdは636℃であった。(Td=分解温度)
【実施例2】
【0032】
実験312
溶液法によるPBI/PEKK比80:20の調製
4つのブレードを持つガラス製メカニカルスターラーと窒素吸気口及び排気口を装備した500ml三口樹脂フラスコの中に、16グラムのPBI100と180グラムの96%硫酸を添加した。この混合物を60℃で1時間撹拌してPBIを溶解し、室温まで冷却した。冷却したPBI溶液に4グラムのPEKKを添加した。得られた混合物を室温で1時間撹拌し、これを1リットルの水の中にワーリングブレンダーで高速撹拌しながら注入し、次にこれを濾過して高分子ブレンド体を回収した。このブレンド体を水で洗浄し、水酸化アンモニウムで中和し、濾過し、水で再洗浄し、次に120℃真空下で一晩かけて乾燥し、14.6グラムのPBI/PEKK比80:20のブレンド体を得た。このブレンド体は次の熱的特性を有した。二回目のDSCスキャンの結果、414℃の単一Tgを得た。窒素下におけるTdの開始温度は559℃であり、10℃/minでの10%重量損失のTdは630℃であった。(Td=分解温度)
【実施例3】
【0033】
実験313
溶液法によるPBI/PEKK比70:30の調製
4つのブレードを持つガラス製メカニカルスターラーと窒素吸気口及び排気口を装備した500ml三口樹脂フラスコの中に、14グラムのPBI100と180グラムの96%硫酸を添加した。この混合物を60℃で1時間撹拌してPBIを溶解し、室温まで冷却した。冷却したPBI溶液に6グラムのPEKKを添加した。得られた混合物を1時間室温で撹拌し、これを1リットルの水の中にワーリングブレンダーで高速撹拌しながら注入し、次にこれを濾過して高分子ブレンド体を回収した。このブレンド体を水で洗浄し、水酸化アンモニウムで中和し、濾過し、水で再洗浄し、次に120℃真空下で一晩かけて乾燥し、19.6グラムのPBI/PEKK比70:30のブレンド体を得た。このブレンド体は次の熱的特性を有した。二回目のDSCスキャンの結果、157℃及び418℃のTgを得た(しかし、157℃のTgは異常値であろうと思われる)。窒素下におけるTdの開始温度は529℃であり、10℃/minでの10%重量損失のTdは580℃であった。(Td=分解温度)
【実施例4】
【0034】
実験314
溶液法によるPBI/PEKK比40:60の調製
4つのブレードを持つガラス製メカニカルスターラーと窒素吸気口及び排気口を装備した500ml三口樹脂フラスコの中に、12グラムのPBI100と180グラムの96%硫酸を添加した。この混合物を60℃で1時間撹拌してPBIを溶解し、室温まで冷却した。冷却したPBI溶液に8グラムのPEKKを添加した。得られた混合物を室温で1時間撹拌し、これを1リットルの水の中にワーリングブレンダーで高速撹拌しながら注入し、次にこれを濾過して高分子ブレンド体を回収した。このブレンド体を水で洗浄し、水酸化アンモニウムで中和し、濾過し、水で再洗浄し、次に120℃真空下で一晩かけて乾燥し、11.3グラムのPBI/PEKK比60:40のブレンド体を得た。このブレンド体は次の熱的特性を有した。二回目のDSCスキャンの結果、410℃の単一Tgを得た。窒素下におけるTdの開始温度は582℃であり、10℃/minでの10%重量損失のTdは652℃であった。(Td=分解温度)
【実施例5】
【0035】
実験315
溶液法によるPBI/PEKK比50:50の調製
4つのブレードを持つガラス製メカニカルスターラーと窒素吸気口及び排気口を装備した500ml三口樹脂フラスコの中に、10グラムのPBI100と180グラムの96%硫酸を添加した。この混合物を60℃で1時間撹拌してPBIを溶解し、室温まで冷却した。冷却したPBI溶液に10グラムのPEKKを添加した。得られた混合物を室温で1時間撹拌し、これを1リットルの水の中にワーリングブレンダーで高速撹拌しながら注入し、次にこれを濾過して高分子ブレンド体を回収した。このブレンド体を水で洗浄し、水酸化アンモニウムで中和し、濾過し、水で再洗浄し、次に120℃真空下で一晩かけて乾燥し、19.9グラムのPBI/PEKK比50:50のブレンド体を得た。このブレンド体は次の熱的特性を有した。二回目のDSCスキャンの結果、162℃、219℃(非常に弱い中間Tg)および405℃のTgを得た。窒素下におけるTdの開始温度は559℃であり、10℃/minでの10%重量損失のTdは557℃であった。(Td=分解温度)
【実施例6】
【0036】
実験316
溶液法によるPBI/PEKK比40:60の調製
4つのブレードを持つガラス製メカニカルスターラーと窒素吸気口及び排気口を装備した500ml三口樹脂フラスコの中に、8グラムのPBI100と180グラムの96%硫酸を添加した。この混合物を60℃で1時間撹拌してPBIを溶解し、室温まで冷却した。冷却したPBI溶液に12グラムのPEKKを添加した。得られた混合物を室温で1時間撹拌し、これを1リットルの水の中にワーリングブレンダーで高速撹拌しながら注入し、次にこれを濾過して高分子ブレンド体を回収した。このブレンド体を水で洗浄し、水酸化アンモニウムで中和し、濾過し、水で再洗浄し、次に120℃真空下で一晩かけて乾燥し、19.7グラムのPBI/PEKK比40:60のブレンド体を得た。このブレンド体は次の熱的特性を有した。二回目のDSCスキャンの結果、165℃の単一Tgを得た。窒素下におけるTdの開始温度は550℃であり、10℃/minでの10%重量損失のTdは576℃であった。(Td=分解温度)
【実施例7】
【0037】
実験317
溶液法によるPBI/PEKK比30:70の調製
4つのブレードを持つガラス製メカニカルスターラーと窒素吸気口及び排気口を装備した500ml三口樹脂フラスコの中に、6グラムのPBI100と180グラムの96%硫酸を添加した。この混合物を60℃で1時間撹拌してPBIを溶解し、室温まで冷却した。冷却したPBI溶液に14グラムのPEKKを添加した。得られた混合物を室温で1時間撹拌し、これを1リットルの水の中にワーリングブレンダーで高速撹拌しながら注入し、次にこれを濾過して高分子ブレンド体を回収した。このブレンド体を水で洗浄し、水酸化アンモニウムで中和し、濾過し、水で再洗浄し、次に120℃真空下で一晩かけて乾燥し、19.3グラムのPBI/PEKK比30:70のブレンド体を得た。このブレンド体は木質組織および次の熱的特性を有した。二回目のDSCスキャンの結果、163℃の単一Tgを得た。窒素下におけるTdの開始温度は559℃であり、10℃/minでの10%重量損失のTdは570℃であった。(Td=分解温度)
【実施例8】
【0038】
実験318
溶液法によるPBI/PEKK比20:80の調製
4つのブレードを持つガラス製メカニカルスターラーと窒素吸気口及び排気口を装備した500ml三口樹脂フラスコの中に、4グラムのPBI100と180グラムの96%硫酸を添加した。この混合物を60℃で1時間撹拌してPBIを溶解し、室温まで冷却した。冷却したPBI溶液に16グラムのPEKKを添加した。得られた混合物を室温で1時間撹拌し、これを1リットルの水の中にワーリングブレンダーで高速撹拌しながら注入し、次にこれを濾過して高分子ブレンド体を回収した。このブレンド体を水で洗浄し、水酸化アンモニウムで中和し、濾過し、水で再洗浄し、次に120℃真空下で一晩かけて乾燥し、19.3グラムのPBI/PEKK比20:80のブレンド体を得た。このブレンド体は木質組織および次の熱的特性を有した。二回目のDSCスキャンの結果、159.5℃の単一Tgを得た。窒素下におけるTdの開始温度は559℃であり、10℃/minでの10%重量損失のTdは568℃であった。(Td=分解温度)
【実施例9】
【0039】
実験319
溶液法によるPBI/PEKK比10:90の調製
4つのブレードを持つガラス製メカニカルスターラーと窒素吸気口及び排気口を装備した500ml三口樹脂フラスコの中に、2グラムのPBI100と180グラムの96%硫酸を添加した。この混合物を60℃で1時間撹拌してPBIを溶解し、室温まで冷却した。冷却したPBI溶液に18グラムのPEKKを添加した。得られた混合物を室温で1時間撹拌し、これを1リットルの水の中にワーリングブレンダーで高速撹拌しながら注入し、次にこれを濾過して高分子ブレンド体を回収した。このブレンド体を水で洗浄し、水酸化アンモニウムで中和し、濾過し、水で再洗浄し、次に120℃真空下で一晩かけて乾燥し、20.9グラムのPBI/PEKK比10:90のブレンド体を得た。このブレンド体は木質組織および次の熱的特性を有した。二回目のDSCスキャンの結果、163.5℃の単一Tgを得た。窒素下におけるTdの開始温度は559℃であり、10℃/minでの10%重量損失のTdは568℃であった。(Td=分解温度)
【0040】
これらの実験の結果は以下の表を参照することによってより明確に見ることができる。
【0041】
【表1】
【0042】
PBIとPEKKのブレンド試料及び未ブレンド試料に対するガラス転移温度を記録し、表B及び図1に示すように、各ブレンド体に対する期待ガラス転移温度をFox関係式に従って計算した。なお、表Bではガラス転移温度(Tg)は摂氏とケルビンの両方で示されている。
【0043】
【表2】
【0044】
重量損失曲線はTGA/STDA 857e Mettler Toledoによって窒素下で加熱速度10℃/minの条件で得た。この結果を図2〜13及び表Cに示す。
【0045】
【表3】
【0046】
以下に示す様々な組成をもつPBI/PEKKの2成分ブレンド体の溶融押出は、予乾燥混合後、3/4インチ(1.91cm)径で18インチ(45.72cm)長のバレルを備えたブラベンダー(Brabender)押出機に送出し、3つの加熱帯を50〜100rpmの速度で通過させた。各100グラムのブレンド体を各表に示した加熱条件下で管押出ダイを通して押し出し、管を作成した。表Dに示すように、バッチ612はPBI/PEKK比80:20のブレンド体、バッチ613はPBI/PEKK比70:30のブレンド体、試料614はPBI/PEKK比60:40のブレンド体である。押出が幾分困難であった試料#612のPBI/PEKK比80:20の2成分ブレンド体を除いて、全てのブレンド体は良好に押し出された。
【0047】
【表4】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリベンゾイミダゾール(PBI)とポリエーテルケトンケトン(PEKK)の溶液ブレンド体を製造する製法において、PBI/PEKK比が1:99から99:1までのあらゆる比率でブレンド体を製造する製法を提供する。
【背景技術】
【0002】
ポリベンゾイミダゾール(PBI)は高い熱安定性を持つ高分子であり、酸化や加水分解に耐性がある。ポリベンゾイミダゾール高分子は芳香族テトラアミンとジフェニルエステルまたは芳香族や複素環ジカルボン酸無水物を一段または二段製法で溶融重合することによって作成できる(例えば、特許文献1から6を参照)。特に、特許文献4は、芳香族ポリベンゾイミダゾールを製造する二段製法を開示する。第一段の溶融重合帯において、発泡プレポリマーが形成されるまでモノマーを170℃より高い温度に加熱する。発泡高分子を冷却、粉砕し、第二段の重合帯に導入して再加熱し、ポリベンゾイミダゾール高分子製品を得る。ポリベンゾイミダゾールは遊離ジカルボン酸またはそれらの酸のメチルエステルから作成することもできる。
【0003】
ポリアリルエーテルケトン高分子にはポリエーテルケトン(PEK)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルエーテルケトンケトン(PEEKK)、ポリエーテルケトンエーテルケトンケトン(PEKEKK)およびポリエーテルケトンケトン(PEKK)など、多くの近縁高分子がある。これらの高分子は成形可能なので、使用に適した部品に容易に形成することができる。これらの高分子は、長期間優れた高温下酸化安定性を示す(特許文献7参照)。ポリアリルエーテルケトンの内、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)は広く市販されており、しかも、優れた熱可塑性成形用樹脂であることが分かっている。室温では、PEEKは結晶相と非晶質相を持つ固体として存在する。この高分子の52から70%を占める非晶質相は、非晶質相のガラス転移温度Tgに相当する約143℃から155℃で軟化する。
【0004】
この高分子の残り48から30%は、約335℃の融解温度Tmを持つ結晶相として非晶質相に分散して存在する。この高分子はTgよりも高い温度に加熱されると軟化し、Tmより高い温度で融解する。PEEKのような部分結晶性高分子の未充填グレードのものは、発生する軟化が高分子の機械的性質、特に剛性(即ち弾性率)に激しい損失を引き起こすので、Tgよりも十分高い温度での成形部品の形態には不向きである。この低下した剛性は、Tgよりも高い温度における応力下での寸法安定性の減少に反映される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国再発行特許第26,065明細書
【特許文献2】米国特許第3,174,947明細書
【特許文献3】米国特許第3,509,108明細書
【特許文献4】米国特許第3,551,389明細書
【特許文献5】米国特許第3,433,772明細書
【特許文献6】米国特許第3,655,632明細書
【特許文献7】米国特許第4,320,224明細書(1982年3月16日付け、「熱可塑性芳香族ポリエーテルケトン」)
【特許文献8】米国特許第4,912,176明細書
【特許文献9】米国特許第5,070,153明細書
【特許文献10】米国特許第5,391,605明細書
【特許文献11】米国特許第5,844,036明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
PBIとポリアリルエーテルケトン(PAEK)の相乗的な性質を研究した従来の試みは低ケトン比のPAEK高分子、主としてケトン比33%のPEEKや、ケトン比50%のPEKに焦点を当ててきた。これらの混合物は、ポリアリルエーテルケトンのマトリックス樹脂の非晶質領域を固定化するというPBIの能力によりポリアリルエーテルケトンの他の充填剤では得られない強化された熱機械特性を得ることができるが、高分子の混和性ブレンド体で得られるそれより不十分である。これらの従来の試みは特許文献8から11に見いだすことが出来る。
【課題を解決するための手段】
【0007】
共に未充填かつ非強化のポリベンゾイミダゾール(PBI)とポリエーテルケトンケトン(PEKK)の溶液ブレンド体を製造するための製法を説明する。40℃から80℃の温度で30分から2時間かけてPBIを硫酸と混合してPBI溶液を作成する。このPBI溶液を室温まで冷却して冷却PBI溶液を形成する。次に冷却PBI溶液にPEKKを添加して混合物を作成し、この混合物を室温で30分から2時間撹拌し、撹拌混合物を作成する。この撹拌混合物を過剰量の水に素早く撹拌しながら注ぎ入れ、混合物から高分子ブレンド体を沈殿させる。この含水混合物を濾過してブレンド体を単離する。このブレンド体を水で洗浄して乾燥する。その結果生じるブレンド体は、PBI/PEKK比が1:99から99:1までのあらゆる比率のブレンド体として産出可能である。
前述のことは、以下の詳細な記述と付属図面を参照することによってより容易に明白となるであろう。なお、TGAは熱重量分析のことである。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】算出したガラス転移温度と実際に記録されたガラス転移温度とをプロットしたグラフである。
【図2】TGAによる温度に対するPBIの重量損失をプロットしたグラフである。
【図3】TGAによる温度に対するPEKKの重量損失をプロットしたグラフである。
【図4】TGAによる温度に対するPBI/PEKK比80:20のブレンド体の重量損失をプロットしたグラフである。
【図5】TGAによる温度に対するPBI/PEKK比70:30のブレンド体の重量損失をプロットしたグラフである。
【図6】TGAによる温度に対するPBI/PEKK比60:40のブレンド体の重量損失をプロットしたグラフである。
【図7】TGAによる温度に対するPBI/PEKK比50:50のブレンド体の重量損失をプロットしたグラフである。
【図8】TGAによる温度に対するPBI/PEKK比40:60のブレンド体の重量損失をプロットしたグラフである。
【図9】TGAによる温度に対するPBI/PEKK比30:70のブレンド体の重量損失をプロットしたグラフである。
【図10】TGAによる温度に対するPBI/PEKK比20:80のブレンド体の重量損失をプロットしたグラフである。
【図11】TGAによる温度に対するPBI/PEKK比10:90のブレンド体の重量損失をプロットしたグラフである。
【図12】増分10単位で変位させたPBI/PEKKの全ブレンド体の重量損失をプロットしたグラフである。
【図13】PBI/PEKKのブレンド体の10%重量損失温度をプロットしたグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
ポリベンゾイミダゾール(PBI)とポリエーテルケトンケトン(PEKK)の溶液ブレンド体を製造するための製法を説明する。40℃から80℃の温度で30分から2時間かけてPBIを硫酸と混合してPBI溶液を作り、その後室温まで冷却して冷却PBI溶液を作成する。室温は20℃から25℃(68°から77°F)の周囲温度と定義する。次にPEKKを冷却PBI溶液に加えて混合物を作成し、この混合物を室温で30分から2時間撹拌し、撹拌混合物を作成する。この撹拌混合物を過剰量の水に素早く撹拌しながら注ぎ入れ高分子ブレンド体を沈殿させる。この含水混合物を濾過して高分子ブレンド体を単離する。この高分子ブレンド体を水で洗浄し乾燥する。その結果生じたブレンド体は、PBI/PEKK比が1:99から99:1までのあらゆる比率のブレンド体として産出可能である。使用する水は、水道水、脱イオン水、蒸留水、脱イオン蒸留水のいずれでも良い。
【0010】
この様な高分子の溶液を一旦製造してしまえば、前述の混合物を液浴中に滴下あるいは噴霧することによって前記高分子ブレンド体が沈殿する。ここで、液浴は水またはメタノールまたは水/メタノール混合液からなる。沈殿した物質は必要に応じて粉砕しても良い。一実施例ではその後のブレンド体の乾燥としては、1〜200mmHgの範囲の圧力、室温から200℃の範囲の温度で行われる真空乾燥が可能であり、これにより樹脂を生成する。この樹脂は射出または圧縮のいずれかにより、それらの元になった純物質の特性の中間になる特定の熱的および機械的特性を持つ製品に成型される。
【0011】
PBIとPEKKは別々に85%から110%の濃度の硫酸に溶かす。94%から98%の硫酸濃度で上手く行くことは判明している。一実施例ではPBIは50℃から70℃の温度で硫酸と混合される。この製法は大気圧下で行われる。この製法は加圧無しで行われる。この製法において、素早く撹拌する工程は、よい混合を保証する装置で行うことができる。この様な装置の例としては、ワーリング(Waring)ブレンダーなどの商用または実験室用のブレンダーがある。ワーリングブレンダーはWaring Commercial社(Torrington,CT)から入手可能である。
【0012】
ポリベンゾイミダゾール(PBI)とポリエーテルケトンケトン(PEKK)のブレンド体を製造する製法はさらに追加工程を含んでもよい。ブレンド体を水で洗浄した後に、塩基中で中和して中和ブレンド体を作ってもよい。この中和ブレンド体を、水で洗浄して洗浄ブレンド体を作る。その後この洗浄ブレンド体を乾燥して、PBI/PEKK比が1:99から99:1までのあらゆる比率のブレンド体として産出することができる。
【0013】
塩基としては、どのような塩基も可能である。塩基は、酸を中和できる物質として定義される。水酸化物と金属酸化物の両方が含まれる。水に可溶な塩基、例えば水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化アンモニウムなどを用いることができるが、これらには限定されない。水酸化アンモニウムが上手く行くことは判明している。
【0014】
この製法では、乾燥工程を90℃から210℃の温度で行ってもよい。乾燥工程は4から12時間かけて行う。この乾燥工程は真空で行ってもよい。乾燥に真空を用いる場合は、1から200mmHgの範囲の真空で、且つ、室温から200℃までの範囲の温度で行う。乾燥工程により樹脂が生成される。
【0015】
ポリベンゾイミダゾール(PBI)とポリエーテルケトンケトン(PEKK)の溶液ブレンド体を製造するこの製法は、PBI/PEKK比が50:50から90:10の比率であるポリベンゾイミダゾール(PBI)とポリエーテルケトンケトン(PEKK)の混和性ブレンド体を製造することもできる。混和性ブレンド体とは、優勢または単一のTgを持つ、即ち、均質かつ均一な混合によるブレンド体または複合物として定義される。PBI/PEKK比が40:60から10:90のブレンド体も混和性となり得るが、それらはPEKKにより近い熱的挙動をする傾向がある。従って、それらの高温性能は僅かしか改善されず、PEKKの方が遙かに成形しやすく安価になるのでこれらのブレンド体の需要はかなり低い。PBI/PEKK比が50:50から90:10のポリベンゾイミダゾール(PBI)とポリエーテルケトンケトン(PEKK)の混和性ブレンド体は、優れた高温性能とより柔軟な製造属性を提供するのにも関わらず、PBIそのものよりも加工しやすいために好適である。
【0016】
得られた樹脂はPBI/PEKK比が50:50から90:10の比率を持ち、400℃より高いガラス転移温度Tgを持つ(図1参照)。この得られた樹脂は600℃での重量損失が20%未満であり(図4、5、6、7を参照)、800℃での重量損失が30%以下である(図4、5、6、7参照)。
【0017】
PBI樹脂とポリエーテルケトンケトンのブレンド体はFoxの関係式に凡そ従う熱特性を示すと期待する人がいるであろう(図1参照)。予想外にも、本溶液製法により作られたPBI/PEKK比50:50から90:10のあらゆる比率のポリベンゾイミダゾール(PBI)とポリエーテルケトンケトン(PEKK)のブレンド体は400℃より高いガラス転移温度Tgを有することが測定された。これは、Foxの関係式で予想されたものよりも大きい熱特性である。
【0018】
Fox方程式は強い相互作用を持たない理想共重合体または理想高分子ブレンド体(もしくは2種類の高分子の混和性ブレンド体)のTgの組成依存性を決定あるいは記述する。Fox方程式は典型的には混合物の単純な線形規則によって与えられたであろうものよりも低い値のTgになると見込まれ、混合物中の2つの成分の存在によるより高い有効自由体積またはランダム性を反映する。すなわち、
1/Tg=m1/Tg1+m2/Tg2 ただし、mはそれぞれの質量分率、または
1/Tg=w/Tg1+(1−w)/Tg2 ただし、wは重量分率
【0019】
本発明の一実施例では、ポリベンゾイミダゾール(PBI)とポリエーテルケトンケトン(PEKK)の溶液ブレンド体を製造する製法を示す。PBIとPEKKは40℃から80℃の温度で30分から2時間かけて強酸と混合して混合物を作り、その後室温まで冷却する。強酸は、硫酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、トリフルオロ酢酸、ジクロロ酢酸、ギ酸、およびそれらの組み合わせからなる一群の酸の中から選択する。室温は20℃から25℃(68°から77°F)の周囲温度として定義する。この混合物を非溶剤の液浴に滴下する。この液浴は水、メタノール、および水/メタノール混合液の一群から選択する。この液浴を素早く撹拌して高分子ブレンド体を沈殿させる。次にこの混合物を濾過して高分子ブレンド体を単離する。この高分子ブレンド体を水で洗浄し、乾燥させる。この結果生じたブレンド体は、PBI/PEKK比が1:99から99:1のあらゆる比率のブレンド体として産出可能である。使用する水は、水道水または脱イオン水のどちらでもよい。
【0020】
この実施例ではPBIとPEKKは一緒に80%から120%の濃度の強酸に溶解される。94%から98%の濃度が上手く行くことは判明している。硫酸が上手く行くことも判明している。一実施例では、PBIは50℃から70℃の間の温度でPEKKと強酸中で混合される。この製法は大気圧下で行われる。この製法は加圧無しに行われる。
【0021】
この実施例では、一緒に混合することは同時でも段階的でもよいと認識されるべきである。段階的に行う場合は、一方または他方の高分子をもう一方の高分子を加える前に添加し溶解あるいは一部溶解する。これは一方の高分子だけを高温下で添加する必要があり、他方の高分子は室温で添加可能な場合などである。
【0022】
本実施例ではポリベンゾイミダゾール(PBI)とポリエーテルケトンケトン(PEKK)のブレンド体を製造する製法はさらに追加工程を有してもよい。ブレンド体を水で洗浄した後、塩基中で中和して中和ブレンド体を作ることができる。この中和ブレンド体を水の中で洗浄して洗浄ブレンド体を作る。次にこの洗浄ブレンド体を乾燥して、PBI/PEKK比が1:99から99:1のあらゆる比率のブレンド体を産出する。塩基はどのような塩基でもよい。水に可溶な塩基、例えば水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化アンモニウムなどを使用することができるが、これらに限定はされない。水酸化アンモニウムが上手く行くことは判明している。
【0023】
本実施例では、このような高分子の溶液が作られ、この混合物を水または水/メタノール混合液中に滴下または噴霧して高分子ブレンド体を沈殿させる。この沈殿物を必要に応じて粉砕してもよい。一実施例ではその後のブレンド体の乾燥としては、1〜200mmHgの範囲の圧力、室温から200℃の範囲の温度で行われる真空乾燥が可能であり、これにより樹脂を生成する。この樹脂は射出または圧縮のいずれかにより、それらの元になった純物質の特性の中間になる特定の熱的および機械的特性を持つ製品に成型される。これらのブレンド体はフィルムや複合材料、合金を強化するのに用いることができる。さらに、これらのブレンド体は成形前に補強あるいは充填することができる。
【0024】
ポリベンゾイミダゾール(PBI)とポリエーテルケトンケトン(PEKK)の溶融ブレンド体を製造する製法も提供される。この代替製法では、ポリベンゾイミダゾール(PBI)とポリエーテルケトンケトン(PEKK)を乾燥状態で予混合して乾燥混合物を作る。複数の加熱帯をもつ押出機に乾燥混合物を入れる。押出機の加熱帯は240℃から410℃の範囲に設定する。この乾燥混合物は押出機を通過し、押出機によって混合され、発生した温度を受けて溶融する。この結果生じた製品は、PBI/PEKK比が1:99から80:20のあらゆる比率のPBI/PEKKの溶融ブレンド体である。
【0025】
この押出機は一軸スクリュー押出機でも二軸スクリュー押出機でもよい。高粘度となりがちなこの種の物質を押出する際には、一軸の場合も二軸の場合も、スクリューは通常20rpmから200rpmで稼働させる。一実施例においては、押出機はスクリュー押出機であり、30〜160rpmの範囲で稼働させる。別の一実施例では、押出機スクリューは40rpmから120rpmの範囲で稼働させる。このような押出機の一例は、ブラベンダー(Brabender)押出機である。北米市場向けには、C.W.Brabender社(South Hackensack,NJ)がBrabender(登録商標) Gmbh & Co.社(KG)と同一製品ラインを提供している。
【0026】
押出機は少なくとも2つの加熱帯を有することになるが、場合によっては3つ以上の加熱帯を有することも可能である。一実施例ではこれらの加熱帯は240℃から400℃の範囲に設定される。他の一実施例においては、加熱帯を250℃から395℃の範囲に設定する。殆どの場合、第一加熱帯は後続の加熱帯よりも低い温度に設定される。このことは、実施例欄において表Dを参照することによってより明白に理解できる。
【0027】
ポリベンゾイミダゾール(PBI)とポリエーテルケトンケトン(PEKK)の混和性ブレンド体を本製法で作ることができる。この場合、ブレンド体は、60:40から80:20のPBI/PEKK比を持ち、600℃での重量損失が20%未満、800℃での重量損失が30%以下となる。
【0028】
PBI樹脂とポリエーテルケトンケトンのブレンド体は凡そ混合則に従った熱特性を示すと期待する人がいるであろう。予想外にも、本溶融ブレンド製法により作られたPBI/PEKK比60:40から80:20のあらゆる比率のポリベンゾイミダゾール(PBI)とポリエーテルケトンケトン(PEKK)のブレンド体は400℃より高いガラス転移温度Tgを有することが測定された。これは、Foxの関係式で予想されたものよりも大きい熱特性である。
【実施例】
【0029】
PBI/PEKKのブレンド体の様々なバッチを準備し、市販されているPBIである、PBI Prformance Products社(CHarlotte NC)から入手可能なCELAZOLE(登録商標) PBI 100 mesh(sample300)と共に試験した。用いたPEKKは非晶質PEKKであった。その一例としては、A1050Gである。PEKKはInfinite Polymer Systems社(State College,PA.)またはOxford Performance Materials社(New Britain,CT;Cytic,W.Patterson,NJ)から入手可能である。以下に概要を示すように、これらのブレンド体を調製した。
【0030】
試料を検査し、それらの結果は表Aで見ることができる。TGAは熱重量分析のことである。加熱または冷却の速さを制御しながら測定した物質の重量損失は、時間と温度の関数として記録している。重量変化の速さについても経時的な重量変化の一次導関数を求めることで頻繁に電子的に測定している。示差走査熱量測定試験をTA Instruments DSC 2020 Modulated DSCで行った。試料は窒素で連続的にフラッシュされた。ガラス転移温度は10℃/minの速度で加熱しながら1回目のスキャンと2回目のスキャンを行って測定した。2回の加熱の間の試料の冷却速度は10℃/minであった。
【実施例1】
【0031】
PEKKとのPBI二成分ブレンド体の調製
実験 311
溶液法によるPBI/PEKK比90:10の調製
4つのブレードを持つガラス製メカニカルスターラーと窒素吸気口及び排気口を装備した500ml三口樹脂フラスコの中に、18グラムのPBI100と180グラムの96%硫酸を添加した。この混合物を60℃で1時間撹拌してPBIを溶解し、室温まで冷却した。冷却したPBI溶液に2グラムのPEKKを添加した。得られた混合物を室温で1時間撹拌し、これを1リットルの水の中にワーリングブレンダーで高速撹拌しながら注入し、次にこれを濾過して高分子ブレンド体を回収した。このブレンド体を水で洗浄し、水酸化アンモニウムで中和し、濾過し、水で再洗浄し、次に120℃真空下で一晩かけて乾燥し、20グラムのPBI/PEKK比90:10のブレンド体を得た。このブレンド体は次の熱的特性を有した。二回目のDSCスキャンの結果、409℃の単一Tgを得た。窒素下におけるTdの開始温度は612℃であり、10℃/minでの10%重量損失のTdは636℃であった。(Td=分解温度)
【実施例2】
【0032】
実験312
溶液法によるPBI/PEKK比80:20の調製
4つのブレードを持つガラス製メカニカルスターラーと窒素吸気口及び排気口を装備した500ml三口樹脂フラスコの中に、16グラムのPBI100と180グラムの96%硫酸を添加した。この混合物を60℃で1時間撹拌してPBIを溶解し、室温まで冷却した。冷却したPBI溶液に4グラムのPEKKを添加した。得られた混合物を室温で1時間撹拌し、これを1リットルの水の中にワーリングブレンダーで高速撹拌しながら注入し、次にこれを濾過して高分子ブレンド体を回収した。このブレンド体を水で洗浄し、水酸化アンモニウムで中和し、濾過し、水で再洗浄し、次に120℃真空下で一晩かけて乾燥し、14.6グラムのPBI/PEKK比80:20のブレンド体を得た。このブレンド体は次の熱的特性を有した。二回目のDSCスキャンの結果、414℃の単一Tgを得た。窒素下におけるTdの開始温度は559℃であり、10℃/minでの10%重量損失のTdは630℃であった。(Td=分解温度)
【実施例3】
【0033】
実験313
溶液法によるPBI/PEKK比70:30の調製
4つのブレードを持つガラス製メカニカルスターラーと窒素吸気口及び排気口を装備した500ml三口樹脂フラスコの中に、14グラムのPBI100と180グラムの96%硫酸を添加した。この混合物を60℃で1時間撹拌してPBIを溶解し、室温まで冷却した。冷却したPBI溶液に6グラムのPEKKを添加した。得られた混合物を1時間室温で撹拌し、これを1リットルの水の中にワーリングブレンダーで高速撹拌しながら注入し、次にこれを濾過して高分子ブレンド体を回収した。このブレンド体を水で洗浄し、水酸化アンモニウムで中和し、濾過し、水で再洗浄し、次に120℃真空下で一晩かけて乾燥し、19.6グラムのPBI/PEKK比70:30のブレンド体を得た。このブレンド体は次の熱的特性を有した。二回目のDSCスキャンの結果、157℃及び418℃のTgを得た(しかし、157℃のTgは異常値であろうと思われる)。窒素下におけるTdの開始温度は529℃であり、10℃/minでの10%重量損失のTdは580℃であった。(Td=分解温度)
【実施例4】
【0034】
実験314
溶液法によるPBI/PEKK比40:60の調製
4つのブレードを持つガラス製メカニカルスターラーと窒素吸気口及び排気口を装備した500ml三口樹脂フラスコの中に、12グラムのPBI100と180グラムの96%硫酸を添加した。この混合物を60℃で1時間撹拌してPBIを溶解し、室温まで冷却した。冷却したPBI溶液に8グラムのPEKKを添加した。得られた混合物を室温で1時間撹拌し、これを1リットルの水の中にワーリングブレンダーで高速撹拌しながら注入し、次にこれを濾過して高分子ブレンド体を回収した。このブレンド体を水で洗浄し、水酸化アンモニウムで中和し、濾過し、水で再洗浄し、次に120℃真空下で一晩かけて乾燥し、11.3グラムのPBI/PEKK比60:40のブレンド体を得た。このブレンド体は次の熱的特性を有した。二回目のDSCスキャンの結果、410℃の単一Tgを得た。窒素下におけるTdの開始温度は582℃であり、10℃/minでの10%重量損失のTdは652℃であった。(Td=分解温度)
【実施例5】
【0035】
実験315
溶液法によるPBI/PEKK比50:50の調製
4つのブレードを持つガラス製メカニカルスターラーと窒素吸気口及び排気口を装備した500ml三口樹脂フラスコの中に、10グラムのPBI100と180グラムの96%硫酸を添加した。この混合物を60℃で1時間撹拌してPBIを溶解し、室温まで冷却した。冷却したPBI溶液に10グラムのPEKKを添加した。得られた混合物を室温で1時間撹拌し、これを1リットルの水の中にワーリングブレンダーで高速撹拌しながら注入し、次にこれを濾過して高分子ブレンド体を回収した。このブレンド体を水で洗浄し、水酸化アンモニウムで中和し、濾過し、水で再洗浄し、次に120℃真空下で一晩かけて乾燥し、19.9グラムのPBI/PEKK比50:50のブレンド体を得た。このブレンド体は次の熱的特性を有した。二回目のDSCスキャンの結果、162℃、219℃(非常に弱い中間Tg)および405℃のTgを得た。窒素下におけるTdの開始温度は559℃であり、10℃/minでの10%重量損失のTdは557℃であった。(Td=分解温度)
【実施例6】
【0036】
実験316
溶液法によるPBI/PEKK比40:60の調製
4つのブレードを持つガラス製メカニカルスターラーと窒素吸気口及び排気口を装備した500ml三口樹脂フラスコの中に、8グラムのPBI100と180グラムの96%硫酸を添加した。この混合物を60℃で1時間撹拌してPBIを溶解し、室温まで冷却した。冷却したPBI溶液に12グラムのPEKKを添加した。得られた混合物を室温で1時間撹拌し、これを1リットルの水の中にワーリングブレンダーで高速撹拌しながら注入し、次にこれを濾過して高分子ブレンド体を回収した。このブレンド体を水で洗浄し、水酸化アンモニウムで中和し、濾過し、水で再洗浄し、次に120℃真空下で一晩かけて乾燥し、19.7グラムのPBI/PEKK比40:60のブレンド体を得た。このブレンド体は次の熱的特性を有した。二回目のDSCスキャンの結果、165℃の単一Tgを得た。窒素下におけるTdの開始温度は550℃であり、10℃/minでの10%重量損失のTdは576℃であった。(Td=分解温度)
【実施例7】
【0037】
実験317
溶液法によるPBI/PEKK比30:70の調製
4つのブレードを持つガラス製メカニカルスターラーと窒素吸気口及び排気口を装備した500ml三口樹脂フラスコの中に、6グラムのPBI100と180グラムの96%硫酸を添加した。この混合物を60℃で1時間撹拌してPBIを溶解し、室温まで冷却した。冷却したPBI溶液に14グラムのPEKKを添加した。得られた混合物を室温で1時間撹拌し、これを1リットルの水の中にワーリングブレンダーで高速撹拌しながら注入し、次にこれを濾過して高分子ブレンド体を回収した。このブレンド体を水で洗浄し、水酸化アンモニウムで中和し、濾過し、水で再洗浄し、次に120℃真空下で一晩かけて乾燥し、19.3グラムのPBI/PEKK比30:70のブレンド体を得た。このブレンド体は木質組織および次の熱的特性を有した。二回目のDSCスキャンの結果、163℃の単一Tgを得た。窒素下におけるTdの開始温度は559℃であり、10℃/minでの10%重量損失のTdは570℃であった。(Td=分解温度)
【実施例8】
【0038】
実験318
溶液法によるPBI/PEKK比20:80の調製
4つのブレードを持つガラス製メカニカルスターラーと窒素吸気口及び排気口を装備した500ml三口樹脂フラスコの中に、4グラムのPBI100と180グラムの96%硫酸を添加した。この混合物を60℃で1時間撹拌してPBIを溶解し、室温まで冷却した。冷却したPBI溶液に16グラムのPEKKを添加した。得られた混合物を室温で1時間撹拌し、これを1リットルの水の中にワーリングブレンダーで高速撹拌しながら注入し、次にこれを濾過して高分子ブレンド体を回収した。このブレンド体を水で洗浄し、水酸化アンモニウムで中和し、濾過し、水で再洗浄し、次に120℃真空下で一晩かけて乾燥し、19.3グラムのPBI/PEKK比20:80のブレンド体を得た。このブレンド体は木質組織および次の熱的特性を有した。二回目のDSCスキャンの結果、159.5℃の単一Tgを得た。窒素下におけるTdの開始温度は559℃であり、10℃/minでの10%重量損失のTdは568℃であった。(Td=分解温度)
【実施例9】
【0039】
実験319
溶液法によるPBI/PEKK比10:90の調製
4つのブレードを持つガラス製メカニカルスターラーと窒素吸気口及び排気口を装備した500ml三口樹脂フラスコの中に、2グラムのPBI100と180グラムの96%硫酸を添加した。この混合物を60℃で1時間撹拌してPBIを溶解し、室温まで冷却した。冷却したPBI溶液に18グラムのPEKKを添加した。得られた混合物を室温で1時間撹拌し、これを1リットルの水の中にワーリングブレンダーで高速撹拌しながら注入し、次にこれを濾過して高分子ブレンド体を回収した。このブレンド体を水で洗浄し、水酸化アンモニウムで中和し、濾過し、水で再洗浄し、次に120℃真空下で一晩かけて乾燥し、20.9グラムのPBI/PEKK比10:90のブレンド体を得た。このブレンド体は木質組織および次の熱的特性を有した。二回目のDSCスキャンの結果、163.5℃の単一Tgを得た。窒素下におけるTdの開始温度は559℃であり、10℃/minでの10%重量損失のTdは568℃であった。(Td=分解温度)
【0040】
これらの実験の結果は以下の表を参照することによってより明確に見ることができる。
【0041】
【表1】
【0042】
PBIとPEKKのブレンド試料及び未ブレンド試料に対するガラス転移温度を記録し、表B及び図1に示すように、各ブレンド体に対する期待ガラス転移温度をFox関係式に従って計算した。なお、表Bではガラス転移温度(Tg)は摂氏とケルビンの両方で示されている。
【0043】
【表2】
【0044】
重量損失曲線はTGA/STDA 857e Mettler Toledoによって窒素下で加熱速度10℃/minの条件で得た。この結果を図2〜13及び表Cに示す。
【0045】
【表3】
【0046】
以下に示す様々な組成をもつPBI/PEKKの2成分ブレンド体の溶融押出は、予乾燥混合後、3/4インチ(1.91cm)径で18インチ(45.72cm)長のバレルを備えたブラベンダー(Brabender)押出機に送出し、3つの加熱帯を50〜100rpmの速度で通過させた。各100グラムのブレンド体を各表に示した加熱条件下で管押出ダイを通して押し出し、管を作成した。表Dに示すように、バッチ612はPBI/PEKK比80:20のブレンド体、バッチ613はPBI/PEKK比70:30のブレンド体、試料614はPBI/PEKK比60:40のブレンド体である。押出が幾分困難であった試料#612のPBI/PEKK比80:20の2成分ブレンド体を除いて、全てのブレンド体は良好に押し出された。
【0047】
【表4】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリベンゾイミダゾール(PBI)とポリエーテルケトンケトン(PEKK)を用意する工程と、
複数の加熱帯を有する押出機を用意する工程と、
前記PBIを前記PEKKと予乾燥混合して乾燥混合物を得る工程と、
前記乾燥混合物を前記押出機に送出する工程と、
前記加熱帯を240℃から410℃の範囲に設定する工程と、
前記乾燥混合物ブレンド体を前記押出機に通過させて溶融する工程と、
PBI/PEKK比が1:99から80:20までのあらゆる比率のPBI/PEKK比を持つ前記PBIとPEKKの溶融ブレンド体を得る工程とからなる、ポリベンゾイミダゾール(PBI)とポリエーテルケトンケトン(PEKK)の溶融ブレンド体を製造する製法。
【請求項2】
前記押出機は、スクリューが30〜160rpmの範囲で稼働されるスクリュー押出機であることを特徴とする、請求項1に記載のポリベンゾイミダゾール(PBI)とポリエーテルケトンケトン(PEKK)の溶融ブレンド体を製造する製法。
【請求項3】
前記ブレンド体は60:40から80:20のPBI/PEKK比を有し、前記ブレンド体は600℃での重量損失が20%未満であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の製法により作られたポリベンゾイミダゾール(PBI)とポリエーテルケトンケトン(PEKK)の混和性ブレンド体。
【請求項4】
前記ブレンド体は60:40から80:20のPBI/PEKK比を有し、前記ブレンド体は400℃より高いガラス転移温度Tgを有することを特徴とする、請求項1又は2に記載の製法により作られたポリベンゾイミダゾール(PBI)とポリエーテルケトンケトン(PEKK)の混和性ブレンド体。
【請求項1】
ポリベンゾイミダゾール(PBI)とポリエーテルケトンケトン(PEKK)を用意する工程と、
複数の加熱帯を有する押出機を用意する工程と、
前記PBIを前記PEKKと予乾燥混合して乾燥混合物を得る工程と、
前記乾燥混合物を前記押出機に送出する工程と、
前記加熱帯を240℃から410℃の範囲に設定する工程と、
前記乾燥混合物ブレンド体を前記押出機に通過させて溶融する工程と、
PBI/PEKK比が1:99から80:20までのあらゆる比率のPBI/PEKK比を持つ前記PBIとPEKKの溶融ブレンド体を得る工程とからなる、ポリベンゾイミダゾール(PBI)とポリエーテルケトンケトン(PEKK)の溶融ブレンド体を製造する製法。
【請求項2】
前記押出機は、スクリューが30〜160rpmの範囲で稼働されるスクリュー押出機であることを特徴とする、請求項1に記載のポリベンゾイミダゾール(PBI)とポリエーテルケトンケトン(PEKK)の溶融ブレンド体を製造する製法。
【請求項3】
前記ブレンド体は60:40から80:20のPBI/PEKK比を有し、前記ブレンド体は600℃での重量損失が20%未満であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の製法により作られたポリベンゾイミダゾール(PBI)とポリエーテルケトンケトン(PEKK)の混和性ブレンド体。
【請求項4】
前記ブレンド体は60:40から80:20のPBI/PEKK比を有し、前記ブレンド体は400℃より高いガラス転移温度Tgを有することを特徴とする、請求項1又は2に記載の製法により作られたポリベンゾイミダゾール(PBI)とポリエーテルケトンケトン(PEKK)の混和性ブレンド体。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2012−126922(P2012−126922A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−84501(P2012−84501)
【出願日】平成24年4月3日(2012.4.3)
【分割の表示】特願2009−548359(P2009−548359)の分割
【原出願日】平成20年1月21日(2008.1.21)
【出願人】(506184772)ピービーアイ・パフォーマンス・プロダクツ・インコーポレーテッド (6)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年4月3日(2012.4.3)
【分割の表示】特願2009−548359(P2009−548359)の分割
【原出願日】平成20年1月21日(2008.1.21)
【出願人】(506184772)ピービーアイ・パフォーマンス・プロダクツ・インコーポレーテッド (6)
【Fターム(参考)】
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