説明

ポリペプチド及び糖を含有するポリ(ラクチド−コ−グリコリド)を主成分とする持続放出マイクロカプセル

【課題】ポリペプチド及び糖を含有するポリ(ラクチド−コ−グリコリド)を主成分とする持続放出マイクロカプセルを提供すること。
【解決手段】本質的に生体適合性ポリマー、生物学的活性ポリペプチド及び糖からなる生物学的活性ポリペプチドの持続放出組成物であって、Caveに対するCmaxの比率が約3以下である、組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリペプチド及び糖を含有するポリ(ラクチド−コ−グリコリド)を主成分とする持続放出マイクロカプセルに関する。
【0002】
(関連出願)
本出願は、2004年4月15日に出願された米国仮出願第60/563,245号、並びに代理人明細書第1733.2056US1号で指定される「ポリマーを主成分とする持続放出装置」と題され、下記の発明者Steven G. Wright、Troy Christensen、Thean Yeoh、Michael Rickey、Joyce Hotz、Rajesh Kumar、及びHenry R. Costantinoを有する、2005年4月 日に出願されたUSSN (エクスプレス便EV57190029US)の恩恵を主張する。上記の出願の全教示は参照によって本明細書中に援用される。
【背景技術】
【0003】
(発明の背景)
本明細書中で集合的にポリペプチドとして称される、多くのタンパク質及びペプチドはin vivoで生物学的活性を示し、医薬として有用である。多くの病気または状態が持続レベルの医薬投与を必要とし、最も効果的な予防及び/又は治療効果を提供する。持続レベルはしばしば、頻繁な皮下注射による生物学的活性ポリペプチドの投与で達成され、これがしばしば医薬及び不十分な患者のコンプライアンスのレベルの変動を起こす。
【0004】
もう1つの手段として、医薬を内包するポリマー等の、生物分解性材料の使用が持続送達系として使用され得る。例えば、微粒子または微小担体の形態における生物分解性ポリマーの使用は、医薬の放出を制御するポリマー固有の生物分解性を用いることで持続放出の医薬を提供し得、そこでより一定した、持続レベルの医薬および改善した患者のコンプライアンスを提供する。
【0005】
しかしながら、これらの持続放出装置はしばしば、医薬の高い初期バースト及びその後の最小放出を示し得、これが医薬の治療領域及び/又は医薬の不十分な生物学的利用能の範囲を超えて血清薬剤レベルとなる。加えて、ポリマーの存在、生理的温度及び持続放出組成物に対する体の応答が医薬を変更させ得(例えば、分解、凝集)、そこで医薬の所望の放出プロフィールを妨げる。
【0006】
さらに、持続放出組成物を形成するために用いる方法が、医薬の不安定性及び加工工程の分解効果による医薬の活性の損失となり得る。分解効果は、医薬がポリペプチドである場合に、特に問題である。
【0007】
それゆえに、送達されるポリペプチドの量が、治療レベルであり、所望の放出時間のための活性及び有効性を保持する持続した方法で生物学的活性ポリペプチドの投与手段のための必要がある。これらの問題に取り組む多くの研究開発がなされているが、新規解決手段を必要とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第5,424,286号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の課題は、ポリペプチド及び糖を含有するポリ(ラクチド−コ−グリコリド)を主成分とする持続放出マイクロカプセルを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
即ち、本発明の要旨は、
〔1〕本質的に生体適合性ポリマー、生物学的活性ポリペプチド及び糖からなる生物学的活性ポリペプチドの持続放出組成物であって、Caveに対するCmaxの比率が約3以下である、組成物、
〔2〕ポリペプチドが、グルカゴン、グルカゴン様ペプチド、エキセンディン、グルカゴン様ペプチドのアゴニスト、血管活性腸管ペプチド、免疫グロブリン、抗体、サイトカイン、インターロイキン、マクロファージ活性化因子、インターフェロン、エリトロポイエチン、腫瘍壊死因子、コロニー刺激因子、インシュリン、酵素、腫瘍抑制因子、血液タンパク質、卵胞刺激ホルモン、成長ホルモン、副腎皮質刺激ホルモン、及び黄体形成ホルモン放出ホルモン、NGF、EGF、ガストリン、GRH、ディフェンシン、エンケファリン、並びに、そのムテイン、アナログ、欠損及び置換バリアント及び薬学的に許容され得る塩から選択される、〔1〕記載の持続放出組成物、
〔3〕生物学的活性ポリペプチドが糖調節性ペプチドである、〔2〕記載の持続放出組成物、
〔4〕糖調節性ペプチドがGLP−1、GLP−2、エキセンディン−3、エキセンディン−4またはその組み合わせから選択される、〔3〕記載の持続放出組成物、
〔5〕ポリペプチドが持続放出組成物の全重量の約0.1%w/w〜約10%w/wで存在する、〔4〕記載の持続放出組成物、
〔6〕ポリペプチドが持続放出組成物の全重量の約0.5%w/w〜約5%w/wで存在する、〔5〕記載の持続放出組成物、
〔7〕組成物の全細孔容積が、水銀圧入細孔度計を用いて測定する時、約0.1mL/g以下である、〔6〕記載の持続放出組成物、
〔8〕糖が持続放出組成物の全重量の約0.01%w/w〜約10%w/wで存在する、〔7〕記載の持続放出組成物、
〔9〕糖が持続放出組成物の全重量の約0.1%w/w〜約5%w/wで存在する、〔8〕記載の持続放出組成物、
〔10〕糖が単糖類、二糖類、糖アルコールまたはその組み合わせから選択される、〔9〕記載の持続放出組成物、
〔11〕糖がスクロース、マンニトール及びその組み合わせから選択される、〔10〕記載の持続放出組成物、
〔12〕生体適合性ポリマーが、ポリ(ラクチド)、ポリ(グリコリド)、ポリ(ラクチド−コ−グリコリド)、ポリ(乳酸)、ポリ(グリコール酸)、ポリ(乳酸−コ−グリコール酸)、ポリカプロラクトン、ポリカーボネート、ポリエステルアミド、ポリ無水物、ポリ(アミノ酸)、ポリオルトエステル、ポリシアノアクリレート、ポリ(p−ジオキサノン)、ポリ(アルキレンオキサレート)、生物分解性ポリウレタン、そのブレンド及びそのコポリマーからなる群より選択される、〔9〕記載の持続放出組成物、
〔13〕前記ポリマーがポリ(ラクチド−コ−グリコリド)を含む、〔12〕記載の持続放出組成物、
〔14〕前記ポリマーが50:50ポリ(ラクチド−コ−グリコリド)である、〔13〕記載の持続放出組成物、
〔15〕前記ポリマーが約0.3〜0.5dL/gの間の固有粘度性を有する、〔14〕記載の持続放出組成物、
〔16〕組成物の重量の約3% w/w以上のエキセンディン-4および約2% w/w以上のスクロースが内部に分散された生体適合性ポリマーを含む、生物学的に活性のあるポリペプチドの持続性放出のための組成物、
〔17〕生体適合性ポリマー、組成物の重量の約3% w/w以上のエキセンディン-4および約2% w/w以上のスクロースから本質的になる、生物学的に活性のあるポリペプチドの持続性放出のための組成物、
〔18〕生体適合性ポリマー、組成物の重量の約3% w/w以上のエキセンディン-4および約2% w/w以上のスクロースからなる、生物学的に活性のあるポリペプチドの持続性放出のための組成物、
〔19〕生体適合性ポリマーがポリ(ラクチド)、ポリ(グリコリド)、ポリ(ラクチド−コ−グリコリド)、ポリ(乳酸)、ポリ(グリコール酸)、ポリ(乳酸−コ−グリコール酸)およびブレンドならびにそのコポリマーから選択される、〔18〕記載の組成物、
〔20〕Caveに対するCmaxの比率が約3以下である、〔19〕記載の組成物、
〔21〕組成物の全細孔容積を水銀圧入法を使用して測定したとき約0.1mL/g以下である、〔20〕記載の組成物、
〔22〕生体適合性ポリマー、エキセンディン、エキセンディンアナログ、誘導体、またはアゴニストからなる群より選択される生物学的に活性のある薬剤、および糖から実質的になる持続放出組成物の治療有効量を投与することを含み、Caveに対するCmaxの比率が3以下である、2型糖尿病を患う患者の処置方法、
〔23〕薬剤がエキセンディン-4である、〔22〕記載の方法、
〔24〕持続放出組成物の生体適合性ポリマーがポリ(ラクチド)、ポリ(グリコリド)、ポリ(ラクチド−コ−グリコリド)、ポリ(乳酸)、ポリ(グリコール酸)、ポリ(乳酸−コ−グリコール酸)およびブレンドならびにそのコポリマーから選択される、〔23〕記載の方法、
〔25〕糖が、持続放出組成物の全重量の約0.01% w/w〜約10% w/wの濃度で持続放出組成物中に存在する、〔24〕記載の方法、
〔26〕組成物の全細孔容積を水銀圧入法で測定したとき約0.1mL/g以下である、〔24〕記載の方法、
〔27〕エキセンディン-4が、組成物の全重量の約0.1%〜約10%の濃度で持続放出組成物中に存在する、〔26〕記載の方法、
〔28〕組成物の重量の約3% w/w以上のエキセンディン-4および約2% w/w以上のスクロースが内部に分散された生体適合性ポリマーからなる持続放出組成物の治療有効量を投与することを含む、2型糖尿病を患う患者の処置方法、
〔29〕a)水溶性ポリペプチドおよび糖を含む水相と、生体適合性ポリマーおよびポリマー溶剤を含む油相との組み合わせによって混合物を形成すること;
b)工程aから混合物の油中水滴型エマルジョンを形成すること;
c)コアセルベーション剤を混合物に添加して初期微粒子を形成すること、ここで前記コアセルベーション剤がポリマー溶媒に対するシリコーン油の比率約1:1〜約1.5:1を達成するのに十分な量で添加されるシリコーン油である;
d)初期微粒子をクエンチ溶剤に移し、該微粒子を硬化させること;
e)硬化した微粒子を回収すること;ならびに
f)硬化した微粒子を乾燥させること
の工程を含む、ポリペプチドの持続性放出の組成物を調製する方法、
〔30〕シリコーン油のポリマー溶媒に対する比が1.5:1である、〔29〕記載の方法、
〔31〕ポリマーが油相中に約10%w/v以下で存在する、〔29〕記載の方法、
〔32〕ポリマーが、ポリ(ラクチド)、ポリ(グリコリド)、ポリ(ラクチド-コ-グリコリド)、ポリ(乳酸)、ポリ(グリコール酸)、ポリ(乳酸-コ-グリコール酸)ならびにそのブレンドおよびコポリマーからなる群より選択される、〔29〕記載の方法、
〔33〕ポリペプチドが、グルカゴン、グルカゴン様ペプチド、エキセンディン、グルカゴン様ペプチドのアゴニスト、血管活性腸管ペプチド、免疫グロブリン、抗体、サイトカイン、インターロイキン、マクロファージ活性化因子、インターフェロン、エリトロポイエチン、腫瘍壊死因子、コロニー刺激因子、インシュリン、酵素、腫瘍抑制因子、血液タンパク質、卵胞刺激ホルモン、成長ホルモン、副腎皮質刺激ホルモン、および黄体形成ホルモン放出ホルモン、NGF、EGF、ガストリン、GRH、ディフェンシン、エンケファリン、ならびにそのムテイン、アナログ、欠損および置換バリアントおよび薬学的に許容され得る塩からなる群より選択される、〔29〕記載の方法、
〔34〕50:50 DL PLG 4A ポリマー、約3〜5%(w/w)のエキセンディン-4、および約2%(w/w)のスクロースを含み、CmaxのCaveに対する比が約3以下であり、組成物の全細孔容積が約0.1 mL/g以下である、生物学的活性剤の持続放出のための組成物、
〔35〕50:50 DL PLG 4A ポリマー、約3〜5%(w/w)のエキセンディン-4、および約2%(w/w)のスクロースを含み、CmaxのCaveに対する比が約3以下であり、組成物の全細孔容積が約0.1 mL/g以下である、持続放出性組成物の治療有効量を投与することを含む、2型糖尿病を患う患者の処置方法、
〔36〕複数用量のエキセンディン-4を、50:50 DL PLG 4A ポリマー、約3〜5%(w/w)のエキセンディン-4、および約2%(w/w)のスクロースを含み、CmaxのCaveに対する比が約3以下であり、組成物の全細孔容積が約0.1 mL/g以下である持続放出性組成物として投与することにより治療有効血漿濃度のエキセンディン-4を患者に提供することを含む、2型糖尿病を患う患者の処置方法、
〔37〕a) 水溶性エキセンディン-4ポリペプチドおよびスクロースを含む水相を、生体適合性50:50 PLGA 4A ポリマーを塩化メチレン中に含む油相と合わせることにより、混合物を形成する工程;
b) 工程aの混合物の油中水型エマルジョンを形成する工程、ここで、内部エマルジョン小滴サイズは約0.2〜0.4ミクロンである;
c) コアセルベーション剤を混合物に添加して初期微粒子を形成する工程、ここで、前記コアセルベーション剤は、約1:1〜約1.5:1のシリコーン油のポリマー溶媒に対する比を得るのに充分な量で添加されたシリコーン油であり、シリコーン油は油中水型エマルジョンに約3分以下で添加され、コアセルベーション混合物を約1分以下保持する;
g) 初期微粒子をクエンチ溶媒に移して微粒子を硬化する工程、ここで、クエンチ溶媒はヘプタン/エタノール混合物であり、移動時間は約3分以下である;
h) 硬化された微粒子を回収する工程;および
i) 硬化された微粒子を乾燥する工程
を含む、エキセンディン-4の持続放出のための組成物の調製方法、
〔38〕3.0%(w/v)のナトリウムカルボキシメチルセルロース、0.9%(w/v)の塩化ナトリウム、および0.1%(v/v)のポリソルベート20, NF (Tween 20)を水中に含む注射用ビヒクル中に懸濁された、50:50 DL PLG 4A ポリマー、約3〜5%(w/w)のエキセンディン-4、および約2%(w/w)のスクロースを含み、CmaxのCaveに対する比が約3以下であり、組成物の全細孔容積が約0.1 mL/g以下である持続放出性組成物を含む、25ゲージニードル内の通過に適した注射用組成物、
〔39〕3.0%(w/v)のナトリウムカルボキシメチルセルロース、0.9%(w/v)の塩化ナトリウム、および0.1%(v/v)のポリソルベート20, NF (Tween 20)を水中に含む注射用ビヒクル中に懸濁された、50:50 DL PLG 4A ポリマー、14位においてロイシンがメチオニンへのアミノ置換を有する約3〜5%(w/w)のエキセンディン-4、および約2%(w/w)のスクロースを含み、CmaxのCaveに対する比が約3以下であり、組成物の全細孔容積が約0.1 mL/g以下である持続放出性組成物を含む、25ゲージニードル内の通過に適した注射用組成物、
〔40〕50:50 DL PLGA 4A ポリマー、約3〜5%(w/w)のエキセンディン-4、および約2%(w/w)のスクロースを含み、CmaxのCaveに対する比が約3以下であり、組成物の全細孔容積が約0.1 mL/g以下である乾燥持続放出性組成物の治療有効用量を含むバイアル、および3.0%(w/v)のナトリウムカルボキシメチルセルロース、0.9%(w/v)の塩化ナトリウム、および0.1%(v/v)のPolysorbate 20, NF (Tween 20)を水中に含む注射用ビヒクルを含み、持続放出性組成物を少なくとも30 mg/mlに懸濁するのに充分な注射用ビヒクルが存在するバイアル、ならびに取扱い説明書を含む、25ゲージニードル内の通過に適した注射用組成物を作製するためのキット
に関する。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、ポリペプチド及び糖を含有するポリ(ラクチド−コ−グリコリド)を主成分とする持続放出マイクロカプセルが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、本明細書中に記載の持続放出組成物のための平均細孔直径とインビトロ放出との関係を示すグラフである。(A.S.=硫酸アンモニウム)
【図2】図2は、微粒子からのエキセンディン-4のインビトロ放出についての細孔性効果及び方法の条件、つまり塩化メチレンに対するシリコーン油の比率が形成された微粒子の細孔上に与える影響を示すグラフである。
【図3】図3A〜3Bは、本明細書中に記載の選択された微粒子製剤に対する極低温SEMの画像である。
【図4】図4A〜4Dは、本明細書中に記載の選択された微粒子製剤に対する極低温SEMの画像である。
【図5】図5は、本明細書中に記載の微粒子製剤に対する残留エタノール及び塩化メチレン対Tg%のプロットである。
【図6】図6は、製剤2-1(3%エキセンディン-4及び2%スクロース)、製剤1(3%エキセンディン-4のみ)並びに製剤4(3%エキセンディン-4及び0.5%硫酸アンモニウム)についての代表的な薬動力学曲線(濃度、pg/ml v.時間、日数、挿入部は第1日の濃度を示す)である。
【図7】図7は、3つの微粒子製剤2、2-1及び2-2に対するインビボ放出プロフィールのグラフである。
【図8】図8は、微粒子製剤5-1、5-2及び5-3に対する薬動力的データのグラフである。
【図9】図9は、方法パラメーター及び方法で達成される内部エマルションサイズ間での関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(発明の要約)
本発明は優れた放出プロフィール(約3以下のCaveに対するCmaxの比率で特徴付けられるもの等)が、製造方法における、ポリマー溶媒に対するシリコーン油の比率等の、ポリマー溶媒に対するコアセルベーション剤の比率を調節することで少数の成分を含む製剤を用いて達成され得、そこで低細孔容積を達成するという発見に関する。さらに、この優れた所望の放出プロフィールがシリコーン油等のコアセルベーション剤の添加時間の長さ、添加後の保持期間の長さ、及びクエンチ(quench)剤への移送の長さ等の、コアセルベーション方法を調節することで、達成され得ることを見出している。微粒子等の、優れた低細孔容積の持続放出組成物が、内部エマルション粒径を調節することで達成され得ることも見出されている。さらに、粒径及び粒径分布の調節が、優れた所望の放出プロフィール(約3以下のCaveに対するCmaxの比率で特徴付けされる等)及びより一定したロット間のプロフィールをさらに提供し、かつそれらに貢献することが見出されている。本発明は生物学的活性ポリぺプチド等の薬剤の持続放出のための組成物、並びに持続放出の生物学的活性ポリペプチドのための、かかる組成物を形成及び使用する方法に関する。本発明の持続放出組成物は、生体適合性ポリマー、生物学的活性ポリペプチド等の薬剤、及び糖を含む。ポリペプチド及び糖は好ましくはポリマー中に分散される。ポリペプチド及び糖は別々にまたは好ましくは一緒に分散され得る。持続放出組成物は所望かつ一定の放出プロフィールを提供する。特定の態様において、プロフィールは約3以下のCaveに対するCmaxの比率を有するものとして特徴づけられる。好ましい態様において、生物学的活性ポリペプチドは、GLP-1、GLP-2、エキセンディン-3、エキセンディン-4またはそのアナログ、誘導体若しくはアゴニスト、好ましくはエキセンディン-4等の、抗糖尿病性または糖調節性ポリペプチドである。糖は好ましくは、スクロース、マンニトールまたはその組み合わせである。好ましい組み合わせとしては、エキセンディン-4並びにスクロース及び/またはマンニトールが挙げられる。
【0014】
さらにあるいは、持続放出組成物は生体適合性ポリマー、生物学的活性ポリペプチド等の薬剤、及び糖を含み、ここで該組成物は、約0.1mL/g以下の全細孔容積を有する。特定の態様において、全細孔容積は水銀圧入細孔度計を用いて測定される。
【0015】
さらにあるいは、持続放出組成物は、本質的にまたは択一的に、生体適合性ポリマー、約3%w/wの濃度でのエキセンディン-4及び約2%w/wの濃度でのスクロースからなる。生体適合性ポリマーは、好ましくはポリラクチドコグリコリドポリマーである。
【0016】
本発明はまた、ポリぺプチド等の生物学的活性剤の持続放出組成物を形成する方法を含み、これは水、水溶性ポリペプチド等の薬剤、及び糖を含む水相を、生体適合性ポリマー及びポリマー用溶媒を含む油相と合わせることで混合物を形成する工程;例えば混合物を超音波処理又は均質化することで油中水型エマルションを形成する工程;混合物にシリコーン油を添加して、初期の微粒子を形成する工程;初期の微粒子をクエンチ溶媒に移して微粒子を硬化する工程;硬化微粒子を回収する工程;並びに硬化微粒子を乾燥する工程を含む。特定の態様において、シリコーン油は、約1.5:1のポリマー溶媒に対するシリコーン油の比率を達成するのに十分な量で添加される。さらにあるいは、ポリマーは約10%w/v以下で油相に存在する。
【0017】
薬剤又はポリペプチド、例えばエキセンディン-4は、本明細書中に記載の組成物において、最終組成物の全重量を元に約0.01%〜約10%w/wの濃度で存在し得る。また、糖、例えばスクロースは、組成物の最終重量の約0.01%〜約5%w/wの濃度で存在し得る。
【0018】
本発明の組成物は、注射、移植(例えば、皮下、筋肉内、腹腔内、頭蓋内、及び皮内)、粘膜への投与(例えば、鼻腔内、膣内、肺内若しくは座薬の手段によって)、又はインサイチュ送達(例えば、浣腸若しくはエーロゾール噴霧)によって、ヒト、又は他の動物に投与され得る。
【0019】
持続放出組成物は、組成物中にホルモン、特に抗糖尿病性又は糖調節性ペプチド、例えば、GLP-1、GLP-2、エキセンディン-3、エキセンディン-4若しくはそのアゴニスト、アナログ若しくは誘導体が組み込まれている場合、組成物は治療上有効量で投与され、真性糖尿病、グルコース寛容減損(IGT)、肥満、心臓血管(CV)疾患又は上記のポリペプチド若しくはその誘導体、アナログあるいはアゴニストの1つで治療され得る他の疾患のいずれかで苦しむ患者を治療する。
【0020】
本発明の持続放出組成物における糖の使用が、組み込まれた生物学的活性ポリペプチド、例えば、抗糖尿病性又は糖調節性ペプチドの生物利用性を改善し、優れた放出プロフィールを維持しながら、不安定性及び/又は持続放出組成物を製剤する際に含まれるか、あるいは用いられるポリペプチドと他の成分と間での化学相互作用による活性の損失を最小限にする。
【0021】
1つの態様において、組成物は、約5%の活性剤エキセンディン-4、約2%の糖及び生物ポリマーを含む。別の態様において、組成物は、約3%の活性剤エキセンディン-4、約2%の糖及び生物ポリマーを含む。さらにかかる態様において、組成物は、PLGAポリマーを含む。なお更なる態様において、組成物は、PLG4Aポリマーを含み、これが約50モルパーセントのグリコリドに対する50モルパーセントのDLラクチドの比率を含み、未キャップ構造の遊離カルボン酸末端基(「4A」名称)を有する。なお更なる態様において、組成物は、本明細書中に記載のように、粒径、粒径分布、及び全細孔容量を有する微粒子として形成される。さらに更なる態様において、全細孔容量は約0.1mL/g未満であり、平均粒径DV50は、下限DV10の約30ミクロン及び上限DV90の約90ミクロンの分布を有する約50ミクロンであり得る。さらに更なる態様において、微粒子は、本明細書中に記載の方法で形成され、得られるか、あるいは得られうる。1つのかかる態様において、方法は、水/油/油(「W/O/O」)方法であり、ここで内部エマルションサイズは本明細書中に記載するとおりである。また、該方法はシリコーン油コアセルベートを含み得、これとポリマー溶媒との比率は約1.5対1であり得る。さらに該方法は、本明細書中に記載するような、コアセルベーション工程の調節並びにコアセルベートの内部エマルションへの移送が、約3分以下で起こる場合、なおさらに約1分以下の保持工程、及び最小約3分未満の停止/硬化溶媒への急速な移送工程を含み得る。更なる態様において、溶媒は2つの溶媒、好ましくはヘプタン/エタノール混合である。
【0022】
更なる態様において、本発明の組成物は、針から被移植動物への注射に適切な形態にさらに製剤化され得る。注射可能な組成物は、適切な粘度の水性注射ビヒクルにおいて本明細書中に記載のような微粒子組成物を含み得る。水性注射ビヒクルは20℃で少なくとも20cpの粘度を有し得、20℃で50cpより大きく60cp未満の粘度をさらに有し得る。微粒子は、懸濁液を形成するために約30mg/mlより大きい濃度で注射ビヒクルに懸濁され得、懸濁液の流体相は、20℃で少なくとも20cpの粘度を有する。組成物はまた、粘度増強剤、密度増強剤、浸透圧増強剤、及び/又は湿潤剤を含み得る。注射ビヒクルの粘度は、約18〜23ゲージ、より好ましくは約18〜25ゲージ針、更により好ましくは約25ゲージ針の直径の範囲の針からの組成物の注射可能性を提供する。
【0023】
23ゲージ針からの通過に適切な1つの態様において、注射ビヒクルは、水中に、3.0%(w/v)のカルボキシメチルセルロースナトリウム、0.9%(w/v)の塩化ナトリウム、及び0.1%(v/v)又は任意に0.5%のPolysorbate 20、NF(Tween 20)を含む。溶液は任意に緩衝化される。更なる態様において、上記記載のエキセナチド含有微粒子は、水中に、3.0%(w/v)のカルボキシメチルセルロースナトリウム、0.9%(w/v)の塩化ナトリウム、及び0.1%(v/v)又は任意に0.5%のPolysorbate 20、NF(Tween 20)の注射ビヒクルにおいて懸濁される。更なる態様において、懸濁エキセナチド微粒子の濃度は、約30mg/mlより大きい。典型的に約100〜200mgの乾燥微粒子が1mLのビヒクル当たりに懸濁される。本明細書中に記載の持続放出製剤の利点としては、反復投与の必要性を除去することによる増強した患者のコンプライアンス及び容認、所望の放出プロフィールを提供することで血中レベルの活性剤濃度における変動を除去することによる増強した治療効果、並びにこれらの変動を低減することによる治療効果の提供に必要な生物学的活性ポリペプチドの総量を低減する可能性が挙げられる。本明細書中の組成物及び方法を含むさらに他の態様において、薬剤は位置14でメチオニンの代わりにロイシンへのアミノ酸置換を有するエキセンディン-4である。例えば、1つの態様は、18〜23ゲージ針、より好ましくは25ゲージ針からの通過に適切な注射可能な組成物であり、50:50のDL PLG4Aポリマー、位置14でのメチオニンの代わりにロイシンへのアミノ酸置換を有する約3〜5%(w/w)エキセンディン-4、及び約2%(w/w)スクロースを含む持続放出組成物を含み、ここでCaveに対するCmaxの比率は約3以下であり、組成物の全細孔容量は約0.1mL/g以下であり、水中で3.0%(w/v)のカルボキシメチルセルロースナトリウム、0.9%(w/v)の塩化ナトリウム、及び0.1%(v/v)のPolysorbate 20、NF(Tween 20)を含む注射ビヒクルに懸濁される。
【0024】
(発明の詳細な説明)
本発明は、生物学的活性ポリペプチドの持続放出組成物、並びに生物学的活性ポリペプチドの持続放出のための、前記組成物を形成及び使用する方法に関する。本発明の持続放出組成物は、生体適合性ポリマー、及び生物学的活性ポリペプチド等の薬剤、及び糖を含む。薬剤及び糖は生体適合性ポリマーにおいて別々に、又は好ましくは一緒に懸濁される。特定の態様において、持続放出組成物は、約3以下の平均血清濃度(Cave)に対する最大血清濃度(Cmax)の比率を有する放出プロフィールによって特徴付けられる。本明細書中で使用される場合、用語a又はanは1以上を指す。
【0025】
薬剤
好ましい態様において、薬剤は、GLP-1、GLP-2、エキセンディン-3、エキセンディン-4若しくはそのアナログ、誘導体若しくはアゴニストを含む、抗糖尿病性又は糖調節性ポリペプチド等の生物学的活性ポリぺプチドである。最も具体的には、ポリペプチドはエキセンディン-4である。しかし、他の薬剤は本明細書中に記載の発見を利用し得る。
【0026】
本明細書中に使用される生物学的活性ポリペプチドは、集合的に生物学的活性タンパク質とペプチドとその薬学的に許容され得る塩を指し、これらは、インビボで放出される時、その分子、生物学的活性の形態で存在し、そこでインビボで所望の治療、予防及び/又は診断特性を有する。典型的に、ポリペプチドは、500〜200,000ダルトンの間での分子量を有する。
【0027】
適切な生物学的活性ポリペプチドとしては、限定されないが、グルカゴン、GLP-1、GLP-2又は他のGLPアナログ、グルカゴン様ペプチドの誘導体又はアゴニスト等のグルカゴン様ペプチド、エキセンディン-3及びエキセンディン-4、その誘導体、アゴニスト及びアナログ等のエキセンディン、血管活性腸管ポリペプチド(VIP)、免疫グロブリン、抗体、サイトカイン(例えば、リンホカイン、モノカイン、ケモカイン)、インターロイキン、マクロファージ活性化因子、インターフェロン、エリトロポイエチン、ヌクレアーゼ、壊死腫瘍因子、コロニー刺激因子(例えば、G-CSF)、インシュリン、酵素(例えば、スーパーオキシドジスムターゼ、プラスミノーゲンアクチベーター等)、腫瘍抑制因子、血液タンパク質、ホルモン及びホルモンアナログ及びアゴニスト(例えば、卵胞刺激ホルモン、成長ホルモン、副腎皮質刺激ホルモン、及び黄体形成ホルモン放出ホルモン(LHRH))、ワクチン(例えば、腫瘤、細菌及びウイルス抗原)、抗原、血液凝固因子、成長因子(NGF及びEGF)、ガストリン、GRH、ディフェンシン、エンケファリン、ブラジキニン、カルシトニン等の抗細菌ペプチド、並びにあらゆる前記のムテイン、アナログ、切断、欠損及び置換バリアント及び薬学的に許容され得る塩が挙げられる。
【0028】
エキセンディン-4は39アミノ酸ポリペプチドである。エキセンディン-4のアミノ酸配列は、1995年6月13日電子ニュース(Eng)に発行された米国特許第5,424,286号に見出され得、その全内容は参照によって本明細書中に援用される。AC2993とエキセナチドは、用語エキセンディン-4と同一である。エキセンディン-4は、ヒト及び動物において、低い血液グルコース濃度(低血糖症)の期間ではなく、上昇した血液グルコース濃度の存在下でインシュリンの分泌を刺激することが示されている。グルカゴン分泌を抑制し、胃内容物排出を低下させ、摂食及び体重並びに他の行動に影響することも示されている。かかるように、エキセンディン-4ならびにそのアナログ及びアゴニストは真性糖尿病、IGT、肥満等の治療に有用であり得る。
【0029】
生物学的活性ポリペプチドの量は、持続放出組成物の重合マトリックス内に含まれるが、治療上、診断上、又は予防上有効量であり、体重、治療される状態、使用されるポリマーの型、及びポリマーからの放出速度等の因子を考慮する当業者によって決定され得る量である。
【0030】
持続放出組成物は、約0.01%(w/w)〜約50%(w/w)の薬剤、例えば、生物学的活性ポリペプチド(エキセンディン-4等)を一般に含む(組成物の全重量)。例えば、生物学的活性ポリペプチド(エキセンディン-4等)の量は、組成物の全重量の約0.1%(w/w)〜約30%(w/w)であり得る。ポリペプチドの量は所望の効果、薬剤の有効性、計画された放出レベル、及びポリペプチドが放出される時間帯に依存して変化する。好ましくは、充填の範囲は約0.1%(w/w)〜約10%(w/w)、例えば、0.5%(w/w)〜約5%(w/w)である。優れた放出プロフィールは薬剤、例えばエキセンディン-4が約3%w/wで充填される場合、さらに約4%又は約5%である場合に得られた。
【0031】

本明細書中に定義される場合、糖は単糖類、二糖類又はオリゴ糖(約3〜約10の単糖)又はその誘導体である。例えば、単糖類の糖アルコールは糖の本定義に含まれる適切な誘導体である。かかるように、例えば、単糖類マンノース由来である糖アルコールのマンニトールは、本明細書中に使用される場合、糖の定義に含まれる。
【0032】
適切な単糖類としては、限定されないが、グルコース、フルクトース及びマンノースが挙げられる。本明細書中にさらに定義される場合、二糖類は加水分解で2分子の単糖類を生じる化合物である。適切な二糖類としては、限定されないが、スクロース、ラクトース及びトレハロースが挙げられる。適切なオリゴ糖としては、限定されないが、ラフィノース及びアカルボースが挙げられる。
【0033】
持続放出組成物に存在する糖の量は、持続放出組成物の全重量の約0.01%(w/w)〜約50%(w/w)、約0.01%(w/w)〜約10%(w/w)等、約0.1%(w/w)〜約5%(w/w)等の範囲であり得る。優れた放出プロフィールが約2%(w/w)スクロースを取り込むことで得られた。
【0034】
また、持続放出組成物に存在する糖の量は、薬剤または生物学的活性ポリペプチドとの重量比率を表し得る。例えば、ポリペプチド及び糖は約10:1〜約1:10重量:重量の比率で存在し得る。特に好ましい態様において、糖(例えば、スクロース)に対するポリペプチド(例えば、エキセンディン-4)の比率は、約3:2(w/w)、4:2(w/w)、及び5:2(w/w)である。
【0035】
2つ以上の糖の組み合わせもまた、使用され得る。糖の量は、組み合わせが使用される場合、上記の範囲と同様である。
【0036】
ポリペプチドがエキセンディン-4である場合、糖は好ましくはスクロース、マンニトールまたはその組み合わせである。
【0037】
ポリマー
本発明の持続放出組成物を形成する適切なポリマーは、生物分解性若しくは非生物分解性ポリマー又はその混合物若しくはコポリマーのいずれかであり得る生体適合性ポリマーである。ポリマーが生体適合性であるのは、ポリマー及び任意のポリマーの分解産物が被移植者に非毒性であり、注射部位で実質的な免疫学的反応等の、被移植体に重大な有毒又は有害作用を有さない場合である。
【0038】
本明細書中に定義される場合、生物分解性は、組成物がインビボで分解又は腐食され、より小さな単位又は化学種を形成することを意味する。分解は、例えば、酵素、化学及び物理的方法で生じ得る。適切な生体適合性、生物分解性ポリマーとしては、例えば、ポリ(ラクチド)、ポリ(グリコリド)、ポリ(ラクチド−コ−グリコリド)、ポリ(乳酸)、ポリ(グリコール酸)、ポリカーボネート、ポリエステルアミド、ポリ無水物、ポリ(アミノ酸)、ポリオルトエステル、ポリ(ジオキサノン)、ポリ(アルキレンアルキレート)、コポリマー又はポリエチレングリコール及びポリオルトエステル、生物分解性ポリウレタン、そのブレンド、並びにそのコポリマーが挙げられる。
【0039】
適切な生体適合性、非生物分解性ポリマーとしては、ポリアクリレート、酢酸エチレン−ビニル及び他のアシル置換酢酸セルロースのポリマー、非分解性ポリウレタン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、フッ化ポリビニル、ポリ(ビニルイミダゾール)、クロロスルフォンポリオレフィン、ポリエチレンオキシド、そのブレンド、並びにそのコポリマーからなる群から選択される非生物分解性ポリマーが挙げられる。
【0040】
本発明に使用されるポリマーの許容し得る分子量は、所望のポリマー分解速度、機械強度、末端基化学等の物理性質及び溶媒中のポリマーの解離速度等の因子を考慮して当業者によって決定され得る。典型的に、許容し得る分子量の範囲は約2,000ダルトン〜約2,000,000ダルトンである。好ましい態様において、ポリマーは、生物分解性ポリマー又はコポリマーである。より好ましい態様において、ポリマーは、約1:1のラクチド:グリコリドの比率及び約10,000ダルトン〜約90,000ダルトンの分子量を有するポリ(ラクチド−コーグリコリド)(以後、「PLG」)である。さらにより好ましい態様において、本発明で使用されるPLGの分子量は、約50,000ダルトン〜約60,000ダルトンのような約30,000ダルトン〜約70,000ダルトンの分子量を有する。
【0041】
PLGは、酸をエステル化することで得られ得るように酸末端基又はブロック末端基を有し得る。優れた結果が、酸末端基を有するPLGで得られた。
【0042】
ポリマーはまた、ポリマー固有粘度を元にして選択され得る。適切な固有粘度としては、約0.2〜0.6dL/gのような、より好ましくは約0.3〜0.5dL/gの間での約0.06〜1.0dL/gが挙げられる。3〜4週間で分解する好ましいポリマーが選択される。適切なポリマーは5050DL3A又は5050DL4Aとして販売されているものような、商標名Medisorb(登録商標)の元でAlkermes, Inc.から購入され得る。Boehringer Ingelheim Resomer(登録商標)PLGはまた、Resomer(登録商標)RG503及び503Hのように、使用され得る。
【0043】
本発明の持続放出組成物は、フィルム、ペレット、シリンダー、ディスク又は微粒子等の多くの形状に形成され得る。微粒子は、本明細書中に定義される場合、約1ミリメートル未満の直径及び微粒子中に懸濁されるか、あるいは溶解される生物学的活性ポリペプチドを有するポリマー成分を含む。微粒子は球状、非球状又は不規則な形状を有し得る。典型的に、微粒子は、注射に適切なサイズである。微粒子の典型的なサイズの範囲は、1000ミクロン以下である。特定の態様において、微粒子は、直径で約1〜約180ミクロンの範囲である。よりさらに好ましい態様において、優れた放出プロフィールが得られるのは、微粒子が約1〜100ミクロン、約30〜90ミクロン、約50〜70ミクロンの範囲であり、よりさらに平均粒径が約50〜60ミクロンであり得る場合である。1つの態様において、平均粒径は約50、60若しくは70ミクロンと同じ又はそれら以上であり、好ましくは約80、90、又は100ミクロン未満である。より大きい粒径で、粒子は好ましくは実質的に非凝集であり、23ゲージ針、よりさらに好ましくは25ゲージ針からの通過を可能にする。なお別の態様において、一定かつ優れた放出プロフィールが、粒径分布を制御することで得られる。1つの態様において、平均粒径が約50ミクロン、並びに粒子の下限及び上限範囲はそれぞれ約30及び90ミクロンである。微粒子の分布が平均直径の体積を用いて記載され得る。平均直径の体積分布は分布の重さ中心を示し、「平均粒径」の形式である。1つの態様において、組成物は約50〜70ミクロン、約50〜60ミクロン又は約50、60若しくは70ミクロンの平均直径の体積分布を有し、30ミクロンで約5%、10%、若しくは15%又はそれら未満の体積分布(DV)及び90ミクロンで約80%、85%、90%若しくは95%又はそれらより大きいDVを有する。1つの態様において、組成物は、約60ミクロンの平均直径の体積分布を有し、30ミクロンで約10%又はそれ未満の体積分布(DV)及び90ミクロンで約90%又はそれより大きいDVを有する。
【0044】
さらなる賦形剤
当該分野で周知であるように、さらなる賦形剤が請求された発明の製剤に添加され得ることが可能であるが、本発明の驚くべき発見は、優れた放出プロフィールが本明細書中に記載の単純な製剤で達成され得るということである。かかる添加賦形剤が薬剤の放出速度を増大又は低下し、及び/又は薬剤の安定性若しくは別の所望の特性を促進し得る。実質的に放出速度を増大し得る成分としては、ポリマー分解を容易にする細孔形成薬剤及び賦形剤が挙げられる。例えば、ポリマー加水分解の速度は、非中性pHで増大する。それゆえに、無機酸若しくは無機塩基等の酸性賦形剤又は塩基性賦形剤がポリマー溶液に添加され、微粒子を形成するために使用され、ポリマー腐食速度を変更し得る。実質的に放出速度を低下し得る成分としては、薬剤の水溶性を低下させる賦形剤が挙げられる。
【0045】
好ましい態様の記載された持続放出製剤は本質的に生体適合性ポリマー、薬剤及び糖からなる。「本質的に〜からなる」とは、製剤からの活性剤の放出速度を実質的に増大する成分の非存在を意味する。薬剤の放出速度を実質的に増大又は低下させるとは期待されない添加賦形剤の例としては、付加活性剤及び不活性成分が挙げられる。
【0046】
さらに別の態様において、製剤は生体適合性ポリマー、薬剤及び糖からなる。「〜からなる」とは、該方法から、上記以外の構成物又は成分及び出発物質、溶媒等の残留レベルの非存在を意味する。
【0047】
酢酸、クエン酸、リン酸等の緩衝剤又は他の生物学的適合性バッファーが水相で必要がなく、薬剤、例えば、エキセンディン-4を用いて良〜優の生物学的利用能を有する持続放出製剤を達成するという驚くべき発見がされている。塩を塩析することが薬剤、例えば、エキセンディン-4のバーストを制御するために不必要であるという驚くべき発見もあった。かかるように、本発明の組成物としてはまた、本明細書中に記載のように、バッファー及び/又は塩の塩析の実質的な(又は完全な)非存在下での組成物が挙げられる。
【0048】
あるいは、またはさらに、本発明の持続放出組成物は低多孔性(low porosity)を有する。かかる態様において、持続放出組成物は生体適合性ポリマー、生物学的に活性のあるポリペプチドおよび糖を含み、組成物は約0.1mL/g以下の全細孔容積(total pore volume)を有する。さらに全細孔容積は0.0〜0.1mL/g、および0.01〜0.1mL/g未満であり得る。この非常に小さい全細孔容積は薬剤の小さな初期バースト(放出)を導くこと、さらに従来の製剤よりもより遅くおよび/またはより長い持続放出プロフィールを促進し、プロフィールにおけるCmaxをより遅い時間に変え得ることが分かっている。特定の態様において、全細孔容積は、例えば以下により詳細に記載されるように水銀圧入法(mercury intrusion porosimetry)を用いて測定される。
【0049】
別の態様において、持続放出組成物が本明細書中に記載されるように低多孔性を有する場合、それは初期放出の減少、および望ましいCaveに対するCmaxの比率を有するより長い持続放出の提供の双方の機能を果たし、さらなる賦形剤が存在し得る。かかる薬剤は、好ましくは放出速度に対してほとんど影響を有さないか、実質的な影響を有さない。かかる賦形剤として、製造、貯蔵または放出の間のいずれかで薬剤の安定性を提供するか向上させるものを含み得る。好適な安定剤としては、例えば炭水化物、アミノ酸、脂肪酸および界面活性剤が挙げられ、当業者にとって公知である。さらに安定剤として、メチオニン、ビタミンC、ビタミンEおよびマレイン酸等の「抗酸化剤」を含む。抗酸化剤は安定化水性製剤の一部として存在し得るか、またはポリマー相に添加され得る。さらにpH緩衝剤が添加され得る。緩衝剤は、弱酸性でかつ酸の関連する塩か、または弱塩基性でかつ塩基の関連する塩のいずれかを含有する溶液である。緩衝剤は所望のpHを維持し、製造、貯蔵または放出の任意の工程の間に製剤を安定化し得る。例えば緩衝剤は、一塩基リン酸塩もしくは二塩基リン酸塩もしくはそれらの組み合わせ、または重炭酸アンモニウム等の揮発性緩衝剤であり得る。他の緩衝剤としては、限定されないが、酢酸塩、クエン酸塩、琥珀酸塩、ならびにグリシン、アルギニンおよびヒスチジン等のアミノ酸が挙げられる。緩衝剤は製剤中全重量の約0%〜約10%、好ましくは約10、15、20、25、または30mM未満で存在し得る。本発明の微粒子の驚くべき新しい物理的側面および本明細書中に記載されるような製造の目新しい方法を考慮して、放出の速度に影響を与える賦形剤が存在する場合でさえも、本発明は目新しい微粒子およびプロセスを提供することが理解される。微粒子の目新しい特質は、必要とされる賦形剤(安定化する塩等)の望ましくない放出効果を無効にするか、または減少させ得る。別の態様において、賦形剤は、所望の放出プロフィールをさらに向上させるため放出速度に実質的に影響を与えるレベルで存在する。
【0050】
投与
本発明の組成物を、当該分野にて一般に公知の方法にしたがって投与し得る。本発明の組成物を患者(例えば、薬剤を必要とするヒト)または他の動物に、注射、移植(例えば、皮下、筋肉内、腹膜内、頭蓋内、および皮内)、粘膜への投与(例えば、鼻腔内、膣内、肺内または坐剤による)、経口的、針の無い注射(例えば、米国特許第5312335号および第5630796号を参照、それらは参照によって本明細書に援用される)によって、またはインサイチュ送達(例えば、浣腸剤もしくはエアゾール噴霧)によって投与し得る。
【0051】
持続放出組成物を、所望の時間で所望の治療レベルを達する任意の用量スケジュールを用いて投与し得る。例えば、持続放出組成物を投与し、送達された薬物のレベルが基準値に戻るまで患者をモニターし得る。基準値に戻った後、持続放出組成物をまた投与し得る。あるいは、持続放出組成物の続く投与が患者の基準レベル達成の前に起こり得る。
【0052】
例えば、持続放出組成物がその中にホルモン、特に抗糖尿病薬もしくはブドウ糖調節(glucoregulatory)ペプチド、例えばGLP-1、GLP-2、エキセンディン-3、エキセンディン-4またはそのアゴニスト、アナログもしくは誘導体を含む場合、真性糖尿病、IGT、肥満症、心臓血管(CV)障害または上記ポリペプチドまたはその誘導体、アナログもしくはアゴニストの1つによって処置され得る任意の他の障害を患っている患者を処置するために、該組成物を治療有効量で投与する。
【0053】
本発明の持続放出組成物の投与によって処置され得る他の状態として、インシュリンを内部に含む持続放出組成物で処置され得るI型およびII型糖尿病が挙げられる。さらに、含まれたポリペプチドがFSHまたはそのアナログである場合、持続放出組成物は不妊症を処置するために使用され得る。他の例において、含まれたポリペプチドがβインターフェロンまたはそのムテインである場合、持続放出組成物は多発性硬化症を処置するために使用され得る。十分に理解され得るように、持続放出組成物は所与のポリペプチドの投与に応答する疾患を処置するために使用され得る。
【0054】
さらなる態様において、本発明の持続放出組成物をコルチコステロイドと共に同時投与し得る。本発明の持続放出組成物とコルチコステロイドとの同時投与は、持続放出組成物の生物学的に活性のあるポリペプチドの生物学的利用能をさらに増大させ得る。持続放出組成物と組み合わせてのコルチコステロイドの同時投与は、Daschらによる「持続放出組成物の放出プロフィールを変化させる方法」(Method of Modifying the Release Profile of Sustained Release Compositions)と題された、米国特許出願第60/419,430号に詳細に記載され、その全内容はここに参照によって援用される。
【0055】
本明細書に規定されるように、コルチコステロイドとは糖質コルチコイドともよばれるステロイド系の抗炎症性剤を言う。
【0056】
好適なコルチコステロイドとしては、限定されないが、21-アセトキシプレグネノロン、アルクロメタゾン、アルゲストン、アムシノニド、ベクロメタゾン、ベタメタゾン、ブデソニド、クロロプレドニゾン、クロベタゾール、クロベタゾン、クロコルトロン、クロプレドノール、コルチコステロン、コルチゾン、コルチバゾール、デフラザコート、デソニド、デスオキシメタゾン、デキサメタゾン、ジスフロラゾン(Disflorasone)、ジフルコルトロン、ジフルプレドネート、エノキソロン、フルアザコート、フルクロロニド(Flucloronide)、フルメタゾン、フルニソリド、フルオシノロンアセトニド(Flucinolone Acetonide)、フルオシノニド、フルオコルチンブチル(Fluocortin Butyl)、フルオコルトロン(Flucortolone)、フルオロメトロン、酢酸フルペロロン、酢酸フルプレドニデン(Fluprednidene Acetate)、フルプレドニソロン、フルランドレノリド、プロピオン酸フルチカゾン、ホルモコルタール(Formocortal)、ハルシノニド、プロピオン酸ハロベタゾール、ハロメタゾン(Halometasone)、酢酸ハロプレドン、ヒドロコルタメート、ヒドロコルチゾン、ロテプレドノールエタボネート、マジプレドン(Mazipredone)、メドリゾン、メプレドニゾン、メチルプレドニゾロン、フランカルボン酸モメタゾン(Mometasone Furoate)、パラメタゾン、プレドニカルベート(prednicarbate)、プレドニゾロン、プレドニゾロン25-ジエチルアミノ-アセテート、リン酸プレドニゾロンナトリウム、プレドニゾン、プレドニバル(Prednival)、プレドニリデン、リメキソロン、チキソコルトール(Tixocortol)、トリアムシノロン(全形態)、例えばトリアムシノロンアセトニド、トリアムシノロンアセトニド21-オイン酸メチルエステル(Triamcinolone Acetonide 21-oic acid methyl ester)、トリアムシノロンベネトニド(Benetonide)、トリアムシノロンヘキサアセトニド、トリアムシノロンジアセテート、その薬学的に許容され得る混合物およびその塩ならびに任意の他の誘導体およびそのアナログが挙げられる。
【0057】
1つの態様において、コルチコステロイドは、内部に含まれた生体適合性ポリマーおよび生物学的に活性のあるポリペプチド薬剤を含む持続放出組成物中に同時に含められ得る(co-incorporate)。
【0058】
別の態様において、コルチコステロイドは第二の生体適合性ポリマー中に別々に含まれ得る。第二の生体適合性ポリマーは、内部に含まれた生物学的に活性のあるポリペプチド薬剤を有する第一の生体適合性ポリマーと同じであるか、または異なり得る。
【0059】
さらに別の態様において、コルチコステロイドは非カプセル化の状態で存在し得るが、持続放出組成物と混合され得る。例えばコルチコステロイドは、持続放出組成物を送達するために使用されるビヒクル中に可溶化し得る。あるいはコルチコステロイドは、適切なビヒクル中に懸濁された固形物として存在し得る。さらにコルチコステロイドは、持続放出組成物と混合される粉末として存在し得る。
【0060】
コルチコステロイドは、持続放出組成物からの生物学的に活性のあるポリペプチドの生物学的利用能を増大させるのに十分な量で存在することを理解されたい。増大した生物学的利用能とは、特定の製剤の投与の2日後に開始し放出サイクルの終わりに終了する期間にわたって、コルチコステロイドの非存在下での投与と比較してコルチコステロイドと共に同時投与した場合、持続放出組成物からの生物学的に活性のあるポリペプチドの生物学的利用能の増大を言う。
【0061】
本明細書中で使用する場合、患者とは薬剤または治療、病気の予防もしくは診断方法を必要とするヒト等のヒトを言う。
【0062】
本明細書中に規定されるように、生物学的に活性のあるポリペプチドの持続放出とは、本発明の持続放出組成物からのポリペプチドの放出であって、ポリペプチド溶液の直接投与後にポリペプチドの生物学的に有意な量が得られ得る間よりも長い期間にわたって起こる放出である。持続放出とは、少なくとも約2週間、少なくとも約3週間、または少なくとも約4週間等の、少なくとも約1週間の期間にわたっておこる放出であることが好ましい。持続放出は相対的に一定かまたは変化する放出速度を有する、継続的または非継続的な放出であり得る。放出の継続性および放出のレベルは、使用されるポリマー組成物の型(例えばモノマー比率、分子量、ブロック組成(block composition)、およびポリマーの組み合わせの変化)、ポリペプチド負荷(polypeptide loading)、および/または所望の効果を作り出すための賦形剤の選択によって影響され得る。
【0063】
本明細書で使用される場合、治療有効量、予防有効量または診断的有効量とは、投与後の所望の生物学的反応を導くのに必要な持続放出組成物の量である。
【0064】
Cmaxとは本明細書で使用される場合、モニターされる放出期間に起こる薬物の最高血清中濃度である。
【0065】
Caveとは本明細書で使用される場合、放出プロフィールの曲線下面積(AUC)を放出時間で割ることによって導かれる薬物の平均血清中濃度である。
【0066】
Caveに対するCmaxの比率は約3以下が好ましい。このプロフィールは上記したもの等、抗糖尿病薬またはブドウ糖調節ペプチドの特に望ましいものである。約3以下の比率によって治療濃度域(window)のCaveが提供され、同時に(while)高比率から生じ得る有害な薬物の副作用を避けることが可能である。本明細書中に記載されるように、持続放出組成物の物理的側面を調整することによって、卓越した所望の放出プロフィールの他の所望の特質が達成され、かつ調整され得ることがさらに見出されている。本発明のプロセス提供物および組成物は、卓越した低減化バースト(すなわち初期放出;例えば0〜1日目のCmax)を有し得る。1つの態様において、初期バーストは、全薬剤の約1%未満である。別の態様において、初期放出は約0.75%未満、さらに約0.5%未満である。この点に関して、Caveに対するCmaxの比率は約3未満であり、さらに約1〜3であり得、さらに約2〜3であり得る。さらにCmaxが存在する場合、それはバーストまたは初期放出期間を除いた持続放出期間にシフトし得、放出の「持続相」となる(into)。1つの態様において、Cmaxは投与の少なくとも7、14、21、28,35、または42日後およびその間の任意の整数日に生じ得る。さらなる態様においてCmaxは投与後約21〜35日であり、まださらなる態様において投薬後約28〜31日、さらに投薬後約28日である。さらなる態様において、薬物の最大濃度(例えば血漿濃度)は投与の少なくとも7、14、21、28,35、または42日後およびその間の任意の整数日に生じ得る。まださらなる態様において、特にエキセンディン-4、GLP-1、GIPまたはそれらのアナログ等のブドウ糖調節剤の場合、薬物の最大濃度は投与後約21〜35日に生じる。
【0067】
本組成物の卓越した持続放出プロフィールは、望ましくない高い初期バーストを減少させることによって、吐き気等の望ましくない(副)作用を避ける用量での活性剤または複数の活性剤の投与方法を可能にする。さらに、卓越した持続放出プロフィールは、治療有効よりも低いが複合的な持続放出投薬の際に患者の治療有効濃度を達成する用量での活性剤または複数の活性剤の投与方法を可能にする。次いでこの濃度は、さらなる持続的な投薬によって容易に維持される。本発明によって可能となるこの処置方法の1つの利点は、薬物の望ましくない高いバーストを減少させ、さらに患者を薬剤または複数の薬剤の徐々に増加する濃度に適合させることによって、吐き気等の望ましくない(副)作用を低減させるかまたは排除することである。したがって1つの態様において、複合的な持続放出用量は各々の連続した投薬が患者の薬剤または複数の薬剤の濃度を増加させるように提供され、ここで薬剤または複数の薬剤の治療有効濃度が患者にて達成される。1つのさらなる態様において、各々の連続した持続放出用量がその持続相と先の用量の持続相と重複するように投与される。さらに用量のCmaxまたは薬剤のその最大濃度は、薬剤の先の用量のCmaxかまたは最大濃度のいずれかと重複し得る。
【0068】
生物学的利用能とは、その用語が本明細書中で使用される場合、循環系に到達する治療物の量をいう。生物学的利用能は、投与後に開始し予め決められた時点で終了する期間中、特定のポリペプチドの放出プロフィールに対する計算された曲線下面積(AUC)として規定され得る。当該分野で理解されるように、放出プロフィールは予め決められた時点(X軸)での被験体の生物学的活性剤の血清レベル(Y軸)をグラフ化することによってもたらされる。生物学的利用能はしばしば生物学的利用率(% bioavailability)という用語でよばれ、それは持続放出組成物の投与後の特定のポリペプチドに対して達成された生物学的利用能を、同用量の薬物の静脈内投与後の特定のポリペプチドに対して達成された生物学的利用能で割り、100を掛けたものである。
【0069】
放出プロフィールの変化は、生物学的に活性のあるポリペプチド薬剤の存在に対し患者の血清を適切に薬物動態学的にモニターすることによって確認され得る。例えば当該分野で周知であるように、特異的抗体基準の試験(例えばELISAおよびIRMA)は患者の血清中のある生物学的に活性なポリペプチド薬剤の濃度を測定するために使用され得る。かかる試験の例は、本明細書中にエキセンディン-4に対して記載される。
【0070】
患者に対する薬剤の治療効果をモニターするための患者の薬力学的なモニタリングは、放出された薬剤の生物学的活性の保持を確認するために使用され得る。薬力学的効果のモニタリング方法は、幅広く利用可能な技術を使用して投与される生物学的に活性なポリペプチド薬剤に基づいて選択され得る。
【0071】
製造
いくつかの方法が、本発明の持続放出組成物(ポリマー/生物学的に活性のあるポリペプチドマトリクス)、本明細書中に記載されるように特に低多孔性を有する組成物を形成し得ることによって知られている。微粒子形成のいくつかの方法に対する詳細な手順が実施例に示される。好ましい態様において、生物学的に活性のあるポリペプチドの持続放出のための組成物を形成する本発明の方法は、水、水溶性ペプチド等の薬剤および糖を含む水相と、生体適合性ポリマーおよびポリマー溶剤を含む油相とを合わせることによって混合物を形成すること;油中水滴型エマルジョンを形成すること;コアセルベーション剤、例えばシリコーン油、植物油または鉱油を混合物に添加して初期(embryonic)微粒子を形成すること;初期微粒子をクエンチ(quench)溶剤へ移し微粒子を硬化させること;硬化した微粒子を収集すること;ならびに硬化した微粒子を乾燥させることを含む。このプロセスは本明細書中にて水中油中油滴プロセス(W/O/O)と一般によぶ。
【0072】
好ましくは、ポリマーは約3% w/w〜約25% w/w、好ましくは約5% w/w〜約10% w/w等の約4% w/w〜約15% w/w範囲の濃度で油相に存在し得る。卓越した結果が、油相において6% w/w濃度のPLGを使用して本明細書中で得られた。
【0073】
ポリマーは一般にポリマー溶剤と合わされる。ポリマーが本明細書中で好ましいもの等のPLGである場合、ポリマーがPLGのための溶剤に添加される。かかる溶剤は当該分野において周知である。好ましい溶剤は塩化メチレンである。
【0074】
薬剤および糖が水相に、好ましくは同一の水相に添加される。薬剤の濃度は好ましくは10〜100mg/g、好ましくは50〜100mg/gの間である。糖の濃度は好ましくは10〜50mg/gおよび30〜50mg/gである。
【0075】
次いで2つの相を混合してエマルジョンを形成する。内部エマルジョンの小滴の大きさが約1ミクロン未満、好ましくは約0.7ミクロン未満、より好ましくは約0.4ミクロン等の0.5ミクロン未満であるようにエマルジョンが形成されることが好ましい。さらに内部エマルジョンの小滴の大きさは約0.1〜1.2ミクロン、よりさらに約0.1〜1.0ミクロン、まださらに約0.2〜0.4ミクロンであり得る。下限は、例えば剪断によるポリマー分解、または例えばエマルジョン形成間の熱発生による薬剤分解を最小にする要求によって、大部分が決定される。したがって1つの態様において、例えば均質化、高い剪断力、または超音波処理によるエマルジョンの形成方法は、周期的におよび/または相対的に短期間で適用され、したがって例えばエマルジョンの熱形成は最小になり、および/または熱放出が可能となる。例えば均質化は、大量のエマルジョンの別々の通過(discrete pass)により実行され得る。ソニケーター(sonicator)およびホモジナイザーは、かかるエマルジョンを形成するために使用され得る。
【0076】
コアセルベーション剤とは、本発明で使用される場合、ポリマー溶液(ポリマーおよび溶剤)が容易に可溶化せず、それによりポリマー溶液と共に明瞭な相を形成する任意の油をいう。本発明に使用するための好適なコアセルベーション剤としては、限定されないが、シリコーン油、植物油および鉱油が挙げられる。特定の態様において、コアセルベーション剤はシリコーン油であり、ポリマー溶剤に対するシリコーン油の比率が約0.75:1〜約2:1を達成するのに十分な量で添加される。特定の態様において、ポリマーに対するシリコーン油の比率は約1:1〜約1.5:1である。好ましい態様において、ポリマーに対するシリコーン油の比率は約1.5:1である。他のコアセルベート剤の比率は同様であることが求められるか、または開始点として上記の比率を使用することによりさらに詳細に決定され得る。
【0077】
1つの態様において、コアセルベーション工程は約1〜5分間のコアセルベーション剤のエマルジョンへの添加(または移動(transfer))、または逆にエマルジョンのコアセルベーション剤への添加(または移動)を含み、さらにその添加または移動工程が約2〜4分であり得、よりさらに約3分である。さらに別の態様において、添加または移動工程は約1、約2、約3または約3.5分以下である。さらなる態様において、添加または移動工程が本明細書中に記載のように調整される場合、コアセルベーション剤は本明細書中に記載されるようにシリコーン油である。さらに別の態様において、コアセルベーション剤の容量対ポリマー溶剤の容量は、本明細書中に記載されるように例えば約1.5対1(例えばシリコーン油対塩化メチレン)である。よりさらなる態様において、内部エマルジョンは1ミクロン未満の小滴の大きさを有し得、まださらに本明細書中に記載されるような大きさであり得る。1つの態様において、薬剤はエキセンディン-4、GLP1、GIPまたはそれらのアナログ等のブドウ糖調節ペプチドであり、よりさらに本明細書中に記載されるような負荷濃度であり得る。まだ1つのさらなる態様において、本明細書中に記載されるようにポリマーはPLGAであり、好ましくは約50:50のラクチド対グリコリドの形態である。1つの態様において、コアセルベーションより先にエマルジョンを含むポリマー溶液または水溶液のいずれかまたは双方は、所望され得る場合、賦形剤を含有し得る。
【0078】
コアセルベーション工程は保持時間をさらに含み得、コアセルベーション剤およびエマルジョンの混合物は、硬化工程に進む前の例えば約1分〜約5分の短時間維持される。さらに保持時間は約30〜90秒であり得、よりさらに約1分であり得る。さらに他の態様において、任意であり得る保持時間は1分未満であり得、さらに30秒未満であり得る。さらなる態様において、コアセルベーション混合物は水中/油中/油滴成分の分離を妨げるかまたは最小となるように処理される。かかる処理は任意の手段であり得、例えば攪拌(stirring)、均質化、攪拌(agitating)、超音波処理、混合、振動(shaking)、および加圧を含む。微粒子であろうとまたは他の形状であろうと初期ポリマー/薬剤組成物の破壊を含む組成物の成分の分解を最小限にするために、条件が選択される。
【0079】
コアセルベーション工程は、コアセルベーション混合物のクエンチング溶液または硬化溶液への移動をさらに含む。クエンチはポリマー非溶剤を含み得る。ポリマー非溶剤は当該分野において一般に周知である。特に好ましいクエンチは、本明細書中に参照によって援用される例えば米国特許第6,824,822号に記載されるような、例えばヘプタン/エタノール溶剤系の硬化溶剤および洗浄溶剤の溶剤混合物を含む。この移動工程は即座に、できるだけ早く起こり得、さらなる態様において、約0.5、1、2、3、または4分未満であり得る。
【0080】
固形薬物はまた、上記したプロセスの修正型を使用してカプセル化され得る。この修正プロセスは固相/油中/油滴(solid/oil/oil)(S/O/O)としてよばれ得る。
【0081】
例えば固形エキセンディン-4を、6%PLG含有塩化メチレン中に懸濁し氷上にて約4分超音波処理した。続くプロセスは、W/O/O方法に対して相似的な様式で行われた。
【0082】
1つの態様において、組成物は活性剤エキセンディン-4を約5%、糖を約2%、および生体ポリマーを含有する。別の態様において、組成物は活性剤エキセンディン-4を約3%、糖を約2%、および生体ポリマーを含有する。さらにかかる態様において、組成物はPLGAポリマーを含有する。まださらなる態様において、組成物は非キャップ化遊離カルボン酸末端基(「4A」と称される)を有する、約50モルパーセントDLラクチド対50モルパーセントグリコリド比率を含む、PLG4Aポリマーを含有する。まださらなる態様において、組成物は本明細書中に記載されるような粒子の大きさ、粒子の大きさの分布、および全細孔容積を有する微粒子として形成される。よりさらなる態様において、全細孔容積は約0.1mL/g未満であり、平均粒子の大きさは約30ミクロンの下限および約90ミクロンの上限の分布を有する約50ミクロンであり得る。まださらなる態様において、微粒子は本明細書中に記載されたプロセスによって形成され、入手されるか、または入手可能である。1つのかかる態様において、該プロセスは水中/油中/油滴(「W/O/O」)プロセスであり、内部エマルジョンの大きさは本明細書中に記載される通りである。プロセスはさらにシリコーン油コアセルベートを含み得、それとポリマー溶剤との比率が約1.5対1であり得る。プロセスは、本明細書中に記載されるようにコアセルベーション工程の調整をさらに含み得、よりさらに、コアセルベートの内部エマルジョンへの移動が約3分以下で起こり、保持工程は約1分以下、クエンチ/硬化溶剤への急速移動工程は約3分未満で起こる。さらなる態様において、溶剤は2つの部分からなる溶剤であり、好ましくはヘプタン/エタノール混合物である。
【0083】
さらなる態様において、本発明の組成物を、針による被移植体への注射に適した形態にさらに製剤化し得る。注射可能な組成物は、例えば本明細書に参照によって援用される米国特許第6,495,164号に記載されるような粘性の水性注射用ビヒクル中に、本明細書に記載されるような微粒子組成物を含み得る。水性注射用ビヒクルは20℃にて少なくとも20cpの粘性、さらに20℃にて50cpより大きく60cp未満の粘性を有し得る。微粒子は約30mg/mlより大きい濃度で注射用ビヒクルに懸濁されて懸濁液を形成し得、懸濁液の流体相は20℃にて少なくとも20cpの粘性を有する。他の態様において、懸濁液の流体相は20℃にて少なくとも約30cp、40cp、50cp、および60cpの粘性を有する。組成物はまた粘性増強剤、密度増強剤、張性増強剤、および/または湿潤剤を含み得る。注射用ビヒクルの粘性は、直径の範囲が18〜23ゲージの針、よりさらに好ましくは25ゲージの針による組成物の注射可能性を提供する。当業者に公知のように、18ゲージレギュラーウォール(regular wall)(RW)針は0.033インチの名目上の内径(ID)を有し、22ゲージレギュラーウォール針は0.016インチの名目上の内径を有する。注射用ビヒクルは粘性増強剤を含有し得る。1つの態様において、他の好適な粘性増強剤も使用し得るが、粘性増強剤はカルボキシメチルセルロースナトリウムである。注射用ビヒクルはまた、注射用ビヒクルの密度を増大させる密度増強剤を含み得る。さらなる態様において、他の好適な密度増強剤も使用し得るが、密度増強剤はソルビトールである。注射用ビヒクルはまた、毒性問題を予め排除し生体適合性を向上させる張性を調節するための張性調節剤も含有し得る。他の好適な張性調節剤も使用し得るが、好ましい張性調節剤は塩化ナトリウムである。注射用ビヒクルはまた、注射用ビヒクルによる微粒子の完全な湿潤を確実にするために湿潤剤も含み得る。湿潤剤としては、ポリソルベート20(Tween20)、ポリソルベート40(Tween40)およびポリソルベート80(Tween80)が挙げられる。
【0084】
微粒子は約30mg/mlよりも大きい濃度にて、注射用ビヒクル中に懸濁され得る。1つの態様において、微粒子は約150mg/ml〜約300mg/mlの濃度にて懸濁される。別の態様において、微粒子は約100mg/ml〜約400mg/mlの濃度にて懸濁される。しかしながら、本発明は特定の濃度に限定されないことを理解されたい。
【0085】
23ゲージ針からの通過(passage)に適した1つの態様において、注射用ビヒクルは水中において3.0%(w/v)のカルボキシメチルセルロースナトリウム、0.9%(w/v)の塩化ナトリウム、および0.1%(v/v)かまたは任意に0.5%のNF(Tween20)であるポリソルベート20を含む。溶液は任意に緩衝化される。さらなる態様において、上記したようなエキセナチド含有微粒子は、水中において3.0%(w/v)のカルボキシメチルセルロースナトリウム、0.9%(w/v)の塩化ナトリウム、および0.1%(v/v)かまたは任意に0.5%のNF(Tween20)であるポリソルベート20の注射用ビヒクルに懸濁される。さらなる態様において、懸濁されたエキセナチド微粒子の濃度は約30mg/mlより大きい。典型的に約100〜200mgの乾燥微粒子がビヒクル1mLにつき懸濁される。
【0086】
本発明のさらなる態様において、2004年4月29日に公開されたWO2004036186の公開公報に見られる特定の微粒子は除外される。より具体的に、実質的に放出に影響を与えた硫酸アンモニウムの量を含有しなかった微粒子は除外される。かかる特定の微粒子として、IF-1、IF-2、IF-3、IF-4、M1〜M4、M7〜M14、M18、M19として称されるものが挙げられる。
【0087】
次に、本発明を以下の実施例によってさらに具体的に記載する。
【実施例】
【0088】
微粒子調製物I
本明細書中に記載される持続放出組成物を相分離プロセスによって調製した。1kgバッチサイズのエキセンディン-4およびスクロースを含有する微粒子に対する一般的なプロセスを以下に記載する。
【0089】
A.油中水滴型内部エマルジョンの形成
ホモジナイザーを用いて油中水滴型エマルジョンを生成した。好適なホモジナイザーとしては、インライン(in-line)MegatronホモジナイザーMT-V 3-65 F/FF/FF、Kinematica AG、Switzerlandが挙げられる。エキセンディン-4およびスクロース等の賦形剤を水に溶解させることによってエマルジョンの水相を調製した。得られる溶液における薬物の濃度は約50mg/g〜約100mg/gであり得る。例えば薬物がエキセンディン-4である場合、溶液中の薬物の濃度は水600gにつき約30g〜約60gであり得る。特定の態様において、50gのエキセンディン-4および20gのスクロースを600gの灌注(irrigation)用水(WFI)に溶解した。上記で指定した量は、使用される多くのエキセンディン-4に対して特異的なペプチド含量(content)の強度を補正する(compensate)ための調整をしていない、名目上の負荷を表す。PLGAポリマー(例えば、930gの精製された50:50のDL4A PLGA(Alkermes,Inc.)を塩化メチレン(14.6kgまたは6% w/w)中に溶解させることによって、エマルジョンの油相を調製した。
【0090】
次いで水相を油相に添加し、約3分間でオーバーヘッドミキサー(overhead mixer)により粗大エマルジョンを形成した。次いで粗大エマルジョンを3つの別々の時間で室温にておよそ21300rpmで均質化した。これにより、1ミクロン未満の内部エマルジョンの小滴の大きさを得た。任意の好適な手段を使用して内部エマルジョンの形成が達成され得ることを理解されたい。エマルジョン形成の好適な手段として、限定されないが、上記されるような均質化および超音波処理が挙げられる。
【0091】
B.コアセルベート形成
次いで、約5分間にわたりシリコーン油(21.8kgのジメチコーン、NF、350cs)を内部エマルジョンに添加することでコアセルベーション工程を行った。これはシリコーン油対塩化メチレン、1.5:1の比率に相当する。ポリマー溶液からの塩化メチレンはシリコーン油中に分配され、エキセンディン-4を含有する水相の周りにポリマーを沈殿させ始め、微小カプセル化をもたらす。かくして形成された初期ミクロスフェアは軟らかく硬化を必要とする。しばしば、初期ミクロスフェアは短時間、例えばミクロスフェア硬化工程を進める前の約1分〜約5分放置させ得る。
【0092】
C.ミクロスフェア硬化および洗浄処理
次いで初期ミクロスフェアを、即座にヘプタン/エタノール溶剤混合物中に移動させた。必要とされるヘプタン/エタノール混合物の容量は、ミクロスフェアのバッチサイズに基づいて決定され得、典型的に塩化メチレン対ヘプタン/エタノール溶剤の16:1の比率となる。本実施例において、3℃の冷却された攪拌水槽に約210kgのヘプタンおよび23kgのエタノールを使用した。この溶剤混合物は、ミクロスフェアからのさらなる塩化メチレンを抽出することによってミクロスフェアを硬化させた。この硬化工程はまたクエンチングともよばれ得る。3℃にて1時間クエンチした後、溶剤混合物はデカントされて、新鮮なヘプタン(13kg)を3℃にて添加し1時間保持してミクロスフェア表面上の残留シリコーン油、エタノールおよび塩化メチレンが洗浄されるか、または回収工程に対して直接的に汲み出される(pump)かのいずれかである。
【0093】
D. ミクロスフェアの乾燥および回収
クエンチまたはデカント/洗浄工程の終わりに、ミクロスフェアを12インチSweco Pharmasep Filter/Dryer Model PH12Y6に移し、回収した。フィルター/乾燥機は、20ミクロン多層回収スクリーンが使用され、回収および乾燥中にスクリーンを振動させるモーターに接続する。最大ライン(maximum line)の移動を確保するため、およびあらゆる過剰のシリコーン油を除去するため、ヘプタン(6 Kg、3℃)での最終のリンスを行なった。次いで、ミクロスフェアを、制御された速度の窒素ガスの一定パージにより、下記のスケジュール: 6時間、3℃; 6時間、41℃までの勾配;および84時間、41℃に従って真空乾燥した。
【0094】
乾燥の終了後、ミクロスフェアを回収槽内に排出し、150μm篩の篩にかけ、充填まで約-20℃で保存した。
【0095】
ここで、調製したすべての微粒子製剤について、調製した製剤中に存在するポリペプチド、例えばエキセンディン-4および賦形剤の量を、持続放出性組成物の最終の重量に対する%(w/w)で示す。%(w/w)は、特に記載のない限り、名目パーセンテージである。
【0096】
微粒子調製物II
A. 内部油中水型エマルジョン形成
油中水型エマルジョンを、超音波処理装置の補助により作製した。好適な超音波処理装置としては、CV33型プローブヘッドを有するSonics and Materials Inc.、Newtown、CTのVibracell VCX 750が挙げられる。エマルジョンの水相を、エキセンディン-4およびスクロースなどの賦形剤を水に溶解することにより調製した。得られた溶液中の薬物の濃度は、約50 mg/ml〜約100 mg/mlであり得る。例えば、薬物がエキセンディン-4である場合、溶液中の薬物の濃度は、水65.5 gにつき約3.28 g〜約6.55 gであり得る。特定の態様では、5.46 gのエキセンディン-4および2.18 gのスクロースを65.5 gの水に溶解して灌注またはWFI用とした。上記に示した特定の量は、成分の濾過滅菌時の損失を補うため、目標負荷の4%過多量を表す。エマルジョンの油相は、PLGAポリマー(例えば、97.7 gの精製50:50 DL4A PLGA (Alkermes、Inc.))を塩化メチレン(1539 gまたは6%w/v)に溶解することにより調製した。
【0097】
次いで、100%振幅で周囲温度にて超音波処理しながら、水相を油相に約3分間にわたって添加した。水相を、1インチHPLCチューブ末端(ID = 20/1000インチ)を有する1/4インチステンレス鋼チューブを通して5 psigでポンピングし、超音波処理ゾーン内部の超音波処理プローブの下方に添加した。次いで、反応器を、100%振幅で2分間のさらなる超音波処理により、1400〜1600 rpmで攪拌した後、30秒間保持し、次いで、1分より長い超音波処理を行なった。これにより、0.5ミクロン未満の内部エマルジョン小滴サイズがもたらされた。内部エマルジョン形成は、任意の適当な手段を用いてなされ得ることが理解される。エマルジョン形成の好適な手段としては、限定されないが、上記の超音波処理、および均質化が挙げられる。
【0098】
B. コアソルベート製剤
次いで、コアセルベーション工程を、シリコーン油(2294 gのジメチコーン、NF、350 cs)を、約3〜5分の時間にわたって内部エマルジョンに添加することにより行なった。これは、シリコーン油の塩化メチレンに対する比が1.5:1に相当する。ポリマー溶液由来の塩化メチレンはシリコーン油に分配され、エキセンディン-4を含有する水相の周囲にポリマーを沈殿させ始める。マイクロカプセル化がもたらされる。このようにして形成される初期ミクロスフェアは軟質であり、硬化を必要とする。高頻度で、ミクロスフェア硬化工程を進める前に、初期ミクロスフェアを短時間、例えば、約1分〜約5分放置する。
【0099】
C. ミクロスフェア硬化およびリンス
次いで、初期ミクロスフェアを、直接ヘプタン/エタノール溶媒混合物中に移す。必要とされるヘプタン/エタノール混合物の容量は、ミクロスフェアバッチサイズに基づいて決定され得る。本実施例では、約22 kgのヘプタンおよび2448 gのエタノールを、3℃の冷却攪拌槽(350〜450 rpm)内で使用した。この溶媒混合物は、さらなる塩化メチレンをミクロスフェアから抽出することにより、該ミクロスフェアを硬化させた。この硬化工程は、クエンチとも呼ばれ得る。1時間 3℃でクエンチした後、溶媒混合物をデカントし、新たなヘプタン(13 Kg)を3℃で添加し、1時間保持し、ミクロスフェア表面上の残留シリコーン油、エタノールおよび塩化メチレンを洗い流した。
【0100】
D. ミクロスフェア乾燥および回収
リンス工程の最後に、ミクロスフェアを、末端フィルターとしての機能を果たすコーン形状の乾燥チャンバ内部の6インチ直径で20ミクロン多層スクリーン上に移し、回収した。最大ラインの移動を確保するため、ヘプタン(6 Kg、4℃)での最終のリンスを行なった。ミクロスフェアを、次いで、制御された速度の窒素ガスの一定パージにより、下記のスケジュール: 18時間、3℃; 24時間、25℃; 6時間、35℃; および42時間、38℃に従って乾燥した。
【0101】
乾燥の終了後、ミクロスフェアを、乾燥コーンに取り付けたテフロン/ステンレス鋼製滅菌回収槽内に排出する。回収槽を密閉し、乾燥コーンから外し、充填まで-20±5℃で保存する。クリーニングのための解体時にコーン内に残留している物質を、薬物含量解析のために採取する。収量は、ミクロスフェアおよそ100グラムであった。
【0102】
ここで、調製したすべての微粒子製剤について、調製した製剤中に存在するポリペプチド、例えば、エキセンディン-4および賦形剤の量を、持続放出性組成物の最終の重量に対する%(w/w)で示す。%(w/w)は、特に記載のない限り、名目パーセンテージである。
【0103】
ポリマー:
使用に適する具体的なPLGポリマーの例を下に示す。以下の実施例で用いたポリマーはすべて、そのリストに示し、リストに示したポリマーはすべて、Cincinnati,OHのAlkermes、Inc.から入手し、以下のように記載され得る。
ポリマー2A: ポリ(ラクチド-コ-グリコリド); 50:50 ラクチド:グリコリド比; 12.3 kD MoI. Wt.; IV=0.15 (dL/g)
ポリマー4A: ポリ(ラクチド-コ-グリコリド); 50:50 ラクチド:グリコリド比; MoI. Wt. 45- 64 kD; IV=0.45-0.47 (dL/g)
【0104】
PLGの精製: 当該技術分野では(例えば、LuckeらによるPeptide Acylation by Poly(α-Hydroxy Esters)、Pharmaceutical Research、第19巻、No.2、p.175-181、2002年2月を参照のこと)、PLGマトリクス内に取り込まれるタンパク質およびペプチドが、ポリマーの調製後に残留するPLGの分解産物または不純物との相互作用の結果、望ましくない改変(例えば、分解または化学的修飾)がなされ得ることが知られている。したがって、本明細書に記載するほとんどの微粒子製剤の調製に使用されるPLGポリマーは、当該技術分野で認識されている精製方法を用い、持続放出性組成物の調製前に精製した。
【0105】
キャラクタライゼーション方法:
下記のキャラクタライゼーション方法が、活性剤の所望の放出プロフィールをもたらす微粒子の同定に好適であることが確定された。
【0106】
SEM
SEMを、微粒子の粒径、形状および表面特徴を評価するために使用した。SEMイメージングは、Personal SEM(登録商標)システム(ASPEXTM、LLC)において行なった。すべての試料は、スパチュラにより、カーボン両面テープで被覆した標準SEMスタッブ(stub)上に堆積させた。試料をAuで約90秒間18 mA 放出電流により、Model SC 7620 “Mini” Sputter Coater (Energy Beam Sciences)を用いてスパッターコートした。すべてのSEMイメージングは、20 KeV電子ビームを用い、およそ250〜2500×の拡大範囲で行なった。
【0107】
極低温SEM
微粒子の断面を、極低温(cryogenic)SEMを用いて調べた。微粒子試料を、HISTO PREP(登録商標)Solution (Fischer)と混合し、-20℃のクリオスタット内に一晩維持した。硬化した微粒子をガラスカバースリップ上に置き、次いで、金属ナイフを用いて細分した。細分した粒子をアルミニウムスタッブ上に置き、パラジウムおよび白金でスパッターコートし、走査電子顕微鏡(Phillips 525M)下で観察した。切片の目視観察は、微粒子の多孔度の測定方法を提供する。
【0108】
多孔性の測定-水銀圧入
微粒子内の孔容積分布を、SutoPor IV型9500 Moden Mercury Intrusion Porosimeter (Micromeritics、Norcross、GA)を用いて測定した。簡単には、針入度計(penetrometer)にて、段階的に最大圧力60,000 Psiaまで圧力を負荷することにより、水銀を既知量の微粒子内に押し込んだ。孔内に圧入された水銀の容量を種々の圧力で測定した。この方法は、微粒子内の孔分布を定量する。すなわち、圧入された孔の径は、負荷した圧力に反比例する。液体-固体-気体系における内力と外力の平衡は、ウォシュバーン式で示され得る。負荷された圧力と水銀が押し込まれる孔径との関係は、


式中: D = 細孔直径
γ =表面張力(定数)
θ = 接触角 (定数)
P = 圧力
で示される。
【0109】
したがって、水銀が圧入される孔の径は負荷した圧力に反比例する。すべての孔が密な柱状(tight cylinder)であると仮定すると、平均細孔直径(D=4V/A)は、孔容積(V=πD2h/4)を孔面積(A=πDh)で除することにより算出され得る。
【0110】
残留溶媒
ヘプタン、エタノールおよび塩化メチレンの定量には単一の方法を用いた。装置は、Rtx 1301、30 cm×0.53 mm カラムを有するHP 5890 Series 2ガスクロマトグラフから構成された。約130 mgの微粒子を10 ml N,N-ジメチルホルムアミドに溶解した。酢酸プロピルを内部標準として用いた。試料調製は、0.03%という低い塩化メチレンの濃度が定量され得るように調整した。
【0111】
微粒子調製
表1に示す微粒子バッチを上記のようにして、100グラム規模で、4Aポリマーおよびシリコーン油の塩化メチレンに対する比1.5:1または1:1のいずれかを用いて調製した。シリコーン油は、350 csの粘度を有した。製剤化に用いたエキセンディン-4および賦形剤の量もまた表1に示す。
【0112】
【表1】

【0113】
多孔性
水銀圧入法から得られた全圧入容積および計算した平均細孔直径を表2に示す。平均細孔直径とインビトロ放出との関係を図1に示す。
【0114】
【表2】

【0115】
図1は、インビトロ初期放出に対する硫酸アンモニウムの効果を示す。データは、インビトロ初期放出が微粒子細孔直径と相関することを示す。硫酸アンモニウムを用いて作製した製剤は、一定の多孔性および放出を示した硫酸アンモニウムなしの製剤とは異なり、種々のレベルのインビトロ放出および多様な多孔性を示した。微粒子の製造の際、水相中における硫酸アンモニウムの存在は、内部エマルジョンの調製中に薬物物質を塩析し得る。沈殿物の微小環境の違いは、多孔性の差に寄与し得、したがって初期放出における変動に寄与し得る。この効果は、硫酸アンモニウムなしで調製した製剤では観察されなかった。スクロースおよびエキセンディン-4を用いた製剤は、エキセンディン-4、スクロースおよび硫酸アンモニウム有する製剤と比べて、より望ましく一定のレベルの初期放出を示す。
【0116】
図2は、インビトロ放出に対する多孔性の効果、および処理条件、すなわちシリコーン油の塩化メチレンに対する比が形成される微粒子の多孔性に対して有する影響をさらに示す。簡単には、1:1のシリコーン油対塩化メチレン比を用いて調製した微粒子製剤(表1の製剤2-4および2-5)は、1.5:1のシリコーン対塩化メチレン比を用いて調製した同じ製剤(表1の製剤2、2-1および2-2)よりも高い初期放出を有する。図2は、高いシリコーン油対塩化メチレン比は低多孔性をもたらし、これは、低初期放出をもたらすことを示す。
【0117】
極低温SEM
極低温SEM解析を、上記のようにして、表1の形式2、3および5の製剤において行なった。図3A〜3Bは、選択した製剤形式2(製剤2-2、図3A)および形式5(5%エキセンディン-4、2%スクロース、図3B)の顕微鏡写真のスキャンである。図4A〜Dは、それぞれ、表1の製剤3-4、3-5、3-6および3-7の顕微鏡写真のスキャンである。この場合も、硫酸アンモニウムの使用で示された初期放出の変動に寄与し得る多孔性の変動が、図4A〜Dの極低温SEM断面において見られ得る。
【0118】
残留溶媒レベル
ある所定の製剤中の残留溶媒のレベルは、該製剤のTgに影響を与え得る。残留溶媒レベルを、表1の形式2および5の微粒子製剤について調べた。ヘプタン、エタノールおよび塩化メチレンの定量には単一の方法を用いた。装置は、Rtx 1301、30 cm×0.53 mm カラムを有するHP 5890 Series 2ガスクロマトグラフから構成された。約130 mgの微粒子を10 ml N,N-ジメチルホルムアミドに溶解した。酢酸プロピルを内部標準として用いた。試料調製は、0.03%という低い塩化メチレンの濃度が定量され得るように調整した。
【0119】
図5は、表1の形式2および5 (3または5%エキセンディン-4、2%スクロース)の製剤に関する%残留エタノールおよび塩化メチレンのプロットである。図5は、残留溶媒の量が増加するにつれてTgが低下することを示す。
【0120】
3%エキセンディン-4および2%スクロースを有する微粒子の調製
微粒子製剤における硫酸アンモニウムの存在によって導入される多孔性の変動および多孔性が初期放出に有意に影響を与える特徴であると確認されたことに鑑み、さらなる知見において硫酸アンモニウムは追求しなかった。
【0121】
内部エマルジョン小滴サイズの影響
以下の試験は、内部エマルジョンの形成ならびに得られるエマルジョンおよび作製されたミクロスフェアで得られる24時間インビトロ放出の安定性に対するプロセスパラメーターの影響を調べるために、異なるプロセスパラメーターを用いて行なった。水相および溶媒相の内部エマルジョンが、100g規模について上記のような超音波処理、または36/4発電機(Kinematica AG、Switzerland)を備えたMT5000ホモジナイザーを低速(10,800 rpm)もしくは高速(21,300 rpm)のいずれかで用いた均質化のいずれかによって形成された。種々の手法による内部エマルジョン形成後、エマルジョンは、アリコートを取り出す前に、オーバーヘッドスターラーで5、15または60分間穏やかに攪拌しながら反応器内に保持した。指定の保持時間後、内部エマルジョンを、さらに、上記のようにして微粒子に加工し、次いで、24時間インビトロ放出を、各バッチについて、以下に記載のようにして測定した。
【0122】
内部エマルジョン小滴サイズキャラクタライゼーションは、Horiba 粒径解析装置を用いて測定され得る
内部エマルジョンのアリコートを反応器からガラスピペットを用いて抜き出した。トランスファーピペットを用い、約30滴の内部エマルジョンを、20cc容スクリューキャップシンチレーションバイアル内に、約10 mlの6%Medisorb(登録商標)50:50 4A PLGポリマー溶液に添加した後、混合した。また、6%Medisorb(登録商標)50:50 4A PLGポリマー溶液を参照ブランク溶液とした。次いで、約9 mlのこの希釈エマルジョン試料を、洗浄した10 ml容Horiba試料ホルダーに移した。試料ホルダー上にカバーを置き、ポリマー溶媒の急速な蒸発を防いだ。調製された試料は、青いライン(blue bar)(ランプ)の0.65%〜0.90%の目盛範囲の許容透過率%内であった。0.94〜0.00iの相対屈折率設定を、プログラムのセットアップに選択した。試料を、次いで、小滴サイズ用LA 910型などのHoriba パーティクルアナライザーによって測定した。プロセスパラメーターおよび5、15および60分の保持時間で得られた内部エマルジョンサイズ、ならびに得られた24時間インビトロ放出結果(かっこ内)に対応するデータを図9に示す。
【0123】
ミクロスフェアキャラクタライゼーション
エキセンディン-4ミクロスフェアを、ラットにおける薬物含量、粒径、残留溶媒、初期インビトロ放出、およびPK特性に関して慣用的にキャラクタライズした。薬物を抜き取り、選択したバッチにおいて、カプセル化後のエキセンディン-4純度の予備評価を得た。
【0124】
インビトロ初期放出
エキセンディン-4の初期放出は、放出バッファー (10 mM HEPES、100 mM NaCl、pH 7.4)中に1時間後のエキセンディン-4の濃度を測定することにより測定した。150±5 mgのミクロスフェアを、5.0 mLの10mM HEPES、100mM NaCl、pH 7.4バッファー中に室温で入れ、約30秒間ボルテックスして溶液を懸濁し、次いで、37℃のエアチャンバ内に1時間入れた。1時間後、試料をエアチャンバから取り出し、数回上下逆さにして混合した後、3500 rpmで10分間遠心分離した。上清みを取り出し、以下の条件: カラム: TSK-GEL(登録商標)、7.8 mm x 30 cm、5 m (TSOH BIOSEP PART #08540); カラムオーブン温度: 周囲温度; 自動試料採取装置温度: 6℃; 流速: 0.8 mL/分; 検出: 280 nm; インジェクション容量: 10 L; 移動相:アセトニトリル35%/0.1%TFAを含む水65%/リットル(v/v); 実行時間: およそ20分を用いたHPLCによって直接解析した。30 mM酢酸バッファー、pH 4.5中で調製したエキセンディン-4バルク薬物質、0.2 mg/mLを標準として使用した。
【0125】
動物実験
本明細書に記載するすべての薬物動態(PK)試験は、およそ500±50 gの重量の成体雄Sprague-Dawleyラットにおいて行なった。
【0126】
微粒子製剤のPKキャラクタライゼーションのため、各動物は、希釈剤 (3%カルボキシメチルセルロース、0.9%NaCl、0.1%Tween 20)中に懸濁した微粒子の皮下注射を肩甲骨間領域に受けた。一般的には、用量は、0.75 mLの注射容積中、ラット1匹あたりおよそ1.0 mgエキセンディン-4とした。血液試料を側尾静脈(lateral tail vein)から、投与後、0.5、2、4、6、10、24時間、ならびに2、4、7、10、14、17、21、24および28日に採取した。血液試料をEDTAを含むMICROTAINER(登録商標)チューブ内に直接入れ、約14,000×gで約2分間遠心分離した。次いで、血漿を保存剤なしでMICROTAINER(登録商標)チューブに移し-70℃でアッセイ時まで保存した。IRMAを用いて血漿エキセンディン濃度を測定した。
【0127】
インビボ放出-IRMA
血漿中のエキセンディン-4の定量方法は、サンドイッチイムノアッセイとし、検体は、固相モノクローナル抗体EXE4:2-8.4により捕捉し、放射性ヨウ化モノクローナル抗体GLP-1:3-3によって検出する。結合分の計測数を、標準較正曲線から定量する。このアッセイは、完全長または完全エキセンディン-4に特異的であり、エキセンディン-4(3-39)を検出しない。典型的な標準曲線範囲は、トレーサー抗体の寿命(age)に応じて30 pg/mL〜2000 pg/mLである。
【0128】
インビトロおよびインビボ放出
製剤2、2-1および2-2(3%エキセンディン-4および2%スクロース)を、インビトロ初期放出について上記のようにして試験した。インビトロ放出は、それぞれ、0.4%、0.4%および0.5%であった。また、すべての3つのバッチは、0-1日で1154〜1555 pg/mLの範囲のCmaxの比較的低いインビボ初期放出を有した。図6は、3%エキセンディン-4および2%スクロース_(2-l)を有する製剤、また、3%エキセンディン-4単独(1) ならびに3%エキセンディン-4および0.5%硫酸アンモニウム(4)に関する代表的な薬物動態曲線である。シリコーン油の塩化メチレンに対する比1.5:1を用い、シリコーン油の粘度は350 csとした。
【0129】
図6から、硫酸アンモニウムを含有しない製剤は、より低い初期放出を示すことがわかる。エキセンディン-4単独を有する製剤は適当な初期放出を示すが、カプセル化後の薬物の純度は、エキセンディン-4をスクロースとの組合せで有する製剤と比べ、減少した。製剤中の糖の添加は、薬剤の分解を減少させる。
【0130】
上で比較した3つの製剤2、2-1および2-2のインビボ 放出プロフィールを図7に示す。3つのすべてのバッチは、非比較的低い初期放出の後、「谷(trough)」(ほぼ第4日〜第17日の間で低い血清レベル)、その後、ほぼ第21日〜第28日にわたって持続放出性を示した。低初期放出および放出プロフィールの形状は、この3つの製剤で一致した。
【0131】
1:1のシリコーン油に対する塩化メチレン比を用いた製剤
表1の製剤2-3、2-4および2-5 (3%エキセンディン-4、2%スクロース)を、1:1のシリコーン油の塩化メチレンに対する比を用いて調製した。これらの製剤の初期放出は、表1の製剤2、2-1および2-2(3%エキセンディン-4、2%スクロースで1.5:1のシリコーンの塩化メチレンに対する比)の場合よりも高かった。具体的には、1.5:1比の製剤は、平均初期放出約0.4%をもたらしたが、1:1比の製剤は、平均初期放出約1.0%をもたらした。同じ傾向がインビボで観察され、1:1比の場合のラットにおける第0日〜第1日のCmaxは2288±520pg/mLであったが、1.5:1比の場合のラットにおける第0日〜第1日のCmaxは1300±221 pg/mLであった。
【0132】
薬物負荷の増加
スクロースを2%に維持したまま、エキセンディン-4負荷を4%に増加させると、インビトロおよびインビボで3%負荷と同じ範囲の初期放出がもたらされた。
【0133】
表1の形式5の3つの製剤を調製した(5%薬物負荷、2%スクロース、1.5:1 のシリコーン油の塩化メチレンに対する比)。3つのバッチ5-1、5-2および5-3は、すべて0.2〜0.5%の範囲の低インビトロ初期放出を示した。同様に、製剤のインビボCmaxは、一貫して低く、467 pg/mL〜1267 pg/mLの範囲であった。図8は、試験した3つのバッチの薬物動態データのグラフを示す。2%スクロースを有する3%エキセンディン-4製剤の挙動と比べ、5%製剤は、ほぼ第1日〜第2日によりわたって高い血清薬物レベルを示した。5%製剤のプロフィールの残りは、谷の後、主に第21日〜第28にわたって薬物の放出を有する3%製剤と同様であった。
【0134】
本発明を、その好ましい態様を参照して具体的に示し、記載したが、形態および詳細における種々の変形が、添付の特許請求の範囲によって包含される本発明の範囲から逸脱せずになされ得ることは、当業者によって理解される。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
本質的に生体適合性ポリマー、生物学的活性ポリペプチド及び糖からなる生物学的活性ポリペプチドの持続放出組成物であって、Caveに対するCmaxの比率が約3以下である、組成物。
【請求項2】
ポリペプチドが、グルカゴン、グルカゴン様ペプチド、エキセンディン、グルカゴン様ペプチドのアゴニスト、血管活性腸管ペプチド、免疫グロブリン、抗体、サイトカイン、インターロイキン、マクロファージ活性化因子、インターフェロン、エリトロポイエチン、腫瘍壊死因子、コロニー刺激因子、インシュリン、酵素、腫瘍抑制因子、血液タンパク質、卵胞刺激ホルモン、成長ホルモン、副腎皮質刺激ホルモン、及び黄体形成ホルモン放出ホルモン、NGF、EGF、ガストリン、GRH、ディフェンシン、エンケファリン、並びに、そのムテイン、アナログ、欠損及び置換バリアント及び薬学的に許容され得る塩から選択される、請求項1記載の持続放出組成物。
【請求項3】
生物学的活性ポリペプチドが糖調節性ペプチドである、請求項2記載の持続放出組成物。
【請求項4】
糖調節性ペプチドがGLP−1、GLP−2、エキセンディン−3、エキセンディン−4またはその組み合わせから選択される、請求項3記載の持続放出組成物。
【請求項5】
ポリペプチドが持続放出組成物の全重量の約0.1%w/w〜約10%w/wで存在する、請求項4記載の持続放出組成物。
【請求項6】
ポリペプチドが持続放出組成物の全重量の約0.5%w/w〜約5%w/wで存在する、請求項5記載の持続放出組成物。
【請求項7】
組成物の全細孔容積が、水銀圧入細孔度計を用いて測定する時、約0.1mL/g以下である、請求項6記載の持続放出組成物。
【請求項8】
糖が持続放出組成物の全重量の約0.01%w/w〜約10%w/wで存在する、請求項7記載の持続放出組成物。
【請求項9】
糖が持続放出組成物の全重量の約0.1%w/w〜約5%w/wで存在する、請求項8記載の持続放出組成物。
【請求項10】
糖が単糖類、二糖類、糖アルコールまたはその組み合わせから選択される、請求項9記載の持続放出組成物。
【請求項11】
糖がスクロース、マンニトール及びその組み合わせから選択される、請求項10記載の持続放出組成物。
【請求項12】
生体適合性ポリマーが、ポリ(ラクチド)、ポリ(グリコリド)、ポリ(ラクチド−コ−グリコリド)、ポリ(乳酸)、ポリ(グリコール酸)、ポリ(乳酸−コ−グリコール酸)、ポリカプロラクトン、ポリカーボネート、ポリエステルアミド、ポリ無水物、ポリ(アミノ酸)、ポリオルトエステル、ポリシアノアクリレート、ポリ(p−ジオキサノン)、ポリ(アルキレンオキサレート)、生物分解性ポリウレタン、そのブレンド及びそのコポリマーからなる群より選択される、請求項9記載の持続放出組成物。
【請求項13】
前記ポリマーがポリ(ラクチド−コ−グリコリド)を含む、請求項12記載の持続放出組成物。
【請求項14】
前記ポリマーが50:50ポリ(ラクチド−コ−グリコリド)である、請求項13記載の持続放出組成物。
【請求項15】
前記ポリマーが約0.3〜0.5dL/gの間の固有粘度性を有する、請求項14記載の持続放出組成物。
【請求項16】
組成物の重量の約3% w/w以上のエキセンディン-4および約2% w/w以上のスクロースが内部に分散された生体適合性ポリマーを含む、生物学的に活性のあるポリペプチドの持続性放出のための組成物。
【請求項17】
生体適合性ポリマー、組成物の重量の約3% w/w以上のエキセンディン-4および約2% w/w以上のスクロースから本質的になる、生物学的に活性のあるポリペプチドの持続性放出のための組成物。
【請求項18】
生体適合性ポリマー、組成物の重量の約3% w/w以上のエキセンディン-4および約2% w/w以上のスクロースからなる、生物学的に活性のあるポリペプチドの持続性放出のための組成物。
【請求項19】
生体適合性ポリマーがポリ(ラクチド)、ポリ(グリコリド)、ポリ(ラクチド−コ−グリコリド)、ポリ(乳酸)、ポリ(グリコール酸)、ポリ(乳酸−コ−グリコール酸)およびブレンドならびにそのコポリマーから選択される、請求項18記載の組成物。
【請求項20】
Caveに対するCmaxの比率が約3以下である、請求項19記載の組成物。
【請求項21】
組成物の全細孔容積を水銀圧入法を使用して測定したとき約0.1mL/g以下である、請求項20記載の組成物。
【請求項22】
生体適合性ポリマー、エキセンディン、エキセンディンアナログ、誘導体、またはアゴニストからなる群より選択される生物学的に活性のある薬剤、および糖から実質的になる持続放出組成物の治療有効量を投与することを含み、Caveに対するCmaxの比率が3以下である、2型糖尿病を患う患者の処置方法。
【請求項23】
薬剤がエキセンディン-4である、請求項22記載の方法。
【請求項24】
持続放出組成物の生体適合性ポリマーがポリ(ラクチド)、ポリ(グリコリド)、ポリ(ラクチド−コ−グリコリド)、ポリ(乳酸)、ポリ(グリコール酸)、ポリ(乳酸−コ−グリコール酸)およびブレンドならびにそのコポリマーから選択される、請求項23記載の方法。
【請求項25】
糖が、持続放出組成物の全重量の約0.01% w/w〜約10% w/wの濃度で持続放出組成物中に存在する、請求項24記載の方法。
【請求項26】
組成物の全細孔容積を水銀圧入法で測定したとき約0.1mL/g以下である、請求項24記載の方法。
【請求項27】
エキセンディン-4が、組成物の全重量の約0.1%〜約10%の濃度で持続放出組成物中に存在する、請求項26記載の方法。
【請求項28】
組成物の重量の約3% w/w以上のエキセンディン-4および約2% w/w以上のスクロースが内部に分散された生体適合性ポリマーからなる持続放出組成物の治療有効量を投与することを含む、2型糖尿病を患う患者の処置方法。
【請求項29】
a)水溶性ポリペプチドおよび糖を含む水相と、生体適合性ポリマーおよびポリマー溶剤を含む油相との組み合わせによって混合物を形成すること;
b)工程aから混合物の油中水滴型エマルジョンを形成すること;
c)コアセルベーション剤を混合物に添加して初期微粒子を形成すること、ここで前記コアセルベーション剤がポリマー溶媒に対するシリコーン油の比率約1:1〜約1.5:1を達成するのに十分な量で添加されるシリコーン油である;
d)初期微粒子をクエンチ溶剤に移し、該微粒子を硬化させること;
e)硬化した微粒子を回収すること;ならびに
f)硬化した微粒子を乾燥させること
の工程を含む、ポリペプチドの持続性放出の組成物を調製する方法。
【請求項30】
シリコーン油のポリマー溶媒に対する比が1.5:1である、請求項29記載の方法。
【請求項31】
ポリマーが油相中に約10%w/v以下で存在する、請求項29記載の方法。
【請求項32】
ポリマーが、ポリ(ラクチド)、ポリ(グリコリド)、ポリ(ラクチド-コ-グリコリド)、ポリ(乳酸)、ポリ(グリコール酸)、ポリ(乳酸-コ-グリコール酸)ならびにそのブレンドおよびコポリマーからなる群より選択される、請求項29記載の方法。
【請求項33】
ポリペプチドが、グルカゴン、グルカゴン様ペプチド、エキセンディン、グルカゴン様ペプチドのアゴニスト、血管活性腸管ペプチド、免疫グロブリン、抗体、サイトカイン、インターロイキン、マクロファージ活性化因子、インターフェロン、エリトロポイエチン、腫瘍壊死因子、コロニー刺激因子、インシュリン、酵素、腫瘍抑制因子、血液タンパク質、卵胞刺激ホルモン、成長ホルモン、副腎皮質刺激ホルモン、および黄体形成ホルモン放出ホルモン、NGF、EGF、ガストリン、GRH、ディフェンシン、エンケファリン、ならびにそのムテイン、アナログ、欠損および置換バリアントおよび薬学的に許容され得る塩からなる群より選択される、請求項29記載の方法。
【請求項34】
50:50 DL PLG 4A ポリマー、約3〜5%(w/w)のエキセンディン-4、および約2%(w/w)のスクロースを含み、CmaxのCaveに対する比が約3以下であり、組成物の全細孔容積が約0.1 mL/g以下である、生物学的活性剤の持続放出のための組成物。
【請求項35】
50:50 DL PLG 4A ポリマー、約3〜5%(w/w)のエキセンディン-4、および約2%(w/w)のスクロースを含み、CmaxのCaveに対する比が約3以下であり、組成物の全細孔容積が約0.1 mL/g以下である、持続放出性組成物の治療有効量を投与することを含む、2型糖尿病を患う患者の処置方法。
【請求項36】
複数用量のエキセンディン-4を、50:50 DL PLG 4A ポリマー、約3〜5%(w/w)のエキセンディン-4、および約2%(w/w)のスクロースを含み、CmaxのCaveに対する比が約3以下であり、組成物の全細孔容積が約0.1 mL/g以下である持続放出性組成物として投与することにより治療有効血漿濃度のエキセンディン-4を患者に提供することを含む、2型糖尿病を患う患者の処置方法。
【請求項37】
a) 水溶性エキセンディン-4ポリペプチドおよびスクロースを含む水相を、生体適合性50:50 PLGA 4A ポリマーを塩化メチレン中に含む油相と合わせることにより、混合物を形成する工程;
b) 工程aの混合物の油中水型エマルジョンを形成する工程、ここで、内部エマルジョン小滴サイズは約0.2〜0.4ミクロンである;
c) コアセルベーション剤を混合物に添加して初期微粒子を形成する工程、ここで、前記コアセルベーション剤は、約1:1〜約1.5:1のシリコーン油のポリマー溶媒に対する比を得るのに充分な量で添加されたシリコーン油であり、シリコーン油は油中水型エマルジョンに約3分以下で添加され、コアセルベーション混合物を約1分以下保持する;
g) 初期微粒子をクエンチ溶媒に移して微粒子を硬化する工程、ここで、クエンチ溶媒はヘプタン/エタノール混合物であり、移動時間は約3分以下である;
h) 硬化された微粒子を回収する工程;および
i) 硬化された微粒子を乾燥する工程
を含む、エキセンディン-4の持続放出のための組成物の調製方法。
【請求項38】
3.0%(w/v)のナトリウムカルボキシメチルセルロース、0.9%(w/v)の塩化ナトリウム、および0.1%(v/v)のポリソルベート20, NF (Tween 20)を水中に含む注射用ビヒクル中に懸濁された、50:50 DL PLG 4A ポリマー、約3〜5%(w/w)のエキセンディン-4、および約2%(w/w)のスクロースを含み、CmaxのCaveに対する比が約3以下であり、組成物の全細孔容積が約0.1 mL/g以下である持続放出性組成物を含む、25ゲージニードル内の通過に適した注射用組成物。
【請求項39】
3.0%(w/v)のナトリウムカルボキシメチルセルロース、0.9%(w/v)の塩化ナトリウム、および0.1%(v/v)のポリソルベート20, NF (Tween 20)を水中に含む注射用ビヒクル中に懸濁された、50:50 DL PLG 4A ポリマー、14位においてロイシンがメチオニンへのアミノ置換を有する約3〜5%(w/w)のエキセンディン-4、および約2%(w/w)のスクロースを含み、CmaxのCaveに対する比が約3以下であり、組成物の全細孔容積が約0.1 mL/g以下である持続放出性組成物を含む、25ゲージニードル内の通過に適した注射用組成物。
【請求項40】
50:50 DL PLGA 4A ポリマー、約3〜5%(w/w)のエキセンディン-4、および約2%(w/w)のスクロースを含み、CmaxのCaveに対する比が約3以下であり、組成物の全細孔容積が約0.1 mL/g以下である乾燥持続放出性組成物の治療有効用量を含むバイアル、および3.0%(w/v)のナトリウムカルボキシメチルセルロース、0.9%(w/v)の塩化ナトリウム、および0.1%(v/v)のPolysorbate 20, NF (Tween 20)を水中に含む注射用ビヒクルを含み、持続放出性組成物を少なくとも30 mg/mlに懸濁するのに充分な注射用ビヒクルが存在するバイアル、ならびに取扱い説明書を含む、25ゲージニードル内の通過に適した注射用組成物を作製するためのキット。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−51930(P2012−51930A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−234133(P2011−234133)
【出願日】平成23年10月25日(2011.10.25)
【分割の表示】特願2007−508601(P2007−508601)の分割
【原出願日】平成17年4月15日(2005.4.15)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(598133654)アミリン・ファーマシューティカルズ,インコーポレイテッド (38)
【氏名又は名称原語表記】AMYLIN PHARMACEUTICALS, INC.
【住所又は居所原語表記】9360 Towne Centre Drive, San Diego, CA 92121 USA
【出願人】(506350023)アルカーメス,インコーポレイテッド (12)
【Fターム(参考)】