説明

ポリマジャケット材料中に難燃剤を有するコードおよびポリマジャケットアセンブリ

一例のアセンブリが少なくとも一つの長尺の引張部材を含む。ジャケットが引張部材の少なくとも一部を被覆する。ジャケットはポリマ材料を備える。アセンブリは、ハロゲンを含まないメラミンベースの膨張剤、もしくはマトリックス相と化学的に結合したナノスケールの充填材を有する充填ポリマからなる群から選択された難燃剤を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレベータ荷重支持部材、乗用コンベヤの移動手すり、乗用コンベヤに用いられる駆動ベルト等の、ポリマジャケットアセンブリに関し、特に、難燃剤を備えたポリマジャケットアセンブリに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、エレベータ荷重支持部材すなわちロープ機構や、乗用コンベヤ等の装置用駆動ベルト、乗用コンベヤの移動手すりなど、長尺の可撓性アセンブリには様々な用途が存在する。こうしたアセンブリはポリウレタンジャケットで被覆される複数のコードを考慮して設計される。例えば、特許文献1および特許文献2は、エレベータシステム内のエレベータかごおよびつり合いおもりの懸垂用のベルトを示す。一例の乗用コンベヤの移動手すりの構造が特許文献3に示される。一例の乗用コンベヤの駆動ベルトが特許文献4に示される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第6295799号明細書
【特許文献2】米国特許第6739433号明細書
【特許文献3】米国特許第4982829号明細書
【特許文献4】米国特許第6540060号明細書
【特許文献5】米国特許第4542170号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
こうしたアセンブリの一側面は、火炎への曝露等の、燃焼を引き起こしうる環境におかれた場合にジャケットが燃焼するおそれがあることである。ジャケットに対し、あらゆる燃焼に耐える能力もしくは最小限にする能力を提供することが有用である。こうしたジャケットを難燃性にすることを考慮した場合の一つの課題は、ジャケット材料の所望の性質を維持することである。上記の例は全て、アセンブリの使用時に移動経路に従うようにある一定の可撓性を必要とする。またアセンブリの用途において適切な表面特性を有することが望ましい。
【0005】
難燃性ポリウレタン組成物が提案されている。例えば、特許文献5は難燃特性を付与するようにペンテート塩とリン酸塩との組合せを用いる。すべての難燃剤が上記の例のアセンブリの要求と適合性があるわけではない。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一例のアセンブリが少なくとも一つの長尺のコード引張部材を含む。ジャケットが引張部材の少なくとも一部を被覆する。ジャケットはポリマ材料を備える。アセンブリは、ハロゲンを含まないメラミンベースの膨張剤(melamine based intumescent)、もしくはマトリックス相と化学的に結合したナノスケールの充填材を有する充填ポリマからなる群から選択された難燃剤を含む。
【0007】
ジャケットにより少なくとも部分的に被覆された少なくとも一つの長尺の引張部材を有するアセンブリの一例の製造方法が、難燃剤およびポリマ材料を用意することを含む。ジャケットの形成は、所望の形状のジャケットを形成するようにポリマ材料を引張部材に適用することを含む。難燃剤はアセンブリに含まれる。
【0008】
開示の実施例の様々な特徴および利点が以下の詳細な説明から当業者にとって明らかとなるであろう。詳細な説明に添付の図面を、以下のように簡単に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施例により設計された荷重支持部材を含むエレベータシステムの選択された部分の概略図。
【図2】一例のエレベータ荷重支持部材アセンブリの概略端面図。
【図3】別の例のエレベータ荷重支持部材アセンブリの概略端面図。
【図4】本発明の実施例により設計された駆動ベルトおよび移動手すりを含んだ乗用コンベヤの概略図。
【図5】一例の駆動ベルトの構成を示す概略図。
【図6】一例の移動手すりの構成を示す概略図。
【図7】本発明の実施例により設計された一例のアセンブリの製造方法を示す概略図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の実施例により設計されたアセンブリが、ポリマジャケット材料中に難燃剤を含む。本明細書中に用いられるように、難燃剤は、延焼の抑制もしくは耐炎を意味する。場合によっては、難燃剤は自己消火性により延焼を抑制もしくは阻止する。火災を完全に鎮火する能力は炎源に曝される量によって決まる。ほとんどの場合、難燃剤は少なくとも炭化面を形成し、周囲空気中の酸素含有量を低減させて、さもなければジャケットの燃焼に伴って起こる延焼を制限もしくは抑制する。
【0011】
図1は一例のエレベータシステム20の選択された部分を概略的に示す。エレベータかご22およびつり合いおもり24が荷重支持アセンブリ26によって懸架される。一例では、荷重支持部材アセンブリ26は複数のフラットベルトを備える。別の例では、荷重支持アセンブリ26は複数の円形ロープを備える。その他のエレベータコンポーネントについては、本発明の開示の実施例の理解には必要ないため図示もしくは記載していない。
【0012】
荷重支持アセンブリ26がエレベータかご22およびつり合いおもり24の重量を支持し、綱車28,30に沿って移動することにより、エレベータかご22の所望の位置への移動を容易にする。綱車の一つは、エレベータかご22を所望のように移動および配置させるように、エレベータ装置により周知の方法で駆動される駆動綱車である。一例のもう一つの綱車は遊び車である。駆動綱車の回転に応じて荷重支持アセンブリ26が移動するとき、このアセンブリ26は綱車28,30の周りで屈曲して部分的に巻きつく必要がある。
【0013】
図2は一例の荷重支持アセンブリ26の一例のフラットベルトの構造を概略的に示す端面図である。この例では、フラットベルトは、複数の長尺のコード引張部材32と、引張部材32と接触するポリマジャケット34と、を含む。この例では、ジャケット34が引張部材32を被覆する。別の実施例では、ジャケット34は引張部材32を少なくとも部分的に被覆する。一例では、引張部材32は、スチール等の巻かれた金属コードを備える。一例ではポリマジャケット34は熱可塑性エラストマを備える。一例では、ジャケット34は熱可塑性ポリウレタンを備える。
【0014】
別の例を図3に概略的に示す。荷重支持アセンブリ26の一部として用いられるロープの端面図が少なくとも1つの引張部材32と、ポリマジャケット34と、を含む。図3の例では、上記のものと同一の材料が用いられる。
【0015】
一例の荷重支持アセンブリ26の荷重は引張部材32によって支持される。ジャケット34と綱車28,30との間の相互作用には例えば十分な牽引力を達成するように所望の摩擦量が必要とされる。所望の摩擦係数を維持することにより一貫したシステム性能を保障する。引張部材32とジャケット34との間の境界面はまた、その境界面における十分な結合を含む必要がある。適切な結合によりジャケット34と引張部材32との間の荷重の移動を容易にする。より強力な結合により、より強力な耐荷重容量がもたらされる。
【0016】
図4は一例の乗用コンベヤ40を概略的に示す。この例では、複数の踏段42が乗降口42,46間で乗員を運ぶように周知のように移動する。コンベヤ40を移動する際に乗客が掴まるための移動手すり48が設けられる。
【0017】
図6に示すように、移動手すり48はポリマジャケット34で少なくとも部分的に被覆されたスチールコードなどの複数の引張部材32を含む。この例のポリマジャケットはグリップ面および移動手すり48の本体を形成する。
【0018】
図4の例は、踏段42を所望の方向に推進させる駆動機構50を含む。モータ52が駆動滑車54を回転させて駆動ベルト56を移動させる。図5に示すように、一例の駆動ベルト56は、ジャケット34で被覆された複数の長尺のコード引張部材32を有する。ジャケット材料は、駆動滑車54の対応する面と相互に作用する複数の歯57を形成する。ステップチェーン58(図4)が駆動ベルト56上の歯59と係合して踏段42を所望のように移動させる。
【0019】
ジャケットのポリマ材料中の難燃剤は、ハロゲンを含まないメラミンベースの膨張剤(melamine based intumescent)もしくはマトリックス相と化学的に結合したナノスケールの充填材を有する充填ポリマのうちのいずれかを備える。
【0020】
難燃剤がハロゲンを含まないメラミンベースの膨張剤である例では、難燃剤がメラミン塩を備える。一例の難燃剤はシアヌル酸メラミンを備える。別の例はリン酸メラミンを備える。別の例はピロリン酸メラミンを備える。別の例はポリリン酸メラミンを備える。
【0021】
これらの例の難燃剤の各々は、ポリマジャケット材料の主剤(base resin)と優れた相溶性(compatibility)を有する。またこれらの例の難燃剤は優れた熱安定性と、多機能の難燃メカニズムに基づく高い難燃性と、アセンブリ内の引張部材32との優れた適合性と、を有する。さらに、これらの例の難燃剤はエレベータシステムの駆動綱車などの他のコンポーネントとも優れた適合性を有する。さらに、これらの例の難燃剤は、特定の設置において要求されるようなジャケットの可撓特性と干渉しない。
【0022】
この例の難燃剤は、燃焼を引き起こす3つの要素、すなわち、熱、燃料、および酸素のうちの一つを妨げることによって機能する。一例の難燃剤の作用メカニズムは、燃料希釈剤(難燃剤が不活性ガスを放出するものとして)、脱酸素剤、および熱遮断剤としての組み合わされた機能を含む。初期段階では、ハロゲンを含まないメラミンベースの膨張剤の例では、メラミン塩の場合の吸熱分解に引き続いて約350°Cでのメラミン自体の吸熱昇華を通じてヒートシンクを生じさせることにより、着火を阻止することができる。もう一つの、更に大きいヒートシンク効果がその後のメラミン蒸気の分解によって生み出される。
【0023】
メラミンベースの膨張剤は、火炎にとっては、炭化水素の約40%しか熱的燃焼を起こさない質の低い燃料と見なされる。さらに、燃焼によって生じる窒素は不活性希釈剤として機能する。別の不活性希釈剤源は、メラミンの分解時もしくは昇華しないメラミンの一部の自己縮合時に放出されるアンモニアである。
【0024】
またメラミンベースの膨張剤は、膨張過程で炭化層の形成に多大な貢献を示す特性を有する。炭化層は酸素と高分子分解生成ガスとの間の障壁として機能する。炭化物の安定性はメラミンの自己縮合時に形成される多重環構造によって増強される。リン相乗剤と組み合わせることにより、窒素‐リン物質(nitrogen−phosphorous substance)の形成を通じてメラミンは炭化物の安定性を更に向上させることができる。さらに、メラミンは炭化物の発泡剤として機能し、炭化層の熱障壁機能を強化させる。
【0025】
リン酸塩成分を含む上記の例においては、リン酸塩は、燃焼プロセスを阻止するように燃料および熱の物理的障壁を提供する炭化物の優れた発泡剤である。したがって、実施例の難燃剤は高効率であるにもかかわらず、実施例のアセンブリに用いられる種類のポリマジャケット材料に導入するのが比較的簡単である。難燃剤がジャケット材料と混合するため一例のジャケットは難燃性となる。以下に述べるように、一部の例では難燃剤はジャケット材料の主剤と混合される。複数の難燃剤との相乗作用を必要とする他の難燃技術とは異なり、上述したような一組成物はジャケット材料を難燃性にするのに効果的である。
【0026】
実施例の難燃剤はその化学組成のためにジャケット材料の主剤と優れた相溶性を示す。難燃剤は、ジャケット樹脂の化合物と同様の、極性を有する窒素および酸素を豊富に含んだ化合物を有する。これにより、ポリマ主剤および難燃剤が化学的に相溶性を有するため、効率と単純さがもたらされ、混合が促進される。
【0027】
実施例の難燃剤のもう一つの特徴は、難燃剤が比較的低い親水性を有し低水溶性をもつため、難燃剤が優れた加水分解安定性を有することである。さらに、一例の難燃剤はジャケットの成形工程などの処理時に優れた熱安定性を有する。
【0028】
別の実施例は、マトリックス相と化学的に結合したナノスケールの充填材を有する充填ポリマを備えた難燃剤を含む。一つのこうした例はかご型シルセスキオキサン(POSS)を含む。こうした難燃剤は火炎や煙を遅延させる効果を提供するのに適したシリコンベースの添加材料である。POSS分子は製造が可能な最小のシリカ粒子と考えられる。一方、シリカや改質粘土とは異なり、各POSS分子は、重合、すなわちPOSSモノマの、ジャケット材料中のポリマ鎖(例えば、熱可塑性ポリウレタン樹脂)等のポリマ鎖への接合に適した、共有結合した反応性官能基(reactive functionality)を含む。各POSS分子は、上述の実施例のアセンブリに用いられるPOSSセグメントや種々のポリマシステムの溶解性および相溶性に対する無反応性の有機官能基を含む。POSS技術の化学的多様性は非常に広く、現在、多数のPOSSモノマ、ポリマが固体もしくは液体の形態で利用可能である。POSSモノマは一般的に通常の溶媒に可溶である。従って、POSS技術は単量体もしくは多量体(すなわち樹脂)の形態で通常の有機体と同じように用いることができる。
【0029】
POSS分子を含む難燃剤は、製造上の複雑さを伴うことなくほとんど全てのポリマ型にPOSS化学原料を加えることができる点で容易に使用できる。POSSセグメントを含むポリマの物理特性の向上は、主剤の加工可能性や機械特性を維持しながらポリマ鎖の運動を制御するPOSSの能力に起因する。これはPOSSのナノスケールのサイズ、およびそのポリマ寸法との関係の直接的な結果である。
【0030】
POSS添加剤を含有するポリマにより、その他の難燃性プラスチックに比較して、燃焼の遅延や発熱の低減をもたらす。またジャケット材料にPOSS添加剤を組み込むことにより、完成品の使用可能な温度範囲を高める効果がある。その他のシステムに比べてPOSSシステムを有利にしている幾つかの特徴は、POSSの粒径、吸湿性、酸素透過性、高温安定性、化学反応性、ポリマブレンド特性、界面特性、機械特性、および耐食性を含む。
【0031】
以下の図7に関連して述べるように、POSSベースの難燃剤はジャケット材料工程における合成物の流れの中に添加される。
【0032】
ある例では、最終ジャケット材料中のPOSS成分量は10重量%未満である。
【0033】
別の例の難燃剤はカーボンナノチューブを備える。カーボンナノファイバもしくはナノチューブは例えばナノクレイ(nanoclay)に比べて優れた難燃性能を提供する。カーボンナノファイバはまた、ポリウレタンの機械的強度を増加させ、摩擦の利点を潜在的に提供する。
【0034】
ある例では、ポリマジャケット材料中に0.5重量%ほどのカーボンナノチューブを有することにより、放熱の大きさを低下させ、放熱の時間を延長させ、もしくはその両方を行う。換言すれば、カーボンナノチューブの存在により、より難燃性の材料を提供する。
【0035】
ポリマジャケット内でそれぞれ個別に用いることが可能な種々の異なる難燃剤について上記のように記載するが、単一の配合物中に複数の難燃剤を組み合わせることが可能である。
【0036】
実施例の引張部材32のいずれかに金属が用いられる場合、金属材料は保護剤で被覆してもしなくてもよく、保護剤でめっきしてもよい。例えば、主要鉄類は亜鉛、スズ、もしくは銅で被覆もしくはめっきしてもよい。
【0037】
図7はエレベータ荷重支持部材、乗用コンベヤの移動手すり、もしくは乗用コンベヤ等に用いられる駆動ベルトなどのアセンブリの製造方法60を概略的に示す。難燃剤62がマスターバッチミキサ66内で基本高分子樹脂64の供給物と混合される。
【0038】
選択される難燃剤の量は、ある程度は、難燃材料の選択によって決まる。ハロゲンを含まないメラミン膨張剤の場合、マスターバッチは約20%〜約50%(重量)の選択された難燃剤を含む。ある実施例の最終的なジャケット材料はジャケット材料中に0.2〜20重量%の難燃剤を含む。POSSベースの難燃剤の場合、ある実施例の最終的なジャケット材料は10%未満の難燃剤を含む。カーボンナノチューブが難燃剤として用いられた場合、ジャケット材料の約0.5%〜約10%(重量)が難燃剤を備える。
【0039】
図7を参照すると、成形装置などのジャケット成形ステーション72内で所望の形状のジャケットを提供するようにジャケット材料が成形される。図示の例では、複数のスプール74がジャケット成形ステーション72に引張部材32を供給し、ここで所望のアセンブリをもたらすようにジャケットが引張部材32の少なくとも1つの外側表面上にモールドされる。図7の場合、結果としてもたらされるアセンブリはエレベータ荷重支持部材26である。
【0040】
ジャケットが特定の応用例における要望どおりに機能するように、難燃剤の存在が、基本ポリマ材料の可撓性等のジャケット材料のその他の特性に干渉するもしくはこれを悪い方向に変えることはない(例えば、アセンブリが乗用コンベヤの移動手すりを備えた場合にジャケットはガイドに従うことができ、アセンブリがベルト等の駆動部材を備えた場合にジャケットは十分な駆動力を伝達することができ、あるいは、アセンブリがエレベータ荷重支持部材を備えた場合にジャケットは綱車の周りに巻きついてエレベータかごを移動させるための十分な牽引力を達成することができる)。さらに、ジャケットを所望の形状にモールドし、かつ、ジャケット34と引張部材32との間に優れた接着性を維持する能力は損なわれない。実際には、幾つかの実施例ではジャケット材料中の難燃剤の存在により、ジャケット34の材料と引張部材32との間の接着性は向上する。
【0041】
実施例の難燃剤により、アセンブリのジャケットはまた、優れた温度安定性や、加水分解安定性、低親水特性、および、エレベータ綱車や乗用コンベヤのステップチェーンなどの他のコンポーネントと相互に作用する優れた適合性を有する。
【0042】
別の実施例では、難燃材料はジャケット材料中に直接混合されることなくアセンブリに組み込まれる。一例では、上記の例の難燃材料の少なくとも一つが、予成形されたジャケット中の空隙内に挿入されることによりジャケットに組み込まれる。これはマイクロスケールもしくはナノスケールで行われる。こうした一例では、難燃材料は予成形されたジャケット材料と化学的に結合する。別の例では、難燃材料はジャケット材料と化学的に結合しないが、予成形されたジャケット中の適切な空隙内の場所により所定の位置に保持される。
【0043】
一部の実施例では、予成形されたジャケット中の少なくとも一つの空隙がアセンブリの少なくとも選択された長さに沿って延在するとともに、上述したような難燃材料で充填される。こうした一例では、空隙は、引張部材に平行なアセンブリの長さに沿って延在するとともに、難燃材料で充填される。
【0044】
上記の記載は本質的に限定的なものではなく例示に過ぎない。本発明の真意を逸脱することなく開示の実施例に対する種々の変形や修正が当業者にとって明らかとなるであろう。本発明に付与される法的保護の範囲は付記の特許請求の範囲を検討することによってのみ決定される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの長尺のコード引張部材と、
前記少なくとも1つの引張部材の少なくとも一部を被覆する、ポリマ材料を備えたジャケットと、
ハロゲンを含まないメラミンベースの膨張剤、もしくはマトリックス相と化学的に結合したナノスケールの充填材を有する充填ポリマからなる群から選択された難燃剤と、
を備えたアセンブリ。
【請求項2】
前記難燃剤が、メラミン塩を備えることを特徴とする請求項1に記載のアセンブリ。
【請求項3】
前記難燃剤が、シアヌル酸メラミン、リン酸メラミン、ピロリン酸メラミン、もしくはポリリン酸メラミンのうち少なくとも1つを備えることを特徴とする請求項2に記載のアセンブリ。
【請求項4】
前記難燃剤が、かご型シルセスキオキサンを備えることを特徴とする請求項1に記載のアセンブリ。
【請求項5】
前記難燃剤が、カーボンナノチューブを備えることを特徴とする請求項1に記載のアセンブリ。
【請求項6】
前記ジャケットにより少なくとも部分的に被覆された複数の長尺のコード引張部材を備えることを特徴とする請求項1に記載のアセンブリ。
【請求項7】
前記アセンブリが、エレベータ荷重支持部材を備えることを特徴とする請求項1に記載のアセンブリ。
【請求項8】
前記エレベータ荷重支持部材が、フラットベルトもしくは円形ロープを備えることを特徴とする請求項7に記載のアセンブリ。
【請求項9】
前記アセンブリが、乗用コンベヤの駆動部材もしくは乗用コンベヤの移動手すりのうちの1つを備えることを特徴とする請求項1に記載のアセンブリ。
【請求項10】
前記難燃剤が前記ジャケット材料に含まれるとともに、前記ポリマ材料が20重量%までの前記難燃剤を備えることを特徴とする請求項1に記載のアセンブリ。
【請求項11】
前記難燃剤が前記ジャケット材料に含まれるとともに、前記ポリマ材料が0.2〜10重量%の前記難燃剤を備えることを特徴とする請求項10に記載のアセンブリ。
【請求項12】
ジャケットにより少なくとも部分的に被覆された少なくとも一つの長尺の引張部材を有するアセンブリの製造方法であって、
難燃剤を用意し、
ポリマ材料を用意し、
所望の形状のジャケットを形成するように前記ポリマ材料を前記引張部材に適用するステップを備え、
前記難燃剤が前記アセンブリに含まれることを特徴とするアセンブリの製造方法。
【請求項13】
前記難燃剤を高分子樹脂と混合させることにより混合材料のマスターバッチを用意し、
前記混合材料を前記ポリマ材料と混合させることにより一群のジャケット材料を用意することにより、前記難燃剤をジャケット内に含有させることを備え、
前記ポリマ材料を前記引張部材に適用するステップが、前記ジャケット材料を用いることを特徴とする請求項12に記載のアセンブリの製造方法。
【請求項14】
前記難燃剤が、ハロゲンを含まないメラミンベースの膨張剤であることを特徴とする請求項12に記載のアセンブリの製造方法。
【請求項15】
前記難燃剤が、シアヌル酸メラミン、リン酸メラミン、ピロリン酸メラミン、もしくはポリリン酸メラミンのうち少なくとも1つを備えることを特徴とする請求項12に記載のアセンブリの製造方法。
【請求項16】
前記難燃剤が、マトリックス相と化学的に結合したナノスケールの充填材を有する充填ポリマを備えることを特徴とする請求項16に記載のアセンブリの製造方法。
【請求項17】
前記難燃剤が、かご型シルセスキオキサンを備えることを特徴とする請求項16に記載のアセンブリの製造方法。
【請求項18】
前記難燃剤が、カーボンナノチューブを備えることを特徴とする請求項16に記載のアセンブリの製造方法。
【請求項19】
前記ジャケット材料中の摩擦安定剤の量が、0.2〜10重量%であることを特徴とする請求項12に記載のアセンブリの製造方法。
【請求項20】
内部に少なくとも一つの空隙を含んだ前記ジャケットを成形し、
前記空隙に前記難燃剤を少なくとも部分的に充填することを備えることを特徴とする請求項12に記載のアセンブリの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2012−500168(P2012−500168A)
【公表日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−522956(P2011−522956)
【出願日】平成20年8月15日(2008.8.15)
【国際出願番号】PCT/US2008/073236
【国際公開番号】WO2010/019151
【国際公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【出願人】(591020353)オーチス エレベータ カンパニー (402)
【氏名又は名称原語表記】OTIS ELEVATOR COMPANY
【Fターム(参考)】