説明

ポリマー−セラミック複合材および方法

充填または強化などを必要としている骨欠損部などの表面に容易に適用される、複合材料のための方法および装置が示されている。該複合材料は、水の存在下での硬化時に圧縮強度などの良好な機械的特性をもたらす。記載されたような選択した材料および方法は、さらに、時間を亘って所望の形態をもたらすように制御可能な吸収速度で生体吸収が可能である。選択した実施形態では、薬剤は、骨成長、感染抵抗性、疼痛管理などの利益をさらにもたらす。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
この特許出願は、2006年10月31日に出願された、表題「IN SITU SETTING POLYMER/CERAMIC COMPOSITE BONE CEMENTS FOR CONTROLLED RELEASE OF SIMVASTATIN」の米国仮特許出願第60/855,904号(この出願は、参考として本明細書に援用される)の優先権の利益を主張する。
【背景技術】
【0002】
本発明は、セラミックおよびポリマーの複合材料に関する。一例では、本発明は、骨置換または空隙充填剤に関する。骨は、状況によっては、空隙の充填などの修復を必要とする。骨または骨の部分は、状況によっては、人工材料によって置換される。所定の位置に入れることが容易な材料ならびに高強度および高強靭性などの望ましい機械的特性を有する材料を使用することが望ましい。状況によっては、置換材料が体内に吸収され、吸収されたその材料の代わりに新骨成長を促進することも望ましい。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
以下の詳細な記述では、本明細書の一部を形成し、本発明を実施し得る特定の実施形態を例示のために示した添付図面を参照する。図面では、同様の番号が、その数種の図を通して実質的に同様の要素を表示している。これらの実施形態は、当業者が本発明を実施することを可能にするのに十分詳細に記載される。他の実施形態を利用してもよく、本発明の範囲から離れることなく、わずかに逸脱してもよい。
【0004】
図1は、複合材料の形成の例示的方法を示す。操作100で、該複合物のポリマー相は、溶媒とポリマーを混合することによって調製される。操作100で例示する例は、ポリ(α−ヒドロキシエステル)を溶媒と混合して、ポリマーを非固体状態に維持する。本開示では、非固体としては、液体、粘性流体、ゲルなどが挙げられる。一例では、非固体状態のポリマー相を有することにより、塗布すること、管または注射器から押し出すことなどを含めた、複合材料の多数の適用方法が容易になる。
【0005】
ポリ(α−ヒドロキシエステル)は、ポリ(α−ヒドロキシエステル)が、患者の体内で加水分解され得るポリマーをもたらし、加水分解された成分が体内に吸収されるという点で、他のポリマーとは異なる。ポリ(α−ヒドロキシエステル)は、医療機器技術でも詳しく研究されている。結果として、ポリ(α−ヒドロキシエステル)の特性は、他のポリマーの特性よりもよく知られている。ポリ(α−ヒドロキシエステル)の患者における使用は、米国食品薬剤局(United States Food and Drug Administration)などの多くの管理機関によって承認されている。
【0006】
許容可能なポリ(α−ヒドロキシエステル)の例としては、限定はしないが、ポリラクチド、ポリグリコリド、およびポリカプロラクトン(PCL)が挙げられる。一例では、ポリマー相は、1つまたは複数の部分がポリ(α−ヒドロキシエステル)であるコポリマーを含む。一例は、ポリ(ラクチド−co−グリコリド)を含み、別の例は、ポリ(ラクチド−co−カプロラクトン)を含む。1個または複数の部分がポリ(α−ヒドロキシエステル)である他のコポリマーは、上で列挙したものなどの1種または複数のポリ(α−ヒドロキシエステル)と共に、ポリエチレングリコール(PEG)を成分として含む。適切なポリマー相の選択は、機械的強度、セラミック相への接着力、生体適合性、生体吸収速度、特定の溶媒での溶解性などの所望の特性の確認を含む。
【0007】
上で論じたように、溶媒をポリ(α−ヒドロキシエステル)と共に使用して、ポリマー相を非固体状態に維持する。本発明の範囲内で、多数の溶媒が利用可能である。例示的溶媒としては、限定はしないが、n−メチル−2−ピロリドン(NMP)、2−ピロリドンおよびジメチルスルホキシド(DMSO)を含めた極性非プロトン性溶媒が挙げられる。他の許容可能な溶媒は、該溶媒中でのポリマーの許容可能な溶解性、患者に対する無毒性、および該溶媒の水での溶解性などの特性を示す。上で列挙した例示的溶媒などの有機溶媒は、以下でより詳細に記載する選択した実施形態において該複合材料に添加してもよいスタチンなどの薬剤に対する良好な溶解性も示す。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の一実施形態による複合材料の形成方法の例を示す図である。
【図2】本発明の一実施形態により配置された複合材料の例を示す図である。
【図3】本発明の一実施形態による送達のシステムおよび方法の例を示す図である。
【図4】本発明の一実施形態による硬化された複合材料の例示的実施形態の試験データを示す図である。
【図5】本発明の一実施形態による経時的な薬物放出の例示的実施形態の試験データを示す図である。
【図6】本発明の一実施形態による経時的な複合材料の分解の例示的実施形態の試験データを示す図である。
【図7】本発明の一実施形態による経時的な薬物放出の別の例示的実施形態の試験データを示す図である。
【図8】本発明の一実施形態による経時的な複合材料の分解の別の例示的実施形態の試験データを示す図である。
【図9】本発明の一実施形態による経時的な薬物放出の別の例示的実施形態の試験データを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
操作110では、ポリマー相および溶媒は、生体吸収性セラミック相と混合して、混合物、懸濁液、スラリーなどの非固体複合物を形成する。非固体複合物の例としては、流動性材料および成形性材料の両方が挙げられる。上で述べたように、非固体状態の特徴としては、非固体複合物の容易な適用および加工性が挙げられる。一用途では、非固体複合物は、注射器から押し出すか、さもなければ貯蔵器から押し出す。所望の形状の複合物を形造ることも、非固体複合物の粘度および/または粘稠度に応じて可能である。
【0010】
生体吸収性セラミック相中の材料は、限定はしないが、リン酸カルシウムおよび/または硫酸カルシウムの様々な相、物理的状態、および化学的性質を含む。一例では、リン酸カルシウムのセメント組成物は、生体吸収性セラミック材料として使用される。
【0011】
リン酸カルシウムおよび硫酸カルシウムのいくつかの特定の例としては、限定はしないが、結晶性のリン酸カルシウムまたは硫酸カルシウム、リン酸二カルシウム無水物−CaHPO、リン酸二カルシウム二水和物−CaHPO・2HO、α−リン酸三カルシウム−Ca(PO、α’−リン酸三カルシウム−Ca(PO、β−リン酸三カルシウム−Ca(PO、ヒドロキシアパタイト−Ca(POOHまたはCa10(PO(OH)、リン酸四カルシウム−Ca(POO、リン酸八カルシウム−Ca(PO・5HO、硫酸カルシウム無水物−CaSO、α−硫酸カルシウム半水和物−α−CaSO・1/2HO、β−硫酸カルシウム半水和物−β−CaSO・1/2HO、あるいは硫酸カルシウム二水和物−CaSO・2HOを含有するセメントが挙げられる。多数の例示的な組成物および相を列挙しているが、リン酸カルシウムおよび/または硫酸カルシウムの他の組成物および相も、本発明の範囲内である。
【0012】
操作120では、非固体複合物は水性環境に入れられる。一例示的方法では、患者は、骨を修復または置換されている。例えば、空隙または他の欠損は、非固体複合物で充填され得る。患者内の環境は、本開示の水性環境中に含め得るために十分な水を含有する。そのような例では、非固体複合物を包囲する患者内の体液は、ポリマーから溶媒を追い出す。次いで、ポリマーは、複合材料内で沈殿または硬化して、固体材料を形成する。上で論じたように、一実施形態では、溶媒は、拡散しながら体内に容易に吸収される。
【0013】
生成する固体複合構造の一例は、図2に示される。第1の既存の骨部分210および第2の既存の骨部分220は、固体複合構造230と共に示されている。複合構造230は、ポリマー相232および生体吸収性セラミック相234を含む。示した例では、生体吸収性セラミック相234は、ポリマー相232のマトリックス内に分散している。
【0014】
上で論じたように、一例では、複合構造230は、非固体状態の第1の既存の骨部分210と第2の既存の骨部分220の間などの所望の場所に適用される。一旦配置されると、複合構造230は、矢印240で示すように、水が該構造中に拡散するにつれて硬化し、溶媒は、矢印242で示すように、該構造から拡散する。一例では、ポリ(DL−ラクチド)およびリン酸カルシウムセメントからそれぞれ1:3の比で形成される、生成複合構造は、約37℃で24時間硬化した後、3〜5MPaの圧縮強度をもたらした。
【0015】
複合構造230が硬化した後、一方法は、患者の体内へ生体吸収されるはずの複合構造230を次第に分解する一方で、複合構造230が新骨成長によって置換されることを含む。一実施形態では、セラミック相の生体吸収速度は、ポリマー相の生体吸収速度と比較される。一例では、ポリマー相の生体吸収速度は、ポリマー相の分子量を変動させることによって制御される。ポリマー相の生体吸収速度を制御する他の方法も、本発明の範囲内である。一実施形態では、セラミック相の生体吸収速度も制御される。
【0016】
一実施形態では、それぞれの生体吸収速度は、所望の骨成長機構を達成するために、複合物内で制御される。一方法は、ポリマー相の生体吸収速度を、セラミック相の生体吸収速度とおよそ一致するように調整することを含む。生体吸収速度が一致していると、一方の相が他方よりも早く吸収されてしまったために、あばたまたは穴のある構造を残す可能性が低減する。他の方法では、あばたまたは穴のある構造は、新骨成長のための核形成部位をもたらすために望ましい。
【0017】
一実施形態では、上で述べたようにそれぞれの生体吸収速度を調整するために、複合物のポリマー相に親水性物質が含まれる。選択した実施形態では、親水性物質としては、親水性のオリゴマーまたはポリマーが挙げられる。オリゴマーまたはポリマーなどを含めた親水性物質は、複合材料中の他の成分よりも急速に吸収され、複合物に孔を残す。
【0018】
親水性物質の例としては、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリエチレングリコール(PEG)、およびポリエチレンオキシド(PEO)などが挙げられる。親水性物質の他の例としては、オリゴ糖、多糖、およびデキストラン、アルギン酸、ヒアルロン酸、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースまたは他のセルロース誘導体などのそれらの誘導体が挙げられる。
【0019】
上で論じたように、選択した実施形態では、孔が望ましく、置換骨成長に利用可能な核形成部位と、薬剤などの他の含有要素の放出速度に関連する露出表面積などのパラメーターを調整するために使用される(以下でより詳細に論じる)。
【0020】
親水性ポリマーについて説明しているが、空隙率を制御するために複合材料中に含まれる他の材料も、本発明の範囲内である。ポリマーの例を使用すると、親水性ポリマーは、限定はしないが、共重合、物理的ブレンドなどを含む多数の可能な機構によって、複合材料中に含まれ得る。
【0021】
一実施形態では、薬剤250は、複合構造230内に含まれる。薬剤250の一例としては、骨成長促進剤が挙げられる。シンバスタチンなどのスタチンは、骨成長を促進することが示されている薬剤の例である。一実施形態では、スタチンなどの疎水性の薬剤は、上で論じたように、n−メチル−2−ピロリドン(NMP)、2−ピロリドンまたはジメチルスルホキシド(DMSO)などの有機溶媒中に溶解される。そのような溶媒/薬剤の組合せの利点としては、複合材料内の薬剤のより均一な分布に起因する、複合材料が分解する際のより再現性がある薬物放出プロファイルが挙げられる。選択した実施形態では、そのような特性は、薬剤の急速な放出を最小限に抑え、その放出プロファイルを延長するために望ましい。
【0022】
複合構造230内に含まれていてもよい他の骨成長促進剤としては、限定はしないが、骨の形成、治癒および修復に関連しているタンパク質またはペプチドが挙げられる。タンパク質の例としては、骨形態形成タンパク質(BMP)、骨形成タンパク質(OP)、形質転換成長因子(TGF)、インスリン様成長因子(IGF)、血小板由来成長因子(PDGF)、血管内皮成長因子(VEGF)が挙げられる。
【0023】
複合構造230内に含まれていてもよい他の薬剤としては、抗生物質、鎮痛剤、および抗癌剤(cancer drug)、または以上列挙した任意の作用剤の組合せが挙げられる。一実施形態では、薬剤250または作用剤は、複合構造230のポリマー相232内に含有されるが、本発明はそう限定してはいない。複合構造230の他の例は、薬剤を、セラミック相、またはポリマー相およびセラミック相の両方の中に含む。
【0024】
一実施形態では、薬剤250は、矢印252で示すように、時間を亘って複合構造230の外へ拡散し、周囲の組織または近接する骨の中に拡散する。一例では、薬剤250は、複合構造230が分解するにつれて放出される。薬剤250がポリマー相内に含有されている一実施形態では、ポリマー相のセラミック相に対する割合が、薬剤250の放出の速度を制御する。
【0025】
図3は、本発明の一実施形態の送達システム300の一例を例示している。貯蔵チャンバ310は、貯蔵チャンバ310内に含有される、上記実施形態に記載のある量の非固体複合材料320と共に例示している。示している例では、送達システム300は注射器を含むが、本発明はそう限定してはいない。操作時に、プランジャー312は、貯蔵チャンバ310からノズル314を通して非固体複合材料320を分配するために押される。
【0026】
図3は、例えば頭骨などの骨表面330の空隙332を充填するために送達システム300を使用することを例示している。非固体複合材料320のある量322は、非固体状態のままで空隙332を充填する。上記のように、一実施形態では、患者組織からの体液は、非固体複合材料320のポリマー相内の溶媒を追い出し、該複合物を硬化して固体にする。
【0027】
一例では、非固体複合材料320は、必要となるまで、非固体状態で貯蔵チャンバ310内に貯蔵される。適用すると、次いで複合材料が硬化する。他の例では、非固体複合材料320は、操作直前に、ポリマー、溶媒、およびセラミックなどの成分から調製される。次いで、非固体複合材料320が適用され、その場で硬化する。
【0028】
記載したような複合材料および方法を使用すると、複合材料は、充填または強化などを必要としている骨部分に容易に適用される。複合材料は、硬化時に圧縮強度などの良好な機械的特性をもたらす。記載したような選択した材料および方法は、さらに、所望の効果を示すように制御可能な吸収速度で生体吸収が可能である。選択した実施形態では、薬剤は、さらに、骨の成長および形成、感染抵抗性、疼痛管理などの利点をもたらす。
【0029】
図4〜9は、例示的な実施形態の選択した試験データを示している。示しているポリマー、セラミック相、および溶媒などの材料は、単に例として例示している。同様に、特定の調製および試験方法は、単に例として示している。本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲を参照して判定したような任意の他の材料または組合せならびに方法を、そのような特許請求の範囲にその資格がある均等物の全範囲と共に含む。
【0030】
図4は、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)(pH7.4)中のPLGA/リン酸カルシウムセメントの37℃、1週間のX線回折スペクトルを例示している。試験試料は、以下のように調製し評価した。PLGA(50/50、i.v.=0.48dl/g)を、重量比1:2でNMP中に溶解した。次いで、リン酸カルシウムセメント粉末3gを、PLGA−NMP6gと混合してペースト様の混合物を形成し、それを3mmの開口部を有する3mLの経口注射器を通してリン酸緩衝生理食塩水(pH7.4)に37℃で1週間注射した。その混合物は、PBSと接触すると硬化し始めた。1週間の終りまでに、リン酸カルシウムセメントは、硬化して微量の炭酸カルシウムを有するヒドロキシアパタイトになり(図4)、それは骨塩相と似ている。
【0031】
図5は、PBS(pH7.4)中の1:1(wt)PDLLA(i.v.=0.49dl/g)/リン酸カルシウムセメントからのシンバスタチンの、37℃で10週間(n=3)の累積放出量を例示している。図6は、同じ試験試料の分解を例示している。この例は、以下のように調製し評価した。PDLLA(i.v.=0.49dl/g)を、重量比1:2でNMP中に溶解した。シンバスタチン0.3gを、最初にPDLLA−NMP5gと混合し、次いでリン酸カルシウムセメント粉末5gを添加してペースト様の混合物を形成し、それを3mmの開口部を有する3mLの経口注射器を通して注射した。放出量試験は、リン酸緩衝生理食塩水(pH7.4)中で、37℃で10週間実施した(図5)。シンバスタチンの濃度は、フォトダイオードアレイ(PDA)検出器を備えた逆相高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いて測定した。PDLLA(i.v.=0.49dl/g)の分解は、ゲル透過クロマトグラフィー(GPC)ポリスチレンを厳密な基準として使用して測定した(図6)。
【0032】
図7は、PBS(pH7.4)中の2:1(wt)PDLLA(i.v.=0.49dl/g)/リン酸カルシウムセメントからのシンバスタチンの、37℃で10週間(n=3)の累積放出量を例示している。図8は、同じ試験試料の分解を例示している。この例は、以下のように調製し評価した。PDLLA(i.v.=0.49dl/g)を、重量比1:2でNMP中に溶解した。シンバスタチン0.27gを、最初にPDLLA−NMP6gと混合し、次いでリン酸カルシウムセメント粉末3gを添加してペースト様の混合物を形成し、それを3mmの開口部を有する3mLの経口注射器を通して注射した。放出量試験は、リン酸緩衝生理食塩水(pH7.4)中で、37℃で10週間実施した(図7)。シンバスタチンの濃度は、フォトダイオードアレイ(PDA)検出器を備えた逆相高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いて測定した。PDLLA(i.v.=0.49dl/g)の分解は、ポリスチレンを狭い標準としたゲル透過クロマトグラフィー(GPC)を使用して測定した(図8)。
【0033】
図9は、一例示的実施形態によるPBS(pH7.4)中の4:1(wt)PDLLA(i.v.=1.87dl/g)/リン酸カルシウムセメントからのシンバスタチンの、37℃で6週間(n=3)の累積放出量の結果を例示している。この例は、以下のように調製し評価した。PDLLA(i.v.=1.87dl/g)を、重量比1:4でNMP中に溶解した。シンバスタチン0.23gを、最初にPDLLA−NMP6gと混合し、次いでリン酸カルシウムセメント粉末1.5gを添加してペースト様の混合物を形成し、それを3mmの開口部を有する3mLの経口注射器を通して注射した。放出量試験は、リン酸緩衝生理食塩水(pH7.4)中で、37℃で6週間実施した(図9)。シンバスタチンの濃度は、フォトダイオードアレイ(PDA)検出器を備えた逆相高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いて測定した。
【0034】
本発明の例示的実施形態および利点を多数記載しているが、以上の例は包括的ではなく、単に例示のためである。本明細書では特定の実施形態を例示し記載しているが、同じ目的を達成するように意図した任意の配置または方法が、示している特定の実施形態の代わりとなり得ることは、当業者には理解されよう。本出願は、本発明の任意の適合形または変形を包含することを意図している。以上の記述が例示的であり、限定的ではないことを意図していることは理解されたい。以上の実施形態の組合せ、および他の実施形態は、以上の記述を再検討すれば当業者に明らかとなろう。本発明の範囲は、上記の構造および方法が使用される任意の他の用途を含む。本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲だけでなく、そのような特許請求の範囲にその資格がある均等物の全範囲も参照しながら決定するべきである。
【0035】
要約は、技術的開示の本質および要点を読者が速やかに確認できるようにするために、37C.F.R.§1.72(b)に従うように提供している。要約は、特許請求の範囲または意味を解釈または限定するために使用することはないであろうという了解のもとで提出している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマー相を非固体状態に維持するために溶媒と混合されたポリ(α−ヒドロキシエステル)を含むポリマー相と、
該ポリマー相と混合された生体吸収性セラミック相と
を含む複合材料であって、
水の存在下では、該溶媒が該ポリマー相から拡散し、該ポリマー相の凝固および該複合材料の硬化を引き起こす、複合材料。
【請求項2】
前記溶媒が、n−メチル−2−ピロリドン、2−ピロリドン、およびジメチルスルホキシドからなる群から選択される、請求項1に記載の複合材料。
【請求項3】
前記ポリ(α−ヒドロキシエステル)がポリラクチドを含む、請求項1に記載の複合材料。
【請求項4】
前記ポリ(α−ヒドロキシエステル)がポリカプロラクトンを含む、請求項1に記載の複合材料。
【請求項5】
前記ポリマー相がコポリマーを含む、請求項1に記載の複合材料。
【請求項6】
前記コポリマーがポリ(ラクチド−co−グリコリド)を含む、請求項6に記載の複合材料。
【請求項7】
前記コポリマーがポリカプロラクトンおよびポリラクチドを含む、請求項6に記載の複合材料。
【請求項8】
前記コポリマーが、ポリエチレングリコールと、ポリカプロラクトン、ポリラクチド、およびポリグリコリドからなる群から選択される1種または複数のポリ(α−ヒドロキシエステル)とを含む、請求項6に記載の複合材料。
【請求項9】
前記ポリマー相が、ポリ(α−ヒドロキシエステル)および1種または複数の親水性物質の物理的ブレンドを含む、請求項1に記載の複合材料。
【請求項10】
1種または複数の親水性物質がポリビニルピロリドン(PVP)を含む、請求項9に記載の複合材料。
【請求項11】
1種または複数の親水性物質がポリエチレングリコール(PEG)を含む、請求項9に記載の複合材料。
【請求項12】
1種または複数の親水性物質がポリエチレンオキシド(PEO)を含む、請求項9に記載の複合材料。
【請求項13】
前記親水性物質が、オリゴ糖、オリゴ糖の誘導体、多糖、および多糖の誘導体からなる群から選択される、請求項9に記載の複合材料。
【請求項14】
前記生体吸収性セラミックがリン酸カルシウムを含む、請求項1に記載の複合材料。
【請求項15】
前記生体吸収性セラミックが硫酸カルシウムを含む、請求項1に記載の複合材料。
【請求項16】
前記生体吸収性セラミックが、リン酸カルシウムと硫酸カルシウムの混合物を含む、請求項1に記載の複合材料。
【請求項17】
前記複合材料が、送達デバイス内の貯蔵チャンバに非固体状態で含有されている、請求項1に記載の複合材料。
【請求項18】
前記送達デバイスが、送達の前に前記複合材料を前記非固体状態に維持するための注射器を含む、請求項17に記載の複合材料。
【請求項19】
前記複合材料が硬化する前に流動可能である、請求項17に記載の複合材料。
【請求項20】
前記複合材料が硬化する前に成形可能である、請求項1に記載の複合材料。
【請求項21】
前記複合材料から時間を亘って放出するための薬剤を該複合材料内にさらに含む、請求項1に記載の複合材料。
【請求項22】
前記薬剤が前記ポリマー相内にある、請求項21に記載の複合材料。
【請求項23】
前記薬剤が、骨の成長、再構築および治癒を促進する作用剤を含む、請求項21に記載の複合材料。
【請求項24】
前記薬剤がスタチンを含む、請求項23に記載の複合材料。
【請求項25】
前記薬剤が、骨の形成、成長および再構築を促進するタンパク質またはペプチドを含む、請求項23に記載の複合材料。
【請求項26】
前記薬剤が、抗生物質、鎮痛剤、スタチン、抗癌剤からなる群から選択される、請求項21に記載の複合材料。
【請求項27】
ポリ(α−ヒドロキシエステル)を含むポリマー相を溶媒と混合して、ポリマーマトリックスを非固体状態に維持するステップと、
該ポリマー相を生体吸収性セラミック相と混合して、非固体複合物を形成するステップと、
該非固体複合物を水性環境に置いて、該溶媒を追い出して該ポリマー相を硬化するステップと
を含む方法。
【請求項28】
前記非固体複合物を水性環境に置くステップが、該非固体複合物を送達デバイスから水性環境に分配するステップを含む、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記ポリマー相を前記生体吸収性セラミック相と混合するステップが、該非固体複合物を前記水性環境に置くステップの直前に実施される、請求項27に記載の方法。
【請求項30】
前記ポリ(α−ヒドロキシエステル)を含む前記ポリマー相を前記溶媒と混合するステップが、ポリ(α−ヒドロキシエステル)を含むポリマー相をn−メチル−2−ピロリドンと混合するステップを含む、請求項27に記載の方法。
【請求項31】
前記ポリ(α−ヒドロキシエステル)を含む前記ポリマー相を前記溶媒と混合するステップが、ポリ(α−ヒドロキシエステル)を含むポリマー相を2−ピロリドンと混合するステップを含む、請求項27に記載の方法。
【請求項32】
前記ポリ(α−ヒドロキシエステル)を含む前記ポリマー相を前記溶媒と混合するステップが、ポリ(α−ヒドロキシエステル)を含むポリマー相をジメチルスルホキシドと混合するステップを含む、請求項27に記載の方法。
【請求項33】
前記ポリ(α−ヒドロキシエステル)を含む前記ポリマー相を混合するステップが、該ポリ(α−ヒドロキシエステル)が、ポリカプロラクトン、ポリラクチド、およびポリグリコリドからなる群から選択されるポリマー相を混合するステップを含む、請求項27に記載の方法。
【請求項34】
前記ポリマー相を混合するステップが、ポリ(α−ヒドロキシエステル)の多糖または多糖の誘導体との物理的ブレンドを混合するステップを含む、請求項27に記載の方法。
【請求項35】
前記ポリマー相を混合するステップが、ポリ(α−ヒドロキシエステル)のポリビニルピロリドンとの物理的ブレンドを混合するステップを含む、請求項27に記載の方法。
【請求項36】
前記ポリマー相を混合するステップが、ポリ(α−ヒドロキシエステル)のポリエチレングリコールとの物理的ブレンドを混合するステップを含む、請求項27に記載の方法。
【請求項37】
前記ポリマー相を混合するステップが、ポリ(α−ヒドロキシエステル)のポリエチレンオキシドとの物理的ブレンドを混合するステップを含む、請求項27に記載の方法。
【請求項38】
前記ポリマー相を混合するステップが、1種または複数のポリ(α−ヒドロキシエステル)が、ポリカプロラクトン、ポリラクチド、およびポリグリコリドからなる群から選択されるコポリマー相を混合するステップを含む、請求項27に記載の方法。
【請求項39】
前記コポリマー相を混合するステップが、ポリエチレングリコールを含むコポリマー相を混合するステップを含む、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記ポリマー相を前記生体吸収性セラミック相と混合するステップが、該ポリマー相をリン酸カルシウムと混合するステップを含む、請求項27に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2010−508071(P2010−508071A)
【公表日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−534709(P2009−534709)
【出願日】平成19年10月31日(2007.10.31)
【国際出願番号】PCT/US2007/023014
【国際公開番号】WO2008/054794
【国際公開日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【出願人】(508111279)シンセス ゲーエムベーハー (9)
【Fターム(参考)】