説明

ポリマー−VIII因子部分結合体

【課題】水溶性ポリマーとVIII因子活性を有する部分との結合体を提供する。
【解決手段】VIII因子部分と、システイン残基のチオール基を介して共有結合した、一つ以上の水溶性ポリマー、例えばポリ(エチレングリコール)との結合体、又はその誘導体。またこれら結合体を含んでなる組成物、およびこれら結合体の製造方法、さらに該組成物を患者に投与する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は一般に、VIII因子部分(すなわちVIII因子活性を有する部分)とポリマーを含有する結合体(conjugate)に関する。
【0002】
さらに本発明は、上記結合体を含有する組成物、その結合体を合成する方法及び患者を治療する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
止血は、損傷した血管から血液が流出するのを阻止する過程である。他の多くの生物のみならず哺乳類の場合、止血過程は生存し続けるために極めて重要である。止血過程に欠陥があると、例えば、血管が損傷し続いて血液が失われるのを阻止する働きをする血餅を有効に形成することができなくなることがある。ヒトの場合、血餅形成不能症にかかっている個体を血友病患者と称する。血友病患者にとって特に問題なのは、出血が一旦始まると決して止まらないという命に関わる危険があることである。
【0004】
一般に、血友病患者は、血餅を形成するのに必要な一種以上の物質の有効量を産生する機能を欠いている。例えば、血友病A(「古典的血友病」とも称される)に冒されている血友病患者は、有効量のVIII因子(「抗血友病因子A」、「抗血友病グロブリン」及び「AHG」としても知られている)を産生することができない。VIII因子は、血餅を形成するに至る反応のいくつものカスケードの内の一つの重要な要素である。VIII因子は、「内在経路」とも称される反応のカスケードにとって重要であり、フィブリノーゲンが血餅の主成分であるフィブリンに変換する反応を最終的に行う。
【0005】
血餅を形成する内在経路は比較的複雑であるが、VIII因子の役割は簡潔に説明できる。比較的少量のトロンビン(例えば破裂した組織の細胞が放出する)の存在下、VIII因子は、VIIIa因子として知られている活性化された形態に変換される。次に、VIIIa因子は(他の物質とともに)、別の因子のX因子をXa因子に活性化する。その後、Xa因子は(他の物質とともに)、プロトロンビンをトロンビンに変換し、その結果、比較的大量のトロンビンが時間の経過とともに産生される。比較的大量のトロンビンが、フィブリノーゲンをフィブリンに効率的に変換する。次いで、フィブリンが、血餅を形成するマトリックス又は格子を形成する。血餅形成の内在経路におけるVIII因子類の役割を、以下に図式的に示す。
【0006】
【化1】

【0007】
血友病Aは、全人口中、10,000名の出生毎に、1名又は2名の男性を冒すが、X染色体上に位置するVIII因子の遺伝子の各種突然変異のいずれか一つが原因である。血友病Aは、特定の突然変異によって、重篤な、中程度の又は軽度の症状で現れる。最も重篤な状態の血友病Aに冒されている個体は、活性型のVIII因子を発現する機能を全く欠いている。血友病Aに冒されている個体は、臨床上、筋肉の出血や関節の出血があり、挫傷を受けやすくかつ創傷からの出血が長時間にわたる。血友病Aに冒され治療を受けていない個体の平均年齢は20歳である。血友病Aの現在の治療法は、ヒトの血漿から収集したか又は組換えDNA法で製造した外因性VIII因子濃縮物を注入する方法である。これらの治療法は、VIII因子の有効量の不足を補充することにしか効用がないので、血友病Aに冒されている個体は、その一生を通じて、VIII因子濃縮物を定期的に注射する必要がある。
【0008】
いくつもの市販されている形態のVIII因子濃縮物を利用して、血友病Aに冒されている患者の置換療法を行うことができる。例えば、血液由来のVIII因子濃縮物の製品は、Hemofil(登録商標)M(米国、イリノイ州ディアーフィールド所在のBaxter)、Koate(登録商標)-DVI(米国、ノースカロライナ州リサーチトライアングルパーク所在のBayer)、Monarc-M(商標)(米国ワシントンDC所在のAmerican Red Cross)、及びMonoclate -P(登録商標)(米国ニュージャージー州ブリッジウオーター所在のAventis)の諸ブランドで販売されている。組換え法で製造されたVIII因子濃縮物の市販製品は、Helixate(登録商標)FS(米国ニュージャージー州ブリッジウオーター所在のAventis)、Kogenate FS(登録商標)(米国、ノースカロライナ州リサーチトライアングルパーク所在のBayer)、Recombinate(登録商標) (米国、イリノイ州ディアーフィールド所在のBaxter)、Advate(登録商標)(米国、イリノイ州ディアーフィールド所在のBaxter)及びReFacto(登録商標)(米国、マサチューセッツ州ケンブリッジ所在のWyeth/Genetics Institute)の諸ブランドで提供されている。
【0009】
一般に、VIII因子濃縮物の組換え法による供給源のほうが血液由来の供給源より好ましい。というのは血液由来の供給源は、供血に関連してウイルス及び/又はその外の疾患に感染する危険があるからである。組換え法に基づいた製剤はこの欠点を避けられるが、組換えに基づいた製品のプロセシングはアルブミンなどの特定のタンパク質の存在が必要であることが多く、このようなタンパク質は、患者に投与される最終の製剤中に存在することは避けられない。このような製剤を投与される患者は、これら外来タンパク質に対してアレルギー反応を起こすことが多い。いずれにしろ、血液由来の製品と組換え法に基づいた製品の両方に、投与を繰り返すという不利な点がある。
【0010】
PEG化法すなわちポリ(エチレングリコール)誘導体をタンパク質に結合する方法は、タンパク質の生体内半減期を延長する手段としてのみならず免疫原性を低下させる手段として記述されている。しかし、VIII因子については、タンパク質-ポリマー結合体の製造に関する従来の経験によって、VIII因子にポリマーを結合することに価値があるとはほとんど予想できないことは明らかであった(米国特許第4,970,300号参照)。
【0011】
このように難しいにも関わらず、特定のポリマーとVIII因子の結合体の満足すべき組成物を製造しようとする試みが記述されている。例えば、先に引用した米国特許第4,970,300号には、分子量が約500〜5,000の範囲内にある特定のポリ(エチレングリコール)誘導体を使って行うVIII因子のPEG化について記述されている。さらに米国特許第6,048,720号には、4〜5個のモノメトキシポリ(エチレングリコール)のストランドをVIII因子に結合させると、生体外の環境で分解しないように有効に保護されると記載されている。
【0012】
しかし、このように記載されている結合体はどれも、現在のVIII因子に基づいた治療法に関連する問題点を十分に解決していることは証明されていない。例えば、比較的小さいポリマー(例えば、約5,000ダルトン以下)からなる結合体は、適切に、生体内での半減期を延長したり及び/又は免疫応答を充分に低下させることができない。さらに、多数の個々のポリマーがVIII因子に結合されてなる結合体は、それらポリマーが活性のために必要な部位をブロックするため、活性が低下するであろう。
【0013】
したがって、さらに、水溶性ポリマーとVIII因子活性を有する部分との結合体を提供することが、当該技術分野で依然として要求されている。それ故、本発明は、当該技術分野で新規でありかつ全く示唆されていないと考えられるかような結合体及びそれら結合体を含む組成物並びに本願に記載されているような関連する方法に関する。
【発明の概要】
【0014】
発明の概要
したがって、本発明の主な目的は、複数の結合体を含有する組成物であって、好ましくは限定されないが、それら結合体は各々、VIII因子部分に共有結合された1〜3個の水溶性ポリマーを有し、そして各水溶性ポリマーは、好ましくは見掛け平均分子量が5,000ダルトンより大きく約100,000ダルトンまでの範囲内にある組成物を提供することである。
【0015】
本発明の別の目的は、水溶性ポリマーが各々ポリ(アルキレンオキシド)である前記結合体を提供することである。
【0016】
本発明の追加の目的は、水溶性ポリマーが各々ポリ(エチレングリコール)である前記結合体を提供することである。
【0017】
本発明のさらなる目的は、複数のモノPEG化VIII因子部分の結合体で構成された結合体を提供することである。
【0018】
本発明のさらに別の目的は、一つ又は二つ以上の活性化された水溶性ポリマーをVIII因子部分に、複数種の結合体を生成するのに充分な条件下で接触させるステップを含んでなるポリマー結合体の製造方法であって、好ましくは限定されないが、各結合体がVIII因子部分に共有結合された1〜3個の可溶性ポリマーを有しそしてその水溶性ポリマーは好ましくは見掛け平均分子量が5,000ダルトンより大きく約150,000ダルトンまでの範囲内にある方法を提供することである。
【0019】
本発明の追加の目的は、患者に本願に記載されているような組成物を投与するステップを含んでなる、VIII因子治療法を必要とする患者の治療方法であって、その組成物が、一種以上の前記結合体の治療上有効量を含む治療方法を提供することである。
【0020】
本発明のさらに別の追加の目的は、結合条件下で、VIII因子部分をポリマー剤と接触させるステップを含んでなる、水溶性ポリマー-VIII因子部分結合体の製造方法を提供するものである。
【0021】
本発明の追加の目的、利点及び新規の特徴は、下記の説明に記載されているので、当業者はその説明を読めばある程度分かり、又は本発明を実施することによって学習することができるであろう。
【0022】
一実施態様では、複数種の結合体を含有する組成物であって、好ましくは限定されないが、各結合体がVIII因子部分に共有結合された1〜3個の可溶性ポリマーを有しそしてその水溶性ポリマーは好ましくは見掛け平均分子量が5,000ダルトンより大きく約150,000ダルトンまでの範囲内にある組成物が提供される。いずれのVIII因子も使用できるが、組成物は、VIII因子自体(例えば、米国特許第4,757,006号に記載されているようなもの)、VIIIa因子(すなわち、VIII因子を比較的少量のトロンビンと接触させると生成される活性化型のVIII因子)、VIII:vWF因子(すなわち、フォン・ビルブラント因子に結合されたVIII因子)及び/又はBドメイン欠失VIII因子のようなVIII因子の端を切り取られた変形(例えば、米国特許第4,868,112号に記載されているようなもの)を含んでいることが好ましい。
【0023】
前記ポリマー(複数)は、いずれの水溶性ポリマーでもよく、この点について、本発明は限定されない。しかし、結合体中に存在する各ポリマーは、ポリ(アルキレンオキシド)、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリオキサゾリン、ポリ(アクリロイルモルホリン)及びその組合わせからなる群から選択することが好ましい。しかしながら、ポリ(エチレングリコール)誘導体などのポリ(アルキレンオキシド)を本発明のポリマーとして使用することが特に好ましい。
【0024】
本明細書に記載されている結合体は、外因性起源のVIII因子で治療される多数の血友病患者が遭遇する問題である免疫原性を有利に低下させる。さらに、本発明の結合体は、結合体を欠いたVIII因子組成物と比べて投与頻度が少なくなる。本発明の結合体は、投与頻度が少なくなることによって、VIII因子活性を有する薬剤の濃度を維持するため血友病患者が耐えねばならない痛みを伴う注射の回数を有利に減らす。
【0025】
別の実施態様では、結合体の製造方法を提供する。その方法は、好ましくは見掛け平均分子量が5,000ダルトンより大きく約15,000ダルトンまでの範囲内である一つ又は二つ以上の活性化された水溶性ポリマー(すなわちポリマー剤)を、VIII因子部分に接触させるステップを含んでいる。水溶性ポリマーの活性化は、生成するポリマーが、pH、温度などの適正な条件下、共有結合を形成してVIII因子部分がポリマーに共有結合する限り、当該技術分野で公知の方法で達成できる。一つ又は二つ以上の活性化された水溶性ポリマーのVIII因子部分に対する接触は、その活性化された水溶性ポリマーが、VIII因子部分の所望の部位に共有結合を形成するために必要な条件下で行われる。この方法は複数種の結合体を生成し、好ましくは限定されないが、その各結合体はVIII因子部分に共有結合した1〜3個の水溶性ポリマーを含有している。場合によっては、その結合体は、2、3、4、5、6、7、8個又は9個以上のVIII因子部分に結合した単一のポリマーを含んでいてもよい。場合により、生成した組成物は、例えば望ましくない数のポリマーを有する結合体などの望ましくない種を除くためさらに処理することができる。このような望ましくない種を除くために、サイズ排除クロマトグラフィーなどの精製法を使用できる。
【0026】
本発明のさらに別の実施態様で、本発明の結合体を、医薬として許容できる賦形剤と組み合わせて含有する組成物が提供される。この組成物には、すべてのタイプの製剤が含まれ、特に、再構成することができる粉末剤及び液剤(例えば、懸濁剤と水剤)などの注射に適した製剤を含んでいる。
【0027】
本発明の追加の実施態様では、本発明の結合体を投与する方法が提供される。この投与方法は、本明細書に記載されているような治療上有効量の結合体を含有する組成物を、患者に投与するステップを含んでいる。結合体を含有する組成物を投与する方法は、一般に、注射(例えば、筋肉内注射、静脈内注射、皮下注射など)で行われる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】図1は、実施例6に記載されているように、Bドメイン欠失VIII因子をmPEG-SPA,30KでPEG化したときに形成された反応混合物に対応するSECのグラフである。
【図2】図2は、実施例6に記載されているように、タンパク質にmPEG-SPA,30Kを結合させることによって調製し精製したBドメイン欠失VIII因子-PEG結合体に対応するSECのグラフである。
【図3】図3は、実施例7に記載されているように、Bドメイン欠失VIII因子をmPEG-MAL,20KでPEG化したときに形成された反応混合物に対応するSECのグラフである。この図から分かるように、モノPEG化生成物の収率は約33%であった。
【図4】図4は、実施例7に記載されているように、タンパク質にmPEG-MAL,20Kを結合させることによって調製し精製したBドメイン欠失VIII因子-PEG結合体に対応するSECのグラフである。精製された結合体は約94%がPEGモノマーであった。
【図5】図5は、実施例8に記載されているように、Bドメイン欠失VIII因子をmPEG-SMB,30KでPEG化したときに形成された反応混合物に対応するSECのグラフである。モノPEG化タンパク質(1-mer)の収率は約41%であった。
【発明を実施するための形態】
【0029】
発明の詳細な説明
本発明を詳細に説明する前に、本発明は、特定のポリマー、合成法、VIII因子部分などに限定されることなく、変えることができると解すべきである。
【0030】
単数形の「a」、「an」及び「the」は、本明細書及び目的の特許請求の範囲で使用する場合、特に断らない限り、複数の指示対象を含んでいることに留意すべきである。したがって、例えば「a polymer」を引用しているときは単一のポリマー及び二つ以上の同じか又は異なるポリマーを含んでおり、「an optional excipient」を引用しているときは単一の任意の添加剤及び二つ以上の同じか又は異なる任意の添加剤を含んでいるなどである。
【0031】
本発明を記述し特許を請求するとき、下記用語は下記定義に従って使用する。
【0032】
本明細書で用いる「PEG」、「ポリエチレングリコール」及び「ポリ(エチレングリコール)」は、互換性がありかつ水溶性ポリ(エチレンオキシド)を含むものである。一般に、本発明で使用するPEG類は、下記構造「-(OCH2CH2)n-」(式中、(n)は2〜4000である)を含んでいる。また用語PEGは、本明細書で使用する場合、末端の酸素が置換されているか又は置換されていないかによって、「-CH2CH2-O(CH2CH2O)n-CH2CH2-」及び「-(OCH2CH2)nO-」を含んでいる。本明細書及び特許請求の範囲全体を通じて、用語「PEG」は、各種の末端基又は「末端キャッピング」基などの基を有する構造を含んでいると記憶しておくべきである。また用語「PEG」は、大部分が、50%を超える-OCH2CH2-繰返しサブユニットを含むポリマーを意味する。具体的な形状のPEGは、以下に詳細に述べるように、多くの各種分子量及び「分岐」、「線状」、「フォーク型」、「多官能型」などの構造又は形態を取ることができる。
【0033】
本明細書で用いる用語「末端をキャップされた」又は「終端をキャップされた」は、互換性があり、末端キャッピング部分を有するポリマーの終端又は末端を意味する。限定されないが、一般に末端キャッピング部分は、ヒドロキシ基又はC1-20アルコキシ基を含み、より好ましくはC1-10アルコキシ基そしてさらにより好ましくはC1-5アルコキシ基を含んでいる。したがって、末端キャッピング部分の例としては、アルコキシ(例えば、メトキシ、エトキシ及びベンジルオキシ)並びにアリール、ヘテロアリール、シクロ、ヘテロシクロなどがある。この末端キャッピング部分はポリマーの終端モノマーの1個以上の原子を含んでいる(例えば、CH3(OCH2CH2)n-中の末端キャッピング部分「メトキシ」)と記憶しておくべきである。さらに上記部分各々の飽和型、不飽和型、置換された形態及び未置換型が考えられる。さらに末端キャッピング基はシランであってもよい。また末端キャッピング基は、検出可能な標識を含んでいてもよくこれは有利である。ポリマーが検出可能な標識を含む末端キャッピング基を有しているとき、ポリマー及び/又はそのポリマーが結合している部分(例えば、活性物)の量又は位置は、適切な検出器を使って測定できる。このような標識としては、限定されないが、発蛍光体、化学発光体、酵素標識化に使用される部分、比色剤(例えば染料)、金属イオン、放射性部分などがある。適切な検出器としては、光度計、フィルム、分光計などがある。また末端キャッピング基はリン脂質を含んでいてもよくこれは有利である。ポリマーが、リン脂質を含有する末端キャッピング基を有しているとき、そのポリマー及び生成する結合体に独特の特性が付与される。代表的なリン脂質としては、限定されないが、ホスファチジルコリンと称されるリン脂質のクラスから選択されるリン脂質がある。具体的なリン脂質としては、限定されないが、ジラウロイルホスファチジルコリン、ジオレイルホスファチジルコリン、ジパルミトイルホスファチジルコリン、ジステロイルホスファチジルコリン、ベヘノイルホスファチジルコリン、アラキドイルホスファチジルコリン及びレシチンがある。
【0034】
本明細書に記載のポリマーに関する用語「天然には存在しない」は、その全体が天然には見られないポリマーを意味する。しかし、本発明の天然に存在しないポリマーは、その全ポリマー構造が天然に見られない限り、天然に存在するモノマー又はそのモノマーのセグメントを一つ以上含有していてもよい。
【0035】
用語「水溶性ポリマー」中の用語「水溶性」は、室温で水に溶解するポリマーを意味する。一般に、水溶性ポリマーは、濾過後のその溶液を通過する光の少なくとも約75%、より好ましくは少なくとも約95%を透過する。水溶性ポリマーは、重量ベースで、好ましくは少なくとも約35重量%水に溶解し、より好ましくは少なくとも約50重量%水に溶解し、さらにより好ましくは少なくとも約70重量%水に溶解しそしてさらにより好ましくは少なくとも約85重量%水に溶解する。しかし、水溶性ポリマーは、約95重量%水に溶解するか又は水に完全に溶解することが好ましい。
【0036】
PEGなどの水溶性の天然には存在しないポリマーに関連する用語「見掛け平均分子量」は、一般に、サイズ排除クロマトグラフィー、MALDI(マトリックス支援レーザー脱離イオン化法)、光散乱法又は1,2,4-トリクロロベンゼン中の固有粘度を測定する方法で測定されるポリマーの質量平均分子量を意味する。これらポリマーは、多分散性であり、その多分散性値は小さく、好ましくは約1.2未満であり、より好ましくは約1.15未満であり、さらにより好ましくは約1.10未満であり、一層さらにより好ましくは約1.05未満であり、そして最も好ましくは約1.03未満である。
【0037】
用語「活性の」又は「活性化された」は、特定の官能基に関連して使用するとき、他の分子の求電子性基又は求核性基と容易に反応する反応性官能基を意味する。このことは、反応するために、強力な触媒又は著しく非実用的な反応条件を必要とする基(すなわち「非反応性の」基又は「不活性の」基)とは対照的である。
【0038】
本明細書で用いる用語「官能基」又はその同義語は、その保護された形態及び保護されていない形態を含むものである。
【0039】
本明細書で用いる用語「結合」又は「リンカー」は、ポリマーセグメントとVIII因子部分の末端又はVIII因子部分の求電子性基もしくは求核性基などの、相互に接続する部分を連結するのに任意に使用される原子又は原子の集団を意味する。本発明のリンカーは、加水分解反応に対して安定であるか、又は生理学的に加水分解可能であるかもしくは酵素で分解可能な結合を含んでいてもよい。
【0040】
用語「アルキル」は、長さが一般に約1個〜15個の範囲の原子からなる炭化水素連鎖を意味する。このような炭化水素鎖は、好ましくは限定されないが、飽和された分岐鎖又は直鎖でもよいが、一般に直鎖が好ましい。代表的なアルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、1-メチルブチル、1-エチルプロピル、3-メチルペンチルなどがある。本明細書で用いる用語「アルキル」は、シクロアルキル及びシクロアルキレン含有アルキルを含む。
【0041】
用語「低級アルキル」は、1〜6個の炭素原子を含有するアルキル基を意味し、直鎖又は分岐鎖でもよく、代表的なものはメチル、エチル、n-ブチル、i-ブチル、及びt-ブチルである。
【0042】
用語「シクロアルキル」は、飽和又は不飽和の環式炭化水素鎖を意味し、好ましくは3〜約12個の炭素原子で形成され、より好ましくは3〜約8個の炭素原子で形成された架橋、縮合又はスピロ環式の化合物が含まれている。用語「シクロアルキレン」は、環式環系中の任意の二つの炭素に鎖を結合することによってアルキル鎖中に挿入されたシクロアルキル基を意味する。
【0043】
用語「アルコキシ」は、-O-R基(式中、Rはアルキル又は置換されたアルキルであり、好ましくはC1-6アルキルである)(例えば、メトキシ、エトキシ、プロピルオキシなど)を意味する。
【0044】
用語例えば「置換されたアルキル」中の用語「置換された」は、1個以上の非妨害性置換基(noninterfering substituent)例えば限定されないがアルキル;C3-8シクロアルキル例えばシクロプロピル、シクロブチルなど;ハロ例えばフルオロ、クロロ、ブロモ及びヨード;シアノ;アルコキシ;低級フェニル;置換フェニルなどで置換された部分(例えばアルキル基)を意味する。用語「置換アリール」は、置換基として1個以上の非妨害性基を有するアリールを意味する。フェニル環を置換する場合、その置換基はいずれの位置(すなわち、オルト、メタ又はパラ)に位置していてもよい。
【0045】
用語「非妨害性置換基」は、分子内に存在しているとき、その分子内に含まれている他の官能基に対し一般に非反応性の基である。
【0046】
用語「アリール」は、各々5個又は6個のコア炭素原子を有する1個以上の芳香族環を意味する。アリールには、ナフチルのように縮合されていてもよく又はビフェニルのように縮合されていなくてもよい複数のアリール環が含まれている。またアリール環は、1個以上の環式炭化水素、ヘテロアリール又はへテロ環式環と縮合されてもよく又は縮合されていなくてもよい。本明細書で用いる用語「アリール」は、ヘテロアリールが含まれている。
【0047】
用語「ヘテロアリール」は、1〜4個のヘテロ原子好ましくは硫黄、酸素又は窒素又はその組合わせを含むアリール基を意味する。またヘテロアリール環は、1個以上の環式炭化水素、複素環式、アリール又はヘテロアリールの環と縮合してもよい。
【0048】
用語「複素環」又は「複素環式の」は、5〜12個の原子好ましくは5〜7個の原子を有し、不飽和又は芳香族の特性あり又はなしでかつ炭素でない少なくとも一つの環原子を有する1個以上の環を意味する。好ましいヘテロ原子としては硫黄、酸素及び窒素がある。
【0049】
用語「置換ヘテロアリール」は、置換基として1個以上の非妨害性基を有するヘテロアリールを意味する。
【0050】
用語「置換複素環」は、非妨害性置換基で形成された一つ以上の側鎖を有する複素環を意味する。
【0051】
用語「求電子性物質」及び「求電子性基」は、イオン性であってもよくそして求電子性中心すなわち電子を求める中心を有し求核性物質と反応できるイオン又は原子又は原子の集合体を意味する。
【0052】
用語「求核性物質」及び「求核性基」は、イオン性であってもよくそして求核性中心すなわち求電子性中心を求める中心を有し求電子性物質と反応できるイオン又は原子又は原子の集合体を意味する。
【0053】
用語「生理学的に開裂可能の」又は「加水分解可能の」又は「分解可能の」結合は、生理学的条件下で水と反応する(すなわち加水分解される)結合を意味する。好ましい結合は、pH 8で25℃における加水分解の半減期が約30分間未満の結合である。結合が水中で加水分解する傾向は、二つの中心原子を連結する結合の一般的タイプのみならずこれら中心原子に結合している置換基によって決まる。加水分解に対し不安定か又は弱い適当な結合としては、限定されないが、カルボン酸エステル、リン酸エステル、酸無水物類、アセタール類、ケタール類、アシルオキシアルキルエーテル、イミン類、オルトエステル類、ペプチド類及びオリゴヌクレオチド類がある。
【0054】
用語「酵素によって分解可能な結合」は、一種以上の酵素で分解される結合を意味する。
【0055】
用語「加水分解に対し安定な」結合は、水中で実質的に安定でありすなわち生理学的条件下長期間にわたって感知される程度には加水分解されない化学結合、一般に共有結合を意味する。加水分解に対して安定な結合の例としては、限定されないが、以下の炭素-炭素結合(例えば、脂肪族鎖における)、エーテル、アミド、ウレタンなどがある。一般に、加水分解に対して安定な結合は、生理学的条件下、1日当たり約1〜2%未満の加水分解速度を示す結合である。代表的な化学結合の加水分解速度は、大部分の標準的化学教科書に見られる。
【0056】
用語「医薬として許容できる賦形剤又は担体」は、本発明の組成物中に任意に入れてもよくかつ患者に有意に有害な中毒作用を起こさない賦形剤を意味する。用語「薬理学的に有効な量」、「生理学的に有効な量」及び「治療上有効な量」は、本明細書で相互に交換して使用することができ、血中又は標的組織中における所望の濃度の前記結合体(又は対応する結合されていないVIII因子部分)を提供するため必要であるポリマー-VIII因子部分の結合体の量を意味する。正確な量は、多数の要因、例えば、特定のVIII因子部分、治療用組成物の成分と物理的特性、目的の患者の集団、個々の患者の問題点などによって決まり、当業者は本明細書で提供される情報に基づいて容易に決定できる。
【0057】
用語「多官能性の」は、中に3個以上の官能基を有するポリマーを意味し、その官能基は同じでも異なっていてもよい。本発明の多官能性ポリマー剤は一般に、ポリマーの骨格中に、約3〜100個の官能基又は約3〜50個の官能基又は約3〜25個の官能基又は約3〜15個の官能基又は約3〜10個の官能基又は3、4、5、6、7、8、9もしくは10個の官能基を有している。
【0058】
本明細書で用いる用語「VIII因子部分」は、VIII因子の活性を有する部分を意味する。またそのVIII因子部分は、ポリマー剤と反応するのに適した求電子性基又は求核性基を少なくとも一つ有している。一般にVIII因子部分は、限定されないが、タンパク質である。さらに、用語「VIII因子部分」には、結合する前のVIII因子部分及び結合後のVIII因子部分の残基の両方が含まれている。以下にさらに詳細に説明するが、当業者は、与えられた部分がVIII因子の活性を有しているかどうかを決定できる。
【0059】
用語「患者」は、活性薬剤(例えば、前記結合体)を投与することによって予防又は治療できる症状になっているか又はその症状になりやすい生きている生物を意味し、ヒトと動物の両者が含まれる。
【0060】
用語「任意の」又は「任意に」は、続けて述べる状況が起こるか又は起こらないかもしれないことを意味し、したがってその記述は、その状況が起こるときの例と起こらないときの例を含んでいる。
【0061】
ペプチド中のアミノ酸残基は下記のように略される。フェニルアラニンはPhe又はF;ロイシンはLeu又はL;イソロイシンはIle又はI;メチオニンはMet又はM;バリンはVal又はV;セリンはSer又はS;プロリンはPro又はP;トレオニンはThr又はT;アラニンはAla又はA;チロシンはTyr又はY;ヒスチジンはHis又はH;グルタミンはGln又はQ;アスパラギンはAsn又はN;リシンはLys又はK;アスパラギン酸はAsp又はD;グルタミン酸はGlu又はE;システインはCys又はC;トリプトファンはTrp又はW;アルギニンはArg又はR;及びグリシンはGly又はGである。
【0062】
本発明の第一の実施態様によって、複数種の結合体を含有する組成物であって、その結合体は各々、好ましくは限定されないが、VIII因子部分に共有結合された1〜3個の水溶性ポリマーを有し、そしてその水溶性ポリマーは各々見掛け平均分子量が好ましくは5,000ダルトンより大きく約150,000ダルトンまでの範囲内である組成物が提供される。
【0063】
天然のVIII因子は、A1-A2-B-A3-C1-C2として構成された構造を有する2,351個のアミノ酸の一本鎖糖タンパク質である。その発現された2,351個のアミノ酸の配列は配列番号1として提供してある。しかしその発現されたポリペプチドが小胞体の内腔にトランスロケートされると、19個のアミノ酸のシグナル配列が開裂されて、第二配列が生成する。この第二配列は、本明細書では配列番号2として提供してあるが前記の先行19個のアミノ酸が欠けており、研究者がVIII因子の与えられた残基に番号位置(例えば、Arg372)を割り当てるために通常使用する。したがって、特に断らない限り、本明細書で提供されるアミノ酸残基の番号位置の割当てはすべて配列番号2に基づいている。
【0064】
VIII因子は、比較的少量のトロンビンの存在下、Arg372、Arg740及びArg1689においてトロンビンによって開裂されてVIIIa因子を生成する。VIIIa因子は、トロンビンで開裂されて生成した軽鎖A3-C1-C2に(銅イオンを介して)結合されたA1サブユニット及びイオン性相互作用を介してA1に結合された遊離のA2サブユニットからなるヘテロトリマーである。VIII因子部分が単にVIII因子の「活性型」(例えばVIIIa因子)に限定されず、そして用語「VIII因子部分」が、「前駆体」型及び同様のプロコアグラント作用を有する他の物質を含むことは分かるであろう。
【0065】
与えられた部分について、その部分がVIII因子の活性を有するかどうかは確認できる。例えば、血友病になる遺伝的突然変異を有する幾種類かの動物系が意図的に飼育されており、その動物系から産生される動物は、VIII因子のレベルが非常に低くかつ不十分である。このような動物系は、限定されないが、米国ニューヨーク州オールバニー所在のDivision of Laboratories and Research, New York Department of Public Health及び米国ノースカロライナ州チャペルヒル所在のthe Department of Pathology, University of North Carolinaなどの各種供給元から入手できる。これらの両供給元は、例えばイヌ血友病Aに冒されたイヌを提供する。問題の与えられた部分のVIII因子活性を試験するため、その部分を疾患動物に注射し、小さな切り傷を作って、出血時間を健康な対照動物と比較する。VIII因子活性を測定するのに有用な他の方法は、補因子及びプロコアグラントの活性を測定する方法である(例えば、Mertensら (1993) Brit. J. Haematol. 85: 133-42参照)。当業者に知られている他の方法も、与えられた部分がVIII因子活性を有しているかどうかを測定するために利用できる。かような方法は、その部分自体(したがってVIII因子部分として使用できる)及び対応するポリマー-部分結合体の両者のVIII因子活性を測定するのに有用である。
【0066】
VIII因子部分の限定されない例としては下記のものがある。VIII因子;VIIIa因子;VIII:C因子;VIII:vWF因子;B-ドメイン欠失VIII因子(及びVIII因子の端を切り取られた他の変形);例えば米国特許第6,158,888号に記載されているようなハイブリッドタンパク質;例えば米国特許出願公開第US2003/0077752号に記載されているような、VIII因子活性を有するグリコシル化タンパク質;及びVIII因子活性を有するペプチド類自体である。好ましい端を切り取られたVIII因子の変形(用語「B-ドメイン欠失VIII因子」に含まれる)は、Arg759とSer1709の間の領域内に少なくとも581個のアミノ酸に相当する欠失を有し、より好ましくはその欠失がPro1000とAsp1582の間の領域、Thr778とPro1659の間の領域及びThr778とGlu1694の間の領域の内の一つの領域内に存在しているヒトVIII因子のアミノ酸配列(配列番号1)を有するタンパク質に相当している。VIII因子活性を少なくともいくらか維持している前記変形の生物学的に活性のフラグメント、欠失変異体、置換変異体、又は付加変異体もVIII因子部分として働くことができる。
【0067】
VIII因子活性を有する部分は、ポリマーをアミノ酸の側鎖中の原子に容易に結合させるために、例えばリシン、システイン及び/又はアルギニンのようなアミノ酸残基を一つ以上含むように有利に修飾できる。アミノ酸残基を付加する方法は、当業者にとって周知の方法である(J. March, Advanced Organic Chemistry: Reactions Mechanisms and Structure, 第4版(New York: Wiley-Interscience, 1992参照)。
【0068】
VIII因子部分は血液由来起源から得ることができる。例えば、VIII因子は、当業者に知られている沈澱法及び遠心分離法を使って、ヒトの血漿から分画できる(例えば、Wickerhauser (1976) Transfusion 16(4): 345-350及びSlichterら (1976) Transfusion 16(6): 616−626参照)。VIII因子はヒトの顆粒球からも単離できる(Szmitkoskiら (1977) Haematologia (Budap.) 11(1-2): 177-187参照)。
【0069】
さらに、VIII因子部分は組換え法でも得ることができる。簡単に述べると、組換え法は、所望のポリペプチド又はフラグメントをコードする核酸を構築し、その核酸を発現ベクターにクローニングし、宿主細胞(例えば、細菌、酵母又は哺乳類の細胞例えばチャイニーズハムスター卵巣細胞もしくはベビーハムスター腎臓細胞)を形質転換し、次いで核酸に所望のポリペプチド又はフラグメントを発現させて産生することからなっている。生体外で及び宿主の原核細胞と真核細胞中に組換えポリペプチドを産生し発現させる方法は、当業者に知られている(例えば、米国特許第4,868,122号参照)。
【0070】
組換えポリペプチドの同定と精製を促進するために、エピトープタグ又は他のアフィニティー結合配列をコードする核酸配列を、コーディング配列を有する読み枠中に挿入又は付加して、所望のポリペプチド及び結合に適切なポリペプチドからなる融合タンパク質を産生してもよい。融合タンパク質は、まず、融合タンパク質を含有する混合物を、融合タンパク質中のエピトープタグ又は結合配列に結合する部分(例えば抗体)を有するアフィニティーカラムを通過させて、融合タンパク質をカラム内に捕捉することによって、同定し精製することができる。その後、その融合タンパク質は、そのカラムを適当な溶液(例えば酸)で洗浄して前記捕捉された融合タンパク質を放出させて回収できる。組換えポリペプチドも、宿主細胞を溶解してポリペプチドを例えばサイズ排除クロマトグラフィーで分離し次いでそのポリペプチドを集めることによって同定し精製できる。組換えポリペプチドを同定し精製するこれらの方法と他の方法は、当業者には知られている。
【0071】
本発明の組成物は、複数種の結合体を含み、その各結合体が同じVIII因子部分で構成されていてもよい(すなわち組成物全体内に一種類のVIII因子部分しか見られない)。さらに、本発明の組成物は、複数種の結合体を含み、任意の所与の結合体が二種類以上の異なるVIII因子部分からなる群から選択される部分を含んでいてもよい(すなわち組成物全体内に二種類以上のVIII因子部分が見られる)。しかし、組成物中の複数種の結合体の実質的にすべて(例えば、組成物中の複数種の結合体の85%以上)が各々、同じVIII因子部分で構成されていることが最適である。
【0072】
さらに、本発明の結合体を含有する組成物は、アルブミンを含有していないか又は実質的に含有していないことが好ましい。また本発明の組成物は、VIII因子活性を有していないタンパク質を含有していないか又は実質的に含有していないことが好ましい。したがって、本発明の組成物は、85%、好ましくは95%、最も好ましくは99%がアルブミンを含有していないことが好ましい。さらに、本発明の組成物は、85%、好ましくは95%、最も好ましくは99%がVIII因子活性を持たないタンパク質を含有していないことが好ましい。
【0073】
先に考察したように、各結合体は水溶性ポリマーに結合したVIII因子部分を含んでいる。その水溶性ポリマーについて述べれば、この水溶性ポリマーは、非ペプチド性、非毒性で天然に存在せずそして生体適合性である。その生体適合性について述べれば、ある物質を単独で又は他の物質(例えば、VIII因子部分などの活性薬剤)とともに生組織に対して使用したとき(例えば患者に投与したとき)に伴う有利な作用が、臨床医例えば内科医が評価したとき、有害な作用より強ければ、その物質は生態適合性であるとみなされる。非免疫原性について述べれば、ある物質を生体内で意図的に使用して望ましくない免疫応答(例えば、抗体の生成)を起こさないか又は免疫応答が起こっても、その応答が、臨床医が評価したとき臨床的に有意又は重大であるとみなされなかったならば、その物質は非免疫原性であるとみなされる。前記水溶性ポリマーは生体適合性でかつ非免疫原性であることが特に好ましい。
【0074】
さらに、前記ポリマーは一般に、2〜約300個の末端を有していることを特徴としている。このようなポリマーの例としては、限定されないが、ポリ(アルキレングリコール)類、例えばポリエチレングリコール(PEG)、ポリ(プロピレングリコール)(「PPG」)、エチレングリコールとプロピレングリコールなどのコポリマー、ポリ(オキシエチル化ポリオール)、ポリ(オレフィンアルコール)、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリ(ヒドロキシアルキルメタクリルアミド)、ポリ(ヒドロキシアルキルメタクリレート)、多糖類、ポリ(α-ヒドロキシ酸)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリホスファゼン、ポリオキサゾリン、ポリ(N-アクリロイルモルホリン)及びこれらポリマーのいずれかの組合わせがある。
【0075】
このポリマーは、特定の構造に限定されず、線状(例えばアルコキシPEG又は二官能性PEG)、分岐鎖状もしくはマルチアーム状(mult-armed)(例えばフォーク型PEG又はポリオールのコアに結合したPEG)、樹枝状又は分解性結合を有するものがある。さらに、このポリマーの内部構造はいくつもの異なるパターンで構成されていてもよく、ホモポリマー、交互コポリマー、ランダムコポリマー、ブロックコポリマー、交互トリポリマー、ランダムトリポリマー及びブロックトリポリマーからなる群から選択できる。
【0076】
一般に、PEGなどの水溶性ポリマーは、VIII因子部分の所望の部位に結合するのに適当な適切に活性化する基で活性化される。活性化されるポリマー剤は、VIII因子部分と反応する反応性基を有している。代表的なポリマー剤及びこれらポリマーを活性部分に結合する方法は当該技術分野では公知であり、さらに、Zalipsky, S.ら, ”Use of Functionalized Poly(Ethylene Glycols) for Modifi-cation of Polypeptides” in Polyethylene Glycol Chemistry: Biotechnical and Biomedical Applicationss, J. M. Harris, Plenus Press, NewYork (1992)及びZalipsky (1995) Advanced Drug Reviews 16: 157-182に記載されている。
【0077】
一般に、本発明の結合体中の与えられたポリマーの見掛け平均分子量は約100ダルトンから約150,000ダルトンまでである。しかしながら、見掛け平均分子量の代表的な範囲としては、5,000ダルトンより大きく約100,000ダルトンまでの範囲、約6,000ダルトンから約90,000ダルトンまでの範囲、約10,000ダルトンから約85,000ダルトンまでの範囲、約20,000ダルトンから約85,000ダルトンまでの範囲及び約53,000ダルトンから約85,000ダルトンまでの範囲がある。与えられた水溶性ポリマーとしては、これらの範囲の分子量を有するPEGが好ましい。
【0078】
前記水溶性ポリマーのセグメントの代表的な見掛け平均分子量としては、約100ダルトン、約200ダルトン、約300ダルトン、約400ダルトン、約500ダルトン、約600ダルトン、約700ダルトン、約750ダルトン、約800ダルトン、約900ダルトン、約1,000ダルトン、約2,000ダルトン、約2,200ダルトン、約2,500ダルトン、約3,000ダルトン、約4,000ダルトン、約4,400ダルトン、約5,000ダルトン、約6,000ダルトン、約7,000ダルトン、約7,500ダルトン、約8,000ダルトン、約9,000ダルトン、約10,000ダルトン、約11,000ダルトン、約12,000ダルトン、約13,000ダルトン、約14,000ダルトン、約15,000ダルトン、約20,000ダルトン、約22,500ダルトン、約25,000ダルトン、約30,000ダルトン、約40,000ダルトン、約50,000ダルトン、約60,000ダルトン及び約75,000ダルトンがある。
【0079】
PEG類は、前記ポリマーとして使用される場合、一般に多数の(OCH2CH2)モノマーを含有している。繰返し単位の数は、本明細書の説明の全体にわたって使用される場合、式「(OCH2CH2)n」中の下付添字「n」で表される。したがって、(n)の値は一般に、以下の範囲:2から約2,300まで、約100から約2,300まで、約135から約2,000まで、約230から約1,900まで、約450から約1,900まで及び約12,00から約1,900までの一つ以上の範囲内に入る。与えられたポリマーの分子量が分かっている場合、そのポリマーの全分子量を繰返し単位の分子量で割ることによって繰返し単位の数(すなわち「n」)を決定できる。
【0080】
本発明に使用するのに特に好ましい一つのポリマーは、末端をキャップされたポリマー、すなわち少なくとも一方の末端を、比較的不活性の基例えば低級C1-6アルコキシ基でキャップされたポリマーである。ポリマーがPEGの場合、例えば、メトキシPEG(通常mPEGと称される)すなわちポリマーの一方の末端はメトキシ基(-OCH3)であるがもう一方の末端は任意に化学的に修飾できるヒドロキシル基などの官能基である線状のPEGを使うことが好ましい。
【0081】
本発明で有用な一形態の遊離の又は未結合のPEGは、各末端がヒドロキシル基で終わる下記式:
HO-CH2CH2O-(CH2CH2O)m’-CH2CH2-OH
(式中、(m’)は一般にゼロから約4,000までの範囲内にある)
で表される線状ポリマーである。
【0082】
上記ポリマー:α-、ω-ジヒドロキシルポリ(エチレングリコール)は、短縮形のHO-PEG-OH[式中、PEGの記号は以下の構造単位:
-CH2CH2O- (CH2CH2O)m’ -CH2CH2-
(式中、(m’)は前記定義と同じである)
を表すことができるものとする]で表すことができる。
【0083】
本発明に有用な別のタイプのPEGは、メトキシ-PEG-OHすなわち短縮形で示すとmPEGであり、このタイプのPEGは一方の末端は比較的不活性のメトキシ基であるが、もう一方の末端はヒドロキシル基である。mPEGの構造を以下に示す。
CH3O-CH2CH2O-(CH2CH2O)m’-CH2CH2-OH
上記式中(m’)は前記定義と同じである。
【0084】
米国特許第5,932,462号に記載されているようなマルチアームのPEG又は分岐PEGの分子も、PEGポリマーとして使用できる。例えば、PEGは、下記式:
【0085】
【化2】

【0086】
[式中、ポリaとポリbはメトキシポリ(エチレングリコール)などのPEG骨格(同じ又は異なっている)であり、
R”はH、メチル又はPEG骨格などの非反応性部分であり、そして
PとQは非反応性の結合である]
で表される構造を有している。好ましい実施態様の分岐PEGポリマーはメトキシポリ(エチレングリコール)二置換リシン(lysine)である。使用される特定のVIII因子部分によって、前記二置換リシンの反応性エステル官能基は、さらに修飾して、VIII因子部分内の標的基と反応するのに適した官能基をつくることができる。
【0087】
これらポリマーは線状でもよく又は上記のいずれの形態でもよい。
【0088】
さらに、PEGはフォーク型PEGを含んでいてもよく、フォーク型PEGの例は下記式:
【0089】
【化3】

【0090】
(式中、Xは1個以上の原子からなるスペーサー部分であり、そして各Zは規定の長さの原子連鎖でCHに連結された活性化末端基である)
で表される構造を有している。国際特許願第PCT/US99/05333号には、本発明で使用できる各種のフォーク型PEG構造体が開示されている。前記Z官能基を前記分岐炭素原子に連結する原子鎖はつなぎとめる基として働き、例えば、アルキル鎖、エーテル鎖、エステル鎖、アミド鎖及びそれらの組合わせを含んでいてもよい。
【0091】
前記PEGポリマーは、PEG連鎖の末端よりむしろPEGの長さの部分に沿って共有結合されたカルボキシル基などの反応性基を有するペンダントPEG分子を含んでいてもよい。その反応性ペンダント基は、PEGに、直接連結されてもよく又はアルキレン基などのスペーサー基を介して連結されてもよい。
【0092】
上記形態のPEGに加えて、上記どのポリマーも含めて、ポリマー中に一つ以上の弱いか又は分解可能の結合を有するポリマーも製造できる。例えば、加水分解されやすいエステル結合をポリマー中に有するPEGを製造できる。以下に示すように、好ましくはこの加水分解反応によって、ポリマーが低分子量のフラグメントに開裂される。
【0093】
【化4】

【0094】
ポリマー骨格中の分解可能な結合として有用なその外の加水分解で分解可能な結合としては、炭酸結合;例えばアミンとアルデヒドの反応から生成するイミン結合(例えば、Ouchiら (1997) Polymer Preprints 38(1): 582-3参照);例えば、アルコールとリン酸基を反応させることによって形成されるリン酸エステル結合;一般にヒドラジドとアルデヒドの反応で形成されるヒドラゾン結合;一般にアルデヒドとアルコールの反応で形成されるアセタール結合;例えば、ギ酸塩とアルコールの反応で形成されるオルトエステル結合;例えば、PEGなどのポリマーの末端におけるアミン基と別のPEG連鎖のカルボキシル基とで形成されるアミド結合;例えば、末端にイソシアネート基を有するPEGとPEGアルコールとの反応で形成されるウレタン結合;例えばPEGなどのポリマーの末端におけるアミン基とペプチドのカルボキシル基とで形成されるペプチド結合;及び例えばポリマーの末端におけるホスホロアミダイト基とオリゴヌクレオチドの5’ヒドロキシル基とで形成されるオリゴヌクレオチド結合がある。
【0095】
ポリマー結合体のこのような任意の特徴、すなわちポリマー鎖に一つ以上の分解可能な結合が導入されている特徴によって、投与したときの該結合体の望ましい最終的薬理特性をさらに制御できる。例えば、大きくかつ比較的不活性の結合体(すなわち高分子量のPEG鎖、例えば分子量が約10,000より大きいPEG鎖が一つ以上連結されていて、ほとんど生理活性を持っていない結合体)を投与してもよく、その結合体は加水分解されて元のPEG鎖の一部を有する生理活性結合体を生成する。このように、結合体の特性は、時間の経過とともに結合体の生理活性を釣り合わせるように、より有効に要求どおりにつくることができる。
【0096】
当業者であれば、実質的に水溶性のポリマーセグメントに関する前記考察は決して網羅的なものではなく例示に過ぎず、そして上記性能を有するポリマー材料はすべて目的とする材料であることが分かるであろう。本明細書で用いる用語「ポリマー剤」は、一般に、水溶性ポリマーセグメントと官能基を含む分子全体を意味する。
【0097】
上記のように、本発明の結合体は、VIII因子部分に共有結合した水溶性ポリマーを含有している。所定の結合体には、VIII因子活性を有する一つ以上の部分に共有結合した1〜3個の水溶性ポリマーが存在している。しかし、場合によって、その結合体は、VIII因子部分に個々に結合された1、2、3、4、5、6、7、8又は9個以上の水溶性ポリマーを有している。
【0098】
VIII因子活性を有する部分のなかの特定の結合及びポリマーは、多数の要因によって決まる。このような要因としては、例えば、利用される特定の結合の化学的性質、VIII因子活性を有する特定の部分、VIII因子活性を有する部分中の利用可能な官能基(ポリマーに結合するか又は適切な結合部位に変換する官能基)、VIII因子活性を有する部分中に存在することがある追加の反応性官能基などがある。
【0099】
本発明の結合体は、これには限らないが、プロドラッグであってもよく、これは、ポリマーとVIII因子部分の間の結合が加水分解可能で親の部分を放出できることを意味する。代表的な分解可能な結合としては、カルボン酸エスエル、リン酸エステル、チオールエステル、酸無水物類、アセタール類、ケタール類、アシルオキシアルキルエーテル、イミン類、オルトエステル類、ペプチド類及びオリゴヌクレオチド類がある。このような結合は、VIII因子部分(例えばタンパク質のC末端のカルボキシル基又はタンパク質中に含まれているセリンもしくはトレオニンなどのアミノ酸の側鎖のヒドロキシル基)及び/又はポリマー剤を、当該技術分野で通常利用されている結合方法を使って適正に修飾することによって容易に作製できる。しかし、最も好ましいのは、適切に活性化されたポリマーとVIII因子活性を有する部分に含まれている未修飾の官能基との反応によって容易に形成される加水分解可能な結合である。
【0100】
あるいは、加水分解に対して安定な結合、例えばアミド、ウレタン(カルバメートとしても知られている)、アミン、チオエーテル(スルフィドとしても知られている)又は尿素(カルバミドとしても知られている)の結合も、VIII因子部分を結合するための結合として利用できる。しかし、場合によっては、その結合は、カルバメート結合やカルバミド結合でない方が好ましく、さらにその結合は、イソシアネートもしくはイソチオシアネートの種を有するポリマー誘導体とVIII因子部分との反応に基づいて形成されない方が好ましい。一方、好ましい加水分解に対して安定な結合はアミド結合である。アミド結合は、VIII因子部分内に含まれているカルボキシル基(例えばVIII因子活性を有するペプチド部分の末端カルボキシル基)と末端がアミノ基のポリマーとの反応で容易に作製できる。
【0101】
結合体は、(結合していないVIII因子部分とは対照的に)測定可能な程度のVIII因子活性を持っていることがあり又はもっていないこともある。すなわち、本発明のポリマー結合体は、未修飾の親VIII因子部分の生物活性の約0.1%〜約100%又はそれを超える生物活性を有している。好ましくは、VIII因子活性をほとんどもっていないか又は全くもっていない化合物が、ポリマーにVIII因子部分を接続する加水分解可能な結合を有し、その結果、結合体には活性が欠けていても、その加水分解可能な結合が水によって開裂されて活性の親分子(又はその誘導体)が放出される。かような活性は、適切な生体内又は生体外のモデルを使って、利用されるVIII因子活性を有する特定部分の公知の活性によって測定できる。
【0102】
VIII因子活性を有する部分をポリマーに結合する加水分解に対して安定な結合を有する結合体は、一般に測定可能な程度の特異的活性を有している。例えば、かようなポリマー結合体は、当該技術分野で周知のような適切なモデルで測定した場合、VIII因子活性を有する未修飾の親部分の活性の少なくとも約2%、5%、10%、15%、25%、30%、40%、50%、60%、80%、85%、90%、95%、97%、100%又はそれを超える活性を有することが特徴である。加水分解に対して安定な結合(例えばアミド結合)を有する化合物は、好ましくは、VIII因子活性を有する未修飾親部分の生物活性を少なくともある程度有している。
【0103】
VIII因子活性を有する部分がタンパク質である本発明の代表的なポリマー結合体についてここで説明する。一般に、かようなタンパク質は、天然のVIII因子と類似のアミノ酸配列を(少なくとも部分的に)共有していると考えられる。したがって、当業者は、天然のVIII因子タンパク質内の特定の位置又は原子を参照するが、この参照は便宜上行うだけあり、VIII因子活性を有する他の部分の対応する位置又は原子を容易に決定できる。特に、天然のVIII因子について本願に記載されている説明は、VIIIa因子、VIII:vWF因子及びBドメイン欠失VIII因子の変異体、並びにこれらのフラグメント、欠失変異体、置換変異体又は付加変異体に適用できる。
【0104】
VIII因子部分のアミノ基は、そのVIII因子部分と水溶性ポリマーとの間の結合点を提供する。天然のVIII因子は、アミン含有リシン残基158個(全タンパク質の6.8重量%)と一つのアミノ末端を有している。VIIIa因子には、78個のリシン残基(全タンパク質の5.5重量%)と二つのアミノ末端(VIII因子の開裂によって生ずる)が存在している。したがって、二次及び三次の構造が考えられるが、VIII因子とVIIIa因子の両者(及び任意のペプチドのVIII因子部分、例えばBドメイン欠失VIII因子)は、結合反応に関連して利用できるいくつものアミンをもっている。
【0105】
VIII因子部分の利用可能なアミンと共有結合を形成するのに有用な適切な水溶性ポリマー剤には多数の例がある。その具体例を対応する結合体とともに下記表1に示す。表1において、変数(n)はモノマー繰返し単位の数を示し、そして「-NH-F8」は水溶性ポリマーに結合した後のVIII因子部分を示す。表1に示す各ポリマー部分は「CH3」基で終わっているが、代わりに別の基(例えば、H及びベンジル)で終わっていてもよい。
【0106】
【表1】

【0107】
【表2】

【0108】
【表3】

【0109】
【表4】

【0110】
当業者は、過度の実験をせずに、ポリマー剤をVIII因子部分のアミノ基に結合させることができる。典型的な一方法は、例えば、還元的アミノ化反応を使って、VIII因子部分の第一級アミンと、ケトン、アルデヒド又はそれらの水和型(例えば、ケトン水和物、アルデヒド水和物)で官能基化されたポリマーとを結合させる方法である。この方法では、VIII因子部分の第一級アミンが、アルデヒドもしくはケトンのカルボニル基(又は水和されたアルデヒドもしくはケトンの対応するヒドロキシ含有基)と反応して、シッフ塩基を形成する。このシッフ塩基は、次に、水素化ホウ素ナトリウムなどの還元剤を使って還元して、安定な結合体に変換できる。選択反応(例えば、N末端で起こりうる)が、特に、ケトン又はαメチル分岐アルデヒドで官能基化されたポリマーで及び/又は特定の反応条件(例えば低いpH)下で可能である。
【0111】
ポリマーに結合する部位として働くことができるVIII因子の好ましいアミン基としては、以下のリシン残基:Lys493、Lys496、Lys499、Lys1804、Lys1808、Lys1813、Lys1818、Lys2183、Lys2207、Lys2227及びLys2236の中に見られるアミン基がありそしてこれらの中のLys496、Lys1804及びLys1808の中に見られるアミン基が特に好ましい。上記番号は、配列番号2中の配列に付けた番号と同じである。上記のように、ヒトVIII因子以外のタンパク質中のこれらの各リシン残基に対応するアミン基が、結合のために有用な部位として働くことができる。さらに、タンパク質であるいずれのVIII因子部分のN末端も、ポリマーが結合する部位として有用である。
【0112】
カルボキシル基は、VIII因子部分の結合点として働きうるもう一つの官能基を示す。結合体の構造は、下記式:
【0113】
【化5】

【0114】
(式中、F8及び隣接するカルボニル基はカルボキシル含有VIII因子部分を示し、Xは結合を示し好ましくはO、N(H)及びSから選択されたヘテロ原子であり、そしてポリは任意に末端キャッピング部分で終わる水溶性ポリマー例えばPEGである)
で表される構造を有する。
【0115】
C(O)-X結合は、末端官能基を有するポリマー誘導体とカルボキシル含有VIII因子部分との反応で生成する。先に考察したように、この特定の結合は利用される官能基のタイプによって決まる。ポリマーが、末端を官能基化されるか又はヒドロキシル基で「活性化」されると、生成する結合はカルボン酸エステルになりそしてXはOになる。ポリマーの骨格がチオール基で官能基化されると、生成する結合はチオエステルになりそしてXはSになる。特定の多アームポリマー、分岐ポリマー又はフォークポリマーが使用されると、そのC(O)X部分、特にそのX部分は、比較的一層複雑になりより長い結合構造を有する。
【0116】
ヒドラジド部分を含有する水溶性誘導体も、カルボキシル基において結合させるのに有用である。このような誘導体の例としては、下記構造:
【0117】
【化6】

【0118】
を有するポリマーがあり、そのポリマーはVIII因子部分と結合すると、下記構造:
【0119】
【化7】

【0120】
(式中、F8は結合した後のVIII因子部分であり、そしてポリは任意に末端キャッピング部分で終わるPEGなどの水溶性ポリマーである)
になる。
【0121】
VIII因子部分に含有されているチオール基は、水溶性ポリマーと結合する有効な部位として働く。特に、システイン残基は、VIII因子部分がタンパク質であるときチオール基を提供する。かようなシステイン残基のチオール基は、チオール基と反応する特異的な活性化PEG、例えば米国特許第5,739,208号及び国際特許願公開第WO01/62827号に記載されているN-マレイミジルポリマー又は他の誘導体と反応できる。
【0122】
対応する結合体とともに具体例を下記表2に提供する。表2において、変数(n)はモノマーの繰返し単位の数を示し、「-S-F8」は水溶性ポリマーに結合した後のVIII因子部分を示す。表2に示す各ポリマー部分は「CH3」基で終わっているが、代わりに別の基(例えば、H及びベンジル)で終わってもよい。
【0123】
【表5】

【0124】
【表6】

【0125】
結合体は、1個以上のマレイミド官能基を有する水溶性ポリマーから形成されるが(そのマレイミドがVIII因子部分のアミン基又はチオール基と反応するかどうかに関わらず)、対応するマレアミド酸型の水溶性ポリマーもVIII因子部分と反応できる。特定の条件下(例えば、水の存在下、pHが約7〜9の条件下)、前記マレイミドリングが「開環」して対応するマレアミド酸を形成できる。次にそのマレアミド酸はVIII因子部分のアミン基又はチオール基と反応できる。マレアミド酸に基づいた代表的な反応を以下に図式的に示す。この図式中のPOLYは水溶性ポリマーを示し、F8はVIII因子部分を示す。
【0126】
【化8】

【0127】
本発明の代表的な結合体は、下記構造式:
ポリ-L0,1-C(O)Z-Y-S-S-F8
(式中、ポリは水溶性ポリマーであり、Lは任意のリンカーであり、ZはO、NH及びSからなる群から選択されるヘテロ原子であり、そしてYはC2-10アルキル、C2-10置換アルキル、アリール及び置換アリールからなる群から選択される)
で表すことができる。VIII因子部分と反応してこのタイプの結合体を生成できるポリマー剤は、2004年1月6日付けで出願された、標題が「Thiol Selective Water Soluble Polymer Derivatives」の同時係属中の米国特許願第10/753,047号に記載されている。
【0128】
ポリマー剤に結合する部位として働くことができるVIII因子中の好ましいチオール基としては、下記システイン残基:Cys248、Cys310、Cys329、Cys630、 Cys692、Cys711、Cys1899、Cys1903及びCys2000の中に見られるチオール基がありそしてこれらの中でもCys630、Cys711及びCys1903の中に見られるチオール基が特に好ましい。上記番号は、配列番号2の中の配列に付けた番号と同じである。
【0129】
本願及びその外の文献に記載されているポリマー剤は、商業的供給元(例えば、米国アラバマ州ハンツビル所在のNektar Therapeutics)から購入できる。さらに、これらポリマー剤の製造方法は文献に記載されている。
【0130】
一般に、これには限らないが、VIII因子部分とポリマー剤の間の結合としては、1個以上の炭素、窒素、硫黄及びそれらの組合わせなどの1個以上の原子がある。好ましくは、この結合はアミド基、第二級アミン基、カルバメート基、チオエーテル基又はジスルフィド基を含んでいる。任意に、追加の原子によって、前記結合を、ポリマー剤中の繰返しモノマー鎖に接続できる。VIII因子部分を繰返しモノマー鎖に接続する特定の原子系列の例としては、限定されないが、下記のものからなる群から選択されるものがある。すなわち-O-、-S-、-S-S-、-C(O)-、-O-C(O)-、-C(O)-O-、-C(O)-NH-、-NH-C(O)-NH-、
-O-C(O)-NH-、-C(S)-、-CH2-、-CH2-CH2-、-CH2-CH2-CH2-、-CH2-CH2-CH2-CH2-、
-O-CH2-、-CH2-O-、-O-CH2-CH2-、-CH2-O-CH2-、-CH2-CH2-O-、-O-CH2-
CH2-CH2-、-CH2-O-CH2-CH2-、-CH2-CH2-O-CH2-、-CH2-CH2-CH2-O-、
-O-CH2-CH2-CH2-CH2-、-CH2-O-CH2-CH2-CH2-、-CH2-CH2-O-CH2-CH2-、
-CH2-CH2-CH2-O-CH2-、-CH2-CH2-CH2-CH2-O-、-C(O)-NH-CH2-、-C(O)-NH-CH2-CH2-、
-CH2-C(O)-NH-CH2-、-CH2-CH2-C(O)-NH-、-C(O)-NH-CH2-CH2-CH2-、
-CH2-C(O)-NH-CH2-CH2-、-CH2-CH2-C(O)-NH-CH2-、-CH2-CH2-CH2-C(O)-NH-、
-C(O)-NH-CH2-CH2-CH2-CH2-、-CH2-C(O)-NH-CH2-CH2-CH2-、
-CH2-CH2-C(O)-NH-CH2-CH2-、-CH2-CH2-CH2-C(O)-NH-CH2-、
-CH2-CH2-CH2-C(O)-NH-CH2-CH2-、-CH2-CH2-CH2-CH2-C(O)-NH-、-C(O)-O-CH2-、
-CH2-C(O)-O-CH2-、-CH2-CH2-C(O)-O-CH2-、-C(O)-O-CH2-CH2-、
-NH-C(O)-CH2-、-CH2-NH-C(O)-CH2-、-CH2-CH2-NH-C(O)-CH2-、
-NH-C(O)-CH2-CH2-、-CH2-NH-C(O)-CH2-CH2-、-CH2-CH2-NH-C(O)-CH2-CH2-、
-C(O)-NH-CH2-、-C(O)-NH-CH2-CH2-、-O-C(O)-NH-CH2-、-O-C(O)-NH-CH2-CH2-、
-O-C(O)-NH-CH2-CH2-CH2-、-NH-CH2-、-NH-CH2-CH2-、-CH2-NH-CH2-、
-CH2-CH2-NH-CH2-、-C(O)-CH2-、-C(O)-CH2-CH2-、-CH2-C(O)-CH2-、
-CH2-CH2-C(O)-CH2-、-CH2-CH2-C(O)-CH2-CH2-、-CH2-CH2-C(O)-、
-CH2-CH2-CH2-C(O)-NH-CH2-CH2-NH-、-CH2-CH2-CH2-C(O)-NH-CH2-CH2-NH-C(O)-、
-CH2-CH2-CH2-C(O)-NH-CH2-CH2-NH-C(O)-CH2-、
-CH2-CH2-CH2-C(O)-NH-CH2-CH2-NH-C(O)-CH2-CH2-、
-O-C(O)-NH-[CH2]0-6-(OCH2 CH2)0-2-、-C(O)-NH-(CH2)1-6-NH-C(O)-、
-NH-C(O)-NH-(CH2)1-6-NH-C(O)-、-O-C(O)-CH2-、-O-C(O)-CH2-CH2-及び
-O-C(O)-CH2-CH2-CH2-からなる群から選択される。
【0131】
結合体は一般に組成物の一部分である。一般に、組成物は、複数種の結合体を含有し、好ましくは限定されないが、これら結合体は各々、1個のVIII因子部分に共有結合した2〜3個の水溶性ポリマーを含有している。しかし、これら組成物は、VIII因子活性を有する所定の部分に結合した4、5、6、7、8個又はこれを超える数のポリマーを有する他の結合体を含んでいてもよい。さらに、本発明には、複数種の結合体を含む組成物であって、その結合体が各々1個のVIII因子部分に共有結合した1個の水溶性ポリマーを含む組成物、及び1個のVIII因子部分に共有結合した2、3、4、5、6、7、8個又はこれを超える数の水溶性ポリマーを含む組成物が含まれている。
【0132】
所定の部分に対するポリマーの所望の数は、適正なポリマー剤、ポリマー剤とVIII因子部分の比率、温度、pH条件及び結合反応の他の側面を選択することによって制御できる。さらに、不要の結合体(例えば4個以上のポリマーが結合した結合体)は、精製手段で減らすか又は除くことができる。
【0133】
例えば、ポリマー-VIII因子部分結合体は、精製して異なる結合種を入手/単離できる。具体的に述べると、生成物の混合物を精製して、1個のVIII因子部分当たり平均して1、2、3、4、5個又はこれを超える個数のPEGを有する結合体、一般に1個のVIII因子部分当たり1、2又は3個のPEGを有する結合体を得ることができる。最終の結合体反応混合物を精製する戦略は、例えば、使用するポリマー剤の分子量、特定のVIII因子部分、所望の投与計画及び個々の結合体(複数)の残留活性と生体内特性を含む多数の要因によって決まる。
【0134】
必要に応じて、異なる分子量を有する結合体を、ゲル濾過クロマトグラフィー及び/又はイオン交換クロマトグラフィーを使って単離できる。すなわち、ゲル濾過クロマトグラフィーは、VIII因子部分に対するポリマーの比率の数値が異なる結合体(例えば、1-mer、2-mer及び3-merなど。なお例えば「1-mer」は1VIII因子部分当たり1ポリマーを示し、「2-mer」は1VIII因子部分当たり2ポリマーを示す)を、それらの異なる分子量に基づいて(その差は、水溶性ポリマー部分の平均分子量にほぼ等しい)、分別するのに使用できる。例えば、100,000ダルトンのタンパク質を、分子量が約20,000ダルトンのポリマー剤とランダムに結合させる代表的な反応において、生成する反応混合物は、未修飾のタンパク質(分子量は約100,000ダルトン)、モノPEG化タンパク質(分子量は約120,000ダルトン)、ジPEG化タンパク質(分子量は約140,000ダルトン)などを含有している。
【0135】
この方法は、分子量が異なる、PEGなどのポリマーとVIII因子部分との結合体を分離するのに使用できるが、ポリマーが結合するVIII因子部分内の部位が異なる位置異性体を分離するのには一般に有効でない。例えば、ゲル濾過クロマトグラフィーは、PEGの1-mer、2-mer、3-merなどの混合物からそれぞれを分離するのに利用できるが、回収されたPEG-mer組成物が各々、VIII因子部分内の異なる反応性アミノ基(例えば、リシン残基)に結合したPEGを含有していることがある。
【0136】
この種の分離を行うのに適したゲル濾過法のカラムとしては、米国ニュージャージー州ピスカタウエイ所在のAmersham Biosciencesから入手できるSuperdex(商標)カラム及びSephadex(商標)カラムがある。必要な所望の分画範囲によって特定のカラムが選択される。溶離は、一般に、適切な緩衝液、例えばリン酸塩や酢酸塩などの緩衝液で行う。集めた画分は、多種類の方法、例えば(i)タンパク質含量に関する280nmにおける光学濃度(OD)、(ii)ウシ血清アルブミン(BSA)タンパク質分析法、(iii)PEG含量に関するヨウ素試験法(Simsら (1980) Anal. Biochem., 107: 60-63)、及び(iv)ドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動法(SDS PAGE)と続いて行うヨウ化バリウムによる染色で分析することができる。
【0137】
位置異性体の分離は、逆相高速液体クロマトグラフィー(RP-HPLC)C18カラム(Amersham Biosciences又はVydac)を使う逆相クロマトグラフィー又はイオン交換樹脂例えばAmersham Biosciences から入手できるSepharose(商標)イオン交換カラムを使うイオン交換クロマトグラフィーによって実施する。これら両方法は、分子量が同じポリマー-活性剤異性体(位置異性体)を分離するのに使用できる。
【0138】
これらの組成物は、好ましくは、VIII因子活性を持っていないタンパク質を実質的に含有していない。さらに、これら組成物は、好ましくは、すべての他の共有結合していない水溶性ポリマーを実質的に含有していない。さらに、組成物中の結合体の少なくとも一つの種は、X因子をXa因子に変換する部分に結合した少なくとも一つの水溶性ポリマーを含んでいる。しかし、場合によって、組成物は、ポリマー-VIII因子部分結合体の混合物と未結合VIII因子を含有していることがある。
【0139】
任意に、本発明の組成物は、さらに医薬として許容できる賦形剤を含有している。必要に応じて、前記医薬として許容できる賦形剤を、結合体に添加して組成物を製造できる。
【0140】
代表的な賦形剤としては、限定されないが、炭水化物類、無機塩類、抗菌剤類、抗酸化薬類、界面活性剤類、緩衝剤類、酸類、塩基類およびそれらの組合わせからなる群から選択される賦形剤がある。
【0141】
賦形剤としては、糖、誘導体化された糖例えばアルジトール、アルドン酸、エステル化糖など、及び/又は糖ポリマーなどの炭水化物がある。具体的な炭水化物の賦形剤としては、例えば、単糖類例えばフラクトース、マルトース、ガラクトース、グルコース、D-マンノース、ソルボースなど;二糖類例えばラクトース、スクロース、トレハロース、セロビオースなど;多糖類例えばラフィノース、メレチトース、マルトデキストリン類、デキストラン類、デンプン類など;及びアルジトール類例えばマンニトール、キシリトール、マルチトール、ラクチトール、キシリトール、ソルビトール(グルシトール)、ピラノシルソルビトール、ミオイノシトールなどがある。
【0142】
賦形剤としては、クエン酸、塩化ナトリウム、塩化カリウム、硫酸ナトリウム、硝酸カリウム、一塩基リン酸ナトリウム、二塩基リン酸ナトリウムなどの無機塩又は緩衝剤及びそれらの組合わせもある。
【0143】
本発明の組成物は、微生物の増殖を防止又は抑制する抗菌剤を含有していてもよい。本発明に適切な抗菌剤の限定されない例としては、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、ベンジルアルコール、セチルピリジニウムクロリド、クロロブタノール、フェノール、フェニルエチルアルコール、硝酸フェニル水銀、チメロサール及びそれらの組合わせがある。
【0144】
抗酸化剤も本発明の組成物中に含有されていてもよい。抗酸化剤は、酸化を防止して、製剤の結合体などの成分の分解を防止するために使用される。本発明に使用される適切な抗酸化剤としては、例えば、アスコルビン酸パルミテート、ブチル化ヒドロキシアニソール、ブチル化ヒドロキシトルエン、次亜リン酸、モノチオグリセロール、没食子酸プロピル、重亜硫酸ナトリウム、ホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム及びそれらの組合わせがある。
【0145】
界面活性剤も賦形剤として含まれていてもよい。代表的な界面活性剤としては、「Tween 20」と「Tween 80」などのポリソルベート類及びF68とF88などのプルロニック類(両者ともに、米国ニュージャージー州マウントオリーブ所在のBASFから入手できる);ソルビタンエステル類;脂質類、例えばレシチンなどのホスファチジルコリン類やホスファチジルエタノールアミン類(リポソーム型でない方が好ましい)などのリン脂質、脂肪酸類及び脂肪酸エステル;ステロイド類例えばコレステロール;並びにキレート化剤例えばEDTA、亜鉛などの適切なカチオン類がある。
【0146】
本発明の組成物には、酸類又は塩基類が賦形剤として含まれていてもよい。使用できる酸の非限定例としては、塩酸、酢酸、リン酸、クエン酸、リンゴ酸、乳酸、ギ酸、トリクロロ酢酸、硝酸、過塩素酸、リン酸、硫酸、フマル酸及びそれらの組合わせからなる群から選択される酸がある。適切な塩基の例としては、限定されないが、水酸化ナトリウム、酢酸ナトリウム、水酸化アンモニウム、水酸化カリウム、酢酸アンモニウム、酢酸カリウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、クエン酸ナトリウム、ギ酸ナトリウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、フマル酸カリウム及びそれらの組合わせからなる群から選択される塩基がある。
【0147】
組成物中の結合体(すなわち活性剤とポリマー剤とで形成された結合体)の量は、アクター(actor)の数によって変わるが、組成物が単位投与量の容器(例えばバイアル)中に貯蔵される場合は、最適に治療上有効な投与量である。さらに、本発明の医薬製剤は、シリンジに収納できる。治療上有効な投与量は、どの量が臨床上望ましい終点を生ずるかを決定するため、結合体の量を増やしながら投与を繰返すことによって、実験的に決定できる。
【0148】
組成物中の個々の賦形剤の量は、その賦形剤の活性と組成物の特定の用途によって変わる。一般に、個々の賦形剤の最適量は、通常の実験によって、すなわち含有する賦形剤の量を変えて(少量から多量まで)組成物を調製し、安定性などのパラメーターを検査して有意な有害作用無しで最適性能が得られる範囲を決定することによって決定される。
【0149】
しかしながら、一般に賦形剤は、組成物中に、約1〜約99重量%の量で存在し、好ましくは約5〜約98重量%の量、より好ましくは約15〜約95重量%の量、そして最も好ましくは30重量%未満の濃度で存在している。
【0150】
上記の医薬添加剤は他の添加剤とともに、「Remington: The Science & Practice of Pharmacy」第19版、Williams & Williams,(1995);the「Physian's Desk Reference」,第52版、米国ニュージャージー州モントベール所在のMedical Economics (1998); 及びKibbe, A. H., Handbook of Pharmaceutical Excipients、第3版、米国ワシントンD.C.所在のAmerican Pharmaceutical Association, 2000に記載されている。
【0151】
本発明の組成物には、すべてのタイプの製剤が含まれ、特に、注射に適した製剤、例えば液剤はもとより、再構成できる粉末剤又は凍結乾燥剤が含まれている。注射する前に固体の組成物を再構成するのに適切な希釈剤の例としては、注射用静菌水、デキストロースの5%水溶液、リン酸塩緩衝生理食塩水、リンゲル液、生理食塩水、滅菌水、脱イオン水及びこれらの組合わせがある。液体の医薬組成物としては液剤と懸濁剤が考えられる。
【0152】
本発明の組成物は、限定されないが、一般に注射によって投与されるので、投与される直前は、一般に液体の水剤又は懸濁剤である。また、本発明の医薬製剤は、シロップ剤、クリーム剤、軟膏、錠剤、散剤などの他の形態にすることができる。他の投与モード、例えば肺、肛門、経皮、経粘膜、経口、脊髄内、皮下、動脈内などの投与モードもある。
【0153】
本発明は、本発明で提供される結合体を、結合体による治療によい反応を示す症状に冒されている患者に投与する方法も提供する。この方法は、治療のために有効な量の結合体(好ましくは医薬組成物の一部分として提供される結合体)を、一般に注射によって投与することを含んでいる。先に述べたように、本発明の結合体は、静脈注射によって、又は余り好ましくないが筋肉内注射もしくは皮下注射によって、非経口で注射投与できる。非経口投与に適した製剤のタイプとしては、とりわけ、直ちに注射できる水剤、使用する前に溶媒と混合する乾燥粉末剤、直ちに注射できる懸濁剤、使用する前に賦形剤と混合する乾燥不溶性組成物及び投与する前に希釈する乳剤と液体濃縮物がある。
【0154】
この投与法を利用して、結合体を投与することによって治療又は予防できるどのような症状も治療できる。当業者は、特定の結合剤がどの症状を有効に治療できるか分かる。例えば、本発明の結合体は、血友病Aに冒されている個体を治療するのに使用できる。さらに、この結合体は、任意に、血友病に冒されていない患者の無制御の出血(uncontrolled bleeding)の予防薬として使うのに適している。したがって、例えば、この結合体は、無制御の出血を起こす危険がある患者に、手術する前に投与できる。
【0155】
実際の投与量は、被験者の年齢、体重及び全身状態、並びに治療される症状の重篤度、医療専門家の判断及び投与される結合体によって変わる。治療のために有効な量は、当業者には分かっており及び/又は関連する参照テキストや文献に記載されている。一般に、治療のために有効な量は、約0.001mg〜100mgの範囲内であり、好ましくは0.01mg/日〜75mg/日の投与量であり、より好ましくは0.10mg/日〜50mg/日の投与量である。
【0156】
所定の結合体(やはり、好ましくは医薬製剤の一部分として提供される)の単位投与量を、臨床医の判断、患者の要求などによって、各種の投与計画で投与できる。具体的な投与計画は、当業者には分かっているか又は通常の方法を使って実験で決定できる。代表的な投与計画としては、限定されないが、1日に5回、1日に4回、1日に3回、毎日2回、毎日1回、週3回、週2回、週1回、月2回、月1回およびこれらの組合わせがある。臨床の終了点に到達したならば、組成物の投与を停止する。
【0157】
本発明の特定の結合体を投与することの一利点は、個々の水溶性ポリマー部分が開裂して分離できることである。このことは、身体からのクリアランスが、ポリマーの大きさのため問題になる可能性がある場合、有利である。各水溶性ポリマー部分の開裂は、生理的に開裂可能な及び/又は酵素で分解可能な結合例えばウレタン、アミド、カーボネート又はエステルを含有する結合を使うことによって最適に促進される。このように、結合体のクリアランス(個々の水溶性ポリマー部分の開裂による)は、所望のクリアランス特性を提供するポリマー分子の大きさとそのタイプの官能基を選択することによって調節できる。当業者は、ポリマーの適正な分子の大きさ及び開裂可能な官能基を決定できる。例えば、当業者は、通常の実験を利用して、先ず、異なるポリマー重量と開裂可能な官能基を有する各種のポリマー誘導体を調製し、次いでそのポリマー誘導体を患者に投与し次に血液及び/又は尿を定期的にサンプリングすることによってクリアランスのグラフを得て(例えば血液又は尿の定期的サンプリングによって)、適正な分子の大きさと開裂可能な官能基を決定できる。各被検結合体について一連のクリアランスのグラフが得られたならば、適切な結合体を確認できる。
【0158】
本発明を、その好ましい具体的実施態様で説明してきたが、上記説明と下記実施例は、例示することを目的としており本発明の範囲を限定するものではないと解すべきである。本発明の範囲内のその外の側面、利点及び変形は、本発明が関連する当業者には明らかであろう。
【0159】
当業者は、本発明書に引用したすべての論文、書籍、特許などの刊行物を参照することができる。
【実施例】
【0160】
実験
本発明を実施するときは、特に断らない限り、当該技術分野の技術に含まれる有機合成法などの通常の方法を採用する。このような方法は、文献に充分説明されている(例えば、前掲のJ. March, Advanced Organic Chmistry: Reactions Mechanisms and Structure, 第4版(米国ニューヨーク所在のWiley-Interscience, 1992を参照)。
【0161】
以下の実施例では、使用される数値(例えば、量、温度など)に関する精度を保証するため留意してきたが、いくらかの実験誤差と偏差があることは念頭に置いておかなければならない。特に断らない限り、温度は℃であり圧力は海水面における大気圧であるかその近傍である。
【0162】
略語:
DCM ジクロロメタン
mPEG-SPA mPEG-スクシンイミジルプロピオネート
mPEG-SBA mPEG-スクシンイミジルブタノエート
mPEG-OPSS mPEG-オルトピリジル-ジスルフィド
mPEG-MAL mPEG-マレイミド:CH3O-(CH2CH2O)n-CH2CH2-MAL
mPEG-SMB mPEG-スクシンイミジルα-メチルブタノエート、CH3O-(CH2CH2O)n-CH2CH2-CH(CH3)-C(O)-O-スクシンイミド
mPEG-ブチルALD CH3O-(CH2CH2O)n-CH2CH2-O-C(O)-NH-(CH2CH2O)4CH2CH2 CH2C(O)H
mPEG-PIP CH3O-(CH2CH2O)n-CH2CH2-C(O)ピリジン-4-オン
SUC スクシンイミド又はスクシンイミジル
NaCNBH3 水素化シアノホウ素ナトリウム
HCl 塩酸
HEPES 4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンエタンスルホン酸
NMR 核磁気共鳴
DCC 1,3-ジシクロヘキシルカルボジイミド
DI 脱イオン化された
MW 分子量
r.t. 室温
K又はkDa キロダルトン
SEC サイズ排除クロマトグラフィー
HPLC 高速液体クロマトグラフィー
FPLC 高速タンパク質液体クロマトグラフィー
SDS-PAGE ドデシル硫酸ナトリウム-ポリアクリルアミドゲル電気泳動法
MALDI-TOF 飛行時間型マトリックス支援レーザー脱離イオン化法
【0163】
材料:
付記した実施例に引用したPEG試薬はすべて、特に断らない限り市販されている。
mPEG-スクシンイミジルプロピオネート、mPEG-SPA、分子量、30K(Mn=31.3kDa, Nektar Therapeutics)
mPEG-オルトピリジル-ジスルフィド、mPEG-OPSS、分子量、10K(Mn=10.3kDa, Nektar Therapeutics)
mPEG-マレイミド、mPEG-MAL、分子量、20K((Mn=21.8kDa, Nektar Therapeutics)
mPEG-マレイミド、mPEG-MAL、分子量、30K((Mn=31.4kDa, Nektar Therapeutics)
mPEG-スクシンイミジルα-メチルブタノエート、mPEG-SMB、分子量、30K((Mn=30.5kDa, Nektar Therapeutics)
mPEG-ブチルアルデヒド、mPEG-ブチルALD、分子量、30K((Mn=31.5kDa, Nektar Therapeutics)
L-ヒスチジン、保証されたバイオオテクノロジーの性能(Sigma)
HEPES、保証されたバイオオテクノロジーの性能、99.5+%(Sigma)
塩化カルシウム二水和物、分子生物学用、99%(Sigma)
塩化ナトリウム、分子生物学用(Sigma)
Tween 80,Sigma Ultra(Sigma)
エチルアルコール、USP、絶対200プルーフ(AAPER)
ポリエチレングリコール、MW 3,350, Sigma Ultra(Sigma)
Slide-A-Lyzer Dialysis Cassette、0.5〜3ml又は3〜12mlのキャパシティー(Pierce)
酢酸、A.C.S.試薬、99.7+%(Aldrich)
1N 酢酸、容積標準(VWR)
1N 水酸化ナトリウム、容積標準(J.T.Baker)
水素化シアノホウ素ナトリウム(sodium cyanoborohydride)、95%(Aldrich)
Tris/グリシン/SDS、10x、タンパク質電気泳動法の緩衝剤(Bio-Rad)
レムリ(Laemmli)試料緩衝液(Bio-Rad)
SigmaMarker、低範囲(M.W.6,500〜66,000)(Sigma)
SigmaMarker、高範囲(M.W.36,000〜205,000)(Sigma)
7.5%Tris-HCl レディゲル(ready gel)(10ウエル、30μl、Bio-Rad)
GelCode blue 染色試薬(Pierce)
【0164】
方法(分析)
SEC-HPLC分析法
サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)を、Agilent 1100 HPLC system (Agilent)で実施した。BIOSEP-SEC-S 4000 colum(Phenomenex)並びに45 mMヒスチジン、4.5 mM塩化カルシウム、0.36 M塩化ナトリウム、0.009%(v/v)Tween 80及び10%エチルアルコール含有の移動相(pH6.7)を使って試料を分析した。カラムに対する流量は0.3 ml/分であった。溶離されたタンパク質とPEG-タンパク質結合体は、波長280 nmのUVで検出した。
【0165】
SDS-PAGE分析法
Mini-PROTEAN3Precast Gel Electrophoresis System(Bio-Rad)を使うドデシル硫酸ナトリウム-ポリアクリルアミドゲル電気泳動法(SDS-PAGE)で試料を分析した。試料を、2xレムリ試料緩衝液と混合し次いで95℃の湯浴中に約5分間入れた。次いで、その調製した試料を7.5% Tris-HClレディゲルに負荷し、Tris/グリシン/SDS電気泳動緩衝液を使って、200 Vで約30分間泳動させた。
【0166】
その他の方法
PEG-VIII因子結合体の精製
Superose 6 HR 10/30すなわち24 mlのゲル濾過カラム(Amersham)を、FPLC system及びAKTA prime system(Amersham)とともに使って、実施例6-11のPEG-VIII因子結合体を精製した。流量は0.3ml/分であり、溶離緩衝液は50mM ヒスチジン、0.5 M NaCl、4.0 mM CaCl2及び0.01%(w/v)Tween 80からなる緩衝液(pH 6.7)であった。
【0167】
VIII因子原溶液の緩衝交換(buffer exchange)
Slide-A-Lyzer Dialysis Cassette(3-12 ml,10,000 MWCO,Pierce)を保護パウチから取り出し、MiliQ H2O中に15分間浸漬した(水は5分毎に変えた)。VIII因子の原溶液[50 mM ヒスチジン、0.5 M NaCl、4.0 mM CaCl2、0.1%(w/v) PEG 3,350、0.01%(w/v) Tween 80(pH 6.7)中、0.398mg/ml]を、ガスケットの頂部の案内ポートのうち一つを通じて前記カセットのキャビティー内に移した。そのカセットを、その頂部に取り付けた浮遊ブイとともにHEPES緩衝液[50 mM HEPES、0.5 M NaCl、5 mM CaCl2、0.1%(w/v) PEG 3,350、0.001%(v/v) Tween 80、pH 7.0] が入っている1Lビーカー内に入れた。次にそのビーカーを攪拌プレート上に置いて4℃にて透析を開始した。そのHEPES緩衝液を2-3時間の間隔をあけて4回変えて、低温室(4℃)に置いて一夜透析を行った。透析を行った後、カセットのチャンバーに空気を注入して、透析された試料をカセットから取り出した。HEPES緩衝液中のVIII因子の濃度を、SPECTRA max PLUS Spectrophotometer(Molecular Devices)を使って、UV 280 nmで測定した。
【0168】
実施例1
Bドメイン欠失VIII因子のmPEG-SPA、20KによるPEG化
分子量が20,000ダルトンのmPEG-スクシンイミジルプロピオネートをNektar Therapeutics(米国アラバマ州ハンツビル所在)から入手した。このポリマー剤の基本構造は下記式で表される。
【0169】
【化9】

【0170】
Bドメイン欠失VIII因子を脱イオン水に溶解し、その溶液にトリエチルアミンを添加してpHを7.2-9まで上げた。上記溶液に、1.5~10倍モルの過剰のPEG剤すなわちmPEG-SPAを添加する。生成した混合物を室温で数時間攪拌した。
【0171】
生成した反応混合物をSDS-PAGEで分析して、そのタンパク質のPEG化度を測定した。またPEG化度、1-mer、2-merなどは、この大きさのタンパク質に適した多くのどの分析法でも例えば光角分散法(light angle scattering)で測定できる。天然の種とモノPEG化された種は、約20,000ダルトン異なる。タンパク質に対するPEG剤の比率を増大すると、ポリPEG化度が増大しすなわち2-mer、3-merなどの生成が増大した。
【0172】
実施例2
Bドメイン欠失VIII因子のmPEG-SBAによるPEG化
分子量が10,000ダルトンのmPEG-スクシンイミジルブタノエートをNektar Therapeutics(米国アラバマ州ハンツビル所在)から入手した。このポリマー剤の基本構造は下記式で表される。
【0173】
【化10】

【0174】
Bドメイン欠失VIII因子を脱イオン水に溶解し、その溶液にトリエチルアミンを添加してpHを7.2-9まで上げた。次いで上記溶液に、1.5〜10倍モルの過剰のmPEG-SBAを添加した生成した混合物を室温で数時間攪拌した。
【0175】
生成した反応混合物をSDS-PAGEで分析して、そのタンパク質のPEG化度を測定した。
【0176】
実施例3
Bドメイン欠失VIII因子のmPEG-MAL、30KによるPEG化
分子量が20,000ダルトンのmPEG-マレイミドをNektar Therapeutics(米国アラバマ州ハンツビル所在)から入手した。このポリマー剤の基本構造は下記式で表される。
【0177】
【化11】

【0178】
Bドメイン欠失VIII因子を緩衝液に溶解した。このタンパク質溶液に3〜5倍モルの過剰のmPEG-MALを添加した。その混合物を室温にて不活性雰囲気下で数時間攪拌した。生成した反応混合物をHPLCで分析し精製して、結合種の混合物を得た。
【0179】
実施例4
Bドメイン欠失VIII因子のmPEG-OPSS、20KによるPEG化
【0180】
【化12】

【0181】
スルフヒドリル-選択性ポリマー剤すなわち分子量が20,000のmPEG-オルトピリジルジスルフィド(上記構造)をNektar Therapeutics(米国アラバマ州ハンツビル所在)から入手した。5倍モルの過剰のmPEG-OPSSを、緩衝溶液中のBドメイン欠失VIII因子に添加した。その反応混合物を室温にて不活性雰囲気下で数時間攪拌して、ポリマーとタンパク質を連結するジスルフィド結合を有する所望の結合体を製造した。
【0182】
実施例5
Bドメイン欠失VIII因子のmPEG-PIP、5KによるPEG化
【0183】
【化13】

【0184】
ケトン及び対応するケタールとして示す上記ポリマー剤を、標題が「Polymer Derivatives and Conjugates Thereof」であるNektar Therapeuticsの米国仮特許願第60/437,325号に記載されているようにして調製した。
【0185】
上記ポリマー剤を調製するため、重量平均分子量が5,000ダルトンのメトキシポリエチレングリコール-スクシンイミジルプロピオネート(1.0g,0.002モル)を塩化メチレン(20 ml)に溶解した溶液に、トリエチルアミン(0.084 ml,0.006モル)と4-ピペリドン一水和物塩酸(0.077 g,0.005モル)を添加した。生成した反応混合物を室温にて窒素雰囲気下で一夜攪拌し、次いで、結合させる前に精製した。このポリマー剤はNektar Therapeuticsから購入することもできる。
【0186】
結合させるために、Bドメイン欠失VIII因子を水性緩衝液に溶解した溶液に、20倍モルの過剰のmPEG-PIP,5Kを添加した。生成した溶液を、低速に設定したRotoMix(商標)オービタルシェーカー(米国アイオワ州ダビューク所在のThermolyne Corp.)の上に乗せて、室温で反応を促進させた。15分間経過後、Bドメイン欠失VIII因子に対して50倍モルの過剰の量のNaCNBH3の水溶液を添加した。時間間隔を取って反応混合物からアリコートを取り出して、SDS-PAGE(米国カリフォルニア州ハーキュレスに所在のBio-Rad Laboratoriesから入手できるゲルを使用する)で分析した。
【0187】
SDS-PAGEの分析結果は、結合された1、2および3個のPEG部分を有する、Bドメイン欠失VIII因子のPEG誘導体が存在していることを示した。
【0188】
実施例6
Bドメイン欠失VIII因子とmPEG-SPA、30Kとの結合
結合を行う前に、Bドメイン欠失VIII因子(VIII因子)の緩衝交換を行って、ヒスチジンをHEPESで置換した。
【0189】
アルゴン雰囲気下-20℃で貯蔵していたmPEG-SPA,30Kを周囲温度まで昇温させた。その昇温させたmPEG-SPA(2.2mg)を、2 mM HCl 0.022 mlに溶解してポリマー剤の10%溶液を得た。このmPEG-SPA溶液を、3 mlのVIII因子溶液[50 mM HEPES、0.5 M NaCl、4.0mM CaCl2、0.1%(w/v) PEG 3,350、0.01%(w/v) Tween 80、pH 7,0中、0.412 mg/ml]に迅速に添加して充分に攪拌した。室温で30分間反応させた後、その反応バイアルを低温室(4℃)に移し次いで別のmPEG-SPA溶液0.022 mlを反応混合物に添加し充分に混合した。pHを測定した(pH 7.0±0.2)。タンパク質に対するmPEG-SPAのモル比は20:1であった。mPEG-SPAの最終濃度は1.445 mg/mlであり、そしてVIII因子の最終濃度は0.406 mg/mlであった。この反応を、Rotomix(低速、Thermolyne)上で4℃にて一夜進行させた。生成した結合体に、識別名「pz041701」をつけた。
【0190】
結合体混合物を、ゲル濾過クロマトグラフィーを使って精製した。反応混合物と最終生成物を分析するサイズ排除クロマトグラフィー法を開発した。SDS-PAGE分析法も試料の特性を決定するのに利用した。
【0191】
結合体の特性決定。精製する前の生成した結合体混合物は、SECで測定したとき、識別名「pz041701(低)」、「pz041701(中)」及び「pz041701(高)」それぞれに相当するVIII因子PEGモノマー(すなわち1-mer)、ダイマー(すなわち2-mer)及びトリマー(すなわち3mer)の混合物であった。すなわち「pz041701(低)」は大部分がVIII因子モノPEG化種すなわち一つのPEG部分が結合したVIII因子に相当し;「pz041701(中)は主としてVIII因子ジPEG化種すなわち二つのPEG部分が結合したVIII因子に相当し;そして「pz041701(高)」は大部分が三つのPEG部分が結合したVIII因子に相当する。対応するSECグラフを図1と2に示す。図1は、VIII因子反応混合物のSECによって集めた画分に対応するSECグラフを示す。サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)の試験結果によれば、mPEG-SPA-30K-VIII因子(pz041701低)のPEG化の収率は約39%であった。またmPEG30-SPA-30K-VIII因子(pz041701中)のPEG化の収率は約32%でありそしてmPEG-SPA-30K-VIII因子(pz041701高)のPEG化の収率は約11%であった。なおこれらの数値は、生成した反応混合物中に存在するすべての種に対する相対量に基づいた百分率である。この結合体混合物はさらに、FPLCで精製した後、SDS-PAGEで分析した。
【0192】
実施例7
Bドメイン欠失VIII因子とmPEG-MAL、20Kの結合
結合を行う前に、Bドメイン欠失VIII因子(VIII因子)の緩衝交換を行って、ヒスチジンをHEPESで置換した。
【0193】
アルゴン雰囲気下-20℃で貯蔵していたmPEG-MAL,20Kを周囲温度まで昇温させた。その昇温させたmPEG-MAL試薬(4.4 mg)を、0.044 mlのHEPES緩衝液[50 mM HEPES、0.15 M NaCl、4.0 mM CaCl2、0.01%(w/v) Tween 80、pH 7.0]に溶解してmPEG-MALの10%溶液を作製した。そのmPEG-MAL溶液を、4 mlのVIII因子溶液[50 mM HEPES、0.5 M NaCl、4 mM CaCl2、0.1%(w/v)PEG 3,350、0.01%(w/v) Tween 80、pH 7.0中0.4324 mg/ml]に迅速に添加して充分に攪拌した。室温で30分間反応させた後、その反応バイアルを低温室(4℃)に移し、その反応混合物に、別のmPEG-MAL溶液0.044 mlを添加し、続いてmPEG-MAL溶液0.044 mlずつのアリコートをさらに三回、2時間の間に添加した。pHを測定した(pH 7.0±0.2)。mPEG-MALのタンパク質に対するモル比は100:1であった。mPEG-MALの最終濃度は5.213 mg/mlであり、そしてVIII因子の最終濃度は0.410 mg/mlであった。この反応を、Rotomix(低速、Thermolyne)上で4℃にて一夜進行させた。生成した結合体に、識別名「pz061201」をつけた。
【0194】
結合体混合物を、ゲル濾過クロマトグラフィーを使って精製した。反応混合物と最終生成物を分析するサイズ排除クロマトグラフィー法を開発した。SDS-PAGE分析法も試料の特性値を決定するのに利用した。
【0195】
結合体の特性決定(モノ-PEG化生成物)。サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)の試験結果によれば、モノPEG化結合体(1-mer)のPEG化の収率は約33%であった(図3)。VIII因子結合体混合物の画分を合してFPLCで精製し次いでさらにゲル濾過クロマトグラフィーで精製した。pz061201の最終生成物をSDS-PAGEとSECの両方で分析した結果、「pz061201」生成物の純度は、VIII因子PEGモノマー(すなわちモノPEG化VIII因子)が約94%であり、一方VIII因子PEGハイマー(high-mer)が約6%であった(図4)。
【0196】
実施例8
Bドメイン欠失VIII因子とmPEG-SMB、30Kの結合
【0197】
【化14】

【0198】
結合を行う前に、Bドメイン欠失VIII因子(VIII因子)の緩衝交換を行って、ヒスチジンをHEPESで置換した。
【0199】
アルゴン雰囲気下-20℃で貯蔵していたmPEG-SMB,30Kを周囲温度まで昇温させた。その昇温させたmPEG-SMB(6.5 mg)を、2 mM HCl 0.065 mlに溶解してmPEG-SMBの10%溶液を作製した。そのmPEG-SMB溶液を、4 mlのVIII因子溶液[50 mM HEPES、0.5 M NaCl、5.0 mM CaCl2、0.1%(w/v)PEG3,350、0.01%(v/v) Tween 80、pH 7.0中、0.435 mg/ml]に迅速に添加し充分に混合した。室温で30分間反応させた後、その反応バイアルを低温室(4℃)に移した。pHを測定した(pH 7.0±0.2)。mPEG-SMBのタンパク質に対するモル比は20:1であった。mPEG-SMBの最終濃度は1.599 mg/mlでありそしてVIII因子の最終濃度は0.428 mg/mlであった。その反応を、Rotomix(低速、Thermolyne)上で4℃にて約48時間進行させ次いで酢酸(99.7+%)を添加しpHを6.0±0.3まで低下させてクエンチした。その結合体には、識別名「pz082501」をつけた。
【0200】
その結合体混合物を、ゲル濾過クロマトグラフィーを使って精製した。その反応混合物と最終生成物を分析するサイズ排除クロマトグラフィーを開発した。SDS-PAGE分析法も、試料の特性を決定するのに使用した。
【0201】
結合体の特性決定。「pz082501」と命名された混合物を、pH 7.0±0.2にて、VIII因子をmPEG-SMB 30KでPEG化することによって得た。その結合体混合物をSECで精製し分析した。サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)の試験結果に基づいた、pz082501すなわちモノPEG化結合体(VIII因子1-mer)のPEG化の収率は約41%であった(図5)。生成物混合物をさらにFPLCで精製し次いでSDS-PAGEとSECで分析した。精製したVIII因子PEG結合体生成物すなわちpz082501の特性を決定したところ、モノ結合PEGVIII因子が約95%で、ハイマー類が約5%であった。
【0202】
実施例9
Bドメイン欠失VIII因子とmPEG-OPSS、10Kの結合
結合を行う前に、Bドメイン欠失VIII因子(VIII因子)の緩衝交換を行って、ヒスチジンをHEPESで置換した。
【0203】
アルゴン雰囲気下-20℃で貯蔵していたmPEG-OPSS,10Kを周囲温度まで昇温させた。mPEG-OPSS(1.2 mg)を水0.012 mlに溶解してmPEG-OPSSの10%溶液を作製した。そのmPEG-OPSS溶液を、0.5 mlのVIII因子溶液[50 mMヒスチジン、0.5 M NaCl、4.0 mM CaCl2、0.1%(w/v)PEG3,350、0.01%(w/v) Tween 80、pH 6.7中、0.398 mg/ml]に迅速に添加し充分に混合した。室温で30分間反応させた後、その反応バイアルを低温室(4℃)に移した。pHを測定した(pH 6.7±0.2)。mPEG-OPSS-10Kのタンパク質に対するモル比は100:1であった。mPEG-OPSSの最終濃度は2.344 mg/mlでありそしてVIII因子の最終濃度は0.389 mg/mlであった。その反応を、Rotomix(低速、Thermolyne)上で4℃にて一夜進行させた。
【0204】
その結合体混合物を、ゲル濾過クロマトグラフィーを使って精製した。その反応混合物と最終生成物を分析するサイズ排除クロマトグラフィーを開発した。SDS-PAGE分析法も、試料の特性を決定するのに使用した。mPEG-OPSS試薬を使って行ったPEG化の試験結果と収率は、分子量が20KのmPEG-MAL試薬を使用した実施例7と類似していた。
【0205】
実施例10
Bドメイン欠失VIII因子とmPEG-MAL、30Kの結合
結合を行う前に、Bドメイン欠失VIII因子(VIII因子)の緩衝交換を行って、ヒスチジンをHEPESで置換した。
【0206】
アルゴン雰囲気下-20℃で貯蔵していたmPEG-MAL,30Kを周囲温度まで昇温させた。その昇温させたmPEG-MAL試薬(1.0 mg)を、0.010 mlのHEPES緩衝液[50 mM HEPES、0.15 M NaCl、4.0 mM CaCl2、0.01%(w/v) Tween 80、pH 7.0]に溶解してmPEG-MALの10%溶液を作製した。そのmPEG-MAL溶液を、0.5 mlのVIII因子溶液[50 mM HEPES、0.5 M NaCl、4 mM CaCl2、0.1%(w/v)PEG 3,350、0.01%(w/v) Tween 80、pH 7.0中0.447 mg/ml]に迅速に添加して充分に攪拌した。室温で30分間反応させた後、その反応バイアルを低温室(4℃)に移し、その反応混合物に、別のmPEG-MAL溶液0.010 mlを添加し、続いてmPEG-MAL溶液0.010mlずつのアリコートをさらに三回、2時間の間に添加した。pHを測定した(pH 7.0±0.2)。mPEG-MALのタンパク質に対するモル比は100:1であった。mPEG-MALの最終濃度は9.091 mg/mlであり、そしてVIII因子の最終濃度は0.406 mg/mlであった。この反応を、Rotomix(低速、Thermolyne)上で4℃にて一夜進行させた。
【0207】
結合体混合物を、ゲル濾過クロマトグラフィーを使って精製した。反応混合物と最終生成物を分析するサイズ排除クロマトグラフィー法を開発した。SDS-PAGE分析法も試料の特性を決定するのに利用した。分子量が30KのmPEG-MAL試薬を使って行ったPEG化の試験結果と収率は、分子量が20KのmPEG-MAL試薬を使用した実施例7と類似したものであった。
【0208】
実施例11
Bドメイン欠失VIII因子とmPEG-ブチル-ALD、30Kの結合
結合を行う前に、Bドメイン欠失VIII因子(VIII因子)の緩衝交換を行って、ヒスチジンをHEPESで置換した。
【0209】
【化15】

【0210】
アルゴン雰囲気下-20℃で貯蔵していたmPEG-ブチル-ALD、30K(上記)を周囲温度まで昇温させた。その昇温させたmPEG-ブチル-ALD(3.8 mg)を水0.038 mlに溶解してmPEG-ブチル- ALDの10%溶液を作製した。そのmPEG-ブチル-ALDの溶液を、0.5 mlのVIII因子溶液[50 mM HEPES、0.5 M NaCl、5 mM CaCl2、0.1%(w/v)PEG 3,350、0.01%(w/v) Tween 80、pH 7.0中0.400 mg/ml]に迅速に添加して充分に攪拌した。15分後に、水素化シアノホウ素ナトリウムの10 mM溶液0.066 mlを添加した。pHを測定した(pH 7.0±0.2)。mPEG-ブチル-ALDのタンパク質に対するモル比率は100:1であった。mPEG-ブチル-ALDの最終濃度は6.355 mg/mlであった。VIII因子の最終濃度は0.334 mg/mlでありそしてNaCNBH3の最終濃度は1.003 mMであった。反応は、室温で5時間進行させ、次いでRotomix(低速、Thermolyne)上で4℃にて一夜進行させた。
【0211】
結合体混合物はゲル濾過クロマトグラフィーを使って精製した。反応混合物と最終生成物を分析するサイズ排除クロマトグラフィー法を開発した。SDS-PAGE分析法も試料の特性決定に使用した。VIII因子モノPEG結合体の収率は約20%であった。
【0212】
実施例12
代表的なVIII因子-PEG結合体の生体外での活性
実施例6,7及び8に記載のVIII因子-PEG結合体の生体外での活性を測定した。試験されたVIII因子結合体はすべて生理活性を有していた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
VIII因子ポリペプチド内に含まれるシステイン残基のチオール基を介して該VIII因子ポリペプチドに共有結合された水溶性ポリマーを含む結合体であって、該VIII因子がVIII因子、VIIIa因子、VIII:C因子、VIII:vWF因子、及びBドメイン欠失VIII因子からなる群から選択され、該水溶性ポリマーがポリ(アルキレングリコール)、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリオキサゾリン、及びポリ(N-アクリロイルモルホリン)からなる群から選択される、結合体。
【請求項2】
前記VIII因子ポリペプチドが、水溶性ポリマーが共有結合されているシステイン残基に付加するように修飾されている、VIII因子ポリペプチドである、請求項1に記載の結合体。
【請求項3】
前記VIII因子ポリペプチドが、水溶性ポリマーが共有結合されているシステイン残基に付加するように修飾されたBドメイン欠失VIII因子である、請求項1に記載の結合体。
【請求項4】
前記水溶性ポリマーが、ポリ(エチレングリコール)であり、結合体がモノPEG化されている、請求項1又は3に記載の結合体。
【請求項5】
前記水溶性ポリマーが、6,000ダルトン〜90,000ダルトンの範囲の見掛け平均分子量を有する、請求項1又は3に記載の結合体。
【請求項6】
前記水溶性ポリマーが、VIII因子ポリペプチドのA1サブユニット内に位置するシステイン残基のチオール基を介して該VIII因子ポリペプチドに共有結合される、請求項1又は3に記載の結合体。
【請求項7】
前記水溶性ポリマーが、VIII因子ポリペプチドのA2サブユニット内に位置するシステイン残基のチオール基を介して該VIII因子ポリペプチドに共有結合される、請求項1又は3に記載の結合体。
【請求項8】
前記水溶性ポリマーが、VIII因子ポリペプチドのA3サブユニット内に位置するシステイン残基のチオール基を介して該VIII因子ポリペプチドに共有結合される、請求項1又は3に記載の結合体。
【請求項9】
前記水溶性ポリマーが、VIII因子ポリペプチドのC1サブユニット内に位置するシステイン残基のチオール基を介して該VIII因子ポリペプチドに共有結合される、請求項1又は3に記載の結合体。
【請求項10】
前記水溶性ポリマーが、VIII因子ポリペプチドのC2サブユニット内に位置するシステイン残基のチオール基を介して該VIII因子ポリペプチドに共有結合される、請求項1又は3に記載の結合体。
【請求項11】
マレイミド末端水溶性ポリマーとシステイン残基のチオール基との反応によって形成される、請求項1又は3に記載の結合体。
【請求項12】
チオエーテル結合を介してVIII因子ポリペプチドに共有結合された水溶性ポリマーを含む結合体であって、該VIII因子がVIII因子、VIIIa因子、VIII:C因子、VIII:vWF因子、及びBドメイン欠失VIII因子からなる群から選択され、該VIII因子ポリペプチドが該水溶性ポリマーが共有結合されるシステイン残基に付加するように修飾され、該水溶性ポリマーがポリ(アルキレングリコール)である、結合体。
【請求項13】
前記ポリ(アルキレングリコール)がポリ(エチレングリコール)である、請求項12に記載の結合体。
【請求項14】
前記VIII因子ポリペプチドがBドメイン欠失VIII因子である、請求項13に記載の結合体。
【請求項15】
モノPEG化されている、請求項13に記載の結合体。
【請求項16】
ジPEG化されている、請求項14に記載の結合体。
【請求項17】
複数のモノPEG化又はジPEG化VIII因子ポリペプチド結合体を含む組成物であって、ポリ(エチレングリコール)がVIII因子内に含まれるシステイン残基のチオール基を介して該VIII因子ポリペプチドに共有結合され、該VIII因子ポリペプチドがVIII因子、VIIIa因子、VIII:C因子、VIII:vWF因子、及びBドメイン欠失VIII因子からなる群から選択される、組成物。
【請求項18】
VIII因子ポリペプチド内に含まれるシステイン残基のチオール基を介して該VIII因子ポリペプチドに共有結合される水溶性ポルマーを含む結合体を含む組成物であって、該VIII因子ポリペプチドが、VIII因子、VIIIa因子、VIII:C因子、VIII:vWF因子、及びBドメイン欠失VIII因子からなる群から選択され、該結合体の位置異性体を含まず、該水溶性ポリマーはポリ(エチレングリコール)である、組成物。
【請求項19】
前記ポリ(エチレングリコール)が、ヒドロキシ、アルコキシ、置換アルコキシ、アルケノキシ、置換アルケノキシ、アルキノキシ、置換アルキノキシ、アリールオキシ及び置換アリールオキシからなる群から選択される末端キャッピング部分で末端がキャップされている、請求項17又は18に記載の組成物。
【請求項20】
前記ポリ(エチレングリコール)がメトキシで末端がキャップされている、請求項17又は18に記載の組成物。
【請求項21】
前記ポリ(エチレングリコール)がヒドロキシで末端がキャップされている、請求項17又は18に記載の組成物。
【請求項22】
前記ポリ(エチレングリコール)が、100ダルトン〜150,000ダルトンの範囲の見掛け平均分子量を有する、請求項17又は18に記載の組成物。
【請求項23】
前記ポリ(エチレングリコール)が、6,000ダルトン〜100,000ダルトンの範囲の見掛け平均分子量を有する、請求項22に記載の組成物。
【請求項24】
前記ポリ(エチレングリコール)が、10,000ダルトン〜85,000ダルトンの範囲の見掛け平均分子量を有する、請求項23に記載の組成物。
【請求項25】
前記ポリ(エチレングリコール)が、20,000ダルトン〜85,000ダルトンの範囲の見掛け平均分子量を有する、請求項24に記載の組成物。
【請求項26】
前記ポリ(エチレングリコール)が、53,000ダルトン〜75,000ダルトンの範囲の見掛け平均分子量を有する、請求項25に記載の組成物。
【請求項27】
前記結合体が線状ポリマーである、請求項17又は18に記載の組成物。
【請求項28】
前記結合体が分岐ポリマーである、請求項17又は18に記載の組成物。
【請求項29】
前記結合体が、VIII因子、VIIIa因子、VIII:C因子、及びVIII:vWF因子からなる群から選択される、請求項17又は18に記載の組成物。
【請求項30】
前記VIII因子部分がBドメイン欠失VIII因子である、請求項17又は18に記載の組成物 。
【請求項31】
前記Bドメイン欠失VIII因子が、ポリ(エチレングリコール)が共有結合されているシステイン残基に付加されるように修飾されている、請求項30に記載の組成物。
【請求項32】
前記結合体組換えVIII因子ポリペプチドである、請求項17又は18に記載の組成物。
【請求項33】
前記結合体が血液から得られるVIII因子ポリペプチドを含む、請求項17又は18に記載の組成物。
【請求項34】
アルブミンを含有しない、請求項17又は18に載の組成物。
【請求項35】
VIII因子活性を有さないタンパク質を含まない、請求項17又は18に載の組成物。
【請求項36】
凍結乾燥型である請求項17又は18に記載の組成物。
【請求項37】
液体の形態である請求項17又は18に記載の組成物。
【請求項38】
医薬として許容される賦形剤を更に含む、請求項17又は18に記載の組成物。
【請求項39】
前記結合体がチオエーテル結合を含む、請求項17又は18に記載の組成物。
【請求項40】
前記結合体がジスルフィド結合を含む、請求項17又は18に記載の組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−25747(P2012−25747A)
【公開日】平成24年2月9日(2012.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−156978(P2011−156978)
【出願日】平成23年7月15日(2011.7.15)
【分割の表示】特願2006−503916(P2006−503916)の分割
【原出願日】平成16年2月26日(2004.2.26)
【出願人】(597148884)ネクター セラピューティクス (30)
【Fターム(参考)】