説明

ポリマーおよびポリマー生成物

【課題】ポリマーおよびポリマー生成物を提供する。
【解決手段】本発明のポリマー生成物は、少なくとも1つのモノエチレン性不飽和ジカルボン酸モノマー約3 − 約50重量%、少なくとも1つのモノエチレン性不飽和モノカルボン酸モノマー約50 − 約97重量%、及び1つ又はそれ以上のカルボキシル非含有モノエチレン性不飽和モノマーから作られる。本発明のポリマー生成物は、バッチ法又は連続法により製造することができる。本発明のポリマー生成物は、少なくとも1つの連鎖移動剤を用い、且つポリマー生成物の分子量を30,000未満に保つために水溶液pH約3又はそれ未満で製造される。本発明のポリマー生成物は、洗浄剤、清浄配合物において、及び水循環システムにおいて、添加剤として有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、30,000未満の重量平均分子量を有する新規な水溶性ポリマー生成物を調製するための効率の良い水性遊離基付加重合法に関するものである。これらのポリマー生成物は、モノマーの総重量を基準として、少なくとも1つのモノエチレン性不飽和ジカルボン酸モノマー約3 − 約50重量%、少なくとも1つの水溶性モノエチレン性不飽和モノカルボン酸モノマー約50 − 約97重量%、及び1つ又はそれ以上のカルボキシル基非含有モノエチレン性不飽和モノマー0 − 約40重量%から形成される。更に詳しくは、本発明の方法は、少なくとも1つの連鎖移動剤を用い、水溶液pH3又はそれ未満において重合を維持することによって、ポリマー生成物の分子量を調節する効率の良い方法を提供する。連鎖移動剤は、ある種の用途では、ポリマー生成物の性能を向上させるさらなる利益を付与する。
【背景技術】
【0002】
30,000未満の重量平均分子量(Mw)を有する、モノエチレン性不飽和ジカルボン酸、モノエチレン性不飽和モノカルボン酸、及びカルボキシル基非含有モノエチレン性不飽和モノマーのポリマーは、水循環システムにおけるスケール抑制剤、解膠剤、分散剤として、及び洗浄(detergent)及び清浄(cleaning)配合物における付着抑制剤(encrustation inhibitors )、ビルダー、抗皮膜形成剤(anti-filming agents)、金属イオン封鎖剤、及び分散剤として有用である。
これらのポリマーを調製する際の公知の問題は、これらのポリマーの調製中に、分子量及び枝分れの程度とを調節することが難しい点にある。モノエチレン性不飽和ジカルボン酸モノマーを、低レベルで含む、即ち約3 − 約50重量%で含むポリマーを調製する際には、分子量の調節は特に難しい。これらのポリマーを調製する際の別の問題は、ポリマー生成物におけるモノマーの残留を、低レベルに、即ち好ましくは、ポリマー生成物の重量を基準として3.0重量%未満に抑えることが難しい点にある。
【0003】
ポリマーの分子量を調節するための1つの解決策は、以下「`980特許」と呼称する Hughes らによる米国特許第5,100,980号において開示されている。`980特許では、モノエチレン性不飽和ジカルボン酸を約3 − 約25重量%及びモノエチレン性不飽和モノカルボン酸を75 − 約97重量%含む、25,000未満の重量平均分子量を有するコポリマーを調製する方法が開示されている。`980特許で説明されている方法では、重合開始剤、銅塩重合調節剤(polymerization moderator )、及び中和剤の存在下でモノマーが重合されることが必要である。`980特許において、銅塩調節剤の存在は、モノマーの高い転化率を促進し、生成するコポリマーの分子量を調節すると考えられている。
【0004】
以下「`988特許」と呼称する Hughes らによる米国特許第5,244,988号では、エチレン性不飽和ジカルボン酸モノマーの低分子量コポリマーを製造するための別の方法が開示されている。`988特許におけるコポリマーは、金属塩活性剤の存在下で、モノマーと中和剤とを共に供給することによって製造される。製造されるコポリマーは、約1000 − 約100,000の分子量を有し、モノマーを共に供給するのは、一層均質な組成物のコポリマーを製造するためであると考えられている。
【特許文献1】米国特許第5,100,980号明細書
【特許文献2】米国特許第5,244,988号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、`980特許及び`988特許において開示されている方法によると、完全に又は部分的に中和されているコポリマーが製造される。いくつかの用途では、性能又はコストの観点から、中和されていないポリマー生成物を直接製造することが望ましい。更に、`988特許及び`980特許では、では、加工条件の故に、暗黄色から茶色に着色したポリマー生成物が製造される。
【0006】
従って、中和剤を用いずに、30,000未満の重量平均分子量を有する、モノエチレン性不飽和ジカルボン酸3 − 50重量%及びモノエチレン性不飽和モノカルボン酸50 − 97重量%から形成されるポリマーを製造することは、本発明の目的である。
又、モノエチレン性不飽和ジカルボン酸及びモノエチレン性不飽和モノカルボン酸から形成される低着色のポリマーを製造するための方法を提供することも本発明の目的である。
更に又、現在用いられているポリマーに匹敵する又は前記ポリマーを超える改良された性能を有する、モノエチレン性不飽和ジカルボン酸及びモノエチレン性不飽和モノカルボン酸から形成されるポリマーを製造することも本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
我々は、以下の工程:即ち、
a)最初に反応器の中に水を充填する工程;
b)i)少なくとも1つの水溶性連鎖移動剤、
ii)少なくとも1つの水溶性開始剤、
iii)少なくとも1つの金属促進剤、
iv)反応器に加えられるモノマーの総重量を基準として、少なくとも1つの水溶性モノエチレン性不飽和モノカルボン酸モノマー約50 − 約97重量%、
v)反応器に加えられるモノマーの総重量を基準として、少なくとも1つのモノエチレン性不飽和ジカルボン酸モノマー約3 − 約50重量%、
vi)反応器に加えられるモノマーの総重量を基準として、1つ又はそれ以上の水溶性カルボキシル基非含有モノエチレン性不飽和モノマー0 − 約40重量%
を反応器の中に加えて反応混合物を作る工程;
c)反応混合物を、反応時間、約60℃ − 約120℃の温度に保つ工程;
d)反応時間、反応混合物をpH3又はそれ未満に保つ工程;及び
e)水溶性ポリマー生成物を回収する工程;
を含み、連鎖移動剤、開始剤、及びモノエチレン性不飽和モノカルボン酸モノマーが、反応時間の少なくとも25%にわたって反応器に加えられるを含む水性遊離基付加重合法を発見した。
【0008】
我々は、a)少なくとも1つのモノエチレン性不飽和ジカルボン酸(以下「ジカルボン酸モノマー」と呼ぶ)、b)少なくとも1つのモノエチレン性不飽和モノカルボン酸(以下「モノカルボン酸モノマー」と呼ぶ)、及び任意にc)1つ又はそれ以上のカルボキシル基非含有モノエチレン性不飽和モノマー(以下「カルボキシル基非含有モノマー」と呼ぶ)から形成される水溶性ポリマー生成物を製造するための効率が良く且つコストの低い水性遊離基重合法を発見した。この方法は、少なくとも1つのジカルボン酸モノマーを約3 − 約50重量%、少なくとも1つのモノカルボン酸モノマーを約50 − 約97重量%、及び1つ又はそれ以上のカルボキシル基非含有モノマーを0 − 40重量%含むポリマー生成物を製造するための方法を提供する。本発明方法によって製造されたポリマー生成物は、30,000未満の分子量を有する。30,000未満の分子量を達成するために、本発明方法は、少なくとも1つの開始剤と組み合わせて、少なくとも1つの連鎖移動剤及び少なくとも1つの金属促進剤を用いる。更に、本発明の方法は、pH約3又はそれ未満の水溶液において行われる。pH約3又はそれ未満において重合を行うと、ジカルボン酸モノマーは、連鎖移動剤とのみ反応するのではなく、他のモノマーと反応することができる。
【0009】
本発明の方法は、現在用いられているポリマーに匹敵する又は前記ポリマーを超える改良された性能特性を有するポリマー生成物を製造するというさらなる利点を有する。得られるポリマー生成物は、ポリマー生成物の最終使用者に望ましいであろう低着色のものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の方法では、まず最初に水を反応器の中に入れる。次に、以下の成分:即ちi)少なくとも1つの水溶性連鎖移動剤、ii)少なくとも1つの水溶性開始剤、iii)少なくとも1つの金属促進剤、iv)少なくとも1つのモノカルボン酸モノマー、v)少なくとも1つのジカルボン酸モノマー、及び任意にvi)1つ又はそれ以上のカルボキシル基非含有モノマーを反応器の中に加えて、反応混合物を作る。その反応混合物を、反応時間、約60℃ − 約120℃の反応温度に保ち、モノマーを重合する。「反応時間」とは、反応器に成分が添加される時間と、反応混合物が反応温度に保たれている任意の追加時間とを意味している。又、反応混合物は、反応時間、pH約3又はそれ未満の水溶液として保たれる。連鎖移動剤、開始剤、及びモノカルボン酸モノマーは、反応時間の少なくとも25%にわたって反応器中に添加される。
【0011】
ジカルボン酸モノマーは、反応時間のある%で反応器に加えても良く、又は、ジカルボン酸モノマーの一部又はすべてを最初に充填した水に加えても良い。好ましくは、反応時間のある%でジカルボン酸モノマーを供給することによって、ジカルボン酸モノマーを反応器に加える。ジカルボン酸モノマーは、反応時間の約10 − 100%にわたって、好ましくは約10 − 約75%にわたって、最も好ましくは約15 − 約60%にわたって供給する。
【0012】
ジカルボン酸モノマーは、線形(一定)又は非線形速度で連続的に反応器に供給しても良く、又は断続的に反応器に供給しても良い。「断続的に」とは、反応器に供給されるジカルボン酸モノマーが、反応時間のある%の間に、供給及び停止を繰り返すことを意味している。例えば、この断続的供給手順では、ジカルボン酸モノマーは、反応時間の約10 − 約50%の間供給した後、ほぼ同じ時間の間供給を停止することができる。好ましくは、ジカルボン酸は、断続的に供給する。
【0013】
金属促進剤は、反応時間のある%で反応器に加えても良く、又は金属促進剤の一部又はすべてを最初に充填した水に加えても良い。更に、金属促進剤は、反応時間におけるある時点で一度に反応器の中に充填しても良い。好ましくは、金属促進剤は、反応時間のある%で反応器に加えられる。反応時間のある%で反応器に加える際には、金属促進剤は、線形又は非線形速度で連続的に反応器中に供給しても良く、又は断続的に反応器中に供給しても良い。反応時間のある%で反応器に加える際には、金属促進剤は、反応時間の約1 − 約100%で反応器中に加えることができる。
【0014】
連鎖移動剤は、反応時間の少なくとも25%にわたって反応器に加えられる。任意に、反応器に加えられる連鎖移動剤の総量の最大15%までを、初期充填水に対して加えても良い。好ましくは、すべての連鎖移動剤を、反応時間の少なくとも25%にわたって反応器中に供給する。連鎖移動剤は、反応時間の、好ましくは少なくとも30%、更に好ましくは約40 − 約85%で供給する。連鎖移動剤は、線形又は非線形速度で連続的に反応器中に供給しても良く、又は断続的に反応器中に供給しても良い。
【0015】
開始剤は、反応時間の少なくとも25%にわたって反応器に加えられる。任意に、反応器に加えられる開始剤の総量の最大15%までを、初期充填水に対して加えても良い。好ましくは、反応時間の少なくとも25%にわたって、すべての開始剤を反応器中に供給する。好ましくは、開始剤は、反応時間の少なくとも50%にわたって供給する。開始剤は、線形又は非線形速度で連続的に反応器中に供給しても良く、又は断続的に反応器中に供給しても良い。
【0016】
モノカルボン酸モノマーは、反応時間の少なくとも25%にわたって反応器中に供給される。任意に、反応器に加えられるモノカルボン酸モノマーの総量の最大15%までを、初期充填水に対して加えても良い。好ましくは、反応時間の少なくとも25%にわたって、すべてのモノカルボン酸モノマーを反応器中に供給する。好ましくは、モノカルボン酸モノマーは、反応時間の少なくとも50%にわたって供給する。モノカルボン酸モノマーは、線形又は非線形速度で連続的に反応器中に供給しても良く、又は断続的に反応器中に供給しても良い。
カルボキシル基非含有モノマーは反応時間のある%で反応器中に加えても良く、又はカルボキシル基非含有モノマーの一部又はすべてを初期充填水に対して加えても良い。カルボキシル基非含有モノマーを添加する好ましい方法は、カルボキシル基非含有モノマーの反応性に左右される。カルボキシル基非含有モノマーの反応性がモノカルボン酸モノマーと同等である場合は、カルボキシル基非含有モノマーを、モノカルボン酸のための好ましい手順に従って加えるべきである。しかしながら、カルボキシル基非含有モノマーの反応性がジカルボン酸モノマーと同等である場合は、カルボキシル基非含有モノマーを、ジカルボン酸のための好ましい手順に従って加えるべきである。
【0017】
本発明方法の好ましい態様では、開始剤及びモノカルボン酸モノマーを、同じ反応時間にわたって、反応器に供給する。連鎖移動剤は、開始剤及びモノカルボン酸モノマーに比べて短い時間で供給する。好ましくは、連鎖移動剤は、開始剤及びモノカルボン酸モノマーに比べて約10 − 約25%短い時間で供給する。又、ジカルボン酸モノマーも、開始剤及びモノカルボン酸モノマーに比べて短い時間で供給する。好ましくは、モノカルボン酸モノマーは、開始剤及びモノカルボン酸モノマーに比べて約25 − 約75%短い時間で供給する。
【0018】
好ましくは、開始剤、連鎖移動剤、金属促進剤、ジカルボン酸モノマー、モノカルボン酸モノマー、及びカルボキシル基非含有モノマーの供給は、全て別々の流れとして反応器中に供給する。しかしながら、当業者に公知の手順に従って、供給流れを組み合わせることもできる。例えば、不都合な反応が予想されない場合は、モノマーを1つの供給流に組み合わせても良く、又は例えば連鎖移動剤及び金属促進剤を1つの供給流に組み合わせても良い。
【0019】
本発明の方法では、反応は、pH約3又はそれ未満、更に好ましくはpH約2又はそれ未満、及び最も好ましくはpH1.8又はそれ未満に保つべきである。本発明方法の最も好ましい態様では、反応器の中に加える前に、カルボン酸基を含むモノマーを、例えば水酸化ナトリウムのような通常の塩基で中和しない;反応時間の間は中和剤を反応器の中に加えない。しかしながら、反応混合物のpHが約3又はそれ未満に保たれている限りにおいては、部分的に中和されたカルボン酸モノマーを加えるか、又は反応器の中に中和剤を加えることができる。使用可能な中和剤としては、例えば水酸化アンモニウムのような通常の塩基、又は例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、又は水酸化リチウムのようなアルカリ金属塩基が挙げられる。
【0020】
反応時間の間の反応混合物の温度は、反応混合物の沸点未満に保つべきである。反応混合物の温度は、反応時間にわたって、約60℃ − 約120℃、好ましくは約70℃ − 約100℃、最も好ましくは約70℃ − 約80℃に保つべきである。反応混合物の圧力は、ほぼ大気圧から、約40ポンド/平方インチゲージ(psig)までの圧力に保つべきである。好ましくは、反応混合物の圧力は、大気圧に保つ。重合は、空気又は例えば窒素又はアルゴンのような任意の不活性雰囲気中において行うことができる。
【0021】
本発明方法において用いることができるジカルボン酸モノマーとしては、モノエチレン性不飽和ジカルボン酸、及び1分子当たり4 − 約10個の炭素原子、好ましくは約4 − 約6個の炭素原子を有するシスジカルボン酸の無水物が挙げられる。適当なジカルボン酸モノマーとしては、例えばマレイン酸、イタコン酸、メサコン酸、フマル酸、シトラコン酸、アルファーメチレングルタル酸、及び例えば無水マレイン酸、シス-3,4,5,6-テトラヒドロフタル酸無水物のようなシスジカルボン酸の無水物、及びそれらの組み合わせが挙げられる。好ましくは、ジカルボン酸モノマーは、マレイン酸、イタコン酸、メサコン酸、フマル酸、シトラコン酸、及び例えば無水マレイン酸のようなシスジカルボン酸の無水物、及びそれらの組み合わせから成る群より選択し;最も好ましくは、無水マレイン酸及びマレイン酸、及びそれらの組み合わせから成る群より選択する。反応器に加えられるモノマーの総重量を基準として、ジカルボン酸モノマーの重量%は、約3 − 約50重量%、好ましくは約5 − 約35重量%、更に好ましくは約5 − 約25重量%、及び最も好ましくは約5 − 約15重量%であることができる。
【0022】
本発明方法において有用なモノカルボン酸モノマーとしては、1分子当たり約3 − 約6個の炭素原子を含むモノエチレン性不飽和モノカルボン酸が挙げられる。有用なモノカルボン酸モノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、酢酸ビニル、クロトン酸、及びそれらの組み合わせが挙げられる。最も好ましいモノカルボン酸モノマーは、アクリル酸、メタクリル酸、及びそれらの組み合わせである。モノマーの総重量を基準として、モノカルボン酸モノマーの重量%は、約50 − 約97重量%、好ましくは約65 − 約95重量%、更に好ましくは約75 − 約95重量%、及び最も好ましくは約85 − 約95重量%であることができる。
【0023】
カルボキシル基非含有モノマーは、水溶性モノエチレン性不飽和カルボキシル基非含有モノマーであり、例えばメチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、ブチルメタクリレート及びイソブチルメタクリレートのようなアクリル酸又はメタクリル酸のアルキルエステル;例えばヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、及びヒドロキシプロピルメタクリレートのようなアクリル酸又はメタクリル酸のヒドロキシアルキルエステル;アクリルアミド、メタクリルアミド、N−第三−ブチルアクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド;アクリロニトリル、メタクリロニトリル;アリルアルコール;アリルスルホン酸、メタリルスルホン酸;アリルホスホン酸;ビニルホスホン酸;ジメチルアミノエチルアクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート;ホスホエチルメタクリレート;N−ビニルピロリドン、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルイミダゾール;酢酸ビニル、スチレン、ビニルスルホン酸及びその塩;及び2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸及びその塩;及びそれらの組み合わせが挙げられる。反応器に加えられるモノマーの総重量を基準として、カルボキシル基非含有モノマーの重量%は、約0 − 約40重量%、好ましくは約0 − 20重量%、最も好ましくは約0 − 約10重量%であることができる。
【0024】
金属促進剤は、ジカルボン酸モノマーのポリマー生成物への転化を高める。本発明方法において有用な金属促進剤は、例えばコバルト塩、鉄塩、銅塩、セリウム塩、ニッケル塩、マンガン塩、モリブデン塩、ジルコニウム塩、バナジウム塩、亜鉛塩、及びそれらの組み合わせのような水溶性遷移金属塩である。有用な水溶性金属塩は、水溶液において金属イオンを発生させることができなければならない。有用な水溶性金属塩としては、硫酸塩、硝酸塩、塩化物、臭化物、酢酸塩、燐酸塩、及びグルコネート;例えば硫酸第一鉄・七水和物、酢酸第一銅、酢酸第一鉄、酢酸マンガン、酢酸第二銅、塩化第一鉄及び塩化第二鉄、燐酸第一鉄及び燐酸第二鉄、塩化第一銅及び塩化第二銅、臭化第一銅及び臭化第二銅、硝酸第二銅、硫酸第二鉄、臭化マンガン、塩化マンガン、及びそれらの組み合わせが挙げられる。好ましくは、金属促進剤は、鉄の水溶性金属塩、銅の水溶性金属塩、及びそれらの組み合わせであり、最も好ましくは鉄の水溶性塩である。
金属促進剤の反応混合物における濃度は、反応器に加えたモノマーの総重量を基準として、金属イオンが約0.25 − 約250ppmである。好ましくは、金属イオンの濃度は、約1 − 約25ppm、最も好ましくは約3 − 約20ppmである。
【0025】
本発明方法にとって適当な水溶性開始剤は、任意の公知の水溶性遊離基開始剤、水溶性レドックス開始剤、及びそれらの組み合わせである。反応混合物に加えられる開始剤の総量は、加えられたモノマーの総重量を基準として、約0.5− 約25重量%、好ましくは約1 − 約6重量%である。
適当な遊離基開始剤としては、過硫酸塩、過エステル、過炭酸塩、過燐酸塩、過酸化水素、ある種のアルキルヒドロペルオキシド、ジアルキルペルオキシド、ケトンペルオキシド、及びアゾ開始剤、並びにそれらの組み合わせが挙げられる。遊離基開始剤の代表的な例としては、例えば過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過燐酸ナトリウム、過燐酸アンモニウム、過酸化水素、第三ブチルヒドロペルオキシド、ジ−第三ブチルペルオキシド、第三アミルヒドロペルオキシド、メチルエチルケトンペルオキシド、2,2−アゾビス(シアノ吉草酸)、及びそれらの組み合わせが挙げられる。
適当な水溶性レドックス開始剤としては、限定するものではないが、重亜硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、過硫酸塩、次亜燐酸塩、イソアスコルビン酸、ホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウム、及びそれらの組み合わせが挙げられる。
本発明のポリマー生成物を製造するための好ましい方法では、例えば過硫酸ナトリウム又は過硫酸カリウムのような過硫酸塩開始剤を用いる。
【0026】
本発明方法で有用な連鎖移動剤としては、例えば亜硫酸ナトリウム及び亜硫酸カリウム、重亜硫酸ナトリウム及び重亜硫酸カリウム、及びピロ亜硫酸ナトリウム及びピロ亜硫酸カリウムのような亜硫酸類のアルカリ金属塩;例えば四塩化炭素、ブロモホルム、ブロモトリクロロメタンのようなハロゲン含有化合物;β−メルカプトプロピオン酸;C−Cアルデヒド;例えばヒドロキシエチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、オクチルメルカプタン、テトラデシルメルカプタン、ヘキサデシルメルカプタン、ブチルチオグリコレート、イソオクチルチオグリコレート、及びドデシルチオグリコレートのようなメルカプタン及びチオエステル;例えばイソプロパノールのような第二アルコール;例えばチオグリコール酸のような硫黄含有酸;及びそれらの組み合わせが挙げられる。好ましくは、連鎖移動剤は、亜硫酸類のアルカリ金属塩であり、最も好ましくは重亜硫酸又はピロ亜硫酸のアルカリ金属塩である。連鎖移動剤は、反応混合物に加えたモノマーの総重量を基準として、約1 − 約35重量%、好ましくは約5 − 約20重量%の量で用いられる。
選択した連鎖移動剤によっては、本発明方法で用いられる連鎖移動剤は、ポリマー構造中に組み込まれるというさらなる利点及びある種の用途でポリマーの性能を向上させるという利点を有する。
【0027】
本発明方法は、バッチ法又は連続法で行うことができる。「連続法」とは、成分を反応器の中に加えつつ、反応混合物の一部を反応器から取り出すことを意味している。連続法では、反応器の中に加える成分の速度は、反応混合物の取り出し速度と等しい。又、本発明方法は、工程の一部がバッチ法で、工程の別の一部が連続法で行われる半連続法で行うこともできる。好ましくは、本発明方法は、連続法で運転される。本発明方法は、2つ以上の反応器で行うことができる。
【0028】
本発明方法の反応時間は、反応混合物に加えられた金属促進剤の量及び反応温度のような変数に左右される。しかしながら、典型的には、バッチ法では、反応時間は約1 − 約5時間である。好ましくは、反応時間は、3時間未満であり、更に好ましくは2時間未満である。反応時間は、任意に、保持時間を含むことができ、前記保持時間においては、すべての配合物を反応器中に加えた後、反応混合物を約60℃ − 約120℃の反応温度に保つ。保持時間は、好ましくは60分未満である。連続法では、反応時間は、反応混合物が、反応温度で反応器中に滞留する時間の平均である。連続法についての反応時間は、以下「滞留時間」と呼称する。滞留時間は少なくとも30分であり、好ましくは約45 − 約60分である。
反応時間の終了時、反応混合物の総重量を基準として、反応混合物における固形分の重量%は、約30 − 約65重量%、好ましくは約40 − 約60重量%であるべきである。
反応時間の終了時、ポリマー生成物におけるジカルボン酸モノマーとモノカルボン酸モノマーとの合計残留量は、ポリマー生成物の総重量を基準として、2.7重量%未満、好ましくは1重量%未満、及び最も好ましくは0.5重量%未満であるべきである。
【0029】
重合後に、未反応のモノマーと連鎖移動剤とを掃去するのを助けることができる1つ又はそれ以上の開始剤、還元剤、又は掃去モノマー(scavenging monomer)を加えることによって、残留しているモノマー及び連鎖移動剤の量を任意に低下させることができる。好ましくは、開始剤、還元剤、又は掃去モノマーの任意の重合後添加は、反応温度又は反応温度未満において行われる。一般的に、重合に適する開始剤のいずれも、ポリマー混合物中に残留しているモノマー及び連鎖移動剤の含量を低下させるのに適している。
【0030】
典型的に、ポリマー生成物中の残留モノマー及び連鎖移動剤の含量を低下させるために添加される開始剤、還元剤、又はモノマーの量は、モノマーの総重量を基準として、約0.5 − 約5.0重量%、好ましくは約1.0 − 約4.0重量%である。
【0031】
重合後に、ポリマー生成物は、回収されてそのまま使用されるか、又はポリマー固体を単離するための例えば噴霧乾燥のような公知の技術によって分離され、又は水で希釈して40重量%未満まで反応物の固体分%を調整して使用される。所望ならば、ポリマー生成物中にある過剰の開始剤を、例えばピロ亜硫酸ナトリウム又はイソアスコルビン酸のような1つ又はそれ以上の通常の還元剤で還元することができる。更に、ポリマー生成物のpHを、例えば、水酸化ナトリウムのような通常の塩基を添加することによって調整することができる。
【0032】
本発明方法によって製造されるポリマー生成物の重量平均分子量(Mw)は、分子量(Mw)4500のポリ(アクリル酸)の比較標準に基づくゲル透過クロマトグラフィー(GPC)で測定した場合に、約500 − 約30,000、好ましくは約1000 − 約20,000、更に好ましくは約1000 − 約15,000、及び最も好ましくは約1,000 − 約10,000である。ポリマー生成物の多分散性(重量平均分子量Mwを数平均分子量Mnで割った値)は、2.5未満、好ましくは2未満、及び最も好ましくは1.8未満である。
【0033】
本発明方法によって製造されたある種のポリマー生成物は、異なる方法によって製造された同様な分子量及びモノマー組成のポリマーと比較して、改良された性能を示すという点でユニークである。これらのユニークなポリマー生成物は、本発明方法で用いられる連鎖移動剤によって一端又は両端で停止されている。連鎖移動剤は、亜硫酸、重亜硫酸、又はピロ亜硫酸塩のアルカリ金属塩、及びそれらの組み合わせから成る群より選択される。好ましくは、ポリマー生成物は、マレイン酸又は無水マレイン酸であるジカルボン酸モノマーと、アクリル酸又はメタクリル酸であるモノカルボン酸とから形成される。ポリマー生成物は、製造後に、部分的に又は完全に中和することができる。
【0034】
本発明方法によって製造されたポリマー生成物は、硬質表面(hard surfaces);家庭用、工業用及び施設用(institutional )の洗濯のために;及び手動又は自動皿洗いのために用いられる例えば清浄(cleaning)又は洗浄(detergent)配合物のような清浄組成物における添加剤として有用である。例えば、ポリマー生成物は、ビルダー、付着抑制剤、再付着防止剤、抗皮膜形成剤、金属イオン封鎖剤、汚染除去剤(soil removal agent)、清浄及び洗浄配合物における分散剤として用いることができる。
又、ポリマー生成物は、例えば冷却水塔、ボイラー、水脱塩プラント(water desalination plant)、砂糖回収プラント、オイル掘穿液(oil drilling well)、逆浸透装置、蒸気発電所、及び熱交換装置において用いられるシステムのような任意の水循環システムにおけるスケール抑制及び腐食調節に関しても有用である。
【0035】
又、本発明のポリマー生成物は、例えば顔料、カオリンクレー、セラミックス、炭酸カルシウム、ゼオライト、二酸化チタンのような無機粒子のための分散剤として;例えばラテックス塗料及びうわぐすり(glaze )のような水性エマルジョンのための分散剤として;及び掘穿泥水のための分散剤として用いることもできる。更に又、ポリマー生成物は、紙を製造する際に、分散剤として有用に用いることもできる。
【0036】
ポリマー生成物は、例えば清浄及び洗浄配合物のような清浄組成物における添加剤として特に有用である。本発明のポリマー生成物を含む清浄及び洗浄配合物は、例えば粉末、ビーズ、フレーク、バー、タブレット、ヌードル、液体、ペースト、及びスラリーのような通常の物理形態のいずれかの形態であることができる。清浄及び洗浄配合物は、公知の方法のいずれかで調製され且つ用いられ、通常は界面活性剤、及び任意には沈殿剤又は金属イオン封鎖剤ビルダーのいずれかを基剤としている。
【0037】
適当な界面活性剤は、例えばC−C12アルキルベンゼンスルホネート、C12−C16アルカンスルホネート、C12−C16アルキルサルフェート、C12−C16アルキルスルホスクシネート、及びC12−C16硫酸化エトキシ化アルカノールのような陰イオン性界面活性剤、及び例えばC−C12アルキルフェノールエトキシレート、C12−C20アルカノールアルコキシレート及びエチレンオキサイドとプロピレンオキサイドとのブロックコポリマーのような非イオン性界面活性剤がある。任意に、ポリアルキレンオキサイドの末端基をブロックして、ポリアルキレンオキサイドのフリーなOH基をエーテル化、エステル化、アセタール化及び/又はアミノ化することができる。別の改質は、ポリアルキレンオキサイドのフリーなOH基をイソシアネートと反応させることから成る。又、非イオン性界面活性剤としては、C−C18アルキルグルコシド、及びアルコキシ化によって前記アルキルグルコシドから得られるアルコキシ化生成物、特にアルキルグルコシドをエチレンオキサイドと反応させることによって得られる生成物も挙げられる。洗浄剤において用いることができる界面活性剤は両性であることもでき、それらは石鹸であることができる。
【0038】
一般的に、界面活性剤は、清浄及び洗浄配合物の2 − 50重量%、好ましくは5 − 45重量%を構成する。液体の洗浄又は清浄配合物は、通常は、成分として、前記配合物中に液体の又は固体であっても可溶性の又は少なくとも分散可能な界面活性剤を含む。この目的に適する界面活性剤は、液体のポリアルキレンオキサイド又はポリアルコキシル化化合物であり、生成物は粉末洗浄剤において用いることもできる
【0039】
清浄及び洗浄配合物に含まれる金属イオン封鎖剤ビルダーとしては、例えばホスフェート、詳しくはピロホスフェート、ポリホスフェート、及び特にトリポリ燐酸ナトリウムを挙げることができる。更なる例としては、ゼオライト、炭酸ナトリウム、ポリ(カルボン酸)、ニトリロ三酢酸、クエン酸、酒石酸、前記酸の塩、及びモノマー、オリゴマー又はポリマー性ホスホネートがある。
【0040】
清浄及び洗浄配合物の調製で用いられる各物質の量は、配合物の総重量を基準として、例えば炭酸ナトリウム85重量%以下、ホスフェート45重量%以下、ゼオライト40重量%以下、ニトリロ三酢酸(nitrilotriacetic acid )及びホスホネート30重量%以下、及びポリカルボン酸30重量%以下である。ある種の液体洗浄剤市場では、ビルダーの使用は、通常は、クエン酸及びその塩、又はクエン酸塩と脂肪酸石鹸とを組み合わせたものに限定されており、他の市場では、液体洗浄剤組成物は、全洗浄効力を補助するために、中間物レベルの石鹸を約15重量%、又はトリポリホスフェートを約20重量%混和している。
【0041】
清浄組成物に対する、特に洗浄配合物に対する他の通常の添加剤は、30重量%以下の量で用いられる漂白剤;25重量%以下の量で用いられる例えばシリケートのような腐食抑制剤;20重量%以下の量で用いられる転染防止剤(dye transfer inhibiting agents);及び5重量%以下の量で用いられる灰色化抑制剤(graying inhibitors)である。適当な漂白剤としては、例えば過硼酸塩、過炭酸塩又は例えばクロロイソシアヌレートのような塩素発生物質がある。腐食抑制剤として用いられる適当なシリケートとしては、例えば珪酸ナトリウム、二珪酸ナトリウム及びメタ珪酸ナトリウムがある。適当な転染抑制剤としては、例えばポリ(ビニルピロリドン)がある。灰色化抑制剤としては、例えばカルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、及び1,000 − 15,000の分子量を有する酢酸ビニルとポリアルキレンオキサイドとのグラフトコポリマーがある。清浄組成物及び特に洗浄剤配合物において用いられる他の通常の任意の添加剤は、蛍光増白剤、酵素及び香料である。
【0042】
粉末洗浄剤配合物は、例えば硫酸ナトリウム、塩化ナトリウム、又は硼酸ナトリウムのような不活性希釈剤を50重量%以下含むこともできる。洗浄剤配合物は無水であるか、又は水を、少量、例えば10重量%以下の量で含むことができる。液体洗浄剤は、不活性希釈剤として水を80重量%以下で含むことができる。
【0043】
本発明方法から製造されたポリマー生成物の1つ又はそれ以上を、所望の利益を提供する量で清浄及び洗浄配合物を含む清浄組成物に加えることができる。一般的に、この量は、配合物の総重量を基準として、ポリマー生成物を約0.5−約50重量%、好ましくは約1−約40重量%である。例えば、ポリマー生成物を、洗浄及び清浄配合物においてビルダーとして用いる場合、配合物における量は、配合物の総重量を基準として約5−約40重量%である。いくつかの場合では、特に汚物除去剤及び汚物再付着抑制剤として用いるときには、実際に用いられるポリマー生成物の量は、清浄及び洗浄配合物の総重量を基準として、好ましくは約1−10重量%である。本発明において特に重要な用途は低ホスフェート洗浄剤及び清浄剤の添加剤の用途であり、特に、炭酸ナトリウムのような沈殿剤ビルダーを含む場合に重要である。本発明のポリマー生成物は、炭酸ナトリウムを50重量%を超える量で含む洗浄及び清浄配合物において、付着を防止するのに特に有用である。低ホスフェート配合物は、トリポリ燐酸ナトリウム又はピロホスフェートを最大で10重量%まで含む。
【0044】
所望ならば、本発明方法に従って調製されたポリマー生成物を、他のアクリル酸ホモポリマーと共に、洗浄剤配合物において用いることができる。現在、アクリル酸ホモポリマーは、洗浄剤配合物において汚物再付着抑制剤として用いられている。本発明のポリマー生成物は、中和されていない形態、部分的に中和された形態、又は完全に中和された形態で洗浄及び清浄配合物に対して加えることができる。
【0045】
本発明方法によって製造されたポリマー生成物の他の好ましい用途としては、水循環システムにおける使用がある。水循環システムでは、ポリマー生成物は分散剤として作用し、又、ポリマー生成物の半量未満が結晶形成又はスケーリングに対するスレッシュホールドインヒビター(threshold inhibitor )として作用する場合には、抗成核剤としても作用する。本発明のポリマー生成物が有用である水循環システムとしては、冷却水塔、ボイラー、水脱塩プラント、砂糖回収プラント、オイル掘穿液、逆浸透装置、蒸気発電所、及び熱交換装置のために用いられているシステムが挙げられる。結晶形成又はスケールリングを抑制するために用いるときには、ポリマーは、例えば無機又は有機ホスフェート又はホスホネート、又は金属塩(例えば亜鉛化合物)のような腐食抑制剤としばしば組合わされる。
【0046】
ポリマー生成物は、0.1−500重量ppmの量で、水性システムに直接加えることができる。又、ポリマー生成物を、1つ又はそれ以上の不活性希釈剤を含みポリマー生成物が、組成物において20−60重量%のレベルで存在している濃縮水性組成物としてシステムに加えることもできる。
【実施例】
【0047】
実施例
以下、実施例を掲げて、本発明方法に従うポリマー生成物の調製を説明する。下記実施例は説明のためのものであり、特許請求の範囲で規定されている本発明の範囲を限定するものであると解釈すべきではない。
実施例1−16における重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、重量平均分子量4,500のポリ(アクリル酸)標準を用いた水性ゲル透過クロマトグラフィー(GPC)によって測定した。
ポリマー生成物の色は、ASTM試験法D1209に従うプラチナ−コバルトカラー試験法を用いて測定した。プラチナ−コバルトカラー試験法では、試験法に従って調製されたプラチナ−コバルト標準によって、1−500のカラー標準番号を付けた。色に関して分析されるポリマー溶液は、視覚によってプラチナ−コバルト標準と比較し、ポリマー溶液の色に最も近い標準に相当するカラー標準番号が与えられている。カラー標準番号1は、溶液がほとんど無色であることを意味しており、500は、溶液が暗褐色であることを意味している。
【0048】
バッチ法実施例
アクリル酸95重量%/無水マレイン酸5重量%
実施例1
メカニカルスターラー、還流冷却器、及び熱電対を取り付けた1リットル四つ口丸底フラスコの中に、脱イオン水177.2g、無水マレイン酸14.0g、及び脱イオン水中硫酸第一鉄0.15重量%の金属促進剤溶液6.6gを入れて反応混合物を作った。その反応混合物を72℃まで加熱してから、以下の3つの分離供給:即ち1)氷アクリル酸266.0g、2)ピロ亜硫酸ナトリウム26.6gと脱イオン水90gとのピロ亜硫酸ナトリウム供給溶液、3)過硫酸ナトリウム6.6gと脱イオン水42.0gとの開始剤溶液の供給を同時に開始した。ピロ亜硫酸ナトリウム供給溶液を75分間で供給し、氷アクリル酸及び開始剤溶液を90分間で供給した。3つの供給が終わったら、反応混合物を72℃において15分間保持し、次に40℃まで冷却した。反応混合物を冷却した後、水酸化ナトリウム50重量%水溶液24.5g、及び過酸化水素30重量%水溶液1.7gを、35 − 40℃の温度に保ちながら加えた。
得られたポリマー生成物溶液は、水溶液pH3.0及び固形分50.7重量%を有していた。得られたポリマー生成物溶液に関する結果を表1に示す。
【0049】
アクリル酸90重量%/無水マレイン酸10重量%
実施例2−連鎖移動剤18.6重量%
実施例1で説明した装置に対して、脱イオン水125.0g、無水マレイン酸13.3g、及びピロ亜硫酸ナトリウム0.68gと脱イオン水2.0gとのピロ亜硫酸ナトリウム溶液、及び脱イオン水中硫酸第一鉄0.15重量%の金属促進剤溶液3.3gを入れて反応混合物を作った。その反応混合物を72℃まで加熱してから、3つの分離供給:即ち1)氷アクリル酸133.0g、2)ピロ亜硫酸ナトリウム26.6gと脱イオン水50gとのピロ亜硫酸ナトリウム供給溶液、3)過硫酸ナトリウム5.0gと脱イオン水21.0gとの開始剤溶液の供給を同時に開始した。ピロ亜硫酸ナトリウム供給溶液を75分間で供給し、氷アクリル酸及び開始剤溶液を90分間で供給した。3つの供給が終わったら、反応混合物を72℃において15分間保持してから、脱イオン水1g中過硫酸ナトリウム0.05g溶液を、モノマーチェース(monomer chase )として15分間にわたって供給した。このモノマーチェースを2度繰り返してから、反応混合物を40℃まで冷却した。反応混合物を冷却した後、水酸化ナトリウム50重量%水溶液166.0gを、温度を35 − 40℃に保ちながら加えた。
得られたポリマー生成物溶液は、水溶液pH7.0及び固形分42.9重量%を有していた。得られたポリマー生成物溶液に関する結果を表1に示す。
【0050】
実施例3−連鎖移動剤8.1重量%
メカニカルスターラー、還流冷却器、熱電対、及び4つの入口を取り付けた20リットル反応器の中に、脱イオン水6644.4g、無水マレイン酸804.4g、ピロ亜硫酸ナトリウム23.7gと脱イオン水121.0gとのピロ亜硫酸ナトリウム溶液、及び脱イオン水中硫酸第一鉄0.15重量%の金属促進剤溶液199.6gを入れて反応混合物を作った。その反応混合物を72℃まで加熱してから、3つの分離供給:即ち1)氷アクリル酸8043.9g、2)ピロ亜硫酸ナトリウム695.9gと脱イオン水1282.4gとのピロ亜硫酸ナトリウム供給溶液、3)過硫酸ナトリウム143.5gと脱イオン水1270.1gとの開始剤溶液の供給を同時に開始した。ピロ亜硫酸ナトリウム供給溶液を60分間で供給し、氷アクリル酸及び開始剤溶液を90分間で供給した。3つの供給が終わったら、反応混合物を72℃において15分間保持し、次に40℃まで冷却した。反応混合物を冷却した後、水酸化ナトリウム50重量%水溶液892.1g、及び過酸化水素30重量%水溶液300.0gを、温度を35 − 40℃に保ちながら加えた。
得られたポリマー生成物溶液は、水溶液pH3.2及び固形分50.82重量%を有していた。得られたポリマー生成物溶液に関する結果を表1に示す。
【0051】
比較実施例4−連鎖移動剤なし
実施例1で説明した装置に対して、脱イオン水240.0g、及び脱イオン水中硫酸銅0.15重量%溶液16.0gを入れて反応混合物を作った。その反応混合物を100℃まで加熱してから、3つの分離供給:即ち1)無水マレイン酸21.1gと氷アクリル酸224.9gとのモノマー溶液、2)水酸化ナトリウム50重量%水溶液145.5gの中和剤溶液、及び3)過酸化水素30重量%水溶液の開始剤溶液83.30gの供給を同時に開始した。3つの溶液は、90分間にわたって線形的に供給した。3つの供給が終わったら、反応混合物を102℃において30分間保持してから、室温まで冷却した。
水溶液のpH5.4及び固形分39.04重量%を有するポリマー生成物溶液が製造された。得られたポリマー生成物溶液に関する結果を表1に示す。
【0052】
アクリル酸85重量%/無水マレイン酸15重量%
実施例5
実施例1で説明した装置に対して、脱イオン水125.0g、無水マレイン酸20.0g、及びピロ亜硫酸ナトリウム0.68gと脱イオン水2.0gとのピロ亜硫酸ナトリウム溶液、及び脱イオン水中硫酸第一鉄0.15重量%の金属促進剤溶液3.3gを入れて反応混合物を作った。その反応混合物を72℃まで加熱してから、3つの分離供給:即ち1)氷アクリル酸133.0g、2)ピロ亜硫酸ナトリウム40.0gと脱イオン水75.8gとのピロ亜硫酸ナトリウム供給溶液、3)過硫酸ナトリウム3.3gと脱イオン水21.0gとの開始剤溶液の供給を同時に開始した。ピロ亜硫酸ナトリウム供給溶液を75分間で供給し、氷アクリル酸及び開始剤溶液を90分間で供給した。3つの供給が終わったら、反応混合物を72℃において15分間保持してから、脱イオン水1g中過硫酸ナトリウム0.05g溶液を、モノマーチェースとして15分間にわたって供給した。次に、反応混合物を40℃まで冷却した。反応混合物を冷却した後、水酸化ナトリウム50重量%水溶液174.0gを、温度を35 − 40℃に保ちながら加えた。
得られたポリマー生成物溶液は、水溶液pH7.0及び固形分43.8重量%を有していた。得られたポリマー生成物溶液に関する結果を表1に示す。
【0053】
アクリル酸80重量%/無水マレイン酸20重量%
実施例6
ジカルボン酸モノマー/連鎖移動剤14.4重量%、同時供給
実施例3で説明した装置に対して、ピロ亜硫酸ナトリウム2.5gと脱イオン水12.7gとのピロ亜硫酸ナトリウム溶液、及び脱イオン水中硫酸第一鉄0.15重量%溶液20.9gの金属促進剤溶液を入れて反応混合物を作った。その反応混合物を72℃まで加熱してから、4つの分離供給:即ち1)氷アクリル酸421.0g、2)無水マレイン酸84.2gと脱イオン水126.3gとのマレイン酸溶液、3)ピロ亜硫酸ナトリウム72.8gと脱イオン水134.2gとのピロ亜硫酸ナトリウム供給溶液、4)過硫酸ナトリウム15.0gと脱イオン水132.9gとの開始剤溶液の供給を同時に開始した。ピロ亜硫酸ナトリウム供給溶液を45分間で供給し、氷アクリル酸及び開始剤溶液を60分間で供給し、マレイン酸溶液を30分間で供給した。供給が終わったら、反応混合物を72℃において15分間保持し、次に40℃まで冷却した。反応混合物を冷却した後、水酸化ナトリウム50重量%水溶液93.4g、及び過酸化水素の30重量%水溶液31.4gを、温度を35 − 40℃に保ちながら加えた。
得られたポリマー生成物溶液は、水溶液pH3.0及び固形分50.5重量%を有していた。得られたポリマー生成物溶液に関する結果を表1に示す。
【0054】
比較実施例7−連鎖移動剤なし
実施例1で説明した装置に対して、脱イオン水240.0g、及び脱イオン水中0.15重量%硫酸銅溶液16.0gを入れて反応混合物を作った。その反応混合物を100℃まで加熱してから、3つの分離供給:即ち1)無水マレイン酸42.20gと氷アクリル酸200.0gとのモノマー溶液、2)水酸化ナトリウム50重量%水溶液145.5gの中和剤溶液、及び3)過酸化水素30重量%水溶液の開始剤溶液83.30gの供給を同時に開始した。3つの溶液は、90分間にわたって線形的に供給した。3つの供給が終わったら、反応混合物を102℃において30分間保持してから、室温まで冷却した。
水溶液pH5.1及び固形分40.9重量%を有するポリマー生成物溶液が製造された。得られたポリマー生成物溶液に関する結果を表1に示す。
【0055】
アクリル酸50重量%/無水マレイン酸50重量%
実施例8
実施例1で説明した装置に対して、脱イオン水140.0g、無水マレイン酸83.1g、及びピロ亜硫酸ナトリウム0.25gと脱イオン水1gとのピロ亜硫酸ナトリウム溶液、及び脱イオン水中硫酸第一鉄0.15重量%の金属促進剤溶液3.3gを入れて反応混合物を作った。その反応混合物を72℃まで加熱してから、3つの分離供給:即ち1)氷アクリル酸83.1g、2)ピロ亜硫酸ナトリウム49.9gと脱イオン水97.0gとのピロ亜硫酸ナトリウム供給溶液、3)過硫酸ナトリウム3.3gと脱イオン水21.0gとの開始剤溶液の供給を同時に開始した。ピロ亜硫酸ナトリウム供給溶液を60分間で供給し、氷アクリル酸及び開始剤溶液を90分間で供給した。3つの供給が終わったら、反応混合物を72℃において15分間保持してから、脱イオン水10g中過硫酸ナトリウム0.5g溶液を、モノマーチェースとして30分間にわたって供給した。次に、反応混合物を40℃まで冷却した。反応混合物を冷却した後、水酸化ナトリウム50重量%水溶液186.0gを、温度を35 − 40℃に保ちながら加えた。
得られたポリマー生成物溶液は、水溶液pH7.0及び固形分42.7重量%を有していた。得られたポリマー生成物溶液に関する結果を表1に示す。
【0056】
【表1】

【0057】
表1の略語:
AA アクリル酸重量%
MAL 無水マレイン酸重量%

1 多分散性(Mw/Mn)
2 最終ポリマー生成物における残留マレイン酸の重量%
3 最終ポリマー生成物における残留アクリル酸の重量%
4 カラー標準番号、ASTM法 D1209
5 加えたモノマーの重量を基準とした、加えた開始剤の重量%
6 加えたモノマーの重量を基準とした、加えた連鎖移動剤の重量%
7 加えたモノマーの重量を基準とした、金属イオンとしての金属促進剤のPPM
【0058】
実施例1 − 8及び表1の考察
表1から、本発明方法は、ポリマー生成物の重量平均分子量を30,000未満に調節するのに有効であることが分かる。実施例2及び3からは、開始剤及び連鎖移動剤のレベルが増大すると、ポリマー生成物の分子量が減少することが分かる。本発明方法の利点は、本発明方法によって製造されたポリマー生成物の色が比較実施例4及び7に比べて薄いという点にある。比較実施例4及び7は、連鎖移動剤を用いず、より多量の金属促進剤及び開始剤を用いて作った。又、本発明方法は、低量の残留モノマーを含むポリマー生成物も生成させる。
【0059】
反応混合物pHの効果
アクリル酸90重量%/無水マレイン酸10重量%
実施例9−非中和
実施例1で説明した装置に対して、脱イオン水170.7g、無水マレイン酸21.1g、ピロ亜硫酸ナトリウム0.6gと脱イオン水3.2gとのピロ亜硫酸ナトリウム溶液、及び脱イオン水中硫酸第一鉄0.15重量%の金属促進剤溶液5.2gを入れて反応混合物を作った。その反応混合物を72℃まで加熱してから、3つの分離供給:即ち1)氷アクリル酸210.5g、2)ピロ亜硫酸ナトリウム18.2gと脱イオン水33.6gとのピロ亜硫酸ナトリウム供給溶液、3)過硫酸ナトリウム3.8gと脱イオン水33.2gとの開始剤溶液の供給を同時に開始した。ピロ亜硫酸ナトリウム供給溶液を75分間で供給し、氷アクリル酸及び開始剤溶液を90分間で供給した。3つの供給が終わったら、反応混合物を72℃において15分間保持し、次に室温まで冷却した。
水溶液pH2.2(25℃)を有するポリマー生成物溶液が製造された。得られたポリマー生成物溶液に関する結果を表2に示す。
【0060】
比較実施例10−pH4
メカニカルスターラー、還流冷却器、熱電対、及びpHプローブを取り付けた1リットル四つ口丸底フラスコの中に、脱イオン水170.7g、無水マレイン酸21.1g、ピロ亜硫酸ナトリウム0.6gと脱イオン水3.2gとのピロ亜硫酸ナトリウム溶液、及び脱イオン水中硫酸第一鉄0.15重量%の金属促進剤溶液5.2gを入れて反応混合物を作った。その反応混合物を72℃まで加熱してから、4つの分離供給:即ち1)氷アクリル酸210.5g、2)ピロ亜硫酸ナトリウム18.2gと脱イオン水33.6gとのピロ亜硫酸ナトリウム供給溶液、3)過硫酸ナトリウム3.8gと脱イオン水33.2gとの開始剤溶液の供給、及び4)水酸化ナトリウム50重量%水溶液(反応混合物のpHを4に保つ速度で供給)の供給を同時に開始した。ピロ亜硫酸ナトリウム供給溶液を75分間で供給し、氷アクリル酸及び開始剤溶液を90分間で供給した。供給中に、反応混合物は非常に粘ちょうになった。3つの供給が終わったら、反応混合物を72℃において15分間保持してから、室温まで冷却した。反応混合物は、冷却すると凝固した。得られたポリマー生成物に関する結果を表2に示す。
【0061】
アクリル酸70重量%/無水マレイン酸30重量%
実施例11−非中和
実施例1で説明した装置に対して、脱イオン水140.0g、無水マレイン酸49.9g、ピロ亜硫酸ナトリウム0.25gと脱イオン水1.0gとのピロ亜硫酸ナトリウム溶液、及び脱イオン水中硫酸第一鉄0.15重量%の金属促進剤溶液3.3gを入れて反応混合物を作った。その反応混合物を72℃まで加熱してから、3つの分離供給:即ち1)氷アクリル酸116.4g、2)ピロ亜硫酸ナトリウム37.4gと脱イオン水72.6gとのピロ亜硫酸ナトリウム供給溶液、3)過硫酸ナトリウム3.3gと脱イオン水21.0gとの開始剤溶液の供給を同時に開始した。ピロ亜硫酸ナトリウム供給溶液を75分間で供給し、氷アクリル酸及び開始剤溶液を90分間で供給した。3つの供給が終わったら、反応混合物を72℃において15分間保持した。次に脱イオン水10g中過硫酸ナトリウム0.05g溶液を、モノマーチェースとして15分間にわたって供給した。次に反応混合物を40℃まで冷却した。冷却後、水酸化ナトリウム50重量%水溶液189.0gを、温度を35 − 40℃に保ちながら加えた。
得られたポリマー生成物溶液は、水溶液pH7.0及び固形分43.5重量%を有していた。得られたポリマー生成物溶液に関する結果を表2に示す。
【0062】
比較実施例12−pH4
メカニカルスターラー、還流冷却器、熱電対、及びpHプローブを取り付けた2リットル四つ口丸底フラスコの中に、脱イオン水350.0g、無水マレイン酸124.7g、ピロ亜硫酸ナトリウム0.6gと脱イオン水2.5gとのピロ亜硫酸ナトリウム溶液、及び脱イオン水中硫酸第一鉄0.15重量%の金属促進剤溶液8.2gを入れて反応混合物を作った。その反応混合物を72℃まで加熱してから、4つの分離供給:即ち1)氷アクリル酸291.0g、2)ピロ亜硫酸ナトリウム93.5gと脱イオン水181.5gとのピロ亜硫酸ナトリウム供給溶液、3)過硫酸ナトリウム8.25gと脱イオン水52.5gとの開始剤溶液、及び4)水酸化ナトリウム50重量%水溶液(反応混合物のpHを4に保つ速度で供給)の供給を同時に開始した。ピロ亜硫酸ナトリウム供給溶液を120分間で供給し、氷アクリル酸及び開始剤溶液を150分間で供給した。3つの供給が終わったら、反応混合物を72℃において15分間保持してから、次に脱イオン水2.5g中過硫酸ナトリウム0.3g溶液を、モノマーチェースとして15分間にわたって供給した。このモノマーチェースを2度繰り返した後、反応混合物を40℃まで冷却した。反応混合物が冷却されたら、温度を35 − 40℃に保ちながら、水酸化ナトリウムの50重量%水溶液を用いてpHを7に調整した。
固形分44.4重量%を有するポリマー生成物溶液が製造された。得られたポリマー生成物溶液に関する結果を表2に示す。
【0063】
【表2】

【0064】
表2の略語:
AA アクリル酸重量%
MAL 無水マレイン酸重量%

1 多分散性(Mw/Mn)
2 最終ポリマー生成物における残留マレイン酸の重量%
3 最終ポリマー生成物における残留アクリル酸の重量%
4 カラー標準番号、ASTM法 D1209
5 反応時間にわたる反応混合物の平均pH
6 加えたモノマーの重量を基準とした、加えた開始剤の重量%
7 加えたモノマーの重量を基準とした、加えた連鎖移動剤の重量%
8 加えたモノマーの重量を基準とした、金属イオンとしての金属促進剤のPPM
【0065】
実施例9 − 12及び表2の考察
表2から、反応時間にわたって反応混合物のpHを4に保ったとき(比較実施例10及び12)には、重量平均分子量30,000を超えるポリマー生成物が製造されたことが分かる。対照的に、実施例9及び11は、反応時間にわたって反応混合物のpHが2未満であった以外は、それぞれ比較実施例10及び12と同じ方法を用いて行った。しかし、実施例9及び11では、6,000未満の重量平均分子量を有するポリマー生成物が製造された。
【0066】
連続法実施例
アクリル酸90重量%/無水マレイン酸10重量%
実施例13−無水マレイン酸の断続的供給
連続法を、2つの工程:即ち1)始動工程、及び2)連続工程で行った:
始動工程:
メカニカルスターラー、還流冷却器、熱電対、及び4つの入口を取り付けた2リットル反応器に対して、脱イオン水556.1g、ピロ亜硫酸ナトリウム2.5gと脱イオン水12.7gとのピロ亜硫酸ナトリウム溶液、及び脱イオン水中硫酸第一鉄0.15重量%溶液20.9gの金属促進剤溶液を入れて反応混合物を作った。その反応混合物を72℃まで加熱してから、4つの分離供給:即ち1)氷アクリル酸841.9g、2)無水マレイン酸84.2gと脱イオン水126.3gとのマレイン酸溶液、3)ピロ亜硫酸ナトリウム72.8gと脱イオン水134.2gとのピロ亜硫酸ナトリウム供給溶液、4)過硫酸ナトリウム15.0gと脱イオン水132.9gとの開始剤溶液の供給を同時に開始した。4つの供給原料を、60分間線形的速度で供給して、反応器内にポリマー生成物溶液を作った。
【0067】
連続工程:
60分の終了後、氷アクリル酸、ピロ亜硫酸ナトリウム溶液、及び開始剤溶液を、始動工程と同じ線形速度で反応器中に供給した。これらの3つの供給に加えて、以下の供給:即ち、1)各60分の始めの30分にわたって線形的に供給される、無水マレイン酸84.2gと脱イオン水404.5gとの第二のマレイン酸溶液、2)60分間にわたって線形的に供給される、脱イオン水中硫酸第一鉄0.15重量%の金属促進剤連続供給溶液20.9g、及び3)各60分間の後半の30分間にわたって線形的に供給される脱イオン水278.3gの供給を開始した。供給原料を反応器に供給すると同時に、ポリマー生成物溶液を、反応器の中に供給されているすべての供給原料の全供給速度に等しい速度で反応器から連続的に取り出した。ポリマー生成物溶液を、供給の各60分について、別々の容器の中に集めた。以下の表3は、集められたポリマー生成物溶液の各容器に関する分析結果を示している:
【0068】
【表3】

【0069】
表3の結果から、本発明方法は連続法として行うことができ、それによっても良好な分子量調節が維持されていることが分かる。「反応器」カラムは、300分の終了後に、反応器中に残っていたポリマー生成物の分析である。
【0070】
実施例14−連鎖移動剤の量を低下させる効果
実施例13で反応器に残っていたポリマー生成物を、本実施例のための出発反応材料として用いた。各60分にわたって線形的に供給されたピロ亜硫酸ナトリウム溶液がピロ亜硫酸ナトリウム60.1g及び脱イオン水134.2gから成っていたことを除いて、実施例13の連続工程手順に従って連続工程を行った。連続工程を180分間行い、各60分間の供給ごとに、異なる容器にポリマー生成物を集めた。180分の終了時に、ピロ亜硫酸ナトリウム35.5gと脱イオン水134.2gとを、各60分間にわたって線形的に供給されるように、供給するピロ亜硫酸ナトリウム溶液を希釈した。更に120分間、連続法を行った。集めたポリマー生成物溶液の各容器に関する分析を表4に示す:
【0071】
【表4】

【0072】
表3及び4の略語:
AA アクリル酸重量%
MAL 無水マレイン酸重量%
CTA 連鎖移動剤
n.m. 測定値なし

表4の結果から、連鎖移動剤の量が減少すると、ポリマー生成物の重量平均分子量が増加することが分かる。連鎖移動剤の量を調整することによって、本発明方法における重量平均分子量を調整して望ましい分子量のポリマー生成物を得ることができる。
【0073】
清浄用途における性能
付着抑制
試験されるポリマーを含む洗浄剤配合物で黒色布を洗浄することによって、炭酸カルシウム付着抑制特性に関して、ポリマー生成物を試験した。洗浄された黒色布を、0 − 10の尺度を用いて、炭酸カルシウムの付着量に関して視覚的に評価した。0は洗浄されていない黒色布に対応し、10は試験ポリマーを含んでいない洗浄剤配合物で洗浄された布に対応する。
黒色布きれを洗浄するために、以下の試験手順を用いた:予備洗浄された黒色コットンTシャツの生地を5gの試験布に切断した。試験される各ポリマーに関して、1つの試験布を、試験されるポリマーを含む洗浄剤配合物を用いて、1リットルTerg-o-tometer(ニュージャージー州 Hoboken にある United States Testing Company、 Inc. によって製造されたモデル番号7243S)で洗濯した。対照として、1つの試験布を、ポリマーを含んでいない洗浄剤配合物で洗浄した。各洗浄サイクルは、12分洗浄、3分すすぎから成っていた。各試験布は、温度35℃において、炭酸カルシウムとして350ppmの硬度の洗浄水で5洗浄サイクルで洗濯した。用いた洗浄剤配合物は、表5に示したものと同様である。洗浄水中で用いた洗浄剤の量は、洗浄水の重量(1000g)を基準として0.18重量%であった。試験布は、一晩風乾した。
乾燥した試験布を、炭酸カルシウム付着に関して、0 − 10の尺度で同時に視覚で評価した。表6は、その結果である。ポリマーを含んでいない対照は10であり、視覚によって完全に灰色に見え、洗浄されていない布きれは、黒色に見える。
【0074】
【表5】

【0075】
【表6】

【0076】
表6の略語:
AA アクリル酸重量%
MAL マレイン酸重量%
【0077】
表6から、本発明方法によって製造されたポリマー生成物は、洗濯用途において、洗浄剤配合物において付着を抑制するために有用であることが分かる。実施例15は、連鎖移動剤を8.1重量%ではなく13.9重量%反応混合物に対して加えた以外は、実施例3の手順に従って製造されたポリマー生成物である。連鎖移動剤としてピロ亜硫酸ナトリウムを用いて製造された実施例15は、連鎖移動剤を用いていない比較実施例4に比べて、付着を抑制するのに一層有効である。更に、実施例6は、比較実施例7を超える向上を示している。又、実施例6は、連鎖移動剤としてピロ亜硫酸ナトリウムを用いて製造され、比較実施例7では連鎖移動剤を用いなかった。
【0078】
水処理用途における性能
炭酸カルシウムの沈積の抑制
以下の試験法を用いて、本発明方法によって製造されたポリマー生成物に関して、水処理用途における炭酸カルシウムの沈積を抑制する能力を測定した。以下の溶液を調製した:
A.原液1:
CaCl・2HO 2.78g
KCl 2.04g
MgCl・6HO 4.97g
NaCl 76.68g
脱イオン水(原液1を2リットルにする量)

B.原液2:
NaCO 1.00g
KCl 2.04g
MgCl・6HO 4.97g
NaCl 76.68g
脱イオン水(原液2を2リットルにする量)

C.ポリマーサンプル溶液:
試験されるポリマー固形分 0.1重量%
脱イオン水 残部
NaOHでpHを8に調整
(ポリマーサンプル溶液を作った後で調整)
【0079】
4オンスのジャーの中に、原液1を50ml、ポリマーサンプル溶液を2.0ml、及び原液2を50ml入れて、ポリマー試験溶液を調製した。又、4オンスのジャーの中で、ポリマー非含有溶液と、以下の組成の100%抑制溶液も調製した。

ポリマー非含有溶液(対照)
原液1 50ml
原液2 50ml

100%抑制溶液(対照)
原液1 50ml
脱イオン水 50ml
【0080】
ポリマー試験溶液を、38℃又は70℃のいずれかの温度の水浴に16時間置き、次に0.45ミクロンフィルターによって温かいまま濾過した。そのポリマー試験溶液を脱イオン水25mlで希釈し、室温まで冷却した。
炭酸カルシウム沈積の抑制について測定するために、濾過されたポリマー試験溶液、及び100%抑制溶液を、EDTA滴定を用いて、二価カルシウムイオンに関して分析した。又、対照として、ポリマー非含有溶液もEDTAで滴定した。抑制された炭酸カルシウム沈積の百分率は、以下の式により計算された。
CaCO 抑制 %=100×(ポリマー試験溶液に加えられた EDTA ml)/(100%抑制溶液に加えられた EDTA ml)
以下の表7は、炭酸カルシウムの沈積を抑制するポリマー生成物の性能を示している:
【0081】
【表7】

【0082】
表7の略語:
AA アクリル酸重量%
MAL マレイン酸重量%
表7の結果から、本発明方法によって製造されたポリマー生成物は、水性システム中ポリマー非含有の対照に比べて、炭酸カルシウムの沈積を抑制するのに有効であることが分かる。反応混合物に対して、実施例16は連鎖移動剤を9.5重量%ではなく7.5重量%加えた以外は、実施例1の手順に従って製造されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の工程:即ち、
a)最初に反応器の中に水を充填する工程;
b)i)亜硫酸類のアルカリ金属塩から選択される少なくとも1つの水溶性連鎖移動剤、
ii)少なくとも1つの水溶性開始剤、
iii)少なくとも1つの金属促進剤、
iv)反応器に加えられるモノマーの総重量を基準として、少なくとも1つの水溶性モノエチレン性不飽和モノカルボン酸モノマー50−97重量%、
v)反応器に加えられるモノマーの総重量を基準として、マレイン酸、メサコン酸、フマル酸、シトラコン酸、アルファ−メチレングルタル酸、無水マレイン酸、シス−3,4,5,6−テトラヒドロフタル酸無水物、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される、少なくとも1つのモノエチレン性不飽和ジカルボン酸モノマー3−50重量%、
vi)反応器に加えられるモノマーの総重量を基準として、1つ又はそれ以上の水溶性カルボキシル基非含有モノエチレン性不飽和モノマー0−40重量%
を反応器の中に加えて反応混合物を作る工程;
c)反応混合物を、反応時間、60℃−120℃の温度に保つ工程;
d)反応時間、反応混合物をpH3又はそれ未満に保つ工程;及び
e)30,000未満の重量平均分子量を有する水溶性ポリマー生成物を回収する工程;
を含み、
連鎖移動剤、開始剤、及びモノエチレン性不飽和モノカルボン酸モノマーが反応時間の少なくとも25%にわたって反応器に加えられる、
ポリマー生成物の製造方法によって製造された、少なくとも1つのポリマー生成物を含む清浄組成物。
【請求項2】
以下の工程:即ち、
a)最初に反応器の中に水を充填する工程;
b)i)亜硫酸類のアルカリ金属塩から選択される少なくとも1つの水溶性連鎖移動剤、
ii)少なくとも1つの水溶性開始剤、
iii)少なくとも1つの金属促進剤、
iv)反応器に加えられるモノマーの総重量を基準として、少なくとも1つの水溶性モノエチレン性不飽和モノカルボン酸モノマー50−97重量%、
v)反応器に加えられるモノマーの総重量を基準として、マレイン酸、メサコン酸、フマル酸、シトラコン酸、アルファ−メチレングルタル酸、無水マレイン酸、シス−3,4,5,6−テトラヒドロフタル酸無水物、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される、少なくとも1つのモノエチレン性不飽和ジカルボン酸モノマー3−50重量%、
vi)反応器に加えられるモノマーの総重量を基準として、1つ又はそれ以上の水溶性カルボキシル基非含有モノエチレン性不飽和モノマー0−40重量%
を反応器の中に加えて反応混合物を作る工程;
c)反応混合物を、反応時間、60℃−120℃の温度に保つ工程;
d)反応時間、反応混合物をpH3又はそれ未満に保つ工程;及び
e)30,000未満の重量平均分子量を有する水溶性ポリマー生成物を回収する工程;
を含み、
連鎖移動剤、開始剤、及びモノエチレン性不飽和モノカルボン酸モノマーが反応時間の少なくとも25%にわたって反応器に加えられる、
ポリマー生成物の製造方法によって製造された、少なくとも1つのポリマー生成物と、不活性希釈剤とを含む水処理組成物であって、ポリマー生成物の総量が組成物の総重量を基準として20−60重量%の量で存在している、水処理組成物。
【請求項3】
a)マレイン酸、メサコン酸、フマル酸、シトラコン酸、アルファ−メチレングルタル酸、無水マレイン酸、シス−3,4,5,6−テトラヒドロフタル酸無水物、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される、モノエチレン性不飽和ジカルボン酸モノマーを、モノマーの総重量を基準として3−50重量%;
b)モノエチレン性不飽和モノカルボン酸モノマーを、モノマーの総重量を基準として50−97重量%;
c)1つ又はそれ以上の水溶性カルボキシル基非含有モノエチレン性不飽和モノマーを、モノマーの総重量を基準として0−40重量%;及び
d)亜硫酸、重亜硫酸、又はピロ亜硫酸のアルカリ金属塩、及びそれらの組み合わせから成る群より選択される連鎖移動剤を、モノマーの総重量を基準として1−35重量%含み、該連鎖移動剤は一端又は両端でポリマーを停止させる、前記ポリマーであって、
30,000未満の重量平均分子量を有するポリマー。
【請求項4】
モノマーが部分的に中和されている請求項3記載のポリマー。
【請求項5】
モノマーが完全に中和されている請求項3記載のポリマー。
【請求項6】
以下の工程:即ち、
a)最初に反応器の中に水を充填する工程;
b)i)亜硫酸類のアルカリ金属塩から選択される少なくとも1つの水溶性連鎖移動剤、
ii)少なくとも1つの水溶性開始剤、
iii)少なくとも1つの金属促進剤、
iv)反応器に加えられるモノマーの総重量を基準として、少なくとも1つの水溶性モノエチレン性不飽和モノカルボン酸モノマー50−97重量%、
v)反応器に加えられるモノマーの総重量を基準として、マレイン酸、メサコン酸、フマル酸、シトラコン酸、アルファ−メチレングルタル酸、無水マレイン酸、シス−3,4,5,6−テトラヒドロフタル酸無水物、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される、少なくとも1つのモノエチレン性不飽和ジカルボン酸モノマー3−50重量%、
vi)反応器に加えられるモノマーの総重量を基準として、1つ又はそれ以上の水溶性カルボキシル基非含有モノエチレン性不飽和モノマー0−40重量%
を反応器の中に加えて反応混合物を作る工程;
c)反応混合物を、反応時間、60℃−120℃の温度に保つ工程;
d)反応時間、反応混合物をpH3又はそれ未満に保つ工程;及び
e)30,000未満の重量平均分子量を有する水溶性ポリマー生成物を回収する工程;
を含み、
連鎖移動剤、開始剤、及びモノエチレン性不飽和モノカルボン酸モノマーが反応時間の少なくとも25%にわたって反応器に加えられる、
ポリマー生成物の製造方法によって製造された、ポリマー生成物。

【公開番号】特開2006−265561(P2006−265561A)
【公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−130351(P2006−130351)
【出願日】平成18年5月9日(2006.5.9)
【分割の表示】特願平7−103026の分割
【原出願日】平成7年4月4日(1995.4.4)
【出願人】(590002035)ローム アンド ハース カンパニー (524)
【氏名又は名称原語表記】ROHM AND HAAS COMPANY
【Fターム(参考)】