説明

ポリマーおよび耐摩耗剤を含有する潤滑組成物

本発明は、潤滑粘度の油とペンダント基を有するポリマーとを含有する潤滑組成物を提供する。本発明はさらに、潤滑粘度の油にペンダント基を有するポリマーを供給して粘度指数を制御する方法を提供する。具体的には、本発明は、(a)潤滑粘度の油、(b)ポリマー、および(c)耐摩耗剤を含有する潤滑組成物に関する。本発明はさらに、潤滑粘度の油にペンダント基を有するポリマーを供給して粘度指数を制御する方法および用途を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、(a)潤滑粘度の油、(b)ポリマー、および(c)耐摩耗剤を含有する潤滑組成物に関する。本発明はさらに、潤滑粘度の油にペンダント基を有するポリマーを供給して粘度指数を制御する方法および用途を提供する。
【背景技術】
【0002】
耐摩耗剤および粘度指数向上剤は、潤滑油組成物に加えると、それぞれ潤滑剤の摩耗性能および粘度指数を向上させることが知られている。
【0003】
一般的な耐摩耗添加剤は、灰を生成するリン化合物および/または灰を生成しない化合物を含む。一般的な粘度指数向上剤としては、メタクリラート、アクリラート、オレフィンのポリマー、または無水マレイン酸スチレンコポリマーおよびそのエステル化された誘導体が挙げられる。粘度指数向上剤は、ペンダント基/グラフト化された基/分枝状の基にエステル官能基を組み込む傾向がある。エステル官能基は、1〜40個の炭素原子を有する鎖状アルキルアルコールから誘導されるものでよい。最近では、エステル官能基がある程度枝分かれしている粘度指数向上剤を製造することが試みられている。しかし、そのような粘度指数向上剤は、剪断安定性、粘度指数制御、および低温粘度が不十分である。
【0004】
特許文献1は、溶解性パラメータが8.6〜9.4、結晶化温度が−15℃以下、立体障害係数が0〜13であるポリマーとして定義される粘度指数向上剤を開示している。このポリマーは、その一部がβ分枝状でもよいアルキルアルケニルエーテルおよびC1〜40アルキルメタクリル酸を含む。この粘度指数向上剤は、ギヤ油、油圧作動油、自動変速機、およびエンジン油に適する。
【0005】
特許文献2は、20〜70%のアクリル酸アルキル、30〜80%のメタクリル酸アルキルから構成されるコポリマーを含有する潤滑油組成物を開示している。この潤滑油は、ギヤ油またはエンジン潤滑剤にすることができる。
【0006】
米国特許出願第2004/0077509号は、ギヤ油、変速機、トラクション油、油圧作動油、およびエンジン油に適する粘度指数向上剤ポリマーを開示している。このポリマーはさらに、剪断安定性および低温粘度をも向上させる。このポリマーは、分枝状アルコールから誘導される(メタ)アクリラートから構成される。この分枝状のエステル基は、C18〜36アルキル基を含むが、但し、炭素原子を16個超含むメチレン基は含まない。このポリマーはさらに、(メタ)アクリル酸C8〜17アルキルまたは(メタ)アクリル酸C18〜24アルキルを5〜90%、ヒドロキシ、アミド、またはカルボキシル含有モノマーを5〜50%含有する。分枝状エステル基を有するモノマーは、5〜90%、10〜70%、または20〜60%で存在してよい。さらに、前記ポリマーと、亜鉛もしくはモリブデン耐摩耗剤とを含有する潤滑組成物も開示する。
【特許文献1】米国特許第6746993号明細書
【特許文献2】米国特許第5763374号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来技術の粘度指数向上剤の性能を考えると、許容される/改善された摩耗性能、ならびに許容される/改善された剪断安定性、粘度指数制御、および低温粘度の少なくとも1つをもたらし得る潤滑組成物を手にすることが望ましいはずである。本発明は、そのような潤滑組成物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一実施形態では、本発明は、
(a)潤滑粘度の油と、
(b)次式の()内に表されるペンダント基を有する式(I)のポリマー
【0009】
【化3】

[式中、
BBは、ポリマー主鎖であり、
Xは、(i)少なくとも1個の炭素と少なくとも1個の酸素もしくは窒素原子とを含むか、(ii)少なくとも1つのアシル化剤を含むか、または(iii)約1〜約5個の炭素原子(通常は−CH−)を有するアルキレン基であるかのいずれかの官能基であり、ポリマー主鎖と、()内に含まれる分枝状ヒドロカルビル基とを連結しており、
wは、ポリマー主鎖に結合している、約1〜約2000、約1〜約500、または約5〜約250の範囲のペンダント基の数であり、
yは、0、1、2、または3であり、但し、少なくとも1モル%のペンダント基においてyはゼロでなく、そして、但しyが0であるとき、Xは、Xの原子価を満たすのに十分な様式で末端基に結合しており、末端基は、水素、アルキル、アリール、金属(通常はエステル反応液を中和する際に生成する。適切な金属には、カルシウム、マグネシウム、バリウム、亜鉛、ナトリウム、カリウム、またはリチウムが含まれる)、またはアンモニウムカチオン、およびこれらの混合物から選択され、
pは、約1〜約15(または約1〜約8または約1〜約4)の範囲の整数であり、
R’およびR”は、それぞれ独立に、鎖状または分枝状のヒドロカルビル基であり、R’およびR”上に存在する炭素原子を合わせた総数は、少なくとも約12(または少なくとも約16または少なくとも約18または少なくとも約20)である]と、
(c)耐摩耗剤と
を含む潤滑組成物を提供するが、但し、耐摩耗剤が、ジアルキルジチオリン酸亜鉛、ジチオリン酸モリブデン、およびジチオカルバミン酸モリブデンからなる群から選択されるとき、ポリマーは、分枝状ヒドロカルビル基の約70%以下が()内に表すR’およびR”の両方で鎖状の基を含むポリ(メタ)アクリラート以外のものである。
【0010】
一実施形態では、本発明は、
(a)潤滑粘度の油と、
(b)上の式(I)で規定したようなポリマーと、
(c)(i)非イオン性の(チオ)リン化合物、
(ii)(チオ)リン化合物のアミン塩、
(iii)(チオ)リン化合物のアンモニウム塩、
(iv)(チオ)リン化合物の一価の金属塩、または
(v)(i)、(ii)、(iii)、もしくは(iv)の混合物
のうちの少なくとも1種を含む耐摩耗剤と
を含む潤滑組成物を提供する。
【0011】
一実施形態では、本発明は、
(a)潤滑粘度の油と、
(b)上の式(I)で規定したようなポリマーと、
(c)無灰耐摩耗剤と
を含む潤滑組成物を提供する。
【0012】
一実施形態では、本発明は、
(a)潤滑粘度の油と、
(b)Xが、(i)少なくとも1個の炭素と少なくとも1個の酸素もしくは窒素原子とを含む官能基であり、または(ii)少なくとも1つのアシル化剤を含む官能基である、上の式(I)で規定したようなポリマーと、
(c)耐摩耗剤と
を含む潤滑組成物を提供するが、但し、耐摩耗剤が、ジアルキルジチオリン酸亜鉛、ジチオリン酸モリブデン、およびジチオカルバミン酸モリブデンからなる群から選択されるとき、ポリマーは、分枝状ヒドロカルビル基の70%以下が()内に表すR’およびR”の両方で鎖状の基を含むポリ(メタ)アクリラート以外のものである。
【0013】
一実施形態では、本発明は、本明細書に記載のポリマー、本明細書で規定する耐摩耗剤、および潤滑粘度の油を混和して得られた(または得られる)潤滑剤または潤滑剤濃縮物を提供する。
【0014】
一実施形態では、本発明は、本明細書に記載の潤滑組成物を機械装置に供給することを含む、機械装置を潤滑する方法を提供する。
【0015】
一実施形態では、本発明は、潤滑剤の粘度指数を制御する方法であって、(a)潤滑粘度の油と、(b)本明細書で規定するポリマーと、(c)本明細書で規定する耐摩耗剤とを含む潤滑組成物を供給することを含む方法を提供する。
【0016】
一実施形態では、本発明は、許容される/改善された摩耗性能、許容される/改善された剪断安定性、許容される/改善された粘度指数制御、および許容される/改善された低温粘度の少なくとも1つ(または少なくとも2つ、またはすべて)を得るための、本明細書に記載の潤滑組成物の用途を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明は、潤滑組成物、潤滑剤の粘度指数を制御する方法、および潤滑組成物の機械装置における用途を提供する。
【0018】
本明細書では、用語「(チオ)リン」(または(チオ)亜リン酸を含めた他の変形語)は、硫黄含有または硫黄非含有のリン化合物を含む。一実施形態では、リン化合物は、チオリン化合物以外のものである。一実施形態では、チオリン化合物には、ジチオまたはより高等なチオ同族体が含まれる。
【0019】
耐摩耗剤
耐摩耗剤には、灰含有系(すなわち、金属を含有する)または無灰系(すなわち、(他の成分と混合される前に)金属を含有しない)が含まれる。
【0020】
一実施形態では、耐摩耗剤は、金属ジアルキルジチオリン酸塩を含む。ジアルキルジチオリン酸のアルキル基には、鎖状のものまたは分枝状のものが含まれる。一実施形態では、耐摩耗剤は、金属ジアルキルジチオリン酸塩以外(多くの場合、ジアルキルジチオリン酸バリウムまたは亜鉛)である。
【0021】
一実施形態では、(チオ)リン化合物のアミン塩には、(チオ)リン酸エステルのアミン塩もしくは(チオ)リン酸エステルの一価の金属塩、またはこれらの混合物が含まれる。
【0022】
一価の金属塩には通常、ナトリウム、リチウム、カリウム、または銅が含まれる。
【0023】
(チオ)リン酸エステルのアミン塩には、(チオ)リン酸エステルおよびそのアミン塩;ジアルキルジチオ(チオ)リン酸エステルおよびそのアミン塩;(チオ)亜リン酸エステルのアミン塩;(チオ)リン含有カルボン酸のエステル、エーテル、およびアミドのアミン塩;およびこれらの混合物が含まれる。
【0024】
(チオ)リン酸エステルのアミン塩は、単独で使用しても、組み合わせて使用してもよい。一実施形態では、(チオ)リン化合物のアミン塩は、リン化合物のアミン塩、またはその混合物から誘導される。
【0025】
一実施形態では、(チオ)リン化合物のアミン塩には、部分アミン塩−部分金属塩化合物、またはその混合物が含まれる。一実施形態では、(チオ)リン化合物は、分子中に硫黄原子をさらに含む。
【0026】
アミン塩としての使用に適するといえるアミンには、第一級アミン、第二級アミン、第三級アミン、およびこれらの混合物が含まれる。こうしたアミンには、少なくとも1個のヒドロカルビル基、またはある実施形態では、2または3個のヒドロカルビル基を有するアミンが含まれる。ヒドロカルビル基は、約2〜約30、約8〜約26、約10〜約20、または約13〜約19個を含めた範囲で存在する炭素原子を含む。
【0027】
第一級アミンには、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、2−エチルヘキシルアミン、オクチルアミン、およびドデシルアミン、ならびにn−オクチルアミン、n−デシルアミン、n−ドデシルアミン、n−テトラデシルアミン、n−ヘキサデシルアミン、n−オクタデシルアミン、オレイルアミンなどの脂肪アミンが含まれる。他の有用な脂肪アミンとしては、「Armeen(登録商標)」アミン(Akzo Chemicals、米国イリノイ州シカゴから入手可能な製品)、たとえば、Armeen C、Armeen O、Armeen OL、Armeen T、Armeen HT、Armeen S、Armeen SDなどの市販の脂肪アミン[文字の意味は、ココ、オレイル、タロウ、またはステアリル基などの脂肪性の基に関連する]が挙げられる。
【0028】
適切な第二級アミンの例には、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、ジアミルアミン、ジヘキシルアミン、ジヘプチルアミン、メチルエチルアミン、エチルブチルアミン、およびエチルアミルアミンが含まれる。第二級アミンには、ピペリジン、ピペラジン、モルホリンなどの環式アミンが含まれる。
【0029】
一実施形態では、アミンは、第三級脂肪族の第一級アミンである。第三級脂肪族の第一級アミンの脂肪族基は、約2〜約30、約6〜約26、または約8〜約24個を含めた範囲のいくつかの炭素原子を含む。第三級アルキルアミンには、t−ブチルアミン、t−ヘキシルアミン、1−メチル−1−アミノ−シクロヘキサン、t−オクチルアミン、t−デシルアミン、t−ドデシルアミン、t−テトラデシルアミン、t−ヘキサデシルアミン、t−オクタデシルアミン、t−テトラコサニルアミン、およびt−オクタコサニルアミンなどのモノアミンが含まれる。
【0030】
一実施形態では、(チオ)リン化合物のアミン塩には、C11〜C14第三級アルキル第一級基を有するアミンまたはその混合物が含まれる。一実施形態では、(チオ)リン化合物のアミン塩には、C14〜C18第三級アルキル第一級アミンを有するアミンまたはその混合物が含まれる。一実施形態では、(チオ)リン化合物のアミン塩には、C18〜C22第三級アルキル第一級アミンを有するアミンまたはその混合物が含まれる。
【0031】
アミンの混合物を本発明で使用してもよい。一実施形態では、アミンの有用な混合物は、「Primene(登録商標)81R」および「Primene(登録商標)JMT」である。Primene(登録商標)81RおよびPrimene(登録商標)JMT(共にRohm&Haasが製造販売)は、それぞれC11〜C14第三級アルキル第一級アミンおよびC18〜C22第三級アルキル第一級アミンの混合物である。
【0032】
一実施形態では、アルキル(チオ)リン酸エステルのヒドロカルビルアミン塩は、C14〜C18アルキル化された(チオ)リン酸を、C11〜C14第三級アルキル第一級アミンの混合物であるPrimene 81R(商標)(Rohm&Haasが製造および販売)と反応させた生成物である。
【0033】
ジアルキルジチオリン酸エステルのヒドロカルビルアミン塩の例には、イソプロピル、メチル−アミル(4−メチル−2−ペンチルまたはその混合物)、2−エチルヘキシル、ヘプチル、オクチル、またはノニルジチオリン酸を、エチレンジアミン、モルホリン、またはPrimene 81R(商標)(Rohm&Haas)、およびこれらの混合物と反応させた生成物が含まれる。
【0034】
一実施形態では、ジチオリン酸をエポキシドまたはグリコールと反応させる。この反応生成物をさらに、リン酸、無水物、または低級エステルと反応させる。エポキシドには、脂肪族のエポキシドまたはスチレンオキシドが含まれる。有用なエポキシドの例には、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブテンオキシド、オクテンオキシド、ドデセンオキシド、スチレンオキシドなどが含まれる。一実施形態では、エポキシドは、プロピレンオキシドである。グリコールには、約1〜約12、約2〜約6、または約2〜約3個の炭素原子を有する脂肪族グリコールが含まれる。ジチオリン酸、グリコール、エポキシド、無機リン試薬、およびこれらを反応させる方法は、米国特許第3197405号および同第3544465号に記載されている。得られる酸は通常、アミンとの塩にする。適切なジチオリン酸の例は、約514グラムのO,O−ジ(1,3−ジメチルブチル−2−ペンチル)ホスホロジチオ酸ヒドロキシプロピル(ジ(1,3−ジメチルブチル)−ホスホロジチオ酸とプロピレンオキシド約1.3モルとを約25℃で反応させて調製される)に、五酸化リン(約64グラム)を約58℃で約45分間かけて加えることによって調製されるものである。混合物を約75℃で約2.5時間加熱し、珪藻土と混合し、約70℃で濾過する。濾液は、約11.8重量%のリン、約15.2重量%の硫黄を含有し、酸価は87である(ブロモフェノールブルー)。
【0035】
一実施形態では、耐摩耗剤は、非イオン性(チオ)リン化合物を含む。通常、非イオン性(チオ)リン化合物は、+3または+5の酸化を有する。他の実施形態では、非イオン性(チオ)リン化合物は、(チオ)亜リン酸エステル、(チオ)リン酸エステル、またはこれらの混合物を含む。非イオン性(チオ)リン化合物のより詳細な記述には、US6103673のカラム9の48行目からカラム11の8行目が含まれる。
【0036】
耐摩耗剤は、潤滑組成物中に、潤滑組成物の約0.01重量%〜約20重量%、約0.05重量%〜約10重量%、または約0.1重量%〜約5重量%を含めた範囲で存在する。
【0037】
ポリマー
ポリマーの調製方法は、指定の発明者であるVisger、Baum、Grisso、Baker、およびJamesによって同じ日に出願された同時係属出願に、より詳細に記載されている。
【0038】
大まかに述べれば、ポリマーは、バッチ式、半バッチ式、または連続的な方法で調製される。その方法は、不活性雰囲気(たとえば、窒素またはアルゴン)中にて、(適切なポリマー組成物を得るための)モノマー組成物とイニシエーター(たとえば、Trigonox(登録商標)21、Ciba Speciality Chemicalsから過オクタン酸t−ブチルとして市販されているもの)とを、場合により鎖転移剤(n−ドデシルメルカプタンなど)、溶媒(油または芳香族炭化水素(たとえばトルエンまたはベンゼン)など)、さらに場合によりクエンチング剤の存在下、混合するステップを含む。ポリマーの調製に使用される重合方法には、アニオン重合またはラジカル重合が含まれる。ラジカル重合法は、約20℃〜約150℃または約40℃〜約125℃を含めた範囲の温度で実施する。アニオン重合法は、約−80℃〜約50℃または約−70℃〜約0℃を含めた範囲で実施する。重合の際、特定のポリマー構造、たとえばブロックコポリマーが所望されるならば、重合系に既知の方法でモノマーを加えて、所望の構造を得る。
【0039】
一実施形態では、ポリマーは、次式
F=4U+Y
[式中、Fは立体障害係数であり、UおよびYは、側鎖中の、主鎖から数えてそれぞれ6位および7位の総原子数を表す]によって規定される立体障害係数Fを有する。立体障害係数をどのように算出するかについてのより詳細な論述は、米国特許第6746993号、10カラム3行目から11カラム3行目に示されている。
【0040】
他の実施形態では、ポリマーは、立体障害係数が1以上、または1〜約30である。
【0041】
本明細書では、用語「ポリ(メタ)アクリラート」は、ポリメタクリラートとポリアクリラートの両方を含む。
【0042】
ポリ(メタ)アクリラート以外のポリマーでは、立体障害係数は、0〜約30または約2〜約20の範囲を含む。
【0043】
ポリ(メタ)アクリラートポリマーでは、立体障害係数は、約13超〜約30、約20〜約30、または約25〜約30の範囲を含む。
【0044】
他の実施形態では、ペンダント基を有する(ポリ(メタ)アクリラート以外の)ポリマーは通常、上の式の()内の基によって表される、含まれるヒドロカルビル基の約20%〜約100%、約50%〜約100%、約70%〜約100%、または約85%〜約100%が分枝状である。
【0045】
他の実施形態の本発明のポリマーはすべて、通常、上の式の()内の基によって表される、含まれるヒドロカルビル基の90%超〜100以下、約92%〜約100%以下、または約95%〜約100%以下が分枝状である。
【0046】
他の実施形態のポリ(メタ)アクリラートは、上の式の()内の基によって表される、含まれるヒドロカルビル基の約92%〜約100%以下または約95%〜約100%以下が分枝状である。
【0047】
他の実施形態では、上の式でXによって規定される官能基は、−CO−、−C(O)N=、または−(CH−の少なくとも1つを含み、vは、約1〜約20、約1〜約10、または1〜2の範囲の整数である。
【0048】
一実施形態では、Xは、カルボン酸モノマーから誘導される。適切なカルボキシモノマーの例には、無水マレイン酸、マレイン酸、(メタ)アクリル酸、無水イタコン酸、またはイタコン酸が含まれる。一実施形態では、カルボン酸モノマーには、無水マレイン酸またはマレイン酸が含まれる。
【0049】
一実施形態では、Xは、ポリマー主鎖と分枝状ヒドロカルビル基とを連結するアルキレン基以外のものである。
【0050】
他の実施形態では、ペンダント基には、エステル化、アミド化、またはイミド化された官能基が含まれる。一実施形態では、ペンダント基は、エステル化および/またはアミド化された官能基から誘導される。一実施形態では、ポリマーは、エステル化されたペンダント基を含む。
【0051】
上で規定した式についてR’およびR”に適する基の例には、以下のものが含まれる。
1)C15〜16ポリメチレン基を含むアルキル基、たとえば、1−C1〜15アルキル−ヘキサデシル基(たとえば1−オクチルヘキサデシル)や、2−アルキル−オクタデシル基(たとえば、2−エチルオクタデシル、2−テトラデシル−オクタデシル、および2−ヘキサデシルオクタデシル)、
2)C13〜14ポリメチレン基を含むアルキル基、たとえば、1−C15アルキル−テトラデシル基(たとえば、1−ヘキシルテトラデシル、1−デシルテトラデシル、および1−ウンデシルトリデシル)や、2−C1〜15アルキル−ヘキサデシル基(たとえば、2−エチル−ヘキサデシルおよび2−ドデシルヘキサデシル)、
3)C10〜12ポリメチレン基を含むアルキル基、たとえば、1−C1〜15アルキル−ドデシル基(たとえば1−オクチルドデシル)、2−C1〜15アルキル−ドデシル基(2−ヘキシルドデシルおよび2−オクチルドデシル)、2−C1〜15アルキル−テトラデシル基(たとえば、2−ヘキシルテトラデシルおよび2−デシルテトラデシル)、
4)C6〜9ポリメチレン基を含むアルキル基、たとえば、2−C1〜15アルキル−デシル基(たとえば、2−オクチルデシルおよび2,4−ジ−C1〜15アルキル−デシル基(たとえば2−エチル−4−ブチル−デシル基)、
5)C1〜5ポリメチレン基を含むアルキル基、たとえば、2−(3−メチルヘキシル)−7−メチル−デシルおよび2−(1,4,4−トリメチルブチル)−5,7,7−トリメチル−オクチル基、ならびに
6)たとえばプロピレンオリゴマー(六量体から十一量体)、エチレン/プロピレン(モル比約16:1〜1:11)オリゴマー、i−ブテンオリゴマー(五量体から八量体)、C5〜17αオレフィンオリゴマー(二量体から六量体)に対応するオキソアルコールのアルキル残基など、2種以上の分枝状アルキル基の混合物。
【0052】
ペンダント基は通常、R’およびR”上に含まれる炭素原子を合わせた総数が、約12〜約60、約14〜約50、約16〜約40、約18〜約40、または約20〜約36の範囲にある。
【0053】
R’およびR”はそれぞれ、通常、約5〜約25、約8〜約32、または約10〜約18個のメチレン炭素原子を含む。一実施形態では、各R’およびR”基上の炭素原子数は、約10〜約24を占める。
【0054】
ペンダント基を形成することのできる適切なモノマーの例には、分枝状のメタクリル酸アルキル、たとえば、メタクリル酸2−オクチルドデシルおよび2−デシルテトラデシル、ならびにメタクリル酸2−テトラデシルオクタデシル、2−ヘキシル−ドデシル、2−ヘキシルテトラデシル、2−エチルヘキサデシル、2−ドデシルヘキサデシル、2−オクチルドデシルオキシエチル、および2−デシルテトラデシル−オキシエチルが含まれる。一実施形態では、ペンダント基は、アクリル酸2−オクチルドデシルやアクリル酸2−デシルテトラデシルなどの、対応するメタクリラートについて上で挙げたものと同じものである分枝状アクリル酸アルキルを含む。
【0055】
一実施形態のポリマーは、2−デシル−テトラデシルアミン、2−テトラデシル−オクタデシルアミン、2−メチル−エチルアミン、またはこれらの混合物を含めたアミンでアミド化される。
【0056】
ポリマーは、約1000〜約2000000、約4000〜約1000000、約6000〜約100000、または約7000〜約80000を含めた範囲の重量平均分子量を有する。通常、ポリマーの多分散性は、約1〜約5または約1.5〜約4の範囲である。
【0057】
以下で記載するとおり、粘度調整剤の分子量は、ポリスチレン標準物質を使用するGPC分析などの既知の方法を使用して決定した。
【0058】
ポリマーは、ホモポリマーでもコポリマーでもよい。ポリマー構造には、鎖状構造、櫛型構造、架橋結合構造、または星型構造が含まれる。
【0059】
他の実施形態では、ポリマーは、約75重量%以上、約85重量%以上、または90重量%以上超、または約92重量%のメタクリラート繰返し単位から構成されるポリメタクリラートを含む。
【0060】
異なる実施形態では、ポリマーがポリメタクリラートを含むとき、0重量%〜約20重量%未満、0重量%〜約10重量%、0重量%〜約5重量%、または0重量%の繰返し単位がアクリル酸アルキルから誘導される。
【0061】
異なる実施形態では、ポリマーがポリ(メタ)アクリラートを含むとき、0重量%〜約20重量%未満、0重量%〜約10重量%、0重量%〜約5重量%、または0重量%の繰返し単位がメタクリル酸メチルから誘導される。
【0062】
ポリマー主鎖
ペンダント基を有するポリマーは、ポリマー主鎖(上式のBB)を有し、変動要素BBは通常、炭素鎖のみを含む。カルボン酸基、アミン、アミド、イミドなど、一般にポリマー主鎖に結合している他の官能基は、ペンダント基の一部とみなす。
【0063】
一実施形態では、ペンダント基を有するポリマーは、(a)(i)ビニル芳香族モノマーと(ii)カルボン酸モノマー(通常は無水マレイン酸、マレイン酸、(メタ)アクリル酸、無水イタコン酸、またはイタコン酸)もしくはその誘導体とを含むモノマーから誘導されるポリマー、(b)ポリ(メタ)アクリラート、(c)官能性ポリオレフィン、(d)エチレン酢酸ビニルコポリマー、(e)フマル酸コポリマー、(f)(i)αオレフィンと(ii)カルボン酸モノマー(通常は無水マレイン酸、マレイン酸、(メタ)アクリル酸、無水イタコン酸、またはイタコン酸)もしくはその誘導体から誘導されるコポリマー、または(g)これらの混合物の少なくとも1つから構成される少なくとも1つのポリマー主鎖(上式のBB)を含む。一実施形態では、ペンダント基を有するポリマーは、ポリメタクリラートを含む。
【0064】
カルボン酸モノマーには、酸もしくは無水物、または完全にエステル化されている、部分的にエステル化されているその誘導体、またはこれらの混合物が含まれる。部分的にエステル化されているとき、他の官能基には、酸、塩、またはその混合物が含まれる。適切な塩としては、アルカリ金属、アルカリ土類金属、またはその混合物が挙げられる。塩には、リチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、またはこれらの混合物が含まれる。不飽和のカルボン酸またはその誘導体には、アクリル酸、アクリル酸メチル、メタクリル酸、マレイン酸もしくは無水物、フマル酸、イタコン酸もしくは無水物、またはこれらの混合物が含まれる。
【0065】
カルボン酸モノマーの適切な例としては、無水イタコン酸、無水マレイン酸、無水マレイン酸メチル、無水マレイン酸エチル、無水マレイン酸ジメチル、またはこれらの混合物が挙げられる。
【0066】
一実施形態では、カルボン酸モノマーは、無水マレイン酸またはその誘導体を含む。
【0067】
一実施形態では、官能性ポリオレフィンを、カルボン酸モノマー(通常、カルボン酸モノマーは、無水マレイン酸、マレイン酸、(メタ)アクリル酸、無水イタコン酸、またはイタコン酸である)でグラフト化する。ポリオレフィンには、エチレンモノマーと、式HC=CHR[式中、Rは、ヒドロカルビル基(たとえば、1〜約18、1〜約10、1〜約6、または1〜約3個の炭素原子を含むアルキル基)である]のαオレフィンから誘導される少なくとも1種の他のコモノマーとから得られるものが含まれる。ヒドロカルビル基には、鎖状、分枝鎖、またはこれらの混成物を有するアルキル基が含まれる。コモノマーの例には、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン、4−メチル−1−ペンテン、1−デセン、またはこれらの混合物が含まれる。一実施形態では、コモノマーには、1−ブテン、プロピレン、またはこれらの混合物が含まれる。オレフィンコポリマーの例には、エチレン−プロピレンコポリマー、エチレン−1−ブテンコポリマー、またはこれらの混合物が含まれる。
【0068】
別の実施形態では、αオレフィンには、約6〜約40、約10〜約34、または約14〜約22の範囲のいくつかの炭素原子を含むコモノマーが含まれる。αオレフィンの例には、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン、1−トリデセン、1−テトラデセン、1−ペンタデセン、1−ヘキサデセン、1−ヘプタデセン、1−オクタデセン、1−ノナデセン、1−エイコセン、1−ドエイコセン、2−テトラコセン、3−メチル−1−ヘンイコセン、4−エチル−2−テトラコセン、またはこれらの混合物が含まれる。αオレフィンの実用的な例としては、1−ペンタデセン、1−ヘキサデセン、1−ヘプタデセン、1−オクタデセン、1−ノナデセン、またはこれらの混合物が挙げられる。αオレフィンは多くの場合、混合物として、特にC16〜C18として市販されている。
【0069】
一実施形態では、ポリマーには、αオレフィンと二酸もしくはその無水物(通常は無水マレイン酸、マレイン酸、無水イタコン酸、またはイタコン酸)とのコポリマーが含まれる。αオレフィンと不飽和二酸もしくはその無水物との適切なコポリマーについてのより詳細な記述は、米国特許第6419714号および同第4526950号に載っている。
【0070】
一実施形態では、エステル化の前に(i)ビニル芳香族モノマーと(ii)カルボン酸モノマー(不飽和カルボン酸またはその誘導体など)とを含むモノマーから誘導されるポリマーは、インターポリマーと呼ぶこともできる。
【0071】
ビニル芳香族モノマーの例には、スチレン(エテニルベンゼンとも呼ばれる)、置換スチレン、またはこれらの混合物が含まれる。適切な置換スチレンの例には、αメチルスチレン、p−メチルスチレン(ビニルトルエンとも呼ばれる)、p−t−ブチルスチレン、αエチルスチレン、またはこれらの混合物が含まれる。
【0072】
インターポリマーの分子量は、そのポリマーの「換算比粘度」という用語で表現することもでき、この用語は、ポリマー物質の分子サイズを表現する認められた手段である。本明細書では、換算比粘度(RSVと略される)とは、RSV=(相対粘度−1)/濃度という式に従って得られる値であり、相対粘度は、ポリマー約1gをアセトン約10cmに溶かした溶液の粘度および約30℃でのアセトンの粘度を希釈粘度計によって測定して決定する。上記式によって算出する目的で、濃度は、アセトン約10cmあたりインターポリマー約0.4gに調整する。比粘度としても知られている換算比粘度、ならびにこれとインターポリマー平均分子量との関係についてのより詳細な論述は、Paul J.Flory、「Principles of Polymer Chemistry」(1953年版)、308頁および次頁に出ている。本発明のインターポリマー重合体は、RSVが約0.05〜約2、約0.06〜約1、または約0.06〜約0.8である。一実施形態では、RSVは約0.69である。他の実施形態では、RSVは、約0.07、約0.05、または約0.12である。一実施形態では、インターポリマーのMwは、約10000〜約300000である。
【0073】
一実施形態では、ポリマーは、エステル化されたスチレン−無水マレイン酸コポリマーであり、コポリマーの無水物単位は、分枝状アルコールでその後エステル化され、これが上の式の()内に表される分枝状ヒドロカルビル基を形成する。
【0074】
一実施形態では、ポリマーは、窒素含有基をさらに含む。窒素含有基には、官能性ポリマー主鎖と反応し得る窒素含有化合物から得られるものが含まれる。一実施形態では、窒素含有化合物は、アミド官能基を介してポリマーにさらに結合している。窒素含有基を有するポリマーは、分散剤粘度調節剤(またはDVM)と呼ばれる場合もある。
【0075】
一実施形態では、窒素含有化合物は、窒素含有モノマーを含む。一実施形態では、窒素含有モノマーは、フリーラジカルグラフトまたは共重合によってポリマー鎖に結合させる。窒素含有モノマーは通常、(メタ)アクリルアミドまたは窒素含有(メタ)アクリラートモノマーを含む。(メタ)アクリルアミドまたは窒素含有(メタ)アクリラートモノマーを含む窒素含有化合物は、(i)ポリ(メタ)アクリラート、および/または(ii)(i)ビニル芳香族モノマーと(ii)不飽和カルボン酸もしくはその誘導体とを含むモノマーから誘導されるポリマーに官能性をもたせるのに適する。ポリマー(ii)には、不飽和カルボン酸もしくはその誘導体の一部分または全部を窒素含有化合物と縮合させることによって調製されるものが含まれる。(メタ)アクリルアミドまたは窒素含有(メタ)アクリラートモノマーには、次式によって表されるものが含まれる。
【0076】
【化4】

[式中、
Qは、水素またはメチルであり、一実施形態では、Qはメチルであり、
Zは、N−H基またはO(酸素)であり、
各Rは、それぞれ独立に、水素、または約1〜約8個または約1〜約4個の炭素原子を含むヒドロカルビル基であり、
各Rは、それぞれ独立に、水素、または1〜2個の炭素原子を含むヒドロカルビル基であり、一実施形態では、各Rは水素であり、
gは、約1〜約6または約1〜約3の範囲の整数である]。
【0077】
適切な窒素含有モノマーの例には、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−ビニルカルボンアミド(N−ビニル−ホルムアミド、N−ビニルアセトアミド、N−ビニル−n−プロピオンアミド、N−ビニルヒドロキシアセトアミドなど)、ビニルピリジン、N−ビニルイミダゾール、N−ビニルピロリジノン、N−ビニルカプロラクタム、アクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、ジメチルアミノブチルアクリルアミド、メタクリル酸ジメチルアミノプロピル、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド、ジメチルアミノエチルアクリルアミド、またはこれらの混合物が含まれる。
【0078】
(i)ビニル芳香族モノマーと(ii)カルボン酸モノマー(不飽和カルボン酸またはその誘導体など)とを含むモノマーから誘導される、官能性ポリマーでは、窒素含有化合物には、モノアミン、ポリアミン、またはこれらの混合物などの非単量体アミンが含まれる。アミンには、第一級官能基、第二級官能基、またはこれらの混合物が含まれる。非単量体アミンには、環状、鎖状、または分枝状のものが含まれ、例としては、アルキルアミン、ヒドロキシ置換されたヒドロカルビルアミン、複素環式モノアミン、アルキレンポリアミン、芳香族アミンもしくはポリアミン、複素環式ポリアミン、またはこれらの混合物が挙げられる。一実施形態では、アミンは、1個以下の第一級または第二級アミノ基、たとえばN,N−ジメチルアミノプロピルアミンを含む。一実施形態では、窒素含有モノマーは、非単量体アミンを含む。(「非単量体」とは、アミンが、たとえばオレフィン性不飽和の存在によって重合してポリマーを生成することが通常はできないことを意味する。)
一実施形態では、アミンには、ヒドロキシアルキルアミンなどのヒドロキシ置換されたヒドロカルビルアミンが含まれる。適切なヒドロキシ置換されたヒドロカルビルアミンの例には、アミノエチルエタノールアミン、アミノプロピルエタノールアミン、アミノブチルエタノールアミン、またはこれらの混合物が含まれる。
【0079】
適切な環式アミンには、4−アミノジフェニルアミン、4−(3−アミノプロピル)モルホリン、4−(2−アミノエチル)モルホリン、またはこれらの混合物が含まれる。一実施形態では、環式アミンは、4−(3−アミノプロピル)モルホリンまたはその混合物である。適切であるといえる他のアミンについては、以下でリン酸アミン塩と関連して述べる。
【0080】
潤滑粘度の油
潤滑組成物は、潤滑粘度の油を含む。そのような油には、天然および合成の油;水素化分解、水素化、および水素化精製から得られる油;未精製、精製、および再精製油、およびこれらの混合物が含まれる。
【0081】
未精製油は、天然または合成の供給源から、一般にそれ以上の精製処理なし(またはほとんどなし)で、直接に得られるものである。
【0082】
精製油は、1つまたは複数の精製ステップでさらに処理されて、1つまたは複数の性質が改良されていることを除き、未精製油と同様である。精製技術は、当業界で知られており、溶媒抽出、二次蒸留、酸または塩基抽出、濾過、浸出(percolation)などがこれに含まれる。
【0083】
再精製油は、再生油または再加工油としても知られており、精製油を得るのに使用されるものと同様の方法によって得られ、多くの場合、使用済添加剤および油分解生成物の除去に対処する技術によってさらに処理される。
【0084】
本発明の潤滑剤を製造するのに有用な天然の油には、動物油、植物油(たとえば、ヒマシ油またはラード油)、白色鉱油などの鉱物潤滑油、パラフィン系、ナフテン系、またはパラフィン系−ナフテン系混合型の溶媒処理または酸処理した鉱物潤滑油、石炭または頁岩から得られる油、およびこれらの混合物が含まれる。
【0085】
合成の潤滑油は、有用であり、炭化水素油、たとえば、重合したオレフィンおよび共重合したオレフィン(たとえば、ポリブチレン、ポリプロピレン、プロピレンイソブチレンコポリマー);ポリ(1−ヘキセン)、ポリ(1−オクテン)、ポリ(1−デセン)、およびこれらの混合物;アルキル−ベンゼン(たとえば、ドデシルベンゼン、テトラデシルベンゼン、ジノニルベンゼン、ジ−(2−エチルヘキシル)−ベンゼン);ポリフェニル(たとえば、ビフェニル、テルフェニル、アルキル化されたポリフェニル);アルキル化されたジフェニルエーテルおよびアルキル化されたジフェニルスルフィド、ならびにこれらの誘導体、類似体、および同族体、またはこれらの混合物が含まれる。
【0086】
他の合成潤滑油には、ポリオールエステル(Prolube(登録商標)3970など)、ジエステル、リンを含む酸の液状エステル(たとえば、リン酸トリクレシル、リン酸トリオクチル、およびデカンホスホン酸のジエチルエステル)、または重合体テトラヒドロフランが含まれる。合成油は、Fischer−Tropsch反応によって生成することができ、通常は水素異性化されたFischer−Tropsch炭化水素またはワックスでよい。一実施形態では、油は、Fischer−Tropschガストゥーリキッド合成手順、ならびに他のガストゥーリキッド油によって調製される。
【0087】
潤滑粘度の油は、米国石油協会(API)のBase Oil Interchangeability Guidelinesに指定のとおりに定義することもできる。基礎となる5つの油群は、次のとおりである。I群(硫黄含有量>0.03重量%、および/または<90重量%飽和、粘度指数80〜120);II群(硫黄含有量≦0.03重量%、および≧90量%飽和、粘度指数80〜120);III群(硫黄含有量≦0.03重量%、および≧90重量%飽和、粘度指数≧120);IV群(すべてポリαオレフィン(PAO));ならびにV群(I、II、III、またはIV群に含まれない他のすべてもの)。潤滑粘度の油は、APIのI群、II群、III群、IV群、V群の油、またはこれらの混合物を含む。多くの場合、潤滑粘度の油は、APIのI群、II群、III群、IV群の油、またはこれらの混合物である。あるいは、潤滑粘度の油は、多くの場合、APIのII群、III群、もしくはIV群の油、またはその混合物である。
【0088】
潤滑粘度の油の存在する量は通常、100重量%から、耐摩耗剤、ポリマー、および他の性能添加剤の量の和を差し引いた後の残りの量である。
【0089】
一実施形態の潤滑組成物は、濃縮物および/または完全に調合された潤滑剤の形である。ポリマーおよび耐摩耗剤が濃縮物の形(追加の油と合わせて、全体または一部で完成潤滑剤を生成することができるもの)であるなら、ポリマーおよび耐摩耗剤対、潤滑粘度の油および/または希釈剤油の比としては、重量で約1:99〜約99:1、または重量で約80:20〜約10:90の範囲が挙げられる。
【0090】
他の性能添加剤
潤滑剤組成物は、場合により他の性能添加剤を含む。他の性能添加剤は、金属不活性化剤、従来の清浄剤(当業界で知られている従来の方法によって調製した清浄剤)、分散剤、粘度調整剤、摩擦調整剤、腐食防止剤、分散剤粘度調整剤、極圧剤、耐スカッフィング剤、酸化防止剤、抑泡剤、抗乳化剤、流動点降下剤、シール膨潤剤、およびこれらの混合物の少なくとも1種を含む。通常、十分に調合された潤滑油は、これらの性能添加剤の1種または複数を含有する。
【0091】
本発明の潤滑組成物中に存在する他の性能添加剤の量としては、潤滑組成物の約0重量%〜約50重量%、約0.1重量%〜約30重量%、または約0.2重量%〜約15重量%の範囲が挙げられる。
【0092】
一実施形態では、潤滑組成物は、分散剤または酸化防止剤の少なくとも1種をさらに含む。
【0093】
分散剤の量としては、潤滑組成物の約0重量%〜約10重量%または約0.1重量%〜約5重量%の範囲が挙げられる。
【0094】
清浄剤の量としては、潤滑組成物の約0重量%〜約15重量%または約0.1重量%〜約8重量%の範囲が挙げられる。
【0095】
分散剤
分散剤は、潤滑油組成物中に混合する前に、灰を生成する金属を含有せず、潤滑剤およびポリマー分散剤に加えたとき、通常は灰を生成するいかなる金属も与えないことから、無灰型分散剤として知られている。無灰型分散剤は、比較的高分子量の炭化水素鎖に結合している極性基を特徴とする。典型的な無灰分散剤としては、N置換された長鎖アルケニルスクシンイミドが挙げられる。N置換された長鎖アルケニルスクシンイミドの例には、ポリイソブチレン置換基の数平均分子量が約350〜約5000または約500〜約3000の範囲にあるポリイソブチレンスクシンイミドが含まれる。
【0096】
一実施形態では、本発明は、ポリイソブチレンコハク酸または無水物、アミン、および酸化亜鉛から得られる少なくとも1種の分散剤をさらに含んで、亜鉛を含むポリイソブチレンスクシンイミド錯体を形成する。亜鉛を含むポリイソブチレンスクシンイミド錯体は、単独で使用しても、組み合わせて使用してもよい。
【0097】
別の種類の無灰分散剤は、マンニッヒ塩基である。マンニッヒ分散剤は、アルキルフェノールとアルデヒド(特にホルムアルデヒド)およびアミン(特にポリアルキレンポリアミン)との反応生成物である。アルキル基は通常、少なくとも約30個の炭素原子を含む。
【0098】
分散剤は、様々な薬品のいずれかとの反応による従来の方法によって後処理してもよい。それらの薬品の中でも、(ホウ酸などの)ホウ素化合物、尿素、チオ尿素、ジメルカプトチアジアゾール、二硫化炭素、アルデヒド、ケトン、カルボン酸、炭化水素置換された無水コハク酸、無水マレイン酸、ニトリル、エポキシド、およびリン化合物が挙げられる。
【0099】
洗浄剤
潤滑剤組成物は、場合により既知の中性または過塩基性清浄剤、すなわち、当業界で知られている従来の方法によって調製される清浄剤をさらに含む。適切な清浄剤基質には、フェナート、硫黄含有フェナート、スルホナート、サリキサラート(salixarate)、サリチラート、カルボン酸、リン酸、アルキルフェノール、硫黄結合型アルキルフェノール化合物、またはサリゲニンが含まれる。
【0100】
酸化防止剤
酸化防止剤化合物は、知られており、硫化オレフィン、ジフェニルアミン、ヒンダードフェノール、ジチオカルバミン酸モリブデン、およびこれらの混合物がこれに含まれる。酸化防止剤化合物は、単独で使用しても、組み合わせて使用してもよい。
【0101】
ヒンダードフェノール酸化防止剤は多くの場合、s−ブチルおよび/またはt−ブチル基を立体障害性の基として含む。フェノール基は多くの場合、ヒドロカルビル基、および/または第二の芳香族基に連結する橋かけ基でさらに置換されている。適切なヒンダードフェノール酸化防止剤の例には、2,6−ジ−t−ブチルフェノール、4−メチル−2,6−ジ−t−ブチルフェノール、4−エチル−2,6−ジ−t−ブチルフェノール、4−プロピル−2,6−ジ−t−ブチルフェノール、4−ブチル−2,6−ジ−t−ブチルフェノール、またはドデシル2,6−ジ−t−ブチルフェノールが含まれる。一実施形態では、ヒンダードフェノール酸化防止剤は、エステルであり、たとえば、CibaのIrganox(商標)L−135が含まれる。ジチオカルバミン酸モリブデンの適切な例には、R.T.Vanderbilt Co.,Ltd.のVanlube822(商標)およびMolyvan(商標)Aや、旭電化工業株式会社のAdeka Sakura−Lube(商標)S−100、S−165、およびS−600などの商品名で販売されている市販の材料およびその混合物が含まれる。
【0102】
粘度調整剤
本発明のポリマー以外の粘度調整剤には、スチレン−ブタジエンゴム、エチレン−プロピレンコポリマー、水素添加されたスチレン−イソプレンポリマー、水素添加されたジエンポリマー、ポリアルキルスチレン、ポリオレフィン、ポリ(メタ)アクリル酸アルキル、および無水マレイン酸−スチレンコポリマーのエステル、またはこれらの混合物が含まれる。一実施形態では、ポリマー増粘剤は、ポリ(メタ)アクリラートである。
【0103】
耐スカッフィング剤
潤滑剤組成物は、一実施形態では、耐スカッフィング剤を含有する。アブレシブ摩耗を軽減すると考えられる耐スカッフィング剤化合物は、多くの場合、硫黄含有化合物である。通常、硫黄含有化合物には、硫化されたオレフィン、有機スルフィド、およびポリスルフィド、たとえば、ジベンジルジスルフィド、ビス−(クロロベンジル)ジスルフィド、ジブチルテトラスルフィド、ジ−t−ブチルポリスルフィド、硫化されたオレイン酸メチルエステル、硫化されたアルキルフェノール、硫化されたジペンテン、硫化されたテルペン、硫化されたDiels−Alder付加体、ジチオカルバミン酸アルキルスルフェニルN’N−ジアルキル、ポリアミンと多塩基酸エステルとの反応生成物、2,3−ジブロモプロポキシイソ酪酸のクロロブチルエステル、ジアルキルジチオカルバミン酸のアセトキシメチルエステル、キサントゲン酸のアシルオキシアルキルエーテル、およびこれらの混合物が含まれる。
【0104】
極圧剤
油溶性の極圧(EP)剤には、硫黄含有およびクロロスルホ含有EP剤、クロル化炭化水素EP剤、およびリンEP剤が含まれる。そのようなEP剤の例には、クロル化されたロウ;硫化されたオレフィン(硫化されたイソブチレンなど);有機スルフィドおよびポリスルフィド、たとえば、ジベンジルジスルフィド、ビス−(クロロベンジル)ジスルフィド、ジブチルテトラスルフィド;硫化されたオレイン酸メチルエステル、硫化されたアルキルフェノール、硫化されたジペンテン、硫化されたテルペン、および硫化されたDiels−Alder付加体;リン化硫化された(phosphosulphurised)炭化水素、たとえば、硫化リンとテルペンチンまたはオレイン酸メチルの反応生成物;亜リン酸エステル、たとえば、二炭化水素および三炭化水素の亜リン酸エステル、たとえば、亜リン酸ジブチル、亜リン酸ジヘプチル、亜リン酸ジシクロヘキシル、亜リン酸ペンチルフェニル、亜リン酸ジペンチルフェニル、亜リン酸トリデシル、亜リン酸ジステアリル、およびポリプロピレン置換された亜リン酸フェノール;金属チオカルバミン酸塩、たとえば、ジオクチルジチオカルバミン酸亜鉛およびバリウムヘプチルフェノール二酸;アルキルおよびジアルキルリン酸または誘導体のアミン塩(たとえば、ジアルキルジチオリン酸をプロピレンオキシドと反応させ、その後さらにPと反応させた生成物のアミン塩が含まれる);ならびにこれらの混合物(US3197405に記載のとおり)が含まれる。
【0105】
他の性能添加剤、たとえば、腐食防止剤(オクチルアミンのオクタン酸塩;ドデセニルコハク酸もしくはドデセニルコハク酸無水物、およびオレイン酸などの脂肪酸がポリアミンと縮合した生成物が含まれる);金属不活性化剤(ベンゾトリアゾールの誘導体、ジメルカプトチアジアゾール誘導体、1,2,4−トリアゾール、ベンズイミダゾール、2−アルキルジチオベンズイミダゾール、または2−アルキルジチオベンゾチアゾールが含まれる);抑泡剤(アクリル酸エチルと、2−エチルヘキシルアクリラートとのコポリマー、場合により酢酸ビニルとのコポリマーが含まれる);抗乳化剤(リン酸トリアルキル、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、および(エチレンオキシド−プロピレンオキシド)ポリマーが含まれる);流動点降下剤(無水マレイン酸−スチレンのエステル、ポリ(メタ)アクリラート、ポリアクリラート、またはポリアクリルアミドが含まれる);摩擦調整剤(アミン、エステル、エポキシド、脂肪性イミダゾリンなどの脂肪酸誘導体、カルボン酸とポリアルキレン−ポリアミンの縮合物、およびアルキルリン酸のアミン塩が含まれる)を潤滑剤組成物中に使用してもよい。
【0106】
産業上の適用
機械的装置には、ギヤボックス、自動もしくは手動変速機、差動装置、油圧系、または内燃機関が含まれる。
【0107】
本発明の方法および潤滑組成物は、ギヤ油、車軸油、駆動軸油、トラクション油、手動変速機油、自動変速機油、作動流体、油圧作動油、または内燃機関油に適する。
【0108】
ギヤボックス、自動もしくは手動変速機に適する潤滑組成物は通常、金属ジアルキルジチオリン酸塩を含有しない。
【0109】
油圧系に適する潤滑組成物には、無灰系または金属含有系(通常、金属ジアルキルジチオリン酸塩、たとえば、ジアルキルジチオリン酸亜鉛)が含まれる。
【0110】
他の実施形態では、油圧系および(手動および/または自動)変速機に適する潤滑組成物は、潤滑組成物中に約0.1重量%〜約15重量%または約1重量%〜約10重量%のポリマーを含有する。
【0111】
異なる実施形態では、ギヤまたはギヤボックスに適する潤滑組成物は、潤滑組成物中に約1重量%〜約95重量%、約10重量%〜約85重量%、または約20重量%〜約75重量%のポリマーを含有する。
【0112】
本方法および潤滑組成物は、抗摩耗性能、ならびに許容される/改善された、許容される/改善された剪断安定性、わずかながらの(least of)許容される/改善された粘度指数制御、およびわずかながらの許容される/改善された低温粘度の少なくとも1つ(または少なくとも2つまたはすべて)をもたらし得る。
【0113】
ポリマーが窒素含有化合物をさらに含むとき、ポリマーは、許容できる/改善された分散力(dispersancy)特性を有する。
【0114】
内燃機関には、2ストローク機関または4ストローク機関が含まれる。適切な内燃機関には、船舶ディーゼルエンジン、航空機ピストンエンジン、低負荷ディーゼルエンジン、自動車および貨物自動車エンジンが含まれる。
【0115】
以下の実施例は、本発明の実例を提供するものである。こうした実施例は、網羅的ではなく、本発明の範囲を限定するものではない。
【実施例】
【0116】
調製実施例1(調製例1) 混合容器に、412.5gのメタクリル酸2−デシルテトラデシル、105gのHydroseal(商標)鉱油、6.9gのTrigonox(登録商標)−21、および6.9gのn−ドデシルメルカプタンを装入し、攪拌して、ポリマーを調製する。次いで、メカニカルオーバーヘッドスターラー、水による冷却器、熱電対、付加漏斗、および窒素取入れ口を備え付けた反応容器に、混合物の約3分の1を装入する。容器はさらに、7.56gのジメチルアミノプロピルメタクリルアミドを含む。反応容器の内容物を窒素雰囲気中で20分間攪拌する(流速28.3L/hr)。次いで、窒素流を14.2L/hrに弱め、混合物が110℃に加熱されるように設定する。15分後、反応の発熱によって温度が125℃に上昇し、混合容器の残りの内容物を付加漏斗で90分間かけて反応容器に加える。1時間後、別の0.72gのTrigonox(登録商標)−21および2.55gのHydroseal(商標)鉱油を加えた後、1時間攪拌する。生成物を冷却し、分析する。生成するポリマーは、98.2重量%の2−デシルテトラデシルメタクリル酸単位および1.8重量%のジメチルアミノプロピルメタクリルアミド単位を含む。数平均分子量は8567であり、重量平均分子量は13479である。
【0117】
調製実施例2(調製例2)では、油をIII群の基油とすることを除き、調製実施例1と同様の実験手順を用い、生成するポリマーは、数平均分子量が8500であり、重量平均分子量が13500である。
【0118】
調製実施例3(調製例3)では、モノマーを変えて、5重量%のメタクリル酸メチル、93.2重量%のメタクリル酸2−デシルテトラデシル、および1.8重量%のジメチルアミノプロピルメタクリルアミドという組成のポリマーを調製することを除き、調製実施例1と同様の実験手順を用いる。生成する生成物は、数平均分子量が9100、重量平均分子量が14500である。
【0119】
調製実施例4(調製例4)は、490gの無水マレイン酸および7.5kgのトルエンを(2個の付加漏斗を備え付けた)容器に加え、65℃に加熱して無水マレイン酸をほぼ溶解させることによって調製する。容器を106℃に加熱する。次いで、36.9gの過酸化ベンゾイル(500gのトルエンに溶解させたもの)および500gのスチレンを、2個の付加漏斗から90分間かけて容器に加える。次いで、容器の内容物を106℃で1時間攪拌する。生成する生成物は、RSVが0.07である無水マレイン酸スチレンコポリマー樹脂である。
【0120】
RSVが0.07である約23kgの無水マレイン酸スチレンコポリマー樹脂を、還流冷却器、窒素取入れ口、サーモウェル、および攪拌棒を備え付けた容器に加える。この容器に、768.2gの2−デシルテトラデカノール(Isofol(登録商標)24)および1438.2gのNeodol(登録商標)25(Shellから市販されている鎖状C12〜15アルコールの混合物)を加える。次いで、この容器を還流しながら20時間かけて135℃に加熱する。47.5gのメタンスルホン酸を加え、還流を20時間続けた後、等量の水酸化ナトリウムを加えて、メタンスルホン酸を中和する。次いで、容器を150℃に加熱し、減圧下で蒸発にかけ、次いで、得られる生成物を濾過する。重量平均分子量は21000である。
【0121】
調製実施例5(調製例5)は、エステル基の調製に使用するアルコールを100モル%(6683.34g)のIsofol(登録商標)24とすることを除き、調製実施例4と同様の実験手順で調製する。重量平均分子量は18500である。
【0122】
潤滑組成物1〜7(実施例1〜7)は、ギヤに適しており、表1に示す量の添加剤を潤滑粘度のポリαオレフィン(PAO−4)油にブレンドすることによって調製する。潤滑粘度の油は、Lucant(商標)HC−200オレフィンコポリマーを7重量%まで含有する。ポリマーは、調製実施例1のポリマーと同様のエステル基を形成する、90重量%以上の2−デシルテトラデカノール(Isofol(登録商標)24アルコール)を含むポリメタクリラートとし、耐摩耗剤は無灰とする。潤滑組成物は、分散剤および酸化防止剤を含めて、少なくとも1種の他の性能添加剤をさらに含有する。潤滑組成物は以下のとおりである。
【0123】
【表1】

脚注:表1のポリマーおよび添加剤の量は、活性物ベース、すなわち油なしの添加剤の重量%で示す。
【0124】
潤滑組成物8〜10(実施例8〜10)は、ギヤに適しており、表2に示す量の添加剤をブレンドして調製する。ポリマーは、Isofol(登録商標)24アルコールでエステル化した無水マレイン酸−スチレンコポリマーとする。このコポリマーは、RSVが約0.05または0.07(調製実施例4)である。潤滑組成物は、分散剤および酸化防止剤を含めて、少なくとも1種の耐摩耗剤および他の性能添加剤をさらに含有する。
【0125】
比較実施例1(比較例1)は、2−エチルヘキサノールと、Neodol(登録商標)25アルコール(C12〜15鎖状アルコールの混合物、Shellから市販されているもの)の混合物でエステル化した無水マレイン酸−スチレンコポリマーである。
【0126】
【表2】

脚注:表2のポリマーおよび添加剤の量は、活性物ベース、すなわち油なしの添加剤の重量%で示す。
【0127】
潤滑組成物11〜13(実施例11〜13)は、自動変速機に適しており、表3に示す量の添加剤をブレンドして調製する。ポリマーは、Isofol(登録商標)24アルコールでエステル化した無水マレイン酸−スチレンコポリマーとする。コポリマーは、RSVが約0.13である。潤滑組成物は、分散剤および酸化防止剤を含めて、少なくとも1種の耐摩耗剤および他の性能添加剤をさらに含有する。
【0128】
【表3】

次いで、ASTM D2270を使用しての動粘度(KV100)を、またASTM D2986を使用しての−40℃でのBrookfield低温性能(BV40)を測定することによって、潤滑組成物を試験する。
【0129】
潤滑組成物は、KRLテーパード軸受剪断安定性試験によって決定される剪断にもさらす。装置を、5000Nの負荷で140℃にて1450rpmで20時間稼働させる。試験から得られる粘度データ(VI)は、ASTM法D445で記載する。全3件の試験について得られた結果を表4に示す。
【0130】
【表4】

本発明の潤滑組成物は、許容される/改善された摩耗性能、ならびに許容される/改善された剪断安定性、粘度指数制御、および低温粘度の少なくとも1つをもたらし得る。
【0131】
本発明をその好ましい実施形態に関して説明してきたが、当業者には本明細書を読めばその様々な変更形態が明白となることを理解されたい。したがって、本明細書で開示する本発明は、添付の特許請求の範囲の範囲内に含まれる限りそのような変更形態を含むものであることを理解されたい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)潤滑粘度の油と、
(b)次式の()内に表されるペンダント基を有する式(I)のポリマー
【化1】

[式中、
BBは、ポリマー主鎖であり、
Xは、(i)少なくとも1個の炭素と少なくとも1個の酸素もしくは窒素原子とを含むか、(ii)少なくとも1つのアシル化剤を含むか、または(iii)約1〜約5個の炭素原子を有するアルキレン基であるかのいずれかの官能基であり、該ポリマー主鎖と()内に含まれる分枝状ヒドロカルビル基とを連結しており、
wは、該ポリマー主鎖に結合している、約1〜約2000の範囲のペンダント基の数であり、
yは、0、1、2、または3であり、但し、少なくとも1モル%のペンダント基においてyはゼロでなく、そして、但しyが0であるとき、Xは、Xの原子価を満たすのに十分な様式で末端基に結合しており、該末端基は、水素、アルキル、アリール、金属カチオン、またはアンモニウムカチオン、およびこれらの混合物から選択され、
pは、約1〜約15の範囲の整数であり、
R’およびR”は、それぞれ独立に、鎖状または分枝状のヒドロカルビル基であり、そしてR’およびR”上に存在する炭素原子を合わせた総数は、少なくとも約12である]と、
(c)耐摩耗剤と
を含む潤滑組成物であって、但し、耐摩耗剤が、ジアルキルジチオリン酸亜鉛、ジチオリン酸モリブデン、およびジチオカルバミン酸モリブデンからなる群から選択されるとき、該ポリマーは、分枝状ヒドロカルビル基の70%以下が()内に表すR’およびR”の両方で鎖状の基を含むポリ(メタ)アクリラート以外のものである、潤滑組成物。
【請求項2】
耐摩耗剤が、
(i)非イオン性(チオ)リン化合物、
(ii)(チオ)リン化合物のアミン塩、
(iii)(チオ)リン化合物のアンモニウム塩、
(iv)(チオ)リン化合物の一価の金属塩、または
(v)(i)、(ii)、(iii)、もしくは(iv)の混合物
のうちの少なくとも1つを含む、請求項1に記載の潤滑組成物。
【請求項3】
前記耐摩耗剤が(チオ)リン化合物のアミン塩を含む、請求項1に記載の潤滑組成物。
【請求項4】
前記耐摩耗剤が無灰である、請求項1に記載の潤滑組成物。
【請求項5】
前記耐摩耗剤が、前記潤滑組成物の約0.05重量%〜約10重量%で存在する、請求項1に記載の潤滑組成物。
【請求項6】
分散剤、酸化防止剤、またはこれらの混合物の少なくとも1つをさらに含む、請求項1に記載の潤滑組成物。
【請求項7】
前記ポリマー主鎖が、(a)(i)ビニル芳香族モノマーと(ii)カルボン酸モノマーもしくはその誘導体とを含むモノマーから誘導されるポリマー、(b)ポリ(メタ)アクリラート、(c)官能性ポリオレフィン、(d)エチレン酢酸ビニル、(e)フマル酸コポリマー、(f)(i)αオレフィンと(ii)カルボン酸モノマーもしくはその誘導体から誘導されるコポリマー、または(g)これらの混合物の少なくとも1つを含み、誘導される請求項1に記載の潤滑組成物。
【請求項8】
前記官能性ポリオレフィンが、不飽和カルボン酸モノマーでグラフト化されている、請求項7に記載の潤滑組成物。
【請求項9】
前記カルボン酸モノマーが、酸もしくは無水物、または完全にエステル化されたその誘導体、部分的にエステル化されたその誘導体、またはこれらの混合物を含む、請求項7に記載の潤滑組成物。
【請求項10】
前記ポリマーが、(i)ビニル芳香族モノマーと(ii)カルボン酸モノマーとを含むモノマーから誘導され、エステル化されたスチレン−無水マレイン酸コポリマーを含み、コポリマーの無水物単位が、分枝状アルキルペンダント基を有するアルコールでその後エステル化される、請求項7に記載の潤滑組成物。
【請求項11】
前記ポリマーが窒素含有基をさらに含む、請求項7に記載の潤滑組成物。
【請求項12】
前記窒素含有基が、官能性ポリマー主鎖と反応し得る窒素含有化合物から誘導される、請求項11に記載の潤滑組成物。
【請求項13】
前記窒素含有化合物が窒素含有モノマーから誘導される、請求項11に記載の潤滑組成物。
【請求項14】
前記ポリマーがポリ(メタ)アクリラートであり、()内の基の90%超〜約100%が分枝状ヒドロカルビル基である、請求項1に記載の潤滑組成物。
【請求項15】
前記潤滑剤の粘度指数および抗摩耗性能を制御する方法であって、該潤滑剤に請求項1に記載の潤滑組成物を供給することを含む方法。
【請求項16】
前記潤滑剤が、油圧作動油、ギヤ油、車軸油、駆動軸油、トラクション油、手動変速機油、または自動変速機油の少なくとも1種に適するものである、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
油圧作動油、手動変速機油、または自動変速機油の少なくとも1種において、前記ポリマーが約0.1重量%〜約15重量%で存在する、請求項1に記載の潤滑組成物。
【請求項18】
前記潤滑剤がギヤ油に適するものである、請求項1に記載の潤滑組成物。
【請求項19】
前記ポリマーが、ギヤ油中に前記潤滑組成物の約10重量%〜約85重量%で存在する、請求項1に記載の潤滑組成物。
【請求項20】
(a)潤滑粘度の油と、
(b)次式の()内に表されるペンダント基を有する式(I)のポリマー
【化2】

[式中、
BBは、ポリマー主鎖であり、
Xは、(i)少なくとも1個の炭素と少なくとも1個の酸素もしくは窒素原子とを含むか、または(ii)少なくとも1つのアシル化剤を含むかいずれかの官能基であり、
wは、ポリマー主鎖に結合している、約1〜約2000の範囲のペンダント基の数であり、
yは、0、1、2、または3であり、但し、少なくとも1モル%のペンダント基においてyはゼロでなく、そして、但しyが0であるとき、Xは、Xの原子価を満たすのに十分な様式で末端基に結合しており、該末端基は、水素、アルキル、アリール、金属カチオン、またはアンモニウムカチオン、およびこれらの混合物から選択され、
pは、約1〜約15の範囲の整数であり、
R’およびR”は、それぞれ独立に、鎖状または分枝状のヒドロカルビル基であり、そしてR’およびR”上に存在する炭素原子を合わせた総数は、少なくとも約12である]と、
(c)耐摩耗剤と
を含む潤滑組成物であって、但し、該耐摩耗剤が、ジアルキルジチオリン酸亜鉛、ジチオリン酸モリブデン、およびジチオカルバミン酸モリブデンからなる群から選択されるとき、該ポリマーは、分枝状ヒドロカルビル基の70%以下が()内に表すR’およびR”の両方で鎖状の基を含むポリ(メタ)アクリラート以外のものである、潤滑組成物。

【公表番号】特表2009−536685(P2009−536685A)
【公表日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−510117(P2009−510117)
【出願日】平成19年5月7日(2007.5.7)
【国際出願番号】PCT/US2007/068335
【国際公開番号】WO2007/133995
【国際公開日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【出願人】(591131338)ザ ルブリゾル コーポレイション (203)
【氏名又は名称原語表記】THE LUBRIZOL CORPORATION
【住所又は居所原語表記】29400 Lakeland Boulevard, Wickliffe, Ohio 44092, United States of America
【Fターム(参考)】