説明

ポリマーとその精製方法及びこれを用いる微粒子分散物、熱現像感光材料

【課題】両親媒性の共重合ポリマーから、残存モノマー及びオリゴマー等の低分子量成分を効率的に除去・精製できる精製方法を提供する。
【解決手段】下記一般式(1)で示されるモノマーと、下記一般式(2)で示されるモノマーを重合し形成されるポリマーであって、水、アルコール系溶媒及び溶解度パラメータ(SP値)が14.0〜21.0〔(MPa)1/2〕である有機溶媒の3成分系からなる溶剤により精製するポリマー。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルキル置換基を有するアクリルアミドモノマーとアクリル酸エステルモノマーからなるポリマーを、水、アルコール系溶媒、有機溶媒からなる3成分系溶剤によって精製したポリマー及びこれを用いたハロゲン化銀微粒子分散物、熱現像感光材料に関する。
【背景技術】
【0002】
合成ポリマーから未反応の残存モノマーや低分子量のオリゴマー及び添加物等の不純物を除去して精製する方法として、再沈殿法が広く使用されている。再沈殿法においては、ポリマーに対して貧溶媒であり、かつ、未反応のモノマーなどの不純物に対して良溶媒である溶媒に、該ポリマーの良溶媒溶液を滴下して該ポリマーを析出させ、ろ過する方法である(非特許文献1)。再沈殿方法の他の精製方法としては、沈殿剤を用いた分別沈殿法(特許文献1)、抽出法(特許文献2)や液液相分離法(特許文献3)、熱誘起相分離法(特許文献4)等が報告されている。
【0003】
しかしながら、これらの従来の方法では、2種以上の重合反応性の異なるモノマーを共重合して得られたポリマーを精製した場合、得られたポリマーには、重合反応性が低いモノマーからなる低分子量のオリゴマーを不純物として含有することが多かった。しかも、これらのオリゴマーはポリマーの良溶媒に溶解しやすいため、単純な精製方法では除去は容易ではなく、共重合ポリマーの純度について満足のいくものではなかった。
【0004】
また、側鎖にポリエチレングリコール基を有するアクリル酸エステルモノマーは両親媒性の共重合ポリマーを構成するモノマーとして非常に有用であり、特に、エステルの末端に長鎖アルキル基を持つモノマーは、親水性部分と疎水性部分を分子内に併せ持つ構造であり、導入量が少量でも両親媒性の効果が大きい(特許文献5)。ただ、このようなモノマーは重合速度が遅い上に、一般的なアクリルアミドモノマー等との共重合性が低く、未反応のモノマーが多く残りやすい。従って、他のモノマーと共重合せずに自身のオリゴマーを形成しやすいため、共重合性が低いモノマー由来のオリゴマー等の低分子量成分の精製が必須である。
【0005】
精製が不十分でオリゴマー等の低重合成分が残存しているポリマーを、親水性微粒子や無機微粒子を有機溶媒中へ分散させるための両親媒性ポリマーとして利用する場合、オリゴマーが原因で、水や極性溶媒への溶解性が低下したり、ハロゲン化銀微粒子に吸着しないオリゴマー同士が凝集を起こすなど、精製で除去できない低分子量成分が両親媒性ポリマーとしての機能を阻害するという問題があった。
【特許文献1】特開平7−157368号公報
【特許文献2】特開2006−274276号公報
【特許文献3】特開2002−241426号公報
【特許文献4】特開2006−77136号公報
【特許文献5】特開2006−343465号公報
【非特許文献1】第5版実験化学講座 26,24ページ〜26ページ、55ページ〜57ページ
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、両親媒性の共重合ポリマーから、残存モノマー及びオリゴマー等の低分子量成分を効率的に除去・精製できる精製方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の上記課題は、以下の手段により達成される。
【0008】
1.下記一般式(1)で示されるモノマーと、下記一般式(2)で示されるモノマーを重合し形成されるポリマーであって、水、アルコール系溶媒及び溶解度パラメータ(SP値)が14.0〜21.0〔(MPa)1/2〕である有機溶媒の3成分系からなる溶剤により精製することを特徴とするポリマー。
【0009】
【化1】

【0010】
(一般式(1)において、Raは水素原子又はアルキル基を表す。R11は水素原子又は置換基を表す。一般式(2)において、Rbは水素原子又はアルキル基を表す。R21およびR22は同一でも異なってもいてもよく、水素原子または置換基を表す。)
2.前記一般式(1)で表されるモノマーのSP値と前記有機溶媒のSP値との差が±2.0以下であることを特徴とする前記1に記載のポリマー。
【0011】
3.前記一般式(1)が、下記一般式(3)で表されることを特徴とする前記1または2に記載のポリマー。
【0012】
【化2】

【0013】
(一般式(3)において、Raは水素原子又はアルキル基を表す。R31は水素原子又は置換基を表す。mは1〜300の整数を表し、nは0〜300の整数を表す。)
4.前記一般式(3)において、R31が炭素数4〜20のアルキル基であることを特徴とする前記3に記載のポリマー。
【0014】
5.前記一般式(2)において、R21およびR22がアルキル基であることを特徴とする前記1〜4のいずれか1項に記載のポリマー。
【0015】
6.下記一般式(1)で示されるモノマーと、下記一般式(2)で示されるモノマーを重合し形成されるポリマーを、水、アルコール系溶媒及び溶解度パラメータ(SP値)が14.0〜21.0〔(MPa)1/2〕である有機溶媒の3成分系からなる溶剤により精製することを特徴とする精製方法。
【0016】
【化3】

【0017】
(一般式(1)において、Raは水素原子又はアルキル基を表す。R11は水素原子又は置換基を表す。一般式(2)において、Rbは水素原子又はアルキル基を表す。R21およびR22は同一でも異なってもいてもよく、水素原子または置換基を表す。)
7.前記1〜5に記載のポリマーと親水性微粒子からなることを特徴とする微粒子分散物。
【0018】
8.前記1〜5に記載のポリマーを含有することを特徴とする熱現像感光材料。
【発明の効果】
【0019】
本発明により、親水性微粒子や無機微粒子を有機溶媒中へ分散させるための両親媒性の共重合ポリマーから、残存モノマー及びオリゴマー等の低分子量成分を効率的に除去・精製でき、該両親媒性の共重合ポリマーを用いてハロゲン化銀粒子を熱現像感光材料に凝集なく適用することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明を実施するための最良の形態について詳細に説明する。
【0021】
本発明は前記一般式(1)で示されるモノマーと、前記一般式(2)で示されるモノマーから重合されるポリマーを、水、アルコール系溶媒及び溶解度パラメータ(SP値)が14.0〜21.0〔(MPa)1/2〕である有機溶媒の3成分系からなる溶剤によって精製されるポリマー、及びその精製方法に関する。
【0022】
先ず、一般式(1)で示されるモノマーと一般式(2)で示されるモノマーを共重合し形成されるポリマーについて説明する。
【0023】
前記一般式(1)において、Raは水素原子又はアルキル基を表す。Raとして表されるアルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基等が挙げられる。Raとして好ましくは、水素原子又はメチル基である。
【0024】
前記一般式(1)において、R11は水素原子又は置換基を表す。R11で表される置換基の具体例としては、アルキル基(メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オキシエチレン基、オキシプロピレン基、イソオクチル基、2−エチルヘキシル基、デシル基、ドデシル基、ラウリル基、ステアリル基等)、シクロアルキル基(シクロヘキシル基、シクロペンチル基等)、芳香族基(フェニル基等)、複素環基(ピリジル基、チアゾリル基、オキサゾリル基、イミダゾリル基、フリル基、ピロリル基、ピラジニル基、ピリミジニル基、ピリダジニル基、セレナゾリル基、スリホラニル基、ピペリジニル基、ピラゾリル基、テトラゾリル基等)、アシル基(アセチル基、プロピオニル基、ブタノイル基、ヘキサノイル基、シクロヘキサノイル基、ベンゾイル基、ピリジノイル基等)等を挙げることができる。
【0025】
11として好ましくは、水素原子、炭素数1から10のアルキル基、オキシエチレン基、オキシプロピレン基、より好ましくは水素原子、メチル基、エチル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、オキシエチレン基、オキシプロピレン基である。
【0026】
前記一般式(1)で表されるモノマーは、より好ましくは前記一般式(3)で表される。
【0027】
一般式(3)において、Raは一般式(1)におけるRaと同義である。
【0028】
31は水素原子又は置換基を表す。R31で表される置換基の具体例としては、アルキル基(メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基、ドデシル基、ラウリル基、セチル基、ステアリル基、ベヘニル基等)、シクロアルキル基(シクロヘキシル基、シクロペンチル基等)、芳香族基(フェニル基等)、複素環基(ピリジル基、チアゾリル基、オキサゾリル基、イミダゾリル基、フリル基、ピロリル基、ピラジニル基、ピリミジニル基、ピリダジニル基、セレナゾリル基、スリホラニル基、ピペリジニル基、ピラゾリル基、テトラゾリル基等)、アシル基(アセチル基、プロピオニル基、ブタノイル基、ヘキサノイル基、シクロヘキサノイル基、ベンゾイル基、ピリジノイル基等)、オキシエチレン基、オキシプロピレン基等を挙げることができる。
【0029】
31として好ましくは炭素数1〜30のアルキル基であり、より好ましくは炭素数4〜20のアルキル基、更に好ましくは、炭素数8〜20のアルキル基である。
【0030】
mは1〜300の整数を表し、nは0〜300の整数を表す。
【0031】
また、一般式(1)及び一般式(3)で表されるモノマーの更に好ましい例としては、溶解度パラメータ(SP値)が、21.0〔(MPa)1/2〕以下、更に好ましくは、18.0〔(MPa)1/2〕以下のモノマーである。
【0032】
本発明における溶解度パラメータ(SP値)について説明する。SP値とは溶解度パラメータ(Solubility Parameter)の略称で、液体分子同士または高分子と液体分子の分子間相互作用の指標となるものである。SP値の単位は〔(MPa)1/2〕とする。
【0033】
モノマーのSP値は、例えば、「ポリマーハンドブック(Polymer Handbook)」、第4版、VII−675頁〜VII−711頁に記載の方法[特に、676頁の(B3)式及び(B8)式]により求めることができる。本発明においては、該文献に掲載されていないSP値について、富士通株式会社のCACheという分子計算パッケージの中のProject Leaderであり、A.K.Ghost、et al,J.Comput.Chem.9:80(1988)のフラグメント法をベースにしている方法により計算した値である。
【0034】
一般式(1)及び一般式(3)で表されるモノマーとして、以下に具体例を挙げるが、本発明はこれらに限られるものではない。
【0035】
例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸ブチル(略称BA)、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル(略称2−EHA)、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸ラウリル(略称LA)、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸メトキシブチル、(メタ)アクリル酸エトキシブチル、2−ヒドロキエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキブチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0036】
また、上市されているモノマーとして、日本油脂株式会社製のポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレートとしてブレンマーPE−90(略称PE−90)、ブレンマーPE−200、ブレンマーPE−350、ブレンマーAE−90、ブレンマーAE−200、ブレンマーAE−400、ブレンマーPP−1000、ブレンマーPP−500、ブレンマーPP−800、ブレンマーAP−150、ブレンマーAP−400、ブレンマーAP−550、ブレンマーAP−800、ブレンマー50PEP−300、ブレンマー70PEP−350B、ブレンマーAEPシリーズ、ブレンマー55PET−400、ブレンマー30PET−800、ブレンマー55PET−800、ブレンマーAETシリーズ、ブレンマー30PPT−800、ブレンマー50PPT−800、ブレンマー70PPT−800、ブレンマーAPTシリーズ、ブレンマー10PPB−500B、ブレンマー10APB−500Bなどがあげられる。同様に日本油脂株式会社製のアルキル末端ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレートとしてブレンマーPME−100、ブレンマーPME−200、ブレンマーPME−400(略称PME−400)、ブレンマーPME−1000、ブレンマーPME−4000、ブレンマーAME−400、ブレンマー50POEP−800B、ブレンマー50AOEP−800B、ブレンマーPLE−200、ブレンマーALE−200(略称ALE−200)、ブレンマーALE−800、ブレンマーPSE−400(略称PSE−400)、ブレンマーPSE−1300、ブレンマーASEPシリーズ、ブレンマーPKEPシリーズ、ブレンマーAKEPシリーズ、ブレンマーANE−300、ブレンマーANE−1300、ブレンマーPNEPシリーズ、ブレンマーPNPEシリーズ、ブレンマー43ANEP−500、ブレンマー70ANEP−550、ブレンマーLMA、ブレンマーSLMA、ブレンマーCMA、ブレンマーSMA、ブレンマーVMA、ブレンマーVMA−70,ブレンマーB−12など、また共栄社化学株式会社製ライトエステルMC、ライトエステル130MA、ライトエステル041MA、ライトアクリレートBO−A、ライトアクリレートEC−A、ライトアクリレートMTG−A、ライトアクリレート130A、ライトアクリレートDPM−A、ライトアクリレートP−200A、ライトアクリレートNP−4EA、ライトアクリレートNP−8EAなどが挙げられ、これらの中から選択し用いることもできる。ただし、本発明はこれらに限られるものではない。
【0037】
一般式(2)において、Rbは水素原子又はアルキル基を表す。Rbで表されるアルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基等が挙げられる。Rbとして好ましくは、水素原子又はメチル基である。
【0038】
21及びR22は同一でも異なってもいてもよく、水素原子または置換基を表す。
【0039】
21及びR22で表される置換基の具体例としては、アルキル基(メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基等)、シクロアルキル基(シクロヘキシル基、シクロペンチル基等)、芳香族基(フェニル基等)、複素環基(ピリジル基、チアゾリル基、オキサゾリル基、イミダゾリル基、フリル基、ピロリル基、ピラジニル基、ピリミジニル基、ピリダジニル基、セレナゾリル基、スリホラニル基、ピペリジニル基、ピラゾリル基、テトラゾリル基等)、アシル基(アセチル基、プロピオニル基、ブタノイル基、ヘキサノイル基、シクロヘキサノイル基、ベンゾイル基、ピリジノイル基等)等を挙げることができる。
【0040】
21及びR22として好ましくは、水素原子、炭素数1から10のアルキル基、アシル基、より好ましくは水素原子、メチル基、エチル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、アセチル基、更に好ましくはR21及びR22が共にメチル基又はエチル基である。
【0041】
一般式(2)で表されるモノマーの例としては、例えば、アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、上市されているものとしては、興人株式会社製のN,N−ジメチルアクリルアミド(略称DMAA)、N,N−ジエチルアクリルアミド(略称DEAA)、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、アクリロイルモルホリン、N−イソプロピルアクリルアミド(略称NIPAM)、N,N−ジイソプロピルアクリルアミド、協和醗酵工業株式会社製のダイアセトンアクリルアミド(略称DAAM)などが挙げられ、これらの中から選択して用いることもできる。ただし、本発明はこれらに限られるものではない。
【0042】
本発明のポリマーの製造は前記モノマーを共重合し形成されるが、溶剤の存在下又は非存在下のいずれでも実施できる。作業性の点からは溶剤存在下の重合するのが好ましい。溶剤としては、エタノール、イソプロピルアルコール、n−ブタノール、iso−ブタノール、tert−ブタノール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルアミルケトン等のケトン類、酢酸メチル、酢酸エチル、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドン等の極性溶剤、メチルセロソルブ等のエーテル類、プロピレングリコール等のプロピレングリコール類及びそのエステル類、1,1,1−トリクロルエタン等のハロゲン系溶剤、テトラヒドロフラン等のエーテル類、ベンゼン、トルエン等の芳香族類等いずれも使用できる。
【0043】
各モノマーの重合性に応じ、反応容器にモノマーと開始剤を滴下しながら重合する滴下重合法なども、均一な組成のポリマーを得るために有効である。
【0044】
溶剤の存在下以外で、乳化重合や懸濁重合で得られたポリマー分散液を用いることもできる。これらのポリマー作製法については、例えば「合成ラテックスの化学(室井宗一著、高分子刊行会発行(1970))」に記載されている。
【0045】
ポリマーの分子量は、重量平均分子量、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定値のポリスチレン換算値で3,000〜1000,000が好ましく、50,000〜800,000がより好ましく、100,000〜800,000が特に好ましい。分子量が3000以下であると、ハロゲン化銀粒子の分散能が十分に得られず、分子量が大きすぎる場合は、分散液の粘度が高くなりすぎたり、ハロゲン化銀粒子の凝集を起こす場合があるからである。
【0046】
本発明のポリマーは、通常のラジカル重合のほか、イオン重合、リビング重合法など各種の手法を用いる事ができる。例えば「季刊化学総説18精密重合(日本化学会編 企画・編集担当者;清水剛夫・井上祥平・城田靖彦・柘植新・東村敏延)」などを参考にする事ができる。重合開始剤や触媒には、公知のすべての材料を適用することが可能である。
【0047】
以上、本発明において用いられる好ましいコポリマーの具体例また合成例は実施例に挙げられている。
【0048】
次に、本発明で使用する精製溶媒について説明する。
【0049】
本発明においてアルコール系溶媒とは、その分子構造中に少なくとも1つ以上のヒドロキシル基を有するものであり、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n−ブタノール、tert−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、イソブタノール、ペンタノール、イソペンタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール等が挙げられる。アルコール系溶媒として好ましくは、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、更に好ましくはメタノール、エタノールである。
【0050】
本発明の精製に使用する3成分系からなる溶剤に用いられる有機溶媒は溶解度パラメータ(SP値)が14.0〜21.0〔(MPa)1/2〕である有機溶媒である。
【0051】
有機溶媒のSP値として、「ポリマーハンドブック(Polymer Handbook)第4版」の表1(VII−683頁)、表7〜表8(VII−688頁〜VII−711頁)の値を採用できる。
【0052】
SP値が14.0未満及び21.0を越える有機溶媒では、本発明で使用するモノマーのSP値との差が大きすぎるため、残存モノマーやオリゴマー等の低分子成分との相溶性が低下し、精製溶媒として適さない。
【0053】
SP値が14.0〜21.0の範囲にある有機溶媒の具体例としては、アセトン(SP値=20.3〔(MPa)1/2〕)、メチルエチルケトン(19.0)、酢酸ブチル(17.4)、酢酸エチル(18.6)、ジエチルエーテル(15.1)、テトラヒドロフラン(18.6)、ベンゼン(18.8)、トルエン(18.2)、ヘプタン(15.1)、ヘキサン(14.9)等が上げられる。好ましくは、アセトン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ヘプタン、ヘキサン、より好ましくは、アセトン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、ジエチルエーテル、更に好ましくは、メチルエチルケトン、酢酸エチルである。
【0054】
本発明においては、一般式(1)又は一般式(3)で表される、比較的重合速度が遅いモノマーの残存モノマー及び低分子量のオリゴマーを除去するために、これらと相溶しやすい有機溶媒を精製溶媒として使用することが好ましい。従って、前記一般式(1)または一般式(3)で表されるモノマーのSP値と有機溶媒のSP値の差は、±4.1以下であることが好ましい。±4.1を越えると、モノマーと相溶せず、精製効率が低下する。一般式(1)又は一般式(3)で表されるモノマーのSP値と有機溶媒のSP値の差として好ましくは、±3.1以下、より好ましくは±2.0以下である。
【0055】
本発明のポリマーを精製方法は、基本的には再沈殿による精製であるが、本発明の精製において、精製時に添加する水の量は、ポリマー溶液に対して2.0倍〜30.0倍(体積)、より好ましくは2.0倍から10.0倍である。アルコール系溶媒の添加量は、ポリマー溶液に対して0.1倍〜10.0倍、より好ましくは0.1倍〜2.0倍である。SP値が7.0〜10.0の有機溶媒の添加量としては、ポリマー溶液に対して0.1倍〜10.0倍、より好ましくは0.1倍〜10.0倍である。
【0056】
本発明に係わるポリマー溶液を3成分系の溶剤を用いて精製する方法としては、基本的にはポリマー溶液に溶剤を滴下する方法、逆に、溶剤にポリマー溶液を滴下する方法がある。また、滴下する溶剤の組み合わせや順序もポリマー精製の効率に大きく影響する。本発明においては、ポリマー溶液に、溶剤を滴下する方法が好ましく、以下の様な方法が用いられる。
【0057】
(水を滴下する方法)
共重合により得られたポリマー(メタノール)溶液に、アルコール系溶媒及び有機溶媒を添加し溶解した後、ここに、水を滴下し、ポリマーを再沈殿させ、沈殿したポリマーをろ別する方法。
【0058】
(有機溶媒と水を滴下する方法)
重合反応後のポリマー(メタノール)溶液に、アルコール系溶媒を添加・溶解し、ここに、有機溶媒と水を合わせた2成分系の溶剤を加え、ポリマーを再沈殿させ、沈殿したポリマーをろ別する方法。
【0059】
(アルコール系溶媒と水を滴下する方法)
重合反応後のポリマー溶液に、溶解度パラメータ値が14.0〜21.0〔(MPa)1/2〕である有機溶媒を添加し、ここに、アルコール系溶媒と水を合わせた2成分の溶剤を滴下し、ポリマーを再沈殿させ、沈殿したポリマーをろ別する方法。
【0060】
(アルコール系溶媒と有機溶媒と水を滴下する方法)
重合反応後のポリマー溶液に、アルコール系溶媒と溶解度パラメータ値が14.0〜21.0〔(MPa)1/2〕である有機溶媒と水を合わせた3成分の溶剤を滴下し、ポリマーを再沈殿させたのちポリマーをろ別する方法。
【0061】
(ポリマー溶液を滴下する方法)
アルコール系溶媒と溶解度パラメータ値が14.0〜21.0〔(MPa)1/2〕の有機溶媒と水を合わせた溶剤に、ポリマー(メタノール溶液)を滴下し、ポリマーを再沈殿させる、等、種々の方法で精製することが出来る。
【0062】
(液液相分離)
また、重合反応後のポリマー溶液に、有機溶媒を添加し、ここに、アルコール系溶媒と水を合わせた2成分の溶剤を滴下し、分離する方法等もある。
【0063】
またこれらの操作は繰り返してもよい。
【0064】
好ましくは、ポリマー溶液に有機溶媒及びアルコール系溶媒を混合したところに、水を滴下する方法である。
【0065】
精製のときの温度としては、特に制限はないが、好ましくは0℃〜80℃、より好ましくは5℃から60℃、更に好ましくは、20℃〜50℃である。
【0066】
ポリマー溶液中のポリマー濃度は、用いるポリマーの種類および分子量により異なるので特に制限されないが、0.1質量%〜60質量%、好ましくは1質量%〜40質量%、より好ましくは5質量%〜20質量%である。ポリマー濃度0.1質量%未満では精製時のポリマーの回収率が悪いため効率的でなく、60質量%より高いとポリマー溶液の粘度が高すぎるためオリゴマーが除去されにくくなる。
【0067】
本発明において、重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)、分子量分布(Mw/Mn)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法で測定したものをいう。本発明におけるポリマーの分子量は小さすぎると微粒子と吸着せず、また、大きすぎると、ポリマー同士がからまるために、有機溶剤中で凝集しやすくなる。Mwとして好ましくはMw=20,000〜1,000,000、より好ましくはMw=50,000〜800,000、更に好ましくはMw=100,000〜800,000である。Mw/Mnとしては、Mw/Mn=1.0〜5.0が好ましい。分子量分布が広すぎると、分散させたい微粒子に吸着しないポリマーが増え、不必要な成分として用材中に残存するため、凝集因子となる。より好ましくはMw/Mn=1.0〜4.5、更に好ましくはMw/Mn=4.0である。
【0068】
また、本発明においてオリゴマーとは、一般式(1)又は一般式(3)で表されるモノマーから形成される低分子量体のことを表し、ポリマーのゲルパーミネーションクロマトグラフィー(GPC)測定による分子量曲線において、分子量が3000以下の低重合体をいう。本発明において、分子量が3000以下のオリゴマーの含有量とは、分子量曲線における分子量3000以下の成分の割合(質量%)をいう。
【0069】
本発明においては、精製処理後のポリマー中のオリゴマー含有量が10質量%以下であることが好ましく、より好ましくは8%以下、更に好ましくは5%以下である。
【0070】
本発明に係わる精製法においては、これら再沈殿精製のほか、カラム濾過、溶剤抽出、などの手段を併用してもよい。
【0071】
水、アルコール系溶媒及び前記の溶解度パラメータ(SP値)をもつ有機溶媒の3成分系からなる溶剤を用いて精製することで、本発明に係わる両親媒性のポリマーから、残存モノマー及びオリゴマー等の低分子量成分を効率的に除去・精製でき、低分子量成分の存在によりポリマー自身の水や極性溶媒への溶解性が低下したり、オリゴマー同士が凝集を起こすなどの現象を起こさないポリマーが得られる。本発明に係わる方法で精製したポリマーを用いることで、ハロゲン化銀微粒子等の親水性微粒子や無機微粒子を有機溶媒中へ凝集なく、転相・分散することができ、かつ、これを熱現像感光材料に用いて高感度、高カバリングパワーの熱現像感光材料を得ることが出来る。
【0072】
以上の如く、本発明に係わるポリマーは、水、有機溶媒両方に親和性を有する両親媒性であって、ハロゲン化銀ゼラチン乳剤を油性の媒体に適用(有機溶媒系に転相)する際に有用であり、ゼラチン等の水性高分子材料を保護コロイドした親水性微粒子分散物を、その機能を損なうことなく、有機溶媒系に転相・分散することができるポリマーである。
【0073】
本発明のポリマーを用いて、ハロゲン化銀ゼラチン乳剤を有機溶媒系に転相・分散する方法について説明する。
【0074】
親水性微粒子分散物の有機溶媒系への転相は、特に粒子径が10〜100nmである親水性微粒子分散物に適用するのが好ましい。
【0075】
この様な親水性微粒子分散物としてはハロゲン化銀粒子があり、特に熱現像感光材料に用いられるハロゲン化銀粒子の平均粒子径は10〜100nm、好ましくは10〜80nmである。ここでいう平均粒径とは、ハロゲン化銀粒子が立方体や八面体のいわゆる正常晶である場合、その他正常晶でない場合、例えば球状粒子、棒状粒子等の場合には、ハロゲン化銀粒子の体積と同等な球を考えたときの直径、いわゆる球相当径をいう。なお、ハロゲン化銀粒子が平板状粒子である場合には主表面の投影面積と同面積の円像に換算したときの直径をいう。電子顕微鏡を用い1000個の粒子の平均から求める。
【0076】
また、粒径の分布を表す変動係数の最適の値としては、0%以上〜30%以下であり、好ましくは、0%以上〜20%以下である。ここで粒径の変動係数とは、粒径のバラツキの程度を表し、電子顕微鏡を用い1000個の粒子について測定した各粒子の投影面積の円換算直径の標準偏差を平均粒径で割った値のパーセント表示値である。
【0077】
本発明に用いられる感光性ハロゲン化銀は、塩臭化銀、臭化銀、ヨウ臭化銀、ヨウ塩臭化銀を用いることができるが、全体のハロゲン組成としてBrが50質量%以上である事が好ましい。塩化銀が多すぎるとオストワルド熟成が進み易く、粒径の増大が起き易くなる。一方、ヨウ化銀が多すぎるとハロゲン化銀粒子の感度が低下し好ましくない。
【0078】
粒子内におけるハロゲン組成の分布は、均一であってもよく、ハロゲン組成がステップ状に変化したものでもよく、或いは連続的に変化したものでもよい。また、コア/シェル構造を有するハロゲン化銀粒子を好ましく用いることができる。また、塩臭化銀粒子の表面に、臭化銀やヨウ臭化銀、ヨウ化銀を局在させる技術も好ましく用いることができる。
【0079】
感光性ハロゲン化銀の形成方法は、当業界公知の方法、例えば、リサーチディスクロージャー1978年6月の第17029号、及び米国特許第3,700,458号に記載されている方法を用いることができる。ゼラチンはハロゲン化銀粒子の分散剤(保護コロイド)としてハロゲン化銀1モルあたり、10〜100gの範囲で用いられる。
【0080】
具体的には、ゼラチン溶液中に銀供給化合物及びハロゲン供給化合物を添加することにより感光性ハロゲン化銀を調製する。特に銀イオン水溶液とハライド水溶液をダブルジェットで添加し粒子形成を行う方法が好ましい。
【0081】
感光性ハロゲン化銀乳剤は、ヌードル法、凝集沈殿法、電気透析等、当業界で知られている水洗方法により脱塩することができるが、限外ろ過によっても脱塩をおこなう事ができる。脱水は最終的に脱水された水の伝導度が好ましくは300μS/cm以下、より好ましくは100μS/cm以下になる程度に行う。この場合、伝導度の下限に特に制限はないが、通常、5μS/cm程度である。
【0082】
この様にして形成されるハロゲン化銀乳剤は、用いられるゼラチンのゲル化温度以下では、ゲル状態となりマトリクスとしてハロゲン化銀粒子を沈降することなく保持できる。
【0083】
ちなみに、本発明に係わるハロゲン化銀乳剤は、金増感と他の化学増感とを併用することができ、金増感法と組み合わせて使用する場合には、例えば、硫黄増感法と金増感法、セレン増感法と金増感法、硫黄増感法とセレン増感法と金増感法、硫黄増感法とテルル増感法と金増感法、硫黄増感法とセレン増感法とテルル増感法と金増感法などが好ましい。また還元増感を用いることができる。本発明に係る感光性ハロゲン化銀粒子には、分光増感色素を吸着させ分光増感を施すこともできる。
【0084】
前記化学増感、また分光増感は、ゼラチンを用い水系で調製した乳剤において行ってもよいし、また、ハロゲン化銀ゼラチン乳剤を水系において調製後、有機溶媒系に転相・分散した後に行ってもよい。
【0085】
ハロゲン化銀ゼラチン乳剤等の親水性微粒子分散物を有機溶媒系へ転相・分散するには、本発明に係わるポリマーを有機溶媒に溶解し、この溶液にハロゲン化銀ゼラチン乳剤等の微粒子分散物を混合する。
【0086】
ここで用いる有機溶媒としては、本発明に係わるポリマーが溶解可能であると共に、水を自由に溶解しこれと共存する有機溶媒を用い、この様な有機溶媒に前記合成高分子を溶解し、これを例えば水性のハロゲン化銀ゼラチン乳剤と混合する。これによりゼラチン及びハロゲン化銀粒子は凝集することなくポリマーの溶液中において均一に混じり合って相溶する。
【0087】
この様な有機溶媒としては、前記ポリマーが溶解可能であると共に、水を自由に溶解できるものが好ましいため、例えば溶解性パラメータで23.0[(MPa)1/2](J.Brandrup,E.H.Immergut ’POLYMER HANDBOOK’ Third Edition JOHN WILEY & SONS)以上の極性の高い有機溶媒特にプロトン系有機溶媒が好ましい。代表例としては、メタノール、エタノール、プロパノール等が上げられる。最終的には、溶媒置換を受けることが多いため、沸点が低く、特に好ましいのは、メタノールである。
【0088】
このようにして、先ず、有機溶媒系への転相/分散を行った後、更に、これを最終的に用いられる有機溶媒と混合し、脱水、必要であれば、脱水とともに、濃縮、溶媒の置換を行うことができる。これにより親水性微粒子分散物から有機溶媒系に転相した油性の微粒子分散物を得ることができる。
【0089】
また、本発明のポリマーの溶液と、親水性微粒子分散物の混合は、保護コロイドの親水性高分子が例えばゼラチン等の場合には、凝集が起こらないようにするため、前記親水性高分子のゲル化温度よりも0℃〜30℃、より好ましくは、10〜25℃高い温度で行われるのがよい。
【0090】
転相に使用するポリマー量は、親水性微粒子分散物に含まれる親水性高分子の1〜100倍、好ましくは1〜50倍、より好ましくは1〜10倍である。
【0091】
前記ポリマーの有機溶媒溶液と親水性微粒子分散物の混合は、実際には、ポリマーの有機溶媒溶液中に、親水性微粒子分散物を順次添加することにより行われることが好ましい。
【0092】
ポリマーの有機溶媒溶液中の濃度は、1〜50質量%、好ましくは3〜30質量%、より好ましくは5〜20質量%である。
【0093】
溶媒中に溶解したポリマー中に、親水性微粒子分散物を順次添加し混合して有機溶媒系への転相を行った後、必要であれば、脱水を行って微粒子分散物を得ることが出来る。また、更に必要であれば、脱水とともに、溶媒を最終的に分散媒体として用いたい溶媒に変換する。最終的に用いたい溶媒を加えて、蒸留、濃縮等の方法を用いて、溶媒置換を行うことができる。親水性微粒子分散物から所望の有機溶媒系に転相した油性の微粒子分散物を得ることができる。蒸留、濃縮は、減圧蒸留により濃縮しても、あるいは有機溶媒でも使用可能な分離膜等を用いて濃縮しても良い。
【0094】
この様に、本発明のパリマーを用いて、例えばハロゲン化銀乳剤を有機溶媒系に転相・分散して形成したハロゲン化銀有機溶媒分散物は、増感色素、増感剤、また追加のバインダー等が添加され、更に、別途調整された例えばベヘン酸銀等の長鎖脂肪酸銀塩分散液と混合されて、還元剤、色調剤、カブリ防止剤等をはじめとする添加剤と混合されて後、ポリエチレン手フタレート等の基材上に塗布され、乾燥され熱現像感光材料が製造される。
【0095】
本発明によりモノマーやオリゴマー等の分子量低重合成分の残存がない充分に精製されたポリマーを得ることが出来る。これによりモノマーやオリゴマーに起因した共重合ポリマーの水や極性溶媒への溶解性低下や、オリゴマー同士の凝集によるポリマー分散系への悪影響や機能阻害がなくなり、凝集が少ないハロゲン化銀粒子有機溶媒分散物を得ることが出来るので、低カブリ、高感度、高カバリングパワーの熱現像感光材料を得ることが出来る。
【実施例】
【0096】
以下に実施例を示し、更に発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に制限されるものではない。
【0097】
なお、実施例において得られた重合体の物性値(重量平均分子量)は、以下の方法により測定した。
【0098】
平均分子量測定は、GPCを使用し、得られたポリマーをDMFに溶解し、検出器としてウォーターズ製GPCシステム(カラム:昭和電工(株)製 Shodex LF−804)を使用したゲルパーミエーションクロマトグラフィーによって測定した。溶媒としてDMF(0.1MLiBr)を用い、溶媒流量0.8ml/分とした。分析する重合体サンプル約20mgをDMF(0.1MLiBr)4mlに溶解することによりサンプル調製を行い、80μLをカラムに注入した。カラム温度は40℃に設定した。検出器としてRI(示差屈折率)検出器を使用した。
【0099】
保持容量から分子量への換算は、予め作成しておいた標準ポリスチレンによる検量線を用いて行う。使用する標準ポリスチレンは何れも東ソー(株)製の以下の銘柄である。F380,F288,F128,F80,F40,F20,F10,F4,F1,A5000,A2500,A1000。各々が0.4mg/mlとなるようにDMF(LiBr 10mM)に溶解した溶液を0.1ml注入して較正曲線を作成した。
【0100】
また、Mw=3,000以下のオリゴマー成分の量については、GPC測定により得られた分子量分布のチャートにおいて、GPCカーブ全体に占めるMw=3,000以下の部分の面積比から算出される。単位は質量%である。
【0101】
残存モノマー量の測定は、ガスクロマトグラフ装置〔GC14B、島津製作所製、キャピラリーカラム:DB−1(長さ30m×内径0.258mm、J&W SCIENTIFIC社製)〕を用い、各モノマーの検量線により定量した。カラム温度は、注入直後5分間50℃に保持した後、10℃/minの速度で昇温した後250℃の最終温度に設定した。また、その他の使用(測定)条件は、注入口温度:150℃、試料注入量:3μL、キャリアガス:ヘリウムで、スプリット注入法で行った。
【0102】
ガスクロマトグラフィーでは検出できない残存モノマー量については、1H−NMRにより解析を行った。
【0103】
また、特に断りない限り、実施例中の「部」は「質量部」を、「%」は「質量%」を示す。
【0104】
実施例1
ポリマーの重合
〔合成例1〕ポリマーの重合
500mlの四つ口セパラブルフラスコに滴下装置、温度計、窒素ガス導入管、攪拌装置及び還流冷却管を付け、メタノール80gと表1〜5に記載のモノマーを入れて65℃に加熱した。次に、AIBN(0.3mol%)をメタノール20gに溶解した液をフラスコ中に2時間かけて滴下した。同温度にて更に6時間反応させた後に室温まで放冷した。
【0105】
ポリマーの精製
〔メソッドA〕(水を滴下する方法)
得られたポリマー(メタノール)溶液に、表1〜5に記載のアルコール系溶媒及び有機溶媒を添加し、30分間攪拌した。ここに、水を20分間かけて滴下し、ポリマーを再沈殿させ、沈殿したポリマーをろ別した。同じ精製操作を表1〜5に記載の回数だけ繰り返して行い、得られたポリマーをメチルエチルケトンに溶解後、溶媒を減圧下で留去し、メタノールに溶解させた(ポリマー固形濃度10質量%)。平均分子量、残存モノマー量及びオリゴマー量は表1〜5に示した。
【0106】
〔メソッドB〕(有機溶媒と水を滴下する方法)
重合反応後のポリマー(メタノール)溶液に、表1〜5記載のアルコール系溶媒を添加し、30分間攪拌させた。ここに、表1〜5記載の有機溶媒と水を合わせた2成分系の溶剤を20分かけて滴下し、ポリマーを再沈殿させ、沈殿したポリマーをろ別した。同じ精製操作を表1〜5に記載の回数だけ繰り返して行い、得られたポリマーをメチルエチルケトンに溶解後、溶媒を減圧下で留去し、メタノールに溶解させた(ポリマー固形濃度10質量%)。平均分子量、残存モノマー量及びオリゴマー量は表1〜5に示した。
【0107】
〔メソッドC〕(アルコール系溶媒と水を滴下する方法)
重合反応後のポリマー溶液に、表1〜5記載の有機溶媒を添加し、30分間攪拌させた。ここに、表1〜5記載のアルコール系溶媒と水を合わせた2成分の溶剤を20分かけて滴下し、ポリマーを再沈殿させ、沈殿したポリマーをろ別した。同じ精製操作を表1〜5に記載の回数だけ繰り返して行い、得られたポリマーをメチルエチルケトンに溶解後、溶媒を減圧下で留去し、メタノールに溶解させた(ポリマー固形濃度10質量%)。平均分子量、残存モノマー量及びオリゴマー量は表1〜5に示した。
【0108】
〔メソッドD〕(アルコール系溶媒と有機溶媒と水を滴下する方法)
重合反応後のポリマー溶液に、表1〜5記載のアルコール系溶媒と有機溶媒と水を合わせた3成分の溶剤を30分かけて滴下し、ポリマーを再沈殿させ、沈殿したポリマーをろ別した。同じ精製操作を表1〜5に記載の回数だけ繰り返して行い、得られたポリマーをメチルエチルケトンに溶解後、溶媒を減圧下で留去し、メタノールに溶解させた(ポリマー固形濃度10質量%)。平均分子量、残存モノマー量及びオリゴマー量は表1〜5に示した。
【0109】
〔メソッドE〕(ポリマー溶液を滴下する方法)
表1〜5記載のアルコール系溶媒と有機溶媒と水を合わせた溶剤に、ポリマー(メタノール溶液)を、30分かけて滴下し、ポリマーを再沈殿させた。同じ精製操作を表1〜5に記載の回数だけ繰り返して行い、得られたポリマーをメチルエチルケトンに溶解後、溶媒を減圧下で留去し、メタノールに溶解させた(ポリマー固形濃度10質量%)。平均分子量、残存モノマー量及びオリゴマー量は表1〜5に示した。
【0110】
〔メソッドF〕(液液相分離)
重合反応後のポリマー溶液に、表1〜5記載の有機溶媒を添加し、30分間攪拌させた。ここに、表1〜5記載のアルコール系溶媒と水を合わせた2成分の溶剤を20分かけて滴下した。溶液を3時間静置した後、下層を除去した。同じ精製操作を表1〜5に記載の回数だけ繰り返して行い、得られた上層の溶液について減圧下で溶媒留去を行い、メタノールに溶解させた(ポリマー固形濃度10質量%)。平均分子量、残存モノマー量及びオリゴマー量は表1〜5に示した。
【0111】
【表1】

【0112】
【表2】

【0113】
【表3】

【0114】
【表4】

【0115】
【表5】

【0116】
尚、表中のモノマーについて、
LA:ラウロイルアクリレート、BA:ブチルアクリレート、2−EHA:2−エチルヘキシルアクリレート、NIPAM:N−イソプロピルアクリルアミド、DAAM:ダイアセトンアクリルアミド、DMAA:N,N−ジメチルアクリルアミド、DEAA:N,N−ジエチルアクリルアミド、TBAA:N−t−ブチルアクリルアミド、
また、
PME−400;ブレンマーPME−400、PE−90:ブレンマーPE−90、PSE−400;ブレンマーPSE−400、PSE−1300;ブレンマーPSE−1300、PME−1000;ブレンマーPME−1000、ALE−200;ブレンマーALE−200(以上日本油脂(株)製)
を表す。
【0117】
実施例2
(メタノール及び水に対する溶解性の評価)
実施例1で得られたそれぞれのポリマーについて、メタノール及び水に対する溶解性試験を行った。メタノールに対する溶解性試験は、溶媒を乾固させたポリマー10gを、メタノール23gに溶解し、2時間攪拌した後に以下の基準の目視評価を行った。
○:不溶解物が全く存在しない。
△:極く微量の小さな不溶解物が存在する。
×:多量の不溶解物が存在する。
【0118】
水に対する溶解性試験は、ポリマーのメタノール溶液(ポリマー固形分10質量%)20gに水10gを加え、室温で4時間攪拌した後に、以下の基準の目視評価を行った。
○:不溶解物が全く存在しない(透明で濁りがない)。
△:極く微量の小さな不溶解物が存在する。
×:多量の不溶解物が存在する。
【0119】
結果を表6に示す。
【0120】
本発明のポリマーは、比較のポリマーよりもメタノールに対する溶解性及び水に対する溶解性に優れている。
【0121】
実施例3
(粒子分散性の評価)
実施例1で得られたポリマーについて、ハロゲン化銀粒子に吸着させて、ハロゲン化銀粒子の分散物を作成し、有機溶媒中での分散性評価として粒子の粒径を測定した。
【0122】
(1)ハロゲン化銀乳剤の調製
(溶液A)
フタル化ゼラチン(フタル化修飾率99%) 66.2g
界面活性剤 AO−1(10%メタノール水溶液) 10ml
臭化カリウム 0.32g
水で5,429mlに仕上げる
AO−1:HO(CH2CH2O)n(CH(CH3)CH2O)17(CH2CH2O)mH(m+n=5〜7)
(溶液B)
0.67mol/L硝酸銀水溶液 2635ml
(溶液C)
臭化カリウム 51.55g
沃化カリウム 1.47g
水で660mlに仕上げる
(溶液D)
臭化カリウム 154.9g
沃化カリウム 4.41g
六シアン化鉄(II)カリウム(0.5%溶液) 15ml
六塩化イリジウム酸(III)カリウム(1%溶液) 0.93ml
水で1982mlに仕上げる
(溶液E)
0.4mol/L臭化カリウム水溶液 下記銀電位制御量
(溶液F)
水酸化カリウム 0.71g
水で20mlに仕上げる
(溶液G)
56%酢酸水溶液 10.0ml
(溶液H)
無水炭酸ナトリウム 1.16g
水で107mlに仕上げる。
【0123】
特公昭58−58288号に示される混合攪拌機を用いて、溶液Aに溶液Bの1/4量及び溶液Cの全量を温度35℃、pAg8.09に制御しながら、同時混合法により4分45秒を要して添加し核形成を行った。1分後、溶液Fの全量を添加した。この間pAgの調整のために溶液Eを用いて適宜行った。6分経過後、溶液Bの3/4量及び溶液Dの全量を、温度35℃、pAg8.09に制御しながら、同時混合法により14分15秒かけて添加した。5分間攪拌した後、30℃に降温し、溶液Gを全量添加し、ハロゲン化銀乳剤を沈降させた。沈降部分2,000mlを残して上澄み液を取り除き、水を10リットル加え、攪拌後、再度ハロゲン化銀乳剤を沈降させた。沈降部分1,500mlを残し、上澄み液を取り除き、更に水を10リットル加え、攪拌後、ハロゲン化銀乳剤を沈降させた。沈降部分1,500mlを残し、上澄み液を取り除いた後、溶液Hを加え、60℃に昇温し、更に100分攪拌した。最後にpHが5.8になるように調整し、最終仕上がりが1,150gになるように水を添加し、感光性ハロゲン化銀乳剤を得た。
【0124】
この乳剤は、平均粒子サイズ0.043μm、〔100〕面比率92%の単分散立方体沃臭化銀粒子であった。
【0125】
(2)ハロゲン化銀粒子分散物の調製
実施例1で得られたポリマーのメタノール溶液(固形分10質量%)をそれぞれ7.5gはかり取り、メタノール38gを加えて45℃で30分攪拌しながら溶解させた。そこに、45℃に調温した前記ハロゲン化銀乳剤42gを2分かけて滴下し、更に30分攪拌した。この液を30℃に降温した後、MEK500gを加え、液中の含水率が5%未満になるまで減圧蒸留を行った。最後に、10%ポリビニルブチラールMEK溶液50gと全量が157gとなるようにMEKを添加し、ハロゲン化銀粒子両親媒性分散物を得た。
【0126】
(3)分散性の評価
上記で作成したハロゲン化銀分散物について、粒径の測定及び分散液安定性の評価を行った。
【0127】
粒径測定用のセルにMEKを入れ、そこに各試料を添加して、粒子の粒度分布をレーザー回折式粒度分布測定装置(島津製作所製、SALD−3100)にて測定した。その結果を表6に示す。
【0128】
分散液安定性の目視評価は、上記で作成したハロゲン化銀分散物の溶液を5℃で24時間で静置した後に目視で観察して、下記の評価基準で評価した。
【0129】
〈分散液安定性の評価基準〉
○:凝集物が全く存在しない。
△:極く微量の小さな凝集物が存在する。
×:多量の凝集物が存在する。
【0130】
【表6】

【0131】
本発明のポリマーは、比較ポリマーよりも粒径が小さく、分散安定性にも優れている。
【0132】
実施例4
(熱現像感光材料におけるハロゲン化銀粒子の分散)
〈下引き済み支持体の作製〉
青色染料濃度0.113の2軸延伸済みPETフィルムの両面に10W/m2・minの条件でコロナ放電処理を施し、一方の面に下記組成のバック面側下引き下層用塗布液を乾燥膜厚0.06μmになるように塗設し140℃で乾燥し、続いて下記組成のバック面側下引き上層用塗布液を乾燥膜厚0.2μmになるように塗設した後140℃で乾燥した。又、反対側の面には、下記組成の画像形成面側下引き下層用塗布液を乾燥膜厚0.25μmになるように塗設し、続いて下記組成の画像形成面側下引き上層用塗布液を乾燥膜厚0.06μmになるように塗設した後140℃で乾燥した。これらを140℃で2分間熱処理し、下引き済み支持体を得た。
【0133】
(バック面側下引き下層用塗布液)
スチレン/グリシジルメタクリレート/ブチルアクリレート(20/20/40)の共重合ポリマーラテックス(固形分30%) 16.0g
スチレン/ブチルアクリレート/ヒドロキシメチルメタクリレート(25/45/30)の共重合ポリマーラテックス(固形分30%) 4.0g
酸化錫ゾル(固形分10%,特開平10−059720号記載の方法で合成)91g
下引層用界面活性剤 SA−1 0.5g
以上に蒸溜水を加えて1,000mlとし、塗布液とした。
【0134】
(バック面側下引き上層用塗布液)
バック層用変性水性ポリエステル*(固形分18%) 215.0g
下引層用界面活性剤 SA−1 0.4g
真球状シリカマット剤(シーホスター KE−P50:日本触媒社製) 0.3g
以上に蒸溜水を加えて1,000mlとし、塗布液とした。
【0135】
SA−1:2,4−(C9192−C63−(CH2CH2O)12SO3Na
〈バック層用変性水性ポリエステルの合成〉
重合用反応容器に、テレフタル酸ジメチル35.4、イソフタル酸ジメチル33.63部、5−スルホ−イソフタル酸ジメチルナトリウム塩17.92部、エチレングリコール62部、酢酸カルシウム一水塩0.065部、酢酸マンガン四水塩0.022部を投入し、窒素気流下において、170〜220℃でメタノールを溜去しながらエステル交換反応を行った後、燐酸トリメチル0.04部、重縮合触媒とし三酸化アンチモン0.04部及び1,4−シクロヘキサンジカルボン酸6.8部を加え、220〜235℃の反応温度で、ほぼ理論量の水を溜去し、エステル化を行った。その後、更に反応系内を約1時間かけて減圧、昇温し最終的に280℃、133Pa以下で約1時間重縮合を行い、変性水性ポリエステルの前駆体を得た。前駆体の固有粘度は0.33であった。
【0136】
攪拌翼、環流冷却管、温度計を付した2Lの三つ口フラスコに、純水850mlを入れ、攪拌翼を回転させながら、150gの上記前駆体を徐々に添加した。室温でこのまま30分間攪拌した後、1.5時間かけて内温が98℃になるように加熱し、この温度で3時間加熱・溶解した。加熱終了後、1時間かけて室温まで冷却し、一夜放置して、固形分濃度15%の前駆体の溶液を調製した。
【0137】
攪拌翼、環流冷却管、温度計、滴下ロートを付した3Lの四つ口フラスコに、上記前駆体溶液1900mlを入れ、攪拌翼を回転させながら、内温度を80℃まで加熱した。この中に、過酸化アンモニウムの24%水溶液を6.52ml加え、単量体混合液(メタクリル酸グリシジル28.5g、アクリル酸エチル21.4g、メタクリル酸メチル21.4g)を30分間かけて滴下し、更に3時間反応を続けた。その後、30℃以下まで冷却し、濾過して、固形分濃度18%のバック層用変性水性ポリエステルの溶液を調製した。
【0138】
(画像形成面側下引き下層用塗布液)
スチレン/アセトアセトキシエチルメタクリレート/グリシジルメタクリレート/ブチルアクリレート(40/40/20/0.5)の共重合ポリマーラテックス(固形分30%) 70g
下引層用界面活性剤 SA−1 0.3g
以上に蒸溜水を加えて1,000mlとし、塗布液とした。
【0139】
(画像形成面側下引き上層用塗布液)
画像形成面用変性水性ポリエステル*(固形分18%) 80.0g
下引層用界面活性剤 SA−1 0.4g
真球状シリカマット剤(シーホスター KE−P50:前出) 0.3g
以上に蒸溜水を加えて1,000mlとし、固形分濃度0.5%の塗布液とした。
【0140】
〈画像形成面用変性水性ポリエステルの合成〉
前記の変性水性ポリエステルの前駆体溶液を1,800ml、単量体混合液組成をスチレン31g、アセトアセトキシエチルメタクリレート31g、グリシジルメタクリレート61g、ブチルアクリレート7.6gとした以外、バック層用変性水性ポリエステルと同様にして固形分濃度18%の画像形成面用変性水性ポリエステルの溶液を作製した。
【0141】
(画像形成層用ハロゲン化銀乳剤の作製)
〈ハロゲン化銀乳剤の調製〉
(溶液A)
フタル化ゼラチン(フタル化修飾率99%) 66.2g
界面活性剤 AO−1(10%メタノール水溶液) 10ml
臭化カリウム 0.32g
水で5,429mlに仕上げる
AO−1:HO(CH2CH2O)n(CH(CH3)CH2O)17(CH2CH2O)mH(m+n=5〜7)
(溶液B)
0.67mol/L硝酸銀水溶液 2635ml
(溶液C)
臭化カリウム 51.55g
沃化カリウム 1.47g
水で660mlに仕上げる
(溶液D)
臭化カリウム 154.9g
沃化カリウム 4.41g
六シアン化鉄(II)カリウム(0.5%溶液) 15ml
六塩化イリジウム酸(III)カリウム(1%溶液) 0.93ml
水で1982mlに仕上げる
(溶液E)
0.4mol/L臭化カリウム水溶液 下記銀電位制御量
(溶液F)
水酸化カリウム 0.71g
水で20mlに仕上げる
(溶液G)
56%酢酸水溶液 10.0ml
(溶液H)
無水炭酸ナトリウム 1.16g
水で107mlに仕上げる。
【0142】
特公昭58−58288号に示される混合攪拌機を用いて、溶液Aに溶液Bの1/4量及び溶液Cの全量を温度35℃、pAg8.09に制御しながら、同時混合法により4分45秒を要して添加し核形成を行った。1分後、溶液Fの全量を添加した。この間pAgの調整のために溶液Eを用いて適宜行った。6分経過後、溶液Bの3/4量及び溶液Dの全量を、温度35℃、pAg8.09に制御しながら、同時混合法により14分15秒かけて添加した。5分間攪拌した後、30℃に降温し、溶液Gを全量添加し、ハロゲン化銀乳剤を沈降させた。沈降部分2,000mlを残して上澄み液を取り除き、水を10リットル加え、攪拌後、再度ハロゲン化銀乳剤を沈降させた。沈降部分1,500mlを残し、上澄み液を取り除き、更に水を10リットル加え、攪拌後、ハロゲン化銀乳剤を沈降させた。沈降部分1,500mlを残し、上澄み液を取り除いた後、溶液Hを加え、60℃に昇温し、更に100分攪拌した。最後にpHが5.8になるように調整し、最終仕上がりが1,150gになるように水を添加し、感光性ハロゲン化銀乳剤を得た。
【0143】
この乳剤は、平均粒子サイズ0.043μm、〔100〕面比率92%の単分散立方体沃臭化銀粒子であった。
【0144】
〈ハロゲン化銀粒子分散物の調製〉
実施例1で得られたポリマーのメタノール溶液(固形分10質量%)をそれぞれ7.5gはかり取り、メタノール38gを加えて45℃で30分攪拌しながら溶解させた。そこに、45℃に調温した前記ハロゲン化銀乳剤42gを2分かけて滴下し、更に30分攪拌した。この液を30℃に降温した後、MEK500gを加え、液中の含水率が5%未満になるまで減圧蒸留を行った。最後に、10%ポリビニルブチラールMEK溶液50gと全量が157gとなるようにMEKを添加し、ハロゲン化銀粒子分散物を得た。用いたポリマーを表7に示した。
【0145】
〈脂肪族カルボン酸銀粒子の調製〉
脂肪族カルボン酸(ベヘン酸:アラキジン酸:ステアリン酸=85:11:4モル比)1,850g及び、濃度5%に調整する純水量の90%量を85℃で撹拌しながら5mol/Lの水酸化カリウム水溶液1,036mlを、5分かけて添加した後に60分間反応させて、脂肪族カルボン酸カリウム水溶液を得た。次いで、脂肪族カルボン酸カリウム水溶液の濃度が5%になるように追加の純水を加えた。一方、硝酸銀5%水溶液38,300gを用意し10℃に保温した。脂肪族カルボン酸カリウム水溶液及び硝酸銀水溶液から一定流量で送液できるポンプを用意し、Y字型の混合装置内において双方の液が反応できる様な反応装置を用意した。
【0146】
先の脂肪族カルボン酸カリウム水溶液、硝酸銀水溶液を同時に、それぞれ一定の添加速度で、4分かけて全量を混合装置に添加し、Y字型管の下側部より出て来た液をストックした。尚、添加中、ストックタンクは35℃に保温した。その後、吸引濾過で固形分を濾別し、固形分を透過水の伝導度が30μS/cmになるまで25℃で水洗した。得られた脱水済みケーキを50℃で乾燥して脂肪族カルボン酸銀塩粒子の乾燥済み粉体を得た。
【0147】
〈脂肪族カルボン酸銀塩分散乳剤液Iの作製〉
ポリビニルブチラール(積水化学工業社製:エスレックB・BL−SHP)41gをMEK(メチルエチルケトン)1,239gに溶解し、VMA−GETZMANN社製ディゾルバーDISPERMAT CA−40M型にて攪拌しながら、粉末脂肪族カルボン酸銀塩412gを徐々に添加して十分に混合することにより予備分散液を調製した。粉末脂肪族カルボン酸銀塩を全量添加してからは、1,500rpmで15分攪拌を行った。この予備分散液をポンプを用いてミル内滞留時間が1.2分間となるように、0.5mm径のジルコニアビーズ(東レ社製:トレセラム)を内容積の80%充填したメディア型分散機DISPERMAT SL−C12EX型(VMA−GETZMANN社製)に供給し、ミル周速9m/sにて分散を行うことにより脂肪族カルボン酸銀塩分散乳剤液Iを調製した。得られた脂肪族カルボン酸銀塩分散乳剤液の固形分濃度は約27%であった。
【0148】
〈ハロゲン化銀粒子含有の粉末脂肪族カルボン酸銀塩IIの調製〉
ベヘン酸130.8g、アラキジン酸67.7g、ステアリン酸43.6g、パルミチン酸2.3gとなるように各有機酸試薬を混合し、4720mlの純水中に投入し、80℃で溶解した。次に、1.5モル/Lの水酸化ナトリウム水溶液540.2mlを添加し、濃硝酸6.9mlを加えた後、55℃に冷却して混合脂肪酸ナトリウム溶液を得た。光を遮断した状態(以降、光を遮断した状態を続ける)でこの混合脂肪酸ナトリウム溶液の温度を55℃に保ったまま、45.3gの前記感光性ハロゲン化銀乳剤と純水450mlを添加し5分間攪拌した。次に、1モル/Lの硝酸銀水溶液702.6mlを2分間かけて添加し、10分間攪拌してハロゲン化銀粒子含有の有機銀塩粒子分散物Cを得た。
【0149】
その後、得られたハロゲン化銀粒子含有の脂肪族カルボン酸銀塩粒子分散物を水洗容器に移し、脱イオン水を加えて攪拌後、静置させてハロゲン化銀粒子含有の有機銀塩粒子分散物を浮上分離させ、下方の水溶性塩類を除去した。その後、排水の電導度が2μS/cmになるまで脱イオン水による水洗、排水を繰り返し、遠心脱水を実施し、ケーキ状のハロゲン化銀粒子含有の有機銀塩粒子を得た。ケーキ状のハロゲン化銀粒子含有の有機銀塩粒子Cを、流動層乾燥機(ミゼットドライヤー MDF−64型 株式会社ダルトン社製)を用いて、窒素ガス雰囲気及び乾燥機入り口熱風温度の運転条件により、含水率が0.1%になるまで乾燥して、ハロゲン化銀粒子含有の粉末有機銀塩を得た。
【0150】
《感光性乳剤分散液IIの調製》
分散バインダーとしてポリビニルブチラール(Monsanto社 Butvar B−79)の26.26gを、メチルエチルケトンの2000gに溶解し、VMA−GETZMANN社製のディゾルバDISPERMAT CA−40M型にて攪拌しながら、上記ハロゲン化銀粒子含有の粉末有機銀塩の500gを徐々に添加し、十分に混合することにより予備分散液を調製した。
【0151】
上記予備分散液を、ポンプを用いてミル内滞留時間が1.5分間となるように、0.5mm径のジルコニアビーズ(東レ社製 トレセラム)を内容積の80%充填したメディア型分散機DISPERMAT SL−C12EX型(VMA−GETZMANN社製)に供給し、ミル周速8m/secにて分散を行い、感光性乳剤分散液IIを調製した。
【0152】
〈画像形成層、表面保護層、バック層の塗設〉
前記下引き済み支持体の画像形成層面側下引き上に、総銀量が1.32g/m2になるように画像形成層を、その上にウェット付量が23g/m2になるように表面保護層を重層塗布した。続いて反対側の画像形成層面側下引き上に、ウェット付量が25g/m2になるようにバック層を塗布した。尚、乾燥は各々60℃・15分間行った。両面塗布された試料を搬送しながら79℃で10分熱処理をして熱現像感光材料を得た。
【0153】
画像形成層は、下記画像形成層塗布液IまたはIIを用いた。
【0154】
〈画像形成層塗布液Iの調製〉
前記脂肪族カルボン酸銀塩分散乳剤液Iの1,692gに前記ハロゲン化銀粒子分散物(用いたポリマーは表7に示した)157gを添加し、撹拌しながら18℃に保温し、ビス(ジメチルアセトアミド)ジブロモブロメート(11%メタノール溶液)9.4gを添加して1時間撹拌した。続いて、臭化カルシウム(11%メタノール溶液)11.3gを添加して30分間撹拌した。更に、下記赤外増感色素液を添加して1時間撹拌し、その後、温度を13℃まで降温して更に30分間撹拌した。13℃に保温したまま、ポリビニルプチラール樹脂(積水化学工業(株)製エスレックスB/BL−5)242gを添加して溶解させた。溶解を確認した後、テトラクロロフタル酸(4.3%MEK溶液)37gを添加し、更に撹拌を続けながら以下の添加物を15分間隔で添加し画像形成層塗布液Iとした。画像形成層塗布液Iはハロゲン化銀粒子分散物を表7に示すのポリマー10種を用いそれぞれ作製した。
【0155】
フタラジン 12.9g
DesmodurN3300(モーベイ社製:多官能脂肪族イソシアネート)
8.1g
ロイコ染料−1 1.4g
ロイコ染料−2 0.6g
カブリ防止剤液 下記
現像剤液 下記
〈画像形成層塗布液IIの調製〉
画像形成層塗布液Iの調製において、上記脂肪族カルボン酸銀塩分散乳剤液1,692gに前記ハロゲン化銀粒子分散物157gを添加する工程を、前記感光性乳剤分散液IIを添加する工程に変えた以外は同様の方法にして画像形成層塗布液IIを調整した。
【0156】
(赤外増感色素液の調製)
赤外増感色素−1を200mg、赤外増感色素−2を200mg、5−メチル−2−メルカプトベンズイミダゾール100mg、2−クロロ−安息香酸16g、増感色素溶解剤1.5gをMEK135gに溶解し、赤外増感色素液を調製した。
【0157】
(現像剤液の調製)
還元剤1−1を0.42モル、染料−AをMEKに溶解し、800gに仕上げて現像剤液とした。
【0158】
〈カブリ防止剤液の調製〉
トリブロモメチルスルホニルピリジン16gをMEKに溶解し、180gに仕上げてカブリ防止剤液とした。
【0159】
〈表面保護層塗布液〉
MEK 1,056g
セルロースアセテートブチレート(イーストマンケミカル社製:CAB171−15)
148g
ポリメチルメタクリレート(ロームアンドハース社製:パラロイドA21) 6g
ステアリン酸カルシウム(日本油脂社製:MC−2) 3g
架橋剤 (CH2=CHSO2CH22CH(OH) 2.5g
ベンゾトリアゾール 2.0g
弗素系界面活性剤 C917O(CH2CH2O)23917 5.4g
〈バック層塗布液〉
MEK 1,350g
セルロースアセテートプロピオネート(イーストマンケミカル社製:CAP482−20) 155g
染料−A 0.23g
染料−B 0.81g
弗素系アクリル共重合体(ダイキン工業社製:オプトフロンFM450) 1.6g
非結晶性飽和共重合ポリエステル(東洋紡績社製:バイロン240P) 12g
真球状架橋マット剤(積水化成工業社製:MBX−8) 4.0g
界面活性剤 C917O(CH2CH2O)23917 7.1g
界面活性剤 LiO3S(CF23SO3Li 1.1g
【0160】
【化4】

【0161】
【化5】

【0162】
〈試料の評価〉
各試料について以下の評価を行った。
【0163】
《感度、カブリ濃度、最高濃度、色調》
各試料を23℃で120時間保存した試料(これを、保存条件Iと称す)と、温度、湿度がそれぞれ50℃、55%RHの環境の恒温槽内で120時間保存した試料(これを、保存条件IIと称す)を用いて、最大50mW出力の786nm半導体レーザー搭載のレーザーイメージャにて露光と同時に127℃にて熱現像し、得られた画像の感度、カブリ濃度、最高濃度を評価した。ここで「露光と同時に熱現像する」とは、熱現像感光材料から成る1枚のシート感光材料で、一部が露光されながら同時に既露光部で現像が開始されることを意味する。尚、露光部と現像部との距離は12cmで、この時の線速度は30mm/secである。又、感光材料供給装置部から画像露光装置部までの搬送速度、画像露光部での搬送速度、熱現像部での搬送速度は、何れも30mm/secとした。露光は最高出力から1段ごとに露光エネルギーをlogEで0.05ずつ減じながら階段状に行った。
【0164】
上記のようにして得られた形成画像を濃度計を用いて濃度測定を行い、横軸−露光量、縦軸−濃度から成る特性曲線を作成した。特性曲線において、感度は未露光部分よりも1.0高い濃度を与える露光量の逆数を感度と定義し、カブリ濃度(最小濃度)及び最高濃度を測定した。尚、感度は試料cの感度を100とする相対値で表した。
【0165】
色調評価用として、透過濃度が1.1±0.05となる濃度部を目視で観察し、下記に記載の判定基準に則り銀色調の評価を行った。なお、品質保証上問題のないランクは4以上である。
【0166】
5:純黒調で全く黄色みを感じない
4:純黒ではないが、ほとんど黄色みを感じない
3:部分的にわずかに黄色みを感じる
2:全面にわずかに黄色みを感じる
1:一見して黄色みが感じられる。
【0167】
《光照射画像保存性》
各試料を上記と同様の露光、現像を行った後、輝度1,000ルックスのシャーカステン上に貼り付け10日間放置した後の色調の変化を、目視で以下の基準で0.5刻みの評価をした。
【0168】
5:殆ど変化なし
4:僅かに色調変化が見られる
3:一部に色調変化が見られる
2:色調変化がかなりの部分に見られる
1:色調変化が顕著である
結果を表7に示す。
【0169】
【表7】

【0170】
表7に示したように、本発明のポリマーを用いることにより、比較ポリマーに比べて高い最高濃度が得られ、かつ低カブリ、高感度で保存性に優れた熱現像感材を提供することもできる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で示されるモノマーと、下記一般式(2)で示されるモノマーを重合し形成されるポリマーであって、水、アルコール系溶媒及び溶解度パラメータ(SP値)が14.0〜21.0〔(MPa)1/2〕である有機溶媒の3成分系からなる溶剤により精製することを特徴とするポリマー。
【化1】

(一般式(1)において、Raは水素原子又はアルキル基を表す。R11は水素原子又は置換基を表す。一般式(2)において、Rbは水素原子又はアルキル基を表す。R21およびR22は同一でも異なってもいてもよく、水素原子または置換基を表す。)
【請求項2】
前記一般式(1)で表されるモノマーのSP値と前記有機溶媒のSP値との差が±2.0以下であることを特徴とする請求項1に記載のポリマー。
【請求項3】
前記一般式(1)が、下記一般式(3)で表されることを特徴とする請求項1または2に記載のポリマー。
【化2】

(一般式(3)において、Raは水素原子又はアルキル基を表す。R31は水素原子又は置換基を表す。mは1〜300の整数を表し、nは0〜300の整数を表す。)
【請求項4】
前記一般式(3)において、R31が炭素数4〜20のアルキル基であることを特徴とする請求項3に記載のポリマー。
【請求項5】
前記一般式(2)において、R21およびR22がアルキル基であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のポリマー。
【請求項6】
下記一般式(1)で示されるモノマーと、下記一般式(2)で示されるモノマーを重合し形成されるポリマーを、水、アルコール系溶媒及び溶解度パラメータ(SP値)が14.0〜21.0〔(MPa)1/2〕である有機溶媒の3成分系からなる溶剤により精製することを特徴とする精製方法。
【化3】

(一般式(1)において、Raは水素原子又はアルキル基を表す。R11は水素原子又は置換基を表す。一般式(2)において、Rbは水素原子又はアルキル基を表す。R21およびR22は同一でも異なってもいてもよく、水素原子または置換基を表す。)
【請求項7】
請求項1〜5に記載のポリマーと親水性微粒子からなることを特徴とする微粒子分散物。
【請求項8】
請求項1〜5に記載のポリマーを含有することを特徴とする熱現像感光材料。

【公開番号】特開2008−260792(P2008−260792A)
【公開日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−102532(P2007−102532)
【出願日】平成19年4月10日(2007.4.10)
【出願人】(303000420)コニカミノルタエムジー株式会社 (2,950)
【Fターム(参考)】