説明

ポリマーの粒子性状が改善されたオレフィンの重合方法

【課題】良好な粒子性状のオレフィン重合体の粒子を得ることができる上に、少ない添加量でも十分にファウリングが防止でき、かつ重合活性に与える影響が少ないファウリング防止技術を有するオレフィンの重合方法の提供。
【解決手段】オレフィン重合触媒及び溶媒の存在下に不均一重合法でオレフィン重合体を製造する方法において、少なくとも(a)リン酸エステル化合物及び(b)窒素含有有機化合物の接触物、あるいは少なくとも(a)リン酸エステル化合物、(b)窒素含有有機化合物及び(c)有機スルホン酸の金属塩の接触物と、有機アルミニウム化合物とを共存させ、その際に、前記リン酸エステル化合物は、重合反応器中の濃度が0.0001mg/L〜1.8mg/Lの範囲であり、かつ、前記有機アルミニウム化合物は、有機アルミニウム化合物のモル数に対するリン酸エステル化合物の重量の比率が0.001〜10g/molの範囲であることを特徴とするオレフィン重合体の製造方法等により提供。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリマーの粒子性状が改善されたオレフィンの重合方法に関し、さらに詳しくは、良好な粒子性状のオレフィン重合体の粒子を得ることができる上に、少ない添加量でも十分にファウリングが防止でき、かつ重合活性に与える影響が少ないファウリング防止技術を有するオレフィンの重合方法に関する。
【背景技術】
【0002】
オレフィンを重合しポリオレフィンを製造する方法の中で、生成する重合物を溶媒中に固体粒子として懸濁させながら重合を行う、いわゆる不均一重合法は、溶液重合法に比して、ポリマーの析出工程が省略でき、また粘度が低く攪拌動力が小さい等の優れた利点を有することから、工業的に広く採用されている。
しかし、この不均一重合法では、溶液重合法のときには表れなかったファウリング現象が生じ、反応器の運転を非常に阻害する。ファウリングが発生すると、反応器内壁に付着した重合物のため、伝熱係数が悪化し、反応熱除去が困難になるばかりでなく反応器内壁の平滑性が失われて攪拌動力が増大し、最悪の場合には、攪拌不能になる。
【0003】
そのため、不均一重合法では、ポリオレフィンを安定生産するためには、ポリマーの反応器への付着、いわゆるファウリングを防止することは非常に重要であり、これまでに、以下に述べるような種々の技術開発が行われてきた。
例えば、オレフィンの不均一重合において、フィチン酸の窒素含有の塩と有機スルホン酸の多価金属塩とを存在させてファウリングを抑制する方法や、ポリスルホンコポリマー、重合体状ポリアミンおよび油溶性スルホン酸を含む組成物を使用する方法が報告されている(例えば、特許文献1、2)。
また、ポリスルホンコポリマー、高分子ポリアミンおよび油溶性スルホン酸系の帯電防止剤をオレフィン重合触媒に適用する技術や、気相重合法にも適用できることが開示されている(例えば、特許文献3、4)。
【0004】
ファウリング防止に有効な化合物は、一方で、しばしは、オレフィン重合触媒の活性点を被毒し、重合活性の低下を引き起こす場合がある。特に、メタロセン触媒は、被毒による活性低下を起こしやすい触媒として知られており、触媒活性への影響がより少ないファウリング防止技術の開発が求められていた。
メタロセン触媒を使用したオレフィン重合向けのファウリング防止技術としては、非イオン系界面活性剤を使用する技術(例えば、特許文献5)、メタロセン担持触媒における表面改質剤の工夫(例えば、特許文献6)などがある。さらには、特定の帯電防止成分と金属アルキルを特定の量および濃度で反応させるオレフィン重合用帯電防止剤の製造方法の開示がある(例えば、特許文献7)。
【0005】
しかしながら、これらの改良技術では、オレフィン重合におけるファウリングの防止効果はあるものの、特にメタロセン触媒に対する被毒が大きいため、オレフィン重合活性への影響がさらに少ないファウリング防止技術の開発が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭52−94390号公報
【特許文献2】特開昭54−139984号公報
【特許文献3】特表2009−538936号公報
【特許文献4】特表2002−544294号公報
【特許文献5】特開2000−327707号公報
【特許文献6】特表平10−507471号公報
【特許文献7】特表2009−536673号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、上記従来技術の問題点に鑑み、良好な粒子性状のオレフィン重合体の粒子を得ることができる上に、少ない添加量でも十分にファウリングが防止でき、かつ重合活性に与える影響が少ないファウリング防止技術を有するオレフィンの重合方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、不均一重合法でオレフィン重合体を製造する際に、オレフィン重合触媒及び溶媒の存在下に、ファウリング防止成分として特定の化合物を組み合わせることで、少ない添加量で反応器へのポリマーのファウリングを防止でき、かつ重合活性の低下幅も抑制可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明の第1の発明によれば、オレフィン重合触媒及び溶媒の存在下に不均一重合法でオレフィン重合体を製造する方法において、少なくとも(a)リン酸エステル化合物及び(b)窒素含有有機化合物の接触物と、有機アルミニウム化合物とを共存させ、その際に、前記リン酸エステル化合物は、重合反応器中の濃度が0.0001mg/L〜1.8mg/Lの範囲であり、かつ、前記有機アルミニウム化合物は、有機アルミニウム化合物のモル数に対するリン酸エステル化合物の重量の比率が0.001〜10g/molの範囲であることを特徴とするオレフィン重合体の製造方法が提供される。
【0010】
また、本発明の第2の発明によれば、オレフィン重合触媒及び溶媒の存在下に不均一重合法でオレフィン重合体を製造する方法において、少なくとも(a)リン酸エステル化合物、(b)窒素含有有機化合物及び(c)有機スルホン酸の金属塩の接触物と、有機アルミニウム化合物とを共存させ、その際に、前記リン酸エステル化合物は、重合反応器中の濃度が0.0001mg/L〜1.8mg/Lの範囲であり、かつ、前記有機アルミニウム化合物は、有機アルミニウム化合物のモル数に対するリン酸エステル化合物の重量の比率が0.001〜10g/molの範囲であることを特徴とするオレフィン重合体の製造方法が提供される。
【0011】
また、本発明の第3の発明によれば、第1の発明において、前記(a)リン酸エステル化合物及び(b)窒素含有有機化合物の接触物は、オレフィン重合体を製造する反応器中又は反応器に連結された配管中で形成させることを特徴とするオレフィン重合体の製造方法が提供される。
【0012】
また、本発明の第4の発明によれば、第2の発明において、前記(a)リン酸エステル化合物、(b)窒素含有有機化合物及び(c)有機スルホン酸の金属塩の接触物は、オレフィン重合体を製造する反応器中又は反応器に連結された配管中で形成させることを特徴とするオレフィン重合体の製造方法が提供される。
【0013】
また、本発明の第5の発明によれば、第1〜4にいずれかの発明において、前記リン酸エステル化合物は、1分子当たりリン酸基を2〜10個有する有機化合物であることを特徴とするオレフィン重合体の製造方法が提供される。
【0014】
また、本発明の第6の発明によれば、第1〜5にいずれかの発明において、前記リン酸エステル化合物は、フィチン酸であること特徴とするオレフィン重合体の製造方法が提供される。
【0015】
また、本発明の第7の発明によれば、第1〜6にいずれかの発明において、前記窒素含有有機化合物は、ポリエチレンイミンであることを特徴とするオレフィン重合体の製造方法が提供される。
【0016】
また、本発明の第8の発明によれば、第1〜7にいずれかの発明において、前記有機アルミニウム化合物は、一般式:AlR’(式中、R’は水素または炭素数1〜10の炭化水素基であり、それぞれのR’は同一であっても異なっていてもよい。)で表されることを特徴とするオレフィン重合体の製造方法が提供される。
【0017】
また、本発明の第9の発明によれば、第1〜8にいずれかの発明において、前記オレフィン重合触媒は、メタロセン触媒であることを特徴とするオレフィン重合体の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、不均一重合法を用いたオレフィン重合体の製造において、特定の化合物を含有する成分と有機アルミニウム化合物を組み合わせることで、少ない添加量でも十分にファウリングが防止でき、重合活性への影響も抑制できるため、高生産効率で安定したオレフィン重合体の製造が可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明のオレフィン重合体の製造方法は、オレフィン重合触媒及び溶媒の存在下に不均一重合法でオレフィン重合体を製造する方法において、少なくとも(a)リン酸エステル化合物及び(b)窒素含有有機化合物の接触物、あるいは(a)リン酸エステル化合物、(b)窒素含有有機化合物及び(c)有機スルホン酸の金属塩の接触物と、有機アルミニウム化合物とを共存させることを特徴とする。
次に、本発明のオレフィン重合体の製造方法を、ファウリング防止成分(リン酸エステル化合物、窒素含有有機化合物、有機スルホン酸の金属塩、有機アルミニウム化合物)、重合触媒、オレフィン原料や溶媒等の項目毎に詳細に説明する。
【0020】
1.ファウリング防止成分
(1)リン酸エステル化合物(a)
本発明で使用されるリン酸エステル化合物(a)は、オルトリン酸の水素が炭化水素基Rで置換された構造を含有する化合物を指し、リン酸エステル部位は、次の一般式のいずれかで表される。
PO(OR)OH
PO(OR)(OH)
PO(OR)
式中の水素は、ナトリウムなどの金属イオンやアミン化合物に置換された塩を形成していてもよい。また、1つの化合物中に複数のリン酸エステル部位を有していてもよい。また、炭化水素基Rの部位に、窒素原子、酸素原子、リン原子、イオウ原子、ケイ素原子、ハロゲン原子などを含有する置換基を有していてもよい。
【0021】
リン酸エステル化合物としては、例えば、フォスホピルビン酸、フォスホノアセティックアシド、N−(フォスホノメチル)グリシン、N−(フォスホノメチル)イミノジアセティックアシド、3−フォスホノプロピオニックアシド、フェニルフォスホニックアシド、グルコースフォスフェート、グルコースジフォスフェート、グルコーストリフォスフェート、グルコーステトラフォスフェート、フィチン酸、アデノシン5’−二リン酸、エチレングリコールメチルアクリレートフォスフェート、トリエチルフォスフェート、トリエチルフォスホノアセテート、2−デオキシシチジンモノフォスフェート、2−デオキシシチジンジフォスフェート、2−デオキシシチジントリフォスフェート、アデノシンモノフォスフェート、アデノシンジフォスフェート、アデノシントリフォスフェート、グアニジントリフォスフェート、ウリシジンフォスフェートが挙げられる。
これらの中で、好ましくは、1つの分子内にリン酸基を2個〜10個有するものが好ましく、さらには、リン酸基を3個〜6個有するものが好ましい。有機基構造として好ましいのは、環状構造を有している構造であり、さらに好ましくは、グルコース骨格を有している化合物である。
好ましい具体例としては、グルコースジフォスフェート、グルコーストリフォスフェート、グルコーステトラフォスフェート、フィチン酸、アデノシン5’−二リン酸、2−デオキシシチジンジフォスフェート、2−デオキシシチジントリフォスフェートが挙げられる。
【0022】
(2)窒素含有有機化合物(b)
窒素原子を含む有機化合物(b)としては、一級アミン、二級アミン、三級アミン、四級アンモニウム化合物およびアルキレンイミンの重合生成物が挙げられるが、これらのうち、特に三級アミン、四級アンモニウム化合物が好ましい。
三級アミンおよび四級アンモニウム化合物は、それぞれ一般式:[RN]および[RN]で表される。
【0023】
式中、R〜Rは、アルキル、アルケニル、アリールあるいはシクロアルキル基であり、R〜Rのうちの1つ以上およびR〜Rのうち1つ以上は炭素数が5以上であることが好ましい。
【0024】
三級アミンとしては、例えば、N,N−ジメチルステアリルアミン、N,N−ジオレイルエチルアミン、トリオクチルアミン、トリベンジルアミン、N,N−ジエチルアニリン、N,N−ジエチルシクロヘキシルアミン、N,N−ジオクチルビニルアミン、N,N−ジヘキシルビニルアミン、トリヘキシルアミン、トリデシルアミン、ジヘキサデシルメチルアミン、N−フェニルジベンジルアミン等が挙げられる。好ましくは、N,N−ジメチルステアリルアミン、N,N−ジオレイルエチルアミン、トリオクチルアミンが挙げられる。
【0025】
四級アンモニウム化合物としては、例えば、テトラヘキシルアンモニウム、テトラオクチルアンモニウム、ラウリルトリエチルアンモニウム、セチルジメチルベンジルアンモニウム、ジメチルジオレイルアンモニウム、ジエチルジオクチルアンモニウム、ジエチルジシクロヘキシルアンモニウム、テトラアミルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム、ラウリルトリメチルアンモニウム、エチルトリヘキシルアンモニウム、トリエチルベンジルアンモニウム、トリメチルシクロヘキシルアンモニウム、トリオクチルビニルアンモニウム、ジメチルジヘキシルアンモニウム、ジプロピルジラウリルアンモニウム、ジメチルジオレイルアンモニウム、ジメチルジシクロヘキシルアンモニウム、ジメチルベンジルステアリルアンモニウム、ナフチルエチルトリメチルアンモニウム、イソブチルナフチルトリメチルアンモニウム等が挙げられる。好ましくは、テトラオクチルアンモニウム、ラウリルトリエチルアンモニウム、ジメチルジオレイルアンモニウム、ジエチルジオクチルアンモニウムが挙げられる。
【0026】
アルキレンイミンの重合生成物とは、エチレンイミン、プロピレンイミン及びこれらの高級同族体のアルキレンイミン類から重合されたポリアルキレンイミンである。これらポリアルキレンイミンは、直鎖のものであっても分岐を持つものであってもよく、重合度は特に制限は無いが、通常50〜500,000のものであり、好ましくは、1,000〜100,000である。
【0027】
本発明を実施するにあたっては、分子中にヘキシル、オクチル、ラウリル、ステアリル、オレイルのようなアルキル基またはアルケニル基を持ったポリアルキレンイミンの誘導体の使用が特に好ましい。窒素含有有機化合物は、2種以上を混合して使用してもよい。
【0028】
(3)有機スルホン酸の金属塩(c)
本発明において使用される有機スルホン酸の金属塩(c)とは、脂肪族、脂環族、芳香族のスルホン酸及びスルホカルボン酸エステルの多価金属塩である。
有機スルホン酸としては、例えば、オクタンスルホン酸、ノナンスルホン酸、テトラデカンスルホン酸、ペンタデカンスルホン酸、デカンスルホン酸、ウンデカンスルホン酸、ドデカンスルホン酸、トリデカンスルホン酸、ヘキサデカンスルホン酸、ヘプタデカンスルホン酸、エイコサンスルホン酸等の飽和脂肪族スルホン酸、及びこれらに対応する不飽和の脂肪族スルホン酸、ベンゼンスルホン酸、ナフタリンスルホン酸等の芳香族スルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸、イソプロピルナフタレンスルホン酸等のアルキル等の置換基を有する芳香族スルホン酸、シクロオクタンスルホン酸、シクロデカンスルホン酸等の脂肪族スルホン酸、スルホ酢酸エステル、スルホ安息香酸エステル、スルホコハク酸エステル、スルホフタル酸エステル等のスルホカルボン酸エステルが挙げられる。好ましくは、スルホ酢酸エステル、スルホ安息香酸エステル、スルホコハク酸エステル、スルホフタル酸エステル等のスルホカルボン酸エステルである。
金属としては、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、マグネシウム、亜鉛、カドミウム、アルミニウム、クロム、モリブデン、鉛、マンガン、銅等が挙げられる。これら有機スルホン酸の金属塩は、2種以上混合して使用してもよい。好ましくは、リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、アルミニウム、クロムが挙げられる。
【0029】
前記のリン酸エステル化合物と窒素含有有機化合物の混合物、さらに好ましくは、有機スルホン酸の金属塩をさらに加えた混合物は、それぞれ単独で添加した場合よりはるかに少量の添加によりファウリングが防止できるため、触媒の重合活性への影響を少なくすることが出来る。
【0030】
(4)有機アルミニウム化合物
有機アルミニウム化合物としては、下記一般式(1)で表される化合物がいずれも使用可能であるが、好ましくは、一般式:AlR’(式中、R’は水素または炭素数1〜10の炭化水素基であり、それぞれのR’は同一であっても異なっていてもよい。)で表される化合物、即ちトリアルキルアルミニウムが使用され、更に好ましい例として、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリノルマルオクチルアルミニウムが挙げられる。
R’’AlX’’3−t・・・式(1)
(式中、R’’は、炭素数1〜18、好ましくは1〜12のアルキル基、アルケニル基、アリール基、アラルキル基等の炭化水素基を示し、X’’は、水素原子又はハロゲン原子を示し、tは、1≦t≦3の整数を示す。)
【0031】
トリアルキルアルミニウムのアルキル基は、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基等のいずれでも差し支えないが、メチル基、エチル気、イソブチル基、オクチル基であることが特に好ましい。
上記有機アルミニウム化合物は、2種以上混合して使用することもできる。
【0032】
(5)使用割合、接触順序等
リン酸エステル化合物(a)の重量(g)と窒素含有有機化合物(b)の重量(g)の混合割合は、通常、重量比[(b)/(a)]で0.01〜1000、好ましくは、0.1〜100の間で用いられる。
【0033】
リン酸エステル化合物(a)の重量(g)と有機スルホン酸の多価金属塩(c)の混合割合は、通常、重量比[(c)/(a)]で0.1〜1000、好ましくは1〜100であり、特に好ましいのは2〜50の範囲である。
【0034】
有機アルミニウム化合物のモル数(mol)に対するリン酸エステル化合物の重量(g)の比率は、通常0.001g/mol〜10g/mol、0.01g/mol〜4g/molの範囲で使用されるが、好ましくは、0.05g/mol〜2g/mol、さらに好ましくは、0.1g/mol〜1g/molで使用される。
【0035】
前記の化合物の添加量は、重合反応器中の溶媒に対し、混合物として0.05mg/L〜1000mg/L、好ましくは0.1〜500mg/Lである。リン酸エステル化合物としては、重合反応器中の溶媒に対して0.0001mg/L〜1.8mg/L、好ましくは0.03mg/L〜1.8mg/L、さらに好ましくは0.03mg/L〜1.5mg/Lの濃度で使用される。添加物があまり少量では、ファウリングを防止することが出来ず、また、添加量が多すぎるとファウリングは防止されるが、触媒の重合活性が低下するので好ましくない。
【0036】
成分(a)、(b)、(c)は、任意の順番で接触させることが出来るが、成分(a)と成分(b)を接触させて、塩化合物を形成させた後、成分(c)を接触させることが好ましい。
【0037】
また、成分(a)、(b)、(c)の混合物に対して有機アルミニウム化合物を接触させることが好ましいが、各成分が有するファウリング防止効果と活性低下抑制効果をバランスよく発揮させるためには、ポリオレフィンを製造する反応器中、または反応器に連結された配管中で接触させることが好ましい。
【0038】
本発明の方法によれば、オレフィンのスラリー重合の際に発生するファウリングを、触媒活性への影響を少なくして防止することができる。したがってファウリングに起因する撹拌動力の増加を減少することおよび総括伝熱係数の低下を防止することができる。従って、反応器を安定に運転することが出来ると同時に、ファウリング発生のためスラリー濃度をあまり大きくとれなかったものが、ファウリングの解消の結果、スラリー濃度を上げることが出来るようになり、同一反応器での生産量を増大させることが出来る。
【0039】
2.重合触媒
本発明の方法においては、重合触媒は、チーグラー触媒、フィリップス触媒、メタロセン触媒等のシングルサイト触媒等の各種触媒が用いられるが、好ましくは、Ti、Zr、またはHfを含有するメタロセン系触媒が適用される。
メタロセン系触媒としては、メタロセン錯体と呼ばれる、シクロペンタジエン骨格を有する配位子が遷移金属に配位してなる錯体と助触媒とを組み合わせたものが例示される。 具体的なメタロセン触媒としては、Ti、Zr、Hfなどを含む遷移金属に、メチルシクロペンタジエン、ジメチルシクロペンタジエン、インデン等のシクロペンタジエン骨格を有する配位子が配位してなる錯体触媒と、助触媒として、アルミノキサン等の周期表第1族〜第3族元素の有機金属化合物とを、組み合わせたものや、これらの錯体触媒をシリカ等の担体に担持させた担持型のものが挙げられる。
【0040】
本発明で用いられるメタロセン触媒は、以下の成分(A)及び成分(B)を含むものであり、必要に応じて成分(C)と組み合わせてなる触媒である。
成分(A):メタロセン錯体
成分(B):成分(A)と反応して、カチオン性メタロセン化合物を形成する化合物
成分(C):微粒子担体
【0041】
(1)成分(A)
成分(A)は、第4族遷移金属のメタロセン化合物が用いられる。具体的には、下記一般式(I)〜(VI)で表される化合物が使用される。
(C5−a11)(C5−b12)MXY ・・・(I)
Q(C4−c11)(C4−d12)MXY ・・・(II)
Q’(C4−e13)ZMXY ・・・(III)
(C5−f13)ZMXY ・・・(IV)
(C5−f13)MXYW ・・・(V)
Q”(C5−g14)(C5−h15)MXY ・・・(VI)
【0042】
ここで、Qは、二つの共役五員環配位子を架橋する結合性基を示し、Q’は、共役五員環配位子とZ基を架橋する結合性基を示し、Q”は、R14とR15を架橋する結合性基を示し、Mは、Ti、ZrまたはHfを示し、X、Y及びWは、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、炭素数1〜20の炭化水素基、炭素数1〜20の酸素含有炭化水素基、炭素数1〜20の窒素含有炭化水素基、炭素数1〜20のリン含有炭化水素基又は炭素数1〜20の珪素含有炭化水素基を示し、Zは、酸素、イオウを含む配位子、炭素数1〜40の珪素含有炭化水素基、炭素数1〜40の窒素含有炭化水素基又は炭素数1〜40のリン含有炭化水素基を示す。
【0043】
11〜R15は、それぞれ独立して、炭素数1〜20の炭化水素基、ハロゲン基、炭素数1〜20のハロゲン含有炭化水素基、アルコキシ基、アリールオキシ基、酸素含有炭化水素基、硫黄含有炭化水素基、珪素含有炭化水素基、リン含有炭化水素基、窒素含有炭化水素基又はホウ素含有炭化水素基を示す。また、隣接する2個のR11、2個のR12、2個のR13、2個のR14、又は2個のR15が、それぞれ結合して炭素数4〜10個の環を形成していてもよい。また、a、b、c、d、e、f、g及びhは、それぞれ0≦a≦5、0≦b≦5、0≦c≦4、0≦d≦4、0≦e≦4、0≦f≦5、0≦g≦5、0≦h≦5、を満足する整数である。
【0044】
2個の共役五員環配位子の間を架橋する結合性基Q、共役五員環配位子とZ基とを架橋する結合性基Q’、及び、R14とR15を架橋するQ”は、具体的には、下記のようなものが挙げられる。
すなわち、メチレン基、エチレン基のようなアルキレン基、エチリデン基、プロピリデン基、イソプロピリデン基、フェニルメチリデン基、ジフェニルメチリデン基のようなアルキリデン基、ジメチルシリレン基、ジエチルシリレン基、ジプロピルシリレン基、ジフェニルシリレン基、メチルエチルシリレン基、メチルフェニルシリレン基、メチル−t−ブチルシリレン基、ジシリレン基、テトラメチルジシリレン基のような珪素含有架橋基、ゲルマニウム含有架橋基、アルキルフォスフィン、アミン等である。これらのうち、アルキレン基、アルキリデン基、珪素含有架橋基、及びゲルマニウム含有架橋基が特に好ましく用いられる。
【0045】
上述の一般式(I)、(II)、(III)、(IV)、(V)及び(VI)で表される具体的なZr錯体を下記に例示するが、ZrをHf又はTiに置き換えた化合物も、同様に使用可能である。
また、一般式(I)、(II)、(III)、(IV)、(V)及び(VI)で示される成分(A)は、同一の一般式で示される化合物、又は異なる一般式で示される化合物の二種以上の混合物として用いることができる。
【0046】
一般式(I)の化合物:
ビスシクロペンタジエニルジルコニウムジクロリド、ビス(2−メチルインデニル)ジルコニウムジクロリド、ビス(2−メチル−4,5ベンゾインデニル)ジルコニウムジクロリド、ビスフルオレニルジルコニウムジクロリド、ビス(4H−アズレニル)ジルコニウムジクロリド、ビス(2−メチル−4H−アズレニル)シクロペンタジエニルジルコニウムジクロリド、ビス(2−メチル−4−フェニル−4H−アズレニル)ジルコニウムジクロリド、ビス(2−メチル−4−(4−クロロフェニル)−4H−アズレニル)ジルコニウムジクロリド。
ビス(2−フリルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ビス(2−フリルインデニル)ジルコニウムジクロリド、ビス(2−フリル−4,5−ベンゾインデニル)ジルコニウムジクロリド。
【0047】
一般式(II)の化合物:
ジメチルシリレンビス(1,1’−シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス[1,1’−(2−メチルインデニル)]ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス[1,1’−(2−メチルインデニル)]ジルコニウムジクロリド、エチレンビス[1,1’−(2−メチル−4,5ベンゾインデニル)]ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス[1,1’−(2−メチル−4−ヒドロアズレニル)]ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス[1,1’−(2−メチル−4−フェニル−4−ヒドロアズレニル)]ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス{1,1’−[2−メチル−4−(4−クロロフェニル)−4−ヒドロアズレニル]}ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス[1,1’−(2−エチル−4−フェニル−4−ヒドロアズレニル)]ジルコニウムジクロリド、エチレンビス[1,1’−(2−メチル−4−ヒドロアズレニル)]ジルコニウムジクロリド。
ジメチルシリレンビス[1,1’−(2−フリルシクロペンタジエニル)]ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス{1,1’−[2−(2−フリル)−4,5−ジメチル−シクロペンタジエニル]}ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス{1,1’−{2−[2−(5−トリメチルシリル)フリル]−4,5−ジメチル−シクロペンタジエニル}ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス{1,1’−[2−(2−フリル)インデニル]}ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス{1,1’−[2−(2−フリル)−4−フェニル−インデニル]}ジルコニウムジクロリド、イソプロピリデン(シクロペンタジエニル)(9−フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、イソプロピリデン(シクロペンタジエニル)[9−(2,7−t−ブチル)フルオレニル]ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(9−フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)[9−(2,7−t−ブチル)フルオレニル]ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレン(シクロペンタジエニル)(9−フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルシリレン(シクロペンタジエニル)[9−(2,7−t−ブチル)フルオレニル]ジルコニウムジクロリド。
【0048】
一般式(III)の化合物:
(第3級ブチルアミド)(テトラメチル−η−シクロペンタジエニル)−1,2−エタンジイルジルコニウムジクロライド、(メチルアミド)−(テトラメチル−η−シクロペンタジエニル)−1,2−エタンジイル−ジルコニウムジクロライド、(エチルアミド)(テトラメチル−η−シクロペンタジエニル)−メチレンジルコニウムジクロライド、(第3級ブチルアミド)ジメチル−(テトラメチル−η−シクロペンタジエニル)シランジルコニウムジクロライド、(第3級ブチルアミド)ジメチル(テトラメチル−η−シクロペンタジエニル)シランジルコニウムジベンジル、(ベンジルアミド)ジメチル(テトラメチル−η−シクロペンタジエニル)シランジルコニウムジクロライド、(フエニルホスフイド)ジメチル(テトラメチル−η−シクロペンタジエニル)シランジルコニウムジベンジル。
【0049】
一般式(IV)の化合物:
(シクロペンタジエニル)(フェノキシ)ジルコニウムジクロリド、(2,3−ジメチルシクロペンタジエニル)(フェノキシ)ジルコニウムジクロリド、(ペンタメチルシクロペンタジエニル)(フェノキシ)ジルコニウムジクロリド、(シクロペンタジエニル)(2,6−ジ−t−ブチルフェノキシ)ジルコニウムジクロリド、(ペンタメチルシクロペンタジエニル)(2,6−ジ−i−プロピルフェノキシ)ジルコニウムジクロリド。
【0050】
一般式(V)の化合物:
(シクロペンタジエニル)ジルコニウムトリクロリド、(2,3−ジメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムトリクロリド、(ペンタメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムトリクロリド、(シクロペンタジエニル)ジルコニウムトリイソプロポキシド、(ペンタメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムトリイソプロポキシド。
【0051】
一般式(VI)の化合物:
エチレンビス(7,7’−インデニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス{7,7’−(1−メチル−3−フェニルインデニル)}ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス{7,7’−[1−メチル−4−(1−ナフチル)インデニル]}ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス[7,7’−(1−エチル−3−フェニルインデニル)]ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス{7,7’−[1−イソプロピル−3−(4−クロロフェニル)インデニル]}ジルコニウムジクロリド。
【0052】
なお、これらの具体例の化合物のシリレン基を、ゲルミレン基に置き換えた化合物も、好適な化合物として例示される。
以上において記載した遷移金属化合物成分(A)の中で、エチレン系重合体を製造するための好ましいメタロセン錯体としては、一般式(I)または一般式(II)で表されるメタロセン錯体が好ましく、さらには、高分子量のポリマーを生成可能であり、エチレンと他のα−オレフィンとの共重合において共重合性に優れるという観点から、一般式(II)で表されるメタロセン錯体が好ましい。高分子量体を製造可能ということは、後述するような種々のポリマーの分子量の調整手法により、様々な分子量のポリマーの設計が行えるという利点がある。
【0053】
(2)成分(B)
本発明の製造方法に用いられるオレフィン重合用触媒の必須成分としては、上記成分(A)以外に、成分(A)のメタロセン化合物(成分(A)、以下、単にAと記すこともある。)と反応してカチオン性メタロセン化合物を形成する化合物(成分(B)、以下、単にBと記すこともある。)、必要に応じて微粒子担体(成分(C)、以下、単にCと記すこともある。)を含む。
【0054】
メタロセン化合物(A)と反応してカチオン性メタロセン化合物を形成する化合物(B)の一つとして、有機アルミニウムオキシ化合物が挙げられる。
上記有機アルミニウムオキシ化合物は、分子中に、Al−O−Al結合を有し、その結合数は通常1〜100、好ましくは1〜50個の範囲にある。このような有機アルミニウムオキシ化合物は、通常、有機アルミニウム化合物と水とを反応させて得られる生成物である。
有機アルミニウムと水との反応は、通常、不活性炭化水素(溶媒)中で行われる。不活性炭化水素としては、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン等の脂肪族炭化水素、脂環族炭化水素及び芳香族炭化水素が使用できるが、脂肪族炭化水素または芳香族炭化水素を使用することが好ましい。
【0055】
有機アルミニウムオキシ化合物の調製に用いる有機アルミニウム化合物は、下記一般式(3)で表される化合物がいずれも使用可能であるが、好ましくはトリアルキルアルミニウムが使用される。
31AlX313−t・・・式(3)
(式中、R31は、炭素数1〜18、好ましくは1〜12のアルキル基、アルケニル基、アリール基、アラルキル基等の炭化水素基を示し、X31は、水素原子又はハロゲン原子を示し、tは、1≦t≦3の整数を示す。)
【0056】
トリアルキルアルミニウムのアルキル基は、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基等のいずれでも差し支えないが、メチル基であることが特に好ましい。
上記有機アルミニウム化合物は、2種以上混合して使用することもできる。
【0057】
水と有機アルミニウム化合物との反応比(水/Alモル比)は、0.25/1〜1.2/1、特に、0.5/1〜1/1であることが好ましく、反応温度は、通常−70〜100℃、好ましくは−20〜20℃の範囲にある。反応時間は、通常5分〜24時間、好ましくは10分〜5時間の範囲で選ばれる。反応に要する水として、単なる水のみならず、硫酸銅水和物、硫酸アルミニウム水和物等に含まれる結晶水や反応系中に水が生成しうる成分も利用することもできる。
なお、上記した有機アルミニウムオキシ化合物のうち、アルキルアルミニウムと水とを反応させて得られるものは、通常、アルミノキサンと呼ばれ、特にメチルアルミノキサン(実質的にメチルアルミノキサン(MAO)からなるものを含む)は、有機アルミニウムオキシ化合物として、好適である。
もちろん、有機アルミニウムオキシ化合物として、上記した各有機アルミニウムオキシ化合物の2種以上を組み合わせて使用することもでき、また、前記有機アルミニウムオキシ化合物を前述の不活性炭化水素溶媒に溶液または分散させた溶液としたものを用いても良い。
【0058】
また、メタロセン化合物(A)と反応してカチオン性メタロセン化合物を形成する化合物(B)の他の具体例として、ボラン化合物やボレート化合物が挙げられる。
上記ボラン化合物をより具体的に表すと、トリフェニルボラン、トリ(o−トリル)ボラン、トリ(p−トリル)ボラン、トリ(m−トリル)ボラン、トリ(o−フルオロフェニル)ボラン、トリス(p−フルオロフェニル)ボラン、トリス(m−フルオロフェニル)ボラン、トリス(2,5−ジフルオロフェニル)ボラン、トリス(3,5−ジフルオロフェニル)ボラン、トリス(4−トリフルオロメチルフェニル)ボラン、トリス(3,5―ジトリフルオロメチルフェニル)ボラン、トリス(2,6−ジトリフルオロメチルフェニル)ボラン、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボラン、トリス(パーフルオロナフチル)ボラン、トリス(パーフルオロビフェニル)、トリス(パーフルオロアントリル)ボラン、トリス(パーフルオロビナフチル)ボランなどが挙げられる。
【0059】
これらの中でも、トリス(3,5―ジトリフルオロメチルフェニル)ボラン、トリス(2,6−ジトリフルオロメチルフェニル)ボラン、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボラン、トリス(パーフルオロナフチル)ボラン、トリス(パーフルオロビフェニル)ボラン、トリス(パーフルオロアントリル)ボラン、トリス(パーフルオロビナフチル)ボランがより好ましく、さらに好ましくはトリス(2,6−ジトリフルオロメチルフェニル)ボラン、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボラン、トリス(パーフルオロナフチル)ボラン、トリス(パーフルオロビフェニル)ボランが好ましい化合物として例示される。
【0060】
また、ボレート化合物を具体的に表すと、第1の例は、次の一般式(4)で示される化合物である。
[L−H][BR26272425・・・式(4)
【0061】
式(4)中、Lは、中性ルイス塩基であり、Hは、水素原子であり、[L−H]は、アンモニウム、アニリニウム、ホスフォニウム等のブレンステッド酸である。
アンモニウムとしては、トリメチルアンモニウム、トリエチルアンモニウム、トリプロピルアンモニウム、トリブチルアンモニウム、トリ(n−ブチル)アンモニウムなどのトリアルキル置換アンモニウム、ジ(n−プロピル)アンモニウム、ジシクロヘキシルアンモニウムなどのジアルキルアンモニウムを例示できる。
【0062】
また、アニリニウムとしては、N,N−ジメチルアニリニウム、N,N−ジエチルアニリニウム、N,N−2,4,6−ペンタメチルアニリニウムなどのN,N−ジアルキルアニリニウムが例示できる。
さらに、ホスフォニウムとしては、トリフェニルホスフォニウム、トリブチルホスホニウム、トリ(メチルフェニル)ホスフォニウム、トリ(ジメチルフェニル)ホスフォニウムなどのトリアリールホスフォニウム、トリアルキルホスフォニウムが挙げられる。
【0063】
また、式(4)中、R26およびR27は、6〜20、好ましくは6〜16の炭素原子を含む、同じか又は異なる芳香族又は置換芳香族炭化水素基で、架橋基によって互いに連結されていてもよく、置換芳香族炭化水素基の置換基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基等に代表されるアルキル基やフッ素、塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲンが好ましい。
さらに、X24及びX25は、ハイドライド基、ハライド基、1〜20の炭素原子を含む炭化水素基、1個以上の水素原子がハロゲン原子によって置換された1〜20の炭素原子を含む置換炭化水素基である。
【0064】
上記一般式(4)で表される化合物の具体例としては、トリブチルアンモニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリブチルアンモニウムテトラ(2,6−ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、トリブチルアンモニウムテトラ(3,5−ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、トリブチルアンモニウムテトラ(2,6−ジフルオロフェニル)ボレート、トリブチルアンモニウムテトラ(パーフルオロナフチル)ボレート、ジメチルアニリニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ジメチルアニリニウムテトラ(2,6−ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、ジメチルアニリニウムテトラ(3,5−ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、ジメチルアニリニウムテトラ(2,6−ジフルオロフェニル)ボレート、ジメチルアニリニウムテトラ(パーフルオロナフチル)ボレート、トリフェニルホスホニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリフェニルホスホニウムテトラ(2,6−ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、トリフェニルホスホニウムテトラ(3,5−ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、トリフェニルホスホニウムテトラ(2,6−ジフルオロフェニル)ボレート、トリフェニルホスホニウムテトラ(パーフルオロナフチル)ボレート、トリメチルアンモニウムテトラ(2,6−ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、トリエチルアンモニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリエチルアンモニウムテトラ(2,6−ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、トリエチルアンモニウムテトラ(パーフルオロナフチル)ボレート、トリプロピルアンモニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリプロピルアンモニウムテトラ(2,6−ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、トリプロピルアンモニウムテトラ(パーフルオロナフチル)ボレート、ジ(1−プロピル)アンモニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ジシクロヘキシルアンモニウムテトラフェニルボレートなどを例示することができる。
【0065】
これらの中でも、トリブチルアンモニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリブチルアンモニウムテトラ(2,6−ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、トリブチルアンモニウムテトラ(3,5−ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、トリブチルアンモニウムテトラ(パーフルオロナフチル)ボレート、ジメチルアニリニウテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ジメチルアニリニウムテトラ(2,6−ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、ジメチルアニリニウムテトラ(3,5−ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、ジメチルアニリニウムテトラ(パーフルオロナフチル)ボレートが好ましい。
【0066】
また、ボレート化合物の第2の例は、次の一般式(5)で表される。
[L[BR26272425・・・式(5)
【0067】
式(5)中、Lは、カルボカチオン、メチルカチオン、エチルカチオン、プロピルカチオン、イソプロピルカチオン、ブチルカチオン、イソブチルカチオン、tert−ブチルカチオン、ペンチルカチオン、トロピニウムカチオン、ベンジルカチオン、トリチルカチオン、ナトリウムカチオン、プロトン等が挙げられる。また、R26、R27、X24及びX25は、前記一般式(4)における定義と同じである。
【0068】
上記化合物の具体例としては、トリチルテトラフェニルボレート、トリチルテトラ(o−トリル)ボレート、トリチルテトラ(p−トリル)ボレート、トリチルテトラ(m−トリル)ボレート、トリチルテトラ(o−フルオロフェニル)ボレート、トリチルテトラ(p−フルオロフェニル)ボレート、トリチルテトラ(m−フルオロフェニル)ボレート、トリチルテトラ(3,5−ジフルオロフェニル)ボレート、トリチルテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリチルテトラ(2,6−ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、トリチルテトラ(3,5−ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、トリチルテトラ(パーフルオロナフチル)ボレート、トロピニウムテトラフェニルボレート、トロピニウムテトラ(o−トリル)ボレート、トロピニウムテトラ(p−トリル)ボレート、トロピニウムテトラ(m−トリル)ボレート、トロピニウムテトラ(o−フルオロフェニル)ボレート、トロピニウムテトラ(p−フルオロフェニル)ボレート、トロピニウムテトラ(m−フルオロフェニル)ボレート、トロピニウムテトラ(3,5−ジフルオロフェニル)ボレート、トロピニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トロピニウムテトラ(2,6−ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、トロピニウムテトラ(3,5−ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、トロピニウムテトラ(パーフルオロナフチル)ボレート、NaBPh、NaB(o−CH−Ph)、NaB(p−CH−Ph)、NaB(m−CH−Ph)、NaB(o−F−Ph)、NaB(p−F−Ph)、NaB(m−F−Ph)、NaB(3,5−F−Ph)、NaB(C、NaB(2,6−(CF−Ph)、NaB(3,5−(CF−Ph)、NaB(C10、HBPh・2ジエチルエーテル、HB(3,5−F−Ph)・2ジエチルエーテル、HB(C・2ジエチルエーテル、HB(2,6−(CF−Ph)・2ジエチルエーテル、HB(3,5−(CF−Ph)・2ジエチルエーテル、HB(C10・2ジエチルエーテルを例示することができる。
【0069】
これらの中でも、トリチルテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリチルテトラ(2,6−ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、トリチルテトラ(3,5−ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、トリチルテトラ(パーフルオロナフチル)ボレート、トロピニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トロピニウムテトラ(2,6−ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、トロピニウムテトラ(3,5−ジトフルオロメチルフェニル)ボレート、トロピニウムテトラ(パーフルオロナフチル)ボレート、NaB(C、NaB(2,6−(CF−Ph)、NaB(3,5−(CF−Ph)、NaB(C10、HB(C・2ジエチルエーテル、HB(2,6−(CF−Ph)・2ジエチルエーテル、HB(3,5−(CF−Ph)・2ジエチルエーテル、HB(C10・2ジエチルエーテルが好ましい。
【0070】
さらに好ましくは、これらの中でもトリチルテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリチルテトラ(2,6−ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、トロピニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トロピニウムテトラ(2,6−ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、NaB(C、NaB(2,6−(CF−Ph)、HB(C・2ジエチルエーテル、HB(2,6−(CF−Ph)・2ジエチルエーテル、HB(3,5−(CF−Ph)・2ジエチルエーテル、HB(C10・2ジエチルエーテルが挙げられる。
【0071】
(3)成分(C)
成分(C)である微粒子担体としては、無機物担体、粒子状ポリマー担体またはこれらの混合物が挙げられる。無機物担体は、金属、金属酸化物、金属塩化物、金属炭酸塩、炭素質物、またはこれらの混合物が使用可能である。
無機物担体に用いることができる好適な金属としては、例えば、鉄、アルミニウム、ニッケルなどが挙げられる。
【0072】
また、金属酸化物としては、周期表1〜14族の元素の単独酸化物または複合酸化物が挙げられ、例えば、SiO、Al、MgO、CaO、B、TiO、ZrO、Fe、Al・MgO、Al・CaO、Al・SiO、Al・MgO・CaO、Al・MgO・SiO、Al・CuO、Al・Fe、Al・NiO、SiO・MgOなどの天然または合成の各種単独酸化物または複合酸化物を例示することができる。
ここで、上記の式は、分子式ではなく、組成のみを表すものであって、本発明において用いられる複合酸化物の構造および成分比率は特に限定されるものではない。
また、本発明において用いる金属酸化物は、少量の水分を吸収していても差し支えなく、少量の不純物を含有していても差し支えない。
【0073】
金属塩化物としては、例えば、アルカリ金属、アルカリ土類金属の塩化物が好ましく、具体的にはMgCl、CaClなどが特に好適である。
金属炭酸塩としては、アルカリ金属、アルカリ土類金属の炭酸塩が好ましく、具体的には、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウムなどが挙げられる。
炭素質物としては、例えば、カーボンブラック、活性炭などが挙げられる。
以上の無機物担体は、いずれも本発明に好適に用いることができるが、特に金属酸化物、シリカ、アルミナなどの使用が好ましい。
【0074】
これら無機物担体は、通常、200〜800℃、好ましくは400〜600℃で空気中または窒素、アルゴン等の不活性ガス中で焼成して、表面水酸基の量を0.8〜1.5mmol/gに調節して用いるのが好ましい。
これら無機物担体の性状としては、特に制限はないが、通常、平均粒径は5〜200μm、好ましくは10〜150μm、平均細孔径は20〜1000Å、好ましくは50〜500Å、比表面積は150〜1000m/g、好ましくは200〜700m/g、細孔容積は0.3〜2.5cm/g、好ましくは0.5〜2.0cm/g、見掛比重は0.10〜0.50g/cmを有する無機物担体を用いるのが好ましい。
【0075】
上記した無機物担体は、もちろんそのまま用いることもできるが、予備処理としてこれらの担体をトリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリヘキシルアルミニウム、トリプロピルアルミニウム、トリブチルアルミニウム、トリオクチルアルミニウム、トリデシルアルミニウム、ジイソブチルアルミニウムハイドライドなどの有機アルミニウム化合物やAl−O−Al結合を含む有機アルミニウムオキシ化合物に接触させた後、用いることができる。
【0076】
本発明に係るメタロセン系触媒は、メタロセン化合物(A)と、メタロセン化合物(A)と反応してカチオン性メタロセン化合物を生成させる化合物(B)、及び必要に応じて微粒子担体(C)からなる触媒を得る際の各成分の接触方法は、特に限定されず、例えば、以下の方法が任意に採用可能である。
【0077】
(I)メタロセン化合物(A)と、メタロセン化合物(A)と反応してカチオン性メタロセン化合物を生成させる化合物(B)とを接触させた後、微粒子担体(C)を接触させる。
(II)メタロセン化合物(A)と、微粒子担体(C)とを接触させた後、メタロセン化合物(A)と反応してカチオン性メタロセン化合物を生成させる化合物(B)を接触させる。
(III)メタロセン化合物(A)と反応してカチオン性メタロセン化合物を生成させる化合物(B)と、微粒子担体(C)とを接触させた後、メタロセン化合物(A)を接触させる。
【0078】
これらの接触方法の中で(I)と(III)が好ましく、さらに(I)が最も好ましい。いずれの接触方法においても、通常は窒素またはアルゴンなどの不活性雰囲気中、一般にベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼンなどの芳香族炭化水素(通常炭素数は6〜12)、ヘプタン、ヘキサン、デカン、ドデカン、シクロヘキサンなどの脂肪族あるいは脂環族炭化水素(通常炭素数5〜12)等の液状不活性炭化水素の存在下、撹拌下または非撹拌下に各成分を接触させる方法が採用される。
この接触は、通常−100℃〜200℃、好ましくは−50℃〜100℃、さらに好ましくは0℃〜50℃の温度にて、5分〜50時間、好ましくは30分〜24時間、さらに好ましくは30分〜12時間で行うことが望ましい。
【0079】
また、メタロセン化合物(A)、メタロセン化合物(A)と反応してカチオン性メタロセン化合物を生成させる化合物(B)と微粒子担体(C)の接触に際しては、上記した通り、ある種の成分が可溶ないしは難溶な芳香族炭化水素溶媒と、ある種の成分が不溶ないしは難溶な脂肪族または脂環族炭化水素溶媒とがいずれも使用可能である。
【0080】
各成分同士の接触反応を段階的に行う場合にあっては、前段で用いた溶媒などを除去することなく、これをそのまま後段の接触反応の溶媒に用いてもよい。また、可溶性溶媒を使用した前段の接触反応後、ある種の成分が不溶もしくは難溶な液状不活性炭化水素(例えば、ペンタン、ヘキサン、デカン、ドデカン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの脂肪族炭化水素、脂環族炭化水素あるいは芳香族炭化水素)を添加して、所望生成物を固形物として回収した後に、あるいは一旦可溶性溶媒の一部または全部を、乾燥等の手段により除去して所望生成物を固形物として取り出した後に、この所望生成物の後段の接触反応を、上記した不活性炭化水素溶媒のいずれかを使用して実施することもできる。本発明では、各成分の接触反応を複数回行うことを妨げない。
【0081】
本発明において、メタロセン化合物(A)と、メタロセン化合物(A)と反応してカチオン性メタロセン化合物を生成させる化合物(B)と、微粒子担体(C)の使用割合は、特に限定されないが、以下の範囲が好ましい。
【0082】
メタロセン化合物(A)と反応してカチオン性メタロセン化合物を生成させる化合物(B)として、有機アルミニウムオキシ化合物を用いる場合、メタロセン化合物(A)中の遷移金属(M)に対する有機アルミニウムオキシ化合物のアルミニウムの原子比(Al/M)は、通常、1〜100,000、好ましくは5〜1000、さらに好ましくは50〜200の範囲が望ましく、また、ボラン化合物やボレート化合物を用いる場合、メタロセン化合物中の遷移金属(M)に対する、ホウ素の原子比(B/M)は、通常、0.01〜100、好ましくは0.1〜50、さらに好ましくは0.2〜10の範囲で選択することが望ましい。
さらに、カチオン性メタロセン化合物を生成させる化合物(B)として、有機アルミニウムオキシ化合物と、ボラン化合物、ボレート化合物との混合物を用いる場合にあっては、混合物における各化合物について、遷移金属(M)に対して上記と同様な使用割合で選択することが望ましい。
【0083】
微粒子担体(C)の使用量は、メタロセン化合物(A)中の遷移金属0.0001〜5ミリモル当たり、好ましくは0.001〜0.5ミリモル当たり、さらに好ましくは0.01〜0.1ミリモル当たり、1gである。
【0084】
メタロセン化合物(A)と、メタロセン化合物(A)と反応してカチオン性メタロセン化合物を生成させる化合物(B)と、微粒子担体(C)とを、前記接触方法(I)〜(III)のいずれかで相互に接触させ、しかる後、溶媒を除去することで、オレフィン重合用触媒を固体触媒として得ることができる。溶媒の除去は、常圧下または減圧下、0〜200℃、好ましくは20〜150℃で1分〜50時間、好ましくは10分〜10時間で行うことが望ましい。
【0085】
なお、メタロセン系触媒は、以下の方法によっても得ることができる。
(IV)メタロセン化合物(A)と微粒子担体(C)とを接触させて溶媒を除去し、これを固体触媒成分とし、重合条件下で有機アルミニウムオキシ化合物、ボラン化合物、ボレート化合物またはこれらの混合物と接触させる。
(V)有機アルミニウムオキシ化合物、ボラン化合物、ボレート化合物またはこれらの混合物と微粒子担体(C)とを接触させて溶媒を除去し、これを固体触媒成分とし、重合条件下でメタロセン化合物(A)と接触させる。
上記(IV)、(V)の接触方法の場合も、成分比、接触条件および溶媒除去条件は、前記と同様の条件が使用できる。
【0086】
また、本発明の製造方法の必須成分であるメタロセン化合物(A)と反応してカチオン性メタロセン化合物を生成させる化合物(B)と微粒子担体(C)とを兼ねる成分として、層状珪酸塩を用いることもできる。
層状珪酸塩とは、イオン結合等によって構成される面が互いに弱い結合力で平行に積み重なった結晶構造をとる珪酸塩化合物である。
大部分の層状珪酸塩は、天然には主に粘土鉱物の主成分として産出するが、これら、層状珪酸塩は特に天然産のものに限らず、人工合成物であってもよい。
【0087】
これらの中では、モンモリロナイト、ザウコナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトライト、スチーブンサイト、ベントナイト、テニオライト等のスメクタイト族、バーミキュライト族、雲母族が好ましい。
【0088】
一般に、天然品は、非イオン交換性(非膨潤性)であることが多く、その場合は好ましいイオン交換性(ないし膨潤性)を有するものとするために、イオン交換性(ないし膨潤性)を付与するための処理を行うことが好ましい。そのような処理のうちで特に好ましいものとしては、次のような化学処理が挙げられる。
ここで化学処理とは、表面に付着している不純物を除去する表面処理と層状珪酸塩の結晶構造、化学組成に影響を与える処理のいずれをも用いることができる。
具体的には、(イ)塩酸、硫酸等を用いて行う酸処理、(ロ)NaOH、KOH、NH等を用いて行うアルカリ処理、(ハ)周期表第2族から第14族から選ばれた少なくとも1種の原子を含む陽イオンとハロゲン原子または無機酸由来の陰イオンからなる群より選ばれた少なくとも1種の陰イオンからなる塩類を用いた塩類処理、(ニ)アルコール、炭化水素化合物、ホルムアミド、アニリン等の有機物処理等が挙げられる。これらの処理は、単独で行ってもよいし、2つ以上の処理を組み合わせてもよい。
【0089】
前記層状珪酸塩は、全ての工程の前、間、後のいずれの時点においても、粉砕、造粒、分粒、分別等によって、粒子性状を制御することができる。その方法は、合目的的な任意のものであり得る。特に、造粒法について示せば、例えば、噴霧造粒法、転動造粒法、圧縮造粒法、撹拌造粒法、ブリケッティング法、コンパクティング法、押出造粒法、流動層造粒法、乳化造粒法および液中造粒法等が挙げられる。特に好ましい造粒法は、上記の内、噴霧造粒法、転動造粒法および圧縮造粒法である。
【0090】
上記した層状珪酸塩は、もちろんそのまま用いることもできるが、これらの層状珪酸塩をトリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリプロピルアルミニウム、トリブチルアルミニウム、トリヘキシルアルミニウム、トリオクチルアルミニウム、トリデシルアルミニウム、ジイソブチルアルミニウムハイドライドなどの有機アルミニウム化合物やAl−O−Al結合を含む有機アルミニウムオキシ化合物と組み合わせて用いることができる。
【0091】
本発明に係るメタロセン系触媒において、メタロセン化合物(A)を、層状珪酸塩に担持するには、メタロセン化合物(A)と層状珪酸塩を相互に接触させる、あるいはメタロセン化合物(A)、有機アルミニウム化合物、層状珪酸塩を相互に接触させてもよい。
各成分の接触方法は、特に限定されず、例えば、以下の方法が任意に採用可能である。
(VI)メタロセン化合物(A)と有機アルミニウム化合物を接触させた後、層状珪酸塩担体と接触させる。
(VII)メタロセン化合物(A)と層状珪酸塩担体を接触させた後、有機アルミニウム化合物と接触させる。
(VIII)有機アルミニウム化合物と層状珪酸塩担体を接触させた後、メタロセン化合物(A)と接触させる。
【0092】
これらの接触方法の中で(VI)と(VIII)が好ましい。いずれの接触方法においても、通常は窒素またはアルゴンなどの不活性雰囲気中、一般にベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼンなどの芳香族炭化水素(通常炭素数は6〜12)、ヘプタン、ヘキサン、デカン、ドデカン、シクロヘキサンなどの脂肪族あるいは脂環族炭化水素(通常炭素数5〜12)等の液状不活性炭化水素の存在下、撹拌下または非撹拌下に各成分を接触させる方法が採用される。
【0093】
メタロセン化合物(A)と、有機アルミニウム化合物、層状珪酸塩担体の使用割合は、特に限定されないが、以下の範囲が好ましい。
メタロセン化合物(A)の担持量は、層状珪酸塩担体1gあたり、0.0001〜5ミリモル、好ましくは0.001〜0.5ミリモル、さらに好ましくは0.01〜0.1ミリモルである。
また、有機アルミニウム化合物を用いる場合のAl担持量は、0.01〜100モル、好ましくは0.1〜50モル、さらに好ましくは0.2〜10モルの範囲であることが望ましい。
【0094】
担持および溶媒除去の方法は、前記の無機物担体と同様の条件が使用できる。
触媒成分(B)と成分(C)とを兼ねる成分として、層状珪酸塩を用いると、重合活性が高く、長鎖分岐を有するエチレン系重合体の生産性が向上する。
こうして得られるオレフィン重合用触媒は、必要に応じてモノマーの予備重合を行った後に使用しても差し支えない。
【0095】
また、重合系中に、水分除去を目的とした成分、いわゆるスカベンジャーを加えても何ら支障なく実施することができる。
なお、かかるスカベンジャーとしては、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウムなどの有機アルミニウム化合物、前記有機アルミニウムオキシ化合物、分岐アルキルを含有する変性有機アルミニウム化合物、ジエチル亜鉛、ジブチル亜鉛などの有機亜鉛化合物、ジエチルマグネシウム、ジブチルマグネシウム、エチルブチルマグネシウムなどの有機マグネシウム化合物、エチルマグネシウムクロリド、ブチルマグネシウムクロリドなどのグリニヤ化合物などが使用される。これらのなかでは、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、エチルブチルマグネシウムが好ましく、トリエチルアルミニウムが特に好ましい。
水素濃度、モノマー量、重合圧力、重合温度等の重合条件が互いに異なる2段階以上の多段階重合方式にも、支障なく適用することができる。
【0096】
3.オレフィン原料、溶媒等
本発明において使用されるオレフィン原料とは、少なくとも1つの重合性二重結合を有する不飽和脂肪族炭化水素であって、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、4−メチルペンテン−1、1,3−ブタジエン、1−ヘキセン、1−オクテン等が挙げられる。これらオレフィンは、単独あるいは混合物で使用される。
また、溶媒としては、一般に不均一重合に使用される非極性の炭化水素類、例えば、イソブタン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン等の脂肪族炭化水素、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂環族炭化水素等から選ばれる。これら溶媒は、単独あるいは混合物で使用される。
【0097】
本発明の技術は、オレフィン重合触媒の存在下に溶媒中で不均一重合させることにより重合体を製造する重合方法に対して有効である。溶媒中でおこなう不均一重合とは、具体的には、スラリー重合およびバルク重合が挙げられる。重合温度としては、0℃〜生成ポリマーの融点未満の温度、好ましくは30℃〜生成ポリマーの融点未満の範囲から選択することができる。重合圧力は、大気圧〜約10MPaの範囲から選択することができる。実質的に酸素、水等を断った状態で、上記した不活性炭化水素溶媒の存在下、またはプロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン等から選ばれるα―オレフィンの存在下でα−オレフィンのスラリー重合またはバルク重合を行うことが出来る。
【実施例】
【0098】
以下に、実施例を挙げて、本発明を更に具体的に説明するが、本発明は、その要旨を越えない限り、これらの実施例に制約されるものではない。
なお、実施例で用いた測定方法は、以下の通りである。
(1)温度190℃、荷重21.6kgにおけるメルトフローレート(HLMFR):
JIS K6922−2:1997に準拠して測定した。
(2)密度:
JIS K6922−1,2:1997に準拠して測定した。
(3)かさ密度:
得られたポリマーを、漏斗を使用して自由落下させ、容積がわかっている容器に回収する。次いで容器中のポリマー重量を測定し、1mlあたりのポリマー重量(g)をかさ密度とした。
【0099】
(実施例1)
1−1.ファウリング防止成分の調製
100mLのキシレンに、ポリエチレンイミン(分子量10,000)から誘導されたn−オクチル化ポリエチレンイミン(ポリエチレンイミンのモノマー単位当たり0.5個のn−オクチル基が導入されたもの)3gとリン酸エステル化合物であるフィチン酸1gを室温で混合、撹拌し、塩を形成させた。その後、ジオクチルスルホコハク酸エステルマグネシウム塩6gを混合し、ファウリング防止成分を得た。
ここで得られたファウリング防止成分を含むキシレン溶液を、トルエンでさらに50倍に希釈して、重合評価に用いた。重合に用いた溶液中に含まれるフィチン酸の濃度は、0.2g/Lとなる。また、混合物としての濃度は2g/Lとなる。
【0100】
1−2.担持触媒の調製
窒素雰囲気下、トルエン13.4mlにメチルアルモキサンのトルエン溶液(Albemarle社製、Al濃度 2.93mol/L)8.5mlとジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)[9−(2,7−t−ブチル)フルオレニル]ジルコニウムジクロリド87.7mgを添加し、室温で30分間撹拌した。
次いで、予め窒素雰囲気下、400℃、8時間焼成したSiO(GRACE社製、948)5.0gをトルエン溶液に添加し、40℃、1時間撹拌した。その後、40℃を維持して真空乾燥を行い、固体触媒を得た。得られた固体触媒は、ヘキサンでスラリー化してエチレン重合に用いた。
【0101】
1−3.エチレンのスラリー重合
窒素置換した内容積2.0Lのオートクレーブにヘキサンを1.0L、1−ヘキセン5mLを添加した。次いで、トリイソブチルアルミニウムのヘキサン希釈液(Al濃度 0.1mol/L)1mLと実施例1−1で調製したファウリング防止成分(フィチン酸濃度0.2g/L)1mL添加した。オートクレーブの内温を80℃に昇温し、実施例1−2で調製した固体触媒のヘキサンスラリー(10mg触媒/ml)1ml添加した。水素を60cc導入し、エチレンで0.7MPaまで昇圧し重合を開始した。重合中はエチレンを供給することにより0.7Mpaを維持し重合を継続した。1時間後、エタノールを添加することで反応を停止し、ポリマーを回収した。その結果43gのポリマーが得られた。重合活性および評価結果は、表2にまとめて記載した。
【0102】
(実施例2〜6)
実施例2〜6は、実施例1と同一のリン酸エステル化合物成分を使用し、表1の有機アルミニウム化合物を使用して評価を行った。使用したリン酸エステル化合物及び有機アルミニウム化合物成分量については、表1に、得られた結果については表2にまとめた。実施例4では、反応器に少量のポリマーの付着が見られたが、得られたポリマーは、かさ密度が0.21g/mlの粒子状であった。
【0103】
(比較例1)
比較例1は、実施例1−3のエチレンのスラリー重合において、実施例1−1で調製したファウリング防止成分を添加しなかった以外は同様に行った。その結果、得られたポリマーはかさ密度が測定出来ない程度の凝集体であり、オートクレーブへのポリマーの付着もひどかった。詳細は表1、表2にまとめた。
【0104】
(比較例2)
比較例2は、実施例1−3のエチレンのスラリー重合において、実施例1−1で調製したファウリング防止成分を表1に記載した量、添加した。その結果、比較例2では、添加量が多過ぎ、重合活性が著しく低下した。詳細は表1、表2にまとめた。
【0105】
(実施例7)
7−1.ファウリング防止成分の調製
100mLのキシレンに、ポリエチレンイミン(分子量10,000)から誘導されたn−オクチル化ポリエチレンイミン(ポリエチレンイミンのモノマー単位当たり0.5個のn−オクチル基が導入されたもの)3gとリン酸エステル化合物であるアデノシン5’−二リン酸1gを室温で混合、撹拌し、塩を形成させた。その後、ジオクチルスルホコハク酸エステルマグネシウム塩6gを混合し、ファウリング防止成分を得た。
ここで得られたファウリング防止成分を含むキシレン溶液を、トルエンでさらに50倍に希釈して、重合評価に用いた。重合に用いた溶液中に含まれるアデノシン5’−リン酸の濃度は、0.2g/Lとなる。
【0106】
7−2.担持触媒の調製
実施例1−2と同様におこなった。
【0107】
7−3.エチレンのスラリー重合
実施例1−3のエチレンのスラリー重合において、実施例1−1で調製したファウリング防止成分を添加する代わりに、実施例7−1で調製した成分を用いた。その他の操作は同様に行い、重合評価を実施した。重合条件および結果は、表1、表2に記載した。
【0108】
(実施例8、9)
実施例8、9は、実施例1−3のエチレンのスラリー重合において、トリイソブチルアルミニウムのヘキサン希釈液の代わりに、トリエチルアルミニウムのヘキサン希釈液およびトリ−n−オクチルアルミニウムのヘキサン希釈液を用いる以外は同様に行った。重合条件および結果は、表1、表2に記載した。
【0109】
(比較例3)
比較例3は、実施例1−3のエチレンのスラリー重合において、実施例1−1で調製したファウリング防止成分の代わりに、市販されている The Associated Octel社製Stadis450(ポリスルホンコポリマー、高分子ポリアミン、および油溶性スルホン酸の混合物)のトルエン希釈液(2g/L)を1ml添加する以外は同様におこなった。詳細は、表1、表2にまとめた。
比較例3のStadis450の添加量は、実施例1で調製したファウリング防止成分の混合物としての量を同一であるが、Stadis450に含まれる成分の被毒効果が大きく、重合活性が実施例1の約1/2となった。
【0110】
(実施例10〜12)
実施例10〜12は、実施例1−2の担持触媒の調製において、メタロセン錯体として、ジメチルシリレンビス{1,1’−[2−(2−フリル)−4,5−ジメチル−シクロペンタジエニル]}ジルコニウムジクロリド70.5mgを添加した以外は同様に行い、担持触媒を調製した。
重合条件および結果は、表1、表2に記載した。
【0111】
(比較例4)
比較例4は、実施例10の重合において、ファイリング防止成分を添加しなかった以外は同様に行った。重合条件および結果は、表1、表2に記載した。
ポリマーは凝集体となり、オートクレーブへの付着もひどかった。
【0112】
(比較例5)
比較例5は、実施例10の重合において、実施例1−1で調製したファウリング防止成分の代わりに、市販されているStadis450(ポリスルホンコポリマー、高分子ポリアミン、および油溶性スルホン酸の混合物)のトルエン希釈液(2g/L)を1ml添加する以外は同様におこなった。詳細は、表1、表2にまとめた。
比較例5のStadis450の添加量は、実施例9で調製したファウリング防止成分の混合物としての量を同一であるが、Stadis450に含まれる成分の被毒効果が大きく、重合活性が実施例1の約1/2となった。
【0113】
【表1】

【0114】
【表2】

【0115】
表1、2から明らかなように、比較例1〜5では、本願発明で規定するファウリング防止成分に関する要件(化合物の種類、その添加割合)を満たさなかったので、オートクレーブの付着を抑制できなかったり、重合活性が著しく低下したりした。
これに対して、本発明の実施例1〜12では、本願発明で規定するファウリング防止成分を所定量用いたので、十分にファウリングが防止でき、しかも重合活性への影響も抑制することができた。
以上から、本発明の製造方法は、高生産効率で安定的にオレフィン重合体を製造することが可能であることを実証できた。
【産業上の利用可能性】
【0116】
本発明の技術により、不均一重合法を用いたオレフィン重合体の製造において、少ない添加量でも十分にファウリングが防止でき、重合活性への影響も抑制できるため、高生産効率で安定したオレフィン重合体の製造が可能となり、オレフィンの重合分野での利用の可能性が極めて高い。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
オレフィン重合触媒及び溶媒の存在下に不均一重合法でオレフィン重合体を製造する方法において、
少なくとも(a)リン酸エステル化合物及び(b)窒素含有有機化合物の接触物と、有機アルミニウム化合物とを共存させ、
その際に、前記リン酸エステル化合物は、重合反応器中の濃度が0.0001mg/L〜1.8mg/Lの範囲であり、かつ、
前記有機アルミニウム化合物は、有機アルミニウム化合物のモル数に対するリン酸エステル化合物の重量の比率が0.001〜10g/molの範囲であることを特徴とするオレフィン重合体の製造方法。
【請求項2】
オレフィン重合触媒及び溶媒の存在下に不均一重合法でオレフィン重合体を製造する方法において、
少なくとも(a)リン酸エステル化合物、(b)窒素含有有機化合物及び(c)有機スルホン酸の金属塩の接触物と、有機アルミニウム化合物とを共存させ、
その際に、前記リン酸エステル化合物は、重合反応器中の濃度が0.0001mg/L〜1.8mg/Lの範囲であり、かつ、
前記有機アルミニウム化合物は、有機アルミニウム化合物のモル数に対するリン酸エステル化合物の重量の比率が0.001〜10g/molの範囲であることを特徴とするオレフィン重合体の製造方法。
【請求項3】
前記(a)リン酸エステル化合物及び(b)窒素含有有機化合物の接触物は、オレフィン重合体を製造する反応器中又は反応器に連結された配管中で形成させることを特徴とする請求項1に記載のオレフィン重合体の製造方法。
【請求項4】
前記(a)リン酸エステル化合物、(b)窒素含有有機化合物及び(c)有機スルホン酸の金属塩の接触物は、オレフィン重合体を製造する反応器中又は反応器に連結された配管中で形成させることを特徴とする請求項2に記載のオレフィン重合体の製造方法。
【請求項5】
前記リン酸エステル化合物は、1分子当たりリン酸基を2〜10個有する有機化合物であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のオレフィン重合体の製造方法。
【請求項6】
前記リン酸エステル化合物は、フィチン酸であること特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のオレフィン重合体の製造方法。
【請求項7】
前記窒素含有有機化合物は、ポリエチレンイミンであることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のオレフィン重合体の製造方法。
【請求項8】
前記有機アルミニウム化合物は、一般式:AlR’(式中、R’は水素または炭素数1〜10の炭化水素基であり、それぞれのR’は同一であっても異なっていてもよい。)で表されることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載のオレフィン重合体の製造方法。
【請求項9】
前記オレフィン重合触媒は、メタロセン触媒であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載のオレフィン重合体の製造方法。

【公開番号】特開2013−56995(P2013−56995A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−195877(P2011−195877)
【出願日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【出願人】(303060664)日本ポリエチレン株式会社 (233)
【Fターム(参考)】