ポリマーの表面を加工する方法
【課題】ポリマーの表面を簡便に加工する方法を提供する。
【解決手段】ポリマーを液体と接触させ、その後、前記ポリマーから液体を除去することにより前記ポリマーの表面を加工する工程を含み、前記ポリマーが、アクリル酸エステル類のホモポリマー、アクリル酸エステル類を含むコポリマー、メタクリル酸エステル類のホモポリマー、メタクリル酸エステル類を含むコポリマー、乳酸のホモポリマーおよび乳酸を含むコポリマーからなる群から選択される1以上であり、前記液体が、前記ポリマーを膨潤可能である液体を用いる方法。
【解決手段】ポリマーを液体と接触させ、その後、前記ポリマーから液体を除去することにより前記ポリマーの表面を加工する工程を含み、前記ポリマーが、アクリル酸エステル類のホモポリマー、アクリル酸エステル類を含むコポリマー、メタクリル酸エステル類のホモポリマー、メタクリル酸エステル類を含むコポリマー、乳酸のホモポリマーおよび乳酸を含むコポリマーからなる群から選択される1以上であり、前記液体が、前記ポリマーを膨潤可能である液体を用いる方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリマーの表面を加工する方法である。
【背景技術】
【0002】
材料表面の特性は、その材料の機能や物性に大きく影響を与える。そのため、材料表面の特性を制御することは、極めて重要である。材料がポリマーである場合、ポリマーの表面を加工する方法としては、例えば、ポリマー表面にレーザー照射することにより、ナノからミクロンメートルレベルに凹凸加工する技術が知られている。この技術によれば、ポリマーの表面を精密に加工することが可能である。また、ポリマーの表面に水不和合性溶媒溶液を塗布し、その溶媒を蒸発させてハニカム構造体を製造する方法が知られている(例えば、特許文献1および2参照)。
【0003】
ポリマーの一種であるアクリル樹脂は、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル等の重合体の総称であり、透明性が高く、着色がしやすく、硬度が高く、かつ耐候性に優れるという利点を有する。このような利点を活かし、自動車用部品、弱電部品、看板、ディスプレイ、建材等に広く用いられている。
【0004】
また、乳酸のポリマーは、生体内分解性であり、環境保護に考慮した用途において、種々用いられている。
【特許文献1】国際公開第2006/090579号パンフレット
【特許文献2】国際公報第2006/022341号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、レーザー照射を用いるポリマー表面加工技術では、高価なレーザー照射装置を必要とするため、大量にポリマーを加工するには向いていない。また、ポリマーのハニカム構造体を製造する方法においては煩雑な操作を行う必要がある。そこで、本発明は、アクリル樹脂および乳酸を含むポリマーの表面を簡便に加工する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、ポリマーの表面を加工する方法であって、
前記方法は、前記ポリマーを液体と接触させ、
その後、前記ポリマーから液体を除去することにより前記ポリマーの表面を加工する工程を含み、
前記ポリマーが、アクリル酸エステル類のホモポリマー、アクリル酸エステル類を含むコポリマー、メタクリル酸エステル類のホモポリマー、メタクリル酸エステル類を含むコポリマー、乳酸のホモポリマーおよび乳酸を含むコポリマーからなる群から選択される1以上であり、
前記液体が、前記ポリマーを膨潤可能である。
【発明の効果】
【0007】
本発明の方法により、アクリル樹脂および乳酸を含むポリマーの表面を簡便に加工することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明におけるポリマーとしては、前記のとおり、アクリル酸エステル類のホモポリマー、アクリル酸エステル類を含むコポリマー、メタクリル酸エステル類のホモポリマー、メタクリル酸エステル類を含むコポリマー、乳酸のホモポリマーおよび乳酸を含むコポリマーからなる群から選択される1以上である。
【0009】
前記アクリル酸エステル類のホモポリマーとしては、例えば、アクリル酸とアリール基、ヒドロキシ基、カルボキシル基およびハロゲン原子からなる群から選択される1以上を含んでもよい炭素数1〜6の低級アルキルアルコールとのエステル類のホモポリマー、および、アクリル酸と炭素数2〜6のエポキシ低級アルキルアルコールとのエステル類のホモポリマーが挙げられる。前記アクリル酸とアリール基、ヒドロキシ基、カルボキシル基およびハロゲン原子からなる群から選択される1以上を含んでもよい炭素数1〜6の低級アルキルアルコールとのエステル類のホモポリマーとしては、例えば、ポリアクリル酸メチル、ポリアクリル酸エチル、ポリアクリル酸ブチル、ポリアクリル酸t-ブチル、ポリアクリル酸ベンジル等が挙げられ、前記アクリル酸と炭素数2〜6のエポキシ低級アルキルアルコールとのエステル類のホモポリマーとしては、例えば、ポリアクリル酸グリシジル等が挙げられる。
【0010】
前記アクリル酸エステル類を含むコポリマーとしては、例えば、アクリル酸エステル類とアクリル酸のコポリマー、アクリル酸エステル類とメタクリル酸のコポリマー、アクリル酸エステル類とアクリル酸エステル類のコポリマー、アクリル酸エステル類とメタクリル酸エステル類のコポリマー、アクリル酸エステル類と前記以外のモノマーのコポリマー等が挙げられる。前記アクリル酸エステル類と前記以外のモノマーのコポリマーとしては、アクリル酸エステル類と下記式(I)で表わされるモノマーのコポリマーが好ましい。
【0011】
【化1】
【0012】
前記式(I)において、R1、R2、R3およびR4は、互いに独立して、水素原子、ハロゲン原子、カルバモイル基、シアノ基、低級アルキル基、ビニルオキシ基、アリール基またはハロゲン原子で置換されたアリール基であるか、または、
R1とR3は、R1とR3が結合している二重結合と一緒になって、2,5−ジヒドロフラン−2,5−ジオンを形成し、かつ、
R2とR3は、互いに独立して、水素原子、ハロゲン原子、カルバモイル基、シアノ基、低級アルキル基、ビニルオキシ基、アリール基またはハロゲン原子で置換されたアリール基である。
【0013】
前記メタクリル酸エステル類のホモポリマーとしては、例えば、メタクリル酸とアリール基、ヒドロキシ基、カルボキシル基およびハロゲン原子からなる群から選択される1以上を含んでもよい炭素数1〜6の低級アルキルアルコールとのエステル類のホモポリマー、および、メタクリル酸と炭素数2〜6のエポキシ低級アルキルアルコールとのエステル類のホモポリマーが挙げられる。前記メタクリル酸とアリール基、ヒドロキシ基、カルボキシル基およびハロゲン原子からなる群から選択される1以上を含んでもよい炭素数1〜6の低級アルキルアルコールとのエステル類のホモポリマーとしては、ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸エチル、ポリメタクリル酸ブチル、ポリメタクリル酸t-ブチル、ポリメタクリル酸ベンジル、ポリメタクリル酸2−ヒドロキシエチル等が挙げられ、前記メタクリル酸と炭素数2〜6のエポキシ低級アルキルアルコールとのエステル類のホモポリマーとしては、例えば、ポリメタクリル酸グリシジル等が挙げられる。
【0014】
前記メタクリル酸エステル類を含むコポリマーとしては、例えば、メタクリル酸エステル類とアクリル酸のコポリマー、メタクリル酸エステル類とメタクリル酸のコポリマー、メタクリル酸エステル類とアクリル酸エステル類のコポリマー、メタクリル酸エステル類とメタクリル酸エステル類のコポリマー、メタクリル酸エステル類と前記以外のモノマーのコポリマー等が挙げられる。前記メタクリル酸エステル類と前記以外のモノマーのコポリマーとしては、メタクリル酸エステル類と前記式(I)で表わされるモノマーのコポリマーが好ましい。
【0015】
前記アクリル酸エステル類とアクリル酸のコポリマーとしては、例えば、アクリル酸とアリール基、ヒドロキシ基、カルボキシル基およびハロゲン原子からなる群から選択される1以上を含んでもよい炭素数1〜6の低級アルキルアルコールとのエステル類と、アクリル酸のコポリマー;および、アクリル酸と炭素数2〜6のエポキシ低級アルキルアルコールとのエステル類と、アクリル酸のコポリマーが挙げられる。前記アクリル酸とアリール基、ヒドロキシ基、カルボキシル基およびハロゲン原子からなる群から選択される1以上を含んでもよい炭素数1〜6の低級アルキルアルコールとのエステル類と、アクリル酸のコポリマーとしては、例えば、アクリル酸メチルとアクリル酸のコポリマー、アクリル酸エチルとアクリル酸のコポリマー、アクリル酸ブチルとアクリル酸のコポリマー、アクリル酸t−ブチルとアクリル酸のコポリマー、アクリル酸ベンジルとアクリル酸のコポリマー等が挙げられ、前記アクリル酸と炭素数2〜6のエポキシ低級アルキルアルコールとのエステル類と、アクリル酸のコポリマーとしては、例えば、アクリル酸グリシジルとアクリル酸のコポリマー等が挙げられる。
【0016】
前記アクリル酸エステル類とメタクリル酸のコポリマーとしては、例えば、アクリル酸とアリール基、ヒドロキシ基、カルボキシル基およびハロゲン原子からなる群から選択される1以上を含んでもよい炭素数1〜6の低級アルキルアルコールとのエステル類と、メタクリル酸のコポリマー;および、アクリル酸と炭素数2〜6のエポキシ低級アルキルアルコールとのエステル類と、メタクリル酸のコポリマーが挙げられる。前記アクリル酸とアリール基、ヒドロキシ基、カルボキシル基およびハロゲン原子からなる群から選択される1以上を含んでもよい炭素数1〜6の低級アルキルアルコールとのエステル類と、メタクリル酸のコポリマーとしては、例えば、アクリル酸メチルとメタクリル酸のコポリマー、アクリル酸エチルとメタクリル酸のコポリマー、アクリル酸ブチルとメタクリル酸のコポリマー、アクリル酸t−ブチルとメタクリル酸のコポリマー、アクリル酸ベンジルとメタクリル酸のコポリマー等が挙げられ、前記アクリル酸と炭素数2〜6のエポキシ低級アルキルアルコールとのエステル類と、メタクリル酸のコポリマーとしては、例えばアクリル酸グリシジルとメタクリル酸のコポリマー等が挙げられる。
【0017】
前記アクリル酸エステル類とアクリル酸エステル類のコポリマーとしては、例えば、アクリル酸とアリール基、ヒドロキシ基、カルボキシル基およびハロゲン原子からなる群から選択される1以上を含んでもよい炭素数1〜6の低級アルキルアルコールとのエステル類と、アクリル酸とアリール基、ヒドロキシ基、カルボキシル基およびハロゲン原子からなる群から選択される1以上を含んでもよい炭素数1〜6の低級アルキルアルコールとの別のエステル類のコポリマー;およびアクリル酸とアリール基、ヒドロキシ基、カルボキシル基およびハロゲン原子からなる群から選択される1以上を含んでもよい炭素数1〜6の低級アルキルアルコールとのエステル類と、アクリル酸と炭素数2〜6のエポキシ低級アルキルアルコールとのエステル類のコポリマー;およびアクリル酸と炭素数2〜6のエポキシ低級アルキルアルコールとのエステル類と、アクリル酸と炭素数2〜6のエポキシ低級アルキルアルコールとの別のエステル類が挙げられる。前記アクリル酸とアリール基、ヒドロキシ基、カルボキシル基およびハロゲン原子からなる群から選択される1以上を含んでもよい炭素数1〜6の低級アルキルアルコールとのエステル類と、アクリル酸とアリール基、ヒドロキシ基、カルボキシル基およびハロゲン原子からなる群から選択される1以上を含んでもよい炭素数1〜6の低級アルキルアルコールとの別のエステル類のコポリマーとしては、例えば、アクリル酸メチルとアクリル酸エチルのコポリマー、アクリル酸メチルとアクリル酸ブチルのコポリマー、アクリル酸メチルとアクリル酸t−ブチルのコポリマー、アクリル酸メチルとアクリル酸ベンジルのコポリマー等が挙げられ、前記アクリル酸とアリール基、ヒドロキシ基、カルボキシル基およびハロゲン原子からなる群から選択される1以上を含んでもよい炭素数1〜6の低級アルキルアルコールとのエステル類と、アクリル酸と炭素数2〜6のエポキシ低級アルキルアルコールとのエステル類のコポリマーとしては、例えば、アクリル酸メチルとアクリル酸グリシジルのコポリマー等が挙げられる。
【0018】
前記アクリル酸エステル類とメタクリル酸エステル類のコポリマーとしては、例えば、アクリル酸とアリール基、ヒドロキシ基、カルボキシル基およびハロゲン原子からなる群から選択される1以上を含んでもよい炭素数1〜6の低級アルキルアルコールとのエステル類と、メタクリル酸とアリール基、ヒドロキシ基、カルボキシル基およびハロゲン原子からなる群から選択される1以上を含んでもよい炭素数1〜6の低級アルキルアルコールとのエステル類のコポリマー;
アクリル酸と炭素数2〜6のエポキシ低級アルキルアルコールとのエステル類と、メタクリル酸とアリール基、ヒドロキシ基、カルボキシル基およびハロゲン原子からなる群から選択される1以上を含んでもよい炭素数1〜6の低級アルキルアルコールとのエステル類のコポリマー;
アクリル酸とアリール基、ヒドロキシ基、カルボキシル基およびハロゲン原子からなる群から選択される1以上を含んでもよい炭素数1〜6の低級アルキルアルコールとのエステル類と、メタクリル酸と炭素数2〜6のエポキシ低級アルキルアルコールとのエステル類のコポリマー;および
アクリル酸と炭素数2〜6のエポキシ低級アルキルアルコールとのエステル類と、メタクリル酸と炭素数2〜6のエポキシ低級アルキルアルコールとのエステル類のコポリマー;が挙げられる。
【0019】
前記アクリル酸とアリール基、ヒドロキシ基、カルボキシル基およびハロゲン原子からなる群から選択される1以上を含んでもよい炭素数1〜6の低級アルキルアルコールとのエステル類と、メタクリル酸とアリール基、ヒドロキシ基、カルボキシル基およびハロゲン原子からなる群から選択される1以上を含んでもよい炭素数1〜6の低級アルキルアルコールとのエステル類のコポリマーとしては、例えば、アクリル酸メチルとメタクリル酸メチルのコポリマー、アクリル酸メチルとメタクリル酸エチルのコポリマー、アクリル酸メチルとメタクリル酸ブチルのコポリマー、アクリル酸メチルとメタクリル酸t−ブチルのコポリマー、アクリル酸メチルとメタクリル酸ベンジルのコポリマー等があげられる。前記アクリル酸とアリール基、ヒドロキシ基、カルボキシル基およびハロゲン原子からなる群から選択される1以上を含んでもよい炭素数1〜6の低級アルキルアルコールとのエステル類と、メタクリル酸と炭素数2〜6のエポキシ低級アルキルアルコールとのエステル類のコポリマーとしては、例えば、アクリル酸メチルとメタクリル酸グリシジルのコポリマー等が挙げられる。
【0020】
前記アクリル酸エステル類と前記以外のモノマーのコポリマーとしては、例えば、前記アクリル酸エステル類と前記式(I)で表わされるモノマーとのコポリマーが挙げられる。前記アクリル酸エステル類と前記式(I)で表わされるモノマーとのコポリマーとしては、例えば、アクリル酸とアリール基、ヒドロキシ基、カルボキシル基およびハロゲン原子からなる群から選択される1以上を含んでもよい炭素数1〜6の低級アルキルアルコールとのエステル類と、式(I)で表わされるモノマーのコポリマー;およびアクリル酸と炭素数2〜6のエポキシ低級アルキルアルコールとのエステル類と、式(I)で表わされるモノマーのコポリマーが挙げられる。
【0021】
前記アクリル酸とアリール基、ヒドロキシ基、カルボキシル基およびハロゲン原子からなる群から選択される1以上を含んでもよい炭素数1〜6の低級アルキルアルコールとのエステル類と、式(I)で表わされるモノマーのコポリマーとしては、例えば、アクリル酸メチルと無水マレイン酸のコポリマー、アクリル酸エチルと塩化ビニルのコポリマー、アクリル酸ブチルとビニルエーテルのコポリマー、アクリル酸t−ブチルと無水マレイン酸のコポリマー、アクリル酸ベンジルと塩化ビニルのコポリマー、アクリル酸メチルとスチレンのコポリマー、アクリル酸メチルとアクリロニトリルのコポリマー、アクリル酸メチルとアクリルアミドのコポリマー等が挙げられる。前記アクリル酸と炭素数2〜6のエポキシ低級アルキルアルコールとのエステル類と、式(I)で表わされるモノマーのコポリマーとしては、例えば、アクリル酸グリシジルとビニルエーテルのコポリマー等が挙げられる。
【0022】
前記メタクリル酸エステル類とアクリル酸のコポリマーとしては、例えば、メタクリル酸とアリール基、ヒドロキシ基、カルボキシル基およびハロゲン原子からなる群から選択される1以上を含んでもよい炭素数1〜6の低級アルキルアルコールとのエステル類と、アクリル酸のコポリマー;および、メタクリル酸と炭素数2〜6のエポキシ低級アルキルアルコールとのエステル類と、アクリル酸のコポリマーが挙げられる。前記メタクリル酸とアリール基、ヒドロキシ基、カルボキシル基およびハロゲン原子からなる群から選択される1以上を含んでもよい炭素数1〜6の低級アルキルアルコールとのエステル類と、アクリル酸のコポリマーとしては、例えば、メタクリル酸メチルとアクリル酸のコポリマー、メタクリル酸エチルとアクリル酸のコポリマー、メタクリル酸ブチルとアクリル酸のコポリマー、メタクリル酸t−ブチルとアクリル酸のコポリマー、メタクリル酸ベンジルとアクリル酸のコポリマー等が挙げられる。前記メタクリル酸と炭素数2〜6のエポキシ低級アルキルアルコールとのエステル類と、アクリル酸のコポリマーとしては、例えば、メタクリル酸グリシジルとアクリル酸のコポリマー等が挙げられる。
【0023】
前記メタクリル酸エステル類とメタクリル酸のコポリマーとしては、例えば、メタクリル酸とアリール基、ヒドロキシ基、カルボキシル基およびハロゲン原子からなる群から選択される1以上を含んでもよい炭素数1〜6の低級アルキルアルコールとのエステル類と、メタクリル酸のコポリマー;および、メタクリル酸と炭素数2〜6のエポキシ低級アルキルアルコールとのエステル類と、メタクリル酸のコポリマーが挙げられる。前記メタクリル酸とアリール基、ヒドロキシ基、カルボキシル基およびハロゲン原子からなる群から選択される1以上を含んでもよい炭素数1〜6の低級アルキルアルコールとのエステル類と、メタクリル酸のコポリマーとしては、例えば、メタクリル酸メチルとメタクリル酸のコポリマー、メタクリル酸エチルとメタクリル酸のコポリマー、メタクリル酸ブチルとメタクリル酸のコポリマー、メタクリル酸t−ブチルとメタクリル酸のコポリマー、メタクリル酸ベンジルとメタクリル酸のコポリマー等が挙げられる。前記メタクリル酸と炭素数2〜6のエポキシ低級アルキルアルコールとのエステル類と、メタクリル酸のコポリマーとしては、例えば、メタクリル酸グリシジルとメタクリル酸のコポリマー等が挙げられる。
【0024】
前記メタクリル酸エステル類とメタクリル酸エステル類のコポリマーとしては、例えば、メタクリル酸とアリール基、ヒドロキシ基、カルボキシル基およびハロゲン原子からなる群から選択される1以上を含んでもよい炭素数1〜6の低級アルキルアルコールとのエステル類と、メタクリル酸とアリール基、ヒドロキシ基、カルボキシル基およびハロゲン原子からなる群から選択される1以上を含んでもよい炭素数1〜6の低級アルキルアルコールとの別のエステル類のコポリマー;
メタクリル酸と炭素数2〜6のエポキシ低級アルキルアルコールとのエステル類と、メタクリル酸とアリール基、ヒドロキシ基、カルボキシル基およびハロゲン原子からなる群から選択される1以上を含んでもよい炭素数1〜6の低級アルキルアルコールとのエステル類のコポリマー;および
メタクリル酸と炭素数2〜6のエポキシ低級アルキルアルコールとのエステル類と、メタクリル酸と炭素数2〜6のエポキシ低級アルキルアルコールとの別のエステル類のコポリマー;が挙げられる。
【0025】
前記メタクリル酸とアリール基、ヒドロキシ基、カルボキシル基およびハロゲン原子からなる群から選択される1以上を含んでもよい炭素数1〜6の低級アルキルアルコールとのエステル類と、メタクリル酸とアリール基、ヒドロキシ基、カルボキシル基およびハロゲン原子からなる群から選択される1以上を含んでもよい炭素数1〜6の低級アルキルアルコールとの別のエステル類のコポリマーとしては、例えば、メタクリル酸メチルとメタクリル酸エチルのコポリマー、メタクリル酸メチルとメタクリル酸ブチルのコポリマー、メタクリル酸ブチルとメタクリル酸ベンジルのコポリマー等が挙げられる。前記メタクリル酸とアリール基、ヒドロキシ基、カルボキシル基およびハロゲン原子からなる群から選択される1以上を含んでもよい炭素数1〜6の低級アルキルアルコールとのエステル類と、メタクリル酸と炭素数2〜6のエポキシ低級アルキルアルコールとのエステル類のコポリマーとしては、例えば、メタクリル酸メチルとメタクリル酸グリシジルのコポリマー等が挙げられる。
【0026】
前記メタクリル酸エステル類と前記式(I)で表わされるモノマーのコポリマーとしては、例えば、メタクリル酸とアリール基、ヒドロキシ基、カルボキシル基およびハロゲン原子からなる群から選択される1以上を含んでもよい炭素数1〜6の低級アルキルアルコールとのエステル類と、式(I)で表わされるモノマーのコポリマー;およびメタクリル酸と炭素数2〜6のエポキシ低級アルキルアルコールとのエステル類と、式(I)で表わされるモノマーのコポリマーが挙げられる。
【0027】
前記メタクリル酸とアリール基、ヒドロキシ基、カルボキシル基およびハロゲン原子からなる群から選択される1以上を含んでもよい炭素数1〜6の低級アルキルアルコールとのエステル類と、式(I)で表わされるモノマーのコポリマーとしては、例えば、メタクリル酸メチルと無水マレイン酸のコポリマー、メタクリル酸エチルと塩化ビニルのコポリマー、メタクリル酸ブチルとビニルエーテルのコポリマー、メタクリル酸t−ブチルと無水マレイン酸のコポリマー、メタクリル酸ベンジルと塩化ビニルのコポリマー、メタクリル酸メチルとスチレンのコポリマー、メタクリル酸メチルとアクリロニトリルのコポリマー、メタクリル酸メチルとアクリルアミドのコポリマー、メタクリル酸メチルと4−クロロメチルスチレンのコポリマー等が挙げられる。前記メタクリル酸と炭素数2〜6のエポキシ低級アルキルアルコールとのエステル類と、式(I)で表わされるモノマーのコポリマーとしては、例えば、メタクリル酸グリシジルとビニルエーテルのコポリマー等が挙げられる。
【0028】
前記乳酸を含むコポリマーとしては、例えば、乳酸モノマーまたはラクチドと共重合可能な他のモノマーとが共重合されたポリマーである。他のモノマーとしては、ジカルボン酸、多価カルボン酸、グリコール、多価アルコール、ヒドロキシカルボン酸、ラクトン等である。前記乳酸を含むコポリマーとしては、例えば、乳酸とヒドロキシカルボン酸とのコポリマー(例えば、乳酸とグリコール酸とのコポリマー)、乳酸とラクトンとのコポリマー等が挙げられる。
【0029】
なお、前記ポリマーが、アクリル酸エステル類のホモポリマー、アクリル酸エステル類を含むコポリマー、メタクリル酸エステル類のホモポリマー、またはメタクリル酸エステル類を含むコポリマーの場合、これらのポリマーを製造する際の重合法は、限定されず、例えば、ラジカル重合、イオン重合等であってもよい。また、前記ポリマーが、乳酸のホモポリマーまたは乳酸を含むコポリマーである場合、これらのポリマーを製造する際の重合方法は、例えば乳酸の重縮合、ラクチドの開環重合等であってもよい。また、前記ポリマーがコポリマーの場合、モノマー組成比は限定されない。前記ポリマーのモノマー配列はランダム、ブロック等であってもよい。さらに、前記ポリマーの分子量は限定されないが、例えば、数平均分子量は1,000〜100,000,000であり、好ましくは2,000〜50,000,000であり、より好ましくは3,000〜20,000,000である。また、例えば、重量平均分子量は1,000〜150,000,000であり、好ましくは2,000〜80,000,000であり、より好ましくは3,000〜40,000,000である。
【0030】
前記液体は、前記のとおり、前記ポリマーを膨潤可能な液体である。本願において膨潤とは、ポリマー分子間に液体分子が入りこむ状態を言う。具体的には、ある温度における膨潤の度合いは、以下に示す方法で膨潤率で表わすことができる。
【0031】
[膨潤率]
フィルム状のポリマー(重量:W0)を試験管に入れ、このポリマーが浸漬する程度にある温度の液体をそこへ加え、放置する。その後、試験管からフィルム状のポリマーを引き上げ、ポリマー表面の液体をキムワイプ(登録商標、キンバリー・クラーク社)でふき取り、そのポリマーの重量を秤量する(W1)。次式によりポリマーの液体に対する膨潤率を計算する。
膨潤率(%)=[(W1−W0)/W0]×100
【0032】
本発明の方法において、ポリマーの液体に対する膨潤率が好ましくは0.1〜200%、より好ましくは0.1〜70%である。
【0033】
また、膨潤の際に一部ポリマーが溶出する場合がある。具体的には、ある温度における溶出の度合いは、以下に示す方法で溶出率で表わすことができる。
[溶出率]
ポリマー(重量:W0)を試験管に入れ、このポリマーが浸漬する程度に液体をそこへ加え、放置する。その後、試験管からフィルム状のポリマーを引き上げ、ポリマー表面の液体をキムワイプ(登録商標)でふき取り、減圧乾燥させる。乾燥後のポリマーの重量を秤量する(W2)。次式によりポリマーの溶出率を計算する。
溶出率(%)=[(W0−W2/W0)]×100
【0034】
本発明の方法において、ポリマーの液体に対する溶出率が好ましくは0.1〜50%、より好ましくは0.1〜30%である。
【0035】
前記ポリマーが、アクリル酸エステル類のホモポリマー、アクリル酸エステル類を含むコポリマー、メタクリル酸エステル類のホモポリマーおよびメタクリル酸エステル類を含むコポリマーからなる群から選択される1以上である場合、前記液体は、脂肪族アルコールと水の混合物であるのが好ましい。また、この場合、前記液体は、例えば、液体に対するポリマーの膨潤率が0.1〜100%、好ましくは0. 1〜40%である液体である。脂肪族アルコールと水の混合物に対するポリマーの膨潤率が0.1%以上5%未満の場合、加工されたポリマーの透過度は好ましくは30%より大きく90%以下である。もしくは、脂肪族アルコールと水の混合物に対するポリマーの溶出率が0.1%以上7%未満の場合、加工されたポリマーの透過度は好ましくは30%より大きく90%以下である。また、脂肪族アルコールと水の混合物に対するポリマーの膨潤率が5%以上40%以下の場合、加工されたポリマーの透過度は好ましくは0%以上30%以下である。もしくは、脂肪族アルコールと水の混合物に対するポリマーの溶出率が7%以上25%以下の場合、加工されたポリマーの透過度は好ましくは0%以上30%以下である。
【0036】
前記脂肪族アルコールとしては、例えば、水酸基を1以上有する炭素原子数が1〜8の脂肪族炭化水素を含む脂肪族アルコール、好ましくは水酸基を1〜3有する炭素原子数が1〜6の脂肪族炭化水素を含む脂肪族アルコール、より好ましくは水酸基を1有する炭素原子数が1〜3の脂肪族炭化水素を含む脂肪族アルコールが挙げられる。具体的には、前記脂肪族アルコールとしては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノール、n−ブタノール、2−ブタノール、i−ブタノール、t−ブタノール、n−ペンタノール、t−アミルアルコール、n−ヘキサノール、2−エチルヘキサノール、n−オクタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、2−エトキシエタノール、2−メトキシエタノール等が挙げられる。
【0037】
前記液体としては、例えば、脂肪族アルコールと水とを含み、好ましくは水酸基を1以上有する炭素原子数が1〜8の脂肪族炭化水素を含む脂肪族アルコールと水とを含み、より好ましくは水酸基を1〜3有する炭素原子数が1〜6の脂肪族炭化水素を含む脂肪族アルコールと水とを含み、さらに好ましくはエタノールまたはiープロパノールと水とを含む。具体的には、例えば、前記ポリマーがポリメタクリル酸メチルの場合、前記液体としては、エタノールと水とを含む混合物、i−プロパノールと水を含む混合物等が挙げられる。また、例えば、前記ポリマーとしてメタクリル酸メチルとメタクリル酸グリシジルのコポリマーの場合、前記液体としては、エタノールと水とを含む混合物、i−プロパノールと水とを含む混合物等が挙げられる。
【0038】
前記液体に含まれる脂肪族アルコールと水との割合は、ポリマーを膨潤可能であれば、特に限定されない。前記脂肪族アルコール/(水+脂肪族アルコール)の割合は、例えば30〜99%、好ましくは50〜97%、より好ましくは60〜95%であってもよい。具体的には、前記ポリマーがポリメタクリル酸メチルの場合、前記脂肪族アルコール/(水+脂肪族アルコール)の割合は、エタノールと水とを含む液体の場合、例えば60〜97%、好ましくは70〜95%、より好ましくは75〜90%である。また、前記ポリマーがポリメタクリル酸メチルの場合、前記脂肪族アルコール/(水+脂肪族アルコール)の割合は、i−プロパノールと水とを含む液体の場合、例えば30〜99%、好ましくは50〜97%、より好ましくは60〜95%である。また、前記ポリマーがメタクリル酸メチルとメタクリル酸グリシジルのコポリマーの場合、前記脂肪族アルコール/(水+脂肪族アルコール)の割合は、エタノールと水とを含む液体の場合、例えば60〜95%、好ましくは70〜92%、より好ましくは75〜90%である。
【0039】
前記ポリマーが、乳酸のホモポリマーおよび乳酸を含むコポリマーからなる群から選択される1以上である場合、前記液体は、液体に対するポリマーの膨潤率が0.1〜100%、好ましくは0. 1〜70%である液体である。前記液体に対するポリマーの膨潤率が0.1%以上15%未満の場合、加工されたポリマーの透過度は好ましくは20%より大きく95%以下である。もしくは、前記液体に対するポリマーの溶出率が0.1%以上5%未満の場合、加工されたポリマーの透過度は好ましくは20%より大きく95%以下である。また、前記液体に対するポリマーの膨潤率が15%以上70%以下の場合、加工されたポリマーの透過度は好ましくは0%以上20%以下である。もしくは、前記液体に対するポリマーの溶出率が5%以上15%以下の場合、加工されたポリマーの透過度は好ましくは0%以上20%以下である。具体的には、前記ポリマーが乳酸のホモポリマーである場合、前記液体としては、より好ましくは、トルエン、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、アセトン、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミドおよびアセトニトリルからなる群から選択される1以上である。また、前記ポリマーが乳酸のコポリマーである場合、前記液体としては、より好ましくはトルエン、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、アセトン、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミドおよびアセトニトリル、脂肪族アルコール、水からなる群から選択される1以上であり、さらに好ましくは水酸基を1以上有する炭素原子数が1〜8の脂肪族炭化水素を含む脂肪族アルコールと水とを含む。
【0040】
本発明は、まず、このようなポリマーを液体と接触させる。接触は、ポリマーに液体を塗布、噴霧等してもよく、液体にポリマーを浸漬させてもよい。
【0041】
次いで、本発明では、ポリマーから液体を除去する。除去は、ポリマーを常温常圧で乾燥させてもよいし、デシケーター中乾燥剤を用いて乾燥させてもよいし、減圧下に乾燥させてもよい。
【0042】
本発明の方法は、以下のようなメカニズムでポリマー表面の加工が可能になると考えている。まず、ポリマーを液体と接触させることにより、ポリマーの表面に存在するポリマー分子間に液体分子を浸透させる。ポリマーが溶媒で膨潤することによりポリマー分子が動きやすくなり、微細な表面構造が形成する。その後、膨潤部分から液体を除去する。その結果、ポリマー表面を加工することが可能なのである。
【0043】
これらの工程を含むことにより、本発明のポリマーの表面は加工される。具体的には、液体に対するポリマーの膨潤率が高い場合、ポリマーの透明性は低下し、かつ、ポリマーの表面の接触角が著しく増加する。例えば、前記ポリマーがアクリル酸エステル類のホモポリマー、アクリル酸エステル類を含むコポリマー、メタクリル酸エステル類のホモポリマーおよびメタクリル酸エステル類を含むコポリマーからなる群から選択される1以上である場合は、以下のとおりである。液体に対するポリマーの膨潤率が5%以上40%以下の場合、もしくは、ポリマーの溶出率が7%以上25%以下の場合、加工されたポリマーの透過度は0.1%以上30%以下となり、ポリマーの表面の接触角が30°以上60°以下増加する。また、液体に対するポリマーの膨潤率が5%以上35%以下の場合、もしくは、ポリマーの溶出率が7%以上20%以下の場合、加工されたポリマーの透過度は0.1%以上15%以下となり、ポリマーの表面の接触角が35°以上60°以下増加するのが好ましい。
【0044】
液体に対するポリマーの膨潤率が高い別の例として、前記ポリマーが、乳酸のホモポリマーおよび乳酸を含むコポリマーからなる群から選択される1以上である場合は、以下のとおりである。前記液体に対するポリマーの膨潤率が15%以上70%以下の場合、加工されたポリマーの透過度は0%以上20%以下、かつ、ポリマーの表面の接触角が30°以上90°以下増加する。また、液体に対するポリマーの溶出率が5%以上15%以下の場合、加工ポリマーの透過率は0%以上20%以下になり、かつ、ポリマーの表面の接触角が30°以上90°以下増加する。また、液体に対するポリマーの膨潤率が15%以上65%以下の場合、もしくは、ポリマーの溶出率が5%以上10%以下の場合、加工されたポリマーの透過度は0%以上10%以下となり、ポリマーの表面の接触角が40°以上70°以下増加するのが好ましい。
【0045】
また、液体に対するポリマーの膨潤率が低い場合、ポリマーの透明性はほぼ維持され、かつ、ポリマーの表面の接触角はわずかに増加する。例えば、前記ポリマーがアクリル酸エステル類のホモポリマー、アクリル酸エステル類を含むコポリマー、メタクリル酸エステル類のホモポリマーおよびメタクリル酸エステル類を含むコポリマーからなる群から選択される1以上である場合は、以下のとおりである。液体に対するポリマーの膨潤率が0.1%以上5%未満の場合、加工ポリマーの透過率は30%より大きく90%以下になり、かつ、ポリマーの表面の接触角が0.1°以上30°未満増加する。また、液体に対するポリマーの溶出率が0.1%以上7%未満の場合、加工ポリマーの透過率は30%より大きく90%以下になり、かつ、ポリマーの表面の接触角が0.1°以上30°以下増加する。また、液体に対するポリマーの膨潤率が0.1%以上3%以下の場合、もしくは、ポリマーの溶出率が0.5%以上7%未満の場合、加工されたポリマーの透過度は50%以上85%以下となり、ポリマーの表面の接触角が1°以上25°以下増加するのが好ましい。
【0046】
液体に対するポリマーの膨潤率が低い別の例として、例えば、前記ポリマーが、乳酸のホモポリマーおよび乳酸を含むコポリマーからなる群から選択される1以上である場合は、以下のとおりである。前記液体に対するポリマーの膨潤率が0.1%以上15%未満の場合、加工されたポリマーの透過度は20%より大きく95%以下になり、かつ接触角が1°以上30°未満増加する。また、液体に対するポリマーの溶出率が0.1%以上5%未満の場合、加工ポリマーの透過率は20%より大きく95%以下になり、かつ、ポリマーの表面の接触角が1°以上30°未満増加する。また、液体に対するポリマーの膨潤率が1%以上12%以下の場合、もしくは、ポリマーの溶出率が1%以上5%未満の場合、加工されたポリマーの透過度は40%以上75%以下となり、ポリマーの表面の接触角が1°以上10°以下増加するのが好ましい。
【0047】
また、本発明は、表面が加工されたポリマーの製造方法であって、前記方法は、前記ポリマーを液体と接触させ、その後、前記ポリマーから液体を除去することにより前記ポリマーの表面を加工する工程を含み、前記ポリマーが、アクリル酸エステル類のホモポリマー、アクリル酸エステル類を含むコポリマー、メタクリル酸エステル類のホモポリマー、メタクリル酸エステル類を含むコポリマー、乳酸のホモポリマーおよび乳酸を含むコポリマーからなる群から選択される1以上であり、前記液体が、前記ポリマーを膨潤可能である。前記ポリマー、前記液体の種類等については、前記の通りである。
【0048】
前記のようにして得られた表面加工されたポリマーは、前記のように透明性が低下し、かつ表面の接触角が著しく増加するか、透明性がほぼ維持され、かつ表面の接触角がわずかに増加している。従って、このような表面加工されたポリマーは、例えば分離材、メディカル材料、電池用セパレータ、多孔質絶縁材料、通気・透湿防水性材料、抗菌性多孔質材料、消臭・脱臭シート、吸着剤、細胞培養用足場等として、用いることができる。
【0049】
以下に本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明の範囲は、以下の実施例により限定されない。
本明細書の記載において、以下の略語を使用する。
MMA:メタクリル酸メチル、ナカライテスク株式会社製
PMMA:ポリメタクリル酸メチル、ナカライテスク株式会社製およびアルドリッチ社製
GMA:メタクリル酸グリシジル、ナカライテスク株式会社製
PLLA:ポリ乳酸、ネイチャーワークス社製
PLGA:ポリ(乳酸/グリコール酸共重合体)、アルドリッチ社製
SDS:ドデシル硫酸ナトリウム、アルドリッチ社製
【0050】
本明細書において、測定機器は以下の機器を用いた。
SEM:日立S−3000N
接触角:協和界面科学DM300
透過度:日立U-2810
GPC:分子量はポリスチレン換算分子量である。測定装置としては、TOSOH DP-8020 pump、TOSOH RI-8020 RI detector、TOSOH SD-8020 degasser、TOSOH CO-8020 Column oven、TOSOH AS-8020 autosamplerで構成されており、TOSOH TSK gel GMH-MとTOSOH TSK gel GMH-Nの2つのカラムをつなぎ、40℃で、移動層にクロロホルムを用いた。
【0051】
本明細書において膨張率は以下のようにして測定した。フィルム状のポリマー(重量:W0)を試験管に入れ、このポリマーが浸漬する程度に液体をそこへ加え、15分間(PMMAの場合)、5分間(P(MMA/GMA)の場合)、30分間(PLLAの場合)、60分間(PLGAの場合)放置する。その後、試験管からフィルム状のポリマーを引き上げ、ポリマー表面の液体をキムワイプ(登録商標)でふき取り、そのポリマーの重量を秤量する(W1)。次式によりポリマーの液体に対する膨潤率を計算する。
膨潤率(%)=[(W1−W0)/W0]×100
【0052】
本明細書において溶出率は以下のようにして測定した。フィルム状のポリマー(重量:W0)を試験管に入れ、このポリマーが浸漬する程度に液体をそこへ加え、15分間(PMMAの場合)、5分間(P(MMA/GMA)の場合)、30分間(PLLAの場合)、60分間(PLGAの場合)放置する。その後、試験管からフィルム状のポリマーを引き上げ、ポリマー表面の液体をキムワイプ(登録商標)でふき取り、40℃で24時間、減圧乾燥させる。乾燥後のポリマーの重量を秤量する(W2)。次式によりポリマーの溶出率を計算する。
溶出率(%)=[(W0−W2/W0)]×100
【0053】
(参考例1)P(MMA/GMA)コポリマーの製造
MMA(14.7g、147ミリモル)とGMA(5.2g、37ミリモル)とを、トルエン(40mL)中に室温で溶解し、得られた溶液に開始剤としてAIBN(アゾビスイソブチロニトリル、20mg)を加えた。前記溶液を窒素雰囲気下60℃で24時間加熱攪拌してP(MMA/GMA)を得た。得られたP(MMA/GMA)の重量平均分子量は、30万であった。
【0054】
[実施例1]
PMMA(シート状、分子量6万)を直径14mmの円形状に切断した。そのPMMAを3%SDS水溶液中で5分間超音波を用いて洗浄した。PMMAと40℃の液体(水とエタノールの混合物、水:エタノール=2:8)とをサンプル管に入れた。その状態で2分、15分および30分間維持した後、PMMAをサンプル管から取り出して、常温常圧で乾燥した。得られた加工PMMAのSEM写真を、図1に示す。図1(a)は未処理のPMMA(比較例1)、図1(b)は2分間処理したPMMA、図1(c)は15分間処理したPMMAおよび図1(d)は30分間処理したPMMAのSEM写真である。また、得られた加工PMMAおよび未処理のPMMA(比較例1)の透過度および表面の接触角は表1に示す。
【0055】
【表1】
【0056】
図1および表1に示すように、実施例1の結果から、本発明のポリマーの表面加工方法により、ポリマーの表面の接触角を著しく増加させ、表面を加工できることを確認できた。
【0057】
[実施例2]
PMMA(シート状、分子量40万)を直径14mmの円形状に切断した。そのPMMAを3%SDS水溶液中で5分間超音波を用いて洗浄した。PMMAと60℃の液体(水とエタノールの混合物、水:エタノール=2:8)とをサンプル管に入れた。その状態で15分間維持した後、PMMAをサンプル管から取り出して、常温常圧で乾燥した。得られた加工PMMAのSEM写真を、図2に示す。また、得られた加工PMMAの透過度および表面の接触角は表2に示す。
【0058】
[実施例3]
PMMA(シート状、分子量40万)の代わりにPMMA(シート状、分子量60万)を用いた以外は実施例2と同様にして加工PMMAを得た。得られた加工PMMAのSEM写真を、図3に示す。また、得られた加工PMMAの透過度および表面の接触角は表2に示す。
【0059】
【表2】
【0060】
図2および3、ならびに表2に示すように、実施例2および3の結果から、本発明の表面加工方法により、ポリマーの表面の接触角を著しく増加させ、表面を加工できることを確認できた。
【0061】
[実施例4〜6]
PMMAの分子量と液体の種類を表3に示すように種々変化させ、処理温度を40℃にした以外は実施例3と同様にして加工PMMAを得た。得られた加工PMMAのSEM写真を図4に示す。図4(a)は実施例4のPMMA、図4(b)は実施例5のPMMA、図4(c)は実施例6のPMMAのSEM写真である。また、得られた加工PMMAの透過度および表面の接触角は表4に示す。
【0062】
【表3】
【0063】
【表4】
【0064】
図4ならびに表3および表4に示すように、実施例4〜6の結果から、本発明の表面加工方法により、ポリマーの表面の接触角をわずかに増加させ、かつ、透明度を損なわずに、表面を加工できることを確認できた。
【0065】
[実施例7]
P(MMA/GMA)(参考例1で製造。シート状、分子量30万)を正方形(1cm×1cm)状に切断した。そのP(MMA/GMA)を3%SDS水溶液中で5分間超音波を用いて洗浄した。P(MMA/GMA)と60℃の液体(水とエタノールの混合物、水:エタノール=2:8)とをサンプル管に入れた。その状態で2分、5分、10分および30分間維持した後、P(MMA/GMA)をサンプル管から取り出して、常温常圧で乾燥した。得られた加工MMA/GMAのSEM写真を、図5に示す。図5(a)は未処理のP(MMA/GMA)(比較例2)、図5(b)は2分間処理したP(MMA/GMA)、図5(c)は5分間処理したP(MMA/GMA)、図5(d)は10分間処理したP(MMA/GMA)、図5(e)は30分間処理したP(MMA/GMA)のSEM写真である。また、得られた加工P(MMA/GMA)および未処理のP(MMA/GMA)(比較例2)の透過度および表面の接触角は表5に示す。
【0066】
【表5】
【0067】
図5および表5に示すように、実施例7の結果から、本発明の表面加工方法により、ポリマーの表面の接触角を著しく増加させ、表面を加工できることを確認できた。
【0068】
[実施例8]
P(MMA/GMA)(参考例1で製造。シート状、分子量30万)を正方形(1cm×1cm)状に切断した。そのP(MMA/GMA)を3%SDS水溶液中で5分間超音波を用いて洗浄した。P(MMA/GMA)と40℃の液体(水とイソプロパノールの混合物、水:イソプロパノール=1:9)とをサンプル管に入れた。その状態で5分間維持した後、P(MMA/GMA)をサンプル管から取り出して、常温常圧で乾燥した。得られた加工P(MMA/GMA)のSEM写真を、図6に示す。また、得られた加工P(MMA/GMA)および未処理のP(MMA/GMA)(比較例2)の透過度および表面の接触角は表6に示す。
【0069】
【表6】
【0070】
図6および表6に示すように、実施例8および比較例2の結果から、本発明の表面加工方法により、ポリマーの表面の接触角をわずかに増加させ、かつ、透明度を損なわずに、表面を加工できることを確認できた。
【0071】
[実施例9と比較例3]
PLLA(シート状、分子量11万)を直径14mmの円形状に切断した。そのPLLAを3%SDS水溶液中で5分間超音波を用いて洗浄した。PLLAと25℃の液体(アセトン)とをサンプル管に入れた。その状態で1分、3分、5分、10分、20分および30分間維持した後、PLLAをサンプル管から取り出して、キムワイプ(登録商標)でPLLA表面を拭き取って乾燥した。得られた加工PLLAおよび未処理のPLLA(比較例3)の透過度および表面の接触角は表7に示す。
【0072】
【表7】
【0073】
表7に示すように、実施例9および比較例3の結果から、本発明の表面加工方法により、ポリマーの表面の接触角を著しく増加させ、表面を加工できることを確認できた。
【0074】
[実施例10〜17および比較例3〜8]
液体の種類を表8に示すように種々変化させ、浸漬時間を30分にした以外は実施例9と同様にして加工PLLAを得た。得られた加工PLLAの透過度および表面の接触角は表8に示す。得られた加工PLLAのSEM写真を図7に示す。図7(a)は未処理のPLLA(比較例3)、図7(b)は実施例10のPLLA、図7(c)は実施例11のPLLA、図7(d)は実施例12のPLLA、図7(e)は実施例13のPLLA、図7(f)は実施例14のPLLA、図7(g)は実施例15のPLLA、図7(h)は実施例16のPLLAのSEM写真である。
【0075】
【表8】
【0076】
図7および表8に示すように、実施例10〜16および比較例3〜8の結果から、本発明の表面加工方法により、ポリマーの表面の接触角を著しく増加させ、表面を加工できることを確認できた。
【0077】
[実施例17]
PLLA(シート状、Mw=11万)を直径14mmの円形状に切断した。そのPLLAを3%SDS水溶液中で5分間超音波を用いて洗浄した。PLLAと25℃の液体(ジエチルエーテル)とをサンプル管に入れた。その状態で30分間維持した後、PLLAをサンプル管から取り出して、キムワイプ(登録商標)でPLLA表面を拭き取って乾燥した。得られた加工PLLAおよび未処理のPLLA(比較例3)の透過度および表面の接触角は表9に示す。得られた加工PLLAのSEM写真を図8に示す。
【0078】
【表9】
【0079】
図8および表9に示すように、実施例17および比較例3の結果から、本発明の表面加工方法により、ポリマーの表面の接触角をわずかに増加させ、かつ、透明度を損なわずに、表面を加工できることを確認できた。
【0080】
[実施例18]
PLGA(シート状、Mw=6万)を正方形(1cm×1cm)状に切断した。そのPLGAを3%SDS水溶液中で5分間超音波を用いて洗浄した。PLGAと25℃の液体(水とメタノールの混合物、水:メタノール=1:9)とをサンプル管に入れた。その状態で30分間維持した後、PLGAをサンプル管から取り出して、キムワイプ(登録商標)でPLGA表面を拭き取って乾燥した。得られた加工PLGAおよび未処理のPLGA(比較例9)の透過度および表面の接触角は表10に示す。得られた加工PLGAのSEM写真を図9に示す。
【0081】
【表10】
【0082】
図9および表10に示すように、実施例18および比較例9の結果から、本発明の表面加工方法により、ポリマーの表面の接触角をわずかに増加させ、かつ、透明度を損なわずに、表面を加工できることを確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0083】
本発明の方法は、工業製品、住宅用品、生活用品、医療材料への適用が考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】図1(a)は未処理のPMMA、図1(b)は2分間処理した加工PMMA、図1(c)は15分間処理した加工PMMAおよび図1(d)は30分間処理した加工PMMAのSEM写真である(実施例1)。
【図2】図2は実施例2の加工PMMAのSEM写真である。
【図3】図3は実施例3の加工PMMAのSEM写真である。
【図4】図4(a)は実施例4の加工PMMA、図4(b)は実施例5の加工PMMAおよび図4(c)は実施例6の加工PMMAのSEM写真である。
【図5】図5(a)は未処理のP(MMA/GMA)(比較例2)、図5(b)は2分間処理した加工P(MMA/GMA)、図5(c)は5分間処理した加工MMA/GMA、図5(d)は10分間処理した加工P(MMA/GMA)、図5(e)は30分間処理した加工P(MMA/GMA)のSEM写真である。
【図6】図6は実施例8の加工P(MMA/GMA)のSEM写真である。
【図7(a)】図7(a)は未処理のPLLA(比較例3)のSEM写真である。
【図7(b)】図7(b)は実施例10の加工PLLAのSEM写真である。
【図7(c)】図7(c)は実施例11の加工PLLAのSEM写真である。
【図7(d)】図7(d)は実施例12の加工PLLAのSEM写真である。
【図7(e)】図7(e)は実施例13の加工PLLAのSEM写真である。
【図7(f)】図7(f)は実施例14の加工PLLAのSEM写真である。
【図7(g)】図7(g)は実施例15の加工PLLAのSEM写真である。
【図7(h)】図7(h)は実施例16の加工PLLAのSEM写真である。
【図8】図8は実施例17の加工PLLAのSEM写真である。
【図9】図9は実施例18の加工PLGAのSEM写真である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリマーの表面を加工する方法である。
【背景技術】
【0002】
材料表面の特性は、その材料の機能や物性に大きく影響を与える。そのため、材料表面の特性を制御することは、極めて重要である。材料がポリマーである場合、ポリマーの表面を加工する方法としては、例えば、ポリマー表面にレーザー照射することにより、ナノからミクロンメートルレベルに凹凸加工する技術が知られている。この技術によれば、ポリマーの表面を精密に加工することが可能である。また、ポリマーの表面に水不和合性溶媒溶液を塗布し、その溶媒を蒸発させてハニカム構造体を製造する方法が知られている(例えば、特許文献1および2参照)。
【0003】
ポリマーの一種であるアクリル樹脂は、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル等の重合体の総称であり、透明性が高く、着色がしやすく、硬度が高く、かつ耐候性に優れるという利点を有する。このような利点を活かし、自動車用部品、弱電部品、看板、ディスプレイ、建材等に広く用いられている。
【0004】
また、乳酸のポリマーは、生体内分解性であり、環境保護に考慮した用途において、種々用いられている。
【特許文献1】国際公開第2006/090579号パンフレット
【特許文献2】国際公報第2006/022341号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、レーザー照射を用いるポリマー表面加工技術では、高価なレーザー照射装置を必要とするため、大量にポリマーを加工するには向いていない。また、ポリマーのハニカム構造体を製造する方法においては煩雑な操作を行う必要がある。そこで、本発明は、アクリル樹脂および乳酸を含むポリマーの表面を簡便に加工する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、ポリマーの表面を加工する方法であって、
前記方法は、前記ポリマーを液体と接触させ、
その後、前記ポリマーから液体を除去することにより前記ポリマーの表面を加工する工程を含み、
前記ポリマーが、アクリル酸エステル類のホモポリマー、アクリル酸エステル類を含むコポリマー、メタクリル酸エステル類のホモポリマー、メタクリル酸エステル類を含むコポリマー、乳酸のホモポリマーおよび乳酸を含むコポリマーからなる群から選択される1以上であり、
前記液体が、前記ポリマーを膨潤可能である。
【発明の効果】
【0007】
本発明の方法により、アクリル樹脂および乳酸を含むポリマーの表面を簡便に加工することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明におけるポリマーとしては、前記のとおり、アクリル酸エステル類のホモポリマー、アクリル酸エステル類を含むコポリマー、メタクリル酸エステル類のホモポリマー、メタクリル酸エステル類を含むコポリマー、乳酸のホモポリマーおよび乳酸を含むコポリマーからなる群から選択される1以上である。
【0009】
前記アクリル酸エステル類のホモポリマーとしては、例えば、アクリル酸とアリール基、ヒドロキシ基、カルボキシル基およびハロゲン原子からなる群から選択される1以上を含んでもよい炭素数1〜6の低級アルキルアルコールとのエステル類のホモポリマー、および、アクリル酸と炭素数2〜6のエポキシ低級アルキルアルコールとのエステル類のホモポリマーが挙げられる。前記アクリル酸とアリール基、ヒドロキシ基、カルボキシル基およびハロゲン原子からなる群から選択される1以上を含んでもよい炭素数1〜6の低級アルキルアルコールとのエステル類のホモポリマーとしては、例えば、ポリアクリル酸メチル、ポリアクリル酸エチル、ポリアクリル酸ブチル、ポリアクリル酸t-ブチル、ポリアクリル酸ベンジル等が挙げられ、前記アクリル酸と炭素数2〜6のエポキシ低級アルキルアルコールとのエステル類のホモポリマーとしては、例えば、ポリアクリル酸グリシジル等が挙げられる。
【0010】
前記アクリル酸エステル類を含むコポリマーとしては、例えば、アクリル酸エステル類とアクリル酸のコポリマー、アクリル酸エステル類とメタクリル酸のコポリマー、アクリル酸エステル類とアクリル酸エステル類のコポリマー、アクリル酸エステル類とメタクリル酸エステル類のコポリマー、アクリル酸エステル類と前記以外のモノマーのコポリマー等が挙げられる。前記アクリル酸エステル類と前記以外のモノマーのコポリマーとしては、アクリル酸エステル類と下記式(I)で表わされるモノマーのコポリマーが好ましい。
【0011】
【化1】
【0012】
前記式(I)において、R1、R2、R3およびR4は、互いに独立して、水素原子、ハロゲン原子、カルバモイル基、シアノ基、低級アルキル基、ビニルオキシ基、アリール基またはハロゲン原子で置換されたアリール基であるか、または、
R1とR3は、R1とR3が結合している二重結合と一緒になって、2,5−ジヒドロフラン−2,5−ジオンを形成し、かつ、
R2とR3は、互いに独立して、水素原子、ハロゲン原子、カルバモイル基、シアノ基、低級アルキル基、ビニルオキシ基、アリール基またはハロゲン原子で置換されたアリール基である。
【0013】
前記メタクリル酸エステル類のホモポリマーとしては、例えば、メタクリル酸とアリール基、ヒドロキシ基、カルボキシル基およびハロゲン原子からなる群から選択される1以上を含んでもよい炭素数1〜6の低級アルキルアルコールとのエステル類のホモポリマー、および、メタクリル酸と炭素数2〜6のエポキシ低級アルキルアルコールとのエステル類のホモポリマーが挙げられる。前記メタクリル酸とアリール基、ヒドロキシ基、カルボキシル基およびハロゲン原子からなる群から選択される1以上を含んでもよい炭素数1〜6の低級アルキルアルコールとのエステル類のホモポリマーとしては、ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸エチル、ポリメタクリル酸ブチル、ポリメタクリル酸t-ブチル、ポリメタクリル酸ベンジル、ポリメタクリル酸2−ヒドロキシエチル等が挙げられ、前記メタクリル酸と炭素数2〜6のエポキシ低級アルキルアルコールとのエステル類のホモポリマーとしては、例えば、ポリメタクリル酸グリシジル等が挙げられる。
【0014】
前記メタクリル酸エステル類を含むコポリマーとしては、例えば、メタクリル酸エステル類とアクリル酸のコポリマー、メタクリル酸エステル類とメタクリル酸のコポリマー、メタクリル酸エステル類とアクリル酸エステル類のコポリマー、メタクリル酸エステル類とメタクリル酸エステル類のコポリマー、メタクリル酸エステル類と前記以外のモノマーのコポリマー等が挙げられる。前記メタクリル酸エステル類と前記以外のモノマーのコポリマーとしては、メタクリル酸エステル類と前記式(I)で表わされるモノマーのコポリマーが好ましい。
【0015】
前記アクリル酸エステル類とアクリル酸のコポリマーとしては、例えば、アクリル酸とアリール基、ヒドロキシ基、カルボキシル基およびハロゲン原子からなる群から選択される1以上を含んでもよい炭素数1〜6の低級アルキルアルコールとのエステル類と、アクリル酸のコポリマー;および、アクリル酸と炭素数2〜6のエポキシ低級アルキルアルコールとのエステル類と、アクリル酸のコポリマーが挙げられる。前記アクリル酸とアリール基、ヒドロキシ基、カルボキシル基およびハロゲン原子からなる群から選択される1以上を含んでもよい炭素数1〜6の低級アルキルアルコールとのエステル類と、アクリル酸のコポリマーとしては、例えば、アクリル酸メチルとアクリル酸のコポリマー、アクリル酸エチルとアクリル酸のコポリマー、アクリル酸ブチルとアクリル酸のコポリマー、アクリル酸t−ブチルとアクリル酸のコポリマー、アクリル酸ベンジルとアクリル酸のコポリマー等が挙げられ、前記アクリル酸と炭素数2〜6のエポキシ低級アルキルアルコールとのエステル類と、アクリル酸のコポリマーとしては、例えば、アクリル酸グリシジルとアクリル酸のコポリマー等が挙げられる。
【0016】
前記アクリル酸エステル類とメタクリル酸のコポリマーとしては、例えば、アクリル酸とアリール基、ヒドロキシ基、カルボキシル基およびハロゲン原子からなる群から選択される1以上を含んでもよい炭素数1〜6の低級アルキルアルコールとのエステル類と、メタクリル酸のコポリマー;および、アクリル酸と炭素数2〜6のエポキシ低級アルキルアルコールとのエステル類と、メタクリル酸のコポリマーが挙げられる。前記アクリル酸とアリール基、ヒドロキシ基、カルボキシル基およびハロゲン原子からなる群から選択される1以上を含んでもよい炭素数1〜6の低級アルキルアルコールとのエステル類と、メタクリル酸のコポリマーとしては、例えば、アクリル酸メチルとメタクリル酸のコポリマー、アクリル酸エチルとメタクリル酸のコポリマー、アクリル酸ブチルとメタクリル酸のコポリマー、アクリル酸t−ブチルとメタクリル酸のコポリマー、アクリル酸ベンジルとメタクリル酸のコポリマー等が挙げられ、前記アクリル酸と炭素数2〜6のエポキシ低級アルキルアルコールとのエステル類と、メタクリル酸のコポリマーとしては、例えばアクリル酸グリシジルとメタクリル酸のコポリマー等が挙げられる。
【0017】
前記アクリル酸エステル類とアクリル酸エステル類のコポリマーとしては、例えば、アクリル酸とアリール基、ヒドロキシ基、カルボキシル基およびハロゲン原子からなる群から選択される1以上を含んでもよい炭素数1〜6の低級アルキルアルコールとのエステル類と、アクリル酸とアリール基、ヒドロキシ基、カルボキシル基およびハロゲン原子からなる群から選択される1以上を含んでもよい炭素数1〜6の低級アルキルアルコールとの別のエステル類のコポリマー;およびアクリル酸とアリール基、ヒドロキシ基、カルボキシル基およびハロゲン原子からなる群から選択される1以上を含んでもよい炭素数1〜6の低級アルキルアルコールとのエステル類と、アクリル酸と炭素数2〜6のエポキシ低級アルキルアルコールとのエステル類のコポリマー;およびアクリル酸と炭素数2〜6のエポキシ低級アルキルアルコールとのエステル類と、アクリル酸と炭素数2〜6のエポキシ低級アルキルアルコールとの別のエステル類が挙げられる。前記アクリル酸とアリール基、ヒドロキシ基、カルボキシル基およびハロゲン原子からなる群から選択される1以上を含んでもよい炭素数1〜6の低級アルキルアルコールとのエステル類と、アクリル酸とアリール基、ヒドロキシ基、カルボキシル基およびハロゲン原子からなる群から選択される1以上を含んでもよい炭素数1〜6の低級アルキルアルコールとの別のエステル類のコポリマーとしては、例えば、アクリル酸メチルとアクリル酸エチルのコポリマー、アクリル酸メチルとアクリル酸ブチルのコポリマー、アクリル酸メチルとアクリル酸t−ブチルのコポリマー、アクリル酸メチルとアクリル酸ベンジルのコポリマー等が挙げられ、前記アクリル酸とアリール基、ヒドロキシ基、カルボキシル基およびハロゲン原子からなる群から選択される1以上を含んでもよい炭素数1〜6の低級アルキルアルコールとのエステル類と、アクリル酸と炭素数2〜6のエポキシ低級アルキルアルコールとのエステル類のコポリマーとしては、例えば、アクリル酸メチルとアクリル酸グリシジルのコポリマー等が挙げられる。
【0018】
前記アクリル酸エステル類とメタクリル酸エステル類のコポリマーとしては、例えば、アクリル酸とアリール基、ヒドロキシ基、カルボキシル基およびハロゲン原子からなる群から選択される1以上を含んでもよい炭素数1〜6の低級アルキルアルコールとのエステル類と、メタクリル酸とアリール基、ヒドロキシ基、カルボキシル基およびハロゲン原子からなる群から選択される1以上を含んでもよい炭素数1〜6の低級アルキルアルコールとのエステル類のコポリマー;
アクリル酸と炭素数2〜6のエポキシ低級アルキルアルコールとのエステル類と、メタクリル酸とアリール基、ヒドロキシ基、カルボキシル基およびハロゲン原子からなる群から選択される1以上を含んでもよい炭素数1〜6の低級アルキルアルコールとのエステル類のコポリマー;
アクリル酸とアリール基、ヒドロキシ基、カルボキシル基およびハロゲン原子からなる群から選択される1以上を含んでもよい炭素数1〜6の低級アルキルアルコールとのエステル類と、メタクリル酸と炭素数2〜6のエポキシ低級アルキルアルコールとのエステル類のコポリマー;および
アクリル酸と炭素数2〜6のエポキシ低級アルキルアルコールとのエステル類と、メタクリル酸と炭素数2〜6のエポキシ低級アルキルアルコールとのエステル類のコポリマー;が挙げられる。
【0019】
前記アクリル酸とアリール基、ヒドロキシ基、カルボキシル基およびハロゲン原子からなる群から選択される1以上を含んでもよい炭素数1〜6の低級アルキルアルコールとのエステル類と、メタクリル酸とアリール基、ヒドロキシ基、カルボキシル基およびハロゲン原子からなる群から選択される1以上を含んでもよい炭素数1〜6の低級アルキルアルコールとのエステル類のコポリマーとしては、例えば、アクリル酸メチルとメタクリル酸メチルのコポリマー、アクリル酸メチルとメタクリル酸エチルのコポリマー、アクリル酸メチルとメタクリル酸ブチルのコポリマー、アクリル酸メチルとメタクリル酸t−ブチルのコポリマー、アクリル酸メチルとメタクリル酸ベンジルのコポリマー等があげられる。前記アクリル酸とアリール基、ヒドロキシ基、カルボキシル基およびハロゲン原子からなる群から選択される1以上を含んでもよい炭素数1〜6の低級アルキルアルコールとのエステル類と、メタクリル酸と炭素数2〜6のエポキシ低級アルキルアルコールとのエステル類のコポリマーとしては、例えば、アクリル酸メチルとメタクリル酸グリシジルのコポリマー等が挙げられる。
【0020】
前記アクリル酸エステル類と前記以外のモノマーのコポリマーとしては、例えば、前記アクリル酸エステル類と前記式(I)で表わされるモノマーとのコポリマーが挙げられる。前記アクリル酸エステル類と前記式(I)で表わされるモノマーとのコポリマーとしては、例えば、アクリル酸とアリール基、ヒドロキシ基、カルボキシル基およびハロゲン原子からなる群から選択される1以上を含んでもよい炭素数1〜6の低級アルキルアルコールとのエステル類と、式(I)で表わされるモノマーのコポリマー;およびアクリル酸と炭素数2〜6のエポキシ低級アルキルアルコールとのエステル類と、式(I)で表わされるモノマーのコポリマーが挙げられる。
【0021】
前記アクリル酸とアリール基、ヒドロキシ基、カルボキシル基およびハロゲン原子からなる群から選択される1以上を含んでもよい炭素数1〜6の低級アルキルアルコールとのエステル類と、式(I)で表わされるモノマーのコポリマーとしては、例えば、アクリル酸メチルと無水マレイン酸のコポリマー、アクリル酸エチルと塩化ビニルのコポリマー、アクリル酸ブチルとビニルエーテルのコポリマー、アクリル酸t−ブチルと無水マレイン酸のコポリマー、アクリル酸ベンジルと塩化ビニルのコポリマー、アクリル酸メチルとスチレンのコポリマー、アクリル酸メチルとアクリロニトリルのコポリマー、アクリル酸メチルとアクリルアミドのコポリマー等が挙げられる。前記アクリル酸と炭素数2〜6のエポキシ低級アルキルアルコールとのエステル類と、式(I)で表わされるモノマーのコポリマーとしては、例えば、アクリル酸グリシジルとビニルエーテルのコポリマー等が挙げられる。
【0022】
前記メタクリル酸エステル類とアクリル酸のコポリマーとしては、例えば、メタクリル酸とアリール基、ヒドロキシ基、カルボキシル基およびハロゲン原子からなる群から選択される1以上を含んでもよい炭素数1〜6の低級アルキルアルコールとのエステル類と、アクリル酸のコポリマー;および、メタクリル酸と炭素数2〜6のエポキシ低級アルキルアルコールとのエステル類と、アクリル酸のコポリマーが挙げられる。前記メタクリル酸とアリール基、ヒドロキシ基、カルボキシル基およびハロゲン原子からなる群から選択される1以上を含んでもよい炭素数1〜6の低級アルキルアルコールとのエステル類と、アクリル酸のコポリマーとしては、例えば、メタクリル酸メチルとアクリル酸のコポリマー、メタクリル酸エチルとアクリル酸のコポリマー、メタクリル酸ブチルとアクリル酸のコポリマー、メタクリル酸t−ブチルとアクリル酸のコポリマー、メタクリル酸ベンジルとアクリル酸のコポリマー等が挙げられる。前記メタクリル酸と炭素数2〜6のエポキシ低級アルキルアルコールとのエステル類と、アクリル酸のコポリマーとしては、例えば、メタクリル酸グリシジルとアクリル酸のコポリマー等が挙げられる。
【0023】
前記メタクリル酸エステル類とメタクリル酸のコポリマーとしては、例えば、メタクリル酸とアリール基、ヒドロキシ基、カルボキシル基およびハロゲン原子からなる群から選択される1以上を含んでもよい炭素数1〜6の低級アルキルアルコールとのエステル類と、メタクリル酸のコポリマー;および、メタクリル酸と炭素数2〜6のエポキシ低級アルキルアルコールとのエステル類と、メタクリル酸のコポリマーが挙げられる。前記メタクリル酸とアリール基、ヒドロキシ基、カルボキシル基およびハロゲン原子からなる群から選択される1以上を含んでもよい炭素数1〜6の低級アルキルアルコールとのエステル類と、メタクリル酸のコポリマーとしては、例えば、メタクリル酸メチルとメタクリル酸のコポリマー、メタクリル酸エチルとメタクリル酸のコポリマー、メタクリル酸ブチルとメタクリル酸のコポリマー、メタクリル酸t−ブチルとメタクリル酸のコポリマー、メタクリル酸ベンジルとメタクリル酸のコポリマー等が挙げられる。前記メタクリル酸と炭素数2〜6のエポキシ低級アルキルアルコールとのエステル類と、メタクリル酸のコポリマーとしては、例えば、メタクリル酸グリシジルとメタクリル酸のコポリマー等が挙げられる。
【0024】
前記メタクリル酸エステル類とメタクリル酸エステル類のコポリマーとしては、例えば、メタクリル酸とアリール基、ヒドロキシ基、カルボキシル基およびハロゲン原子からなる群から選択される1以上を含んでもよい炭素数1〜6の低級アルキルアルコールとのエステル類と、メタクリル酸とアリール基、ヒドロキシ基、カルボキシル基およびハロゲン原子からなる群から選択される1以上を含んでもよい炭素数1〜6の低級アルキルアルコールとの別のエステル類のコポリマー;
メタクリル酸と炭素数2〜6のエポキシ低級アルキルアルコールとのエステル類と、メタクリル酸とアリール基、ヒドロキシ基、カルボキシル基およびハロゲン原子からなる群から選択される1以上を含んでもよい炭素数1〜6の低級アルキルアルコールとのエステル類のコポリマー;および
メタクリル酸と炭素数2〜6のエポキシ低級アルキルアルコールとのエステル類と、メタクリル酸と炭素数2〜6のエポキシ低級アルキルアルコールとの別のエステル類のコポリマー;が挙げられる。
【0025】
前記メタクリル酸とアリール基、ヒドロキシ基、カルボキシル基およびハロゲン原子からなる群から選択される1以上を含んでもよい炭素数1〜6の低級アルキルアルコールとのエステル類と、メタクリル酸とアリール基、ヒドロキシ基、カルボキシル基およびハロゲン原子からなる群から選択される1以上を含んでもよい炭素数1〜6の低級アルキルアルコールとの別のエステル類のコポリマーとしては、例えば、メタクリル酸メチルとメタクリル酸エチルのコポリマー、メタクリル酸メチルとメタクリル酸ブチルのコポリマー、メタクリル酸ブチルとメタクリル酸ベンジルのコポリマー等が挙げられる。前記メタクリル酸とアリール基、ヒドロキシ基、カルボキシル基およびハロゲン原子からなる群から選択される1以上を含んでもよい炭素数1〜6の低級アルキルアルコールとのエステル類と、メタクリル酸と炭素数2〜6のエポキシ低級アルキルアルコールとのエステル類のコポリマーとしては、例えば、メタクリル酸メチルとメタクリル酸グリシジルのコポリマー等が挙げられる。
【0026】
前記メタクリル酸エステル類と前記式(I)で表わされるモノマーのコポリマーとしては、例えば、メタクリル酸とアリール基、ヒドロキシ基、カルボキシル基およびハロゲン原子からなる群から選択される1以上を含んでもよい炭素数1〜6の低級アルキルアルコールとのエステル類と、式(I)で表わされるモノマーのコポリマー;およびメタクリル酸と炭素数2〜6のエポキシ低級アルキルアルコールとのエステル類と、式(I)で表わされるモノマーのコポリマーが挙げられる。
【0027】
前記メタクリル酸とアリール基、ヒドロキシ基、カルボキシル基およびハロゲン原子からなる群から選択される1以上を含んでもよい炭素数1〜6の低級アルキルアルコールとのエステル類と、式(I)で表わされるモノマーのコポリマーとしては、例えば、メタクリル酸メチルと無水マレイン酸のコポリマー、メタクリル酸エチルと塩化ビニルのコポリマー、メタクリル酸ブチルとビニルエーテルのコポリマー、メタクリル酸t−ブチルと無水マレイン酸のコポリマー、メタクリル酸ベンジルと塩化ビニルのコポリマー、メタクリル酸メチルとスチレンのコポリマー、メタクリル酸メチルとアクリロニトリルのコポリマー、メタクリル酸メチルとアクリルアミドのコポリマー、メタクリル酸メチルと4−クロロメチルスチレンのコポリマー等が挙げられる。前記メタクリル酸と炭素数2〜6のエポキシ低級アルキルアルコールとのエステル類と、式(I)で表わされるモノマーのコポリマーとしては、例えば、メタクリル酸グリシジルとビニルエーテルのコポリマー等が挙げられる。
【0028】
前記乳酸を含むコポリマーとしては、例えば、乳酸モノマーまたはラクチドと共重合可能な他のモノマーとが共重合されたポリマーである。他のモノマーとしては、ジカルボン酸、多価カルボン酸、グリコール、多価アルコール、ヒドロキシカルボン酸、ラクトン等である。前記乳酸を含むコポリマーとしては、例えば、乳酸とヒドロキシカルボン酸とのコポリマー(例えば、乳酸とグリコール酸とのコポリマー)、乳酸とラクトンとのコポリマー等が挙げられる。
【0029】
なお、前記ポリマーが、アクリル酸エステル類のホモポリマー、アクリル酸エステル類を含むコポリマー、メタクリル酸エステル類のホモポリマー、またはメタクリル酸エステル類を含むコポリマーの場合、これらのポリマーを製造する際の重合法は、限定されず、例えば、ラジカル重合、イオン重合等であってもよい。また、前記ポリマーが、乳酸のホモポリマーまたは乳酸を含むコポリマーである場合、これらのポリマーを製造する際の重合方法は、例えば乳酸の重縮合、ラクチドの開環重合等であってもよい。また、前記ポリマーがコポリマーの場合、モノマー組成比は限定されない。前記ポリマーのモノマー配列はランダム、ブロック等であってもよい。さらに、前記ポリマーの分子量は限定されないが、例えば、数平均分子量は1,000〜100,000,000であり、好ましくは2,000〜50,000,000であり、より好ましくは3,000〜20,000,000である。また、例えば、重量平均分子量は1,000〜150,000,000であり、好ましくは2,000〜80,000,000であり、より好ましくは3,000〜40,000,000である。
【0030】
前記液体は、前記のとおり、前記ポリマーを膨潤可能な液体である。本願において膨潤とは、ポリマー分子間に液体分子が入りこむ状態を言う。具体的には、ある温度における膨潤の度合いは、以下に示す方法で膨潤率で表わすことができる。
【0031】
[膨潤率]
フィルム状のポリマー(重量:W0)を試験管に入れ、このポリマーが浸漬する程度にある温度の液体をそこへ加え、放置する。その後、試験管からフィルム状のポリマーを引き上げ、ポリマー表面の液体をキムワイプ(登録商標、キンバリー・クラーク社)でふき取り、そのポリマーの重量を秤量する(W1)。次式によりポリマーの液体に対する膨潤率を計算する。
膨潤率(%)=[(W1−W0)/W0]×100
【0032】
本発明の方法において、ポリマーの液体に対する膨潤率が好ましくは0.1〜200%、より好ましくは0.1〜70%である。
【0033】
また、膨潤の際に一部ポリマーが溶出する場合がある。具体的には、ある温度における溶出の度合いは、以下に示す方法で溶出率で表わすことができる。
[溶出率]
ポリマー(重量:W0)を試験管に入れ、このポリマーが浸漬する程度に液体をそこへ加え、放置する。その後、試験管からフィルム状のポリマーを引き上げ、ポリマー表面の液体をキムワイプ(登録商標)でふき取り、減圧乾燥させる。乾燥後のポリマーの重量を秤量する(W2)。次式によりポリマーの溶出率を計算する。
溶出率(%)=[(W0−W2/W0)]×100
【0034】
本発明の方法において、ポリマーの液体に対する溶出率が好ましくは0.1〜50%、より好ましくは0.1〜30%である。
【0035】
前記ポリマーが、アクリル酸エステル類のホモポリマー、アクリル酸エステル類を含むコポリマー、メタクリル酸エステル類のホモポリマーおよびメタクリル酸エステル類を含むコポリマーからなる群から選択される1以上である場合、前記液体は、脂肪族アルコールと水の混合物であるのが好ましい。また、この場合、前記液体は、例えば、液体に対するポリマーの膨潤率が0.1〜100%、好ましくは0. 1〜40%である液体である。脂肪族アルコールと水の混合物に対するポリマーの膨潤率が0.1%以上5%未満の場合、加工されたポリマーの透過度は好ましくは30%より大きく90%以下である。もしくは、脂肪族アルコールと水の混合物に対するポリマーの溶出率が0.1%以上7%未満の場合、加工されたポリマーの透過度は好ましくは30%より大きく90%以下である。また、脂肪族アルコールと水の混合物に対するポリマーの膨潤率が5%以上40%以下の場合、加工されたポリマーの透過度は好ましくは0%以上30%以下である。もしくは、脂肪族アルコールと水の混合物に対するポリマーの溶出率が7%以上25%以下の場合、加工されたポリマーの透過度は好ましくは0%以上30%以下である。
【0036】
前記脂肪族アルコールとしては、例えば、水酸基を1以上有する炭素原子数が1〜8の脂肪族炭化水素を含む脂肪族アルコール、好ましくは水酸基を1〜3有する炭素原子数が1〜6の脂肪族炭化水素を含む脂肪族アルコール、より好ましくは水酸基を1有する炭素原子数が1〜3の脂肪族炭化水素を含む脂肪族アルコールが挙げられる。具体的には、前記脂肪族アルコールとしては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノール、n−ブタノール、2−ブタノール、i−ブタノール、t−ブタノール、n−ペンタノール、t−アミルアルコール、n−ヘキサノール、2−エチルヘキサノール、n−オクタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、2−エトキシエタノール、2−メトキシエタノール等が挙げられる。
【0037】
前記液体としては、例えば、脂肪族アルコールと水とを含み、好ましくは水酸基を1以上有する炭素原子数が1〜8の脂肪族炭化水素を含む脂肪族アルコールと水とを含み、より好ましくは水酸基を1〜3有する炭素原子数が1〜6の脂肪族炭化水素を含む脂肪族アルコールと水とを含み、さらに好ましくはエタノールまたはiープロパノールと水とを含む。具体的には、例えば、前記ポリマーがポリメタクリル酸メチルの場合、前記液体としては、エタノールと水とを含む混合物、i−プロパノールと水を含む混合物等が挙げられる。また、例えば、前記ポリマーとしてメタクリル酸メチルとメタクリル酸グリシジルのコポリマーの場合、前記液体としては、エタノールと水とを含む混合物、i−プロパノールと水とを含む混合物等が挙げられる。
【0038】
前記液体に含まれる脂肪族アルコールと水との割合は、ポリマーを膨潤可能であれば、特に限定されない。前記脂肪族アルコール/(水+脂肪族アルコール)の割合は、例えば30〜99%、好ましくは50〜97%、より好ましくは60〜95%であってもよい。具体的には、前記ポリマーがポリメタクリル酸メチルの場合、前記脂肪族アルコール/(水+脂肪族アルコール)の割合は、エタノールと水とを含む液体の場合、例えば60〜97%、好ましくは70〜95%、より好ましくは75〜90%である。また、前記ポリマーがポリメタクリル酸メチルの場合、前記脂肪族アルコール/(水+脂肪族アルコール)の割合は、i−プロパノールと水とを含む液体の場合、例えば30〜99%、好ましくは50〜97%、より好ましくは60〜95%である。また、前記ポリマーがメタクリル酸メチルとメタクリル酸グリシジルのコポリマーの場合、前記脂肪族アルコール/(水+脂肪族アルコール)の割合は、エタノールと水とを含む液体の場合、例えば60〜95%、好ましくは70〜92%、より好ましくは75〜90%である。
【0039】
前記ポリマーが、乳酸のホモポリマーおよび乳酸を含むコポリマーからなる群から選択される1以上である場合、前記液体は、液体に対するポリマーの膨潤率が0.1〜100%、好ましくは0. 1〜70%である液体である。前記液体に対するポリマーの膨潤率が0.1%以上15%未満の場合、加工されたポリマーの透過度は好ましくは20%より大きく95%以下である。もしくは、前記液体に対するポリマーの溶出率が0.1%以上5%未満の場合、加工されたポリマーの透過度は好ましくは20%より大きく95%以下である。また、前記液体に対するポリマーの膨潤率が15%以上70%以下の場合、加工されたポリマーの透過度は好ましくは0%以上20%以下である。もしくは、前記液体に対するポリマーの溶出率が5%以上15%以下の場合、加工されたポリマーの透過度は好ましくは0%以上20%以下である。具体的には、前記ポリマーが乳酸のホモポリマーである場合、前記液体としては、より好ましくは、トルエン、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、アセトン、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミドおよびアセトニトリルからなる群から選択される1以上である。また、前記ポリマーが乳酸のコポリマーである場合、前記液体としては、より好ましくはトルエン、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、アセトン、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミドおよびアセトニトリル、脂肪族アルコール、水からなる群から選択される1以上であり、さらに好ましくは水酸基を1以上有する炭素原子数が1〜8の脂肪族炭化水素を含む脂肪族アルコールと水とを含む。
【0040】
本発明は、まず、このようなポリマーを液体と接触させる。接触は、ポリマーに液体を塗布、噴霧等してもよく、液体にポリマーを浸漬させてもよい。
【0041】
次いで、本発明では、ポリマーから液体を除去する。除去は、ポリマーを常温常圧で乾燥させてもよいし、デシケーター中乾燥剤を用いて乾燥させてもよいし、減圧下に乾燥させてもよい。
【0042】
本発明の方法は、以下のようなメカニズムでポリマー表面の加工が可能になると考えている。まず、ポリマーを液体と接触させることにより、ポリマーの表面に存在するポリマー分子間に液体分子を浸透させる。ポリマーが溶媒で膨潤することによりポリマー分子が動きやすくなり、微細な表面構造が形成する。その後、膨潤部分から液体を除去する。その結果、ポリマー表面を加工することが可能なのである。
【0043】
これらの工程を含むことにより、本発明のポリマーの表面は加工される。具体的には、液体に対するポリマーの膨潤率が高い場合、ポリマーの透明性は低下し、かつ、ポリマーの表面の接触角が著しく増加する。例えば、前記ポリマーがアクリル酸エステル類のホモポリマー、アクリル酸エステル類を含むコポリマー、メタクリル酸エステル類のホモポリマーおよびメタクリル酸エステル類を含むコポリマーからなる群から選択される1以上である場合は、以下のとおりである。液体に対するポリマーの膨潤率が5%以上40%以下の場合、もしくは、ポリマーの溶出率が7%以上25%以下の場合、加工されたポリマーの透過度は0.1%以上30%以下となり、ポリマーの表面の接触角が30°以上60°以下増加する。また、液体に対するポリマーの膨潤率が5%以上35%以下の場合、もしくは、ポリマーの溶出率が7%以上20%以下の場合、加工されたポリマーの透過度は0.1%以上15%以下となり、ポリマーの表面の接触角が35°以上60°以下増加するのが好ましい。
【0044】
液体に対するポリマーの膨潤率が高い別の例として、前記ポリマーが、乳酸のホモポリマーおよび乳酸を含むコポリマーからなる群から選択される1以上である場合は、以下のとおりである。前記液体に対するポリマーの膨潤率が15%以上70%以下の場合、加工されたポリマーの透過度は0%以上20%以下、かつ、ポリマーの表面の接触角が30°以上90°以下増加する。また、液体に対するポリマーの溶出率が5%以上15%以下の場合、加工ポリマーの透過率は0%以上20%以下になり、かつ、ポリマーの表面の接触角が30°以上90°以下増加する。また、液体に対するポリマーの膨潤率が15%以上65%以下の場合、もしくは、ポリマーの溶出率が5%以上10%以下の場合、加工されたポリマーの透過度は0%以上10%以下となり、ポリマーの表面の接触角が40°以上70°以下増加するのが好ましい。
【0045】
また、液体に対するポリマーの膨潤率が低い場合、ポリマーの透明性はほぼ維持され、かつ、ポリマーの表面の接触角はわずかに増加する。例えば、前記ポリマーがアクリル酸エステル類のホモポリマー、アクリル酸エステル類を含むコポリマー、メタクリル酸エステル類のホモポリマーおよびメタクリル酸エステル類を含むコポリマーからなる群から選択される1以上である場合は、以下のとおりである。液体に対するポリマーの膨潤率が0.1%以上5%未満の場合、加工ポリマーの透過率は30%より大きく90%以下になり、かつ、ポリマーの表面の接触角が0.1°以上30°未満増加する。また、液体に対するポリマーの溶出率が0.1%以上7%未満の場合、加工ポリマーの透過率は30%より大きく90%以下になり、かつ、ポリマーの表面の接触角が0.1°以上30°以下増加する。また、液体に対するポリマーの膨潤率が0.1%以上3%以下の場合、もしくは、ポリマーの溶出率が0.5%以上7%未満の場合、加工されたポリマーの透過度は50%以上85%以下となり、ポリマーの表面の接触角が1°以上25°以下増加するのが好ましい。
【0046】
液体に対するポリマーの膨潤率が低い別の例として、例えば、前記ポリマーが、乳酸のホモポリマーおよび乳酸を含むコポリマーからなる群から選択される1以上である場合は、以下のとおりである。前記液体に対するポリマーの膨潤率が0.1%以上15%未満の場合、加工されたポリマーの透過度は20%より大きく95%以下になり、かつ接触角が1°以上30°未満増加する。また、液体に対するポリマーの溶出率が0.1%以上5%未満の場合、加工ポリマーの透過率は20%より大きく95%以下になり、かつ、ポリマーの表面の接触角が1°以上30°未満増加する。また、液体に対するポリマーの膨潤率が1%以上12%以下の場合、もしくは、ポリマーの溶出率が1%以上5%未満の場合、加工されたポリマーの透過度は40%以上75%以下となり、ポリマーの表面の接触角が1°以上10°以下増加するのが好ましい。
【0047】
また、本発明は、表面が加工されたポリマーの製造方法であって、前記方法は、前記ポリマーを液体と接触させ、その後、前記ポリマーから液体を除去することにより前記ポリマーの表面を加工する工程を含み、前記ポリマーが、アクリル酸エステル類のホモポリマー、アクリル酸エステル類を含むコポリマー、メタクリル酸エステル類のホモポリマー、メタクリル酸エステル類を含むコポリマー、乳酸のホモポリマーおよび乳酸を含むコポリマーからなる群から選択される1以上であり、前記液体が、前記ポリマーを膨潤可能である。前記ポリマー、前記液体の種類等については、前記の通りである。
【0048】
前記のようにして得られた表面加工されたポリマーは、前記のように透明性が低下し、かつ表面の接触角が著しく増加するか、透明性がほぼ維持され、かつ表面の接触角がわずかに増加している。従って、このような表面加工されたポリマーは、例えば分離材、メディカル材料、電池用セパレータ、多孔質絶縁材料、通気・透湿防水性材料、抗菌性多孔質材料、消臭・脱臭シート、吸着剤、細胞培養用足場等として、用いることができる。
【0049】
以下に本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明の範囲は、以下の実施例により限定されない。
本明細書の記載において、以下の略語を使用する。
MMA:メタクリル酸メチル、ナカライテスク株式会社製
PMMA:ポリメタクリル酸メチル、ナカライテスク株式会社製およびアルドリッチ社製
GMA:メタクリル酸グリシジル、ナカライテスク株式会社製
PLLA:ポリ乳酸、ネイチャーワークス社製
PLGA:ポリ(乳酸/グリコール酸共重合体)、アルドリッチ社製
SDS:ドデシル硫酸ナトリウム、アルドリッチ社製
【0050】
本明細書において、測定機器は以下の機器を用いた。
SEM:日立S−3000N
接触角:協和界面科学DM300
透過度:日立U-2810
GPC:分子量はポリスチレン換算分子量である。測定装置としては、TOSOH DP-8020 pump、TOSOH RI-8020 RI detector、TOSOH SD-8020 degasser、TOSOH CO-8020 Column oven、TOSOH AS-8020 autosamplerで構成されており、TOSOH TSK gel GMH-MとTOSOH TSK gel GMH-Nの2つのカラムをつなぎ、40℃で、移動層にクロロホルムを用いた。
【0051】
本明細書において膨張率は以下のようにして測定した。フィルム状のポリマー(重量:W0)を試験管に入れ、このポリマーが浸漬する程度に液体をそこへ加え、15分間(PMMAの場合)、5分間(P(MMA/GMA)の場合)、30分間(PLLAの場合)、60分間(PLGAの場合)放置する。その後、試験管からフィルム状のポリマーを引き上げ、ポリマー表面の液体をキムワイプ(登録商標)でふき取り、そのポリマーの重量を秤量する(W1)。次式によりポリマーの液体に対する膨潤率を計算する。
膨潤率(%)=[(W1−W0)/W0]×100
【0052】
本明細書において溶出率は以下のようにして測定した。フィルム状のポリマー(重量:W0)を試験管に入れ、このポリマーが浸漬する程度に液体をそこへ加え、15分間(PMMAの場合)、5分間(P(MMA/GMA)の場合)、30分間(PLLAの場合)、60分間(PLGAの場合)放置する。その後、試験管からフィルム状のポリマーを引き上げ、ポリマー表面の液体をキムワイプ(登録商標)でふき取り、40℃で24時間、減圧乾燥させる。乾燥後のポリマーの重量を秤量する(W2)。次式によりポリマーの溶出率を計算する。
溶出率(%)=[(W0−W2/W0)]×100
【0053】
(参考例1)P(MMA/GMA)コポリマーの製造
MMA(14.7g、147ミリモル)とGMA(5.2g、37ミリモル)とを、トルエン(40mL)中に室温で溶解し、得られた溶液に開始剤としてAIBN(アゾビスイソブチロニトリル、20mg)を加えた。前記溶液を窒素雰囲気下60℃で24時間加熱攪拌してP(MMA/GMA)を得た。得られたP(MMA/GMA)の重量平均分子量は、30万であった。
【0054】
[実施例1]
PMMA(シート状、分子量6万)を直径14mmの円形状に切断した。そのPMMAを3%SDS水溶液中で5分間超音波を用いて洗浄した。PMMAと40℃の液体(水とエタノールの混合物、水:エタノール=2:8)とをサンプル管に入れた。その状態で2分、15分および30分間維持した後、PMMAをサンプル管から取り出して、常温常圧で乾燥した。得られた加工PMMAのSEM写真を、図1に示す。図1(a)は未処理のPMMA(比較例1)、図1(b)は2分間処理したPMMA、図1(c)は15分間処理したPMMAおよび図1(d)は30分間処理したPMMAのSEM写真である。また、得られた加工PMMAおよび未処理のPMMA(比較例1)の透過度および表面の接触角は表1に示す。
【0055】
【表1】
【0056】
図1および表1に示すように、実施例1の結果から、本発明のポリマーの表面加工方法により、ポリマーの表面の接触角を著しく増加させ、表面を加工できることを確認できた。
【0057】
[実施例2]
PMMA(シート状、分子量40万)を直径14mmの円形状に切断した。そのPMMAを3%SDS水溶液中で5分間超音波を用いて洗浄した。PMMAと60℃の液体(水とエタノールの混合物、水:エタノール=2:8)とをサンプル管に入れた。その状態で15分間維持した後、PMMAをサンプル管から取り出して、常温常圧で乾燥した。得られた加工PMMAのSEM写真を、図2に示す。また、得られた加工PMMAの透過度および表面の接触角は表2に示す。
【0058】
[実施例3]
PMMA(シート状、分子量40万)の代わりにPMMA(シート状、分子量60万)を用いた以外は実施例2と同様にして加工PMMAを得た。得られた加工PMMAのSEM写真を、図3に示す。また、得られた加工PMMAの透過度および表面の接触角は表2に示す。
【0059】
【表2】
【0060】
図2および3、ならびに表2に示すように、実施例2および3の結果から、本発明の表面加工方法により、ポリマーの表面の接触角を著しく増加させ、表面を加工できることを確認できた。
【0061】
[実施例4〜6]
PMMAの分子量と液体の種類を表3に示すように種々変化させ、処理温度を40℃にした以外は実施例3と同様にして加工PMMAを得た。得られた加工PMMAのSEM写真を図4に示す。図4(a)は実施例4のPMMA、図4(b)は実施例5のPMMA、図4(c)は実施例6のPMMAのSEM写真である。また、得られた加工PMMAの透過度および表面の接触角は表4に示す。
【0062】
【表3】
【0063】
【表4】
【0064】
図4ならびに表3および表4に示すように、実施例4〜6の結果から、本発明の表面加工方法により、ポリマーの表面の接触角をわずかに増加させ、かつ、透明度を損なわずに、表面を加工できることを確認できた。
【0065】
[実施例7]
P(MMA/GMA)(参考例1で製造。シート状、分子量30万)を正方形(1cm×1cm)状に切断した。そのP(MMA/GMA)を3%SDS水溶液中で5分間超音波を用いて洗浄した。P(MMA/GMA)と60℃の液体(水とエタノールの混合物、水:エタノール=2:8)とをサンプル管に入れた。その状態で2分、5分、10分および30分間維持した後、P(MMA/GMA)をサンプル管から取り出して、常温常圧で乾燥した。得られた加工MMA/GMAのSEM写真を、図5に示す。図5(a)は未処理のP(MMA/GMA)(比較例2)、図5(b)は2分間処理したP(MMA/GMA)、図5(c)は5分間処理したP(MMA/GMA)、図5(d)は10分間処理したP(MMA/GMA)、図5(e)は30分間処理したP(MMA/GMA)のSEM写真である。また、得られた加工P(MMA/GMA)および未処理のP(MMA/GMA)(比較例2)の透過度および表面の接触角は表5に示す。
【0066】
【表5】
【0067】
図5および表5に示すように、実施例7の結果から、本発明の表面加工方法により、ポリマーの表面の接触角を著しく増加させ、表面を加工できることを確認できた。
【0068】
[実施例8]
P(MMA/GMA)(参考例1で製造。シート状、分子量30万)を正方形(1cm×1cm)状に切断した。そのP(MMA/GMA)を3%SDS水溶液中で5分間超音波を用いて洗浄した。P(MMA/GMA)と40℃の液体(水とイソプロパノールの混合物、水:イソプロパノール=1:9)とをサンプル管に入れた。その状態で5分間維持した後、P(MMA/GMA)をサンプル管から取り出して、常温常圧で乾燥した。得られた加工P(MMA/GMA)のSEM写真を、図6に示す。また、得られた加工P(MMA/GMA)および未処理のP(MMA/GMA)(比較例2)の透過度および表面の接触角は表6に示す。
【0069】
【表6】
【0070】
図6および表6に示すように、実施例8および比較例2の結果から、本発明の表面加工方法により、ポリマーの表面の接触角をわずかに増加させ、かつ、透明度を損なわずに、表面を加工できることを確認できた。
【0071】
[実施例9と比較例3]
PLLA(シート状、分子量11万)を直径14mmの円形状に切断した。そのPLLAを3%SDS水溶液中で5分間超音波を用いて洗浄した。PLLAと25℃の液体(アセトン)とをサンプル管に入れた。その状態で1分、3分、5分、10分、20分および30分間維持した後、PLLAをサンプル管から取り出して、キムワイプ(登録商標)でPLLA表面を拭き取って乾燥した。得られた加工PLLAおよび未処理のPLLA(比較例3)の透過度および表面の接触角は表7に示す。
【0072】
【表7】
【0073】
表7に示すように、実施例9および比較例3の結果から、本発明の表面加工方法により、ポリマーの表面の接触角を著しく増加させ、表面を加工できることを確認できた。
【0074】
[実施例10〜17および比較例3〜8]
液体の種類を表8に示すように種々変化させ、浸漬時間を30分にした以外は実施例9と同様にして加工PLLAを得た。得られた加工PLLAの透過度および表面の接触角は表8に示す。得られた加工PLLAのSEM写真を図7に示す。図7(a)は未処理のPLLA(比較例3)、図7(b)は実施例10のPLLA、図7(c)は実施例11のPLLA、図7(d)は実施例12のPLLA、図7(e)は実施例13のPLLA、図7(f)は実施例14のPLLA、図7(g)は実施例15のPLLA、図7(h)は実施例16のPLLAのSEM写真である。
【0075】
【表8】
【0076】
図7および表8に示すように、実施例10〜16および比較例3〜8の結果から、本発明の表面加工方法により、ポリマーの表面の接触角を著しく増加させ、表面を加工できることを確認できた。
【0077】
[実施例17]
PLLA(シート状、Mw=11万)を直径14mmの円形状に切断した。そのPLLAを3%SDS水溶液中で5分間超音波を用いて洗浄した。PLLAと25℃の液体(ジエチルエーテル)とをサンプル管に入れた。その状態で30分間維持した後、PLLAをサンプル管から取り出して、キムワイプ(登録商標)でPLLA表面を拭き取って乾燥した。得られた加工PLLAおよび未処理のPLLA(比較例3)の透過度および表面の接触角は表9に示す。得られた加工PLLAのSEM写真を図8に示す。
【0078】
【表9】
【0079】
図8および表9に示すように、実施例17および比較例3の結果から、本発明の表面加工方法により、ポリマーの表面の接触角をわずかに増加させ、かつ、透明度を損なわずに、表面を加工できることを確認できた。
【0080】
[実施例18]
PLGA(シート状、Mw=6万)を正方形(1cm×1cm)状に切断した。そのPLGAを3%SDS水溶液中で5分間超音波を用いて洗浄した。PLGAと25℃の液体(水とメタノールの混合物、水:メタノール=1:9)とをサンプル管に入れた。その状態で30分間維持した後、PLGAをサンプル管から取り出して、キムワイプ(登録商標)でPLGA表面を拭き取って乾燥した。得られた加工PLGAおよび未処理のPLGA(比較例9)の透過度および表面の接触角は表10に示す。得られた加工PLGAのSEM写真を図9に示す。
【0081】
【表10】
【0082】
図9および表10に示すように、実施例18および比較例9の結果から、本発明の表面加工方法により、ポリマーの表面の接触角をわずかに増加させ、かつ、透明度を損なわずに、表面を加工できることを確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0083】
本発明の方法は、工業製品、住宅用品、生活用品、医療材料への適用が考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】図1(a)は未処理のPMMA、図1(b)は2分間処理した加工PMMA、図1(c)は15分間処理した加工PMMAおよび図1(d)は30分間処理した加工PMMAのSEM写真である(実施例1)。
【図2】図2は実施例2の加工PMMAのSEM写真である。
【図3】図3は実施例3の加工PMMAのSEM写真である。
【図4】図4(a)は実施例4の加工PMMA、図4(b)は実施例5の加工PMMAおよび図4(c)は実施例6の加工PMMAのSEM写真である。
【図5】図5(a)は未処理のP(MMA/GMA)(比較例2)、図5(b)は2分間処理した加工P(MMA/GMA)、図5(c)は5分間処理した加工MMA/GMA、図5(d)は10分間処理した加工P(MMA/GMA)、図5(e)は30分間処理した加工P(MMA/GMA)のSEM写真である。
【図6】図6は実施例8の加工P(MMA/GMA)のSEM写真である。
【図7(a)】図7(a)は未処理のPLLA(比較例3)のSEM写真である。
【図7(b)】図7(b)は実施例10の加工PLLAのSEM写真である。
【図7(c)】図7(c)は実施例11の加工PLLAのSEM写真である。
【図7(d)】図7(d)は実施例12の加工PLLAのSEM写真である。
【図7(e)】図7(e)は実施例13の加工PLLAのSEM写真である。
【図7(f)】図7(f)は実施例14の加工PLLAのSEM写真である。
【図7(g)】図7(g)は実施例15の加工PLLAのSEM写真である。
【図7(h)】図7(h)は実施例16の加工PLLAのSEM写真である。
【図8】図8は実施例17の加工PLLAのSEM写真である。
【図9】図9は実施例18の加工PLGAのSEM写真である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマーの表面を加工する方法であって、
前記方法は、前記ポリマーを液体と接触させ、
その後、前記ポリマーから液体を除去することにより前記ポリマーの表面を加工する工程を含み、
前記ポリマーが、アクリル酸エステル類のホモポリマー、アクリル酸エステル類を含むコポリマー、メタクリル酸エステル類のホモポリマー、メタクリル酸エステル類を含むコポリマー、乳酸のホモポリマーおよび乳酸を含むコポリマーからなる群から選択される1以上であり、
前記液体が、前記ポリマーを膨潤可能である方法。
【請求項2】
前記ポリマーが、アクリル酸エステル類のホモポリマー、アクリル酸エステル類を含むコポリマー、メタクリル酸エステル類のホモポリマーおよびメタクリル酸エステル類を含むコポリマーからなる群から選択される1以上であり、前記液体が、脂肪族アルコールと水の混合物である請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ポリマーが、乳酸のホモポリマーおよび乳酸を含むコポリマーからなる群から選択される1以上である請求項1に記載の方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の方法により表面を加工されたポリマーフィルム。
【請求項5】
表面が加工されたポリマーの製造方法であって、
前記方法は、前記ポリマーを液体と接触させ、
その後、前記ポリマーから液体を除去することにより前記ポリマーの表面を加工する工程を含み、
前記ポリマーが、アクリル酸エステル類のホモポリマー、アクリル酸エステル類を含むコポリマー、メタクリル酸エステル類のホモポリマー、メタクリル酸エステル類を含むコポリマー、乳酸のホモポリマーおよび乳酸を含むコポリマーからなる群から選択される1以上であり、
前記液体が、前記ポリマーを膨潤可能である方法。
【請求項6】
請求項5に記載の製造方法により得られた表面が加工されたポリマー。
【請求項1】
ポリマーの表面を加工する方法であって、
前記方法は、前記ポリマーを液体と接触させ、
その後、前記ポリマーから液体を除去することにより前記ポリマーの表面を加工する工程を含み、
前記ポリマーが、アクリル酸エステル類のホモポリマー、アクリル酸エステル類を含むコポリマー、メタクリル酸エステル類のホモポリマー、メタクリル酸エステル類を含むコポリマー、乳酸のホモポリマーおよび乳酸を含むコポリマーからなる群から選択される1以上であり、
前記液体が、前記ポリマーを膨潤可能である方法。
【請求項2】
前記ポリマーが、アクリル酸エステル類のホモポリマー、アクリル酸エステル類を含むコポリマー、メタクリル酸エステル類のホモポリマーおよびメタクリル酸エステル類を含むコポリマーからなる群から選択される1以上であり、前記液体が、脂肪族アルコールと水の混合物である請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ポリマーが、乳酸のホモポリマーおよび乳酸を含むコポリマーからなる群から選択される1以上である請求項1に記載の方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の方法により表面を加工されたポリマーフィルム。
【請求項5】
表面が加工されたポリマーの製造方法であって、
前記方法は、前記ポリマーを液体と接触させ、
その後、前記ポリマーから液体を除去することにより前記ポリマーの表面を加工する工程を含み、
前記ポリマーが、アクリル酸エステル類のホモポリマー、アクリル酸エステル類を含むコポリマー、メタクリル酸エステル類のホモポリマー、メタクリル酸エステル類を含むコポリマー、乳酸のホモポリマーおよび乳酸を含むコポリマーからなる群から選択される1以上であり、
前記液体が、前記ポリマーを膨潤可能である方法。
【請求項6】
請求項5に記載の製造方法により得られた表面が加工されたポリマー。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7(a)】
【図7(b)】
【図7(c)】
【図7(d)】
【図7(e)】
【図7(f)】
【図7(g)】
【図7(h)】
【図8】
【図9】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7(a)】
【図7(b)】
【図7(c)】
【図7(d)】
【図7(e)】
【図7(f)】
【図7(g)】
【図7(h)】
【図8】
【図9】
【公開番号】特開2010−144091(P2010−144091A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−324381(P2008−324381)
【出願日】平成20年12月19日(2008.12.19)
【出願人】(504176911)国立大学法人大阪大学 (1,536)
【出願人】(801000061)財団法人大阪産業振興機構 (168)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年12月19日(2008.12.19)
【出願人】(504176911)国立大学法人大阪大学 (1,536)
【出願人】(801000061)財団法人大阪産業振興機構 (168)
【Fターム(参考)】
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